説明

半導体基板、半導体結晶成長用基板、半導体装置、光半導体装置およびそれらの製造方法

【課題】 基板の反り、クラックの発生を効果的に抑制することができるとともに、半導体層各面における剥がれを防止することができる半導体基板、半導体結晶成長用基板、半導体装置、光半導体装置およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板(100)は、基板(1)の一面上に成長した半導体結晶層(2)と、基板(1)の他面および側面に形成され、半導体結晶層(2)が基板(1)に付与する応力と同じ方向に基板(1)に応力を付与する応力緩和層(3)とを備えることを特徴とする。この場合、半導体結晶層(2)の基板(1)に対する応力が相殺される。それにより、半導体基板(100)の反りおよびクラックの発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、半導体結晶成長用基板、半導体装置、光半導体装置およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を用いた半導体装置は、高周波かつ高出力で動作するパワー素子として用いられている。この半導体装置においては、半導体結晶層の成長基板としてサファイア基板等が用いられている。しかしながら、成長基板の格子定数および熱膨張係数と半導体結晶層の格子定数および熱膨張係数との間には、大きな格差が存在する。それにより、半導体装置全体が反ったり、クラックが発生する等して歩留まりが低下するおそれがあった。
【0003】
そこで、成長基板の裏面側に応力相殺層を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、応力相殺層によって成長基板の反り、クラックの発生を抑制することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−113000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、特許文献1の技術では、成長基板と半導体結晶層との界面における剥がれまたは成長基板および半導体結晶層の前後の半導体層各面における界面における剥がれを効果的に抑制することができないことを発見した。
【0006】
本発明は、基板の反り、クラックの発生を効果的に抑制することができるとともに、半導体層各面における剥がれを防止することができる半導体基板、半導体結晶成長用基板、半導体装置、光半導体装置およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体基板は、基板の一面上に成長した半導体結晶層と、基板の他面およびこれに連続して基板の側面に形成され、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る半導体基板においては、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から基板に対して応力が付与される。この場合、半導体結晶層の基板に対する応力が相殺される。それにより、本発明に係る半導体基板の反りおよびクラックの発生が抑制される。したがって、リソグラフィ等により半導体基板上に素子パターンを形成する際に半導体基板全体の露光の寸法のバラツキが生じることが防止される。その結果、本発明に係る半導体基板上に高詳細な素子パターンを形成することができる。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0009】
また、応力緩和層が基板の側面および半導体結晶層の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。さらに、基板と半導体結晶層との界面における剥がれを効果的に防止することができる。したがって、半導体基板を用いて半導体装置を製造する際の歩留まりが大幅に向上する。
【0010】
半導体結晶層は、GaN系半導体層であってもよい。また、基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。さらに、応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであってもよい。
【0011】
本発明に係る半導体基板の製造方法は、基板の一面上に半導体結晶層を成長させる工程と、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層を基板の他面およびこれに連続して基板の側面に形成するステップとを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る半導体基板の製造方法においては、基板の一面上に半導体結晶層が成長され、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層が基板の他面および側面に形成される。この場合、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から基板に対して応力がかかる。それにより、本発明に係る半導体基板の反りおよびクラックの発生が抑制される。したがって、リソグラフィ等により半導体基板上に素子パターンを形成する際に基板全体の露光の寸法のバラツキが生じることを防止することができる。その結果、本発明に係る半導体基板上に高詳細な素子パターンを形成することができる。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0013】
また、応力緩和層が基板の側面および半導体結晶層の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。さらに、基板と半導体結晶層との界面における剥がれを効果的に防止することができる。したがって、本発明に係る半導体基板を用いて半導体装置を製造する際の歩留まりが大幅に向上する。
【0014】
半導体結晶層は、GaN系半導体層であってもよい。基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであってもよい。
【0015】
