説明

プラズマ処理装置

【課題】部品の組立及び取り外しの簡便性に優れたものとすることができ、量産性を向上させるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】電極はセラミック層により包囲され、ベース部の下層に設けられた第1と第2の導電性部材によって、突き上げ機構の基板を昇降させる突き上げピンの昇降空間と、伝熱ガスを基板保持台に設けられた複数の穴に供給するガス溜まり空間とを包囲し、かつ、第1と第2の導電性部材を接地することで解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、液晶ディスプレイパネルや太陽電池等の製造における薄膜形成工程、あるいは、微細加工工程等に用いられ、真空室内にプラズマを生成させて基板を処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマ処理装置は、デバイスの高機能化とその処理コストの低減のために、高精度化、高速化、大面積化、低ダメージ化を実現する取り組みが盛んに行なわれている。中でも、成膜においては基板内の膜質均一性を得るため、また、微細加工に用いられるドライエッチングにおいては、寸法精度の確保のために、特に、基板温度を面内で均一に、かつ、精密に制御することが要求されている。そのため、電極と基板との間に伝熱ガスを封入して基板温度を制御するとともに、機械構造的なクランプもしくは静電吸着電極を使用することにより伝熱ガスを封入しても基板が移動しないようにしたプラズマ処理装置が使用され始めている。
【0003】
以下に、従来の静電吸着電極を用いたプラズマ処理装置について説明する。
【0004】
図3は従来のプラズマ処理装置の反応室の断面図である。第1の従来例として、以下このプラズマ処理装置について説明する。
【0005】
図3において、真空室101は、エッチングガス導入装置130に接続されるガス導入口131と、真空排気装置120を有する。真空室101内には、被処理基板102を静電吸着する基板保持台103を備える。基板保持台103は、表面をセラミック103aと、内部に冷却水路(図示せず)を有し表面を絶縁皮膜により被覆されたアルミニウム製ベース部103bからなり、セラミック103aの表面から500μmの位置にタングステンからなる1対の静電吸着用内部電極103c、103dを、アルミニウム製ベース部103bにて挟んだ構造となっている。一方の内部電極103cには正の電圧を印加し、他方の内部電極103dには負の電圧を印加する構成である。基板保持台103には、上記被処理基板102を静電吸着するための直流電源106、高周波フィルター140、及び高周波電力供給装置107が接続されている。又、被処理基板102を基板保持台103に設置及び離脱させるために被処理基板を昇降させる突き上げ機構105がある。なお、110は接地された上部電極である。
【0006】
このように構成された従来のプラズマ処理装置100について、以下にその動作を説明する。まず、突き上げ機構105により昇降可能に基板保持台103に載置された被処理基板102には、静電吸着電極内の1対の内部電極103c及び103dに、内部電極103c及び103dにそれぞれに対応して設けられた直流電源106により、それぞれ、正の電圧及び負の電圧が印加される。この結果、プラズマ処理に最適な温度となる様に被処理基板102が基板保持台103の表面に固定される。
【0007】
次の動作として、He(ヘリウム)供給機構108aにより、基板保持台103の上面側すなわち基板102の裏面側にHeガスを導入し、ヘリウムガスの圧力制御機構により、基板102が基板保持台103から脱離しない程度のある圧力にHeガスを調圧する。このとき、セラミック103aとアルミニウム製ベース部103bと内部電極103c及び103dとを貫通するように形成されている複数の伝熱ガス導入穴103hを通じて、ほとんど同時的に基板102の裏面側にHeガスを供給できる。その理由は、各伝熱ガス導入穴103hの上流側の端部にガス溜まり108bが、表面を酸化膜で被覆したアルミニウム製のハウジングで構成される真空室101とアルミニウムベース部103bとの間に溝形状として形成されており、このガス溜まり108b内にHeガスを一旦溜めたのち、上記複数の伝熱ガス導入穴103hに供給されるためである。そして、このように基板102の裏面側にHeガスが供給された状態で、被処理基板102に対して通常のプラズマ処理が施される。
【0008】
