説明

高熱伝導樹脂組成物、高熱伝導性硬化物、接着フィルム、封止用フィルム、及びこれらを用いた半導体装置

【課題】高熱伝導性で接着性、信頼性に優れる高熱伝導樹脂組成物、接着フィルム、封止用フィルムを提供する。
【解決手段】1)高熱伝導性粒子、2)メソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤とを含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物、及び3)重量平均分子量1万以上の高分子量成分を少なくとも含む高熱伝導樹脂組成物であって、前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、前記3)高分子量成分とが硬化後に相分離する高熱伝導樹脂組成物、該高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなる接着フィルム、封止用フィルム、及び該接着フィルム、又は封止用フィルムを介して半導体素子と、半導体素子、基板、放熱板、支持体、金属板、及びセラミック板よりなる群から選ばれる1種又は2種とを積層してなる半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に用いる接着フィルム及び封止用フィルム、並びにそれらの作製に用いる高熱伝導樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムタイプの接着剤は、フレキシブルプリント配線板などで用いられており、アクリロニトリルブタジエンゴムを主成分とする系が多く用いられている。
【0003】
プリント配線板関連材料として耐湿性を向上させたものは、特許文献1に示されるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート及び無機フィラーを含む接着フィルムがあり、また特許文献2に示されるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、分子中にウレタン結合を有する両末端が第1級アミン化合物及び無機フィラーを含む接着フィルムがある。前記接着フィルムは、熱伝導性に優れるフィラーなどを含んでおらず、また樹脂の熱伝導率はいずれも低いため、熱伝導率が低かった。そこで、前記接着フィルムに熱伝導性に優れるフィラーなど加えたものは、熱伝導率が高くなると考えられるが、流動性の低下やフィルムの強度、熱応力の緩和の作用、耐熱性や耐湿性の低下などの課題があり、多量に加えることができないため、熱伝導率の向上にも制限があった。
【0004】
また、樹脂に高熱伝導性の無機粒子を多量に加えた混合物が提案されているが、高熱伝導性の無機粒子間に熱伝導率が低い樹脂が存在するため、多量に加えた割には熱伝導率が低くコスト的に不利であり、成形性にも劣るという問題点があった。
【0005】
ここで、接着フィルムは両面に被着体が接する場合、片面のみ被着体が接して、片面は大気などの外界に接する場合、あるいは場合により両面とも被着体がない、あるいは接着フィルムの面積の部分毎に上記のいずれかあたる場合などがある。このうち、片面のみ被着体が接して、片面は大気などの外界に接する場合は表面を封止、保護、被覆する場合であるので、これを特に封止用フィルムと呼ぶ場合がある。
【0006】
一方、従来から、電子機器の小型化・軽量化が進められており、これに伴い基板への高密度実装が要求され、電子機器に搭載する半導体パッケージの小型化、薄型化、軽量化が進められている。従来より、LOC(Lead On Chip)やQFP(Quad Flat Package)等と呼ばれるパッケージがあり、LOCやQFP等のパッケージよりも、さらに小型化・軽量化したCSP(Chip Size Package)やμBGA(Ball Grid Array)等のパッケージの開発が行われている。最近では、半導体素子の回路面が半導体配線基板側に向けられている、いわゆるフェイスダウン型パッケージであるフリップチップ、ウエハレベルCSPなどが開発されている。
【0007】
上述したパッケージでは、固形のエポキシ樹脂封止材をトランスファー成形法により成形することで封止パッケージを得ていたが、パッケージが薄型あるいは、大型の場合の成形は、難しかった。また、無機フィラーの含有量が増大すると、一般にトランスフアー成形時の溶融粘度が高くなり、成形物のボイドの残存,キヤビテイ充填不良,ワイヤフローおよびステージシフトの増大等と成形物の品質が低下するなどの問題が発生する。
【0008】
近年、フリップチップやウエハレベルCSPなどで、突起状電極を有するものがあり、その突起部の保護及び突起間の充てんのため、封止材を使用することがあったが、固形のエポキシ樹脂封止材による成形は難しかった。そのため、エポキシ樹脂、無機フィラーを主体としたフィルム状の封止用シートが提案されている。フィルム状の封止用シートは、パッケージやウエハが大きくなった場合に、そりが大きくなるなどの課題があり、より線膨張係数が小さい封止用フィルムが望まれていた。通常、線膨張係数を低減するためには、樹脂よりも線膨張係数の小さいシリカなどの無機フィラーを多量に充てんすることが行われているが、この方法では、フィルムの可とう性を低下させ、かつ、溶融粘度を増大させ、流動性も低下させるという問題があった。これまで、可とう性が高く、流動性が大きく、また溶融粘度と線膨張係数が小さい、かつ熱伝導性に優れる封止用フィルムは得られていなかった。例えば、特許文献3に示される封止用フィルムがあるが、特段に優れた放熱性を有していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−243180号公報
【特許文献2】特開昭61−138680号公報
【特許文献3】特許第4225162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、Bステージ状態では可とう性や流動性が大きく、また、硬化後は線膨張係数が小さく、また熱伝導性に優れており、半導体素子表面の保護特性に優れた高熱伝導樹脂硬化物、接着フィルム又は封止用フィルム、それらを作製し得る高熱伝導樹脂組成物、及び該接着フィルム及び/又は封止用フィルムを使用し、熱伝導性や組立加工性、信頼性に優れた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)1)高熱伝導性粒子、2)メソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤とを含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物、及び3)重量平均分子量1万以上の高分子量成分を少なくとも含む高熱伝導樹脂組成物であって、
前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、前記3)高分子量成分とが硬化後に相分離することを特徴とする高熱伝導樹脂組成物。
【0012】
(2)前記エポキシ樹脂モノマーが、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂モノマーであることを特徴とする前記(1)に記載の高熱伝導樹脂組成物。
E−M−S−M−E …一般式(1)
(但し、Eはエポキシ基、Mはメソゲン、Sはスペーサ部を示す)
【0013】
(3)前記3)高分子量成分が、硬化前は前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と溶解しており、硬化後に島状に相分離する重量平均分子量1万以上のガラス転移温度が30℃以下の高分子量成分であり、
前記1)高熱伝導性粒子が、全体の40〜90体積%であり、かつ前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、前記3)高分子量成分を5〜50質量部含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高熱伝導樹脂組成物。
【0014】
(4)さらに、レーザー光を吸収する顔料、染料、化合物を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高熱伝導樹脂組成物。
【0015】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物であって、
結晶相又は液晶相よりなる異方性構造を有し、前記異方性構造単位の径の最大値が400nm以上であり、樹脂成分中に含まれる異方性構造の割合が25体積%以上であることを特徴とする高熱伝導樹脂硬化物。
【0016】
(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする接着フィルム。
【0017】
(7)前記(6)に記載の接着フィルムに厚み方向の圧力をかけることにより得られることを特徴とする接着フィルム。
【0018】
(8)前記(7)に記載の接着フィルムに、プレス加工又はロール加工により加熱下に圧力をかけた後、冷却することを特徴とする接着フィルム。
【0019】
(9)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする封止用フィルム。
【0020】
(10)前記(9)に記載の封止用フィルムに厚み方向の圧力をかけることにより得られることを特徴とする封止用フィルム。
【0021】
(11)前記(9)に記載の封止用フィルムに、プレス加工又はロール加工により加熱下に圧力をかけた後、冷却することを特徴とする封止用フィルム。
