説明

半導体製造装置

【課題】内部応力を有する膜を基板の裏面にのみ形成することにより、基板の反り量を抑制し、その際に基板の表面にダメージを与えず、裏面に対する成膜と表面に対するパターン形成とを一貫して行う半導体製造装置を得られるようにする。
【解決手段】基板に薬液を塗布する薬液塗布部102と、基板を加熱する加熱処理部104と、基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布部107と、そのレジストに所定のパターンを露光する露光部105と、そのレジストを現像することにより所定のパターンを得る現像部108とを備えている。薬液塗布部102は、基板を浮遊した状態で、基板を回転させながら基板の裏面にのみ薬液を塗布する薬液塗布手段を有し、加熱処理部104は、基板に熱処理を行うことにより、内部応力を有する応力印加膜を成膜する熱処理手段を有し、裏面に応力印加膜の成膜を行うことと、表面に所定のパターンを形成する処理とを一貫して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に関し、特に、半導体基板の裏面に成膜する手段を備える半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の高速化は、トランジスタ形状の微細化によって進められてきた。しかしながら、近年、リソグラフィ技術の進歩が止まりつつあり、微細化によってトランジスタのオン電流を向上させるのではなく、チャネルとなる反転層におけるキャリアの移動度又はゲート絶縁膜の比誘電率を増大させる技術が注目されている。
【0003】
CMOS(complementary metal oxide semiconductor)デバイスに用いられるゲート絶縁膜は、一般にシリコン酸化膜であり、誘電率は3.9程度を示す。しかし、トランジスタの微細化に伴い、ゲート絶縁膜が薄膜化されると、リーク電流が増大し、高い消費電力及び待機電力を有するデバイスとなる。そこで、誘電率が4.0以上であるゲート絶縁膜を用い、実際の膜厚はシリコン酸化膜よりも厚くても、実効的な膜厚である等価酸化膜厚(Equivalent Oxide Thickness:EOT)を薄膜化できるHigh−kゲート絶縁膜の開発が進んでいる。
【0004】
しかしながら、従来のポリシリコンゲート電極とHigh−kゲート絶縁膜とを組み合わせただけでは、ゲート電極の空乏化と呼ばれる現象により、High−kゲート絶縁膜とポリシリコンゲート電極との間に、空乏層容量が形成されるため、EOTが薄いHigh−kゲート絶縁膜の利点が失われる。従って、ゲート電極の空乏化を防ぐためには、High−kゲート絶縁膜と金属ゲート電極との組み合わせが必須であり、High−kゲート絶縁膜と金属ゲート電極とによる適正な閾値電圧の制御がCMOSデバイスを構築する上で重要な課題となっている。
【0005】
このHigh−kゲート絶縁膜と金属ゲート電極との組み合わせにおける仕事関数の研究においては、チタン、タングステン、タンタル及びモリブデン並びにそれらの窒化物及び炭化物が用いられている。しかしながら、いずれも、ギガパスカル(GPa)単位の大きな内部応力を有するため、ゲートリソグラフィを行う際の半導体基板の反りを無視することはできない。
【0006】
ゲートの長さ等を縮小するためのリソグラフィ技術は、解像度の向上に従い焦点深度が浅くなり、半導体基板の上に形成される素子による段差及び半導体基板の反りに対して新しい技術の導入が必要となっている。
【0007】
現在主流の、微細リソグラフィ技術である液浸露光技術は、空気(n=1.0)と比較して屈折率が高い超純水(n=1.3)を半導体基板とレンズとの間に満たすことにより焦点深度を深くしている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0008】
また、フォーカスモニタリングのシステムを用い、チップ毎にフォーカスを合わせることによって、半導体基板の反りによる影響を相殺している(例えば、特許文献2等を参照。)。
【0009】
また、近年、チャネル領域に歪みを加えることにより、キャリアの移動度を増大させて、トランジスタを高速化させる技術が報告されている。
【0010】
