説明

走行支援装置

【課題】直進走行に対する外乱が発生しやすい直線の道路を検知したときに、車両の直進走行を支援する走行支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】直進走行に対する外乱が発生しやすい道路である指定道路を走行しているとき(ステップS1→Yes)、その指定道路が直線の場合は(ステップS2→Yes)、左右の後輪をトーインして(ステップS3)直進性を向上し、直進走行を支援する。そして、指定道路から抜けたときには(ステップS4→Yes)、左右の後輪のトーインを解除して(ステップS5)通常のトーインに戻し、タイヤの磨耗などの影響を最小限に抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置に備わる地図データが有する情報を利用して、車両の進行方向の道路の形状をあらかじめ検知し、検知した道路の形状に応じた好適な車速状態となるように制御する技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている技術によると、ナビゲーション装置の地図データが有する情報を用いて車両の進行方向にあるカーブを検知し、車両がカーブに進入する前に、カーブの曲率に対応した好適な車速に制御することで、車両の走行を支援することができる。
【特許文献1】特開平9−50597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路の形状が直線であっても、例えば、トンネル出口の近傍や橋梁の上などでは、強風や横風が車両の直進走行に対する外乱となって車両の直進性が乱されることがあり、トンネル出口の近傍や橋梁の上などを走行しているとき、運転者は直進走行を維持するための操作が必要となるが、特許文献1に開示される技術では、直進走行に対する外乱に対して車両の直進走行を支援することができず、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、直進走行に対する外乱が発生しやすい道路を走行している車両の直進走行を支援する走行支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、車両に備わる後輪のトー角を、左右独立に変更可能なトー角変更装置と、前記車両が走行している道路の属性を取得する道路属性取得手段と、前記道路属性取得手段が取得する前記属性が所定の属性である場合に、前記トー角変更装置に指令を与えて、前記後輪をトーインさせるリアトー角制御装置と、を備えることを特徴とした。
【0007】
請求項1にかかる発明によると、車両が所定の属性を有する道路を走行しているときに、左右の後輪をトーインさせることができる。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、前記所定の属性は、前記車両の直進走行に対する外乱を発生する道路を示す属性を含むことを特徴とした。
【0009】
請求項2にかかる発明によると、車両の直進走行に対する外乱を発生する道路を走行しているときに、左右の後輪をトーインさせることができる。
【0010】
また、請求項3にかかる発明は、前記所定の属性は、トンネル出口の近傍に敷設される道路を示す属性であることを特徴とした。
【0011】
請求項3にかかる発明によると、車両がトンネル出口の近傍を走行しているときに、左右の後輪をトーインさせることができる。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、前記所定の属性は、橋梁の上に敷設される道路を示す属性であることを特徴とした。
【0013】
請求項4にかかる発明によると、車両が橋梁の上を走行しているときに、左右の後輪をトーインさせることができる。
【0014】
また、請求項5にかかる発明は、前記道路属性取得手段は、道路の属性を情報として含む地図データを備え、前記車両が走行している位置を検知するとともに、前記車両が走行している前記道路の属性を、前記地図データを参照して取得するナビゲーション装置であることを特徴とした。
【0015】
請求項5にかかる発明によると、ナビゲーション装置を用いて、車両の直進走行に対する外乱を発生する道路を検知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、直進走行に対する外乱が発生しやすい道路を走行している車両の直進走行を支援する走行支援装置を提供することができる。
例えばトンネル出口の近傍や橋梁の上など横風の影響を受けやすい場所では、後輪が大きなトーインになっているため、車両の直進安定性が向上されるが、その変化は車両挙動に現われないため、運転者が不快に感じることがない。
さらに、それ以外の場所では後輪が通常のトーインとなっているため、タイヤの偏磨耗防止や燃費向上になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を用いて詳細に説明する。
【0018】
(車両システムの構成)
本実施形態にかかる車両システムの構成を図1から図4を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態にかかる車両システムを適用した4輪車両の概略図であり、図2は操舵制御ECUの構成を示すブロック図であり、図3は左後輪側のトー角変更装置の構成図であり、図4はトー角変更装置のアクチュエータの構成図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態にかかる車両システム100は、前輪1L、1Rを転舵させる操向ハンドル3による操舵を補助する電動パワーステアリング装置110、前輪1L、1Rの転舵角と車速に応じて後輪2L、2Rをそれぞれ独立に転舵させるトー角変更装置120L、120R、車両システム100を制御する制御装置(以下、操舵制御ECUと称する)130、ブレーキ装置140およびナビゲーション装置170と、車速センサS、ヨーレートセンサS、トルクセンサSなど各種センサを含んで構成されている。