本発明に係る半導体結晶成長用基板は、一面上に半導体結晶層が成長されるべき、半導体結晶成長用基板の他面およびこれに連続して半導体結晶成長用基板の側面に形成され、半導体結晶層が半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に半導体結晶成長用基板に応力を付与する応力緩和層を備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係る半導体結晶成長用基板においては、半導体結晶層が半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から半導体結晶成長用基板に対して応力が付与される。この場合、半導体結晶層の半導体結晶成長用基板に対する応力が相殺される。それにより、本発明に係る半導体結晶成長用基板を用いた半導体基板の反りが抑制される。したがって、リソグラフィ等により半導体結晶層上に素子パターンを形成する際に半導体基板全体の露光の寸法のバラツキが生じることが防止される。また、応力緩和層が基板の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。さらに、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0017】
半導体結晶層は、GaN系半導体層であってもよい。基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであってもよい。
【0018】
本発明に係る半導体結晶成長用基板の製造方法は、一面上に半導体結晶層が成長されるべき、半導体結晶成長用基板の他面およびこれに連続して半導体結晶成長用基板の側面に形成され、半導体結晶層が半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に半導体結晶成長用基板に応力を付与する応力緩和層を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る半導体結晶成長用基板の製造方法においては、一面上に半導体結晶層が成長されるべき、半導体結晶成長用基板の他面および側面に、半導体結晶層が半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に半導体結晶成長用基板に応力を付与する応力緩和層が形成される。この場合、半導体結晶層が半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から半導体結晶成長用基板に対して応力が付与される。それにより、本発明に係る半導体結晶成長用基板を用いた半導体基板の反りが抑制される。したがって、リソグラフィ等により半導体結晶層上に素子パターンを形成する際に半導体基板全体の露光の寸法のバラツキが生じることが防止される。また、応力緩和層が基板の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0020】
半導体結晶層は、GaN系半導体層であってもよい。基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであってもよい。
【0021】
本発明に係る半導体装置は、基板の一面上に設けられた電界効果型トランジスタの動作層となる半導体結晶層と、チップに分割された基板の他面およびこれに連続して基板の側面に設けられ、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る半導体装置においては、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から基板に対して応力が付与される。この場合、半導体結晶層の基板に対する応力が相殺される。それにより、本発明に係る半導体装置の反りおよびクラックの発生が抑制される。また、応力緩和層が基板の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。また、半導体装置の反りが抑制できると、半導体結晶層の電子状態の変化を抑制することができる。それにより、本発明に係る半導体装置の特性が向上し、所望の特性が実現される。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0023】
半導体結晶層は、GaN系半導体層であってもよい。基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであってもよい。
【0024】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、一面上に電界効果型トランジスタの動作層となる半導体結晶層が設けられる基板の他面と基板がチップに分割された際に側面をなす領域とに、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る半導体装置の製造方法においては、一面上に電界効果型トランジスタの動作層となる半導体結晶層が設けられる基板の他面と基板がチップに分割された際に側面をなす領域とに、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層が形成される。この場合、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から基板に対して応力がかかる。それにより、本発明に係る半導体装置の反りおよびクラックの発生が抑制される。また、応力緩和層が基板の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。また、半導体装置の反りが抑制できると、半導体結晶層の電子状態の変化を抑制することができる。それにより、本発明に係る半導体装置の特性が向上し、所望の特性が実現される。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0026】
基板の他面に溝が形成されおり、応力緩和層は、基板の他面および溝の内壁に設けられていてもよい。この場合、チップに分割された際に半導体装置の側面をなす領域への応力緩和層の形成が容易になる。また、半導体装置は、基板の他面から溝に到達する切断を実施することで、チップに分割されてもよい。さらに、基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。
【0027】
本発明に係る光半導体装置は、基板の一面上に設けられ、かつ、活性層およびこれを上下で挟むクラッド層を含む半導体結晶層と、チップに分割された基板の他面およびこれに連続して基板の側面に設けられ、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層とを備えることを特徴とするものである。
【0028】