さらに、次の動作として、ガス導入口131より反応ガスを導入し、真空室101内をプラズマ処理が最も精度良くできる圧力に調圧し、高周波電源107から高周波電力を内部電極103c、103dに供給することによりプラズマを生成させ、被処理基板102の裏面をHeガスで効率よく冷却しながら、所望のドライエッチングが達成される。エッチングが終了した後、高周波電力、反応ガス、及び、基板裏面へのHeガスの供給を止め、一旦、排気システム120にて真空排気を行う。その後、基板102を搬送するため、突き上げ機構105で基板保持台103から基板102を剥離させ、所定の処理を終了する。
【特許文献1】特開平5−152209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本ドライエッチング装置のようなプラズマ処理装置は、プラズマによってできる反応生成物が真空室101の内部、突き上げ機構105の突き上げピン105aの昇降空間105b、Heガスのガス溜まり108bに入り込み、ダストとなり、デバイスの歩留まりを低下させる原因となる。よって、常にプラズマにさらされる真空室はもちろん、ダスト侵入のある部品全体を、処理装置より取り外して有機溶剤等で洗浄することが定期的に必要である。そのためには、部品の組立及び取り外しの簡便性が課題であった。
【0010】
また、近年の基板保持台へ印加するプラズマ生成用交流電力の1MHz以下でかつワット密度6W/cm2以上の高パワー化、及び処理時圧力の高真空化1Pa以下により、電極周辺あらゆる部材に電波が伝わり、すなわちアンテナ化し、そこを印加電極として、突き上げピン昇降空間105b、He供給ガス溜まり108bにて異常放電が発生し、プラズマ効率が低下し、所望の処理が得られないと言う課題が発生する。
【0011】
その対策として、特開平5−152209号公報のように、真空室に面する部材を導電性部材により包囲し、その部材を接地することで、真空室空間の異常放電を防止するという案であるが、例えば図2に示すような完全な等方排気の構造をとって、対称的なガス流れにより均一な放電の回り込みとなってプラズマを電極周辺均等に引き込むことに特徴を持たせる場合には、真空室空間のいかなる場所で放電が生じても無関係である。しかしながら、図3のプラズマ処理装置では、突き上げピン昇降空間105b、He供給ガス溜まり108bで異常放電が生じるのは、重大な問題である。
【0012】
よって、従来の対応策としては、突き上げピン昇降空間及びHe供給ガス溜まりといった空間をなるべく電極より距離を離すことにより、絶縁性を確保していた。
【0013】
また、従来例では、突き上げ機構105、突き上げピン昇降空間105b、ガス溜まり108bは、接地された真空室外側に位置し、電気的にシールドされた空間の外側にあることでプラズマ生成時のアンテナによる異常放電を防止している。しかしながら、このような構成にすれば、構成部材が巨大化及び複雑化してしまい、組み付け、取り外しは、真空室の外側と内側とからの両方の作業になるため、非常に多くの労力が必要であった。
【0014】
また、別の対策として、プラズマ効率を悪化させることを前提に、突き上げピン昇降空間105b、ガス溜まり108bにおいて、定常的に放電させ、そのためのプラズマスパッタによる部品摩耗、ダスト源となる反応生成物の発生はメンテナンス毎に部品交換するか、洗浄するという作業が必要であり非常に生産性を悪化させていた。
【0015】
また、発明者の調査したところ、印加周波数が1MHz以下であるとアルミニウム製ベース部103bの内部の導通部を接地していても、アルミニウム製ベース部の表面の絶縁皮膜が局所的に絶縁破壊してしまい、電力が効率よく印加するための整合ができなくなるという問題が発生する。
【0016】
また、別の対応策として、伝熱ガスの圧力を放電の発生しにくい圧力まで低下させるといった方法で対応していた。しかしながら、この方法は、基板温度の面内均一性の悪化、基板温度と電極温度との差の拡大、すなわち温度制御性の悪化、またはプロセス条件の変更、特にプラズマ生成用の印加電力の変更により基板温度が変化する等、プロセスマージンの縮小化を引き起こしている。
【0017】
このように、いずれの従来方法においても、量産性を低下させることになっていた。
【0018】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、量産性を向上させることができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【0019】
