説明

ハイブリッド車両の制御装置および制御方法

【課題】ハイブリッド車両において、エンジンをアイドル状態に制御する場合と負荷運転状態に制御する場合とで異なる手法でスロットル開度をフィードバック制御する場合においても、エンジン出力を正確に制御する。
【解決手段】ECUは、エンジンをアイドル状態に制御する場合、ISC制御によってスロットル開度をフィードバック制御する。ECUは、エンジンを負荷運転状態に制御する場合、ISC制御とは異なるPe−F/B制御によってスロットル開度をフィードバック制御する。Pe−F/B制御中は、ECUの内部に記憶されたISC制御時のフィードバック量eqiおよびPe−F/B制御時のフィードバック量efbを用いてスロットル開度がフィードバック制御される。ECUは、eqiが更新された場合、efbからeqiの変化分に相当する量を相殺するようにefbを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御に関し、特に、ハイブリッド車両に搭載される内燃機関の出力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、エンジンとモータジェネレータといった二種類の原動機を搭載し、それら原動機を走行状態に応じて切り換えるようにしている。したがって、ハイブリッド車両では、エンジンが常に運転されているわけではない。そのため、エンジンを運転制御するための制御値を学習する機会が少なくなる。
【0003】
このような実情に鑑みて、特開平11−107834号公報に開示された制御装置は、ハイブリッド車両において、スロットルバルブの全閉開度を調整する際には、エンジン回転速度が目標アイドル回転速度へ近づくようスロットル開度をフィードバック制御するISC制御を実行し、このISC制御時のフィードバック補正量を学習値として記憶し、以後のスロットルバルブの制御に反映させる。そして、その学習期間中は、エンジンが停止されることを禁止する。そのため、学習値は適切なものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−107834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したISC制御は、あくまで自立運転時(エンジンをアイドル状態とする時)のフィードバック制御である。しかしながら、エンジンをアイドル状態よりも出力が大きい負荷運転時においても、所定条件下では、エンジン出力を微小な値で正確に制御するために、ISC制御とは異なる手法でスロットル開度をフィードバック制御する場合がある。この場合、スロットル開度は、負荷運転時と自立運転時とでは異なる手法でフィードバック制御されることになる。そのため、自立運転と負荷運転との間の切換の際にスロットル開度が互いのフィードバック量の影響を受けた値となって一時的に実際のエンジン出力が目標値からずれてしまうことが懸念される。
【0006】
しかしながら、特開平11−107834号公報には、自立運転時と負荷運転時とで異なる手法でスロットル開度をフィードバック制御することは想定しておらず、したがって、自立運転と負荷運転との間の切換の際に生じる問題そのものおよびその対策についても何ら言及されていない。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ハイブリッド車両において、自立運転時と負荷運転時とで異なる手法でスロットル開度をフィードバック制御する場合においても内燃機関の出力を正確に制御できる制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る制御装置は、スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、内燃機関の動力を用いた発電が可能で蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両を制御する。この制御装置は、記憶部と、内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、内燃機関の回転速度が目標速度となるようにスロットル開
度をフィードバック制御する第1制御を実行し、第1制御による第1フィードバック量を記憶部に記憶する第1制御部と、内燃機関をアイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、内燃機関のトルクが目標トルクとなるようにスロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、第2制御による第2フィードバック量を記憶部に記憶する第2制御部とを含む。第2制御部は、記憶部に記憶された第1フィードバック量および第2フィードバック量を用いて第2制御を実行する。制御装置は、第1制御の実行によって第1フィードバック量が変化した場合、少なくとも第1制御から第2制御に移行するまでに、第1制御の実行中の第1フィードバック量の変化分に相当する量を記憶部に記憶された第2フィードバック量から相殺するように補正する補正部をさらに含む。
【0009】
好ましくは、補正部は、第1フィードバック量が増加した場合、第1フィードバック量の増加分に相当する量だけ第2フィードバック量を減少させ、第1フィードバック量が減少した場合、第1フィードバック量の減少分に相当する量だけ第2フィードバック量を増加させる。
【0010】
好ましくは、第2制御部は、内燃機関を負荷運転状態に制御する場合で、かつ蓄電装置の温度が低下したことによって蓄電装置が受け入れ可能な電力が低下したために内燃機関の出力を所定値よりも低い値に制御する必要がある場合に、第2制御を実行する。補正部は、第1フィードバック量が減少した場合であっても、第1フィードバック量の減少分に相当する量だけ第2フィードバック量を増加させた量がスロットル開度を増加させる値となってしまう場合には、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0011】
好ましくは、第1制御部は、第1制御を繰り返すことによって内燃機関の回転速度が目標速度を含む所定範囲に収束した場合に、第1制御に用いられる学習値を第1フィードバック量で更新するとともに、第1フィードバック量を初期化する。補正部は、第1フィードバック量が変化した場合であっても、第1フィードバック量の変化が学習値の更新のための初期化である場合は、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0012】
好ましくは、第1制御部は、第1制御を繰り返すことによって内燃機関の回転速度が目標速度を含む所定範囲に収束した場合に、第1制御に用いられる学習値を第1フィードバック量で更新する学習処理を行なう。補正部は、第1フィードバック量が変化した場合であっても、学習処理が終了した後である場合は、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0013】
好ましくは、補正部は、第1フィードバック量が変化した場合であっても、内燃機関からの排気を浄化する触媒の暖機を促進するために内燃機関の点火時期を遅角する暖機制御が実行されている場合は、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0014】
好ましくは、第1制御部は、内燃機関からの排気を浄化する触媒の暖機を促進するために内燃機関の点火時期を遅角する暖機制御が終了した時点で、第1フィードバック量を遅角制御前の値に変化させる。補正部は、第1フィードバック量が変化した場合であっても、第1フィードバック量の変化が暖機制御の終了に起因する場合は、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0015】
好ましくは、第1制御部は、無負荷状態で内燃機関を通常よりも高い回転速度で運転させるレーシング要求をユーザがした場合、レーシング要求に応えて第1フィードバック量を変化させる。補正部は、第1フィードバック量が変化した場合であっても、ユーザがレーシング要求をしている場合は、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0016】
好ましくは、第1制御部は、実際の走行抵抗と同じ負荷が与えられるようにハイブリッ
ド車両の走行抵抗を設定するロードロード設定をユーザがした場合、内燃機関の回転速度が車速に応じた回転速度となるように第1フィードバック量を変化させる。補正部は、第1フィードバック量が変化した場合であっても、ロードロード設定中は、第2フィードバック量の補正を行なわない。
【0017】
好ましくは、制御装置は、内燃機関を負荷運転状態にすることが可能な場合であっても、所定条件が成立した場合には、第2制御よりも第1制御を優先的に実行させる優先部をさらに含む。
【0018】
この発明の別の局面に係る制御装置は、スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、内燃機関の動力を用いた発電が可能で蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両を制御する。この制御装置は、記憶部と、内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、内燃機関の回転速度が目標速度となるようにスロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、第1制御による第1フィードバック量を記憶部に記憶する第1制御部と、内燃機関をアイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、内燃機関のトルクが目標トルクとなるようにスロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、第2制御による第2フィードバック量を記憶部に記憶する第2制御部とを含む。第2制御部は、記憶部に記憶された第1フィードバック量および第2フィードバック量を用いて第2制御を実行する。制御装置は、内燃機関を負荷運転状態にすることが可能な場合であっても、所定条件が成立した場合には、第2制御よりも第1制御を優先的に実行させる優先部をさらに含む。