本発明に係る光半導体装置においては、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から基板に対して応力が付与される。この場合、半導体結晶層の基板に対する応力が相殺される。それにより、本発明に係る光半導体装置の反りおよびクラックの発生が抑制される。また、応力緩和層が基板の側面にまで形成されていることから、光半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。また、本発明に係る光半導体装置は、反りが抑制されると、共振器として高い精度を有する。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0029】
半導体結晶層は、GaN系半導体層であってもよい。基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであってもよい。
【0030】
本発明に係る光半導体装置の製造方法は、一面上に活性層およびこれを上下で挟むクラッド層を含む半導体結晶層が設けられる基板の他面と基板がチップに分割された際に側面をなす領域とに、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0031】
本発明に係る光半導体装置の製造方法においては、一面上に活性層およびこれを上下で挟むクラッド層を含む半導体結晶層が設けられる基板の他面と基板がチップに分割された際に側面をなす領域とに、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に基板に応力を付与する応力緩和層が形成される。この場合、半導体結晶層が基板に付与する応力と同じ方向に、応力緩和層から基板に対して応力がかかる。それにより、本発明に係る光半導体装置の反りおよびクラックの発生が抑制される。また、応力緩和層が基板の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層の基板に対する応力をより効果的に抑制することができる。さらに、本発明に係る光半導体装置は、反りが抑制されると、共振器として高い精度を有する。また、半導体結晶層の剥がれの発生が抑制される。
【0032】
基板の他面に溝が形成されおり、応力緩和層は、基板の他面および溝の内壁に設けられてもよい。この場合、チップに分割された際に光半導体装置の側面をなす領域への応力緩和層の形成が容易になる。光半導体装置は、基板の他面から前記溝に到達する切断を実施することで、チップに分割されてもよい。基板は、GaN,SiCまたはサファイアであってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、半導体結晶層によって基板の面方向に付与される応力と同じ応力が基板の反対面に付与されるため、半導体結晶層の基板に対する応力が相殺される。それにより、本発明に係る半導体基板の反りおよびクラックの発生が抑制される。
【0034】
また、この応力を付与する応力緩和層は、自らその応力によって基板から剥がれないように本発明では基板の側面にまで延在して設けられている。これにより、本発明は有効に基板の反りを解決する。したがって、リソグラフィ等により半導体ウェハ上に素子パターンを形成する際にウェハ全体の露光の寸法のバラツキが生じることが防止される。これにより、本発明に係る半導体ウェハ上に高詳細な素子パターンを形成することができる。また、本発明に係る半導体ウェハを用いて半導体装置を製造する際の歩留まりが向上する。
【0035】
さらに、FETに本発明を適用すると、基板の反りに基づくFETの内部の電気特性の変化、またそれに基づくFETの特性の変化を防止することができる。また、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)に本発明を適用すると、反りに基づく共振器の歪みを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0037】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る半導体基板100の模式的断面図である。図1に示すように、半導体基板100は、成長基板1、半導体結晶層2、応力緩和層3を備える。成長基板1は、基板として半導体ウェハの基板として機能するものであり、GaN,SiC,サファイア等の基板からなる。
【0038】
成長基板1上には半導体結晶層2が形成されている。半導体結晶層2は、GaN系半導体等からなる。半導体基板100をGaN系HEMTに用いる場合には、半導体結晶層2は、成長基板1側からGaN系半導体層、GaN層、AlGaN層およびGaN系半導体層が順に積層された構造を有する。
【0039】
成長基板1の下面、成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面には、応力緩和層3が形成されている。応力緩和層3は、成長基板1の下面から成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面にかけて連続して形成されていることが好ましい。応力緩和層3は、SiN等の絶縁膜、WSi,TiW,TiN等のメタル膜、GaN等の半導体膜等から形成される。
【0040】
成長基板1および半導体結晶層2のそれぞれは、異なる材料から形成されている。それにより、成長基板1の格子定数および熱膨張係数と半導体結晶層2の格子定数および熱膨張係数との間には格差が存在する。また、成長基板1と半導体結晶層2とが同じ材料から形成されている場合においても、成長基板1上に半導体結晶層2を形成する際に格子定数、熱膨張係数等に格差が生じる。以上のことから、成長基板1に対して半導体結晶層2が引張方向または圧縮方向に応力を有するようになる。特に、GaN系HEMTに用いる半導体基板100においては、半導体結晶層2は成長基板1に対して引張方向に応力を有する。
【0041】
本実施の形態に係る応力緩和層3は、半導体結晶層2が成長基板1に対して有する応力と同じ方向に成長基板1に対して応力を有する。それにより、半導体結晶層2の成長基板1に対する引張応力または圧縮応力が相殺される。したがって、半導体基板100の反り、クラックの発生が抑制される。その結果、リソグラフィ等により半導体基板100上に素子パターンを形成する際にウェハ全体の露光の寸法のバラツキをなくすことができる。以上のことから、半導体基板100上に高詳細な素子パターンを形成することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る半導体基板100においては、応力緩和層3が成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層2の成長基板1に対する応力をより効果的に相殺することができる。さらに、応力緩和層3によって成長基板1と半導体結晶層2とが固定されることから、成長基板1と半導体結晶層2との界面における剥がれを効果的に防止することができる。したがって、半導体基板100を用いて半導体装置を製造する際の歩留まりが大幅に向上する。
