半導体装置の製造方法および表示パネルの製造方法
【課題】微結晶半導体膜を含むチャネル層の移動度を向上させる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】微結晶シリコン膜を堆積する工程と、水素プラズマ処理を施す工程を交互に複数回ずつ繰り返す。このような方法で微結晶シリコン膜を成膜すれば、微粒子内のマイクロクリスタル成分に含まれるシリコン原子の未結合手を終端したり、アモルファス成分を改質したりすることを、より効率的に行なうことができるので、TFTの移動度をより高めることができる。
【解決手段】微結晶シリコン膜を堆積する工程と、水素プラズマ処理を施す工程を交互に複数回ずつ繰り返す。このような方法で微結晶シリコン膜を成膜すれば、微粒子内のマイクロクリスタル成分に含まれるシリコン原子の未結合手を終端したり、アモルファス成分を改質したりすることを、より効率的に行なうことができるので、TFTの移動度をより高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および表示パネルの製造方法に関し、特に、微結晶半導体膜を含むチャネル層を備えた半導体装置の製造方法、および、そのような半導体装置の製造方法を含む表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と略す)のチャネル層には、非晶質シリコン膜、または、非晶質シリコン膜にレーザアニールなどのアニール処理を施して形成した多結晶シリコン膜が用いられていた。しかし、非晶質シリコン膜を用いた場合には、TFTの移動度は0.5cm2/V・sec程度と低い。これに対して、多結晶シリコン膜を用いた場合には、TFTの移動度は高くなるが、アニール処理が必要になるので、製造工程が複雑化し、スループットが低下する。
【0003】
そこで、近年、非晶質シリコン膜を用いた場合よりも移動度が高く、かつスループットを低下させないで成膜できる微結晶シリコン膜が、TFTのチャネル層として用いられるようになってきた。
【0004】
このような微結晶シリコン膜の結晶粒(grain)内では、シリコン原子は共有結合しているので、シリコン原子の未結合手(dungling bond)は少ない。しかし、結晶粒界(grain boundary)には、共有結合の相手を失ったシリコン原子の未結合手が多く存在する。このような未結合手は、電子やホールをトラップしてその移動を妨げるので、TFTの移動度を低下させる原因になっていた。
【0005】
そこで、特許文献1には、チャネル層となる微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施すことによって、結晶粒界に存在する未結合手を水素イオンや水素ラジカルによって終端するTFTの製造方法が開示されている。より詳しく説明すると、高密度プラズマを用いて成膜した微結晶シリコン膜をパターニングしてチャネル層を形成する。その後、ソース電極とドレイン電極を形成した後に、微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施すことによって、微結晶シリコン膜の結晶粒界に存在する未結合手を終端する。未結合手の多くが終端されれば、電子やホールは未結合手にトラップされにくくなるとともに、結晶粒界の障壁が低くなる。この結果、電子やホールは移動しやすくなるので、TFTの移動度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−71163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のTFTの製造方法のように、ソース電極とドレイン電極を形成した後に、微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施すだけでは、微結晶シリコン膜の結晶粒界に存在する未結合手を十分に終端することができない。また、微結晶シリコン膜は、結晶成分と非結晶成分とが混合された薄膜であるので、TFTの移動度は非結晶成分によっても影響を受ける。しかし、特許文献1は、非結晶成分を改質する処理を開示していない。このように、特許文献1に記載の水素プラズマ処理を施すだけでは、微結晶半導体膜からなるチャネル層の移動度を向上させることはできない。
【0008】
そこで、本発明は、微結晶半導体膜を含むチャネル層の移動度を向上させる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、絶縁基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、第1の微結晶半導体膜を含む島状のチャネル層とを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記第1の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記第1の微結晶半導体膜を少なくとも1回以上の回数に分けて堆積する第1の堆積工程と、
前記第1の堆積工程を終了するごとに水素プラズマ処理を施す第1の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第1の堆積工程は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分と水素ガスとを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて前記第1の微結晶半導体膜を堆積する工程を含み、
前記第1の水素プラズマ処理工程は、水素ガスを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて水素プラズマ処理を施す工程を含むことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで段階的に変化させることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第2の発明において、
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで連続的に変化させることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第3または第4の発明において、
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を、前記第1の流量よりも多い第2の流量まで段階的または連続的に変化させることを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、第2の発明において、
前記第1の堆積工程および前記第1の水素プラズマ処理工程における前記水素ガスの流量は同じであることを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、第2の発明において、
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスは、モノシラン、ジシラン、またジクロルシランのいずれかであり、
前記第1の微結晶半導体膜は、微結晶シリコン膜であることを特徴とする。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、
前記第1の堆積工程で堆積される前記微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmずつであることを特徴とする。
【0017】
第9の発明は、第1の発明において、
前記チャネル層の両端部にそれぞれ形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域の上方にそれぞれ設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース領域と前記ソース電極との間、および、前記ドレイン領域と前記ドレイン電極との間にそれぞれ設けられたオーミックコンタクト層とをさらに備え、
前記オーミックコンタクト層は第1または第2の導電型の不純物がドープされた第2の微結晶半導体膜を含み、
前記第2の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記不純物がドープされていない微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第2の堆積工程と、
前記不純物がドープされた微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第3の堆積工程と、
前記第2または第3の堆積工程を終了するごとに、その表面に水素プラズマ処理を施す第2の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
第10の発明は、第9の発明において、
少なくとも前記第2の微結晶半導体膜の表面は、前記第3の堆積工程によって堆積された微結晶半導体膜で覆われていることを特徴とする。
【0019】
第11の発明は、第9の発明において、
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を段階的に変化させることを特徴とする。
【0020】
第12の発明は、第9の発明において、
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を連続的に変化させることを特徴とする。
【0021】
第13の発明は、第9の発明において、
前記第3の堆積工程は、前記第2の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスと、前記水素ガスと、前記不純物を含むガスとを励起して生成したプラズマを用いて前記第2の微結晶半導体膜を堆積することを特徴とする。
【0022】
第14の発明は、絶縁基板上に複数の半導体装置が配列された表示装置の製造方法であって、
前記半導体装置を第1から第13のいずれかの発明に係る製造方法によって製造する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明によれば、チャネル層に含まれる第1の微結晶半導体膜は、少なくとも1回以上の回数に分けて第1の微結晶半導体膜を堆積し、堆積を終了するごとに水素プラズマ処理を施す。これにより、第1の微結晶半導体膜内のマイクロクリスタル成分やナノクリスタル成分に含まれる原子の未結合手を終端したり、アモルファス成分やナノクラスタ成分を改質したりすることをより効率的に行なうことができるので、第1の微結晶半導体膜の移動度をより高めることができる。
【0024】
上記第2の発明によれば、第1の微結晶半導体膜の成膜は、第1の微結晶半導体膜を構成する成分と水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用い、水素プラズマ処理は水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用いる。これにより、第1の微結晶半導体膜の堆積と水素プラズマ処理とを交互に複数回繰り返すことが容易になり、第1の微結晶半導体膜の成膜工程のスループットの低下を防ぐことができる。
【0025】
上記第3および第4の発明によれば、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を段階的または連続的に増やす。この場合、水素ガスの流量は一定であるので、流量比は大きな値から徐々に小さな値に変化する。このような流量比の値の変化に伴い、第1の微結晶半導体膜内に含まれる微粒子には、結晶性の高いマイクロクリスタル成分だけでなく、ナノクリスタル成分、ナノクラスタ成分、アモルファス成分も多く含まれるようになるので、第1の微結晶半導体膜の移動度を高くすることができる。
【0026】
上記第5の発明によれば、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスを、第1の流量よりも多い第2の流量まで段階的または連続的に変化させる。この場合、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を連続的に変化させれば、流量比はより小さくなる。これにより、第1の微結晶半導体膜内に含まれる微粒子には、ナノクリスタル成分、ナノクラスタ成分、アモルファス成分もより多く含まれるようになるので、第1の微結晶半導体膜の移動度をより高くすることができる。
【0027】
上記第6の発明によれば、第1の堆積工程と第1の水素プラズマ処理工程における水素ガスの流量は同じであるので、第1の堆積工程と第1の水素プラズマ処理工程の切り換えを容易に行なうことができる。これにより、第1の微結晶半導体膜の成膜工程のスループットの低下を防ぐことができる。
【0028】
上記第7の発明によれば、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスは、モノシラン、ジシラン、ジクロルシランのいずれかであるので、第1の微結晶半導体膜である微結晶シリコン膜を容易に成膜することができる。
【0029】
上記第8の発明によれば、1回の堆積工程で堆積する第1の微結晶シリコン膜の膜厚が3nmよりも薄くなれば、生成したプラズマが安定しない状態で堆積されるので、第1の微結晶シリコン膜内の各成分のばらつきが大きくなる。膜厚が7nmよりも厚くなれば、堆積された第1の微結晶シリコン膜の全体に十分な水素プラズマ処理を施すことが困難になる。これにより1回の堆積工程で堆積する第1の微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmであることが好ましい。
【0030】
上記第9の発明によれば、第2の微結晶半導体膜の成膜工程には、不純物がドープされていない微結晶半導体膜を堆積する工程だけではなく、不純物がドープされた微結晶半導体膜を堆積する工程も含まれている。不純物がドープされた微結晶半導体膜を堆積する工程では、不純物がドープされた微粒子も堆積されるので、微結晶半導体膜の抵抗値が小さくなる。この場合、第2の微結晶半導体膜の一部に不純物がドープされるだけなので、その全体に不純物がドープされる場合と比べて、抵抗値が小さくなりすぎることはない。これにより、オフ電流が大きくなることを防止することができる。
【0031】
上記第10の発明によれば、第2の微結晶半導体膜の表面の不純物濃度が高くなるので、第2の微結晶半導体膜をパターニングしたオーミックコンタクト層と、ソース電極およびドレイン電極とをオーミック接続することができる。
【0032】
上記第11または第12の発明によれば、不純物を含むガスの流量を段階的または連続的に増やす。これにより、第2の微結晶半導体膜の抵抗値が小さくなりすぎることをより防止することができるので、オフ電流が大きくなることをより防止することができる。
【0033】
上記第13の発明によれば、第2の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスと、水素ガスと、不純物を含むガスとを励起して生成したプラズマを用いて前記第2の微結晶半導体膜を堆積する。これにより、不純物を容易にドープすることができるので、第2の微結晶半導体膜の成膜工程のスループットの低下を防ぐことができる。
【0034】
