説明

静電気放電保護素子および半導体装置

【課題】半導体集積回路のESD保護素子としての性能を向上させるとともに、ESD保護素子形成領域を小さくすることができる静電気放電保護素子を得ること。
【解決手段】半導体基板1上に形成されたゲート絶縁膜12、ゲート電極13およびサイドウォール膜14からなるゲート構造11と、ゲート構造11の両側に形成される高濃度不純物拡散層からなるソース領域15およびドレイン領域16と、ソース領域15とドレイン領域16のゲート構造11側に形成される低濃度不純物拡散層からなるエクステンション部17と、ソース電極と、ドレイン電極と、を備え、ゲート電極とソース電極が接地された複数の電界効果型トランジスタによって構成されるマルチフィンガタイプの静電気放電保護素子において、ソース電極とゲート電極13との間、およびドレイン電極とゲート電極13との間の高濃度不純物拡散層内に、低濃度不純物拡散層からなる抵抗領域18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路装置において、静電気放電による破壊から内部回路を保護する静電気放電保護素子と半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路には外部からの電荷の放電や、半導体集積回路自身に充電された電荷の放電などの静電気放電(ElectroStatic Discharge,以下、ESDという)によって内部回路が破壊されるのを防ぐため、ESD保護素子が設けられている。特に、従来のCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)プロセスにおけるESD保護素子は、通常のCMOS技術で作成可能でかつ面積当たりのESD耐量が比較的高い、ゲート幅が数十μmのnチャネル電界効果型トランジスタ(以下、NMOSトランジスタという)を複数本並列接続した櫛状構造を有するマルチフィンガタイプのゲート接地型NMOSトランジスタ(以下、ggNMOSトランジスタという)が主に使用される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図6−1は、従来のggNMOSトランジスタを使用したESD保護素子の構造を模式的に示す一部断面図であり、図6−2は、従来のggNMOSトランジスタを使用したESD保護素子の構造を模式的に示す一部平面図である。このESD保護素子は、図に示されるように、図示しない内部回路が形成された半導体基板101上のESD保護素子を形成する領域(以下、ESD保護素子形成領域という)Rに形成される。この図の例では、ESD保護素子形成領域R中の素子分離絶縁膜102で区切られる領域中に、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有するNMOSトランジスタが形成されている。また、NMOSトランジスタが形成される素子分離絶縁膜102で区切られた領域の外側には、P+拡散層121が形成され、このP+拡散層121にはバックゲート電極が接続されている。
【0004】
NMOSトランジスタは、半導体基板101上の所定の位置に形成されるゲート絶縁膜112およびゲート電極113、これらのゲート絶縁膜112およびゲート電極113の線幅方向の両側面に形成されるサイドウォール114を有してなるゲート構造111と、ゲート構造111の下方のチャネル領域を挟んで対を成すN+拡散層によって構成されるソース領域115およびドレイン領域116と、ソース領域115とドレイン領域116のゲート構造111側端部にN−拡散層によって形成されるエクステンション部117と、を有している。ここで、N+拡散層は、N−拡散層よりもN型不純物濃度が高くなっていることを示している。ここで、各NMOSトランジスタのゲート電極113とソース領域115に接続されるソース電極は接地され、ドレイン領域116に接続されるドレイン電極は入出力端子または電源端子に接続されるように配線される。
【0005】
【特許文献1】特開2002−324842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のESD保護素子を構成するggNMOSトランジスタの構造は、内部回路を構成するNMOSトランジスタと同じ構造を有し、同じプロセスで形成されるために、内部素子より速い応答特性や低クランプ電圧、低インピーダンスなどのESD保護素子としての性能向上を図ることが難しいという問題点があった。
【0007】
