説明

車両の走行安全装置

【課題】 車両の進行方向前方に存在するカーブを通過する際において、適切に安全装置を作動させる。
【解決手段】 作動部64は、カーブ認識部61での道路データに基づく認識結果および比較部63での比較結果に応じて、警報装置およびブレーキアクチュエータ15等からなる安全装置を作動させることを判定した際に、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状とは異なる道路形状が道路形状認識部65により認識されているとき、安全装置の作動を禁止または抑制する。認識カーブ修正部67は、作動部64により安全装置の作動が禁止または抑制された際に、カーブ認識部61および道路形状認識部65によりカーブが認識されている場合、カーブ認識部61が認識したカーブの入口位置を道路形状認識部65が認識したカーブの入口位置に基づき修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、CCDカメラ等の撮像装置により走行中の道路の状況を検出した結果と、予め記憶している道路地図情報に基づき検出した道路の状況とが一致する場合に、減速等により車両挙動を制御し、一方、一致しない場合には、減速等により車両挙動を制御する制御動作を中止または制御動作の制御量を低減する車両運動制御装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−208386号公報
【特許文献2】特開平11−211492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る車両運動制御装置において、例えばCCDカメラ等の撮像装置は、例えば天候や光の照射状態等の撮影環境に応じて道路の状況を精度良く検出することが困難な場合があり、また、予め記憶している道路地図情報に対しては、一時的な道路規制や最新の道路情報が反映されていない場合があることから、単に、撮像装置の検出結果と道路地図情報に基づく検出結果とが一致する場合に車両挙動を制御するだけでは、制御動作の実行頻度が過剰に低下してしまう虞があり、また、単に、撮像装置の検出結果または道路地図情報に基づく検出結果の何れかに応じて車両挙動を制御するだけでは、適切な制御動作を実行することができなくなるという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両の進行方向前方に存在するカーブを通過する際において、適切に安全装置を作動させることが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置は、道路データを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32、車速センサ33)と、前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識するカーブ認識手段(例えば、実施の形態でのカーブ認識部61)と、前記カーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段(例えば、実施の形態での適正車速設定部62)と、前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段(例えば、実施の形態での比較部63)と、前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段(例えば、実施の形態での作動部64)とを備える車両の走行安全装置であって、自車両に設けられ、自車両の進行方向の道路状況を検知し、検知した道路状況に基づきカーブを含む道路形状を認識する道路形状認識手段(例えば、実施の形態での道路形状認識部65)を備え、前記作動手段は、前記安全装置を作動させることを判定したとき、前記カーブ認識手段が認識したカーブの形状とは異なる道路形状が前記道路形状認識手段により認識されているとき、前記安全装置の作動を禁止または抑制することを特徴としている。
【0005】
上記の車両の走行安全装置によれば、道路データに基づくカーブの認識結果に応じて安全装置を作動させることを判定した際に、道路データに基づき認識したカーブの形状とは異なる道路形状が道路形状認識手段により認識されているとき、安全装置の作動を禁止または抑制することにより、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を道路形状認識手段の認識結果に応じて補うことができる。
つまり、例えば道路データに基づくカーブの認識結果と道路形状認識手段の認識結果とが一致した状態で安全装置を作動させることを判定する場合に比べて、安全装置の作動タイミングや作動量が道路形状認識手段の認識能力(例えば、認識可能領域や認識精度等)に応じて規制されてしまうことを防止しつつ、道路データの誤差や道路データに基づくマップマッチング等の処理の誤差に起因して安全装置の作動に対する信頼度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記道路形状認識手段は、自車両の進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段(例えば、実施の形態での撮影装置16およびレーダ装置17および物体検知部66)を備え、前記物体検知手段により検知された前記物体の位置または移動軌跡の少なくとも何れか算出し、算出した前記位置または前記移動軌跡に基づきカーブを含む道路形状を認識することを特徴としている。
【0007】
上記の車両の走行安全装置によれば、例えばカメラやレーダ等からなる物体検知手段は適宜の検知エリア内に存在する静止物および移動体からなる物体を検知する。道路形状認識手段は、検知された物体の位置や、この位置の時間変化に応じた移動軌跡を算出することで、物体が存在する道路の道路形状を認識する。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記道路形状認識手段は、自車両の進行方向を撮影する撮影手段(例えば、実施の形態での撮影装置16)を備え、前記撮影手段の撮影画像に基づきカーブを含む道路形状を認識することを特徴としている。