上記第14の発明によれば、第1から第12のいずれかの発明に係る製造方法によって製造された半導体装置に含まれる第1および第2の微結晶半導体膜の移動度を向上させることができる。このような半導体装置を用いて表示装置のスイッチング素子を形成すれば、スイッチング速度を速くすることができる。また、半導体装置を用いて表示装置の駆動回路を形成すれば、駆動回路の動作速度を速くすることができる。このように、TFT10の製造方法を含む製造方法によって、高品位の映像を表示する表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】微結晶シリコン膜のラマン測定結果をピーク分離した図である。
【図2】図1に示すピーク分離を行なった4つの成分の割合の一例を示す図である。
【図3】流量比を変えて成膜した微結晶シリコン膜について、流量比と各成分の割合との関係を示す図である。
【図4】基礎検討で使用したボトムゲート型TFTの構成を示す断面図である。
【図5】基礎検討において基準となる微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図6】図5に示す方法によって成膜された微結晶シリコン膜を使用したときの流量比と移動度との関係を示す図である。
【図7】基礎検討において検討した微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図8】図7に示す方法によって成膜された微結晶シリコン膜を使用したときの流量比と移動度との関係を示す図である。
【図9】(a)〜(c)は、図7に示す方法で成膜した微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。
【図10】第1の実施形態におけるTFTの各製造工程を示す工程断面図である。
【図11】第1の実施形態におけるTFTの各製造工程を示す工程断面図である。
【図12】第1の実施形態におけるTFTの各製造工程を示す工程断面図である。
【図13】第2の実施形態における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図14】第2の実施形態の第1の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図15】(a)および(b)は、第2の実施形態の第2の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図16】第3の実施形態におけるn型微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図17】(a)〜(c)は、図16に示す方法で成膜したn型微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。
【図18】第3の実施形態の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<1.基礎検討>
微結晶シリコン膜の表面状態を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:以下、「AFM」という)を用いて観察した。ここで、AFMとは、先端の鋭いカンチレバー(探針)を用いて試料の表面をなぞることにより、試料の原子とカンチレバーの原子との間に作用する力を検出して、表面付近の画像を表示する装置である。AFMによって、微結晶シリコン膜の表面状態を観察した結果、微結晶シリコン膜は多数の微粒子によって構成されていることがわかった。微結晶シリコンの形成過程のモデルを検討した文献(例えば、Controlled Growth of Silicon Nanocrystals in a Plasma Reactor, Holger Vach and Quentin Brulin, PHYSICAL REVIEW LETTERS 95, 165502(2005)など)によれば、これらの微粒子は、結晶成分と非結晶成分とを含む微粒子であると考えられる。
【0037】
そこで、プラズマ化学的気相成長法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:以下、「プラズマCVD法」という)によって、膜厚50nmの微結晶シリコン膜を成膜し、その成分を詳しく調べた。微結晶シリコン膜の成膜条件は、基板温度を250℃、RFパワーを250W、水素(H2)ガスの流量を650sccmとした。モノシラン(SiH4)ガスは、2.5〜4.0sccmの範囲で変えて、複数の微結晶シリコン膜を成膜した。このような条件で成膜した微結晶シリコン膜を、波数50〜750cm-1の範囲でラマン測定を行い、さらに波形分離ソフトを用いてラマン強度のピーク分離を行なった。
【0038】
図1は、微結晶シリコン膜のラマン測定結果をピーク分離した図である。図1に示すように、アモルファス成分とマイクロクリスタル成分との間に、ブロードなピークとシャープなピークとが存在することがわかった。ブロードなピークは、シリコン原子がアモルファス成分よりも部分的に規則性を有するナノクラスタ成分のピークであり、シャープなピークは、ナノクラスタ成分が集合したナノオーダーの結晶構造を有するナノクリスタル成分のピークであると考えられる。また、アモルファス成分のピークよりも波数の小さい側にブロードなピークが存在する。このブロードなピークはアモルファス成分の別のモードであり、以下の説明では省略する。
【0039】
このようにして求めた4つの成分は、アモルファス成分、ナノクラスタ成分、ナノクリスタル成分、マイクロクリスタル成分の順に結晶性が高くなる。図1に示すように、マイクロクリスタル成分の波形はローレンツ(Lorentz)波形になり、ナノクリスタル成分の波形はガウス−ローレンツ(Gaussian-Lorentz)波形になり、ナノクラスタ成分およびアモルファス成分の波形はガウス(Gaussian)波形になる。
【0040】
図2は、ピーク分離を行なった4つの成分の割合の一例を示す図である。図2に示すように、ラマン測定によって求めた4つの成分波形の面積を求め、求めた面積の割合から、微結晶シリコン膜を構成する各成分の割合を求める。このようにして、微結晶シリコン膜に含まれる4つの成分の割合が分かれば、微結晶シリコンの原料ガスである水素(H2)ガスとモノシランガスの流量比R(R=H2ガスの流量/SiH4ガスの流量)と4つの成分の割合との関係を求めることができる。
【0041】
図3は、流量比Rを変えて成膜した微結晶シリコン膜について、流量比Rと各成分の割合との関係を示す図である。図3に示すように、流量比Rが小さい場合、すなわち水素ガスの流量が少ない場合には、マイクロクリスタル成分の割合が少なく、アモルファス成分の割合が多くなる。しかし、流量比Rが大きくなるにつれてアモルファス成分の割合が少なくなるとともに、マイクロクリスタル成分の割合が多くなることがわかる。従来の研究によって、マイクロクリスタル成分の割合が多くなると結晶粒の数が多くなるので、結晶粒界の数も多くなり、移動度が低くなることがわかっている。また、移動度を高くするためには、アモルファス成分やナノクラスタ成分などをある程度含んでいることが必要であることもわかっている。
【0042】
そこで、上記4つの成分を含む微結晶シリコン膜の移動度をより高くするためには、マイクロクリスタル成分に含まれるより多くのシリコン原子の未結合手を終端することと、アモルファス成分を改質することが有効である。この明細書において、アモルファス成分の改質とは、弱いSi−Si結合をエッチングして除去するだけではなく、アモルファス成分内に微細なSi−Si結合を形成することをいう。具体的には、水素プラズマに含まれる水素ラジカル(Hラジカル)がSi−H結合を切断すると、水素ラジカルは切断したH原子と結合して水素ガスになって微結晶シリコン膜から抜け、残されたSi原子同士が共有結合する。この結果、アモルファス成分は局所的に結晶化される。このように、局所的に結晶化することを改質するという。また、微結晶シリコン膜の未結合手の多くは、AFMによる画像から、微粒子によって囲まれた空間(三重点)に面する微粒子の表面に存在していると考えられている。そこで、これらの未結合手を、水素プラズマに含まれる水素イオンや水素ラジカルによって終端する。
【0043】
このように、マイクロクリスタル成分だけでなく、アモルファス成分やナノクラス成分なども多く含む微結晶シリコン膜を成膜し、さらに微結晶シリコン膜を水素プラズマ処理することによって、微結晶シリコン膜の移動度を向上させることができる。
【0044】
微結晶シリコン膜からなるチャネル層を有するTFTを用いて、流量比Rと移動度の関係を求めた。まず、この検討に使用したTFT10の構成を説明する。図4は、ボトムゲート型TFT10の構成を示す断面図である。図4を参照して、TFT10の構成を説明する。絶縁基板であるガラス基板15上に、ゲート電極20が形成されている。ゲート電極20を含むガラス基板15の全体を覆うように、窒化シリコン膜からなるゲート絶縁膜30が形成されている。ゲート絶縁膜30の膜厚は、例えば350nmである。
【0045】
ゲート絶縁膜30の表面に、平面視においてゲート電極20を跨いで左右に延びる島状のチャネル層40が形成されている。チャネル層40は微結晶シリコン膜からなり、その膜厚は、例えば50nmである。チャネル層40は、不純物を含まない真性の微結晶シリコン膜からなるチャネル領域40cと、チャネル領域40cを挟むように形成され、高濃度のn型不純物をドープされたソース領域40aおよびドレイン領域40bとを含む。なお、微結晶シリコン膜の成膜条件については後述する。
【0046】
チャネル領域40cの表面中央に、窒化シリコン膜からなるエッチングストッパ層50が形成されている。エッチングストッパ層50の左端上面からソース領域40aの左端部まで覆うように延在するオーミックコンタクト層60aと、エッチングストッパ層50の右端上面からドレイン領域40bの右端部まで覆うように延在するオーミックコンタクト層60bが形成されている。これらのオーミックコンタクト層60a,60bは、n型不純物を高濃度にドープしたn型微結晶シリコン膜からなり、エッチングストッパ層50の上面で左右に分離されている。
【0047】
オーミックコンタクト層60a上の右端部からオーミックコンタクト層60aを覆ってゲート絶縁膜30上まで延在するソース電極70aと、オーミックコンタクト層60b上の左端部からオーミックコンタクト層60bを覆ってゲート絶縁膜30上まで延在するドレイン電極70bとが形成されている。ソース電極70aはオーミックコンタクト層60aを介してソース領域40aとオーミック接触するように接続され、ドレイン電極70bはオーミックコンタクト層60bを介してドレイン領域40bとオーミック接触するように接続されている。さらに、ソース電極70aとドレイン電極70bを含むガラス基板15の全体を覆うように、窒化シリコン膜からなる保護膜80が形成されている。
【0048】
次に、上記TFT10の構成要素のうち、チャネル層となる微結晶シリコン膜の成膜条件について説明する。微結晶シリコン膜の成膜条件は以下のとおりである。
微結晶シリコン膜の成膜条件
原料ガス:水素ガス(流量650sccm)
モノシランガス(流量は適宜変更)
基板温度:250℃
RFパワー:250W
チャンバ内の真空度:110Pa
また、成膜された微結晶シリコン膜に施す水素プラズマ処理の条件は以下のとおりである。
水素プラズマ処理の条件
原料ガス:水素ガス(流量650sccm)
基板温度:250℃
RFパワー:175W
チャンバ内の真空度:110Pa
【0049】
まず、本発明による効果を評価するために、基準となる微結晶シリコン膜について説明する。図5は、基準となる微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図5に示すように、所定の流量のモノシランガスを水素ガスとともにプラズマCVD装置のチャンバ内に供給することによって、膜厚15nmの微結晶シリコン膜を1回の成膜工程で成膜し、その後微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を60秒間施した。同様の方法で、モノシランガスの流量を変えて、複数種類の微結晶シリコン膜を成膜した。
【0050】
次に、上述の微結晶シリコン膜からなるチャネル層を備えるTFTを用いてその移動度を測定し、流量比Rと移動度との関係を求めた。図6は、基準となるTFTにおける、流量比Rと移動度との関係を示す図である。図6からわかるように、移動度は、流量比Rが225のときに最大となり、流量比Rが225より大きくなっても、小さくなっても、低くなることがわかる。
【0051】
次に、本発明で使用する微結晶シリコン膜の成膜方法の検討結果を説明する。図7は、本発明で使用する微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図7に示すように、微結晶シリコン膜を5nmずつ堆積する工程と、堆積した微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を20秒間施す工程とを交互に3回ずつ繰り返すことによって、合計膜厚15nmの微結晶シリコン膜を成膜した。
【0052】
具体的には、図7に示すように、水素用バルブは常に開いた状態であるため、水素ガスはチャンバ内に連続的に供給されている。一方、モノシラン用バルブは、例えば13秒間(12〜14秒間で適宜調整)開き、20秒間閉じることを3回繰り返す。モノシラン用バルブが1回開くごとに、モノシランガスがチャンバ内に供給されて5nmずつ微結晶シリコンが堆積される。モノシラン用バルブが閉じたときには、水素ガスを励起して生成したプラズマによって、堆積された微結晶シリコン膜に含まれるアモルファス成分の改質と未結合手の終端が行なわれる。モノシラン用バルブの開閉を3回繰り返すことによって、微結晶シリコン膜の合計膜厚は15nmとなる。なお、モノシラン用バルブは、瞬時に開かれたり閉じられたりするので、チャンバに供給されるモノシランガスは瞬時に一定量になったり、0sccmになったりする。同様の方法で、モノシランガスの流量を変えて、複数種類の微結晶シリコン膜を成膜した。
【0053】
なお、1回の堆積工程で堆積する微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmであることが好ましい。堆積する微結晶シリコン膜の膜厚が3nmよりも薄くなれば、生成したプラズマが安定しない状態で堆積されるので、微結晶シリコン膜内の各成分のばらつきが大きくなる。膜厚が7nmよりも厚くなれば、堆積された微結晶シリコン膜の全体に十分な水素プラズマ処理を施すことが困難になる。
【0054】
次に、上述の微結晶シリコン膜からなるチャネル層40を備えるTFT10を用いてその移動度を測定し、流量比Rと移動度との関係を求めた。図8は、図7に示す方法によって成膜された微結晶シリコン膜をチャネル層とするTFTにおける、流量比Rと移動度との関係を示す図である。図8に示すように、流量比Rが小さくなればなるほど、アモルファス成分が多く、マイクロクリスタル成分が少なくなるにもかかわらず、図6に示す場合と異なり、移動度は高くなる。なお、図8には、図6に示す移動度も比較のために記載されている。
【0055】
