説明

アルミニウム系III族窒化物製造装置、およびアルミニウム系III族窒化物の製造方法

【課題】アルミニウム系III族窒化物結晶成長装置において、加熱機構に起因して発生するベース基板のそりを低減し、かつ、速い結晶成長速度を達成できるような高温度を両立できるような装置を提供する。
【解決手段】少なくともハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスの原料ガスをベース基板16表面に沿った流れで供給し、アルミニウム系III族窒化物層を該ベース基板表面に成長させるアルミニウム系III族窒化物製造装置において、反応部へ供給するまでの原料ガスの温度を該ガスの反応温度未満とし、かつアルミニウム系III族窒化物層が成長するベース基板表面に対向する反応部内の面に加熱面を有する第二加熱手段19を設置したことを特徴とするアルミニウム系III族窒化物製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム系III族窒化物、特に窒化アルミニウムを気相で製造する新規な装置、および該アルミニウム系III族窒化物の製造方法に関するものである。なお、アルミニウム系III族窒化物とは、アルミニウムを少なくとも含む全てのIII族元素の窒化物を意味する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウムや窒化ガリウムといったIII族窒化物は、それぞれ6.0eV程度、3.4eV程度の大きなバンドギャップを有する。これらの混晶である窒化アルミニウムガリウムは、成分比に応じてそれらのバンドギャップの中間の値をとることができる。そのため、この性質を利用して、他の半導体結晶では実現が困難な深紫外領域の発光が可能となり、殺菌用途の紫外発光ダイオード、白色光源用の紫外発光ダイオード等が製造可能になる。
III族窒化物を用いた発光ダイオードは、一般的には安価で入手が容易なサファイア基板をベース基板として、該ベース基板上に有機金属気相成長(MOCVD)法により発光層となるIII族窒化物の多層膜を形成することによって得られる。しかし、ベース基板であるサファイアと発光層であるIII族窒化物との格子定数差が影響して、III族窒化物の該多層膜に多量の転位(結晶欠陥の一種)が導入され、発光ダイオードの発光効率を著しく低下させる。このため、転位の少ない窒化アルミニウムからなる単結晶基板(単結晶窒化アルミニウム基板)の上にIII族窒化物の多層膜を形成することができれば、格子定数の影響を最小限に抑えることができるので該多層膜の転位を少なく抑えることができ、発光ダイオードの発光効率の飛躍的な向上が期待できる。
【0003】
単結晶窒化アルミニウム基板を製造する方法の一つとしてHVPE(ハイドライド気相成長)法が挙げられる(例えば特許文献1、特許文献2参照)。HVPE法は、原料のハロゲン化アルミニウムガスを高濃度で供給することができるために結晶成長速度が速い特徴や、リアクタ内において金属アルミニウムとハロゲン化水素ガスを反応させてその場でハロゲン化アルミニウムガスを発生できるために高純度の結晶が得られるという特徴がある。このため、紫外の発光ダイオード用の単結晶窒化アルミニウム基板を製造するためには適した方法である。
【0004】
HVPE法を用いて窒化アルミニウム単結晶を速い結晶成長速度で成長するためには、1200℃以上の高い温度が必要とされる(非特許文献1参照)。HVPE装置の反応器には一般的には石英ガラスが使用されるが、従来は、特許文献1に記載のように外部からの抵抗加熱(いわゆるホットウォール)方式によって反応器内部に設置したベース基板を加熱していた。しかし、ホットウォール方式では、反応器内部(反応部)の温度を石英ガラスの耐熱温度上限である1150℃以上に加熱することができない。そのため、ホットウォール方式では、速い結晶成長速度で窒化アルミニウム単結晶を成長することが不可能であった。
【0005】
このことを改善するため、特許文献2に記載されている通り、ホットウォール方式の加熱に代わりに高周波誘導加熱方式や光加熱方式を使用する方法が提案されている。これらの方式は、コールドウォール方式と呼ばれている。例えば、この方式では、反応部に配置したベース基板を保持する基板支持台(サセプタとも言う)に、高周波を印加することによってベース基板を局所的に加熱することができる。また、ベース基板の裏面に塗布した光吸収膜、もしくは基板支持台に光を照射することによってベース基板を局所的に加熱することができる。また、コールドウォール方式の一つとして、電熱線を内蔵した基板支持台を反応部内に設置し、該基板支持台の電熱線に電力を印加することにより発熱せしめ、ベース基板を局所的に加熱する方法も挙げられる(特許文献3参照)。これらの方法によれば、反応器はベース基板からの輻射や反応部内のガスを介した伝熱により加熱されるのみであって、ベース基板の温度を1200℃以上に加熱した状態であっても、反応器は石英ガラスの耐熱温度以下に抑えることができる。
【0006】
このようにコールドウォール方式による局所加熱を用いると、ベース基板の温度を高温に加熱することができ、速い成長速度で単結晶窒化アルミニウムの成長を実現できる。しかしながら、本発明者らがコールドウォール方式でIII族窒化物を成長した場合には、ホットウォール方式で成長する場合に比べて、基板端部からの異常成長が見られる場合があった。特に、この現象は、剛性の高い、アルミニウムを含むIII族窒化物単結晶(アルミニウム系III族窒化物単結晶)を成長した場合に多く見られた。そして、この問題が生じる理由としては、基板のそりが原因であると推定された。
【0007】
すなわち、コールドウォール方式の場合には、ベース基板周辺部のみを局所的に加熱するために、反応器、および反応器外周部には温度の低い領域ができることになり、ベース基板周辺部と、反応器、および反応器外周部との温度差に応じて、輻射損失によるベース基板表面の温度低下が発生する。そして、該ベース基板の表面と裏面(基板支持台と接触する面)に温度差が発生し、この温度差が原因でベース基板にそりが発生するものと考えられた。このときのそりの形状としては一般的には、基板支持台と接触している側に凸の状態となった。
【0008】
このようにベース基板にそりが生じると、基板支持台とベース基板との接触状態が悪く、ベース基板の端面が基板支持台から浮いた状態になり、その結果、基板支持台からベース基板への伝熱が不均質になり、基板外周部の温度低下が顕著になるものと考えられた。
【0009】
さらに、コールドウォール方式においては、ベース基板に到達するキャリアガス(原料ガスも含む)温度もベース基板の温度に比較して低いため、キャリアガスがベース基板表面と接触した際、ベース基板の熱を奪うことが予想される。このキャリアガスの影響によってベース基板の裏面と表面に温度差はさらに増大し、そりへの影響をより増大させるものと考えられた。
【0010】
一方、ベース基板を局所的に加熱すると共に、ベース基板の上面、側面をベース基板以上の温度、つまり、III族窒化物が成長できない温度以上に加熱し、ベース基板上に効率よくIII族窒化物結晶を成長させる方法が開示されている(特許文献4参照)。この文献においては、実際に、窒化ガリウム結晶(GaN結晶)を成長させる際、ベース基板の上面、側面を、GaN結晶が成長しない、すなわち、GaNが分解して成長できない温度(1200℃以上)として、その上面、側面の何れかから原料ガスをベース基板上に供給し、GaN結晶を成長させる方法が示されている。この方法によれば、ベース基板を高い温度に保持したままGaN結晶を成長させることができ、ベース基板の上面、側面にGaNの析出物を生じることなく、効率よくGaN結晶を成長させることができる。また、この方法によれば、ベース基板の上面、側面からも加熱できるため、ベース基板の裏表の温度差を少なくすることができ、さらにGaN結晶成長時にも、成長面とベース基板との温度差をなくすことができるため、結晶性のよいGaN結晶を成長できる。