【0043】
なお、応力緩和層3の応力は、応力緩和層3の膜厚に比例することから、応力緩和層3の膜厚を適宜制御することにより任意の応力を成長基板1に付与することができる。
【0044】
また、半導体結晶層2の成長基板1に対する応力方向に応じて、応力緩和層3を構成する材料を適宜選択することができる。それにより、半導体基板100の反り、クラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0045】
以下に、応力緩和層3として用いることができる材料とその膜厚を表1に示す。表1に示すように、応力緩和層3として、SiO,Au,WSi,SiON,SiN,TiW,NiCr,Ni,Ti等を用いることができる。これらの各材料は成長基板1に対して引張方向に応力が働く。
【0046】
【表1】

【0047】
また、半導体基板100の反り量が5μm以下になるような応力緩和層3の膜厚の範囲を表1に示す。この場合、成長基板1はSiC、サファイア、GaN等からなる。また、半導体結晶層2は、Al,Ga,In,N等から構成される。ここで、反り量とは、図2に示すように、凸面が上方になる状態の半導体ウェハの高さから半導体ウェハの中心部分の膜厚を差し引いた値のことをいう。
【0048】
図3は、半導体基板100の反り量を5μm以下に制限する場合における応力緩和層3の応力と膜厚との関係を示す図である。図3の縦軸は応力緩和層3の膜厚を示し、図3の横軸は応力緩和層3の応力を示す。図3に示すように、応力緩和層3の応力が大きくなるにつれて応力緩和層3の膜厚は小さくなる。以上のように、成長基板1および半導体結晶層2の材料、径、膜厚等に応じて応力緩和層3を構成する材料、膜厚等を適宜選択することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、成長基板1および半導体結晶層2の側面まで形成された応力緩和層3により、半導体基板100の反り量を有効に制限できる。それにより、例えば、電極形成のために実施されるリソグラフィ工程におけるパターンの歪みを抑制することができる。したがって、高精度のパターニングが可能になる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面全体に応力緩和層3が形成されているが、成長基板1の側面のみまたは成長基板1および半導体結晶層2の側面の一部に応力緩和層2が形成されていても半導体基板100の反り量は有効に低減される。それにより、半導体結晶層2の剥がれが防止できる。
【0051】
次に、図1の半導体基板100の製造方法について説明する。図4は、半導体基板100の製造方法について説明するためのフロー図である。まず、図4(a)に示すように、成長基板1を準備する。
【0052】
次に、図4(b)に示すように、MOCVD法により成長基板1上に半導体結晶層2をエピタキシャル成長させる。半導体結晶層2は、半導体基板100をGaN系HEMTに用いる場合には、成長基板1側からGaN系半導体層、GaN層、AlGaN層およびGaN系半導体層を順に積層させることによって形成される。
【0053】
次いで、図4(c)に示すように、成長基板1の下面、成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面とを覆う応力緩和層3を形成する。応力緩和層3は、SiN、メタル、GaN等から形成される。応力緩和層3としてSiNを用いる場合には、スパッタリングまたはCVD法により応力緩和層3を形成することができる。
【0054】
応力緩和層3としてメタルを用いる場合には、スパッタリングまたは真空蒸着法により応力緩和層3を形成することができる。応力緩和層3としてGaNを用いる場合には、MOVPE(有機金属気相成長法)により応力緩和層3を形成することができる。なお、応力緩和層3としてその他の材料を用いる場合には、その材料に応じた方法により応力緩和層3を形成することができる。以上の工程により、半導体基板100が完成する。
【0055】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態においては成長基板1上に半導体結晶層2を形成した後に応力緩和層3を設けているが、あらかじめ応力を成長基板1に付与することにより、後に半導体結晶層2を成長させた場合にトータルで反り量を低減することも可能である。すなわち、本発明は、半導体結晶層2を成長させる前にあらかじめ反対の応力を付与した半導体結晶成長用基板においても、その効果を発揮できるものである。
【0056】
図5は、第2の実施の形態に係る半導体結晶成長用基板200の模式的断面図である。図5に示すように、半導体結晶成長用基板200は、成長基板201および応力緩和層202を備える。成長基板201は、図1の成長基板1と同様のものを用いることができる。成長基板201の下面および側面には、応力緩和層202が形成されている。応力緩和層202は、図1の応力緩和層3と同様のものを用いることができる。応力緩和層202は、成長基板201の下面から成長基板201の側面にかけて連続して形成されていることが好ましい。
【0057】
本実施の形態に係る応力緩和層202は、成長基板201上に形成されるべき半導体結晶層が成長基板201に対して有する応力と同じ方向に成長基板2011に対して応力を有する。それにより、半導体結晶層の成長基板201に対する引張応力または圧縮応力が相殺される。したがって、半導体結晶層を形成後の半導体結晶成長用基板200の反り、クラックの発生が抑制される。その結果、半導体結晶層の剥がれも防止される。
【0058】
次に、半導体結晶成長用基板200の製造方法について説明する。図6は、半導体結晶成長用基板200の製造方法について説明するためのフロー図である。まず、図6(a)に示すように、成長基板1を準備する。
【0059】
次に、図6(b)に示すように、成長基板1の下面および側面とを覆う応力緩和層202を形成する。応力緩和層202は、SiN、メタル、GaN等から形成される。応力緩和層202としてSiNを用いる場合には、スパッタリングまたはCVD法により応力緩和層202を形成することができる。
【0060】
応力緩和層202としてメタルを用いる場合には、スパッタリングまたは真空蒸着法により応力緩和層202を形成することができる。応力緩和層202としてGaNを用いる場合には、MOVPE(有機金属気相成長法)により応力緩和層202を形成することができる。なお、応力緩和層202としてその他の材料を用いる場合には、その材料に応じた方法により応力緩和層202を形成することができる。以上の工程により、半導体結晶成長用基板200が完成する。
