膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法、電気光学装置、並びに電子機器
【課題】隔壁により区画領域を設けて液滴塗出法により液滴を配置する際に、区画領域端部で液滴が十分に塗れ広がらず空隙が残ったり、局所的に膜厚が薄くなったりしてしまう、という課題を解決することを目的とする。
【解決手段】本発明の膜パターンの形成方法は、機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法であって、前記基板上に前記膜パターンに応じた隔壁を形成する工程と、前記隔壁によって区画された領域に前記機能液の液滴を配置する工程とを有し、前記区画領域の端部は曲率を持たせて形成し、液滴が塗れ広がる距離を短くして機能液の充填性を向上させる。
【解決手段】本発明の膜パターンの形成方法は、機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法であって、前記基板上に前記膜パターンに応じた隔壁を形成する工程と、前記隔壁によって区画された領域に前記機能液の液滴を配置する工程とを有し、前記区画領域の端部は曲率を持たせて形成し、液滴が塗れ広がる距離を短くして機能液の充填性を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法、電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路など微細な配線パターン(膜パターン)を有するデバイスの製造方法としてフォトリソグラフィ法が多用されているが、液滴吐出法を用いたデバイスの製造方法が注目されている。この液滴吐出法は機能液の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行いやすいという利点がある。下記特許文献には液滴吐出法に関する技術が開示されている。
【0003】
近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、配線パターンについても更なる細線化、微細化が要求されているが、液滴吐出法においては、微細な配線パターンを形成しようとした場合、特にその線幅の精度を十分に出すのが難しい。そこで、下記特許文献には、基板上に仕切り部剤である隔壁を設けるとともに、隔壁の上部を撥液性にし、それ以外の部分が親液性となるように表面処理を施す技術が開示されている。
【0004】
この技術を用いることにより、細線であっても配線パターンの幅を隔壁間の幅で規定することができるとともに、吐出した液滴の一部が隔壁に乗ったとしても、撥液性の隔壁ではじかれて隔壁間の区画領域の親液部に流れ落ちるようにすることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【特許文献3】特開平9−203803号公報
【特許文献4】特開平9−230129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の長方形の区画領域形状では、区画領域に液滴を配置した際に、区画領域内で十分に機能液が塗れ広がらず、端部に空隙ができてしまったり、局所的に膜厚が薄くなったりしてしまうといった充填性の問題があり、完全なる形で所望のパターンが得られず、信頼性上不安が残るという問題があった。また、ある90℃以上の角度を持って曲がるような配線パターンを得たい場合においても、同様に区画領域端部で液滴が十分に塗れ広がらずに空隙が残ったり、局所的に膜厚が薄くなったりしてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の膜パターンの形成方法は、機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法であって、前記基板上に前記膜パターンに応じた隔壁を形成する工程と、前記隔壁によって区画された領域に前記機能液の液滴を配置する工程とを有し、前記区画領域の端部は曲率を持たせて形成することを特徴とする。また、前記曲率は前記区画領域幅の1〜1/4倍の半径を有することが好ましい。
【0008】
また、前記隔壁に撥液性を付与する撥液化処理工程を有することが好ましい。
【0009】
さらには、前記区画領域の底部に親液性を付与する親液化処理工程を有することが好ましい。
【0010】
また、前記機能液には導電性材料が含まれることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のデバイスの製造方法は、基板上に膜パターンを形成する工程を有するデバイスの製造方法において、上記のいずれかの膜パターンの形成方法により、前記基板上に膜パターンを形成することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、上記デバイスの製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴とする。
【0013】
さらに上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、上記電気光学装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、区画領域の端部形状に、半径が隔壁幅の1/4〜1/2になるような曲率を持たせる(アールをつける)ことにより、液滴着弾後の機能液の塗れ広がり距離を短くすることで、機能液の充填を効率よく行うことができる。また、ある角度を持って曲がるような配線パターンを得たい場合においても、同様に半径が隔壁幅と同じだけの曲率を持たせることで、機能液の区画領域内の充填を効率よく行うことができ、均一な膜厚を得ることができる。
【0015】
また、本発明は、多層配線の上下導通に用いられるコンタクトホールへの機能液の充填の際にも適用できる。この場合は、コンタクトホールの平面形状を円形にしておくことで、液滴がコンタクトホール内で塗れ広がる距離を短くすることができ、効率的に機能液を充填でき、コンタクト部の信頼性を向上することができる。また、本発明は、配線パターン、コンタクトホールのみならず外部接続用パッドの形成の際にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の膜パターン形成方法を概念的に示す図である。
本発明の膜パターン形成方法は、基板P上に隔壁Bを形成する隔壁形成工程と、機能液Lの液滴を基板P上に着弾させ、隔壁Bによって区画された領域(区画領域A)に機能液Lを配置する材料配置工程とを有している。
【0017】
本発明の膜パターン形成方法では、隔壁Bによって区画された区画領域Aに機能液Lが配置され、この機能液Lが例えば乾燥することにより、基板P上に膜パターンFが形成される。この場合、隔壁Bによって膜パターンFの形状が規定されることから、例えば隔壁Bによる区画領域の幅を狭くするなど、隔壁Bを適切に形成することにより、膜パターンFの微細化や細線化が図られる。なお、膜パターンFが形成された後、基板Pから隔壁Bを除去してもよく、そのまま基板P上に残してもよい。
【0018】
本発明のパターン形成方法では、基板P上に隔壁Bを形成する際、隔壁Bの端部の形状に曲率を持たせることにより、機能液Lの配置時、機能液が隔壁B内で塗れ広がる距離を短くすることができ、機能液の充填を効率良く行うことができる。
一般に、区画領域に液滴を配置する際、液体の表面張力の作用などによってその領域内で液体が十分に広がらない場合がある。着弾時の液滴は円形であり、その後同心円上に塗れ広がろうとするので、特に三方を隔壁側壁に囲まれた領域内端部では、領域内を液滴が移動して側壁に到達するまでの距離が長くなるため、液体が円滑に充填しない場合がある。このような場合、端部で空隙が残ったり、膜厚が局所的に薄くなったりしてしまうので、所望のパターンが得られず、信頼性上問題となってしまう。これに対して本発明のパターン形成方法では、領域の端部に曲率を持たせてある。これにより、液滴が着弾してから領域を塗れ広がり端部の側壁へ到達するまでの距離が短くなるので、機能液の領域内の充填を効率的に確実に行うことができ、信頼性を確保することができる。
【0019】
隔壁Bの形成方法としては、リソグラフィ法や印刷法等、任意の方法を用いることができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板P上に隔壁の形成材料からなる層を形成した後、エッチングやアッシング等によりパターニングすることにより、所定のパターン形状の隔壁Bが得られる。なお、基板Pとは別の物体上で隔壁Bを形成し、それを基板P上に配置してもよい。
【0020】
隔壁Bの形成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料の他、シリカなどの無機物を含む材料が挙げられる。
【0021】
本発明における基板Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0022】
また、本発明における機能液Lとしては、各種のものが適用されるが、例えば、導電性微粒子を含む配線パターン用インクが用いられる。
また、機能液Lを、隔壁Bによって区画された領域に配置する方法としては、液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いるのが好ましい。液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行いやすいという利点がある。
【0023】
配線パターン用インクは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなるものである。導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液滴吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0024】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0025】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0026】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0027】
液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2 程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出してノズルから吐出させるものである。
【0028】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0029】
本発明の膜パターン形成方法では、上述した配線パターン用インクを用いることにより、導電性を有する膜パターンを形成することができる。この導電性の膜パターンは、配線として、各種デバイスに適用される。
【0030】
図2は、本発明の膜パターン形成方法に用いられる装置の一例として、液滴吐出法によって基板上に液体材料を配置する液滴吐出装置(インクジェット装置)IJの概略構成を示す斜視図である。
【0031】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド201と、X軸方向駆動軸204と、Y軸方向ガイド軸205と、制御装置CONTと、ステージ207と、クリーニング機構208と、基台209と、ヒータ210とを備えている。
ステージ207は、この液滴吐出装置IJによりインク(液体材料)を設けられる基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0032】
液滴吐出ヘッド201は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とY軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド201の下面にY軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド201の吐出ノズルからは、ステージ207に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0033】
X軸方向駆動軸204には、X軸方向駆動モータ202が接続されている。X軸方向駆動モータ202はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸204を回転させる。X軸方向駆動軸204が回転すると、液滴吐出ヘッド201はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸205は、基台209に対して動かないように固定されている。ステージ207は、Y軸方向駆動モータ203を備えている。Y軸方向駆動モータ203はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ207をY軸方向に移動する。
