説明

窒素酸化物吸蔵触媒を有する排気ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの運転方法

本発明は、窒素酸化物吸蔵触媒(6)を有する排気ガス浄化装置(2)を備えたディーゼルエンジン(1)の運転方法に関する。本方法では、ディーゼルエンジン(1)の燃焼室において、あるラムダ値を有する混合気が少なくとも部分的に燃焼し、その際に発生する排気ガスが窒素酸化物吸蔵触媒(6)に送られる。混合気が1よりも大きな第1のラムダ値を有する第1の運転モードによるディーゼルエンジン(1)の運転から開始して、窒素酸化物吸蔵触媒(6)の再生のために、混合気が1よりも小さい第2のラムダ値を有する第2の運転モードでの運転がディーゼルエンジン(1)に設定される。第2の運転モードの設定直前に運転モード移行段階が挿入され、この移行段階では、混合気が第1の運転モードのラムダ値よりも低く、1をわずかに上回る第3のラムダ値に調整される第3の運転モードでディーゼルエンジン(1)を運転する。本発明に基づき、この第3の運転モードにおいては、混合気のラムダ値に関してディーゼルエンジン(1)のクローズドループ制御モードの運転が行われ、排気ガス浄化装置(2)内の窒素酸化物吸蔵触媒(6)の下流に配置されているラムダセンサ(9)によって排気ガス・ラムダ値(λAm)が検知され、このラムダ値が、第3のラムダ値の設定可能な目標値を調整するための調整値として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に基づき、窒素酸化物吸蔵触媒を有する排気ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの運転方法及びこの方法を実施するための制御装置を備えたディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、窒素酸化物(NOx)吸蔵触媒を有する排気ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの業界標準の運転方法が知られている。この方法では、硝酸エステル再生と関連して、リーンな混合気から開始して、空気過剰率ラムダ値が1以下のリッチな混合気が設定される直前に運転モード移行段階が挿入され、この移行段階では、1をわずかに上回るラムダ値が設定される。これにより、リッチな混合気を備える次の運転段階において、窒素酸化物吸蔵触媒に吸蔵されている窒素酸化物を削減する際に有用となるアンモニアの生成が改善される。生成されたアンモニアは、窒素酸化物削減をさらに向上させるために、下流のSCR触媒の中で使用される。優れた再生結果を効率的に達成するためには、特に、窒素酸化物吸蔵触媒の実質的な再生が行われるリッチな運転段階において、確実かつ再現可能なラムダ値の設定が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10349876A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、窒素酸化物吸蔵触媒を有する排気ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの運転方法を提供することであり、この方法により、特に窒素酸化物吸蔵触媒の再生を実施する際に、確実かつ再現可能にラムダ値を設定することができる。さらに本発明の課題は、窒素酸化物吸蔵触媒を有する排気ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンを提供することであり、このエンジンにより、窒素酸化物吸蔵触媒の再生を簡単な方法で効率的に実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法及び請求項16の特徴を有するディーゼルエンジンによって解決される。
【0006】
本発明に基づく方法は、ディーゼルエンジンによって作用し、このディーゼルエンジンの単一又は複数の燃焼室では、ラムダ値を有する混合気が少なくとも部分的に燃焼し、その際に発生する排気ガスが窒素酸化物吸蔵触媒に送られる。混合気が1よりも大きな第1のラムダ値を有する第1の運転モードによるディーゼルエンジンの運転から開始して、窒素酸化物吸蔵触媒の再生のために、混合気が1よりも小さい第2のラムダ値を有する第2の運転モードでの運転がディーゼルエンジンに設定される。第2の運転モードの設定直前に運転モードの移行段階が挿入され、この移行段階では、混合気が第1の運転モードのラムダ値よりも低く、1をわずかに上回る第3のラムダ値に調整される第3の運転モードでディーゼルエンジンを運転する。本発明に基づき、この第3の運転モードにおいては、混合気のラムダ値に関してディーゼルエンジンのフィードバック制御のクローズドループモードの運転が行われ、排気ガス浄化装置内の窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサによって排気ガスのラムダ値が検知され、このラムダ値が、第3のラムダ値の規定可能な目標値を調整するための調整値として用いられる。
【0007】
本発明に基づき設けられている運転モード移行段階における第3のラムダ値の目標値は、通常、1.01〜1.10の範囲にあり、好ましいのは1.02〜1.06、特に好ましいのは約1.03であり、従って、実際の再生時に設定される約0.95の第2のラムダ値に比較的近い。これにより、運転モード移行段階において、ディーゼルエンジンの運転を決定するエンジン運転値を、その直後に続く、リッチな空燃比によって運転するディーゼルエンジンの第2の運転モードによる運転段階で必要となる値に少なくとも近いように調整することが可能である。従って、本発明に基づいて実施される運転モード移行段階は、リッチなエンジン運転に必要なエンジン運転パラメータの安定した調整に働くが、ここでは、弱リーンのエンジン運転も生じる。
【0008】
従って、有利な方法で、ディーゼルエンジンでは原理的に調整が難しいリッチなエンジン運転条件に近づけることが可能になる。次に続く第2の運転モードへの移行は、1つ又は複数のエンジン運転値の僅かな変動しか必要としないため、簡単に行うことができる。好ましくは、1を僅かに上回るラムダ値による運転モード移行段階は、安定した条件を設定するために必要である場合のみ保持される。通常、この時間は、1桁の下方の秒範囲にある。好ましいのは、ディーゼルエンジンが作動してから約2〜5秒後に、第3の運転モードから第2の運転モードに切り替えられることである。
【0009】
特に、運転モード移行段階が弱リーンであることから、本発明に基づいて準備されているラムダ調整エンジン運転の第3の運転モードでは、とりわけ、確実かつ正確なエンジン運転の設定が可能となる。この場合、前の第1の運転モードでも同様にリーンな混合気が設定されているため、運転モード移行段階においてラムダ調整に用いられる、窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサが、ディーゼルエンジン内で燃焼する混合気のラムダ値に極めて正確に一致する測定値を供給するということが利用される。第1の運転モードは、通常、10秒〜数分の範囲で長い時間にわたり設定されているため、排気ガスのラムダ値に影響する窒素酸化物吸蔵触媒の効果は減衰されている。
【0010】
本発明の意味において、排気ガス浄化エレメントは窒素酸化物吸蔵触媒として理解され、このエレメントは、好ましくはハニカム構造で実施された内部キャリアの上に、窒素酸化物吸蔵作用のある触媒層を有している。該当する吸蔵コンポーネントは、例えば炭酸バリウムのようなアルカリ又はアルカリ土類化合物であり得る。このコンポーネントは、個形硝酸バリウム又は硫酸バリウムを生成して、1よりも大きいラムダ値をもつ酸化可能な排気ガスから窒素酸化物(NO)及び硫黄酸化物(SO)を取り除く。これらと結合している材料の消耗により、場合によっては窒素酸化物吸蔵触媒の再生が必要となり、この再生では、吸蔵されているNO又はSOが取り除かれ、吸蔵力が再び生み出される。再生は、ある程度の時間にわたり、還元可能な排気ガスが供給されることによって生じる。この場合、該当する酸化物を遊離しながら、硝酸エステル又は硫酸エステルを分解することができる。再び遊離されたNOは、排気ガス中に含まれる還元剤(H、CO及びHC)によって、窒素酸化物吸蔵触媒上の触媒作用のある層状コンポーネントで、無害な窒素(N)及びアンモニア(NH)に還元される。