【0020】
左右の前輪1L、1Rは、車両システム100が備わる車両Vの進行方向を決定する操舵輪であって、運転者は操向ハンドル3の操作によって前輪1L、1Rを操舵し、車両Vを左右方向に旋回させる。
操向ハンドル3は、ステアリングギアボックス6を介して、前輪1L、1Rと接続される。そして、前輪1L、1Rは、運転者による操向ハンドル3の回転操作に応じて左右方向に回転し、車両Vの進行方向を決定する。
【0021】
ブレーキ装置140は、前輪1および後輪2を制動して、車両Vを減速または停止する装置である。そして、ブレーキ装置140はブレーキECU130a(図2参照)からの指令によって作動が制御される。
【0022】
ヨーレートセンサSは、車両Vに発生しているヨーレートを検知するセンサである。ヨーレートセンサSは、例えば、車両Vにヨーレートが発生していないときを「0」として、左方向のヨーレートが発生しているときに正の値、右方向のヨーレートが発生しているときに負の値を出力するようにすればよい。
トルクセンサSは、操向ハンドル3に接続されるハンドルシャフトに加えられる操舵トルクを検出するものであり、操舵制御ECU130は、トルクセンサSが検出する操舵トルクによって、操向ハンドル3が操作されたことを検知できる。
また、車速センサSは、車両Vの車速を単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号を出力する。
【0023】
(操舵制御ECUの構成)
操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110、ブレーキ装置140、左右のトー角変更装置120L、120R、トー角変更制御ECU37およびナビゲーション装置170に接続され、それぞれを制御したり、各センサと接続され、各センサが出力する情報を入力したりする装置である。図2に示すように、操舵制御ECU130は、ブレーキ装置140を制御するブレーキECU130a、電動パワーステアリング装置110を制御する電動パワーステアリングECU130b、トー角変更装置120を制御するトー角制御ECU130c、ナビゲーション装置170から情報を入力して、車両Vの進行方向の道路の属性を取得する道路検知ECU130dを含んで構成される。そして、各ECUは信号線などで接続され、各ECUの間で情報を入出力できる構成とする。
また、各ECUは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備えるコンピュータおよびプログラム、周辺回路などを含んで構成される。
【0024】
(ナビゲーション装置の構成)
図1に示すように、ナビゲーション装置170は、地図データ170aを搭載していて、例えば衛星からの信号を受信することで検知する車両Vの位置を地図データ170aに重ね合わせて、図示しない表示装置等を介して運転者に表示する機能を有する。さらに、地図データ170aには、車両Vが走行している道路の形状(直線やカーブ)や道路の形態(トンネル、橋梁)などを示す道路の属性が情報として含まれるものとする。地図データ170aは、道路をリンク単位に分割し、さらにリンクとリンクをノードで接続して、道路の情報を管理している。そして、道路の属性は、各リンク、及び各ノードの属性としてリンク情報又はノード情報に含まれて地図データ170aに備わっていればよい。
【0025】
ナビゲーション装置170は、地図データ170aを参照して、検知した車両Vの位置に対応するリンク情報又はノード情報を、車両Vが走行している道路の情報として取得し、ナビゲーション情報として所定のサンプリングタイムで、操舵制御ECU130に備わる道路検知ECU130d(図2参照)に入力する。ナビゲーション装置170がナビゲーション情報を道路検知ECU130dに入力する所定のサンプリングタイムは、限定される時間ではなく、本実施形態を適用する車両V(図1参照)に要求される性能に基づいて、例えば100msecなど適宜設定すればよい。
リンク情報又はノード情報には、道路の属性が含まれることから、本実施形態にかかるナビゲーション装置170は、地図データ170aを参照して、車両Vが走行している道路の属性を取得する機能を有することになり、道路属性取得手段となる。
【0026】
(トー角変更装置の構成)
次に、図3、図4を参照しながらトー角変更装置の構成を説明する。
図3は左後輪側のトー角変更装置を示す平面図、図4はトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
【0027】
トー角変更装置(以下、RTC(リアトーコントローラ)と称する場合あり)120L、120Rは、左右の後輪2L、2Rにそれぞれ取り付けられるものであり、図3では、左側の後輪2Lを例にとりトー角変更装置120Lを示している。トー角変更装置120L、120Rは、アクチュエータ30およびトー角変更制御装置(以下、トー角変更制御ECUと称する)37を備えている。なお、図3は、左側の後輪2Lのみを示しているが、アクチュエータ30およびトー角変更制御ECU37は、右側の後輪2Rについても同様(対称)にして取り付けられている。
【0028】
図3に示すように、車体のリアサイドフレーム11には、略車幅方向に延びるクロスメンバ12の車幅方向端部が弾性支持されている。そして、略車体前後方向に延びるトレーリングアーム13の前端がクロスメンバ12の車幅方向端部近くで支持されている。そして、トレーリングアーム13の後端に後輪2Lが取り付けられている。
トレーリングアーム13は、クロスメンバ12に装着される車体側アーム13aと、後輪2Lに固定される車輪側アーム13bとが、略鉛直方向の回転軸13cを介して連結されて構成されている。これにより、トレーリングアーム13が車幅方向へ変位することが可能となっている。