【0009】
上記の車両の走行安全装置によれば、道路形状認識手段は、カメラ等の撮影手段の撮影画像に対して所定の画像処理を実行し、例えば走行車線上の走行区分線等を抽出してカーブを含む道路形状を認識する。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記異なる道路形状は、直線状の道路または前記カーブ認識手段が認識したカーブに対して逆極性のカーブであることを特徴としている。
【0011】
上記の車両の走行安全装置によれば、カーブ認識手段がカーブを認識した状態で、道路形状認識手段により直線状の道路または逆極性のカーブが認識された場合には、安全装置の作動を禁止または抑制することにより、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を道路形状認識手段の認識結果に応じて補うことができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記作動手段は、前記安全装置を作動させることを判定したとき、前記カーブ認識手段が認識したカーブの形状とは異なる道路形状が前記道路形状認識手段により認識されているとき、前記カーブ認識手段が認識したカーブの位置が前記道路形状認識手段の認識可能範囲以内に存在する場合に前記安全装置の作動を禁止または抑制することを特徴としている。
【0013】
上記の車両の走行安全装置によれば、カーブ認識手段が認識したカーブの位置が道路形状認識手段の認識可能範囲以内に存在する状態でありながら、カーブの形状とは異なる道路形状、例えば直線状の道路または逆極性のカーブが道路形状認識手段により認識された場合には、安全装置の作動を禁止または抑制することにより、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を道路形状認識手段の認識結果に応じて補うことができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の走行安全装置は、前記カーブ認識手段が認識したカーブの入口位置を、前記道路形状認識手段が認識したカーブの入口位置に基づき修正する修正手段(例えば、実施の形態での認識カーブ修正部67)を備えることを特徴としている。
【0015】
上記の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動判定に利用される道路データを道路形状認識手段の認識結果に応じて修正することで、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の車両の走行安全装置によれば、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を道路形状認識手段の認識結果に応じて補うことができ、例えば安全装置の作動タイミングや作動量が道路形状認識手段の認識能力に応じて規制されてしまうことを防止しつつ、道路データの誤差や道路データに基づくマップマッチング等の処理の誤差に起因して安全装置の作動に対する信頼度が低下してしまうことを抑制することができる。
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、安全装置の作動判定に利用される道路データを道路形状認識手段の認識結果に応じて修正することで、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば、内燃機関11の駆動力を、オートマチックトランスミッション(AT)あるいは無段自動変速機(CVT)等のトランスミッション(T/M)12を介して車両の駆動輪に伝達する車両に搭載され、ナビゲーション装置13と、制御装置14と、ブレーキアクチュエータ15および警報装置(図示略)を具備する安全装置(図示略)と、外界センサをなす撮影装置16およびレーダ装置17とを備えて構成されている。
なお、撮影装置16は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等からなるカメラ16aおよび画像処理部16bを備えて構成され、カメラ16aは、例えばフロントウィンドウの車室内側でルームミラー近傍の位置に配置され、フロントウィンドウ越しに自車両の進行方向前方の所定検知範囲の外界を撮影する。画像処理部16bは、カメラ16aにより撮影して得た画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、画像データを生成して制御装置14へ出力する。
また、レーダ装置17は、例えばレーザ光やミリ波等のレーダ17aおよびレーダ制御部17bとを備えて構成され、レーダ17aは、例えば自車両のボディのノーズ部や車室内のフロントウィンドウ近傍等に配置され、制御装置14からレーダ制御部17bへ入力される制御指令に応じたレーダ制御部17bの制御により、レーザ光やミリ波等の発信信号を適宜の検知方向(例えば、自車両の進行方向前方等)に向けて発信すると共に、この発信信号が自車両の外部の物体(検知対象物)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、反射信号と発信信号とを混合してビート信号を生成して制御装置14へ出力する。
【0019】
ナビゲーション装置13は、例えば現在位置検出部21と、ナビゲーション処理部22と、地図データ記憶部23と、入力部24と、表示部25とを備えて構成されている。
