電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置及びシステム
【課題】高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを有する電界効果型トランジスタを提供する。
【解決手段】ゲート電圧を印加するためのゲート電極26と、電流を取り出すためのソース電極23及びドレイン電極24と、ソース電極23及びドレイン電極24に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層22と、ゲート電極26と活性層22との間に設けられたゲート絶縁層25とを備えている。そして、活性層22を形成する際に流す酸素ガスの流量は、酸素分圧が1.7×10−3Paとなるように調整されており、活性層22を構成する酸化物半導体は、体積抵抗率が10Ωcmで、酸素が非化学量論組成であるMgIn2O4系酸化物半導体となる。
【解決手段】ゲート電圧を印加するためのゲート電極26と、電流を取り出すためのソース電極23及びドレイン電極24と、ソース電極23及びドレイン電極24に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層22と、ゲート電極26と活性層22との間に設けられたゲート絶縁層25とを備えている。そして、活性層22を形成する際に流す酸素ガスの流量は、酸素分圧が1.7×10−3Paとなるように調整されており、活性層22を構成する酸化物半導体は、体積抵抗率が10Ωcmで、酸素が非化学量論組成であるMgIn2O4系酸化物半導体となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置及びシステムに係り、更に詳しくは、酸化物半導体からなる活性層を有する電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子及び画像表示装置、該画像表示装置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)は、ゲート電極に電圧をかけ、チャネルの電界により電子または正孔の流れに関門(ゲート)を設ける原理で、ソース電極とドレイン電極間の電流を制御するトランジスタである。
【0003】
FETはその特性から、スイッチング素子や増幅素子として利用されている。そして、FETは、ゲート電流が低いことに加え、構造が平面的であるため、バイポーラトランジスタと比較して作製や集積化が容易である。そのため、現在の電子機器で使用される集積回路では必要不可欠な素子となっている。
【0004】
FETは、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)として、アクティブマトリックス方式のディスプレイに応用されている。
【0005】
近年、平面薄型ディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)として、液晶ディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、電子ペーパー等が実用化されている。
【0006】
これらFPDは、非晶質シリコンや多結晶シリコンを活性層に用いたTFTを含む駆動回路により駆動されている。そして、FPDは、さらなる大型化、高精細化、高速駆動性が求められており、それに伴って、キャリア移動度が高く、特性の経時変化が小さく、素子間のばらつきが小さいTFTが求められている。
【0007】
しかしながら、非晶質シリコン(a−Si)や多結晶シリコン(特に低温ポリシリコン:LTPS)を活性層に用いたTFTは、それぞれに一長一短があり、同時に全ての要求を満たすことは困難であった。
【0008】
例えば、a−SiTFTは大画面のLCD(Liquid Crystal Display)を高速駆動するには移動度が不足しており、また連続駆動時の閾値電圧シフトが大きいという欠点を抱えている。LTPS−TFTは移動度は大きいが、エキシマレーザーアニーリングによって活性層を結晶化するプロセスのために閾値電圧のバラツキが大きく、量産ラインのマザーガラスサイズを大きくできないという弱点が存在する。
【0009】
また、軽量、フレキシブル性、高い耐衝撃性、低コストといった特徴を持つディスプレイの実現に向け、プラスチックフィルム等のフレキシブル基板を用いることが検討されている。
【0010】
この場合、製造時において、比較的高温でのプロセスが必要となるシリコンは、基板の耐熱性の点から用いることはできなかった。
【0011】
そこで、これらの要求に応えるため、非晶質シリコンを超えるキャリア移動度が期待できる酸化物半導体を用いたTFTの開発が活発に行われた。(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1及び2参照)。
【0012】
特許文献1には、3d遷移金属元素をドープした酸化亜鉛等の透明チャネル層を用い、熱処理を不要とした透明な半導体デバイスが開示されている。
【0013】
特許文献2には、活性層にZnOを用いたTFTが開示されている。
【0014】
特許文献3及び特許文献4には、亜鉛(Zn)−ガリウム(Ga)、カドミウム(Cd)−ガリウム(Ga)及びカドミウム(Cd)−インジウム(In)を含む金属酸化物のうちの1つ又は複数を含むチャネルを有する半導体デバイスが開示されている。
【0015】
特許文献5には、ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In,Fe,Ga,又はAl,m=1以上50未満の整数)薄膜を活性層として用いた透明薄膜電界効果型トランジスタが開示されている。
【0016】
非特許文献1には、チャネルに単結晶のInGaO3(ZnO)5を用いたTFTが開示されている。
【0017】
非特許文献2には、活性層に非晶質のIn−Ga−Zn系酸化物を用いたTFTが開示されている。
【0018】
ところで、非特許文献3には、MgIn2O4−x焼結体の化学的状態と光学的・電気的性質が開示されている。また、非特許文献4には、高い電気伝導性を有するMgIn2O4が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ディスプレイの駆動回路に用いられるTFTは、いわゆるノーマリーオフの特性を有することが必須である。しかしながら、ZnO、CdO、Cd−In系酸化物、及びCd−Ga系酸化物を活性層に用いた場合には、酸素欠損或いは格子間金属原子が生じ易く、電子キャリア濃度が高くなり、ノーマリーオフを実現することは困難であった。
【0020】
そこで、電子キャリア濃度を下げるために微量金属をドーピングをすることが提案されたが(特許文献1参照)、この微量金属のドーピングを広い面積にわたって均一に行うことは困難であった。
【0021】
また、特許文献2に開示されているTFTでは、活性層の成膜時に酸素量を精密に制御することによって、ノーマリーオフを実現しているが、プロセスマージンが狭く実用的ではなかった。
【0022】
TFTにおけるもう一つの重要な特性として、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗が上げられる。特許文献3及び4に開示されている半導体デバイスでは、Zn−Ga系酸化物の伝導帯の底のエネルギーレベルが非常に高く、電子キャリアの注入は困難で、良好な接合を得ることは困難であった。(Appl.Phys.Lett.64,1077(1994)参照)
また、ZnO及びIn−Ga−Zn−O系酸化物の結晶構造は、ウルツ型及びホモロガス型の六方晶系で異方性が強いため、薄膜の配向制御が必須で、大面積のディスプレイへの応用には困難が予想される。
【0023】
そこで、活性層の非晶質化が提案されているが、ZnOは容易に結晶化してしまい、また、In−Ga−Zn−O系酸化物も高移動度にするためにZn濃度を高めると容易に結晶化することが知られている。
【0024】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物は、三つの金属元素から成る系である為に組成の制御が難しく、スパッタリング法によって成膜した場合に、膜組成がターゲット組成から大きくずれるという不都合があった。
【0025】
更に、In−Ga−Zn−O系酸化物では、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗が比較的大きく、接触抵抗分の電圧降下が生じるためにトランジスタのオン電流が低下したり、個々のTFTで接触抵抗の大きさがばらつくためにトランジスタの特性にもばらつきが生じたりする等の特性劣化が発生し易く問題となっていた。
【0026】
本発明では、主に二つの金属元素から成り組成の制御が容易な活性層材料を用い、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗を小さく抑えて特性を向上させた、キャリア移動度の高い電界効果型トランジスタを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
非特許文献3及び非特許文献4に開示されているMg−In系酸化物は、高い電気伝導度を有しているため、TFTの材料には不適であるとされていた。
【0028】
しかしながら、発明者等は、種々の実験等を繰り返し行った結果、Mg−In系酸化物を用いた電界効果型トランジスタが可能であることを見出した。
【0029】
本発明は、上述した発明者等の得た新規知見に基づいてなされたもので、第1の観点からすると、ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層と;前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;を備える電界効果型トランジスタである。
【0030】
これによれば、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現することが可能となる。
【0031】
本発明は、第2の観点からすると、駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と;本発明の電界効果型トランジスタを含み、前記光制御素子を駆動する駆動回路と;を備える表示素子である。
【0032】
これによれば、本発明の電界効果型トランジスタを備えているため、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0033】
本発明は、第3の観点からすると、画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、マトリックス状に配置された複数の本発明の表示素子と;前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と;前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置と;を備える画像表示装置である。
【0034】
これによれば、本発明の表示素子を有しているため、結果として、大画面で高品質の画像を表示することが可能となる。
【0035】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の画像表示装置と;表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置と;を備えるシステムである。
【0036】
これによれば、本発明の画像表示装置を備えているため、その結果、画像情報を高精細に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るテレビジョン装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1における画像表示装置を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における画像表示装置を説明するための図(その2)である。
【図4】図1における画像表示装置を説明するための図(その3)である。
【図5】表示素子を説明するための図である。
【図6】有機EL素子を説明するための図である。
【図7】電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図8】実施例1の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図9】比較例3の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図10】比較例4の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図11】有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置を説明するための図である。
【図12】表示制御装置を説明するための図である。
【図13】有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置の変形例を説明するための図である。
【図14】「ボトムコンタクト・ボトムゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図15】「トップコンタクト・トップゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図16】「ボトムコンタクト・トップゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図17】電界効果型トランジスタが「トップコンタクト・トップゲート型」のときの、有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置例1を説明するための図である。
【図18】電界効果型トランジスタが「トップコンタクト・トップゲート型」のときの、有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置例2を説明するための図である。
【図19】変形例1の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図20】変形例2の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図21】変形例3の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図22】液晶ディスプレイを説明するための図である。
【図23】図22における表示素子を説明するための図である。
【図24】比較例1の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図25】実施例2の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図26】比較例2の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るシステムとしてのテレビジョン装置100の概略構成が示されている。なお、図1における接続線は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0039】