【0029】
前記アクチュエータ30は、その一端が車輪側アーム13bの回転軸13cより前方側の前端部にボールジョイント16を介して取り付けられ、他端がクロスメンバ12にボールジョイント17を介して取り付けられている。
【0030】
図4に示すように、アクチュエータ30は、電動機31、減速機構33、送りねじ部35などを備えて構成されている。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータなどで構成されている。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)などが組み合わされて構成されている。
送りねじ部35は、円筒状に形成されたロッド35aと、スクリュー溝35bが形成されてロッド35aの内部に挿入されるナット35cと、スクリュー溝35bと噛合してロッド35aを軸方向に移動可能に支持するスクリュー軸35dとを備えて構成されている。スクリュー軸35dは、減速機構33および電動機31とともに細長形状のケース本体34内に収容され、減速機構33の一端が電動機31の出力軸と連結され、他端がスクリュー軸35dと連結されている。
電動機31からの動力が、減速機構33を介してスクリュー軸35dに伝達されてスクリュー軸35dが回転することで、ロッド35aがケース本体34に対して図示左右方向(軸方向)に伸縮自在に動作するようになっている。また、アクチュエータ30にはブーツ36が取り付けられて、外部からの埃や水などの異物が侵入しないようなっている。
【0031】
また、アクチュエータ30には、ロッド35aの位置(伸縮量)を検出するストロークセンサ38が設けられている。このストロークセンサ38は、例えば、マグネットが内蔵され、磁気を利用して位置を検出できるようになっている。このように、ストロークセンサ38を用いて位置を検出することにより、後輪2Lのトーイン、トーアウトの舵角(トー角)θを個別に高精度に検出できるようになっている。
【0032】
このように構成されたアクチュエータ30は、ロッド35aの先端に設けられたボールジョイント16がトレーリングアーム13の車輪側アーム13b(図3参照)に回動自在に連結され、ケース本体34の基端に設けられたボールジョイント17がクロスメンバ12(図3参照)に回動自在に連結されている。そして、電動機31の動力によってスクリュー軸35dが回転してロッド35aが伸びる(図4の左方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向外側(図3の左方向)に押圧されて、後輪2Lが左方向に旋回し、またロッド35aが縮む(図4の右方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向内側(図3の右方向)に引かれて、後輪2Lが右方向に旋回する。
【0033】
なお、アクチュエータ30のボールジョイント16が取り付けられる場所は、ナックルなど後輪2Lのトー角θを変更できる位置であれば、車輪側アーム13bに限定されるものではない。また、本実施形態においてトー角変更装置120L、120Rはセミトレーリングアーム型独立懸架方式のサスペンションに対して適用した場合の例で示したが、それに限定されるものではなく、他の懸架方式のサスペンションにも適用できる。
【0034】
また、アクチュエータ30には、トー角変更制御ECU37が一体に構成されている。トー角変更制御ECU37は、例えばアクチュエータ30のケース本体34に固定され、ストロークセンサ38とコネクタなどを介して接続されて構成されている。
トー角変更制御ECU37には、車両Vに搭載された図示しないバッテリなどの電源から電力が供給される。また、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23にも前記とは別系統でバッテリなどの電源から電力が供給される(図示せず)。
【0035】
(トー角変更制御ECUの構成)
次に、図5を参照しながらトー角変更制御ECU37の詳細な構成を説明する。図5はトー角変更制御ECUの構成を示すブロック図である。
図5に示すように、トー角変更制御ECU37はアクチュエータ30を駆動制御する機能を有し、制御部81と電動機駆動回路83とで構成されている。また、各トー角変更制御ECU37は、トー角制御ECU130cと通信線を介して接続され、他方のトー角変更制御ECU37とも通信線を介して接続されている。
【0036】
制御部81は、図示しないが、CPU、RAM、ROM、その他の周辺回路などから構成され、目標電流算出部81a、電動機制御信号生成部81c、自己診断部81dを備えている。
目標電流算出部81aは、トー角制御ECU130cが出力する後輪2L(または後輪2R)のトー角θの目標値信号に基づいて目標電流信号を算出し、電動機制御信号生成部81cに出力する。目標電流信号とは、アクチュエータ30(図4参照)を所望の作動量(後輪2L、2Rを所望のトー角θにする伸縮量)に設定するのに必要な電流信号である。
目標電流算出部81aでは、目標電流信号を参照信号として使用し、トー角θの目標値信号とストロークセンサ38から入力される位置情報と参照信号である目標電流信号とに基づいて、目標電流が指示するトー角θに対する偏差から目標電流信号を補正するための補正電流信号を算出する。そして、補正電流信号を目標電流信号に加算して補正し、補正後の目標電流信号を電動機制御信号生成部81cに出力する。
このように目標電流信号を補正することにより、後輪2L(または2R)の転舵に要する電流値が車速、路面環境、車両Vの運動状態、タイヤの磨耗状態などによって変化するのをフィードバックして、目標のトー角θに設定制御することができる。
【0037】
