説明

移動体の障害認識方法及び障害認識システム

【課題】精度良く障害を認識することができる移動体の障害認識方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る移動体の障害認識方法は、移動体の障害認識方法であって、移動体の路面データ取得手段で少なくとも高さデータを含む路面データを取得するステップと、取得した路面データを高さ順に並べ替えるステップと、並べ替えた路面データの変化点を抽出するステップと、変化点を境に障害を認識するステップと、を備える。これにより、精度良く障害を認識することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の障害認識方法及び障害認識システムに関し、特に凹凸を有する路面の障害を認識する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体は、例えば車輪やクローラ等で走行(移動)する。そのため、移動体が移動不能に陥らないように、路面の凹凸やスロープ(斜面)等の路面の形状を正確に認識することが重要である。
【0003】
ここで、一般的な移動体は、レーザセンサ等を備えた路面データ取得部を用いて、2次元又は3次元の路面データを取得し、取得した路面データが示す高さと閾値とを比較して、当該高さが閾値以上であると段差がある、即ち障害があると認識している。ここで、特許文献1には、路面データ取得部で取得した点群データをスムージング処理して閾値と比較することで、ノイズの除去を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の技術は、取得した路面データが示す高さと閾値とを比較して段差を認識しているが、路面データには高さのばらつきが存在するため、精度良く段差を認識することができない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、精度良く障害を認識することができる移動体の障害認識方法及び障害認識システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る移動体の障害認識方法は、移動体の障害認識方法であって、前記移動体の路面データ取得手段で少なくとも高さデータを含む路面データを取得するステップと、取得した前記路面データを高さ順に並べ替えるステップと、並べ替えた前記路面データの変化点を抽出するステップと、前記変化点を境に障害を認識するステップと、を備える。
【0008】
上述の移動体の障害認識方法において、並べ替えた前記路面データの変化点を抽出するステップは、前記路面データのデータ群からサンプリングしたデータ群の各々のデータと、前記サンプリングしたデータ群に対する回帰直線と、の距離の和を算出するステップと、前記距離の和を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返し、各々のサンプリングしたデータ群の距離の和に基づいて変化点を抽出するステップと、を備えること、が好ましい。
【0009】
上述の移動体の障害認識方法において、並び替えた前記路面データの変化点を抽出するステップは、前記路面データのデータ群における隣接するデータが示す高さの差を算出するステップと、隣接するデータが示す高さの差を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返し、算出した高さの差に基づいて変化点を抽出するステップと、を備えること、が好ましい。
【0010】
上述の移動体の障害認識方法において、並べ替えた前記路面データの変化点を抽出するステップは、前記路面データのデータ群からサンプリングしたデータ群の各々のデータと、サンプリングしたデータ群に対する回帰直線と、の距離の和を算出するステップと、前記距離の和を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返すステップと、前記路面データのデータ群における隣接するデータが示す高さの差を算出するステップと、隣接するデータが示す高さの差を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返すステップと、前記路面データにおいて、算出した距離の和と、算出した高さの差と、を足し合わせるステップと、足し合わせた数値に基づいて変化点を抽出するステップと、を備えること、が好ましい。
【0011】
上述の移動体の障害認識方法において、並び替えた前記路面データを平坦化すること、が好ましい。
【0012】
上述の移動体の障害認識方法において、隣接する変化点間のデータの個数が閾値より少ないと、前記データを除去すること、が好ましい。
【0013】
上述の移動体の障害認識方法において、前記路面データ取得手段は、2次元データ検出センサを備え、前記路面データを取得するステップにおいて、前記2次元データ検出センサを前記移動体の左右方向に揺動して、前記移動体の前方領域に向かって走査する動作を前記移動体の左右方向に繰り返し、3次元の路面データを取得すること、が好ましい。