【0019】
好ましくは、所定条件は、第1フィードバック量が継続して更新されていない非更新時間が所定時間を越えたという条件を含む。優先部は、第2制御の実行中に非更新時間が所定時間を超えた場合、第2制御を一旦停止して第1制御を一時的に実行させることによって第1フィードバック量を更新させる。
【0020】
好ましくは、所定条件は、第1フィードバック量が継続して更新さていない時間における内燃機関の温度の上昇量が所定量を超えたという条件を含む。優先部は、第2制御の実行中に内燃機関の温度の上昇量が所定量を超えた場合、第2制御を一旦停止して第1制御を一時的に実行させることによって第1フィードバック量を更新させる。
【0021】
この発明の別の局面に係る制御方法は、スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、内燃機関の動力を用いた発電が可能で蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両の制御装置が行なう制御方法である。制御装置は、記憶部を有する。制御方法は、内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、内燃機関の回転速度が目標速度となるようにスロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、第1制御による第1フィードバック量を記憶部に記憶するステップと、内燃機関をアイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、内燃機関のトルクが目標トルクとなるようにスロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、第2制御による第2フィードバック量を記憶部に記憶するステップとを含む。第2制御を実行するステップは、記憶部に記憶された第1フィードバック量および第2フィードバック量を用いて第2制御を実行する。制御方法は、第1制御の実行によって第1フィードバック量が変化した場合、少なくとも第1制御から第2制御に移行するまでに、第1制御の実行中の第1フィードバック量の変化分に相当する量を記憶部に記憶された第2フィードバック量から相殺するように補正するステップをさらに含む。
【0022】
この発明の別の局面に係る制御方法は、スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、内燃機関の動力を用いた発電が可能で蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両の制御装置が行なう制御方法である。制御装
置は、記憶部を有する。制御方法は、内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、内燃機関の回転速度が目標速度となるようにスロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、第1制御による第1フィードバック量を記憶部に記憶するステップと、内燃機関をアイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、内燃機関のトルクが目標トルクとなるようにスロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、第2制御による第2フィードバック量を記憶部に記憶するステップとを含む。第2制御を実行するステップは、記憶部に記憶された第1フィードバック量および第2フィードバック量を用いて第2制御を実行する。制御方法は、内燃機関を負荷運転状態にすることが可能な場合であっても、所定条件が成立した場合には、第2制御よりも第1制御を優先的に実行させるステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハイブリッド車両において、内燃機関をアイドル状態に制御する場合(自立運転時)とアイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合(負荷運転時)とで異なる手法でスロットル開度をフィードバック制御する場合においても内燃機関の出力を正確に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両の構造を示す図である。
【図2】エンジンの構造を示す図である。
【図3】バッテリの入出力特性を示す図である。
【図4】エンジンの駆動制御を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その1)である。
【図5】ISC制御を行なう場合のECUの処理フローを示す図である。
【図6】Pe−F/B制御を行なう場合のECUの処理フローを示す図である。
【図7】トルク偏差とPeフィードバック量の変化量との関係を示す図である。
【図8】ECUの機能ブロック図(その1)である。
【図9】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その1)である。
【図10】ISCフィードバック量の更新量Δeqiと更新量ΔeqiのTA換算値との関係を示す図である。
【図11】相殺補正を行なった場合の、ISCフィードバック量、Peフィードバック量、スロットル開度のタイミングチャートである。
【図12】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その2)である。
【図13】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その3)である。
【図14】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その4)である。
【図15】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その5)である。
【図16】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その6)である。
【図17】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その7)である。
【図18】相殺補正を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その8)である。
【図19】ECUの機能ブロック図(その2)である。
【図20】エンジンの駆動制御を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その2)である。
【図21】エンジンの駆動制御を行なう場合のECUの処理フローを示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載される車両10の構造を示す図である。車両10は、エンジン100および第2モータジェネレータ(MG(2))300Bの少なくともいずれかの動力で走行する車両(以下、「ハイブリッド車両」ともいう)であるとともに、車両外部に設けられた交流電源19から供給された電力での走行が可能な車両(以下、「プラグイン車両」ともいう)である。
【0027】
車両10には、上述のエンジン100およびMG(2)300Bの他に、エンジン100が発生する動力を出力軸212と第1モータジェネレータ(MG(1))300Aとに分配する動力分割機構200と、エンジン100、MG(1)300A、MG(2)300Bで発生した動力を駆動輪12に伝達したり、駆動輪12の駆動をエンジン100やMG(1)300A、MG(2)300Bに伝達したりする減速機14と、MG(1)300AおよびMG(2)300Bを駆動するための電力を蓄電するバッテリ310と、バッテリ310の直流とMG(1)300A、MG(2)300Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ330と、バッテリ310とインバータ330との間で電圧変換を行なう昇圧コンバータ320と、エンジン100の動作状態を制御するエンジンECU406と、車両10の状態に応じてMG(1)300A、MG(2)300B、インバータ330、およびバッテリ310の充放電状態等を制御するMG_ECU402と、エンジンECU406およびMG_ECU402等を相互に管理制御して、車両10が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU404等を含む。
【0028】
動力分割機構200は、サンギヤ、ピニオンギヤ、キャリア、リングギヤを含む遊星歯車から構成される。エンジン100、MG(1)300AおよびMG(2)300Bが動力分割機構200を経由して連結されることで、エンジン100、MG(1)300AおよびMG(2)300Bの各回転速度は、いずれか2つの回転速度が決定されると残りの回転速度が決まるという関係にある。この関係を利用することによって、たとえばMG(2)300Bの回転速度が同じ値であっても、MG(1)300Aの回転速度を制御することによって、エンジン回転速度Neを所望の回転速度に制御することができる。
【0029】