【0034】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド201に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ202に液滴吐出ヘッド201のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ203にステージ207のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構208は、液滴吐出ヘッド201をクリーニングするものである。クリーニング機構208には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構208は、Y軸方向ガイド軸205に沿って移動する。クリーニング機構208の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ210は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ210の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0035】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド201と基板Pを支持するステージ207とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、X軸方向を走査方向、X軸方向と直交するY軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド201の吐出ノズルは、非走査方向であるY軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図2では、液滴吐出ヘッド201は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド201の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド201の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0036】
図3は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図3において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室301に隣接してピエゾ素子302が設置されている。液体室301には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系303を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子302は駆動回路304に接続されており、この駆動回路304を介してピエゾ素子302に電圧を印加し、ピエゾ素子302を変形させることにより、液体室301が変形し、ノズル305から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子302の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子302の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0037】
次に、本発明の膜パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図4を参照して詳しく説明する。
本実施形態に係る膜パターン形成方法は、上述した配線パターン用のインク(配線パターン形成材料)を基板上に配置し、その基板上に配線用の導電膜パターンを形成するものであり、隔壁形成工程、残渣処理工程、撥液化処理工程、材料配置工程及び中間乾燥工程、焼成工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0038】
(隔壁形成工程)
隔壁は、仕切部材として機能する部材であり、隔壁の形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、図4(a)に示すように、基板P上に隔壁の高さに合わせて隔壁の形成材料41を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、隔壁形状(配線パターン)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することにより隔壁形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分の隔壁材料を除去する。また、下層が無機物で上層が有機物で構成された2層以上で隔壁(凸部)を形成してもよい。
【0039】
これにより、図4(b)に示されるように、配線パターンを形成すべき領域の周辺を囲むように、例えば15μm幅で隔壁B、Bが突設される。
なお、基板Pに対しては、有機材料塗布前に表面改質処理として、HMDS処理((CH3)3SiNHSi(CH3)3を蒸気状にして塗布する方法)が施されているが、図4ではその図示を省略している。
【0040】
(残渣処理工程(親液化処理工程))
次に、隔壁間における隔壁形成時のレジスト(有機物)残渣を除去するために、基板Pに対して残渣処理を施す。
残渣処理としては、紫外線を照射することにより残渣処理を行う紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2 プラズマ処理等を選択できるが、ここではO2 プラズマ処理を実施する。
【0041】
具体的には、基板Pに対しプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射することで行う。O2 プラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの板搬送速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃とされる。
なお、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成材料に対して親液性を有しているが、本実施の形態のように残渣処理のためにO2 プラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、基板表面の親液性を高めることができる。
【0042】
(撥液化処理工程)
続いて、隔壁Bに対し撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。
撥液化処理としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CF4 プラズマ処理法)を採用することができる。CF4 プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化メタンガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。
なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。
【0043】
このような撥液化処理を行うことにより、隔壁B、Bにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのO2 プラズマ処理は、隔壁Bの形成前に行ってもよいが、O2 プラズマによる前処理がなされると、隔壁Bがフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、隔壁Bを形成した後にO2 プラズマ処理することが好ましい。
なお、隔壁B、Bに対する撥液化処理により、先に親液化処理した基板P表面に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
また、隔壁B、Bについては、撥液性を有する材料(例えばフッ素基を有する樹脂材料)によって形成することにより、その撥液処理を省略するようにしてもよい。
【0044】
(材料配置工程及び中間乾燥工程)
次に、先の図2に示した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成材料を、基板P上の隔壁B、Bによって区画された領域、すなわち隔壁B、B間に配置する。なお、本例では、配線パターン用インク(機能液)として、導電性微粒子を溶媒(分散媒)に分散させた分散液を吐出する。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0045】
材料配置工程では、図4(c)に示すように、液滴吐出ヘッド201から配線パターン形成材料を含む液体材料Lを液滴にして吐出し、その液滴を基板P上の隔壁B、B間に配置する。液滴吐出の条件としては、例えば、インク重量7ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行う。
【0046】
このとき、隔壁B、Bによって液体材料の配置領域が仕切られていることから、その液体材料Lが基板P上で拡がることが阻止される。
【0047】
また、図4(c)に示すように、隣接する隔壁B、B間の幅Wが液滴の直径Dより狭い場合(すなわち、液滴の直径Dが隔壁B、B間の幅Wより大きい場合)、図4(d)の二点鎖線で示すように、液滴の一部が隔壁B、B上にのるものの、毛管現象などにより機能液Lは隔壁B、B間に入り込む。本例では、隔壁B、Bは撥液性が付与されていることから、機能液が隔壁Bにはじかれ、隔壁B、B間により確実に流れ込む。
また、基板Pの表面は親液性を付与されているため、隔壁B、B間に流れ込んだ機能液Lがその区画された領域内で均一に広がる。これにより、吐出する液滴の直径Dより狭い線幅Wの塗膜が形成される。
【0048】
さらに、本例では、先の図1に示したように、区画領域の端部が曲率をもって形成されているため、端部においても確実に機能液が領域内で充填される。
【0049】
(中間乾燥工程)
基板Pに液体材料を配置した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0050】
(焼成工程)
吐出工程後の乾燥膜は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0051】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。この場合、例えば、隔壁B及び液体材料の乾燥膜の上に低融点ガラスなどを予め塗布してもよい。
また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
以上の工程により吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、図4(e)に示すように、導電性膜(膜パターンF)に変換される。
【0052】
以上説明したように、本例の膜パターン形成方法では、区画領域の端部においても機能液の充填を円滑におこなうことができ、膜パターンを確実に形成することができる。
【0053】
<薄膜トランジスタ>
本発明の配線パターンの形成方法は、図5に示すようなスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)及びそれに接続する配線を形成するときに適用可能である。図5において、TFTを有するTFT基板P上には、ゲート配線50と、このゲート配線50に電気的に接続するゲート電極51と、ソース配線52と、このソース配線52に電気的に接続するソース電極53と、ドレイン電極54と、ドレイン電極54に電気的に接続する画素電極55とを備えている。ゲート配線50はX軸方向に延びるように形成され、ゲート電極51はY軸方向に延びるように形成されている。また、ゲート電極51の幅H2はゲート配線50の幅H1よりも狭くなっている。これらゲート配線50及びゲート電極51を、本発明に係る配線パターンの形成方法で形成することができる。
【0054】
