説明

レベルシフト回路

【課題】外的要因による誤動作を防止して確実な信号伝達を行うレベルシフト回路。
【解決手段】第1電圧レベルを第1電圧レベルとは異なる第2電圧レベルに変換するレベルシフト回路であって、第2電圧レベルの論理電圧状態をセットするセット信号を送信するセットレベル回路21と、第2電圧レベルの論理電圧状態をリセットするリセット信号を送信するリセットレベル回路22と、第2電圧レベルでセット信号及びリセット信号を検出するための基準値を設定する基準レベル回路C3とを有し、セットレベル回路とリセットレベル回路と基準レベル回路との各々は、それぞれコンデンサC1〜C3を介して第1電圧レベルから第2電圧レベルに信号を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフブリッジ構成のスイッチにおいて必要とされるレベルシフトを与えるレベルシフト回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレベルシフト回路として、例えば、特許文献1に記載されたレベルシフト回路が知られている。
【0003】
このレベルシフト回路においては、ハーフブリッジ構成のハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの中点におけるハイサイドグランド電位は、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのオン/オフ動作に同期して、グランド電位に対して例えばゼロボルトから最大で400Vと大きく電圧レベルが変化する。このため、ハイサイドスイッチのゲートにはハイサイドグランド電位よりも高い電位を印加するハイサイドドライバが用いられる。
【0004】
また、2つの受動デバイスとして第1コンデンサと第2コンデンサとが設けられ、パルス信号の立ち上がりエッジが第1ドライバを介して第1コンデンサに入力され、パルス信号の立ち上がりエッジがインバータを介して立ち下がりエッジとなって第2コンデンサに入力される。第1コンデンサと第2コンデンサとは、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジにより、必要とされる電流を生じさせるように機能する。
【0005】
即ち、第1コンデンサと第2コンデンサにおいて、一時的な電流を生じさせ、その一時的な電流を利用して、ハーフブリッジドライバ又は同様なタイプの回路を適正に駆動するために必要とされる適正な時点でラッチをセット又はリセットする。ラッチからのセット信号又はリセット信号でハイサイドドライバがハイサイドスイッチをオン又はオフさせる。
【0006】
以上の構成においては、第1コンデンサ及び第2コンデンサの充電電圧がセット信号、リセット信号によらず、外的要因によって変化すると、第1コンデンサ及び第2コンデンサに一時的な電流が流れる。
【特許文献1】特表2005−512444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の構成において、ハーフブリッジ構成のハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの中点にはトランスやリアクトルなどのインダクタンス負荷が接続される場合がある。ここで、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチによるスイッチング動作による電圧変動、電流変動によって前記インダクタンス負荷のインダクタンス成分によって振動が発生する。
【0008】
ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの中点はハイサイドドライバのハイサイドグランド電位となるため、この振動によってハイサイドドライバのハイサイド電位全体が振動する。この要因によって、第1コンデンサ及び第2コンデンサの充電電圧がセット信号、リセット信号によらず前記振動によって変化すると、第1コンデンサ及び第2コンデンサに一時的な電流が流れてしまう。このため、ラッチ回路が誤動作しハイサイドスイッチへの信号伝達不良が発生する。
【0009】