このテレビジョン装置100は、主制御装置101、チューナ103、ADコンバータ(ADC)104、復調回路105、TS(Transport Stream)デコーダ106、音声デコーダ111、DAコンバータ(DAC)112、音声出力回路113、スピーカ114、映像デコーダ121、映像・OSD合成回路122、映像出力回路123、画像表示装置124、OSD描画回路125、メモリ131、操作装置132、ドライブインターフェース(ドライブIF)141、ハードディスク装置142、光ディスク装置143、IR受光器151、及び通信制御装置152などを備えている。
【0040】
主制御装置101は、テレビジョン装置100の全体を制御し、CPU、フラッシュROM、及びRAMなどから構成されている。フラッシュROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム、及びCPUでの処理に用いられる各種データなどが格納されている。また、RAMは、作業用のメモリである。
【0041】
チューナ103は、アンテナ210で受信された放送波の中から、予め設定されているチャンネルの放送を選局する。
【0042】
ADC104は、チューナ103の出力信号(アナログ情報)をデジタル情報に変換する。
【0043】
復調回路105は、ADC104からのデジタル情報を復調する。
【0044】
TSデコーダ106は、復調回路105の出力信号をTSデコードし、音声情報及び映像情報を分離する。
【0045】
音声デコーダ111は、TSデコーダ106からの音声情報をデコードする。
【0046】
DAコンバータ(DAC)112は、音声デコーダ111の出力信号をアナログ信号に変換する。
【0047】
音声出力回路113は、DAコンバータ(DAC)112の出力信号をスピーカ114に出力する。
【0048】
映像デコーダ121は、TSデコーダ106からの映像情報をデコードする。
【0049】
映像・OSD合成回路122は、映像デコーダ121の出力信号とOSD描画回路125の出力信号を合成する。
【0050】
映像出力回路123は、映像・OSD合成回路122の出力信号を画像表示装置124に出力する。
【0051】
OSD描画回路125は、画像表示装置124の画面に文字や図形を表示するためのキャラクタ・ジェネレータを備えており、操作装置132やIR受光器151からの指示に応じて表示情報が含まれる信号を生成する。
【0052】
メモリ131には、AV(Audio−Visual)データ等が一時的に蓄積される。
【0053】
操作装置132は、例えばコントロールパネルなどの入力媒体(図示省略)を備え、ユーザから入力された各種情報を主制御装置101に通知する。
【0054】
ドライブIF141は、双方向の通信インターフェースであり、一例としてATAPI(AT Attachment Packet Interface)に準拠している。
【0055】
ハードディスク装置142は、ハードディスクと、該ハードディスクを駆動するための駆動装置などから構成されている。駆動装置は、ハードディスクにデータを記録するとともに、ハードディスクに記録されているデータを再生する。
【0056】
光ディスク装置143は、光ディスク(例えば、DVD)にデータを記録するとともに、光ディスクに記録されているデータを再生する。
【0057】
IR受光器151は、リモコン送信機220からの光信号を受信し、主制御装置101に通知する。
【0058】
通信制御装置152は、インターネットとの通信を制御する。インターネットを介して各種情報を取得することができる。
【0059】
画像表示装置124は、一例として図2に示されるように、表示器300、及び表示制御装置400を有している。
【0060】
表示器300は、一例として図3に示されるように、複数(ここでは、n×m個)の表示素子302がマトリックス状に配置されたディスプレイ310を有している。
【0061】
また、ディスプレイ310は、一例として図4に示されるように、X軸方向に沿って等間隔に配置されているn本の走査線(X0、X1、X2、X3、・・・・・、Xn−2、Xn−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本のデータ線(Y0、Y1、Y2、Y3、・・・・・、Ym−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本の電流供給線(Y0i、Y1i、Y2i、Y3i、・・・・・、Ym−1i)を有している。
そして、走査線とデータ線とによって、表示素子を特定することができる。
【0062】
各表示素子は、一例として図5に示されるように、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子350と、該有機EL素子350を発光させるためのドライブ回路320とを有している。すなわち、ディスプレイ310は、いわゆるアクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイである。また、ディスプレイ310は、カラー対応の32インチ型のディスプレイである。なお、大きさは、これに限定されるものではない。
【0063】
有機EL素子350は、一例として図6に示されるように、有機EL薄膜層340と、陰極312と、陽極314とを有している。
【0064】
陰極312には、アルミニウム(Al)が用いられている。なお、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金、アルミニウム(Al)−リチウム(Li)合金、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いても良い。
【0065】
陽極314には、ITO(Indium Tin Oxide)が用いられている。なお、In2O3、SnO2、ZnOなどの導電性を有する酸化物、銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金などを用いても良い。
【0066】
有機EL薄膜層340は、電子輸送層342と発光層344と正孔輸送層346とを有している。そして、電子輸送層342に陰極312が接続され、正孔輸送層346に陽極314が接続されている。陽極314と陰極312との間に所定の電圧を印加すると発光層344が発光する。
【0067】
図5に戻り、ドライブ回路320は、2つの電界効果型トランジスタ(10、20)、及びコンデンサ30を有している。
【0068】
電界効果型トランジスタ10は、スイッチ素子として動作する。ゲート電極Gは、所定の走査線に接続され、ソース電極Sは、所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dは、コンデンサ30の一方の端子に接続されている。
【0069】
コンデンサ30は、電界効果型トランジスタ10の状態、すなわちデータを記憶しておくためのものである。コンデンサ30の他方の端子は、所定の電流供給線に接続されている。
【0070】
電界効果型トランジスタ20は、有機EL素子350に大きな電流を供給するためのものである。ゲート電極Gは、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dと接続されている。そして、ドレイン電極Dは、有機EL素子350の陽極314に接続され、ソース電極Sは、所定の電流供給線に接続されている。
【0071】
そこで、電界効果型トランジスタ10が「オン」状態になると、電界効果型トランジスタ20によって、有機EL素子350は駆動される。
【0072】
各電界効果型トランジスタは、一例として図7に示されるように、基板21、活性層22、ソース電極23、ドレイン電極24、ゲート絶縁層25、及びゲート電極26を有している。
【0073】
ここでは、各電界効果型トランジスタは、いわゆる「トップコンタクト・ボトムゲート型」である。
【0074】
各電界効果型トランジスタの作製方法について簡単に説明する。
(1)ガラス製の基板21上に、100nmの厚さになるようにアルミニウム(Al)を蒸着する。そして、フォトリソグラフィを行ってライン状にパターニングし、ゲート電極26を形成する。
(2)プラズマCVDにより、200nmの厚さになるようにSiO2を成膜し、ゲート絶縁膜25を形成する。
(3)ゲート絶縁膜25上へのレジストの塗布、露光、現像を行い、活性層22に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。
(4)高周波スパッタ法により、活性層22となるMg−In系酸化物膜を形成する。
【0075】
ここでは、ターゲットとして、In2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)を用いた。スパッタチャンバー内の到達真空度は2×10−5Paとした。スパッタ時に流すアルゴンガスと酸素ガスの流量を調整し、全圧を0.3Pa、酸素分圧を1.7×10−3Paとした。スパッタ中は、基板21を保持するホルダを水冷により冷却することで、基板21の温度を15度〜35度の範囲内に制御した。スパッタパワーを150W、スパッタ時間を30分とし、厚さ100nmのMg−In系酸化物膜を形成した。
(5)レジストの除去によってリフトオフを行い、活性層22を所望の形状とする。
(6)フォトリソグラフィとリフトオフ法により、厚さ100nmのアルミニウム(Al)からなるソース電極とドレイン電極を形成する。ここでは、チャネル長は50μm、チャネル幅は2mmとした。
【0076】
ところで、上記と同じ条件でガラス基板上に成膜したMg−In系酸化物膜の体積抵抗率を測定したところ、10Ωcmであった。また、平行光学系を有するX線回折装置を用いて、上記Mg−In系酸化物膜を銅(Cu)のKα線でスキャン(入射角=1度、2θ=10度〜70度)したところ、結晶性を示すシャープなピークは観測されず、非晶質状態であることが確認された。
【0077】
上述した作製方法で作製された電界効果型トランジスタは、電子をキャリアとする典型的なn型トランジスタであった。この電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図8に示されている。これによると、ゲート電圧VGを1Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSは最小値4pAとなっている。そして、ゲート電圧VGが0Vのときには、ソース・ドレイン間電流IDSは上記最小値に近い値であった。すなわち、良好なノーマリーオフ特性を示している。
【0078】
また、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSは90μAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は、2.1cm2/Vsであった。
【0079】
すなわち、本実施形態における電界効果型トランジスタは、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。
【0080】
比較例1として、図24に示されるような、非晶質シリコンを活性層とする電界効果型トランジスタを下記の方法で作製した。
(1)ガラス製の基板500上に、200nmの厚さになるようにモリブデン(Mo)をスパッタする。そして、フォトリソグラフィによってライン状にパターニングし、ゲート電極501を形成する。
(2)プラズマCVDにより、ゲート絶縁膜502となるSiNx、活性層503となる非晶質シリコン(a−Si:H)、及びリンのドープされた非晶質シリコン504(n+−a−Si:H)の3層を続けて成膜する。膜厚はそれぞれ、300nm、200nm、50nmである。活性層503の成膜時は、基板温度を250℃とし、SiH4流量35sccm、H2流量35sccm、圧力0.1Torr、パワー密度100mW/cm2とした。n+−a−Si:Hは、活性層503とソース・ドレイン電極505及び506との間のコンタクトを良くするために設けている。続いて、フォトリソグラフィにより、TFTをアイランド化する。
(3)厚さ100nmのアルミニウム(Al)層を形成し、フォトリソグラフィによりソース電極505及びドレイン電極506の形状にこれをパターニングする。
(4)ソース・ドレイン電極505及び506をマスクとして、リアクティブイオンエッチング(RIE)によりバックチャネルをエッチングする。これによりソース電極とドレイン電極の間(チャネル部)のn+−a−Si:Hを除去し、図24の電界効果型トランジスタを得る。チャネル長は50μm、チャネル幅は0.2mmとした。
【0081】
上述した電界効果型トランジスタは典型的なn型トランジスタの特性を示した。ソース・ドレイン間電圧VDSを10Vとした時、ゲート電圧VG=0Vではトランジスタはオフ状態にあり、ソース・ドレイン間電流IDSは約10pAであった。また、VG=20Vとした時のIDSは3μAであり、飽和領域において算出した電界効果移動度は0.3cm2/Vsとなった。
【0082】
以上の実施例1と比較例1より、Mg−In系酸化物膜を活性層とする電界効果型トランジスタにおいて、a−Siを活性層とする典型的なトランジスタよりも高いキャリア移動度が達成できることが示された。
【0083】
本発明の第二の実施形態として、図14に示すようなボトムゲート・ボトムコンタクト型のトランジスタを以下の手順で作製した。
(1)ガラス製の基板21上に、100nmの厚さになるようにアルミニウム(Al)を蒸着する。そして、フォトリソグラフィによりライン状にパターニングし、ゲート電極26を形成する。
(2)プラズマCVDにより、200nmの厚さになるようにSiO2を成膜し、ゲート絶縁膜25を形成する。
(3)DCスパッタ法により、ソース電極23、ドレイン電極24となるITO膜を形成する。フォトリソグラフィにより、所望の電極形状にパターニングする。
(4)レジストの塗布、露光、現像を行い、活性層22に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。
(5)高周波スパッタ法により、活性層22となるMg−In系酸化物膜を形成する。成膜条件は実施例1と同様とする。
(6)レジストの除去によってリフトオフを行い、活性層22を所望の形状とする。
なお、Mg−In系酸化物膜の成膜条件は実施例1と同じであるため、実施例2の膜も非晶質状態であり約10Ωcmの体積抵抗率を持つ。
【0084】
以上の工程により、チャネル長5μm、チャネル幅1.5mmの電界効果型トランジスタを得た。また、同工程を繰り返し行い、4つのサンプルを作製した。
【0085】
これら4つの電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン電圧VDSを20Vとした時のゲート電圧VGとソース・ドレイン電流IDSとの関係を図25に示す。1つの実線及び3つの異なるパターンの点線でそれぞれ示す4つのトランジスタの特性は良く一致しており、再現性良く良好な特性のトランジスタが実現できている。飽和領域において算出した電界効果移動度は0.8〜1.1cm2/Vsであった。
【0086】
また、ソース電極と活性層及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗を測定したところ、約2kΩであった。
【0087】
比較例2として、活性層を形成する材料を非晶質In−Ga−Zn系酸化物とした他は実施例2と同様に電界効果型トランジスタを作製した。
【0088】
