薄膜パターンの形成方法、デバイスおよびその製造方法
【課題】 微細な薄膜パターンを精度良く安定して形成できる薄膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明の薄膜パターンの形成方法は、基板P上に機能性材料の薄膜パターンを形成する方法であって、基板P上に受容層材料を含む受容層用インク32a(第1の機能液)を配して受容層パターン32を形成する受容層形成工程と、前記受容層パターン32に対し導電性微粒子等を含む導電層用インク(第2の機能液)を配して導電層パターン33を形成する機能層形成工程とを有している。
【解決手段】 本発明の薄膜パターンの形成方法は、基板P上に機能性材料の薄膜パターンを形成する方法であって、基板P上に受容層材料を含む受容層用インク32a(第1の機能液)を配して受容層パターン32を形成する受容層形成工程と、前記受容層パターン32に対し導電性微粒子等を含む導電層用インク(第2の機能液)を配して導電層パターン33を形成する機能層形成工程とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜パターンの形成方法、デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路などの微細な配線パターンの製造方法としては、フォトリソグラフィ法が多用されている。一方、特許文献1、特許文献2などには、液滴吐出方式を用いた方法が開示されている。これら公報に開示されている技術は、パターン形成用材料を含んだ機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出することにより、パターン形成面に材料を配置(塗布)して配線パターンを形成するものである。この方法によれば、フォトリソグラフィ工程が不要となり、プロセスが大幅に簡略化されるとともに、原材料の使用量も少なくてすむというメリットがある。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、例えば配線パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。しかしながら、このような微細な配線パターンを前記の液滴吐出方式による方法によって形成しようとした場合、吐出した液滴が着弾後に基板上で濡れ広がるために微細な配線パターンを正確かつ安定に形成するのが困難であった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、微細な薄膜パターンを精度良く安定して形成できる薄膜パターンの形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、基体上に機能性材料の薄膜パターンを形成する方法であって、基体上に受容層材料を含む第1の機能液を配して受容層パターンを形成する受容層形成工程と、前記受容層パターンに対し機能性材料を含む第2の機能液を配して機能層パターンを形成する機能層形成工程とを有することを特徴とする薄膜パターンの形成方法を提供する。
【0006】
本発明において受容層パターンは、液分を浸潤可能に形成された機能層であり、その内部に微小な空隙を有する多孔質層、あるいは液分を膨潤可能な有機物層などにより形成されるものである。
本発明に係る形成方法は基板上に受容層をパターン形成した後、係る受容層パターンに対して第2の機能液を配することで所望の機能層パターンを形成し、所定平面形状の薄膜パターンを形成するものである。このように基板上に形成した受容層パターンに対して第2の機能液を配して機能層パターンを形成することで、細い線幅の微細形状の機能層パターンであっても断線や短絡等を生じることなく正確に形成することが可能になる。
また、本発明によれば機能液の液分を浸潤可能な受容層パターンを簡便な液相法により形成することから、パターニングのためのマスクが不要であり、工程の簡素化、効率化によって薄膜パターンの形成に係るコストを低減できる。さらに、受容層パターンは第2の機能液の液分を吸収するという極めて良好な親液性を呈するので、この受容層パターンに対して供給された第2の機能液は良好に受容層パターンに保持され、したがって基板上の他の領域(受容層パターンの非形成領域)に前記第2の機能液が残留することがなくなり、機能層のパターニング不良に起因する不良が発生するのを効果的に防止できる。
【0007】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記受容層形成工程に先立って、前記基体表面に撥液処理を施す撥液化工程を有することが好ましい。この形成方法によれば、基板上に形成した受容層パターンと、他の基板上の領域に形成された撥液領域とで高い親液/撥液のコントラストが得られ、受容層パターンに対して第2の機能液をより正確に配することが可能になる。
【0008】
本発明の薄膜パターンの形成方法は、前記受容層材料が、無機物微粒子とバインダーとを含むものであることが好ましい。この形成方法によれば、バインダーを介して凝集された無機物微粒子からなる受容層を基板上に形成でき、微小空隙を備えた受容層パターンを液相法を用いて容易に形成することができる。
【0009】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機物微粒子が、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムから選択される少なくとも1種の元素あるいはその酸化物を含むものであることが好ましい。これらの無機物微粒子を用いることで、導電性ないし絶縁性の受容層パターンを容易に形成することができる。
【0010】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機物微粒子の粒径が1μm以下であることが好ましい。粒径が1μmを超える場合、液相法を用いて受容層パターンを形成する場合の塗布性が低下する。特にノズルから液滴状の機能液を吐出する液滴吐出法により受容層パターンを形成する場合にはノズルの目詰まり等を生じやすくなる。
【0011】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機物微粒子が、粒子内部に空隙を有する中空構造の粒子であることが好ましい。このように中空構造の粒子を用いることで、無機物微粒子自体が第2の機能液の液分を吸収するものとなるので、第2の機能液を受容層パターン上に配した際に前記液分の吸収が良好なものとなり、受容層パターンによる第2の機能液の保持性が向上し、機能層パターンにおける短絡等の発生を効果的に防止することができる。
【0012】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記第1の機能液が前記受容層材料のゾルを含むものであり、前記受容層形成工程において、前記第1の機能液を前記基体上に配し、ゾル−ゲル法により前記受容層パターンを形成することもできる。このように受容層材料のゾルを用いることで、液相法における基板上への塗布に際して良好な塗布性を得ることができるとともに、緻密で均一な組織を有する受容層パターンを得ることができる。
【0013】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記受容層材料のゾルが、無機アルコキシド、無機ハロゲン化物、有機/無機複合アルコキシド、および有機/無機ハロゲン化物から選択される少なくとも1種の無機酸化物前駆体と、界面活性剤とを含む溶液であることが好ましい。これらのアルコキシド、ハロゲン化物を用いることで、分子レベルで構造制御された多孔性の無機酸化物膜を得ることができるため、良好かつ均一な吸収性を具備した受容層パターンを形成することができる。
【0014】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機酸化物前駆体が、インジウム、錫、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、アンチモン、タングステン、およびチタンから選択される少なくとも1種の無機元素を含んでいることが好ましい。本発明に係る薄膜パターンの形成方法では、これらの無機元素の酸化物からなる多孔質膜を受容層に用いることができる。
【0015】
本発明の薄膜パターンの形成方法は、前記機能層形成工程により前記受容層上に形成する機能層パターンが、導電層、絶縁層、又は半導体層であることを特徴とする。本発明に係る薄膜パターンの形成方法によれば、所望の平面形状を具備した導電層パターン、絶縁層パターン、および半導体層パターンを低コストに形成でき、種々のデバイスプロセスにおいて低コスト化に寄与する。
【0016】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記機能層形成工程において、導電性微粒子を含む前記第2の機能液を用いて前記受容層パターン上に導電層を形成することができる。この形成方法によれば、導電性微粒子を焼結してなる導電層パターンを基板上に容易に形成できる。したがって本発明によれば、微細でありながら短絡等が生じない高信頼性の配線パターンを得ることができる。
【0017】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記機能層形成工程において、熱処理又は光照射処理により導電性を発現する材料を含む前記前記第2の機能液を用いて、前記受容層パターン上に導電層を形成することもできる。この形成方法では、典型的には、コーティング材で被覆された導電性微粒子を含む第2の機能液により機能層パターンを形成する。導電性微粒子をコーティング材で被覆することで、機能液中での導電性微粒子の凝集を防止でき、高品質の導電層パターンを形成できるようになる。
【0018】
先の撥液化工程では、以下に挙げる複数種の撥液化方法を適用できる。これらの撥液化方法は、基体の材質や機能液の特性に合わせて最適な方法を選択することができる。
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液化工程が、前記基体上に撥液性の単分子膜を形成する工程であることが好ましい。本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液性の単分子膜が、フッ素を含有する有機分子からなる単分子膜であることが好ましい。
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液化工程が、フルオロカーボン系化合物を反応ガスに用いて前記基体の表面をプラズマ処理する工程であることが好ましい。
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液化工程が、前記基体上に、フッ素を含有する高分子化合物を塗布してなる撥液膜を形成する工程であることが好ましい。
【0019】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記機能液を、液滴吐出法を用いて前記基体上に配することが好ましい。液滴吐出法を用いるならば、基板上に直接的に受容層パターンをパターン形成することができ、機能液の材料使用効率も向上する。また受容層パターンに対して第2の機能液を配する際にも、無駄なく均一に機能液を配置することができる。
【0020】
次に、本発明のデバイスの製造方法は、基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、先に記載の本発明の薄膜パターンの形成方法により、前記基体上に薄膜パターンを形成することを特徴としている。この製造方法によれば、微細な薄膜パターンを具備したデバイスを安価に製造することができる。
【0021】
次に本発明のデバイスは、基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスであって、先に記載の形成方法により得られた薄膜パターンを備えたことを特徴とする。係るデバイスは、その薄膜パターンにおける断線や短絡等が防止されたものとなるので、信頼性に優れたデバイスとなる。
【0022】
次に、本発明の電気光学装置は、先に記載の本発明のデバイスを備えたことを特徴とする。また本発明の電子機器は、先に記載の本発明のデバイスを備えたことを特徴とする。
これらの構成によれば、微細かつ高品質の薄膜パターンを具備しており、係る薄膜パターンを用いた配線等により電気的信頼性に優れた電気光学装置ないし電子機器が提供される。
【0023】
次に、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程では、先に記載の本発明の薄膜パターン形成方法を用いることを特徴とする。
この製造方法によれば、ゲート配線、ソース電極およびドレイン電極、画素電極等に、短絡等が生じない高品質の細線の薄膜パターンが形成されたアクティブマトリクス基板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<薄膜パターンの形成方法>
以下、本発明の薄膜パターンの形成方法及びデバイスの製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、液滴吐出法により液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから、受容層材料を含む受容層用インク(第1の機能液)を液滴状に吐出し、基板上に受容層をパターン形成する工程と、この受容層上に導電性微粒子(機能性材料)を含む導電層用インク(第2の機能液)を液滴状に吐出して受容層上に導電層を形成する工程とにより薄膜パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0025】
まず、本発明に係る薄膜パターンの形成およびデバイスの製造に適用できるデバイス製造装置について説明する。このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0026】
図1は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。図1において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
【0027】
ステージ7はこの液滴吐出装置IJによりインクを配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
液滴吐出ヘッド1は複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0028】
X軸方向駆動軸4にはX軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0029】
制御装置CONTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、制御装置CONTは、X軸方向駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、Y軸方向駆動モータ3に対してステージ7のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0030】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しないY軸方向駆動モータを備えている。このY軸方向駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はY軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布されたインクに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0031】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に移動させつつ、基板P上を走査し、基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、Y軸方向を走査方向、Y軸方向と直交するX軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるX軸方向に一定間隔で並んで設けられている。
なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することでノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節可能としてもよい。
【0032】
図2はピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。図2において、液体材料(配線パターン形成用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることによりピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることによりピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0033】
