説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】微細なパターンが形成された基板に対しても適切に洗浄することができる基板処理装置、および、基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、単一の基板Wを水平姿勢で保持する保持部11と、微細気泡を含んだ気泡含有洗浄液を基板に供給する洗浄液ノズル15と、洗浄液ノズル15によって基板Wに気泡含有洗浄液を供給させて基板を洗浄する制御部19と、を備える。気泡含有洗浄液によれば、基板面に与える衝撃を抑制しつつ、微細気泡の表面張力によって基板W上のゴミ、塵埃、その他の異物を除去することができる。したがって、基板Wに形成されたパターンを破壊することなく、基板を好適に洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)に対して処理を行う基板処理装置と、基板を処理する基板処理方法とに係り、特に、基板を洗浄する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、基板に洗浄液を噴霧するノズルを備えた基板処理装置がある。この装置では、たとえば、現像液が供給された基板に洗浄液をスプレー状に噴霧して基板を洗浄する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭62−114225号公報
【特許文献2】特開平11−24283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、基板に形成するパターンの微細化が進む中で、従来例のように洗浄液を噴霧するとパターンが破壊されてしまうという不都合がある。
【0004】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、微細なパターンが形成された基板に対しても適切に洗浄することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置において、単一の基板を水平姿勢で保持する保持部と、微細気泡を含んだ気泡含有洗浄液を基板に供給する洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルによって基板に気泡含有洗浄液を供給させて基板を洗浄する制御部と、を備える。
【0006】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、微細気泡は同じ容積の液体に比べても質量を無視できるので、基板面に与える衝撃は小さい。また、微細気泡の表面張力によって基板上のゴミ、塵埃、その他の異物を除去することができる。したがって、基板に形成されたパターンを破壊することなく、基板を好適に洗浄することができる。
【0007】
本発明において、前記微細気泡はマイクロバブルまたはナノバブルであることが好ましい(請求項2)。マイクロバブルまたはナノバブルによれば、サイズの小さい異物であっても好適に除去することができる。なお、マイクルバブルは、1[μm]以上から数百[μm]の大きさの気泡を含み、ナノバブルは、1[μm]未満の大きさの気泡を含む。
【0008】
また、本発明において、前記微細気泡の少なくとも一部は二酸化炭素であることが好ましい(請求項3)。微細気泡が溶解することで気泡含有洗浄液は酸性を示す。このため、例えば、現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【0009】
また、本発明において、微細気泡の大きさを可変する可変機構を備え、前記制御部は、前記可変機構を操作して、処理対象の基板に応じて前記微細気泡の大きさを可変することが好ましい(請求項4)。各種の処理が行われた基板に対して適切に洗浄することができる。
【0010】
また、本発明において、前記制御部は、前記可変機構を操作して、基板に形成されるパターンの線幅に応じて前記微細気泡の大きさを可変することが好ましい(請求項5)。微細気泡の大きさをパターンの線幅間よりも小さくすることで、パターン間に存在する異物を好適に除去することができる。
【0011】
また、本発明において、気泡含有洗浄液を生成する生成機構と、前記生成機構に洗浄液を供給する洗浄液供給源と、を備え、前記可変機構は、前記洗浄液供給源から前記生成機構に供給する洗浄液の流量を調整する洗浄液調整機構を含み、前記制御部は前記洗浄液調整機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変することが好ましい(請求項6)。好適に微細気泡の大きさを調節することができる。