【0011】
しかしながら、この方法をアルミニウム系III族窒化物の製造方法に適用しようとすると、以下の点で問題が生じると考えられた。アルミニウム系III族窒化物は、窒化ガリウムと比較すると、その分解する温度が高く、結晶が析出する温度と分解する温度との差が広い。そのため、アルミニウム系III族窒化物を成長させる場合には、ベース基板の上面、側面の温度を非常に高い温度、具体的には少なくとも1800℃以上に保持する必要があり、エネルギー消費が大きくなる。しかも、少しでも温度が低下する箇所があれば、その箇所にアルミニウム系III族窒化物が成長し、生産性を低下させることが考えられた。さらに、特許文献4に記載の方法においては、原料ガスが必ずIII族窒化物が分解する温度以上となる箇所を通過して反応部へ導入されることになるが、アルミニウム系III族窒化物のように結晶が析出する温度と分解する温度との差が広い場合には、原料ガスが導入される際、原料ガスの温度により冷却される部分が生じると、その部分にアルミニウム系III族窒化物が直に析出すると考えられる。そのため、特許文献4に記載の方法は、GaNのような比確的低い温度で分解するようなIII族窒化物結晶の成長には適しているが、アルミニウム系III族窒化物のように分解温度が高い結晶を成長させる方法には適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−303774号公報
【特許文献2】特開2005−252248号公報
【特許文献3】特開2006−290662号公報
【特許文献4】特開2008−201647号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ジェーナル オブ クリスタル グロウス(Journal of Crystal Growth)300,42−44(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
コールドウォール方式を用いてアルミニウム系III族窒化物を成長する場合、ベース基板にそりが発生すると、ベース基板端部は基板支持台と接触しないため、さらに温度が低下する悪循環をもたらし、最終的には該ベース基板端部における異常成長をもたらすものと考えられた。また、そりが発生することによって該ベース基板上に成長したIII族窒化物単結晶層に応力が発生することになり、極端な場合にはクラックの発生をもたらす場合があった。特に、この傾向は、剛性の高いアルミニウム系III族窒化物単結晶の成長時に顕著となった。
【0015】
また、コールドウォール方式に、さらに、ベース基板の上面、側面をアルミニウム系III族窒化物が分解する温度以上に加熱する手段とを組み合わせた場合には、アルミニウム系III族窒化物は分解温度が高いために、エネルギー消費が大きくなり、また、該上面、又は側面から供給される原料ガスにより、アルミニウム系III族窒化物をベース基板に安定して成長させることが難しいといった問題があった。
【0016】
したがって、本発明の目的は、アルミニウム系III族窒化物、特に窒化アルミニウムを気相で製造する結晶成長装置において、加熱機構に起因して発生するベース基板のそりを低減し、かつ、速い結晶成長速度を達成できるような高温度を両立できるような装置を提供することである。また、本発明の目的は、該装置を用いて、ベース基板のそりを低減し、かつ、速い結晶成長速度でアルミニウム系III族窒化物、特に窒化アルミニウムを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記の課題を検討し、そりが発生する原因をベース基板の表面の輻射損失による表面温度低下と考えた。そして、表面からの輻射損失を抑制する手段として、該ベース基板を保持する基板支持台を局所的に加熱するための第一加熱手段に加えて、該ベース基板表面に対向する反応部内の面に、高温の輻射源となる第二加熱手段を設置することにより、該ベース基板の温度を効率よく高温にすることができ、かつ、該ベース基板のそりを抑制できることを見出した。さらには、アルミニウム系III族窒化物を成長させる場合には、原料ガスをベース基板上で反応させる前までは、原料ガスが反応しない温度で供給することが有利となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、第一の本発明は、反応部を有する反応器、該反応部に少なくともハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスの原料ガスを供給するための原料ガス供給手段、該原料ガス供給手段から供給された原料ガスを該反応部へ導入する原料ガス導入路、該反応部に配置されたベース基板を保持するための基板支持台、および該ベース基板を加熱するために該基板支持台を加熱する第一加熱手段とを備え、
該原料ガス導入路から原料ガスをベース基板表面に沿った流れで反応部へ供給し、該原料ガスを反応させて得られるアルミニウム系III族窒化物層を該ベース基板表面に成長させるアルミニウム系III族窒化物製造装置において、
該原料ガス導入路における該原料ガスの温度を、該原料ガスが反応する温度未満となるように原料ガス導入路を設置し、かつ、
アルミニウム系III族窒化物層が成長するベース基板表面に対向する反応部内の面に加熱面を有する第二加熱手段を備えたことを特徴とするアルミニウム系III族窒化物製造装置である。
【0019】
また、第二の本発明は、前記アルミニウム系III族窒化物製造装置を用いてアルミニウム系III族窒化物を製造する方法であって、
原料ガスが原料ガス供給手段から反応部へ到達するまで、原料ガスの温度を原料ガスが反応する温度未満とし、
原料ガス導入路から反応部に原料ガスを供給してベース基板の表面にアルミニウム系III族窒化物層を成長させる際に、前記第一加熱手段により基板支持台を加熱してベース基板を加熱すると共に、前記第二加熱手段の加熱面を加熱することによりアルミニウム系III族窒化物層が成長する側から反応部内を加熱してアルミニウム系III族窒化物層を成長させることを特徴とするアルミニウム系III族窒化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アルミニウム系III族窒化物製造装置の反応部に設置されたベース基板の対向する反応部内の面に、該面に加熱面を有する第二加熱手段が、高温の輻射源として設置される。このことにより、該第二加熱手段の加熱面から発せられた輻射により、ベース基板表面からの輻射損失を大幅に減らすことができる。輻射によって失われたベース基板表面の熱を第二加熱手段が補うことができるので、ベース基板表面と裏面の温度差を最小限に抑え、当該温度差によって発生するベース基板のそりを抑えることができる。また、同様の理由により、該ベース基板の温度を高温、特に条件を調整すれば1200℃℃以上の高温に容易に設定することができる。
【0021】
さらに、ベース基板上に成長するアルミニウム系III族窒化物の成長面の温度も低下させることがないため、該III族窒化物成長時にもベース基板のそりを低減することができ、該III族窒化物の結晶品質を向上させることができる。
【0022】
また、従来のコールドウォール方式によるベース基板の局所加熱と比較して、より少ない電力投入で高温度領域に加熱することが可能となるため、製造原単位の低減にもつながる。特に、この効果は、電力量がかかる高温領域、例えば、1200℃以上の領域までベース基板を加熱しなければならない場合に顕著となる。
【0023】