さらに、車両10には、交流電源19に接続されたパドル15を接続するためのコネクタ13と、コネクタ13を経由して供給された交流電源19からの電力を直流に変換してバッテリ310へ出力する充電装置11とを含む。充電装置11は、HV_ECU404からの制御信号に応じてバッテリ310へ出力する電力量を制御する。
【0030】
図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい。たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU402、HV_ECU404およびエンジンECU406を統合したECU400とすることがその一例である。以下の説明においては、MG_ECU402、HV_ECU404およびエンジンECU406を区別することなくECU400と記載する。
【0031】
ECU400には、車速センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、MG(1)回転速度センサ、MG(2)回転速度センサ、エンジン回転速度センサ(いずれも図示せず)、およびバッテリ310の状態(バッテリ電圧値、バッテリ電流値、バッテリ温度など)を監視するバッテリ監視ユニット340からの信号が入力されている。
【0032】
本実施の形態においては、バッテリ310として、リチウムイオン二次電池が用いられる。
【0033】
ECU400は、MG(1)300AあるいはMG(2)300Bをモータとして機能
させる場合、バッテリ310から放電された直流電力を昇圧コンバータ320で昇圧した後、インバータ330で交流電力に変換してMG(1)300AおよびMG(2)300Bに供給する。
【0034】
一方、ECU400は、バッテリ310を充電する際には、MG(1)300AあるいはMG(2)300Bをジェネレータとして機能させて、MG(1)300AあるいはMG(2)300Bが発電した交流電力を、インバータ330で直流電力に変換した後、昇圧コンバータ320で降圧してバッテリ310に供給する。
【0035】
さらに、ECU400は、交流電源19からの交流電力を充電装置11で直流に変換してバッテリ310へ供給することによっても、バッテリ310を充電することが可能である。
【0036】
図2を参照して、エンジン100およびエンジン100に関連する周辺機器について説明する。このエンジン100においては、エアクリーナ(図示せず)から吸入される空気が、吸気管110を流通して、エンジン100の燃焼室102に導入される。スロットルバルブ114の作動量(スロットル開度)により、燃焼室102に導入される空気量が調整される。スロットル開度は、ECU400からの信号に基づいて作動するスロットルモータ112により制御される。
【0037】
燃料は、フューエルタンク(図示せず)に貯蔵され、フューエルポンプ(図示せず)によりインジェクタ104から燃焼室102に噴射される。吸気管110から導入された空気と、インジェクタ104から噴射された燃料との混合気が、ECU400からの制御信号により制御されるイグニッションコイル106を用いて着火されて燃焼する。
【0038】
混合気が燃焼した後の排気ガスは、排気管120の途中に設けられた触媒140を通って、大気に排出される。
【0039】
触媒140は、排気ガス中に含まれるエミッション(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質)を浄化処理する三元触媒である。触媒140は、炭化水素と一酸化炭素の酸化反応と、窒素酸化物の還元反応を同時に行なわせることができる。触媒140は、その温度が低いほど排気浄化能力が低くなる特性を有する。
【0040】
ECU400には、エンジン水温センサ108、エアフロメータ116、吸入空気温センサ118、空燃比センサ122、および酸素センサ124からの信号が入力されている。エンジン水温センサ108は、エンジン冷却水の温度(エンジン水温)THwを検出する。エアフロメータ116は、吸入空気量(エンジン100に吸入される単位時間あたりの空気量)Gaを検出する。吸入空気温センサ118は、吸入空気の温度(吸入空気温)THaを検出する。空燃比センサ122は、排気ガス中の空気と燃料との比率を検出する。酸素センサ124は、排気ガス中の酸素濃度を検出する。これらの各センサは、検出結果を表わす信号をECU400に送信する。
【0041】
ECU400は、各センサから送られてきた信号などに基づいて、適正な点火時期となるようにイグニッションコイル106を制御したり、適正なスロットル開度となるようにスロットルモータ112を制御したり、適正な燃料噴射量となるようにインジェクタ104を制御したりする。
【0042】
また、ECU400の内部には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ、ECU400の処理結果等のデータが記憶される記憶部430が設けられる。
【0043】
図3は、バッテリ310の入出力特性を示す図である。図3において、横軸はバッテリ温度(単位は℃)を示し、縦軸はバッテリ310の放電可能電力Woutおよび充電可能電力Win(単位はいずれもW(ワット))を示す。縦軸の「0[W]」よりも上側の領域に示す実線が放電可能電力Woutを示し、縦軸の「0[W]」よりも下側の領域に示す実線が充電可能電力Winを示す。なお、図3には、参考として、ニッケル水素二次電池の放電可能電力および充電可能電力を破線で示している。
【0044】
バッテリ310は、リチウムイオン二次電池を用いているため、ニッケル水素二次電池を用いる場合(図3の破線参照)に比べて、バッテリ温度が低い領域での特性が大きく相違する。具体的には、ニッケル水素二次電池を用いる場合に比べて、放電可能電力Woutが大きい値となる。その一方で、充電可能電力Winがニッケル水素二次電池に比べて小さい値となる。特に、バッテリ温度が極低温である場合(たとえばマイナス10℃よりも低い場合)では、充電可能電力Winは数キロワット程度の微小な値となる。すなわち、バッテリ温度が極低温である場合、バッテリ310への充電電力は1kW未満の微小な値に制限されることになる。
【0045】
次に、ECU400が行なうエンジン100の駆動制御について説明する。ECU400は、まず、アクセル開度や車速などに基づいて車両10から出力すべき車両要求パワーP(走行に必要なエネルギの他、エアコンなどの補機類に必要なエネルギも含む)を設定し、車両要求パワーPとバッテリ310の状態とに基づいてエンジン100から出力すべきエンジン要求パワーPeを設定する。
【0046】
そして、ECU400は、エンジン要求パワーPeに応じて、「自立運転」および「負荷運転」のいずれかの運転状態でエンジン100を制御する。
【0047】
「自立運転」では、ECU400は、エンジン100をアイドル状態とする。具体的には、ECU400は、エンジン回転速度Neが予め定められた目標アイドル回転速度Niscに維持されるようにスロットル開度をフィードバック制御するISC(Idle SPeed Control)制御を実行する。
【0048】
一方、「負荷運転」では、ECU400は、エンジン100をアイドル状態よりも大きいエネルギを出力する状態に制御するように、エンジン要求パワーPeに応じてスロットル開度を制御する。この際、ECU400は、エンジン実パワーが車両要求パワーPを超える場合、エンジン実パワーのうち車両要求パワーPを超える分(以下、「過剰パワー」ともいう)をMG(1)300Aで電力に変換してバッテリ310へ供給する。したがって、「負荷運転」では、バッテリ310の充電が可能となる。
【0049】
図4は、エンジン100の駆動制御を行なう場合のECU400の処理フローを示す。図4に示すように、ECU400は、まず、上述した過剰パワーが充電可能電力Win(図3参照)よりも大きいか否かに基づいて、エンジン100の運転状態を「自立運転」とするのか「負荷運転」とするのかを判断する(S10)。ECU400は、過剰パワーが充電可能電力Winよりも大きい場合には、バッテリ310の過充電を防止すべく、エンジン100の運転状態を「自立運転」とする(S10にてYES)。一方、ECU400は、過剰パワーが充電可能電力Winよりも小さい場合(過剰パワーが存在しない場合も含む)、エンジン100の運転状態を「負荷運転」とする(S10にてNO)。
【0050】
ECU400は、エンジン100の運転状態を「自立運転」とする場合(S10にてYES)、ISC制御を実行する(S20)。
【0051】
図5は、ISC制御(図4のS20の処理)を行なう場合のECU400の処理フローを示す。
【0052】
図5に示すように、ECU400は、エンジン回転速度Neと目標アイドル回転速度Niscとを比較した結果に応じて、ISCフィードバック量eqiを算出する。なお、ISCフィードバック量eqiは、単位時間あたりの吸入空気量(単位;L/s)で表わされ、その初期値は「0」である。
【0053】
ECU400は、Ne>Nisc+所定値αであると(S20AにてYES)、ISCフィードバック量eqiを更新量Δeqiだけ減少させる(S20B)。すなわち、ISCフィードバック量の前回値eqi(n−1)から更新量Δeqiを減じた値をISCフィードバック量の今回値eqi(n)として算出する。
【0054】
ECU400は、Ne<Nisc−所定値βであると(S20CにてYES)、ISCフィードバック量eqiを更新量Δeqiだけ増加させる(S20D)。すなわち、ISCフィードバック量の前回値eqi(n−1)に更新量Δeqiを加えた値をISCフィードバック量の今回値eqi(n)として算出する。
【0055】
ECU400は、Nisc−β<Ne<Nisc+αであると(S20AにてNO、S20CにてNO)、ISCフィードバック量eqiの更新を行なわない。すなわち、ISCフィードバック量の前回値eqi(n−1)をそのままISCフィードバック量の今回値eqi(n)として算出する(S20E)。