微結晶シリコン膜を成膜する際に、目標とする膜厚を一度に成膜するのではなく、数nm(例えば5nm)の膜厚の微結晶シリコン膜を堆積する堆積工程と、堆積した微結晶シリコン膜を水素プラズマ処理する水素プラズマ処理工程とを順に繰り返すことによって、移動度が高くなる理由を次のように考える。図9(a)〜図9(c)は、3回に分けて成膜した微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。まず、ゲート絶縁膜30上に、1回目の微結晶シリコン膜を堆積する堆積工程について説明する。図9(a)に示すように、微結晶シリコン膜はナノクリスタル成分およびマイクロクリスタル成分などの結晶成分を含む。微結晶シリコンの微粒子45が微結晶シリコン膜の表面に供給される速度は、微粒子45がゲート絶縁膜の結晶状態と整合性をとりながら堆積する速度よりも速いので、微粒子45はゲート絶縁膜30の結晶状態と十分に整合性をとることなく堆積される。この結果、微結晶シリコン膜には、微粒子が存在しない空間43(以下、「ボイド(void)43」という)が多く発生する。
【0056】
2回目の堆積工程前には、1回目の堆積工程で成膜された微結晶シリコン膜がすでに堆積されている。2回目の堆積工程で新たに堆積される微結晶シリコン膜に含まれる微粒子45は、1回目の堆積工程で成膜された微結晶シリコン膜の微粒子45と結晶性の整合をとりやすくなる。この結果、微結晶シリコンからなる微粒子45が微結晶シリコン膜の表面に供給される速度と、微粒子45が1回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜の微粒子45と整合性をとりながら堆積する速度とが同程度になる。これにより、図9(b)に示すように、2回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜に含まれるボイド43は少なくなる。
【0057】
3回目の堆積工程時には、すでに1回目および2回目に堆積した微結晶シリコン膜が堆積されている。したがって、図9(c)に示すように、微結晶シリコンの微粒子45は、2回目の堆積工程よりもさらに、微結晶シリコン膜と短時間で整合性をとりながら堆積する。このため、3回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜に含まれるボイド43はさらに少なくなる。
【0058】
このようにして成膜された微結晶シリコン膜では、ゲート絶縁膜30に近い側にボイド43が多く含まれ、ゲート絶縁膜30から遠くなるにしたがってボイド43が少なくなる。したがって、微結晶シリコン膜の成膜を複数回に分け、その都度水素プラズマ処理を施せば、微粒子45の表面に多く存在する未結合手の終端や、微粒子45に含まれるアモルファス成分の改質を効率よく行なうことができる。これにより、微結晶シリコン膜の移動度を高くすることができる。特に、ゲート絶縁膜30との界面付近に多くのボイド43が形成された微結晶シリコン膜をチャネル層とするTFT10では、ボイド43が多く含まれる領域は、チャネル層40の中でも最も大きな電界がかかる領域であるので、オフ電流が流れやすくなる。そこで、水素イオンや水素ラジカルによって、ボイドを囲む微粒子の表面の未結合手を終端したり、アモルファス成分を改質したりすれば、オフ電流を小さくすることができる。
【0059】
<2.第1の実施形態>
以下、図4に示すボトムゲート型TFT10について、各実施形態に係る製造方法を順に説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係るTFT10の製造方法について説明する。ここでは、アクティブマトリクス型液晶表示装置の製造プロセスにおいて、表示パネルに設けられた各画素のスイッチング素子として機能するTFTを例に挙げ、その製造方法を説明する。しかし、本発明はこれに限定されず、液晶表示装置の表示パネルの周辺に設けられる駆動回路を構成するTFTの製造にも適用される。
【0060】
図10〜図12は、図4に示すTFT10の各製造工程を示す工程断面図である。図10〜図12を参照しつつ、TFT10の製造方法を説明する。まず、ガラス基板15上に、スパッタリング法によって、例えば膜厚100〜500nmのチタン(Ti)を主成分とする金属膜(図示しない)を成膜する。なお、Tiを主成分とする金属膜の代わりに、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)等を主成分とする金属膜、またはそれらの合金からなる金属膜を成膜してもよい。
【0061】
金属膜の表面に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストパターン(図示しない)を形成する。図10(a)に示すように、レジストパターンをマスクにして、金属膜をウエットエッチング法によりエッチングし、ゲート電極20を形成する。その後、レジストパターンを剥離する。なお、ウエットエッチング法の代わりに、ドライエッチング法を用いてゲート電極20を形成してもよい。
【0062】
図10(b)に示すように、ゲート電極20を含むガラス基板15の全体を覆うように、プラズマCVD法を用いて、ゲート絶縁膜30となる窒化シリコン膜を成膜する。窒化シリコン膜は、モノシランガス(SiH4)、窒素ガス(N2)、アンモニアガス(NH3)、および水素ガス(H2)を用いて成膜され、その膜厚は、例えば膜厚200〜500nmであり、好ましくは350nmである。
【0063】
図10(c)に示すように、ゲート絶縁膜30の表面に、微結晶シリコン膜41を成膜する。微結晶シリコン膜41は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式または表面波プラズマ方式などの高密度プラズマCVD装置を用いて成膜される。本実施形態では、成膜される微結晶シリコン膜41の膜厚は、10〜20nmであり、好ましくは15nmである。微結晶シリコン膜41の膜厚を15nmとした場合、微結晶シリコン膜を5nmずつ3回に分けて成膜し、その間に水素プラズマ処理を1回ずつ施す。なお、微結晶シリコン膜41の成膜条件および水素プラズマ処理条件は、基礎検討で説明した微結晶シリコン膜の成膜条件および水素プラズマ処理条件とそれぞれと同一であるので、その説明を省略する。
【0064】
図10(d)に示すように、プラズマCVD法を用いて、微結晶シリコン膜41の表面に窒化シリコン膜51を成膜する。窒化シリコン膜51の成膜条件は、ゲート絶縁膜30の成膜条件と膜厚を除いて同じである。窒化シリコン膜51の膜厚は例えば150nmである。次に、窒化シリコン膜51の表面上であって、微結晶シリコン膜41を間に挟んでゲート電極20と対向する位置に、フォトリソグラフィ法によってレジストパターン55を形成する。
【0065】
図11(e)に示すように、レジストパターン55をマスクにして、プラズマエッチング法により窒化シリコン膜51をエッチングして、エッチングストッパ層50を形成する。さらに、レジストパターン55をマスクにして、イオン注入法またはイオンドーピング法により、微結晶シリコン膜41に、リン(P)などのn型不純物を高濃度になるようにドープする。その後、レジストパターン55を剥離する。この結果、微結晶シリコン膜41の両端にそれぞれn+領域41dが形成され、2つのn+領域41dに挟まれた領域は、チャネル領域40cになる。
【0066】
図11(f)に示すように、エッチングストッパ層50を含むガラス基板15の全体を覆うように、高密度プラズマCVD法によって、例えばn型不純物を高濃度に含むn型微結晶シリコン膜61を成膜する。n型微結晶シリコン膜61の膜厚は30〜50nm、好ましくは35nmである。n型微結晶シリコン膜61の成膜には、モノシランガスと水素ガスだけでなく、n型不純物をドープするためにホスフィン(PH3)ガスも使用される。
【0067】
図11(g)に示すように、n型微結晶シリコン膜61の表面に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジストパターン(図示しない)を形成する。レジストパターンをマスクにして、ドライエッチング法により、n型微結晶シリコン膜61と微結晶シリコン膜41とを連続してエッチングする。その後、レジストパターンを剥離する。これにより、n型微結晶シリコン層62と島状のチャネル層40が形成される。また、チャネル領域40cの左側のn+領域41dはエッチングされてソース領域40aになり、右側のn+領域41dはエッチングされてドレイン領域40bになる。n型微結晶シリコン層62を含むガラス基板15の全体を覆うように、スパッタリング法によってソースメタル膜71を成膜する。ソースメタル膜71は、例えば、膜厚50〜200nmのチタンを含む金属膜である。
【0068】
図12(h)に示すように、ソースメタル膜71の表面に、フォトリソグラフィ法を用いて、エッチングストッパ層50の上方に開口部を有するレジストパターン75を形成する。図12(i)に示すように、レジストパターン75をマスクにして、ウエットエッチング法によりソースメタル膜71をエッチングし、ソース電極70aとドレイン電極70bを形成する。なお、ウエットエッチング法の代わりにプラズマエッチング法によって、ソースメタル膜71をエッチングしてもよい。
【0069】
さらに、レジストパターン75をマスクにして、プラズマエッチング法によりn型微結晶シリコン層62をエッチングし、エッチングストッパ層50の上面で左右に分離された2つのオーミックコンタクト層60a、60bを形成する。なお、チャネル領域40cの上面に、窒化シリコンからなるエッチングストッパ層50が形成されているので、n型微結晶シリコン膜61のエッチングはエッチングストッパ層50によって停止し、チャネル層40のチャネル領域40cがエッチングされることはない。このようにして形成されたオーミックコンタクト層60aはエッチングストッパ層50の左上端部からソース領域40aの左端部までを覆うように延在し、オーミックコンタクト層60bはエッチングストッパ層50の右上端部からドレイン領域40bの右端部までを覆うように延在する。
【0070】
図12(j)に示すように、ソース電極70aとドレイン電極70bを含むガラス基板15の全体を覆うように、窒化シリコンからなる保護膜80を成膜する。保護膜80は、プラズマCVD法により、モノシランガスとアンモニアガスを含む原料ガスを用いて成膜され、その膜厚は例えば200nmである。以上説明した一連の製造工程によって、TFT10が製造される。
【0071】
以上説明したように、微結晶シリコン膜41を1回の工程で成膜し、成膜した微結晶シリコン膜41に水素プラズマ処理を1回だけ施すのではなく、微結晶シリコン膜を堆積する工程と、水素プラズマ処理を施す工程を交互に複数回ずつ繰り返す。このような方法で微結晶シリコン膜41を成膜すれば、微粒子内のマイクロクリスタル成分やナノクリスタル成分に含まれるシリコン原子の未結合手を終端したり、アモルファス成分やナノクラスタ成分を改質したりすることを効率的に行なうことができるので、TFT10の移動度を高めることができる。
【0072】
微結晶シリコン膜41の成膜は、モノシランガスと水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用い、水素プラズマ処理は水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用いる。これにより、微結晶シリコン膜41の堆積と水素プラズマ処理とを交互に複数回繰り返すことが容易になり、微結晶シリコン膜41の成膜工程のスループットが低下することを防ぐことができる。
【0073】
微結晶シリコン膜41の堆積工程と水素プラズマ処理工程における水素ガスの流量は同じであるので、微結晶シリコン膜41の堆積工程と水素プラズマ処理工程の切り換えを容易に行なうことができる。これによっても、微結晶シリコン膜41の成膜工程のスループットが低下することを防ぐことができる。
【0074】
<3.第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るTFT10の製造方法について説明する。なお、本実施形態のTFT10の構成および各製造工程は、図4に示すTFT10の構成、および、図10〜図12に示すTFT10の製造工程と同じであるため、それらの図および説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係るTFT10の製造方法のうち、第1の実施形態に係るTFT10の製造方法と異なるのは、微結晶シリコン膜の成膜工程である。具体的には、微結晶シリコン膜の成膜条件のうち、モノシランガスの流量を、第1の実施形態のように一定量とするのではなく段階的に変化させていることだけが異なる。水素ガスの流量、基板温度、RFパワー、チャンバ内の真空度などは、第1の実施形態の成膜条件と同じであるので、それらの説明を省略する。
【0076】
図13は、本実施形態における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図13に示すように、微結晶シリコン膜を5nm成膜する工程と、成膜した微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を20秒間施す工程とを交互に3回ずつ繰り返すことによって、合計膜厚15nmの微結晶シリコン膜を成膜する。具体的には、水素用バルブを開いた状態で、例えば13秒間(12〜14秒間で適宜調整)だけモノシラン用バルブを開け、その後20秒間モノシラン用バルブを閉じる。このうち、1回目の堆積工程において、モノシラン用バルブを瞬時に開くのではなく、徐々に開くように制御して、モノシランガスの流量を0sccmから段階的に増やしていく。そして、モノシランガスの流量が所定の値(Va)に達したら、モノシラン用バルブを徐々に閉じるように制御して、モノシランガスを段階的に減らし、モノシラン用バルブを閉じるときには流量を0sccmにする。モノシラン用バルブを閉じている間、水素ガスを励起して生成した水素プラズマによって、水素プラズマ処理を施す。このように、モノシラン用バルブの開閉を3回繰り返すことによって、合計膜厚15nmの微結晶シリコン膜の成膜と、水素プラズマ処理とを交互に行なう。なお、2回目および3回目の堆積工程では、モノシラン用バルブを瞬時に開くので、モノシランガスの流量は、第1の実施形態におけるモノシランガスの流量と同様に、瞬時に一定になる。
【0077】
次に、モノシランガスの流量を段階的に変化させた場合の効果について説明する。モノシラン用バルブを徐々に開いて、モノシランガスの流量を段階的に増やしていく場合、水素ガスの流量は一定であるので、流量比Rは大きな値から徐々に小さな値に変化する。このような流量比Rの変化に伴い、基礎検討で求めた図8からわかるように、ゲート絶縁膜との界面には、結晶性の高いマイクロクリスタル成分を多く含む微結晶シリコン膜が堆積される。微結晶シリコン膜は、結晶性の高い成分を多く含むほど、結晶粒界の数が多くなり、欠陥の多い膜になる。そこで、モノシランガスの流量を段階的に増やして流量比Rを小さくして、アモルファス成分を多く含むようにする。これにより、微結晶シリコン膜の欠陥を少なくする。この場合、微結晶シリコン膜内に含まれる微粒子には、マイクロクリスタル成分だけでなく、ナノクリスタル成分、ナノクラスタ成分、およびアモルファス成分が多く含まれるようになるので、微結晶シリコン膜の移動度を高くすることができる。さらに、各堆積工程の終了後に、これらの微粒子に対して水素プラズマ処理を施すので、未結合手が終端されるとともに、アモルファス成分が改質される。これにより、TFTの移動度をより高くすることができる。
【0078】
なお、この実施形態においては、1回目の堆積工程において、モノシランガスの流量をXaまで段階的に増やしたが、2回目または3回目の堆積工程において、モノシランガスの流量を段階的にXaまで増やしてもよい。また、例えば1回目と2回目の成膜工程のように、任意の2回の堆積工程において、モノシランガスの流量のXaまで段階的に増やしてもよい。また、全ての堆積工程において、モノシランガスの流量のXaまで段階的に増やしてもよい。