具体的には、本発明の1つの観点として、上記したような課題を解決するためになされたものであって、量産性を向上させるため、近年の印加電力の高パワー化、及び低周波化、処理時圧力の高真空化においても、電極周辺あらゆる部材のアンテナ化による、突き上げピン昇降空間及びHe供給ガス溜まりの異常放電発生を防止し、効率の良いプラズマを生成させることができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【0020】
また、本発明の別の観点として、量産性を向上させるため、導電性部材表面の絶縁皮膜の絶縁破壊を防止し、高周波電力が効率よく印加するための整合を長期間行うことができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【0021】
また、本発明の別の観点として、量産性を向上させるため、電極構成部品の巨大化、複雑化を無くし、組み付け、取り外しの作業の簡便性を上げることができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【0022】
さらに、本発明の別の観点として、量産性を向上させるため、プロセス条件の変更、特にプラズマ生成用の印加電力の変更による基板温度の変化が減少し、プロセスマージンの確保を行うことができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0024】
本発明の第1態様によれば、真空室と、真空室内を排気する排気装置と、上記真空室内に配置されかつ上記真空室内にプラズマを生成するための電極と、上記電極に300kHz以上1MHz以下の高周波電力を印加する電源と、上記電極に基板を昇降可能に載置するための基板突き上げ機構と、上記電極と上記基板との間に伝熱ガスを供給し、上記基板の温度を制御する基板冷却機構と、上記基板と直接接触するセラミック層と上記セラミック層の下層に配置されるアルミニウム製ベース部とで構成される基板保持台と、を有するプラズマ処理装置であって、上記電極は、上記セラミック層により包囲されると共に、上記ベース部の下層に設けられた第1と第2の導電性部材によって、上記突き上げ機構の上記基板を昇降させる突き上げピンの昇降空間と、上記伝熱ガスを上記基板保持台に設けられた複数の穴に供給するガス溜まり空間とを包囲し、かつ、前記第1と第2の導電性部材は何れも電気的に接地されていることを特徴とするプラズマ処理装置を提供する。
【0025】
このとき、50Pa以上3000Pa以下までの圧力範囲内に調整した上記伝熱ガスにより、上記基板の温度を制御してプラズマ処理すると好適である。更に、1Pa以下の圧力領域で上記真空室内にプラズマを生成してプラズマ処理すると良い。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、上記突き上げ機構の上記基板を昇降させる突き上げピンの昇降空間と、上記伝熱ガスを上記電極と上記基板の間に複数の穴から供給するためのガス溜まり空間とを構成する部材が、上記真空室内より積み上げ方式によって組み立てられているため、取り外すときには、組立て順とは逆の順序で容易に取り外すことができる。よって、部品の組立及び取り外しの簡便性に優れたものとすることができ、量産性を向上させることができる。
【0027】
また、本発明において、上記電極は、上記セラミック層により包囲されると共に、上記ベース部の下層に設けられた第1と第2の導電性部材によって、上記突き上げ機構の上記基板を昇降させる突き上げピンの昇降空間と、上記伝熱ガスを上記基板保持台に設けられた複数の穴に供給するガス溜まり空間とを包囲し、かつ、前記第1と第2の導電性部材は何れも電気的に接地されている場合には、セラミック状の絶縁体部材であるセラミック層のアンテナ化が発生しても、そこは、充分なセラミック層の厚みによりパワー密度が低減されているため、プラズマ生成用交流電力の3kWまで、300kHz以上1MHz以下の高周波、また、プラズマ処理時の1Pa以下の高真空化においても、一切、異常放電しない。よって、近年の印加電力の高パワー化、及び、低周波化、処理時圧力の高真空化においても、電極周辺あらゆる部材のアンテナ化による、突き上げピン昇降空間及びHe供給ガス溜まりでの異常放電発生を防止し、効率の良いプラズマを生成させることができ、量産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
本発明の一実施形態にかかるプラズマ処理装置及び方法の一具体例として反応性イオンエッチング型のドライエッチング装置及び方法について、図1を用いて説明する。
【0030】
