成膜方法、成膜装置および記憶媒体
【課題】DRAMキャパシタの誘電体膜に求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができる、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜の成膜方法および成膜装置を提供すること。
【解決手段】 酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法は、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とを有する。
【解決手段】 酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法は、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理基板上に酸化ジルコニウム(ZrO2)膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法および成膜装置、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、LSIの高集積化、高速化の要請からLSIを構成する半導体素子のデザインルールが益々微細化されている。それにともなって、DRAMに用いるキャパシタの容量の上昇が求められており、それに用いられる誘電体膜の高誘電率化が求められている。
【0003】
このようなDRAMのキャパシタに用いられる高誘電率の誘電体膜としては、酸化ジルコニウム(ZrO2)膜が検討されている(例えば特許文献1)。
【0004】
酸化ジルコニウム膜を成膜する手法として、原料ガス(プリカーサ)として例えばテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)を用い、酸化剤として例えばO3ガスを用いて、これらを交互的に供給するALDプロセスが知られている(例えば特許文献2)。
【0005】
しかしながら、酸化ジルコニウム膜を単独でDRAMキャパシタの誘電体膜として適用した場合には、次世代DRAMの誘電体膜として求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることは困難である。
【0006】
これに対して、特許文献3には、誘電体膜としてZrO2膜とTiO2膜等のTiを含む金属酸化膜の2層構造のものを用いたキャパシタにより、高誘電率化および低リーク電流化を達成できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−152339号公報
【特許文献2】特開2006−310754号公報
【特許文献3】国際公開第2010/082605号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、酸化ジルコニウム膜は酸素欠損を起こしやすい膜であるため、上記特許文献3に示すように単純にZrO2膜とTiO2膜等のTiを含む金属酸化膜の2層構造の誘電体膜を用いても、高誘電率化および低リーク電流化を目的のレベルまで到達させることは容易ではない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、DRAMキャパシタの誘電体膜に求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができる、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜の成膜方法および成膜装置を提供することを目的とする。
さらに、そのような成膜方法を実行するプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法であって、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とを有することを特徴とする成膜方法を提供する。
【0011】
上記第1の観点において、前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程は、処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施され、前記酸化チタン膜を成膜する工程は、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施されることが好ましい。この場合に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むジルコニウム化合物からなるジルコニウム原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返され、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返されることが好ましい。
【0012】
さらに、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物としては、シクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、またはメチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウムを好適に用いることができ、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物としては、メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)チタニウムを好適に用いることができる。
【0013】
本発明の第2の観点では、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜装置であって、真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、被処理基板を複数段に保持した状態で前記処理容器内に保持する保持部材と、前記処理容器の外周に設けられた加熱装置と、ジルコニウム原料を前記処理容器内に供給するジルコニウム原料供給機構と、チタン原料を前記処理容器内に供給するチタン原料供給機構と、前記処理容器内へ酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、前記ジルコニウム原料供給機構、前記チタン原料供給機構および前記酸化剤供給機構を制御する制御機構とを具備し、前記制御機構は、前記処理容器内に、ジルコニウム原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を供給するとともに酸化剤を供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、前記処理容器内に、チタン原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物を供給するとともに酸化剤を供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とが行われるように制御することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0014】
上記第2の観点において、前記制御機構は、前記処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程が行われ、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化チタン膜を成膜する工程が行われるように制御することが好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点では、コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜し、シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜することにより、不純物や欠陥の少ない高密度の膜となり、かつ酸化チタン膜の保護機能により、DRAMキャパシタの誘電体膜に求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができる誘電体膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例を示す横断面図である。
【図3】本発明一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明一実施形態に係る成膜方法の酸化ジルコニウム膜の成膜におけるガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明一実施形態に係る成膜方法の酸化チタン膜の成膜におけるガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を用いてZrO2膜を成膜する際のZr化合物の分子の状態を説明する模式図である。
【図7】ZrソースとしてCp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系Zr化合物であるTEMAZとを用いてZrO2膜を成膜した場合の不純物濃度を示す図である。
【図8】内部ディープトレンチチップにCPDTMZおよびTEMAZをそれぞれ用いてZrO2膜を成膜した際のステップカバレージを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9】ZrソースとしてTEMAZを用いて成膜したZrO2膜とZrソースとしてCPDTMZを用いて成膜したZrO2膜の密度を比較して示す図である。
【図10】CPDTMZとTEMAZとをそれぞれ用いて成膜した膜のHgプローブでのリーク特性を示す図である。
【図11】CPDTMZとTEMAZとをそれぞれ用いて成膜した膜のEOTとリーク電流との関係を示す図である。
【図12】TiソースとしてMCPDTMTとTIPTとをそれぞれ用いて成膜したZrAlO膜のTiO2膜の不純物濃度を示す図である。
【図13】TiソースとしてMCPDTMTとTIPTとをそれぞれ用いて成膜したTiO2膜のステップカバレージを把握するための走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】TiソースとしてMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜とTIPTを用いて形成されたTiO2膜とについて、as depo状態でのX線回折プロファイルを示す図である。
【図15】TiソースとしてTIPTを用いて成膜したTiO2膜と、MCPDTMT用いて成膜したTiO2膜の膜厚変化(膜収縮)を示す図である。
【図16】TiN膜の上にMCPDTMTを用いてZrO2膜を成膜したサンプルと、このZrO2膜の上にそれぞれ目標膜厚1nm、3nm、5nmでMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルについて2次イオン質量分析法にて深さ方向のTiO2、H、Cの分布を調査した結果を示す図である。
【図17】誘電体膜としてZrO2膜単膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルと、誘電体膜として本発明に係るZrO2−TiO22層膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルについて、横軸にEOTをとり縦軸にリーク電流値をとったグラフである。
【図18】誘電体膜としてZrO2膜単膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルと、誘電体膜として本発明に係るZrO2−TiO22層膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルについて、横軸にZrO2膜をとり縦軸にEOTとリーク電流値をとったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例>
図1は本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例を示す縦断面図、図2は図1の成膜装置を示す横断面図である。なお、図2においては、加熱装置を省略している。
【0020】
成膜装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器1を有している。この処理容器1の全体は、例えば石英により形成されており、この処理容器1内の天井には、石英製の天井板2が設けられて封止されている。また、この処理容器1の下端開口部には、例えばステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド3がOリング等のシール部材4を介して連結されている。
【0021】
上記マニホールド3は処理容器1の下端を支持しており、このマニホールド3の下方から被処理体として多数枚、例えば50〜100枚の半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを多段に載置可能な石英製のウエハボート5が処理容器1内に挿入可能となっている。このウエハボート5は3本の支柱6を有し(図2参照)、支柱6に形成された溝により多数枚のウエハWが支持されるようになっている。
【0022】