チャネル領域に歪みを導入するために、膜応力を持つシリコン窒化膜をコンタクトライナ膜として形成する例がある(例えば、特許文献3等を参照。)。つまり、エッチングによって層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する際に、エッチストップ膜として形成されるライナ膜により、チャネル領域に応力を印加して歪みを加える。より具体的には、膜応力を有するシリコン窒化膜をライナ膜として用いる場合、nMOSに対しては引っ張り応力を持つシリコン窒化膜を形成し、pMOSに対しては圧縮応力を持つシリコン窒化膜を形成する。
【0011】
この方法を用いてキャリアの移動度の向上をより大きくするためには、ライナ膜の膜厚を厚くすることにより、チャネル領域に印加される歪み量を大きくすればよい。また、nMOSに用いられるシリコン窒化膜については、多くの場合、成膜後の処理によって膜収縮を生じさせることにより引っ張り応力を発生させる方法が用いられる。
【0012】
なお、ライナ膜の膜厚を大きくする場合、ライナ膜を多層構造とすることも知られている。この場合、一層毎に膜収縮を行ってもよい。ライナ膜を多層とした構造については、例えば、特許文献4等に提示されている。
【0013】
また、チャネル領域に効果的に歪みを与えるためには、大きな応力をもつ膜がチャネル領域に近づくほど大きな歪みを加えることができる。ディスポーザブルサイドウォール技術によって、サイドウォールを除去した後、応力を有するライナ膜を形成する方法が特許文献5等に提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−289126号公報
【特許文献2】特開2006−195353号公報
【特許文献3】特開2003−060076号公報
【特許文献4】特許第3050193号公報
【特許文献5】特開2008−091536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
大きな内部応力を有する金属ゲート電極とHigh−k絶縁膜との構造を採用する場合は、幅が32nm以下の微細なライン状のゲートリソグラフィを、トランジスタを形成した後に歪み印加膜を形成して、半導体基板が反った状態で行わなければならない。また、ホール状のコンタクトリソグラフィを径が300mmのウェハ面内に下地活性領域及びゲート領域とずれなく形成することが求められる。
【0016】
半導体基板の反りを解消するために、半導体基板に内部応力を有する膜を成膜する方法が考えられるが、従来の化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法とウエットエッチング法とを用いると、トランジスタ等が形成されている表面にダメージを与えるおそれがある。
【0017】
また、トランジスタのチャネル領域に歪みを印加する場合において、トランジスタが形成された半導体基板の表面に応力を有する膜を形成するため、トランジスタ同士の距離に依存して、厚い膜を形成できず、効果的な応力をチャネル領域に印加できない。さらに、nMOS及びpMOSにおいて選択的に応力膜を作り分ける場合、成膜をする工程と成膜をしない工程とが必要となり、マスク費用及び工程数が膨大な量となる等により、トランジスタの能力向上に対する費用対効果が薄れることとなる。
【0018】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、その目的は、内部応力を有する膜を半導体基板の裏面にのみ形成することにより、半導体基板の反り量を抑制し、その際に半導体基板の表面にダメージを与えず、半導体基板の裏面に対する成膜と半導体基板の表面に対するパターン形成とを一貫して行う半導体製造装置を得られるようにすることにある。
【0019】
さらに、チャネル領域に対する歪みの印加工程において、トランジスタの密集度が向上し、半導体基板の表面に厚い応力印加膜を形成できなくなった場合、トランジスタが形成されていない裏面に厚い応力印加膜を形成し、トランジスタの駆動能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成するために、本発明は、半導体製造装置を半導体基板の裏面にのみ薬液を塗布する手段を有する構成とする。
【0021】