本発明は、ハイサイドドライバのハイサイドグランドに入力されるノイズ成分による誤動作を防止して確実な信号伝達を行うレベルシフト回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1電圧レベルを第1電圧レベルとは異なる第2電圧レベルに変換するレベルシフト回路であって、前記第2電圧レベルの論理電圧状態をセットするセット信号を送信するセットレベル回路と、前記第2電圧レベルの論理電圧状態をリセットするリセット信号を送信するリセットレベル回路と、前記第2電圧レベルで前記セット信号及び前記リセット信号を検出するための基準値を設定する基準レベル回路とを有し、前記セットレベル回路と前記リセットレベル回路と前記基準レベル回路との各々は、それぞれコンデンサを介して前記第1電圧レベルから前記第2電圧レベルに信号を伝達することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のレベルシフト回路において、前記セットレベル回路は、前記セット信号と前記基準レベル回路で設定された基準値の信号との電圧差を検出し、前記電圧差が所定値以上である場合に論理電圧状態をセットし、前記リセットレベル回路は、前記リセット信号と前記基準値の信号との電圧差を検出し、前記電圧差が前記所定値以上である場合に論理電圧状態をリセットすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セットレベル回路は、セット信号と基準レベル回路で設定された基準値の信号との電圧差を検出し、電圧差が所定値以上である場合に論理電圧状態をセットし、リセットレベル回路は、リセット信号と基準値の信号との電圧差を検出し、電圧差が所定値以上である場合に論理電圧状態をリセットするので、異なる電圧レベルの電圧変動等の外的要因による誤動作を防止して確実な信号伝達を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態のレベルシフト回路を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明は、コンデンサを介して異なる電圧レベルに信号を伝達することで、信号伝達時に発生する消費電力を低減すると同時に、信号を差動検知することで外的要因による誤動作を防止して確実な信号伝達を行う。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1のレベルシフト回路を示す回路構成図である。図1に示すレベルシフト回路は、ローサイド回路1、ハイサイド回路2、ローサイド回路1及びハイサイド回路2間を接続する第1乃至第3コンデンサC1〜C3を有して構成されている。
【0016】
レベルシフト回路において、電源Vinとグランドとの間にはMOSFETからなるローサイドスイッチQ1とMOSFETからなるハイサイドスイッチQ2との直列回路が接続されている。ローサイドスイッチQ1とハイサイドスイッチQ2とは、ハーフブリッジ回路を構成する。ハイサイドスイッチQ2は、駆動回路24により駆動される。
【0017】
なお、ハーフブリッジ回路を用いる代わりに、フルブリッジ回路を用いても良い。
【0018】
ローサイド回路1は、バッファ11、バッファ12、バッファ16、クランプ回路13〜15を有して構成されている。バッファ11は、セット入力端子から入力されたセット信号に同期して第1コンデンサC1を駆動する。バッファ12は、リセット入力端子から入力されたリセット信号に同期して第2コンデンサC2を駆動する。バッファ16の入力は接地されている。
【0019】
クランプ回路13は、入力側がバッファ11の出力に接続され、出力側が第1コンデンサC1の一端に接続され、第1コンデンサC1のローサイド端子電圧を一定の電圧範囲内の電圧にクランプする。クランプ回路14は、入力側がバッファ12の出力に接続され、出力側が第2コンデンサC2の一端に接続され、第2コンデンサC2のローサイド端子電圧を一定の電圧範囲内の電圧にクランプする。クランプ回路15は、入力側がバッファ16の出力に接続され、出力側が第3コンデンサC3の一端に接続され、第3コンデンサC3のローサイド端子電圧を一定の電圧範囲内の電圧にクランプする。
【0020】
ハイサイド回路2は、信号検出回路21,22、ラッチ23を有して構成されている。信号検出回路21には第1コンデンサC1の他端と第3コンデンサC3の他端とラッチ23のセット端子Sが接続されている。信号検出回路21は、本発明のセットレベル回路に対応し、第1コンデンサC1の電圧と第3コンデンサC3の電圧(本発明の基準値の信号に対応)との電圧差を検出し、電圧差が所定値以上である場合に第1クランプ回路13からのセット信号を受信してラッチ23の論理電圧状態をセットする。
【0021】
信号検出回路22には第2コンデンサC2の他端と第3コンデンサC3の他端とラッチ23のリセット端子Rが接続されている。信号検出回路22は、本発明のリセットレベル回路に対応し、第2コンデンサC2の電圧と第3コンデンサC3の電圧との電圧差を検出し、電圧差が所定値以上である場合に第2クランプ回路14からのリセット信号を受信してラッチ23の論理電圧状態をリセットする。
【0022】
ラッチ23は、信号検出回路21,22からの検出信号により出力信号を生成して駆動回路24に出力する。第1乃至第3コンデンサC1〜C3は、ハイサイド回路2とローサイド回路1間のセット信号、リセット信号、基準値の信号の送受信にそれぞれ使用される。
