説明

超高品質シリコン含有化合物層の形成方法

【課題】ALDがCVDに比べて優れたコンフォーミティ(coformality)、成膜速度及び均一性を備えた気相堆積方法を提供する。
【解決手段】シリコンナイトライド層を含む、超高品質シリコン含有化合物層を形成するため、複数の順次的なステップ140が、反応チャンバー中で実施される。好ましい実施態様において、シリコン前駆物質としてトリシランを用いて、シリコン層が基板上に堆積100される。シリコン前駆物質は、反応チャンバーから除去される110。その後、シリコンナイトライド層が、シリコン層を窒化すること120によって形成される。窒素反応物質は、反応チャンバーから除去される110。これらのステップ100、110、120及び130を繰り返すことによって、所望の厚さのシリコンナイトライド層が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に集積回路製造の間にシリコン含有層を形成すること、ならびに、より詳しくは、均一なシリコン化合物層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電子デバイスの寸法が小さくなるにつれ、厚さの均一性、組成及びカバレージを含む、堆積された層の物理的特性が、より重要になってきている。これは、特に、集積回路の導体素子を分離するための誘電体(dielectrics)又は絶縁体として作用し得る、シリコン化合物の層又は膜にあてはまる。例えば、シリコンナイトライド材料は、トランジスタゲート誘電体(gate dielectrics)、金属レベル(metal level)間の絶縁体、酸化及び他の拡散防止用バリア、ハードマスク(hard mask)、パシベーション層(passivation layer)、トランジスタにおけるスペーサー材料、反射防止コーティング材料、不揮発性メモリにおける層等として、半導体産業において、広く使用されている。シリコンオキサイド及びシリコンカーバイド材料は、集積回路製造において、同様に普及している。
【0003】
現在、化学気相成長法(CVD)は、基板上に薄層を堆積させるために最も一般的に使用されるプロセスである。このプロセスにより、最終的に堆積層を形成する分子又は原子の前駆物質(precursor)は、分子前駆物質として反応チャンバー内に同時に供給される。基板は、所望の原子又は分子種の層が基板上に堆積するように、分子前駆物質間の化学反応を促進するために最適な温度に維持される。従来のCVDによるシリコン含有薄層の形成のための最も一般的な分子前駆物質は、シランである。
【0004】
CVDは、比較的均一な厚さで層を堆積するという優れた能力を有することを示した。加えて、それは、比較的コンフォーマル層(conformal layer)、すなわち、堆積される表面の形状を厳密に複製する層を生み出す。しかしながら、デバイス密度が増加し続け、幾何学的形状(geometries)がより複雑になり続けるにつれ、堆積プロセスは、さらに、なお均一かつコンフォーマル層の必要性を満たすために改良されてきた。
【0005】
これらの理由のため、原子層堆積(ALD)は、半導体製造において、より重要になってきた。ALDは、主として、各サイクルが薄層を堆積する、多重堆積サイクル(multiple deposision cycle)を包含する。ALDは、各サイクルの間、単一のモノレイヤー(monolayer)以下を堆積することによって、完全にコンフォーマルかつ均一な層を堆積することを追求する。一般的に、これは、自己終結前駆物質分子の使用ならびに前駆物質の凝縮(condensation)及び熱分解を抑制するために条件を最適化することによって達成される。例えば、チタン化合物の層を堆積するため、TiCl等のチタン前駆物質分子が使用され得る。TiClにより、基板の表面にチタン原子が付着する一方、塩素原子は、基板表面の反対側のチタン原子側上の吸着層(adsorbed layer)を終結する(terminate)。その結果、基板表面が、ひとたびチタン分子のモノレイヤーによって被覆されれば、チタン層の表面(top of titaium layer)は、比較的不活性で、自己終結するための吸着プロセスを生じる塩素原子を含むことになる。
【0006】