【0061】
(第3の実施の形態)
第1および第2の実施の形態において説明したような応力緩和層は、半導体装置の製造工程におけるリソグラフィ工程だけに効果を発揮するものではない。例えば、ダイシングなどによってチップ状の半導体装置に分割された後も、生じる反りが緩和される。その結果、半導体装置の特性劣化を防止することができる。以下、応力緩和層が設けられた半導体装置について説明する。半導体装置の一例としてGaN系HEMTについて説明する。
【0062】
図7は、第3の実施の形態に係る半導体装置300の模式的断面図である(GaN系HEMT)。図7に示すように、半導体装置300は、基板301上にバッファ層302、チャネル層303、電子供給層304およびキャップ層305が順に形成されている。例えば、基板301はSiCからなり、バッファ層302はAlNからなり、チャネル層303はGaNからなり、電子供給層304はAlGaNからなり、キャップ層305はGaNからなる。以下、バッファ層302、チャネル層303、電子供給層304キャップ層305のことを半導体結晶層310と呼ぶ。
【0063】
キャップ層305上にはゲート電極306が形成され、キャップ層305上においてゲート電極306を挟むようにソース電極307とドレイン電極308とが形成されている。また、キャップ層305上において、ゲート電極306とソース電極307との間およびゲート電極306とドレイン電極308との間に表面保護膜309が形成されている。表面保護膜309は、例えば、SiN等からなる。
【0064】
基板301の下面と、基板301、バッファ層302、チャネル層303、電子供給層304およびキャップ層305の側面とに、応力緩和層320が形成されている。、応力緩和層320は、基板301の下面から基板301、バッファ層302、チャネル層303、電子供給層304およびキャップ層305の側面にかけて連続して形成されていることが好ましい。応力緩和層320は、SiN等の絶縁膜、WSi,TiW,TiN等のメタル膜、GaN等の半導体膜等から形成される。
【0065】
本実施の形態に係る応力緩和層320は、半導体結晶層310が基板301に対して有する応力と同じ方向に基板301に対して応力を有する。それにより、半導体結晶層310の基板301に対する引張応力または圧縮応力が相殺される。したがって、半導体装置300の反り、クラックの発生が抑制される。また、半導体装置300の反りが抑制できると、半導体結晶層310の電子状態の変化を抑制することができる。それにより、半導体装置300の特性が向上する。その結果、半導体装置300は所望の特性を実現する。
【0066】
さらに、本実施の形態に係る半導体装置300においては、応力緩和層320が基板301の側面および半導体結晶層310の側面にまで形成されていることから、半導体結晶層310の基板301に対する応力をより効果的に相殺することができる。さらに、応力緩和層320によって基板301と半導体結晶層310とが固定されることから、基板301と半導体結晶層310との界面における剥がれを効果的に防止することができる。
【0067】
なお、本実施の形態においては、基板301の側面および半導体結晶層310の側面全体に応力緩和層320が形成されているが、基板301の側面の一部のみに応力緩和層320が形成されていても半導体基板300の反り量は有効に低減される。それにより、半導体結晶層310の剥がれが防止される。
【0068】
図8は、本実施の形態に係る半導体装置(GaN系HEMT)の他の例である半導体装置300aの模式的断面図である。半導体装置300aが図7の半導体装置300と異なる点は、応力緩和層320が基板301の下面および基板301の側面の一部に連続して形成されている点である。
【0069】
この場合においても、応力緩和層320は、半導体結晶層310が基板301に対して有する応力と同じ方向に基板301に対して応力を有する。それにより、半導体結晶層310の基板301に対する引張応力または圧縮応力が相殺される。したがって、半導体装置300aの反り、クラックの発生が抑制される。なお、本実施の形態に係る半導体装置の一例としてGaN系HEMTについて説明したが、半導体結晶層上にゲート電極、ソース電極およびドレイン電極が設けられた半導体装置に適用することができる。例えば、FETに本発明を適用することもできる。
【0070】
続いて、半導体装置300aの製造方法について説明する。図9および図10は、半導体装置300aの製造方法について説明するためのフロー図である。まず、図9(a)に示すように、基板301上に、バッファ層302、チャネル層303、電子供給層304およびキャップ層305をCVD法等により順に形成する。
【0071】
次に、図9(b)に示すように、基板301の下面に複数の溝311を形成する。複数の溝311の深さは特に限定されず、切り欠き部がバッファ層302に到達していなければよい。溝311は、ダイシングブレードによって形成することもでき、マスクを利用したエッチングによっても形成することができる。次いで、図9(c)に示すように、基板301の下面の全体にわたって応力緩和層320をスパッタリング、CVD法等により形成する。それにより、複数の溝311にも応力緩和層320が形成される。
【0072】
次に、図10(a)に示すように、キャップ層305上に表面保護膜309を形成し、表面保護膜309に開口を形成し、その開口にゲート電極306、ソース電極307およびドレイン電極308をCVD法等により形成する。この場合、表面保護膜309の開口は、隣接する溝311と溝311との間のキャップ層305上にゲート電極306、ソース電極307およびドレイン電極308が一つずつ形成されるように形成される。
【0073】
次いで、図10(b)に示すように、表面保護膜309の各溝311上方の部分にダイシングラインとなる開口312を形成する。続いて、ダイシングブレードによって各開口312から各溝311にかけてダイシングを行う。以上の工程により、半導体装置300aが形成される。
【0074】
以上の製造方法によれば、半導体装置300aとしてチップに分割される前に、半導体装置300aの側面に応力緩和層320を形成することができる。したがって、チップ化した後に応力緩和層を設ける製造方法に比較して、半導体装置の製造工程数が削減される。また、半導体装置300aにおいても本発明の効果が得られる。
【0075】
(第4の実施の形態)