また、マルチフィンガタイプのggNMOSトランジスタの場合には、電流集中を防ぎ、すべてのNMOSトランジスタを確実に動作させるようにするために、意識的にバラスト抵抗を付加する方法が一般的に採用されている。このバラスト抵抗を付加するために、N+拡散層上のコンタクトとゲート電極との間の距離を広めにしている。しかし、N+拡散層のシート抵抗の値は、通常、数Ω/□〜数十Ω/□程度とあまり高くないために、現状のN+拡散層上のコンタクトとゲートとの間の距離としてかなり大きな値が必要となり、その結果としてESD保護素子形成領域も大きくなってしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、半導体集積回路のESD保護素子としての性能を向上させるとともに、ESD保護素子形成領域を小さくすることができる静電気放電保護素子と半導体装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明にかかる静電気放電保護素子は、半導体基板上に順に積層されたゲート絶縁膜およびゲート電極と、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極の積層体の線幅方向両側に形成されたサイドウォール膜と、からなるゲート構造と、前記ゲート構造の前記サイドウォール膜側の両側に形成される高濃度不純物拡散層からなるソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域の前記ゲート構造側に形成される低濃度不純物拡散層からなるエクステンション部と、前記ソース領域に接続されるソース電極と、前記ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を備え、前記ゲート電極と前記ソース電極が接地された電界効果型トランジスタが、そのゲート電極の伸長方向が並行するように複数配置されたマルチフィンガタイプの静電気放電保護素子において、前記ソース電極と前記ゲート電極との間、および前記ドレイン電極と前記ゲート電極との間の高濃度不純物拡散層内に、低濃度不純物拡散層からなる抵抗領域を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、N−拡散層はN+拡散層と比較してシート抵抗値が2桁程度高いので、ソース電極/ドレイン電極とゲート電極との間のN+拡散層中にN−拡散層を設けることによって、バラスト抵抗を付加することができるとともに、必要なバラスト抵抗値を確保するためのゲート電極とN+拡散層上のソース電極/ドレイン電極との間の距離を従来の構造に比べて短くすることができる。その結果、ESD保護素子形成領域を従来のものに比して縮小することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる静電気放電保護素子と半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられるESD保護素子の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明にかかるESD保護素子の実施の形態1の模式的な構成を示す断面図である。このESD保護素子は、図に示されるように、図示しない内部回路が形成された半導体基板1上のESD保護素子形成領域Rに形成される。この図の例では、ESD保護素子形成領域R中の素子分離絶縁膜2で分離された領域中に、LDD構造を有するNチャネル電界効果型トランジスタ(以下、NMOSトランジスタという)が、そのゲート電極13が並行するように複数櫛状に形成された、マルチフィンガタイプのESD保護素子が形成されている。なお、このESD保護素子の平面形状は、背景技術で説明した図6−2とほぼ同様の形状を有しているものとする。
【0013】
NMOSトランジスタは、半導体基板1上の所定の位置に形成されるゲート絶縁膜12およびゲート電極13、これらのゲート絶縁膜12およびゲート電極13の線幅方向の両側面に形成されるサイドウォール膜14を有してなるゲート構造11と、ゲート構造11の下方のチャネル領域を挟んで対を成すN+拡散層によって構成されるソース領域15/ドレイン領域16と、ソース領域15/ドレイン領域16のゲート構造11側端部にN−拡散層によって構成されるエクステンション部17と、ゲート電極13とソース領域15に接続される図示しないソース電極とドレイン領域16に接続される図示しないドレイン電極のコンタクトの形成位置との間に低濃度のN−拡散層によって構成される抵抗領域18と、を備える。ここで、N+拡散層は、N−拡散層よりもN型不純物濃度が高くなっていることを示している。また、各NMOSトランジスタのゲート電極13とソース電極は接地され、ドレイン電極は入出力端子または電源端子に接続されるように配線される。
【0014】
ソース領域15とドレイン領域16に形成される抵抗領域18は、ソース領域15/ドレイン領域16を構成するN+拡散層の中に、N+拡散層よりもN型不純物濃度の低いN−拡散層によって構成される。N−拡散層は、N+拡散層よりもシート抵抗が2桁程度高くなるので、ソース領域15とドレイン領域16におけるバラスト抵抗の役割を果たす。
【0015】
つぎに、このような構成のESD保護素子の製造方法について説明する。図2−1〜図2−8は、この発明にかかるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。まず、P型シリコン基板などの半導体基板1のESD形成領域に図示しないP型ウェルを形成し、ESD保護素子であるNMOSトランジスタを形成する領域を露出させるように所定のパターンの素子分離絶縁膜2を形成する(図2−1)。この素子分離絶縁膜2は、たとえばLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法やSTI(Shallow Trench Isolation)法などによって形成される。その後、半導体基板1上にゲート絶縁膜12の基となる絶縁膜12aを形成し、その上にさらにSiまたはSiを含む電極材料層13aを所定の厚さ堆積する(図2−2)。絶縁膜12aは、熱酸化法、物理的気相蒸着法(以下、PVD法という)、化学的気相蒸着法(以下、CVD法という)などで形成することができる。また、電極材料層13aは、CVD法などによって形成することができる。
