説明

車両の内燃機関制御装置

【課題】 走行時間又は走行時間が長い場合、燃料消費を抑制する車両の内燃機関制御装置を提供すること。
【解決手段】 車両の内燃機関が冷間始動された場合、内燃機関を暖機する車両の内燃機関制御装置において、車両の走行距離を予測する走行距離予測手段と、走行距離予測手段により予測された走行距離が所定以上の場合、内燃機関の暖気を促進する暖気促進手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内燃機関制御装置に関し、特に冷間始動時に内燃機関の出力を高めて暖機制御を行う車両の内燃機関制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、冷間始動時のようにエンジンを暖機する場合、混合気の濃度を上げつつ空気量を増量して着火性を高めると共に、エンジンが安定して回転するようにエンジン回転数を高めるいわゆるファーストアイドルが実行される。したがって、暖機運転中は燃焼状態が適当であるとは言えず、燃料の消費量が増大してしまう。また暖機完了前には、エンジン及び変速機内部の各摺動部の潤滑油や、トルクコンバータやトランスミッションの作動等に用いられる作動流体等の粘度が高いため、摩擦損失が増大したり、各作動部の応答性が悪化したりする等の不具合が生じる。このため、暖機が十分でないときには、エンジンや変速機を早期に暖機したほうが、燃費が向上する場合が多い。そこで、従来、冷間始動時には、例えばエンジン水温に応じてエンジン回転速度を高めて暖機を促進する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、暖機促進のために、エンジン回転数を高めれば、エンジンでの燃料の消費量は自ずと増大してしまう。一方、車両の走行距離や走行時間が短く、暖機が完了する前に車両走行が終了してしまう場合等には、暖機促進による効果は期待しづらい。すなわち、かかる場合、上記のような暖機促進制御を実施したとしても、暖機を促進するために費やされた燃料が無駄に消費されるだけとなってしまう。
【0004】
そこで、エンジン始動時に、走行距離又は走行時間が短い場合に暖気促進を禁止又は制限する発明が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2記載の発明によれば、走行距離又は走行時間が短いと予測される場合、不要な暖気促進を行わないので、燃料消費を抑制することができる。
【特許文献1】特開平6−123346号公報
【特許文献2】特開2003−90420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の発明では、走行距離又は走行時間が短いと予測される場合には不要な暖気促進を制限等することで燃料消費を抑制できるが、走行時間又は走行時間が長い場合の燃料消費の改善については記載されていない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、走行距離又は走行時間が長い場合、燃料消費を抑制する車両の内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明は、車両の内燃機関が冷間始動された場合、内燃機関を暖機する車両の内燃機関制御装置において、車両の走行距離を予測する走行距離予測手段と、走行距離予測手段により予測された走行距離が所定以上の場合、内燃機関の暖気を促進する暖気促進手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、走行時間が長い場合、内燃機関の暖気を促進することで早期に暖気が完了するので、エンジンの間欠制御やエミッションの改善等により、燃料消費を抑制する車両の内燃機関制御装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明の一形態において、走行距離予測手段は、設定された目的地に応じてナビゲーションシステムが案内する走行経路に基づき車両の走行距離を予測する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ナビゲーションシステムを利用して走行距離を予測するので、走行距離を正確に予測して、予測された走行距離が所定以上の場合、内燃機関の暖気を促進することができる。
【0011】