【0012】
また、本発明において、前記生成機構に気体を供給する気体供給源を備え、前記可変機構は、前記気体供給源から前記生成機構に供給する気体の流量を調整する気体調整機構を含み、前記制御部は前記洗浄液調整機構とともに前記気体調整機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変することが好ましい(請求項7)。好適に微細気泡の大きさを調節することができる。
【0013】
また、本発明において、前記生成機構は、洗浄液に溶存する溶存ガスを洗浄液から析出させることによって気泡含有洗浄液を生成することが好ましい(請求項8)。好適に気泡含有洗浄液を生成することができる。
【0014】
また、本発明において、前記洗浄液供給源は、純水に二酸化炭素が溶存した二酸化炭素溶解水を前記生成機構に供給することが好ましい(請求項9)。生成された気泡含有洗浄液は酸性を示す。このため、例えば、現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【0015】
また、本発明において、前記洗浄液ノズルは前記生成機構を兼ねていることが好ましい(請求項10)。装置をコンパクトにすることができる。
【0016】
また、本発明において、前記可変機構は、気泡含有洗浄液に超音波振動を付与して、前記洗浄液に含まれる微細気泡を圧壊させる圧壊機構を含み、前記制御部は前記圧壊機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変することが好ましい(請求項11)。好適に微細気泡の大きさを調節することができる。
【0017】
また、本発明において、前記圧壊機構は、前記洗浄液ノズル内に設けられていることが好ましい(請求項12)。装置をコンパクトにすることができる。
【0018】
また、本発明において、現像液を基板に供給する現像液供給部を備え、前記制御部は、前記現像液供給部によって基板に現像液を供給させ、引き続いて、洗浄液ノズルによって基板に気泡含有洗浄液を供給させることが好ましい(請求項13)。現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【0019】
請求項14に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法において、水平姿勢で保持された基板に、微細気泡を含んだ気泡含有洗浄液を供給して基板を洗浄する洗浄工程を備える。
【0020】
[作用・効果]請求項14に記載の発明によれば、微細気泡は同じ容積の液体に比べても質量を無視できるので、基板面に与える衝撃を低減することができるとともに、微細気泡の表面張力によって基板上のゴミ、塵埃、その他の異物を除去することができる。したがって、基板に形成されたパターンを破壊することなく、基板を好適に洗浄することができる。
【0021】
また、本発明において、前記微細気泡はマイクロバブルまたはナノバブルであることが好ましい(請求項15)。マイクロバブルまたはナノバブルによれば、サイズの小さい異物であっても好適に除去することができる。
【0022】
また、本発明において、前記微細気泡の少なくとも一部は二酸化炭素であることが好ましい(請求項16)。微細気泡が溶解することで気泡含有洗浄液は酸性を示す。このため、例えば、現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【0023】
また、本発明において、前記微細気泡の大きさは、処理対象の基板に応じて調整されていることが好ましい(請求項17)。各種の処理が行われた基板に対して適切に洗浄することができる。
【0024】
また、本発明において、前記微細気泡の大きさは、基板に形成されるパターンの線幅に応じて調整されていることが好ましい(請求項18)。基微細気泡の大きさをパターンの線幅間よりも小さくすることで、パターン間に存在する異物を好適に除去することができる。
【0025】
また、本発明において、基板に現像液を供給する現像工程を備え、前記現像工程の後に前記洗浄工程を行うことが好ましい(請求項19)。現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【0026】
また、本発明において、前記洗浄工程では基板を回転させることが好ましい(請求項20)。洗浄効率を促進させることができる。
【0027】
なお、本明細書は、次のような基板処理装、および、基板処理方法に係る発明も開示している。
【0028】
(1)請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板処理装置において、気泡含有洗浄液は、洗浄液に溶存する溶存ガスを洗浄液から析出させたものである基板処理装置。