また、上述した実施形態においては、本発明に係るパターン形成方法を使って、TFT(薄膜トランジスタ)のゲート配線を形成しているが、ソース電極、ドレイン電極、画素電極などの他の構成要素を製造することも可能である。以下、TFTを製造する方法について図6を参照しながら説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、まず、洗浄したガラス基板600の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10の区画領域601aを設けるための第1層目の隔壁601が、フォトリソグラフィ法に基づいて形成される。このとき、本発明によれば4端部に曲率を持たせて区画領域を形成しておく。この隔壁601としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が好適に用いられる。
【0056】
この形成後の隔壁601に撥液性を持たせるために、CF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、隔壁601の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0057】
以上のようにして撥液化された隔壁601の、吐出インクに対する接触角としては、40°以上、またガラス面の接触角としては、10°以下を確保することが好ましい。すなわち、本発明者らが試験により確認した結果、例えば導電性微粒子(テトラデカン溶媒)に対する処理後の接触角は、隔壁601の素材としてアクリル樹脂系を採用した場合には約54.0°(未処理の場合には10°以下)を確保することができる。なお、これら接触角は、プラズマパワー550Wのもと、4フッ化メタンガスを0.1L/minで供給する処理条件下で得たものである。
【0058】
上記第1層目の隔壁形成工程に続くゲート走査電極形成工程では、隔壁601で区画された描画領域である前記区画領域601a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することでゲート走査電極602を形成する。このとき、本発明によれば、4端部に曲率を持たせてあることで、円滑に導電性材料を充填することができ、確実にゲート走査電極を形成することができる。
【0059】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたゲート走査電極602は、隔壁601に十分な撥液性が予め与えられているので、区画領域601aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0060】
以上の工程により、基板600上には、隔壁601とゲート走査電極602からなる
平坦な上面を備えた第1の導電層A1が形成される。
【0061】
また、区画領域601a内における良好な吐出結果を得るためには、図6(a)に示すように、この区画領域601aの形状として準テーパ(吐出元に向かって開く向きのテーパ形状)を採用するのが好ましい。これにより、吐出された液滴を十分に奥深くまで入り込ませることが可能となる。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜603、活性層604、コンタクト層605の連続成膜を行う。ゲート絶縁膜603として窒化シリコン膜、活性層604としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層605としてn+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要になるが、無機系の材料を隔壁に使用することで、透明性、耐熱性に関する問題を回避することが可能である。
【0063】
上記半導体層形成工程に続く第2層目の隔壁形成工程では、図6(c)に示すように、ゲート絶縁膜603の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10でかつ前記区画領域601aと交差する区画領域606aを設けるための2層目の隔壁606を、フォトリソグラフィ法に基づいて形成する。このとき、本発明によれば4端部に曲率を持たせて区画領域を形成しておく。この隔壁606としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が好適に用いられる。
【0064】
この形成後の隔壁606に撥液性を持たせるためにCF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、隔壁606の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておくものとしても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0065】
以上のようにして撥液化された隔壁606の、吐出インクに対する接触角としては、40°以上を確保することが好ましい。
【0066】
上記第2層目の隔壁形成工程に続くソース・ドレイン電極形成工程では、隔壁606で区画された描画領域である前記区画領域606a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することで、図6(d)に示すように、前記ゲート走査電極602に対して交差するソース電極607及びドレイン電極608が形成される。このとき、本発明によれば、4端部に曲率を持たせてあることで、円滑に導電性材料を充填することができ、確実にソース電極607及びドレイン電極608を形成することができる。
【0067】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたソース電極607及びドレイン電極608は、隔壁606に十分な撥液性が予め与えられているので、区画領域606aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0068】
また、ソース電極607及びドレイン電極608を配置した区画領域606aを埋めるように絶縁材料609が配置される。以上の工程により、基板600上には、隔壁606と絶縁材料609からなる平坦な上面610が形成される。
【0069】
そして、絶縁材料609にコンタクトホール611を形成するとともに、上面610上にパターニングされた画素電極(ITO)612を形成し、コンタクトホール611を介してドレイン電極608と画素電極612とを接続することで、TFTが形成される。
【0070】
このとき、絶縁材料609を隔壁に置き換え、フォトリソグラフィ法によりコンタクトホール611を開口して、コンタクトホール611の機能液の充填および画素電極612のパターニングをインクジェット法により行うこともできる。本発明によれば、コンタクトホール611の平面形状を円形にしておくことで、機能液の充填を効率的に行うことができ、信頼性を確保することができる。
【0071】
なお、上記実施形態では逆スタガ型TFTを例にとり説明したが、本発明は逆スタガ型TFTのみならず、スタガ型TFT、コプレナ型TFTの配線およびコンタクトホール形成時にも応用できる。
【0072】
<電気光学装置>
次に、本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。
図7は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図8は図7のH−H’線に沿う断面図である。図9は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0073】
図7及び図8において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)700は、対をなすTFTアレイ基板710と対向基板720とが光硬化性の封止材であるシール材702によって貼り合わされ、このシール材702によって区画された領域内に液晶701が封入、保持されている。シール材702は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0074】
シール材702の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り703が形成されている。シール材702の外側の領域には、データ線駆動回路711及び実装端子712がTFTアレイ基板710の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路713が形成されている。TFTアレイ基板710の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路713の間を接続するための複数の配線714が設けられている。また、対向基板720のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板710と対向基板720との間で電気的導通をとるための基板間導通材715が配設されている。
なお、データ線駆動回路711及び走査線駆動回路713をTFTアレイ基板710の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板710の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置700においては、使用する液晶701の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置700をカラー表示用として構成する場合には、対向基板720において、TFTアレイ基板710の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0075】
このような構造を有する液晶表示装置700の画像表示領域においては、図9に示すように、複数の画素700aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素700aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)716が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線711aがTFT716のソースに電気的に接続されている。データ線711aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線711a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT716のゲートには走査線713aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線713aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0076】
画素電極717は、TFT716のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT716を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線711aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極717を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図8に示す対向基板720の対向電極721との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極717と対向電極721との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量718が付加されている。例えば、画素電極717の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量718により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置700を実現することができる。
【0077】
ここで、TFT716は上述した図6の通りに作製される。本実施の形態の液晶表示装置は、上記パターン形成方法により、微細化や細線化が図られた導電膜が、精度よく安定して形成されることから、高い品質や性能が得られる。
【0078】
なお、上記実施形態では、TFT716を液晶表示装置700の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT716を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0079】
図10は、前記液滴吐出装置IJにより一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。図10を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