【0014】
上述の移動体の障害認識方法において、前記変化点を境に障害を認識するステップは、前記変化点を境に障害が無いと認識した領域内のデータが示す高さが閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記データが示す高さが前記閾値以上であると、隣接する走査データにおける対応するデータ間の高さの差を比較するステップと、前記差が前記閾値以上であると、前記データ間に前記移動体が移動不可能な段差が存在することを認識するステップと、を備えること、が好ましい。
【0015】
本発明の一形態に係る移動体の障害認識システムは、移動体の障害認識システムであって、少なくとも高さデータを含む路面データを取得する路面データ取得手段と、取得した前記路面データを高さ順に並べ替える並べ替え手段と、並べ替えた前記路面データの変化点を抽出する抽出手段と、前記変化点を境に障害を認識する認識手段と、を備える。
【0016】
上述の移動体の障害認識システムにおいて、並び替えた前記路面データを平坦化する平坦化手段を備えること、が好ましい。
【0017】
上述の移動体の障害認識システムにおいて、隣接する変化点間のデータの個数が閾値より少ないと、前記データを除去するノイズ除去手段を備えること、が好ましい。
【0018】
上述の移動体の障害認識システムにおいて、前記路面データ取得手段は、2次元データ検出センサを備えており、前記2次元データ検出センサを前記移動体の左右方向に揺動して、前記移動体の前方領域に向かって走査する動作を前記移動体の左右方向に繰り返し、3次元の路面データを取得し、前記変化点を境に障害が無いと認識した領域内のデータが示す高さが閾値以上であるか否かを判定し、前記データが示す高さが前記閾値以上であると、隣接する走査データにおける対応するデータ間の高さの差を比較し、前記差が前記閾値以上であると、前記データ間に前記移動体が移動不可能な段差が存在することを認識する段差認識手段を備えること、が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によると、精度良く障害を認識することができる移動体の障害認識方法及び障害認識システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法において、路面データを取得する様子を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識システムを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法を用いて、取得した路面データを移動可能領域と移動不可能領域とに振り分けた図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法で用いる移動体を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法のフローチャート図である。
【図6】移動体で2次元の路面データを取得する様子を示す図である。
【図7】2次元の路面データを示す図である。
【図8】移動体で3次元の路面データを取得する様子を示す図である。
【図9】3次元の路面データを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法において、平坦化した路面データを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法において、高さ順に並び替えられた路面データを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法における、低周波検出を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法において、低周波検出後の路面データを示す図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法において、高周波検出後の路面データを示す図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法において、低周波検出後の路面データと高周波検出後の路面データとを足し合わせたデータを示す図である。
【図16】本発明の実施の形態1に係る移動体の障害認識方法における、ノイズ除去を説明するための図である。
【図17】3次元データ検出センサで斜面を有する障害物を含む領域の路面データを取得する際の様子を示す図である。
【図18】3次元データ検出センサで斜面を有する障害物を含む領域の路面データを取得し、高さ順に並び替えた当該路面データを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る移動体の障害認識方法において、路面データを取得する際の様子を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係る移動体の障害認識方法において、路面データを取得する際の様子、及び移動可能領域を示す図である。