具体的に、本発明に係る半導体製造装置は、半導体基板に薬液を塗布する薬液塗布部と、半導体基板を加熱する加熱処理部と、半導体基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布部と、塗布されたレジストに所定のパターンを露光する露光部と、露光されたレジストを現像することにより所定のパターンを得る現像部とを備え、薬液塗布部は、半導体基板を浮遊した状態で、半導体基板を回転させながら半導体基板の裏面にのみ薬液を塗布する薬液塗布手段を有し、加熱処理部は、半導体基板に熱処理を行うことにより、内部応力を有する応力印加膜を成膜する熱処理手段を有し、半導体基板の裏面に応力印加膜の成膜を行うことと、半導体基板の表面に所定のパターンを形成する処理とを一貫して行うことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る半導体製造装置によると、半導体基板の表面を汚染させず、半導体基板の裏面の全面に内部応力を有する膜の成膜を行うため、半導体基板の反りを抑制することができるので、リソグラフィ工程における重ね合わせの向上及びパターン形成不良の低減ができる。
【0023】
本発明に係る半導体製造装置は、半導体基板の反り量を測定する測定手段と、測定手段により測定された反り量に基づいて、反り量を補正するために最適な薬液の塗布膜厚を逐次演算する演算手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0024】
このようにすると、半導体基板の反り量に応じて半導体基板に成膜する膜の膜厚を決定できるため、一定に反り量を制御することができる。
【0025】
本発明に係る半導体製造装置において、薬液は、ポリシラザンを含み、その粘性係数が0.5Pa・s以上且つ1.5Pa・s以下であることが好ましい。
【0026】
この場合、応力印加膜はシリコン窒化膜であることが好ましい。
【0027】
さらに、この場合、熱処理手段は、前記半導体基板に窒素ガス雰囲気下又は減圧下で且つ450℃以上且つ550℃以下の熱処理を行う手段であることが好ましい。
【0028】
また、この場合、応力印加膜の内部応力は、−100MPa以下であることが好ましい。
【0029】
また、この場合、応力印加膜の膜密度は、2.0g/cm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る半導体製造装置によると、半導体基板の表面のパターン形成と半導体基板の裏面に対する内部応力を有する膜の成膜とを一貫して行うことができ、半導体基板の表面を汚染させることなく半導体基板の反りを抑制できるため、リソグラフィ工程における重ね合わせ精度の向上及びパターン形成不良の低減が可能となる。また、トランジスタのチャネル領域に応力を印加できるため、トランジスタの性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体製造装置の構成を示す模式図である。
【図2】ポリシラザン溶液の塗布膜厚と塗布時の半導体基板の回転速度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体製造装置を用いて半導体装置を製造する方法の工程を示す図である。
【図4】ポリシラザンから窒化シリコンが形成される反応式を示す図である。
【図5】半導体基板の反り量と、ゲートと活性領域との重ね合わせ精度との関係を示すグラフである。
【図6】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置を用いて半導体装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図7】ポリシラザンの内部応力において、アニール雰囲気とアニール温度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置を用いて、半導体基板の裏面にシリコン窒化膜を形成した場合のn型トランジスタの駆動電流の大きさを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体製造装置について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0033】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体製造装置は、反り量測定器101、ポリシラザン塗布チャンバ102、ホットプレート103、アニールチャンバ104、露光部105、チルプレート106、レジスト塗布モジュール107及びデベロッパ108を備えている。
【0034】
反り量測定器101において、例えばレーザの反射及びレンズのフォーカス位置を利用して半導体基板の反り量が測定される。測定した反り量に基づいて、予め評価されたポリシラザンの塗布膜厚と反り量の補正とのデータから測定した反り量を所定の量に補正するために最適なポリシラザンの塗布膜厚を逐次演算する。