図1において、真空室1は、反応ガスとしてのエッチングガスを真空室1内に導入するためのエッチングガス導入装置30に接続されるガス導入口31と、真空室1内を排気する真空排気装置20を有する。この真空排気装置20は、具体的には、図2に示すように、基板2の中心軸に対して、完全な等方排気の構造をとっているため、反応ガスの流れによりプラズマを内部電極周辺に均等に引き込むことができるようにしている。なお、20bは真空排気装置20の排気口、20aは真空排気装置20の開閉弁である。真空室1内には、被処理基板2を静電吸着する基板保持台3を備える。
【0031】
基板保持台3は、例えば厚さ5mmのセラミック層3aと、内部に冷却水路(図示せず)を有するアルミニウム製ベース部3bとより構成されている。セラミック層3aの表面から例えば500μmの内部には、タングステンからなる1対の静電吸着用内部電極3c、3dを内蔵し、セラミック層3aは内部電極3c、3dの下方まで包囲している。一方の内部電極3cには正の電圧を印加し、他方の内部電極3dには負の電圧を印加するようにしている。その電圧印加を行うためにそれぞれの直流電源6が高周波フィルター40を介して1対の静電吸着用内部電極3c、3dに接続されているとともに、両方の静電吸着用内部電極3c、3dにプラズマ生成用の500kHzのプラズマ生成用交流電源7が接続されている。
【0032】
真空室1の内部の上端には絶縁体(図示せず)を介して上部電極10配置されるとともに真空室1とは別々に接地され、上部電極10は基板保持台3に載置される基板2に対向するようにしている。さらに、伝熱ガスの一例である冷却用He(ヘリウム)ガスを基板保持台3の上面と基板2の裏面との間隙へ供給するための冷却用Heガス供給機構8aが設けられている。このHeガス供給機構8aは、基板冷却用のHeガスの供給及び供給停止を行う開閉バルブ8dと、Heガスの供給流量を制御する流量コントローラ8eとより構成されている。
【0033】
また、Heガスの基板2の裏面でのHeガスの圧力を調整するHeガス圧力調整機構8cは、後述する上記複数の突き上げピン5aの突き上げピン昇降空間5bからのHeガスの排気及び排気停止を行う開閉バルブ8fと、Heガスの排気管内の圧力を測定する圧力計8pと、排気管によるHeガスの排気量を制御する絞り弁8vとから構成されている。なお、各突き上げピン5aは、後述する、セラミック層3aと、内部電極3c及び3dと、アルミニウム製ベース部3bと、ハウジング9bとを貫通して一斉に同期して昇降可能なように配置されている。
【0034】
基板保持台3の下部には、基板搬送のため、複数の突き上げピン5aにより被処理基板2を突き上げ可能とする突き上げ機構5を有している。突き上げ機構5は、真空室1の外に駆動源となる回転モーター5eを配置して、回転モーター5eと真空室内の駆動部分とは、マグネットカップリング5dにより連結することにより、真空室1内の駆動部分を真空室外の大気に対してシールされるようにしている。
【0035】
真空室1内の駆動部分は、マグネットカップリング5dを介して回転する回転軸5gと、回転軸5gに直結されかつマグネットカップリング5dを介して真空室内の回転軸5fに伝達される回転モーター5eの回転運動を直線運動に変換する歯車機構5cとより構成されている。歯車機構5cは、表面が酸化膜で被覆されて絶縁性を持ったアルミニウム製の円筒状のハウジング9a内に収納され、真空室1の内部より組み付けできる構造となっている。ハウジング9aは、金属で構成されて、真空室1と電気的導通を持って接地状態となっているとともに、上記回転軸5fを回転自在に収納する空間9cを有している。
【0036】
また、上記複数の突き上げピン5aの突き上げピン昇降空間5bも本ハウジング9a内に構成され、金属で円板状に形成されて電気的にハウジング9aと導通したハウジング9bにより包囲されている。なお、ハウジング9bには、4ヵ所の伝熱ガス導入穴3hが形成されている。また、ハウジング9aとハウジング9bとの間には、ガス溜まり8bが環状の溝形状に形成されている。ガス溜まり8bは、基板保持台3、すなわち、セラミック層3aと内部電極3c及び3dとアルミニウム製ベース部3bとに構成されている複数例えば4ヵ所の伝熱ガス導入穴3hとつながっており、基板保持台3の上面と基板2の裏面との間の隙間に4ヵ所の伝熱ガス導入穴3hからほとんど同時的にHeガスが供給できる様に構成されている。
【0037】
また、上記ドライエッチング装置を自動運転するため、エッチングガス導入装置30と、真空排気装置20と、直流電源6と、プラズマ生成用交流電源7と、Heガスの供給機構8aと、突き上げ機構5などの装置が制御装置(図示せず)に接続されてそれぞれの動作が上記制御装置により制御されるようにしてもよい。