電動機制御信号生成部81cは、目標電流算出部81aから目標電流信号が入力され、電動機駆動回路83に電動機制御信号を出力する。この電動機制御信号は、電動機31に供給する電流値と電流を流す方向を含む信号である。電動機駆動回路83は、FETのブリッジ回路などで構成され、電動機制御信号に基づいて電動機31に電動機電圧を印加する。
【0038】
また、図5に示すように、本実施形態においては、制御部81の自己診断部81dが、ストロークセンサ38からの位置情報や電動機駆動回路83の状態の信号、目標電流算出部81aからの目標電流信号を受信し、また、自分が所属していない他方のトー角変更制御ECU37からの異常検知信号を受信していないかチェックする。つまり、自身のトー角変更制御ECU37に対応する電動機31や電動機駆動回路83が正常に動いているか否かを示す信号を受信して監視しているとともに、他方のトー角変更制御ECU37に対応する電動機31や電動機駆動回路83が正常に動いているか否かを示す信号を監視している。
【0039】
自己診断部81dは、例えば、目標電流信号に対応するトー角θに対して、ストロークセンサ38の示すトー角θが所定値以上離れている状態が所定時間以上継続していることを検知した場合は、目標電流値算出部81aに所定のトー角θ、例えば、0°に対応する目標電流信号を算出させ、目標電流算出部81aに目標トー角0°に対する補正電流を設定させる。そして、自己診断部81dは、自分が属しているトー角変更制御ECU37ではない他方のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dに異常検知信号を送る。
【0040】
このように構成されるトー角変更装置120は、左右の後輪2L、2Rにそれぞれ1ずつ備わり、左右の後輪2L、2Rに、それぞれ異なったトー角θを設定することができる。
【0041】
以上のような構成の車両システム100(図1参照)に備わる操舵制御ECU130(図2参照)は、ナビゲーション装置170(図2参照)が道路検知ECU130d(図2参照)に入力するナビゲーション情報を参照して、車両V(図1参照)が走行している道路の形状や形態を検知し、車両Vの直進走行を支援する。
すなわち操舵制御ECU130は、車両Vの直進走行に対する外乱が発生しやすい属性としてあらかじめ定められている所定の属性(以下、指定属性と称する)を、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130d(図2参照)に入力するナビゲーション情報を参照して取得することで、車両Vが指定属性を有する道路(以下、指定道路と称する)を走行していることを検知する。そして、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU(リアトー角制御装置)130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rをトーインして車両Vの直進性を高めることで、車両Vの直進走行を支援する。
【0042】
このとき、トーインするトー角θは、例えば車速に対応する好適な角度があらかじめ設定され、車速センサSv(図1参照)によって検出される車速に対応して、操舵制御ECU130(図2参照)が演算すればよい。
【0043】
左右の後輪2L、2Rをトーインするとは、左右の後輪2L、2Rのトー角θを大きくすることを意味する。
トー角θが大きくなると車両Vの直進性が向上し、直進走行を支援することができるが、タイヤの磨耗など他の影響が出る場合がある。そこで、本実施形態においては、好適に直進走行を支援でき、タイヤの磨耗など他の影響が少ないトー角θを、例えば車速に対応してあらかじめ設定し、車速に対応したマップ形式のデータとして、例えば操舵制御ECU130に備わる図示しない記憶装置に記憶しておけばよい。
操舵制御ECU130は、車速センサSv(図1参照)によって検出される車速に対応したトー角θを、図示しない記憶装置から読み出すことで演算できる。
または、車速に対応した好適なトー角θを算出する計算式を、操舵制御ECU130を駆動するプログラムに組み込んでおいてもよい。
操舵制御ECU130は、車速センサSvによって検出される車速に基づいて、好適なトー角θを算出することができる。
さらに、操舵制御ECU130に備わる図示しない記憶装置には、指定属性に関する情報があらかじめ記憶されている構成とする。
【0044】
操舵制御ECU130(図2参照)は、ナビゲーション装置170(図2参照)が道路検知ECU130d(図2参照)に入力するナビゲーション情報に含まれる、車両V(図1参照)が走行している道路の属性と、図示しない記憶装置に記憶されている指定属性とを比較し、道路検知ECU130dに入力された属性が指定属性と一致したとき、指定属性を検知したとする。このようにして、車両Vが指定道路を走行していることを検知すると、操舵制御ECU130は、左右のトー角変更装置(RTC)120L、120R(図1参照)に指令を与えて左右の後輪2L、2R(図1参照)をトーインすることで、車両Vの直進走行を支援する。
【0045】
図6は、指定道路における直進走行を支援するステップを示すフローチャートである。以下、図6を参照して、指定道路を走行している車両V(図1参照)の直進走行を、操舵制御ECU130(図2参照)が支援するステップを説明する(適宜、図1〜図5参照)。
【0046】
図6に示すように、操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに、所定のサンプリングタイムで入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vが指定道路を走行していないと判定したら(ステップS1→No)、制御をステップS1に戻す。
【0047】
一方、操舵制御ECU130が、車両Vが指定道路を走行していると判定したら(ステップS1→Yes)、操舵制御ECU130は、車両Vが走行している指定道路が直線か否かを判定し、指定道路が直線でない場合は(ステップS2→No)、制御をステップS1に戻すが、指定道路が直線の場合は(ステップS2→Yes)、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rをトーインする(ステップS3)。