さらに、現在位置検出部21は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号や、例えば適宜の基地局を利用してGPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(Differential)GPS信号等の測位信号を受信する測位信号受信部31と、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角等)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレート等)を検出するジャイロセンサ32と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ33とを備えて構成され、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレート等の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0020】
地図データ記憶部23は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部23は、例えば表示部25において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路データを格納している。
【0021】
ナビゲーション処理部22は、例えば、地図データ記憶部23から取得される道路データに対して、現在位置検出部21における測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れかから得られる車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行い、位置検出の結果を補正すると共に、検出された車両の現在位置、あるいは、各種スイッチやキーボード等からなる入力部24を介して操作者により入力された適宜の車両の位置に対して、表示部25での地図表示を制御する。
また、ナビゲーション処理部22は、例えば車両の経路探索や経路誘導等の処理を実行し、地図データ記憶部23から取得される道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を表示部25へ出力する。
【0022】
制御装置14は、速度制御部41と、エンジン制御部42と、変速制御部43と、ブレーキ制御部44とを備えて構成され、運転者によるアクセルペダルの操作量に係るアクセル開度を検出するアクセル開度センサ51と、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ52と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ53ととから出力される各検出信号が入力されている。
さらに、速度制御部41は、カーブ認識部61と、適正車速設定部62と、比較部63と、作動部64と、道路形状認識部65と、物体検知部66と、認識カーブ修正部67とを備えて構成されている。
【0023】
カーブ認識部61は、地図データ記憶部23に記憶された道路データを取得し、この道路データに基づいて自車両の進行方向の道路形状として道路上に存在するカーブを検出する。
例えばカーブ認識部61は、道路データの基礎となるノードつまり道路形状を把握するための点(例えば、図2に示す白抜き丸および黒丸)と、リンクつまり各ノードを結ぶ線(例えば、図2に示す白抜き丸および黒丸を結ぶ線)とに基づいて、カーブの形状を認識する。そして、例えばカーブの径や曲率および極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を算出し、適正車速設定部62へ出力する。
【0024】
適正車速設定部62は、カーブ認識部61にて認識されたカーブ形状値に基づいて、このカーブを適正に通過可能な車両の速度(適正速度VS)を算出する。そして、適正車速設定部62は設定した適正速度VSのデータを比較部63へ出力する。
ここで、適正車速設定部62は、カーブ通過時に車両の横方向に発生する加速度(横加速度)を算出する横加速度算出部62aを備えている。すなわち、先ず、横加速度算出部62aは、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状に基づいて、このカーブを適正に通過する際に許容される横加速度を算出する。次に、適正車速設定部62は、この横加速度を車両に発生させる車両の速度を算出し、この速度を適正速度VSとして設定する。
なお、カーブ通過時に自車両に許容される横加速度は、路面状況、タイヤの状況、積載の状態等により変化するため、これらを更に考慮して適正速度VSを設定するようにしてもよい。
また、認識されたカーブの形状の手前に上り勾配が存在する場合には、この勾配の大きさに応じて適正速度VSが増大傾向に変化するように設定される。
【0025】
比較部63は、現在位置検出部21の車速センサ33にて検出した車両の速度(現在速度)VPと、適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとを比較して、この比較結果を作動部64へ出力する。
作動部64は、比較部63での比較結果に基づいてエンジン制御部42および変速制御部43およびブレーキ制御部44の作動を制御する。例えば、比較部63での比較結果において、車速センサ33にて検出した現在速度VPと適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとが異なる場合、例えば検出された車両の現在速度VPが適正速度VSよりも高い状態等のように車両が適正車両状態にない場合には、警報装置を作動させて運転者の注意を喚起したり、ブレーキ制御部44を介してブレーキアクチュエータ15を作動させて自動的に車両を減速させる。
【0026】
作動部64にて警報装置およびブレーキアクチュエータ15等からなる安全装置を作動させるタイミングは、車両がカーブ認識部61にて認識したカーブの入口位置に到達するまでに、現在速度VPから適正速度VSまで減速する際に要する時間または距離等に基づいて設定される。