【0023】
図2は本発明の実施例1のレベルシフト回路内のローサイド回路を示す回路構成図である。
【0024】
図2に示すバッファ11には電流源I10,I11が接続されている。図2に示す第1クランプ回路13において、NPN型のトランジスタQ10とPNP型のトランジスタQ11と電流源I12とで第1プラスクランプ回路を構成する。第1プラスクランプ回路は、第1コンデンサC1のローサイド電位がVreg電位以上になることを防止する。トランジスタQ10のベースとコレクタは電源Vregに接続され、トランジスタQ10のエミッタは電流源I12の一端とトランジスタQ11のベースに接続され、電流源I12の他端は、接地されている。トランジスタQ11のエミッタは、第1コンデンサC1及びバッファ11の出力に接続されている。
【0025】
NPN型のトランジスタQ12とNPN型のトランジスタQ13と電流源I13とは第1マイナスクランプ回路を構成している。第1マイナスクランプ回路は、第1コンデンサC1のローサイド電位がグランド電位以下になることを防止する。電源Vregとグランドとの間には電流源I13とトランジスタQ12との直列回路が接続されている。トランジスタQ12は、コレクタとベースとが共通接続されている。電流源I13とトランジスタQ12のコレクタ及びベースとの接続点にはNPN型のトランジスタQ13のベースが接続されている。トランジスタQ13のコレクタは、電源Vregに接続され、トランジスタQ13のエミッタは、第1コンデンサC1及びバッファ11の出力に接続されている。
【0026】
図2に示すバッファ12には電流源I20,I21が接続されている。図2に示す第2クランプ回路14において、NPN型のトランジスタQ20とPNP型のトランジスタQ21と電流源I22とで第2プラスクランプ回路を構成する。第2プラスクランプ回路は、第2コンデンサC2のローサイド電位がVreg電位以上になることを防止する。
【0027】
トランジスタQ20のベースとコレクタは電源Vregに接続され、トランジスタQ20のエミッタは電流源I22の一端とトランジスタQ21のベースに接続され、電流源I22の他端は、接地されている。トランジスタQ21のエミッタは、第2コンデンサC2及びバッファ12の出力に接続されている。
【0028】
NPN型のトランジスタQ22とNPN型のトランジスタQ23と電流源I23とは第2マイナスクランプ回路を構成している。第2マイナスクランプ回路は、第2コンデンサC2のローサイド電位がグランド電位以下になることを防止する。電源Vregとグランドとの間には電流源I23とトランジスタQ22との直列回路が接続されている。トランジスタQ22は、コレクタとベースとが共通接続されている。電流源I23とトランジスタQ22のコレクタ及びベースとの接続点にはNPN型のトランジスタQ23のベースが接続されている。トランジスタQ23のコレクタは、電源Vregに接続され、トランジスタQ23のエミッタは、第2コンデンサC2及びバッファ12の出力に接続されている。
【0029】
図2に示すバッファ16には電流源I30,I32が接続され、バッファ16の入力は接地されている。図2に示す第3クランプ回路15において、NPN型のトランジスタQ30とPNP型のトランジスタQ31と電流源I31とで第3プラスクランプ回路を構成する。第3プラスクランプ回路は、第3コンデンサC3のローサイド電位がVreg電位以上になることを防止する。
【0030】
トランジスタQ30のベースとコレクタは電源Vregに接続され、トランジスタQ30のエミッタは電流源I31の一端とトランジスタQ31のベースに接続され、電流源I31の他端は、接地されている。トランジスタQ31のエミッタは、第3コンデンサC3及びバッファ16の出力に接続されている。
【0031】
NPN型のトランジスタQ32とNPN型のトランジスタQ33と電流源I33とは第3マイナスクランプ回路を構成している。第3マイナスクランプ回路は、第3コンデンサC3のローサイド電位がグランド電位以下になることを防止する。電源Vregとグランドとの間には電流源I33とトランジスタQ32との直列回路が接続されている。トランジスタQ32は、コレクタとベースとが共通接続されている。電流源I33とトランジスタQ32のコレクタ及びベースとの接続点にはNPN型のトランジスタQ33のベースが接続されている。トランジスタQ33のコレクタは、電源Vregに接続され、トランジスタQ33のエミッタは、第3コンデンサC3及びバッファ16の出力に接続されている。
【0032】
また、バッファ11,12は、入力信号に応じて、第1及び第2コンデンサC1,C2の一端の電位を変化させる。このとき、第1及び第2コンデンサC1,C2の両端電圧は、変化しないため、第1及び第2コンデンサC1,C2の他端の電圧も同様に変化する。
【0033】