このウエハボート5は、石英製の保温筒7を介してテーブル8上に載置されており、このテーブル8は、マニホールド3の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部9を貫通する回転軸10上に支持される。
【0023】
そして、この回転軸10の貫通部には、例えば磁性流体シール11が設けられており、回転軸10を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部9の周辺部とマニホールド3の下端部との間には、例えばOリングよりなるシール部材12が介設されており、これにより処理容器1内のシール性を保持している。
【0024】
上記の回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム13の先端に取り付けられており、ウエハボート5および蓋部9等を一体的に昇降して処理容器1内に対して挿脱されるようになっている。なお、上記テーブル8を上記蓋部9側へ固定して設け、ウエハボート5を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0025】
成膜装置100は、処理容器1内へガス状の酸化剤、例えばO3ガスを供給する酸化剤供給機構14と、処理容器1内へZrソースガス(Zr原料ガス)を供給するZrソースガス供給機構15と、処理容器1内へTiソースガス(Ti原料ガス)を供給するTiソースガス供給機構16とを有している。また、処理容器1内へパージガスとして不活性ガス、例えばN2ガスを供給するパージガス供給機構30を有している。
【0026】
酸化剤供給機構14は、酸化剤供給源17と、酸化剤供給源17から酸化剤を導く酸化剤配管18と、この酸化剤配管18に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなる酸化剤分散ノズル19とを有している。この酸化剤分散ノズル19の垂直部分には、複数のガス吐出孔19aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔19aから水平方向に処理容器1に向けて略均一に酸化剤、例えばO3ガスを吐出することができるようになっている。酸化剤としては、O3ガスの他に、H2Oガス、O2ガス、NO2ガス、NOガス、N2Oガス等を用いることができる。プラズマ生成機構を設けて酸化剤をプラズマ化して反応性を高めるようにしてもよい。またO2ガスとH2ガスを用いたラジカル酸化であってもよい。O3ガスを用いる場合には酸化剤供給源17としてはO3ガスを発生するオゾナイザーを備えたものとする。
【0027】
Zrソースガス供給機構15は、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるZrソース、例えばシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(ZrCp(NMe2)3;以下CPDTMZと記す)、メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(Zr(MeCp)(NMe2)3;以下MCPDTMZと記す)が貯留されたZrソース貯留容器20と、このZrソース貯留容器20から液体のZrソースを導くZrソース配管21と、Zrソース配管21に接続され、Zrソースを気化させる気化器22と、気化器22で生成されたZrソースガスを導くZrソースガス配管23と、このZrソースガス配管23に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるZrソースガス分散ノズル24とを有している。気化器22にはキャリアガスとしてのN2ガスを供給するキャリアガス配管22aが接続されている。Zrソースガス分散ノズル24には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔24aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔24aから水平方向に処理容器1内に略均一にZrソースガスを吐出することができるようになっている。
【0028】
Tiソースガス供給機構16は、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物からなるTiソース、例えばメチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノチタニウム(Ti(MeCp)(NMe2)3;以下MCPDTMTと記す)が貯留されたTiソース貯留容器25と、このTiソース貯留容器25から液体のTiソースを導くTiソース配管26と、Tiソース配管26に接続され、Tiソースを気化させる気化器27と、気化器27で生成されたTiソースガスを導くTiソースガス配管28と、このTiソースガス配管28に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるTiソースガス分散ノズル29とを有している。気化器27にはキャリアガスとしてのN2ガスを供給するキャリアガス配管27aが接続されている。Tiソースガス分散ノズル29には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔29aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔29aから水平方向に処理容器1内に略均一にTiソースガスを吐出することができるようになっている。
【0029】
さらに、パージガス供給機構30は、パージガス供給源31と、パージガス供給源31からパージガスを導くパージガス配管32と、このパージガス配管32に接続され、マニホールド3の側壁を貫通して設けられたパージガスノズル33とを有している。パージガスとしては不活性ガス例えばN2ガスを好適に用いることができる。
【0030】
酸化剤配管18には、開閉弁18aおよびマスフローコントローラのような流量制御器18bが設けられており、ガス状の酸化剤を流量制御しつつ供給することができるようになっている。また、パージガス配管32にも開閉弁32aおよびマスフローコントローラのような流量制御器32bが設けられており、パージガスを流量制御しつつ供給することができるようになっている。
【0031】
上記Zrソース貯留容器20には、Zrソース圧送配管20aが挿入されており、Zrソース圧送配管20aからHeガス等の圧送ガスを供給することにより、Zrソース配管21へ液体のZrソースが送給される。上記Zrソース配管21には液体マスフローコントローラのような流量制御器21aが設けられており、上記Zrソースガス配管23にはバルブ23aが設けられている。
【0032】
上記Tiソース貯留容器25には、Tiソース圧送配管25aが挿入されており、Tiソース圧送配管25aからHeガス等の圧送ガスを供給することにより、Tiソース配管26へ液体のTiソースが送給される。上記Tiソース配管26には液体マスフローコントローラのような流量制御器26aが設けられており、上記Tiソースガス配管28にはバルブ28aが設けられている。
【0033】
酸化剤を分散吐出するための酸化剤分散ノズル19は、処理容器1の凹部1a内に設けられており、Zrソースガス分散ノズル24と、Tiソースガス分散ノズル29は、これらで酸化剤分散ノズル19を挟むように設けられている。
【0034】
処理容器1の酸化剤分散ノズル19、Zrソースガス分散ノズル24、およびTiソースガス分散ノズル29と反対側の部分には、処理容器1内を真空排気するための排気口37が設けられている。この排気口37は処理容器1の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理容器1のこの排気口37に対応する部分には、排気口37を覆うように断面コ字状に成形された排気口カバー部材38が溶接により取り付けられている。この排気口カバー部材38は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びており、処理容器1の上方にガス出口39を規定している。そして、このガス出口39から図示しない真空ポンプ等を含む真空排気機構により真空引きされる。そして、この処理容器1の外周を囲むようにしてこの処理容器1およびその内部のウエハWを加熱する筒体状の加熱装置40が設けられている。
【0035】
成膜装置100の各構成部の制御、例えば開閉弁18a、23a、28a、32aの開閉による各ガスの供給・停止、流量制御器18b、21a、26a、32bによるガスや液体ソースの流量の制御、処理容器1に導入するガスの切り替え、加熱装置40の制御等は例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ50により行われる。コントローラ50には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース51が接続されている。
【0036】
また、コントローラ50には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部52が接続されている。レシピは記憶部52の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられたものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0037】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース51からの指示等にて任意のレシピを記憶部52から呼び出してコントローラ50に実行させることで、コントローラ50の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。すなわち、記憶部52の記憶媒体には、以下に説明する成膜方法を実行するプログラム(すなわち処理レシピ)が記憶されており、そのプログラムがコントローラ50に以下に説明する本発明の一実施形態に係る成膜方法を実行するように成膜装置100を制御させる。
【0038】
<本発明の一実施形態に係る成膜方法>
次に、以上のように構成された成膜装置を用いて行なわれる本発明の一実施形態に係る成膜方法について説明する。
【0039】
まず、常温において、例えば50〜100枚のウエハWが搭載された状態のウエハボート5を予め所定の温度に制御された処理容器1内にその下方から上昇させることによりロードし、蓋部9でマニホールド3の下端開口部を閉じることにより処理容器1内を密閉空間とする。そして処理容器1内を真空引きして所定のプロセス圧力に維持するとともに、加熱装置40への供給電力を制御して、ウエハ温度を上昇させてプロセス温度に維持し、ウエハボート5を回転させた状態で成膜処理を開始する。
【0040】
本実施形態の成膜方法は、図3のフローチャートに示すように、酸化ジルコニウム膜成膜工程(工程1)と、酸化チタン膜成膜工程(工程2)とを有する。
【0041】
1.酸化ジルコニウム膜成膜工程(工程1)
工程1の酸化ジルコニウム膜の成膜においては、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるZrソースガスと酸化剤とを用いて成膜を行う。具体的には、図4のタイミングチャートに示すように、処理容器1にZrソースガスを供給してウエハWに吸着させるステップS1と、処理容器内をパージガスでパージするステップS2と、ガス状の酸化剤として例えばO3ガスを処理容器1に供給してZrソースガスを酸化させるステップS3と、処理容器内をパージガスでパージするステップS4とを1回のZrO2成膜操作とし、これを複数回繰り返すALDにより所定膜厚のZrO2膜を成膜する。DRAMキャパシタの誘電体膜として適用する場合には、膜厚は0.1〜10nm程度とする。より好適な膜厚は1〜8nmである。
【0042】
次いで、必要に応じてアニールすることにより、結晶化したジルコニア系膜を形成する。この場合のアニール温度は600℃以下であることが好ましい。600℃を超えるとデバイスに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0043】
上記ステップS1においては、Zrソースガス供給機構15のZrソース貯留容器20からZrソースとしてシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を供給し、気化器22でこれを気化させてZrソースガスを発生させ、ZrソースガスをZrソースガス配管23およびZrソースガス分散ノズル24を介してガス吐出孔24aから処理容器1内にT1の期間供給する。これにより、ウエハW上にZrソースガスを吸着させる。
【0044】
Zrソースとして用いるシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物としては、上述のようにCPDTMZおよびMCPDTMZが例示され、これらの構造式は以下に示すようなものである。
【化1】
【0045】
ステップS1の期間T1は0.1〜1800secが例示される。また、Zrソースの流量は0.01〜10ml/min(ccm)が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。
【0046】
ステップS3の酸化剤を供給するステップにおいては、酸化剤供給機構14の酸化剤供給源17から酸化剤として例えばO3ガスが酸化剤配管18および酸化剤分散ノズル19を経て吐出される。これにより、ウエハWに吸着されたZrソースが酸化されてZrO2が形成される。
【0047】