【図21】スロープを含む領域の路面データを取得する際の様子を示す図である。
【図22】スロープを含む領域の路面データを取得し、高さ順に並び替えられた当該路面データを示す図である。
【図23】緩やかな曲面を含む領域の路面データを取得する際の様子を示す図である。
【図24】緩やかな曲面を含む領域の路面データを取得し、高さ順に並び替えられた当該路面データを示す図である。
【図25】本発明の実施の形態2に係る移動体の障害認識システムのブロック図である。
【図26】本発明の実施の形態2に係る移動体の障害認識方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0022】
<実施の形態1>
本実施の形態の移動体の障害認識方法及び障害認識システムを説明する。
先ず、移動体の障害認識システム(以下、単に障害認識システムという場合がある。)について説明する。障害認識システムは、例えば移動体に搭載される。ここで、移動体1は、図1に示すように、例えば自立移動型の移動体であり、マップ上の自己位置を推定しつつ、生成した経路に倣って移動するように、車輪に連結された駆動モータを制御する。
このように移動体1は、移動する経路を自身で生成するが、その際に障害を認識、即ち路面における移動可能領域を認識するために、障害認識システムは好適に用いられる。
【0023】
障害認識システム100は、図2に示すように、路面データ取得部11、平坦化部12、並べ替え部13、変化点抽出部14、ノイズ除去部15、ラベリング部(認識部)16を備える。
【0024】
路面データ取得部11は、移動体1の前方領域の路面データを取得する。路面データ取得部11は、詳細は後述するが、2次元データ検出センサや3次元データ検出センサである、一般的な超音波センサやレーザセンサ等の測域センサを備える。つまり、路面データ取得部11は、測域センサを移動体1の前方領域に向かって走査することで、移動体1の前方領域の路面データを2次元又3次元で取得する。この路面データ取得部11は、予め移動体1に搭載されている路面データ取得装置を用いることができる。ちなみに、図1の斜線部分は検出センサの検出領域を概念的に示している。
【0025】
ここで、路面データであるデータ群には、例えばグローバル座標上のX・Y・Z座標データが与えられている。このように取得したデータ群を路面データ取得部11は平坦化部12に出力する。
【0026】
平坦化部12は、入力されるデータ群を平坦化する。つまり、入力されるデータ群は、高さにばらつきが生じている。そのため、平坦化部12は、当該高さのばらつきを抑制するために、入力されるデータ群をフィルタリングする。このように平坦化されたデータ群を平坦化部12は並び替え部13に出力する。
【0027】
並び替え部13は、図3に示すように、入力されるデータ群を高さ順に並び替える。つまり、入力されたデータ群には、それぞれX・Y・Z座標データが与えられているので、このZ座標データを用いて並び替え部13は、入力されるデータ群を高さ順に並び替える。このように並び替えられたデータ群を並び替え部13は変化点抽出部14に出力する。
【0028】
ここで、「高さ」とは、路面データ取得部11が移動体1に対して固定されている場合、移動体1の車輪の接地面から路面データ取得部11までの高さ位置Hを基準(即ち、高さ0)とする。なお、図4に示すように、路面データ取得部11が可動部2によって移動体1に対して上下方向に移動可能に設けられている場合は、例えば当該可動部2に搭載される駆動モータ等のエンコーダ(図示を省略)の出力データに基づいて、高さを算出すると良い。
【0029】
変化点抽出部14は、入力されるデータ群の変化点を抽出する。但し、データ群の変化点の抽出手法については、後述する。ここで、「変化点」とは、路面の平面と段差部分(障害物が存在する場合も含む。)との境界を云う。
【0030】
ノイズ除去部15は、詳細は後述するが、変化点間のデータの個数が第1の閾値より少ないと、当該データを除去する。
ラベリング部16は、図3に示すように、変化点を境に障害無し領域(移動可能領域)か障害有り領域(移動不可能領域)かを振り分ける。
【0031】
次に、移動体の障害認識方法(以下、単に障害認識方法という場合がある。)を説明する。障害認識方法は、図5に示す流れで実施される。
先ず、路面データ取得部11で路面データを取得する(S1)。ここで、2次元データ検出センサを備える路面データ取得部11を用いて、図6に示すように障害物上においてY方向に走査すると、図7に示すような2次元のデータ群を取得することができる。また、3次元データ検出センサを備える路面データ取得部11を用いて、図8に示すように障害物周辺の路面データを取得すると、図9に示すような3次元のデータ群を取得することができる。このように取得したデータ群を路面データ取得部11は平坦化部12に出力する。ちなみに、以下の説明では、2次元データ検出センサを備える路面データ取得部11を用いて、2次元のデータ群を取得するものとする。