次に、本発明の薄膜パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図3を参照して詳しく説明する。
本実施形態に係る薄膜パターン形成方法は、上述したように、受容層用インクを基板上に配置して受容層パターンを形成した後、導電層用インクを受容層パターン上に重ねて配置し、導電層パターン(機能層パターン)を形成するものであり、撥液化工程と、受容層形成工程と、導電層形成工程(機能層形成工程)とを主体として構成される。
以下、各工程ごとに詳細に説明する。
【0034】
(撥液化工程)
まず、図3(a)に示すように、基板Pを用意する。この基板Pとしては、ガラス、石英、シリコン等の半導体ウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0035】
基板Pを用意したならば、次に、図3(b)に示すように、基板Pの表面を撥液処理して撥液層31を形成する。この撥液処理としては、例えば基板表面に自己組織化膜を形成する方法やプラズマ処理を施す方法、あるいは撥液性を具備した高分子化合物を基板P表面に塗布する方法を用いることができる。いずれの撥液化処理によっても、基板Pの表面に高い撥液性を付与することができる。
【0036】
自己組織化膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0037】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0038】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えば下記一般式(1)に示すようなシラン化合物を用いることができる。式(1)中、R1は有機基を表し、X1及びX2は−OR2、−R2、−Clを示し、X1及びX2に含まれるR2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、aは1〜3の整数である。
【0039】
(1) R1SiX1aX2(3−a)
【0040】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、シラン原子に有機基が置換し、残りの結合手にアルコキシ基またはアルキル基または塩素基が置換したものである。有機基R1の例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等を例示できる。
X1のアルコキシ基や塩素基、Si−O−Si結合等を形成するための官能基であり、水により加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
R2の炭素数は脱離するアルコールの分子量が比較的小さく、除去が容易であり形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1〜4の範囲であることが好ましい。
【0041】
一般式(1)で表される代表的なシラン化合物としては、撥液性を示す含フッ素アルキルシラン化合物が挙げられる。特にR1がパ−フルオロアルキル構造(CnF2n+1)で表される構造を有するものであり、一般式(2)で表される化合物を例示することができる。式(2)中、nは1から18の整数を、mは2から6までの整数をそれぞれ表し、X1およびX2およびaは、前記式(1)と同じ意味を表す。
含フッ素アルキルシラン化合物を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向して自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性を付与することができる。
【0042】
(2) CnF2n+1(CH2)mSiX1aX2(3−a)
【0043】
より具体的には、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
【0044】
また、R1がパ−フルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O(CpF2pO)rで表される構造を有するものも挙げることができる。その具体例としては例えば、下記一般式(3)で表される化合物を例示することができる。
【0045】
(3) CpF2p+1O(CpF2pO)r(CH2)mSiX1aX2(3−a)
【0046】
(式中、mは2から6の整数を,pは1から4の整数を、rは1から10の整数をそれぞれ表し、X1およびX2およびaは、前出と同じ意味を表す。)具体的な化合物の例としては、CF3O(CF2O)6−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)2(CF2O)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)8−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(C2H5)(OCH3)2等が挙げられる。
【0047】
また、一般式(1)で表される他のシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフロオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブ
チルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0048】
自己組織化膜を形成する化合物として上記に例示した化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。含フッ素アルキルシラン化合物を組み合わせることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0049】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を80〜140℃に保持することにより、1〜3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を30分〜6時間浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。また、原料化合物を含む溶液を40〜80℃に加熱することにより、5分〜2時間の浸漬で自己組織化膜を形成することができる。なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面には、紫外光を照射したり、あるいはプラズマ処理、酸やアルカリ液により洗浄することで前処理を施しておくことが望ましい。
【0050】
また、プラズマ処理法による撥液処理は、基板Pが樹脂基板などの有機材料からなるものである場合や、基板P上に既設の有機膜を具備している場合等に有効な方法である。具体的には、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタン(CF4)を処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用することができる。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、テトラフルオロメタン(CF4)ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃である。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(CF4)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。
【0051】
また撥液性の高分子化合物を基板P表面に塗布する方法による場合、例えば含フッ素ポリイミド樹脂等をスピンコート法等を用いて基板P上に塗布することで撥液層31を形成することができる。撥液性高分子化合物としては、上記ポリイミド樹脂に限られず、分子内にフッ素原子を含有するモノマー、オリゴマー又はポリマーを用いることができ、具体例を挙げるならば、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、6フッ化プロピレン−4フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ペンタデカフルオロヘプチルエチルメタクリレート)(PPFMA)、ポリ(パーフルオロオクチルエチルアクリレート)等の長鎖パーフルオロアルキル構造を有するエチレン、アクリレート、メタクリレート、ビニル、ウレタン、シリコーン系ポリマーである。
【0052】
(受容層形成工程)
上記撥液化工程を終了したならば、図3(c)に示すように、撥液層31上に受容層材料を含む受容層用インク32aを配置する。本実施形態の場合、先の図2に示した液滴吐出ヘッド1から上記受容層用インク32aを吐出することで撥液層31上に所定の受容層パターン32を形成する(図3(d)参照。)。
本工程で形成される受容層パターン32としては、微小空隙型の受容層パターン、あるいは膨潤型の受容層パターンを形成し用いることができる。
【0053】
まず、微小空隙型の受容層パターン32を形成する場合について説明する。
微小空隙型の受容層パターン32は、無機物微粒子とバインダーとの混合物をインク32aに用いて形成することができる。無機物微粒子としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムから選択される1種以上の無機物の微粒子、あるいはその酸化物の微粒子を用いることができる。
【0054】
受容層用インク32aの好ましい例を挙げると、多孔性シリカ粒子、アルミナ、アルミナ水和物のうちの少なくとも一つと、バインダーとの混合物であり、特にアルミナ、アルミナ水和物のうちの少なくとも一つと、多孔性シリカ粒子と、バインダーとの混合物を用いるのが望ましい。
無機物微粒子としては、平均粒子径が1μm以下のものを用いることが好ましい。液滴吐出ヘッド1からの良好な吐出性を確保するためである。
【0055】
多孔性シリカ粒子を用いる場合には、平均細孔直径8〜50nm、細孔容積0.8〜2.5cc/g程度のものが好ましい。多孔性シリカ粒子は、20重量%以下のボリア、マグネシア、ジルコニア、チタニア等を含有するものであってもよい。
アルミナまたはアルミナ水和物としては、半径3〜10nmを有する細孔容積の和が0.2〜1.5cc/gを有する多孔質のアルミニウム酸化物やその含水物が挙げられる。細孔物性の測定手段としては、アルミナまたはアルミナ水和物の乾燥固形分が有する細孔の分布を、窒素吸着法(定流量法)により、例えばオミクロンテクノロジー社製オムニソープ100を使用して測定することができる。そして、半径3〜10nmを有する細孔容積の和が、0.2〜1.5cc/gである場合はさらに好ましい。
【0056】
また、これらアルミナまたはアルミナ水和物は、結晶質または非晶質のいずれでもよく、その形態としては不定形粒子、球状粒子等適宜な形態を用いることができる。アルミナゾルを用い、これを乾燥することによって得られるゲル状物は特に好適である。このようなものの具体例として、凝ベーマイトが挙げられる。これは、本発明に用いられる物質として最適である。特に、ゾルを乾燥して得られる擬ベーマイトゾルが好ましい。
【0057】
また、本実施形態に係る受容層用インク32aには、アルミナゾルに限らず、先に挙げた無機物質を含む種々のゾルを用いることができる。すなわち、受容層材料として先に挙げた無機物物質を主体とする無機酸化物前駆体(無機アルコキシド、無機ハロゲン化物、有機/無機複合アルコキシド、有機/無機複合ハロゲン化物)と界面活性剤とを含む受容層インクを用いることができる。
上記無機酸化物前駆体としては、例えば、Ti(iso−OC3H7)4、Al(iso−OC3H7)3、Zr(OCH3)4、Si(OCH3)4、Si(OC4H9)4、Si(OC2H5)4等の加水分解性を示す金属アルコキシドや、これらと同様の加水分解性を示す金属ハロゲン化物、金属アセチルアセトナート錯体、金属カルボン酸塩等を挙げることができる。これらの他にも、インジウム、錫、亜鉛、バナジウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、アンチモン、タングステン等を含む酸化物前駆体を用いることができる。
【0058】
上記無機酸化物前駆体とともに用いられる界面活性剤は、前記前駆体から無機酸化物を得る際に分子レベルの鋳型として機能し、形成される受容層に微細な孔を形成する機能を奏する。この界面活性剤は、同一分子内に極性基と疏水基の良好を有するいわゆる両親媒性化合物を主体としてなるものであり、係る分子構造を構成する極性基としては、スルホン酸基、硫酸基、アンモニウム基、ポリアミン基、カルボン酸基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスホニウム塩、糖残基類糖を含めたポリオール類およびこれらの組み合わせを用いることができる。他方、疏水基(溶媒に対する親和性が低い基)としては、フルオロカーボンを含むアルキル基、アルキルアリル基、脂環基、縮合多環基、およびこれらの組み合わせを用いることができる。本実施形態に適用できる界面活性剤の具体例としては、炭素数2〜20程度のフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド等を挙げることができる。
【0059】
なお、これらのゾルは、粒子の形態や大きさ、結晶性等の種類によってゾルの安定化条件が異なるので、粒子の表面電荷をカチオンに帯電させることで粒子を均一な分散状態に保持したり、pH調節によって粒子の分散性を向上させる等の安定化手段を併用することが好ましい。また、Cl−、CH3COO−、NO3−等のアニオン性イオンを添加して安定化させる手段も適用できる。
【0060】
上記無機物微粒子に混合するバインダーとしては、主にポリビニルアルコールが好適に用いられるが、その他、カチオン変成、アニオン変成、シラノール変成等の各種変成ポリビニルアルコール、デンプン誘導体およびその変成体、セルロース誘導体、スチレン−マレイン酸共重合体等を、適宜単独あるいは混合して使用することができる。
【0061】
上述したような受容層用インク32aを液滴吐出法により撥液層31上に塗布したならば、インク中の液体成分を蒸発させてバインダーを固化する乾燥処理を行う。このような乾燥処理としては、シリカ粒子やアルミナ粒子等の無機物微粒子が焼結されない程度の温度、例えば50〜130℃程度の温度で加熱処理を施す方法や、減圧処理による方法、さらにはこれらの加熱処理と減圧処理とを併用する方法などが採用できる。このようにして乾燥処理を施すことで、受容層パターン32を構成する無機物微粒子(シリカ粒子やアルミナ粒子等)は、その粒子間ないし粒子内に微小空隙を有する多孔質層を形成する。
【0062】
上記乾燥工程にて用いる加熱手段には、通常のホットプレート、電気炉などの他、加熱ランプも用いることができる。ランプアニールに用いる光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0063】
また前記のようにして形成される微小空隙型の受容層は、さらに材質や構造の異なる複数の層とすることもできる。一例を挙げると、シリカ粒子とバインダーとの混合物を前記のように塗布、乾燥処理してシリカ粒子からなる第1の受容層を形成した後、さらにその上にアルミナ粒子とバインダーとの混合物を塗布、乾燥処理してアルミナ粒子からなる第2の受容層を積層することもできる。
【0064】
以上に説明した微小空隙型の受容層パターン32の代わりに、主に親水性ポリマーを用いる膨潤型の受容層パターン32を形成してもよい。膨潤型の受容層には、熱硬化あるいは光硬化性のポリマーであって、アミン等の親水基や、カチオン性基、アニオン性基等の極性基を有するセルロース系、メタクリル系、ビニル系のモノマーからなるポリマーを主体とするものや、ポリシロキサン系、ポリシラン系の無機骨格を有するポリマーを主体とするものを用いることができ、これらのポリマーが膨潤してインクを吸収する作用を奏する。
例えば、親水ポリマーであるポリビニルアルコールを用いた場合、簡単には水にポリビニルアルコールを溶解させて基板上に塗布後、乾燥させることで形成可能である。このときの溶液の濃度は特に限定されることは無いが、5wt%から20wt%程度が望ましい。また、このときの乾燥温度も特に限定されることは無いが、80℃から150℃程度が好ましい。
【0065】
また、通常のインクジェット印刷で用いられる受容層の膜厚は10μm〜100μm程度であるが、本発明の如く導電層パターンを形成することを目的として設けられる受容層パターン32は、より膜厚の小さいものが好ましい。この場合には、例えば、無機物微粒子とバインダーとの混合物を塗布するにあたり、溶剤で希釈してから塗布を行うことで膜厚1μm以下の受容層パターン32を形成することができる。