【0022】
(12)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高熱伝導樹脂組成物、請求項(6)〜(8)のいずれかに記載の接着フィルム、及び前記(9)〜(11)のいずれかに記載の封止用フィルムのうちの少なくともいずれか1つを介して半導体素子と、半導体素子、基板、放熱板、支持体、金属板、及びセラミック板よりなる群から選ばれる1種又は2種とを積層してなることを特徴とする半導体装置。
【0023】
(13)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の高熱伝導樹脂組成物、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の接着フィルム、及び前記(9)〜(11)のいずれかにに記載の封止用フィルムのうちの少なくともいずれか1つを半導体素子の片面あるいは両面に接着又は封止したことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、Bステージ状態では可とう性や流動性が大きく、また、硬化後は線膨張係数が小さく、また熱伝導性に優れており、半導体素子表面の保護特性に優れた高熱伝導樹脂硬化物、接着フィルム又は封止用フィルム、それらを作製し得る高熱伝導樹脂組成物、及び該接着フィルム及び/又は封止用フィルムを使用し、熱伝導性や組立加工性、信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<高熱伝導樹脂組成物>
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、1)高熱伝導性粒子、2)メソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤とを含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物、及び3)重量平均分子量1万以上の高分子量成分を少なくとも含む高熱伝導樹脂組成物であって、前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、前記3)高分子量成分とが硬化後に相分離することを特徴としている。
以下、本発明の高熱伝導樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0026】
1)高熱伝導性粒子
本発明で用いられる高熱伝導性粒子(以下(A)と記す)は、高熱伝導性の粒子であれば特に限定されず、例えば、高熱伝導性の無機粒子(以下(a1)と記す);無機粒子を高熱伝導樹脂で被覆した被覆粒子(以下(a2)と記す);などが挙げられる。ダイヤモンドなどの高価な高熱伝導性粒子の場合は、高熱伝導樹脂で被覆した被覆粒子(a2)として用いることにより、最小限の使用量で熱伝導性を向上できる点で好ましい。
高熱伝導性粒子(A)の形状は、特に制限はなく、例えば、球状、扁平粒状、樹枝状等が挙げられ、中でも、球状又は扁平粒状が好ましい。
また、高熱伝導性粒子(A)の体積平均粒径(以下、単に「平均粒径」ということがある。)は、特に限定されず、通常は0.05〜55μmの範囲内であるが、接着フィルムの厚さが20μm以下の薄型フィルムである場合は、平均粒径は0.5〜5μmとすることが好ましい。
【0027】
高熱伝導性粒子(A)として高熱伝導性の無機粒子(a1)を用いる場合、その熱伝導率は好ましくは30W/mK以上、より好ましくは100W/mK以上、特に好ましくは200W/mK以上である。前記熱伝導率が30W/mK未満では、放熱性が不十分であり、半導体素子や基板の温度が上昇する可能性がある。なお、熱伝導率の上限は特に制限はないが、通常、1100W/mK以下である。高熱伝導性の無機粒子(a1)の具体例としては、窒化アルミニウム、6方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、窒化珪素、ダイヤモンド、アルミナ等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。高熱伝導性の無機粒子(a1)の平均粒径は、0.05〜50μmであることが好ましい。
【0028】
一方、高熱伝導性粒子として被覆粒子(a2)を用いる場合、平均粒径は特に限定されず、通常は0.06〜55μmの範囲内であり、無機粒子の平均粒径は、0.05〜50μmであることが好ましく、高熱伝導樹脂の被覆層の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましい。
【0029】
被覆される無機粒子の熱伝導率は特に限定されず、無機粒子は低熱伝導性でも高熱伝導性でもよい。低熱伝導性の無機粒子の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ホウ酸アルミウイスカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物などが挙げられる。高熱伝導性の無機粒子の具体例としては、前述と同様のものが挙げられる。
【0030】
無機粒子を被覆する高熱伝導樹脂は、特に制限はない。高熱伝導樹脂としては、例えば、結晶性又は液晶性を有するエポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン、ポリイミド樹脂等のそのもの自体が高熱伝導性を有する樹脂;エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂に前記高熱伝導性粒子を配合して高熱伝導性を付与してなる樹脂組成物;等が用いられる。これらの中でも、熱伝導性の観点からエポキシ樹脂にアルミナのような高熱伝導性粒子を配合してなる樹脂組成物が好ましい。また、高熱伝導樹脂は硬化剤や硬化促進剤と併用してもよい。
【0031】
無機粒子を高熱伝導樹脂で被覆する方法としては、例えば、無機粒子表面に高熱伝導樹脂の蒸着重合膜を形成する方法;無機粒子表面に高熱伝導樹脂ワニスを噴霧後、粒子同士の凝着を防ぐため、攪拌混合しながら加熱乾燥する方法;高熱伝導樹脂ワニスと無機粒子を撹拌混合し、加熱乾燥し、凝着した粒子を粉砕する方法;などが挙げられる。
【0032】
樹脂組成物中の高熱伝導性粒子(A)の含有量は、好ましくは40〜90体積%であり、より好ましくは60〜80体積%である。前記高熱伝導性粒子(A)の含有量が40体積%未満では接着フィルムの熱伝導率が不十分となる可能性があり、90体積%を超えると接着フィルムの可撓性や接着性が悪化する可能性がある。接着フィルムの熱伝導性をより向上する目的で、高熱伝導性粒子(A)同士を接し易くするためには、前記高熱伝導性粒子(A)の含有量を65〜75体積%とすることがより好ましい。
【0033】
2)メソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤とを含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物
本発明におけるメソゲン基とは、液晶性を発現する可能性のある官能基を示す。具体的には、ビフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン、スチルベン等やその誘導体が挙げられる。
【0034】
また、本発明におけるエポキシ樹脂モノマーとは、少なくとも1つのエポキシ基を有するモノマーを示す。さらに、そのエポキシ樹脂モノマーは全エポキシ樹脂のうち少なくとも重量比の5%以上にメソゲン基を有していることが好ましい。具体的には、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基、スチルベン基、アゾベンゼン基などのメソゲンを少なくとも一つ分子内に有するエポキシ樹脂モノマーや、二つ以上分子内に有するツインメソゲンタイプのエポキシ樹脂モノマーが挙げられる。
【0035】
エポキシ樹脂モノマーとしては、特に、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂モノマーが好ましい。そのようなツインメソゲンタイプのエポキシ樹脂モノマーは、異方性構造単位の径の最大値および異方性構造の割合を向上させるのに最も好ましい。
E−M−S−M−E …一般式(1)
(但し、Eはエポキシ基、Mはメソゲン、Sはスペーサ部を示す)。
【0036】
ここで、本発明における異方性構造とは、ミクロな配列をしている構造体のことである。例えば、結晶相や液晶相などが相当する。このような構造体が樹脂中に存在するか否かは、偏光顕微鏡による観察によって容易に判別することができる。即ち、直行ニコル状態での観察において、偏光解消現象による干渉縞が見られることで判別可能である。
この異方性構造は、通常樹脂中に島状に存在しており、本発明における異方性構造単位とは、その一つの島のことである。本発明においては、この異方性構造単位は共有結合部を有していることが必要である。
【0037】
本発明における異方性構造単位の径の最大値および異方性構造の割合は、透過型電子顕微鏡(TEM)により直接観察することで算出することができる。
【0038】
本発明におけるエポキシ樹脂用硬化剤とは、エポキシ樹脂を硬化するために用いられる硬化剤を指す。