In−Ga−Zn系酸化物膜はDCスパッタ法で成膜した。ターゲットには、InGaZnO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)を用いた。スパッタチャンバー内の到達真空度は2×10−5Paとした。スパッタ時に流すアルゴンガスと酸素ガスの流量を調整し、全圧を0.7Pa、酸素分圧を1.16×10−2Paとした。スパッタ中は、基板21を保持するホルダを水冷により冷却することで、基板21の温度を15度〜35度の範囲内に制御した。スパッタパワーを140W、スパッタ時間を30分とし、厚さ100nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜を形成した。
【0089】
実施例2と同様の工程により、チャネル長5μm、チャネル幅1.5mmの電界効果型トランジスタを得た。また、同工程を繰り返し行い、4つのサンプルを作製した。
【0090】
これら4つの電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン電圧VDSを20Vとした時のゲート電圧VGとソース・ドレイン電流IDSとの関係を図26に示す。1つの実線及び3つの異なるパターンの点線でそれぞれ示す4つのトランジスタの特性は、明らかにばらついており、例えばトランジスタがオン状態の時の電流値にはサンプル間で大きな差が見られる。飽和領域において算出した電界効果移動度も0.8cm2/Vsから3.0cm2/Vsの間でばらついていた。
【0091】
ソース電極と活性層及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗は50kΩ前後であった。一方で、トランジスタがオン状態(例えばVG=20V)の時のチャネルの抵抗を調べると、約5kΩと見積もられる。このサンプルでは、チャネル抵抗よりも接触抵抗の方が大きいために接触抵抗の影響が無視できず、特性が不安定になっている。接触抵抗の大きさはサンプルによってばらつく傾向があり、これがトランジスタ特性のばらつきの原因となっている。
【0092】
実施例2と比較例2より、活性層にMg−In系酸化物を用いることで、In−Ga−Zn系酸化物よりも接触抵抗を1桁以上小さくでき、特性の均一なトランジスタが得られることがわかる。
【0093】
比較例3として、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を、上述した作製方法での酸素分圧よりも小さい1.3×10−3Paとした以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。比較例3の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図9に示されている。これによると、ゲート電圧VGを−40Vから20Vまで変化させてもソース・ドレイン間電流IDSの変化は非常に小さく、このゲート電圧VGの電圧範囲内では「オフ」状態が実現できなかった。なお、この条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は4×10−3Ωcmであった。
【0094】
種々の実験から、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を下げるほど、得られるMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は下がり、作製された電界効果型トランジスタの閾値電圧はマイナス方向にシフトすることが判明した。そして、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率とノーマリーオフ特性との関連性について検討した結果、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率が10−2Ωcm未満の場合には、ノーマリーオフ特性が実現できないことが判明した。
【0095】
比較例4として、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を、上述した作製方法での酸素分圧よりも大きい5.0×10−3Paとした以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。比較例4の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図10に示されている。これによると、ゲート電圧VGを5Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値0.5pAとなり、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、IDS=0.14nAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は7×10−6cm2/Vsであり、電界効果型トランジスタとして必要とされる値よりも小さかった。なお、この条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は2×109Ωcmであった。
【0096】
種々の実験から、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を上げるほど、得られるMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は上がり、作製された電界効果型トランジスタの「オン」電流の値と電界効果移動度が減少する傾向にあることが判明した。そして、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率と電界効果移動度との関連性について検討した結果、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率が109Ωcmを超えると、電界効果移動度は1×10−5cm2/Vsを下回り、実用に適さないほどトランジスタ特性が悪化することが判明した。
【0097】
実施例1、2、比較例3、4、変形例1〜3について、活性層であるMg−In系酸化物膜の体積抵抗率とトランジスタ特性をまとめたものを表1に示す。
【0098】
【表1】
ノーマリーオフの特性と高いキャリア移動度を実現する為には、活性層とするMg−I
n系酸化物膜の体積抵抗率を10−2Ωcm以上109Ωcm以下とすることが好ましい。
【0099】
抵抗率は主にキャリア密度と移動度に依存するため、これらを意図的に変えることによって抵抗率を制御することができる。Mg−In系酸化物膜の抵抗率の制御方法としては、膜中の酸素量(酸素欠陥の密度)を調整することによってキャリア密度を変える方法が有効である。上述のように、スパッタ成膜時の酸素分圧を変えると形成される膜の抵抗率が変化する。スパッタ以外の方法で膜を形成する場合においても、プロセス中の雰囲気を制御することで目的の抵抗率を持つ膜が形成できる。また、膜を形成した後のアニールによっても抵抗率は変化するため、アニール温度や雰囲気を最適化する方法も有効である。或いは、Mg−In系酸化物膜を構成する各元素の一部を他の元素で置換することによっても抵抗率を変えることが出来る。
【0100】
図11には、表示素子302における有機EL素子350と実施例1に記載の電界効果型トランジスタ20との位置関係が示されている。ここでは、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置されている。なお、電界効果型トランジスタ10及びコンデンサ30も同一基板上に形成されている。
【0101】
表示素子302は、従来と同様の装置を用いて、従来と同様の工程(製造プロセス)によって製造することができる。
【0102】
表示制御装置400は、一例として図12に示されるように、画像データ処理回路402、走査線駆動回路404、及びデータ線駆動回路406を有している。
【0103】
画像データ処理回路402は、映像出力回路123の出力信号に基づいて、ディスプレイ310における複数の表示素子302の輝度を判断する。
【0104】
走査線駆動回路404は、画像データ処理回路402の指示に応じてn本の走査線に個別に電圧を印加する。
【0105】
データ線駆動回路406は、画像データ処理回路402の指示に応じてm本のデータ線に個別に電圧を印加する。
【0106】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るテレビジョン装置100では、映像デコーダ121と映像・OSD合成回路122と映像出力回路123とOSD描画回路125とによって画像データ作成装置が構成されている。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に係る電界効果型トランジスタによると、ゲート電圧を印加するためのゲート電極26と、電流を取り出すためのソース電極23及びドレイン電極24と、ソース電極23及びドレイン電極24に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層22と、ゲート電極26と活性層22との間に設けられたゲート絶縁層25とを備えている。
【0108】
そして、活性層22を形成する際に流す酸素ガスの流量は、酸素分圧が1.7×10−3Paとなるように調整されており、活性層22を構成する酸化物半導体は、体積抵抗率が10Ωcmで、酸素が非化学量論組成であるMgIn2O4系酸化物半導体である。
【0109】
この場合、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを両立させることが可能である。
【0110】
また、本実施形態に係る表示素子302によると、電界効果型トランジスタ10及び電界効果型トランジスタ20を備えているため、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくすることが可能である。
【0111】
また、本実施形態に係る画像表示装置124によると、表示素子302を有しているため、結果として、大画面で高品質の画像を表示することが可能である。
【0112】
また、本実施形態に係るテレビジョン装置100によると、画像表示装置124を備えているため、その結果、画像情報を高精細に表示することが可能である。
【0113】
なお、上記実施形態では、有機EL薄膜層が、電子輸送層と発光層と正孔輸送層とからなる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電子輸送層と発光層が1つの層であっても良い。また、電子輸送層と陰極との間に電子注入層が設けられても良い。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層が設けられても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、基板側から発光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション」の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、陽極314に銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金などの高反射率電極、陰極312にマグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金などの半透明電極或いはITO等の透明電極を用いて基板と反対側から光を取り出しても良い。
【0115】
また、上記実施形態では、表示素子302において、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図13に示されるように、電界効果型トランジスタ20の上に有機EL素子350が配置されても良い。この場合には、ゲート電極26に透明性が要求されるので、ゲート電極26には、ITO、In2O3、SnO2、ZnO、Gaが添加されたZnO、Alが添加されたZnO、Sbが添加されたSnO2などの導電性を有する透明な酸化物が用いられる。
【0116】
また、上記実施形態では、電界効果型トランジスタがいわゆる「トップコンタクト・ボトムゲート型」の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示されるように、いわゆる「ボトムコンタクト・ボトムゲート型」であっても良い。また、図15に示されるように、いわゆる「トップコンタクト・トップゲート型」であっても良い。さらに、図16に示されるように、いわゆる「ボトムコンタクト・トップゲート型」であっても良い。
【0117】
そして、電界効果型トランジスタが「トップコンタクト・トップゲート型」のときの電界効果型トランジスタ20と有機EL素子350の配置例が、図17及び図18に示されている。なお、図17及び図18における符号360は絶縁層である。
【0118】
また、上記実施形態では、基板21がガラス製の平板である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セラミックス製やプラスチック製の平板、あるいはプラスチック製のフィルムを用いることができる。
【0119】
また、上記実施形態では、各電極の材料がアルミニウム(Al)の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各電極に、クロム(Cr)、金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)などの単体の金属膜、これらの金属膜を複数積層した金属積層膜、前記金属を含む合金膜、In2O3、SnO2、ZnOなどの導電性酸化物膜、すず(Sn)が添加されたIn2O3(ITO)、ガリウム(Ga)が添加されたZnO、アルミニウム(Al)が添加されたZnO、アンチモン(Sb)が添加されたSnO2などの導電性酸化物膜、上記材料が微粒子として分散されている膜を用いることができる。
【0120】
また、上記実施形態では、ゲート絶縁層25にSiO2が用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ゲート絶縁層25の材料として、Al2O3、Ta2O5、Y2O3、La2O3、HfO2、Nb2O3、ZrO2などの絶縁性を有する酸化物や、有機絶縁材料、及びSiNxを用いることができる。
【0121】
また、上記実施形態では、活性層22を構成する酸化物半導体が非晶質の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、スピネル構造(いわゆる逆スピネル構造を含む)あるいはオリビン構造を有していても良い。また、活性層22を構成する酸化物半導体は、結晶質と非晶質とが混在しても良い。さらに、活性層22を構成する酸化物半導体は、スピネル構造を有する相とオリビン構造を有する相とが混在しても良い。
【0122】
変形例1として、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を2.7×10−3Paとし、基板21の温度を300℃に保った以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。変形例1の条件でガラス基板上に形成されたMg−In系酸化物膜に対して上記実施形態と同様にしてX線回折測定を行ったところ、複数のピークが観測された。具体的には、2θが約33度のところに最も強いピークがあり、これはスピネル構造を有するMgIn2O4の(311)ピークに相当するものである。これにより、基板21を加熱しながら成膜したことによって、結晶性のMg−In系酸化物膜が得られたことが確認できた。