図10において、有機EL装置1001は、基板1011、回路素子部1021、画素電極1031、隔壁部1041、発光素子1051、陰極1061(対向電極)、および封止基板1071から構成された有機EL素子1002に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部1021は、アクティブ素子であるTFT1022が基板1011上に形成され、複数の画素電極1031が回路素子部1021上に整列して構成されたものである。そして、TFT1022を構成するゲート配線が、上述した実施形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0080】
各画素電極1031間には隔壁部1041が格子状に形成されており、隔壁部1041により生じた凹部開口1044に、発光素子1051が形成されている。なお、発光素子1051は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置1001は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極1061は、隔壁部1041および発光素子1051の上部全面に形成され、陰極1061の上には封止用基板1071が積層されている。
【0081】
有機EL素子を含む有機EL装置1001の製造プロセスは、隔壁部1041を形成する隔壁部形成工程と、発光素子1051を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子1051を形成する発光素子形成工程と、陰極1061を形成する対向電極形成工程と、封止用基板1071を陰極1061上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0082】
発光素子形成工程は、凹部開口1044、すなわち画素電極1031上に正孔注入層1052および発光層1053を形成することにより発光素子1051を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層1052を形成するための液状体材料を各画素電極1031上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層1052を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層1053を形成するための液状体材料を正孔注入層1052の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層1053を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層1053は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
【0083】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0084】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0085】
図11は、液晶表示装置の別の実施形態を示す図である。
図11に示す液晶表示装置(電気光学装置)1101は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)1102と、液晶パネル1102に接続される回路基板1103とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル1102に付設されている。
【0086】
液晶パネル1102は、シール材1104によって接着された一対の基板1105a及び基板1105bを有し、これらの基板1105bと基板1105bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板1105a及び基板1105bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板1105a及び基板1105bの外側表面には偏光板1106a及び偏光板1106bが貼り付けられている。なお、図11においては、偏光板1106bの図示を省略している。
【0087】
また、基板1105aの内側表面には電極1107aが形成され、基板1105bの内側表面には電極1107bが形成されている。これらの電極1107a、1107bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極1107a、1107bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板1105aは、基板1105bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子1108が形成されている。これらの端子1108は、基板1105a上に電極1107aを形成するときに電極1107aと同時に形成される。従って、これらの端子1108は、例えばITOによって形成されている。これらの端子1108には、電極1107aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極1107bに接続されるものが含まれる。
【0088】
回路基板1103には、配線基板1109上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子1100が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子1100が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板1109は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板1111の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン1112を形成することによって製造されている。
【0089】
本実施形態では、液晶パネル1102における電極1107a、1107b及び回路基板1103における配線パターン1112が上記デバイス製造方法によって形成されている。
本実施形態の液晶表示装置によれば、電気特性の不均一が解消された高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0090】
なお、前述した例はパッシブ型の液晶パネルであるが、アクティブマトリクス型の液晶パネルとしてもよい。すなわち、一方の基板に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTに対し画素電極を形成する。また、各TFTに電気的に接続する配線(ゲート配線、ソース配線)を上記のようにインクジェット技術を用いて形成することができる。一方、対向する基板には対向電極等が形成されている。このようなアクティブマトリクス型の液晶パネルにも本発明を適用することができる。
【0091】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0092】
<電子機器>
図12及び図13は、上述した表示装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。図12(A)は携帯電話への適用例であり、当該携帯電話230はアンテナ部231、音声出力部232、音声入力部233、操作部234、および本発明の表示装置200を備えている。このように本発明に係る表示装置は表示部として利用可能である。図12(B)はビデオカメラへの適用例であり、当該ビデオカメラ240は受像部241、操作部242、音声入力部243、および本発明の表示装置200を備えている。
図12(C)は携帯型パーソナルコンピュータ(いわゆるPDA)への適用例であり、当該コンピュータ250はカメラ部251、操作部252、および本発明に係る表示装置200を備えている。図12(D)はヘッドマウントディスプレイへの適用例であり、当該ヘッドマウントディスプレイ260はバンド261、光学系収納部262および本発明に係る表示装置200を備えている。
図12(E)はリア型プロジェクターへの適用例であり、当該プロジェクター270は筐体271に、光源272、合成光学系273、ミラー274、275、スクリーン276、および本発明に係る表示装置200を備えている。図12(F)はフロント型プロジェクターへの適用例であり、当該プロジェクター280は筐体282に光学系281および本発明に係る表示装置200を備え、画像をスクリーン283に表示可能になっている。
図13(A)はテレビジョンへの適用例であり、当該テレビジョン300は本発明に係る表示装置200を備えている。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置に対しても同様に本発明に係る表示装置を適用し得る。図13(B)はロールアップ式テレビジョンへの適用例であり、当該ロールアップ式テレビジョン310は本発明に係る表示装置200を備えている。
【0093】
次に、本発明のパターンの形成方法によって形成されるパターンを、アンテナ回路に適用した例について説明する。
図14は、本実施形態例に係る非接触型カード媒体を示しており、非接触型カード媒体1300は、カード基体1301とカードカバー1302から成る筐体内に、半導体集積回路チップ1303とアンテナ回路1304を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。
【0094】
本実施形態では、上記アンテナ回路1304が、本発明のパターン形成方法に基づいて形成されている。そのため、上記アンテナ回路1304の微細化や細線化が図られ、高い品質や性能を得ることができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のパターン形成方法を概念的に示す図である。
【図2】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図3】ピエゾ方式による液状体の吐出原理を説明するための図である。
【図4】配線パターン形成する手順を示す図である。
【図5】薄膜トランジスタを有する基板の一例を示す模式図である。
【図6】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図7】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図8】図7のH−H’線に沿う断面図である。
【図9】液晶表示装置の等価回路図である。
【図10】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図11】液晶表示装置の別形態を示す図である。
【図12】表示装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。
【図13】表示装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。
【図14】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0097】
B…隔壁、P…基板(ガラス基板)、A…区画領域、F…パターン(導電性膜)、IJ…液滴吐出装置、700…液晶表示装置(電気光学装置)、1001…有機EL装置(電気光学装置)、1101…液晶表示装置(電気光学装置)、1300…非接触型カード媒体(電子機器)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法、電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路など微細な配線パターン(膜パターン)を有するデバイスの製造方法としてフォトリソグラフィ法が多用されているが、液滴吐出法を用いたデバイスの製造方法が注目されている。この液滴吐出法は機能液の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行いやすいという利点がある。下記特許文献には液滴吐出法に関する技術が開示されている。
【0003】
近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、配線パターンについても更なる細線化、微細化が要求されているが、液滴吐出法においては、微細な配線パターンを形成しようとした場合、特にその線幅の精度を十分に出すのが難しい。そこで、下記特許文献には、基板上に仕切り部剤である隔壁を設けるとともに、隔壁の上部を撥液性にし、それ以外の部分が親液性となるように表面処理を施す技術が開示されている。
【0004】
この技術を用いることにより、細線であっても配線パターンの幅を隔壁間の幅で規定することができるとともに、吐出した液滴の一部が隔壁に乗ったとしても、撥液性の隔壁ではじかれて隔壁間の区画領域の親液部に流れ落ちるようにすることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【特許文献3】特開平9−203803号公報