【0029】
前記(1)に記載の発明によれば、好適に気泡含有洗浄液を得ることができる。
【0030】
(2)前記(1)に記載の基板処理装置において、前記洗浄液は純水に二酸化炭素が溶存した二酸化炭素溶解水である基板処理装置。
【0031】
前記(2)に記載の発明によれば、現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【0032】
(3)前記(1)に記載の基板処理装置において、前記洗浄液は純水にアンモニアおよび水素の少なくともいずれかが溶解された液体である基板処理装置。
【0033】
前記(3)に記載の発明によれば、基板を好適に洗浄することができる。
【0034】
(4)請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、前記微細気泡は不活性ガス、および、ドライエアの少なくともいずれかである基板処理装置。
【0035】
前記(4)に記載の各発明によれば、基板を好適に洗浄することができる。
【0036】
(5)請求項4または請求項5に記載の基板処理装置において、気泡含有洗浄液を生成する生成機構と、前記生成機構に気体を供給する気体供給源と、を備え、前記可変機構は、前記気体供給源から前記生成機構に供給する気体の流量を調整する気体調整機構を含み、前記制御部は前記気体調整機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変する基板処理装置。
【0037】
前記(5)に記載の発明によれば、好適に微細気泡の大きさを調節することができる。
【0038】
(6)請求項1から請求項13のいずれかに記載の基板処理装置において、前記保持部は基板を回転可能であり、前記制御部は前記保持部を操作して、基板に気泡含有洗浄液を供給させるとき、基板を回転させる基板処理装置。
【0039】
前記(6)に記載の発明によれば、洗浄効率を促進させることができる。
【0040】
(7)請求項14から請求項20のいずれかに記載の基板処理方法において、前記気泡含有洗浄液は、洗浄液に溶存するガスを洗浄液から析出させたものである基板処理方法。
【0041】
前記(7)に記載の発明によれば、好適に気泡含有洗浄液を得ることができる。
【0042】
(8)前記(7)に記載の基板処理方法において、前記洗浄液は純水に二酸化炭素が溶存した二酸化炭素溶解水である基板処理方法。
【0043】
前記(8)に記載の発明によれば、生成された気泡含有洗浄液は酸性を示す。このため、例えば、現像液が供給された基板を好適に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0044】
この発明に係る基板処理装置によれば、微細気泡は同じ容積の液体に比べても質量を無視できるので、基板面に与える衝撃は小さい。また、微細気泡の表面張力によって基板上のゴミ、塵埃、その他の異物を除去することができる。したがって、基板に形成されたパターンを破壊することなく、基板を好適に洗浄することができる。
【0045】
また、この発明に係る基板処理方法によれば、微細気泡は同じ容積の液体に比べても質量を無視できるので、基板面に与える衝撃を低減することができるとともに、微細気泡の表面張力によって基板上のゴミ、塵埃、その他の異物を除去することができる。したがって、基板に形成されたパターンを破壊することなく、基板を好適に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。本実施例では、基板処理装置として、基板を現像する装置を例にとって説明する。図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0047】
本実施例に係る基板処理装置1は、保持部11と、現像液ノズル13と、洗浄液ノズル15と、制御部19とを備えている。
【0048】
保持部11は、スピンチャック21とモータ23とを備えている。スピンチャック21は、基板Wの下面中央部を吸着して、基板Wを水平姿勢で保持する。スピンチャック21の下部中央にはモータ23の出力軸23aの先端が連結されている。モータ23の出力軸23aが回転駆動することで、スピンチャック21と基板Wを鉛直軸周りに回転させる。なお、保持部11の構成は、上記の例に限られない。たとえば、スピンチャック21を、基板Wの端縁を保持する複数のピンが設けられた回転板に変更してもよい。
【0049】
スピンチャック21の周囲には、飛散防止カップ25が配備されている。飛散防止カップ25は、基板Wの外周から周囲に飛散する現像液等を下方へ案内するとともに回収する機能を備える。