本発明で用いられる硬化剤は、通常用いられている公知のエポキシ樹脂硬化剤であれば特に限定されず、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三弗化硼素及びフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、変性フェノールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂などが挙げられる。特に、吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。
【0039】
フェノール樹脂の市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:バーカムTD−2090、バーカムTD−2131、プライオーフェンLF2882、プライオーフェンVH4150、プライオーフェンVH4170、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXLCシリーズ、XLシリーズなどがある。
【0040】
フェノール樹脂の重量平均分子量は、300〜2000であることが好ましく、500
〜1500であることがより好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中の反応活性基の総量が、好ましくは0.6〜1.4当量、より好ましくは0.8〜1.2当量となるよう配合する。硬化剤の配合が0.6当量未満であっても、1.4当量を超えても耐熱性が低下する傾向がある。
【0042】
(硬化促進剤)
本発明で用いられる硬化促進剤は、例えば、4級ホスホニウム塩系、4級アンモニウム塩系、イミダゾール系、DBU脂肪酸塩系、金属キレート系、金属塩系、トリフェニルフォスフィン系等を用いることができる。イミダゾール系の硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、市販品としては、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2E4MZ、キュアゾール2PZ−CN、キュアゾール2PZ−CNSがある。また、接着フィルムの可使期間が長くなる点で、潜在性硬化促進剤も好適に用いられ、その代表例としてはジシアンジミド、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物、グアナミン酸、メラミン酸、エポキシ化合物とイミダゾール化合物との付加化合物、エポキシ化合物とジアルキルアミン類との付加化合物、アミンとチオ尿素との付加化合物、アミンとイソシアネートとの付加化合物等が挙げられるが、これらに限られるものではない。室温での活性を低減できる点でアダクト型の構造をとっているものが特に好ましい。アダクト型硬化促進剤の代表的な例を以下に示すが、これらに制限されるものではない。アミン−エポキシアダクト型硬化促進剤の市販品としては、味の素株式会社製、商品名:アミキュアPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアMY−D、アミキュアMY−H等、エー・シー・アール株式会社製、商品名:ハードナーX−3615S、ハードナーX−3293S等、旭化成株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3748、ノバキュアHX−3088等、パシフィック アンカー ケミカル製、商品名:Ancamine2014AS、Ancamine2014FG等がある。また、アミン−尿素アダクト型硬化促進剤の市販品としては、富士化成株式会社製、商品名:フジキュアFXE−1000、フジキュアFXR−1030などがある。
【0043】
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15質量部である。硬化促進剤の配合量が0.1質量部未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、また20質量部を超えると可使期間が短くなる傾向がある。
【0044】
[熱硬化性樹脂]
本発明では上記のメソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物以外に流動性向上や可とう性向上等を目的にメソゲン基を有しない熱硬化性樹脂を併用してもよく、具体的な樹脂成分としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂等の硬化物が挙げられる。特に、絶縁性、耐熱性が優れているエポキシ樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分はモノマー、架橋剤、可とう化剤、希釈剤、改質剤等を含むことができる。エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を呈するものであれば特に限定されず、1分子中にエポキシ基を2個以上含有する二官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、接着フィルムの可撓性を良好に保つために、好ましくは300以上5000未満、より好ましくは300以上3000未満である。本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0045】
1分子中にエポキシ基を2個含有する二官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂等が例示される。ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品は、油化シェルエポキシ株式会社製、商品名:エピコート807、エピコート827、エピコート828、ダウケミカル日本株式会社製、商品名:D.E.R.330、D.E.R.331、D.E.R.361、東都化成株式会社製、商品名:YD8125、YDF8170などがある。
【0046】
1分子中にエポキシ基を3個以上含有する三官能以上のエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品は、日本化薬株式会社製、商品名:EPPN−201がある。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品は、住友化学工業株式会社製、商品名:ESCN−190、ESCN−195、日本化薬株式会社製、商品名:EOCN1012、EOCN1025、EOCN1027、東都化成株式会社製、商品名:YDCN701、YDCN702、YDCN700−11、YDCN704がある。
【0047】
エポキシ樹脂として、二官能エポキシ樹脂と三官能以上のエポキシ樹脂を併用する場合、それらの合計100質量部に対して、二官能エポキシ樹脂50〜100質量%と三官能以上のエポキシ樹脂0〜50質量%を用いることが好ましい。特に、高Tg化のためには二官能エポキシ樹脂50〜90質量%と三官能以上のエポキシ樹脂10〜50質量%を用いることが好ましい。
【0048】
硬化剤としては前述と同様に公知のエポキシ樹脂硬化剤であれば特に限定されず、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三弗化硼素及びフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、変性フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂などが挙げられる。
【0049】
3)高分子量成分
本発明で用いられる高分子量成分の重量平均分子量は1万以上であり、前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、前記3)高分子量成分とが硬化後に相分離する。前記重量平均分子量が1万未満であると、樹脂組成物をフィルム状としたときの強度や可撓性が低下したり、タック性が高くなったりする傾向がある。当該重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、より好ましくは30万以上である。また、重量平均分子量が大きくなるにつれ、樹脂組成物のフロー性が小さくなり、配線回路の充填性が低下してくる傾向にあるので、高分子量成分の重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましい。なお、重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0050】
また、高分子量成分のガラス転移温度(Tg)は、接着フィルムの可撓性を保つために、50℃未満であることが好ましい。前記ガラス転移温度は、−50℃以上30℃以下であることがより好ましく、−30℃以上15℃以下であることが特に好ましい。前記ガラス転移温度が−50℃未満では、Bステージ状態での接着フィルムのタック性が大きくなり取り扱い性が悪化する傾向にあり、30℃を超えると、フィルムを室温で取り扱う際に破断しやすくなる。
【0051】
高分子量成分は、架橋反応が進行しやすく、ワニス状態でのゲル化、Bステージ状態での硬化度の上昇により接着力が低下し易くなるという点で、官能基を有する高分子量成分であることが好ましい。該官能基はポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。官能基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。これらのなかでも、エポキシ基が好ましい。
【0052】