【0066】
本実施形態の場合、基板Pの表面に撥液層31を形成し、その撥液層31上に直接に受容層用インク32aを配して受容層パターン32を形成するようになっているため、微細な受容層パターン32を基板P上に形成できるようになっている。先に記載した受容層用インク32aのバインダーと撥液層31との親和性は、後述する導電層用インクと撥液層31との親和性より比較的高く、そのため撥液層31上に直接所定のパターンを形成可能である。しかし、受容層用インク32aを溶媒で希釈する場合や、上述した種類以外のバインダーを用いる場合には、撥液層31との親和性が極端に低くなることも考えられるので、そのような場合には、撥液層31を構成する自己組織化膜や撥液性高分子の表面特性を調整するとよい。
【0067】
さらに、前記のようにして形成した受容層パターン32の表面を、その上に配置する液状体(導電層用インク)に対して撥液性となるような表面処理を行なうこともできる。撥液性の表面処理を行なうには、先の撥液化工程と同様の工程により単分子膜や撥液性高分子化合物からなる撥液層を形成すればよい。このような撥液性の表面処理を行なうことにより、導電層用インクの液部分が受容層パターン32に吸収される前に横方向に広がってしまうのを防止することができる。
【0068】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0069】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料(受容層用インク32a等)の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。
【0070】
(導電層形成工程)
基板P上に受容層パターン32を形成したならば、図3(d)に示すように、受容層パターン32に対して導電層用インク33aを重ねて配置することで、受容層パターン32と平面視略同一形状の導電層パターン33を形成する(図3(e)参照。)。
【0071】
導電層パターン33の形成に用いる導電層用インク33aは導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、ITO、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に、キシレンやトルエン等の有機溶剤やクエン酸等をコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーテイング材の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。コーティング材で導電性微粒子を被覆したものを用いる場合、液状体の形態では導電性を示さず、乾燥または焼結した際に導電性を呈するようなインクとすることもできる。
【0072】
また、有機金属化合物としては、例えば金、銀、銅、パラジウムなどを含有する化合物や錯体で、熱分解により金属を析出するものが挙げられる。具体的には、クロロトリエチルホスフィン金(I)、クロロトリメチルホスフィン金(I)、クロロトリフェニルフォスフィン金(I)、銀(I)2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀(I)錯体、銅(I)ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などが挙げられる。
【0073】
導電性微粒子及び有機金属化合物のうちの少なくとも一方を含有する液体の分散媒または溶媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上200mmHg以下(約0.133Pa以上26600Pa以下)であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高いと、吐出後に分散媒または溶媒が急激に蒸発してしまい、良好な膜を形成することが困難となるからである。
【0074】
また、分散媒または溶媒の蒸気圧は0.001mmHg以上50mmHg以下(約0.133Pa以上6650Pa以下)であるのがより好ましい。蒸気圧が50mmHgより高いと、液滴吐出法で液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こり易く、安定な吐出が困難になるからである。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒または溶媒の場合には、乾燥が遅くなって膜中に分散媒または溶媒が残留しやすくなり、後工程の熱及び/又は光処理後に良質の導電膜が得られにくくなる。
【0075】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0076】
前記導電性微粒子を分散媒に分散する場合の分散質濃度としては、1質量%以上80質量%以下とするのが好ましく、所望の導電膜の膜厚に応じて調整することができる。80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な膜が得にくくなる。また、同様の理由で、前記有機金属化合物の溶液の溶質濃度としても、前記の分散質濃度と同範囲のものが好ましい。
【0077】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0078】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0079】
このような導電層用インク33aとしては、具体的には、直径10nm程度の銀微粒子が有機溶剤に分散した銀微粒子分散液(真空冶金社製、商品名「パーフェクトシルバー」)の分散媒をテトラデカンで置換してこれを希釈し、濃度が60wt%、粘度が8mPa・s、表面張力が0.022N/mとなるように調整したものを例示することができる。
【0080】
上記構成の導電層用インク33aを、液滴吐出ヘッド1から基板P上に既設の受容層パターン32に対して吐出し配置すると、塗布されたインク33aの液分、すなわち分散媒等が受容層パターン32に形成された微小空隙内に染み込み、インク33a中の導電性微粒子(例えば銀微粒子)が、受容層パターン32上に微粒子の集合体となって残る。また、有機金属化合物を含有したインクの場合でも、受容層パターン32に吸収されずに受容層上に残る有機金属化合物が生じる。このとき、導電層用インク33aは受容層パターン32に沿って配置されているので、上記微粒子の集合体も受容層パターン32とほぼ同一の平面形状を有するものとなる。
なお、導電層用インク33aが導電性微粒子を含むものである場合、特に粒径の小さい導電性微粒子は分散媒等の液分とともに受容層パターン32の微小空隙内に入り込むようになっている。
【0081】
このようにして導電層用インク33aを受容層パターン32上に配置したならば、例えば80℃、30秒間の加熱条件で導電層用インク33aの乾燥処理を行う。この乾燥工程での加熱温度は、インク33a中の導電性微粒子あるいは有機金属化合物が互いに結合しない程度の温度、すなわち焼結温度以下の温度とする。このような加熱処理を行うと、導電層用インク33a中の液分は、受容層パターン32に染み込んだ分も含めて蒸発し、受容層パターン32上に残った導電性微粒子または有機金属化合物の集合体は、液分がほぼ除去されたものとなる。またこのとき、導電性微粒子は互いに結合していないので、導電性微粒子の集合体中にも微小空隙が形成されている状態となっている。したがって、このように微小空隙を有する集合体上にさらに導電層用インク33aを重ねて吐出配置すれば、先に形成された受容層パターン32と同様の作用を奏し、重ねて配されたインク33aの液分を速やかに吸い込み、さらにこれを受容層パターン32に染み込ませることができるようになっている。
【0082】
なお、このようにインク33aを重ねて塗布した場合には、必要に応じて再度乾燥処理を行っておく。また上記乾燥工程にて用いる加熱手段には、通常のホットプレート、電気炉などの他、加熱ランプも用いることができる。ランプアニールに用いる光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0083】
そして、上記乾燥工程が終了したならば、導電層パターン33を加熱して受容層パターン32上の導電性粒子の集合体を焼結する。金属有機化合物を含む導電層用インク33aを用いた場合には、この加熱処理により金属有機化合物が分解されて金属薄膜の導電層パターンを形成する。導電性微粒子と有機金属化合物の双方を含む導電層用インク33aを用いた場合には、導電性微粒子と有機金属化合物の分解により生成した金属との混合物により導電層パターンが形成される。
【0084】
上記乾燥工程および焼結工程では、基板Pは熱処理または光照射処理に供されることとなるが、係る熱処理ないし光照射処理の条件は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
例えば、導電性微粒子がコーティング材により被覆されている場合、上記焼結工程までにコーティング材を除去する必要があるので、焼結工程において約300℃程度まで加熱する。
【0085】
以上の工程により、受容層パターン32と導電層パターン33との積層膜からなる導電層パターン(薄膜パターン)35を基板P上に形成することができる。このような本実施形態の薄膜パターンの形成方法によれば、撥液層31を介した基板P上に、液滴吐出法を用いて受容層パターン32を形成するので、微細で複雑な平面形状を具備した受容層パターン32を基板P上に直接形成でき、高効率に高コントラストの撥液/親液領域を基板P上に形成することができる。そして、薄膜パターン35のうち主要部を成す導電層パターン33は、受容層パターン32を介して形成されるので、微細な形状でありながら短絡等の不具合が生じない信頼性に優れたものとなる。したがって本実施形態の形成方法によれば、微細でかつ信頼性に優れた薄膜パターンを効率よく基板上に形成することができる。また受容層パターン32および導電層パターン33はいずれも液滴吐出法を用いて形成されるので、基板上に形成した金属薄膜をフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする場合に比して材料の使用効率を向上させることができ、薄膜パターンの作製コスト低減に寄与するものとなる。
【0086】
以上の実施の形態では、基板P上に撥液層31を介して直接受容層パターン32を形成する場合について説明したが、本発明に係る薄膜パターンの形成方法は、この実施形態に限定されるものではなく、例えばバンクを基板P上に設け、係るバンクに囲まれる領域内に受容層パターン32および導電層パターン33を形成する方法とすることもできる。この場合、基板P上にバンクを立設する工程が必要となるが、液滴吐出ヘッド1から吐出される液滴径よりも細いパターンを形成することができるという利点がある。
【0087】
また、本実施形態では、基板P上に導電層パターン33を主体とする薄膜パターン35を形成する場合について説明したが、薄膜パターン35としては、導電層パターン33に代えて絶縁層パターンが形成されたものや半導体層パターンが形成されものであってもよい。絶縁層パターンを形成する場合には、受容層パターン32に対して吐出配置されるインクを構成する機能性材料として、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などを用いる。
【0088】
一方、半導体層パターンを形成する場合には、液体水素化シリコンをインクとして用いることで、アモルファスシリコンの半導体層パターンを形成できる。あるいは、半導体層パターンはフルオレンとビチオフェンとのコポリマーを用いて形成することもできる。これは共役性高分子であり、半導体の特性を示す。そして、トルエン、又はキシレン、トリメチルベンゼンなどの有機溶媒を用いて溶解することができる。また、半導体層パターンの材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、フタロシアニン、ペリレン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スチルベン、アリールビニル、ピラゾリン、トリフェニルアミン、トリアリールアミン、オリゴチオフェン、フタロシアニンまたはこれらの誘導体のような低分子の有機半導体材料や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ポリアリールアミン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂、フルオレン−ビチオフェン共重合体、フルオレン−アリールアミン共重合体またはこれらの誘導体のような高分子の有機半導体材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、高分子の有機半導体材料を用いるのが好ましい。高分子の有機半導体材料は、簡易な方法で成膜することができるとともに、比較的容易に配向させることができる。また、このうち、空気中で酸化され難く、安定であること等の理由から、フルオレン−ビチオフェン共重合体、或いは、ポリアリールアミンが特に好ましい。
【0089】
<デバイス>
(電気光学装置)
次に、本発明のデバイスの一例である液晶表示装置(電気光学装置)について説明する。
図4は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図5は図4のH−H’線に沿う断面図である。図6は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0090】
図4及び図5において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されており、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0091】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0092】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0093】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図6に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0094】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図5に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0095】
図7(a)は、ボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板P上には、上記実施形態の薄膜パターン形成方法によりゲート配線61が形成されている。
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
【0096】
さらに、接合層64a、64b及びITOからなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…を突設し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0097】
なお、図7(b)に示すように、ゲート絶縁膜62に凹部を設けて、この凹部内にゲート絶縁膜62の表面と略面一に半導体層63を形成し、その上に接合層64a、64b、画素電極19、エッチストップ膜65を形成することもできる。この場合、バンク66間の溝底部を図7(a)に比較して略フラットにすることで、これら各層及びソース線、ドレイン線の屈曲部が減り、平坦性が向上した高特性のTFTとすることができる。
上記構成のTFTでは、上述した液滴吐出装置IJを用いて、例えば銀化合物の液滴を吐出することでゲート線、ソース線、ドレイン線等を形成することができるため、細線化による小型・薄型化が実現され、短絡等の不良が生じない高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0098】
上記実施形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0099】
(有機EL装置)
図8は、前記液滴吐出装置IJを用いて一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。以下、有機EL装置の概略構成を説明する。図8において、有機EL装置401は、基板411、回路素子部421、画素電極431、バンク部441、発光素子451、陰極461(対向電極)、および封止基板471から構成された有機EL素子402に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部421は、アクティブ素子であるTFT60が基板411上に形成され、複数の画素電極431が回路素子部421上に整列して構成されたものである。そして、TFT30を構成するゲート配線61が、上述した実施形態の薄膜パターンの形成方法により形成されている。