さらに、原料ガス導入路における原料ガスの温度を反応温度未満とすることにより、安定してベース基板上にアルミニウム系III族窒化物を成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のアルミニウム系III族窒化物製造装置の概略図であって、該装置の原料ガスが流れる方向の中心線を通る垂直方向の断面図
【図2】本発明のアルミニウム系III族窒化物製造装置の概略図であって、該装置の周方向に対する断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に即して図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のIIII族窒化物製造装置を概念的に示す模式図である。
【0026】
(装置構造)
図1には、第一加熱手段として高周波誘導加熱手段を備えた水平ガスフローのアルミニウム系III族窒化物製造装置を示した。先ずは、装置の概要について説明する。
【0027】
本発明のアルミニウム系III族窒化物製造装置1は、反応器2が外周チャンバ11により形成されている。そして、反応器2の内部には、原料ガス供給手段3より供給された原料ガスを反応部4に供給するための原料ガス導入路12、未反応の原料ガスを排気ポート13へ排出するためのフローチャネル14、基板支持台15が設けられる。なお、この原料ガス導入路12は、原料ガス供給手段3から反応部4へ原料ガスが到達するまでの部分を指す。
【0028】
反応部4は、原料ガスが供給され、アルミニウム系III族窒化物が成長可能な部分を指す。そして、図1において、この反応部4は、基板支持台15と下記に詳述する第二加熱手段19の加熱面20により形成される空間である。そして、ベース基板16は、この反応部4に配置され、基板支持台15により保持される。
【0029】
この基板支持台15は、上部にベース基板16を保持する。この際、ベース基板16は基板支持台15と接触させて設置する。また、基板支持台15は、ベース基板表面に対して垂直な軸を回転軸17として回転するように反応器に設置されることが好ましい。この基板支持台15は、下部に設置される高周波誘導加熱コイル(第一加熱手段)18によって発生される高周波によって加熱され、該基板支持台15の上に配置されるベース基板16を加熱するものである。
【0030】
また、水平ガスフローのアルミニウム系III族窒化物製造装置において、原料ガス導入路12をベース基板16に対して図1に示した通りに配置(原料ガス導入路12をベース基板16のアルミニウム系III族窒化物が成長する表面に水平に配置)することにより、ベース基板表面に沿ったガス流れで原料ガスを反応部4へ供給できる。
【0031】
第二加熱手段19は、その加熱面20(被加熱体を加熱することができる面)が基板支持台15に対向し、原料ガス導入路12とフローチャネル14の上面に対して平行に設置される。図1においては、該第二加熱手段19の加熱面20自体が反応部4内の面としての機能を果している。
【0032】
原料ガスである、少なくともハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスは、キャリアガスと共に原料ガス導入路12から供給される。原料ガス供給手段3から反応部4へ供給される原料ガスの温度は、この原料ガス導入路12において、該原料ガスが反応しない温度未満に制御されなければならない。そのため、原料ガス導入路12は、反応部4へ原料ガスを供給する役割と共に、該原料ガスの温度が反応温度未満となるように設置されなければならない。かかる条件を簡便に効率よく満足するように原料ガス導入路12を設置するためには、原料ガス導入路12から原料ガスをベース基板表面に沿った流れで反応部4へ供給するような構造(ベース基板表面と水平に原料ガス導入路を設置した構造)とすることが重要となる。こうすることにより、第一加熱手段18、および第二加熱手段19により原料ガス導入路12内の原料ガスが加熱されないようにすることができ、該原料ガスの温度を容易に反応温度未満にすることができる。また、原料ガス導入路12の内面を、第一加熱手段18の加熱面(基板支持台15と接する面)と第二加熱手段19の加熱面20と同じ高さに位置するか、それら加熱面よりも外側に位置するよう原料ガス導入路12を設置することが好ましい。このように原料ガス導入路12を設置することにより、原料ガス導入路12内の原料ガスの温度を反応温度未満に制御することが容易となる。さらに、原料ガス導入路12のベース基板側の端部が反応部4の境界となるが、ベース基板表面以外にアルミニウム系III族窒化物が成長するのを効率よく防ぐことができる。
【0033】
原料ガス導入路12における該原料ガスの温度を、該原料ガスが反応しない温度未満にしなければならない理由は、以下の通りである。ハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスと反応させて得られるアルミニウム系III族窒化物は、分解温度が高く、反応温度が低い。そのため、原料ガス導入路12において、アルミニウム系III族窒化物が分解する温度以上に原料ガスの温度を高くすると、エネルギーが多く消費される。そして、原料ガスが流通する際の温度を考慮して、厳密な制御をしなければ、直ぐに反応温度(原料ガスが反応して結晶が析出し始める温度)以上、分解温度未満(アルミニウム系III族窒化物が分解する温度未満)となり、原料ガス導入路12内にアルミニウム系III族窒化物が生成することになる。
【0034】
なお、原料ガスが反応するか否かは、アルミニウム系III族窒化物を成長中に確認するのは難しい。そのため、本発明において原料ガスの反応は、キャリアガス中において原料ガスが反応して粉末を生成し、該粉末がベース基板、および成長中のアルミニウム系III族窒化物層に付着した形跡があるかないか、また、該粉末が付着して得られた結晶の品質が悪化したかどうかにより判断した。原料ガスが原料導入路中で反応しなければ、多結晶などが成長せず、単結晶のアルミニウム系III族窒化物層が形成できる。
【0035】
このようなアルミニウム系III族窒化物の生成をなくし、さらに、エネルギーの消費をより少なくし、さらには本発明のそり低減の効果を両立させるためには、原料ガス導入路12における原料ガスの温度は、200℃以上800℃以下とすることが好ましく、さらには、250℃以上650℃以下とすることが好ましい。
【0036】
原料ガス導入路12において、その温度を調整された原料ガスは、次に、該原料ガス導入路12から反応部4へ供給され、ベース基板16上にて混合、反応して該ベース基板16上にアルミニウム系III族窒化物を成長させる。反応後、未反応の原料ガス、およびキャリアガスは、排気ポート13からアルミニウム系III族窒化物製造装置外へ排気される。
【0037】
反応器2を構成する外周チャンバ11は、該外周チャンバ内部と外部を隔てるためのものであり、外部チャンバ内部に供給したIII族原料ガス、窒素源ガス、およびキャリアガスが反応器2外部へ漏洩することを防止するものである。外周チャンバ11は、石英ガラスを用いることが好適であるが、耐食性の良好なステンレスなどの金属を用いてもよい。金属材質を用いる場合には、適宜、外周チャンバ11に冷却水が流通可能な構造とし、外周チャンバ自体の加熱変形を抑制する手段を備えてもよい。また、外周チャンバ11には内部観察のためのビューポート21を設置することもできる。
【0038】
本発明においては、ベース基板16を加熱する部分以外については、従来知られているHVPE法に使用可能な装置の構造を適用することができる。
【0039】
次に、本発明において、特徴的な部分である反応部4における第一加熱手段18、第二加熱手段19について詳細に説明する。
【0040】
(第一加熱手段と基板支持台)