【0079】
<3.1 第1の変形例>
第2の実施形態の第1の変形例に係るTFT10の製造方法について説明する。第1の変形例に係るTFTの製造方法では、3回に分けて行なう微結晶シリコン膜の成膜工程のうち、1回目の堆積工程において、第1の実施形態の場合と同様に、モノシランガスの流量を段階的に変化させる。図14は、第1の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図14に示すように、モノシラン用バルブを徐々に開き、モノシランガスの流量を0sccmから段階的に増やしていく。そして、モノシランガスの流量が所定の値Xb(Xb>Xa)に達したら、モノシランガスの流量を段階的に減少させ、モノシラン用バルブを閉じるときには、流量を0sccmにする。この場合、図14に示すモノシランガスの流量の最大値Xbは、図13に示すモノシランガスの流量の最大値Xaよりも大きいので、モノシランガスの流量が最大になったときに流量比Rは小さくなる。これにより、微結晶シリコン膜内の微粒子には、アモルファス成分やナノクラスタ成分などの非結晶性の成分を多く含む微結晶シリコン膜が成膜されるので、微結晶シリコン膜はより欠陥の少ない膜になり、移動度をより高くすることができる。
【0080】
なお、この変形例においては、1回目の堆積工程において、モノシランガスの流量をXbまで段階的に増やしたが、2回目または3回目の堆積工程において、モノシランガスの流量を段階的にXbまで増やしてもよい。また、例えば1回目と2回目の成膜工程のように、任意の2回の堆積工程において、モノシランガスの流量のXbまで段階的に増やしてもよい。また、全ての堆積工程において、モノシランガスの流量のXbまで段階的に増やしてもよい。
【0081】
<3.2 第2の変形例>
第2の実施形態の第2の変形例に係るTFT10の製造方法について説明する。図15(a)および図15(b)は、第2の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図であり、図15(a)はモノシランガスの最大流量がXaの場合の図であり、図15(b)はモノシランガスの最大流量がXbの場合の図である。図15(a)および図15(b)に示すように、モノシランガスの流量を連続的に変化させる。モノシランガスの流量を連続的に変化させて成膜した微結晶シリコン膜は、段階的に変化させて成膜した微結晶シリコン膜と同様に欠陥の少ない膜になり、移動度を高くすることができる。
【0082】
<4.第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態に係るTFT10の製造方法について説明する。なお、本実施形態のTFT10の構成および各製造工程は、図4に示すTFT10の構成、および、図10〜図12に示す第1の実施形態で説明した製造工程と同じであるため、それらの図および説明を省略する。
【0083】
本実施形態に係るTFT10の製造方法のうち、第1の実施形態に係るTFT10の製造方法と異なるのは、n型不純物を高濃度にドープした微結晶シリコン膜であるn型微結晶シリコン膜の成膜方法である。
【0084】
図16は、本実施形態におけるn型微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図16に示すように、膜厚350nmのn型微結晶シリコン膜を、3回の成膜工程に分けて堆積する工程と、堆積した微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施す工程とを交互に3回ずつ繰り返すことによって成膜する。この場合、モノシラン用バルブと水素バルブだけでなく、ホスフィン用バルブも設けられている。ホスフィン用バルブは、モノシラン用バルブを1回目および2回目に開いたときには閉じられており、3回目に開かれたときに同時に開かれる。このように、1回目から3回目の堆積工程のうち3回目の堆積工程のときだけ、ホスフィン用バルブを開くので、微結晶シリコン膜に含まれる微粒子のうち、3回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜のみにリンがドープされる。
【0085】
図17(a)〜図17(c)は、3回に分けて成膜したn型微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。図17に示すように、微結晶シリコン膜からなるソース領域/ドレイン領域40a、40b上に、1回目から3回目の堆積工程によって微結晶シリコン膜が順に堆積されている。図9の場合と同様に、マイクロクリスタル成分、アモルファス成分などを含む微粒子65が堆積されることによってn型微結晶シリコン膜が成膜される。この場合も、1回目の堆積工程では多くのボイド63が発生し、2回目、3回目の堆積工程となるにつれて、ボイド63の数は少なくなる。
【0086】
また、3回目の堆積工程では、水素ガスとモノシランガスだけでなく、ホスフィンガスもチャンバ内に供給される。これにより、3回目の堆積工程では、リンがドープされた微粒子66も堆積されるので、3回目に堆積された微結晶シリコン膜の抵抗値は小さくなる。この場合、n型微結晶シリコン膜の全体にリンがドープされる場合と比べて、n型微結晶シリコン膜の抵抗値が小さくなりすぎることはない。これにより、オフ電流が大きくなることを防止することができる。また、3回目の堆積工程で堆積されたn型微結晶シリコン膜のリン濃度が高くなるので、n型微結晶膜をパターニングしたオーミックコンタクト層60a、60bと、ソース電極70aおよびドレイン電極70bとをそれぞれオーミック接続することができる。
【0087】
このように、3回目の堆積工程で、モノシランガスと、水素ガスと、ホスフィンガスとを励起して生成したプラズマを用いてn型微結晶半導体膜を堆積するので、リンを容易にドープすることができる。これにより、n型微結晶半導体膜の成膜工程のスループットが低下することを防ぐことができる。
【0088】
なお、3回の堆積工程のうち、1回目または2回目のいずれかの成膜工程におけるモノシラン用バルブを開くときに同時に、ホスフィン用バルブを開いてもよい。また、例えば2回目と3回目の成膜工程のように、任意に選択した2つの成膜工程において、モノシラン用バルブを開くときに同時に、ホスフィン用バルブを開いてもよい。
【0089】
<4.1 変形例>
第3の実施形態の変形例に係るTFT10の製造方法について説明する。図18は、本実施形態の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図18に示すように、n型微結晶シリコン膜を3回の堆積工程に分けて堆積する。1回目の堆積工程では、ホスフィン用バルブは閉じられており、所定の流量比Rになるように水素ガスとモノシランガスをチャンバ内に供給する。2回目の堆積工程では、ホスフィン用バルブを徐々に開き、ホスフィンガスの流量を0sccmから段階的に増やしていく。そして、ホスフィンガスの流量が所定の値に達したら、ホスフィンガスの流量を段階的に減少させ、モノシラン用バルブを閉じるときには、流量を0sccmにする。3回目の堆積工程では、モノシラン用バルブを開けるときに同時に瞬時に開き、水素ガスとモノシランガスだけでなく、一定の流量のホスフィンガスもチャンバ内に同時に供給する。
【0090】
このように、2回目の堆積工程では、ホスフィン用バルブを段階的に開くので、それにともなってチャンバ内に供給されるホスフィンガスも少しずつ増加する。それに応じて、2回目の堆積工程で堆積されたn型微結晶シリコン膜を構成する微粒子のうち、リンをドープされた微粒子の割合は膜厚方向に少しずつ多くなる。そして、3回目の堆積工程では、一定量のホスフィンガスが供給されるので、堆積されたn型微結晶シリコン膜のリン濃度は均一な所定の値になる。
【0091】
このように、2回目の堆積工程において、ホスフィンガスの流量を段階的に増やせば、n型微結晶半導体膜の抵抗値が小さくなりすぎることをより防止することができる。これにより、オフ電流が大きくなることをより防止することができる。
【0092】
なお、上記変形例では、1回目の堆積工程において、ホスフィン用バルブを閉じ、2回目の堆積工程において、ホスフィン用バルブを徐々に開いた。しかし、1回目の堆積工程においてホスフィン用バルブを徐々に開けてホスフィンの流量を段階的に変化させ、2回目の堆積工程においてホスフィン用バルブを閉じてもよい。また、1回目および2回目の堆積工程において、ホスフィン用バルブを徐々に開けてホスフィンの流量を段階的に変化させてもよい。また、ホスフィンガスの流量を連続的に変化させてもよい。ホスフィンガスの流量を連続的に増やした場合の効果は、段階的に増やした場合の効果と同じであるので、その説明を省略する。
【0093】
<5.第4の実施形態>
上述の各実施形態において説明した製造方法によって製造されたTFT10では、移動度を高くすることができる。そこで、このようなTFT10を用いて液晶表示装置の画素形成部のスイッチング素子を形成すれば、スイッチング速度を速くすることができる。また、液晶表示装置の駆動回路を形成すれば、駆動回路の動作速度を速くすることができる。このように、TFT10の製造方法を含む製造方法によって、高品位の映像を表示する液晶表示装置を製造することができる。
【0094】
<6. その他>
上記各実施形態のチャネル層40やオーミックコンタクト層60a、60bを構成する半導体材料はシリコンであると説明した。しかし、チャネル層40やオーミックコンタクト層60a、60bを、ゲルマニウムシリコンなどの半導体材料で形成してもよい。
【0095】
上記各実施形態のTFTは、nチャネル型であるとして説明したが、pチャネル型であってもよい。この場合、オーミックコンタクト層60a、60bを形成するための微結晶シリコン膜には、ボロン(B)などのp型不純物をドープする必要がある。この場合、ホスフィンガスの代わりに、例えばジボラン(B2H6)ガスをチャンバ内に供給することにより、p型不純物がドープされた微結晶シリコン膜を成膜する。
【0096】
上記各実施形態の微結晶シリコン膜およびn型微結晶シリコン膜の成膜には、モノシランガスを使用したが、ジクロルシラン(SiH2Cl2)ガスやジシラン(Si2H6)ガスを使用してもよい。
【0097】
TFTを用いて製造される表示パネルには、液晶表示装置の他にも、有機EL(Electroluminescence)表示装置やプラズマ表示装置などの表示装置が含まれる。
【符号の説明】
【0098】
10…薄膜トランジスタ(TFT)
15…ガラス基板(絶縁基板)
20…ゲート電極
30…ゲート絶縁膜
40…チャネル層
40a…ソース領域
40b…ドレイン領域
41…微結晶シリコン膜
60a、60b…オーミックコンタクト層
61…n型微結晶シリコン膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および表示パネルの製造方法に関し、特に、微結晶半導体膜を含むチャネル層を備えた半導体装置の製造方法、および、そのような半導体装置の製造方法を含む表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と略す)のチャネル層には、非晶質シリコン膜、または、非晶質シリコン膜にレーザアニールなどのアニール処理を施して形成した多結晶シリコン膜が用いられていた。しかし、非晶質シリコン膜を用いた場合には、TFTの移動度は0.5cm2/V・sec程度と低い。これに対して、多結晶シリコン膜を用いた場合には、TFTの移動度は高くなるが、アニール処理が必要になるので、製造工程が複雑化し、スループットが低下する。
【0003】
そこで、近年、非晶質シリコン膜を用いた場合よりも移動度が高く、かつスループットを低下させないで成膜できる微結晶シリコン膜が、TFTのチャネル層として用いられるようになってきた。
【0004】
このような微結晶シリコン膜の結晶粒(grain)内では、シリコン原子は共有結合しているので、シリコン原子の未結合手(dungling bond)は少ない。しかし、結晶粒界(grain boundary)には、共有結合の相手を失ったシリコン原子の未結合手が多く存在する。このような未結合手は、電子やホールをトラップしてその移動を妨げるので、TFTの移動度を低下させる原因になっていた。
【0005】
そこで、特許文献1には、チャネル層となる微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施すことによって、結晶粒界に存在する未結合手を水素イオンや水素ラジカルによって終端するTFTの製造方法が開示されている。より詳しく説明すると、高密度プラズマを用いて成膜した微結晶シリコン膜をパターニングしてチャネル層を形成する。その後、ソース電極とドレイン電極を形成した後に、微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施すことによって、微結晶シリコン膜の結晶粒界に存在する未結合手を終端する。未結合手の多くが終端されれば、電子やホールは未結合手にトラップされにくくなるとともに、結晶粒界の障壁が低くなる。この結果、電子やホールは移動しやすくなるので、TFTの移動度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−71163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のTFTの製造方法のように、ソース電極とドレイン電極を形成した後に、微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施すだけでは、微結晶シリコン膜の結晶粒界に存在する未結合手を十分に終端することができない。また、微結晶シリコン膜は、結晶成分と非結晶成分とが混合された薄膜であるので、TFTの移動度は非結晶成分によっても影響を受ける。しかし、特許文献1は、非結晶成分を改質する処理を開示していない。このように、特許文献1に記載の水素プラズマ処理を施すだけでは、微結晶半導体膜からなるチャネル層の移動度を向上させることはできない。
【0008】
そこで、本発明は、微結晶半導体膜を含むチャネル層の移動度を向上させる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、絶縁基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、第1の微結晶半導体膜を含む島状のチャネル層とを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記第1の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記第1の微結晶半導体膜を少なくとも1回以上の回数に分けて堆積する第1の堆積工程と、
前記第1の堆積工程を終了するごとに水素プラズマ処理を施す第1の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第1の堆積工程は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分と水素ガスとを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて前記第1の微結晶半導体膜を堆積する工程を含み、
