説明

マスクの位置決め装置及びマスクの回転中心算出方法

【課題】マスクステージの回転中心の座標を精度良く求め、これによりマスクと基板との位置決めを高精度で行うことができるマスクの位置決め装置及びマスクの回転中心算出方法を提供する。
【解決手段】位置決め装置70は、回転機構16xを具備するマスクステージ10と、マスクM及び基板Wに設けられた複数のアライメントマークMm、Wmを検知するための複数のアライメントカメラ18と、アライメントカメラ18により得られた画像を用いて各アライメントマークMm、Wmの位置が合うようにマスクステージ10の動作を制御する制御装置71と、を備える。アライメントカメラ18は、各アライメントカメラ18にそれぞれ対応するアライメントマークMm、Wmを撮像し、マスクステージ10を回転させた後、各アライメントマークMm、Wmを再度撮影して、マスクステージ10の回転中心Eの座標を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの位置決め装置及びマスクの回転中心算出方法に関し、より詳細には、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイの基板上にマスクの位置の回転中心を算出し、マスク位置決めを行うマスクの位置決め装置及びマスクの回転中心算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を露光するためのマスクの位置を補正する方法が種々考案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1は、アライメントマークの画像データ、及び測長されたステージ位置の座標データから算出されるアライメントマークの取得画像上の傾きと、ステージ走行方向のステージ座標軸との傾きとから、実際のマスクとステージ座標軸との傾きを算出して、マスクの回転補正を行っている。また、特許文献2は、複数の基板マークとマスクマークとのずれ検出を行って、複数の基板マークとマスクマークとのずれの最大値を求める。このずれ検出を複数回行って得られたずれの最大値の中の最小値が所定値以下である場合、その時の位置合わせの位置を最適位置と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−93826号公報
【特許文献2】特開2005−274687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているマスク検査装置におけるアライメント方法及び評価方法は、ステージの座標軸に対して、マスクの傾きを求め、マスクの位置を回転させてマスクとステージの座標軸の傾きを補正するものであり、マスクと基板とのズレは補正されておらず、精度良くパネルを作成することができない問題があった。また、特許文献2の露光装置及び位置合わせ方法によると、基板上に表示されている複数のアライメントマークと、マスク上に表示されている複数のアライメントマークを合わせることによって、マスクと基板とのズレを補正してズレ防止を図っているが、複数のアライメントマークを複数回に亘って合わせるので、処理に多くの時間を要し、全体的にスループットが遅くなるという問題があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ステージの回転中心の座標を精度良く求め、これによりマスクと基板との位置決めを高精度で行うことができるマスクの位置決め装置及び回転中心算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) マスクを保持するとともに、回転機構を具備するマスクステージと、
前記マスクと基板のそれぞれに設けられた少なくとも2箇所のアライメントマークに向けて設置され、前記各アライメントマークを検知するための複数の撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を用いて前記各アライメントマークの位置が合うように前記マスクステージの動作を制御する制御装置と、
を備えるマスクの位置決め装置であって、
前記各撮像手段にそれぞれ対応する前記マスクと前記基板のアライメントマークを撮像し、前記各アライメントマークの位置が合うように前記マスクステージを回転させた後、前記各撮像手段で前記各アライメントマークを再度撮像して、マスクステージの回転中心の座標を算出することを特徴とするマスクの位置決め装置。
(2) マスクを保持するとともに、回転機構を具備するマスクステージと、