【0032】
次に、平坦化部12は、入力されるデータ群を平坦化する(S2)。その結果、図10に示すように、データ群は平坦化される。これにより、ノイズが除去され、より精度良く障害を認識することができる。このように平坦化されたデータ群を平坦化部12は並び替え部13に出力する。
【0033】
次に、並び替え部13は、入力されるデータ群を高さ順に並び替える(S3)。その結果、図11に示すように、データ群が並び替えられる。このように並び替えられたデータ群を並び替え部13は変化点抽出部14に出力する。
【0034】
次に、変化点抽出部14は、入力されるデータ群の変化点を抽出する(S4)。つまり、変化点抽出部14は、先ず低周波検知を行って大まかな変化点を抽出する。詳細には、変化点抽出部14は、図12に示すように、データ群からサンプリングしてデータ群を抽出する。本実施の形態では、7個のデータ(a1〜a7)をサンプリングしたデータ群として抽出している。
【0035】
次に、変化点抽出部14は、サンプリングしたデータ群に対する回帰直線Lを引き、当該回帰直線Lと、データa1〜a7それぞれと、の距離(残差:t1〜t7)の和を求める。すなわち、t1+t2+t3+t4+t5+t6+t7を求める。
【0036】
次に、変化点抽出部14は、サンプリングの中心データを順次隣接する次のデータ(a(n)→a(n+1))にずらして行き、最終的に入力されたデータ群の全部(但し、一部でも良い。)に対してサンプル毎のデータ群における距離の和を算出する。その結果、図13に示すように、サンプル毎のデータ群における距離の和が示される。このように示された距離の和において、本実施の形態では最大値を示したデータ群の中心データを、変化点抽出部14は低周波検知での変化点として抽出する。
【0037】
さらに変化点抽出部14は、高周波検知を行って正確な変化点を抽出する。つまり、変化点抽出部14は、隣接するデータ同士の高さの差を算出し、最終的に入力されたデータ群の全部(但し、低周波検知と対応する一部でも良い。)に対して当該差を算出する。その結果、図14に示すように、隣接するデータ同士の高さの差が示される。このように示された高さの差において、本実施の形態では最大値を示した隣接するデータのうち、例えば引く側のデータ(即ち、a(n)−a(n+1)の場合、a(n+1)のデータ)を、変化点抽出部14は高周波検知での変化点として抽出する。但し、高周波検知における変化点とみなすデータは適宜設定される。
【0038】
次に、変化点抽出部14は、図15に示すように、低周波検知で算出したサンプル毎のデータ群における距離の和と、高周波検知で算出された隣接するデータ同士の高さの差と、を足し合わせる。そして、変化点抽出部14は、足し合わせた結果、最大値を示すデータを変化点として抽出する。このように最大値を示すデータを変化点として抽出したデータ群をノイズ除去部15に出力する。
【0039】
ノイズ除去部15は、図16に示すように、変化点間のデータの個数が第1の閾値より少ないと、当該データを除去する(S5)。これは、変化点を境に路面の形状を認識する場合、変化点間のデータ数が少ないということは、当該変化点間に極めて小さい平面が存在することになり、実質的にノイズとみなすことができるからである。これにより、ノイズが除去され、より精度良く障害を認識することができる。
【0040】
ラベリング部16は、図15に示すように、変化点を境に床部分のデータ(即ち、移動可能領域)か、段差部分のデータ(即ち、移動不可能領域)か、を振り分ける(S6)。
その後、当該振り分けられた路面データに基づいて、マップの作成、経路計画が例えば移動体1の経路計画部で実行される。
【0041】
このように移動体の障害認識方法及び認識システムは、抽出した変化点を参照することで、変化点を境に移動可能領域なのか、移動不可能領域なのかを、を容易に認識することができる。このとき、本実施の形態では、路面データであるデータ群を高さ順に並べ替えているので、精度良く変化点を抽出することができる。しかも本実施の形態では、低周波検出と高周波検出とを組み合わせて変化点を抽出しているので、さらに精度良く変化点を抽出することができ、ひいては精度良く移動可能領域と移動不可能領域とを認識することができる。
【0042】
<実施の形態2>
本実施の形態の移動体の障害認識方法及び障害認識システムを説明する。但し、実施の形態1と重複する説明は省略し、同一の要素については同一の符号を付する。なお、図20で示す斜線部分は移動体の移動可能領域を示し、図21及び図23で示す斜線部分は検出センサの検出領域を概念的に示している。
【0043】
実施の形態1の移動体の障害認識方法及び障害認識システムは、例えば一回の走査で路面データを取得しているため、例えば3次元データ検出センサで、図17に示すような斜面を有する障害物を含む領域の3次元の路面データを取得した場合、取得したデータ群を高さ順に並べ替えると、図18に示すように緩やかな曲線となり、変化点を抽出することができない。
【0044】