前記第1の水素プラズマ処理工程は、水素ガスを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて水素プラズマ処理を施す工程を含むことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで段階的に変化させることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第2の発明において、
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで連続的に変化させることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第3または第4の発明において、
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を、前記第1の流量よりも多い第2の流量まで段階的または連続的に変化させることを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、第2の発明において、
前記第1の堆積工程および前記第1の水素プラズマ処理工程における前記水素ガスの流量は同じであることを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、第2の発明において、
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスは、モノシラン、ジシラン、またジクロルシランのいずれかであり、
前記第1の微結晶半導体膜は、微結晶シリコン膜であることを特徴とする。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、
前記第1の堆積工程で堆積される前記微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmずつであることを特徴とする。
【0017】
第9の発明は、第1の発明において、
前記チャネル層の両端部にそれぞれ形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域の上方にそれぞれ設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース領域と前記ソース電極との間、および、前記ドレイン領域と前記ドレイン電極との間にそれぞれ設けられたオーミックコンタクト層とをさらに備え、
前記オーミックコンタクト層は第1または第2の導電型の不純物がドープされた第2の微結晶半導体膜を含み、
前記第2の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記不純物がドープされていない微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第2の堆積工程と、
前記不純物がドープされた微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第3の堆積工程と、
前記第2または第3の堆積工程を終了するごとに、その表面に水素プラズマ処理を施す第2の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
第10の発明は、第9の発明において、
少なくとも前記第2の微結晶半導体膜の表面は、前記第3の堆積工程によって堆積された微結晶半導体膜で覆われていることを特徴とする。
【0019】
第11の発明は、第9の発明において、
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を段階的に変化させることを特徴とする。
【0020】
第12の発明は、第9の発明において、
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を連続的に変化させることを特徴とする。
【0021】
第13の発明は、第9の発明において、
前記第3の堆積工程は、前記第2の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスと、前記水素ガスと、前記不純物を含むガスとを励起して生成したプラズマを用いて前記第2の微結晶半導体膜を堆積することを特徴とする。
【0022】
第14の発明は、絶縁基板上に複数の半導体装置が配列された表示装置の製造方法であって、
前記半導体装置を第1から第13のいずれかの発明に係る製造方法によって製造する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明によれば、チャネル層に含まれる第1の微結晶半導体膜は、少なくとも1回以上の回数に分けて第1の微結晶半導体膜を堆積し、堆積を終了するごとに水素プラズマ処理を施す。これにより、第1の微結晶半導体膜内のマイクロクリスタル成分やナノクリスタル成分に含まれる原子の未結合手を終端したり、アモルファス成分やナノクラスタ成分を改質したりすることをより効率的に行なうことができるので、第1の微結晶半導体膜の移動度をより高めることができる。
【0024】
上記第2の発明によれば、第1の微結晶半導体膜の成膜は、第1の微結晶半導体膜を構成する成分と水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用い、水素プラズマ処理は水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用いる。これにより、第1の微結晶半導体膜の堆積と水素プラズマ処理とを交互に複数回繰り返すことが容易になり、第1の微結晶半導体膜の成膜工程のスループットの低下を防ぐことができる。
【0025】
上記第3および第4の発明によれば、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を段階的または連続的に増やす。この場合、水素ガスの流量は一定であるので、流量比は大きな値から徐々に小さな値に変化する。このような流量比の値の変化に伴い、第1の微結晶半導体膜内に含まれる微粒子には、結晶性の高いマイクロクリスタル成分だけでなく、ナノクリスタル成分、ナノクラスタ成分、アモルファス成分も多く含まれるようになるので、第1の微結晶半導体膜の移動度を高くすることができる。
【0026】
上記第5の発明によれば、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスを、第1の流量よりも多い第2の流量まで段階的または連続的に変化させる。この場合、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を連続的に変化させれば、流量比はより小さくなる。これにより、第1の微結晶半導体膜内に含まれる微粒子には、ナノクリスタル成分、ナノクラスタ成分、アモルファス成分もより多く含まれるようになるので、第1の微結晶半導体膜の移動度をより高くすることができる。
【0027】
上記第6の発明によれば、第1の堆積工程と第1の水素プラズマ処理工程における水素ガスの流量は同じであるので、第1の堆積工程と第1の水素プラズマ処理工程の切り換えを容易に行なうことができる。これにより、第1の微結晶半導体膜の成膜工程のスループットの低下を防ぐことができる。
【0028】
上記第7の発明によれば、第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスは、モノシラン、ジシラン、ジクロルシランのいずれかであるので、第1の微結晶半導体膜である微結晶シリコン膜を容易に成膜することができる。
【0029】
上記第8の発明によれば、1回の堆積工程で堆積する第1の微結晶シリコン膜の膜厚が3nmよりも薄くなれば、生成したプラズマが安定しない状態で堆積されるので、第1の微結晶シリコン膜内の各成分のばらつきが大きくなる。膜厚が7nmよりも厚くなれば、堆積された第1の微結晶シリコン膜の全体に十分な水素プラズマ処理を施すことが困難になる。これにより1回の堆積工程で堆積する第1の微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmであることが好ましい。
【0030】
上記第9の発明によれば、第2の微結晶半導体膜の成膜工程には、不純物がドープされていない微結晶半導体膜を堆積する工程だけではなく、不純物がドープされた微結晶半導体膜を堆積する工程も含まれている。不純物がドープされた微結晶半導体膜を堆積する工程では、不純物がドープされた微粒子も堆積されるので、微結晶半導体膜の抵抗値が小さくなる。この場合、第2の微結晶半導体膜の一部に不純物がドープされるだけなので、その全体に不純物がドープされる場合と比べて、抵抗値が小さくなりすぎることはない。これにより、オフ電流が大きくなることを防止することができる。
【0031】
上記第10の発明によれば、第2の微結晶半導体膜の表面の不純物濃度が高くなるので、第2の微結晶半導体膜をパターニングしたオーミックコンタクト層と、ソース電極およびドレイン電極とをオーミック接続することができる。
【0032】
上記第11または第12の発明によれば、不純物を含むガスの流量を段階的または連続的に増やす。これにより、第2の微結晶半導体膜の抵抗値が小さくなりすぎることをより防止することができるので、オフ電流が大きくなることをより防止することができる。
【0033】
上記第13の発明によれば、第2の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスと、水素ガスと、不純物を含むガスとを励起して生成したプラズマを用いて前記第2の微結晶半導体膜を堆積する。これにより、不純物を容易にドープすることができるので、第2の微結晶半導体膜の成膜工程のスループットの低下を防ぐことができる。
【0034】
上記第14の発明によれば、第1から第12のいずれかの発明に係る製造方法によって製造された半導体装置に含まれる第1および第2の微結晶半導体膜の移動度を向上させることができる。このような半導体装置を用いて表示装置のスイッチング素子を形成すれば、スイッチング速度を速くすることができる。また、半導体装置を用いて表示装置の駆動回路を形成すれば、駆動回路の動作速度を速くすることができる。このように、TFT10の製造方法を含む製造方法によって、高品位の映像を表示する表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】微結晶シリコン膜のラマン測定結果をピーク分離した図である。
【図2】図1に示すピーク分離を行なった4つの成分の割合の一例を示す図である。
【図3】流量比を変えて成膜した微結晶シリコン膜について、流量比と各成分の割合との関係を示す図である。
【図4】基礎検討で使用したボトムゲート型TFTの構成を示す断面図である。
【図5】基礎検討において基準となる微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図6】図5に示す方法によって成膜された微結晶シリコン膜を使用したときの流量比と移動度との関係を示す図である。
【図7】基礎検討において検討した微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図8】図7に示す方法によって成膜された微結晶シリコン膜を使用したときの流量比と移動度との関係を示す図である。
【図9】(a)〜(c)は、図7に示す方法で成膜した微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。
【図10】第1の実施形態におけるTFTの各製造工程を示す工程断面図である。
【図11】第1の実施形態におけるTFTの各製造工程を示す工程断面図である。
【図12】第1の実施形態におけるTFTの各製造工程を示す工程断面図である。
【図13】第2の実施形態における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図14】第2の実施形態の第1の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図15】(a)および(b)は、第2の実施形態の第2の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図16】第3の実施形態におけるn型微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【図17】(a)〜(c)は、図16に示す方法で成膜したn型微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。
【図18】第3の実施形態の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<1.基礎検討>
微結晶シリコン膜の表面状態を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:以下、「AFM」という)を用いて観察した。ここで、AFMとは、先端の鋭いカンチレバー(探針)を用いて試料の表面をなぞることにより、試料の原子とカンチレバーの原子との間に作用する力を検出して、表面付近の画像を表示する装置である。AFMによって、微結晶シリコン膜の表面状態を観察した結果、微結晶シリコン膜は多数の微粒子によって構成されていることがわかった。微結晶シリコンの形成過程のモデルを検討した文献(例えば、Controlled Growth of Silicon Nanocrystals in a Plasma Reactor, Holger Vach and Quentin Brulin, PHYSICAL REVIEW LETTERS 95, 165502(2005)など)によれば、これらの微粒子は、結晶成分と非結晶成分とを含む微粒子であると考えられる。
【0037】
そこで、プラズマ化学的気相成長法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:以下、「プラズマCVD法」という)によって、膜厚50nmの微結晶シリコン膜を成膜し、その成分を詳しく調べた。微結晶シリコン膜の成膜条件は、基板温度を250℃、RFパワーを250W、水素(H2)ガスの流量を650sccmとした。モノシラン(SiH4)ガスは、2.5〜4.0sccmの範囲で変えて、複数の微結晶シリコン膜を成膜した。このような条件で成膜した微結晶シリコン膜を、波数50〜750cm-1の範囲でラマン測定を行い、さらに波形分離ソフトを用いてラマン強度のピーク分離を行なった。
【0038】
図1は、微結晶シリコン膜のラマン測定結果をピーク分離した図である。図1に示すように、アモルファス成分とマイクロクリスタル成分との間に、ブロードなピークとシャープなピークとが存在することがわかった。ブロードなピークは、シリコン原子がアモルファス成分よりも部分的に規則性を有するナノクラスタ成分のピークであり、シャープなピークは、ナノクラスタ成分が集合したナノオーダーの結晶構造を有するナノクリスタル成分のピークであると考えられる。また、アモルファス成分のピークよりも波数の小さい側にブロードなピークが存在する。このブロードなピークはアモルファス成分の別のモードであり、以下の説明では省略する。
【0039】
このようにして求めた4つの成分は、アモルファス成分、ナノクラスタ成分、ナノクリスタル成分、マイクロクリスタル成分の順に結晶性が高くなる。図1に示すように、マイクロクリスタル成分の波形はローレンツ(Lorentz)波形になり、ナノクリスタル成分の波形はガウス−ローレンツ(Gaussian-Lorentz)波形になり、ナノクラスタ成分およびアモルファス成分の波形はガウス(Gaussian)波形になる。