【特許文献4】特開平9−230129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の長方形の区画領域形状では、区画領域に液滴を配置した際に、区画領域内で十分に機能液が塗れ広がらず、端部に空隙ができてしまったり、局所的に膜厚が薄くなったりしてしまうといった充填性の問題があり、完全なる形で所望のパターンが得られず、信頼性上不安が残るという問題があった。また、ある90℃以上の角度を持って曲がるような配線パターンを得たい場合においても、同様に区画領域端部で液滴が十分に塗れ広がらずに空隙が残ったり、局所的に膜厚が薄くなったりしてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の膜パターンの形成方法は、機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法であって、前記基板上に前記膜パターンに応じた隔壁を形成する工程と、前記隔壁によって区画された領域に前記機能液の液滴を配置する工程とを有し、前記区画領域の端部は曲率を持たせて形成することを特徴とする。また、前記曲率は前記区画領域幅の1〜1/4倍の半径を有することが好ましい。
【0008】
また、前記隔壁に撥液性を付与する撥液化処理工程を有することが好ましい。
【0009】
さらには、前記区画領域の底部に親液性を付与する親液化処理工程を有することが好ましい。
【0010】
また、前記機能液には導電性材料が含まれることが好ましい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のデバイスの製造方法は、基板上に膜パターンを形成する工程を有するデバイスの製造方法において、上記のいずれかの膜パターンの形成方法により、前記基板上に膜パターンを形成することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、上記デバイスの製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴とする。
【0013】
さらに上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、上記電気光学装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、区画領域の端部形状に、半径が隔壁幅の1/4〜1/2になるような曲率を持たせる(アールをつける)ことにより、液滴着弾後の機能液の塗れ広がり距離を短くすることで、機能液の充填を効率よく行うことができる。また、ある角度を持って曲がるような配線パターンを得たい場合においても、同様に半径が隔壁幅と同じだけの曲率を持たせることで、機能液の区画領域内の充填を効率よく行うことができ、均一な膜厚を得ることができる。
【0015】
また、本発明は、多層配線の上下導通に用いられるコンタクトホールへの機能液の充填の際にも適用できる。この場合は、コンタクトホールの平面形状を円形にしておくことで、液滴がコンタクトホール内で塗れ広がる距離を短くすることができ、効率的に機能液を充填でき、コンタクト部の信頼性を向上することができる。また、本発明は、配線パターン、コンタクトホールのみならず外部接続用パッドの形成の際にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の膜パターン形成方法を概念的に示す図である。
本発明の膜パターン形成方法は、基板P上に隔壁Bを形成する隔壁形成工程と、機能液Lの液滴を基板P上に着弾させ、隔壁Bによって区画された領域(区画領域A)に機能液Lを配置する材料配置工程とを有している。
【0017】
本発明の膜パターン形成方法では、隔壁Bによって区画された区画領域Aに機能液Lが配置され、この機能液Lが例えば乾燥することにより、基板P上に膜パターンFが形成される。この場合、隔壁Bによって膜パターンFの形状が規定されることから、例えば隔壁Bによる区画領域の幅を狭くするなど、隔壁Bを適切に形成することにより、膜パターンFの微細化や細線化が図られる。なお、膜パターンFが形成された後、基板Pから隔壁Bを除去してもよく、そのまま基板P上に残してもよい。
【0018】
本発明のパターン形成方法では、基板P上に隔壁Bを形成する際、隔壁Bの端部の形状に曲率を持たせることにより、機能液Lの配置時、機能液が隔壁B内で塗れ広がる距離を短くすることができ、機能液の充填を効率良く行うことができる。
一般に、区画領域に液滴を配置する際、液体の表面張力の作用などによってその領域内で液体が十分に広がらない場合がある。着弾時の液滴は円形であり、その後同心円上に塗れ広がろうとするので、特に三方を隔壁側壁に囲まれた領域内端部では、領域内を液滴が移動して側壁に到達するまでの距離が長くなるため、液体が円滑に充填しない場合がある。このような場合、端部で空隙が残ったり、膜厚が局所的に薄くなったりしてしまうので、所望のパターンが得られず、信頼性上問題となってしまう。これに対して本発明のパターン形成方法では、領域の端部に曲率を持たせてある。これにより、液滴が着弾してから領域を塗れ広がり端部の側壁へ到達するまでの距離が短くなるので、機能液の領域内の充填を効率的に確実に行うことができ、信頼性を確保することができる。
【0019】
隔壁Bの形成方法としては、リソグラフィ法や印刷法等、任意の方法を用いることができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板P上に隔壁の形成材料からなる層を形成した後、エッチングやアッシング等によりパターニングすることにより、所定のパターン形状の隔壁Bが得られる。なお、基板Pとは別の物体上で隔壁Bを形成し、それを基板P上に配置してもよい。
【0020】
隔壁Bの形成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料の他、シリカなどの無機物を含む材料が挙げられる。
【0021】
本発明における基板Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0022】
また、本発明における機能液Lとしては、各種のものが適用されるが、例えば、導電性微粒子を含む配線パターン用インクが用いられる。
また、機能液Lを、隔壁Bによって区画された領域に配置する方法としては、液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いるのが好ましい。液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行いやすいという利点がある。
【0023】
配線パターン用インクは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなるものである。導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液滴吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0024】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0025】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0026】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0027】
液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2 程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出してノズルから吐出させるものである。
【0028】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0029】
本発明の膜パターン形成方法では、上述した配線パターン用インクを用いることにより、導電性を有する膜パターンを形成することができる。この導電性の膜パターンは、配線として、各種デバイスに適用される。
【0030】
図2は、本発明の膜パターン形成方法に用いられる装置の一例として、液滴吐出法によって基板上に液体材料を配置する液滴吐出装置(インクジェット装置)IJの概略構成を示す斜視図である。
【0031】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド201と、X軸方向駆動軸204と、Y軸方向ガイド軸205と、制御装置CONTと、ステージ207と、クリーニング機構208と、基台209と、ヒータ210とを備えている。
ステージ207は、この液滴吐出装置IJによりインク(液体材料)を設けられる基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0032】
液滴吐出ヘッド201は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とY軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド201の下面にY軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド201の吐出ノズルからは、ステージ207に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0033】
X軸方向駆動軸204には、X軸方向駆動モータ202が接続されている。X軸方向駆動モータ202はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸204を回転させる。X軸方向駆動軸204が回転すると、液滴吐出ヘッド201はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸205は、基台209に対して動かないように固定されている。ステージ207は、Y軸方向駆動モータ203を備えている。Y軸方向駆動モータ203はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ207をY軸方向に移動する。
【0034】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド201に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ202に液滴吐出ヘッド201のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ203にステージ207のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構208は、液滴吐出ヘッド201をクリーニングするものである。クリーニング機構208には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構208は、Y軸方向ガイド軸205に沿って移動する。クリーニング機構208の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ210は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ210の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0035】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド201と基板Pを支持するステージ207とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、X軸方向を走査方向、X軸方向と直交するY軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド201の吐出ノズルは、非走査方向であるY軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図2では、液滴吐出ヘッド201は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド201の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド201の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0036】