【0011】
ここでのラムダ値とは、従来のように、酸素の含有量と、エンジンに送られる混合気内又は排気ガス内の酸素あるいは還元成分の含有量とからなる化学量論比を意味する。1よりも大きなラムダ値の場合、過剰な酸素を含むリーンな混合気又は排気ガスが存在し、ラムダ値が1より小さい場合には、過剰な還元剤を含むリッチな混合気又は排気ガスが存在する。
【0012】
通常、空気及び燃料は、好ましくは4ストローク方式で運転する多気筒のディーゼルエンジンの燃料室に別々の経路で送られ、機械的作業を加えられながら燃焼室で燃焼する。燃焼は、燃焼方法に応じて多かれ少なかれ完全に行われる。有害物質を排気ガスから取り除くため、この排気ガス浄化装置は、窒素酸化物吸蔵触媒の他に、さらにろ過作用及び/又は触媒作用のあるコンポーネントを有している。さらに、この排気ガス浄化装置は、温度及び組成などの、排気ガス特性パラメータを検知するセンサを有している。
【0013】
燃焼排気ガスのラムダ値は、1つの燃焼室又は複数の燃焼室からの噴出直後では、混合気のラムダ値に等しい。しかし、排気ガス浄化コンポーネントの作用により、特に、排気ガス成分の変換、吸蔵及び/又は遊離により、ラムダ値の変動が生じ得る。さらに、空気又は燃料がエンジン外部のソースから排気ガスに供給されることによっても、ラムダ値の変動が見込まれる。明確にするために、以下に排気ガスのラムダ値について詳しく説明する。エンジンの燃焼室に送られる混合気のラムダ値は、明確に示す必要のあるところでは、以下にエンジン・ラムダ値とも呼ぶ。以下、必ずしも限定されないが、本発明に基づく方法の場合、窒素酸化物吸蔵触媒から供給される排気ガスのラムダ値の変動は、エンジン・ラムダ値の変動によってのみ、又はほぼエンジン・ラムダ値の変動によってのみ引き起こされることを前提としている。
【0014】
窒素酸化物吸蔵触媒は、通常、酸素及び/又は還元剤に関して吸蔵作用を有しているため、特に、1よりも大きなエンジン・ラムダ値から1よりも小さなエンジン・ラムダ値に(又はその逆)に切り替わる際に、一時的に窒素酸化物吸蔵触媒の下流でエンジン・ラムダ値とは異なる排気ガス・ラムダ値が存在する。それらを検知するため、いわゆるラムダセンサが設けられており、このセンサは、当業者には一般的な形態、例えばバイナリ又は連続ラムダセンサとして、あるいはラムダ感受性のNOセンサとして形成することができる。
【0015】
本発明に基づき、閉じられた制御回路が設けられており、この回路内では、特に、第3の運転モードでのディーゼルエンジンの運転時に、窒素酸化物吸蔵触媒の下流で排気ガス・ラムダ値がラムダセンサにより連続して、又は頻発的に検知され、調整値として戻される。制御回路内では、設定可能な目標値との比較が行われ、制御回路のレギュレータが、ラムダセンサによって検知されたラムダ値と第3のラムダ値の目標値との誤差が少なくともほぼゼロになるように、エンジン・ラムダ値を調整する。このレギュレータは、当業者には一般的な実施形態、例えばPI又はPIDレギュレータで形成することができる。このレギュレータは、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実施することができる。
【0016】
本方法の実施形態においては、第2の運転モードにおいて、空燃比のラムダ値に関して、ディーゼルエンジンのフィードフォワード制御のオープンループモードの運転が行われる。これによって、第2の運転モードにおいては、実際に窒素酸化物吸蔵触媒が再生されている間に、排気ガスに含まれる還元可能な成分がNOx又はSOxの還元のために使用され、排気ガスから取り除かれる。この理由から、下流に配置されたラムダセンサによって排気ガス・ラムダ値が検知され、この値は、少なくとも還元可能な排気ガス成分が顕著に消費される限り、エンジン・ラムダ値と一致しない。この結果として、調整されたエンジン・ラムダ値は低いにもかかわらず、とりわけ吸蔵されている窒素酸化物の除去がまだ完全ではない限り、排気ガス・ラムダ値は、ほぼ化学量論的1の値に留まっている。この場合には、窒素酸化物吸蔵触媒の下流で測定された排気ガス・ラムダ値は、エンジン・ラムダ値を調整するための調整値としては用いられない。
【0017】
本方法のもう1つの実施形態では、第2のラムダ値のために目標値が設けられ、第2及び第3の運転モードにおいて、混合気のラムダ値に影響を与える調整値としてのエンジン運転値が先行して制御つまりパイロット制御され、第2及び第3のラムダ値は、そのパイロット制御により、それぞれ設定された目標値に少なくともほぼ到達するように制御される。
【0018】
好ましくは、第2及び第3の運転モードにおいて、多数のエンジン運転値がパイロット制御によって調整され、好ましいのはメモリの中でインプット値が呼び出し可能に保持されていることである。この場合、パイロット制御によって設定されるエンジン運転値は、必ずしも、制御技術的な意味での調整値として第3の運転モードで実施されるラムダ制御に有効でなくてもよい。
【0019】
好ましいのは、呼び出され、設定されたインプット値が、負荷及び回転数に関して、ディーゼルエンジンのそれぞれの運転点に割り当てられることである。特に、弱リーンの空燃比による第3の運転モードにおいて、すでに、燃焼室の燃料の燃焼を決定する主なエンジン運転値を、第2の運転モードのリッチな運転に必要な値と同じ値に設定するように準備されている。この方法により、この燃焼方法は、次の第2の運転モードにおいて、リッチな混合気の少なくとも部分的な燃焼の必要性に応じて、運転モード移行段階からすでに設定される。従って、第2の運転モードへの移行は、僅かな変化しか必要としないため、確実かつ正確な移行が行われる。
【0020】
本方法のもう1つの実施形態では、パイロット制御が、学習型パイロット制御として設計されており、アダプティブに変更可能な、調整値に影響を与える修正値が準備される。この修正値は、第2及び/又は第3のラムダ値を調整する調整値に乗法的又は加法的に作用する修正値として形成することができる。この修正値は、従って、アダプティブに変更可能な学習値として形成されており、確認された制御値のばらつきに基づき、必要に応じて、パイロット制御が制御値のばらつきを調整できるように適合される。アダプティブに実施されているパイロット制御により、とりわけ、時間的に僅かに変化する過度電流を効果的に補正することができるが、それは、過度電流を調整する制御介入が最小化されるため、制御が非常に素早くでき、僅かな過度振動で行うことができるためである。
【0021】
必要に応じて、あらかじめ新しく学習した修正値は、運転モード移行段階の第3の運転モードにおけるラムダ制御モードから、その直後の、純粋なパイロット制御による第2の運転モードでのエンジン運転に受け継がれる。学習型パイロット制御により、約1.03から0.95への比較的小さなラムダ変動を、極めて精密に実施することができる。これに対して、本発明に基づき実施される運転モード移行段階を省略して、通常は比較的高い第1のラムダ値からリッチな第2のラムダ値に直接移行するとすれば、非常に障害を受けやすく、不正確な移行になるであろう。
【0022】
