説明

乗員保護装置

【課題】より適切な乗員保護を行うことができる乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】本発明による乗員保護装置1は、両の乗員の意識の向上又は低下を数値で示す項目Cを検出する意識検出手段3aと、項目Cが第一閾値αにより定められる第一領域内となる場合に、乗員の覚醒を促す覚醒手段6aと、項目Cが第二閾値βにより定められる第二領域内となる場合に、車両を退避させる退避手段3b、3cと、退避手段3b、3cが作動可能であるかを判定する判定手段3dを備えるとともに、項目Cが第二領域内となる場合であって、判定手段3dが退避手段3b、3cは作動可能であると判定する場合に、覚醒手段6aによる覚醒を禁止する禁止手段3eを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の自動車に適用して好適な乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、乗員を座席に拘束して、車両に作用する衝撃により乗員が座席の着座位置から移動されて、車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムやフロントガラス等に過度に接近することを防止するためのシートベルトを含む乗員保護装置が備えられている。これに加えて、この乗員保護装置には、衝撃が発生した時においてシートベルトを構成する帯状部材すなわちウェビングにリトラクタの通常時の巻き取り力よりも大きな張力を付与してウェビングのたるみを除去して、乗員の座席への拘束をより確実なものとするプリテンショナが備えられている。
【0003】
このような乗員保護装置においては、特許文献1に記載されているように、衝撃が発生することが予想されるカーブ又は交差点の手前において、車両の速度が高い場合に、前述したリトラクタの巻き取り力を大きくして、乗員に対して前方のカーブ又は交差点に対する注意喚起を促す警報を行うことが提案されている。このように乗員に対して警報を行う制御は、前方障害物との距離に基づいて車両が前方障害物に過度に接近することを回避する接近回避制御を行う接近回避装置を備えた車両、又は、車両を車線中央付近又は車線内に維持する車線維持装置を備えた車両においても適用可能である。
【特許文献1】特開2001−10447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような構成の乗員保護装置においては、乗員の意識がどの程度低下しているかを段階的に評価することなく、意識の低下程度に係わらずに、乗員に対して警報を行うため、乗員の意識が極めて低下していて、乗員の意識がない状態又は眠っている状態である場合にも乗員に対して警報を行うこととなる。このように乗員の意識が極めて低下している場合において乗員に警報を行うことは、乗員が本来意図しない操作を招くおそれもあり、乗員により安全な操作を促すことは必ずしもできておらず、より適切な乗員保護が達成されないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、より適切な乗員保護を行うことができる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明に係る乗員保護装置は、
車両の乗員の意識の向上又は低下を数値で示す項目を検出する意識検出手段と、前記項目が第一閾値により定められる第一領域内となる場合に、前記乗員の覚醒を促す覚醒手段と、前記項目が第二領域内となる場合に、前記車両を退避させる退避手段と、前記退避手段が作動可能であるかを判定する判定手段を備えるとともに、前記項目が第二閾値により定められる前記第二領域内となる場合であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記覚醒手段による覚醒を禁止する禁止手段を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記乗員保護装置において、
前記乗員を座席に拘束する帯状部材と、前記帯状部材に張力を付与する張力付与手段と、前記項目が前記第一領域内である場合に、前記張力付与手段の付与する張力を第一増分だけ増加させる調整手段を備え、当該調整手段が前記覚醒手段を構成することが好ましい。
【0008】
なお、ここで前記帯状部材とは具体的にはシートベルトを構成するウェビングであり、前記張力付与手段とはウェビングの一方端を、前記乗員の意識が低下しておらず、前記項目が前記第一閾値以上である通常時においては、前記乗員を覚醒させない程度の巻き取り力で巻き取るスプールとスプールを回転させるモータとにより構成されるリトラクタを指す。このリトラクタの巻き取り力はシートECU(Electronic Control Unit)により制御され、シートECUは前記項目が前記第一領域内である場合に前記巻き取り力よりも前記第一増分だけ大きな張力を前記帯状部材に付与する調整手段をも構成する。
【0009】
また、前記乗員の意識の向上又は低下を数値で示す項目とは、例えば乗員の眼を撮像した画像を処理して一定時間内において乗員の眼が開いている時間の割合を演算して求められる閉眼度や、前記乗員の眼又は顔を撮像した画像を処理して一定期間内において乗員の眼又は顔が指向する方向が前方に指向している時間の割合を演算して求められる前方注視度のいずれであってもよく、両者ともに正値であって前記意識が低下する場合には数値が低くなるものである。あるいは、前記項目は脈拍や脳波の周波数等の直接的な生体情報であってもよく、この場合も前記意識が低下する場合には数値が低くなるものである。
【0010】
従って、この場合において、前記第一領域は、前記第一閾値を前記意識が低下していると認められる値として予め実験的に求めて定めておき、前記項目が前記第一閾値未満又は以下である領域として定めればよい。同様に前記第二領域は、前記第二閾値を前記意識がさらに低下して前記乗員が意識を失っている又は完全に眠っている状態であると認められる値として予め実験的に求めて定めておき、前記項目が前記第一閾値より小さい前記第二閾値未満又は以下である領域として定めればよい。
【0011】
なお、前記閉眼度を、乗員の眼を撮像した画像を処理して一定時間内において乗員の眼が閉じている時間の割合を演算して求められるものと定義する場合や、前記前方注視度を前記乗員の眼又は顔を撮像した画像を処理して一定期間内において乗員の眼又は顔が指向する方向が前方から外れている時間の割合を演算して求められるものと定義する場合、生体情報が例えば眼球の運動頻度のようなものである場合には、前記項目は前記意識の低下に伴い向上することとなる。このため、前記第一領域は、前記項目が前記第一閾値超又は以上である領域として定めればよく、同様に前記第二領域は、前記項目が前記第一閾値より大きい前記第二閾値超又は以上である領域として定めればよい。
【0012】
なお、通常時の前記張力は前記乗員を覚醒させない程度の値とし、前記第一増分だけ増加させた前記張力は前記乗員を覚醒させる程度の値とする。
【0013】
これによれば、前記項目が前記第一領域内である場合には、前記意識が低下している場合であるので、前記覚醒手段つまりは前記調整手段により前記張力を通常時の前記張力に対して前記第一増分だけ増加させて、前記乗員に前記帯状部材により通常時よりも大きな拘束力を作用させて、前記乗員の意識が低下している場合つまりは、前記乗員が疲労して注意力が低下している、又は、眠りかかっている場合において、前記乗員を覚醒させることができる。
【0014】
これとともに、前記項目が前記第二領域内である場合には、前記意識の低下がさらにすすみ意識がない状態つまりは前記乗員が意識を失っている又は完全に眠っている状態であるので、前記判定手段により前記退避手段が作動可能であると判定される場合には、前記退避手段により前記車両を前記乗員の操作によらずに自動的に退避させて、前記覚醒手段つまりは前記調整手段により前記張力を前記第一増分だけ増加させることを前記禁止手段により禁止する。このことにより、前記乗員をあえて覚醒させずに、意識がない状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止することができる。