図3は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図3において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室301に隣接してピエゾ素子302が設置されている。液体室301には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系303を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子302は駆動回路304に接続されており、この駆動回路304を介してピエゾ素子302に電圧を印加し、ピエゾ素子302を変形させることにより、液体室301が変形し、ノズル305から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子302の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子302の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0037】
次に、本発明の膜パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図4を参照して詳しく説明する。
本実施形態に係る膜パターン形成方法は、上述した配線パターン用のインク(配線パターン形成材料)を基板上に配置し、その基板上に配線用の導電膜パターンを形成するものであり、隔壁形成工程、残渣処理工程、撥液化処理工程、材料配置工程及び中間乾燥工程、焼成工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0038】
(隔壁形成工程)
隔壁は、仕切部材として機能する部材であり、隔壁の形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、図4(a)に示すように、基板P上に隔壁の高さに合わせて隔壁の形成材料41を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、隔壁形状(配線パターン)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することにより隔壁形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分の隔壁材料を除去する。また、下層が無機物で上層が有機物で構成された2層以上で隔壁(凸部)を形成してもよい。
【0039】
これにより、図4(b)に示されるように、配線パターンを形成すべき領域の周辺を囲むように、例えば15μm幅で隔壁B、Bが突設される。
なお、基板Pに対しては、有機材料塗布前に表面改質処理として、HMDS処理((CH3)3SiNHSi(CH3)3を蒸気状にして塗布する方法)が施されているが、図4ではその図示を省略している。
【0040】
(残渣処理工程(親液化処理工程))
次に、隔壁間における隔壁形成時のレジスト(有機物)残渣を除去するために、基板Pに対して残渣処理を施す。
残渣処理としては、紫外線を照射することにより残渣処理を行う紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2 プラズマ処理等を選択できるが、ここではO2 プラズマ処理を実施する。
【0041】
具体的には、基板Pに対しプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射することで行う。O2 プラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの板搬送速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃とされる。
なお、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成材料に対して親液性を有しているが、本実施の形態のように残渣処理のためにO2 プラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、基板表面の親液性を高めることができる。
【0042】
(撥液化処理工程)
続いて、隔壁Bに対し撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。
撥液化処理としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CF4 プラズマ処理法)を採用することができる。CF4 プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化メタンガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。
なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。
【0043】
このような撥液化処理を行うことにより、隔壁B、Bにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのO2 プラズマ処理は、隔壁Bの形成前に行ってもよいが、O2 プラズマによる前処理がなされると、隔壁Bがフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、隔壁Bを形成した後にO2 プラズマ処理することが好ましい。
なお、隔壁B、Bに対する撥液化処理により、先に親液化処理した基板P表面に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
また、隔壁B、Bについては、撥液性を有する材料(例えばフッ素基を有する樹脂材料)によって形成することにより、その撥液処理を省略するようにしてもよい。
【0044】
(材料配置工程及び中間乾燥工程)
次に、先の図2に示した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成材料を、基板P上の隔壁B、Bによって区画された領域、すなわち隔壁B、B間に配置する。なお、本例では、配線パターン用インク(機能液)として、導電性微粒子を溶媒(分散媒)に分散させた分散液を吐出する。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0045】
材料配置工程では、図4(c)に示すように、液滴吐出ヘッド201から配線パターン形成材料を含む液体材料Lを液滴にして吐出し、その液滴を基板P上の隔壁B、B間に配置する。液滴吐出の条件としては、例えば、インク重量7ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行う。
【0046】
このとき、隔壁B、Bによって液体材料の配置領域が仕切られていることから、その液体材料Lが基板P上で拡がることが阻止される。
【0047】
また、図4(c)に示すように、隣接する隔壁B、B間の幅Wが液滴の直径Dより狭い場合(すなわち、液滴の直径Dが隔壁B、B間の幅Wより大きい場合)、図4(d)の二点鎖線で示すように、液滴の一部が隔壁B、B上にのるものの、毛管現象などにより機能液Lは隔壁B、B間に入り込む。本例では、隔壁B、Bは撥液性が付与されていることから、機能液が隔壁Bにはじかれ、隔壁B、B間により確実に流れ込む。
また、基板Pの表面は親液性を付与されているため、隔壁B、B間に流れ込んだ機能液Lがその区画された領域内で均一に広がる。これにより、吐出する液滴の直径Dより狭い線幅Wの塗膜が形成される。
【0048】
さらに、本例では、先の図1に示したように、区画領域の端部が曲率をもって形成されているため、端部においても確実に機能液が領域内で充填される。
【0049】
(中間乾燥工程)
基板Pに液体材料を配置した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0050】
(焼成工程)
吐出工程後の乾燥膜は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0051】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。この場合、例えば、隔壁B及び液体材料の乾燥膜の上に低融点ガラスなどを予め塗布してもよい。
また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
以上の工程により吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、図4(e)に示すように、導電性膜(膜パターンF)に変換される。
【0052】
以上説明したように、本例の膜パターン形成方法では、区画領域の端部においても機能液の充填を円滑におこなうことができ、膜パターンを確実に形成することができる。
【0053】
<薄膜トランジスタ>
本発明の配線パターンの形成方法は、図5に示すようなスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)及びそれに接続する配線を形成するときに適用可能である。図5において、TFTを有するTFT基板P上には、ゲート配線50と、このゲート配線50に電気的に接続するゲート電極51と、ソース配線52と、このソース配線52に電気的に接続するソース電極53と、ドレイン電極54と、ドレイン電極54に電気的に接続する画素電極55とを備えている。ゲート配線50はX軸方向に延びるように形成され、ゲート電極51はY軸方向に延びるように形成されている。また、ゲート電極51の幅H2はゲート配線50の幅H1よりも狭くなっている。これらゲート配線50及びゲート電極51を、本発明に係る配線パターンの形成方法で形成することができる。
【0054】
また、上述した実施形態においては、本発明に係るパターン形成方法を使って、TFT(薄膜トランジスタ)のゲート配線を形成しているが、ソース電極、ドレイン電極、画素電極などの他の構成要素を製造することも可能である。以下、TFTを製造する方法について図6を参照しながら説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、まず、洗浄したガラス基板600の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10の区画領域601aを設けるための第1層目の隔壁601が、フォトリソグラフィ法に基づいて形成される。このとき、本発明によれば4端部に曲率を持たせて区画領域を形成しておく。この隔壁601としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が好適に用いられる。
【0056】
この形成後の隔壁601に撥液性を持たせるために、CF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、隔壁601の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0057】
以上のようにして撥液化された隔壁601の、吐出インクに対する接触角としては、40°以上、またガラス面の接触角としては、10°以下を確保することが好ましい。すなわち、本発明者らが試験により確認した結果、例えば導電性微粒子(テトラデカン溶媒)に対する処理後の接触角は、隔壁601の素材としてアクリル樹脂系を採用した場合には約54.0°(未処理の場合には10°以下)を確保することができる。なお、これら接触角は、プラズマパワー550Wのもと、4フッ化メタンガスを0.1L/minで供給する処理条件下で得たものである。
【0058】
上記第1層目の隔壁形成工程に続くゲート走査電極形成工程では、隔壁601で区画された描画領域である前記区画領域601a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することでゲート走査電極602を形成する。このとき、本発明によれば、4端部に曲率を持たせてあることで、円滑に導電性材料を充填することができ、確実にゲート走査電極を形成することができる。
【0059】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたゲート走査電極602は、隔壁601に十分な撥液性が予め与えられているので、区画領域601aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0060】
以上の工程により、基板600上には、隔壁601とゲート走査電極602からなる
平坦な上面を備えた第1の導電層A1が形成される。
【0061】