【0100】
各画素電極431間にはバンク部441が格子状に形成されており、バンク部441により生じた凹部開口444に、発光素子451が形成されている。なお、発光素子451は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置401は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極461は、バンク部441および発光素子451の上部全面に形成され、陰極461の上には封止用基板471が積層されている。
【0101】
有機EL素子を含む有機EL装置401の製造プロセスは、バンク部441を形成するバンク部形成工程と、発光素子451を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子451を形成する発光素子形成工程と、陰極461を形成する対向電極形成工程と、封止用基板471を陰極461上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0102】
発光素子形成工程は、凹部開口444、すなわち画素電極431上に正孔注入層452および発光層453を形成することにより発光素子451を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層452を形成するための液状体材料を各画素電極431上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層452を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層453を形成するための液状体材料を正孔注入層452の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層453を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層453は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
【0103】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0104】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0105】
(プラズマ型表示装置)
次に、本発明の膜パターンの形成方法によって形成される膜パターンを、プラズマ型表示装置に適用した例について説明する。図9は、本実施形態のプラズマ型表示装置500の分解斜視図を示している。プラズマ型表示装置500は、互いに対向して配置された基板501、502、及びこれらの間に形成される放電表示部510を含んで構成される。放電表示部510は、複数の放電室516が集合されたものである。複数の放電室516のうち、赤色放電室516(R)、緑色放電室516(G)、青色放電室516(B)の3つの放電室516が対になって1画素を構成するように配置されている。
【0106】
基板501の上面には所定の間隔でストライプ状にアドレス電極511が形成され、アドレス電極511と基板501の上面とを覆うように誘電体層519が形成されている。誘電体層519上には、アドレス電極511、511間に位置しかつ各アドレス電極511に沿うように隔壁515が形成されている。隔壁515は、アドレス電極511の幅方向左右両側に隣接する隔壁と、アドレス電極511と直交する方向に延設された隔壁とを含む。また、隔壁515によって仕切られた長方形状の領域に対応して放電室516が形成されている。
また、隔壁515によって区画される長方形状の領域の内側には蛍光体517が配置されている。蛍光体517は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するもので、赤色放電室516(R)の底部には赤色蛍光体517(R)が、緑色放電室516(G)の底部には緑色蛍光体517(G)が、青色放電室516(B)の底部には青色蛍光体517(B)が各々配置されている。
【0107】
一方、基板502には、先のアドレス電極511と直交する方向に複数の表示電極512がストライプ状に所定の間隔で形成されている。さらに、これらを覆うように誘電体層513、及びMgOなどからなる保護膜514が形成されている。基板501と基板502とは、前記アドレス電極511…と表示電極512…を互いに直交させるように対向させて相互に貼り合わされている。上記アドレス電極511と表示電極512は図示略の交流電源に接続されている。各電極に通電することにより、放電表示部510において蛍光体517が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0108】
本実施形態では、上記アドレス電極511、及び表示電極512がそれぞれ、上述した配線パターン形成方法に基づいて形成されているため、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質のプラズマ型表示装置を得ることができる。
【0109】
(回路基板)
図10は、回路基板を具備した液晶表示装置の実施形態を示す図である。図10に示す液晶表示装置(電気光学装置)901は、カラーの液晶パネル(電気光学パネル)902と、液晶パネル902に接続される回路基板903とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル902に付設されるようになっている。
【0110】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板905a及び基板905bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板905a及び基板905bの外側表面には偏光板906a及び偏光板906bが貼り付けられている。なお、図15においては、偏光板906bの図示を省略している。
【0111】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面には電極907bが形成されている。これらの電極907a、907bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極907a、907bは、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板905aは、基板905bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子908が形成されている。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成するときに電極907aと同時に形成される。従って、これらの端子908は、例えばITOによって形成されている。これらの端子908には、電極907aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極907bに接続されるものが含まれる。
【0112】
回路基板903には、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子900が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子900が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板909は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板911の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン912を形成することによって製造されている。
【0113】
本実施形態では、液晶パネル902における電極907a、907b及び回路基板903における配線パターン912が上述の薄膜パターンの形成方法によって形成されている。本実施形態の液晶表示装置によれば、電気特性の不均一が解消された高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0114】
なお、前述した例はパッシブ型の液晶パネルであるが、アクティブマトリクス型の液晶パネルとしてもよい。すなわち、一方の基板に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTに対し画素電極を形成する。また、各TFTに電気的に接続する配線(ゲート配線、ソース配線)を上記のようにインクジェット技術を用いて形成することができる。一方、対向する基板には対向電極等が形成されている。このようなアクティブマトリクス型の液晶パネルにも本発明を適用することができる。
【0115】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図11(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。図11(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。図11(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図11(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであるので、高い品質や性能が得られる。なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0116】
次に、本発明の膜パターンの形成方法によって形成される膜パターンを、アンテナ回路に適用した例について説明する。図12は、本実施形態例に係る非接触型カード媒体を示しており、非接触型カード媒体1400は、カード基体1402とカードカバー1418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ1408とアンテナ回路1412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。本実施形態では、上記アンテナ回路1412が、本発明の膜パターン形成方法に基づいて形成されている。そのため、上記アンテナ回路1412の微細化や細線化が図られ、高い品質や性能を得ることができる。
【0117】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】実施形態に係る薄膜パターンの形成工程を示す図。
【図2】液滴吐出装置の斜視構成図。
【図3】吐出ヘッドの動作説明図。
【図4】液晶表示装置の平面構成図。
【図5】同、断面構成図。
【図6】同、回路構成図。
【図7】薄膜トランジスタの断面構成図。
【図8】有機EL装置の断面構成図。
【図9】プラズマ型表示装置の斜視構成図。
【図10】液晶表示装置の斜視構成図。
【図11】電子機器の具体例を示す斜視構成図。
【図12】非接触型カード媒体の分解斜視構成図。
【符号の説明】
【0119】
P…基板(基体)、35…薄膜パターン、32…受容層パターン、33…導電層パターン(機能層パターン)、32a…受容層用インク(第1の機能液)、33a…導電層用インク(第2の機能液)、30…TFT(スイッチング素子)、100…液晶表示装置(電気光学装置)、1400…非接触型カード媒体(電子機器)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜パターンの形成方法、デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路などの微細な配線パターンの製造方法としては、フォトリソグラフィ法が多用されている。一方、特許文献1、特許文献2などには、液滴吐出方式を用いた方法が開示されている。これら公報に開示されている技術は、パターン形成用材料を含んだ機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出することにより、パターン形成面に材料を配置(塗布)して配線パターンを形成するものである。この方法によれば、フォトリソグラフィ工程が不要となり、プロセスが大幅に簡略化されるとともに、原材料の使用量も少なくてすむというメリットがある。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、例えば配線パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。しかしながら、このような微細な配線パターンを前記の液滴吐出方式による方法によって形成しようとした場合、吐出した液滴が着弾後に基板上で濡れ広がるために微細な配線パターンを正確かつ安定に形成するのが困難であった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、微細な薄膜パターンを精度良く安定して形成できる薄膜パターンの形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、基体上に機能性材料の薄膜パターンを形成する方法であって、基体上に受容層材料を含む第1の機能液を配して受容層パターンを形成する受容層形成工程と、前記受容層パターンに対し機能性材料を含む第2の機能液を配して機能層パターンを形成する機能層形成工程とを有することを特徴とする薄膜パターンの形成方法を提供する。
【0006】
本発明において受容層パターンは、液分を浸潤可能に形成された機能層であり、その内部に微小な空隙を有する多孔質層、あるいは液分を膨潤可能な有機物層などにより形成されるものである。
本発明に係る形成方法は基板上に受容層をパターン形成した後、係る受容層パターンに対して第2の機能液を配することで所望の機能層パターンを形成し、所定平面形状の薄膜パターンを形成するものである。このように基板上に形成した受容層パターンに対して第2の機能液を配して機能層パターンを形成することで、細い線幅の微細形状の機能層パターンであっても断線や短絡等を生じることなく正確に形成することが可能になる。
また、本発明によれば機能液の液分を浸潤可能な受容層パターンを簡便な液相法により形成することから、パターニングのためのマスクが不要であり、工程の簡素化、効率化によって薄膜パターンの形成に係るコストを低減できる。さらに、受容層パターンは第2の機能液の液分を吸収するという極めて良好な親液性を呈するので、この受容層パターンに対して供給された第2の機能液は良好に受容層パターンに保持され、したがって基板上の他の領域(受容層パターンの非形成領域)に前記第2の機能液が残留することがなくなり、機能層のパターニング不良に起因する不良が発生するのを効果的に防止できる。
【0007】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記受容層形成工程に先立って、前記基体表面に撥液処理を施す撥液化工程を有することが好ましい。この形成方法によれば、基板上に形成した受容層パターンと、他の基板上の領域に形成された撥液領域とで高い親液/撥液のコントラストが得られ、受容層パターンに対して第2の機能液をより正確に配することが可能になる。
【0008】
本発明の薄膜パターンの形成方法は、前記受容層材料が、無機物微粒子とバインダーとを含むものであることが好ましい。この形成方法によれば、バインダーを介して凝集された無機物微粒子からなる受容層を基板上に形成でき、微小空隙を備えた受容層パターンを液相法を用いて容易に形成することができる。
【0009】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機物微粒子が、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムから選択される少なくとも1種の元素あるいはその酸化物を含むものであることが好ましい。これらの無機物微粒子を用いることで、導電性ないし絶縁性の受容層パターンを容易に形成することができる。
【0010】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機物微粒子の粒径が1μm以下であることが好ましい。粒径が1μmを超える場合、液相法を用いて受容層パターンを形成する場合の塗布性が低下する。特にノズルから液滴状の機能液を吐出する液滴吐出法により受容層パターンを形成する場合にはノズルの目詰まり等を生じやすくなる。