【0050】
現像液ノズル13は、現像液を基板Wに供給する。現像液ノズル13には現像液配管31の一端が連通接続されている。現像液配管31の他端は現像液供給源33に連通接続されている。現像液配管31には流路を開閉する開閉弁35が設けられている。現像液ノズル13は、図示省略の現像液ノズル用移動機構によって支持されている。現像液ノズル用移動機構は、基板Wの略中心P上方に当たる処理位置(図1において1点鎖線で示す位置)と、基板W上方から外れた待機位置(図1において実線で示す位置)とにわたって、現像液ノズル13を移動する。現像液ノズル13は、この発明における現像液供給部に相当する。
【0051】
洗浄液ノズル15は、微細気泡を含んだ洗浄液(以下では、特に「気泡含有洗浄液」と記載して、気泡を含まない洗浄液と区別する。)を基板Wに供給する。洗浄液ノズル15には、超音波振動子47が付設されている。洗浄液ノズル15には、洗浄液配管41の一端と、気体配管42の一端が連通接続されている。洗浄液配管41の他端は洗浄液供給源43に連通接続されている。洗浄液供給源43は、洗浄液(本実施例では、純水である。)を洗浄液ノズル15に供給する。洗浄液配管41には洗浄液の流量を調整する流量調整弁45が設けられている。また、気体配管42の他端は気体供給源44に連通接続されている。気体供給源44は気体(本実施例では、二酸化炭素ガスである。)を洗浄液ノズルに供給する。気体配管41には気体の流量を調整する流量調整弁46が設けられている。流量調整弁45は、この発明における洗浄液調整機構に相当する。流量調整弁46は、この発明における気体調整機構に相当する。
【0052】
図2を参照する。図2は、洗浄液ノズル15の詳細図である。洗浄液ノズル15の内部流路15aは、洗浄液配管41と連通する位置から吐出口Aが形成されている位置にかけて流路断面積が小さくなるように形成されている。洗浄液配管41から供給された洗浄液は、内部流路15aを高速で旋回しながら流れる。図2では、洗浄液の旋回流を一点鎖線で模式的に示す。また、洗浄液ノズル15の上端には、気体配管42が連通接続されている。そして、洗浄液の旋回流と気体配管42から供給される気体とによって、洗浄液に溶存していた溶存ガスは洗浄液から析出し、微細気泡となる。また、気体配管42から供給される気体の一部も微細気泡となる。このように、洗浄液ノズル15は、洗浄液から気泡含有洗浄液を生成する。したがって、洗浄ノズル15は、この発明における「生成機構を兼ねている洗浄液ノズル」に相当する。
【0053】
ここで、微細気泡はマイクロバブルまたはナノバルブであることが好ましい。マイクルバブルは、1[μm]以上から数百[μm]の大きさの気泡を含み、ナノバブルは、1[μm]未満の大きさの気泡を含む。
【0054】
超音波振動子47は、吐出口Aが形成される洗浄液ノズル15の下部に配置されている。超音波振動子47は、気泡含有洗浄液に超音波振動を付与して、微細気泡を圧壊する。圧壊により微細気泡の大きさはさらに小さくなる。超音波振動子47は、この発明における圧壊機構に相当する。
【0055】
上述した洗浄液ノズル15は、図示省略の洗浄液ノズル用移動機構によって支持されている。洗浄液ノズル用移動機構は、基板Wの略中心P上方に当たる処理位置(図1において1点鎖線で示す位置)と、基板W上方から外れた待機位置(図1において実線で示す各位置)とにわたって、洗浄液ノズル13を移動する。
【0056】
制御部19は、上述した各構成を統括的に制御する。具体的には、制御部19は、モータ23を駆動させて基板Wの回転数を制御する。制御部19は、図示省略の現像液ノズル用移動機構および洗浄液ノズル用移動機構を駆動させて現像液ノズル13および洗浄液ノズル15の位置を制御する。制御部19は、開閉弁35を開放・閉止させて現像液の供給量を制御する。
【0057】
また、制御部19は、流量調整弁45、46の各開度を調節して洗浄液(純水)および気体(二酸化炭素ガス)の各供給流量と、超音波振動子47が与える超音波振動のエネルギーを制御して、微細気泡の大きさを可変させる。
【0058】
この制御部19は処理レシピ(処理プログラム)等を予め記憶しており、ロット単位で入力される基板Wの処理情報に応じて処理レシピを選択して各構成を統括的に制御する。基板Wの処理情報には基板Wに形成されているパターンの線幅寸法が含まれている。制御部19は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0059】
次に、図3を参照して基板処理装置1の処理例を例示する。図3は、基板を現像する処理の流れを示すフローチャートである。以下、各過程について説明する。ここでは、レジスト膜が被着された基板Wが既にスピンチャック21に吸着保持されているものとして説明する。