【0123】
変形例1の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図19に示されている。これによると、ゲート電圧VGを5Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値1.9pAとなり、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、IDS=63μAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は2.6cm2/Vsであった。すなわち、上記実施形態の電界効果型トランジスタと同様に、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。なお、変形例1の条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は40Ωcmであった。
【0124】
この場合、スピネル構造は立方晶で、BO6八面体が稜共有した1次元鎖(ルチル鎖)が三次元的に様々な方向に走っており、AO4四面体がルチル鎖同士をつなぐ役割をしている。そこで、キャリアの輸送特性は、薄膜の配向性に依存しない。すなわち、電子の移動方向は等方的である。従って、ZnO系酸化物半導体のように、結晶構造の異方性に起因する不都合はない。また、伝導帯の底部はインジウムの5s軌道から構成されるので、電子キャリアの輸送特性に対する結晶粒界の影響は非常に小さい。
【0125】
また、上記実施形態において、活性層22を構成する酸化物半導体は、インジウム(In)の一部がアルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)の少なくともいずれかに置換されても良い。この場合、置換元素の種類及び置換量によって、バンドギャップ、伝導帯の底部のエネルギ−、酸素原子の格子エネルギ−を制御することができる。例えば、置換量を増大させると、紫外の透明領域を拡大することができる。また、置換量を増大させると、伝導帯のエネルギ−レベルが高くなり、電子キャリアが生成しにくくなる。
【0126】
変形例2として、活性層22にインジウム(In)の一部をガリウム(Ga)で置換したMg−In系酸化物膜を用い、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を1.8×10−3Paとした以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。
【0127】
この場合には、Mg−In系酸化物膜は、2つのターゲット(ターゲット1、ターゲット2)を用いた同時スパッタ法により形成した。ターゲット1はIn2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)であり、ターゲット2はGa2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)である。スパッタパワーを、In2MgO4に対しては40W、Ga2MgO4に対しては60Wとし、厚さ100nmのMg−In系酸化物膜を形成した。
【0128】
変形例2の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図20に示されている。これによると、ゲート電圧VGを11Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値0.9pAとなり、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、IDS=9.1μAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は1.3cm2/Vsであった。すなわち、上記実施形態の電界効果型トランジスタと同様に、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。なお、変形例2の条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は1100Ωcmであった。
【0129】
また、上記実施形態において、活性層22を構成する酸化物半導体は、マグネシウム(Mg)の一部がカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)の少なくともいずれかに置換されても良い。
【0130】
変形例3として、活性層22にマグネシウム(Mg)の一部をストロンチウム(Sr)で置換したMg−In系酸化物膜を用いる以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。
【0131】
この場合には、Mg−In系酸化物膜は、2つのターゲット(ターゲット1、ターゲット2)を用いた同時スパッタ法により形成した。ターゲット1はIn2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)であり、ターゲット2はIn2SrO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)である。スパッタパワーを、In2MgO4に対しては200W、In2SrO4に対しては30Wとし、厚さ100nmのMg−In系酸化物膜を形成した。
【0132】
図21には、変形例3の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSが20Vのときの、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が示されている。ゲート電圧VGを2Vとした時に、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値2pAとなり、VG=20Vとした時に、IDS=99μAとなった。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は2.6cm2/Vsであった。すなわち、上記実施形態の電界効果型トランジスタ(10、20)と同様に、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。なお、変形例3の条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は9Ωcmであった。
【0133】
また逆スピネル構造で観測されるように、4面体サイトを3価カチオン(YIII)が、8面体サイトを2価カチオン(XII)が占有することが可能であり、2価カチオン(Mg、Ca、Sr、Ba)と3価カチオン(In、Ga、Al)の組成比には幅を持たせることができる。可能なカチオン比XII/YIIIは0.2〜1程度で、必要なTFT特性、バンドギャップ(紫外光領域の透明性)、酸素空孔の安定性、プロセスマージンなどを考慮して、適切にカチオン種と組成比を選択することができる。
【0134】
また、上記実施形態において、活性層22を構成する酸化物半導体は、酸素の一部が窒素及びフッ素の少なくともいずれかに置換されても良い。この場合、酸化物半導体における酸素量をさらに精度良く制御することが可能となる。
【0135】
また、上記実施形態では、光制御素子が有機EL素子の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光制御素子が液晶素子であっても良い。この場合は、上記ディスプレイ310は、液晶ディスプレイとなる。そして、一例として図22に示されるように、表示素子302´に対する電流供給線は不要である。
【0136】
この場合は、また、一例として図23に示されるように、ドライブ回路320´は、前述した電界効果型トランジスタ(10、20)と同様な1つの電界効果型トランジスタ40のみで構成することができる。電界効果型トランジスタ40では、ゲート電極Gが所定の走査線に接続され、ソース電極Sが所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dが液晶素子370の画素電極に接続されている。なお、図23における符号372は、液晶素子370の対向電極(コモン電極)である。
【0137】
また、光制御素子が無機EL素子であっても良い。
【0138】
また、上記実施形態では、ディスプレイがカラー対応の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0139】
また、上記実施形態では、システムがテレビジョン装置の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに画像や情報を表示する装置として上記画像表示装置124を備えていれば良い。例えば、コンピュータ(パソコンを含む)と画像表示装置124とが接続されたコンピュータシステムであっても良い。
【0140】
また、携帯電話、携帯型音楽再生装置、携帯型動画再生装置、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報機器、スチルカメラやビデオカメラなどの撮像機器における表示手段に画像表示装置124を用いることができる。また、車、航空機、電車、船舶等の移動体システムにおける各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。さらに、計測装置、分析装置、医療機器における各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。
【0141】
なお、本実施形態に係る電界効果型トランジスタは、表示素子以外のもの(例えば、ICカード、IDタグ)にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明したように、本発明の電界効果型トランジスタによれば、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現させるのに適している。また、本発明の表示素子によれば、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくするのに適している。また、本発明の画像表示装置によれば、大画面で高品質の画像を表示するのに適している。また、本発明のシステムによれば、画像情報を高精細に表示するのに適している。
【符号の説明】
【0143】
10…電界効果型トランジスタ、20…電界効果型トランジスタ、40…電界効果型トランジスタ、100…テレビジョン装置(システム)、121…映像デコーダ(画像データ作成装置の一部)、122…映像・OSD合成回路(画像データ作成装置の一部)、123…映像出力回路(画像データ作成装置の一部)、124…画像表示装置、125…OSD描画回路(画像データ作成装置の一部)、302…表示素子、302´…表示素子、350…有機EL素子(光制御素子)、370…液晶素子(光制御素子)、400…表示制御装置、X0〜Xn−1…走査線(配線の一部)、Y0〜Ym−1…データ線(配線の一部)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0144】
【特許文献1】特開2002−76356号公報
【特許文献2】米国特許第7067843号明細書
【特許文献3】特表2007−529119号公報
【特許文献4】米国特許第7297977号明細書
【特許文献5】特開2004−103957号公報
【非特許文献】
【0145】
【非特許文献1】K.Nomura,他5名、「Thin−Film Transistor Fabricated in Single−Crystalline Transparent Oxide Semiconductor」、SCIENCE、VOL300、23、MAY、2003、p.1269−1272
【非特許文献2】K.Nomura,他5名、「Room−temperature fabrication of transparent flexible thin−film transistors using amorphous oxide semiconductors」、NATURE、VOL432、25、NOVEMBER、2004、p.488−492
【非特許文献3】引馬尚子,他4名、「新透明電子伝導性酸化物.2.MgIn2O4−x焼結体の化学的状態と光学的・電気的性質」、第39回応用物理学関係連合講演会(1992年春季)、講演予稿集、No.3、30p−C−2、p.851
【非特許文献4】N.Ueda,他6名、「New oxide phase with wide band gap and high electroconductivity,MgIn2O4」、Appl.Phys.Lett.61(16)、19、October、1992、p.1954−1955
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置及びシステムに係り、更に詳しくは、酸化物半導体からなる活性層を有する電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子及び画像表示装置、該画像表示装置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)は、ゲート電極に電圧をかけ、チャネルの電界により電子または正孔の流れに関門(ゲート)を設ける原理で、ソース電極とドレイン電極間の電流を制御するトランジスタである。
【0003】
FETはその特性から、スイッチング素子や増幅素子として利用されている。そして、FETは、ゲート電流が低いことに加え、構造が平面的であるため、バイポーラトランジスタと比較して作製や集積化が容易である。そのため、現在の電子機器で使用される集積回路では必要不可欠な素子となっている。
【0004】
FETは、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)として、アクティブマトリックス方式のディスプレイに応用されている。
【0005】
近年、平面薄型ディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)として、液晶ディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、電子ペーパー等が実用化されている。
【0006】
これらFPDは、非晶質シリコンや多結晶シリコンを活性層に用いたTFTを含む駆動回路により駆動されている。そして、FPDは、さらなる大型化、高精細化、高速駆動性が求められており、それに伴って、キャリア移動度が高く、特性の経時変化が小さく、素子間のばらつきが小さいTFTが求められている。
【0007】
しかしながら、非晶質シリコン(a−Si)や多結晶シリコン(特に低温ポリシリコン:LTPS)を活性層に用いたTFTは、それぞれに一長一短があり、同時に全ての要求を満たすことは困難であった。
【0008】
例えば、a−SiTFTは大画面のLCD(Liquid Crystal Display)を高速駆動するには移動度が不足しており、また連続駆動時の閾値電圧シフトが大きいという欠点を抱えている。LTPS−TFTは移動度は大きいが、エキシマレーザーアニーリングによって活性層を結晶化するプロセスのために閾値電圧のバラツキが大きく、量産ラインのマザーガラスサイズを大きくできないという弱点が存在する。