高分子量成分における官能基含有モノマーの量は、全モノマー量を規準として、0.5〜6.0質量%であることが好ましく、1.0〜4.0質量%であることがより好ましい。前記官能基含有モノマーの量が0.5質量%未満では、耐熱性が低下する傾向にあり、6.0質量%を越えると、ワニスの粘度が上昇する傾向がある。ワニスの粘度が上昇するとフィルム化が困難になるため、粘度低下を目的に適量の溶剤で希釈する必要があり、ワニスの固形分が低下し、ワニス作製量が増大して製造の効率が低下する傾向がある。
【0053】
前記官能基を有する高分子量成分の製造方法としては、例えば、官能基を有する重合性モノマーを単独で重合する方法、官能基を有する重合性モノマー及びこれと共重合可能な他の重合性モノマーとを共重合する方法などにより得ることができる。重合方法は特に制限されず、例えば、パール重合、溶液重合等の方法を使用することができる。
【0054】
官能基を有する高分子量成分の好ましい例としては、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマーと、エチル(メタ)アクリレートやブチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーとを共重合させたものであり、市販品としては、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3を使用することができる。
【0055】
前記高分子量成分は、フィルム中では熱抵抗となりうるため、前記高分子量成分の配合量は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計量100質量部に対して、5〜20質量部が好ましい。高熱伝導率の発現や高弾性率によるチップ等の保護に使用するためには、前記配合量は、5〜10質量部であることが好ましい。また、弾性率の低減や成形時のフロー性付与のためには、前記配合量は、10質量部以上であることが好ましい。
【0056】
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、3)高分子量成分とが硬化後に相分離する。熱硬化性エポキシ樹脂組成物の相が耐熱補強材の役割を果たしながらも、網状に分散した高分子量成分の相が応力緩和性を発現する。よって、柔らかくて強い材料になりうる。また、硬化する前の熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分は均一に溶解している。熱硬化性エポキシ樹脂成分は、可塑材やタッキファイヤとしても作用するため、エポキシ樹脂成分の量を変更する事で流動性、粘着性などの調整も可能となる。
【0057】
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、その効果を最も発揮し得る観点から、3)高分子量成分は、硬化前は前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と溶解しており、硬化後に島状に相分離する重量平均分子量10万以上のガラス転移温度が30℃以下の高分子量成分であり、前記1)高熱伝導性粒子が、全体の60〜80体積%であり、かつ前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、前記3)高分子量成分を5〜30質量部含有することが好ましい。
【0058】
[レーザー光を吸収する顔料、染料、化合物]
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、レーザーマーキングのためにはレーザー光を吸収する顔料、染料、化合物を含有することが好ましい。このようなレーザー光を吸収する材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、チタンカーボン、二酸化マンガン、フタロシアニン系等の顔料及び染料を用いることができる。
なお、前記顔料、染料、化合物が吸収するレーザー光の波長は300〜1100nmの範囲内の波長である。
【0059】
[その他の成分]
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、その他の成分として、硬化剤、硬化促進剤、フィラー、カップリング剤、イオン捕捉剤などを含有することができる。
【0060】
(フィラー)
本発明においては、樹脂組成物の取り扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与、耐湿性の向上などを目的として、前記高熱伝導性粒子(A)以外の各種フィラーを配合してもよく、これらは熱伝導率が30W/mK以上である必要はない。このようなフィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ホウ酸アルミウイスカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物等が挙げられる。これらのなかでも、熱伝導性向上のためには、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。耐湿性を向上させるためには、シリカ、水酸化アルミニウム、アンチモン酸化物が好ましい。これらフィラーの含有量は、高熱伝導性粒子100質量部あたり、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0〜20質量部、特に好ましくは0〜10質量部である。
【0061】
(カップリング剤)
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、異種材料間の界面結合をよくするためにカップリング剤を含有することができる。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられ、これらのなかでもシランカップリング剤が好ましい。カップリング剤の配合量は、添加による効果や耐熱性及びコストの点から、樹脂組成物の総量100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0062】
シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤の市販品としては、日本ユニカ−株式会社製、商品名:NUC A−187(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、商品名:NUC A−189(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、商品名:NUC A−1100(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)、商品名:NUC A−1160(γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)、商品名:NUC A−1120(N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)などがある。
【0063】
(イオン捕捉剤)
本発明の高熱伝導樹脂組成物は、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性をよくするために、イオン捕捉剤を含有することができる。イオン捕捉剤の配合量は、添加による効果や耐熱性、コストの点から、樹脂組成物の総量100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0064】
イオン捕捉剤としては、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤、無機イオン吸着剤などを用いることができる。トリアジンチオール化合物を成分とする銅害防止剤は、三協製薬株式会社製、商品名:ジスネットDBが市販されている。ビスフェノール系還元剤としては、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第3−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−第3−ブチルフェノール)等が挙げられ、吉富製薬株式会社製、商品名:ヨシノックスBBが市販されている。無機イオン吸着剤としては、ジルコニウム系化合物、アンチモンビスマス系化合物、マグネシウムアルミニウム系化合物等が挙げられ、東亜合成化学工業株式会社製、商品名:IXEが市販されている。
【0065】
<熱硬化性樹脂硬化物>
本発明の熱硬化性樹脂硬化物は、既述の本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物であって、結晶相又は液晶相よりなる異方性構造を有し、前記異方性構造単位の径の最大値が400nm以上であり、樹脂成分中に含まれる異方性構造の割合が25体積%以上であることを特徴としている。
【0066】
本発明の熱硬化性樹脂硬化物は、結晶相又は液晶相よりなる異方性構造単位の径の最大値が400nm以上であるが、その範囲であると、樹脂の熱伝導率が向上する。異方性構造単位の径が400nm未満であると、樹脂の熱伝導率は急激に低下する。
また、樹脂成分中に含まれる異方性構造の割合が25体積%以上であるが、その範囲であると、樹脂の熱伝導率が向上する。また、異方性構造の割合が25体積%であると、樹脂の熱伝導率は急激に低下する。当該異方構造の割合は、25体積%が好ましく、40体積%がより好ましい。
【0067】