次に、光半導体装置の一例としてGaN系VCSELについて説明する。図11は、第4の実施の形態に係る光半導体装置400の模式的断面図である(GaN系VCSEL)。図11に示すように、光半導体装置400は、基板401上にバッファ層402およびn型コンタクト層403が順に形成されている。また、n型コンタクト層403の中央部上にn型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407が順に形成されている。
【0076】
例えば、基板401はSiCからなり、バッファ層402はAlNからなり、n型コンタクト層403はn型GaNからなり、n型クラッド層404はn型AlGaNからなり、量子井戸活性層405はInGaN/GaNからなり、p型クラッド層406はp型AlGaNからなり、p型コンタクト層407はp型GaNからなる。以下、バッファ層402、n型コンタクト層403、n型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407を半導体結晶層410と呼ぶ。
【0077】
n型コンタクト層403上のn型クラッド層404の外側には、n側電極411が形成されている。p型コンタクト層407上にはリング状のp側電極412が形成されている。また、n型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407を覆うように表面保護膜413が形成されている。表面保護膜413は、例えば、SiN等からなる。
【0078】
基板401の下面と、基板401、バッファ層402およびn型コンタクト層403の側面とに、応力緩和層420が形成されている。応力緩和層420は、基板401の下面から基板401、バッファ層402およびn型コンタクト層403の側面にかけて連続して形成されていることが好ましい。応力緩和層420は、SiN等の絶縁膜、WSi,TiW,TiN等のメタル膜、GaN等の半導体膜等から形成される。
【0079】
本実施の形態に係る応力緩和層420は、半導体結晶層410が基板401に対して有する応力と同じ方向に基板401に対して応力を有する。それにより、半導体結晶層410の基板401に対する引張応力または圧縮応力が相殺される。したがって、光半導体装置400の反り、クラックの発生が抑制される。
【0080】
このような光半導体装置は、半導体結晶層の厚み方向に共振器端を持つ。当然ながら半導体結晶層は大きな厚みを持つことが困難であるため、短共振器となる傾向にある。このような共振器においては、共振器に許容される形状誤差は非常に小さくなる。したがって、半導体結晶層の反りが大きいと、所望の特性を実現することが困難となる。本実施の形態に係る光半導体装置400においては、反りが抑制される。したがって、光半導体装置400は、共振器として高い精度を有する。その結果、光半導体装置400は、良好な特性を有する。
【0081】
また、本実施の形態に係る光半導体装置400においては、応力緩和層420が基板401の下面と基板401、バッファ層402およびn型コンタクト層403の側面とに形成されていることから、半導体結晶層410側から基板401に付与される応力をより効果的に相殺することができる。さらに、応力緩和層420によって基板401とバッファ層402およびn型コンタクト層403とが固定されることから、基板401とバッファ層402との界面およびバッファ層402とn型コンタクト層402との界面における剥がれを効果的に防止することができる。
【0082】
なお、本実施の形態においては、基板401、バッファ層402およびn型コンタクト層403の側面に応力緩和層320が形成されているが、基板401の側面の一部のみに応力緩和層420が形成されていても半導体装置400の反り量は有効に低減される。それにより、半導体結晶層410の剥がれが防止される。
【0083】
図12は、本実施の形態に係る光半導体装置の他の例である光半導体装置400aの模式的断面図(GaN系VCSEL)である。光半導体装置400aが図11の光半導体装置400と異なる点は、応力緩和層420が基板401の下面および基板401の側面の一部に連続して形成されている点である。
【0084】
この場合においても、応力緩和層420は、半導体結晶層410が基板401に対して有する応力と同じ方向に基板401に対して応力を有する。それにより、半導体結晶層410の基板401に対する引張応力または圧縮応力が相殺される。したがって、光半導体装置400aの反り、クラックの発生が抑制される。
【0085】
続いて、光半導体装置400aの製造方法について説明する。図13、図14および図15は、光半導体装置400aの製造方法について説明するためのフロー図である。まず、図13(a)に示すように、基板401上に、バッファ層402、n型コンタクト層403、n型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407をCVD法等により順に形成する。
【0086】
次に、図13(b)に示すように、n型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407を選択的に除去し、n型コンタクト層403を露出させる。次いで、図13(c)に示すように、n型コンタクト層403、n型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407を覆うように表面保護膜413を形成する。
【0087】
次いで、図14(a)に示すように、基板401の下面に複数の溝421を形成する。溝421は、上方のn型クラッド層404、量子井戸活性層405、p型クラッド層406およびp型コンタクト層407を挟むように形成される。溝421の深さは特に限定されず、切り欠き部がバッファ層402に到達していなければよい。溝421は、ダイシングブレードによって形成することもでき、マスクを利用したエッチングによっても形成することができる。
【0088】
次に、図14(b)に示すように、基板401の下面の全体にわたって応力緩和層420をスパッタリング、CVD法等により形成する。それにより、複数の溝421にも応力緩和層420が形成される。次いで、図14(c)に示すように、表面保護膜413に開口を形成し、その開口にn側電極411およびp側電極412をCVD法等により形成する。p側電極412は、光出力窓の周囲を囲むリング電極となっている。
【0089】
次いで、図15に示すように、表面保護膜413の各溝421上方の部分にダイシングラインとなる開口414を形成する。続いて、ダイシングブレードによって各開口414から各溝421にかけてダイシングを行う。以上の工程により、光半導体装置400aが形成される。
【0090】