CVDに比べ、化合物層、すなわち2以上の元素(element)を含む層を生じるために使用されるALD分子前駆物質は、一般的に、別々のパルスにおいてALD反応器中に導入される。例えば、最初の前駆物質は、さらなる吸着を抑制する吸着された種のリガンドと共に、自己制限的に(self−limitingly)最初のパルスにおいて基板上に吸着する。前駆物質の導入の間、反応チャンバーは、異なる前駆物質間の気相反応を抑制するために、排気又は不活性ガスでパージされる(purged)。第1前駆物質のパージの後、第2前駆物質が、(例えば、リガンドを奪うか又はリガンドを置換するため)第1前駆物質の導入によって堆積された層と反応させるために、反応チャンバー中に導入され得る。この方法において、1つのサイクルが完了し、1つの薄い化合物層が基板上に堆積される。第2前駆物質との反応の後、第2前駆物質(及びあらゆる副生成物)は、排気又は不活性ガスパージによって除去され得る。これらの前駆物質に加え、他の反応物質も、各サイクルの間、反応チャンバー中に送り込まれ(pulse into)得る。サイクルは、その後、所望の厚さの化合物層に達するまで、繰り返され得る。
【0007】
ALDがCVDに比べて優れたコンフォーミティ(coformality)及び均一性を付与する一方、ALDは、速度に関しては比較的不十分である。なぜなら、所望の厚さの層は、理論上は、一度に(実際には、立体障害の結果としての反応部位のブロックにより、1分子未満のモノレイヤーが一般的である)1分子のモノレイヤーを形成しなくてはならず、また、各モノレイヤーを形成するために、多数のステップを採用しなくてはならないことから、ALDは、CVDが行うよりもより遅く、既定の厚さを有する層を形成する。その結果、コンフォーミティ及び均一性が増加する一方、ALDは、CVDと比較して処理量の減少という欠点を有する。
【0008】
それにもかかわらず、高いコンフォーミティ及び均一性は、重要事項であり、これは現在、半導体製造が、何千、何百万のデバイスを同時に直径200ミリメートル(mm)の基板上に製造するプロセスの間、シリコン含有化合物膜を堆積することを包含するからである。さらに、この産業が300mmウェハに移行し(transitioning)、そして、将来的にはさらに大きなウェハを使用し得る。加えて、さらに大きな基板は、フラットパネルディスプレイ等の形態で、ますます一般的になってきている。製造プロセス中のシリコン含有化合物膜の厚さ及び/又は組成における顕著な変化は、影響を受けたデバイスが要求される性能仕様を満たさない場合、より低い生産収率を導く可能性がある。同様に、特定のデバイス内のフィルムにわたる変化は、デバイス性能及び/又は信頼性を減少する可能性がある。従って、多数の回路上のマイクロ電子デバイスの製造に適合するために基板サイズが増加するにつれ、従来のCVDプロセスの欠点によって生み出される問題も増大する。
【0009】
その結果、高い処理能力、マイクロ電子デバイスにおける回路のサイズを減少すること及び基板の表面積を増加することに対する絶え間ない必要性のため、高い処理能力をも可能にする一方、シリコン化合物のより均一かつコンフォーマル層を形成する方法が、引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの側面によれば、集積回路におけるシリコン含有化合物層を形成するための複数のサイクルを含む方法が提供される。各サイクルは、トリシランに基板を暴露することによってプロセスチャンバーにおいて基板上にシリコン層を堆積することを含む。トリシランは、その後、プロセスチャンバーから実質的に除去される。該シリコン層は、シリコン含有化合物層を形成するために、反応種に暴露される。該反応種は、実質的にプロセスチャンバーから除去される。
【0011】
本発明の他の側面によれば、絶縁フィルムの形成するための方法が提供される。この方法は、反応チャンバー内に基板を装填(loading)することを含む。シリコンフィルムは、基板をシリコン供給源に暴露することによって形成される。基板を装填した後、第1のシリコン膜を基板上に形成するためのシリコン供給源は、ポリシランである。該シリコン供給源は、その後、実質的に反応チャンバーから除去される。該シリコン膜は、シリコンナイトライド膜を形成するために窒素源に暴露され、その後、該窒素源は、実質的に反応チャンバーから除去される。
【0012】
さらに、本発明の他の側面によれば、集積回路用の、絶縁シリコン化合物の層を形成するための方法が提供される。該層は、所望の厚さを有し、反応チャンバー内で複数の化学気相成長サイクルを行うことによって形成される。各サイクルは、まず、シリコン供給源に基板を暴露することによって、基板上にシリコン層を堆積することを含む。この堆積されたシリコン層は、およそ3Å〜25Åの厚さのシリコン層を有する。次に、該シリコン層は、部分的に絶縁シリコン化合物の層を形成するために反応される。該シリコン層を反応させるためのプロセス温度は、およそ650℃未満である。
【0013】
本発明の他の側面によれば、シリコンナイトライド層を基板上に形成するためのプロセス(process)を提供する。該プロセスは、結晶シリコン表面を有する基板を、単一基板層流反応チャンバー(single substrate laminar flow reaction chamber)内に装填することを含む。シリコン層は、その後、ポリシランを含むシリコン供給源を分解することによって、結晶シリコン表面上に形成される。