また、本発明は、車両の内燃機関が冷間始動された場合、内燃機関を暖機する車両の内燃機関制御装置において、車両の走行時間を予測する走行時間予測手段と、走行時間予測手段により予測された走行時間が所定以上の場合、内燃機関の暖気を促進する暖気促進手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、走行時間が長い場合、内燃機関の暖気を促進することで早期に暖気が完了するので、エンジンの間欠制御やエミッションの改善等により、燃料消費を抑制する車両の内燃機関制御装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明の一形態において、走行時間予測手段は、設定された目的地に応じてナビゲーションシステムが案内する走行経路に基づき車両の走行時間を予測する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ナビゲーションシステムを利用して走行時間を予測して、予測された走行距離が所定以上の場合、内燃機関の暖気を促進することができる。
【0015】
また、本発明の一形態において、車両の空調装置の作動を検出する空調装置作動検出手段を有し、暖気促進手段は、空調装置作動検出手段により空調装置の暖房が作動していると検出された場合、内燃機関の暖気を促進することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、暖房が作動している場合に暖気を促進するので、暖房の作動がしていても早期に暖気を完了させ、燃費を向上することができる。
【0017】
また、本発明の一形態において、暖気促進手段は、エンジン回転数を増大させたり、負荷運転を行うことで内燃機関の負荷を増大させ暖気を促進する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、暖気促進のための装置を新たに追加する必要がなく低コストに暖気促進手段を構成できる。
【発明の効果】
【0019】
走行時間又は走行時間が長い場合、燃料消費を抑制する車両の内燃機関制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の適用される車両の内燃機関制御装置における機能ブロック図を示す。図1の車両は、駆動力源としてエンジン10及びモータ15を備えたハイブリッドカーを示す。
【0021】
車両の駆動輪FLとFRを連結する車軸には、CVT(Continuously Variable Transmission)11が接続されている。CVT11は、動力切替機構14を介してモータジェネレータ15及びエンジン10に接続されている。モータジェネレータ15にはコンバータ付インバータ(以下、単にインバータという)16が接続され、また、インバータ16にはバッテリ17が接続されている。
【0022】
本実施の形態の内燃機関制御装置はECU20により制御される。ECU20には、車速センサ21、水温センサ22、アクセルセンサ23、シフトセンサ24、の各センサが接続されている。車速センサ21は、車両の走行速度(車速)SPDを検出して、車速に応じた信号をECU20に送出する。水温センサ22は、エンジン10を循環する冷却水の温度を検出して、水温に応じた信号をECU20に送出する。また、ECU20には、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ23、シフトレバーの操作位置を検出するシフトセンサ24、車両の空調装置による暖房(ヒータ要求)又は冷房の作動信号を送出する空調装置25等、運転者の操作状況を検出する各種センサが接続されている。
【0023】
CVT11は、一対の滑車とその外周にかかる金属ベルトで変速比を自在に変えられる変速機として構成される。CVT11は、エンジン10又はモータジェネレータ15の駆動力を走行状態に応じた減速比に制御し、ディファレンシャル12に伝達する。例えば、低速での加速時には減速比を増大させ、一定速度で走行時には減速比を減少させる。また、ディファレンシャル12は、CVT11から伝達された駆動力を左右の車輪FL,FRに分配する。
【0024】
動力切替機構14は、エンジン10及びモータジェネレータ15の駆動力をCVT11に伝達し、また、CVT11の運動エネルギーをモータジェネレータ15に伝達する。動力切替機構14は、ECU20の制御信号に応じて、エンジン10又はモータジェネレータ15による駆動、モータジェネレータ15による発電、前進・後退走行等の切替を行う。すなわち、エンジン10及び/又はモータジェネレータ15が作動している場合、これらの駆動力をCVT11に伝達し、また、制動時にはCVT11から運動エネルギー(以下、回生エネルギーという)を伝達する。また、動力切替機構14は、バッテリ残量が不足している場合にはエンジン10の駆動力をモータジェネレータ15に伝達する。
【0025】
モータジェネレータ15は、駆動力を発生させるモータ及び電力を発生させる発電機の機能を有する。モータとして機能する場合、モータジェネレータ15は、単体で又はエンジン10の出力を補助し車両を駆動させる。発電機として機能する場合、モータジェネレータ15は、エンジン10の出力又はCVT11から伝達された回生エネルギーを利用して発電する。