【0035】
ポリシラザン塗布チャンバ102において、半導体基板を回転させながら半導体基板の裏面にポリシラザンの塗布が行われる。ここで、ポリシラザンは、パーヒドロポリシラザンを用いることが好ましく、これを用いると400℃〜800℃程度の温度でシリコン窒化膜の形成が可能である。ただし、他のシラザン重合体を用いてもよい。半導体基板の裏面にポリシラザンを塗布するには、半導体基板を反転して、その表面を保持する必要があるため、例えばベルヌーイチャックを用いて半導体基板の表面を浮遊して保持する。また、ポリシラザンを塗布する際に、半導体基板の回転速度を制御することによりポリシラザンの塗布膜厚を制御できる。この詳細は後に説明する。
【0036】
ホットプレート103において、所定の膜厚のポリシラザンを塗布した半導体基板に対し、高温によるベーク処理が行われる。これにより、塗布液中に含まれる溶媒等を揮発させる。ベーク温度は150℃〜250℃の間であることが望ましい。
【0037】
アニールチャンバ104において、前記の処理を受けた半導体基板に対し、減圧下におけるアニール処理が行われる。アニールチャンバ104は枚葉式又はバッチ式であり、窒素ガス雰囲気中又はガスを流さない減圧下で且つ400℃〜800℃のアニール処理をすることが好ましい。このアニール処理により半導体基板の裏面にのみシリコン窒化膜が形成されるため、半導体基板の反りが解消又は抑制される。また、形成されたシリコン窒化膜により、後に行われる配線工程における半導体基板の裏面からの金属汚染を防止することも可能となる。この場合、形成されるシリコン窒化膜の膜密度は2.0g/cm以上であることが好ましい。
【0038】
レジスト塗布モジュール107によりレジストの塗布が行われた半導体基板に対し、露光部105において露光処理が行われる。半導体基板の裏面に形成されたシリコン窒化膜により半導体基板の反りは解消又は抑制されているため、パターン形成不良及び重ね合わせのずれの発生がより抑制される。なお、レジストの塗布前には半導体基板の表面とレジストとの濡れ性を向上させるために、ヘキサメチルジシラザン(Hexa Methyl Disilazane:HMDS)を塗布してもよい。
【0039】
チルプレート106において、露光部105による露光後に半導体基板の冷却が行われる。また、チルプレート106において、レジストの塗布から露光までの間に半導体の冷却が行われてもよい。
【0040】
デベロッパ108において、現像が行われる。
【0041】
このような、反り量測定器101からデベロッパ108までによる一連の測定、半導体基板の裏面におけるシリコン窒化膜の形成及び露光処理を行うことにより、高精度のパターン形成及び高い処理能力による処理が可能となる。
【0042】
ここで、ポリシラザンの塗布膜厚の制御について説明する。ポリシラザンの塗布時における半導体基板の回転により、ポリシラザン溶液は遠心力を受けて半導体基板の外周から飛散する。しかしながら、ポリシラザン溶液と半導体基板の表面との間には、粘性と表面張力との働きにより微量のポリシラザン溶液が残る。塗布及び回転を止めると残留したポリシラザン溶液は表面張力により半導体基板の表面におよそ均一に再形成される。これにより半導体基板の表面にはポリシラザン溶液の薄い膜が形成されることとなる。
【0043】
図2に示すように、半導体基板の回転速度を大きくすることにより遠心力は強くなり、半導体基板の外周から飛散せずに残留するポリシラザン溶液の量は減少するため、結果的にポリシラザン溶液から形成される膜の膜厚は薄くなる。すなわち、回転速度を制御することによりポリシラザンの膜厚を制御することが可能となる。
【0044】
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体製造装置を用いて半導体装置を製造する方法について図3〜図5を参照しながら説明する。
【0045】
図3に示すように、まず、反り量測定器101により、半導体基板の反り量を測定する。反り量の測定結果及び事前に評価したポリシラザンの塗布膜厚と反り量補正とのデータから、反り量を所定の量に補正するのに最適なポリシラザンの膜厚を演算する。
【0046】
次に、ポリシラザン塗布チャンバ102により、半導体基板の裏面にポリシラザンを塗布する。ここで、成膜は塗布後の半導体基板の回転速度を制御することにより、演算された最適ポリシラザンの塗布膜厚が形成されるようにする。
【0047】