【0014】
シリコン層の形成後、窒素供給源をプロセスチャンバー内に流入させることによって、該シリコン層は、窒化されてシリコンナイトライド層を形成する。その後、シリコン層の形成及びシリコン層の窒化を、結果として、約3Å〜1000Åの厚さのシリコンナイトライド層になるまで、繰り返す。
【0015】
さらに本発明の他の側面によれば、シリコンナイトライド膜を形成するための方法を提供する。該方法は、単一基板層流反応チャンバー内に基板を装填し、該基板上にシリコン層を化学気相成長することを含む。堆積されたシリコン層は、およそ5%以下の厚さ不均一性を有し、基板全体を覆う(over)シリコン層の上面の高さが、およその窒化飽和深度(nitridation saturation depth)よりも大きい。その後、該シリコン層は、窒化される。
【0016】
本発明の他の側面によれば、集積回路が提供される。該集積回路は、基板を覆うシリコン化合物の絶縁層を含む。該絶縁層は、およそ10パーセント以下の厚さ不均一性及びおよそ2原子パーセント未満の水素濃度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様で使用される、典型的な単一基板反応チャンバーの概略断面図である;
【図2】図2は、本発明の好ましい実施態様による、典型的な反応物質及び不活性ガス供給源を図示するガスフローの概略図である;
【図3】図3は、主に、本発明の好ましい実施態様による、シリコン含有化合物層を形成するためのステップを示す、フローチャートである;
【図4A】図4Aは、本発明の好ましい実施態様による、シリコン含有化合物層の形成前の基板を図示する;
【図4B】図4Bは、本発明の好ましい実施態様による、シリコン層の形成後の図4Aの基板を図示する;
【図4C】図4Cは、本発明の好ましい実施態様による、図4Bのシリコン層と反応種との反応後に形成されるシリコン含有化合物層を図示する;
【図4D】図4Dは、本発明の好ましい実施態様による、図4Cのシリコン含有化合物層上に形成されたシリコン層を示す;
【図4E】図4Eは、本発明の好ましい実施態様による、図4Dのシリコン層と反応種との反応後に形成されるシリコン含有化合物層を図示する;
【図5】図5は、本発明の好ましい実施態様による、シリコンナイトライド誘電層(dielectric layer)を形成するためのステップを示すフローチャートである;
【図6A】図6Aは、本発明の好ましい実施態様による、ウェハクリーニング後の基板を図示する;
【図6B】図6Bは、本発明の好ましい実施態様による、シリコンオキサイド層の形成後の図6Aの基板を図示する;
【図6C】図6Cは、本発明の好ましい実施態様による、図6Bのシリコンオキサイド層上に形成されたシリコンナイトライド層を図示する;
【図6D】図6Dは、本発明の好ましい実施態様による、図6Cのシリコンナイトライド層上の、次のシリコンナイトライド層の形成によって、より厚くされた図6Cのシリコンナイトライド層を図示する;
【図6E】図6Eは、図6Dのシリコンナイトライド層が本発明の好ましい実施態様により好ましい厚さに形成された後に形成されたゲート電極を図示する;
【図7】図7は、主に、本発明の好ましい実施態様による、シリコン含有化合物層の形成のためのステップを示す他のフローチャートである;
【図8】図8は、本発明の好ましい実施態様により形成されたシリコンナイトライド膜の横断面を示す透過型電子顕微鏡写真の複製である;
【図9】図9は、本発明の好ましい実施態様により形成されたシリコンナイトライド膜に対するRBSスペクトルを示す;
【図10】図10は、本発明の好ましい実施態様により形成されたシリコンナイトライド膜に対するRBS ERDスペクトルを示す;ならびに
【図11】図11は、本発明の好ましい実施態様により形成されたシリコンナイトライド膜に対するリーク電流(leakage current)データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましい実施形態の詳細な説明
好ましい反応器
好ましい実施態様は、単一基板、水平流コールドウォール反応器(horizontal flow cold−wall reactor)のコンテクストにおいて示されるが、本発明の特定の側面は、当該技術分野において公知の様々なタイプの反応器への適用を有し、本発明はそのような反応器に限定されないことが理解される。例えば、バッチリアクター(batch reactors)が使用され得、複数のウェハを同時に処理する能力によって、向上した処理能力を有利に可能なものとする。好適なバッチリアクターは、オランダのASM International,N.V.から、商品名A412TMの下で商業的に入手できる。