【0060】
<ステップS1> 現像液の供給(現像工程)
制御部41はモータ23を駆動してスピンチャック21に保持される基板Wを回転させつつ、現像液ノズル13を基板Wの略中心P上方の処理位置まで移動させて、開閉弁35を開放する。現像液ノズル13は、現像液供給源33から供給された現像液を基板Wに供給する。基板Wに供給された現像液は遠心力を受けて基板Wの全面に広がり、基板Wを現像する。所定の期間が経過すると開閉弁35を閉止して、現像液ノズル13を待機位置に戻す。
【0061】
<ステップS2> 気泡含有洗浄液の供給(洗浄工程)
制御部19は洗浄液ノズル15を処理位置まで移動させて、流量調節弁45、46の開度を調節する。これにより、洗浄液ノズル15には、洗浄液供給源45から純水が供給されるとともに、気体供給源46から二酸化炭素ガスが供給される。洗浄ノズル15の内部流路15aでは、純水および二酸化炭素ガスの各流量に応じた大きさの微細気泡を含んだ気泡含有洗浄液が生成される。微細気泡の一部は、純水に溶存していた気体であり、微細気泡の一部は二酸化炭素である。
【0062】
また、制御部19は超音波振動子47を制御して、気泡含有洗浄液に超音波振動を与える。内部流路15aで発生した微細気泡が洗浄液ノズル15の下部を通過するとき、超音波振動のエネルギーに応じた大きさに圧壊される。
【0063】
このようにして得られる微細気泡の最終的な大きさは、制御部19による流量調整弁45、46および超音波振動子47の各操作量によって制御可能である。本実施例では、制御部19は処理レシピを参照して、処理対象の基板Wに形成されているパターンの線幅よりも微細気泡が小さくなるように制御する。
【0064】
洗浄液ノズル15は、このようにして生成された気泡含有洗浄液を吐出口Aから基板Wに吐出する。基板Wに供給された気泡含有洗浄液は基板Wの回転の遠心力によって基板Wの全面に広がる。このように基板Wに気泡含有洗浄液が供給されても、微細気泡による衝撃は比較的に小さいため、基板Wに形成されているパターンは破壊されない。
【0065】
また、微細気泡はその表面張力によって基板W上のゴミ、塵埃、その他の異物を除去する。また、微細気泡はパターンの線幅よりも小さいため、パターン間に進入してパターン間に存在する異物を容易に除去できる。
【0066】
また、二酸化炭素の微細気泡は気泡含有洗浄液(厳密には気泡含有洗浄液の純水)に容易に溶解する。この結果、気泡含有洗浄液は、二酸化炭素溶解水と微細気泡の混合物に変わり、二酸化炭素溶解水と同じ性状を示すようになり、酸性となる。そして、酸性となった気泡含有洗浄液は、基板W上の現像液と中和して生成物(塩)を生成する。生成物は沈殿することなく、酸性の気泡含有洗浄液に容易に溶ける。
【0067】
このようにして、基板W上の異物や炭酸ガス溶解水に溶けた生成物などは、基板Wから振り切られて基板Wの外へ捨てられる。所定の期間が経過すると、流量調整弁45、46を閉止して、洗浄液ノズル15を待機位置に戻す。
【0068】
<ステップS3> 回転乾燥(乾燥工程)
制御部19は基板Wをより高速に回転させる。これにより、気泡含有洗浄液を基板Wから振り切りつつ、基板Wを乾燥する。
【0069】
このような実施例によれば、微細気泡を含有する気泡含有洗浄液では基板Wに与える衝撃力が良好に抑制されているので、基板Wに形成されているレジストパターンを破壊することがない。また、微細気泡の表面張力によって、基板W上の異物を好適に除去することができ、洗浄効率が高い。
【0070】
また、微細気泡はマイクロバブルまたはナノバブルであるので、サイズの小さい異物であっても好適に除去することができる。
【0071】
また、気体供給源44から洗浄液ノズル15に二酸化炭素ガスを供給するように構成して、少なくとも微細気泡の一部を二酸化炭素とすることで、二酸化炭素が溶解した気泡含有洗浄液を基板Wに供給することができる。そして、この二酸化炭素が溶解した気泡含有洗浄液により基板W上の現像液を中和させ、基板W上に現像液が残ることを好適に抑制することができる。
【0072】
また、制御部19は流量調整弁45、46および超音波振動子47を制御して、微細気泡の大きさを、基板Wに形成されているパターンの線幅よりも小さくさせる。これにより、基板Wのレジストパターンの間など微細な部位であっても、好適に洗浄することができる。また、制御部19は処理レシピを参照することで微細気泡のサイズを調整するので、基板Wに行われた処理の種類、または、基板Wに形成されているパターンの線幅に応じた的確な洗浄を行うことができる。さらに、制御部19は、微細気泡の大きさを可変するために流量調整弁45、46および超音波振動子47を制御するので、微細気泡の大きさをきめ細かく調整することができる。