また、第1乃至第3コンデンサC1,C2,C3の他端の電圧が上昇又は降下すると、第1乃至第3コンデンサC1,C2,C3の一端の電圧も上昇又は降下する。
【0034】
第1乃至第3コンデンサC1〜C3の各端子は、それぞれローサイド回路1に接続され、各接続端子の電圧は、各プラスクランプ回路及び各マイナスクランプ回路によって電源電圧Vregからグランド電圧までの範囲内に制限される。このため、ローサイド回路1に過電圧や逆方向電圧が印加されなくなり、誤動作や素子の破損を防止できる。
【0035】
また、バッファ11の出力は電流源I10,I11により制限され、バッファ12の出力は電流源I20,I21により制限され、バッファ16の出力は電流源I32,I30により制限される。即ち、バッファ11,12,16の出力能力を電流源I10,I11,I20,I21,I30,I32により制限を加えることにより、各バッファ回路に印加される第1乃至第3コンデンサC1〜C3の充放電による過大電流のストレスを軽減することができる。
【0036】
図3は本発明の実施例1のレベルシフト回路内のハイサイド回路を示す回路構成図である。
【0037】
図3に示す信号検出回路21は、電流源I50、ダイオードD50,D55、コンパレータCOMP2を有して構成されている。
【0038】
電流源I50は、第1コンデンサC1の他端とハイサイドグランドVSとの間に接続されている。ハイサイドグランドVSとは、ハイサイドスイッチQ2とローサイドスイッチQ1との接続点における電位である。ダイオードD50は、電流源I50に並列に接続されている。ダイオードD55は、第1コンデンサC1の他端とハイサイド電源VBとの間に接続されている。
【0039】
コンパレータCOMP2は、反転入力端子に第3コンデンサC3の他端が接続され、非反転入力端子に第1コンデンサC1の他端が接続されている。コンパレータCOMP2は、比較回路を構成し、非反転入力端子電圧が反転入力端子電圧に対して一定以上の電圧差が生じると、出力がLレベルからHレベルになる。
【0040】
図3に示す信号検出回路22は、電流源I51,I52、ダイオードD51,D52,D56,D57、コンパレータCOMP1を有して構成されている。
【0041】
電流源I51は、第2コンデンサC2の他端とハイサイドグランドVSとの間に接続されている。ダイオードD51は、電流源I51に並列に接続されている。ダイオードD56は、第2コンデンサC2の他端とハイサイド電源VBとの間に接続されている。
【0042】
電流源I52は、第3コンデンサC3の他端とハイサイドグランドVSとの間に接続されている。ダイオードD52は、電流源I52に並列に接続されている。ダイオードD57は、第3コンデンサC3の他端とハイサイド電源VBとの間に接続されている。
【0043】
コンパレータCOMP1は、反転入力端子に第3コンデンサC3の他端が接続され、非反転入力端子に第2コンデンサC2の他端が接続されている。コンパレータCOMP1は、比較回路を構成し、非反転入力端子電圧が反転入力端子電圧に対して一定以上の電圧差が生じると、出力がLレベルからHレベルになる。
【0044】
なお、第3クランプ回路15、バッファ16、第3コンデンサC3、電流源I52、ダイオードD52,D57は、セット信号及びリセット信号を検出するための基準値を設定する本発明の基準レベル回路を構成している。
【0045】
ラッチ23は、コンパレータCOMP2の出力がセット端子Sに入力され、コンパレータCOMP1の出力がリセット端子Rに入力される。
【0046】
図4は図3に示すハイサイド回路内のコンパレータの一例を示す回路構成図である。図4に示すコンパレータCOMP1,COMP2において、ハイサイド電源VBとハイサイドグランドVSとの間には、電流源I80と抵抗R80とP型MOS−FETQ80とN型MOS−FETQ83とからなる直列回路が接続されている。ハイサイド電源VBとハイサイドグランドVSとの間には、電流源I80と抵抗R81とP型MOS−FETQ81とN型MOS−FETQ84とからなる直列回路が接続されている。
【0047】
P型MOS−FETQ80,81とは、差動対を構成し、P型MOS−FETQ80,Q81の各ゲート端子は、それぞれ、反転入力端子、非反転入力端子となっている。P型MOS−FETQ81のドレインとN型MOS−FETQ84のドレインとの接続点とハイサイドグランドVS間には電流源I82が接続されると共にN型MOS−FETQ82と電流源I81との直列回路が接続されている。N型MOS−FETQ82は、シュミットインバータS−INV80の出力がハイレベルであるときにオンする。
【0048】
ハイサイド電源VBとハイサイドグランドVSとの間には、P型MOS−FETQ87とN型MOS−FETQ85とからなる直列回路が接続されている。ハイサイド電源VBとハイサイドグランドVSとの間には、P型MOS−FETQ88とN型MOS−FETQ86とからなる直列回路が接続されている。