【0019】
それにもかかわらず、単一基板、水平流コールドウォール反応器の使用は、特に好都合である。例えば、示されるシングルパス水平流(single−pass horizontal flow)デザインは、反応物質どうし及びチャンバー表面との相互作用を最小限に抑える一方、特に、下記の循環する堆積プロセスにおいて、順に、迅速で順次的な処理を容易にする、低い滞留時間の、反応物質ガスの層流を可能にする。そのような層流は、互いに反応し得る反応物質を順次的に流入することを可能にする。回避される反応は、酸素及び水素含有反応物質によって生じるような、高い発熱性及び爆発性の反応、ならびにチャンバーの粒子汚染を生じる反応を含む。しかしながら、当業者は、特定の順次的プロセスに対して、他の反応器デザインもこれらの結果を達成するために提供され得、不適合な反応物質を除去することを可能にするのに十分なパージ又は排気時間が提供されることを認識するであろう。
【0020】
図1は、好ましい実施態様によって構築された、クォーツプロセス(quartz process)又は反応チャンバー12を含む、化学気相成長法(CVD)反応器10を示し、ここに開示される方法は、それに対して特有の実用性を有する。反応器10の優れた処理コントロールは、多数の異なる材料のCVDにおける有用性を有し、同じチャンバー12において順次的に複数の処理ステップを安全かつクリーンに達成し得る。反応器10の基本的な構成は、アリゾナ州フェニックスのASM America Inc.から商品名EpsilonTMの下で商業的に入手することができる。
【0021】
複数の放射熱源は、相当な量の吸収を伴うことなく、チャンバー12において熱エネルギーを提供するために、チャンバー12の外側で、クオーツチャンバー(quartz chamber)12ウォールによって支持される。図示される放射熱源は、伸長された管状の放射熱エレメント13(radiant heating element 13)の上部加熱アセンブリ(upper heating assembly)を備える。上部加熱エレメント13は、好ましくは、空間を空けて平行関係に配置され、また、実質的に下にある反応チャンバー12を通る反応物質ガス流路(reactant gas flow path)とも平行に配置される。下部加熱アセンブリ(lower heating assembly)は、反応チャンバー12の下の同様に伸長された管状放射熱エレンメント14を含み、好ましくは、上部加熱エレメント13を横断して位置される。望ましくは、放射熱の一部は、それぞれ上部及び下部ランプ13及び14の上及び下の粗い鏡面リフレクタプレートによって、チャンバー12中に広く反射される。加えて、複数のスポットランプ15は、反応チャンバー12の底部を通じるコールドサポート構造によって生み出されるヒートシンク効果を妨げるために、基板支持構造(後述)の底面に対して濃縮された熱(concetrrated heat)を供給する。
【0022】
各伸長された管状加熱エレメント13、14は、好ましくは、ヨウ素等のハロゲンガスを含む透明なクォーツエンベロープ(quartz envelope)を有する高輝度タングステンフィラメントランプである。そのようなランプは、相当量の吸収を伴うことなく、反応チャンバー12の壁を通して伝えられる広範囲の放射熱エネルギーを生じる。半導体処理装置の技術分野において公知であるように、様々なランプ13、14、15のパワーは、独立に又はグループ化した領域において、温度センサーに応じて制御され得る。しかしながら、当業者は、ここに記載されるプロセスの原理及び利点が、他の加熱及び温度制御システムによって達成され得ることを理解するであろう。
【0023】
基板は(好ましくは、シリコンウェハ16を含む)、基板支持構造18上の反応チャンバー12内で支持されることが示される。ここで留意すべきは、図に示される実施態様の基板は単結晶シリコンウェハであるが、用語“基板”は、層が堆積されるあらゆる表面を広く言及するものと理解されるであろう。さらに、薄い、均一な層は、しばしば、ガラス又は他の基板上の光学的な(optical)薄膜の堆積を含む(ただし、これに限定されない)他の基板について要求される。
【0024】
図に示された支持構造18は、ウェハ16が置かれ、支持スパイダー22によって順に支持される、基板ホルダー20を含む。スパイダー22は、チャンバーの下部壁に垂れ下がるチューブ26の下方に延びるシャフト24に取り付けられる。好ましくは、チューブ26は、処理の間に流れ得るパージ又はスウィープ(sweep)ガスを供給源に通じ、プロセスガス(process gas)がチャンバー12の下部セクションへと逃げていくのを防ぐ。
【0025】