本方法のもう1つの実施形態では、第2及び第3の運転モードにおいて、運転サイクルの中でディーゼルエンジンの燃焼室に噴射される燃料の全噴射量のパイロット制御が行われ、エアマスセンサ装置によって検知された、少なくとも部分的に混合気を燃焼するためにディーゼルエンジンに供給されるエア流量に応じて、第2及び第3のラムダ値が、それぞれに設けられている目標値に少なくともほぼ到達するように準備される。この場合、特に好ましいのは、本発明に基づく方法のもう1つの実施形態において、エアマスセンサ装置によって検知されるエア流量が、設定可能なエア流量目標値を調整するための調整値として用いられることである。エア流量を調整するために、独立した制御回路が設けられているのが好ましい。この方法により、空燃比を決定する値としてのエア流量と全噴射量との調整が制御技術的に切り離される。エアマスセンサ装置によって、通常、精度の高い実際のエア流量測定値が供給されるため、それに対応して調整される全噴射量を用いることにより、エンジン・ラムダ値も同様に極めて精密に調整することができる。
【0023】
本方法のもう1つの実施形態では、全噴射量が、主噴射において噴射される主噴射量と主噴射に続く後噴射において噴射される後噴射量とを含んでいる。主噴射量は、好ましくは、上死点前約10度〜上死点後約10度のクランクシャフト角度で燃焼室に噴射され、後噴射量は、好ましくは、上死点後約15度〜約45度のクランクシャフト角度で、運転サイクルの中で燃焼室に噴射される。この後噴射により、効果的な形で、ディーゼルエンジンの出力又はトルク出力にほとんど、又は全く影響しない混合気のエンハンスメント又は濃縮が可能となる。好ましいのは、燃焼過程を改善するため、主噴射の前に行われる前噴射が圧縮サイクルの中に設けられていることである。特に好ましいのは、2回の前噴射が短いインターバルで実施されることである。該当する前噴射量は、有利な場合、上死点前25度〜15度のクランクシャフト角度で噴射される。
【0024】
全噴射量を、少なくとも主噴射と後噴射とに分割することに関連して、特に有利であるのは、本方法のもう1つの実施形態において、後噴射量が、第2及び/又は3のラムダ値の目標値を調整する調整値として用いられることである。後噴射量の増加は別として、第3の運転モードから第2の運転モードへの移行では、全部又は少なくとも大部分の他のエンジン運転値が変化しないで継続されるのは有利である。従って、好ましくは、第3のラムダ値から第2のラムダ値への移行における混合気の濃縮が、後噴射量の増加だけで行われる。
【0025】
本方法のもう1つの実施形態では、第3の運転モードにおいて、パイロット制御の結果生じる排気ガス・ラムダ値と第3のラムダ値の目標値との誤差が調査され、必要に応じて、この誤差が少なくともほぼ無視できる範囲になるように、アダプティブに変更可能な修正値が変更される。従って、修正値の学習又は適合は、第3の運転モードによるディーゼルエンジン運転時の運転モード移行段階中に行われ、それぞれ新たに学習した修正値が、読み出し可能なメモリに書き込まれ、次の第3の運転モード設定時に再び読み出される。好ましいのは、例えば、設定可能な最大負荷及び/又は最大回転数変動値の超過、並びに惰行運転がないことなどの、あらかじめ決められた許可条件が、アダプションを実施するために設けられていることである。この許可条件がない場合、修正値のアダプション又は学習は実施されないか、又は中断される。この場合、第3のラムダ値は調整されないが、パイロット制御によって、以前有効だった修正値に基づいてラムダ値が調整される。好ましいのは、これまで有効だった修正値との誤差が、設定可能な最小範囲を下回っているか、又は設定可能な最大範囲を超えている場合は、新しく学習された修正値が取り入れられないことである。この措置により、修正値の頻繁すぎる学習又は学習ミスが回避される。
【0026】
本方法のもう1つの実施形態では、エンジン運転特性マップが準備されており、この特性マップは設定可能な値による特性マップ範囲を有し、これらの値にはそれぞれ修正値が割り当てられている。好ましくは、エンジン運転特性マップは負荷−回転数特性マップである。エンジン運転特性マップの少なくともほとんどの部分で正確にラムダ値を設定することにより、窒素酸化物吸蔵触媒を確実に再生することが、とりわけ、本発明のもう1つの実施形態において、第2及び/又は第3のラムダ値を調整するためのパイロット制御が、規定の特性マップ範囲におけるエンジン運転の場合、前述の窒素酸化物吸蔵触媒の再生に関連して、この特性マップ範囲に割り当てられた修正値を用いることによって、可能となる。好ましいのは、エンジン運転特性マップが、10〜20の同じ大きさの特性マップ範囲に分割されていることである。しかしながら、より細かな、又はより大まかな特性マップの分割方法もあり得る。特に、大まかな分割の場合、隣り合っている修正値の間に補間を行い、その補間値を用いることが有利である。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態では、第2の運転モードにおいて、その直前に設定される第3の運転モードと同じに、エンジン運転値、排気ガス再循環率及びインテークスロットル率の少なくとも1つが調整される。この方法により、第3の運転モードから第2の運転モードへの、とりわけ確実かつスムーズな移行が可能となる。好ましいのは、例えば主噴射及び/又は前噴射の噴射時点と噴射量などのさらなるエンジン運転パラメータとが変更されずに引き継がれることである。
【0028】
本発明のもう1つの実施形態では、第2の運転モードにおいて、吸蔵されている窒素酸化物を窒素酸化物吸蔵触媒から取り除くための硝酸エステル再生を実施する際に、窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサによって検知される排気ガス・ラムダ値が、設定可能なしきい値を下回っていないかモニタされ、設定可能なしきい値を下回っていた場合には、ディーゼルエンジンのモードが第1の運転モードに戻される。従って、窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサは、硝酸エステル再生の終了を検知する働きをし、この場合、標準的しきい値として、1.00〜0.98の範囲のラムダ値を選択するのが有利である。これにより、一酸化炭素又は炭化水素などの排気ガス成分削減が不適切に断絶されるのを、十分な確実性をもって回避することができるか、又は少なくとも最小化することができる。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態では、第2の運転モードにおいて、吸蔵されている硫黄酸化物を窒素酸化物吸蔵触媒から取り除くための硫酸エステル再生を実施する際に、窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサによって検知される排気ガス・ラムダ値が、設定可能なしきい値を下回ったかモニタされ、設定可能なしきい値を下回った後に、第2のラムダ値を少なくともほぼ維持しながら、混合気のラムダ値に関して、オープンループ制御モードからクローズドループ制御モードにディーゼルエンジンの運転モードが切り替えられる。
【0030】
窒素酸化物吸蔵触媒に吸蔵されている硫黄酸化物は、通常、吸蔵されている窒素酸化物よりもかなり強く結合しているため、硝酸エステル再生と比べ、硫酸エステル再生の場合は、550℃以上の高温と継続時間のより長いリッチ燃焼モードとの両方が必要である。従って、硫酸エステル再生の場合、第2の運転モードが、好ましくは10秒〜30秒の間にわたり変化しないまま維持される。しかし、この時間のわずか一部が経過しただけでも、窒素酸化物吸蔵触媒内の還元可能な排気ガス成分の消費は極めて低下しているため、ラムダセンサによって検知される排気ガス・ラムダ値は、エンジン・ラムダ値と少なくともほぼ同じである。目標可能な値まで近づくと、ラムダセンサによって供給された測定値を使用して、再びディーゼルエンジンのラムダ制御モードを実施することができる。このことにより、効率的な硫酸エステル再生に必要なリッチな排気ガス・ラムダ値の設定精度が向上する。
【0031】