【0026】
コンバータ付インバータ16は、バッテリ17の直流電流とモータジェネレータ15の交流電流との変換を行う。すなわち、モータジェネレータ15が発電した交流電流を直流に変換してバッテリ17を充電すると共に、バッテリ17から供給された直流電流を交流に変換してモータジェネレータ15の電源とする。また、コンバータ付インバータ16は、オーディオやエアコンなど補機類の電源とするため、電圧を変換してそれら補機類の電源を充電する。
【0027】
バッテリ17は、バッテリ17の端子間電圧に応じた電気信号をECU20に送出する。ECU20は、当該電気信号に基づいてバッテリ17の充電状態、残存容量を、バッテリ電圧やバッテリ温度に基づいて検出する。
【0028】
車両の走行においてECU20は、アクセルセンサ23やシフトセンサ24等の信号に基づき運転者の要求動力を算出する。また、要求動力とバッテリ残量等に基づき、必要なエンジン10の回転数及びトルクを算出する。ECU20は、算出された回転数となるようにCVT11の変速比を制御すると共に、算出されたトルクとなるようにエンジン10の回転数(スロットル開度)を制御する。算出されたトルクがエンジンの最大トルクからみて不充分な場合、モータジェネレータ15を駆動してエンジントルクの不足分を補助する。
【0029】
より具体的には、発進時においてはモータジェネレータ15の駆動力により走行が開始(発進)されるが、エアコン作動時やバッテリ残量が低下した場合等は、モータジェネレータ15及びエンジン10の駆動力により走行が開始(発進)される。また、低速走行時や緩やかな坂を下って走行している場合、モータジェネレータ15の駆動力により走行されるが、エアコン作動時やバッテリ残量が低下した場合等は、エンジン10の駆動力により走行すると共に、モータジェネレータ15により発電する。また、中速走行時のようにエンジン出力の取出効率の良好な場合、エンジン10の駆動力により走行し、更にバッテリ残量が低下している場合はエンジン10の回転数を上昇させエンジン10の駆動力により走行すると共にモータジェネレータ15により発電する。また、加速時には、エンジン10の回転数を上昇させると共に、エンジン10のトルクが充分でなければモータジェネレータ15を駆動してエンジントルクの不足分を補助する。以上のように走行状況やバッテリ残量に応じて、エンジン10の始動と停止を間欠して制御することで燃費が向上する(以下、エンジン間欠制御という)。なお、エンジン間欠制御をどのようの行うかは設計事項であるので、上記は一例である。
【0030】
ところで、冷間始動時のように、エンジン始動時に暖機運転が必要な場合は、暖機運転が完了するまでエンジン10が駆動される。このため、暖機運転が完了するまでは間欠運転がされず、エンジン10は回転したままとなる。したがって、冷間始動時のように暖気が充分でない場合、暖機することで燃費の向上が可能となる。ECU20は、エンジン冷却水の水温が所定以上となるまでエンジン10を駆動する暖機制御を有する。
【0031】
また、ECU20は、暖気制御よりも更に暖気を促進する暖気促進制御を行うことができる。暖気促進制御は、例えば、エンジン10の回転数を上昇させたり、エンジン10に負荷運転をさせたりして、エンジン10の冷却水を早期に上昇させるものであればよい。暖気促進制御により、エンジン水温の上昇が不充分な場合や早期にエンジン水温を上昇させる場合、暖気を促進できる。
【0032】
なお、暖機運転が必要となるような冬季は、エンジン水温により空調装置のヒータ性能を確保しているため、運転者等から車室内を暖房するヒータ要求があった場合、エンジン10を駆動するように制御される。このため、ヒータ要求があった場合、暖気されたエンジン水温が一部暖房に用いられることとなり、暖気の完了が遅くなる場合がある。暖気されている間は、エンジン10が駆動されるので、ヒータ要求があった場合エンジン10の駆動状態によって車両の燃費が異なることとなる。本実施の形態では、暖気促進制御によりヒータ要求があった場合の燃費向上が可能となる。
【0033】
また、本実施の形態の車両には、カーナビゲーションシステム26が搭載されており、ECU20にはカーナビゲーションシステム26が入力されている。カーナビゲーションシステム26は、GPS(グローバル・ポジショニング・サテライトシステム)の信号を受信するアンテナ27を備え、当該信号に含まれる座標データに基づいて車両の現在位置を把握し、予め記憶された地図情報を参照して、ディスプレー等に車両の現在の位置や経路等の案内を表示する。
【0034】