【0009】
また、軽量、フレキシブル性、高い耐衝撃性、低コストといった特徴を持つディスプレイの実現に向け、プラスチックフィルム等のフレキシブル基板を用いることが検討されている。
【0010】
この場合、製造時において、比較的高温でのプロセスが必要となるシリコンは、基板の耐熱性の点から用いることはできなかった。
【0011】
そこで、これらの要求に応えるため、非晶質シリコンを超えるキャリア移動度が期待できる酸化物半導体を用いたTFTの開発が活発に行われた。(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1及び2参照)。
【0012】
特許文献1には、3d遷移金属元素をドープした酸化亜鉛等の透明チャネル層を用い、熱処理を不要とした透明な半導体デバイスが開示されている。
【0013】
特許文献2には、活性層にZnOを用いたTFTが開示されている。
【0014】
特許文献3及び特許文献4には、亜鉛(Zn)−ガリウム(Ga)、カドミウム(Cd)−ガリウム(Ga)及びカドミウム(Cd)−インジウム(In)を含む金属酸化物のうちの1つ又は複数を含むチャネルを有する半導体デバイスが開示されている。
【0015】
特許文献5には、ホモロガス化合物InMO3(ZnO)m(M=In,Fe,Ga,又はAl,m=1以上50未満の整数)薄膜を活性層として用いた透明薄膜電界効果型トランジスタが開示されている。
【0016】
非特許文献1には、チャネルに単結晶のInGaO3(ZnO)5を用いたTFTが開示されている。
【0017】
非特許文献2には、活性層に非晶質のIn−Ga−Zn系酸化物を用いたTFTが開示されている。
【0018】
ところで、非特許文献3には、MgIn2O4−x焼結体の化学的状態と光学的・電気的性質が開示されている。また、非特許文献4には、高い電気伝導性を有するMgIn2O4が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ディスプレイの駆動回路に用いられるTFTは、いわゆるノーマリーオフの特性を有することが必須である。しかしながら、ZnO、CdO、Cd−In系酸化物、及びCd−Ga系酸化物を活性層に用いた場合には、酸素欠損或いは格子間金属原子が生じ易く、電子キャリア濃度が高くなり、ノーマリーオフを実現することは困難であった。
【0020】
そこで、電子キャリア濃度を下げるために微量金属をドーピングをすることが提案されたが(特許文献1参照)、この微量金属のドーピングを広い面積にわたって均一に行うことは困難であった。
【0021】
また、特許文献2に開示されているTFTでは、活性層の成膜時に酸素量を精密に制御することによって、ノーマリーオフを実現しているが、プロセスマージンが狭く実用的ではなかった。
【0022】
TFTにおけるもう一つの重要な特性として、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗が上げられる。特許文献3及び4に開示されている半導体デバイスでは、Zn−Ga系酸化物の伝導帯の底のエネルギーレベルが非常に高く、電子キャリアの注入は困難で、良好な接合を得ることは困難であった。(Appl.Phys.Lett.64,1077(1994)参照)
また、ZnO及びIn−Ga−Zn−O系酸化物の結晶構造は、ウルツ型及びホモロガス型の六方晶系で異方性が強いため、薄膜の配向制御が必須で、大面積のディスプレイへの応用には困難が予想される。
【0023】
そこで、活性層の非晶質化が提案されているが、ZnOは容易に結晶化してしまい、また、In−Ga−Zn−O系酸化物も高移動度にするためにZn濃度を高めると容易に結晶化することが知られている。
【0024】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物は、三つの金属元素から成る系である為に組成の制御が難しく、スパッタリング法によって成膜した場合に、膜組成がターゲット組成から大きくずれるという不都合があった。
【0025】
更に、In−Ga−Zn−O系酸化物では、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗が比較的大きく、接触抵抗分の電圧降下が生じるためにトランジスタのオン電流が低下したり、個々のTFTで接触抵抗の大きさがばらつくためにトランジスタの特性にもばらつきが生じたりする等の特性劣化が発生し易く問題となっていた。
【0026】
本発明では、主に二つの金属元素から成り組成の制御が容易な活性層材料を用い、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗を小さく抑えて特性を向上させた、キャリア移動度の高い電界効果型トランジスタを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
非特許文献3及び非特許文献4に開示されているMg−In系酸化物は、高い電気伝導度を有しているため、TFTの材料には不適であるとされていた。
【0028】
しかしながら、発明者等は、種々の実験等を繰り返し行った結果、Mg−In系酸化物を用いた電界効果型トランジスタが可能であることを見出した。
【0029】
本発明は、上述した発明者等の得た新規知見に基づいてなされたもので、第1の観点からすると、ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層と;前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;を備える電界効果型トランジスタである。
【0030】
これによれば、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現することが可能となる。
【0031】
本発明は、第2の観点からすると、駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と;本発明の電界効果型トランジスタを含み、前記光制御素子を駆動する駆動回路と;を備える表示素子である。
【0032】
これによれば、本発明の電界効果型トランジスタを備えているため、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0033】
本発明は、第3の観点からすると、画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、マトリックス状に配置された複数の本発明の表示素子と;前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と;前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置と;を備える画像表示装置である。
【0034】
これによれば、本発明の表示素子を有しているため、結果として、大画面で高品質の画像を表示することが可能となる。
【0035】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の画像表示装置と;表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置と;を備えるシステムである。
【0036】
これによれば、本発明の画像表示装置を備えているため、その結果、画像情報を高精細に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るテレビジョン装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1における画像表示装置を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における画像表示装置を説明するための図(その2)である。
【図4】図1における画像表示装置を説明するための図(その3)である。
【図5】表示素子を説明するための図である。
【図6】有機EL素子を説明するための図である。
【図7】電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図8】実施例1の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図9】比較例3の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図10】比較例4の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図11】有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置を説明するための図である。
【図12】表示制御装置を説明するための図である。
【図13】有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置の変形例を説明するための図である。
【図14】「ボトムコンタクト・ボトムゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図15】「トップコンタクト・トップゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図16】「ボトムコンタクト・トップゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図17】電界効果型トランジスタが「トップコンタクト・トップゲート型」のときの、有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置例1を説明するための図である。
【図18】電界効果型トランジスタが「トップコンタクト・トップゲート型」のときの、有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置例2を説明するための図である。
【図19】変形例1の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図20】変形例2の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図21】変形例3の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図22】液晶ディスプレイを説明するための図である。
【図23】図22における表示素子を説明するための図である。
【図24】比較例1の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図25】実施例2の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図26】比較例2の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るシステムとしてのテレビジョン装置100の概略構成が示されている。なお、図1における接続線は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0039】
このテレビジョン装置100は、主制御装置101、チューナ103、ADコンバータ(ADC)104、復調回路105、TS(Transport Stream)デコーダ106、音声デコーダ111、DAコンバータ(DAC)112、音声出力回路113、スピーカ114、映像デコーダ121、映像・OSD合成回路122、映像出力回路123、画像表示装置124、OSD描画回路125、メモリ131、操作装置132、ドライブインターフェース(ドライブIF)141、ハードディスク装置142、光ディスク装置143、IR受光器151、及び通信制御装置152などを備えている。
【0040】
主制御装置101は、テレビジョン装置100の全体を制御し、CPU、フラッシュROM、及びRAMなどから構成されている。フラッシュROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム、及びCPUでの処理に用いられる各種データなどが格納されている。また、RAMは、作業用のメモリである。
【0041】
チューナ103は、アンテナ210で受信された放送波の中から、予め設定されているチャンネルの放送を選局する。
【0042】
ADC104は、チューナ103の出力信号(アナログ情報)をデジタル情報に変換する。
【0043】
復調回路105は、ADC104からのデジタル情報を復調する。
【0044】
TSデコーダ106は、復調回路105の出力信号をTSデコードし、音声情報及び映像情報を分離する。
【0045】
音声デコーダ111は、TSデコーダ106からの音声情報をデコードする。
【0046】
DAコンバータ(DAC)112は、音声デコーダ111の出力信号をアナログ信号に変換する。
【0047】
音声出力回路113は、DAコンバータ(DAC)112の出力信号をスピーカ114に出力する。
【0048】
映像デコーダ121は、TSデコーダ106からの映像情報をデコードする。
【0049】
映像・OSD合成回路122は、映像デコーダ121の出力信号とOSD描画回路125の出力信号を合成する。
【0050】
映像出力回路123は、映像・OSD合成回路122の出力信号を画像表示装置124に出力する。
【0051】
OSD描画回路125は、画像表示装置124の画面に文字や図形を表示するためのキャラクタ・ジェネレータを備えており、操作装置132やIR受光器151からの指示に応じて表示情報が含まれる信号を生成する。
【0052】
メモリ131には、AV(Audio−Visual)データ等が一時的に蓄積される。
【0053】
操作装置132は、例えばコントロールパネルなどの入力媒体(図示省略)を備え、ユーザから入力された各種情報を主制御装置101に通知する。
【0054】
ドライブIF141は、双方向の通信インターフェースであり、一例としてATAPI(AT Attachment Packet Interface)に準拠している。
【0055】
ハードディスク装置142は、ハードディスクと、該ハードディスクを駆動するための駆動装置などから構成されている。駆動装置は、ハードディスクにデータを記録するとともに、ハードディスクに記録されているデータを再生する。
【0056】
光ディスク装置143は、光ディスク(例えば、DVD)にデータを記録するとともに、光ディスクに記録されているデータを再生する。
【0057】
IR受光器151は、リモコン送信機220からの光信号を受信し、主制御装置101に通知する。
【0058】
通信制御装置152は、インターネットとの通信を制御する。インターネットを介して各種情報を取得することができる。
【0059】
画像表示装置124は、一例として図2に示されるように、表示器300、及び表示制御装置400を有している。
【0060】
表示器300は、一例として図3に示されるように、複数(ここでは、n×m個)の表示素子302がマトリックス状に配置されたディスプレイ310を有している。
【0061】
また、ディスプレイ310は、一例として図4に示されるように、X軸方向に沿って等間隔に配置されているn本の走査線(X0、X1、X2、X3、・・・・・、Xn−2、Xn−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本のデータ線(Y0、Y1、Y2、Y3、・・・・・、Ym−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本の電流供給線(Y0i、Y1i、Y2i、Y3i、・・・・・、Ym−1i)を有している。