【0049】
N型MOS−FETQ84,Q85は第1カレントミラー回路を構成し、N型MOS−FETQ83,Q86は第2カレントミラー回路を構成し、P型MOS−FETQ87,Q88は第3カレントミラー回路を構成している。
【0050】
P型MOS−FETQ88とN型MOS−FETQ86との接続点には、シュミットインバータS−INV80の入力端子が接続され、シュミットインバータS−INV80はインバータINV80を介して出力信号OUTを出力する。
【0051】
以上の構成によれば、コンパレータCOMP1,COMP2の反転入力端子に入力された電圧と非反転入力端子に入力された電圧とが同一である場合には、P型MOS−FETQ80,Q81の各ドレインに流れる電流は同じである。このとき、P型MOS−FETQ80ドレインに流れている電流は第2カレントミラー回路を介してN型MOS−FETQ86のドレインに出力される。
【0052】
一方、P型MOS−FETQ81のドレインに流れている電流は、電流源I81,I82だけ差し引かれた後、第1及び第3カレントミラー回路を介してP型MOS−FETQ88のドレインに出力される。
【0053】
N型MOS−FETQ86とP型MOS−FETQ88の各ドレインは接続されているため、N型MOS−FETQ86に流れる電流とP型MOS−FETQ88に流れる電流との比較によって、N型MOS−FETQ86とP型MOS−FETQ88のドレイン端子電圧が決まる。
【0054】
反転入力端子と非反転入力端子との電圧差がない場合には、P型MOS−FETQ81のドレインに流れている電流から電流源I81,I82分の電流が差し引かれたことによって、N型MOS−FETQ86に出力される電流は、P型MOS−FETQ88に出力される電流よりも多くなるため、N型MOS−FETQ86のドレイン端子電圧はローレベルとなる。このローレベルは、シュミットインバータS−INV80で反転されて、さらに、インバータINV80で反転されてローレベルが出力される。
【0055】
一方、非反転入力端子電圧が反転入力端子電圧よりも大きくなると、P型MOS−FETQ80に流れる電流は、P型MOS−FETQ81に流れる電流よりも小さくなる。P型MOS−FETQ80に流れる電流とP型MOS−FETQ81に流れる電流との差が、電流源I81の電流と電流源I82の電流との合計よりも大きくなると、N型MOS−FETQ86に出力される電流は、P型MOS−FETQ88に出力される電流よりも小さくなる。このため、N型MOS−FETQ86のドレイン端子電圧はハイレベルとなる。このハイレベルは、シュミットインバータS−INV80で反転されて、さらに、インバータINV80で反転されてハイレベルが出力される。
【0056】
なお、第1乃至第3コンデンサC1〜C3の充電電圧は、ダイオードD50,D51,D52,D55,D56,D57によってハイサイド電源VB及びハイサイドグランドVS間に制限されている。外来ノイズや、ハイサイドグランドVSの急変が発生した場合には、第1乃至第3コンデンサC1〜C3の他端の電圧はハイサイドグランドVSの変化に追従することはない。このため、ハイサイドグランドVSを基準に第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の信号レベルを検出すると、信号の誤検出が発生する。
【0057】
実施例1のレベルシフト回路では、信号の誤検出を防止するために、信号伝達を行わない第3コンデンサC3を別に設け、信号検出回路21で信号伝達用の第1コンデンサC1の他端の電圧と第3コンデンサC3の他端の電圧との電圧差を検出し、電圧差が所定値以上である場合にセット信号を受信しラッチ23の論理電圧状態をセットする。また、信号検出回路22で信号伝達用の第2コンデンサC2の他端の電圧と第3コンデンサC3の他端の電圧との電圧差を検出し、電圧差が所定値以上である場合にリセット信号を受信しラッチ23の論理電圧状態をリセットし、ラッチ23に信号を伝達する。
【0058】
即ち、第1コンデンサC1の電圧と第3コンデンサC3の電圧との電圧差信号、第2コンデンサC2の電圧と第3コンデンサC3の電圧との電圧差信号を検出することで、ハイサイドグランドVSに印加されるノイズ成分の影響を受けることなく安定した信号伝達を実現することができる。
【0059】
図5は本発明の実施例1のレベルシフト回路における各部の動作波形図である。図5において、VSはハイサイドグランド電位、Setはローサイドセット信号、Resetはローサイドリセット信号、C1は第1コンデンサC1のハイサイド端子電圧、C2は第2コンデンサC2のハイサイド端子電圧、C3は第3コンデンサC3のハイサイド端子電圧、FF_Qはハイサイドのラッチ23の出力を示す。