また、区画領域601a内における良好な吐出結果を得るためには、図6(a)に示すように、この区画領域601aの形状として準テーパ(吐出元に向かって開く向きのテーパ形状)を採用するのが好ましい。これにより、吐出された液滴を十分に奥深くまで入り込ませることが可能となる。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜603、活性層604、コンタクト層605の連続成膜を行う。ゲート絶縁膜603として窒化シリコン膜、活性層604としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層605としてn+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要になるが、無機系の材料を隔壁に使用することで、透明性、耐熱性に関する問題を回避することが可能である。
【0063】
上記半導体層形成工程に続く第2層目の隔壁形成工程では、図6(c)に示すように、ゲート絶縁膜603の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10でかつ前記区画領域601aと交差する区画領域606aを設けるための2層目の隔壁606を、フォトリソグラフィ法に基づいて形成する。このとき、本発明によれば4端部に曲率を持たせて区画領域を形成しておく。この隔壁606としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が好適に用いられる。
【0064】
この形成後の隔壁606に撥液性を持たせるためにCF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、隔壁606の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておくものとしても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0065】
以上のようにして撥液化された隔壁606の、吐出インクに対する接触角としては、40°以上を確保することが好ましい。
【0066】
上記第2層目の隔壁形成工程に続くソース・ドレイン電極形成工程では、隔壁606で区画された描画領域である前記区画領域606a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することで、図6(d)に示すように、前記ゲート走査電極602に対して交差するソース電極607及びドレイン電極608が形成される。このとき、本発明によれば、4端部に曲率を持たせてあることで、円滑に導電性材料を充填することができ、確実にソース電極607及びドレイン電極608を形成することができる。
【0067】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたソース電極607及びドレイン電極608は、隔壁606に十分な撥液性が予め与えられているので、区画領域606aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0068】
また、ソース電極607及びドレイン電極608を配置した区画領域606aを埋めるように絶縁材料609が配置される。以上の工程により、基板600上には、隔壁606と絶縁材料609からなる平坦な上面610が形成される。
【0069】
そして、絶縁材料609にコンタクトホール611を形成するとともに、上面610上にパターニングされた画素電極(ITO)612を形成し、コンタクトホール611を介してドレイン電極608と画素電極612とを接続することで、TFTが形成される。
【0070】
このとき、絶縁材料609を隔壁に置き換え、フォトリソグラフィ法によりコンタクトホール611を開口して、コンタクトホール611の機能液の充填および画素電極612のパターニングをインクジェット法により行うこともできる。本発明によれば、コンタクトホール611の平面形状を円形にしておくことで、機能液の充填を効率的に行うことができ、信頼性を確保することができる。
【0071】
なお、上記実施形態では逆スタガ型TFTを例にとり説明したが、本発明は逆スタガ型TFTのみならず、スタガ型TFT、コプレナ型TFTの配線およびコンタクトホール形成時にも応用できる。
【0072】
<電気光学装置>
次に、本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。
図7は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図8は図7のH−H’線に沿う断面図である。図9は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0073】
図7及び図8において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)700は、対をなすTFTアレイ基板710と対向基板720とが光硬化性の封止材であるシール材702によって貼り合わされ、このシール材702によって区画された領域内に液晶701が封入、保持されている。シール材702は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0074】
シール材702の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り703が形成されている。シール材702の外側の領域には、データ線駆動回路711及び実装端子712がTFTアレイ基板710の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路713が形成されている。TFTアレイ基板710の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路713の間を接続するための複数の配線714が設けられている。また、対向基板720のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板710と対向基板720との間で電気的導通をとるための基板間導通材715が配設されている。
なお、データ線駆動回路711及び走査線駆動回路713をTFTアレイ基板710の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板710の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置700においては、使用する液晶701の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置700をカラー表示用として構成する場合には、対向基板720において、TFTアレイ基板710の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0075】
このような構造を有する液晶表示装置700の画像表示領域においては、図9に示すように、複数の画素700aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素700aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)716が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線711aがTFT716のソースに電気的に接続されている。データ線711aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線711a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT716のゲートには走査線713aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線713aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0076】
画素電極717は、TFT716のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT716を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線711aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極717を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図8に示す対向基板720の対向電極721との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極717と対向電極721との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量718が付加されている。例えば、画素電極717の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量718により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置700を実現することができる。
【0077】
ここで、TFT716は上述した図6の通りに作製される。本実施の形態の液晶表示装置は、上記パターン形成方法により、微細化や細線化が図られた導電膜が、精度よく安定して形成されることから、高い品質や性能が得られる。
【0078】
なお、上記実施形態では、TFT716を液晶表示装置700の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT716を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0079】
図10は、前記液滴吐出装置IJにより一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。図10を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
図10において、有機EL装置1001は、基板1011、回路素子部1021、画素電極1031、隔壁部1041、発光素子1051、陰極1061(対向電極)、および封止基板1071から構成された有機EL素子1002に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部1021は、アクティブ素子であるTFT1022が基板1011上に形成され、複数の画素電極1031が回路素子部1021上に整列して構成されたものである。そして、TFT1022を構成するゲート配線が、上述した実施形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0080】
各画素電極1031間には隔壁部1041が格子状に形成されており、隔壁部1041により生じた凹部開口1044に、発光素子1051が形成されている。なお、発光素子1051は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置1001は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極1061は、隔壁部1041および発光素子1051の上部全面に形成され、陰極1061の上には封止用基板1071が積層されている。
【0081】
有機EL素子を含む有機EL装置1001の製造プロセスは、隔壁部1041を形成する隔壁部形成工程と、発光素子1051を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子1051を形成する発光素子形成工程と、陰極1061を形成する対向電極形成工程と、封止用基板1071を陰極1061上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0082】
発光素子形成工程は、凹部開口1044、すなわち画素電極1031上に正孔注入層1052および発光層1053を形成することにより発光素子1051を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層1052を形成するための液状体材料を各画素電極1031上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層1052を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層1053を形成するための液状体材料を正孔注入層1052の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層1053を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層1053は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