したがって、音声やディスプレー等の入力装置を介して運転者が目的地を入力すると、カーナビゲーションシステム26は、GPSから受信した現在の位置に基づき、該目的地までの経路を案内する。また、カーナビゲーションシステム26は、目的地までの経路に基づき走行距離を概算すると共に、地図情報と共に有する当該経路の制限速度、VICS(Vehicle Information and Communication System)や路車間通信等から経路における交通量の情報を取得し、予測される走行時間を概算する。
【0035】
続いて、本実施の形態における車両の内燃機関制御装置の暖気制御について説明する。図2は、暖気制御の制御手順を示すフローチャート図の一例である。
【0036】
エンジンが始動されると、ECU20は水温センサ22により検出されたエンジン冷却水の温度に応じて、いわゆる冷間始動時には暖機運転を開始する。運転者により目的地がカーナビゲーションシステム26に設定された場合(又は予めインターネット等を介して予め目的地が設定されていてもよい)、カーナビゲーションシステム26は目的地までの走行経路を案内すると共に、目的地までの走行予測時間を概算する。
【0037】
ECU20は、概算された走行予測時間がA分(例えば、A=10分)以上か否か判定する(S11)。走行予測時間がA分より短い場合(ステップS11のNo)、ECU20は運転者等からヒータ要求があってもヒータ要求によるエンジン10の駆動を行わない(S12)。したがって、走行予測時間が短い場合は暖機制御を行うが、バッテリ残量が低下している場合等エンジン間欠制御によるエンジン10の駆動を除き、ヒータ要求によるエンジン10の駆動は行わない。走行予測時間が短い場合、ヒータ要求に対しエンジンを駆動しても、十分にエンジン水温が上昇する前に走行が終了してしまい、又は、走行中にエンジン水温が上昇しても結局はその後にすぐ走行が終了されてしまうため、エンジン水温の上昇は無駄となる。したがって、ヒータ要求があっても走行予測時間が短い場合にはヒータ要求によりエンジン水温を上昇させないことによって、走行予測時間が短い場合(目的地が近い場合)、エンジン10の駆動が低減され燃費が向上する。なお、ステップS11において、カーナビゲーションシステム26による走行予測時間ではなく、運転者により入力された走行予測時間等に基づき判定してもよい。
【0038】
走行予測時間がA分以上の場合(ステップS11のYes)、ECU20は運転者等からヒータ要求があるか否かを判定する(S13)。ヒータ要求がなければ(ステップS13のNo)、暖機制御を行うと共に、バッテリ残量が低下している場合等エンジン間欠制御によるエンジン10の駆動を除き、エンジン10の駆動は行わない。
【0039】
ヒータ要求があった場合(ステップS13のYes)、さらにECU20は概算された走行予測時間がB分(B>Aで、例えばB=20分)以上か否か判定する(S14)。走行予測時間がB分より短い場合(ステップS14のNo)、暖気制御を行うと共に、ヒータ要求によるエンジン10の駆動を含め、バッテリ残量が低下している場合等はエンジン間欠制御によるエンジン10の駆動を制御する(S15)。したがって、走行時間が比較的短い場合(本実施の形態ではA〜B分くらい)、ヒータ要求があればヒータ要求によるエンジン10の駆動を行うので、従来と同様の燃費を達成でき、また、バッテリ残量が著しく減少することを防止できる。
【0040】
走行予測時間がB分以上の場合(ステップS14のYes)、ECU20は、暖気促進制御を行う(S16)。すなわち、走行予測時間がB分以上の長い場合でかつヒータ要求があった場合、エンジン10を暖気制御よりも促進して暖気する。ECU20は、エンジン10の回転数を上昇させたり、エンジン10に負荷運転をさせたりして、エンジン10の冷却水を早期に上昇させる。これによりヒータ要求により使用されたエンジン水温の熱量を補い、早期に所定の水温になるように制御される。所定の水温になればエンジン間欠制御が可能となるので、暖気を促進することで燃費の向上が図られる。以上で、図2の暖気制御の制御手順が終了する。
【0041】
なお、図2では走行予測時間に基づき制御を行ったが、カーナビゲーションシステム26が案内する走行経路に基づき車両の走行距離を予測し、走行予測距離に基づき制御を行ってもよい。かかる場合、走行予測距離がC〔km〕(例えばC=3km)以下の場合、ECU20は運転者等からヒータ要求があってもヒータ要求によるエンジン10の駆動を行わない(S12)。また、ヒータ要求があり、かつ、走行予測距離がDkm以上(D>Cで例えば6km)の場合、暖気促進制御が行われる(S16)。すなわち、走行予測時間が長い場合でかつヒータ要求があった場合、エンジン10の暖気を促進することで、ヒータ要求により使用されたエンジン水温の熱量を補い、早期に所定の水温になるように制御する。所定の水温になればエンジン間欠制御が可能となるので、燃費の向上が図られる。