塗布するポリシラザンは、液体状で半導体基板の裏面に塗布できるように、溶媒に含まれている。溶媒は主に有機成分からなり、ポリシラザンをシリコン窒化膜に変換する際に不純物としてふるまう。このため、塗布によりポリシラザンを均一に塗布した後には、ベークにより溶媒を揮発させる必要がある。
【0048】
溶媒としては沸点が低い有機溶媒及びデュポン(Du Pont)社によって開発されたDBE(登録商標)を用いることが望ましい。半導体基板の裏面に均一な膜厚のポリシラザンを塗布するために、ポリシラザンを溶解した薬液の粘性係数は0.5Pa・s以上且つ1.5Pa・s以下であることが望ましい。また、後のベークにより溶媒を除去できるように、溶媒の沸点は300℃以下であることが望ましい。
【0049】
ポリシラザンの塗布は枚葉式のスピンコータを用いて行う。従来は、半導体基板の裏面へのシリコン窒化膜の成膜にバッチ式又は枚葉式の化学気相成長(CVD)装置を用いている。しかしながら、バッチ式のCVD装置ではバッチ炉内の位置によって温度及びガス密度のばらつきがあり、これに起因するシリコン窒化膜の膜厚のばらつきが生じ、十分な膜厚制御が難しくなっている。また、枚葉式のCVD装置ではスループットが不足してしまう。
【0050】
次に、ホットプレート103を用いて、半導体基板に対して、例えば150℃〜200℃のベークを行うことにより、塗布されたポリシラザンの溶媒を除去する。この処理の前と比較してポリシラザンの膜厚は、溶媒が除去され、さらに熱による高密度化により薄くなる。半導体基板の反り量を補正するために最も重要なのはストレスと膜厚との積であり、膜厚は重要なパラメータとなる。このため、ポリシラザンの塗布及びベークにより膜厚を最適化する必要がある。
【0051】
次に、アニールチャンバ104により、半導体基板に対してアニール処理を行う。図4は、左辺にポリシラザンを示し、右辺に窒化シリコンを示す反応式である。図4に示すように、ポリシラザンは、(−SiHNH−)を基本骨格とする重合体である。ポリシラザンに対して、窒素雰囲気下又は減圧下で400℃〜800℃の高温によるアニール処理がなされることにより水素が離脱して、シリコン窒化膜が得られる。
【0052】
次に、半導体基板の表面に、パターン形成のための露光を行う。まず、半導体基板の表面とレジストとの濡れ性を向上させるためにHMDSを塗布する。次に、レジスト塗布モジュール107により、半導体基板の表面にレジストを塗布する。ここで、レジストは単層でも多層でもよい。レジストを塗布した後、露光部105により露光を行うが、露光前にホットプレート103による加熱及びチルプレート106による冷却を行ってもよい。露光後にはデベロッパ108により現像を行い、パターン形成のマスクが形成される。
【0053】
図5は、半導体基板の反り量と、ゲートと活性領域との重ね合わせ精度との関係を示し、半導体基板の反り量において、0以上は上方に凸形状となる反りを示し、0以下は上方に凹形状となる反りを示している。図5に示すように、半導体基板の反りが凸形状の場合、重ねあわせ精度が悪く、半導体基板の反り量が0となると、重ねあわせ精度が最も良くなる。また、半導体基板の反りが凹形状となるに従って、重ねあわせ精度が悪化することが予想されるが、図5では、凹形状において30μmまでの反り量しか得られず、重ね合わせ精度の悪化は観察されなかった。
【0054】
本発明の第1の実施形態に係る半導体製造装置によると、半導体基板の反り量の測定から半導体基板の裏面における測定結果に基づく膜厚の膜の形成まで及び半導体基板の表面のパターン形成を一貫して行うことができ、表面を汚染させることなく半導体基板の反り量を制御することにより、リソグラフィの重ね合わせ精度を向上させることができる。また、半導体基板の裏面にシリコン窒化膜を形成することにより、配線工程における半導体基板の裏面からの金属汚染を防止することができる。
【0055】
なお、今回の結果は、最も精度が要求されるトランジスタゲートと活性領域との重ね合わせ精度の結果を示したが、コンタクトホールの形成工程及び配線工程のリソグラフィでも、同様の結果が得られる。
【0056】
(第2の実施形態)