本発明の高熱伝導樹脂硬化物は、動的粘弾性測定装置で測定した25℃での貯蔵弾性率が、20〜20000MPaであることが好ましく、特に100〜20000MPaであることが好ましい。25℃での貯蔵弾性率が20MPa未満では接着剤の取り扱い性や接着剤層の厚み精度が悪くなる傾向があり、260℃での貯蔵弾性率が3MPa未満ではリフロークラックが発生しやすい傾向がある。本発明の高熱伝導樹脂硬化物は、例えば、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物を130〜200℃で、0.5〜8時間加熱することにより得られる。貯蔵弾性率の測定は、例えば、動的粘弾性測定装置(レオロジー社製、DVE−V4)を使用し、Cステージ状態の硬化物に引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度5〜10℃/分で−50℃から300℃まで測定する、温度依存性測定モードによって測定できる。
【0068】
<接着フィルム>
本発明の接着フィルムは、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴としている。
【0069】
本発明の接着フィルムは、Bステージ状態では可とう性や流動性が大きく、また、硬化後は線膨張係数が小さく、また熱伝導性に優れている。
【0070】
本発明の接着フィルムは、高熱伝導性粒子及び熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む本発明の高熱伝導樹脂組成物のワニスをキャリアフィルム上に塗布し、加熱により溶剤を除去することにより、キャリアフィルム上にフィルムを形成させて作製することができる。
【0071】
以上のようにして得られる接着フィルムに厚み方向の圧力をかけることが好ましい。このようにすることで、フィルムの両面が平坦化され、フィルムの接着強度を向上されることができる。
【0072】
前記加熱の条件は、本発明の高熱伝導樹脂組成物を完全に硬化させることなく、溶剤を除去することができる条件であれば特に制限はなく、樹脂組成物の成分や溶剤の種類によって異なるが、一般的には、80〜140℃で5〜60分間加熱する。加熱より、樹脂組成物はBステージ程度まで硬化していることが好ましい。なお、Bステージフィルムにおいて、溶剤を一定量残存させることにより、フィルムのタック性、ラミネート性を向上させ、ひいては、硬化後の接着性が向上し、さらに被着体界面での熱抵抗が低減するため、放熱性の向上を図ることができる。溶剤の残存量としてはフィルムとの重量比で0.1〜20質量%が好ましいが、さらに好ましくは0.2〜10質量%、特に好ましくは1〜7質量%である。なお、保護フィルムが残存した状態で硬化すると、溶剤が蒸発しにくいため発泡しやすい。フィルムなどをウエハなどの被着体に積層した後、保護フィルムを剥離して硬化することが好ましい。
【0073】
前記キャリアフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルアミドフィルム、ポリエーテルアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等のプラスチックフィルムが使用できる。また、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理を行ってもよい。キャリアフィルムの市販品としては、例えば、東レ・デュポン株式会社製、商品名:カプトン(ポリイミドフィルム)、鐘淵化学工業株式会社製、商品名:アピカル(ポリイミドフィルム)、東レ・デュポン株式会社製、商品名:ルミラー(ポリエチレンテレフタレートフィルム)、帝人株式会社製、商品名:ピューレックス(ポリエチレンテレフタレートフィルム)などがある。
【0074】
ワニスを作製する際に使用する溶剤は特に制限が無く、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−エトキシエタノール、トルエン、ブチルセルソルブ、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノン等を用いることができる。これらのなかでも、塗膜性を向上するなどの目的で、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の高沸点溶剤が好ましい。これら溶剤は単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
溶剤の配合量は特に制限が無いが、ワニスを作製した際の不揮発分が40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。前記不揮発分が40質量%未満だと、ワニス作製時に揮発する溶剤の量が多く乾燥時の熱量が多量に必要になりコスト面で不利となる傾向があり、90質量%を超えると、ワニスの粘度が高すぎるため塗膜に欠陥が生じる可能性がある。
【0076】
ワニスの製造は、高熱伝導性粒子を含むフィラー成分の分散性を考慮した場合には、らいかい機、3本ロール、ビーズミル等により、またこれらを組み合わせて行なうことができる。フィラー成分と低分子量物をあらかじめ混合した後、高分子量物を配合することにより、混合に要する時間を短縮することも可能となる。またワニスとした後、真空脱気によりワニス中の気泡を除去することが好ましい。
【0077】
フィルムの厚さは特に制限されないが、25〜250μmの範囲にあることが好ましい。前記厚さが25μm未満であると応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、250μmを超えるとコスト高になりやすい。また、フィルムの厚さが回路の厚さよりも薄い場合、埋め込み性が落ちる傾向がある。
【0078】
<封止用フィルム>
本発明の封止用フィルムは、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴としている。
【0079】
本発明の封止用フィルムは、Bステージ状態では可とう性や流動性が大きく、また、硬化後は線膨張係数が小さく、また熱伝導性に優れており、半導体素子表面の保護特性に優れている。
【0080】
本発明の封止用フィルムは、高熱伝導性粒子及び熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む本発明の高熱伝導樹脂組成物のワニスを塗工乾燥して作製することができる。なお、ワニスは、シクロヘキサノンなどの溶剤を加えて撹拌混合して得ることができる。
【0081】
封止用フィルムの使用方法としては、従来の固形状または液状封止材が使用されていた用途と同様の方法が考えられる。例えば、半導体素子や部品を実装した基板上に基材層(基材フィルム)つきの封止用フィルムを熱板プレスやラミネータなどを使用して積層した後、加熱硬化した後、基材層(基材フィルム)をはく離するか、基材層(基材フィルム)をはく離した後、加熱硬化するなどの方法を取る。この際、半導体素子周辺に空隙が残らないように積層することが可能である。しかし、高周波用途のフリップチップ実装の場合などは、半導体素子や部品の下部に、あえて空隙が残るように積層することも可能である。
【0082】
以上のようにして得られる封止用フィルムに厚み方向の圧力をかけることが好ましい。このようにすることで、フィルムの両面が平坦化され、フィルムの接着強度を向上されることができる。
【0083】
封止用フィルムは、波長300〜1100nmの領域の透過率が10%以下であることが好ましく、そのためには微細な相分離構造を有し、不透明であることが好ましい。したがって封止用フィルムは、着色剤を含むことが好ましく、着色剤としては、既述のレーザー光を吸収する材料、すなわち、カーボンブラック、黒鉛、チタンカーボン、二酸化マンガン、フタロシアニン系等の顔料及び染料を用いることができる。封止用フィルムに含有する着色剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。着色剤の含有量が0.1質量%未満になると、フィルムに色が付かずレーザーマーキング部の視認性が悪くなり、逆に、着色剤の含有量が10質量%を超すと、イオン性不純物の増加、フィルム延性の低下または半導体素子との接着強度の低下等の問題が発生してしまう。
【0084】
また、レーザーマーキングに使用されるレーザーは、YAGレーザーであることが多いため、着色剤としてYAGレーザーにより揮発し易いカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0085】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物、接着フィルム、及び封止用フィルムのうちの少なくとも1つを介して半導体素子と、半導体素子、基板、放熱板、支持体、金属板、及びセラミック板よりなる群から選ばれる1種又は2種とを積層してなることを特徴としている。
【0086】
また、本発明の半導体装置は、別の態様によると、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物、接着フィルム、及び封止用フィルムのうちの少なくとも1つを半導体素子の片面あるいは両面に接着又は封止したことを特徴としている。
【0087】
本発明の半導体装置は、いずれの態様においても、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物、接着フィルム、及び封止用フィルムのいずれかを使用しているため、熱伝導性や組立加工性、信頼性に優れている。