【0015】
これらのことにより、前記乗員により安全な操作を促すとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合、つまりは、前記乗員を覚醒させることが好ましくない場合においては、前記退避手段による退避を優先させて、より適切な乗員保護を行うことができる。
【0016】
さらに、前記乗員保護装置において、
前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記調整手段が、前記張力付与手段の付与する張力を第一増分よりも小さい第二増分だけ増加させることが好ましい。ここで、前記第二増分だけ増加させた前記張力が前記乗員を覚醒させない程度のものとする。
【0017】
これによれば、前記項目が前記第二領域内である場合に、前記退避手段により前記車両を前記乗員の操作によらずに自動的に退避させて、前記乗員をあえて覚醒させずに、意識がない状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止することができる。これとともに、前記乗員を通常時よりは大きい拘束力により前記座席に拘束して前記乗員が前記車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムやフロントガラス等に過度に接近することを防止する効果を高めることができる。
【0018】
加えて、前記乗員保護装置において、
前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記座席を車両後方に移動させる移動手段と、前記座席の背部を起立させる起立手段を備えることが好ましい。
【0019】
これによれば、前記座席の背部を起立させることにより、前記第二増分だけ増加させた前記張力により前記乗員を前記座席に拘束する効果を、より高めることができる。これとともに、前記座席が前記車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムに前記意識が低下する前から接近しすぎていた場合でも、前記座席を前記車両後方に移動させることができるので、前記乗員が前記車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムやフロントガラス等に過度に接近することを防止する効果をより高めることができる。
【0020】
なお、前記乗員保護装置において、
前記退避手段は、前記車両を停止させる停止手段を備えることが好ましい。
【0021】
これによれば、前記項目が前記第二領域内となり、前記乗員が意識を失っている場合又は完全に眠っている場合において、前記車両を速やかに停止させることができ、これにより、前記乗員の保護をより適切に行うことができる。
【0022】
さらに、前記乗員保護装置において、
前記車両の前方を撮像する前方撮像手段と、前記車両の後方を撮像する後方撮像手段を備えるとともに、前記車両の前方において前記車両を前記停止手段が停止させるのに必要な停止距離が確保でき、前記車両の後方の所定距離以内に他の車両が位置していない場合に、前記判定手段が、前記退避手段が作動可能であると判定することが好ましい。
【0023】
これによれば、予め前記退避手段が作動可能であって前記退避手段による退避が確実に実現可能である場合にのみ、前記禁止手段が前記覚醒手段により前記乗員の覚醒を行うことを禁止することができ、前記乗員保護装置の保安性をより高めることができる。
【0024】
さらに、前記乗員保護装置において、
前記退避手段は、前記車両を道路の路肩に移動させる操舵手段を備えることが好ましい。
【0025】
これによれば、前記項目が前記第二領域内となり、前記乗員が意識を失っている場合又は完全に眠っている場合において、前記車両を速やかに停止させるとともに、前記車両を前記路肩に移動させることができ、前記道路の他車両の円滑な通行をも配慮した上で、前記乗員の保護をより適切に行うことができる。
【0026】
加えて、前記乗員保護装置において、
前記車両の前方において、前記車両を前記操舵手段が移動させることができる前記路肩が存在する場合に、前記判定手段が、前記退避手段が作動可能であると判定することが好ましい。
【0027】
これによれば、予め前記退避手段が作動可能であって前記退避手段による退避が確実に実現可能であり、かつ、前記車両を路肩に移動させて他車両の円滑な通行をも確保できる場合にのみ、前記禁止手段が前記覚醒手段により前記乗員の覚醒を行うことを禁止することができ、前記乗員保護装置の保安性をさらに高めることができる。
【0028】
さらに、前記乗員保護装置において、
前記操舵手段が制御する操舵装置が操舵側と転舵側とが機械的に接続されていないものであり、かつ、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記操舵手段が前記操舵装置の転舵力を制御することが好ましい。
【0029】
これによれば、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、つまりは、前記乗員を覚醒させることが好ましくない場合において、前記操舵手段により前記操舵装置の操舵側つまりは操舵輪が動作されて、前記乗員を覚醒させてしまうことをも防止することができる。
【0030】
すなわちここでも前記乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。
【0031】
なお、上述した本発明に係わる乗員保護装置は、車両を車線内に維持する車線維持装置、又は、先行車両又は前方障害物との距離に基づいて接近回避制御を行う接近回避装置、又は、車両の速度又は車両と先行車両との車間時間を制御する車両制御装置等と協調して制御を行い、前記禁止手段が前記覚醒手段による覚醒を禁止する場合には、前記乗員保護装置や前記車線維持装置又は前記接近回避装置による前記乗員への警報をも禁止して前記乗員を不意に覚醒させないことが好ましい。
【0032】
すなわち、前記乗員保護装置において、
前記前方撮像手段の撮像した前記車両の前方の画像において、前記車両が前記車線の中央から所定離隔距離だけ離隔した場合に、前記乗員に警報を行う第一警報手段を備えるとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記禁止手段が前記第一警報手段の警報を禁止することが好ましい。
【0033】
これによれば、前記車線維持装置を備える車両において、前記乗員保護装置を適用するにあたって、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合、つまりは、前記乗員を覚醒させることが好ましくない場合において、前記車線維持装置を備える前記第一警報手段による警報も前記禁止手段により禁止することができる。
【0034】
すなわち、前記乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。
【0035】
あるいは、前記乗員保護装置において、
車両と前方障害物との距離を検出する距離検出手段と、前記距離が第一距離未満となる場合に前記距離を増大させるように前記車両を制御して前記車両と前記障害物との接近を回避する回避手段と、前記距離が第一距離より大きい第二距離未満となる場合に、前記乗員に警報を行う第二警報手段とを備えるとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記禁止手段が前記第二警報手段の警報を禁止することが好ましい。
【0036】
これによれば、前記接近回避装置を備える車両において、前記乗員保護装置を適用するにあたっては、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合、つまりは、前記乗員を覚醒させることが好ましくない場合において、前記接近回避装置を備える前記第二警報手段による警報も前記禁止手段により禁止することができる。
【0037】