MIS(Metal Insulator Semiconductor)構造及びMIPS(Metal Inserted Polysilicon Stack)構造のトランジスタにおいては、トランジスタ能力の向上のために歪み印加技術が利用されている。これは、半導体基板に応力歪みを与えることによりキャリアの移動度を向上させる技術である。例えば、主面の面方位が(100)面であるシリコンからなる半導体基板の上に形成されたn型トランジスタに対して、ゲート長方向に引っ張り応力による歪みを与えることにより電子の移動度が向上して、トランジスタの駆動力が増大する。この時、p型トランジスタ側にも引っ張り応力による歪みが印加されるが、面方位が(100)の半導体基板を用いると、歪みがシリコン格子の方位にキャンセルされるため、正孔の移動度を劣化させることなく、維持することが可能である。他に、引っ張り応力及び圧縮応力による歪みをトランジスタに対して付与する方法として、トランジスタを形成する活性領域におけるチャネル領域に応力歪みを記憶させる、いわゆるストレスメモライゼーション技術(Stress Memorization Technique:SMT)法と呼ばれる方法がある。
【0057】
この方法では、ゲート及びソース/ドレイン領域の上にシリコン窒化膜又はシリコン酸化膜を成膜し、ソース/ドレイン領域の活性化アニールを行った後に膜を除去する。シリコン窒化膜等の応力により半導体基板のシリコン格子が歪んだ状態で、熱処理を行うことによって、歪んだ状態で格子が安定する。トランジスタの上に成膜されたシリコン窒化膜又はシリコン酸化膜を除去してもこのシリコン格子の歪み状態は保存されることとなる。電子の移動度は、格子の原子間距離によって決まるため、後工程まで膜応力の効果が残留し、応力が記憶されることとなる。本実施形態は、SMT法のように、半導体基板の表面の上にシリコン窒化膜を形成するのではなく、裏面側に形成して、トランジスタに歪みが印加又は記憶される半導体装置の製造方法である。
【0058】
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置を用いて半導体装置を製造する方法について、図6〜図8を参照しながら説明する。
【0059】
まず、図6(a)に示すように、シャロウトレンチ分離(Shallow Trench Isolation:STI)法を用いて、主面の面方位が(100)面である半導体基板201に素子分離領域202を形成する。これにより、n型トランジスタ領域Aとp型トランジスタ領域Bとを区画し、公知技術によりn型トランジスタ及びp型トランジスタをそれぞれ形成する。すなわち、n型トランジスタ領域Aにおいて、半導体基板201に、第1の活性領域203a及びp型ウェル204aを形成し、第1の活性領域203aの上に第1のゲート絶縁膜205a及びn型ゲート電極206aを順次形成する。これと共に、p型トランジスタ領域Bにおいて、半導体基板201に第2の活性領域203b及びn型ウェル204bを形成し、第2の活性領域203bの上に第2のゲート絶縁膜205b及びp型ゲート電極206bを順次形成する。次に、n型ゲート電極206aの側面上に第1の側壁膜207aを形成すると共に、p型ゲート電極206bの側面上に第2の側壁膜207bを形成する。例えば、第1のゲート絶縁膜205a及び第2のゲート絶縁膜205bは、シリコン酸化膜又はシリコン酸窒化膜であり、n型ゲート電極206a及びp型ゲート電極206bは、ポリシリコン膜であり、第1の側壁膜207a及び第2の側壁膜207bは、シリコン酸化膜である。その後、第1の活性領域203aには、n型ゲート電極206a及び第1の側壁膜207aをマスクとして、n型不純物を注入することによりn型エクステンション領域208aを形成する。また、第2の活性領域203bには、p型ゲート電極206b及び第2の側壁膜207bをマスクとしてp型不純物を注入することによりp型エクステンション領域208bを形成する。
【0060】
次に、第1の側壁膜207aの側面上に第1のサイドウォール211aを形成すると共に、第2の側壁膜207bの側面上に第2のサイドウォール211bを形成する。ここで、第1のサイドウォール211a及び第2のサイドウォール211bは、シリコン酸化膜であり、断面がL字状の第1の内側サイドウォール209a及び第2の内側サイドウォール209bと、その上にそれぞれ形成されたシリコン窒化膜からなる第1の外側サイドウォール210a及び第2の外側サイドウォール210bとからそれぞれ構成されている。
【0061】