このステップS3の期間T3は0.1〜1800secの範囲が好ましい。酸化剤の流量はウエハWの搭載枚数や酸化剤の種類によっても異なるが、酸化剤としてO3ガスを用い、ウエハWの搭載枚数が50〜100枚程度のときには、1〜500g/Nm3が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。
【0048】
上記ステップS2、S4は、ステップS1の後またはステップS3の後に処理容器1内に残留するガスを除去して次の工程において所望の反応を生じさせるために行われるものであり、パージガス供給機構30のパージガス供給源31からパージガス配管32およびパージガスノズル33を経て処理容器1内にパージガス、例えばN2を供給して処理容器1内をパージする。この場合に、真空引きとパージガスの供給とを複数回繰り返すことにより、残留するガスの除去効率を上げることができる。このステップS2,S4の期間T2、T4としては、0.1〜1800secが例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。このとき、Zrソースガスを供給するステップS1の後のステップS2と、酸化剤を供給するステップS3の後のステップS4とは、両者のガスの排出性の相違から、真空引き時間、パージガス供給時間を変えてもよい。具体的には、ステップS1後のほうがガスの排出に時間がかかることから、ステップS1後に行うステップS2のほうの時間を長くすることが好ましい場合もある。
【0049】
2.酸化チタン膜成膜工程(工程2)
工程2の酸化チタン膜の成膜においては、工程1に引き続き、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物からなるTiソースガスと酸化剤とを用いて成膜を行う。具体的には、図5のタイミングチャートに示すように、処理容器1にTiソースガスを供給してZrO2膜上に吸着させるステップS11と、処理容器内をパージガスでパージするステップS12と、ガス状の酸化剤として例えばO3ガスを処理容器1に供給してTiソースガスを酸化させるステップS13と、処理容器内をパージガスでパージするステップS14とを1回のTiO2成膜操作とし、これを複数回繰り返すALDにより、所定膜厚のTiO2膜を成膜する。
【0050】
上記ステップS11においては、Tiソースガス供給機構16のTiソース貯留容器25からTiソースとしてシクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を供給し、気化器27でこれを気化させてTiソースガスを発生させ、TiソースガスをTiソースガス配管28およびTiソースガス分散ノズル29を介してガス吐出孔29aから処理容器1内にT1の期間供給する。これにより、ZrO2膜上にTiソースガスを吸着させる。
【0051】
シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物としては、上述のようにMCPDTMTが例示され、その構造式は以下に示すようなものである。
【化2】
【0052】
ステップS11の期間T11は0.1〜1800secが例示される。また、Tiソースの流量は0.01〜10ml/min(ccm)が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。
【0053】
ステップS13の酸化剤を供給するステップおよびステップS12、S14のパージステップは、ZrO2膜成膜の際の酸化剤を供給するステップS3およびパージステップS2、S4と同様にして行われる。これらの期間T13、T12、T14についても上記T3、T2、T4と同程度とされる。
【0054】
3.本実施形態の成膜方法のメカニズムおよび効果
本実施形態において、ZrO2膜成膜のためのZrソースとして用いるシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物の分子は、上記構造式に示したように、構造中に含まれるシクロペンタジエニル環が、立体障害となるため、これら分子のシクロペンタジエニル環側は、ウエハWへの吸着サイトにはなりにくい。このため、図6に模式的に示すように、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物分子は、シクロペンタジエニル環と反対側が吸着サイトとなって、規則正しい吸着配列が可能となり、吸着するZrソース分子は一回のZrソース分子照射で1層以下となる。続いて実施する酸化工程では表面に吸着した1層以下のZrソース分子を酸化すればよく、Zrソース分子の上にZrソース分子が吸着し、複数層のプリカーサを酸化しなければならない場合に比べ、不純物や欠陥の少ない緻密な膜が得られる。
【0055】
Zrソースとして従来用いられていたテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)等を用いた場合には、このような規則的配列は得られず、吸着時に熱分解も生じるため、十分に緻密な膜を得難い。
【0056】
実際に、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物(Cp系Zr化合物)であるCPDTMZと、非Cp系化合物であるTEMAZとを比較した。
【0057】
まず、ZrソースとしてCp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系Zr化合物であるTEMAZとを用いてZrO2膜を成膜した場合の不純物濃度を測定した。その結果を図7に示す。図7は、これら膜の炭素濃度、水素濃度、窒素濃度を示す図である。
【0058】
図7に示すように、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能なことにより、非Cp系Zr化合物であるTEMAZよりも不純物濃度の少ない膜を形成できることが確認された。
【0059】
次に、Cp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系Zr化合物であるTEMAZを用いて、内部ディープトレンチチップにCPDTMZおよびTEMAZをそれぞれ用いてZrO2膜を成膜した場合のステップカバレージを把握した。図8は、内部ディープトレンチチップにCPDTMZおよびTEMAZをそれぞれ用いてZrO2膜のステップカバレージを把握するための走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0060】
図8に示すように、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能なことにより、非Cp系Zr化合物であるTEMAZよりもステップカバレージが良好な膜を形成できることが確認された。
【0061】
次に、Cp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系化合物であるTEMAZを用いて成膜した膜の密度を比較した。その結果を図9に示す。なお、膜の密度はX線反射率測定装置(XRR)を用いて測定した。
【0062】
TEMAZ温度を変化させてZrO2膜を成膜しており、210℃で最も高い密度となっているが、ZrソースとしてCPDTMZを用いて250℃で成膜したZrO2膜は、TEMAZを用いて最も高密度となった210℃で成膜したZrO2膜よりもさらに高密度の膜が得られることがわかる。すなわち、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能なことにより、非Cp系化合物であるTEMAZよりも緻密な膜形成が可能であることが確認された。
【0063】
次に、Cp系Zr化合物であるCPDTMZと非Cp系化合物であるTEMAZとをそれぞれ用いて成膜した膜のリーク特性を比較した。その結果を図10および図11に示す。図10はHgプローブでのリーク特性を示すものであり、図11はEOT(Equivalent Oxide Thickness:SiO2容量換算膜厚)とリーク電流との関係を示すものである。
【0064】
図10に示すように、HgプローブでのZrO2単膜比較において、リーク特性はCPDTMZを用いた膜のほうがTEMAZを用いた膜よりも優れており、また、図11に示すように、CPDTMZを用いた膜はTEMAZを用いた膜よりもEOTが低くても同等なリーク耐性を得ることがわかる。すなわち、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能であることにより、ステップカバレージ性能に優れ不純物濃度の少ない緻密な膜形成が可能である結果、電気的結果においてもTEMAZを用いた場合よりも優れた結果を得られることが確認された。
【0065】
しかし、このようにCp系Zr化合物は、非Cp系Zr化合物に比べて、シクロペンタジエニル環構造による立体障害により規則正しい配列が可能であり、その結果としてカバレージ性能に優れる比較的不純物の少ない緻密な膜を形成することが可能であるものの、成膜原料としてCp系Zr化合物を用いて形成されたZrO2膜においても、熱負荷等による酸素欠損や炭素や水素などの特性を悪化させる僅かな不純物が存在し、十分な密度が得られず、キャパシタの誘電体膜として十分な比誘電率およびリーク電流特性が得られない。
【0066】
これに対して、本実施形態のように、上記ZrO2膜の成膜の後、連続してシクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を用いてTiO2膜を形成することにより、ZrO2膜をさらに緻密化することができる。
【0067】
これは、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を用いて成膜されたTiO2膜は、as depo膜構造の特徴からTiを拡散しやすい特徴を備えており、TiO2をZrO2膜上に連続成膜する段階、さらにはTiO2膜上に上部電極を形成する熱負荷のかかる段階にてTiO2膜からZrO2膜中にTiが拡散し、Zrよりもイオン半径の小さなTiがZrO2膜中の不純物と置換することで、ZrO2膜の密度が上昇し、ZrO2膜の緻密化が起きたことによるものと考えられる。
【0068】
その点について、具体的に説明する。
まず、TiソースとしてCp系Ti化合物であるMCPDTMTと、非Cp系Ti化合物であるテトラ(イソプロポキシ)チタン(Ti(OiPr)4;TIPT)とを比較した。図12は、これらをTiソースとして用いてTiO2膜を成膜した場合の不純物濃度を測定した結果を示す図である。また、図13は、これらをTiソースとして成膜したTiO2膜のステップカバレージを把握するためのSEM写真である。
【0069】
図12および図13に示すように、Cp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いた膜は非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いた膜よりも不純物が少なくかつステップカバレージ性能が優れている。すなわち、Cp系Zr化合物と同じように、Cp系Ti化合物においても、シクロペンタジエニル環構造を有することにより規則正しい吸着配列が可能であり、カバレージ性能に優れ不純物濃度の少ない緻密な膜が形成可能と考えられる。
【0070】
図14は、TiソースとしてCp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜と非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いて形成されたTiO2膜とについて、as depo状態でのX線回折プロファイルを示す図である。図14から、TIPTを用いて形成されたTiO2膜とMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜とでは明らかに結晶性に違いがある。TIPTを用いて形成されたTiO2膜もMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜もTiO2−Anatase(アナターゼ)の結晶性を示しているが、MCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜の方が非晶質部分を多く持つことがわかる。
【0071】
このことは、MCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜は、TIPTを用いて形成されたTiO2膜よりも非晶質部分も多く含むことより相変化を起こしやすいことを示していると考えられる。そして、この相変化の過程ではTiの原子配列が再配列を起こしている。
【0072】
また、図15は、Tiソースとして非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いてALDにより成膜したTiO2膜と、Cp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いてALDにより成膜したTiO2膜の膜厚変化を示すものである。ここでは、Si上に成膜温度250℃で5nmの膜を成膜した後、TiO2膜上に形成される上部電極が成膜される際に加わる熱と同等以上の熱処理を加えた場合の膜厚変化を把握した。図15に示すように、TiソースとしてCp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いて成膜したTiO2膜は、上部電極形成に加わる熱と同等以上の熱負荷を与えると、非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いて成膜したTiO2膜に比べると膜収縮が起こしやすい(熱収縮が大きくなる)ことがわかる。
【0073】