【0056】
そして、ECU400は、予め定められた初期目標スロットル開度TA0にISCフィードバック量eqiのTA換算値を加えた値を、ISC制御時の目標スロットル開度TAiscに設定し(S20F)、実際のスロットル開度TAがISC制御時の目標スロットル開度TAiscとなるように、スロットルモータ112を制御する(S20G)。なお、ISCフィードバック量eqiのTA換算値とは、ISCフィードバック量eqi(単位;L/s)をスロットル角(単位;deg)に換算した値である。
【0057】
このように、ISC制御では、エンジン回転速度Neが目標アイドル回転速度Nisc付近に維持されるようにスロットル開度がフィードバック制御される。
【0058】
S20B、S20D、S20Eで算出されたISCフィードバック量eqiは、各ステップの処理時に記憶部430に記憶され、「自立運転」から「負荷運転」に移行しても最終値が保持される。これにより、再び「負荷運転」から「自立運転」に移行した際にエンジン回転速度Neを速やかに目標アイドル回転速度Niscに収束させることが可能となる。
【0059】
図4に戻って、ECU400は、エンジン100の運転状態を「負荷運転」とする場合(S10にてNO)、Peフィードバック制御(S40)および通常制御(S50)のいずれかで、スロットル開度を制御する。
【0060】
ECU400は、所定のPeフィードバック条件(たとえばバッテリ310を充電する場合であってかつバッテリ温度がマイナス10℃をよりも低く極低温であるという条件)が成立していない場合(S30にてNO)、通常制御を実行する(S50)。通常制御では、ECU400は、エンジン要求パワーPeに応じた目標スロットル開度を設定し、実際のスロットル開度が設定された目標スロットル開度となるようにスロットルモータ112を制御する。この際、目標スロットル開度は完全暖機時を想定して適合された値に設定される。
【0061】
ところが、極低温下では、空気密度の増加によってエンジン出力が増加したりエンジンフリクションの増加によってエンジン出力が減少したりするため、完全暖機時を想定して適合された目標スロットル開度で実際のスロットル開度を制御すると、エンジン要求パワーPeとエンジン実パワーとがかけ離れた値となることが懸念される。
【0062】
さらに、上述の図3に示したように、極低温時は、充電可能電力Winが微小な値となる。そのため、極低温である場合において、バッテリ310の充電を可能としつつ(すなわち「負荷運転」を維持しつつ)バッテリ310の過充電を防止するためには、エンジン実パワー(すなわち過剰パワー)を微小な値で正確に制御する必要がある。
【0063】
上述した極低温時のエンジン出力の増減や充電可能電力Winの低下を考慮して、ECU400は、Peフィードバック条件が成立した場合(S30にてYES)、エンジン側で負荷運転時のスロットル開度を微小に細かく制御し、バッテリ310の充電電力を1kW未満の微小な値に制御することを可能とするPeフィードバック制御(以下、「Pe−F/B制御」とも記載する)を実行する(S40)。
【0064】
図6は、Pe−F/B制御(図4のS40の処理)を行なう場合のECU400の処理フローを示す。
【0065】
図6に示すように、ECU400は、記憶部430に記憶されたISCフィードバック量eqiを読み出し、ISCフィードバック量eqiに基づいてアイドルスロットル開度TAidleを算出する(S40A)。なお、アイドルスロットル開度TAidleは、エンジン100がアイドル状態で駆動する時のスロットル開度に相当する値であって、たとえばISC制御時の目標スロットル開度TAisc(=TA0+(eqiのTA換算値))と同じ値であってもよい。
【0066】
その後、ECU400は、要求スロットル開度TAreqを算出する(S40B)。要求スロットル開度TAreqは、アイドルスロットル開度TAidleからのスロットル作動量であって、エンジン要求パワーPeに応じた値に算出される。
【0067】
さらに、ECU400は、各センサの検出値等に基づいて実エンジントルク(推定値)および目標エンジントルクを算出し、実エンジントルクから目標エンジントルクを減じたトルク偏差dtrqを算出し(S40C)、トルク偏差dtrqに応じてPeフィードバック量の変化量Δefbを算出し(S40D)、Peフィードバック量efbに変化量Δefbを加える(S40E)。すなわち、Peフィードバック量の前回値efb(n−1)にPeフィードバック量の変化量Δefbを加えた値をPeフィードバック量の今回値efb(n)として算出する(S40E)。
【0068】
図7に、トルク偏差dtrqとPeフィードバック量の変化量Δefbとの関係を示す。Peフィードバック量の変化量Δefbは、自立運転から負荷運転に移行してから所定時間が経過するまでは、トルク偏差dtrqに対して図7の線Aで求まる値に設定され、その他においては、図7の線Bで求まる値に設定される。
【0069】
いずれの場合にも、トルク偏差dtrqがdt1(dt1>0)以上の場合(すなわち実エンジントルクが目標エンジントルクに対してdt1以上大きい場合)には、変化量Δefbが負の値に設定される。これにより、Peフィードバック量efbが変化量Δefbの絶対値分だけ減少されるため、実エンジントルクが目標エンジントルクに近づくように減少する。
【0070】
一方、トルク偏差dtrqがdt2(dt2<0)以下の場合(すなわち実エンジントルクが目標エンジントルクに対してdt2の絶対値以上小さい場合)には、変化量Δefbが正の値に設定される。これにより、Peフィードバック量efbが変化量Δefbの絶対値分だけ増加されるため、実エンジントルクが目標エンジントルクに近づくように増加する。
【0071】
図6に戻って、ECU400は、アイドルスロットル開度TAidleに要求スロットル開度TAreqとPeフィードバック量efbとを加えた値をPe−F/B制御時の目標スロットル開度TAfbに設定し(S40F)、実際のスロットル開度がPe−F/B制御時の目標スロットル開度TAfbとなるようにスロットルモータ112を制御する(S40G)。
【0072】
このように、Pe−F/B制御では、実エンジントルクが目標エンジントルクに近づくように、Peフィードバック量efbを用いてスロットル開度がフィードバック制御される。この際、スロットル開度は、ISCフィードバック量eqiに基づいて算出されたアイドルスロットル開度TAidleを基準として制御される。
【0073】
S40Eで算出されたPeフィードバック量efbは、S40Eの処理時に記憶部430に記憶され、「負荷運転」から「自立運転」に移行してもその最終値が保持される。これにより、再び「自立運転」から「負荷運転」に移行してPe−F/B制御が再開された際に速やかに実エンジントルクを目標エンジントルクに収束させることができる。
【0074】
このように、本実施の形態においては、負荷運転時にはPeフィードバック量efbを変化させる(更新する)ことによって、また、自立運転時には別途ISCフィードバック量eqiを変化させることによって、スロットル開度とエンジン実出力との関係がそれぞれ調整される。
【0075】
しかしながら、Peフィードバック量efbの値は「負荷運転」から「自立運転」に移行した後も最終値が保持される。また、ISCフィードバック量eqiの値も「自立運転」から「負荷運転」に移行した後も最終値が保持される。
【0076】
したがって、Pe−F/B制御からISC制御に移行した後に再びPe−F/B制御を実行する場合、ISCフィードバック量eqiとPeフィードバック量efbとをそのまま用いて目標スロットル開度TAfbを算出すると、スロットル開度とエンジン実出力との関係が二重に調整されてしまうことが懸念される。
【0077】
すなわち、ISCフィードバック量eqiは過去に実行されたISC制御時の最終値でありPeフィードバック量efbもまた過去に実行されたPe−F/B制御時の最終値であるため、双方のフィードバック量は、共にスロットル開度とエンジン実出力との調整結果が反映された値である。その結果、目標スロットル開度TAfbは、スロットル開度とエンジン実出力との関係を双方のフィードバック量で二重に補正した値となってしまう。
【0078】
このような二重補正は、エンジン実出力を微小な値で正確に制御するというPe−F/B制御の目的に沿わない。さらに、二重補正によってエンジン出力が低下すると、エンジン回転速度Neが落ち込み、トランスミッションのギヤ歯打ち音等の要因ともなり得る。
【0079】
このような二重補正を防止するため、本実施の形態においては、ISCフィードバック量eqiが更新された場合、そのeqi更新量に対応する値がPeフィードバック量efbから相殺されるようにPeフィードバック量efbを補正する処理(以下、「相殺補正」ともいう)を実行する。この相殺補正を実行する点が本発明の最も特徴的な点である。
【0080】
図8に、ECU400の機能ブロック図を示す。ECU400は、入力インターフェイス410、演算処理部420、記憶部430、出力インターフェイス440とを含む。
【0081】
入力インターフェイス410は、各センサなどからの情報を受信する。記憶部430には、上述したように各種のデータが記憶され、必要に応じて演算処理部420からデータが読み出されたり格納されたりする。ISCフィードバック量eqiおよびPeフィードバック量efbも、この記憶部430に記憶されている。演算処理部420は、入力インターフェイス410および記憶部430からの情報に基づいて演算処理を行なう。出力インターフェイス440は、演算処理部420の処理結果を各機器に出力する。
【0082】
演算処理部420は、ISC制御部421、Pe−F/B制御部422、補正部423を含む。
【0083】