【0060】
図5において、時刻t1において、ローサイドセット信号Setが入力されると、第1コンデンサC1のハイサイド端子電圧は上昇する。信号検出回路21は、第1コンデンサC1の電圧と第3コンデンサC3の電圧との電圧差を所定値と比較することによって、ハイサイドのラッチ23がセットされる。
【0061】
その後、ハイサイドグランド電圧VSが上昇し(時刻t2〜t3)、一定値となる。時刻t4において、ローサイドリセット信号Resetが入力されると、第2コンデンサC2のハイサイド端子端圧は、上昇する。信号検出回路22は、第2コンデンサC2の電圧と第3コンデンサC3の電圧との電圧差を所定値と比較することによって、ハイサイドのラッチ23がリセットされる。
【0062】
時刻t5からハイサイドグランド電圧VSが低下すると、第1乃至第3コンデンサC1〜C3のハイサイド端子電圧は、ハイサイドグランド電圧VSの変化(時刻t5〜t6)に対して遅れて変化する(時刻t5〜t7)。このとき、第2コンデンサC2、第3コンデンサC3のハイサイド端子電圧は、同様に変化するため、第2コンデンサC2と第3コンデンサC3との電圧差に変化はないか、もしくはダイオードD56,D57にクランプされ同一の電圧となる。このため、リセット信号を誤検出することはない。
【0063】
従って、信号の誤検出がなく、高い精度で且つ少ない消費電力で異なる電圧レベルに信号を伝達することができる。
【0064】
図5において、VS電圧が高い状態にあった時、時刻t10において、ローサイド信号Setが入力されると、第1コンデンサC1のハイサイド端子電圧は上昇し、時刻t1と同様にハイサイドのラッチ23の論理電圧状態がセットされる。
【0065】
ここで、ハイサイドグランド電圧VSは既に高い電圧にあるため、変化は無い。次に、時刻t12でローサイド信号Resetが入力されると、第2コンデンサC2のハイサイド端子電圧は上昇し、ハイサイドのラッチ23の論理電圧状態はリセットされ、時刻t5と同様にハイサイドグランド電圧VSは徐々に下降する。
【0066】
また、時刻t17でローサイド信号Setが入力されハイサイドのラッチ23の論理電圧状態がセット状態にあるときに、時刻t18〜t19にかけてハイサイドグランド電圧VSが負電位側に変化し、時刻t20まで一定の低い電位となった場合、第1乃至第3コンデンサC1〜C3のハイサイド端子電圧は、ハイサイドグランド電圧VSの変化(時刻t18〜t19)に対して遅れて変化する。但し、ハイサイドグランド電圧VSの変化はローサイドのグランドに対する変化のため、第1乃至第3コンデンサC1〜C3の各端子間電圧の偏差として表われない。
【実施例2】
【0067】
図6は本発明の実施例2のレベルシフト回路内のハイサイド回路を示す回路構成図である。
【0068】
図6において、信号検出回路21aは、図3に示す信号検出回路21にさらに、N型のMOS−FETQ50、抵抗R50、P型のMOS−FETQ55、アンド回路AND1、オア回路OR1を設けている。N型のMOS−FETQ50、抵抗R50、P型のMOS−FETQ55、アンド回路AND1、オア回路OR1は、放電手段を構成している。
【0069】
N型のMOS−FETQ50と抵抗R50との直列回路は、ダイオードD50の両端間に接続され、P型のMOS−FETQ55は、ダイオードD55の両端間に接続されている。P型のMOS−FETQ55のゲートは、ラッチ23の出力反転端子Qb及びアンド回路AND1の一方の入力端子に接続されている。
【0070】
アンド回路AND1の他方の入力端子にはコンパレータCOMP2の出力端子及びアンド回路AND2の一方の入力端子が接続されている。アンド回路AND1の出力端子はオア回路OR1の一方の入力端子に接続され、オア回路OR1の他方の入力端子はアンド回路AND2の出力端子に接続されている。オア回路OR1の出力端子はN型のMOS−FETQ50のゲートに接続されている。
【0071】
図6において、信号検出回路22aは、図3に示す信号検出回路22にさらに、N型のMOS−FETQ51、抵抗R51、N型のMOS−FETQ52、抵抗R52、アンド回路AND2を設けている。N型のMOS−FETQ51、抵抗R51、N型のMOS−FETQ52、抵抗R52、アンド回路AND2は、放電手段を構成している。
【0072】
N型のMOS−FETQ51と抵抗R51との直列回路は、ダイオードD51の両端間に接続されている。N型のMOS−FETQ52と抵抗R52との直列回路は、ダイオードD52の両端間に接続されている。
【0073】
アンド回路AND2の一方の入力端子はコンパレータCOMP2の出力端子が接続され、アンド回路AND2の他方の入力端子はコンパレータCOMP1の出力端子及びN型のMOS−FETQ52のゲートが接続されている。アンド回路AND2の出力端子はN型のMOS−FETQ51のゲート及びオア回路OR1の他方の入力端子に接続されている。