すなわちここでも、前記乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。
【0038】
あるいは、前記乗員保護装置において、
前記退避手段が、前記車両の速度又は前記車両と先行車両との車間時間を制御する制御手段と、前記車両を前記車線中央に維持する維持手段と、前記車両の経路及び位置と前記経路上の駐車領域を探索する探索手段を備えるとともに、前記車両の位置と前記経路上の駐車領域との位置関係に基づいて、前記判定手段が、前記退避手段が作動可能であると判定することが好ましい。
【0039】
これによれば、前記車両制御装置を備える車両において、前記乗員保護装置を適用する場合には、前記制御手段及び前記維持手段により前記駐車領域に前記車両を確実に退避させることができる場合にのみ、前記禁止手段が前記第二警報手段により前記乗員の覚醒を行うことを禁止することができ、前記乗員保護装置の保安性をさらに高めることができる。
【0040】
さらに、前記乗員保護装置において
前記車間時間が第三閾値未満となる場合に、前記乗員に警報を行う第三警報手段を備えるとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記禁止手段が前記第三警報手段の警報を禁止することが好ましい。
【0041】
これによれば、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記車両制御装置が備える前記第三警報手段による警報も前記禁止手段により禁止することができる。
【0042】
すなわちここでも、前記乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、より適切な乗員保護を行うことができる乗員保護装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0045】
図1は、本発明に係わる乗員保護装置の一実施形態を模式図である。図1に示すように、本発明に係わる乗員保護装置1は、車内カメラ2と、退避ECU3(Electronic Control Unit)と、ウェビング4と、リトラクタ5と、シートECU6と、シートアクチュエータ7と、シートバックアクチュエータ8と、前方カメラ9と、後方カメラ10と、エンジンECU11と、ブレーキECU12と、変速機ECU13と、EPSECU14(Electronic Power Steering Electronic Control Unit)と、EPS15(Electronic Power Steering)を備える。
【0046】
退避ECU3とシートECU6と、前方カメラ9と後方カメラ10とエンジンECU11とブレーキECU12と変速機ECU13とEPSECU14とはCAN(Controller Area Network)により相互に接続されている。
【0047】
車内カメラ2は、図示しない車両のフロントパネルに運転者の眼に指向するように設けられて、運転者の顔を含んで撮像して、撮像した画像情報を退避ECU3に出力するものである。
【0048】
退避ECU3は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う意識検出手段3aと、停止手段3bと、操舵手段3cと、判定手段3dと、禁止手段3eとを構成するものである。
【0049】
シートECU6も、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う調整手段6aと、移動手段6bと、起立手段6cとを構成するものである。
【0050】
エンジンECU11は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、図示しないエンジンのスロットル開度等を制御して、主にエンジンの回転数の制御を行って車両の加減速度の制御を行うものである。
【0051】
ブレーキECU12は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置を制御して車両の制動を行うものである。
【0052】
変速機ECU13は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースとから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、ここでは図示しない変速機の変速比のシフト制御を行うものである。
【0053】
EPSECU14は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、退避ECU3の操舵手段3cの操舵指令に基づいてEPS15の発生する転舵力を制御するものである。
【0054】
EPS15は、ステアバイワイヤ式のものであり、操舵輪すなわちステアリングホイールと転舵力を発生する電動モータを含む機構とが機械的に接続されていない形態のものであり、ステアリングホイールに入力された運転者の操舵力又は操舵手段3cの操舵指令に基づくEPSECU14の制御により電動モータを駆動して転舵力を発生する操舵装置を構成するものである。なお、ここでは運転者が図示しないステアリングホイールにより入力する力を操舵力、操舵装置が出力する力を転舵力として名称上区別している。
【0055】
退避ECU3の意識検出手段3aは、車内カメラ2の出力した画像情報を処理して車両の乗員の意識の向上又は低下を数値で示す項目として閉眼度Cを検出するとともに、閉眼度CをCAN通信によりシートECU6に送信する。
【0056】
ウェビング4は車両の座席すなわちシートに備えられるシートベルトを構成する帯状部材であって、シートに着座している乗員を、シートの背部すなわちシートバック及び座部に拘束するものであり、いわゆる三点式のものである。ウェビング4の一方端はリトラクタ5に巻き取られ、他方端は図示しないアウタースルーアンカに挿通されて車体又はシートに固定されており、ウェビング4の中間部にタングプレートがスルーアンカを介して備えられて、このタングプレートが車体側のバックルに係合される。
【0057】
リトラクタ5は、ウェビング4の一方端を乗員の意識が低下しておらず、閉眼度Cが第一閾値α以上である通常時においては、乗員を覚醒させない程度の巻き取り力F0で巻き取るスプールとスプールを回転させるモータとにより構成され、ウェビング4に張力F0を付与する張力付与手段を構成し、このモータはウェビング4の張力Fを検出する張力検出センサを内蔵している。なお、第一閾値αを意識が低下していると認められる閉眼度Cの値として予め実験的に求めて定める。これに伴い第一領域は、閉眼度Cが第一閾値α未満である領域として定められる。
【0058】
このリトラクタ5の巻き取り力F0はシートECU6の調整手段6aにより制御され、シートECU6の調整手段6aは閉眼度Cが第一閾値αより小さい第一領域内である場合に張力F0よりも第一増分ΔF1だけ大きな張力F0+ΔF1をウェビング4に付与するようにリトラクタ5の巻き取り力をF0+ΔF1とするようにリトラクタ5のモータを制御する。すなわちここでは、調整手段6aが、覚醒度Cが第一閾値αにより定められる第一領域内となる場合に乗員の覚醒を促す覚醒手段を構成する。
【0059】
さらに、閉眼度Cが第二閾値β未満となる第二領域内となる場合に、車両を退避させる退避手段として、退避ECU3は停止手段3bと操舵手段3cとを備える。なお、第二閾値βは意識がさらに低下して乗員が意識を失っている又は完全に眠っている状態であると認められる閉眼度Cの値として予め実験的に求めて定める。これに伴い、第二領域は閉眼度Cが第一閾値αより小さい第二閾値β未満である領域として定められる。
【0060】
退避ECU3の停止手段3bは、エンジンECU11にスロットル開度を小さくする指令を出力し、ブレーキECU12に制動指令を出力し、変速機ECU13にシフトダウン指令を出力して、車両を停止させる。また操舵手段3cは、EPSECU14に操舵指令を出力して、車両を路肩に移動させる。
【0061】