複数の温度センサーは、ウェハ16に接近して位置する。温度センサーは、光高温計又はサーモカップル等の、あらゆる様々な形態を取ることができる。温度センサーの数及び位置は、以下に記載される好ましい温度コントローラーを考慮して理解されるように、温度均一性を促進するために選択される。図に示される反応(reaction)10において、温度センサーは、直接又は間接に、ウェハに近接する位置の温度を感知する。
【0026】
示される実施態様において、温度センサーは、あらゆる好適な様式でウェハホルダー20の下に吊された、第1又は中心サーモカップル28を含む、サーモカップルを備える。示された中心サーモカップル28は、ウェハホルダー20に近接するスパイダー22を通る。さらに、反応器10は、同様にウェハ16に近接する複数の第2又は周辺(peripheral)サーモカップルを含み、前縁(leading edge)又は前方(front)サーモカップル29、後縁又は後方サーモカップル30及び側方サーモカップル(示さない)を含む。各周辺サーモカップルは、基板ホルダー20及びウェハ16を取り囲む、スリップリング(slip ring)32内に納められる。各中心及び周辺サーモカップルは、様々な加熱エレメント13、14、15のパワーを、サーモカップルの読みに応じて設定する、温度コントローラーに接続される。
【0027】
周辺サーモカップルを納めることに加え、スリップリング32は、ウェハエッジでのより大きな熱の損失又は吸収への傾向(そのようなエッジの近くの領域における容積に対する表面積のより大きな比によって生じることが知られている現象)を補償するように、高温加工中の放射熱を吸収及び放射する。エッジ損失を最小化することによって、スリップリング32は、ウェハ16を横断する放射熱不均一性のリスクを減少し得る。スリップリング32は、あらゆる好適な手段で吊され得る。例えば、図に示されるスリップリング32は、前方チャンバーディバイダ(front chamber divider)36及び後方チャンバーディバイダ(rear chamber divider)38に従属するエルボー(elbow)34上に位置する。ディバイダ36、38は、望ましくはクウォーツで形成される。いくつかのアレンジメントにおいて、後方ディバイダ38は省略され得る。
【0028】
図に示された反応チャンバー12は、反応物質及びキャリアガスの注入用のインレットポート(inlet port)40を含み、また、ウェハ16もそれを通して受け取られ得る。アウトレットポート(outlet port)42は、インレット40及びアウトレット42間に位置されるウェハ支持構造18と共に、チャンバー12の反対側に存在する。
【0029】
インレットコンポーネント50は、反応チャンバー12にフィットされ、インレットポート40を囲むように適応され、そしてウェハ16が挿入され得る、水平に伸長されたスロット52を含む。一般的に、垂直インレット54は、図2に関してより完全に記載される、離れた供給源からガスを受け取り、そのようなガスをスロット52及びインレットポート40に通じる。インレット54は、U.S.Patent No.5,221,556(Hawkins et al.により発行)又は1996年4月25日に出願された、U.S.Patent Application No.08/637,616の図21〜26に関して記載され(これらの開示がここに参考として援用される)、ガスインジェクターを含み得る。そのようなインジェクターは、単一ウェハ反応器に対するガスフローの均一性を最大にするようにデザインされる。
【0030】
同様に、アウトレットコンポーネント56は、排気口58がアウトレットポート42と整列され、排気導管59に導くように、プロセスチャンバー12に取り付ける。チャンバー12を通してプロセスガスを取り出すために、導管59を、今度は、好適な減圧手段(記載せず)に通じることができる。好ましい実施態様において、プロセスガスは、反応チャンバー12及び下流スクラバー(downstream scrubber)88を通して取り出される(図2)。ポンプ又はファンが、好ましくは、チャンバー12を通るプロセスガスの取り出しにおいて補助するため及び低圧加工用のチャンバーを排気するために含まれる。
【0031】