本発明においては、第一加熱手段18は、基板支持台15を加熱してその上に保持されたベース基板16を局所的に加熱するためのものである。図1には、第一加熱手段18として、高周波誘導加熱コイルを使用した例を示した。この場合、高周波誘導加熱コイルをから高周波を発生させることにより、基板支持台15の表面にうず電流を発生させ、そのジュール熱で基板支持台15を発熱できる。したがって、基板支持台15の材質としては、導電性を有することが必須である。特に、アルミニウム系III族窒化物製造装置においては、加熱時の基板支持台15からのガス放出少なく化学的な耐久性が求められることから、カーボンやタングステンなどを用いることが一般的である。カーボンを用いる場合には、耐食性を向上させるためにカーボン表面に窒化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素、窒化アルミニウムなどの物質を表面にコーティングして用いることが好ましい。
【0041】
また、基板支持台15の上にはベース基板16が設置され、接触伝熱により該ベース基板16を加熱する。ベース基板16は、アルミニウム系III族窒化物を製造するための種結晶となるものである。一般的には、サファイア、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化亜鉛などの単結晶基板を使用することができる。
【0042】
また、ベース基板16上にアルミニウム系III族窒化物を成長するときに該III族窒化物の結晶品質や膜厚の均一性を向上させるために、基板支持台15を、III族窒化物層が成長するベース基板表面に対して垂直な軸を回転軸17として回転するような回転機構を有する構造にすることが好ましい。
【0043】
図1においては、高周波誘導加熱方式を用いて基板支持台15を局所的に加熱し、その熱でベース基板16を加熱しているが、高周波誘導加熱方式の代わりに、基板支持台15に発熱抵抗体を内蔵させて電流を流通する方式、いわゆる抵抗加熱方式によってベース基板16を加熱してもよい。さらに、基板支持台15の裏面に光源を設置して光加熱方式によって基板支持台15を加熱することも可能である。そして、この第一加熱手段18は、ベース基板16上にアルミニウム系III族窒化物が成長できるような温度以上に基板支持台15を加熱できればよい。そのため、第一加熱手段18は、基板支持台15の温度が800℃以上、好ましくは1000℃以上1800℃以下、さらに好ましくは1200℃以上1700℃以下に加熱できる態様であればよい。
【0044】
次に、第二加熱手段19について説明する。
【0045】
(第二加熱手段)
本発明において、第二加熱手段19は、その加熱面20(被加熱体を加熱する面)が反応部4内の基板支持台15に対向するように設置される。さらに、第二加熱手段19の加熱面20は、フローチャネル14および原料ガス導入路12の内壁の面と平行に設置され、第二の加熱手段自体が反応部内の面としての機能を果たす。図1において、加熱面20は、フローチャネル14および原料ガス導入路12と同じ高さにあるが、この加熱面20は、反応部4内であって、原料ガスが接触するベース基板表面(アルミニウム系III窒化物が成長する面)と平行な位置に配置されればよく、フローチャネル14、原料ガス導入路12よりも、多少、上下にその位置がずれていてもよいが、同じ位置かそれよりも内側にずれることが好ましい。
【0046】
本発明においては、第二加熱手段19の加熱面20が該ベース基板表面に対向する反応部内の面に存在することが特徴である。従来のホットウォール方式では、反応部4は、外部からの加熱手段から石英ガラスを介して形成されていたため、反応部内を高温、例えば、石英ガラスの耐熱温度の上限である1150℃以上の温度にすることは困難であった。本発明の装置においては、アルミニウム系III窒化物が成長するベース基板表面に対向する反応部内の面に、第二加熱手段19の加熱面20が存在することにより、該加熱面20が反応部4を形成している。このような構成となっているため、加熱面20をより高い温度、例えば、より結晶品質の高いアルミニウム系III族窒化物を成長させるために、好ましくは1150℃以上の温度、さらに好ましくは1200℃以上の温度とすることができる。その結果、反応部4の温度を高くすることができるため、結晶品質のよいアルミニウム系III族窒化物を成長させることができる。
【0047】
第二加熱手段19の加熱機構は、第一加熱手段18と同様に高周波誘導加熱方式、光加熱方式、抵抗加熱方式のいずれを用いてもよい。例として、窒化ホウ素もしくは炭化タングステンでコートされたカーボン部材を基板支持台15に対向するように設置し、該カーボン部材の上面(加熱面20)に高周波誘導加熱コイル、もしくは光加熱光源を設置して該カーボン部材を発熱させることができる。また、抵抗加熱方式を用いる場合には、窒化ホウ素でコーティングしたカーボンヒーターを基板支持台15に対向するように設置し、該ヒーターに電流を供給することによって第二加熱手段19とすることができる。図1には、明記していないが、発熱抵抗体を内蔵させた抵抗加熱方式の第二加熱手段19を使用した例を示している。
加熱面20が加熱される温度は、特に制限されるものではなく、ベース基板16上にアルミニウム系III族窒化物が成長するのを阻害しない温度であればよい。中でも、加熱面20の温度が、第一加熱手段18が基板支持台15を加熱できる温度と同等、もしくは同等以上の温度となるように、第二加熱手段19を構成することが好ましい。第一加熱手段18は、基板支持台15(ベース基板16)がアルミニウム系III族窒化物を製造可能な800℃以上の温度に加熱するような構成とするが、本発明の効果をより顕著に発揮させるためには、第二加熱手段19は、加熱面20の温度を以下のような温度に設定できる態様とすることが好ましい。具体的には、第二加熱手段19は、加熱面20の温度(T2)を第一加熱手段により加熱される基板支持台15の温度(T1)よりも高い温度(T1≦T2)となるように設定できるようにすることが好ましい。この理由は、加熱面20の温度を高くすることにより、輻射のエネルギーが大きくなるためである。そのため、好ましい態様としては、T1の温度を800℃以上とすることが好ましく、さらに1000℃以上1800℃以下とすることが好ましく、特に1200℃以上1700℃以下とすることが好ましいため、第二加熱手段19は、T2の温度がこのT1の温度以上となるように構成されることが好ましい。そして、その中でも、アルミニウム系III族窒化物の成長を良好に行うためには、第二加熱手段19は、T1の温度が上記温度範囲を満足し、T2の温度がT1の温度よりも0℃以上500℃以下高い温度に設定できる構成とすることが好ましく、さらには、10℃以上400℃以下高い温度に設定できる構成とすることが好ましく、特に、10℃以上300℃以下高い温度に設定できる構成とすることが好ましい。第二加熱手段19をこのような温度に設定できる構成とすることにより、特に、結晶性のよい窒化アルミニウム単結晶層を成長させることができる。第二加熱手段19が設定可能な加熱面20の上限温度は、特に制限されるものではないが、結晶品質のよいアルミニウム系III族窒化物を成長させるためには、2300℃であり、好ましくは2000℃である。
【0048】
なお、基板支持台15、および加熱面20の前記温度(T1、およびT2の温度)範囲は、お互いの輻射熱により加熱された状態の温度を指す。T1、およびT2の温度は、放射温度計を用いて基板支持台15、および第二加熱手段19の加熱面20の表面を測定することにより確認できる。
【0049】