マスクと基板のそれぞれに設けられた少なくとも2箇所のアライメントマークに向けて設置され、前記各アライメントマークを検知するための複数の撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を用いて前記各アライメントマークの位置が合うように前記マスクステージの動作を制御する制御装置と、
を備え、前記マスクの回転ずれの補正に必要な前記マスクの回転中心座標を求めるマスクの回転中心算出方法であって、
前記各撮像手段によってそれぞれ対応する前記アライメントマークを撮像する工程と、
前記各アライメントマークの位置が合うように前記各アライメントマークが対応する前記撮像手段の視野から出ない範囲でマスクステージを回転する工程と、
前記各撮像手段で前記アライメントマークを再度撮像する工程と、
前記マスクステージの回転前後で得られた画像と前記アライメントマークの位置から、前記マスクステージの回転中心の座標を算出する工程と、
を有することを特徴とするマスクの回転中心算出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマスクの位置決め装置及びマスクの回転中心算出方法によれば、基板とマスク上にそれぞれ設けられた少なくとも2個のアライメントマークを、マスクの移動前後で2回撮像し、得られた各画像から各マークの位置を示す点の座標を計測し、これらの座標から求めた各マークの移動量とあらかじめ入力されたマーク間の距離とを用いてマスクの回転角度を算出する。さらに、回転角度と点の座標とを用いてステージの回転中心の座標を算出し、新しい基板を露光する際に、該算出した回転中心の座標を用いてマスク位置の回転補正を行うようにしたので、精度よく基板とマスクとを位置決めすることができ、マスクのスリットと着色パターンがずれる虞がなく、且つ、コンピューターの処理時間を少なくして効率的に基板とマスクとを位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の位置決め装置及び回転中心算出方法が適用された近接露光装置を説明するための一部分解斜視図である。
【図2】図1に示す近接露光装置の正面図である。
【図3】図1に示すマスク保持部の拡大斜視図である。
【図4】図1に示すマスクステージの断面図である。
【図5】位置決め装置の概略構成図である。
【図6】マスクの移動前後におけるマスクアライメントマーク位置を示す図である。
【図7】マスクと基板の位置合わせ手順を示すフローチャートである。
【図8】マスクと基板の位置合わせ手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るマスクの位置決め装置を備える露光装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、近接露光装置1は、マスクMを保持するマスクステージ10と、ガラス基板Wを保持する基板ステージ20と、パターン露光用の照射手段としての照明光学系30と、基板ステージ20をX軸,Y軸,Z軸方向に移動し、且つ基板ステージ20のチルト調整を行う基板ステージ移動機構40と、マスクステージ10及び基板ステージ移動機構40を支持する装置ベース50と、マスクMとガラス基板Wとの位置合わせ制御を含み、近接露光装置1の全体の作動を制御する制御装置71と、を備える。
【0011】
なお、ガラス基板W(以下、単に「基板W」と称する。)は、マスクMに対向配置されており、このマスクMに描かれたマスクパターンを露光転写すべく表面(マスクMの対向面側)に感光剤が塗布されている。また、マスクMは、溶融石英からなり、長方形状に形成されている。
【0012】
説明の便宜上、照明光学系30から説明すると、照明光学系30は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ31と、この高圧水銀ランプ31から照射された光を集光する凹面鏡32と、この凹面鏡32の焦点近傍に切替え自在に配置された二種類のオプチカルインテグレータ33と、光路の向きを変えるための平面ミラー35,36及び球面ミラー37と、この平面ミラー36とオプチカルインテグレータ33との間に配置されて照射光路Pを開閉制御する露光制御用シャッター34と、を備える。
【0013】
そして、照明光学系30では、露光時に露光制御用シャッター34が開制御されると、高圧水銀ランプ31から照射された光が光路Pを経て、マスクステージ10に保持されるマスクM、さらには基板ステージ20に保持される基板Wの表面に対して垂直にパターン露光用の平行光として照射される。これにより、マスクMのマスクパターンが基板W上に露光転写される。