本発明に基づく問題は、窒素酸化物吸蔵触媒を有する排気ガス浄化装置と本発明による方法を実施するための制御装置とを有するディーゼルエンジンによっても解決され、排気ガス浄化装置内の窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサは、ディーゼルエンジンの燃焼室内で少なくとも部分的に燃焼する混合気のラムダ値を設定するためにエグゾーストシステム内に設けられている唯一のラムダセンサである。ラムダ値の調整は、排気ガス浄化装置内の窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置されているラムダセンサによってのみ可能であるため、特に排気ガス浄化装置内の窒素酸化物吸蔵触媒の上流に配置されるもう1つのラムダセンサは必要ない。従って、かなりの経費節約を達成することができる。
【0032】
本発明の実施形態では、排気ガス浄化装置内の窒素酸化物吸蔵触媒とラムダセンサとの間に微粒子捕集フィルタが配置されている。ラムダセンサはこの微粒子捕集フィルタの下流に配置されており、このことにより、追加的に、煤の燃焼による微粒子捕集フィルタ再生の制御又はモニタが可能になる。さらに、ラムダセンサへの煤の付着のリスクが防がれ、それにより、ラムダ値測定の信頼性と精度とが向上する。
【0033】
本発明の有利な実施形態を図に示し、以下に説明する。この場合、ここで示された特徴及び以下に説明する特徴は、それぞれに示された特徴の組合せだけではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、その他の組合せ又は単独でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に基づく方法を実施するためのディーゼルエンジン及び排気ガス浄化装置の実施形態を示す模式図である。
【図2】硝酸エステル再生実施との関連における、ディーゼルエンジン内で燃焼する混合気のラムダ値λの時間経過及び窒素酸化物吸蔵触媒の下流で測定された排気ガス内のラムダ値λAmの時間経過図である。
【図3】硫酸エステル再生実施との関連における、ディーゼルエンジン内で燃焼する混合気のラムダ値λの時間経過及び窒素酸化物吸蔵触媒の下流で測定された排気ガス内のラムダ値λAmの時間経過図である。
【0035】
図1は本発明に基づく方法を実施するための、車両(図示されてない)用の内燃機関1及び排気ガス浄化装置2の有利な実施形態を示す模式図である。この内燃機関1は、好ましくは、直接噴射式の、リーン燃焼可能な、特にレシプロ原理による空気圧縮式内燃機関として実施されており、以下、簡略化してディーゼルエンジンと呼ぶ。図示されていない燃料噴射システムは、好ましくは、調整可能なレール圧又は燃料噴射圧を備える、いわゆるコモン・レール・システムとして、あるいはポンプ・ノズル方式又はポンプ・ライン・ノズル方式による噴射システムの形で実施されている。
【0036】
内燃機関のシリンダには、それぞれ、1つ又は2つのインレットバルブ及びアウトレットバルブ、グロープラグ及びフューエルインジェクタを備える燃焼室、並びに1つ又は複数の燃焼エア用インレットダクトが割り当てられており、これらのものは詳細に図示されていない。フューエルインジェクタは、この場合、多点噴射を実施できるようになっている。
【0037】
このディーゼルエンジン1は、図に示されていないエアマスセンサが配置されているエア供給ライン3を介して燃焼エアを受け取る。このエアマスセンサは、好ましくは、いわゆるホットフィルム・エアマスセンサ又はホットワイヤ・エアマスセンサとして形成されている。空気密度の変動は、このセンサによって検知され、エア流量の調整時に補正することができる。同様に図示されていない調整可能なスロットルエレメントによって、ディーゼルエンジン1に供給されるエア流量を調整可能な量まで絞ることができる。燃焼エアは、エグゾーストターボチャージャ15によって圧縮され、冷却のためにインタクーラ16に送られる。このエグゾーストターボチャージャは、好ましくは、調整可能なチャージ圧を備える、いわゆるVTGターボチャージャ又はウェストゲート式ターボチャージャとして実施されている。ディーゼルエンジン1のシリンダの燃焼室では排気ガスが発生し、排気ガスライン4を介して排出される。この場合、排気ガスフィードバックライン13によって燃焼エアに排気ガスが混ぜ合わされ、それによってディーゼルエンジン1に送り戻される。戻された排気ガスの割合(EGR率)は、EGRバルブ14によって調整することができる。好ましいのは、ディーゼルエンジン1に戻される排気ガスは、図示されていないEGRラジエタによって冷却されることであり、このEGRラジエタのために、必要に応じて調整可能なバイパスを設けることができる。これにより、冷却された排気ガス又は熱い排気ガスを、選択的に燃焼エアに混ぜ合わせることができる。フィードバックされなかった排気ガスは、エグゾーストターボチャージャ15を介して排気ガス浄化装置2に送られる。説明されている実施形態により、例えばエア流量、多点燃料噴射の噴射時間、噴射圧及び噴射時点、EGR率、チャージエア圧及び様々な燃焼方法など、重要なエンジン運転パラメータの様々な値を、必要に応じて準備することができる。特に、このディーゼルエンジン1は、空気過剰率を示すラムダ値(以下にエンジン・ラムダ値λと呼ぶ)の変化する混合気によって運転させることができる。1より大きいエンジン・ラムダ値λは、リーンな混合気又はリーンなディーゼルエンジン1の運転に該当し、1より小さいエンジン・ラムダ値λは、リッチな混合気又はリッチなディーゼルエンジン1の運転に該当する。リーンなエンジン運転によって、特に酸素などの酸化作用のある成分の多いリーンな排気ガスが生じ、リッチなエンジン運転の場合は、例えば、一酸化炭素、水素及び炭化水素など還元作用のある成分の多いリッチな排気ガスが生じる。排気ガスの組成は、以下に、この定義に対応して、排気ガス・ラムダ値λによって特徴づけられる。
【0038】
ディーゼルエンジン1に割り当てられている排気ガス浄化装置2の好ましい実施形態は、排気ガスの流れる方向に見て、順番に、酸化触媒5、窒素酸化物吸蔵触媒6、ディーゼル微粒子捕集フィルタ7及びSCR触媒8を有している。微粒子捕集フィルタ7として、好ましくは、SiCベース、コーディエライトベース又はアルミニウムベースの、いわゆるウォールフロ型ーフィルタが使用される。しかし、微粒子捕集フィルタ7は、焼結合金フィルタとして又は開かれたフィルタ構造をもつフィルタユニットとしても形成することができる。窒素酸化物吸蔵触媒6の下流に配置されているSCR触媒8は、還元条件の場合、NHを吸蔵できるという特性を有し、酸化条件では、吸蔵されているNH又は場合によっては供給されるNHを、NOを化学的に還元するための窒素生成において、選択的触媒還元反応における反応物として利用することができる。
【0039】
後者の特性は、特に、SCR触媒8に送られるNOを無害にするために利用される。図1による構成では、例えば、ディーゼルエンジン1のリーン燃焼モードの際、NO吸蔵経過における窒素酸化物吸蔵触媒6のNO吸蔵容量の減少によってNOスリップが増大することにより、SCR触媒8がNOを受け取る。SCR触媒8は、好ましくは、V−WOベースのバルク触媒として又は貴金属含有触媒層として形成されている。特に好ましいのは、銅又は鉄を含むゼオライト被覆を備える担持触媒として実施されていることである。触媒5、7、8は、触媒層ダクトが通っているハニカムボディモノリスとして実施されており、供給される排気ガスはこのダクトを流れることができる。
【0040】
酸化触媒5のインプット側には、燃料追加ユニットを設けることができ、このユニットによって、例えば燃料を排気ガスに送ることができる。このことにより、必要に応じ排気ガスに送られる燃料の発熱酸化反応によって、排気ガスを適切に加熱することができる。この燃料追加ユニットがある場合、このユニットは、主として、煤の燃焼による微粒子捕集フィルタ7のアクティブな再生に関連して運転するか、又は下流に接続されている排気ガス浄化構成部品を加熱するために運転する。しかしながら、有利であるのは、この燃料追加ユニットを省略して、リッチな混合気を用いるモードにより、モータ駆動で排気ガスに酸化可能な成分を混入することである。以下は、この応用を前提とする。