本発明の装置においては、ベース基板16のそりを少なくし、結晶性のよいアルミニウム系III窒化物を少ないエネルギーで製造するためには、ベース基板16の表面と反応部4内に設置した第二加熱手段19の加熱面20の距離は5〜100mm、好ましくは10〜50mmの範囲とすることが望ましい。ベース基板16の表面と加熱面20との距離を上記範囲とすることにより、加熱面20から発せられる輻射の効果が高くなり、さらには、ベース基板16上にキャリアガス共に供給した原料ガスを容易に排気することができる。
【0050】
本発明の装置によれば、第一加熱手段18により加熱されたベース基板16を、さらに、対向する面に存在する第二加熱手段19により局所的に加熱することによって効果を発揮する。その理由は、第二加熱手段19の加熱面20から発せられた輻射により、ベース基板表面からの輻射損失を大幅に抑制できるためであると考えられる。つまり、本発明の装置を使用することにより、ベース基板16の表面と裏面(基板支持台15と接する側の面)の温度差を最小限に抑え、当該温度差によって発生するベース基板16のそりを抑えることができる。同様にベース基板16の表面からの輻射損失を大幅に減らすことができるため、該ベース基板16の温度を容易に高温にすることができ、エネルギー効率を高めながら、例えば、容易に1200℃以上の温度にできる。
【0051】
本発明の装置においては、図1には示していないが、第二加熱手段19の加熱面20上に第二のベース基板を固定する機構を形成することもできる。このような態様により、第二のベース基板上に、原料ガスをキャリアガスと共に供給することができ、該第二のベース基板上にアルミニウム系III族窒化物を成長させることも可能である。このように互いのベース基板に輻射を及ぼし合っても、本発明の効果を得ることが可能である。このような態様とすることにより、1度の製造において2枚のベース基板上にアルミニウム系III族窒化物が得ることができ、生産性を向上することができる。
【0052】
また、第二加熱手段19の加熱面20には、加熱面20上、およびその付近に、アルミニウム系III族窒化物の堆積を防ぎたい場合には、該加熱面20上にバリアガスを供給することもできる。バリアガスとしては、拡散係数が比較的小さい窒素ガスやアルゴンガス等のガスを用いることが好ましい。
次に、本発明の装置におけるその他の構成、好ましい態様について説明する。
【0053】
(その他の構成、好ましい態様)
本発明の装置においては、ベース基板16上に原料ガスの供給を行い、その原料ガスを排気するために、原料ガス導入路12とフローチャネル14が設置されることが好ましい。原料供給手段3から供給されるIII族原料ガスと窒素源ガスの原料ガスがキャリアガスと共に原料ガス導入路12からベース基板16上に供給され、ベース基板近傍で混合されてベース基板16上にアルミニウム系III族窒化物が成長する。反応後は、フローチャネルに導かれて排気ポート13にて反応器1外部へ排気される。原料ガス導入路12とフローチャネル14の材質としては、純度の観点から石英ガラスを用いることが好ましい。しかし、第一加熱手段18、および第二加熱手段19により加熱される部分の近傍は、局所加熱によって1200℃以上の高温になる場合があるため、該近傍に窒化ホウ素や炭化タングステン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高温耐久性を有する部材を使用することが好ましい。
【0054】
本発明の装置においては、第二加熱手段15を設置することによりベース基板16のそりを平坦化することできる。このベース基板16のそりを測定する手段として、その場そり観察装置22をアルミニウム系III族窒化物製造装置1に設置することが好ましい。その場そり観察装置22は、2本以上の平行なレーザーをベース基板16に照射して、反射されたレーザーを誘導結合デバイス(CCD)等で受光してレーザースポットとして画像解析するものである。そりの度合い(曲率)が既知の標準基板を用いてレーザースポットの間隔を校正しておき、曲率が未知のベース基板のそりの度合いは、その標準基板を用いて得られるレーザースポット間隔の変位量を比較することによって確認できる。
【0055】
本発明の実施例においては、波長650nmの半導体レーザーを光源としたその場そり観察装置22を用いた。具体的な測定方法は以下の通りである。先ず、その場そり観察装置22の内部に設けられた半導体レーザー素子から射出されたレーザー光を、多重反射膜(エタロン)を通過させることで互いに平行な2本のレーザー光を作り出した。2本の平行レーザー光は、ビューポート21を介して外周チャンバ11の内部にレーザー光を導入した。さらに該レーザー光は、第二加熱手段19の中心部にあけられたレーザー通過孔を通過してベース基板16に照射された。ベース基板表面でレーザー光は反射して、同様の光路を通過してその場そり観察装置22に戻り、ハーフミラーを介してCCDカメラにてレーザースポットとして観測した。そり測定の事前に曲率が+0.1m−1(曲率半径10m)の標準基板でレーザースポットの間隔を校正し、これを基準としてベース基板16のそりを計算することが可能である。プラスの曲率とは、基板表面が下に凸の形状になる状態であり、マイナスの曲率とは基板表面が凹の形状になることを指す。レーザー光の波長や、複数の平行なレーザー光を作り出す方法は、任意であり、レーザースポットが観測できるものあれば、特に制限されるものではない。
【0056】
以上、アルミニウム系III族窒化物製造装置における実施形態を水平方向にガスが流れる装置構造を用いて説明したが、当然のことながら、垂直方向にガスが流れる場合であっても、本発明の装置構造は、問題なく適用可能である。このときのベース基板は、垂直に設置される。
【0057】
次に、図1に示した装置を使用して、アルミニウム系III族窒化物を製造する場合の方法について説明する。
【0058】
(アルミニウム系族窒化物の製造方法)
図1に示すアルミニウム系III族窒化物製造装置を用いて、アルミニウム系III族窒化物を製造する実施形態について説明する。
【0059】
本発明において、アルミニウム系III族窒化物とは、前記の通り、アルミニウムを少なくとも含む全てのIII族元素の窒化物である。具体的には、窒化アルミニウム単体(AlN)の他、窒化アルミニウムとアルミニウム以外のIII族元素であるホウ素(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)の窒化物との混晶、例えば、窒化アルミニウムボロン(AlBN)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化アルミニウムガリウムインジウム(InAlGaN)などのAlを含むIII族金属を含む窒化物である。
【0060】
また、本発明のアルミニウム系III族窒化物製造装置は、HVPE法に適用される装置である。そのため、使用する原料ガスは、少なくともハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスである。この原料ガスをベース基板上で反応を起こさせて目的のIII族窒化物を成長させる。
【0061】
原料ガスにおいて、ハロゲン化アルミニウムガスとしては、三塩化アルミニウム(AlCl)、一塩化アルミニウム(AlCl)、三臭化アルミニウム(AlBr)、三ヨウ化アルミニウム(AlI)のガス等が挙げられる。ハロゲン化アルミニウム以外のIII族原料ガスとしては、ガリウムやインジウムのハロゲン化物や、ガリウムやインジウムの有機金属を用いることもできる。例えば、一塩化ガリウム(GaCl)、三塩化ガリウム(GaCl)、一塩化インジウム(InCl)、三塩化インジウム(InCl)、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム等のガスが挙げられる。例えば、アルミニウム系III窒化物としてAlGaN等の複合窒化物の混晶を得る場合には、これらのIII族原料ガスを目的の組成に応じて適宜混合して使用すればよい。