さらに、退避ECU3の判定手段3dは、退避手段を構成する停止手段3bと操舵手段3cが作動可能であるかを判定する。これとともに、退避ECU3の禁止手段3eは、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内となる場合であって、判定手段3dが退避手段を構成する停止手段3bと操舵手段3cは作動可能であると判定する場合に、調整手段6aによる張力をF0+ΔF1として乗員の覚醒を促すことを禁止する。
【0062】
さらに、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段つまりは停止手段3bと操舵手段3cは作動可能であると判定する場合に、シートECU6の調整手段6aは、リトラクタ5がウェビング4の付与する張力を第一増分ΔF1よりも小さい第二増分ΔF2だけ増加させる。
【0063】
また、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段つまりは停止手段3bと操舵手段3cは作動可能であると判定する場合には、シートECU6の移動手段6bは、シートと車体との間に設けられるシートアクチュエータ7を動作させてシートを車両後方に移動させる。なお、シートアクチュエータ7は車体に対するシートの前後方向の位置つまりはシート位置Xを検出する位置検出センサを内蔵しており、このシート位置Xが初期位置X0よりも前方である場合にシートを後方に移動させる。
【0064】
シートECU6の起立手段6cは、シートの背部であるシートバックと座部とのヒンジ部分に設けられるシートバックアクチュエータ8を動作させて、シートバックを起立させる。なおここでも、シートバックアクチュエータ8はシートの座部に対するシートバックの傾斜角度つまりはシートバック角度θを検出する角度検出センサを内蔵しており、このシートバック角度θが初期角度θ0よりも大きい場合に、つまりはシートバックが後方に傾斜されている状態からシートバックを起立させる。
【0065】
なお、退避ECU3の判定手段3dによる退避手段が作動可能であるかの判定は以下のように行う。すなわち、車両の前方を撮像する前方撮像手段を構成する前方カメラ9と、車両の後方を撮像する後方撮像手段を構成する後方カメラ10を備えて、前方カメラ9の撮像した画像情報及び後方カメラ10の撮像した画像情報をCAN通信により判定手段3dが取得し、これらの画像情報に基づいて、車両の前方において車両を停止手段3bが停止させるのに必要な停止距離が確保でき、車両の後方の所定距離以内に他の車両が位置していない場合であって、車両の前方において、車両を操舵手段3cが移動させることができる路肩が存在する場合に、判定手段3dは、退避手段すなわち停止手段3b及び操舵手段3cが作動可能であると判定する。
【0066】
また、ここでは、操舵手段3cがEPSECU14を介して制御する操舵装置であるEPS15が操舵側と転舵側とが機械的に接続されていないステアバイワイヤ式のものであるので、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合には、操舵手段3cがEPS15の転舵力を制御する。
【0067】
次に、本実施例1の乗員保護装置1の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図2は、本発明による乗員保護装置1の制御内容を示すフローチャートである。又、図3は図2のS6の制御内容を詳細に表現したサブルーチンを示すフローチャートである。
【0068】
S1において、前方カメラ9が撮像した前方の画像情報を退避ECU3が検出し、S2において後方カメラ9が撮像した後方の画像情報を退避ECU3が検出する。さらにS3において、車内カメラ2が撮像した乗員の眼を含む画像情報から退避ECU3の意識検出手段3aが閉眼度Cを検出する。
【0069】
つづいて、S4において、意識検出手段3aは閉眼度Cが第一閾値α未満であるかどうかを判定し、肯定である場合にはS5にすすみ、否定である場合にはS25にすすむ。S5において、意識検出手段3aは閉眼度Cが第二閾値β未満であるかどうかを判定し、肯定である場合にはS6にすすみ、否定である場合にはS19にすすむ。
【0070】
S25において、つまりは、図3に示すS51において、退避ECU3の判定手段3dは、前方カメラ9の撮像した画像情報に基づいて、退避させるのに必要な停止距離が確保できるかを判定し、肯定である場合にはS52にすすみ、否定である場合にはS55にすすんで作動可能でないと判定する。
【0071】
S52において、判定手段3dは後方カメラ10の撮像した画像情報に基づいて、車両の後方の所定距離以内に他の車両が位置していないかを判定し、肯定である場合にはS53にすすみ、否定である場合にはS55にすすんで作動可能でないと判定する。
【0072】
S53において、判定手段3dは前方カメラ9の撮像した画像情報に基づいて、車両の前方において車両を移動させることができる路肩が存在するかどうかを判定し、肯定である場合にはS54にすすみ、S54において作動可能であると判定し、否定である場合にはS55にすすんで作動可能でないと判定する。このようにしてS6において、退避手段が作動可能であるかどうかが判定され、肯定である場合にはS7にすすみ、否定である場合にはS19にすすむ。
【0073】
S7において、シートアクチュエータ7は内蔵する位置検出センサにより、車体に対するシートの前後方向の位置つまりはシート位置Xを検出してシートECU6に出力し、S8において、シートECU6の移動手段6bは、このシート位置Xが初期位置X0よりも前方であるかを判定し、肯定である場合には、S9にすすんで、シートECU6の移動手段6bはシートアクチュエータ7に移動指令を出力して、シートと車体との間に設けられるシートアクチュエータ7を動作させてシートを車両後方に移動させる。
【0074】
つづいて、S10において、シートバックアクチュエータ8は内蔵する角度検出センサにより、シートの座部に対するシートバックの傾斜角度つまりはシートバック角度θを検出してシートECU6に出力し、S11において、このシートバック角度θが初期角度θ0よりも大きいかどうかを判定し、肯定である場合にはS12にすすんで、起立手段6cはシートバックアクチュエータ8に起立指令を出力してシートバック角度θが初期角度θ0となるようにシートバックを起立させて、シートバックが後方に傾斜されている状態からシートバックを起立させる。
【0075】
つづいて、S13において、リトラクタ5の内蔵する張力検出センサがウェビング4の張力Fを検出してシートECU6に出力し、S14において、シートECU6の調整手段6aは、張力Fが、乗員を覚醒させない程度の通常時の張力F0に第二増分ΔF2を加えた値から制御ヒステリシスεを減じた値よりも小さいかどうかを判定し、肯定である場合にはS15にすすんで、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを増加させる。
【0076】
S14において否定である場合には、S16にすすみ、S16において、シートECU6の調整手段6aは、張力Fが、乗員を覚醒させない程度の通常時の張力F0に第二増分ΔF2を加えた値から制御ヒステリシスεを加えた値よりも大きいかどうかを判定し、肯定である場合にはS17にすすんで、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを減少させる。S16において否定である場合には、S18にすすみ、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを保持させる。S14〜S18の処理により、張力FはF0+ΔF2−ε<F<F0+ΔF2+εの範囲に調整される。この後、S31において、停止手段3b及び操舵手段3cにより車両を退避する。
【0077】
S5又はS6において否定である場合には、S19にすすみ、リトラクタ5の内蔵する張力検出センサがウェビング4の張力Fを検出してシートECU6に出力し、S20において、シートECU6の調整手段6aは、張力Fが、乗員を覚醒させない程度の通常時の張力F0に第一増分ΔF1を加えた値から制御ヒステリシスεを減じた値よりも小さいかどうかを判定し、肯定である場合にはS21にすすんで、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを増加させる。