そこで、本実施の形態の路面データ取得部11は、2次元データ検出センサを備えており、当該2次元データ検出センサを、図19及び図20に示すように、移動体1の左右方向に揺動して、移動体1の前方領域に向かって走査する動作を当該移動体1の左右方向に繰り返し、3次元の路面データを取得する。つまり、路面データ取得部11は、取得した2次元の路面データを移動体1の左右方向に並べて、3次元の路面データとする。ここで、図20の1本の破線が2次元データ検出センサの1走査を示している。但し、図示例では走査の一部が示されている。
【0045】
このとき、2次元データ検出センサの1走査において取得する路面データに基づくと、図1のような形状の凹凸段差を有する路面の場合、実施の形態1と同様に並び替え後のデータ群は、図3に示すようなデータ群となる。また、図21に示すようなスロープを有する路面の場合、並び替え後のデータ群は、図22に示すようなデータ群となる。さらに、図23に示すような緩やかな曲面を有する路面の場合、並び替え後のデータ群は、図24に示すようなデータ群となる。
【0046】
これにより、どの方向の走査において取得した2次元の路面データに段差部分が存在するかを、容易に判定することができる。このとき、スロープのエッジ部でも、2次元データ検出センサの1走査においては段差部分でないと判断して移動可能領域であると振り分けてしまう可能性がある。
【0047】
そこで、本実施の形態の障害認識システム110は、図25に示すように、上述の構成に加えて段差認識部17をさらに備え、障害認識方法において以下のように動作させる。
ここで、図26に示すように、ラベリング工程(S6)までは実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。ラベリング工程が終了すると、ラベリング部16は、ラベリングした全て(走査数分)のデータ群を段差認識部17に出力する。
【0048】
次に、段差認識部17は、入力された全てのデータ群において移動可能領域と認識された領域内のデータのうち、高さが第2の閾値以上となっているデータが存在するか否かを判定する(S7)。ここで、第2の閾値としては、例えば移動体1が移動不能となる高さに設定される。
【0049】
次に、段差認識部17は、高さが第2の閾値以上となっているデータが存在すると、当該データを含むデータ群とそれに隣接するデータ群とを比較する(即ち、隣接して走査されたデータ群同士を比較する)(S8)。段差認識部17は、高さの差が第2の閾値以上であると、比較したデータ間に段差が存在することを認識する。ここで、段差認識部17は、隣接するデータ群同士における対応するデータ間(即ち、Y座標データが隣接し、X座標データが等しいデータ間)を比較し、当該高さの差が正の値の場合、引かれる側のデータ(即ち、D(n)−D(n+1)すると、D(n)のデータ)を例えばスロープのエッジ部と認識する。一方、段差認識部17は、隣接するデータ群同士における対応するデータ間を比較し、当該高さの差が負の値の場合、引く側のデータ(即ち、D(n)−D(n+1)すると、D(n+1)のデータ)を例えばスロープのエッジ部と認識する。但し、エッジ部と認識するデータは適宜設定される。
【0050】
次に、段差認識部17は、当該段差部分を移動不可能領域と認識し、路面データ取得部11の路面データの取得を終了する(S9)。
一方、段差認識部17は、高さが第2の閾値以上となっているデータが存在しないと判定すると、路面データ取得部11の路面データの取得を終了する。
【0051】
その後、当該振り分けられた路面データに基づいて、マップの作成、経路計画が例えば移動体1の経路計画部で実行される。
【0052】
このように段差認識部17を備えることで、スロープのエッジ部を正確に認識することができ、やはり移動可能領域と移動不可能領域とを精度良く認識することができる。
【0053】
以上、本発明に係る移動体の障害認識方法及び障害認識システムの実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
上記実施の形態の変化点抽出部14は、低周波検出と高周波検出とを実施しているが、いずれか一方でも良い。
【符号の説明】
【0054】
1 移動体
2 可動部
11 路面データ取得部
12 平坦化部
13 並び替え部
14 変化点抽出部
15 ノイズ除去部
16 ラベリング部
17 段差認識部
100、110 障害認識システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の障害認識方法であって、
前記移動体の路面データ取得手段で少なくとも高さデータを含む路面データを取得するステップと、
取得した前記路面データを高さ順に並べ替えるステップと、
並べ替えた前記路面データの変化点を抽出するステップと、
前記変化点を境に障害を認識するステップと、
を備える移動体の障害認識方法。
【請求項2】
並べ替えた前記路面データの変化点を抽出するステップは、
前記路面データのデータ群からサンプリングしたデータ群の各々のデータと、前記サンプリングしたデータ群に対する回帰直線と、の距離の和を算出するステップと、