【0062】
一方、窒素源ガスとしては、アンモニア、ヒドラジンなどを使用することができ、特に操作性の点からアンモニアを使用することが好ましい。
【0063】
本発明の方法は、剛性の高い窒化アルミニウム単結晶を成長させる場合に、特に適している。そのため、III族原料ガスとしては、ハロゲン化アルミニウムガスを使用することが好ましい。
【0064】
また、本発明の方法において、アルミニウム系III族窒化物層を成長させる際、少なくともハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスとの比は、所望のアルミニウム系III族窒化物層の結晶、組成に応じて適宜決定すればよい。通常、該III族原料ガスに含まれるIII族元素のモル数に対する窒素源ガスに含まれる窒素原子のモル数の比(V/III比)が、1〜1000の範囲で調整することが好ましい。
【0065】
上記原料ガスは、ベース基板近傍に滞留する時間を制御し、乱流を防止する目的で、通常、キャリアガスと呼ばれるガスに混合してベース基板上に供給される。キャリアガスとしては、窒素、水素、ヘリウムやアルゴン等の希ガス、およびこれらの混合ガスが一般的には用いられ、原料ガスの濃度が体積比として十万分の一から十分の一の範囲が一般的に採用される。
【0066】
本発明においてはアルミニウム系III族窒化物を成長させるために、少なくともハロゲン化アルミニウムを含むIII族原料ガスを使用する。既に述べたとおり、ハロゲン化アルミニウムガスはアンモニアガスのような窒素源ガスと速やかに反応することが知られており、その速度はハロゲン化ガリウムガスよりも速い。このため、III族原料ガスおよび、窒素源ガスをベース基板上に流通させる際の線速度も重要となる。線速度は簡易的には原料ガスとキャリアガスを全て含めた供給ガス量をフローチャネルの断面積で除した値を目安とすると良く、線速度として3〜200cm/秒の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100cm/秒の範囲であることである。なお、ここで言う線速度はガス温度とリアクタ内部の圧力による膨張の効果は考慮していないが、目安として好適に用いることができる。線速度が上記範囲を満足することにより、ベース基板から熱が奪われることを防ぐことができ、その結果、ベース基板の実効的な温度の低下や基板内部の温度差によるそりの発生を抑制することができる。また、III族原料ガスと窒素原料ガスの混合が充分となり、原料の使用効率を向上できる。さらに、線速度が上記範囲を満足することにより、原料導入路12を設置した効果と共に、原料導入路12内において、キャリアガス中で反応が進行してアルミニウム系III族窒化物の粒子が発生し、該粒子がベース基板に付着して結晶品質を低下させるのを防ぐこともできる。
【0067】
本発明において、ベース基板表面にアルミニウム系III族窒化物層を形成するには、先ず、ベース基板表面に付着した有機物を除去する目的でサーマルクリーンングを行うことが好ましい。サーマルクリーニングは、一般的には1100℃以上の高温状態において水素ガスが存在する雰囲気下で10分程度、ベース基板を加熱することにより行われる。サーマルクリーニングは、第一加熱手段のみを用いても、第二の加熱手段のみを用いてもよく、当然のことながら、両者を併用することもできる。サーマルクリーニングを行った後、アルミニウム系III族窒化物が成長する温度にベース基板を加熱する。そして、サーマルクリーニングしたベース基板表面に原料ガスを供給してアルミニウム系III族窒化物層を成長させる。
【0068】
アルミニウム系III族窒化物が成長する温度にベース基板を加熱するには、第一加熱手段と第二加熱手段を、同時に目的の温度に加熱しても、どちらか一方が先行して目的の温度に加熱してもよい。本発明においては、ベース基板の温度(基板支持台の温度)が800℃以上の高温となることを必要とするアルミニウム系III族窒化物の製造に適している。短時間で良好なアルミニウム系III族窒化物の単結晶、特に、窒化アルミニウム単結晶を成長させる場合には、第二加熱手段の輻射熱による加熱を含めた状態でベース基板(基板支持台)の温度(T1)を、好ましくは1000℃以上1800℃以下、さらに好ましくは1200℃以上1700℃以下にすることが望ましい。
【0069】
アルミニウム系III族窒化物を製造する際、上記の第二加熱手段の説明でも記載した通り、ベース基板(基板支持台)の温度は前記温度範囲を満足し、加熱面の温度(T2)は、ベース基板(基板支持台)の温度(T1)以上の温度とすることが好ましい。中でも、アルミニウム系III族窒化物の成長を良好に行うためには、T2の温度は、T1の温度が上記温度範囲を満足し、T1の温度よりも0℃以上500℃以下高い温度とすることがより好ましく、さらには、10℃以上400℃以下高い温度とすることが好ましく、特に、10℃以上300℃以下高い温度とすることが好ましい。このような温度に設定することにより、特に、結晶性のよい窒化アルミニウム単結晶層を成長させることができる。加熱面の上限温度は、特に制限されるものではないが、結晶品質のよいアルミニウム系III族窒化物を成長させるためには、2300℃であり、好ましくは2000℃である。
【0070】
なお、ベース基板(基板支持台)、および加熱面20の前記温度(T1、およびT2の温度)範囲は、お互いの輻射熱により加熱された状態の温度を指す。
【0071】
また、本発明の装置を使用することにより、反応部を、結晶品質のよいアルミニウムIII族窒化物を製造するために必要な高温とすることができる。つまり、本発明の装置を使用することにより、第二加熱手段の加熱面は、好ましくは1150℃以上の温度、さらに好ましくは1200℃以上の温度に容易にすることができる。
【0072】
ベース基板がアルミニウム系III族窒化物の成長温度に達した後、少なくともハロゲン化アルミニウムを含むIII族原料ガス、および窒素源ガスをキャリアガスと共に反応部(ベース基板表面)に供給し、ベース基板上にて混合、反応させることにより、アルミニウム系III族窒化物をベース基板表面に成長させることができる。この際、原料ガス供給手段から供給された原料ガスは、反応部へ到達するまでは該原料ガスが反応する温度(原料ガスが反応し始める温度:反応温度)未満としなければならない。原料ガスを反応温度未満とすることにより、消費エネルギーを低減でき、効率よくアルミニウム系III族窒化物をベース基板上に成長させることができる。原料ガス供給手段から反応部へ到達するまでの原料ガスの温度は、基板以外への析出を低減することを考慮すると200℃以上800℃以下とすることが好ましく、さらには250℃以上650℃以下とすることが好ましい。
【0073】
原料ガスが反応部に到達するまでの原料ガスの温度を上記のように制御し、そして反応部へ該原料ガスを供給することにより、アルミニウム系III族窒化物をベース基板表面に成長させることができる。アルミニウム系III族窒化物の成長は、所望の膜厚になるように適宜時間を調整してやればよい。特に、本発明の方法は、アルミニウム系III族窒化物層の厚みが厚くなる場合、具体的には、50nmを越える厚み、さらに好ましくは1μm以上1000μm以下の厚みの層を形成する場合に優れた効果を発揮する。
【0074】
以上のように原料ガスを供給することにより、ベース基板上にアルミニウム系III族窒化物を製造することができる。製造後の冷却条件、取扱等は、公知の方法を何ら制限なく採用できる。具体的には、所望の膜厚のアルミニウム系III族窒化物が成長した時点で、少なくともIII族原料ガスの供給を停止してアルミニウム系III族窒化物の成長を停止させ、ベース基板を室温まで冷却する。キャリアガスに水素ガスを使用している場合には、高温状態において水素ガスとIII族窒化物の分解反応が起こることが予想されるため、少なくとも800℃程度までベース基板の温度が下がるまで窒素源ガスを供給し続けることが好ましい。このように温度を下げる場合においても、第二加熱手段の温度を制御することにより、急激な収縮を抑制することができ、品質のよいアルミニウム系III族窒化物を製造できる。