【0048】
そして、車両Vが指定道路を抜けない間は(ステップS4→No)、操舵制御ECU130は、左右の後輪2L、2Rをトーインした状態に維持し、車両Vが指定道路を抜けたと判定したら(ステップS4→Yes)、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rのトーインを解除する(ステップS5)。
なお、後輪2L、2Rのトーインを解除するとは、後輪2L、2Rを通常のトーインに戻すことを意味する。
【0049】
また、車両Vが指定道路を抜ける前であっても、例えば運転者が操向ハンドル3を操作したことを、例えばトルクセンサSが検出する操舵トルクによって、操舵制御ECU130が検知した時点で、左右の後輪2L、2Rのトーインを解除するように構成してもよい。
【0050】
そして操舵制御ECU130は、図6で示されるステップを、例えばナビゲーション装置170がナビゲーション情報を道路検知ECU130dに入力したことをトリガとする割り込み処理などで実行すればよい。又は、特に限定しない所定の周期で、定期的に実行するように構成してもよい。
【0051】
このように、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、操舵制御ECU130が、車両Vが指定道路を走行していることを検知したとき、左右の後輪2L、2Rを通常より大きくトーインさせることで、車両Vの直進性を向上させ、直進走行を支援できるという優れた効果を奏する。
【0052】
さらに、本実施形態において、車両Vの後輪2L、2Rをトーインするのは、車両Vが指定道路を走行しているときに限定されることから、後輪2L、2Rをトーインすることによる、例えばタイヤの磨耗などの影響を最小限に抑えることができる。
【0053】
本実施形態にかかる指定道路は、例えばトンネル出口の近傍や、橋梁の上などが考えられる。以下、トンネル出口の近傍、及び橋梁の上を走行している車両V(図1参照)を具体例にして、直進走行の支援について説明する。
【0054】
(トンネル出口の近傍における走行支援)
トンネルを出た地点に強風が吹いている場合、車両V(図1参照)がトンネル出口を出た時点で受ける強風が直進走行に対する外乱となって、車両Vが左右に振られる場合がある。
そこで本実施形態においては、トンネル出口の近傍を指定属性として、トンネル出口の近傍、すなわちトンネル出口を出た側に敷設される道路を指定道路とする。
【0055】
操舵制御ECU130(図2参照)は、ナビゲーション装置170(図2参照)が、道路検知ECU130d(図2参照)に入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vがトンネル出口の近傍を走行していることを検知する。そして、操舵制御ECU130は、左右の後輪2L、2Rをトーインすることで、車両Vの直進走行を支援する。
【0056】
図7の(a)はトンネルを有する道路を車両が走行している状態を示す図、(b)は、トンネル出口の近傍を走行している車両の直進走行を支援するフローを示すフローチャートである。図7の(a)におけるt〜tは、トンネル20を有する道路10を走行中の車両Vの位置を示している。
【0057】
図7の(a)に示すように、トンネル20を有する道路10は、地図データ170a(図1参照)において、トンネル20直前のリンクl11と、トンネル20のリンクl12と、トンネル20直後のリンクl13と、リンクl13に接続するリンクl14とから構成されているとする。そして、リンクl11とリンクl12はノードn11で接続され、リンクl12とリンクl13はノードn12で接続され、リンクl13とリンクl14はノードn13で接続されている。
そして本実施形態においては、道路10のリンクl13で管理される部分が指定道路20bとなり、リンクl13が有する道路10の属性が指定属性となる。
【0058】
さらに、リンクl12はトンネル20を示す属性を有し、ノードn12はトンネル出口20aを示す属性を有するものとする。
以下、図7の(a)、(b)を参照して、トンネル出口の近傍で車両Vの直進走行を支援するフローを説明する(適宜図1〜図5参照)。
【0059】
操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vがトンネル20を走行しているか否かを判定し(ステップS11)、車両Vがトンネル20を走行していないときは(ステップS11→No)、リンクl11を走行しているとして(t)、制御をステップS11に戻す。
操舵制御ECU130は、ナビゲーション情報に含まれる道路10の属性がリンクl11の属性、すなわちトンネル20を示す属性ではないとき、車両Vがトンネル20を走行していないと判定する。
【0060】
車両Vが進行して、ノードn11を通過してリンクl12を走行しているとき(t)、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報に含まれる道路10の属性は、トンネル20を示す属性になる。
そして、操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vがトンネル20を走行していることを検知し(ステップS11→Yes)、制御をステップS12に進める。
【0061】
さらに車両Vが進行してノードn12を通過するとき(t)、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報には、トンネル出口20aを示す属性がノード情報として含まれる。
したがって、操舵制御ECU130は、ナビゲーション情報にトンネル出口20aを示す属性を有するノード情報が含まれるまではトンネル出口20aを通過しないと判定し(ステップS12→No)、制御をステップS12に戻す。