そして、走査線とデータ線とによって、表示素子を特定することができる。
【0062】
各表示素子は、一例として図5に示されるように、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子350と、該有機EL素子350を発光させるためのドライブ回路320とを有している。すなわち、ディスプレイ310は、いわゆるアクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイである。また、ディスプレイ310は、カラー対応の32インチ型のディスプレイである。なお、大きさは、これに限定されるものではない。
【0063】
有機EL素子350は、一例として図6に示されるように、有機EL薄膜層340と、陰極312と、陽極314とを有している。
【0064】
陰極312には、アルミニウム(Al)が用いられている。なお、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金、アルミニウム(Al)−リチウム(Li)合金、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いても良い。
【0065】
陽極314には、ITO(Indium Tin Oxide)が用いられている。なお、In2O3、SnO2、ZnOなどの導電性を有する酸化物、銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金などを用いても良い。
【0066】
有機EL薄膜層340は、電子輸送層342と発光層344と正孔輸送層346とを有している。そして、電子輸送層342に陰極312が接続され、正孔輸送層346に陽極314が接続されている。陽極314と陰極312との間に所定の電圧を印加すると発光層344が発光する。
【0067】
図5に戻り、ドライブ回路320は、2つの電界効果型トランジスタ(10、20)、及びコンデンサ30を有している。
【0068】
電界効果型トランジスタ10は、スイッチ素子として動作する。ゲート電極Gは、所定の走査線に接続され、ソース電極Sは、所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dは、コンデンサ30の一方の端子に接続されている。
【0069】
コンデンサ30は、電界効果型トランジスタ10の状態、すなわちデータを記憶しておくためのものである。コンデンサ30の他方の端子は、所定の電流供給線に接続されている。
【0070】
電界効果型トランジスタ20は、有機EL素子350に大きな電流を供給するためのものである。ゲート電極Gは、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dと接続されている。そして、ドレイン電極Dは、有機EL素子350の陽極314に接続され、ソース電極Sは、所定の電流供給線に接続されている。
【0071】
そこで、電界効果型トランジスタ10が「オン」状態になると、電界効果型トランジスタ20によって、有機EL素子350は駆動される。
【0072】
各電界効果型トランジスタは、一例として図7に示されるように、基板21、活性層22、ソース電極23、ドレイン電極24、ゲート絶縁層25、及びゲート電極26を有している。
【0073】
ここでは、各電界効果型トランジスタは、いわゆる「トップコンタクト・ボトムゲート型」である。
【0074】
各電界効果型トランジスタの作製方法について簡単に説明する。
(1)ガラス製の基板21上に、100nmの厚さになるようにアルミニウム(Al)を蒸着する。そして、フォトリソグラフィを行ってライン状にパターニングし、ゲート電極26を形成する。
(2)プラズマCVDにより、200nmの厚さになるようにSiO2を成膜し、ゲート絶縁膜25を形成する。
(3)ゲート絶縁膜25上へのレジストの塗布、露光、現像を行い、活性層22に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。
(4)高周波スパッタ法により、活性層22となるMg−In系酸化物膜を形成する。
【0075】
ここでは、ターゲットとして、In2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)を用いた。スパッタチャンバー内の到達真空度は2×10−5Paとした。スパッタ時に流すアルゴンガスと酸素ガスの流量を調整し、全圧を0.3Pa、酸素分圧を1.7×10−3Paとした。スパッタ中は、基板21を保持するホルダを水冷により冷却することで、基板21の温度を15度〜35度の範囲内に制御した。スパッタパワーを150W、スパッタ時間を30分とし、厚さ100nmのMg−In系酸化物膜を形成した。
(5)レジストの除去によってリフトオフを行い、活性層22を所望の形状とする。
(6)フォトリソグラフィとリフトオフ法により、厚さ100nmのアルミニウム(Al)からなるソース電極とドレイン電極を形成する。ここでは、チャネル長は50μm、チャネル幅は2mmとした。
【0076】
ところで、上記と同じ条件でガラス基板上に成膜したMg−In系酸化物膜の体積抵抗率を測定したところ、10Ωcmであった。また、平行光学系を有するX線回折装置を用いて、上記Mg−In系酸化物膜を銅(Cu)のKα線でスキャン(入射角=1度、2θ=10度〜70度)したところ、結晶性を示すシャープなピークは観測されず、非晶質状態であることが確認された。
【0077】
上述した作製方法で作製された電界効果型トランジスタは、電子をキャリアとする典型的なn型トランジスタであった。この電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図8に示されている。これによると、ゲート電圧VGを1Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSは最小値4pAとなっている。そして、ゲート電圧VGが0Vのときには、ソース・ドレイン間電流IDSは上記最小値に近い値であった。すなわち、良好なノーマリーオフ特性を示している。
【0078】
また、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSは90μAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は、2.1cm2/Vsであった。
【0079】
すなわち、本実施形態における電界効果型トランジスタは、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。
【0080】
比較例1として、図24に示されるような、非晶質シリコンを活性層とする電界効果型トランジスタを下記の方法で作製した。
(1)ガラス製の基板500上に、200nmの厚さになるようにモリブデン(Mo)をスパッタする。そして、フォトリソグラフィによってライン状にパターニングし、ゲート電極501を形成する。
(2)プラズマCVDにより、ゲート絶縁膜502となるSiNx、活性層503となる非晶質シリコン(a−Si:H)、及びリンのドープされた非晶質シリコン504(n+−a−Si:H)の3層を続けて成膜する。膜厚はそれぞれ、300nm、200nm、50nmである。活性層503の成膜時は、基板温度を250℃とし、SiH4流量35sccm、H2流量35sccm、圧力0.1Torr、パワー密度100mW/cm2とした。n+−a−Si:Hは、活性層503とソース・ドレイン電極505及び506との間のコンタクトを良くするために設けている。続いて、フォトリソグラフィにより、TFTをアイランド化する。
(3)厚さ100nmのアルミニウム(Al)層を形成し、フォトリソグラフィによりソース電極505及びドレイン電極506の形状にこれをパターニングする。
(4)ソース・ドレイン電極505及び506をマスクとして、リアクティブイオンエッチング(RIE)によりバックチャネルをエッチングする。これによりソース電極とドレイン電極の間(チャネル部)のn+−a−Si:Hを除去し、図24の電界効果型トランジスタを得る。チャネル長は50μm、チャネル幅は0.2mmとした。
【0081】
上述した電界効果型トランジスタは典型的なn型トランジスタの特性を示した。ソース・ドレイン間電圧VDSを10Vとした時、ゲート電圧VG=0Vではトランジスタはオフ状態にあり、ソース・ドレイン間電流IDSは約10pAであった。また、VG=20Vとした時のIDSは3μAであり、飽和領域において算出した電界効果移動度は0.3cm2/Vsとなった。
【0082】
以上の実施例1と比較例1より、Mg−In系酸化物膜を活性層とする電界効果型トランジスタにおいて、a−Siを活性層とする典型的なトランジスタよりも高いキャリア移動度が達成できることが示された。
【0083】
本発明の第二の実施形態として、図14に示すようなボトムゲート・ボトムコンタクト型のトランジスタを以下の手順で作製した。
(1)ガラス製の基板21上に、100nmの厚さになるようにアルミニウム(Al)を蒸着する。そして、フォトリソグラフィによりライン状にパターニングし、ゲート電極26を形成する。
(2)プラズマCVDにより、200nmの厚さになるようにSiO2を成膜し、ゲート絶縁膜25を形成する。
(3)DCスパッタ法により、ソース電極23、ドレイン電極24となるITO膜を形成する。フォトリソグラフィにより、所望の電極形状にパターニングする。
(4)レジストの塗布、露光、現像を行い、活性層22に対応した形状にパターニングされたレジスト層を形成する。
(5)高周波スパッタ法により、活性層22となるMg−In系酸化物膜を形成する。成膜条件は実施例1と同様とする。
(6)レジストの除去によってリフトオフを行い、活性層22を所望の形状とする。
なお、Mg−In系酸化物膜の成膜条件は実施例1と同じであるため、実施例2の膜も非晶質状態であり約10Ωcmの体積抵抗率を持つ。
【0084】
以上の工程により、チャネル長5μm、チャネル幅1.5mmの電界効果型トランジスタを得た。また、同工程を繰り返し行い、4つのサンプルを作製した。
【0085】
これら4つの電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン電圧VDSを20Vとした時のゲート電圧VGとソース・ドレイン電流IDSとの関係を図25に示す。1つの実線及び3つの異なるパターンの点線でそれぞれ示す4つのトランジスタの特性は良く一致しており、再現性良く良好な特性のトランジスタが実現できている。飽和領域において算出した電界効果移動度は0.8〜1.1cm2/Vsであった。
【0086】
また、ソース電極と活性層及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗を測定したところ、約2kΩであった。
【0087】
比較例2として、活性層を形成する材料を非晶質In−Ga−Zn系酸化物とした他は実施例2と同様に電界効果型トランジスタを作製した。
【0088】
In−Ga−Zn系酸化物膜はDCスパッタ法で成膜した。ターゲットには、InGaZnO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)を用いた。スパッタチャンバー内の到達真空度は2×10−5Paとした。スパッタ時に流すアルゴンガスと酸素ガスの流量を調整し、全圧を0.7Pa、酸素分圧を1.16×10−2Paとした。スパッタ中は、基板21を保持するホルダを水冷により冷却することで、基板21の温度を15度〜35度の範囲内に制御した。スパッタパワーを140W、スパッタ時間を30分とし、厚さ100nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜を形成した。
【0089】
実施例2と同様の工程により、チャネル長5μm、チャネル幅1.5mmの電界効果型トランジスタを得た。また、同工程を繰り返し行い、4つのサンプルを作製した。
【0090】
これら4つの電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン電圧VDSを20Vとした時のゲート電圧VGとソース・ドレイン電流IDSとの関係を図26に示す。1つの実線及び3つの異なるパターンの点線でそれぞれ示す4つのトランジスタの特性は、明らかにばらついており、例えばトランジスタがオン状態の時の電流値にはサンプル間で大きな差が見られる。飽和領域において算出した電界効果移動度も0.8cm2/Vsから3.0cm2/Vsの間でばらついていた。
【0091】
ソース電極と活性層及びドレイン電極と活性層との間の接触抵抗は50kΩ前後であった。一方で、トランジスタがオン状態(例えばVG=20V)の時のチャネルの抵抗を調べると、約5kΩと見積もられる。このサンプルでは、チャネル抵抗よりも接触抵抗の方が大きいために接触抵抗の影響が無視できず、特性が不安定になっている。接触抵抗の大きさはサンプルによってばらつく傾向があり、これがトランジスタ特性のばらつきの原因となっている。
【0092】
実施例2と比較例2より、活性層にMg−In系酸化物を用いることで、In−Ga−Zn系酸化物よりも接触抵抗を1桁以上小さくでき、特性の均一なトランジスタが得られることがわかる。
【0093】
比較例3として、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を、上述した作製方法での酸素分圧よりも小さい1.3×10−3Paとした以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。比較例3の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図9に示されている。これによると、ゲート電圧VGを−40Vから20Vまで変化させてもソース・ドレイン間電流IDSの変化は非常に小さく、このゲート電圧VGの電圧範囲内では「オフ」状態が実現できなかった。なお、この条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は4×10−3Ωcmであった。
【0094】
種々の実験から、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を下げるほど、得られるMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は下がり、作製された電界効果型トランジスタの閾値電圧はマイナス方向にシフトすることが判明した。そして、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率とノーマリーオフ特性との関連性について検討した結果、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率が10−2Ωcm未満の場合には、ノーマリーオフ特性が実現できないことが判明した。
【0095】