【0073】
また、洗浄液ノズル15は、気泡含有洗浄液を基板Wに吐出する機能のみならず、気泡含有洗浄液を生成する機能を兼ねているので、基板処理装置1全体をコンパクトにすることができる。また、超音波振動子47を洗浄液ノズル15内に設けているので、基板処理装置1全体をコンパクトにすることができる。
【0074】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0075】
(1)上述した実施例では、洗浄液ノズル15に気体を供給する構成であったが、これに限られない。たとえば、洗浄液ノズル15に気体を供給しないように構成してもよい。また、洗浄液ノズル15は、超音波振動子47を内蔵するものであったが、これに限られない。たとえば、超音波振動子47を省略するように変更してもよい。
【0076】
図4を参照する。図4は、変形実施例1に係る基板処理装置1の概略構成を示すブロック図である。図示するように、洗浄液ノズル16には、洗浄液配管41のみが連通接続されて、洗浄液のみが供給されるように構成されている。また、洗浄液ノズル16には、超音波振動子47が設けられていない。このような洗浄液ノズル16によっても、その内部流路(図示省略)で生じる洗浄液の旋回流によって好適に微細気泡を生成することができる。
【0077】
(2)上述した実施例では、洗浄液ノズル15は、その内部流路15aで気泡含有洗浄液を生成するものであったが、これに限られない。たとえば、洗浄液ノズル15とは別個に気泡含有洗浄液を生成する機構を備えるように構成してもよい。
【0078】
図5を参照する。図5は、変形実施例2に係る基板処理装置1の概略構成を示すブロック図である。この装置1は、気泡含有洗浄液を生成する生成機構51を備えている。生成機構51は、気体供給源44から供給される気体から微細気泡を生成し、この微細気泡を洗浄液に混合して気泡含有洗浄液を生成するものである。なお、洗浄液供給源43および気体供給源44は本実施例と同様の構成であり、同符号を付している。
【0079】
生成機構51は、気液混合ポンプ52と、旋回加速器53と、分散器54とを備えている。気液混合ポンプ52の一次側は、配管を介して、洗浄液供給源43および気体供給源44とそれぞれ連通接続されている。気液混合ポンプ52の二次側は旋回加速器53の一次側に連通接続されている。旋回加速器53の二次側には分散器54が接続されている。分散器54は、気泡含有洗浄液槽55内に配置されている。気泡含有洗浄液槽55には洗浄液供給源43から供給された洗浄液が貯留されている。したがって、分散器54は洗浄液に浸漬されている。そして、気液混合ポンプ52は、洗浄液および気体を混合し、旋回加速器53は混合された洗浄液および気体を高速で旋回させて気液2相流を形成する。分散器54は気液2層流を流体力学的に剪断して微細気泡を形成し、気泡含有洗浄液槽55内に供給する。これにより、気泡含有洗浄液槽55内に気泡含有洗浄液を生成する。制御部19は、気液混合ポンプ52と旋回加速器53とを制御して、微細気泡の大きさを可変する。気液混合ポンプ52と旋回加速器53とはそれぞれ、この発明における可変機構に相当する。
【0080】
気泡含有洗浄液槽55で生成された気泡含有洗浄液は、配管49を介して、洗浄液ノズル17に供給される。洗浄液ノズル17は、単に生成機構51から供給された気泡含有洗浄液を基板Wに吐出する。この洗浄液ノズル17は、実施例で説明した洗浄ノズル15のように、気泡含有洗浄液を生成する機能を有していない。
【0081】
(3)上述した実施例では、洗浄液の旋回流により微細気泡を発生させていたが、これに限られない。超音波振動子47による超音波振動を洗浄液に付与して微細気泡を発生させるように構成してもよい。また、微細気泡を発生させるメカニズムに応じて生成機構を適宜に変更してもよい。微細気泡を発生させるメカニズムとしては、超音波・衝撃波による圧壊、キャビテーションによる圧壊、過飽和析出法(加圧溶解)、乱流(剪断)、微細孔(焼結体)、固体包埋溶解、電気分解、化学反応などを適宜に採用することができる。
【0082】
(4)上述した実施例では、微細気泡の大きさを調整可能であったが、これに限られない。気泡含有洗浄液に含まれる微細気泡の大きさは一定であってもよい。たとえば、流量調整弁45、46をそれぞれ開閉弁に変更してもよい。また、図4では、洗浄液ノズル16に対する洗浄液の供給・停止を単に切り換える開閉弁48を備えて、気泡含有洗浄液に含まれる微細気泡の大きさを調整しない構成を図示している。
【0083】