以上の製造方法によれば、光半導体装置400aとしてチップに分割される前に、光半導体装置400aの側面に応力緩和層420を形成することができる。したがって、チップ化した後に応力緩和層を設ける製造方法に比較して、光半導体装置の製造工程数が削減される。また、光半導体装置400aにおいても本発明の効果が得られる。
【実施例】
【0091】
(比較例1)
比較例1として従来の半導体基板500を作製した。図16は、従来の半導体基板500の模式的断面図である。図16に示すように、SiCから構成される成長基板501上にMOCVD法により、Al,Ga,InおよびNからなる半導体結晶層502をエピタキシャル成長させた。
【0092】
(実施例1)
実施例1として上記実施の形態に従って図1の半導体基板100を作製した。成長基板1としてSiCを用い、半導体結晶層2としてAl,Ga,InおよびNからなる結晶層を用い、応力緩和層3としてSiOを用いた。半導体結晶層2はMOCVD法により成長基板1上にエピタキシャル成長させ、応力緩和層3は成長基板1の下面、成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面にスパッタリングにより形成した。
【0093】
(分析)
比較例1に係る半導体基板200および実施例1に係る半導体基板100の反り量を表2に示す。表2に示すように、比較例1に係る半導体基板500の反り量は、半導体結晶層501をエピタキシャル成長させる前においては12μmとなり、半導体結晶層501をエピタキシャル成長させた後においては17μmとなった。一方、実施例1に係る半導体基板100においては、応力緩和層3を形成した後の反り量は5μmとなった。以上のことから、実施例1に係る半導体基板100においては半導体結晶層2から成長基板1に対してかかる応力が相殺されていることがわかる。
【0094】
【表2】

【0095】
(比較例2)
続いて、比較例2として従来の半導体基板500aを作製した。図17は、従来の半導体基板500aの模式的断面図である。図17に示すように、SiCから構成される成長基板501上にAl,Ga,InおよびNからなる半導体結晶層502をMOCVD法によりエピタキシャル成長させ、成長基板501の下面にスパッタリングにより応力緩和層503を形成した。
【0096】
(分析)
実施例1に係る半導体基板100および比較例2に係る半導体基板200aを用いてトランジスタを作製する工程中に、成長基板と応力緩和層との間に剥がれが生じるか否かを調べた。実施例1に係る半導体基板100および比較例2に係る半導体基板200aのサンプルをそれぞれ50個ずつ作製した。これらを用いてトランジスタを作製した。表3にその結果を示す。
【0097】
【表3】

【0098】
表3に示すように、比較例2に係る半導体基板500aを用いたトランジスタの作製工程中に、5個のサンプルに成長基板501と応力緩和層503との間に剥がれが生じた。さらに、残りの45個のサンプルに対して配線を施す工程中に、17個のサンプルに成長基板501と応力緩和層503との間に剥がれが生じた。
【0099】
一方、実施例1に係る半導体基板100を用いたトランジスタの作製工程中には、成長基板1と応力緩和層3との間に剥がれが生じなかった。さらに、配線を施す工程中にも成長基板1と応力緩和層3との間に剥がれが生じなかった。
【0100】
以上のことから、成長基板1の側面および半導体結晶層2の側面にまで応力緩和層3を形成することにより、トランジスタ作製工程中における成長基板1と応力緩和層3との間の剥がれが防止されることがわかる。したがって、実施例1に係る半導体基板100を用いてトランジスタを作製する際においても、半導体基板100の反り、クラックの発生を効果的に抑制することができる。以上のことから、歩留まりが大幅に向上することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係る半導体ウェハの模式的断面図である。
【図2】半導体ウェハの反り量を説明するための図である。
【図3】応力緩和層の応力と膜厚との関係を示す図である。
【図4】半導体基板の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図5】第2の実施の形態に係る半導体結晶成長用基板の模式的断面図である。
【図6】半導体結晶成長用基板の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図7】第3の実施の形態に係る半導体装置の模式的断面図である(GaN系HEMT)。
【図8】本実施の形態に係る半導体装置(GaN系HEMT)の他の例の模式的断面図である。
【図9】半導体装置の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図10】半導体装置の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図11】第4の実施の形態に係る光半導体装置の模式的断面図である(GaN系VCSEL)。
【図12】本実施の形態に係る光半導体装置の他の例の模式的断面図(GaN系VCSEL)である。
【図13】光半導体装置の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図14】光半導体装置の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図15】光半導体装置の製造方法について説明するためのフロー図である。
【図16】従来の半導体基板の模式的断面図である。
【図17】従来の半導体基板の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1,201 成長基板
2 半導体結晶層
3,202,320,420 応力緩和層
100 半導体基板
200 半導体結晶成長用基板
300,300a,400,400a 半導体装置
311,421 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面上に成長した半導体結晶層と、
前記基板の他面およびこれに連続して前記基板の側面に形成され、前記半導体結晶層が前記基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層とを備えることを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記半導体結晶層は、GaN系半導体層であることを特徴とする請求項1記載の半導体基板。
【請求項3】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項1または2記載の半導体基板。
【請求項4】
前記応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体基板。