【0011】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機物微粒子が、粒子内部に空隙を有する中空構造の粒子であることが好ましい。このように中空構造の粒子を用いることで、無機物微粒子自体が第2の機能液の液分を吸収するものとなるので、第2の機能液を受容層パターン上に配した際に前記液分の吸収が良好なものとなり、受容層パターンによる第2の機能液の保持性が向上し、機能層パターンにおける短絡等の発生を効果的に防止することができる。
【0012】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記第1の機能液が前記受容層材料のゾルを含むものであり、前記受容層形成工程において、前記第1の機能液を前記基体上に配し、ゾル−ゲル法により前記受容層パターンを形成することもできる。このように受容層材料のゾルを用いることで、液相法における基板上への塗布に際して良好な塗布性を得ることができるとともに、緻密で均一な組織を有する受容層パターンを得ることができる。
【0013】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記受容層材料のゾルが、無機アルコキシド、無機ハロゲン化物、有機/無機複合アルコキシド、および有機/無機ハロゲン化物から選択される少なくとも1種の無機酸化物前駆体と、界面活性剤とを含む溶液であることが好ましい。これらのアルコキシド、ハロゲン化物を用いることで、分子レベルで構造制御された多孔性の無機酸化物膜を得ることができるため、良好かつ均一な吸収性を具備した受容層パターンを形成することができる。
【0014】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記無機酸化物前駆体が、インジウム、錫、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、アンチモン、タングステン、およびチタンから選択される少なくとも1種の無機元素を含んでいることが好ましい。本発明に係る薄膜パターンの形成方法では、これらの無機元素の酸化物からなる多孔質膜を受容層に用いることができる。
【0015】
本発明の薄膜パターンの形成方法は、前記機能層形成工程により前記受容層上に形成する機能層パターンが、導電層、絶縁層、又は半導体層であることを特徴とする。本発明に係る薄膜パターンの形成方法によれば、所望の平面形状を具備した導電層パターン、絶縁層パターン、および半導体層パターンを低コストに形成でき、種々のデバイスプロセスにおいて低コスト化に寄与する。
【0016】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記機能層形成工程において、導電性微粒子を含む前記第2の機能液を用いて前記受容層パターン上に導電層を形成することができる。この形成方法によれば、導電性微粒子を焼結してなる導電層パターンを基板上に容易に形成できる。したがって本発明によれば、微細でありながら短絡等が生じない高信頼性の配線パターンを得ることができる。
【0017】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記機能層形成工程において、熱処理又は光照射処理により導電性を発現する材料を含む前記前記第2の機能液を用いて、前記受容層パターン上に導電層を形成することもできる。この形成方法では、典型的には、コーティング材で被覆された導電性微粒子を含む第2の機能液により機能層パターンを形成する。導電性微粒子をコーティング材で被覆することで、機能液中での導電性微粒子の凝集を防止でき、高品質の導電層パターンを形成できるようになる。
【0018】
先の撥液化工程では、以下に挙げる複数種の撥液化方法を適用できる。これらの撥液化方法は、基体の材質や機能液の特性に合わせて最適な方法を選択することができる。
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液化工程が、前記基体上に撥液性の単分子膜を形成する工程であることが好ましい。本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液性の単分子膜が、フッ素を含有する有機分子からなる単分子膜であることが好ましい。
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液化工程が、フルオロカーボン系化合物を反応ガスに用いて前記基体の表面をプラズマ処理する工程であることが好ましい。
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記撥液化工程が、前記基体上に、フッ素を含有する高分子化合物を塗布してなる撥液膜を形成する工程であることが好ましい。
【0019】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記機能液を、液滴吐出法を用いて前記基体上に配することが好ましい。液滴吐出法を用いるならば、基板上に直接的に受容層パターンをパターン形成することができ、機能液の材料使用効率も向上する。また受容層パターンに対して第2の機能液を配する際にも、無駄なく均一に機能液を配置することができる。
【0020】
次に、本発明のデバイスの製造方法は、基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、先に記載の本発明の薄膜パターンの形成方法により、前記基体上に薄膜パターンを形成することを特徴としている。この製造方法によれば、微細な薄膜パターンを具備したデバイスを安価に製造することができる。
【0021】
次に本発明のデバイスは、基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスであって、先に記載の形成方法により得られた薄膜パターンを備えたことを特徴とする。係るデバイスは、その薄膜パターンにおける断線や短絡等が防止されたものとなるので、信頼性に優れたデバイスとなる。
【0022】
次に、本発明の電気光学装置は、先に記載の本発明のデバイスを備えたことを特徴とする。また本発明の電子機器は、先に記載の本発明のデバイスを備えたことを特徴とする。
これらの構成によれば、微細かつ高品質の薄膜パターンを具備しており、係る薄膜パターンを用いた配線等により電気的信頼性に優れた電気光学装置ないし電子機器が提供される。
【0023】
次に、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程では、先に記載の本発明の薄膜パターン形成方法を用いることを特徴とする。
この製造方法によれば、ゲート配線、ソース電極およびドレイン電極、画素電極等に、短絡等が生じない高品質の細線の薄膜パターンが形成されたアクティブマトリクス基板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<薄膜パターンの形成方法>
以下、本発明の薄膜パターンの形成方法及びデバイスの製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、液滴吐出法により液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから、受容層材料を含む受容層用インク(第1の機能液)を液滴状に吐出し、基板上に受容層をパターン形成する工程と、この受容層上に導電性微粒子(機能性材料)を含む導電層用インク(第2の機能液)を液滴状に吐出して受容層上に導電層を形成する工程とにより薄膜パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0025】
まず、本発明に係る薄膜パターンの形成およびデバイスの製造に適用できるデバイス製造装置について説明する。このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0026】
図1は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。図1において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
【0027】
ステージ7はこの液滴吐出装置IJによりインクを配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
液滴吐出ヘッド1は複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0028】
X軸方向駆動軸4にはX軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0029】
制御装置CONTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、制御装置CONTは、X軸方向駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、Y軸方向駆動モータ3に対してステージ7のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0030】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しないY軸方向駆動モータを備えている。このY軸方向駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はY軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布されたインクに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0031】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に移動させつつ、基板P上を走査し、基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、Y軸方向を走査方向、Y軸方向と直交するX軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるX軸方向に一定間隔で並んで設けられている。
なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することでノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節可能としてもよい。
【0032】
図2はピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。図2において、液体材料(配線パターン形成用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることによりピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることによりピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0033】
次に、本発明の薄膜パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図3を参照して詳しく説明する。
本実施形態に係る薄膜パターン形成方法は、上述したように、受容層用インクを基板上に配置して受容層パターンを形成した後、導電層用インクを受容層パターン上に重ねて配置し、導電層パターン(機能層パターン)を形成するものであり、撥液化工程と、受容層形成工程と、導電層形成工程(機能層形成工程)とを主体として構成される。
以下、各工程ごとに詳細に説明する。
【0034】
(撥液化工程)
まず、図3(a)に示すように、基板Pを用意する。この基板Pとしては、ガラス、石英、シリコン等の半導体ウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0035】
基板Pを用意したならば、次に、図3(b)に示すように、基板Pの表面を撥液処理して撥液層31を形成する。この撥液処理としては、例えば基板表面に自己組織化膜を形成する方法やプラズマ処理を施す方法、あるいは撥液性を具備した高分子化合物を基板P表面に塗布する方法を用いることができる。いずれの撥液化処理によっても、基板Pの表面に高い撥液性を付与することができる。
【0036】
自己組織化膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0037】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0038】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えば下記一般式(1)に示すようなシラン化合物を用いることができる。式(1)中、R1は有機基を表し、X1及びX2は−OR2、−R2、−Clを示し、X1及びX2に含まれるR2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、aは1〜3の整数である。
【0039】
(1) R1SiX1aX2(3−a)
【0040】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、シラン原子に有機基が置換し、残りの結合手にアルコキシ基またはアルキル基または塩素基が置換したものである。有機基R1の例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等を例示できる。
X1のアルコキシ基や塩素基、Si−O−Si結合等を形成するための官能基であり、水により加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
R2の炭素数は脱離するアルコールの分子量が比較的小さく、除去が容易であり形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1〜4の範囲であることが好ましい。
【0041】
一般式(1)で表される代表的なシラン化合物としては、撥液性を示す含フッ素アルキルシラン化合物が挙げられる。特にR1がパ−フルオロアルキル構造(CnF2n+1)で表される構造を有するものであり、一般式(2)で表される化合物を例示することができる。式(2)中、nは1から18の整数を、mは2から6までの整数をそれぞれ表し、X1およびX2およびaは、前記式(1)と同じ意味を表す。
含フッ素アルキルシラン化合物を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向して自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性を付与することができる。
【0042】
(2) CnF2n+1(CH2)mSiX1aX2(3−a)
【0043】
より具体的には、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
【0044】
また、R1がパ−フルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O(CpF2pO)rで表される構造を有するものも挙げることができる。その具体例としては例えば、下記一般式(3)で表される化合物を例示することができる。
【0045】
(3) CpF2p+1O(CpF2pO)r(CH2)mSiX1aX2(3−a)
【0046】
(式中、mは2から6の整数を,pは1から4の整数を、rは1から10の整数をそれぞれ表し、X1およびX2およびaは、前出と同じ意味を表す。)具体的な化合物の例としては、CF3O(CF2O)6−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)2(CF2O)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)8−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(C2H5)(OCH3)2等が挙げられる。
【0047】
また、一般式(1)で表される他のシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフロオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブ
チルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0048】