【0040】
図2は、ピーク分離を行なった4つの成分の割合の一例を示す図である。図2に示すように、ラマン測定によって求めた4つの成分波形の面積を求め、求めた面積の割合から、微結晶シリコン膜を構成する各成分の割合を求める。このようにして、微結晶シリコン膜に含まれる4つの成分の割合が分かれば、微結晶シリコンの原料ガスである水素(H2)ガスとモノシランガスの流量比R(R=H2ガスの流量/SiH4ガスの流量)と4つの成分の割合との関係を求めることができる。
【0041】
図3は、流量比Rを変えて成膜した微結晶シリコン膜について、流量比Rと各成分の割合との関係を示す図である。図3に示すように、流量比Rが小さい場合、すなわち水素ガスの流量が少ない場合には、マイクロクリスタル成分の割合が少なく、アモルファス成分の割合が多くなる。しかし、流量比Rが大きくなるにつれてアモルファス成分の割合が少なくなるとともに、マイクロクリスタル成分の割合が多くなることがわかる。従来の研究によって、マイクロクリスタル成分の割合が多くなると結晶粒の数が多くなるので、結晶粒界の数も多くなり、移動度が低くなることがわかっている。また、移動度を高くするためには、アモルファス成分やナノクラスタ成分などをある程度含んでいることが必要であることもわかっている。
【0042】
そこで、上記4つの成分を含む微結晶シリコン膜の移動度をより高くするためには、マイクロクリスタル成分に含まれるより多くのシリコン原子の未結合手を終端することと、アモルファス成分を改質することが有効である。この明細書において、アモルファス成分の改質とは、弱いSi−Si結合をエッチングして除去するだけではなく、アモルファス成分内に微細なSi−Si結合を形成することをいう。具体的には、水素プラズマに含まれる水素ラジカル(Hラジカル)がSi−H結合を切断すると、水素ラジカルは切断したH原子と結合して水素ガスになって微結晶シリコン膜から抜け、残されたSi原子同士が共有結合する。この結果、アモルファス成分は局所的に結晶化される。このように、局所的に結晶化することを改質するという。また、微結晶シリコン膜の未結合手の多くは、AFMによる画像から、微粒子によって囲まれた空間(三重点)に面する微粒子の表面に存在していると考えられている。そこで、これらの未結合手を、水素プラズマに含まれる水素イオンや水素ラジカルによって終端する。
【0043】
このように、マイクロクリスタル成分だけでなく、アモルファス成分やナノクラス成分なども多く含む微結晶シリコン膜を成膜し、さらに微結晶シリコン膜を水素プラズマ処理することによって、微結晶シリコン膜の移動度を向上させることができる。
【0044】
微結晶シリコン膜からなるチャネル層を有するTFTを用いて、流量比Rと移動度の関係を求めた。まず、この検討に使用したTFT10の構成を説明する。図4は、ボトムゲート型TFT10の構成を示す断面図である。図4を参照して、TFT10の構成を説明する。絶縁基板であるガラス基板15上に、ゲート電極20が形成されている。ゲート電極20を含むガラス基板15の全体を覆うように、窒化シリコン膜からなるゲート絶縁膜30が形成されている。ゲート絶縁膜30の膜厚は、例えば350nmである。
【0045】
ゲート絶縁膜30の表面に、平面視においてゲート電極20を跨いで左右に延びる島状のチャネル層40が形成されている。チャネル層40は微結晶シリコン膜からなり、その膜厚は、例えば50nmである。チャネル層40は、不純物を含まない真性の微結晶シリコン膜からなるチャネル領域40cと、チャネル領域40cを挟むように形成され、高濃度のn型不純物をドープされたソース領域40aおよびドレイン領域40bとを含む。なお、微結晶シリコン膜の成膜条件については後述する。
【0046】
チャネル領域40cの表面中央に、窒化シリコン膜からなるエッチングストッパ層50が形成されている。エッチングストッパ層50の左端上面からソース領域40aの左端部まで覆うように延在するオーミックコンタクト層60aと、エッチングストッパ層50の右端上面からドレイン領域40bの右端部まで覆うように延在するオーミックコンタクト層60bが形成されている。これらのオーミックコンタクト層60a,60bは、n型不純物を高濃度にドープしたn型微結晶シリコン膜からなり、エッチングストッパ層50の上面で左右に分離されている。
【0047】
オーミックコンタクト層60a上の右端部からオーミックコンタクト層60aを覆ってゲート絶縁膜30上まで延在するソース電極70aと、オーミックコンタクト層60b上の左端部からオーミックコンタクト層60bを覆ってゲート絶縁膜30上まで延在するドレイン電極70bとが形成されている。ソース電極70aはオーミックコンタクト層60aを介してソース領域40aとオーミック接触するように接続され、ドレイン電極70bはオーミックコンタクト層60bを介してドレイン領域40bとオーミック接触するように接続されている。さらに、ソース電極70aとドレイン電極70bを含むガラス基板15の全体を覆うように、窒化シリコン膜からなる保護膜80が形成されている。
【0048】
次に、上記TFT10の構成要素のうち、チャネル層となる微結晶シリコン膜の成膜条件について説明する。微結晶シリコン膜の成膜条件は以下のとおりである。
微結晶シリコン膜の成膜条件
原料ガス:水素ガス(流量650sccm)
モノシランガス(流量は適宜変更)
基板温度:250℃
RFパワー:250W
チャンバ内の真空度:110Pa
また、成膜された微結晶シリコン膜に施す水素プラズマ処理の条件は以下のとおりである。
水素プラズマ処理の条件
原料ガス:水素ガス(流量650sccm)
基板温度:250℃
RFパワー:175W
チャンバ内の真空度:110Pa
【0049】
まず、本発明による効果を評価するために、基準となる微結晶シリコン膜について説明する。図5は、基準となる微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図5に示すように、所定の流量のモノシランガスを水素ガスとともにプラズマCVD装置のチャンバ内に供給することによって、膜厚15nmの微結晶シリコン膜を1回の成膜工程で成膜し、その後微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を60秒間施した。同様の方法で、モノシランガスの流量を変えて、複数種類の微結晶シリコン膜を成膜した。
【0050】
次に、上述の微結晶シリコン膜からなるチャネル層を備えるTFTを用いてその移動度を測定し、流量比Rと移動度との関係を求めた。図6は、基準となるTFTにおける、流量比Rと移動度との関係を示す図である。図6からわかるように、移動度は、流量比Rが225のときに最大となり、流量比Rが225より大きくなっても、小さくなっても、低くなることがわかる。
【0051】
次に、本発明で使用する微結晶シリコン膜の成膜方法の検討結果を説明する。図7は、本発明で使用する微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図7に示すように、微結晶シリコン膜を5nmずつ堆積する工程と、堆積した微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を20秒間施す工程とを交互に3回ずつ繰り返すことによって、合計膜厚15nmの微結晶シリコン膜を成膜した。
【0052】
具体的には、図7に示すように、水素用バルブは常に開いた状態であるため、水素ガスはチャンバ内に連続的に供給されている。一方、モノシラン用バルブは、例えば13秒間(12〜14秒間で適宜調整)開き、20秒間閉じることを3回繰り返す。モノシラン用バルブが1回開くごとに、モノシランガスがチャンバ内に供給されて5nmずつ微結晶シリコンが堆積される。モノシラン用バルブが閉じたときには、水素ガスを励起して生成したプラズマによって、堆積された微結晶シリコン膜に含まれるアモルファス成分の改質と未結合手の終端が行なわれる。モノシラン用バルブの開閉を3回繰り返すことによって、微結晶シリコン膜の合計膜厚は15nmとなる。なお、モノシラン用バルブは、瞬時に開かれたり閉じられたりするので、チャンバに供給されるモノシランガスは瞬時に一定量になったり、0sccmになったりする。同様の方法で、モノシランガスの流量を変えて、複数種類の微結晶シリコン膜を成膜した。
【0053】
なお、1回の堆積工程で堆積する微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmであることが好ましい。堆積する微結晶シリコン膜の膜厚が3nmよりも薄くなれば、生成したプラズマが安定しない状態で堆積されるので、微結晶シリコン膜内の各成分のばらつきが大きくなる。膜厚が7nmよりも厚くなれば、堆積された微結晶シリコン膜の全体に十分な水素プラズマ処理を施すことが困難になる。
【0054】
次に、上述の微結晶シリコン膜からなるチャネル層40を備えるTFT10を用いてその移動度を測定し、流量比Rと移動度との関係を求めた。図8は、図7に示す方法によって成膜された微結晶シリコン膜をチャネル層とするTFTにおける、流量比Rと移動度との関係を示す図である。図8に示すように、流量比Rが小さくなればなるほど、アモルファス成分が多く、マイクロクリスタル成分が少なくなるにもかかわらず、図6に示す場合と異なり、移動度は高くなる。なお、図8には、図6に示す移動度も比較のために記載されている。
【0055】
微結晶シリコン膜を成膜する際に、目標とする膜厚を一度に成膜するのではなく、数nm(例えば5nm)の膜厚の微結晶シリコン膜を堆積する堆積工程と、堆積した微結晶シリコン膜を水素プラズマ処理する水素プラズマ処理工程とを順に繰り返すことによって、移動度が高くなる理由を次のように考える。図9(a)〜図9(c)は、3回に分けて成膜した微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。まず、ゲート絶縁膜30上に、1回目の微結晶シリコン膜を堆積する堆積工程について説明する。図9(a)に示すように、微結晶シリコン膜はナノクリスタル成分およびマイクロクリスタル成分などの結晶成分を含む。微結晶シリコンの微粒子45が微結晶シリコン膜の表面に供給される速度は、微粒子45がゲート絶縁膜の結晶状態と整合性をとりながら堆積する速度よりも速いので、微粒子45はゲート絶縁膜30の結晶状態と十分に整合性をとることなく堆積される。この結果、微結晶シリコン膜には、微粒子が存在しない空間43(以下、「ボイド(void)43」という)が多く発生する。
【0056】
2回目の堆積工程前には、1回目の堆積工程で成膜された微結晶シリコン膜がすでに堆積されている。2回目の堆積工程で新たに堆積される微結晶シリコン膜に含まれる微粒子45は、1回目の堆積工程で成膜された微結晶シリコン膜の微粒子45と結晶性の整合をとりやすくなる。この結果、微結晶シリコンからなる微粒子45が微結晶シリコン膜の表面に供給される速度と、微粒子45が1回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜の微粒子45と整合性をとりながら堆積する速度とが同程度になる。これにより、図9(b)に示すように、2回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜に含まれるボイド43は少なくなる。
【0057】
3回目の堆積工程時には、すでに1回目および2回目に堆積した微結晶シリコン膜が堆積されている。したがって、図9(c)に示すように、微結晶シリコンの微粒子45は、2回目の堆積工程よりもさらに、微結晶シリコン膜と短時間で整合性をとりながら堆積する。このため、3回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜に含まれるボイド43はさらに少なくなる。
【0058】
このようにして成膜された微結晶シリコン膜では、ゲート絶縁膜30に近い側にボイド43が多く含まれ、ゲート絶縁膜30から遠くなるにしたがってボイド43が少なくなる。したがって、微結晶シリコン膜の成膜を複数回に分け、その都度水素プラズマ処理を施せば、微粒子45の表面に多く存在する未結合手の終端や、微粒子45に含まれるアモルファス成分の改質を効率よく行なうことができる。これにより、微結晶シリコン膜の移動度を高くすることができる。特に、ゲート絶縁膜30との界面付近に多くのボイド43が形成された微結晶シリコン膜をチャネル層とするTFT10では、ボイド43が多く含まれる領域は、チャネル層40の中でも最も大きな電界がかかる領域であるので、オフ電流が流れやすくなる。そこで、水素イオンや水素ラジカルによって、ボイドを囲む微粒子の表面の未結合手を終端したり、アモルファス成分を改質したりすれば、オフ電流を小さくすることができる。
【0059】
<2.第1の実施形態>
以下、図4に示すボトムゲート型TFT10について、各実施形態に係る製造方法を順に説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係るTFT10の製造方法について説明する。ここでは、アクティブマトリクス型液晶表示装置の製造プロセスにおいて、表示パネルに設けられた各画素のスイッチング素子として機能するTFTを例に挙げ、その製造方法を説明する。しかし、本発明はこれに限定されず、液晶表示装置の表示パネルの周辺に設けられる駆動回路を構成するTFTの製造にも適用される。
【0060】
図10〜図12は、図4に示すTFT10の各製造工程を示す工程断面図である。図10〜図12を参照しつつ、TFT10の製造方法を説明する。まず、ガラス基板15上に、スパッタリング法によって、例えば膜厚100〜500nmのチタン(Ti)を主成分とする金属膜(図示しない)を成膜する。なお、Tiを主成分とする金属膜の代わりに、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)等を主成分とする金属膜、またはそれらの合金からなる金属膜を成膜してもよい。
【0061】
金属膜の表面に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストパターン(図示しない)を形成する。図10(a)に示すように、レジストパターンをマスクにして、金属膜をウエットエッチング法によりエッチングし、ゲート電極20を形成する。その後、レジストパターンを剥離する。なお、ウエットエッチング法の代わりに、ドライエッチング法を用いてゲート電極20を形成してもよい。
【0062】
図10(b)に示すように、ゲート電極20を含むガラス基板15の全体を覆うように、プラズマCVD法を用いて、ゲート絶縁膜30となる窒化シリコン膜を成膜する。窒化シリコン膜は、モノシランガス(SiH4)、窒素ガス(N2)、アンモニアガス(NH3)、および水素ガス(H2)を用いて成膜され、その膜厚は、例えば膜厚200〜500nmであり、好ましくは350nmである。
【0063】
図10(c)に示すように、ゲート絶縁膜30の表面に、微結晶シリコン膜41を成膜する。微結晶シリコン膜41は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式または表面波プラズマ方式などの高密度プラズマCVD装置を用いて成膜される。本実施形態では、成膜される微結晶シリコン膜41の膜厚は、10〜20nmであり、好ましくは15nmである。微結晶シリコン膜41の膜厚を15nmとした場合、微結晶シリコン膜を5nmずつ3回に分けて成膜し、その間に水素プラズマ処理を1回ずつ施す。なお、微結晶シリコン膜41の成膜条件および水素プラズマ処理条件は、基礎検討で説明した微結晶シリコン膜の成膜条件および水素プラズマ処理条件とそれぞれと同一であるので、その説明を省略する。