比較例4として、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を、上述した作製方法での酸素分圧よりも大きい5.0×10−3Paとした以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。比較例4の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図10に示されている。これによると、ゲート電圧VGを5Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値0.5pAとなり、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、IDS=0.14nAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は7×10−6cm2/Vsであり、電界効果型トランジスタとして必要とされる値よりも小さかった。なお、この条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は2×109Ωcmであった。
【0096】
種々の実験から、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を上げるほど、得られるMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は上がり、作製された電界効果型トランジスタの「オン」電流の値と電界効果移動度が減少する傾向にあることが判明した。そして、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率と電界効果移動度との関連性について検討した結果、Mg−In系酸化物膜の体積抵抗率が109Ωcmを超えると、電界効果移動度は1×10−5cm2/Vsを下回り、実用に適さないほどトランジスタ特性が悪化することが判明した。
【0097】
実施例1、2、比較例3、4、変形例1〜3について、活性層であるMg−In系酸化物膜の体積抵抗率とトランジスタ特性をまとめたものを表1に示す。
【0098】
【表1】
ノーマリーオフの特性と高いキャリア移動度を実現する為には、活性層とするMg−I
n系酸化物膜の体積抵抗率を10−2Ωcm以上109Ωcm以下とすることが好ましい。
【0099】
抵抗率は主にキャリア密度と移動度に依存するため、これらを意図的に変えることによって抵抗率を制御することができる。Mg−In系酸化物膜の抵抗率の制御方法としては、膜中の酸素量(酸素欠陥の密度)を調整することによってキャリア密度を変える方法が有効である。上述のように、スパッタ成膜時の酸素分圧を変えると形成される膜の抵抗率が変化する。スパッタ以外の方法で膜を形成する場合においても、プロセス中の雰囲気を制御することで目的の抵抗率を持つ膜が形成できる。また、膜を形成した後のアニールによっても抵抗率は変化するため、アニール温度や雰囲気を最適化する方法も有効である。或いは、Mg−In系酸化物膜を構成する各元素の一部を他の元素で置換することによっても抵抗率を変えることが出来る。
【0100】
図11には、表示素子302における有機EL素子350と実施例1に記載の電界効果型トランジスタ20との位置関係が示されている。ここでは、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置されている。なお、電界効果型トランジスタ10及びコンデンサ30も同一基板上に形成されている。
【0101】
表示素子302は、従来と同様の装置を用いて、従来と同様の工程(製造プロセス)によって製造することができる。
【0102】
表示制御装置400は、一例として図12に示されるように、画像データ処理回路402、走査線駆動回路404、及びデータ線駆動回路406を有している。
【0103】
画像データ処理回路402は、映像出力回路123の出力信号に基づいて、ディスプレイ310における複数の表示素子302の輝度を判断する。
【0104】
走査線駆動回路404は、画像データ処理回路402の指示に応じてn本の走査線に個別に電圧を印加する。
【0105】
データ線駆動回路406は、画像データ処理回路402の指示に応じてm本のデータ線に個別に電圧を印加する。
【0106】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るテレビジョン装置100では、映像デコーダ121と映像・OSD合成回路122と映像出力回路123とOSD描画回路125とによって画像データ作成装置が構成されている。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に係る電界効果型トランジスタによると、ゲート電圧を印加するためのゲート電極26と、電流を取り出すためのソース電極23及びドレイン電極24と、ソース電極23及びドレイン電極24に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層22と、ゲート電極26と活性層22との間に設けられたゲート絶縁層25とを備えている。
【0108】
そして、活性層22を形成する際に流す酸素ガスの流量は、酸素分圧が1.7×10−3Paとなるように調整されており、活性層22を構成する酸化物半導体は、体積抵抗率が10Ωcmで、酸素が非化学量論組成であるMgIn2O4系酸化物半導体である。
【0109】
この場合、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを両立させることが可能である。
【0110】
また、本実施形態に係る表示素子302によると、電界効果型トランジスタ10及び電界効果型トランジスタ20を備えているため、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくすることが可能である。
【0111】
また、本実施形態に係る画像表示装置124によると、表示素子302を有しているため、結果として、大画面で高品質の画像を表示することが可能である。
【0112】
また、本実施形態に係るテレビジョン装置100によると、画像表示装置124を備えているため、その結果、画像情報を高精細に表示することが可能である。
【0113】
なお、上記実施形態では、有機EL薄膜層が、電子輸送層と発光層と正孔輸送層とからなる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電子輸送層と発光層が1つの層であっても良い。また、電子輸送層と陰極との間に電子注入層が設けられても良い。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層が設けられても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、基板側から発光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション」の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、陽極314に銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金などの高反射率電極、陰極312にマグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金などの半透明電極或いはITO等の透明電極を用いて基板と反対側から光を取り出しても良い。
【0115】
また、上記実施形態では、表示素子302において、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図13に示されるように、電界効果型トランジスタ20の上に有機EL素子350が配置されても良い。この場合には、ゲート電極26に透明性が要求されるので、ゲート電極26には、ITO、In2O3、SnO2、ZnO、Gaが添加されたZnO、Alが添加されたZnO、Sbが添加されたSnO2などの導電性を有する透明な酸化物が用いられる。
【0116】
また、上記実施形態では、電界効果型トランジスタがいわゆる「トップコンタクト・ボトムゲート型」の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示されるように、いわゆる「ボトムコンタクト・ボトムゲート型」であっても良い。また、図15に示されるように、いわゆる「トップコンタクト・トップゲート型」であっても良い。さらに、図16に示されるように、いわゆる「ボトムコンタクト・トップゲート型」であっても良い。
【0117】
そして、電界効果型トランジスタが「トップコンタクト・トップゲート型」のときの電界効果型トランジスタ20と有機EL素子350の配置例が、図17及び図18に示されている。なお、図17及び図18における符号360は絶縁層である。
【0118】
また、上記実施形態では、基板21がガラス製の平板である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セラミックス製やプラスチック製の平板、あるいはプラスチック製のフィルムを用いることができる。
【0119】
また、上記実施形態では、各電極の材料がアルミニウム(Al)の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各電極に、クロム(Cr)、金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)などの単体の金属膜、これらの金属膜を複数積層した金属積層膜、前記金属を含む合金膜、In2O3、SnO2、ZnOなどの導電性酸化物膜、すず(Sn)が添加されたIn2O3(ITO)、ガリウム(Ga)が添加されたZnO、アルミニウム(Al)が添加されたZnO、アンチモン(Sb)が添加されたSnO2などの導電性酸化物膜、上記材料が微粒子として分散されている膜を用いることができる。
【0120】
また、上記実施形態では、ゲート絶縁層25にSiO2が用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ゲート絶縁層25の材料として、Al2O3、Ta2O5、Y2O3、La2O3、HfO2、Nb2O3、ZrO2などの絶縁性を有する酸化物や、有機絶縁材料、及びSiNxを用いることができる。
【0121】
また、上記実施形態では、活性層22を構成する酸化物半導体が非晶質の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、スピネル構造(いわゆる逆スピネル構造を含む)あるいはオリビン構造を有していても良い。また、活性層22を構成する酸化物半導体は、結晶質と非晶質とが混在しても良い。さらに、活性層22を構成する酸化物半導体は、スピネル構造を有する相とオリビン構造を有する相とが混在しても良い。
【0122】
変形例1として、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を2.7×10−3Paとし、基板21の温度を300℃に保った以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。変形例1の条件でガラス基板上に形成されたMg−In系酸化物膜に対して上記実施形態と同様にしてX線回折測定を行ったところ、複数のピークが観測された。具体的には、2θが約33度のところに最も強いピークがあり、これはスピネル構造を有するMgIn2O4の(311)ピークに相当するものである。これにより、基板21を加熱しながら成膜したことによって、結晶性のMg−In系酸化物膜が得られたことが確認できた。
【0123】
変形例1の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図19に示されている。これによると、ゲート電圧VGを5Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値1.9pAとなり、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、IDS=63μAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は2.6cm2/Vsであった。すなわち、上記実施形態の電界効果型トランジスタと同様に、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。なお、変形例1の条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は40Ωcmであった。
【0124】
この場合、スピネル構造は立方晶で、BO6八面体が稜共有した1次元鎖(ルチル鎖)が三次元的に様々な方向に走っており、AO4四面体がルチル鎖同士をつなぐ役割をしている。そこで、キャリアの輸送特性は、薄膜の配向性に依存しない。すなわち、電子の移動方向は等方的である。従って、ZnO系酸化物半導体のように、結晶構造の異方性に起因する不都合はない。また、伝導帯の底部はインジウムの5s軌道から構成されるので、電子キャリアの輸送特性に対する結晶粒界の影響は非常に小さい。
【0125】
また、上記実施形態において、活性層22を構成する酸化物半導体は、インジウム(In)の一部がアルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)の少なくともいずれかに置換されても良い。この場合、置換元素の種類及び置換量によって、バンドギャップ、伝導帯の底部のエネルギ−、酸素原子の格子エネルギ−を制御することができる。例えば、置換量を増大させると、紫外の透明領域を拡大することができる。また、置換量を増大させると、伝導帯のエネルギ−レベルが高くなり、電子キャリアが生成しにくくなる。
【0126】
変形例2として、活性層22にインジウム(In)の一部をガリウム(Ga)で置換したMg−In系酸化物膜を用い、Mg−In系酸化物膜をスパッタする際の酸素分圧を1.8×10−3Paとした以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。
【0127】
この場合には、Mg−In系酸化物膜は、2つのターゲット(ターゲット1、ターゲット2)を用いた同時スパッタ法により形成した。ターゲット1はIn2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)であり、ターゲット2はGa2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)である。スパッタパワーを、In2MgO4に対しては40W、Ga2MgO4に対しては60Wとし、厚さ100nmのMg−In系酸化物膜を形成した。
【0128】
変形例2の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSを20Vとした場合の、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が図20に示されている。これによると、ゲート電圧VGを11Vとしたときに、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値0.9pAとなり、ゲート電圧VGを20Vとしたときに、IDS=9.1μAとなっている。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は1.3cm2/Vsであった。すなわち、上記実施形態の電界効果型トランジスタと同様に、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。なお、変形例2の条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は1100Ωcmであった。