【0078】
S20において否定である場合には、S22にすすみ、S22において、シートECU6の調整手段6aは、張力Fが、乗員を覚醒させない程度の通常時の張力F0に第一増分ΔF1を加えた値から制御ヒステリシスεを加えた値よりも大きいかどうかを判定し、肯定である場合にはS23にすすんで、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを減少させる。S22において否定である場合には、S24にすすみ、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを保持させる。S19〜S24の処理により、張力FはF0+ΔF1−ε<F<F0+ΔF1+εの範囲に調整される。
【0079】
S4において否定である場合には、S25にすすみ、リトラクタ5の内蔵する張力検出センサがウェビング4の張力Fを検出してシートECU6に出力し、S26において、シートECU6の調整手段6aは、張力Fが、乗員を覚醒させない程度の通常時の張力F0に制御ヒステリシスεを減じた値よりも小さいかどうかを判定し、肯定である場合にはS27にすすんで、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを増加させる。
【0080】
S26において否定である場合には、S28にすすみ、S28において、シートECU6の調整手段6aは、張力Fが、乗員を覚醒させない程度の通常時の張力F0に制御ヒステリシスεを加えた値よりも大きいかどうかを判定し、肯定である場合にはS29にすすんで、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを減少させる。S28において否定である場合には、S30にすすみ、調整手段6aはリトラクタ5のモータを制御して張力Fを保持させる。S25〜S30の処理により、張力FはF0−ε<F<F0+εの範囲に調整される。
【0081】
以上述べた本実施例1の乗員保護装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、閉眼度Cが第一閾値α未満であり第一領域内である場合には、乗員の意識が低下している場合であるので、覚醒手段つまりは調整手段6aにより張力Fを通常時の張力F0に対して第一増分ΔF1だけ増加させて、乗員にウェビング4により通常時よりも大きな拘束力を作用させて、乗員の意識が低下していて、乗員が疲労して注意力が低下している、又は、眠りかかっている場合において、乗員を覚醒させることができる。
【0082】
これとともに、閉眼度Cが第二閾値β未満であり第二領域内である場合には、意識の低下がさらにすすみ意識がない状態つまりは乗員が意識を失っている又は完全に眠っている状態であるので、判定手段3dにより退避手段を構成する停止手段3b及び操舵手段3cが作動可能であると判定される場合には、停止手段3b及び操舵手段3cにより車両を乗員の操作によらずに自動的に退避させる。
【0083】
これとともに、調整手段6aにより張力Fを第一増分ΔF1だけ増加させることを禁止手段3eにより禁止する。このことにより、乗員をあえて覚醒させないことができ、意識がない状態又は眠っている状態の乗員が不意に覚醒されることにより、乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止することができる。
【0084】
これらのことにより、乗員により安全な操作を促すとともに、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段を構成する停止手段3b及び操舵手段3cは作動可能であると判定する場合には、乗員を覚醒させることが好ましくない場合であるので、退避手段による退避を優先させて、より適切な乗員保護を行うことができる。
【0085】
さらに、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段を構成する停止手段3b及び操舵手段3cは作動可能であると判定する場合に、調整手段6aが、リトラクタ5がウェビング4に付与する張力Fを第一増分ΔF1よりも小さい第二増分ΔF2だけ増加させて、第二増分ΔF2だけ増加させた張力F0+ΔF2が乗員を覚醒させない程度のものとすることにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0086】
つまりは、閉眼度Cが第二閾値β未満であり第二領域内である場合に、退避手段により車両を乗員の操作によらずに自動的に退避させて、乗員をあえて覚醒させずに、意識がない状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止することを、既存のシートベルトを構成するウェビング4及びリトラクタ5、リトラクタ5を制御するシートECU6を用いて実現することができる。
【0087】
これとともに、乗員を通常時よりは大きい拘束力F0+ΔF2によりシートに拘束して乗員が車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムやフロントガラス等に過度に接近することを防止する効果を高めることができる。
【0088】
さらに、閉眼度Cが第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合に、移動手段6bによりシートを車両後方に移動させて、起立手段6cによりシートバックを起立させることにより、第二増分ΔF2だけ増加させた張力F0+ΔF2により乗員をシートに拘束する効果を、より高めることができる。
【0089】
これとともに、シートが車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムに意識が低下する前から接近しすぎて位置されていた場合でも、シートを車両後方に移動させることができるので、乗員が車両内部のインパネロアパネルやステアリングコラムやフロントガラス等に過度に接近することを防止する効果をより高めることができる。
【0090】
さらに、車両の前方において車両を停止手段3bが停止させるのに必要な停止距離が確保でき、車両の後方の所定距離以内に他の車両が位置していない場合に、判定手段3dが、退避手段が作動可能であると判定することにより、予め退避手段すなわち停止手段3b及び操舵手段3cが作動可能であって退避手段による退避が確実に実現可能である場合にのみ、禁止手段3eが調整手段6aによるウェビング4の張力の第一増分ΔF1の増加による乗員の覚醒を行うことを禁止することができ、乗員保護装置の保安性をより高めることができる。
【0091】
さらに、車両を道路の路肩に移動させる操舵手段3cを備えて、閉眼度Cが第二領域内となり、乗員が意識を失っている場合又は完全に眠っている場合において、車両を速やかに停止させるとともに、車両を前記路肩に移動させることができ、道路の他車両の円滑な通行をも配慮して確保した上で、乗員の保護をより適切に行うことができる。
【0092】
加えて、車両の前方において、車両を操舵手段3cが移動させることができる路肩が存在する場合に、判定手段3dが、退避手段が作動可能であると判定することにより、予め退避手段が作動可能であって退避手段による退避が確実に実現可能であることに加えて、、車両を路肩に移動させて他車両の円滑な通行をも確保できる場合にのみ、禁止手段3eが調整手段6aによる張力Fの第一増分ΔF1の増加により乗員の覚醒を行うことを禁止することができ、乗員保護装置の保安性をさらに高めることができる。
【0093】
さらに、本実施例1においては、操舵手段3cがEPSECU14を介して制御するEPS15を、操舵側と転舵側とが機械的に接続されていないステアバイワイヤ式のものとして、閉眼度Cが第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合に、操舵手段3cが操舵装置の転舵力を制御することとしているので、更に以下のような作用効果が得られる。