【0088】
本発明の半導体装置は、既述の本発明の高熱伝導樹脂組成物、接着フィルム、及び封止用フィルムのうちの少なくとも1つを用いて製造されたものであれば特にその構造に制限はなく、例えば、半導体素子、半導体素子の支持部材、及び半導体素子と支持部材とを接合している本発明の接着フィルムを含む半導体装置が挙げられる。
【0089】
一般的な構造の半導体装置において、例えば、半導体素子は本発明の接着フィルムを介して半導体素子支持部材に接着され、半導体素子の接続端子はワイヤを介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明の接着フィルムの用途は、半導体素子が接着フィルムと接触していればこの構造に限定されるものではない。
【0090】
また、半導体素子同士を接着した構造を有する半導体装置において、例えば、一段目の半導体素子は本発明の接着フィルムを介して半導体素子支持部材に接着され、一段目の半導体素子の上に更に本発明の接着フィルムを介して二段目の半導体素子が接着されている。一段目の半導体素子及び二段目の半導体素子の接続端子は、ワイヤを介して外部接続端9ルムは、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0091】
また、本発明の接着フィルムは、ダイシングテープと貼り合わせて、1枚のシートとすることもできる。更に、必要に応じて保護フィルムを付けることもできる。このように予めダイシングテープと接着フィルムとを積層しておくことによって、半導体装置製造工程を簡略化することができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限するものではない。
【0093】
(実施例1)
メソゲン基を有しているエポキシ樹脂(1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセン)84質量部、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂22質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)12質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.1質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)0.4質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)0.7質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社龍森製、商品名:TS−AP7(LV)、平均粒径:5.3μm)1000質量部を加えた。
【0094】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、120℃で15分間加熱乾燥して、厚さが50μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。また、硬化した接着フィルムのSEM観察を行い、熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分とが相分離をしていることを確認した。
【0095】
(実施例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)8質量部、メソゲン基を有しているエポキシ樹脂(1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセン)75質量部、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂22質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)12質量部、及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.1質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)0.4質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)0.7質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社龍森製、商品名:TS−AP7(LV)、平均粒径:5.3μm)1000質量部を加えた。
【0096】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、120℃で15分間加熱乾燥して、厚さが50μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。また、硬化した接着フィルムのSEM観察を行い、熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分とが相分離をしていることを確認した。
【0097】
(実施例3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)28質量部、メソゲン基を有しているエポキシ樹脂(1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセン)254質量部、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂77質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)31質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)70質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.6質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)1.5質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)3.0質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社アドマッテクス製、商品名:AE2050、平均粒径:0.7μm)1000質量部を加えた。
【0098】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、110℃で20分間加熱乾燥して、厚さが10μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。また、接着フィルムのSEM観察を行い、熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分とが相分離をしていることを確認した。
【0099】
(実施例4)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)23質量部、メソゲン基を有しているエポキシ樹脂(1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセン)207質量部、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂63質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)25質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)57質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.5質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)1.2質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)2.4質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社アドマッテクス製、商品名:AE2050、平均粒径:0.7μm)1000質量部を加えた。
【0100】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、100℃で15分間加熱乾燥して、厚さが10μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。また、硬化した接着フィルムのSEM観察を行い、熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分とが相分離をしていることを確認した。
【0101】
(実施例5)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)19質量部、メソゲン基を有しているエポキシ樹脂(1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセン)168質量部、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂48質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)25質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)48質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.5質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)1.0質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)2.0質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社アドマッテクス製、商品名:AE2050、平均粒径:0.7μm)1000質量部を加えた。