例えば図2に示すように、車両Aが速度V1(例えば、速度V1>適正速度VS)で走行している場合に、進行方向前方に存在するカーブCを適正に通過するためには、カーブCの入口位置CSにて車両の速度が適正速度VSとなるように設定する。
このとき、例えば所定の減速度GS(例えば、0.2G=0.2×9.8m/s)にて、現在の速度V1(例えば、100km/h)から適正速度VS(例えば、40km/h)まで減速する場合には、減速に要する時間TはT=(V1−VS)/GSにより求められる。そして、この時間Tに基づいて、減速に要する距離つまり減速必要距離L0が算出され、カーブCの入口位置CSから、減速必要距離L0だけ手前の減速開始位置C0(図2に示す黒丸C0)が設定される。
【0027】
さらに、例えば、警報を発して運転者に注意を促してから、実際に運転者が反応してブレーキを踏み込むまでの反応時間(例えば、約0.5s)と、運転者がブレーキを踏み込んでから実際にブレーキが効き始めるまでの空走時間(例えば、約0.3s)とを考慮して反応空走距離ΔL0を算出する。これにより、減速開始位置C0(図2に示す黒丸C0)から反応空走距離ΔL0だけ手前の警報開始位置CWが設定される。
すなわち、車両AがカーブCの手前に設定される警報開始位置CWに到達した時点、つまり車両Aの現在位置とカーブCの入口位置CSとの間の距離(減速対象地点間距離Ln)が、下記数式(1)に示すように設定される警報必要距離LWに等しくなった時点で警報を発する。
【0028】
【数1】

【0029】
道路形状認識部65は、例えば撮影装置17から入力される画像データ、あるいは、物体検知部66による検知結果に基づき、自車両の進行方向の道路形状を認識する。
例えば、道路形状認識部65は、撮影装置17から入力される画像データ上において自車両の走行車線に対する走行区分線を検知することで道路形状を認識する。
また、物体検知部66は、撮影装置17から入力される画像データまたはレーダ装置18から出力されるビート信号に基づき、自車両の進行方向におけるカメラ17aまたはレーダ18aの各検知エリア内に存在する静止物および移動体からなる物体を検知し、検知した物体と自車両との相対位置および相対距離および相対速度を検出する。
そして、道路形状認識部65は、物体検知部66により検知された複数の静止物、例えばガードレールやリフレクタ等の道路路側構造物の配置状態や、単一の移動体(例えば、先行車両や対向車両等)の位置の時間変化(つまり移動軌跡)や、複数の移動体の位置状態等に基づき、カーブを含む道路形状を認識する。
【0030】
ここで、作動部64は、カーブ認識部61での道路データに基づく認識結果および比較部63での比較結果に応じて、警報装置およびブレーキアクチュエータ15等からなる安全装置を作動させることを判定した際に、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状とは異なる道路形状が道路形状認識部65により認識されているとき、安全装置の作動を禁止または抑制する。
例えば図3に示すように、自車両Pが進行方向前方のカーブCに接続された直線路Sを走行している状態で、カーブ認識部61での道路データに基づく認識結果においてカーブCが認識されると共に、撮影装置17の検知エリアα内にカーブCの入口位置CSが存在し、道路形状認識部65での画像データに基づく認識結果においてカーブCが認識された場合(例えば、図4に示す画像データ上において実線で示す直線路Sおよび右カーブCRが存在する場合)には、作動部64は、安全装置の作動を禁止または抑制することなしに、通常のモードで安全装置の作動を許可する。
一方、例えば図5に示すように、自車両Pが直線路Sを走行している状態で、カーブ認識部61での道路データに基づく認識結果においてカーブCが認識され、このカーブCの入口位置CSが撮影装置17の検知エリアα内に存在している状態でありながら、道路形状認識部65での画像データに基づく認識結果においてカーブCが認識されず、直線路Sのみが認識された場合(例えば、図4に示す画像データ上において点線で示す直線路Sのみが存在する場合)には、作動部64は、安全装置の作動を禁止または抑制する。
また、例えば自車両が走行中の道路に対して隣接あるいは分岐する他の道路が存在する状態で、ナビゲーション処理部22により他の道路に対して誤ったマップマッチングが実行されたことで、カーブ認識部61での認識結果とは異なる道路形状が道路形状認識部65にて認識された場合にも、作動部64は安全装置の作動を禁止または抑制する。
【0031】
また、認識カーブ修正部67は、作動部64により安全装置の作動が禁止または抑制された際に、カーブ認識部61および道路形状認識部65によりカーブが認識されている場合には、カーブ認識部61が認識したカーブの入口位置を、道路形状認識部65が認識したカーブの入口位置に基づき修正する。
【0032】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作、特に、安全装置の制御を変更する処理について添付図面を参照しながら説明する。
【0033】
先ず、図6に示すステップS01においては、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて、進行方向にカーブ形状が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
次に、ステップS02においては、車両の現在速度VPおよび現在位置を取得する。
次に、ステップS03においては、検出したカーブ形状に対して、例えばカーブの最小径や最大曲率や極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を推定し、推定したカーブ形状値に基づいてカーブ形状を適正に通過可能な適正速度VSを算出する。
【0034】