そして、操舵制御ECU130は、ナビゲーション情報にトンネル出口20aを示す属性を有するノード情報が含まれたことを検知すると、車両Vがトンネル出口20aを通過したと判定する(ステップS12→Yes)。
【0062】
そして操舵制御ECU130が、車両Vがトンネル出口20aを通過したと判定したら、車両Vがリンクl13を走行していると判定し、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、リンクl13が直線か否かを判定する。すなわち、ナビゲーション情報に含まれる道路10の属性によって、リンクl13が直線か否かを判定する。前記のように、リンクl13は指定道路20bであることから、操舵制御ECU130は、指定道路20bが直線か否かを判定する(ステップS13)。
【0063】
指定道路20bが直線でない場合(ステップS13→No)、操舵制御ECU130は制御をステップS11に戻すが、指定道路20bが直線の場合(ステップS13→Yes)、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rをトーインする(ステップS14)。
【0064】
そして、操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vが指定道路20bから抜けたか否かを判定し(ステップS15)、指定道路20bから抜けていない間は(ステップS15→No)、左右の後輪2L、2Rをトーインした状態に維持するが、車両Vが指定道路20bの終点に到達し(t)、操舵制御ECU130が指定道路20bから抜けたと判定したら(ステップS15→Yes)、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rのトーインを解除する(ステップS16)。
なお、後輪2L、2Rのトーインを解除するとは、後輪2L、2Rを通常のトーインに戻すことを意味する。
【0065】
本実施形態における指定道路20bは、図7の(a)に示すようにトンネル出口20aから所定の距離L1の範囲とするが、距離L1はリンクl13と同等の距離としてもよいし、リンクl13と異なる距離としてもよい。
距離L1がリンクl13と同等の距離とした場合、操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vがノードn13を通過したことを検知した時点で(t)、車両Vが指定道路20bから抜けたことを判定する。
【0066】
また、距離L1がリンクl13と異なる距離とした場合、距離L1は、例えばトンネル出口20aから20mなど、あらかじめ設定されている距離であってもよいし、車速に対応して設定される距離であってもよい。
【0067】
指定道路20bの距離L1が車速に対応して設定される場合、例えば高速の場合は距離L1を長くし、低速の場合は距離L1を短くするような構成が考えられる。そして、例えば操舵制御ECU130(図2参照)の図示しない記憶装置に、車速と対応した距離L1をマップ形式のデータとしてあらかじめ記憶しておけばよい。
操舵制御ECU130は、車速センサSv(図1参照)によって検出される車速に対応した距離L1を図示しない記憶装置から読み出すとともに、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報に含まれる、車両Vの位置の情報を参照して車両Vとノードn12(トンネル出口20a)の距離を演算する。そして、車両Vとノードn12との距離が、図示しない記憶装置から読み出した距離L1以上になったときに(t)、操舵制御ECU130は、車両Vが指定道路20bを抜け出たことを判定する構成とすればよい。
【0068】
また、ナビゲーション装置170が、車両Vが通ると予想される道路の属性、すなわち車両Vの進行方向にあるリンク情報及びノード情報を前もって取得する機能を有する場合、ナビゲーション装置170は、車両Vがトンネル出口20aを示すノードn12を通過する前に、ノードn12の情報を取得することができ、道路検知ECU130dに入力できる。
【0069】
この場合、操舵制御ECU130は、車両Vがトンネル出口20aを示すノードn12を通過する前にトンネル出口20aを検知できることから、例えばトンネル出口20aを示すノードn12より、所定の距離L2だけ手前の地点(t3a)を車両Vが通過するときに、左右の後輪2L、2Rをトーインさせる構成としてもよい。
このように構成することで、車両Vがトンネル出口20aを通過する時点(t)で、左右の後輪2L、2Rがトーインしていて直進性が向上していることから、トンネル出口20aを出た瞬間の強風に対しても、直進走行を支援できるという優れた効果を奏する。
【0070】
なお、所定の距離L2は、例えば、トンネル出口20aから20mなど、あらかじめ設定されている距離であってもよいし、車速に対応して設定される距離であってもよい。
【0071】
所定の距離L2が車速に対応して設定される距離の場合、例えば高速の場合は所定の距離L2を長くし、低速の場合は所定の距離L2を短くするような構成が考えられ、例えば操舵制御ECU130の図示しない記憶装置に、車速と対応した所定の距離L2をマップ形式のデータとしてあらかじめ記憶しておけばよい。
操舵制御ECU130は、車速センサSvによって検出される車速に対応した所定の距離を図示しない記憶装置から読み出すとともに、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vとノードn12(トンネル出口20a)との距離を演算して、車両Vとノードn12との距離が図示しない記憶装置から読み出した所定の距離L2以下のときに(t3a)、左右の後輪2L、2Rがトーインするように、トー角制御ECU130cに指令を与えるように構成すればよい。