前記距離の和を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返し、各々のサンプリングしたデータ群の距離の和に基づいて変化点を抽出するステップと、
を備える請求項1に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項3】
並び替えた前記路面データの変化点を抽出するステップは、
前記路面データのデータ群における隣接するデータが示す高さの差を算出するステップと、
隣接するデータが示す高さの差を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返し、算出した高さの差に基づいて変化点を抽出するステップと、
を備える請求項1に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項4】
並べ替えた前記路面データの変化点を抽出するステップは、
前記路面データのデータ群からサンプリングしたデータ群の各々のデータと、サンプリングしたデータ群に対する回帰直線と、の距離の和を算出するステップと、
前記距離の和を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返すステップと、
前記路面データのデータ群における隣接するデータが示す高さの差を算出するステップと、
隣接するデータが示す高さの差を算出するステップを前記路面データのデータ群の一部又は全部に対して繰り返すステップと、
前記路面データにおいて、算出した距離の和と、算出した高さの差と、を足し合わせるステップと、
足し合わせた数値に基づいて変化点を抽出するステップと、
を備える請求項1に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項5】
並び替えた前記路面データを平坦化する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項6】
隣接する変化点間のデータの個数が閾値より少ないと、前記データを除去する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項7】
前記路面データ取得手段は、2次元データ検出センサを備え、
前記路面データを取得するステップにおいて、前記2次元データ検出センサを前記移動体の左右方向に揺動して、前記移動体の前方領域に向かって走査する動作を前記移動体の左右方向に繰り返し、3次元の路面データを取得する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項8】
前記変化点を境に障害を認識するステップは、
前記変化点を境に障害が無いと認識した領域内のデータが示す高さが閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データが示す高さが前記閾値以上であると、隣接する走査データにおける対応するデータ間の高さの差を比較するステップと、
前記差が前記閾値以上であると、前記データ間に前記移動体が移動不可能な段差が存在することを認識するステップと、
を備える請求項7に記載の移動体の障害認識方法。
【請求項9】
移動体の障害認識システムであって、
少なくとも高さデータを含む路面データを取得する路面データ取得手段と、
取得した前記路面データを高さ順に並べ替える並べ替え手段と、
並べ替えた前記路面データの変化点を抽出する抽出手段と、
前記変化点を境に障害を認識する認識手段と、
を備える移動体の障害認識システム。
【請求項10】
並び替えた前記路面データを平坦化する平坦化手段を備える請求項9に記載の移動体の障害認識システム。
【請求項11】
隣接する変化点間のデータの個数が閾値より少ないと、前記データを除去するノイズ除去手段を備える請求項9又は10に記載の移動体の障害認識システム。
【請求項12】
前記路面データ取得手段は、2次元データ検出センサを備えており、前記2次元データ検出センサを前記移動体の左右方向に揺動して、前記移動体の前方領域に向かって走査する動作を前記移動体の左右方向に繰り返し、3次元の路面データを取得し、
前記変化点を境に障害が無いと認識した領域内のデータが示す高さが閾値以上であるか否かを判定し、前記データが示す高さが前記閾値以上であると、隣接する走査データにおける対応するデータ間の高さの差を比較し、前記差が前記閾値以上であると、前記データ間に前記移動体が移動不可能な段差が存在することを認識する段差認識手段を備える請求項9乃至11のいずれか1項に記載の移動体の障害認識システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−220227(P2012−220227A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83285(P2011−83285)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】