【0014】
マスクステージ10は、図1〜図4に示すように、中央部に矩形形状の開口部11aが形成されるマスクステージベース11と、マスクステージベース11の開口部11aにX軸,Y軸,θ方向に移動可能に装着されるマスク保持枠12と、マスク保持枠12に取り付けられ、マスクMを吸着保持するチャック部14と、マスク保持枠12とチャック部14とをX軸,Y軸,θ方向に移動させ、このマスク保持枠12に保持されるマスクMの位置を調整するマスク位置調整機構16と、を備える。
【0015】
マスクステージベース11は、装置ベース50上に立設される支柱51、及び支柱51の上端部に設けられるZ軸移動装置52によりZ軸方向に移動可能に支持され、基板ステージ20の上方に配置される。Z軸移動装置52は、例えば、モータ及びボールねじ等からなる電動アクチュエータ、或いは空圧シリンダ等を備え、単純な上下動作を行うことにより、マスクステージ10を所定の位置まで昇降させる。なお、Z軸移動装置52は、マスクMの交換や、ワークチャック21の清掃等の際に使用される。
【0016】
図4に示すように、マスクステージベース11の開口部11aの周縁部の上面には、平面ベアリング13が複数箇所配置されており、マスク保持枠12は、その上端外周縁部に設けられるフランジ12aを平面ベアリング13に載置している。これにより、マスク保持枠12は、マスクステージベース11の開口部11aに所定のすき間を介して挿入されるので、このすき間分だけX軸,Y軸,θ方向に移動可能となる。
【0017】
また、マスク保持枠12の下面には、マスクMを保持するチャック部14が間座15を介して固定されている。このチャック部14には、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための複数の吸引ノズル14aが開設されており、マスクMは、吸引ノズル14aを介して図示しない真空式吸着装置によりチャック部14に着脱自在に保持される。また、チャック部14は、マスク保持枠12と共にマスクステージベース11に対してX軸,Y軸,θ方向に移動可能である。
【0018】
図1に示すように、マスク位置調整機構16は、マスク保持枠12のX軸方向に沿う一辺に取り付けられる1台のY軸方向駆動装置16yと、マスク保持枠12のY軸方向に沿う一辺に取り付けられる2台のX軸方向駆動装置16xと、を備える。
【0019】
図4を参照して、Y軸方向駆動装置16yは、マスクステージベース11上に設置され、Y軸方向に伸縮するロッド16bを有する駆動用アクチュエータ(例えば、サーボモータ等)16aと、ロッド16bの先端にピン支持機構16cを介して連結されるスライダ16dと、マスク保持枠12のX軸方向に沿う辺部に取り付けられ、スライダ16dを移動可能に取り付ける案内レール16eと、を備える。なお、X軸方向駆動装置16xも、Y軸方向駆動装置16yと同様の構成を有する。
【0020】
そして、マスク位置調整機構16では、1台のY軸方向駆動装置16yを駆動させることによりマスク保持枠12をY軸方向に移動させ、2台のX軸方向駆動装置16xを同等に駆動させることによりマスク保持枠12をX軸方向に移動させる。また、2台のX軸方向駆動装置16xのどちらか一方を駆動することによりマスク保持枠12をθ方向に移動(Z軸回りの回転)させる。なお、2台のX軸方向駆動装置16xは、本発明のマスクステージ10の回転機構を構成する。
【0021】
さらに、マスクステージベース11の上面には、図3に示すように、マスクMと基板Wとの対向面間のギャップを測定するギャップセンサ17と、チャック部14に保持されるマスクMの取り付け位置を確認するための撮像手段であるアライメントカメラ18と、が設けられる。これらギャップセンサ17及びアライメントカメラ18は、移動機構19を介してX軸,Y軸方向に移動可能に保持され、マスク保持枠12内に配置される。
【0022】
なお、マスクステージベース11の上面には、図3に示すように、マスクステージベース11の開口部11aのX軸方向の両端部に、マスクMの両端部を必要に応じて遮蔽するマスキングアパーチャ38が設けられる。このマスキングアパーチャ38は、モータ、ボールねじ、及びリニアガイド等からなるマスキングアパーチャ駆動機構39によりX軸方向に移動可能とされて、マスクMの両端部の遮蔽面積を調整する。なお、マスキングアパーチャ38は、開口部11aのX軸方向の両端部だけでなく、開口部11aのY軸方向の両端部に同様に設けてもよい。