【0083】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0084】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0085】
図11は、液晶表示装置の別の実施形態を示す図である。
図11に示す液晶表示装置(電気光学装置)1101は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)1102と、液晶パネル1102に接続される回路基板1103とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル1102に付設されている。
【0086】
液晶パネル1102は、シール材1104によって接着された一対の基板1105a及び基板1105bを有し、これらの基板1105bと基板1105bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板1105a及び基板1105bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板1105a及び基板1105bの外側表面には偏光板1106a及び偏光板1106bが貼り付けられている。なお、図11においては、偏光板1106bの図示を省略している。
【0087】
また、基板1105aの内側表面には電極1107aが形成され、基板1105bの内側表面には電極1107bが形成されている。これらの電極1107a、1107bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極1107a、1107bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板1105aは、基板1105bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子1108が形成されている。これらの端子1108は、基板1105a上に電極1107aを形成するときに電極1107aと同時に形成される。従って、これらの端子1108は、例えばITOによって形成されている。これらの端子1108には、電極1107aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極1107bに接続されるものが含まれる。
【0088】
回路基板1103には、配線基板1109上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子1100が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子1100が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板1109は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板1111の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン1112を形成することによって製造されている。
【0089】
本実施形態では、液晶パネル1102における電極1107a、1107b及び回路基板1103における配線パターン1112が上記デバイス製造方法によって形成されている。
本実施形態の液晶表示装置によれば、電気特性の不均一が解消された高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0090】
なお、前述した例はパッシブ型の液晶パネルであるが、アクティブマトリクス型の液晶パネルとしてもよい。すなわち、一方の基板に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTに対し画素電極を形成する。また、各TFTに電気的に接続する配線(ゲート配線、ソース配線)を上記のようにインクジェット技術を用いて形成することができる。一方、対向する基板には対向電極等が形成されている。このようなアクティブマトリクス型の液晶パネルにも本発明を適用することができる。
【0091】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0092】
<電子機器>
図12及び図13は、上述した表示装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。図12(A)は携帯電話への適用例であり、当該携帯電話230はアンテナ部231、音声出力部232、音声入力部233、操作部234、および本発明の表示装置200を備えている。このように本発明に係る表示装置は表示部として利用可能である。図12(B)はビデオカメラへの適用例であり、当該ビデオカメラ240は受像部241、操作部242、音声入力部243、および本発明の表示装置200を備えている。
図12(C)は携帯型パーソナルコンピュータ(いわゆるPDA)への適用例であり、当該コンピュータ250はカメラ部251、操作部252、および本発明に係る表示装置200を備えている。図12(D)はヘッドマウントディスプレイへの適用例であり、当該ヘッドマウントディスプレイ260はバンド261、光学系収納部262および本発明に係る表示装置200を備えている。
図12(E)はリア型プロジェクターへの適用例であり、当該プロジェクター270は筐体271に、光源272、合成光学系273、ミラー274、275、スクリーン276、および本発明に係る表示装置200を備えている。図12(F)はフロント型プロジェクターへの適用例であり、当該プロジェクター280は筐体282に光学系281および本発明に係る表示装置200を備え、画像をスクリーン283に表示可能になっている。
図13(A)はテレビジョンへの適用例であり、当該テレビジョン300は本発明に係る表示装置200を備えている。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置に対しても同様に本発明に係る表示装置を適用し得る。図13(B)はロールアップ式テレビジョンへの適用例であり、当該ロールアップ式テレビジョン310は本発明に係る表示装置200を備えている。
【0093】
次に、本発明のパターンの形成方法によって形成されるパターンを、アンテナ回路に適用した例について説明する。
図14は、本実施形態例に係る非接触型カード媒体を示しており、非接触型カード媒体1300は、カード基体1301とカードカバー1302から成る筐体内に、半導体集積回路チップ1303とアンテナ回路1304を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。
【0094】
本実施形態では、上記アンテナ回路1304が、本発明のパターン形成方法に基づいて形成されている。そのため、上記アンテナ回路1304の微細化や細線化が図られ、高い品質や性能を得ることができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のパターン形成方法を概念的に示す図である。
【図2】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図3】ピエゾ方式による液状体の吐出原理を説明するための図である。
【図4】配線パターン形成する手順を示す図である。
【図5】薄膜トランジスタを有する基板の一例を示す模式図である。
【図6】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図7】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図8】図7のH−H’線に沿う断面図である。
【図9】液晶表示装置の等価回路図である。
【図10】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図11】液晶表示装置の別形態を示す図である。
【図12】表示装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。
【図13】表示装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。
【図14】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0097】
B…隔壁、P…基板(ガラス基板)、A…区画領域、F…パターン(導電性膜)、IJ…液滴吐出装置、700…液晶表示装置(電気光学装置)、1001…有機EL装置(電気光学装置)、1101…液晶表示装置(電気光学装置)、1300…非接触型カード媒体(電子機器)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法であって、前記基板上に前記膜パターンに応じた隔壁を形成する工程と、前記隔壁によって区画された領域に前記機能液の液滴を配置する工程とを有し、前記区画領域の端部は曲率を持たせて形成することを特徴とする膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記曲率は前記区画領域幅の1〜1/4倍の半径を有することを特徴とする請求項1記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記隔壁に撥液性を付与する撥液化処理工程を有することを特徴とする請求項1および請求項2記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記区画領域の底部に親液性を付与する親液化処理工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記機能液には導電性材料が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の膜パターンの形成方法。
【請求項6】
基板上に膜パターンを形成する工程を有するデバイスの製造方法において、請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の膜パターンの形成方法により、前記基板上に膜パターンを形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のデバイスの製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項7記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
機能液の液滴を基板上に配置することにより膜パターンを形成する膜パターンの形成方法であって、前記基板上に前記膜パターンに応じた隔壁を形成する工程と、前記隔壁によって区画された領域に前記機能液の液滴を配置する工程とを有し、前記区画領域の端部は曲率を持たせて形成することを特徴とする膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記曲率は前記区画領域幅の1〜1/4倍の半径を有することを特徴とする請求項1記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記隔壁に撥液性を付与する撥液化処理工程を有することを特徴とする請求項1および請求項2記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記区画領域の底部に親液性を付与する親液化処理工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記機能液には導電性材料が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の膜パターンの形成方法。
【請求項6】
基板上に膜パターンを形成する工程を有するデバイスの製造方法において、請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の膜パターンの形成方法により、前記基板上に膜パターンを形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のデバイスの製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項7記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−269884(P2006−269884A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87931(P2005−87931)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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