【0038】
以上のように構成された、ドライエッチング装置について、図1を用いてその動作を説明する。
【0039】
まず、上端位置に位置した突き上げ機構5の突き上げピン5aにより被処理基板2が基板保持台3の上面の上方で支持されたのち、突き上げ機構5により突き上げピン5aが下端位置まで下降して被処理基板2が基板保持台3の上面に載置される。その後、静電吸着電極内の1対の内部電極3c及び3dにそれぞれの直流電源6により正の電圧及び負の電圧がそれぞれ印加される。この結果、プラズマ処理に最適な温度となる様に被処理基板2が静電吸着用内部電極3c及び3dの表面側に固定される。
【0040】
次の動作として、上記Heガス供給機構8aにより、基板保持台3の上面側すなわち基板2の裏面側のガス溜まり8cに、Heガスを例えば10cc/分にて導入するとともに、内部電極3c及び3dなどに形成されている4ヵ所の伝熱ガス導入穴3hを通じて、ほとんど同時に基板保持台3の上面と基板2の裏面との間にHeガスを供給する。上記Heガス圧力調整機構8cにより基板2が基板保持台3から脱離しない程度のある圧力、例えば1400Pa、に調圧する。
【0041】
さらに、次の動作として、一例として、エッチングガス導入装置30によりガス導入口31より反応ガスであるArを200cc/分にて導入し、0.5Paに調圧し、プラズマ生成用交流電源7から、一対の内部電極3c、3dに1kW供給することによりプラズマを生成させ、被処理基板2の裏面をHeガスで効率よく冷却しながら、被処理基板2に対して所望のドライエッチングが達成される。
【0042】
ここで、突き上げピン昇降空間5bとガス溜まり8bとは、セラミック層3aにより絶縁性を充分確保し、高周波が印加されている内部電極3c、3dと遮蔽され、かつ、接地状態であるハウジング9aと同じく接地状態であるハウジング9bとにより突き上げピン昇降空間5bが包囲されている。このため、セラミック層3aのアンテナ化が発生しても、そこは、充分なセラミック層3aの厚みによりパワー密度が低減されているため、プラズマ生成用交流電力の3kWまで、300kHz以上1MHz以下の高周波、また、プラズマ処理時の1Pa以下の高真空化においても、一切、異常放電しないことが確認されている。
【0043】
また、伝熱ガスの圧力を1400Paとしているが、これも4000Paまで上げても放電しないことが確認されている。ただし、圧力の高い場合、調圧時間が長くなりスループットに影響する。本ドライエッチング装置では3000Paより高圧では実使用に影響が大きいため、不適である。逆に、50Pa未満では、基板温度の面内均一性が10%を越えるため、所望するエッチングが得られない。
【0044】
さらに、次の動作として、エッチングが終了した後、プラズマ生成用交流電源、反応ガス、及び、基板裏面へのHeガスの供給を止め、一旦、真空排気装置20にて真空排気を行いながら、直流電源6の出力を止め、その後、基板2を搬送するため、突き上げ機構5を駆動して突き上げピン5aを下端位置から上端位置まで上昇させて基板保持台3から基板2を剥離させ、所定の処理を終了する。
【0045】
その後、本ドライエッチング装置をメンテナンスする際には、以下のように分解することができる。すなわち、真空室内には、円筒状のハウジング9aや基板保持台3などが積み上げられて組み立てられている。すなわち、真空室1の底面から上方に向かうに従い、円筒状のハウジング9a、歯車機構5c及び突き上げピン5aなどの突き上げ機構5の駆動部分、円板状ハウジング9b、基板保持台3の順に積み重ねて組み立てたのち、押さえリング50を、ボルト8本(図示せず)にて、真空室1の底部側に一括して固定保持している。
【0046】
このため、8本のボルトを外して押さえリング50を上方に取り外すことのみで、ハウジング9a、歯車機構5cなどの突き上げ機構5の駆動部分、ハウジング9b、基板保持台3を容易に取り外すことができる。また、基板保持台3内の内部電極3c、3dの周囲は絶縁性のセラミック層3aにより包囲され、さらに、基板2が直接接触する面以外は、表面に絶縁体を被覆した導電性部材、すなわち、表面が酸化膜で被覆されて絶縁性を持ったアルミニウム製の円筒状のハウジング9aと電気的にハウジング9aと導通したハウジング9bとにより包囲されているため、電気的特性として非常にコンパクトに絶縁されている。
【0047】
このため、これらの部材が巨大化することなく構成できる。よって、組立及び取り外しの作業性が高く、また、重量物を取り扱う危険性も低い。
【0048】