ISC制御部421は、上述の図5にて説明したISC制御を実行し、その際に算出したISCフィードバック量eqiを記憶部430にする。Pe−F/B制御部422は、上述の図6にて説明したPe−F/B制御を実行し、その際に算出したPeフィードバック量efbを記憶部430に記憶する。なお、ISC制御部421およびPe−F/B制御部422の機能については、上述の図5、6にて説明したので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0084】
補正部423は、上述した相殺補正を行なう。具体的には、補正部423は、ISC制御の実行によって記憶部430に記憶されたISCフィードバック量eqiが更新された場合、その更新量ΔeqiのTA換算値を算出し、更新量ΔeqiのTA換算値がPeフィードバック量efbから相殺されるように、記憶部430に記憶されたPeフィードバック量efbを補正する。
【0085】
なお、上述したISC制御部421、Pe−F/B制御部422、補正部423の機能は、ソフトウェアによって実現されるようにしてもよく、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。
【0086】
図9は、上述した補正部423の機能をソフトウェアによって実現する場合のECU400の処理フローである。なお、この処理は、Pe−F/B制御中であるか否かに関わらず、予め定められたサイクルタイムで繰り返し行なわれる。
【0087】
S100にて、ECU400は、ISCフィードバック量eqiが更新されたか否かを判断する。すなわち、ECU400は、上述の図5のS20BあるいはS20Dの処理が実行されることにより、記憶部430に記憶されたISCフィードバック量eqiの値が変更されたか否かを判断する。この処理で肯定的な判断がなされると(S100にてYES)、処理はS102に移される。そうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0088】
S102にて、ECU400は、ISCフィードバック量の更新量ΔeqiのTA換算値を算出し、更新量ΔeqiのTA換算値がPeフィードバック量efbから相殺されるように、記憶部430に記憶されたPeフィードバック量efbを補正する。
【0089】
具体的には、ECU400は、上述の図5のS20Bの処理でISCフィードバック量eqiが更新量Δeqiだけ減少された場合には、Peフィードバック量efbを更新量ΔeqiのTA換算値だけ増加させる。一方、ECU400は、上述の図5のS20Dの処理でISCフィードバック量eqiが更新量Δeqiだけ増加された場合には、Peフ
ィードバック量efbを更新量ΔeqiのTA換算値だけ減少させる。
【0090】
なお、更新量ΔeqiのTA換算値とは、図10に示すように、単位時間あたりの吸入空気量(単位;L/s)の変化量である更新量Δeqiを、スロットル開度(単位;deg)の変化量に変換した値である。
【0091】
図11に、相殺補正を行なった場合のISCフィードバック量eqi、Peフィードバック量efb、スロットル開度のタイミングチャートを示す。
【0092】
図11は、時刻t1で負荷運転から自立運転に移行し、時刻t3で自立運転から負荷運転に移行される場合を示している。なお、負荷運転時にはPe−F/B制御が実行されるものとする。
【0093】
時刻t1までは、Pe−F/B制御によって、実エンジントルクが目標エンジントルクよりも高いため、Peフィードバック量efbが減少される(図6、図7参照)。Peフィードバック量efbは、減少させるたびに記憶部430に記憶される。
【0094】
時刻t1で負荷運転から自立運転に移行すると、Peフィードバック量efbの最終値が記憶部430に保持されるとともに、Pe−F/B制御に代えてISC制御が実行される。ISC制御では、エンジン回転速度Neが目標アイドル回転速度NiscとなるようにISCフィードバック量eqiが調整される。時刻t2にて、実際のエンジン回転速度Neが目標アイドル回転速度Nisc+αよりも高いと(図5のS20AにてYES)、スロットル開度が過剰であると判断されてISCフィードバック量eqiが減少され始める(図5のS20B)。
【0095】
このISCフィードバック量eqiの減少に伴なって(図9のS100にてYES)、ISCフィードバック量の更新量ΔeqiのTA換算値だけPeフィードバック量efbが増加される(図9のS102)。この相殺補正は、ISCフィードバック量eqiが更新される度に繰り返される。このように、ISCフィードバック量eqiで取り込んだISC過剰分を予めPeフィードバック量efbから相殺しておく。
【0096】
そのため、時刻t3で自立運転から再び負荷運転に移行してPe−F/B制御を再開する場合においても、スロットル開度の二重補正(図11の破線参照)が防止される。そのため、エンジン実出力を微小な値で正確に制御するというPe−F/B制御の目的に合致したスロットル制御が実現できる。また、二重補正によるエンジンの出力低下やエンジン回転速度Neの落ち込みも防止できる。
【0097】
このように、本実施の形態においては、自立運転中にISC制御で用いられるフィードバック量が更新された場合、その更新量に相当する値が負荷運転時のPe−F/B制御で用いられるフィードバック量から相殺されるように予め補正しておく。これにより、その後に負荷運転に移行してPe−F/B制御が開始される際にスロットル開度の二重補正が防止されるため、エンジン実出力を微小な値にするという要求に正確に応えることが可能となる。
【0098】
なお、本実施の形態は、たとえば以下のように変更することもできる。
本実施の形態では、いわゆるプラグイン型のハイブリッド車両に本発明を適用したが、これに限らず通常のハイブリッド車両に本発明を適用してもよい。
【0099】
また、本実施の形態では、バッテリとしてリチウムイオン二次電池を用いたが、これに限らずたとえばニッケル水素二次電池を用いてもよい。ニッケル水素二次電池はそのセル
数が少ないほどリチウムイオン二次電池の入出力特性に近くなる傾向にあるため、コスト削減等のためにニッケル水素二次電池のセル数を削減した場合には、特に本発明の適用が有効である。
【0100】
また、本実施の形態においては、ISC制御によってISCフィードバック量eqiが更新された時にリアルタイムでPeフィードバック量efbの相殺補正を行なうが、これに限らず、少なくともISC制御からPe−F/B制御に移行するまでに、ISC制御中のISCフィードバック量eqiの更新量の合計のTA換算値を用いてPeフィードバック量efbを相殺補正するようにしてもよい。
【0101】
また、ISCフィードバック量の更新量をPeフィードバック量から相殺するという本実施の形態の基本概念に、たとえば以下のような例外処理を設けるように変形してもよい。
【0102】
<変形例(その1)>
上述した相殺補正では、ISCフィードバック量eqiが減少した場合は、Peフィードバック量efbは増加される。そもそも、Pe−F/B制御の目的は、極低温下で充電可能電力Winが微小な値に低下することを考慮してエンジン出力を微小な値に正確に制御することである。しかしながら、極低温下での空気密度の増加によって出過ぎてしまうエンジントルクを減少させることも、Pe−F/B制御の目的の1つである。そのため、相殺補正でPeフィードバック量efbを増加(すなわちエンジントルクを増加)させることには、慎重な判断が必要となる。
【0103】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図12に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、ISCフィードバック量eqiが減少しかつ相殺補正を行なったと仮定した場合のPeフィードバック量efb(ISCフィードバック量eqiの減少分に相当する量だけPeフィードバック量efbを増加させた量)が正の値(スロットル開度を増加させる値)となってしまう場合(S110にてYES)には、相殺補正(S102の処理)を行なわないようにする。これにより、エンジントルクの出過ぎを防止することができる。
【0104】
<変形例(その2)>
ISC制御時に、ISC学習が行なわれる場合がある。このISC学習では、所定の学習条件(たとえばISC制御を繰り返すことによってエンジン回転速度Neが所定時間継続して目標アイドル回転速度Niscを含む所定範囲に収束したという条件)が成立した場合に、それまでのISCフィードバック量eqiの変化量をISC学習値EQGに取り込んで更新するとともに、ISCフィードバック量eqiを初期値(たとえば「0」)に更新するものである。なお、ISC学習後においては、初期目標スロットル開度TA0に学習値EQGとISCフィードバック量eqiのTA換算値とを加えた値が、ISC制御時の目標スロットル開度TAiscに設定される。
【0105】
このようにISC学習値EQGの更新のためにISCフィードバック量eqiが初期値に更新される場合、ISCフィードバック量eqiの更新量は、Peフィードバック量efbと相殺する必要はない。
【0106】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図13に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、そのeqiの更新がISC学習値EQGの更新のためである場合(S120にてYES)には、相殺補正(S102の処理)を行なわ
ないようにする。これにより、より正確にエンジン出力を制御することが可能となる。
【0107】
<変形例(その3)>
上述の変形例(その2)でも述べたように、ISC制御時に、ISC学習が行なわれる場合がある。このISC学習が終了した後は、エンジン水温THwも高温となりエンジンフリクションも安定していることから、相殺補正を行なわなくても制御上の背反はそれほど大きくないと考えられる。