【0016】
ついで、電極材料層13a上の全面にレジストを塗布し、ESD保護素子形成領域Rのゲート電極13の形成位置に対応する領域にレジスト30を残すようにパターニングする(図2−3)。その後、このレジストパターンをマスクにして、電極材料層13aと絶縁膜12aとをエッチングする。このとき、電極材料層13aの上面から絶縁膜12aと半導体基板1との界面に至るまでエッチングする(図2−4)。これにより、ゲート絶縁膜12とゲート電極13の積層体が形成される。
【0017】
ついで、半導体基板1上の全面にレジスト31を塗布し、NMOSトランジスタの形成領域以外の領域がマスクされるようにパターニングし、このレジスト31と、ゲート絶縁膜12とゲート電極13の積層体とをマスクにして、ESD保護素子形成領域Rにドナーとなる不純物を低濃度で導入した低濃度拡散層(N−拡散層)22を形成する(図2−5)。その後、ゲート絶縁膜12とゲート電極13の積層体が形成された半導体基板1上の全面にサイドウォール膜の基となるサイドウォール用絶縁膜を形成する。そして、ESD保護素子形成領域R上のゲート電極13の上面と半導体基板1上のゲート電極形成領域R以外に形成されたサイドウォール用絶縁膜を除去して、ゲート絶縁膜12とゲート電極13の積層体の線幅方向側面にサイドウォール膜14を形成する(図2−6)。これによって、半導体基板1のESD保護素子形成領域R上にゲート絶縁膜12、ゲート電極13およびサイドウォール膜14からなるゲート構造11が形成される。
【0018】
ついで、ゲート構造11が形成された半導体基板1上の全面にレジスト32を塗布し、NMOSトランジスタの形成領域では、N−拡散層22中の所定の位置にのみにレジスト32を残すようにパターニングする(図2−7)。ここでは、1つのゲート電極13に対して線幅方向両側のN−拡散層22内に1つずつのマスクが形成されるようにパターニングする。
【0019】
ついで、ゲート構造11とN−拡散層22上に形成したレジスト32とをマスクにして、ゲート構造11の線幅方向両側の半導体基板1上の領域にソース領域15/ドレイン領域16を形成するためにN型不純物をイオン注入する。このとき、N−拡散層22を形成した際の不純物濃度よりも高濃度にN型不純物を導入する(図2−8)。その後、レジストを除去し、イオン注入した不純物を活性化させる。これにより、N−拡散層22中にN+拡散層からなるソース領域15a,15bとドレイン領域16a,16bが形成される。また、N−拡散層22のうち、ソース領域15/ドレイン領域16のゲート電極13側の部分は、エクステンション部17となり、N+拡散層の形成時にマスクされなかった部分は抵抗領域18となる。
【0020】
その後、ゲート構造11が形成された半導体基板1上に層間絶縁膜を形成し、ソース領域15b/ドレイン領域16bを構成するN+拡散層の位置とゲート電極13に、コンタクトプラグを形成し、このコンタクトプラグに電気的に接続するように層間絶縁膜上に配線パターンを形成することによって、図1に示されるESD保護素子が形成される。なお、ソース電極とゲート電極13は接地されるように配線がなされる。また、隣接するゲート構造11間には3つのN+拡散層がゲート構造に並行して形成されるが、これらのN+拡散層のうち真ん中のN+拡散層にソース電極/ドレイン電極となるコンタクトプラグが形成される。
【0021】
この実施の形態1によれば、N−拡散層22はN+拡散層と比較してシート抵抗値が2桁程度高いので、ソース電極/ドレイン電極とゲート電極13との間のN+拡散層中にN−拡散層22を設けることによって、バラスト抵抗を付加することができるとともに、必要なバラスト抵抗値を確保するためのゲート電極13とN+拡散層上のソース電極/ドレイン電極との間の距離を従来の構造に比べて短くすることができる。その結果、ESD保護素子形成領域を従来のものに比して縮小することができるという効果を有する。
【0022】
また、このようなESD保護素子の製造方法におけるN+拡散層のフォトリソグラフィ工程で、従来の構造では、ESD保護素子形成領域全体をレジストで覆っていなかったものを、この実施の形態1の場合には、ESD保護素子形成領域内のN−拡散層上の一部をレジストで覆うようにするだけである。つまり、従来の構造のものからESD保護素子のレジストで覆う領域を変更するだけで、この実施の形態1のESD保護素子を形成することができる。そのため、このESD保護素子を製造するに当たって、製造コストを上げることがなく、また他の内部回路を構成する素子などへ影響を与えることがないという効果も有する。したがって、どんなCMOSプロセスにも展開することが容易となる。
【0023】
なお、ESD保護素子にggPMOSトランジスタを使用している場合には、ゲート電極とソース領域/ドレイン領域に形成するコンタクトとの間のP+拡散層中にP−拡散層からなる抵抗領域を設けることで同様の効果を得ることができる。
【0024】
実施の形態2.