【0074】
図7は本発明の実施例2のレベルシフト回路における各部の動作波形図である。図7を参照しながら図6に示すハイサイド回路の動作を説明する。
【0075】
まず、時刻t1において、セット信号Setが入力されると、第1コンデンサC1の他端の電圧が上昇し、フリップフロップ回路からなるラッチ23の論理電圧状態がセットされる。ラッチ23の論理電圧状態がセットされると、MOS−FETQ55がオンし、第1コンデンサC1の他端の電位はハイサイド電源VBに固定される。
【0076】
次に、時刻t4において、リセット信号Resetが入力されると、第2コンデンサC2の他端の電位が上昇し、コンパレータCOMP1によりラッチ23がリセットされる。すると、ラッチ23の反転出力Qbはハイレベルとなり、MOSFETQ55がオフし、第1コンデンサC1の他端の電位はハイサイド電源VBの固定から開放され、コンパレータCOMP1の出力はハイレベルのままであるので、アンド回路AND1はハイレベルを出力し、MOS−FETQ50がオンする。
【0077】
MOS−FETQ50がオンすると、第1コンデンサC1の電荷がグランドに放電されて、第1コンデンサC1の電位が低下すると、コンパレータCOMP2の出力がローレベルに変化する。すると、アンド回路AND2はハイレベルを出力し、MOS−FETQ51がオンし、第2コンデンサC2を放電する。このため、コンパレータCOMP1の出力はローレベルに変化し、ハイサイド回路2はセット信号を待つ状態となる。
【0078】
リセット信号Resetによって、ハイサイド出力が停止したタイミングで、ハイサイドグランド電位VSが大幅に低下すると、第1及び第2コンデンサC1,C2の他端の電位はハイサイド電源VBにクランプされる。この状態では、コンパレータCOMP1乃至COMP2の非反転入力にVB電位が入力されるが、第3コンデンサC3の他端の電位もハイサイド電源VBクランプされるので、コンパレータCOMP1乃至COMP2の反転入力にVB電位が入力され、ラッチ23にはハイレベルの信号は入力されず誤動作は発生しない。さらに、ラッチ23の論理構成をリセット信号優先に設定しておくことで、ラッチ23が再セットされることは確実に防止される。
【0079】
ハイサイドグランドVSがグランドレベルまで低下すると(時刻t6)、第1コンデンサC1の他端の電位は、MOS−FET50によって放電され、コンパレータCOMP2の出力がローレベルに変化する。すると、アンド回路AND2はハイレベルを出力し、MOS−FETQ51がオンして、第2コンデンサC2が放電される。
【0080】
また、同時に、アンド回路AND2の出力がハイレベルになると、オア回路OR1の出力もハイレベルに変化してN型MOSFETQ50がオンして、第1コンデンサC1が放電される。このため、コンパレータCOMP1乃至COMP2の出力はローレベルに変化し、ハイサイド回路2はセット信号を待つ状態となる。
【0081】
従って、図5に示すように、第1乃至第3コンデンサC1〜C3のハイサイド端子電圧が、ハイサイドグランド電圧VSの変化に対して遅れて変化することがなくなる。
【0082】
即ち、第2コンデンサC2によりリセット信号が送信されてから、再度、セット信号が受信可能な状態になるまでの期間は、コンパレータCOMP1,COMP2の遅延時間とラッチ23と論理ゲートの遅延時間との合計時間となり、放電用の電流源I50,I51による自然放電によってリセットされる時間よりも短時間となる。
【0083】
図7においてもVS電圧が高い状態にあった時、時刻t10において、ローサイド信号Setが入力されると、第1コンデンサC1のハイサイド端子電圧は上昇し、時刻t1と同様にハイサイドのラッチ23の論理電圧状態がセットされる。
【0084】
ここで、ハイサイドグランド電圧VSは既に高い電圧にあるため、変化は無い。次に、時刻t11でローサイド信号Resetが入力されると、第2コンデンサC2のハイサイド端子電圧は上昇し、ハイサイドのラッチ23の論理電圧状態はリセットされ、時刻t5と同様にハイサイドグランド電圧VSは徐々に下降する。
【0085】
また、時刻t17でローサイド信号Setが入力されハイサイドのラッチ23の論理電圧状態がセット状態にあるときに、時刻t18〜t19にかけてハイサイドグランド電圧VSが負電位側に変化し、時刻t20まで一定の低い電位となった場合、第1乃至第3コンデンサC1〜C3のハイサイド端子電圧は、ハイサイドグランド電圧VSの変化(時刻t18〜t19)に対して遅れて変化する。但し、ハイサイドグランド電圧VSの変化はローサイドのグランドに対する変化のため、第1乃至第3コンデンサC1〜C3の各端子間電圧の偏差として表われない。
【実施例3】
【0086】
図8は本発明の実施例3のレベルシフト回路内のハイサイド回路を示す回路構成図である。