(5)上述した実施例では、洗浄液供給源43は洗浄液として純水を供給するものであったが、これに限られない。たとえば、洗浄液として二酸化炭素が純水に溶存した二酸化炭素溶解水を洗浄液として供給するように洗浄液供給源43を変更してもよい。これによれば、現像液が供給された基板Wを効果的に洗浄することができる。
【0084】
あるいは、洗浄液として、純水にアンモニアおよび水素の少なくともいずれかが溶解された液体を供給するように、洗浄液供給源43を変更してもよい。あるいは、薬液として使用される溶液を供給するように変更してもよい。具体的には、イオン水やIPA(イソプロピルアルコール)に変更してもよい。または、硫酸、硝酸、フッ酸、塩酸またはリン酸等の水溶液に変更してもよい。
【0085】
(6)上述した実施例では、気体供給源44は気体として二酸化炭素ガスを供給するものであったが、これに限られない。たとえば、気体として不活性ガス、ドライエア、あるいは、不活性ガスおよびドライガスの混合気体を供給するように、気体供給源44を変更してもよい。また、気体として、酸素、オゾン、過酸化水素ガス、アンモニア、または、水素など、あるいは、これらの混合気体を供給するように変更してもよい。
【0086】
(7)上述した実施例では、気泡含有洗浄液を生成する洗浄液ノズル15を備えていたが、これに限られない。たとえば、気泡含有洗浄液の供給源がクリーンルーム内のユーティリティ等として配備されている場合には、洗浄液ノズル15を、気泡含有洗浄液を生成しないノズルに変更してもよい。
【0087】
(8)上述した実施例では、気泡含有洗浄液が酸性を示す場合を例示したが、これに限られない。気泡含有洗浄液は中性であってもよいし、アルカリ性であってもよい。
【0088】
(9)上述した実施例では、ステップS1からステップS3の各過程において、基板Wを回転させていたが、これに限られない。任意のステップSにおいて、基板Wを静止させるように変更してもよい。また、基板Wに気泡含有洗浄液を供給させる処理において基板Wを回転させない場合は、保持部11を、基板Wを回転させることなく固定的に保持する機構に変更してもよい。
【0089】
(10)上述した実施例では、基板Wを現像する基板処理装置を例にとって説明したが、これに限られない。基板Wに気泡含有洗浄液を供給する処理を伴うものであれば、任意の基板処理を行う装置に適用することができる。たとえば、基板Wに現像液を供給する処理に代えて、他の種類の処理を行うように変更してもよい。あるいは、単に基板Wに気泡含有洗浄液を供給する処理のみを行うように変更してもよい。
【0090】
(11)上述した実施例および各変形実施例(1)乃至(10)の各構成を適宜に組み合わせるように変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】洗浄液ノズルの詳細図である。
【図3】基板を現像する処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】変形実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】変形実施例2に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0092】
1 … 基板処理装置
11 … 保持部
13 … 現像液ノズル
15、16、17 … 洗浄液ノズル
19 … 制御部
43 … 洗浄液供給源
44 … 気体供給源
45 … 流量調整弁
46 … 流量調整弁
47 … 超音波振動子
51 … 生成機構
W … 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置において、
単一の基板を水平姿勢で保持する保持部と、
微細気泡を含んだ気泡含有洗浄液を基板に供給する洗浄液ノズルと、
前記洗浄液ノズルによって基板に気泡含有洗浄液を供給させて基板を洗浄する制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記微細気泡はマイクロバブルまたはナノバブルである基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置において、
前記微細気泡の少なくとも一部は二酸化炭素である基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
微細気泡の大きさを可変する可変機構を備え、
前記制御部は、前記可変機構を操作して、処理対象の基板に応じて前記微細気泡の大きさを可変する基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記可変機構を操作して、基板に形成されるパターンの線幅に応じて前記微細気泡の大きさを可変する基板処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の基板処理装置において、