【0041】
排気ガス後処理装置2には、排気ガスと、構成部品の温度、並びに重要な排気ガス成分濃度を検知するための様々な温度センサ及び排気ガスセンサが設けられている。例えば、図1では、排気ガス浄化装置2において、窒素酸化物吸蔵触媒6のインプット側及び微粒子捕集フィルタ7のアウトプット側に、それぞれ温度センサ10、11が配置されている。SCR触媒8のアウトプット側には、NO及び/又はNH感受性のガスセンサ12が設けられている。微粒子捕集フィルタ7への煤及び/又は灰の付着を検知するため、さらに、微粒子捕集フィルタ7のインプット側とアウトプット側とに圧力センサ又は差圧センサを設けることが有利であるが、これらは図1には特に示されていない。さらに、窒素酸化物吸蔵触媒6の下流には、存在する排気ガス・ラムダ値λを検知するためのラムダセンサ9が配置されている。正確に特徴づけるため、以下では、窒素酸化物吸蔵触媒の下流でラムダセンサ9によって検知される排気ガス・ラムダ値の測定値を、排気ガス・ラムダ値λAmと呼ぶ。ラムダセンサ9は、図に示されているように、窒素酸化物吸蔵触媒6のアウトプット側に配置することができるが、微粒子捕集フィルタ7のアウトプット側、すなわち微粒子捕集フィルタ7とSCR触媒8との間に配置することもできる。これらのセンサ及び必要に応じてその他のセンサを用いて、排気ガス浄化装置2の運転状態が包括的に調査され、その運転状態をディーゼルエンジン1の運転に適合させることができる。この場合有利であるのは、排気ガス浄化装置2にはラムダセンサ9以外に別のラムダセンサが取り付けられていないことである。特に、本発明に基づき、ラムダセンサ9は、排気ガス浄化装置2の唯一のラムダセンサであり、このセンサは、ディーゼルエンジン1の中で少なくとも部分的に燃焼する混合気のラムダ値を調整するために用いる。
【0042】
エンジンモードを設定又は検知するために、エンジン電子制御装置17が設けられている。このエンジン制御装置17は、一方で、例えば、回転数、エンジン負荷、温度、圧力などの標準的なエンジン運転値に関する情報を該当するセンサから入手し、他方では、例えば、EGRバルブ14、エア供給ライン3のエグゾーストターボチャージャ15又はスロットルエレメントなどのアクチュエータに、調整値としての制御信号を送信することができる。ガス供給側と燃料供給側とに、運転値又は状態値の調整機能が準備されている。特に、エンジン制御装置17は、多点噴射を実施するために燃料インジェクタを制御し、必要に応じて燃料噴射圧を適切に調整することができる。さらに、このエンジン制御装置17は、調整及び制御プロセスを実施するために取り付けられており、これによってエンジン運転値は、調整又は制御された状態で設定される。このために、エンジン制御装置17は、メモリされている特性マップ又は算出ルーティン又は調整/制御ルーティンを用いることができる。そのために設けられているサブシステム、例えばコンピュータ、メモリ又は入力/出力ユニットなどは、特に図示されていない。
【0043】
同様の方法で、排気ガス後処理装置2の運転及び状態値の検知と設定のために、第2の制御装置18が設けられている。エンジン制御装置17と第2の制御装置18とは、双方向のデータライン19によって相互に接続されている。この方法により、それぞれの制御装置で使用可能なデータが相互に交換可能となる。制御装置17、18は、唯一の一体型測定値検知及び制御装置にまとめることも可能である。
【0044】
窒素酸化物吸蔵触媒6は、酸化条件の下では、排気ガス内にあるNOxとSOxとを、主に硝酸エステル又は硫酸エステルとして積層材料に化学的に接着することにより吸蔵する。従って、空気過剰によるディーゼルエンジン1の通常の運転方法(以下第1の運転モードと呼ぶ)では、一般にこのことが当てはまる。窒素酸化物を除去するためにNOの吸蔵が必要である間は、NOの吸蔵スペースがブロックされるためにSOの吸蔵は不利である。窒素酸化物吸蔵触媒のNO除去機能を維持するため、吸蔵されているNO又はSOを再び取り除く再生作業を頻繁に行うことが必要となる。吸蔵されているNOxの除去は、この場合、いわゆる硝酸エステル再生で行われ、SOの除去は、いわゆる硫酸エステル再生において行われる。排気ガス内のNOの濃度はSOに比べ明らかに高いことから、硝酸エステル再生は、硫酸エステル再生よりも明らかに短いインターバルで行う必要がある。通常は、硝酸エステル再生は30秒〜数分間隔で行い、一方、硫酸エステル再生は、走行距離に基づいて約1000km走行後に実施されるのが好ましい。両方の場合では、少なくとも一時的に還元可能な排気ガス、すなわち排気ガス・ラムダ値λが1よりも小さい排気ガスを供給することが必要である。このために、本発明に基づき、ディーゼルエンジン1は、リッチな混合気が供給される、エンジン・ラムダ値λが1より小さい運転モードで運転する。この運転モードを、以下に、第2の運転モードと呼ぶ。還元状態の下では、硝酸エステル再生の際に吸蔵されるNOが再び遊離され、大部分がN及びNHに変換される。硫酸エステル再生では、硫酸エステルとして吸蔵されている硫黄がSO又はHSなどの揮発性の硫黄化合物に還元される。
【0045】
燃費の理由から、1よりも大きいエンジン・ラムダ値λによる第1の運転モードでのリーンなエンジン運転時間がより長くなるように求められる。これに対応して、第2の運転モードの時間的割合は小さくすることが望ましい。いずれにせよ、第1の運転モードは、ディーゼルエンジン1の通常のリーンな運転で設定される。しかしながら、窒素酸化物吸蔵触媒6に1よりも小さい排気ガス・ラムダ値λをもつ還元可能な排気ガスを供給するための、1よりも小さいエンジン・ラムダ値λによる第2の運転モードの設定は、特にエンジン・ラムダ値λの確実かつ正確な調整に関して特別な措置が必要であり、そのことを以下に詳しく説明する。この場合、まず、硝酸エステル再生の実施における本発明に基づく方法について、追加的に図2を用いて説明する。
【0046】
図2のグラフには、ディーゼルエンジン1の様々な運転モードにおけるエンジン・ラムダ値λ及び窒素酸化物吸蔵触媒6の下流に配置されているラムダセンサ9によって検知される排気ガス・ラムダ値λAmの好ましい時間経過が示されている。エンジン・ラムダ値λの経過は直線によって示され、ラムダセンサ9によって検知される排気ガス・ラムダ値λAmは破線で示されている。ここでは、排気ガス浄化装置2において、窒素酸化物吸蔵触媒6の上流に、排気ガス・ラムダ値に顕著な影響を及ぼすコンポーネントが配置されていないため、窒素酸化物吸蔵触媒に送られる排気ガスは、エンジン・ラムダ値λと同じ値の排気ガス・ラムダ値λを有していることが前提となっている。
【0047】
第1の過程では、図2において、まず第1の運転モードが設定される。第1の運転モードの時間は、図2では、記号Iによって示されている。第1の運転モードが働いている場合、窒素酸化物吸蔵触媒6には、酸素含有量の高いリーンな排気ガスが送られる。この排気ガスは、例えばλ=3のエンジン・ラムダ値λによって運転するディーゼルエンジン1から供給される。ディーゼルエンジン1は、この場合、エンジン・ラムダ値λに関して、オープンループ制御モードで運転する。EGR率、チャージ圧、レール圧、前噴射及び主噴射の噴射パラメータなどのエンジン運転値は、要求されている出力と負荷−回転数−特性マップの運転点とに応じて、特性マップ制御によって調整される。
【0048】
ディーゼルエンジン1から排出され、排気ガスの中に含まれるNOは、大部分が窒素酸化物吸蔵触媒6の触媒材料の中に、好ましくは硝酸エステルの形で吸蔵され、その後、排気ガスから取り除かれる。必要に応じて、窒素酸化物吸蔵触媒6から生じるNOスリップは、下流に接続されているSCR触媒8での還元によって、少なくとも部分的に無害にされる。
【0049】