【0023】
基板ステージ20は、図1及び図2に示すように、基板ステージ移動機構40上に設置されており、基板Wを基板ステージ20に保持するための吸着面22を上面に有するワークチャック21を備える。なお、ワークチャック21は、真空吸着により基板Wを保持している。
【0024】
基板ステージ移動機構40は、図1及び図2に示すように、基板ステージ20をY軸方向に移動させるY軸送り機構41と、基板ステージ20をX軸方向に移動させるX軸送り機構42と、基板ステージ20のチルト調整を行うと共に、基板ステージ20をZ軸方向に微動させるZ−チルト調整機構43と、を備える。
【0025】
Y軸送り機構41は、装置ベース50の上面にY軸方向に沿って設置される一対のリニアガイド44と、リニアガイド44によりY軸方向に移動可能に支持されるY軸テーブル45と、Y軸テーブル45をY軸方向に移動させるY軸送り駆動装置46と、を備える。そして、Y軸送り駆動装置46のモータ46cを駆動させ、ボールねじ軸46bを回転させることにより、ボールねじナット46aとともにY軸テーブル45をリニアガイド44の案内レール44aに沿って移動させて、基板ステージ20をY軸方向に移動させる。
【0026】
また、X軸送り機構42は、Y軸テーブル45の上面にX軸方向に沿って設置される一対のリニアガイド47と、リニアガイド47によりX軸方向に移動可能に支持されるX軸テーブル48と、X軸テーブル48をX軸方向に移動させるX軸送り駆動装置49と、を備える。そして、X軸送り駆動装置49のモータ49cを駆動させ、ボールねじ軸49bを回転させることにより、不図示のボールねじナットとともにX軸テーブル48をリニアガイド47の案内レール47aに沿って移動させて、基板ステージ20をX軸方向に移動させる。
【0027】
Z−チルト調整機構43は、X軸テーブル48上に設置されるモータ43aと、モータ43aによって回転駆動されるボールねじ軸43bと、くさび状に形成され、ボールねじ軸43bに螺合されるくさび状ナット43cと、基板ステージ20の下面にくさび状に突設され、くさび状ナット43cの傾斜面に係合するくさび部43dと、を備える。そして、本実施形態では、Z−チルト調整機構43は、X軸テーブル48のX軸方向の一端側(図1の手前側)に2台、他端側に1台(図1の奥手側、図2参照。)の計3台設置され、それぞれが独立して駆動制御されている。なお、Z−チルト調整機構43の設置数は任意である。
【0028】
そして、Z−チルト調整機構43では、モータ43aによりボールねじ軸43bを回転駆動させることによって、くさび状ナット43cがX軸方向に水平移動し、この水平移動運動がくさび状ナット43c及びくさび部43dの斜面作用により高精度の上下微動運動に変換されて、くさび部43dがZ方向に微動する。従って、3台のZ−チルト調整機構43を同じ量だけ駆動させることにより、基板ステージ20をZ軸方向に微動することができ、また、3台のZ−チルト調整機構43を独立して駆動させることにより、基板ステージ20のチルト調整を行うことができる。これにより、基板ステージ20のZ軸,チルト方向の位置を微調整して、マスクMと基板Wとを所定の間隔を存して平行に対向させることができる。
【0029】
さらに、近接露光装置1には、図1及び図2に示すように、基板ステージ20の位置を検出する位置測定装置であるレーザー測長装置60が設けられる。このレーザー測長装置60は、基板ステージ移動機構40の駆動に際して発生する基板ステージ20の移動距離を測定するものである。
【0030】
レーザー測長装置60は、ステー(不図示)に固定されて基板ステージ20のX軸方向側面に沿うように配設されるX軸用ミラー64と、ステー66に固定されて基板ステージ20のY軸方向側面に沿うように配設されるY軸用ミラー65と、装置ベース50のX軸方向端部に配設され、レーザー光(計測光)をX軸用ミラー64に照射し、X軸用ミラー64により反射されたレーザー光を受光して、基板ステージ20の位置を計測するX軸測長器(測長器)61及びヨーイング測定器(測長器)62と、装置ベース50のY軸方向端部に配設され、レーザー光をY軸用ミラー65に照射し、Y軸用ミラー65により反射されたレーザー光を受光して、基板ステージ20の位置を計測する1台のY軸測長器(測長器)63と、を備える。
【0031】