気泡含有洗浄液を生成する生成機構と、
前記生成機構に洗浄液を供給する洗浄液供給源と、
を備え、
前記可変機構は、前記洗浄液供給源から前記生成機構に供給する洗浄液の流量を調整する洗浄液調整機構を含み、
前記制御部は前記洗浄液調整機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変する基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置において、
前記生成機構に気体を供給する気体供給源を備え、
前記可変機構は、前記気体供給源から前記生成機構に供給する気体の流量を調整する気体調整機構を含み、
前記制御部は前記洗浄液調整機構とともに前記気体調整機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変する基板処理装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の基板処理装置において、
前記生成機構は、洗浄液に溶存する溶存ガスを洗浄液から析出させることによって気泡含有洗浄液を生成する基板処理装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記洗浄液供給源は、純水に二酸化炭素が溶存した二酸化炭素溶解水を前記生成機構に供給する基板処理装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記洗浄液ノズルは前記生成機構を兼ねている基板処理装置。
【請求項11】
請求項4から請求項10のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記可変機構は、気泡含有洗浄液に超音波振動を付与して、前記洗浄液に含まれる微細気泡を圧壊させる圧壊機構を含み、
前記制御部は前記圧壊機構を操作して、前記微細気泡の大きさを可変する基板処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理装置において、
前記圧壊機構は、前記洗浄液ノズル内に設けられている基板処理装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の基板処理装置において、
現像液を基板に供給する現像液供給部を備え、
前記制御部は、前記現像液供給部によって基板に現像液を供給させ、引き続いて、洗浄液ノズルによって基板に気泡含有洗浄液を供給させる基板処理装置。
【請求項14】
基板を処理する基板処理方法において、
水平姿勢で保持された基板に、微細気泡を含んだ気泡含有洗浄液を供給して基板を洗浄する洗浄工程を備える基板処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の基板処理方法において、
前記微細気泡はマイクロバブルまたはナノバブルである基板処理方法。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の基板処理方法において、
前記微細気泡の少なくとも一部は二酸化炭素である基板処理方法。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記微細気泡の大きさは、処理対象の基板に応じて調整されている基板処理方法。
【請求項18】
請求項14から請求項17のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記微細気泡の大きさは、基板に形成されるパターンの線幅に応じて調整されている基板処理方法。
【請求項19】
請求項14から請求項18のいずれかに記載の基板処理方法において、
基板に現像液を供給する現像工程を備え、
前記現像工程の後に前記洗浄工程を行う基板処理方法。
【請求項20】
請求項14から請求項19のいずれかに記載の基板処理方法において、
前記洗浄工程では基板を回転させる基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−153475(P2010−153475A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327899(P2008−327899)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(506322684)株式会社SOKUDO (158)
【Fターム(参考)】