【0064】
図10(d)に示すように、プラズマCVD法を用いて、微結晶シリコン膜41の表面に窒化シリコン膜51を成膜する。窒化シリコン膜51の成膜条件は、ゲート絶縁膜30の成膜条件と膜厚を除いて同じである。窒化シリコン膜51の膜厚は例えば150nmである。次に、窒化シリコン膜51の表面上であって、微結晶シリコン膜41を間に挟んでゲート電極20と対向する位置に、フォトリソグラフィ法によってレジストパターン55を形成する。
【0065】
図11(e)に示すように、レジストパターン55をマスクにして、プラズマエッチング法により窒化シリコン膜51をエッチングして、エッチングストッパ層50を形成する。さらに、レジストパターン55をマスクにして、イオン注入法またはイオンドーピング法により、微結晶シリコン膜41に、リン(P)などのn型不純物を高濃度になるようにドープする。その後、レジストパターン55を剥離する。この結果、微結晶シリコン膜41の両端にそれぞれn+領域41dが形成され、2つのn+領域41dに挟まれた領域は、チャネル領域40cになる。
【0066】
図11(f)に示すように、エッチングストッパ層50を含むガラス基板15の全体を覆うように、高密度プラズマCVD法によって、例えばn型不純物を高濃度に含むn型微結晶シリコン膜61を成膜する。n型微結晶シリコン膜61の膜厚は30〜50nm、好ましくは35nmである。n型微結晶シリコン膜61の成膜には、モノシランガスと水素ガスだけでなく、n型不純物をドープするためにホスフィン(PH3)ガスも使用される。
【0067】
図11(g)に示すように、n型微結晶シリコン膜61の表面に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジストパターン(図示しない)を形成する。レジストパターンをマスクにして、ドライエッチング法により、n型微結晶シリコン膜61と微結晶シリコン膜41とを連続してエッチングする。その後、レジストパターンを剥離する。これにより、n型微結晶シリコン層62と島状のチャネル層40が形成される。また、チャネル領域40cの左側のn+領域41dはエッチングされてソース領域40aになり、右側のn+領域41dはエッチングされてドレイン領域40bになる。n型微結晶シリコン層62を含むガラス基板15の全体を覆うように、スパッタリング法によってソースメタル膜71を成膜する。ソースメタル膜71は、例えば、膜厚50〜200nmのチタンを含む金属膜である。
【0068】
図12(h)に示すように、ソースメタル膜71の表面に、フォトリソグラフィ法を用いて、エッチングストッパ層50の上方に開口部を有するレジストパターン75を形成する。図12(i)に示すように、レジストパターン75をマスクにして、ウエットエッチング法によりソースメタル膜71をエッチングし、ソース電極70aとドレイン電極70bを形成する。なお、ウエットエッチング法の代わりにプラズマエッチング法によって、ソースメタル膜71をエッチングしてもよい。
【0069】
さらに、レジストパターン75をマスクにして、プラズマエッチング法によりn型微結晶シリコン層62をエッチングし、エッチングストッパ層50の上面で左右に分離された2つのオーミックコンタクト層60a、60bを形成する。なお、チャネル領域40cの上面に、窒化シリコンからなるエッチングストッパ層50が形成されているので、n型微結晶シリコン膜61のエッチングはエッチングストッパ層50によって停止し、チャネル層40のチャネル領域40cがエッチングされることはない。このようにして形成されたオーミックコンタクト層60aはエッチングストッパ層50の左上端部からソース領域40aの左端部までを覆うように延在し、オーミックコンタクト層60bはエッチングストッパ層50の右上端部からドレイン領域40bの右端部までを覆うように延在する。
【0070】
図12(j)に示すように、ソース電極70aとドレイン電極70bを含むガラス基板15の全体を覆うように、窒化シリコンからなる保護膜80を成膜する。保護膜80は、プラズマCVD法により、モノシランガスとアンモニアガスを含む原料ガスを用いて成膜され、その膜厚は例えば200nmである。以上説明した一連の製造工程によって、TFT10が製造される。
【0071】
以上説明したように、微結晶シリコン膜41を1回の工程で成膜し、成膜した微結晶シリコン膜41に水素プラズマ処理を1回だけ施すのではなく、微結晶シリコン膜を堆積する工程と、水素プラズマ処理を施す工程を交互に複数回ずつ繰り返す。このような方法で微結晶シリコン膜41を成膜すれば、微粒子内のマイクロクリスタル成分やナノクリスタル成分に含まれるシリコン原子の未結合手を終端したり、アモルファス成分やナノクラスタ成分を改質したりすることを効率的に行なうことができるので、TFT10の移動度を高めることができる。
【0072】
微結晶シリコン膜41の成膜は、モノシランガスと水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用い、水素プラズマ処理は水素ガスを含むガスから生成したプラズマを用いる。これにより、微結晶シリコン膜41の堆積と水素プラズマ処理とを交互に複数回繰り返すことが容易になり、微結晶シリコン膜41の成膜工程のスループットが低下することを防ぐことができる。
【0073】
微結晶シリコン膜41の堆積工程と水素プラズマ処理工程における水素ガスの流量は同じであるので、微結晶シリコン膜41の堆積工程と水素プラズマ処理工程の切り換えを容易に行なうことができる。これによっても、微結晶シリコン膜41の成膜工程のスループットが低下することを防ぐことができる。
【0074】
<3.第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るTFT10の製造方法について説明する。なお、本実施形態のTFT10の構成および各製造工程は、図4に示すTFT10の構成、および、図10〜図12に示すTFT10の製造工程と同じであるため、それらの図および説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係るTFT10の製造方法のうち、第1の実施形態に係るTFT10の製造方法と異なるのは、微結晶シリコン膜の成膜工程である。具体的には、微結晶シリコン膜の成膜条件のうち、モノシランガスの流量を、第1の実施形態のように一定量とするのではなく段階的に変化させていることだけが異なる。水素ガスの流量、基板温度、RFパワー、チャンバ内の真空度などは、第1の実施形態の成膜条件と同じであるので、それらの説明を省略する。
【0076】
図13は、本実施形態における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図13に示すように、微結晶シリコン膜を5nm成膜する工程と、成膜した微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を20秒間施す工程とを交互に3回ずつ繰り返すことによって、合計膜厚15nmの微結晶シリコン膜を成膜する。具体的には、水素用バルブを開いた状態で、例えば13秒間(12〜14秒間で適宜調整)だけモノシラン用バルブを開け、その後20秒間モノシラン用バルブを閉じる。このうち、1回目の堆積工程において、モノシラン用バルブを瞬時に開くのではなく、徐々に開くように制御して、モノシランガスの流量を0sccmから段階的に増やしていく。そして、モノシランガスの流量が所定の値(Va)に達したら、モノシラン用バルブを徐々に閉じるように制御して、モノシランガスを段階的に減らし、モノシラン用バルブを閉じるときには流量を0sccmにする。モノシラン用バルブを閉じている間、水素ガスを励起して生成した水素プラズマによって、水素プラズマ処理を施す。このように、モノシラン用バルブの開閉を3回繰り返すことによって、合計膜厚15nmの微結晶シリコン膜の成膜と、水素プラズマ処理とを交互に行なう。なお、2回目および3回目の堆積工程では、モノシラン用バルブを瞬時に開くので、モノシランガスの流量は、第1の実施形態におけるモノシランガスの流量と同様に、瞬時に一定になる。
【0077】
次に、モノシランガスの流量を段階的に変化させた場合の効果について説明する。モノシラン用バルブを徐々に開いて、モノシランガスの流量を段階的に増やしていく場合、水素ガスの流量は一定であるので、流量比Rは大きな値から徐々に小さな値に変化する。このような流量比Rの変化に伴い、基礎検討で求めた図8からわかるように、ゲート絶縁膜との界面には、結晶性の高いマイクロクリスタル成分を多く含む微結晶シリコン膜が堆積される。微結晶シリコン膜は、結晶性の高い成分を多く含むほど、結晶粒界の数が多くなり、欠陥の多い膜になる。そこで、モノシランガスの流量を段階的に増やして流量比Rを小さくして、アモルファス成分を多く含むようにする。これにより、微結晶シリコン膜の欠陥を少なくする。この場合、微結晶シリコン膜内に含まれる微粒子には、マイクロクリスタル成分だけでなく、ナノクリスタル成分、ナノクラスタ成分、およびアモルファス成分が多く含まれるようになるので、微結晶シリコン膜の移動度を高くすることができる。さらに、各堆積工程の終了後に、これらの微粒子に対して水素プラズマ処理を施すので、未結合手が終端されるとともに、アモルファス成分が改質される。これにより、TFTの移動度をより高くすることができる。
【0078】
なお、この実施形態においては、1回目の堆積工程において、モノシランガスの流量をXaまで段階的に増やしたが、2回目または3回目の堆積工程において、モノシランガスの流量を段階的にXaまで増やしてもよい。また、例えば1回目と2回目の成膜工程のように、任意の2回の堆積工程において、モノシランガスの流量のXaまで段階的に増やしてもよい。また、全ての堆積工程において、モノシランガスの流量のXaまで段階的に増やしてもよい。
【0079】
<3.1 第1の変形例>
第2の実施形態の第1の変形例に係るTFT10の製造方法について説明する。第1の変形例に係るTFTの製造方法では、3回に分けて行なう微結晶シリコン膜の成膜工程のうち、1回目の堆積工程において、第1の実施形態の場合と同様に、モノシランガスの流量を段階的に変化させる。図14は、第1の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図14に示すように、モノシラン用バルブを徐々に開き、モノシランガスの流量を0sccmから段階的に増やしていく。そして、モノシランガスの流量が所定の値Xb(Xb>Xa)に達したら、モノシランガスの流量を段階的に減少させ、モノシラン用バルブを閉じるときには、流量を0sccmにする。この場合、図14に示すモノシランガスの流量の最大値Xbは、図13に示すモノシランガスの流量の最大値Xaよりも大きいので、モノシランガスの流量が最大になったときに流量比Rは小さくなる。これにより、微結晶シリコン膜内の微粒子には、アモルファス成分やナノクラスタ成分などの非結晶性の成分を多く含む微結晶シリコン膜が成膜されるので、微結晶シリコン膜はより欠陥の少ない膜になり、移動度をより高くすることができる。
【0080】
なお、この変形例においては、1回目の堆積工程において、モノシランガスの流量をXbまで段階的に増やしたが、2回目または3回目の堆積工程において、モノシランガスの流量を段階的にXbまで増やしてもよい。また、例えば1回目と2回目の成膜工程のように、任意の2回の堆積工程において、モノシランガスの流量のXbまで段階的に増やしてもよい。また、全ての堆積工程において、モノシランガスの流量のXbまで段階的に増やしてもよい。
【0081】
<3.2 第2の変形例>
第2の実施形態の第2の変形例に係るTFT10の製造方法について説明する。図15(a)および図15(b)は、第2の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図であり、図15(a)はモノシランガスの最大流量がXaの場合の図であり、図15(b)はモノシランガスの最大流量がXbの場合の図である。図15(a)および図15(b)に示すように、モノシランガスの流量を連続的に変化させる。モノシランガスの流量を連続的に変化させて成膜した微結晶シリコン膜は、段階的に変化させて成膜した微結晶シリコン膜と同様に欠陥の少ない膜になり、移動度を高くすることができる。
【0082】
<4.第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態に係るTFT10の製造方法について説明する。なお、本実施形態のTFT10の構成および各製造工程は、図4に示すTFT10の構成、および、図10〜図12に示す第1の実施形態で説明した製造工程と同じであるため、それらの図および説明を省略する。
【0083】
本実施形態に係るTFT10の製造方法のうち、第1の実施形態に係るTFT10の製造方法と異なるのは、n型不純物を高濃度にドープした微結晶シリコン膜であるn型微結晶シリコン膜の成膜方法である。
【0084】
図16は、本実施形態におけるn型微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図16に示すように、膜厚350nmのn型微結晶シリコン膜を、3回の成膜工程に分けて堆積する工程と、堆積した微結晶シリコン膜に水素プラズマ処理を施す工程とを交互に3回ずつ繰り返すことによって成膜する。この場合、モノシラン用バルブと水素バルブだけでなく、ホスフィン用バルブも設けられている。ホスフィン用バルブは、モノシラン用バルブを1回目および2回目に開いたときには閉じられており、3回目に開かれたときに同時に開かれる。このように、1回目から3回目の堆積工程のうち3回目の堆積工程のときだけ、ホスフィン用バルブを開くので、微結晶シリコン膜に含まれる微粒子のうち、3回目の堆積工程で堆積された微結晶シリコン膜のみにリンがドープされる。
【0085】
図17(a)〜図17(c)は、3回に分けて成膜したn型微結晶シリコン膜の断面を模式的に示す断面図である。図17に示すように、微結晶シリコン膜からなるソース領域/ドレイン領域40a、40b上に、1回目から3回目の堆積工程によって微結晶シリコン膜が順に堆積されている。図9の場合と同様に、マイクロクリスタル成分、アモルファス成分などを含む微粒子65が堆積されることによってn型微結晶シリコン膜が成膜される。この場合も、1回目の堆積工程では多くのボイド63が発生し、2回目、3回目の堆積工程となるにつれて、ボイド63の数は少なくなる。
【0086】
また、3回目の堆積工程では、水素ガスとモノシランガスだけでなく、ホスフィンガスもチャンバ内に供給される。これにより、3回目の堆積工程では、リンがドープされた微粒子66も堆積されるので、3回目に堆積された微結晶シリコン膜の抵抗値は小さくなる。この場合、n型微結晶シリコン膜の全体にリンがドープされる場合と比べて、n型微結晶シリコン膜の抵抗値が小さくなりすぎることはない。これにより、オフ電流が大きくなることを防止することができる。また、3回目の堆積工程で堆積されたn型微結晶シリコン膜のリン濃度が高くなるので、n型微結晶膜をパターニングしたオーミックコンタクト層60a、60bと、ソース電極70aおよびドレイン電極70bとをそれぞれオーミック接続することができる。
【0087】
このように、3回目の堆積工程で、モノシランガスと、水素ガスと、ホスフィンガスとを励起して生成したプラズマを用いてn型微結晶半導体膜を堆積するので、リンを容易にドープすることができる。これにより、n型微結晶半導体膜の成膜工程のスループットが低下することを防ぐことができる。