図3は、この発明にかかるESD保護素子の実施の形態2の模式的な構成を示す平面図である。このESD保護素子は、半導体集積回路の内部回路の形成領域に隣接したESD保護素子形成領域に、2方向のゲート電極13a,13bが所定の角度で(直交して)交わり、格子状構造を形成していることを特徴とする。そして、ゲート電極13a,13bで囲まれる領域内には、隣接するゲート電極13a,13bで囲まれる領域内で同種の電極とならないように、ソース電極15Cまたはドレイン電極16Cが形成される。なお、この図3において、ソース電極15Cとドレイン電極16Cは、それぞれ半導体基板上のソース領域とドレイン領域に電気的に接続されるコンタクトを示している。また、ゲート電極13a,13bとソース電極15Cとは、接地されるように配線がなされる。
【0025】
ここで、ゲート電極13a,13bのピッチをa、ゲート長をLとしたときの単位面積当たりのチャネル幅Waは、次式(1)のように求められる。
【0026】
Wa=チャネル幅/面積
={4(a−L)}/{(2a×2a)/2}
=2(a−L)/a2 ・・・(1)
【0027】
一方、図6−2に示される従来例のESD保護素子における単位面積当たりのチャネル幅Wbは、次式(2)のように求められる。
【0028】
Wb=チャネル幅/面積
=2a/(2a×a)
=1/a ・・・(2)
【0029】
ここで、実施の形態2における単位面積当たりのチャネル幅Waが、従来のESD保護素子の単位面積当たりのチャネル幅Wbよりも大きくなる条件(Wa>Wbとなる)は、上記(1)、(2)式から、
2(a−L)/a2>1/a
となり、これより、次式(3)の条件が求められる。
【0030】
a>2L ・・・(3)
【0031】
つまり、ゲート電極13のピッチがゲート長Lの2倍よりも大きな場合は実施の形態2の方が静電気放電パスのインピーダンスを低減できる。
【0032】
このようなESD保護素子の製造方法は、従来のggMOS型のESD保護素子の製造方法のゲート電極の形成工程において、従来では図6−2に示されるように互いに並行した複数本のゲート電極となるようにパターニングして形成していたものを、図3に示されるように互いに所定の角度で交わる2方向のゲート電極13a,13bとなるようにパターニングして形成するようにするだけである。その他の処理は、従来におけるESD保護素子の製造方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
この実施の形態2によれば、ピッチがゲート長の2倍よりも大きくなるように格子状のゲート電極13a,13bを形成したので、従来のESD保護素子よりも単位面積当たりのチャネル幅を大きくすることができ、その結果、静電気放電の放電パスのインピーダンスを低減することができるという効果を有する。また、単位面積当たりのチャネル幅を大きくすることができるので、従来と同一のチャネル幅を得るためのESD保護素子形成領域を縮小することができるという効果も有する。
【0034】
実施の形態3.