【0108】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図14に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、ISC学習値EQGの学習終了後以降である場合(S130にてYES)には、相殺補正(S102の処理)を行なわないようにする。これにより、ISCフィードバック量eqiの安定化を図ることができる。
【0109】
<変形例(その4)>
上述したように、エンジン100からの排気ガスを浄化する触媒140は、その温度が低いほど排気浄化能力が低くなる特性を有する。そのため、触媒140の暖機を促進するためにエンジン100の点火時期を遅角する触媒暖機制御が実行される場合がある。この触媒暖機制御が自立運転中に実行されると、触媒暖機制御での点火遅角によって低下したエンジントルクの影響がISCフィードバック量eqiに反映されることになる。このときのISCフィードバック量eqiの更新量は、Peフィードバック量efbと相殺する必要はない。
【0110】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図15に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、自立運転中かつ触媒暖機制御中である場合(S140にてYES)には、相殺補正(S102の処理)を行なわないようにする。これにより、より正確にエンジン出力を制御することが可能となる。
【0111】
<変形例(その5)>
上述の変形例(その4)でも述べたように、触媒暖機制御が自立運転中に実行されると、触媒暖機制御での点火遅角によって低下したエンジントルクの影響がISCフィードバック量eqiに反映されることになる。このため、触媒暖機制御が終了した時点で、ISCフィードバック量eqiを触媒暖機制御前の値に戻す処理(eqi反省処理)が行なわれる場合がある。このeqi反省処理によるISCフィードバック量eqiの更新量は、Peフィードバック量efbと相殺する必要はない。
【0112】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図16に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、そのeqiの更新がeqi反省処理に起因する場合(S150にてYES)には、相殺補正(S102の処理)を行なわないようにする。これにより、より正確にエンジン出力を制御することが可能となる。
【0113】
<変形例(その6)>
無負荷状態でエンジンを通常よりも高い回転速度で運転させるレーシング要求をユーザがした場合、レーシング中にレーシング回転速度に応えるためにエンジン回転速度Neを上昇させるが、その上昇分を、ハイブリッド車両では、ISCフィードバック量eqiにて実施する場合がある。このレーシング要求によるISCフィードバック量eqiの更新量は、Peフィードバック量efbと相殺する必要はない。
【0114】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図17に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、レーシング要求中(S160にてYES)は、相殺補正(S102の処理)を行なわないようにする。これにより、より正確にエンジン出力を制御することが可能となる。
【0115】
<変形例(その7)>
実際の道路を走行する際の走行抵抗と同じ負荷をシャシダイナモメータ上で模擬できるようにダイナモの負荷設定を合わせる操作(以下、「ロードロード(Road Load)設定」あるいは「R/L設定」という)をユーザがした場合、ハイブリッド車両では、自立運転でISCフィードバック量eqiを調整することによって、エンジン回転速度Neが車速(駆動輪の回転速度)に応じた目標回転速度になるように制御する。このR/L設定中のISCフィードバック量eqiの更新量は、Peフィードバック量efbと相殺する必要はない。
【0116】
そこで、ECU400が、上述の図9に示す処理フローに代えて、図18に示す処理フローを実行するようにしてもよい。すなわち、ISCフィードバック量eqiが更新された場合であっても(S100にてYES)、R/L設定中(S170にてYES)は、相殺補正(S102の処理)を行なわないようにする。これにより、より正確にエンジン出力を制御することが可能となる。
【0117】
[実施の形態2]
上述したように、Pe−F/B制御時の目標スロットル開度TAfbは、アイドルスロットル開度TAidle(エンジン100をアイドル状態とするのに必要な空気量に相当)とPeフィードバック量efb(実エンジントルクと目標エンジントルクとのトルクずれ分の空気量に相当)とに基づいて設定される(図6のS40F)。したがって、Pe−F/B制御の制御性を向上させるためには、アイドルスロットル開度TAidleと、Peフィードバック量efbとを、それぞれ正しく算出する必要がある。
【0118】
ところが、アイドルスロットル開度TAidleは、ISC制御によって算出されるISCフィードバック量eqiに基づく値である(図6のS40A)。そのため、Pe−F/B制御の制御性を向上させるためには、エンジン100の暖機が進みエンジンフリクションが変化する毎にISC制御を実行してISCフィードバック量eqiを更新させることが望ましい。しかしながら、上述した実施の形態1では、Pe−F/B制御が実行可能な状態である場合(S10にてNO、S30にてYES)には、たとえエンジンフリクションが変化した場合(エンジン100をアイドル状態にするのに必要な空気量が変化した場合)であっても、ISC制御が実行されることはなく、ISCフィードバック量eqiは更新されない。
【0119】
そこで、実施の形態2では、Pe−F/B制御が実行可能な場合であっても(S10にてNO、S30にてYES)、所定条件が成立する毎にISC制御の実行を許容することによって、ISCフィードバック量eqiを更新させる。この点が実施の形態2の特徴的な点である。なお、その他の構造、機能、処理は、前述の実施の形態1と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0120】
図19に、実施の形態2に従うECU400Aの機能ブロック図を示す。ECU400Aは、入力インターフェイス410、演算処理部420A、記憶部430、出力インターフェイス440とを含む。演算処理部420Aは、ISC制御部421、Pe−F/B制御部422、補正部423に加えて、優先部424を含む。なお、優先部424以外の機能については、上述の図8にて説明したので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0121】
優先部424は、Pe−F/B制御が実行可能である場合であっても、所定条件が成立する毎にPe−F/B制御よりもISC制御を優先的に実行させることによって、ISCフィードバック量eqiを更新させる。
【0122】
ここで、所定条件は、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からの経過時間(つまりISCフィードバック量eqiが継続して更新されていない時間)が所定時間を越えたという条件である。
【0123】
図20は、上述した優先部424の機能を含むECU400Aがエンジン100の駆動制御を行なう場合のECU400Aの処理フローを示す。ECU400Aは、図20に示す処理を所定のサイクルタイムで繰り返し実行する。なお、図20に示したフローチャートの中で、前述の図4に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0124】
図20に示すように、ECU400Aは、Pe−F/B制御が実行可能である場合、すなわち過剰パワーが充電可能電力Winよりも小さく「負荷運転」とすべき状態で(S10にてNO)かつバッテリ温度が極低温でありPeフィードバック条件が成立している場合(S30にてYES)、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点(図5のS20B、S20D、S20Eのいずれかの処理が最後になされた時点)からの経過時間が所定時間を越えたか否かを判断する(S31)。
【0125】
ECU400Aは、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からの経過時間が所定時間を越えていない場合(S31にてNO)、Pe−F/B制御を実行する(S40)。すなわち、ECU400Aは、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からの経過時間が所定時間を越えるまでは、図6のS40C〜S40Eの処理によるPeフィードバック量efbの更新(トルクずれ分の空気量の調整)を行なう。
【0126】
一方、ECU400Aは、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からの経過時間が所定時間を越えた場合(S31にてYES)は、エンジン要求パワーPeが所定値よりも小さい(つまりエンジン100をアイドル状態に移行することを運転者が許容し得る程度にエンジン要求パワーPeが小さい)ことを条件として(S32にてYES)、ISC制御を実行する(S20)。すなわち、Peフィードバック量efbの更新よりも、図5のS20B、S20D、S20Eのいずれかの処理によるISCフィードバック量eqiの更新(アイドル状態にするのに必要な空気量の調整)を優先して行なう。
【0127】