【0088】
なお、3回の堆積工程のうち、1回目または2回目のいずれかの成膜工程におけるモノシラン用バルブを開くときに同時に、ホスフィン用バルブを開いてもよい。また、例えば2回目と3回目の成膜工程のように、任意に選択した2つの成膜工程において、モノシラン用バルブを開くときに同時に、ホスフィン用バルブを開いてもよい。
【0089】
<4.1 変形例>
第3の実施形態の変形例に係るTFT10の製造方法について説明する。図18は、本実施形態の変形例における微結晶シリコン膜を成膜する際のバルブの開閉を示す図である。図18に示すように、n型微結晶シリコン膜を3回の堆積工程に分けて堆積する。1回目の堆積工程では、ホスフィン用バルブは閉じられており、所定の流量比Rになるように水素ガスとモノシランガスをチャンバ内に供給する。2回目の堆積工程では、ホスフィン用バルブを徐々に開き、ホスフィンガスの流量を0sccmから段階的に増やしていく。そして、ホスフィンガスの流量が所定の値に達したら、ホスフィンガスの流量を段階的に減少させ、モノシラン用バルブを閉じるときには、流量を0sccmにする。3回目の堆積工程では、モノシラン用バルブを開けるときに同時に瞬時に開き、水素ガスとモノシランガスだけでなく、一定の流量のホスフィンガスもチャンバ内に同時に供給する。
【0090】
このように、2回目の堆積工程では、ホスフィン用バルブを段階的に開くので、それにともなってチャンバ内に供給されるホスフィンガスも少しずつ増加する。それに応じて、2回目の堆積工程で堆積されたn型微結晶シリコン膜を構成する微粒子のうち、リンをドープされた微粒子の割合は膜厚方向に少しずつ多くなる。そして、3回目の堆積工程では、一定量のホスフィンガスが供給されるので、堆積されたn型微結晶シリコン膜のリン濃度は均一な所定の値になる。
【0091】
このように、2回目の堆積工程において、ホスフィンガスの流量を段階的に増やせば、n型微結晶半導体膜の抵抗値が小さくなりすぎることをより防止することができる。これにより、オフ電流が大きくなることをより防止することができる。
【0092】
なお、上記変形例では、1回目の堆積工程において、ホスフィン用バルブを閉じ、2回目の堆積工程において、ホスフィン用バルブを徐々に開いた。しかし、1回目の堆積工程においてホスフィン用バルブを徐々に開けてホスフィンの流量を段階的に変化させ、2回目の堆積工程においてホスフィン用バルブを閉じてもよい。また、1回目および2回目の堆積工程において、ホスフィン用バルブを徐々に開けてホスフィンの流量を段階的に変化させてもよい。また、ホスフィンガスの流量を連続的に変化させてもよい。ホスフィンガスの流量を連続的に増やした場合の効果は、段階的に増やした場合の効果と同じであるので、その説明を省略する。
【0093】
<5.第4の実施形態>
上述の各実施形態において説明した製造方法によって製造されたTFT10では、移動度を高くすることができる。そこで、このようなTFT10を用いて液晶表示装置の画素形成部のスイッチング素子を形成すれば、スイッチング速度を速くすることができる。また、液晶表示装置の駆動回路を形成すれば、駆動回路の動作速度を速くすることができる。このように、TFT10の製造方法を含む製造方法によって、高品位の映像を表示する液晶表示装置を製造することができる。
【0094】
<6. その他>
上記各実施形態のチャネル層40やオーミックコンタクト層60a、60bを構成する半導体材料はシリコンであると説明した。しかし、チャネル層40やオーミックコンタクト層60a、60bを、ゲルマニウムシリコンなどの半導体材料で形成してもよい。
【0095】
上記各実施形態のTFTは、nチャネル型であるとして説明したが、pチャネル型であってもよい。この場合、オーミックコンタクト層60a、60bを形成するための微結晶シリコン膜には、ボロン(B)などのp型不純物をドープする必要がある。この場合、ホスフィンガスの代わりに、例えばジボラン(B2H6)ガスをチャンバ内に供給することにより、p型不純物がドープされた微結晶シリコン膜を成膜する。
【0096】
上記各実施形態の微結晶シリコン膜およびn型微結晶シリコン膜の成膜には、モノシランガスを使用したが、ジクロルシラン(SiH2Cl2)ガスやジシラン(Si2H6)ガスを使用してもよい。
【0097】
TFTを用いて製造される表示パネルには、液晶表示装置の他にも、有機EL(Electroluminescence)表示装置やプラズマ表示装置などの表示装置が含まれる。
【符号の説明】
【0098】
10…薄膜トランジスタ(TFT)
15…ガラス基板(絶縁基板)
20…ゲート電極
30…ゲート絶縁膜
40…チャネル層
40a…ソース領域
40b…ドレイン領域
41…微結晶シリコン膜
60a、60b…オーミックコンタクト層
61…n型微結晶シリコン膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、第1の微結晶半導体膜を含む島状のチャネル層とを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記第1の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記第1の微結晶半導体膜を少なくとも1回以上の回数に分けて堆積する第1の堆積工程と、
前記第1の堆積工程を終了するごとに水素プラズマ処理を施す第1の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の堆積工程は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分と水素ガスとを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて前記第1の微結晶半導体膜を堆積する工程を含み、
前記第1の水素プラズマ処理工程は、水素ガスを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて水素プラズマ処理を施す工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで段階的に変化させることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで連続的に変化させることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を、前記第1の流量よりも多い第2の流量まで段階的または連続的に変化させることを特徴とする、請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の堆積工程および前記第1の水素プラズマ処理工程における前記水素ガスの流量は同じであることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスは、モノシラン、ジシラン、またジクロルシランのいずれかであり、
前記第1の微結晶半導体膜は、微結晶シリコン膜であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の堆積工程で堆積される前記微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmずつであることを特徴とする、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記チャネル層の両端部にそれぞれ形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域の上方にそれぞれ設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース領域と前記ソース電極との間、および、前記ドレイン領域と前記ドレイン電極との間にそれぞれ設けられたオーミックコンタクト層とをさらに備え、
前記オーミックコンタクト層は第1または第2の導電型の不純物がドープされた第2の微結晶半導体膜を含み、
前記第2の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記不純物がドープされていない微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第2の堆積工程と、
前記不純物がドープされた微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第3の堆積工程と、
前記第2または第3の堆積工程を終了するごとに、その表面に水素プラズマ処理を施す第2の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
少なくとも前記第2の微結晶半導体膜の表面は、前記第3の堆積工程によって堆積された微結晶半導体膜で覆われていることを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を段階的に変化させることを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を連続的に変化させることを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3の堆積工程は、前記第2の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスと、前記水素ガスと、前記不純物を含むガスとを励起して生成したプラズマを用いて前記第2の微結晶半導体膜を堆積することを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
絶縁基板上に複数の半導体装置が配列された表示装置の製造方法であって、
前記半導体装置を請求項1から13のいずれか1項に記載の製造方法によって製造する工程を含むことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項1】
絶縁基板上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、第1の微結晶半導体膜を含む島状のチャネル層とを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記第1の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記第1の微結晶半導体膜を少なくとも1回以上の回数に分けて堆積する第1の堆積工程と、
前記第1の堆積工程を終了するごとに水素プラズマ処理を施す第1の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の堆積工程は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分と水素ガスとを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて前記第1の微結晶半導体膜を堆積する工程を含み、
前記第1の水素プラズマ処理工程は、水素ガスを含むガスを励起して生成したプラズマを用いて水素プラズマ処理を施す工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで段階的に変化させることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の堆積工程のうち少なくとも1回は、前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を第1の流量まで連続的に変化させることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスの流量を、前記第1の流量よりも多い第2の流量まで段階的または連続的に変化させることを特徴とする、請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の堆積工程および前記第1の水素プラズマ処理工程における前記水素ガスの流量は同じであることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスは、モノシラン、ジシラン、またジクロルシランのいずれかであり、
前記第1の微結晶半導体膜は、微結晶シリコン膜であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の堆積工程で堆積される前記微結晶シリコン膜の膜厚は3〜7nmずつであることを特徴とする、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記チャネル層の両端部にそれぞれ形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域の上方にそれぞれ設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース領域と前記ソース電極との間、および、前記ドレイン領域と前記ドレイン電極との間にそれぞれ設けられたオーミックコンタクト層とをさらに備え、
前記オーミックコンタクト層は第1または第2の導電型の不純物がドープされた第2の微結晶半導体膜を含み、
前記第2の微結晶半導体膜の成膜工程は、
前記不純物がドープされていない微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第2の堆積工程と、
前記不純物がドープされた微結晶半導体膜を少なくとも1回以上堆積する第3の堆積工程と、
前記第2または第3の堆積工程を終了するごとに、その表面に水素プラズマ処理を施す第2の水素プラズマ処理工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
少なくとも前記第2の微結晶半導体膜の表面は、前記第3の堆積工程によって堆積された微結晶半導体膜で覆われていることを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を段階的に変化させることを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第3の堆積工程は、前記不純物を含むガスの流量を連続的に変化させることを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第3の堆積工程は、前記第2の微結晶半導体膜を構成する成分を含むガスと、前記水素ガスと、前記不純物を含むガスとを励起して生成したプラズマを用いて前記第2の微結晶半導体膜を堆積することを特徴とする、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
絶縁基板上に複数の半導体装置が配列された表示装置の製造方法であって、
前記半導体装置を請求項1から13のいずれか1項に記載の製造方法によって製造する工程を含むことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−222649(P2011−222649A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88489(P2010−88489)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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