つまり、Cp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いて成膜したTiO2膜は、熱負荷が加わることにより、非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いて成膜したTiO2膜に比べると、非晶質からの相変化を起こしやすく、より大きな熱収縮が発生する。したがって、MCPDTMTを用いて成膜したTiO2膜は、Ti原子の再配列が起きやすく、その際、同時にTi原子をZrO2膜中に拡散させる機能を備えていると考えられる。
【0074】
上述したようにCp系Zr化合物は、シクロペンタジエニル環構造による立体障害により規則正しい配列が可能であり、その結果としてカバレージ性能に優れる比較的不純物の少ない緻密なZrO2膜を形成することが可能であるものの、熱負荷等による酸素欠損や炭素や水素などの特性を悪化させる僅かな不純物が存在し、単独膜では十分な密度が得られず、キャパシタの誘電体膜としては十分な性能ではない。
【0075】
Cp系Ti化合物を用いて形成されたTiO2膜も、Cp系Zr化合物を用いて形成されたZrO2膜と同様にシクロペンタジエニル環構造による立体障害により、規則正しい配列が可能であり、その結果として、カバレージ性能に優れ、比較的不純物の少ない緻密な膜を形成することが可能である。さらに、Cp系Ti化合物を用いて形成されたTiO2膜は、熱負荷により、非晶質からの相変化が起こり、その際に起こる原子再配列にともない、膜の収縮と、TiO2膜からZrO2膜へのTi原子の拡散が起こる。
【0076】
すなわち、ZrソースとしてCp系Zr化合物を用いて形成したZrO2膜上に、Cp系Ti化合物を用いてTi拡散性質を備えたTiO2膜を連続成膜することにより、成膜時およびTiO2膜成膜後の上部電極形成時および以降の熱負荷により、TiO2膜からZrO2膜へTiが拡散し、TiがZrO2膜中の炭素や水素などの不純物と置き換わることでZrO2膜の密度が向上し、結果としてEOTの小さい、かつリーク耐性の高い結果を得ることが可能となる。
【0077】
このとき、TiO2膜は仕事関数のちいさなTiN電極と組み合わせて用いる場合は導体としてふるまい、誘電体としての主体はTiが拡散されたZrO2膜となる。
【0078】
また、TiO2膜は、このようなTiの拡散によるZrO2膜の緻密化機能に加えて、ZrO膜の保護層としての機能を有する。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を用いてZrO2膜を形成し、引き続きその上にシクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を用いてTiO2膜を形成することにより、ZrO2膜を不純物の少ない緻密な膜とすることができるので、ZrO2膜の比誘電率を高めることができ、このようなZrO2膜の緻密化に加えてTiO2が保護層としても機能するため、リーク電流を低下させることができる。このように、高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができることから、本実施形態によって製造されたZrO2−TiO22層膜は、次世代のDRAMキャパシタ用の誘電体膜として適用することができる。
【0080】
<本発明の効果を確認するための実験>
次に、本発明の効果を確認するための実験について説明する。
ここでは、ZrソースとしてCPDTMZを用い、酸化剤としてO3を用いて、図1の成膜装置により、図4のタイミングチャートに示すようなシーケンスのALDによりSi基板上に目標膜厚6nmでZrO2膜を成膜して参照用のサンプルとした。このようなZrO2膜の上に、TiソースとしてMCPDTMTを用い、酸化剤としてO3を用いて、図1の成膜装置により、図5のタイミングチャートに示すようなシーケンスのALDにより、それぞれ目標膜厚1nm、3nm、5nmでTiO2膜を成膜したサンプルを作成した。
【0081】
これらサンプルについて、X線反射率測定装置(XRR)を用いて、ZrO2膜、TiO2膜の密度と膜厚を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、ZrO2膜上にTiO2膜を形成した2層膜は、TiO2膜がいずれの膜厚においてもZrO2膜単膜よりもZrO2膜の密度が高くなることがわかる。
【0082】
【表1】
【0083】
次に、下部電極としてTiN膜を用い、その上に、上記実験と同様に、CPDTMZを用いて成膜してZrO2膜単膜の参照用のサンプルを作製し、このZrO2膜の上にそれぞれ目標膜厚1nm、3nm、5nmでMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルを作製した。
【0084】
これらサンプルについてキャパシタンスを測定した。その結果を表2に示す。表2は、ZrO2膜単膜のキャパシタンスを1として規格化したキャパシタンスを示している。表2に示すように、ZrO2膜の上にMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルは、ZrO2膜単膜のサンプルよりもキャパシタンスが上昇することが確認された。
【0085】
【表2】
【0086】
次に、これらTiN膜上に成膜したサンプルについて2次イオン質量分析法にて深さ方向のTiO2、H、Cの分布を調査した。その結果を図16に示す。図16に示すように、ZrO2膜上にMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルは、ZrO2膜単膜に比べ、ZrO2膜中のTiO2量が高く、H量およびC量が低いことがわかる。このことから、ZrO2膜上にMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜することにより、TiがZrO2膜のHやCが抜けたサイトに拡散し、これによりZrO2膜の密度が上昇し、かつキャパシタンスが高くなったことが裏付けられた。
【0087】
次に、TiソースとしてMCPDTMTの代わりにシクロペンタジエニル環を有しない化合物であるTIPTを用いて、同様にしてZrO2膜上にTiO2膜をそれぞれ1nm、3nm、5nmの厚さで成膜したサンプルを作製し、これらサンプルについてキャパシタンスを測定した。比較のため、ZrO2膜単膜のサンプルについてもキャパシタンスを測定した。その結果を表3に示す。表3においても、表2と同様、ZrO2膜単膜の比誘電率を1として規格化した比誘電率を示している。表3に示すように、Tiソースとしてシクロペンタジエニル環を有しない化合物であるTIPTを用いてZrO2膜上にTiO2膜を成膜した2層膜の場合には、ZrO2膜単膜とほぼ同等の比誘電率しか得られないことが確認された。これは、Tiソースとしてシクロペンタジエニル環を有しない化合物を用いてTiO2膜を成膜した場合には、TiO2膜からZrO2膜へ十分にTiが拡散しないためであると考えられる。
【0088】
【表3】
【0089】
次に、下部電極であるTiN膜の上に、ZrソースとしてCPDTMZを用いて上述のようにしてZrO2膜を6nmの厚さで成膜し、その上に上部電極であるTiN膜を成膜したMIMフラットキャパシタサンプルと、同じく下部電極であるTiN膜の上に、上述のようにしてZrO2膜を6nmの厚さで成膜し、その上に、TiソースとしてMCPDTMTを用いてTiO2膜を5nmの厚さで成膜してZrO2−TiO22層膜とし、その上に上部電極であるTiN膜を成膜したMIMフラットキャパシタサンプルについて、Vg=1VとVg=−1Vのときのリーク電流を測定した。図17は、Vg=1VとVg=−1Vの場合について、横軸にこれらサンプルのEOTをとり、縦軸にリーク電流値をとったグラフである。図17に示すように、ZrO2−TiO22層膜サンプルは、ZrO2膜単膜に比べてリーク電流が著しく低下しており、次世代向け誘電体膜(容量絶縁膜)として適用可能なEOTとリーク電流値を満たしていることが確認された。
【0090】
次に、同じ方法および層構成でZrO2膜の膜厚を変化させて作製したサンプルについてEOTとリーク電流を測定した。その結果を図18に示す。図18は横軸にZrO2膜の膜厚をとり、縦軸にEOTとリーク電流値をとってこれらの関係を示す図である。この図に示すように、ZrO2−TiO22層膜サンプルでZrO2膜の膜厚が6nmの場合にリーク電流値が最も低いことが確認された。
【0091】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では本発明を複数のウエハを搭載して一括して成膜を行うバッチ式の成膜装置に適用した例を示したが、これに限らず、一枚のウエハ毎に成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用することもできる。
【0092】
また、上記実施形態では、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物としてCPDTMZ、MCPDTMZを用い、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物としてMCPDTMTを用いた例を示したが、これらに限るものではない。
【0093】
さらに、上記実施形態では成膜手法としてALDを採用した場合について示したが、それに限らずCVDであってもよい。
【0094】
さらにまた、被処理基板としては、半導体ウエハに限定されず、LCDガラス基板等の他の基板にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1;処理容器
5;ウエハボート(供給手段)
14;酸化剤供給機構
15;Zrソースガス供給機構
16;Tiソースガス供給機構
19;酸化剤分散ノズル
24;Zrソースガス分散ノズル
29;Tiソースガス分散ノズル
40;加熱装置
50;コントローラ
52;記憶部(記憶媒体)
100;成膜装置
W;半導体ウエハ(被処理基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理基板上に酸化ジルコニウム(ZrO2)膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法および成膜装置、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、LSIの高集積化、高速化の要請からLSIを構成する半導体素子のデザインルールが益々微細化されている。それにともなって、DRAMに用いるキャパシタの容量の上昇が求められており、それに用いられる誘電体膜の高誘電率化が求められている。
【0003】
このようなDRAMのキャパシタに用いられる高誘電率の誘電体膜としては、酸化ジルコニウム(ZrO2)膜が検討されている(例えば特許文献1)。
【0004】
酸化ジルコニウム膜を成膜する手法として、原料ガス(プリカーサ)として例えばテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)を用い、酸化剤として例えばO3ガスを用いて、これらを交互的に供給するALDプロセスが知られている(例えば特許文献2)。
【0005】
しかしながら、酸化ジルコニウム膜を単独でDRAMキャパシタの誘電体膜として適用した場合には、次世代DRAMの誘電体膜として求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることは困難である。
【0006】
これに対して、特許文献3には、誘電体膜としてZrO2膜とTiO2膜等のTiを含む金属酸化膜の2層構造のものを用いたキャパシタにより、高誘電率化および低リーク電流化を達成できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−152339号公報
【特許文献2】特開2006−310754号公報
【特許文献3】国際公開第2010/082605号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、酸化ジルコニウム膜は酸素欠損を起こしやすい膜であるため、上記特許文献3に示すように単純にZrO2膜とTiO2膜等のTiを含む金属酸化膜の2層構造の誘電体膜を用いても、高誘電率化および低リーク電流化を目的のレベルまで到達させることは容易ではない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、DRAMキャパシタの誘電体膜に求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができる、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜の成膜方法および成膜装置を提供することを目的とする。
さらに、そのような成膜方法を実行するプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法であって、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とを有することを特徴とする成膜方法を提供する。
【0011】
上記第1の観点において、前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程は、処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施され、前記酸化チタン膜を成膜する工程は、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施されることが好ましい。この場合に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むジルコニウム化合物からなるジルコニウム原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返され、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返されることが好ましい。