ISC制御の実行(S20)によってISCフィードバック量eqiが更新されると、その更新時点からの経過時間が所定時間を越えるまでは(S31にてNO)、再びPe−F/B制御が実行され(S40)、経過時間が所定時間を越えると(S31にてYES)、エンジン要求パワーPeが所定値よりも小さくなった時点で(S32にてYES)、再びISC制御が実行される(S20)。
【0128】
このような処理を所定のサイクルタイムで繰り返すことによって、Pe−F/B制御が実行可能である状況において、Pe−F/B制御によるPeフィードバック量efb(トルクずれ分の空気量)の更新を行なうだけでなく、所定時間が経過する毎にISC制御によるISCフィードバック量eqi(アイドル状態にするのに必要な空気量)の更新をも行なうことができる。そのため、Peフィードバック量efbとISCフィードバック量eqiとの双方をエンジン100の状態変化に応じて適切に更新することができる。その結果、Pe−F/B制御時の目標スロットル開度TAfbの精度算出が向上するため、P
e−F/B制御の制御性が向上する。
【0129】
特に、実施の形態2では、Pe−F/B制御の実行中において、「所定時間」が経過する毎にISC制御の実行を許容する(低負荷であることを条件としてISC制御を実行する)ため、Pe−F/B制御の実行中に走行状況(特にエンジン100の状態)がどのように変化したかを問わずに確実にISCフィードバック量eqiを更新させることができる。
【0130】
なお、実施の形態2においても、ISCフィードバック量eqiが更新された場合には、Peフィードバック量efbの相殺補正が行なわれるので、二重補正によるエンジン出力の低下やエンジン回転速度Neの落ち込みの問題は生じない。
【0131】
[実施の形態3]
上述の実施の形態2では、Pe−F/B制御が実行可能な場合において、所定時間が経過する毎にISC制御の実行を許容していた。
【0132】
これに対し、実施の形態3では、Pe−F/B制御が実行可能な状況において、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からのエンジン水温THwの上昇量(つまりISCフィードバック量eqiが継続して更新されていない時間におけるエンジン水温THwの上昇量)が所定量を越える毎に、ISC制御の実行を許容する。つまり、図19の優先部424がISC制御を優先的に実行させる「所定条件」を、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からのエンジン水温THwの上昇量が所定量を越えたという条件に設定する。その他の構造、機能、処理は、前述の実施の形態2と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0133】
図21は、実施の形態3に従うECU400Bがエンジン100の駆動制御を行なう場合のECU400Bの処理フローを示す。なお、図21に示したフローチャートの中で、前述の図20に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0134】
図21に示すように、ECU400Bは、Pe−F/B制御が実行可能である場合(S10にてNO、S30にてYES)、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からのエンジン水温THwの上昇量が所定量を越えたか否かを判断する(S31B)。
【0135】
ECU400Bは、エンジン水温THwの上昇量が所定量を越えていない場合(S31BにてNO)、Pe−F/B制御を実行する(S40)。すなわち、ECU400Bは、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からのエンジン水温THwの上昇量が所定量を越えるまでは、エンジンフリクションの変化量が小さくISCフィードバック量eqiを更新する必要がないと判断し、Peフィードバック量efbの更新を行なう。
【0136】
一方、ECU400Bは、エンジン水温THwの上昇量が所定量を越えた場合(S31BにてYES)は、エンジン要求パワーPeが所定値よりも小さいことを条件として(S32にてYES)、ISC制御を実行する(S20)。すなわち、ECU400Bは、ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からのエンジン水温THwの上昇量が所定量を越えた場合、エンジンフリクションの変化量が大きくISCフィードバック量eqiを更新する必要があると判断し、ISCフィードバック量eqiの更新を行なう。
【0137】
ISC制御の実行(S20)によってISCフィードバック量eqiが更新されると、その後のエンジン水温THwの上昇量が所定量を越えるまでは(S31BにてNO)、再
びPe−F/B制御が実行され(S40)、エンジン水温THwの上昇量が所定量を越えると(S31BにてYES)、エンジン要求パワーPeが所定値よりも小さくなった時点で(S32にてYES)、再びISC制御が実行される(S20)。
【0138】
このような処理を所定のサイクルタイムで繰り返すことによって、実施の形態2と同様に、Pe−F/B制御が実行可能である状況において、Pe−F/B制御によるPeフィードバック量efbの更新を行なうだけでなく、ISC制御によるISCフィードバック量eqiの更新をも行なうことができ、Pe−F/B制御の制御性が向上する。
【0139】
特に、実施の形態3では、エンジン100の暖機が進み、エンジン水温THwが暖機後の温度にほぼ安定した後は、エンジン水温THwの上昇量は所定量を下回ることになるため(S31BにてNO)、ISC制御は実行されない。そのため、実施の形態2のように所定時間毎にISC制御の実行を許容する場合に比べて、本当に必要な場合にのみISC制御を実行させることができ、Pe−F/B制御が実行可能な状況でのISC制御の実行頻度を低減する(すなわちPe−F/B制御の実行頻度を増加する)ことができる。
【0140】
なお、実施の形態2の制御と実施の形態3の制御とを組合せてもよい。すなわち、Pe−F/B制御が実行可能である場合において、「ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からの経過時間が所定時間を越えた場合」あるいは「ISCフィードバック量eqiが前回更新された時点からのエンジン水温THwの上昇量が所定量を越えてた場合」に、エンジン要求パワーPeが所定値よりも小さいことを条件としてISC制御を実行するようにしてもよい。この場合において、エンジン水温THwが暖機後の温度にほぼ安定した時点で「所定時間を越えた場合」との条件を削除することによって、エンジン100の暖機後において不必要にISC制御が実行されることを抑制することができる。
【0141】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0142】
10 車両、11 充電装置、12 駆動輪、13 コネクタ、14 減速機、15 パドル、19 交流電源、100 エンジン、102 燃焼室、104 インジェクタ、106 イグニッションコイル、108 エンジン水温センサ、110 吸気管、112
スロットルモータ、114 スロットルバルブ、116 エアフロメータ、118 吸入空気温センサ、120 排気管、122 空燃比センサ、124 酸素センサ、140
触媒、200 動力分割機構、212 出力軸、310 バッテリ、320 昇圧コンバータ、330 インバータ、340 バッテリ監視ユニット、400,400A,400B ECU、410 入力インターフェイス、420 演算処理部、421 ISC制御部、422 Pe−F/B制御部、423 補正部、424 優先部、430 記憶部、440 出力インターフェイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、前記内燃機関の動力を用いた発電が可能で前記蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
記憶部と、
前記内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、前記内燃機関の回転速度が目標速度となるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、前記第1制御による第1フィードバック量を前記記憶部に記憶する第1制御部と、
前記内燃機関を前記アイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、前記内燃機関のトルクが目標トルクとなるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、前記第2制御による第2フィードバック量を前記記憶部に記憶する第2制御部とを含み、
前記第2制御部は、前記記憶部に記憶された前記第1フィードバック量および前記第2フィードバック量を用いて前記第2制御を実行し、
前記制御装置は、前記第1制御の実行によって前記第1フィードバック量が変化した場合、少なくとも前記第1制御から前記第2制御に移行するまでに、前記第1制御の実行中の前記第1フィードバック量の変化分に相当する量を前記記憶部に記憶された前記第2フィードバック量から相殺するように補正する補正部をさらに含む、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記第1フィードバック量が増加した場合、前記第1フィードバック量の増加分に相当する量だけ前記第2フィードバック量を減少させ、前記第1フィードバック量が減少した場合、前記第1フィードバック量の減少分に相当する量だけ前記第2フィードバック量を増加させる、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記第2制御部は、前記内燃機関を前記負荷運転状態に制御する場合で、かつ前記蓄電装置の温度が低下したことによって前記蓄電装置が受け入れ可能な電力が低下したために前記内燃機関の出力を所定値よりも低い値に制御する必要がある場合に、前記第2制御を実行し、