【0087】
図8に示すレベルシフト回路は、図6に示すレベルシフト回路の信号検出回路22aに対して、信号検出回路22bの構成が異なる。即ち、信号検出回路22bは、電流源I51、ダイオードD51,D56,N型のMOS−FETQ51、抵抗R52、アンド回路AND2、コンパレータCOMP1、基準電源E1を設け、電流源I52、ダイオードD52,D57,N型のMOS−FETQ52、抵抗R52を削除している。これに伴って、第3コンデンサC3、第3クランプ回路15が削除されている。
【0088】
即ち、実施例3のレベルシフト回路は、基準電源E1が基準値を表す基準電圧をコンパレータCOMP1,COMP2の反転入力端子に印加しており、第3コンデンサC3の機能を持たせている。
【0089】
図9は本発明の実施例3のレベルシフト回路における各部の動作波形図である。図9の動作波形では、図7に示す動作波形に対して、第3コンデンサC3のハイサイド端子電圧が示されていないのみで、その他は同じである。
【0090】
このように実施例3のレベルシフト回路によれば、実施例2のレベルシフト回路の動作及び効果と同様な動作及び効果が得られる。また、実施例2の信号検出回路22aよりも、信号検出回路22bの構成が簡単化でき、レベルシフト回路を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1のレベルシフト回路を示す回路構成図である。
【図2】本発明の実施例1のレベルシフト回路内のローサイド回路を示す回路構成図である。
【図3】本発明の実施例1のレベルシフト回路内のハイサイド回路を示す回路構成図である。
【図4】図3に示すハイサイド回路内のコンパレータの一例を示す回路構成図である。
【図5】本発明の実施例1のレベルシフト回路における各部の動作波形図である。
【図6】本発明の実施例2のレベルシフト回路内のハイサイド回路を示す回路構成図である。
【図7】本発明の実施例2のレベルシフト回路における各部の動作波形図である。
【図8】本発明の実施例3のレベルシフト回路内のハイサイド回路を示す回路構成図である。
【図9】本発明の実施例3のレベルシフト回路における各部の動作波形図である。
【符号の説明】
【0092】
1 ローサイド回路
2 ハイサイド回路
11,12 バッファ
13 第1クランプ回路
14 第2クランプ回路
15 第3クランプ回路
21,21a,22,22a,22b 信号検出回路
23 ラッチ
24 駆動回路
Q1 ローサイドスイッチ
Q2 ハイサイドスイッチ
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
C3 第3コンデンサ
I10〜I13,I20〜I23,I30〜I33,I50〜I52,I80〜I82 電流源
Q10〜Q13,Q20〜Q23,Q30〜Q33 トランジスタ
D50〜D52,D55〜D57 ダイオード
COMP1,COMP2 コンパレータ
Q50〜Q52,Q55,Q80〜Q88 MOS−FET
AND1,AND2 アンド回路
OR1 オア回路
S−INV80 シュミットインバータ
INV80 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧レベルを第1電圧レベルとは異なる第2電圧レベルに変換するレベルシフト回路であって、
前記第2電圧レベルの論理電圧状態をセットするセット信号を送信するセットレベル回路と、
前記第2電圧レベルの論理電圧状態をリセットするリセット信号を送信するリセットレベル回路と、
前記第2電圧レベルで前記セット信号及び前記リセット信号を検出するための基準値を設定する基準レベル回路とを有し、
前記セットレベル回路と前記リセットレベル回路と前記基準レベル回路との各々は、それぞれコンデンサを介して前記第1電圧レベルから前記第2電圧レベルに信号を伝達することを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
前記セットレベル回路は、前記セット信号と前記基準レベル回路で設定された基準値の信号との電圧差を検出し、前記電圧差が所定値以上である場合に論理電圧状態をセットし、前記リセットレベル回路は、前記リセット信号と前記基準値の信号との電圧差を検出し、前記電圧差が前記所定値以上である場合に論理電圧状態をリセットすることを特徴とする請求項1記載のレベルシフト回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−124049(P2010−124049A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293416(P2008−293416)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】