【0012】
さらに、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物としては、シクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、またはメチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウムを好適に用いることができ、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物としては、メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)チタニウムを好適に用いることができる。
【0013】
本発明の第2の観点では、酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜装置であって、真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、被処理基板を複数段に保持した状態で前記処理容器内に保持する保持部材と、前記処理容器の外周に設けられた加熱装置と、ジルコニウム原料を前記処理容器内に供給するジルコニウム原料供給機構と、チタン原料を前記処理容器内に供給するチタン原料供給機構と、前記処理容器内へ酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、前記ジルコニウム原料供給機構、前記チタン原料供給機構および前記酸化剤供給機構を制御する制御機構とを具備し、前記制御機構は、前記処理容器内に、ジルコニウム原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を供給するとともに酸化剤を供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、前記処理容器内に、チタン原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物を供給するとともに酸化剤を供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とが行われるように制御することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0014】
上記第2の観点において、前記制御機構は、前記処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程が行われ、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化チタン膜を成膜する工程が行われるように制御することが好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点では、コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜し、シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜することにより、不純物や欠陥の少ない高密度の膜となり、かつ酸化チタン膜の保護機能により、DRAMキャパシタの誘電体膜に求められる高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができる誘電体膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例を示す横断面図である。
【図3】本発明一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明一実施形態に係る成膜方法の酸化ジルコニウム膜の成膜におけるガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明一実施形態に係る成膜方法の酸化チタン膜の成膜におけるガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を用いてZrO2膜を成膜する際のZr化合物の分子の状態を説明する模式図である。
【図7】ZrソースとしてCp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系Zr化合物であるTEMAZとを用いてZrO2膜を成膜した場合の不純物濃度を示す図である。
【図8】内部ディープトレンチチップにCPDTMZおよびTEMAZをそれぞれ用いてZrO2膜を成膜した際のステップカバレージを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9】ZrソースとしてTEMAZを用いて成膜したZrO2膜とZrソースとしてCPDTMZを用いて成膜したZrO2膜の密度を比較して示す図である。
【図10】CPDTMZとTEMAZとをそれぞれ用いて成膜した膜のHgプローブでのリーク特性を示す図である。
【図11】CPDTMZとTEMAZとをそれぞれ用いて成膜した膜のEOTとリーク電流との関係を示す図である。
【図12】TiソースとしてMCPDTMTとTIPTとをそれぞれ用いて成膜したZrAlO膜のTiO2膜の不純物濃度を示す図である。
【図13】TiソースとしてMCPDTMTとTIPTとをそれぞれ用いて成膜したTiO2膜のステップカバレージを把握するための走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】TiソースとしてMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜とTIPTを用いて形成されたTiO2膜とについて、as depo状態でのX線回折プロファイルを示す図である。
【図15】TiソースとしてTIPTを用いて成膜したTiO2膜と、MCPDTMT用いて成膜したTiO2膜の膜厚変化(膜収縮)を示す図である。
【図16】TiN膜の上にMCPDTMTを用いてZrO2膜を成膜したサンプルと、このZrO2膜の上にそれぞれ目標膜厚1nm、3nm、5nmでMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルについて2次イオン質量分析法にて深さ方向のTiO2、H、Cの分布を調査した結果を示す図である。
【図17】誘電体膜としてZrO2膜単膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルと、誘電体膜として本発明に係るZrO2−TiO22層膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルについて、横軸にEOTをとり縦軸にリーク電流値をとったグラフである。
【図18】誘電体膜としてZrO2膜単膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルと、誘電体膜として本発明に係るZrO2−TiO22層膜を用い、上下電極としてTiN膜を用いたMIMフラットキャパシタサンプルについて、横軸にZrO2膜をとり縦軸にEOTとリーク電流値をとったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例>
図1は本発明の成膜方法に適用される成膜装置の一例を示す縦断面図、図2は図1の成膜装置を示す横断面図である。なお、図2においては、加熱装置を省略している。
【0020】
成膜装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器1を有している。この処理容器1の全体は、例えば石英により形成されており、この処理容器1内の天井には、石英製の天井板2が設けられて封止されている。また、この処理容器1の下端開口部には、例えばステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド3がOリング等のシール部材4を介して連結されている。
【0021】
上記マニホールド3は処理容器1の下端を支持しており、このマニホールド3の下方から被処理体として多数枚、例えば50〜100枚の半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを多段に載置可能な石英製のウエハボート5が処理容器1内に挿入可能となっている。このウエハボート5は3本の支柱6を有し(図2参照)、支柱6に形成された溝により多数枚のウエハWが支持されるようになっている。
【0022】
このウエハボート5は、石英製の保温筒7を介してテーブル8上に載置されており、このテーブル8は、マニホールド3の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部9を貫通する回転軸10上に支持される。
【0023】
そして、この回転軸10の貫通部には、例えば磁性流体シール11が設けられており、回転軸10を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部9の周辺部とマニホールド3の下端部との間には、例えばOリングよりなるシール部材12が介設されており、これにより処理容器1内のシール性を保持している。
【0024】
上記の回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム13の先端に取り付けられており、ウエハボート5および蓋部9等を一体的に昇降して処理容器1内に対して挿脱されるようになっている。なお、上記テーブル8を上記蓋部9側へ固定して設け、ウエハボート5を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0025】
成膜装置100は、処理容器1内へガス状の酸化剤、例えばO3ガスを供給する酸化剤供給機構14と、処理容器1内へZrソースガス(Zr原料ガス)を供給するZrソースガス供給機構15と、処理容器1内へTiソースガス(Ti原料ガス)を供給するTiソースガス供給機構16とを有している。また、処理容器1内へパージガスとして不活性ガス、例えばN2ガスを供給するパージガス供給機構30を有している。
【0026】
酸化剤供給機構14は、酸化剤供給源17と、酸化剤供給源17から酸化剤を導く酸化剤配管18と、この酸化剤配管18に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなる酸化剤分散ノズル19とを有している。この酸化剤分散ノズル19の垂直部分には、複数のガス吐出孔19aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔19aから水平方向に処理容器1に向けて略均一に酸化剤、例えばO3ガスを吐出することができるようになっている。酸化剤としては、O3ガスの他に、H2Oガス、O2ガス、NO2ガス、NOガス、N2Oガス等を用いることができる。プラズマ生成機構を設けて酸化剤をプラズマ化して反応性を高めるようにしてもよい。またO2ガスとH2ガスを用いたラジカル酸化であってもよい。O3ガスを用いる場合には酸化剤供給源17としてはO3ガスを発生するオゾナイザーを備えたものとする。
【0027】
Zrソースガス供給機構15は、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるZrソース、例えばシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(ZrCp(NMe2)3;以下CPDTMZと記す)、メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(Zr(MeCp)(NMe2)3;以下MCPDTMZと記す)が貯留されたZrソース貯留容器20と、このZrソース貯留容器20から液体のZrソースを導くZrソース配管21と、Zrソース配管21に接続され、Zrソースを気化させる気化器22と、気化器22で生成されたZrソースガスを導くZrソースガス配管23と、このZrソースガス配管23に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるZrソースガス分散ノズル24とを有している。気化器22にはキャリアガスとしてのN2ガスを供給するキャリアガス配管22aが接続されている。Zrソースガス分散ノズル24には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔24aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔24aから水平方向に処理容器1内に略均一にZrソースガスを吐出することができるようになっている。
【0028】