次に、第1の活性領域203aにn型不純物である砒素(As)を選択的に注入することにより、第1の活性領域203aにおける第1のサイドウォール211aの外側にn型ソース/ドレイン領域212aを形成する。また、第2の活性領域203bにボロン(B)を選択的に注入することにより、第2の活性領域203bにおける第2のサイドウォール211bの外側にp型ソース/ドレイン領域212bを形成する。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、半導体基板201に対して1050℃程度で1ms〜10sの熱処理を行うことにより、ソース/ドレインの注入領域及びゲートのポリシリコンの注入領域を活性化する。この後、n型ソース/ドレイン領域212a、n型ゲート電極206a、p型ソース/ドレイン領域212b及びp型ゲート電極206bの各上部に金属シリサイド層214を形成する。
【0063】
この後、トランジスタの表面には、引っ張り応力を持つシリコン窒化膜を形成して、トランジスタのゲート絶縁膜の下のチャネル領域に歪みを印加する。また、n型トランジスタのn型ソース/ドレイン領域212aの上には炭素比率が1%〜3%のシリコンエピタキシャル膜が形成されていてもよい。この時、トランジスタの表面のシリコン窒化膜の膜厚を厚くすれば、チャネル領域に印加できる歪み量は増大するが、微細化及び高集積化によってトランジスタ同士の距離が狭まると、膜厚を厚くすることはできず、トランジスタ同士の距離により、シリコン窒化膜の膜厚が設定される。
【0064】
そこで、トランジスタを形成していない半導体基板201の裏面に、表面のシリコン窒化膜とは逆方向の圧縮応力を持つ絶縁膜を形成することにより、表面側の引っ張り応力を向上させることができる。すなわち、半導体基板201の裏面に、本発明に係る半導体製造装置を用いてポリシラザンを原料としたシリコン窒化膜213を形成する。本実施形態においては、半導体基板201の裏面からの圧縮応力を利用して、該半導体基板201の表面に対して引っ張り応力を持つ膜を形成したことに相当する効果を実現するために、第1の実施形態における半導体基板201の反りを解消するシリコン窒化膜の膜厚よりも厚いシリコン窒化膜を形成することが望ましい。
【0065】
図7は、ポリシラザンを半導体基板201の表面に塗付した後、窒素中又は水蒸気中で熱処理した場合における各温度で形成されるシリコン窒化膜の膜応力の大きさを示している。ここで、応力は、一般(学術的)に0以上は引っ張り応力を示し、0以下は圧縮応力を示すため、図7においても、そのように示している。
【0066】
図7に示すように、ポリシラザン膜を水蒸気中で熱処理する場合、膜応力は、熱処理の温度を上昇させると、約850℃程度で引っ張り応力から圧縮応力に応力値が反転する。
【0067】
金属シリサイド層214は耐熱性に乏しく、ニッケルシリサイドの場合は500℃以上の熱処理、コバルトシリサイドでは800℃以上の熱処理をすることは難しいため、水蒸気中で熱処理して、圧縮応力膜を形成することは難しい。
【0068】
窒素中で熱処理をした場合、500℃程度で圧縮応力が得られ、600℃以上では引っ張り応力を示す。そこで、ポリシラザンを半導体基板201の裏面に塗付した後、窒素雰囲気中で450℃以上且つ550℃以下の熱処理を加えることにより、半導体基板201の裏面に圧縮応力を有するシリコン窒化膜213を形成することができる。ここで、半導体基板201の表面に引っ張り応力を有する膜を形成するのに相当する効果を実現するために、半導体基板201の裏面に形成されるシリコン窒化膜213の内部応力は、−100MPa以下であることが好ましい。半導体基板201の裏面には、トランジスタが形成されていないため、トランジスタが形成されている半導体基板201の表面のような膜厚の制限はなく、厚く形成すれば、より大きな応力を持ち、チャネル領域の歪み量も大きくなる。
【0069】
その後、図示はしていないが、半導体基板201の上に層間絶縁膜を形成し、平坦化処理をした後、コンタクトプラグ及び配線等の形成し、半導体装置を完成する。
【0070】
以上のようにして、第1の活性領域203aにおけるチャネル領域にゲート長方向に引っ張り応力を向上できるn型MISトランジスタと、半導体基板201に(100)シリコン基板を用いることにより第2の活性領域203bにおけるチャネル領域に応力が生じていないp型MISトランジスタとを備えた半導体装置を得ることができる。
【0071】
図8は、上記の方法により、半導体基板201の裏面に膜厚が150nmのシリコン窒化膜を形成した場合と、該シリコン窒化膜を形成しない場合のn型トランジスタのオン電流とオフ電流との関係を示している。図8に示すように、例えば、オフ電流1000pA/μmにおいて比較すると、820μA/μmから900μA/μmに駆動能力が9.7%向上している。