【0094】
つまり、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合に、つまりは、乗員を覚醒させることが好ましくない場合において、操舵手段3cによりEPS15の操舵側つまりはステアリングホイールが動作されて、ステアリングホイールが乗員に刺激を与えて乗員を覚醒させてしまうことをも防止することができる。すなわちここでも乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の乗員が不意に覚醒されることにより、乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。
【0095】
なお、上述した実施例1の乗員保護装置1は、車両を車線内に維持する車線維持装置、又は、先行車両又は前方障害物との距離に基づいて接近回避制御を行う接近回避装置と組み合わせた構成とすることができる。以下それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0096】
図4は、本発明に係わる乗員保護装置の一実施形態を模式図である。図4に示すように、本発明に係わる乗員保護装置31は、車内カメラ2と、退避ECU3と、ウェビング4と、リトラクタ5と、シートECU6と、シートアクチュエータ7と、シートバックアクチュエータ8と、前方カメラ9と、後方カメラ10と、エンジンECU11と、ブレーキECU12と、変速機ECU13と、EPSECU14と、EPS15と、LDWECU16(Lane Departure Warning Electronic Control Unit)と、ブザー17と、測距センサ18と、PCSECU19(Pre Crush Electronic Control Unit)を備える。
【0097】
退避ECU3とシートECU6と、前方カメラ9と後方カメラ10とエンジンECU11とブレーキECU12と変速機ECU13とEPSECU14と、LDWECU16と、ブザー17と、測距センサ18と、PSCECU19はCAN(Controller Area Network)により相互に接続されている。なお、実施例1に示した乗員保護装置1の構成要素と同一のものは、同一の符号を付して重複する説明は割愛する。
【0098】
LDWECU16は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行うものである。
【0099】
LDWECU16は、前方撮像手段を構成する前方カメラ9の撮像した車両の前方の画像において、車両が車線の中央から所定離隔距離だけ離隔した場合に、ブザー17を鳴動させて乗員に警報を行う第一警報手段を構成する。加えて、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、退避ECU3の判定手段3dが退避手段つまり停止手段3b及び操舵手段3cは作動可能であると判定する場合に、退避ECU3の禁止手段3eがLDWECU16の警報を禁止する。なお、LDWECU16は乗員の図示しない選択スイッチの操作により作動許可がされている場合にのみ機能するものである。
【0100】
PCSECU19は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う回避手段19aと第二警報手段19bを構成するものである。
【0101】
PCSECU19の回避手段19aは、車両と前方障害物との距離を検出する距離検出手段を構成する測距センサ18から車両と前方障害物との距離を取得し、この距離が第一距離未満となる場合に距離を増大させるように、エンジンECU11にスロットル開度を小さくする指令を出力し、ブレーキECU12に制動指令を出力し、変速機ECU13にシフトダウン指令を出力して、これにより、車両を制御して車両と障害物との接近を回避する。なお、PCSECU19も乗員の図示しない選択スイッチの操作により作動許可がされている場合にのみ機能するものである。
【0102】
PCSECU19の第二警報手段19bは、距離が第一距離より大きい第二距離未満となる場合に、ブザー17を鳴動させて乗員に警報を行う。退避ECU3の禁止手段3eは、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合に、第二警報手段19bの警報を禁止する。
【0103】
次に、本実施例2の乗員保護装置31の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図5は、本発明による乗員保護装置1の制御内容を示すフローチャートである。又、図6は図5のS32の制御内容を詳細に表現したサブルーチンを示すフローチャートである。
【0104】
図5に示すフローチャートは、S1からS31までの処理内容は同様であるため重複する説明は割愛する。本実施例2においては、S31の退避処理が行われた後、S32においてその他の警報を、退避ECU3の禁止手段3eが禁止する。
【0105】
すなわち、図6に示すように、S61において、退避ECU3の禁止手段3eはCAN上において、LDWECU16が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S62にすすんで、LDWECU16によるブザー17の鳴動つまりは警報を禁止する。
【0106】
さらに、S63において、退避ECU3の禁止手段3eはCAN上において、PCSECU19が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S64にすすんで、PCSECU19によるブザー17の鳴動つまりは警報を禁止する。
【0107】
以上述べた本実施例21の乗員保護装置31によれば、実施例1に示した乗員保護装置1の作用効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合であり、乗員を覚醒させることが好ましくない場合においては、LDWECU16つまりは第一警報手段による警報も禁止することができる。同様に、PCSECU19つまりは第二警報手段による警報も禁止することができる。
【0108】
すなわち、乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の乗員が不意に覚醒されることにより、前記乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。
【0109】
なお、上述した実施例2の乗員保護装置41は、車両の速度又は車両と先行車両との車間時間を制御する車両制御装置及びカーナビゲーション装置と組み合わせて構成することもできる。以下それについての実施例3について述べる。
【実施例3】
【0110】
図7は、本発明に係わる乗員保護装置の一実施形態を模式図である。図7に示すように、本発明に係わる乗員保護装置41は、車内カメラ2と、退避ECU3と、ウェビング4と、リトラクタ5と、シートECU6と、シートアクチュエータ7と、シートバックアクチュエータ8と、前方カメラ9と、後方カメラ10と、エンジンECU11と、ブレーキECU12と、変速機ECU13と、EPSECU14と、EPS15と、LKAECU26(Lane Keep Assist Electronic Control Unit)と、ブザー17と、測距センサ18と、PCSECU19と、ACCECU20(Adaptive Cruise Control Electronic Control Unit)と、カーナビゲーションECU21(Car Navigation Electronic Control Unit)とを備える。
【0111】
退避ECU3とシートECU6と、前方カメラ9と後方カメラ10とエンジンECU11とブレーキECU12と変速機ECU13とEPSECU14と、LKAECU26と、ブザー17と、測距センサ18と、PSCECU19はCAN(Controller Area Network)により相互に接続されている。カーナビゲーションECU21には、GPSアンテナ22と、ヨーレートセンサ23と、受信機24と、データベース25と、ディスプレイ26とが接続される。なお、実施例1に示した乗員保護装置1の構成要素と同一のものは、同一の符号を付して重複する説明は割愛する。