Tiソースガス供給機構16は、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物からなるTiソース、例えばメチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノチタニウム(Ti(MeCp)(NMe2)3;以下MCPDTMTと記す)が貯留されたTiソース貯留容器25と、このTiソース貯留容器25から液体のTiソースを導くTiソース配管26と、Tiソース配管26に接続され、Tiソースを気化させる気化器27と、気化器27で生成されたTiソースガスを導くTiソースガス配管28と、このTiソースガス配管28に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるTiソースガス分散ノズル29とを有している。気化器27にはキャリアガスとしてのN2ガスを供給するキャリアガス配管27aが接続されている。Tiソースガス分散ノズル29には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔29aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔29aから水平方向に処理容器1内に略均一にTiソースガスを吐出することができるようになっている。
【0029】
さらに、パージガス供給機構30は、パージガス供給源31と、パージガス供給源31からパージガスを導くパージガス配管32と、このパージガス配管32に接続され、マニホールド3の側壁を貫通して設けられたパージガスノズル33とを有している。パージガスとしては不活性ガス例えばN2ガスを好適に用いることができる。
【0030】
酸化剤配管18には、開閉弁18aおよびマスフローコントローラのような流量制御器18bが設けられており、ガス状の酸化剤を流量制御しつつ供給することができるようになっている。また、パージガス配管32にも開閉弁32aおよびマスフローコントローラのような流量制御器32bが設けられており、パージガスを流量制御しつつ供給することができるようになっている。
【0031】
上記Zrソース貯留容器20には、Zrソース圧送配管20aが挿入されており、Zrソース圧送配管20aからHeガス等の圧送ガスを供給することにより、Zrソース配管21へ液体のZrソースが送給される。上記Zrソース配管21には液体マスフローコントローラのような流量制御器21aが設けられており、上記Zrソースガス配管23にはバルブ23aが設けられている。
【0032】
上記Tiソース貯留容器25には、Tiソース圧送配管25aが挿入されており、Tiソース圧送配管25aからHeガス等の圧送ガスを供給することにより、Tiソース配管26へ液体のTiソースが送給される。上記Tiソース配管26には液体マスフローコントローラのような流量制御器26aが設けられており、上記Tiソースガス配管28にはバルブ28aが設けられている。
【0033】
酸化剤を分散吐出するための酸化剤分散ノズル19は、処理容器1の凹部1a内に設けられており、Zrソースガス分散ノズル24と、Tiソースガス分散ノズル29は、これらで酸化剤分散ノズル19を挟むように設けられている。
【0034】
処理容器1の酸化剤分散ノズル19、Zrソースガス分散ノズル24、およびTiソースガス分散ノズル29と反対側の部分には、処理容器1内を真空排気するための排気口37が設けられている。この排気口37は処理容器1の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理容器1のこの排気口37に対応する部分には、排気口37を覆うように断面コ字状に成形された排気口カバー部材38が溶接により取り付けられている。この排気口カバー部材38は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びており、処理容器1の上方にガス出口39を規定している。そして、このガス出口39から図示しない真空ポンプ等を含む真空排気機構により真空引きされる。そして、この処理容器1の外周を囲むようにしてこの処理容器1およびその内部のウエハWを加熱する筒体状の加熱装置40が設けられている。
【0035】
成膜装置100の各構成部の制御、例えば開閉弁18a、23a、28a、32aの開閉による各ガスの供給・停止、流量制御器18b、21a、26a、32bによるガスや液体ソースの流量の制御、処理容器1に導入するガスの切り替え、加熱装置40の制御等は例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ50により行われる。コントローラ50には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース51が接続されている。
【0036】
また、コントローラ50には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部52が接続されている。レシピは記憶部52の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられたものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0037】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース51からの指示等にて任意のレシピを記憶部52から呼び出してコントローラ50に実行させることで、コントローラ50の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。すなわち、記憶部52の記憶媒体には、以下に説明する成膜方法を実行するプログラム(すなわち処理レシピ)が記憶されており、そのプログラムがコントローラ50に以下に説明する本発明の一実施形態に係る成膜方法を実行するように成膜装置100を制御させる。
【0038】
<本発明の一実施形態に係る成膜方法>
次に、以上のように構成された成膜装置を用いて行なわれる本発明の一実施形態に係る成膜方法について説明する。
【0039】
まず、常温において、例えば50〜100枚のウエハWが搭載された状態のウエハボート5を予め所定の温度に制御された処理容器1内にその下方から上昇させることによりロードし、蓋部9でマニホールド3の下端開口部を閉じることにより処理容器1内を密閉空間とする。そして処理容器1内を真空引きして所定のプロセス圧力に維持するとともに、加熱装置40への供給電力を制御して、ウエハ温度を上昇させてプロセス温度に維持し、ウエハボート5を回転させた状態で成膜処理を開始する。
【0040】
本実施形態の成膜方法は、図3のフローチャートに示すように、酸化ジルコニウム膜成膜工程(工程1)と、酸化チタン膜成膜工程(工程2)とを有する。
【0041】
1.酸化ジルコニウム膜成膜工程(工程1)
工程1の酸化ジルコニウム膜の成膜においては、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるZrソースガスと酸化剤とを用いて成膜を行う。具体的には、図4のタイミングチャートに示すように、処理容器1にZrソースガスを供給してウエハWに吸着させるステップS1と、処理容器内をパージガスでパージするステップS2と、ガス状の酸化剤として例えばO3ガスを処理容器1に供給してZrソースガスを酸化させるステップS3と、処理容器内をパージガスでパージするステップS4とを1回のZrO2成膜操作とし、これを複数回繰り返すALDにより所定膜厚のZrO2膜を成膜する。DRAMキャパシタの誘電体膜として適用する場合には、膜厚は0.1〜10nm程度とする。より好適な膜厚は1〜8nmである。
【0042】
次いで、必要に応じてアニールすることにより、結晶化したジルコニア系膜を形成する。この場合のアニール温度は600℃以下であることが好ましい。600℃を超えるとデバイスに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0043】
上記ステップS1においては、Zrソースガス供給機構15のZrソース貯留容器20からZrソースとしてシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を供給し、気化器22でこれを気化させてZrソースガスを発生させ、ZrソースガスをZrソースガス配管23およびZrソースガス分散ノズル24を介してガス吐出孔24aから処理容器1内にT1の期間供給する。これにより、ウエハW上にZrソースガスを吸着させる。
【0044】
Zrソースとして用いるシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物としては、上述のようにCPDTMZおよびMCPDTMZが例示され、これらの構造式は以下に示すようなものである。
【化1】
【0045】
ステップS1の期間T1は0.1〜1800secが例示される。また、Zrソースの流量は0.01〜10ml/min(ccm)が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。
【0046】
ステップS3の酸化剤を供給するステップにおいては、酸化剤供給機構14の酸化剤供給源17から酸化剤として例えばO3ガスが酸化剤配管18および酸化剤分散ノズル19を経て吐出される。これにより、ウエハWに吸着されたZrソースが酸化されてZrO2が形成される。
【0047】
このステップS3の期間T3は0.1〜1800secの範囲が好ましい。酸化剤の流量はウエハWの搭載枚数や酸化剤の種類によっても異なるが、酸化剤としてO3ガスを用い、ウエハWの搭載枚数が50〜100枚程度のときには、1〜500g/Nm3が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。
【0048】
上記ステップS2、S4は、ステップS1の後またはステップS3の後に処理容器1内に残留するガスを除去して次の工程において所望の反応を生じさせるために行われるものであり、パージガス供給機構30のパージガス供給源31からパージガス配管32およびパージガスノズル33を経て処理容器1内にパージガス、例えばN2を供給して処理容器1内をパージする。この場合に、真空引きとパージガスの供給とを複数回繰り返すことにより、残留するガスの除去効率を上げることができる。このステップS2,S4の期間T2、T4としては、0.1〜1800secが例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。このとき、Zrソースガスを供給するステップS1の後のステップS2と、酸化剤を供給するステップS3の後のステップS4とは、両者のガスの排出性の相違から、真空引き時間、パージガス供給時間を変えてもよい。具体的には、ステップS1後のほうがガスの排出に時間がかかることから、ステップS1後に行うステップS2のほうの時間を長くすることが好ましい場合もある。
【0049】
2.酸化チタン膜成膜工程(工程2)
工程2の酸化チタン膜の成膜においては、工程1に引き続き、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物からなるTiソースガスと酸化剤とを用いて成膜を行う。具体的には、図5のタイミングチャートに示すように、処理容器1にTiソースガスを供給してZrO2膜上に吸着させるステップS11と、処理容器内をパージガスでパージするステップS12と、ガス状の酸化剤として例えばO3ガスを処理容器1に供給してTiソースガスを酸化させるステップS13と、処理容器内をパージガスでパージするステップS14とを1回のTiO2成膜操作とし、これを複数回繰り返すALDにより、所定膜厚のTiO2膜を成膜する。
【0050】
上記ステップS11においては、Tiソースガス供給機構16のTiソース貯留容器25からTiソースとしてシクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を供給し、気化器27でこれを気化させてTiソースガスを発生させ、TiソースガスをTiソースガス配管28およびTiソースガス分散ノズル29を介してガス吐出孔29aから処理容器1内にT1の期間供給する。これにより、ZrO2膜上にTiソースガスを吸着させる。
【0051】
シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物としては、上述のようにMCPDTMTが例示され、その構造式は以下に示すようなものである。
【化2】
【0052】
ステップS11の期間T11は0.1〜1800secが例示される。また、Tiソースの流量は0.01〜10ml/min(ccm)が例示される。また、この際の処理容器1内の圧力は0.3〜66650Paが例示される。
【0053】
ステップS13の酸化剤を供給するステップおよびステップS12、S14のパージステップは、ZrO2膜成膜の際の酸化剤を供給するステップS3およびパージステップS2、S4と同様にして行われる。これらの期間T13、T12、T14についても上記T3、T2、T4と同程度とされる。
【0054】
3.本実施形態の成膜方法のメカニズムおよび効果
本実施形態において、ZrO2膜成膜のためのZrソースとして用いるシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物の分子は、上記構造式に示したように、構造中に含まれるシクロペンタジエニル環が、立体障害となるため、これら分子のシクロペンタジエニル環側は、ウエハWへの吸着サイトにはなりにくい。このため、図6に模式的に示すように、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物分子は、シクロペンタジエニル環と反対側が吸着サイトとなって、規則正しい吸着配列が可能となり、吸着するZrソース分子は一回のZrソース分子照射で1層以下となる。続いて実施する酸化工程では表面に吸着した1層以下のZrソース分子を酸化すればよく、Zrソース分子の上にZrソース分子が吸着し、複数層のプリカーサを酸化しなければならない場合に比べ、不純物や欠陥の少ない緻密な膜が得られる。
【0055】