前記補正部は、前記第1フィードバック量が減少した場合であっても、前記第1フィードバック量の減少分に相当する量だけ前記第2フィードバック量を増加させた量が前記スロットル開度を増加させる値となってしまう場合には、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記第1制御を繰り返すことによって前記内燃機関の回転速度が前記目標速度を含む所定範囲に収束した場合に、前記第1制御に用いられる学習値を前記第1フィードバック量で更新するとともに、前記第1フィードバック量を初期化し、
前記補正部は、前記第1フィードバック量が変化した場合であっても、前記第1フィードバック量の変化が前記学習値の更新のための初期化である場合は、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、前記第1制御を繰り返すことによって前記内燃機関の回転速度が前記目標速度を含む所定範囲に収束した場合に、前記第1制御に用いられる学習値を前記第1フィードバック量で更新する学習処理を行ない、
前記補正部は、前記第1フィードバック量が変化した場合であっても、前記学習処理が終了した後である場合は、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記第1フィードバック量が変化した場合であっても、前記内燃機関か
らの排気を浄化する触媒の暖機を促進するために前記内燃機関の点火時期を遅角する暖機制御が実行されている場合は、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記第1制御部は、前記内燃機関からの排気を浄化する触媒の暖機を促進するために前記内燃機関の点火時期を遅角する暖機制御が終了した時点で、前記第1フィードバック量を前記遅角制御前の値に変化させ、
前記補正部は、前記第1フィードバック量が変化した場合であっても、前記第1フィードバック量の変化が前記暖機制御の終了に起因する場合は、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記第1制御部は、無負荷状態で前記内燃機関を通常よりも高い回転速度で運転させるレーシング要求をユーザがした場合、前記レーシング要求に応えて前記第1フィードバック量を変化させ、
前記補正部は、前記第1フィードバック量が変化した場合であっても、ユーザが前記レーシング要求をしている場合は、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記第1制御部は、実際の走行抵抗と同じ負荷が与えられるように前記ハイブリッド車両の走行抵抗を設定するロードロード設定をユーザがした場合、前記内燃機関の回転速度が車速に応じた回転速度となるように前記第1フィードバック量を変化させ、
前記補正部は、前記第1フィードバック量が変化した場合であっても、前記ロードロード設定中は、前記第2フィードバック量の補正を行なわない、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記内燃機関を前記負荷運転状態にすることが可能な場合であっても、所定条件が成立した場合には、前記第2制御よりも前記第1制御を優先的に実行させる優先部をさらに含む、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項11】
スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、前記内燃機関の動力を用いた発電が可能で前記蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
記憶部と、
前記内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、前記内燃機関の回転速度が目標速度となるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、前記第1制御による第1フィードバック量を前記記憶部に記憶する第1制御部と、
前記内燃機関を前記アイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、前記内燃機関のトルクが目標トルクとなるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、前記第2制御による第2フィードバック量を前記記憶部に記憶する第2制御部とを含み、
前記第2制御部は、前記記憶部に記憶された前記第1フィードバック量および前記第2フィードバック量を用いて前記第2制御を実行し、
前記制御装置は、前記内燃機関を前記負荷運転状態にすることが可能な場合であっても、所定条件が成立した場合には、前記第2制御よりも前記第1制御を優先的に実行させる優先部をさらに含む、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項12】
前記所定条件は、前記第1フィードバック量が継続して更新されていない非更新時間が所定時間を越えたという条件を含み、
前記優先部は、前記第2制御の実行中に前記非更新時間が前記所定時間を超えた場合、前記第2制御を一旦停止して前記第1制御を一時的に実行させることによって前記第1フ
ィードバック量を更新させる、請求項10または11に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項13】
前記所定条件は、前記第1フィードバック量が継続して更新さていない時間における前記内燃機関の温度の上昇量が所定量を超えたという条件を含み、
前記優先部は、前記第2制御の実行中に前記内燃機関の温度の上昇量が前記所定量を超えた場合、前記第2制御を一旦停止して前記第1制御を一時的に実行させることによって前記第1フィードバック量を更新させる、請求項10または11に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項14】
スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、前記内燃機関の動力を用いた発電が可能で前記蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両の制御装置が行なう制御方法であって、前記制御装置は、記憶部を有し、
前記制御方法は、
前記内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、前記内燃機関の回転速度が目標速度となるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、前記第1制御による第1フィードバック量を前記記憶部に記憶するステップと、
前記内燃機関を前記アイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、前記内燃機関のトルクが目標トルクとなるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、前記第2制御による第2フィードバック量を前記記憶部に記憶するステップとを含み、
前記第2制御を実行するステップは、前記記憶部に記憶された前記第1フィードバック量および前記第2フィードバック量を用いて前記第2制御を実行し、
前記制御方法は、前記第1制御の実行によって前記第1フィードバック量が変化した場合、少なくとも前記第1制御から前記第2制御に移行するまでに、前記第1制御の実行中の前記第1フィードバック量の変化分に相当する量を前記記憶部に記憶された第2フィードバック量から相殺するように補正するステップをさらに含む、ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項15】
スロットル開度によって出力が調整される内燃機関と、蓄電装置と、前記内燃機関の動力を用いた発電が可能で前記蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、を備えたハイブリッド車両の制御装置が行なう制御方法であって、前記制御装置は、記憶部を有し、
前記制御方法は、
前記内燃機関をアイドル状態に制御する場合に、前記内燃機関の回転速度が目標速度となるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第1制御を実行し、前記第1制御による第1フィードバック量を前記記憶部に記憶するステップと、
前記内燃機関を前記アイドル状態よりも出力が大きい負荷運転状態に制御する場合に、前記内燃機関のトルクが目標トルクとなるように前記スロットル開度をフィードバック制御する第2制御を実行し、前記第2制御による第2フィードバック量を前記記憶部に記憶するステップとを含み、
前記第2制御を実行するステップは、前記記憶部に記憶された前記第1フィードバック量および前記第2フィードバック量を用いて前記第2制御を実行し、
前記制御方法は、前記内燃機関を前記負荷運転状態にすることが可能な場合であっても、所定条件が成立した場合には、前記第2制御よりも前記第1制御を優先的に実行させるステップをさらに含む、ハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−84263(P2011−84263A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295537(P2009−295537)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】