【0042】
ところで、図1ではハイブリッド車両に基づいて説明したが、ヒータ要求があった場合、エンジンの回転数を上昇させるなどの制御を行う車両(例えば、ガソリン車、ディーゼル車)であれば、同様の制御を行うことで、燃費の向上が図られる。
【0043】
図3は、ガソリン車、ディーゼル車の暖気を制御する内燃機関制御装置の機能ブロック図を示す。図3の車両ではエンジン30の出力は、トルクコンバータ31、トランスミッション32及びディファレンシャル36を経て駆動輪FR・FLへと伝達される。なお、図3において図1と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0044】
トルクコンバータ31は、エンジン30の駆動力をトランスミッション32へ伝達する。トルクコンバータ31は、作動流体を媒介にして動力伝達を行うことで、エンジン30とトランスミッション32との間を伝達されるトルクを調整している。なお、トルクコンバータ31は、エンジン30とトランスミッション32とを直結して動力の伝達ロスをなくすロックアップ機能を有する。
【0045】
トランスミッション32は、複数の遊星歯車機構を備えており、各遊星歯車機構のギヤの係合状態の設定に応じて、シフトレンジや変速段の切り替えを行っている。遊星歯車機構のギア係合状態の切り替えは、流体圧制御部33によって行われる。トルクコンバータ31のロックアップの実施/解除についても、流体圧制御部33による作動流体の制御を通じて行われている。
【0046】
なお、トルクコンバータ31やトランスミッション32に使用される作動流体は、エンジン30の内部を循環されて暖められた冷却水の熱を利用して昇温されるようになっている。
【0047】
流体圧制御部33やエンジン30等は、ECU35によって制御される。ECU35には、車速センサ21、水温センサ22等の車両の走行状況を検出する各種センサ類の信号が入力されている。また、ECU35にはアクセルセンサ23、シフトセンサ24等、運転者の操作状況を検出する各種センサ類の信号が入力されている。ECU35は、これらのセンサ類の検出結果に基づいて、トランスミッション32のギア設定の切替制御やトルクコンバータ31のロックアップ制御、エンジン30の運転制御等、車両走行にかかる各種制御を実施する。
【0048】
ECU35は、エンジン30の冷間始動時に、エンジン回転速度が一定以上に保持されるようにして暖機を行う暖気制御を実施する。したがって、エンジン冷却水の温度が所定以上となるまでエンジンの発熱量が増しエンジン30が暖気される。
また、本実施の形態では、暖気制御よりも更に暖気を促進する暖気促進制御を行うことができる。エンジン30が冷間始動されたときには、暖機が完了するまでの間、トランスミッション32において、高段側(例えば5速又は4速)へのギアの設定を禁止することで、暖機の促進を図る。高段側のギアの設定を禁止すれば、本来は5速又は4速ギア等に設定されるべき車速域においても、より変速比の大きいギアの設定がなされることとなる。そのため、暖気促進制御を行っている場合、同じ車速であっても、エンジン30は暖機促進制御を行っていない場合より高い回転速度で運転される。これにより、エンジン30が高回転速度で運転される頻度が高くなり、発熱量が増大して暖機が行われる。
【0049】
図3に示す車両においても図2の暖気制御手順と同様に、走行予測時間がA分以下の場合(ステップS11のNo)、ECU35は運転者等からヒータ要求があってもヒータ要求によるエンジン30の駆動を行わない(S12)。走行予測時間が短い場合、ヒータ要求に対しエンジンを駆動しても、十分にエンジン水温が上昇する前に走行が終了してしまい、又は、走行中にエンジン水温が上昇しても結局はその後にすぐ走行が終了されてしまうため、エンジン水温の上昇は無駄となる。したがって、ヒータ要求があっても走行予測時間が短い場合にはヒータ要求によりエンジン水温を上昇させないことによって、走行予測時間が短い場合(目的地が近い場合)、エンジン30の回転数を上昇させないので燃費が向上する。
【0050】
走行予測時間がA分以上の場合(ステップS11のYes)、ECU35は運転者等からヒータ要求があるか否かを判定する(S13)。ヒータ要求がなければ(ステップS13のNo)、暖機制御を行う。
【0051】
ヒータ要求があった場合(ステップS13のYes)、さらにECU35は概算された走行予測時間がB分(B>Aで、例えばB=20分)以上か否か判定する(S14)。走行予測時間がB分より短い場合(ステップS15のNo)、暖気制御を行うと共に、ヒータ要求によるエンジン30の駆動を制御する(S15)。したがって、走行時間が比較的短い場合(本実施の形態ではA〜B分くらい)、ヒータ要求があればヒータ要求によるエンジン10の駆動を行うので、従来と同様の燃費を達成できる。