マルチフィンガタイプのggMOSトランジスタにおいて、ESDの電流集中を防ぐためには、フィンガごとのターンオン電圧とインピーダンスを揃えることが重要である。ここで、ターンオン電圧とは、ゲート電極のドレイン端側の電圧である。また、ESDの放電能力を高めるためにはインピーダンスを低減することが有効である。そこで、この実施の形態3では、マルチフィンガタイプのggMOSトランジスタにおいて、フィンガごとのターンオン電圧とインピーダンスを揃えることができるESD保護素子について説明する。
【0035】
図4は、この発明にかかるESD保護素子の実施の形態3の模式的な構成を示す平面図である。このESD保護素子は、マルチフィンガタイプのggMOSトランジスタにおいて、ゲート電極13とドレイン電極(ドレインコンタクト)16Cとの間の距離を、ゲート電極13とソース電極(ソースコンタクト)15Cとの間の距離よりも大きくしたことを特徴とする。つまり、ソース領域を挟むゲート電極13のピッチをaとし、ドレイン領域を挟むゲート電極13のピッチをbとすると、b>aとなるようにゲート電極13を形成することを特徴とする。このように、ゲート電極13とドレイン電極16Cの間の距離を、ゲート電極13とソース電極15Cとの間の距離よりも大きくすることで、十分に大きな拡散抵抗を追加することができる。
【0036】
従来では、外部ピンからドレイン電極(ドレインコンタクト)16Cまでの配線抵抗で、ドレイン領域の抵抗を高くするようにしていたが、この実施の形態3では、上記の配線抵抗に加え、ドレイン電極(ドレインコンタクト)16Cとゲート電極13との間の距離をソース電極(ソースコンタクト)15Cとゲート電極13との間の距離よりも長くして、拡散抵抗を追加するようにした。これによって、フィンガごとのターンオン電圧とインピーダンスを揃えることが可能となる。
【0037】
また、1つのゲート電極13とソース電極(ソースコンタクト)15C/ドレイン電極(ドレインコンタクト)16Cの間隔について、ドレイン電極16Cとゲート電極13との間の距離をソース電極15Cとゲート電極13との間の距離よりも長くすることで、同一面積ならばこの実施の形態3の方が耐量は高くなる。
【0038】
なお、このESD保護素子の製造方法は、従来のggMOSトランジスタのESD保護素子の製造方法において、ゲート電極13の形成時に、ソース領域を挟む位置のゲート電極13とドレイン領域を挟む位置のゲート電極13の形成位置を従来のものと変更するだけで、その他の工程は従来のものと同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
また、上述した実施の形態3では、ESD保護素子形成領域に形成されたESD保護素子について説明したが、直接外部ピンに繋がっている出力用CMOSに適用しても、同様の効果を得ることができる。図5は、半導体集積装置の内部回路の外部ピンに繋がっている出力用CMOSにこの実施の形態3を適用した場合の試験結果を示す図である。ここでは、ESD実力試験として、MM(Machine Model)試験とHBM(Human Body Model)試験を行った。また、この試験において、PMOSトランジスタのバックゲート配線処理として、コンタクト電極を増やして寄生抵抗成分を減らしてサージの抜けをよくするようにした。また、NMOSトランジスタのバックゲート配線処理としては、バックゲートとソースとを分け、バックゲート配線を延ばして配線抵抗を付加させるようにした。これにより、寄生NPNトランジスタが動作し易くなり、寄生NPNトランジスタを通り、サージの抜けをよくするようにした。
【0040】
まず、従来例として、ESD保護素子としては、ゲート電極−ソース電極間の距離と、ゲート電極−ドレイン電極間の距離とがともに2.0μmと同じ長さの構造を有し、出力PMOSトランジスタと出力NMOSトランジスタとしては、ゲート電極−ソース電極間の距離と、ゲート電極−ドレイン電極間の距離とがともに1.5μmと同じ長さの構造を有する半導体装置を用いた。この結果が、図5の「従来例」に示されている。一方、実施例として、ESD保護素子としては、ゲート電極−ソース電極間の距離と、ゲート電極−ドレイン電極間の距離とがともに2.0μmと同じ長さの構造を有し、出力PMOSトランジスタと出力NMOSトランジスタとしては、ゲート電極−ソース電極間の距離を1.0μmとし、ゲート電極−ドレイン電極間の距離を2.0μmとした構造を有する半導体装置を用いた。この結果が、図5の「実施例」に示されている。この図5に示されるように、直接外部ピンに繋がっている出力用CMOSにこの実施の形態3を適用した場合に、ESD耐量が顕著に上昇していることが分かる。
【0041】
この実施の形態3によれば、マルチフィンガタイプのggMOSトランジスタにおいて、ドレイン電極(ドレインコンタクト)16Cとゲート電極13との間の距離をソース電極(ソースコンタクト)15Cとゲート電極13との間の距離よりも長くしたので、フィンガごとのターンオン電圧とインピーダンスとを揃えることができるという効果を有する。また、従来のESD保護素子に比較して、この実施の形態3のESD保護素子の方が少ない面積で、従来のESD保護素子と同一耐量を得ることができるという効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかるESD保護素子は、CMOSプロセスを使用している半導体装置全般に有用であり、特に、ESD保護素子領域の割合が大きくなるチップサイズの小さい半導体装置やピン数が多い半導体装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明によるESD保護素子の実施の形態1の模式的な構成を示す断面図である。
【図2−1】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その1)。
【図2−2】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その2)。
【図2−3】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その3)。
【図2−4】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その4)。
【図2−5】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その5)。