さらに、突き上げピン昇降空間5bとガス溜まり8bとは、セラミック層3aにより絶縁性を充分確保し、高周波が印加されている内部電極3c、3dと遮蔽され、かつ、接地状態であるハウジング9aと同じく接地状態であるハウジング9bとにより突き上げピン昇降空間5bが包囲されている。このため、セラミック層3aのアンテナ化が発生しても、そこは、充分なセラミック層3aの厚みによりパワー密度が低減されているため、印加周波数が1MHz以下であっても、基板保持台周辺の全ての部材の絶縁皮膜表面が局所的に絶縁破壊し、電力が効率よく印加するための整合ができなくなるという問題も発生していない。
【0049】
以上のように、上記実施形態によれば、真空室内には、円筒状のハウジング9aや基板保持台3などが順に積み上げられて組み立てられている。すなわち、具体的には、真空室1の底面から上方に向かうに従い、円筒状のハウジング9a、歯車機構5c及び突き上げピン5aなどの突き上げ機構5の駆動部分、円板状ハウジング9b、基板保持台3の順に積み重ねて組み立てられている。
【0050】
この結果、ダスト侵入の可能性のある部品全体を処理装置より取り外して定期的に有機溶剤等で洗浄する場合などのために取り外すときには、組立て順とは逆の順序で、基板保持台3、ハウジング9b、歯車機構5cなどの突き上げ機構5の駆動部分、ハウジング9aを容易に取り外すことができる。よって、部品の組立及び取り外しの簡便性に優れたものとすることができ、量産性を向上させることができる。
【0051】
また、突き上げピン昇降空間5bとガス溜まり8bとは、セラミック層3aにより絶縁性を充分確保し、高周波が印加されている内部電極3c、3dと遮蔽され、かつ、接地状態であるハウジング9aと同じく接地状態であるハウジング9bとにより突き上げピン昇降空間5bが包囲されている。このため、セラミック層3aのアンテナ化が発生しても、そこは、充分なセラミック層3aの厚みによりパワー密度が低減されているため、プラズマ生成用交流電力の3kWまで、300kHz以上1MHz以下の高周波、また、プラズマ処理時の1Pa以下の高真空化においても、一切、異常放電しない。
【0052】
よって、近年の印加電力の高パワー化、及び、低周波化、処理時圧力の高真空化においても、電極周辺あらゆる部材のアンテナ化による、突き上げピン昇降空間及びHe供給ガス溜まりでの異常放電発生を防止し、効率の良いプラズマを生成させることができ、量産性を向上させることができる。
【0053】
また、突き上げピン昇降空間5bとガス溜まり8bとは、セラミック層3aにより絶縁性を充分確保し、高周波が印加されている内部電極3c、3dと遮蔽され、かつ、接地状態であるハウジング9aと同じく接地状態であるハウジング9bとにより突き上げピン昇降空間5bが包囲されている。このため、セラミック層3aのアンテナ化が発生しても、そこは、充分なセラミック層3aの厚みによりパワー密度が低減されているため、50Pa以上3000Pa以下までの圧力範囲内に調整した上記伝熱ガスにより上記基板の温度を制御している状態で、プラズマ生成用交流電力の3kWまで、300kHz以上1MHz以下の高周波、また、プラズマ処理時の1Pa以下の高真空化においても、一切、異常放電しない。よって、導電性部材であるハウジング9aの表面の酸化膜で構成される絶縁皮膜の絶縁破壊を防止し、高周波電力が効率よく印加するための整合を長期間行うことができ、量産性を向上させることができる。
【0054】
また、基板保持台3内の内部電極3c、3dの周囲は絶縁性のセラミック層3aにより包囲され、さらに、基板2が直接接触する面以外は、表面に絶縁体を被覆した導電性部材、すなわち、表面が酸化膜で被覆されて絶縁性を持ったアルミニウム製の円筒状のハウジング9aと電気的にハウジング9aと導通したハウジング9bとにより包囲されているため、電気的特性として非常にコンパクトに絶縁されている。このため、これらの部材が巨大化することなく構成できる。よって、電極構成部品の巨大化、複雑化を無くし、組み付け、取り外しの作業の簡便性を上げることができ、量産性を向上させることができる。
【0055】
さらに、突き上げピン昇降空間5bとガス溜まり8bとは、セラミック層3aにより絶縁性を充分確保し、高周波が印加されている内部電極3c、3dと遮蔽され、かつ、接地状態であるハウジング9aと同じく接地状態であるハウジング9bとにより突き上げピン昇降空間5bが包囲されている。このため、セラミック層3aのアンテナ化が発生しても、そこは、充分なセラミック層3aの厚みによりパワー密度が低減されているため、50Pa以上3000Pa以下までの圧力範囲内に調整した上記伝熱ガスにより上記基板の温度を制御している状態で、プラズマ生成用交流電力の3kWまで、300kHz以上1MHz以下の高周波、また、プラズマ処理時の1Pa以下の高真空化においても、一切、異常放電しない。