次に、ステップS04においては、例えば検出した現在速度VPが、算出した適正速度VSよりも大きいか否かを判定することにより、検出したカーブ形状を適正に通過するために減速制御が必要か否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
ステップS05においては、後述する直線路検出処理を実行する。
そして、ステップS06においては、直線路検出処理により直線路が認識されたか否かを判定する。
ステップS06の判定結果が「NO」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、安全装置としてブレーキアクチュエータ15を作動させる減速制御の実行を許可し、一連の処理を終了する。
一方、ステップS06の判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進み、減速制御の実行を不許可とし、一連の処理を終了する。
【0035】
以下に、上述したステップS05での直線路検出処理について説明する。
まず、図7に示すステップS11においては、外界センサをなす撮影装置16またはレーダ装置17から出力される各画像データまたはビート信号に基づき、各撮影装置16またはレーダ装置17の検知エリア内にカーブ形状を検知したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、直線路を認識した状態であると判断して、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進む。
そして、ステップS13においては、検知したカーブが所定以上に緩いカーブであるか否かを判定する。
ステップS13の判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS12に進む。
一方、ステップS13の判定結果が「NO」の場合には、ステップS14に進む。
【0036】
そして、ステップS14においては、撮影装置16またはレーダ装置17により検知されたカーブの極性が、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて認識されたカーブ(地図カーブ)の極性と異なるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS12に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS15に進む。
そして、ステップS15においては、直線路を認識した状態であると判断して、一連の処理を終了する。
【0037】
また、以下に、上述したステップS05での直線路検出処理として、物体検知部66による検知結果に基づく処理について説明する。
先ず、図8に示すステップS21においては、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて認識されたカーブ(地図カーブ)の位置付近に物体が検知されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS22に進み、このステップS22においては、道路データのみに基づきカーブ路を認識した状態であると判断して、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS23に進む。
【0038】
そして、ステップS23においては、検知した物体が静止物であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合、つまり移動体である場合には、ステップS24に進み、このステップS24においては、移動体の移動軌跡を取得し、後述するステップS27に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS25に進む。
そして、ステップS25においては、検知された複数の静止物が連続的に配置しているか否かを判定する。
ステップS25の判定結果が「NO」の場合には、道路形状認識部65による道路形状の認識結果に対する信頼度が相対的に低いと判断して、上述したステップS22に進む。
一方、ステップS25の判定結果が「YES」の場合には、ステップS26に進む。
そして、ステップS26においては、複数の静止物の配列座標を取得する。
【0039】
そして、ステップS27においては、取得した移動軌跡または配列座標がカーブ形状をなすか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS28に進み、このステップS28においては、直線路を認識した状態であると判断して、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS29に進む。
そして、ステップS29においては、検知したカーブが所定以上に緩いカーブであるか否かを判定する。
ステップS29の判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS28に進む。
一方、ステップS29の判定結果が「NO」の場合には、ステップS30に進む。
【0040】
そして、ステップS30においては、検知されたカーブの極性が、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて認識されたカーブ(地図カーブ)の極性と異なるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS28に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS31に進む。
そして、ステップS31においては、道路データおよび外界センサによりカーブ路を認識した状態であると判断して、一連の処理を終了する。