窒素酸化物吸蔵触媒6が飽和状態に近づき、例えば、センサ又はモデルベースで許容できない値まで窒素酸化物のスリップが増大したか、又は規定の窒素酸化物飽和しきい値に達したことが確定され、規定の遊離条件が満たされた場合は、硝酸エステル再生が開始される。遊離条件としては、例えば、全負荷の設定可能なごく一部分のエンジン負荷で、エンジン運転が設定可能な負荷−回転数−特性マップ範囲にあることが考慮に入れられる。遊離条件が満たされると、時点t0で、ディーゼルエンジン1の運転は、まず、エンジン・ラムダ値λが1.0を僅かに超える値、例えばλ=1.03による第3の運転モードに切り替えられる。第3の運転モードの時間は、図2では、記号IIIによって示されている。好ましいのは、切替えがほぼ一瞬で、少なくとも極めて急激な形で行われる。第1の運転モードから第3の運転モードへの切替えのため、詳細には以下の措置が取られる。
【0050】
ディーゼルエンジン1に供給されるエア流量は、特性マップに基づき、所定の目標値まで絞られる。このために、エンジン制御装置17の独立した制御回路は、エアマスセンサによって送信されるエア流量についての信号を制御値として用い、該当するレギュレータによって作られる調整値がエア供給ライン3内のスロットルエレメントに作用するように実装されている。さらに、EGR率、チャージ圧、レール圧、前噴射及び主噴射の噴射パラメータ、燃焼の重点位置などの重要なエンジン運転値は、特性マップ制御によって、リッチなエンジン運転のために準備さている値に調整される。さらに、燃料の後噴射が作動する。本発明に基づいて、前噴射、主噴射及び後噴射によって決定される全噴射量は別にして、前述のエンジン運転パラメータは、第2の運転モードにおける次の運転段階で同様に準備さられている値と同じ値に設定される。第2の運転モードの時間は、図2では、記号IIによって示されている。
【0051】
前述の第1の運転モードでの運転時に酸素で飽和された窒素酸化物吸蔵触媒6は、第3の運転モードにおいて、排気ガス・ラムダ値λを決定する部分に関しては排気ガスを実質的に不変のままで通過させる。従って、ラムダセンサ9によって送信される排気ガス・ラムダ値λAmは、僅かな時間的遅れと、ある程度のラムダ移行の滑らかさとを別にして、図に示されているように、窒素酸化物吸蔵触媒6上流での排気ガス・ラムダ値λ、従ってエンジン・ラムダ値λと正確に一致する。このことは、本発明に従って、ディーゼルエンジン1が、オープンループ制御モードから、エンジン・ラムダ値λに関してクローズドループ制御モードに移行するために利用される。第3の運転モードにおける調整は、この場合、好ましくはアダプティブなパイロット制御調整として実施され、以下に、このことを詳しく説明する。
【0052】
ラムダセンサ9から提供される測定シグナルは、維持されている特性曲線に応じて、第2の制御装置18によってラムダ値(排気ガス・ラムダ値λAm)に変換され、エンジン制御装置17に伝達される。エンジン制御装置17に実装されているラムダレギュレータによって、そのように測定された排気ガス・ラムダ値λAmは、調整値として使用され、第3の運転モードに標準的なエンジン・ラムダ値λの目標値と比較される。比較結果に基づいて、燃料インジェクタに作用し、全噴射量を決定する調整値が出される。調整値としての全噴射量を、パイロット制御によって調整するため、これに影響を及ぼす修正値が設けられており、この修正値は、書込み−読出しメモリから読み出される、全体として、調整値として働く全噴射量は、ラムダレギュレータから出される部分と、修正値によって決定される部分とから生じ、この修正値は、加法的又は乗法的にレギュレータ部分と結びつけられる。この場合、乗法的な結合が有利である。
【0053】
本発明に基づき、測定された排気ガス・ラムダ値λAmと、第3の運転モードに標準的なエンジン・ラムダ値λの目標値との間で確認された誤差は、必要に応じて修正値を変更することにより、その修正値変更の結果として、誤差が少なくともほぼゼロになるように考慮される。このために、エアマスセンサによって提供されるエア流量の値が評価される。全噴射量は、エア流量の値に基づいてエンジン・ラムダ値λの目標値が算出されるように調整されており、その際、全噴射量は、適切に決定される修正値によって決められる。古い修正値は、次に、必要に応じて変更される、新たに学習した修正値と取り替えられ、メモリに上書きされる。従って、レギュレータは、追加的に生じる過度電流だけを調整すればよい。レギュレータの運転は、これに応じて僅かになる。修正値の上書きは、変更が僅かしかない場合や、例えば運転者によって要求される負荷要求によってエンジン運転に大きな変更が生じた場合には省略することができる。
【0054】
この関連において、特に好ましいのは、後噴射量だけが必要に応じて後調整され、パイロット制御によって調整された前噴射量及び主噴射量の値は一定に保たれている場合である。従って、エンジン・ラムダ値λを正確に設定するための調整値としては、特に好ましいこの実施形態では、後噴射量に割り当てられる全噴射量部分だけが使用される。
【0055】
第3の運転モードのラムダ値の調整プロセスが行われた場合、このことは、調整誤差が最低値を下回ると、例えばそのプロセスが行われたと見なされ、時点t1において第3の運転モードが終了し、エンジン運転は、第2の運転モードに切り替えられる。第3の運転モードの過度振動は、通常、例えば1〜3秒後の短時間で減衰されており、従って、第3の運転モードでのエンジン運転は、運転モード移行段階と呼ぶことができ、この段階は、第1の運転モードと第2の運転モードとの間に挿入されている。
【0056】
第2の運転モードでは、ディーゼルエンジン1に0.95のリッチなエンジン・ラムダ値λが設定され、ディーゼルエンジン1は、エンジン・ラムダ値λに関してオープンループ制御モードに切り替えられる。このために、レギュレータアウトプットは、第3の運転モードの終了時の値に固定され、全噴射量が上昇し、すなわち該当するパイロット制御値が上昇する。上昇の範囲を調べるため、好ましくは、エアマスセンサから提供されるエア流量の値が新たに評価され、そのエア流量の値に基づいて、減少した新しいエンジン・ラムダ値λの目標値が算出されるように、全噴射量が調整される。この場合、特に有利であるのは、後噴射量のみが調整され、前噴射量と主噴射量は一定に保たれることである。従って、エンジン・ラムダ値λのパイロット制御調整の調整値としては、全噴射量のうち、後噴射量に割り当てられる部分だけが使用される。その他のエンジン運転パラメータは、すでに第2の運転モードのリッチな燃焼モードに必要な値を有しており、すでに前述の第3の運転モードで調整されているため、不変のままである。
【0057】
第2の運転モードにおいては、窒素酸化物吸蔵触媒6に送られる還元可能な排気ガスによって、窒素酸化物吸蔵触媒6の実際の硝酸エステル再生が行われる。この場合、窒素酸化物吸蔵触媒6に吸蔵されているNOがN及びNHに還元される。遊離されたNHは、この場合、次のSCR触媒8に送られ、そこで吸蔵される。還元剤を用いる窒素酸化物吸蔵触媒6の還元プロセスの結果、窒素酸化物吸蔵触媒6の下流において、排気ガスは還元しない成分を有しており、ラムダセンサ9によって、まず、1.0の排気ガス・ラムダ値λAmが測定される。吸蔵されたNOがほぼ還元されると、リッチな排気ガスに含まれている還元剤が次第になくなり、排気ガス・ラムダ値λAmは低下し、窒素酸化物吸蔵触媒6上流のエンジン・ラムダ値λに近づく。それにより、再生プロセスの終了は、ラムダセンサ9から供給される測定値の評価によって検知することができる。好ましいのは、ラムダセンサ9によって検知された排気ガス・ラムダ値λAmが規定可能なしきい値を下回ると、第2の運転モード、従って窒素酸化物吸蔵触媒6の硝酸エステル再生がt2の時点で終了し、再び第1の運転モードの条件が調整されることである。
【0058】
第2及び第3の運転モードにおけるエンジン・ラムダ値λの学習型パイロット制御の方法は、好ましくは、第3の運転モードで学習された修正値が、負荷−回転数−特性マップの、ディーゼルエンジン1の現在の運転点がある特性マップ範囲に割り当てられることにより改善される。このために、負荷−回転数−特性マップが規定又は規定可能な値の特性マップ範囲に分割される場合は有利である。負荷−回転数−特性マップの細かな分割は、パイロット制御の精度を向上させるが、詳細度が増すことによって経費が増加する。好ましいのは、10〜40に特性マップ範囲を分割することである。