Zrソースとして従来用いられていたテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)等を用いた場合には、このような規則的配列は得られず、吸着時に熱分解も生じるため、十分に緻密な膜を得難い。
【0056】
実際に、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物(Cp系Zr化合物)であるCPDTMZと、非Cp系化合物であるTEMAZとを比較した。
【0057】
まず、ZrソースとしてCp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系Zr化合物であるTEMAZとを用いてZrO2膜を成膜した場合の不純物濃度を測定した。その結果を図7に示す。図7は、これら膜の炭素濃度、水素濃度、窒素濃度を示す図である。
【0058】
図7に示すように、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能なことにより、非Cp系Zr化合物であるTEMAZよりも不純物濃度の少ない膜を形成できることが確認された。
【0059】
次に、Cp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系Zr化合物であるTEMAZを用いて、内部ディープトレンチチップにCPDTMZおよびTEMAZをそれぞれ用いてZrO2膜を成膜した場合のステップカバレージを把握した。図8は、内部ディープトレンチチップにCPDTMZおよびTEMAZをそれぞれ用いてZrO2膜のステップカバレージを把握するための走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0060】
図8に示すように、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能なことにより、非Cp系Zr化合物であるTEMAZよりもステップカバレージが良好な膜を形成できることが確認された。
【0061】
次に、Cp系Zr化合物であるCPDTMZと、非Cp系化合物であるTEMAZを用いて成膜した膜の密度を比較した。その結果を図9に示す。なお、膜の密度はX線反射率測定装置(XRR)を用いて測定した。
【0062】
TEMAZ温度を変化させてZrO2膜を成膜しており、210℃で最も高い密度となっているが、ZrソースとしてCPDTMZを用いて250℃で成膜したZrO2膜は、TEMAZを用いて最も高密度となった210℃で成膜したZrO2膜よりもさらに高密度の膜が得られることがわかる。すなわち、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能なことにより、非Cp系化合物であるTEMAZよりも緻密な膜形成が可能であることが確認された。
【0063】
次に、Cp系Zr化合物であるCPDTMZと非Cp系化合物であるTEMAZとをそれぞれ用いて成膜した膜のリーク特性を比較した。その結果を図10および図11に示す。図10はHgプローブでのリーク特性を示すものであり、図11はEOT(Equivalent Oxide Thickness:SiO2容量換算膜厚)とリーク電流との関係を示すものである。
【0064】
図10に示すように、HgプローブでのZrO2単膜比較において、リーク特性はCPDTMZを用いた膜のほうがTEMAZを用いた膜よりも優れており、また、図11に示すように、CPDTMZを用いた膜はTEMAZを用いた膜よりもEOTが低くても同等なリーク耐性を得ることがわかる。すなわち、Cp系Zr化合物であるCPDTMZでは規則正しい吸着配列が可能であることにより、ステップカバレージ性能に優れ不純物濃度の少ない緻密な膜形成が可能である結果、電気的結果においてもTEMAZを用いた場合よりも優れた結果を得られることが確認された。
【0065】
しかし、このようにCp系Zr化合物は、非Cp系Zr化合物に比べて、シクロペンタジエニル環構造による立体障害により規則正しい配列が可能であり、その結果としてカバレージ性能に優れる比較的不純物の少ない緻密な膜を形成することが可能であるものの、成膜原料としてCp系Zr化合物を用いて形成されたZrO2膜においても、熱負荷等による酸素欠損や炭素や水素などの特性を悪化させる僅かな不純物が存在し、十分な密度が得られず、キャパシタの誘電体膜として十分な比誘電率およびリーク電流特性が得られない。
【0066】
これに対して、本実施形態のように、上記ZrO2膜の成膜の後、連続してシクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を用いてTiO2膜を形成することにより、ZrO2膜をさらに緻密化することができる。
【0067】
これは、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を用いて成膜されたTiO2膜は、as depo膜構造の特徴からTiを拡散しやすい特徴を備えており、TiO2をZrO2膜上に連続成膜する段階、さらにはTiO2膜上に上部電極を形成する熱負荷のかかる段階にてTiO2膜からZrO2膜中にTiが拡散し、Zrよりもイオン半径の小さなTiがZrO2膜中の不純物と置換することで、ZrO2膜の密度が上昇し、ZrO2膜の緻密化が起きたことによるものと考えられる。
【0068】
その点について、具体的に説明する。
まず、TiソースとしてCp系Ti化合物であるMCPDTMTと、非Cp系Ti化合物であるテトラ(イソプロポキシ)チタン(Ti(OiPr)4;TIPT)とを比較した。図12は、これらをTiソースとして用いてTiO2膜を成膜した場合の不純物濃度を測定した結果を示す図である。また、図13は、これらをTiソースとして成膜したTiO2膜のステップカバレージを把握するためのSEM写真である。
【0069】
図12および図13に示すように、Cp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いた膜は非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いた膜よりも不純物が少なくかつステップカバレージ性能が優れている。すなわち、Cp系Zr化合物と同じように、Cp系Ti化合物においても、シクロペンタジエニル環構造を有することにより規則正しい吸着配列が可能であり、カバレージ性能に優れ不純物濃度の少ない緻密な膜が形成可能と考えられる。
【0070】
図14は、TiソースとしてCp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜と非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いて形成されたTiO2膜とについて、as depo状態でのX線回折プロファイルを示す図である。図14から、TIPTを用いて形成されたTiO2膜とMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜とでは明らかに結晶性に違いがある。TIPTを用いて形成されたTiO2膜もMCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜もTiO2−Anatase(アナターゼ)の結晶性を示しているが、MCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜の方が非晶質部分を多く持つことがわかる。
【0071】
このことは、MCPDTMTを用いて形成されたTiO2膜は、TIPTを用いて形成されたTiO2膜よりも非晶質部分も多く含むことより相変化を起こしやすいことを示していると考えられる。そして、この相変化の過程ではTiの原子配列が再配列を起こしている。
【0072】
また、図15は、Tiソースとして非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いてALDにより成膜したTiO2膜と、Cp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いてALDにより成膜したTiO2膜の膜厚変化を示すものである。ここでは、Si上に成膜温度250℃で5nmの膜を成膜した後、TiO2膜上に形成される上部電極が成膜される際に加わる熱と同等以上の熱処理を加えた場合の膜厚変化を把握した。図15に示すように、TiソースとしてCp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いて成膜したTiO2膜は、上部電極形成に加わる熱と同等以上の熱負荷を与えると、非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いて成膜したTiO2膜に比べると膜収縮が起こしやすい(熱収縮が大きくなる)ことがわかる。
【0073】
つまり、Cp系Ti化合物であるMCPDTMTを用いて成膜したTiO2膜は、熱負荷が加わることにより、非Cp系Ti化合物であるTIPTを用いて成膜したTiO2膜に比べると、非晶質からの相変化を起こしやすく、より大きな熱収縮が発生する。したがって、MCPDTMTを用いて成膜したTiO2膜は、Ti原子の再配列が起きやすく、その際、同時にTi原子をZrO2膜中に拡散させる機能を備えていると考えられる。
【0074】
上述したようにCp系Zr化合物は、シクロペンタジエニル環構造による立体障害により規則正しい配列が可能であり、その結果としてカバレージ性能に優れる比較的不純物の少ない緻密なZrO2膜を形成することが可能であるものの、熱負荷等による酸素欠損や炭素や水素などの特性を悪化させる僅かな不純物が存在し、単独膜では十分な密度が得られず、キャパシタの誘電体膜としては十分な性能ではない。
【0075】
Cp系Ti化合物を用いて形成されたTiO2膜も、Cp系Zr化合物を用いて形成されたZrO2膜と同様にシクロペンタジエニル環構造による立体障害により、規則正しい配列が可能であり、その結果として、カバレージ性能に優れ、比較的不純物の少ない緻密な膜を形成することが可能である。さらに、Cp系Ti化合物を用いて形成されたTiO2膜は、熱負荷により、非晶質からの相変化が起こり、その際に起こる原子再配列にともない、膜の収縮と、TiO2膜からZrO2膜へのTi原子の拡散が起こる。
【0076】
すなわち、ZrソースとしてCp系Zr化合物を用いて形成したZrO2膜上に、Cp系Ti化合物を用いてTi拡散性質を備えたTiO2膜を連続成膜することにより、成膜時およびTiO2膜成膜後の上部電極形成時および以降の熱負荷により、TiO2膜からZrO2膜へTiが拡散し、TiがZrO2膜中の炭素や水素などの不純物と置き換わることでZrO2膜の密度が向上し、結果としてEOTの小さい、かつリーク耐性の高い結果を得ることが可能となる。
【0077】
このとき、TiO2膜は仕事関数のちいさなTiN電極と組み合わせて用いる場合は導体としてふるまい、誘電体としての主体はTiが拡散されたZrO2膜となる。
【0078】
また、TiO2膜は、このようなTiの拡散によるZrO2膜の緻密化機能に加えて、ZrO膜の保護層としての機能を有する。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を用いてZrO2膜を形成し、引き続きその上にシクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物を用いてTiO2膜を形成することにより、ZrO2膜を不純物の少ない緻密な膜とすることができるので、ZrO2膜の比誘電率を高めることができ、このようなZrO2膜の緻密化に加えてTiO2が保護層としても機能するため、リーク電流を低下させることができる。このように、高誘電率化および低リーク電流化を両立させることができることから、本実施形態によって製造されたZrO2−TiO22層膜は、次世代のDRAMキャパシタ用の誘電体膜として適用することができる。
【0080】
<本発明の効果を確認するための実験>
次に、本発明の効果を確認するための実験について説明する。
ここでは、ZrソースとしてCPDTMZを用い、酸化剤としてO3を用いて、図1の成膜装置により、図4のタイミングチャートに示すようなシーケンスのALDによりSi基板上に目標膜厚6nmでZrO2膜を成膜して参照用のサンプルとした。このようなZrO2膜の上に、TiソースとしてMCPDTMTを用い、酸化剤としてO3を用いて、図1の成膜装置により、図5のタイミングチャートに示すようなシーケンスのALDにより、それぞれ目標膜厚1nm、3nm、5nmでTiO2膜を成膜したサンプルを作成した。
【0081】
これらサンプルについて、X線反射率測定装置(XRR)を用いて、ZrO2膜、TiO2膜の密度と膜厚を測定した。その結果を表1に示す。表1に示すように、ZrO2膜上にTiO2膜を形成した2層膜は、TiO2膜がいずれの膜厚においてもZrO2膜単膜よりもZrO2膜の密度が高くなることがわかる。
【0082】
【表1】
【0083】
次に、下部電極としてTiN膜を用い、その上に、上記実験と同様に、CPDTMZを用いて成膜してZrO2膜単膜の参照用のサンプルを作製し、このZrO2膜の上にそれぞれ目標膜厚1nm、3nm、5nmでMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルを作製した。
【0084】
これらサンプルについてキャパシタンスを測定した。その結果を表2に示す。表2は、ZrO2膜単膜のキャパシタンスを1として規格化したキャパシタンスを示している。表2に示すように、ZrO2膜の上にMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルは、ZrO2膜単膜のサンプルよりもキャパシタンスが上昇することが確認された。