【0112】
LKAECU26は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う前方情報検出手段16aと、とものである。
【0113】
LDWECU26は、前方撮像手段を構成する前方カメラ9の撮像した車両の前方の画像において、車両が車線の中央から所定離隔距離だけ離隔した場合に、ブザー17を鳴動させて乗員に警報を行う第一警報手段26aと、EPSECU14に操舵指令を出力して車両を車線中央に維持する維持手段26bを構成する。
【0114】
加えて、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、退避ECU3の判定手段3dが退避手段つまり停止手段3b及び操舵手段3cは作動可能であると判定する場合に、退避ECU3の禁止手段3eがLKAECU26の第一警報手段26aの警報を禁止する。なお、LKAECU26は乗員の図示しない選択スイッチの操作により作動許可がされている場合にのみ機能するものである。
【0115】
ACCECU20は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う制御手段20aと、第三警報手段20bとを構成するものである。
【0116】
ACCECU20の制御手段20aは、CANを介してブレーキECU12から車両の車速を検出し、測距センサ18の検出した車両と先行車両との車間距離を車速で除した車間時間を検出して、車両の速度又は車両と先行車両との車間時間のいずれかを乗員が選択した設定値となるように制御する。なお、ACCECULKAECU26は乗員の図示しない選択スイッチの操作により作動許可がされている場合にのみ機能するものである。
【0117】
さらに、ACCECU20の第三警報手段20bは、車間時間が第三閾値未満となる場合に、ブザー17を鳴動させて乗員に警報を行う。これとともに、閉眼度Cが第二閾値β未満つまり第二領域内であって、退避ECU3の判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合に、禁止手段3eがACCECU20の第三警報手段20bの警報を禁止する。
【0118】
カーナビゲーションECU21は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行う探索手段21a、表示手段21bとして機能するものである。
【0119】
カーナビゲーションECU21の探索手段21aは、GPSアンテナ22の受信した電波をもとに、例えば三角測量の原理で車両の位置する現在位置つまりは経度と緯度を測定する。なお、経度と緯度に加え高度も測定する場合には四個の衛星を用いる。加えて、カーナビゲーションECU21の探索手段21aはブレーキECU11から車両の車速を、CANを介して取得している。
【0120】
加えて、カーナビゲーションECU21の探索手段21aは、GPSアンテナ22が衛星から電波を受信できない場合においては、ブレーキECU11から取得した車両の車速とヨーレートセンサ23が検出したヨーレート、EPSECU14から取得した操舵角をもとにして、車両の移動距離と方向を計算して車両の現在位置を自律航法により測定する。
【0121】
カーナビゲーションECU21の探索手段21aは、このようにして測定した現在位置と、タッチパネルすなわちディスプレイ26により運転者が入力した目的地とを結ぶ予定経路を、データベース25内の探索用の地図情報を用いてダイクストラ法等の手法により探索する。また、探索手段21aは経路上に自動車専用道路が存在する場合には、サービスエリアすなわち駐車領域が自動車専用道路に存在するかどうかを探索用の地図情報から探索する。さらにカーナビゲーションECU21の探索手段21aは、受信機24によりVICSから受信した道路情報から、渋滞情報等の前方の道路情報を取得する。
【0122】
そして、カーナビゲーションECU21の表示手段21bは、データベース25内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した車両の位置する現在位置と、タッチパネルすなわちディスプレイ26により入力された目的地と、探索手段21aにより探索された現在位置から目的地に到る予定経路とを併せてディスプレイ26に表示する。
【0123】
本実施例3の乗員保護装置41において、車両が自動車専用道路を走行している場合には、LKAECU26が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態であり、ACCECU20がこれも乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態であり、この自動車専用道路の前方にサービスエリアすなわち駐車領域が存在する場合には、車両を退避させる退避手段は、LKAECU26及びACCECU20により構成することができる。この場合においては、退避ECU3の停止手段3bと操舵手段3cを機能させずに、LKAECU26及びACCECU20の機能を優先させて、退避手段を構成する。
【0124】
この場合において、退避ECU3の判定手段3dは、LKAECU26及びACCECU20が、作動許可がされている状態であるかをCAN上で検出し、カーナビゲーションECU21から、サービスエリアすなわち駐車領域が自動車専用道路の前方に位置しているかを検出し、LKAECU26及びACCECU21の双方において作動許可がされている状態で、自動車専用道路の前方にサービスエリアすなわち駐車領域が存在している場合に、退避手段が作動可能であると判定する。
【0125】
次に、本実施例3の乗員保護装置41の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。メインとなるフローチャートは図5に示したものと同じであり、図8は図5のS6の制御内容を詳細に表現したサブルーチンを示すフローチャートであり、図9は図5のS32の制御内容を詳細に表現したサブルーチンを示すフローチャートである。
【0126】
図8に示すように、S71において、退避ECU3の判定手段3dはCAN上において、LKAECU26が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S72にすすんで、否定である場合にはS75にすすみ、S75において退避手段が作動可能でないと判定する。
【0127】
S72において、退避ECU3の判定手段3dはCAN上において、ACCECU20が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S73にすすんで、否定である場合にはS75にすすみ、S75において退避手段が作動可能でないと判定する。
【0128】
S73において、退避ECU3の判定手段3dはCAN通信によりカーナビゲーションECU21の探索手段21aから取得した情報に基づいて、自動車専用道路の前方にサービスエリアが存在するかどうかを判定し、肯定である場合には、S74にすすんで、退避手段が作動可能であると判定し、否定である場合にはS75にすすみ、S75において退避手段が作動可能でないと判定する。
【0129】
加えて、図9に示すように、S81において、退避ECU3の禁止手段3eはCAN上において、LKAECU26が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S82にすすんで、LKAECU26によるブザー17の鳴動つまりは警報を禁止する。
【0130】
さらに、S83において、退避ECU3の禁止手段3eはCAN上において、PCSECU19が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S84にすすんで、PCSECU19によるブザー17の鳴動つまりは警報を禁止する。
【0131】