【0075】
以上は、アルミニウム系III族窒化物の成長を行うための最も単純な方法について説明したが、結晶の品質を高めるために、成長温度や原料供給量を複数段階に分けて変調することや、成長途中に原料ガスを供給と停止を繰り返してもよい。また、アルミニウム系III族窒化物に意図的に不純物をドープしてもよい。以上のような派生した成長手順に関しては本発明の本質に関わらない部分であり、上記に限らず適用することが可能である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例と比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例、比較例に限定されるものではない。
【0077】
比較参考例1
本比較例においては図1に示すIII族窒化物製造装置を用いて、サファイア基板(ベース基板)を第一加熱手段のみよって加熱し、ベース基板の曲率を測定した例である。
【0078】
カーボンに窒化ホウ素がコーティングされた基板支持台15上にサファイア基板(ベース基板16)を設置した。ここで、サファイア基板は、直径が1インチで厚さが430μmの(0001)面を鏡面研磨したものを使用した。ベース基板16と第二加熱手段19の加熱面20との距離は38mmとした。
【0079】
サファイア基板上において窒素ガスが毎分6リットルとなるように原料ガス導入路12を介してキャリアガスを供給し、アルミニウム系III族窒化物製造装置1の反応部4の圧力を100Torrとした。基板支持台15を回転させることによってサファイア基板を60rpmの速度で等速に回転させた。実施の間は、上記のガス流量と基板回転の条件を一定に保った。
【0080】
高周波誘導加熱コイル15(第一加熱手段)により高周波を発生させ、基板支持台15の加熱を開始した。30分かけて13.8kWの出力の高周波を印加して基板支持台15の表面の温度を1252℃に設定した。なお、ベース基板16と基板支持台15との温度は極端に変わることが無いため、基板支持台15の温度をベース基板16の温度と見なした。以下の例においても同様である。
【0081】
温度が安定するまで10分間待機した後に、その場そり観察装置22を用いてサファイア基板の曲率を測定したところ、+0.09m−1(曲率半径として11m)であった。加熱条件を表1に示した。
【0082】
参考例1
本参考例は図1に示すIII族窒化物製造装置を用いて、サファイア基板(ベース基板16)を第一加熱手段18と第二加熱手段19を併用し、ベース基板の曲率を改善した例である。ベース基板16と加熱面20との距離は、比較参考例1と同じである。
【0083】
比較例1に示した第一加熱手段18のみによる加熱状態に加えて、第二加熱手段19による加熱を追加した。第二加熱手段19としては、窒化ホウ素基材上にカーボン発熱パターンを形成し、さらにカーボン発熱パターンを保護するために、窒化ホウ素でコーティングした複合ヒーターを使用した。複合ヒーターのカーボン発熱パターンの端面電極を介して電力を供給することにより、複合ヒーターを抵抗加熱方式により発熱させた。ここでは該複合ヒーターに30分かけて1.0kWの電力を投入して第二加熱手段19の加熱面20を1380℃とした。一方、第一加熱手段18は、比較例1と同様の条件で基板支持台15を加熱した。このときの基板支持台15の温度は1353℃であった。
【0084】
温度が安定するまで10分間待機した後に、比較例1と同様にサファイア基板の曲率を測定したところ、+0.07m−1(曲率半径として14m)であり、基板支持台15の対向する面に設置した第二加熱手段19を併用して局所的にベース基板16を加熱することにより、基板のそりを改善することができた。加熱条件を表1にまとめた。
参考例2
参考例1に示した第一加熱手段18と第二加熱手段19を併用した加熱状態から、第二加熱手段19である複合ヒーターの出力は1.0kWのまま、第一加熱手段18である高周波加熱の出力を下げて、基板支持台15の温度が比較参考例1と同様になるように調整した。20分かけて高周波の出力を10.8kWに減じて基板支持台15の表面温度を1255℃とした。
【0085】
温度が安定するまで10分間待機した後に、放射温度計を用いて測定した第二加熱手段19の加熱面20は1350℃であった。
【0086】
本実施例では第一加熱手段18と第二加熱手段19を合せて11.8kWの電力を使用した。一方、比較例1に示す第一加熱手段18のみを用いる場合には、13.8kW投入する必要があったのでトータルの消費電力を2kW低減することができた。
【0087】
また、その場そり観察装置22を用いてサファイア基板の曲率を測定したところ、+0.06m−1(曲率半径として17m)であり、ベース基板16に対する加熱の寄与を第二加熱手段19の割合を高めるように調整することでベース基板のそりを平坦にすることができた。表1に加熱条件をまとめた。
【0088】
実施例1
図1に示すアルミニウム系III族窒化物製造装置を用いて、サファイア基板(ベース基板16)を第一加熱手段18と第二加熱手段19を併用して加熱し、さらにアルミニウム系III族窒化物として窒化アルミニウム単結晶を成長した実施例を示す。ベース基板16と加熱面20との距離は、比較参考例1と同じである。
【0089】
サファイア基板は比較参考例1に示したものと同様のものを使用した。サファイア基板上にて水素ガスと窒素ガスの混合比が6:4になるように毎分10リットルのキャリアガスを、原料ガス導入路を介して供給し、反応部4の圧力を150Torrとした。また、フローチャネルに導入したときのガス温度は250℃とした。フローチャネルの断面積は29cmであったので、本実施例における線速度は5.8cm/秒であった。基板支持台15を回転させることによってサファイア基板を60rpmの速度で等速に回転させた。第一加熱手段18を用いて基板支持台15の温度を1100℃として、この状態で10分間保持してサーマルクリーニングを行った。次いで、第一加熱手段18を用いて基板支持台15の温度を1050℃とし、この状態でサファイア基板上に三塩化アルミニウムガス5sccm(sccm:standard centimeter cubic per minute の略)とアンモニアガス(20sccm)を供給し、膜厚50nmの窒化アルミニウム中間層を積層した。なお、三塩化アルミニウムガスとアンモニアガスが、原料供給手段3から反応部4へ到達するまでの温度は、600℃とした。中間層を積層した後、三塩化アルミニウムガスのみの供給を停止した。この中間層は後の高温化においてサファイア基板表面の分解を防止するためのものである。中間層を成長した時点でサファイア基板のそりは影響を及ぼさなかった。
【0090】
アンモニアガスを供給し続けたまま、第一加熱手段18と第二加熱手段19を併用してサファイア基板を成長温度に高めた。第一加熱手段18に15.5kW投入し、第二加熱手段19には2.0kWの電力を投入した。このときの基板支持台15の温度は1505℃であり、第二加熱手段19の加熱面20を1645℃であった。温度が安定するまで5分間待機した後にサファイア基板の曲率を測定したところ、+0.05m−1(曲率半径として20m)であった。
【0091】
ここで、三塩化アルミニウムガスの供給を再開し、ベース基板上に窒化アルミニウムの成長を再開した。三塩化アルミニウムガスは5sccm、アンモニアガスは50sccmとし、10分間の窒化アルミニウムの成長を行った。なお、三塩化アルミニウムガスとアンモニアガスが原料供給手段3から反応部4へ到達するまでの温度は、600℃とした。その後、三塩化アルミニウムガスの供給を停止して冷却を開始した。アンモニアガスを800℃に下がるまで供給した。