【図2−6】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その6)。
【図2−7】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その7)。
【図2−8】この発明によるESD保護素子の製造手順の一例を模式的に示す断面図である(その8)。
【図3】この発明によるESD保護素子の実施の形態2の模式的な構成を示す平面図である。
【図4】この発明によるESD保護素子の実施の形態3の模式的な構成を示す平面図である。
【図5】半導体集積装置の内部回路の外部ピンに繋がっている出力用CMOSにこの実施の形態3を適用した場合の試験結果を示す図である。
【図6−1】従来のggNMOSトランジスタを使用したESD保護素子の構造を模式的に示す一部断面図である。
【図6−2】従来のggNMOSトランジスタを使用したESD保護素子の構造を模式的に示す一部平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 半導体基板
2 素子分離絶縁膜
11 ゲート構造
12 ゲート絶縁膜
13 ゲート電極
14 サイドウォール
15 ソース領域
16 ドレイン領域
17 エクステンション部
18 抵抗領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に順に積層されたゲート絶縁膜およびゲート電極と、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極の積層体の線幅方向両側に形成されたサイドウォール膜と、からなるゲート構造と、前記ゲート構造の前記サイドウォール膜側の両側に形成される高濃度不純物拡散層からなるソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域の前記ゲート構造側に形成される低濃度不純物拡散層からなるエクステンション部と、前記ソース領域に接続されるソース電極と、前記ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を備え、前記ゲート電極と前記ソース電極が接地された電界効果型トランジスタが、そのゲート電極の伸長方向が並行するように複数配置されたマルチフィンガタイプの静電気放電保護素子において、
前記ソース電極と前記ゲート電極との間、および前記ドレイン電極と前記ゲート電極との間の高濃度不純物拡散層内に、低濃度不純物拡散層からなる抵抗領域を備えることを特徴とする静電気放電保護素子。
【請求項2】
半導体基板上に順に積層されたゲート絶縁膜およびゲート電極と、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極の積層体の線幅方向両側に形成されたサイドウォール膜と、からなるゲート構造と、前記ゲート構造の前記サイドウォール膜側の両側に形成される高濃度不純物拡散層からなるソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域の前記ゲート構造側に形成される低濃度不純物拡散層からなるエクステンション部と、前記ソース領域に接続されるソース電極と、前記ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を備え、前記ゲート電極と前記ソース電極が接地された電界効果型トランジスタからなる静電気放電保護素子において、
前記電界効果型トランジスタのゲート電極は、2方向に交差して延びる格子状を有し、前記ソース領域と前記ドレイン領域は、前記ゲート電極によって囲まれる領域に、隣接する領域で同じ種類の領域とならないように交互に配置されるとともに、前記格子状のゲート電極のピッチは、当該電界効果型トランジスタのゲート長の2倍よりも長いことを特徴とする静電気放電保護素子。
【請求項3】
半導体基板上に順に積層されたゲート絶縁膜およびゲート電極と、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極の積層体の線幅方向両側に形成されたサイドウォール膜と、からなるゲート構造と、前記ゲート構造の前記サイドウォール膜側の両側に形成される高濃度不純物拡散層からなるソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域の前記ゲート構造側に形成される低濃度不純物拡散層からなるエクステンション部と、前記ソース領域に接続されるソース電極と、前記ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を備え、前記ゲート電極と前記ソース電極が接地された電界効果型トランジスタからなる静電気放電保護素子において、
前記ドレイン電極と前記ゲート電極との間の距離が、前記ソース電極と前記ゲート電極との間の距離よりも長いことを特徴とする静電気放電保護素子。
【請求項4】
半導体基板上に順に積層されたゲート絶縁膜およびゲート電極と、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極の積層体の線幅方向両側に形成されたサイドウォール膜と、からなるゲート構造と、前記ゲート構造の前記サイドウォール膜側の両側に形成される高濃度不純物拡散層からなるソース領域およびドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域の前記ゲート構造側に形成される低濃度不純物拡散層からなるエクステンション部と、前記ソース領域に接続されるソース電極と、前記ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を備え、前記ドレイン電極が外部ピンに直接接続される電界効果型トランジスタからなる半導体装置において、
前記ドレイン電極と前記ゲート電極との間の距離が、前記ソース電極と前記ゲート電極との間の距離よりも長いことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公開番号】特開2007−335463(P2007−335463A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162546(P2006−162546)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】