さらに、S85において、退避ECU3の禁止手段3eはCAN上において、LKAECU20が乗員の選択スイッチの操作により作動許可がされている状態かどうかを判定し、肯定である場合には、S86にすすんで、ACCECU20によるブザー17の鳴動つまりは警報を禁止する。
【0132】
以上述べた本実施例3の乗員保護装置41によれば、実施例2に示した乗員保護装置31の作用効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、閉眼度Cが第二領域内であって、判定手段3dが退避手段は作動可能であると判定する場合に、ACCECU20の第三警報手段20bによる警報も禁止手段3eにより禁止することができる。
【0133】
すなわちここでも、乗員をあえて覚醒させずに、意識を失っている状態又は眠っている状態の前記乗員が不意に覚醒されることにより、乗員が意図しない操作を行ってしまうことを防止する効果をより高めることができる。これに加えて、車両が自動車専用道路を走行している場合には、退避手段をLKAECU26及びACCECU20とすることにより、車両を最寄りのサービスエリアすなわち駐車領域まで自動的に誘導して退避させることができ、車両の乗員の安全を確保すると共に、車両を自動車専用道路の路肩に停止させることがないので、他の車両の円滑な走行を確保することができる。
【0134】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0135】
例えば、上述した実施例1〜3では、リトラクタ5がモータにより通常時の張力F0を付与するタイプのものとしたが、張力F0をスプリングにより付与し、第一増分ΔF1及び第二増分ΔF2をモータにより付与するものとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、車両用の乗員保護装置に関するものであり、より適切な乗員保護を行うことができる乗員保護装置を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る乗員保護装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0138】
1 乗員保護装置
2 車内カメラ
3 退避ECU
4 ウェビング
5 リトラクタ
6 シートECU
7 シートアクチュエータ
8 シートバックアクチュエータ
9 前方カメラ
10 後方カメラ
11 エンジンECU
12 ブレーキECU
13 変速機ECU
14 EPSECU
15 EPS
31 乗員保護装置
16 LDWECU
17 ブザー
18 測距センサ
19 PCSECU
41 乗員保護装置
26 LKAECU
20 ACCECU
21 カーナビゲーションECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の意識の向上又は低下を数値で示す項目を検出する意識検出手段と、前記項目が第一閾値により定められる第一領域内となる場合に、前記乗員の覚醒を促す覚醒手段と、前記項目が第二閾値により定められる第二領域内となる場合に、前記車両を退避させる退避手段と、前記退避手段が作動可能であるかを判定する判定手段を備えるとともに、前記項目が前記第二領域内となる場合であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記覚醒手段による覚醒を禁止する禁止手段を備えることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記乗員を座席に拘束する帯状部材と、前記帯状部材に張力を付与する張力付与手段と、前記項目が前記第一領域内である場合に、前記張力付与手段の付与する張力を第一増分だけ増加させる調整手段を備え、当該調整手段が前記覚醒手段を構成することを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記調整手段が、前記張力付与手段の付与する張力を第一増分よりも小さい第二増分だけ増加させることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記座席を車両後方に移動させる移動手段と、前記座席の背部を起立させる起立手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記退避手段が、前記車両を停止させる停止手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記車両の前方を撮像する前方撮像手段と、前記車両の後方を撮像する後方撮像手段を備えるとともに、前記車両の前方において前記車両を前記停止手段が停止させるのに必要な停止距離が確保でき、前記車両の後方の所定距離以内に他の車両が位置していない場合に、前記判定手段が、前記退避手段が作動可能であると判定することを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記退避手段が、前記車両を道路の路肩に移動させる操舵手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記車両の前方において、前記車両を前記操舵手段が移動させることができる前記路肩が存在する場合に、前記判定手段が、前記退避手段が作動可能であると判定することを特徴とする請求項7に記載の乗員保護装置。
【請求項9】
前記操舵手段が制御する操舵装置が操舵側と転舵側とが機械的に接続されていないものであり、かつ、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記操舵手段が前記操舵装置の転舵力を制御することを特徴とする請求項7又は8に記載の乗員保護装置。
【請求項10】
前記前方撮像手段の撮像した前記車両の前方の画像において、前記車両が前記車線の中央から所定離隔距離だけ離隔した場合に、前記乗員に警報を行う第一警報手段を備えるとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記禁止手段が前記第一警報手段の警報を禁止することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の乗員保護装置。
【請求項11】
車両と前方障害物との距離を検出する距離検出手段と、前記距離が第一距離未満となる場合に前記距離を増大させるように前記車両を制御して前記車両と前記障害物との接近を回避する回避手段と、前記距離が第一距離より大きい第二距離未満となる場合に、前記乗員に警報を行う第二警報手段とを備えるとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記禁止手段が前記第二警報手段の警報を禁止することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の乗員保護装置。
【請求項12】
前記退避手段が、前記車両の速度又は前記車両と先行車両との車間時間を制御する制御手段と、前記車両を前記車線中央に維持する維持手段と、前記車両の経路及び位置と前記経路上の駐車領域を探索する探索手段を備えるとともに、前記車両の位置と前記経路上の駐車領域との位置関係に基づいて、前記判定手段が、前記退避手段が作動可能であると判定することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の乗員保護装置。
【請求項13】
前記車間時間が第三閾値未満となる場合に、前記乗員に警報を行う第三警報手段を備えるとともに、前記項目が前記第二領域内であって、前記判定手段が前記退避手段は作動可能であると判定する場合に、前記禁止手段が前記第三警報手段の警報を禁止することを特徴とする請求項12に記載の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−301492(P2009−301492A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158142(P2008−158142)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】