【0092】
冷却後、得られたベース基板上の窒化アルミニウムの分析を行った。光学顕微鏡の1000倍観察により得られた窒化アルミニウムの表面を観察したところ、多結晶の発生やキャリアガス中に発生する可能性のある粉末の付着は見られず、キャリアガスと原料ガスの温度や線速度の条件は適正であったといえる。X線回折によりθ-2θモード測定を2θが10〜100°の範囲で測定したところ、サファイア基板に由来する回折ピーク以外には、窒化アルミニウムの(0002)面、(0004)面のみが観察されたことから、サファイア基板上に単結晶の窒化アルミニウムが得られたことを確認した。さらに、窒化アルミニウムの(10−12)面に関するωモード測定を行った。ωモード測定は回折ピークの半値幅をみることで結晶品質、特に窒化アルミニウムの結晶内部に存在する転位の多さの目安となるものであり、半値幅が小さいほうが、結晶品質が良いとされる。ωモード測定で得られた回折ピークの半値幅は340arcsecであった。得られたベース基板を切断して単結晶窒化アルミニウム部分の膜厚を走査型電子顕微鏡によって断面観察したところ、膜厚は3.2μmであった。表1に加熱条件をまとめた。
【0093】
比較例1
図1に示すIII族窒化物製造装置を用いて、サファイア基板(ベース基板16)を第一加熱手段18のみで加熱し、さらにアルミニウム系III族窒化物として窒化アルミニウム単結晶を成長した比較例を示す。
【0094】
使用したサファイア基板、キャリアガスの流量、原料ガスの供給量、原料ガスが反応部まで到達する際の温度は、実施例1と同様とした。実施例1と同様の手順で中間層を成長した後、第一加熱手段18のみに17.8kWの電力を投入して基板支持台15を成長温度である1430℃に高めた。温度が安定するまで5分間待機した後にサファイア基板の曲率を測定したところ、+0.15m−1(曲率半径として6.7m)であった。実施例1よりもトータルで多量の電力を投入しているにもかかわらず、基板支持台15の温度は実施例1よりも低かった。
【0095】
ここで、三塩化アルミニウムガスの供給を再開し、ベース基板上に窒化アルミニウムの成長を再開した。三塩化アルミニウムガスは5sccm、アンモニアガスは50sccmとし、10分間の窒化アルミニウムの成長を行った。なお、原料ガスが反応部へ到達するまでの温度は、実施例1と同じ温度とした。その後、三塩化アルミニウムガスの供給を停止して冷却を開始した。アンモニアガスを800℃に下がるまで供給した。
【0096】
冷却後、得られたベース基板上の窒化アルミニウムの分析を行った。実施例1と同様にX線回折のθ-2θモード測定を測定したところ、サファイア基板に由来する回折ピーク以外には、窒化アルミニウムの(0002)面、(0004)面のみが観察されたことから、サファイア基板上に単結晶の窒化アルミニウムが得られたことを確認した。さらに、窒化アルミニウムの(10−12)面に関するωモード測定を行ったところ、回折ピークの半値幅は720arcsecであった。実施例1と同様に単結晶窒化アルミニウムの膜厚を測定したところ3.4μmであった。単結晶窒化アルミニウムの膜厚が実施例1と同程度であったことから、実施例1では結晶成長の温度が高かったことが、半値幅が小さくなった主要因であると考えられる。表1に加熱条件をまとめた。
【0097】
【表1】

【符号の説明】
【0098】
1 アルミニウム系III族窒化物製造装置
2 反応器
3 原料ガス供給手段
4 反応部
11 外周チャンバ
12 原料ガス導入路
13 排気ポート
14 フローチャネル
15 基板支持台
16 ベース基板
17 回転軸
18 高周波誘導加熱コイル(第一加熱手段)
19 第二の加熱手段
20 加熱面
21 ビューポート
22 その場そり観察装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応部を有する反応器、該反応部に少なくともハロゲン化アルミニウムガスを含むIII族原料ガスと窒素源ガスの原料ガスを供給するための原料ガス供給手段、該原料ガス供給手段から供給された原料ガスを該反応部へ導入する原料ガス導入路、該反応部に配置されたベース基板を保持するための基板支持台、および該ベース基板を加熱するために該基板支持台を加熱する第一加熱手段とを備え、
該原料ガス導入路から原料ガスをベース基板表面に沿った流れで反応部へ供給し、該原料ガスを反応させて得られるアルミニウム系III族窒化物層を該ベース基板表面に成長させるアルミニウム系III族窒化物製造装置において、
該原料ガス導入路における原料ガスの温度を原料ガスが反応する温度未満となるように原料ガス導入路を設置し、かつ、
アルミニウム系III族窒化物層が成長するベース基板表面に対向する反応部内の面に加熱面を有する第二加熱手段を備えたことを特徴とするアルミニウム系III族窒化物製造装置。
【請求項2】
前記第二加熱手段が、前記加熱面の温度を第一加熱手段により加熱される基板支持台の温度以上となるように設定する手段であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム系III族窒化物製造装置。
【請求項3】
アルミニウム系III族窒化物層が成長するベース基板表面と反応部内に設置した第二加熱手段の加熱面との距離が5〜100mmとなるように該第二加熱手段を設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム系III族窒化物製造装置。
【請求項4】
前記アルミニウム系III族窒化物製造装置が、窒化アルミニウム単結晶層を成長させる装置であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアルミニウム系III族窒化物製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のアルミニウム系III族窒化物製造装置を用いてアルミニウム系III族窒化物を製造する方法であって、
原料ガスが原料ガス供給手段から反応部へ到達するまで、原料ガスの温度を原料ガスが反応する温度未満とし、
原料ガス導入路から反応部に原料ガスを供給してベース基板の表面にアルミニウム系III族窒化物層を成長させる際に、前記第一加熱手段により基板支持台を加熱してベース基板を加熱すると共に、前記第二加熱手段の加熱面を加熱することによりアルミニウム系III族窒化物層が成長する側から反応部内を加熱してアルミニウム系III族窒化物層を成長させることを特徴とするアルミニウム系III族窒化物の製造方法。
【請求項6】
第二加熱手段の加熱面の温度を、第一加熱手段により加熱される基板支持台の温度以上にして、ベース基板表面に窒化アルミニウム単結晶層を成長させることを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム系III族窒化物の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム系III族窒化物層が、窒化アルミニウム単結晶層であることを特徴とする請求項5又は6に記載のアルミニウム系III族窒化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246749(P2011−246749A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119049(P2010−119049)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】