【0102】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、100℃で15分間加熱乾燥して、厚さが10μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。また、硬化した接着フィルムのSEM観察を行い、熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分とが相分離をしていることを確認した。
【0103】
(実施例6)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)13質量部、メソゲン基を有しているエポキシ樹脂(1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセン)117質量部、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂43質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)31質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.3質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)0.7質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)1.3質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、昭和電工株式会社製、商品名:AS−50、平均粒径:9.0μm)1000質量部を加えた。
【0104】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、120℃で15分間加熱乾燥して、厚さが70μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。また、硬化した接着フィルムのSEM観察を行い、熱硬化性エポキシ樹脂組成物と高分子量成分とが相分離をしていることを確認した。
【0105】
(比較例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)45質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:209、東都化成株式会社製、商品名:YDCN−700−10)15質量部、フェノール樹脂(硬化剤、三井化学株式会社製、商品名:XLC−LL)50質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)12質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.1質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)0.3質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)0.7質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社龍森製、商品名:TS−AP7(LV)、比重:3.9、平均粒径:5.3μm、熱伝導率:32W/mK)1000質量部を加えた。
【0106】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、110℃で30分間加熱乾燥して、厚さが50μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して作製した。
【0107】
(比較例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)171質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:209、東都化成株式会社製、商品名:YDCN700−10)57質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)162質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)70質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.6質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)1.5質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)3.0質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社アドマッテクス製、商品名:AE2050、平均粒径:0.7μm)1000質量部を加えた。
【0108】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、100℃で15分間加熱乾燥して、厚さが10μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。
【0109】
(比較例3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)140質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:209、東都化成株式会社製、商品名:YDCN700−10)47質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)132質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)57質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.5質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)1.2質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)2.4質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社アドマッテクス製、商品名:AE2050、平均粒径:0.7μm)1000質量部を加えた。
【0110】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、100℃で15分間加熱乾燥して、厚さが10μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。
【0111】
(比較例4)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)114質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:209、東都化成株式会社製、商品名:YDCN700−10)38質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)108質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)46質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.4質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)1.0質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)2.0質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、株式会社アドマッテクス製、商品名:AE2050、平均粒径:0.7μm)1000質量部を加えた。
【0112】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、100℃で15分間加熱乾燥して、厚さが10μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。
【0113】