【0059】
精度をさらに上げるため、エアマスセンサ及び/又はラムダセンサ9の測定シグナルを評価する際に、エア経路及び/又は排気ガス浄化装置2における気体のフロー時間を考慮するように準備することができる。死点を補整することにより、ラムダセンサ9の測定シグナルに対して、フロー時間に起因するエアマスセンサの測定シグナルの先行を補整することができる。このために、エアマスセンサの測定シグナルと、それぞれの全噴射量又は後噴射量の噴射時点と、関連して発生するラムダシグナルの時点と、の間における時間差をシミュレーションするモデルを準備し、全噴射量又は後噴射量のパイロット制御を動的に修正することができる。
【0060】
以下に、窒素酸化物吸蔵触媒6の硫酸エステル再生を実施する際の好ましい方法について説明する。この場合、図3に示されている時間経過グラフに基づいて、特に、上述した硝酸エステル再生の実施方法との違いが議論される。図3の時間経過グラフには、エンジン・ラムダ値λの時間経過及び窒素酸化物吸蔵触媒の下流で測定された排気ガス内のラムダ値λAmの時間経過図が、図2のグラフと同様に示されている。
【0061】
窒素酸化物吸蔵触媒6の硫酸エステル再生は、硫黄酸化物が許容できない高い量で吸蔵されていることが確認された場合に実施される。その確認は、例えば、モデルベースで、又は燃料消費量に基づいて行うことができる。硫酸エステル再生は、硝酸エステル再生と類似の方法で実施される。実質的な違いは、排気ガス又は窒素酸化物吸蔵触媒6の温度が約650℃まで上昇することと、約0.8〜0.9のエンジン・ラムダ値λまでの強い濃縮が設定されることである。さらに、濃縮時間が、硝酸エステル再生と比べ増加している。もう1つの違いは、好ましくは温度上昇の際に、リッチなエンジン・ラムダ値λとリーンなエンジン・ラムダ値λとの間で運転段階が相互に連続して何度も切り替わることである。これにより、比較的安定した硫酸エステルの分解が可能となる。好ましいのは、硫酸エステル再生が、煤の燃焼による熱的微粒子捕集フィルタ再生と時間的に関連して実施されることである。このことにより、加熱プロセスの回数が減り、燃料消費が低下する。
【0062】
温度上昇は、早期に行われる、いわゆる燃焼する後噴射、及び/又は後期に行われる燃焼しない後噴射を設定することによって達成される。運転サイクルにおいて、上死点前約10度〜約40度のクランクシャフト角度での早期の後噴射により、排気ガスのエグゾースト温度を直接上昇させることができる。運転サイクルにおいて、上死点後約45度〜約120度のクランクシャフト角度での後期の後噴射により、排気ガスに燃焼していない成分が混入され、これらの成分が、酸化触媒5及び/又は窒素酸化物吸蔵触媒6内の排気ガス中に含まれる残留酸素による酸化によって燃焼し、それにより、排気ガスの加熱又は触媒の加熱が生じる。
【0063】
硫酸エステル再生を実施するために、特性マップに基づいて規定されたパイロット制御によるエンジン運転パラメータを用い、硝酸エステル再生との関連で述べた方法と同様に、第1の運転モードから第3の運転モードへの切替えが実施される。同様に、運転モード移行段階の第3の運転モードが設定される際に、修正値の学習が行われる。しかしながら、硝酸エステル再生を実施するための修正値と硫酸エステル再生を実施するための修正値との様々なセットを準備することができる。
【0064】
硝酸エステル再生と同じく、第2の運転モードにおいてリッチなエンジン・ラムダ値λが設定された後の硫酸エステル再生では、窒素酸化物吸蔵触媒6の下流に、排気ガスは還元する成分を有しておらず、ラムダセンサ9によって、まず、1.0の排気ガス・ラムダ値λAmが測定される。吸蔵されたNO及びSOがほぼ還元されると、リッチな排気ガスに含まれている還元剤が次第になくなり、排気ガス・ラムダ値λAmが低下し、窒素酸化物吸蔵触媒6の上流にあるエンジン・ラムダ値λに近づく。しかし、硝酸エステル再生とは異なり、排気ガス・ラムダ値λAmはエンジン・ラムダ値λに非常に接近する際に、本発明に基づいて、リッチなエンジン・ラムダ値λがしばらくの間維持され、t2の時点で、ディーゼルエンジンのモードが混合気のラムダ値に関してオープンループ制御モードからクローズドループ制御モードに切り替えられる。リッチなエンジン・ラムダ値λによる第2の運転モードの、例えば約20秒にわたる設定可能な全時間の経過後に、エンジン運転の時点t3で、空燃比に関して、エンジンモードは再びオープンループ制御の第1の運転モードIに切り替えられる。リッチなエンジン・ラムダ値λによる第2の運転モードの運転段階は、それによって2つの部分に分割されている。図3において、記号IIaで示されている第1の部分は、ディーゼルエンジン1が、リッチなエンジン・ラムダ値λに関してオープンループ制御モードで運転する。記号IIbで示されている第2の部分は、ディーゼルエンジン1が、リッチなエンジン・ラムダ値λに関してクローズドループ制御モードで運転し、第1の部分IIa又は第3の運転モードからのエンジン運転パラメータのパイロット値が受け継がれる。
【0065】
吸蔵されているSOを可能な限り完全に取り除くため、第1の運転モードにおける約5〜15秒の比較的短い時間の経過後に、運転モード移行段階の設定と、それに続くオープンループ制御の第1の部分IIa及びクローズドループ制御の第2の部分IIbを備える第2の運転モードとによるプロセスが、温度の上昇は変更されないで、繰り返されるようになっている。特に、5〜20回の繰り返しが準備されている。
【0066】
有利に設定可能な繰り返し数の終了後、排気ガス又は触媒温度を上昇するための措置が終了し、ディーゼルエンジン1は頻繁に行われる硝酸エステル再生を伴う通常モードに移行する。
【0067】
第2の運転モードにおいて、第2の運転部分IIbにおけるラムダ調整の精度を上げるために、好ましくは、維持されているラムダセンサ9の特性曲線を、Hに対する交差感受性に関して調整するように準備されている。これにより、例えば水性ガスシフト反応などの副反応の結果、リッチな燃焼モードが長く継続している場合に、ラムダセンサ9の測定シグナルに狂いが生じる可能性が考慮に入れられる。この方法によって、誤ったエンジン・ラムダ値λによる調整が確実に回避される。
【0068】
全体として、本発明に基づき、窒素酸化物吸蔵触媒6の下流に配置されているラムダセンサ9を使用して、硝酸エステル再生又は硫酸エステル再生を実施する場合に準備されるラムダ調整の結果、確実かつ正確なラムダ設定が可能となる。しかしながら、好ましい形でさらに準備されている特別な学習型パイロット制御の結果、必要な場合にはいつでもパイロット制御モードだけを用いることができる。このことにより、例えば、好ましくない走行状態又はラムダセンサ9の故障などによって正常な運転が不可能な場合に、システムの安全性が改善される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物吸蔵触媒(6)を有する排気ガス浄化装置(2)を備えるディーゼルエンジン(1)の運転方法において、
ラムダ値を有する混合気が該ディーゼルエンジン(1)の燃焼室において少なくとも部分的に燃焼し、発生する排気ガスが前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)に送られ、前記混合気が1よりも大きな第1のラムダ値を有する第1の運転モードによる前記ディーゼルエンジン(1)の運転から開始して、前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)の再生のために、前記混合気が1よりも小さい第2のラムダ値を有する第2の運転モードによる前記ディーゼルエンジン(1)の運転が設定され、前記第2の運転モードの設定直前に運転モード移行段階が挿入され、該移行段階では、前記混合気が、前記第1の運転モードのときよりも低く1をわずかに上回る第3のラムダ値に調整される第3の運転モードにより前記ディーゼルエンジン(1)を運転する、ディーゼルエンジン(1)の運転方法であって、