そして、レーザー測長装置60では、X軸測長器61、ヨーイング測定器62、及びY軸測長器63からX軸用ミラー64及びY軸用ミラー65に照射されたレーザー光が、X軸用ミラー64及びX軸用ミラー65で反射されることにより、基板ステージ20のX軸,Y軸方向の位置が高精度に計測される。また、X軸方向の位置データはX軸測長器61により、θ方向の位置はヨーイング測定器62により測定される。なお、基板ステージ20の位置は、レーザー測長装置60により測定されたX軸方向位置、Y軸方向位置、及びθ方向の位置を加味して、適宜補正を加えることにより算出される。
【0032】
図5に示すように、制御装置71は、所謂、パーソナルコンピュータで構成されており、CPUを制御主体として、メモリ、入力部、出力部、各アライメントカメラ18に対応する画像入力部、画像メモリ、マスク位置調整機構16を含む各部の動きを制御する作動制御部(いずれも図示せず)、などを備える。
【0033】
次に、マスクMに設けられたマスクアライメントマークMmと、基板Wに設けられた基板アライメントマークWmとによる、マスクMと基板Wとの位置合わせについて説明する。なお、本発明のマスクの位置決め装置は、上述したアライメントマークに向けた設置された複数のアライメントカメラ18、マスク位置調整機構16(図2参照)、及び制御装置71などから主に構成される。
【0034】
図5に示すように、マスクアライメントマークMmは、矩形のマスクMの対角線上に少なくとも2箇所(本実施形態では、各隅部に4箇所)設けられている。また、基板アライメントマークWmは、一枚の基板Wから複数のパネルを製造する場合、それぞれのパネルの対角線上に少なくとも2つのアライメントマークWmが設けられ、従って、基板W全体では、各パネルを露光する際のステップ毎に検出される複数のアライメントマークWmが表示されている。
【0035】
ここで、少なくとも2箇所のアライメントマークが対角線上に設けられるのは、基板W上、および、マスクM上のアライメントマークが合致しやすいからである。さらにアライメントマーク1つに対してアライメントマークを撮像する撮像手段(例えば、CCDカメラ)が1台あるのが望ましい。また、カメラで撮像した複数のアライメントマークの位置を把握することにより、精度よくマスクMと基板Wとを位置合わせすることができる。
【0036】
マスクMと基板Wの位置合わせは、先ず、近接露光装置1の基準位置である、基板ステージ20に設けられた図示しない基準マークと、マスクMとの位置を合わせてマスクの基準位置を取得する。図7に示すように、ステップS1でカウンタiの計数値iをクリア(i=0)する。カウンタiは、位置合わせを行った回数を計数するためのものであり、位置合わせ処理が1回終了するごとにカウントアップされ、最大回数(Max Count)が所定の数(例えば、5回)に設定されている。最大回数の設定は、位置決め装置70などに何らかの異常があって処理ループから抜け出せなくなった場合、強制的にこの処理を終了させるためのものである。
【0037】
次いで、ステップS2で、計数値iとMax Countとが比較され、計数値iがMax Countを越えている場合(YES)には、これ以上続けても正常な処理を行えないと判断し、ステップS3で警告を発するなどのエラー処理を行って処理を終了する。また、計数値iがMax Count以下である場合(NO)には、ステップS4に進み、i回目のマスクアライメントマークMmが、アライメントカメラ18によって撮像される。
【0038】
そして、ステップS5で、基板ステージ20の基準マークと、マスクMのマスクアライメントマークMmとのズレ量が算出され、ステップS6で、算出されたズレ量と、予め設定されている閾値とを比較し、算出されたズレ量が閾値より小さいと判断されると(NO)、このときのマスクアライメントマークMmの位置をマスクMの基準位置として保存する。
【0039】
算出されたズレ量が閾値より大きいと(YES)、ステップS8に進み、マスク位置調整機構16(2台のX軸方向駆動装置16x)を作動させてマスク保持枠12を回転させた後、ステップS9で計数値iをインクリメントして、再びステップS2の前に戻り、同様の動作を繰り返し行う。これにより、マスクMの基準位置が取得される。
【0040】
次いで、図8に示すマスクの位置合わせ処理を行う。図8に示すように、ステップS11で基板Wを近接露光装置1の基板ステージ20に投入し、ステップS12で基板Wを処理位置、即ち露光位置に移動させる。そして、ステップS13でカウンタjの計数値jをクリア(j=0)すると共に、連続処理する処理数k、例えば、1枚の基板Wから作成するパネルの枚数などを、所定数に設定する。カウンタjは、位置合わせを行った回数を計数するためのものであり、位置合わせ処理が1回終了するごとにカウントアップされ、最大回数(Max Count)が所定の数(例えば、5回)に設定されている。