【0072】
このように、本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置によると、半導体基板の表面にダメージを与えることなく、チャネル領域により大きな歪みを印加することが可能となるため、トランジスタの性能を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る半導体製造装置は、リソグラフィ工程における重ね合わせの向上及びパターン形成不良の低減ができ、特に、半導体基板の裏面に成膜する手段を備える半導体製造装置等に有用である。
【符号の説明】
【0074】
101 反り量測定器
102 ポリシラザン塗布チャンバ(薬液塗布部)
103 ホットプレート
104 アニールチャンバ(加熱処理部)
105 露光部
106 チルプレート
107 レジスト塗布モジュール(レジスト塗布部)
108 デベロッパ(現像部)
201 半導体基板
202 素子分離領域
203a 第1の活性領域
203b 第2の活性領域
204a p型ウェル
204b n型ウェル
205a 第1のゲート絶縁膜
205b 第2のゲート絶縁膜
206a n型ゲート電極
206b p型ゲート電極
207a 第1の側壁膜
207b 第2の側壁膜
208a n型エクステンション領域
208b p型エクステンション領域
209a 第1の内側サイドウォール
209b 第2の内側サイドウォール
210a 第1の外側サイドウォール
210b 第2の外側サイドウォール
211a 第1のサイドウォール
211b 第2のサイドウォール
212a n型ソース/ドレイン領域
212b p型ソース/ドレイン領域
213 シリコン窒化膜
214 金属シリサイド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に薬液を塗布する薬液塗布部と、
前記半導体基板を加熱する加熱処理部と、
前記半導体基板の表面にレジストを塗布するレジスト塗布部と、
塗布されたレジストに所定のパターンを露光する露光部と、
露光されたレジストを現像することにより前記所定のパターンを得る現像部とを備え、
前記薬液塗布部は、前記半導体基板を浮遊した状態で、前記半導体基板を回転させながら該半導体基板の裏面にのみ薬液を塗布する薬液塗布手段を有し、
前記加熱処理部は、前記半導体基板に熱処理を行うことにより、内部応力を有する応力印加膜を成膜する熱処理手段を有し、
前記半導体基板の裏面に前記応力印加膜の成膜を行うことと、前記半導体基板の表面に前記所定のパターンを形成する処理とを一貫して行うことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記半導体基板の反り量を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記反り量に基づいて、前記反り量を補正するために最適な薬液の塗布膜厚を逐次演算する演算手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記薬液は、ポリシラザンを含み、その粘性係数が0.5Pa・s以上且つ1.5Pa・s以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記応力印加膜はシリコン窒化膜であることを特徴とする請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記熱処理手段は、前記半導体基板に窒素ガス雰囲気下又は減圧下で且つ450℃以上且つ550℃以下の熱処理を行う手段であることを特徴とする請求項4に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記応力印加膜の内部応力は、−100MPa以下であることを特徴とする請求項4に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記応力印加膜の膜密度は、2.0g/cm以上であることを特徴とする請求項4に記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−119472(P2011−119472A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275652(P2009−275652)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】