(比較例5)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:156、東都化成株式会社製、商品名:YDF−8170C)76質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ当量:209、東都化成株式会社製、商品名:YDCN700−10)26質量部、フェノール樹脂(硬化剤、DIC株式会社製、商品名:LF−2882)72質量部、エポキシ基含有アクリルゴム(高分子量成分、帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量:80万、Tg:12℃)31質量部、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.3質量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−189)0.7質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(カップリング剤、日本ユニカー株式会社製、商品名:A−1160)1.3質量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加え、さらにアルミナ(高熱伝導性粒子、昭和電工株式会社製、商品名:AS−50、平均粒径:9.0μm)1000質量部を加えた。
【0114】
これをビーズミルで混合し、さらにシクロヘキサノンを加えて粘度を調整し、真空脱気して、ワニスを得た。キャリアフィルムとして厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上にワニスを塗布し、120℃で15分間加熱乾燥して、厚さが70μmのフィルムをキャリアフィルム上に形成して、接着フィルムを作製した。
【0115】
[評価項目]
(1)硬化物の貯蔵弾性率
Cステージ状態の接着フィルム硬化物の170℃での貯蔵弾性率を、動的粘弾性測定装置(レオロジー社製、DVE−V4)を用いて、長さ20mm、幅4mmの硬化物に、引張りモードで、自動静荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度5℃/分の条件で、−30から200℃まで測定し、温度依存性測定モードにより35℃での貯蔵弾性率を測定した。
【0116】
(2)接着力
120℃のホットプレート上でレジストインクを塗布した基板(基材(日立化成工業株式会社製,MCL−E−679FG),レジストインク(太陽インキ製造株式会社製,PSR−4000 AUS308))上に接着フィルムを用いて半導体素子(5mm角)を接着し、140℃で2時間、170℃で5時間硬化して試料を得た。この試料について85℃/85%RH、48時間吸湿後の260℃での剪断強度を万能ボンドテスター(Dage社製、シリーズ4000)を用いて測定した。
【0117】
(3)フィルムのタック性
タック性は、JIS Z0237−1991に準じたプローブタック試験で評価した。タックテスタ(TAC−II、レスカ社製)を用い、プローブ径φ5.1mm、接触速さ2mm/秒、引剥し速さ10mm/秒の条件で引き剥がし強度をタック力とした。接触条件は、接触荷重:100gf/cm、接触時間:1秒を標準条件として、60℃の際のタック力を測定した。
【0118】
(4)熱伝導率
接着フィルムの厚さ方向についてレーザーフラッシュ法(NETZSCH製、LFA447Nanoflash)を用いて、25℃で熱伝導率を測定した。測定用サンプルは、貼り合わせによって厚みを200μm以上400μm未満に調整した接着フィルムを170℃で5時間硬化させ、その硬化物を10mm角に切断したものを用いた。
【0119】
(5)線膨張係数
熱膨張係数は、140℃で2時間、170℃で5時間硬化した試料について、熱機械分析装置を用いて、毎分5℃の昇温速度で25℃から150℃の伸びから平均熱膨張係数を求めた。
以上の評価結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表1に示されるように、メソゲンを有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた実施例1〜5の接着フィルムは、比較例1〜5の接着フィルムと比較して、熱伝導率が高いことが明らかである。ただし、実施例1のタック性は、比較例1と比較して、著しく劣っている事が確認できる。タック性の付与を目的にビスフェノールF型エポキシ樹脂を添加した実施例2では、比較例1と比較しても十分なタック性を有しており、高い熱伝導率を有することが確認された。
また、実施例3及び比較例2、実施例4及び比較例3、実施例5及び比較例4、実施例6及び比較例5の各組におけるそれぞれの実施例・比較例は、同じ高熱伝導性粒子を同じ充填率で含有した例であるが、各組において実施例は比較例に対していずれも熱伝導率が20%程度向上しているのが分かる。一般に10μm程度のフィルム膜厚では高熱伝導性粒子の高充填化し難く、それ故に熱伝導率の向上が困難であるが、実施例3〜5においては10μmのフィルム膜厚でありながら熱伝導率を向上させることができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)高熱伝導性粒子、2)メソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤とを含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物、及び3)重量平均分子量1万以上の高分子量成分を少なくとも含む高熱伝導樹脂組成物であって、
前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、前記3)高分子量成分とが硬化後に相分離することを特徴とする高熱伝導樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂モノマーが、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導樹脂組成物。
E−M−S−M−E …一般式(1)
(但し、Eはエポキシ基、Mはメソゲン、Sはスペーサ部を示す)
【請求項3】
前記3)高分子量成分が、硬化前は前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と溶解しており、硬化後に島状に相分離する重量平均分子量10万以上のガラス転移温度が30℃以下の高分子量成分であり、
前記1)高熱伝導性粒子が、全体の40〜90体積%であり、かつ前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、前記3)高分子量成分を5〜50質量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高熱伝導樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、レーザー光を吸収する顔料、染料、化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高熱伝導樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物であって、
結晶相又は液晶相よりなる異方性構造を有し、前記異方性構造単位の径の最大値が400nm以上であり、樹脂成分中に含まれる異方性構造の割合が25体積%以上であることを特徴とする高熱伝導樹脂硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする接着フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の接着フィルムに厚み方向の圧力をかけることにより得られることを特徴とする接着フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の接着フィルムに、プレス加工又はロール加工により加熱下に圧力をかけた後、冷却することを特徴とする接着フィルム。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高熱伝導樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする封止用フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の封止用フィルムに厚み方向の圧力をかけることにより得られることを特徴とする封止用フィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の封止用フィルムに、プレス加工又はロール加工により加熱下に圧力をかけた後、冷却することを特徴とする封止用フィルム。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高熱伝導樹脂組成物、請求項6〜8のいずれか1項に記載の接着フィルム、及び請求項9〜11のいずれか1項に記載の封止用フィルムのうちの少なくともいずれか1つを介して半導体素子と、半導体素子、基板、放熱板、支持体、金属板、及びセラミック板よりなる群から選ばれる1種又は2種とを積層してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高熱伝導樹脂組成物、請求項6〜8のいずれか1項に記載の接着フィルム、及び請求項9〜11のいずれか1項に記載の封止用フィルムのうちの少なくともいずれか1つを半導体素子の片面あるいは両面に接着又は封止したことを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2013−6893(P2013−6893A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138428(P2011−138428)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】