【0041】
そして、ステップS14で計数値jとMax Countとが比較され、計数値jがMax Countを越えている場合(YES)には、ステップS15でエラー処理されて処理を終了する。また、計数値jがMax Count以下である場合(NO)には、ステップS16に進み、j回目のマスクアライメントマークMm、及び基板アライメントマークWmが、アライメントカメラ18によって撮像され、ステップS17で両アライメントマークMm、Wmのズレ量が算出される。
なお、アライメントカメラ18が各アライメントマークMm,Wmの座標を撮像する際には、マスクアライメントマークMm、基板アライメントマークWmを撮像するごとにキャリブレーションを行い、アライメントカメラ18を各マークの標準に合わせる。
【0042】
ステップS18で、算出されたズレ量と、予め設定されている閾値とを比較し、算出されたズレ量が閾値より大きいと判断されると(YES)、ステップS19に進み、マスク位置調整機構16を作動させてアライメントカメラ18の視野から出ない範囲でマスク保持枠12を回転させた後、ステップS20で計数値jをインクリメントして、再びステップS14の前に戻り、同様の動作を繰り返し行う。
【0043】
ステップS18において、算出されたズレ量が、閾値より小さいと判断されると(NO)、ステップS21に進み、両アライメントマークMm、Wmの座標位置が計測される。即ち、算出されたズレ量が閾値より小さくなったとき、図6に示すように、マスクMの回転(ステップS19)によって、マスクMのアライメントマークMmは、座標(x1、y1)のA点から、基板アライメントマークWmとの許容ズレ量の範囲内にある移動後の座標(x2、y2)のB点に移動しており、ステップS21において、これらの各点A,Bの座標がアライメントカメラ18によって計測される。
【0044】
そして、ステップS22にて、マスク位置調整機構16によるマスクMの回転角度θを算出し、ステップS21、S22で算出された各点A,Bの座標及び回転角度θを以下の式に代入し、回転中心座標(RCentx、RCenty)を算出する(ステップS23)。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、ステップS22において、回転角度θは、図6に示すように、2台のX軸方向駆動装置16x間の間隔Lが決まっていることから、各X軸方向駆動装置16xによる移動距離(即ち、点C−C´間の距離、点D−D´間の距離)をサーボモータ16aの駆動ステップ数から検出することで与えられる。なお、各X軸方向駆動装置16xによる移動距離は、図示しない非接触式センサや赤外線CCDカメラを用いて検出してもよい。
【0047】
そして、ステップS24で、算出された回転中心Eの座標(RCentx、RCenty)を登録する。その後、ステップS25で1回目の露光処理が行われる。そして、ステップS26で処理数kをデクリメントした後、ステップS27で処理数kがゼロより大きいか否かが判別される。ゼロより大きい場合(YES)は、所定の処理回数が終了していないと判断されてステップS28に進み、それ以外の場合(NO)は、処理を終了する。
【0048】
ステップS28では、Y軸送り駆動装置46、及びX軸送り駆動装置49を作動させて基板Wを次の処理位置に移動させる。ステップS29で基板Wの基板アライメントマークWmのみを撮像し、ステップS30で基板アライメントマークWmの位置を計測する。そして、ステップS31で計測された基板アライメントマークWmと、1回目の露光処理時のマスクアライメントマークMmのズレ量を算出してズレがある場合には、ステップS32でズレ補正を行う。
【0049】
この2回目以降の露光では、基板Wの基板アライメントマークWm同士の間隔は一定であり、且つプリアライメント装置(図示せず)によって基板ステージ20と基板Wの位置出しは出来ているので、ステップS33では、基板ステージ20を平行移動させるだけで、細かいアライメント調整せずに露光することができる。
【0050】
また、ステップS24で登録された回転中心Eの座標は、次の新しい基板Wを露光する際にマスク保持枠12を回転補正するための回転中心として利用される。このように、該回転中心Eを利用した回転補正によって、コンピューターの処理時間を少なくして効率的に基板WとマスクMとを位置決めすることができる。