自己組織化膜を形成する化合物として上記に例示した化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。含フッ素アルキルシラン化合物を組み合わせることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0049】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を80〜140℃に保持することにより、1〜3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を30分〜6時間浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。また、原料化合物を含む溶液を40〜80℃に加熱することにより、5分〜2時間の浸漬で自己組織化膜を形成することができる。なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面には、紫外光を照射したり、あるいはプラズマ処理、酸やアルカリ液により洗浄することで前処理を施しておくことが望ましい。
【0050】
また、プラズマ処理法による撥液処理は、基板Pが樹脂基板などの有機材料からなるものである場合や、基板P上に既設の有機膜を具備している場合等に有効な方法である。具体的には、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタン(CF4)を処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用することができる。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、テトラフルオロメタン(CF4)ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃である。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(CF4)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。
【0051】
また撥液性の高分子化合物を基板P表面に塗布する方法による場合、例えば含フッ素ポリイミド樹脂等をスピンコート法等を用いて基板P上に塗布することで撥液層31を形成することができる。撥液性高分子化合物としては、上記ポリイミド樹脂に限られず、分子内にフッ素原子を含有するモノマー、オリゴマー又はポリマーを用いることができ、具体例を挙げるならば、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、6フッ化プロピレン−4フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ペンタデカフルオロヘプチルエチルメタクリレート)(PPFMA)、ポリ(パーフルオロオクチルエチルアクリレート)等の長鎖パーフルオロアルキル構造を有するエチレン、アクリレート、メタクリレート、ビニル、ウレタン、シリコーン系ポリマーである。
【0052】
(受容層形成工程)
上記撥液化工程を終了したならば、図3(c)に示すように、撥液層31上に受容層材料を含む受容層用インク32aを配置する。本実施形態の場合、先の図2に示した液滴吐出ヘッド1から上記受容層用インク32aを吐出することで撥液層31上に所定の受容層パターン32を形成する(図3(d)参照。)。
本工程で形成される受容層パターン32としては、微小空隙型の受容層パターン、あるいは膨潤型の受容層パターンを形成し用いることができる。
【0053】
まず、微小空隙型の受容層パターン32を形成する場合について説明する。
微小空隙型の受容層パターン32は、無機物微粒子とバインダーとの混合物をインク32aに用いて形成することができる。無機物微粒子としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムから選択される1種以上の無機物の微粒子、あるいはその酸化物の微粒子を用いることができる。
【0054】
受容層用インク32aの好ましい例を挙げると、多孔性シリカ粒子、アルミナ、アルミナ水和物のうちの少なくとも一つと、バインダーとの混合物であり、特にアルミナ、アルミナ水和物のうちの少なくとも一つと、多孔性シリカ粒子と、バインダーとの混合物を用いるのが望ましい。
無機物微粒子としては、平均粒子径が1μm以下のものを用いることが好ましい。液滴吐出ヘッド1からの良好な吐出性を確保するためである。
【0055】
多孔性シリカ粒子を用いる場合には、平均細孔直径8〜50nm、細孔容積0.8〜2.5cc/g程度のものが好ましい。多孔性シリカ粒子は、20重量%以下のボリア、マグネシア、ジルコニア、チタニア等を含有するものであってもよい。
アルミナまたはアルミナ水和物としては、半径3〜10nmを有する細孔容積の和が0.2〜1.5cc/gを有する多孔質のアルミニウム酸化物やその含水物が挙げられる。細孔物性の測定手段としては、アルミナまたはアルミナ水和物の乾燥固形分が有する細孔の分布を、窒素吸着法(定流量法)により、例えばオミクロンテクノロジー社製オムニソープ100を使用して測定することができる。そして、半径3〜10nmを有する細孔容積の和が、0.2〜1.5cc/gである場合はさらに好ましい。
【0056】
また、これらアルミナまたはアルミナ水和物は、結晶質または非晶質のいずれでもよく、その形態としては不定形粒子、球状粒子等適宜な形態を用いることができる。アルミナゾルを用い、これを乾燥することによって得られるゲル状物は特に好適である。このようなものの具体例として、凝ベーマイトが挙げられる。これは、本発明に用いられる物質として最適である。特に、ゾルを乾燥して得られる擬ベーマイトゾルが好ましい。
【0057】
また、本実施形態に係る受容層用インク32aには、アルミナゾルに限らず、先に挙げた無機物質を含む種々のゾルを用いることができる。すなわち、受容層材料として先に挙げた無機物物質を主体とする無機酸化物前駆体(無機アルコキシド、無機ハロゲン化物、有機/無機複合アルコキシド、有機/無機複合ハロゲン化物)と界面活性剤とを含む受容層インクを用いることができる。
上記無機酸化物前駆体としては、例えば、Ti(iso−OC3H7)4、Al(iso−OC3H7)3、Zr(OCH3)4、Si(OCH3)4、Si(OC4H9)4、Si(OC2H5)4等の加水分解性を示す金属アルコキシドや、これらと同様の加水分解性を示す金属ハロゲン化物、金属アセチルアセトナート錯体、金属カルボン酸塩等を挙げることができる。これらの他にも、インジウム、錫、亜鉛、バナジウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、アンチモン、タングステン等を含む酸化物前駆体を用いることができる。
【0058】
上記無機酸化物前駆体とともに用いられる界面活性剤は、前記前駆体から無機酸化物を得る際に分子レベルの鋳型として機能し、形成される受容層に微細な孔を形成する機能を奏する。この界面活性剤は、同一分子内に極性基と疏水基の良好を有するいわゆる両親媒性化合物を主体としてなるものであり、係る分子構造を構成する極性基としては、スルホン酸基、硫酸基、アンモニウム基、ポリアミン基、カルボン酸基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスホニウム塩、糖残基類糖を含めたポリオール類およびこれらの組み合わせを用いることができる。他方、疏水基(溶媒に対する親和性が低い基)としては、フルオロカーボンを含むアルキル基、アルキルアリル基、脂環基、縮合多環基、およびこれらの組み合わせを用いることができる。本実施形態に適用できる界面活性剤の具体例としては、炭素数2〜20程度のフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド等を挙げることができる。
【0059】
なお、これらのゾルは、粒子の形態や大きさ、結晶性等の種類によってゾルの安定化条件が異なるので、粒子の表面電荷をカチオンに帯電させることで粒子を均一な分散状態に保持したり、pH調節によって粒子の分散性を向上させる等の安定化手段を併用することが好ましい。また、Cl−、CH3COO−、NO3−等のアニオン性イオンを添加して安定化させる手段も適用できる。
【0060】
上記無機物微粒子に混合するバインダーとしては、主にポリビニルアルコールが好適に用いられるが、その他、カチオン変成、アニオン変成、シラノール変成等の各種変成ポリビニルアルコール、デンプン誘導体およびその変成体、セルロース誘導体、スチレン−マレイン酸共重合体等を、適宜単独あるいは混合して使用することができる。
【0061】
上述したような受容層用インク32aを液滴吐出法により撥液層31上に塗布したならば、インク中の液体成分を蒸発させてバインダーを固化する乾燥処理を行う。このような乾燥処理としては、シリカ粒子やアルミナ粒子等の無機物微粒子が焼結されない程度の温度、例えば50〜130℃程度の温度で加熱処理を施す方法や、減圧処理による方法、さらにはこれらの加熱処理と減圧処理とを併用する方法などが採用できる。このようにして乾燥処理を施すことで、受容層パターン32を構成する無機物微粒子(シリカ粒子やアルミナ粒子等)は、その粒子間ないし粒子内に微小空隙を有する多孔質層を形成する。
【0062】
上記乾燥工程にて用いる加熱手段には、通常のホットプレート、電気炉などの他、加熱ランプも用いることができる。ランプアニールに用いる光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0063】
また前記のようにして形成される微小空隙型の受容層は、さらに材質や構造の異なる複数の層とすることもできる。一例を挙げると、シリカ粒子とバインダーとの混合物を前記のように塗布、乾燥処理してシリカ粒子からなる第1の受容層を形成した後、さらにその上にアルミナ粒子とバインダーとの混合物を塗布、乾燥処理してアルミナ粒子からなる第2の受容層を積層することもできる。
【0064】
以上に説明した微小空隙型の受容層パターン32の代わりに、主に親水性ポリマーを用いる膨潤型の受容層パターン32を形成してもよい。膨潤型の受容層には、熱硬化あるいは光硬化性のポリマーであって、アミン等の親水基や、カチオン性基、アニオン性基等の極性基を有するセルロース系、メタクリル系、ビニル系のモノマーからなるポリマーを主体とするものや、ポリシロキサン系、ポリシラン系の無機骨格を有するポリマーを主体とするものを用いることができ、これらのポリマーが膨潤してインクを吸収する作用を奏する。
例えば、親水ポリマーであるポリビニルアルコールを用いた場合、簡単には水にポリビニルアルコールを溶解させて基板上に塗布後、乾燥させることで形成可能である。このときの溶液の濃度は特に限定されることは無いが、5wt%から20wt%程度が望ましい。また、このときの乾燥温度も特に限定されることは無いが、80℃から150℃程度が好ましい。
【0065】
また、通常のインクジェット印刷で用いられる受容層の膜厚は10μm〜100μm程度であるが、本発明の如く導電層パターンを形成することを目的として設けられる受容層パターン32は、より膜厚の小さいものが好ましい。この場合には、例えば、無機物微粒子とバインダーとの混合物を塗布するにあたり、溶剤で希釈してから塗布を行うことで膜厚1μm以下の受容層パターン32を形成することができる。
【0066】
本実施形態の場合、基板Pの表面に撥液層31を形成し、その撥液層31上に直接に受容層用インク32aを配して受容層パターン32を形成するようになっているため、微細な受容層パターン32を基板P上に形成できるようになっている。先に記載した受容層用インク32aのバインダーと撥液層31との親和性は、後述する導電層用インクと撥液層31との親和性より比較的高く、そのため撥液層31上に直接所定のパターンを形成可能である。しかし、受容層用インク32aを溶媒で希釈する場合や、上述した種類以外のバインダーを用いる場合には、撥液層31との親和性が極端に低くなることも考えられるので、そのような場合には、撥液層31を構成する自己組織化膜や撥液性高分子の表面特性を調整するとよい。
【0067】
さらに、前記のようにして形成した受容層パターン32の表面を、その上に配置する液状体(導電層用インク)に対して撥液性となるような表面処理を行なうこともできる。撥液性の表面処理を行なうには、先の撥液化工程と同様の工程により単分子膜や撥液性高分子化合物からなる撥液層を形成すればよい。このような撥液性の表面処理を行なうことにより、導電層用インクの液部分が受容層パターン32に吸収される前に横方向に広がってしまうのを防止することができる。
【0068】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0069】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料(受容層用インク32a等)の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。
【0070】
(導電層形成工程)
基板P上に受容層パターン32を形成したならば、図3(d)に示すように、受容層パターン32に対して導電層用インク33aを重ねて配置することで、受容層パターン32と平面視略同一形状の導電層パターン33を形成する(図3(e)参照。)。
【0071】
導電層パターン33の形成に用いる導電層用インク33aは導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、ITO、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に、キシレンやトルエン等の有機溶剤やクエン酸等をコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーテイング材の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。コーティング材で導電性微粒子を被覆したものを用いる場合、液状体の形態では導電性を示さず、乾燥または焼結した際に導電性を呈するようなインクとすることもできる。
【0072】
また、有機金属化合物としては、例えば金、銀、銅、パラジウムなどを含有する化合物や錯体で、熱分解により金属を析出するものが挙げられる。具体的には、クロロトリエチルホスフィン金(I)、クロロトリメチルホスフィン金(I)、クロロトリフェニルフォスフィン金(I)、銀(I)2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀(I)錯体、銅(I)ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などが挙げられる。
【0073】
導電性微粒子及び有機金属化合物のうちの少なくとも一方を含有する液体の分散媒または溶媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上200mmHg以下(約0.133Pa以上26600Pa以下)であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高いと、吐出後に分散媒または溶媒が急激に蒸発してしまい、良好な膜を形成することが困難となるからである。
【0074】
また、分散媒または溶媒の蒸気圧は0.001mmHg以上50mmHg以下(約0.133Pa以上6650Pa以下)であるのがより好ましい。蒸気圧が50mmHgより高いと、液滴吐出法で液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こり易く、安定な吐出が困難になるからである。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒または溶媒の場合には、乾燥が遅くなって膜中に分散媒または溶媒が残留しやすくなり、後工程の熱及び/又は光処理後に良質の導電膜が得られにくくなる。
【0075】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0076】
前記導電性微粒子を分散媒に分散する場合の分散質濃度としては、1質量%以上80質量%以下とするのが好ましく、所望の導電膜の膜厚に応じて調整することができる。80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な膜が得にくくなる。また、同様の理由で、前記有機金属化合物の溶液の溶質濃度としても、前記の分散質濃度と同範囲のものが好ましい。
【0077】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0078】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0079】
このような導電層用インク33aとしては、具体的には、直径10nm程度の銀微粒子が有機溶剤に分散した銀微粒子分散液(真空冶金社製、商品名「パーフェクトシルバー」)の分散媒をテトラデカンで置換してこれを希釈し、濃度が60wt%、粘度が8mPa・s、表面張力が0.022N/mとなるように調整したものを例示することができる。
【0080】