【0052】
また、ヒータ要求があり、かつ、走行予測時間がB分以上の場合(ステップS14のYes)、暖気促進制御が行われる(S16)。すなわち、走行予測時間が長い場合でかつヒータ要求があった場合、エンジン30の暖気を促進することで、ヒータ要求により使用されたエンジン水温の熱量を補い、早期に所定の水温になるように制御する。所定の水温になればエミッションの悪化や内燃機関等の摺動部の摩擦を低減し、燃費を向上させることができる。なお、図3の車両においても、走行予測時間でなく走行予測距離に基づき、暖気に関する制御を行ってよい。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、走行予測時間(距離)及びヒータ要求に応じて、暖気促進制御を行うことができる。走行予測時間が短い場合(A分以下)には、ヒータ要求があってエンジンの駆動は行わないので、エンジンの駆動が低減され燃費が向上する。また、走行予測時間(距離)が長く(B分以上)かつヒータ要求がある場合、エンジンの冷却水の水温を促進して上昇させることができるため、ハイブリッド車の場合エンジン間欠制御が早期に可能となり、また、ガソリン車やディーゼル車の場合エミッション等が改善され、燃費を向上できる。走行予測時間が比較的短い場合(A〜B分くらい)には、ヒータ要求に応じてエンジンの駆動を行うので、従来と同様の燃費を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】車両の内燃機関制御装置における機能ブロック図である。
【図2】暖気制御の制御手順を示すフローチャート図の一例である。
【図3】車両の内燃機関制御装置における機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
10、30 エンジン
11 CVT
12 ディファレンシャル
14 動力切替装置
15 モータジェネレータ
16 コンバータ付インバータ
17 バッテリ
20、35 ECU
26 カーナビゲーションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関が冷間始動された場合、前記内燃機関を暖機する車両の内燃機関制御装置において、
車両の走行距離を予測する走行距離予測手段と、
前記走行距離予測手段により予測された走行距離が所定以上の場合、前記内燃機関の暖気を促進する暖気促進手段と、
を有することを特徴とする車両の内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記走行距離予測手段は、設定された目的地に応じてナビゲーションシステムが案内する走行経路に基づき前記車両の走行距離を予測する、ことを特徴とする請求項1記載の車両の内燃機関制御装置。
【請求項3】
車両の内燃機関が冷間始動された場合、前記内燃機関を暖機する車両の内燃機関制御装置において、
車両の走行時間を予測する走行時間予測手段と、
前記走行時間予測手段により予測された走行時間が所定以上の場合、前記内燃機関の暖気を促進する暖気促進手段と、
を有することを特徴とする車両の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記走行時間予測手段は、設定された目的地に応じてナビゲーションシステムが案内する走行経路に基づき前記車両の走行時間を予測する、
ことを特徴とする請求項3記載の車両の内燃機関制御装置。
【請求項5】
車両の空調装置の作動を検出する空調装置作動検出手段を有し、
前記暖気促進手段は、前記空調装置作動検出手段により前記空調装置の暖房が作動していると検出された場合、前記内燃機関の暖気を促進する、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の車両の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記暖気促進手段は、前記内燃機関の負荷を増大させて暖気を促進する、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の車両の内燃機関制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−188983(P2006−188983A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1534(P2005−1534)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】