【0129】
また、上記実施形態において、活性層22を構成する酸化物半導体は、マグネシウム(Mg)の一部がカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)の少なくともいずれかに置換されても良い。
【0130】
変形例3として、活性層22にマグネシウム(Mg)の一部をストロンチウム(Sr)で置換したMg−In系酸化物膜を用いる以外は実施例1と同様にして電界効果型トランジスタを作製した。
【0131】
この場合には、Mg−In系酸化物膜は、2つのターゲット(ターゲット1、ターゲット2)を用いた同時スパッタ法により形成した。ターゲット1はIn2MgO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)であり、ターゲット2はIn2SrO4の組成を有する多結晶焼結体(サイズ:直径4インチ)である。スパッタパワーを、In2MgO4に対しては200W、In2SrO4に対しては30Wとし、厚さ100nmのMg−In系酸化物膜を形成した。
【0132】
図21には、変形例3の電界効果型トランジスタにおいて、ソース・ドレイン間電圧VDSが20Vのときの、ゲート電圧VGとソース・ドレイン間電流IDSとの関係が示されている。ゲート電圧VGを2Vとした時に、ソース・ドレイン間電流IDSが最小値2pAとなり、VG=20Vとした時に、IDS=99μAとなった。そして、飽和領域において算出した電界効果移動度は2.6cm2/Vsであった。すなわち、上記実施形態の電界効果型トランジスタ(10、20)と同様に、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現している。なお、変形例3の条件で形成されたMg−In系酸化物膜の体積抵抗率は9Ωcmであった。
【0133】
また逆スピネル構造で観測されるように、4面体サイトを3価カチオン(YIII)が、8面体サイトを2価カチオン(XII)が占有することが可能であり、2価カチオン(Mg、Ca、Sr、Ba)と3価カチオン(In、Ga、Al)の組成比には幅を持たせることができる。可能なカチオン比XII/YIIIは0.2〜1程度で、必要なTFT特性、バンドギャップ(紫外光領域の透明性)、酸素空孔の安定性、プロセスマージンなどを考慮して、適切にカチオン種と組成比を選択することができる。
【0134】
また、上記実施形態において、活性層22を構成する酸化物半導体は、酸素の一部が窒素及びフッ素の少なくともいずれかに置換されても良い。この場合、酸化物半導体における酸素量をさらに精度良く制御することが可能となる。
【0135】
また、上記実施形態では、光制御素子が有機EL素子の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光制御素子が液晶素子であっても良い。この場合は、上記ディスプレイ310は、液晶ディスプレイとなる。そして、一例として図22に示されるように、表示素子302´に対する電流供給線は不要である。
【0136】
この場合は、また、一例として図23に示されるように、ドライブ回路320´は、前述した電界効果型トランジスタ(10、20)と同様な1つの電界効果型トランジスタ40のみで構成することができる。電界効果型トランジスタ40では、ゲート電極Gが所定の走査線に接続され、ソース電極Sが所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dが液晶素子370の画素電極に接続されている。なお、図23における符号372は、液晶素子370の対向電極(コモン電極)である。
【0137】
また、光制御素子が無機EL素子であっても良い。
【0138】
また、上記実施形態では、ディスプレイがカラー対応の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0139】
また、上記実施形態では、システムがテレビジョン装置の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに画像や情報を表示する装置として上記画像表示装置124を備えていれば良い。例えば、コンピュータ(パソコンを含む)と画像表示装置124とが接続されたコンピュータシステムであっても良い。
【0140】
また、携帯電話、携帯型音楽再生装置、携帯型動画再生装置、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報機器、スチルカメラやビデオカメラなどの撮像機器における表示手段に画像表示装置124を用いることができる。また、車、航空機、電車、船舶等の移動体システムにおける各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。さらに、計測装置、分析装置、医療機器における各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。
【0141】
なお、本実施形態に係る電界効果型トランジスタは、表示素子以外のもの(例えば、ICカード、IDタグ)にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明したように、本発明の電界効果型トランジスタによれば、高いキャリア移動度とノーマリーオフ特性とを実現させるのに適している。また、本発明の表示素子によれば、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくするのに適している。また、本発明の画像表示装置によれば、大画面で高品質の画像を表示するのに適している。また、本発明のシステムによれば、画像情報を高精細に表示するのに適している。
【符号の説明】
【0143】
10…電界効果型トランジスタ、20…電界効果型トランジスタ、40…電界効果型トランジスタ、100…テレビジョン装置(システム)、121…映像デコーダ(画像データ作成装置の一部)、122…映像・OSD合成回路(画像データ作成装置の一部)、123…映像出力回路(画像データ作成装置の一部)、124…画像表示装置、125…OSD描画回路(画像データ作成装置の一部)、302…表示素子、302´…表示素子、350…有機EL素子(光制御素子)、370…液晶素子(光制御素子)、400…表示制御装置、X0〜Xn−1…走査線(配線の一部)、Y0〜Ym−1…データ線(配線の一部)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0144】
【特許文献1】特開2002−76356号公報
【特許文献2】米国特許第7067843号明細書
【特許文献3】特表2007−529119号公報
【特許文献4】米国特許第7297977号明細書
【特許文献5】特開2004−103957号公報
【非特許文献】
【0145】
【非特許文献1】K.Nomura,他5名、「Thin−Film Transistor Fabricated in Single−Crystalline Transparent Oxide Semiconductor」、SCIENCE、VOL300、23、MAY、2003、p.1269−1272
【非特許文献2】K.Nomura,他5名、「Room−temperature fabrication of transparent flexible thin−film transistors using amorphous oxide semiconductors」、NATURE、VOL432、25、NOVEMBER、2004、p.488−492
【非特許文献3】引馬尚子,他4名、「新透明電子伝導性酸化物.2.MgIn2O4−x焼結体の化学的状態と光学的・電気的性質」、第39回応用物理学関係連合講演会(1992年春季)、講演予稿集、No.3、30p−C−2、p.851
【非特許文献4】N.Ueda,他6名、「New oxide phase with wide band gap and high electroconductivity,MgIn2O4」、Appl.Phys.Lett.61(16)、19、October、1992、p.1954−1955
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;
電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;
前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層と;
前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;を備える電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記酸化物半導体は、体積抵抗率が10−2Ωcm以上、109Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記酸化物半導体は、前記インジウムの一部がアルミニウム及びガリウムの少なくともいずれかに置換されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記酸化物半導体は、前記マグネシウムの一部がカルシウム、ストロンチウム及びバリウムの少なくともいずれかに置換されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
前記酸化物半導体は、少なくとも一部がスピネル構造あるいはオリビン構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記酸化物半導体は、少なくとも一部が非晶質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
前記酸化物半導体は、酸素の一部が窒素及びフッ素の少なくともいずれかに置換されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項8】
駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と;
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタを含み、前記光制御素子を駆動する駆動回路と;を備える表示素子。
【請求項9】
前記光制御素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする請求項8に記載の表示素子。
【請求項10】
前記光制御素子は、液晶素子を含むことを特徴とする請求項8に記載の表示素子。
【請求項11】
画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の請求項8〜10のいずれか一項に記載の表示素子と;
前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と;
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置と;
を備える画像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像表示装置と;
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置と;を備えるシステム。
【請求項1】
ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;
電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;
前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、マグネシウム(Mg)とインジウム(In)を主成分とする酸化物半導体からなる活性層と;
前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;を備える電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記酸化物半導体は、体積抵抗率が10−2Ωcm以上、109Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記酸化物半導体は、前記インジウムの一部がアルミニウム及びガリウムの少なくともいずれかに置換されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記酸化物半導体は、前記マグネシウムの一部がカルシウム、ストロンチウム及びバリウムの少なくともいずれかに置換されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
前記酸化物半導体は、少なくとも一部がスピネル構造あるいはオリビン構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記酸化物半導体は、少なくとも一部が非晶質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
前記酸化物半導体は、酸素の一部が窒素及びフッ素の少なくともいずれかに置換されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項8】
駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と;
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタを含み、前記光制御素子を駆動する駆動回路と;を備える表示素子。
【請求項9】
前記光制御素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする請求項8に記載の表示素子。
【請求項10】
前記光制御素子は、液晶素子を含むことを特徴とする請求項8に記載の表示素子。
【請求項11】
画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の請求項8〜10のいずれか一項に記載の表示素子と;
前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と;
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置と;
を備える画像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像表示装置と;
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置と;を備えるシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図11】
【図13】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図11】
【図13】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−74148(P2010−74148A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180600(P2009−180600)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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