上記構成の導電層用インク33aを、液滴吐出ヘッド1から基板P上に既設の受容層パターン32に対して吐出し配置すると、塗布されたインク33aの液分、すなわち分散媒等が受容層パターン32に形成された微小空隙内に染み込み、インク33a中の導電性微粒子(例えば銀微粒子)が、受容層パターン32上に微粒子の集合体となって残る。また、有機金属化合物を含有したインクの場合でも、受容層パターン32に吸収されずに受容層上に残る有機金属化合物が生じる。このとき、導電層用インク33aは受容層パターン32に沿って配置されているので、上記微粒子の集合体も受容層パターン32とほぼ同一の平面形状を有するものとなる。
なお、導電層用インク33aが導電性微粒子を含むものである場合、特に粒径の小さい導電性微粒子は分散媒等の液分とともに受容層パターン32の微小空隙内に入り込むようになっている。
【0081】
このようにして導電層用インク33aを受容層パターン32上に配置したならば、例えば80℃、30秒間の加熱条件で導電層用インク33aの乾燥処理を行う。この乾燥工程での加熱温度は、インク33a中の導電性微粒子あるいは有機金属化合物が互いに結合しない程度の温度、すなわち焼結温度以下の温度とする。このような加熱処理を行うと、導電層用インク33a中の液分は、受容層パターン32に染み込んだ分も含めて蒸発し、受容層パターン32上に残った導電性微粒子または有機金属化合物の集合体は、液分がほぼ除去されたものとなる。またこのとき、導電性微粒子は互いに結合していないので、導電性微粒子の集合体中にも微小空隙が形成されている状態となっている。したがって、このように微小空隙を有する集合体上にさらに導電層用インク33aを重ねて吐出配置すれば、先に形成された受容層パターン32と同様の作用を奏し、重ねて配されたインク33aの液分を速やかに吸い込み、さらにこれを受容層パターン32に染み込ませることができるようになっている。
【0082】
なお、このようにインク33aを重ねて塗布した場合には、必要に応じて再度乾燥処理を行っておく。また上記乾燥工程にて用いる加熱手段には、通常のホットプレート、電気炉などの他、加熱ランプも用いることができる。ランプアニールに用いる光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0083】
そして、上記乾燥工程が終了したならば、導電層パターン33を加熱して受容層パターン32上の導電性粒子の集合体を焼結する。金属有機化合物を含む導電層用インク33aを用いた場合には、この加熱処理により金属有機化合物が分解されて金属薄膜の導電層パターンを形成する。導電性微粒子と有機金属化合物の双方を含む導電層用インク33aを用いた場合には、導電性微粒子と有機金属化合物の分解により生成した金属との混合物により導電層パターンが形成される。
【0084】
上記乾燥工程および焼結工程では、基板Pは熱処理または光照射処理に供されることとなるが、係る熱処理ないし光照射処理の条件は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
例えば、導電性微粒子がコーティング材により被覆されている場合、上記焼結工程までにコーティング材を除去する必要があるので、焼結工程において約300℃程度まで加熱する。
【0085】
以上の工程により、受容層パターン32と導電層パターン33との積層膜からなる導電層パターン(薄膜パターン)35を基板P上に形成することができる。このような本実施形態の薄膜パターンの形成方法によれば、撥液層31を介した基板P上に、液滴吐出法を用いて受容層パターン32を形成するので、微細で複雑な平面形状を具備した受容層パターン32を基板P上に直接形成でき、高効率に高コントラストの撥液/親液領域を基板P上に形成することができる。そして、薄膜パターン35のうち主要部を成す導電層パターン33は、受容層パターン32を介して形成されるので、微細な形状でありながら短絡等の不具合が生じない信頼性に優れたものとなる。したがって本実施形態の形成方法によれば、微細でかつ信頼性に優れた薄膜パターンを効率よく基板上に形成することができる。また受容層パターン32および導電層パターン33はいずれも液滴吐出法を用いて形成されるので、基板上に形成した金属薄膜をフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする場合に比して材料の使用効率を向上させることができ、薄膜パターンの作製コスト低減に寄与するものとなる。
【0086】
以上の実施の形態では、基板P上に撥液層31を介して直接受容層パターン32を形成する場合について説明したが、本発明に係る薄膜パターンの形成方法は、この実施形態に限定されるものではなく、例えばバンクを基板P上に設け、係るバンクに囲まれる領域内に受容層パターン32および導電層パターン33を形成する方法とすることもできる。この場合、基板P上にバンクを立設する工程が必要となるが、液滴吐出ヘッド1から吐出される液滴径よりも細いパターンを形成することができるという利点がある。
【0087】
また、本実施形態では、基板P上に導電層パターン33を主体とする薄膜パターン35を形成する場合について説明したが、薄膜パターン35としては、導電層パターン33に代えて絶縁層パターンが形成されたものや半導体層パターンが形成されものであってもよい。絶縁層パターンを形成する場合には、受容層パターン32に対して吐出配置されるインクを構成する機能性材料として、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などを用いる。
【0088】
一方、半導体層パターンを形成する場合には、液体水素化シリコンをインクとして用いることで、アモルファスシリコンの半導体層パターンを形成できる。あるいは、半導体層パターンはフルオレンとビチオフェンとのコポリマーを用いて形成することもできる。これは共役性高分子であり、半導体の特性を示す。そして、トルエン、又はキシレン、トリメチルベンゼンなどの有機溶媒を用いて溶解することができる。また、半導体層パターンの材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、フタロシアニン、ペリレン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、スチルベン、アリールビニル、ピラゾリン、トリフェニルアミン、トリアリールアミン、オリゴチオフェン、フタロシアニンまたはこれらの誘導体のような低分子の有機半導体材料や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ポリアリールアミン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂、フルオレン−ビチオフェン共重合体、フルオレン−アリールアミン共重合体またはこれらの誘導体のような高分子の有機半導体材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、高分子の有機半導体材料を用いるのが好ましい。高分子の有機半導体材料は、簡易な方法で成膜することができるとともに、比較的容易に配向させることができる。また、このうち、空気中で酸化され難く、安定であること等の理由から、フルオレン−ビチオフェン共重合体、或いは、ポリアリールアミンが特に好ましい。
【0089】
<デバイス>
(電気光学装置)
次に、本発明のデバイスの一例である液晶表示装置(電気光学装置)について説明する。
図4は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図5は図4のH−H’線に沿う断面図である。図6は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0090】
図4及び図5において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されており、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0091】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0092】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0093】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図6に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0094】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図5に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0095】
図7(a)は、ボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板P上には、上記実施形態の薄膜パターン形成方法によりゲート配線61が形成されている。
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
【0096】
さらに、接合層64a、64b及びITOからなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…を突設し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0097】
なお、図7(b)に示すように、ゲート絶縁膜62に凹部を設けて、この凹部内にゲート絶縁膜62の表面と略面一に半導体層63を形成し、その上に接合層64a、64b、画素電極19、エッチストップ膜65を形成することもできる。この場合、バンク66間の溝底部を図7(a)に比較して略フラットにすることで、これら各層及びソース線、ドレイン線の屈曲部が減り、平坦性が向上した高特性のTFTとすることができる。
上記構成のTFTでは、上述した液滴吐出装置IJを用いて、例えば銀化合物の液滴を吐出することでゲート線、ソース線、ドレイン線等を形成することができるため、細線化による小型・薄型化が実現され、短絡等の不良が生じない高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0098】
上記実施形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0099】
(有機EL装置)
図8は、前記液滴吐出装置IJを用いて一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。以下、有機EL装置の概略構成を説明する。図8において、有機EL装置401は、基板411、回路素子部421、画素電極431、バンク部441、発光素子451、陰極461(対向電極)、および封止基板471から構成された有機EL素子402に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部421は、アクティブ素子であるTFT60が基板411上に形成され、複数の画素電極431が回路素子部421上に整列して構成されたものである。そして、TFT30を構成するゲート配線61が、上述した実施形態の薄膜パターンの形成方法により形成されている。
【0100】
各画素電極431間にはバンク部441が格子状に形成されており、バンク部441により生じた凹部開口444に、発光素子451が形成されている。なお、発光素子451は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置401は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極461は、バンク部441および発光素子451の上部全面に形成され、陰極461の上には封止用基板471が積層されている。
【0101】
有機EL素子を含む有機EL装置401の製造プロセスは、バンク部441を形成するバンク部形成工程と、発光素子451を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子451を形成する発光素子形成工程と、陰極461を形成する対向電極形成工程と、封止用基板471を陰極461上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0102】
発光素子形成工程は、凹部開口444、すなわち画素電極431上に正孔注入層452および発光層453を形成することにより発光素子451を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層452を形成するための液状体材料を各画素電極431上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層452を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層453を形成するための液状体材料を正孔注入層452の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層453を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層453は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
【0103】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0104】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0105】
(プラズマ型表示装置)
次に、本発明の膜パターンの形成方法によって形成される膜パターンを、プラズマ型表示装置に適用した例について説明する。図9は、本実施形態のプラズマ型表示装置500の分解斜視図を示している。プラズマ型表示装置500は、互いに対向して配置された基板501、502、及びこれらの間に形成される放電表示部510を含んで構成される。放電表示部510は、複数の放電室516が集合されたものである。複数の放電室516のうち、赤色放電室516(R)、緑色放電室516(G)、青色放電室516(B)の3つの放電室516が対になって1画素を構成するように配置されている。
【0106】
基板501の上面には所定の間隔でストライプ状にアドレス電極511が形成され、アドレス電極511と基板501の上面とを覆うように誘電体層519が形成されている。誘電体層519上には、アドレス電極511、511間に位置しかつ各アドレス電極511に沿うように隔壁515が形成されている。隔壁515は、アドレス電極511の幅方向左右両側に隣接する隔壁と、アドレス電極511と直交する方向に延設された隔壁とを含む。また、隔壁515によって仕切られた長方形状の領域に対応して放電室516が形成されている。
また、隔壁515によって区画される長方形状の領域の内側には蛍光体517が配置されている。蛍光体517は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するもので、赤色放電室516(R)の底部には赤色蛍光体517(R)が、緑色放電室516(G)の底部には緑色蛍光体517(G)が、青色放電室516(B)の底部には青色蛍光体517(B)が各々配置されている。
【0107】
一方、基板502には、先のアドレス電極511と直交する方向に複数の表示電極512がストライプ状に所定の間隔で形成されている。さらに、これらを覆うように誘電体層513、及びMgOなどからなる保護膜514が形成されている。基板501と基板502とは、前記アドレス電極511…と表示電極512…を互いに直交させるように対向させて相互に貼り合わされている。上記アドレス電極511と表示電極512は図示略の交流電源に接続されている。各電極に通電することにより、放電表示部510において蛍光体517が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0108】
本実施形態では、上記アドレス電極511、及び表示電極512がそれぞれ、上述した配線パターン形成方法に基づいて形成されているため、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質のプラズマ型表示装置を得ることができる。
【0109】
(回路基板)
図10は、回路基板を具備した液晶表示装置の実施形態を示す図である。図10に示す液晶表示装置(電気光学装置)901は、カラーの液晶パネル(電気光学パネル)902と、液晶パネル902に接続される回路基板903とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル902に付設されるようになっている。
【0110】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板905a及び基板905bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板905a及び基板905bの外側表面には偏光板906a及び偏光板906bが貼り付けられている。なお、図15においては、偏光板906bの図示を省略している。