【0041】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、道路データに基づくカーブの認識結果に応じて安全装置を作動させることを判定した際に、道路データに基づき認識したカーブの形状とは異なる道路形状が道路形状認識手段により認識されているとき、安全装置の作動を禁止または抑制することにより、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を道路形状認識手段の認識結果に応じて補うことができる。
つまり、例えば道路データに基づくカーブの認識結果と道路形状認識部65の認識結果とが一致した状態で安全装置を作動させることを判定する場合に比べて、安全装置の作動タイミングや作動量が道路形状認識部65の認識能力(例えば、認識可能領域や認識精度等)に応じて規制されてしまうことを防止しつつ、道路データの誤差や道路データに基づくマップマッチング等の処理の誤差に起因して安全装置の作動に対する信頼度が低下してしまうことを抑制することができる。
また、安全装置の作動判定に利用される道路データを道路形状認識手段の認識結果に応じて修正することで、道路データに基づく安全装置の作動に対する信頼度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】車両がカーブに進入する際の警報の作動タイミングを示す図である。
【図3】カーブCに接続された直線路Sを走行する自車両Pに対し、道路データおよび外界センサにより認識された道路形状の一例を示す図である。
【図4】画像データの一例を示す図である。
【図5】直線路Sを走行する自車両Pに対し、道路データおよび外界センサにより認識された道路形状の一例を示す図である。
【図6】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す直線路検出処理を示すフローチャートである。
【図8】図6に示す直線路検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 車両の走行安全装置
16 撮影装置(物体検知手段、撮影手段)
17 レーダ装置(物体検知手段)
21 現在位置検出部(自車位置検出手段)
23 地図データ記憶部(記憶手段)
32 ジャイロセンサ(車両状態検出手段)
33 車速センサ(車両状態検出手段)
61 カーブ認識部(カーブ認識手段)
62 適正車速設定部(適正車両状態設定手段)
63 比較部(比較手段)
64 作動部(作動手段)
65 道路形状認識部(道路形状認識手段)
66 物体検知部(物体検知手段)
67 認識カーブ修正部(修正手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記記憶手段が記憶した前記道路データに基づき自車両の進行方向に存在するカーブの形状を認識するカーブ認識手段と、
前記カーブ認識手段が認識した前記カーブの形状に基づき該カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段と、
前記車両状態検出手段が検出した前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段が設定した前記適正車両状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段と
を備える車両の走行安全装置であって、
自車両に設けられ、自車両の進行方向の道路状況を検知し、検知した道路状況に基づきカーブを含む道路形状を認識する道路形状認識手段を備え、
前記作動手段は、前記安全装置を作動させることを判定したとき、前記カーブ認識手段が認識したカーブの形状とは異なる道路形状が前記道路形状認識手段により認識されているとき、前記安全装置の作動を禁止または抑制することを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記道路形状認識手段は、自車両の進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段を備え、前記物体検知手段により検知された前記物体の位置または移動軌跡の少なくとも何れか算出し、算出した前記位置または前記移動軌跡に基づきカーブを含む道路形状を認識することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記道路形状認識手段は、自車両の進行方向を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段の撮影画像に基づきカーブを含む道路形状を認識することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項4】
前記異なる道路形状は、直線状の道路または前記カーブ認識手段が認識したカーブに対して逆極性のカーブであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項5】
前記作動手段は、前記安全装置を作動させることを判定したとき、前記カーブ認識手段が認識したカーブの形状とは異なる道路形状が前記道路形状認識手段により認識されているとき、前記カーブ認識手段が認識したカーブの位置が前記道路形状認識手段の認識可能範囲以内に存在する場合に前記安全装置の作動を禁止または抑制することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項6】
前記カーブ認識手段が認識したカーブの入口位置を、前記道路形状認識手段が認識したカーブの入口位置に基づき修正する修正手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−137261(P2006−137261A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327081(P2004−327081)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】