【0056】
よって、上記伝熱ガスを50Pa以上3000Pa以下までの圧力範囲内に調整することができるため、基板温度の面内均一性の悪化を防止し、基板温度と電極温度との差の拡大を抑制し、すなわち温度制御性の悪化を防止し、またはプロセス条件の変更、特にプラズマ生成用の印加電力の変更により基板温度が変化することを防止して、プロセスマージンの縮小化を防止することができる。すなわち、プロセス条件の変更、特にプラズマ生成用の印加電力の変更による基板温度の変化が減少し、プロセスマージンの確保を行うことができ、量産性を向上させることができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0058】
例えば、上記実施形態において、基板裏面に流す伝熱ガスとしてHeガスを用いたが、これ以外の不活性ガスや別のガスを用いても良い。
【0059】
また、上記実施形態において、基板裏面に流すHeガスの配管系統は上記実施形態記載の系統に限られるものでなく、基板裏面にガスを供給できればいずれの配管系統を用いても良い。
【0060】
また、上記実施形態において、基板保持台を一対の内部電極を有するいわゆる双極型の静電吸着電極としたが、単極型の静電吸着電極に本発明の静電吸着電極の形状を用いても同様の効果が得られる。
【0061】
また、上記実施形態において、反応性イオンエッチング型のドライエッチング装置としたが、プラズマの生成方法はこれに限られるものでなく、誘導結合型、ECR型、ヘリコン波型、表面波型等のプラズマ生成方法としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態において、ドライエッチング装置を例にとって説明したが、プラズマCVD装置や、スパッタリング装置、アッシング装置に本発明を用いてもよい。
【0063】
なお、上記様々な実施形態及び変形例のうちの任意の実施形態及び変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態の形態におけるプラズマ処理装置の反応室の模式的な断面図
【図2】本発明の上記実施形態の形態におけるプラズマ処理装置排気部の断面図
【図3】従来のプラズマ処理装置の反応室の模式的な断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空室と、真空室内を排気する排気装置と、上記真空室内に配置されかつ上記真空室内にプラズマを生成するための電極と、上記電極に300kHz以上1MHz以下の高周波電力を印加する電源と、上記電極に基板を昇降可能に載置するための基板突き上げ機構と、上記電極と上記基板との間に伝熱ガスを供給し、上記基板の温度を制御する基板冷却機構と、上記基板と直接接触するセラミック層と上記セラミック層の下層に配置されるアルミニウム製ベース部とで構成される基板保持台と、を有するプラズマ処理装置であって、上記電極は、上記セラミック層により包囲されると共に、上記ベース部の下層に設けられた第1と第2の導電性部材によって、上記突き上げ機構の上記基板を昇降させる突き上げピンの昇降空間と、上記伝熱ガスを上記基板保持台に設けられた複数の穴に供給するガス溜まり空間とを包囲し、かつ、前記第1と第2の導電性部材は何れも電気的に接地されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
50Pa以上3000Pa以下までの圧力範囲内に調整した上記伝熱ガスにより、上記基板の温度を制御してプラズマ処理する請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
1Pa以下の圧力領域で上記真空室内にプラズマを生成してプラズマ処理する請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−124171(P2009−124171A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24674(P2009−24674)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【分割の表示】特願2000−234325(P2000−234325)の分割
【原出願日】平成12年8月2日(2000.8.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】