【0085】
【表2】
【0086】
次に、これらTiN膜上に成膜したサンプルについて2次イオン質量分析法にて深さ方向のTiO2、H、Cの分布を調査した。その結果を図16に示す。図16に示すように、ZrO2膜上にMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜したサンプルは、ZrO2膜単膜に比べ、ZrO2膜中のTiO2量が高く、H量およびC量が低いことがわかる。このことから、ZrO2膜上にMCPDTMTを用いてTiO2膜を成膜することにより、TiがZrO2膜のHやCが抜けたサイトに拡散し、これによりZrO2膜の密度が上昇し、かつキャパシタンスが高くなったことが裏付けられた。
【0087】
次に、TiソースとしてMCPDTMTの代わりにシクロペンタジエニル環を有しない化合物であるTIPTを用いて、同様にしてZrO2膜上にTiO2膜をそれぞれ1nm、3nm、5nmの厚さで成膜したサンプルを作製し、これらサンプルについてキャパシタンスを測定した。比較のため、ZrO2膜単膜のサンプルについてもキャパシタンスを測定した。その結果を表3に示す。表3においても、表2と同様、ZrO2膜単膜の比誘電率を1として規格化した比誘電率を示している。表3に示すように、Tiソースとしてシクロペンタジエニル環を有しない化合物であるTIPTを用いてZrO2膜上にTiO2膜を成膜した2層膜の場合には、ZrO2膜単膜とほぼ同等の比誘電率しか得られないことが確認された。これは、Tiソースとしてシクロペンタジエニル環を有しない化合物を用いてTiO2膜を成膜した場合には、TiO2膜からZrO2膜へ十分にTiが拡散しないためであると考えられる。
【0088】
【表3】
【0089】
次に、下部電極であるTiN膜の上に、ZrソースとしてCPDTMZを用いて上述のようにしてZrO2膜を6nmの厚さで成膜し、その上に上部電極であるTiN膜を成膜したMIMフラットキャパシタサンプルと、同じく下部電極であるTiN膜の上に、上述のようにしてZrO2膜を6nmの厚さで成膜し、その上に、TiソースとしてMCPDTMTを用いてTiO2膜を5nmの厚さで成膜してZrO2−TiO22層膜とし、その上に上部電極であるTiN膜を成膜したMIMフラットキャパシタサンプルについて、Vg=1VとVg=−1Vのときのリーク電流を測定した。図17は、Vg=1VとVg=−1Vの場合について、横軸にこれらサンプルのEOTをとり、縦軸にリーク電流値をとったグラフである。図17に示すように、ZrO2−TiO22層膜サンプルは、ZrO2膜単膜に比べてリーク電流が著しく低下しており、次世代向け誘電体膜(容量絶縁膜)として適用可能なEOTとリーク電流値を満たしていることが確認された。
【0090】
次に、同じ方法および層構成でZrO2膜の膜厚を変化させて作製したサンプルについてEOTとリーク電流を測定した。その結果を図18に示す。図18は横軸にZrO2膜の膜厚をとり、縦軸にEOTとリーク電流値をとってこれらの関係を示す図である。この図に示すように、ZrO2−TiO22層膜サンプルでZrO2膜の膜厚が6nmの場合にリーク電流値が最も低いことが確認された。
【0091】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では本発明を複数のウエハを搭載して一括して成膜を行うバッチ式の成膜装置に適用した例を示したが、これに限らず、一枚のウエハ毎に成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用することもできる。
【0092】
また、上記実施形態では、シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物としてCPDTMZ、MCPDTMZを用い、シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物としてMCPDTMTを用いた例を示したが、これらに限るものではない。
【0093】
さらに、上記実施形態では成膜手法としてALDを採用した場合について示したが、それに限らずCVDであってもよい。
【0094】
さらにまた、被処理基板としては、半導体ウエハに限定されず、LCDガラス基板等の他の基板にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1;処理容器
5;ウエハボート(供給手段)
14;酸化剤供給機構
15;Zrソースガス供給機構
16;Tiソースガス供給機構
19;酸化剤分散ノズル
24;Zrソースガス分散ノズル
29;Tiソースガス分散ノズル
40;加熱装置
50;コントローラ
52;記憶部(記憶媒体)
100;成膜装置
W;半導体ウエハ(被処理基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法であって、
シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、
シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程と
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程は、処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施され、
前記酸化チタン膜を成膜する工程は、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施されることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むジルコニウム化合物からなるジルコニウム原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返され、
前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返されることを特徴とする請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物は、シクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、またはメチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウムであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物は、メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)チタニウムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜装置であって、
真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、
被処理基板を複数段に保持した状態で前記処理容器内に保持する保持部材と、
前記処理容器の外周に設けられた加熱装置と、
ジルコニウム原料を前記処理容器内に供給するジルコニウム原料供給機構と、
チタン原料を前記処理容器内に供給するチタン原料供給機構と、
前記処理容器内へ酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、
前記ジルコニウム原料供給機構、前記チタン原料供給機構および前記酸化剤供給機構を制御する制御機構と
を具備し、
前記制御機構は、前記処理容器内に、ジルコニウム原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を供給するとともに酸化剤を供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、前記処理容器内に、チタン原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物を供給するとともに酸化剤を供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とが行われるように制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
前記制御機構は、前記処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程が行われ、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化チタン膜を成膜する工程が行われるように制御することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜方法であって、
シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と酸化剤とを供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、
シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と酸化剤とを供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程と
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程は、処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施され、
前記酸化チタン膜を成膜する工程は、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより実施されることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むジルコニウム化合物からなるジルコニウム原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返され、
前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料の供給と前記酸化剤の供給とは、前記処理容器内のガスを排出する工程を挟んで繰り返されることを特徴とする請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物は、シクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、またはメチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウムであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
シクロペンタジエニル環を構造中に含むTi化合物は、メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)チタニウムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
酸化ジルコニウム膜を含む誘電体膜を成膜する成膜装置であって、
真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、
被処理基板を複数段に保持した状態で前記処理容器内に保持する保持部材と、
前記処理容器の外周に設けられた加熱装置と、
ジルコニウム原料を前記処理容器内に供給するジルコニウム原料供給機構と、
チタン原料を前記処理容器内に供給するチタン原料供給機構と、
前記処理容器内へ酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、
前記ジルコニウム原料供給機構、前記チタン原料供給機構および前記酸化剤供給機構を制御する制御機構と
を具備し、
前記制御機構は、前記処理容器内に、ジルコニウム原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物を供給するとともに酸化剤を供給して被処理基板上に酸化ジルコニウム膜を成膜する工程と、前記処理容器内に、チタン原料としてシクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物を供給するとともに酸化剤を供給して前記酸化ジルコニウム膜の上に酸化チタン膜を成膜する工程とが行われるように制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
前記制御機構は、前記処理容器内に、前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むZr化合物からなるジルコニウム原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化ジルコニウム膜を成膜する工程が行われ、前記酸化ジルコニウム膜の成膜に引き続き、前記処理容器内に前記シクロペンタジエニル環を構造中に含むチタン化合物からなるチタン原料と前記酸化剤とを交互的に複数回供給することにより前記酸化チタン膜を成膜する工程が行われるように制御することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図13】
【公開番号】特開2012−204681(P2012−204681A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68855(P2011−68855)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】
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