【0111】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面には電極907bが形成されている。これらの電極907a、907bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極907a、907bは、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板905aは、基板905bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子908が形成されている。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成するときに電極907aと同時に形成される。従って、これらの端子908は、例えばITOによって形成されている。これらの端子908には、電極907aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極907bに接続されるものが含まれる。
【0112】
回路基板903には、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子900が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子900が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板909は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板911の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン912を形成することによって製造されている。
【0113】
本実施形態では、液晶パネル902における電極907a、907b及び回路基板903における配線パターン912が上述の薄膜パターンの形成方法によって形成されている。本実施形態の液晶表示装置によれば、電気特性の不均一が解消された高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0114】
なお、前述した例はパッシブ型の液晶パネルであるが、アクティブマトリクス型の液晶パネルとしてもよい。すなわち、一方の基板に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTに対し画素電極を形成する。また、各TFTに電気的に接続する配線(ゲート配線、ソース配線)を上記のようにインクジェット技術を用いて形成することができる。一方、対向する基板には対向電極等が形成されている。このようなアクティブマトリクス型の液晶パネルにも本発明を適用することができる。
【0115】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図11(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。図11(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。図11(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図11(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであるので、高い品質や性能が得られる。なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0116】
次に、本発明の膜パターンの形成方法によって形成される膜パターンを、アンテナ回路に適用した例について説明する。図12は、本実施形態例に係る非接触型カード媒体を示しており、非接触型カード媒体1400は、カード基体1402とカードカバー1418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ1408とアンテナ回路1412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。本実施形態では、上記アンテナ回路1412が、本発明の膜パターン形成方法に基づいて形成されている。そのため、上記アンテナ回路1412の微細化や細線化が図られ、高い品質や性能を得ることができる。
【0117】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】実施形態に係る薄膜パターンの形成工程を示す図。
【図2】液滴吐出装置の斜視構成図。
【図3】吐出ヘッドの動作説明図。
【図4】液晶表示装置の平面構成図。
【図5】同、断面構成図。
【図6】同、回路構成図。
【図7】薄膜トランジスタの断面構成図。
【図8】有機EL装置の断面構成図。
【図9】プラズマ型表示装置の斜視構成図。
【図10】液晶表示装置の斜視構成図。
【図11】電子機器の具体例を示す斜視構成図。
【図12】非接触型カード媒体の分解斜視構成図。
【符号の説明】
【0119】
P…基板(基体)、35…薄膜パターン、32…受容層パターン、33…導電層パターン(機能層パターン)、32a…受容層用インク(第1の機能液)、33a…導電層用インク(第2の機能液)、30…TFT(スイッチング素子)、100…液晶表示装置(電気光学装置)、1400…非接触型カード媒体(電子機器)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に機能性材料の薄膜パターンを形成する方法であって、
基体上に受容層材料を含む第1の機能液を配して受容層パターンを形成する受容層形成工程と、
前記受容層パターンに対し機能性材料を含む第2の機能液を配して機能層パターンを形成する機能層形成工程と
を有することを特徴とする薄膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記受容層形成工程に先立って、
前記基体表面に撥液処理を施す撥液化工程を有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記受容層材料が、無機物微粒子とバインダーとを含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記無機物微粒子が、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムから選択される少なくとも1種の元素あるいはその酸化物を含むものであることを特徴とする請求項3に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記無機物微粒子の粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記無機物微粒子が、粒子内部に空隙を有する中空構造の粒子であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項7】
前記第1の機能液が前記受容層材料のゾルを含むものであり、前記受容層形成工程において、前記第1の機能液を前記基体上に配し、ゾル−ゲル法により前記受容層パターンを形成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項8】
前記受容層材料のゾルが、無機アルコキシド、無機ハロゲン化物、有機/無機複合アルコキシド、および有機/無機ハロゲン化物から選択される少なくとも1種の無機酸化物前駆体と、界面活性剤とを含む溶液であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項9】
前記無機酸化物前駆体が、インジウム、錫、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、アンチモン、タングステン、およびチタンから選択される少なくとも1種の元素を含んでいることを特徴とする請求項8に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項10】
前記機能層形成工程により前記受容層パターン上に形成する機能層パターンが、導電層、絶縁層、又は半導体層であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項11】
前記機能層形成工程において、
導電性微粒子を含む前記第2の機能液を用いて前記受容層パターン上に導電層パターンを形成することを特徴とする請求項10に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項12】
前記機能層形成工程において、
熱処理又は光照射処理により導電性を発現する材料を含む前記前記第2の機能液を用いて、前記受容層パターン上に導電層パターンを形成することを特徴とする請求項10に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項13】
前記撥液化工程が、前記基体上に撥液性の単分子膜を形成する工程であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項14】
前記撥液性の単分子膜が、フッ素を含有する有機分子からなる単分子膜であることを特徴とする請求項13に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項15】
前記撥液化工程が、フルオロカーボン系化合物を反応ガスに用いて前記基体の表面をプラズマ処理する工程であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項16】
前記撥液化工程が、前記基体上に、フッ素を含有する高分子化合物を塗布してなる撥液膜を形成する工程であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項17】
前記機能液を、液滴吐出法を用いて前記基体上に配することを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項18】
基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、
請求項1から17のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法により、前記基体上に薄膜パターンを形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項19】
基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、
請求項1から17のいずれか1項に記載の形成方法により得られた薄膜パターンを備えたことを特徴とするデバイス。
【請求項1】
基体上に機能性材料の薄膜パターンを形成する方法であって、
基体上に受容層材料を含む第1の機能液を配して受容層パターンを形成する受容層形成工程と、
前記受容層パターンに対し機能性材料を含む第2の機能液を配して機能層パターンを形成する機能層形成工程と
を有することを特徴とする薄膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記受容層形成工程に先立って、
前記基体表面に撥液処理を施す撥液化工程を有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記受容層材料が、無機物微粒子とバインダーとを含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記無機物微粒子が、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、錫、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムから選択される少なくとも1種の元素あるいはその酸化物を含むものであることを特徴とする請求項3に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記無機物微粒子の粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記無機物微粒子が、粒子内部に空隙を有する中空構造の粒子であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項7】
前記第1の機能液が前記受容層材料のゾルを含むものであり、前記受容層形成工程において、前記第1の機能液を前記基体上に配し、ゾル−ゲル法により前記受容層パターンを形成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項8】
前記受容層材料のゾルが、無機アルコキシド、無機ハロゲン化物、有機/無機複合アルコキシド、および有機/無機ハロゲン化物から選択される少なくとも1種の無機酸化物前駆体と、界面活性剤とを含む溶液であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項9】
前記無機酸化物前駆体が、インジウム、錫、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、バナジウム、マンガン、鉄、ジルコニウム、アンチモン、タングステン、およびチタンから選択される少なくとも1種の元素を含んでいることを特徴とする請求項8に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項10】
前記機能層形成工程により前記受容層パターン上に形成する機能層パターンが、導電層、絶縁層、又は半導体層であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項11】
前記機能層形成工程において、
導電性微粒子を含む前記第2の機能液を用いて前記受容層パターン上に導電層パターンを形成することを特徴とする請求項10に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項12】
前記機能層形成工程において、
熱処理又は光照射処理により導電性を発現する材料を含む前記前記第2の機能液を用いて、前記受容層パターン上に導電層パターンを形成することを特徴とする請求項10に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項13】
前記撥液化工程が、前記基体上に撥液性の単分子膜を形成する工程であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項14】
前記撥液性の単分子膜が、フッ素を含有する有機分子からなる単分子膜であることを特徴とする請求項13に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項15】
前記撥液化工程が、フルオロカーボン系化合物を反応ガスに用いて前記基体の表面をプラズマ処理する工程であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項16】
前記撥液化工程が、前記基体上に、フッ素を含有する高分子化合物を塗布してなる撥液膜を形成する工程であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項17】
前記機能液を、液滴吐出法を用いて前記基体上に配することを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項18】
基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、
請求項1から17のいずれか1項に記載の薄膜パターンの形成方法により、前記基体上に薄膜パターンを形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項19】
基体上に薄膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、
請求項1から17のいずれか1項に記載の形成方法により得られた薄膜パターンを備えたことを特徴とするデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−26522(P2006−26522A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208516(P2004−208516)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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