【請求項5】
基板の一面上に半導体結晶層を成長させる工程と、
前記半導体結晶層が前記基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層を前記基板の他面およびこれに連続して前記基板の側面に形成するステップとを含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記半導体結晶層は、GaN系半導体層であることを特徴とする請求項5記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項5または6記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
前記応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
一面上に半導体結晶層が成長されるべき、半導体結晶成長用基板の他面およびこれに連続して前記半導体結晶成長用基板の側面に形成され、前記半導体結晶層が前記半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に前記半導体結晶成長用基板に応力を付与する応力緩和層を備えることを特徴とする半導体結晶成長用基板。
【請求項10】
前記半導体結晶層は、GaN系半導体層であることを特徴とする請求項9記載の半導体結晶成長用基板。
【請求項11】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項9または10記載の半導体結晶成長用基板。
【請求項12】
前記応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の半導体結晶成長用基板。
【請求項13】
一面上に半導体結晶層が成長されるべき、半導体結晶成長用基板の他面およびこれに連続して前記半導体結晶成長用基板の側面に形成され、前記半導体結晶層が前記半導体結晶成長用基板に付与する応力と同じ方向に前記半導体結晶成長用基板に応力を付与する応力緩和層を形成する工程を含むことを特徴とする半導体結晶成長用基板の製造方法。
【請求項14】
前記半導体結晶層は、GaN系半導体層であることを特徴とする請求項13記載の半導体結晶成長用基板の製造方法。
【請求項15】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項13または14記載の半導体結晶成長用基板の製造方法。
【請求項16】
前記応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の半導体結晶成長用基板の製造方法。
【請求項17】
基板の一面上に設けられた電界効果型トランジスタの動作層となる半導体結晶層と、
チップに分割された前記基板の他面およびこれに連続して前記基板の側面に設けられ、前記半導体結晶層が前記基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
前記半導体結晶層は、GaN系半導体層であることを特徴とする請求項17記載の半導体装置。
【請求項19】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項17または18記載の半導体装置。
【請求項20】
前記応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項21】
一面上に電界効果型トランジスタの動作層となる半導体結晶層が設けられる基板の他面と前記基板がチップに分割された際に側面をなす領域とに、前記半導体結晶層が前記基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記基板の他面に溝が形成されおり、
前記応力緩和層は、前記基板の他面および前記溝の内壁に設けられることを特徴とする請求項21記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記半導体装置は、前記基板の他面から前記溝に到達する切断を実施することで、チップに分割されることを特徴とする請求項22記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
基板の一面上に設けられ、かつ、活性層およびこれを上下で挟むクラッド層を含む半導体結晶層と、
チップに分割された前記基板の他面およびこれに連続して前記基板の側面に設けられ、前記半導体結晶層が前記基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層とを備えることを特徴とする光半導体装置。
【請求項26】
前記半導体結晶層は、GaN系半導体層であることを特徴とする請求項25記載の光半導体装置。
【請求項27】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項25または26記載の光半導体装置。
【請求項28】
前記応力緩和層は、SiN,WSi,TiW,TiNまたはGaNであることを特徴とする請求項25〜27のいずれかに記載の光半導体装置。
【請求項29】
一面上に活性層およびこれを上下で挟むクラッド層を含む半導体結晶層が設けられる基板の他面と前記基板がチップに分割された際に側面をなす領域とに、前記半導体結晶層が前記基板に付与する応力と同じ方向に前記基板に応力を付与する応力緩和層を形成する工程を含むことを特徴とする光半導体装置の製造方法。
【請求項30】
前記基板の他面に溝が形成されおり、
前記応力緩和層は、前記基板の他面および前記溝の内壁に設けられることを特徴とする請求項29記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項31】
前記光半導体装置は、前記基板の他面から前記溝に到達する切断を実施することで、チップに分割されることを特徴とする請求項30記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項32】
前記基板は、GaN,SiCまたはサファイアであることを特徴とする請求項29〜31のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−278999(P2006−278999A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100248(P2005−100248)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000154325)ユーディナデバイス株式会社 (291)
【Fターム(参考)】