前記第3の運転モードにおいては、前記混合気のラムダ値に関して、前記ディーゼルエンジン(1)のクローズドループ制御が行われ、前記排気ガス浄化装置(2)内の前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)の下流に配置されているラムダセンサ(9)によって排気ガス・ラムダ値(λAm)が検知され、該ラムダ値が、前記クローズドループ制御において、前記第3のラムダ値の規定可能な目標値を調整するための調整値として用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の運転モードにおいて、前記混合気のラムダ値に関して、前記ディーゼルエンジン(1)のオープンループ制御の運転が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のラムダ値のために目標値が設けられ、前記第2及び前記第3の運転モードにおいて、前記混合気の前記ラムダ値に影響を与える、調整値としてのエンジン運転値のパイロット制御が行われ、前記第2及び前記第3のラムダ値は、前記パイロット制御により、それぞれ設けられた目標値に少なくともほぼ到達するようにされことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パイロット制御が、アダプティブに変更可能な、前記調整値に影響を与える修正値が準備されるように、学習型パイロット制御として設計されていることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2及び前記第3の運転モードにおいて、運転サイクルの中で前記ディーゼルエンジン(1)の燃焼室に噴射される燃料の全噴射量のパイロット制御が行われ、エアマスセンサ装置によって検知された、少なくとも部分的な混合気の燃焼のために前記ディーゼルエンジン(1)に供給されるエア流量に応じて、前記第2及び前記第3のラムダ値が、それぞれに設けられている目標値に少なくともほぼ到達するようになっていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エアマスセンサ装置によって検知される前記エア流量が、設定可能なエア流量目標値を調整するための調整値として用いられることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記全噴射量が、主噴射において噴射される主噴射量と前記主噴射に続く後噴射において噴射される後噴射量とを含んでいることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記後噴射量が、前記第2及び/又は前記第3のラムダ値の前記目標値を調整する調整値として用いられることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の運転モードにおいて、前記パイロット制御の結果生じる前記排気ガス・ラムダ値と前記第3のラムダ値の前記目標値との誤差が調査され、必要に応じて、前記誤差が少なくともほぼ無視できる範囲になるように、アダプティブに変更可能な前記修正値が変更されることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
エンジン運転特性マップが準備されており、該特性マップは設定可能な値の特性マップ範囲を有し、該値にはそれぞれ修正値が割り当てられていることを特徴とする、請求項4〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2及び/又は前記第3のラムダ値を設定するための前記パイロット制御が、規定の特性マップ範囲におけるエンジン運転の場合、前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)の再生に関連して、前記特性マップ範囲に割り当てられた修正値を用いることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の運転モードにおいて、その直前に設定される前記第3の運転モードと同じに、エンジン運転値、排気ガス再循環率及びインテークスロットル率の少なくとも1つが調整されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の運転モードにおいて、その直前に設定される前記第3の運転モードと同じに前記主噴射量が調整されることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の運転モードにおいて、吸蔵されている窒素酸化物を前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)から取り除くための硝酸エステル再生を実施する際に、前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)の下流に配置されている前記ラムダセンサ(9)によって検知される前記排気ガス・ラムダ値(λAm)が、設定可能なしきい値を下回っていないかモニタされ、前記設定可能なしきい値を下回っていた場合には、前記ディーゼルエンジン(1)のモードが前記第1の運転モードに戻されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の運転モードにおいて、吸蔵されている硫黄酸化物を前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)から取り除くための硫酸エステル再生を実施する際に、前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)の下流に配置されている前記ラムダセンサ(9)によって検知される前記排気ガス・ラムダ値(λAm)が、設定可能なしきい値を下回ったかモニタされ、前記設定可能なしきい値を下回った後に、前記第2のラムダ値を少なくともほぼ維持しながら、前記混合気の前記ラムダ値に関してオープンループ制御モードからクローズドループ制御モードに前記ディーゼルエンジン(1)のモードが切り替えられることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
窒素酸化物吸蔵触媒(6)を有する排気ガス浄化装置(2)と請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法を実施する制御装置(17、18)とを有し、前記排気ガス浄化装置(2)内の前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)の下流に配置されている前記ラムダセンサ(9)は、前記ディーゼルエンジン(1)の前記燃焼室内で少なくとも部分的に燃焼する前記混合気の前記ラムダ値を調整するために前記排気ガス浄化装置(2)内に設けられている唯一のラムダセンサである、ディーゼルエンジン。
【請求項17】
排気ガス浄化装置(2)内の前記窒素酸化物吸蔵触媒(6)と前記ラムダセンサ(9)との間に微粒子捕集フィルタ(7)が配置されていることを特徴とする、請求項16に記載のディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−510025(P2012−510025A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537862(P2011−537862)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007163
【国際公開番号】WO2010/060503
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】