【0072】
また、トンネル20が複数のリンクで形成される場合、操舵制御ECU130は、トンネル出口20aの直前のリンクを車両Vが走行していることを検知した時点で、左右の後輪2L、2Rがトーインするように、トー角制御ECU130cに指令を与えるように構成してもよい。
【0073】
なお、車両Vがトンネル20を走行するときに、ナビゲーション装置170が衛星からの電波を受信できず、衛星航法(GPS航法)による測位ができない場合、ナビゲーション装置170は、車速センサSvによって検出される車速に基づいてトンネル20内の走行距離を算出し、マップマッピングを行うことにより、つまり自立航法による測位によって、トンネル出口20aまでの距離を算出できる。
【0074】
このように、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、操舵制御ECU130がトンネル出口20aの近傍に備わる指定道路20bを検知したとき、左右の後輪2L、2Rを通常より大きくトーインさせることで、指定道路20bにおける車両Vの直進性を向上させ、直進走行を支援できるという優れた効果を奏する。
【0075】
(橋梁の上における走行支援)
以上、トンネル出口の近傍に敷設された道路を走行している車両の走行支援について説明したが、橋梁の上も横風が吹きやすく、横風が車両の直進走行に対する外乱となる。
【0076】
そこで、本実施形態においては、橋梁を指定属性として、橋梁の上に敷設される道路を指定道路とする。操舵制御ECU130(図2参照)は、ナビゲーション装置170(図2参照)が道路検知ECU130d(図2参照)に入力するナビゲーション情報を参照して橋梁の属性を有する指定道路を検知し、車両V(図1参照)が橋梁を走行していることを検知する。
【0077】
図8の(a)は橋梁を有する道路を車両が走行している状態を示す図、(b)は、橋梁の上を走行している車両の直進走行を支援するフローを示すフローチャートである。図8の(a)におけるb〜bは、車両Vの位置を示している。また、橋梁25の始点25aと終点25bの間が、指定道路25cとなる。
【0078】
図8の(a)に示すように、橋梁25を有する道路10は、地図データ170a(図1参照)において、橋梁25直前のリンクl21と、橋梁25のリンクl22と、橋梁25直後のリンクl23とから構成されるとする。そして、リンクl21とリンクl22はノードn21で接続され、リンクl22とリンクl23はノードn22で接続されている。
そして本実施形態においては、道路10のリンクl22で管理される部分が指定道路25cとなる。
【0079】
さらに、リンクl22は橋梁25を示す属性(指定属性)を有し、ノードn21は橋梁25の始点25aを示す属性を有し、ノードn22は橋梁25の終点25bを示す属性を有する。
以下、図8の(a)、(b)を参照して、橋梁25を走行している車両Vの直進走行を支援するフローを説明する(適宜図1〜図5参照)。
道路10を走行中の車両Vの操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vが橋梁25の始点25aを通過したか否かを判定し、車両Vが橋梁25の始点25aを通過しない間は(ステップS21→No)、車両Vがリンクl21を走行していると判定し(b)、制御をステップS21に戻す。
【0080】
車両Vが進行してノードn21を通過するとき(b)、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報には、橋梁25の始点25aを示す属性がノード情報として含まれる。
したがって、操舵制御ECU130は、ナビゲーション情報に橋梁25の始点25aを示す属性を有するノード情報が含まれたことを検知するまでは、車両Vが橋梁25の始点25aを通過しないと判定し、ナビゲーション情報に橋梁25の始点25aを示す属性を有するノード情報が含まれたことを検知した時点で、車両Vが橋梁25の始点25aを通過したと判定する(ステップS21→Yes)。
【0081】
このように、操舵制御ECU130が、車両Vが橋梁25の始点25aを通過したことを検知すると、操舵制御ECU130は、車両Vがリンクl22を走行していると判定する(b)。前記のように、リンクl22は、指定道路25cであることから、操舵制御ECU130は、車両Vが指定道路25cを走行していると判定することになり、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rをトーインする(ステップS22)。
【0082】
さらに車両Vが進行してノードn22を通過するとき(b)、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報には、橋梁25の終点25bを示す属性がノード情報として含まれる。
したがって、操舵制御ECU130は、ナビゲーション情報に橋梁25の終点25bを示す属性を有するノード情報が含まれたことを検知するまでは、車両Vが橋梁25の終点25bを通過しないと判定し(ステップS23→No)、左右の後輪2L、2Rをトーインした状態に維持する。
【0083】
そして、操舵制御ECU130は、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報に橋梁25の終点25bを示す属性を有するノード情報が含まれていることを検知した時点で、車両Vが橋梁25の終点25bを通過したと判定する(ステップS23→Yes)。
【0084】
操舵制御ECU130は、車両Vが橋梁25の終点25bを通過したことを検知すると、車両Vが指定道路25cから抜けたと判定し、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rのトーインを解除する(ステップS24)。
【0085】