【0051】
本実施形態の位置決め装置及びマスクの回転中心算出方法によれば、基板WとマスクM上に表示されている少なくとも2個のアライメントマークWm、Mmを、マスクMの移動前後の2回の撮像で得られた各画像から各マークWm、Mmの位置を示す点の座標を計測し、これらの座標から求めた各マークWm、Mmの移動量とあらかじめ入力されたマーク間の距離Lとを用いてマスクMの回転角度θを算出する。さらに、回転角度θと点の座標とを用いてマスクステージ10の回転中心Eの座標を算出し、新しい基板を露光する際に、該算出した回転中心Eの座標を用いてマスク位置の回転補正を行うようにしたので、精度よく基板WとマスクMとを位置決めすることができる。また、コンピューターの処理時間を少なくして効率的に基板WとマスクMとを位置決めすることができる。
【0052】
また、2回目以降の露光処理では、基板ステージ20を平行移動させてアライメント調整を行うので、基板アライメントマークWmのみを撮像するだけでよく、アライメントカメラ18による撮像時間を短縮することができ、より効率的に基板WとマスクMとを位置決めすることができる。
【0053】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、上記の説明では、所謂、分割逐次近接露光装置について説明したが、これに限定されず、走査式近接露光装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 近接露光装置
10 マスクステージ
16 マスク位置調整機構
16x X軸方向駆動装置(回転機構)
16y Y軸方向駆動装置
18 マスク用アライメントカメラ(撮像手段)
20 基板ステージ
71 制御装置
E 回転中心
M マスク
Mm マスクアライメントマーク(アライメントマーク)
W 基板
Wm 基板アライメントマーク(アライメントマーク)
θ 回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを保持するとともに、回転機構を具備するマスクステージと、
前記マスクと基板のそれぞれに設けられた少なくとも2箇所のアライメントマークに向けて設置され、前記各アライメントマークを検知するための複数の撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を用いて前記各アライメントマークの位置が合うように前記マスクステージの動作を制御する制御装置と、
を備えるマスクの位置決め装置であって、
前記各撮像手段にそれぞれ対応する前記マスクと前記基板のアライメントマークを撮像し、前記各アライメントマークの位置が合うように前記マスクステージを回転させた後、前記各撮像手段で前記各アライメントマークを再度撮像して、マスクステージの回転中心の座標を算出することを特徴とするマスクの位置決め装置。
【請求項2】
マスクを保持するとともに、回転機構を具備するマスクステージと、
マスクと基板のそれぞれに設けられた少なくとも2箇所のアライメントマークに向けて設置され、前記各アライメントマークを検知するための複数の撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を用いて前記各アライメントマークの位置が合うように前記マスクステージの動作を制御する制御装置と、
を備え、前記マスクの回転ずれの補正に必要な前記マスクの回転中心座標を求めるマスクの回転中心算出方法であって、
前記各撮像手段によってそれぞれ対応する前記アライメントマークを撮像する工程と、
前記各アライメントマークの位置が合うように前記各アライメントマークが対応する前記撮像手段の視野から出ない範囲でマスクステージを回転する工程と、
前記各撮像手段で前記アライメントマークを再度撮像する工程と、
前記マスクステージの回転前後で得られた画像と前記アライメントマークの位置から、前記マスクステージの回転中心の座標を算出する工程と、
を有することを特徴とするマスクの回転中心算出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−49326(P2012−49326A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189852(P2010−189852)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(311011449)NSKテクノロジー株式会社 (51)
【Fターム(参考)】