また、ナビゲーション装置170が、車両Vが通ると予想される道路の属性、すなわち車両Vの進行方向にあるリンク情報及びノード情報を前もって取得する機能を有する場合、ナビゲーション装置170は、車両Vが橋梁25の始点25aを示すノードn21を通過する前に、ノードn21の情報を取得することができ、道路検知ECU130dに入力できる。
【0086】
この場合、操舵制御ECU130は、車両Vが橋梁25の始点25aを示すノードn21を通過する前に橋梁25の始点25aを検知できることから、例えば橋梁25の始点25aを示すノードn21より、所定の距離L3だけ手前の地点(b2a)を車両Vが通過するときに、左右の後輪2L、2Rをトーインさせる構成としてもよい。
このように構成することで、車両Vが橋梁25の始点25aを通過する時点(b)で、左右の後輪2L、2Rがトーインしていて直進性が向上していることから、橋梁25に入った瞬間の横風に対しても、直進走行を支援できるという優れた効果を奏する。
【0087】
なお、所定の距離L3は、例えば、橋梁25の始点25aから20mなど、あらかじめ設定されている距離であってもよいし、車速に対応して設定される距離であってもよい。
また、リンクl22の直前のリンクl21の距離を所定の距離L3としてもよい。
【0088】
所定の距離L3が車速に対応して設定される距離の場合、例えば高速の場合は所定の距離L3を長くし、低速の場合は所定の距離L3を短くするような構成が考えられ、例えば操舵制御ECU130の図示しない記憶装置に、車速と対応した所定の距離L3をマップ形式のデータとしてあらかじめ記憶しておけばよい。
操舵制御ECU130は、車速センサSvによって検出される車速に対応した所定の距離を図示しない記憶装置から読み出すとともに、ナビゲーション装置170が道路検知ECU130dに入力するナビゲーション情報を参照して、車両Vとノードn21(橋梁25の始点25a)と距離を演算して、車両Vとノードn21との距離が図示しない記憶装置から読み出した所定の距離L3以下のときに(b2a)、左右の後輪2L、2Rがトーインするように、トー角制御ECU130cに指令を与えるように構成すればよい。
【0089】
このように、橋梁25の上に敷設される指定道路25cを走行している車両Vの後輪2L、2Rをトーインして直進性を向上することで、橋梁25の上に吹く横風に対して車両Vの直進走行を支援することができる。
【0090】
なお、本実施形態においては、トンネル、及び橋梁を指定道路としたが、これは限定されるものではなく、車両の直進走行に対する外乱が発生しやすい、例えば海沿いの道路などに指定道路を設定してもよい。
【0091】
このように、本発明によると、直進走行に対する外乱が発生しやすい直線道路を車両が通行する場合、後輪をトーインさせることで直進性を向上し、直進走行を支援できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両システムを適用した4輪車両の概略図である。
【図2】操舵制御ECUの構成を示すブロック図である。
【図3】左後輪側のトー角変更装置の構成図である。
【図4】トー角変更装置のアクチュエータの構成図である。
【図5】トー角変更制御ECUの構成を示すブロック図である。
【図6】指定道路における直進走行を支援するステップを示すフローチャートである。
【図7】(a)はトンネルを有する道路を車両が走行している状態を示す図、(b)は、トンネル出口の近傍を走行している車両の直進走行を支援するフローを示すフローチャートである。
【図8】(a)は橋梁を有する道路を車両が走行している状態を示す図、(b)は、橋梁の上を走行している車両の直進走行を支援するフローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
10 道路
20 トンネル
20a トンネル出口
20b、25c 指定道路
25 橋梁
37 トー角変更制御ECU
100 車両システム
120(120L、120R) トー角変更装置
130 操舵制御ECU
130c トー角制御ECU(リアトー角制御装置)
170 ナビゲーション装置(道路属性取得手段)
170a 地図データ
V 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備わる後輪のトー角を、左右独立に変更可能なトー角変更装置と、
前記車両が走行している道路の属性を取得する道路属性取得手段と、
前記道路属性取得手段が取得する前記属性が所定の属性である場合に、前記トー角変更装置に指令を与えて、前記後輪をトーインさせるリアトー角制御装置と、
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記所定の属性は、前記車両の直進走行に対する外乱を発生する道路を示す属性を含むことを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記所定の属性は、トンネル出口の近傍に敷設される道路を示す属性であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記所定の属性は、橋梁の上に敷設される道路を示す属性であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記道路属性取得手段は、
道路の属性を情報として含む地図データを備え、
前記車両が走行している位置を検知するとともに、前記車両が走行している前記道路の属性を、前記地図データを参照して取得するナビゲーション装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−126192(P2009−126192A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299769(P2007−299769)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】