また、好ましい反応器10は、好ましくは、チャンバー10から上流に位置された励起種の供給源60も含む。図示された実施態様の励起種供給源60は、ガスライン62に沿うマグネトロン発電機及びアプリケーターを含む、リモートプラズマ発生器(remote plasma generator)を含む。典型的なリモートプラズマ発生器は、ドイツ、ミュンヘンのRapid Reactive Radicals Technology(R3T)GmbHから商品名TRW−850の下で商業的に入手可能である。図に示される実施態様において、マグネトロンからのマイクロ波エネルギーは、ガスライン62に沿ったアプリケーターにおいて流れるガスに連結される(coupled)。前駆体ガスの供給源63は、励起種発生器60に導入するために、ガスライン62に連結される。図に示される実施態様は、前駆物質ガスとしてNを採用する。キャリアガス64の別々の供給源も、ガスライン62に連結され得、実施態様においては窒素源として窒素ガスを採用しているが、別々のキャリアガスは省略され得る。1以上のさらなる分岐ライン65も、追加の反応物質用に提供され得る。各ガスラインは、発生器60に導入され、そこから反応チャンバー12へと導入されるキャリア及び反応種の相対量の選択を可能にするため、示されるように、別々のマスフローコントローラ(MFC)及びバルブを備え得る。
【0032】
ウェハを、好ましくは、周囲の環境から隔離されたハンドリングチャンバー(handling chamber)(示さず)から、ピックアップデバイスによってスロット52を通す。ハンドリングチャンバー及びプロセスチャンバー12は、好ましくは、垂直アクチュエータを有するスリットバルブ又はU.S.Patent No.4,828,224に開示されるタイプのバルブ等のゲートバルブ(記載していない)によって分離される。
【0033】
200mmのウェハを加工するためにデザインされた単一ウェハプロセスチャンバー12のトータル容積キャパシティは、例えば、好ましくは、およそ30リットル未満、より好ましくはおよそ20リットル未満、さらに好ましくはおよそ10未満である。図に示されるチャンバー12は、およそ7.5リットルの最大容積(capacity)を有する。しかしながら、図に示されるチャンバー12は、ディバイダ32、38、ウェハホルダー20、リング32及びチューブ26から流れるパージガスによって分割されるため、それを通るプロセスガスの有効容積は、総容積のおよそ半分である(図に示される実施態様においておよそ3.77リットル)。もちろん、チャンバー12が適合するようにデザインされたウェハのサイズによって、単一ウェハプロセスチャンバー12の容積は異なると理解される。例えば、図に示されたタイプの単一ウェハプロセスチャンバー12は、300mmウェハ用であるが、好ましくはおよそ100リットル未満、より好ましくはおよそ60リットル未満、さらに好ましくはおよそ30リットル未満の最大容積を有する。1つの300mmウェハプロセスチャンバーは、およそ24リットルの総容積を有し、およそ11.83リットルの有効加工ガス最大容積を有する。そのようなチャンバーの比較的小さな容積は、望ましくは、下記の循環するプロセスの相(phases)間の迅速なチャンバーの排気又はパージを可能にする。
【0034】
図2は、好ましい実施態様によるガスラインの概略図を示す。反応器10には、好ましいシリコン供給源ガス又は前駆物質として、トリシランの液体反応物質供給源74が提供される。液相反応物質74を泡立たせるため及び気相反応物質をバブラー(bubbler)から反応チャンバー12へ運ぶための、ガス(好ましくはH)を含む不活性ガス供給源75も、示される。バブラーは、シリコン供給源として液体トリシラン74を保持する一方、ガスラインは、液体シリコン供給源を通して不活性ガスを泡立たせ、前駆物質を気体の形態で反応チャンバー12へと輸送する。
【0035】
同様に図2に示されるように、反応器10は、さらに、水素ガス(H)の供給源72を含む。当該技術分野において周知の通り、水素は、その低い沸点によってきわめて高い純度で提供され得ることから、水素は有用なキャリアガス及びパージガスであり、シリコン堆積に適している。
【0036】
また、好ましい反応器10も、窒素ガス(N)の供給源73を含む。当該技術分野において周知の通り、Nは、しばしば、半導体製造において、Hのかわりにキャリア又はパージガスとして採用される。窒素ガスは比較的不活性であり、多くの集積材料(integrated materials)及びプロセスフローに適している。他の可能性のあるキャリアガスは、ヘリウム(He)又はアルゴン(Ar)等の、希ガスを含む。
【0037】
加えて、2原子窒素(N)等の、他の窒素供給源63は、チャンバー12中における堆積されたシリコン層との反応のための活性種を提供するために、リモートプラズマ発生器60に、提供され得る。追加として又はそのかわりに、アンモニア(NH)供給源84が、熱窒化のための揮発性窒素供給源としてはたらくために、提供され得る。さらに、当該技術分野において公知の通り、他のあらゆる好適な窒素供給源を採用することができ、直接又はリモートプラズマ発生器60を通して、チャンバー12中に流入させることが可能である。他のアレンジメントにおいて、ガス供給源63は、シリコン含有化合物層を形成するため、他の反応物質ラジカルの供給源(例えば、O、C、Ge、金属等)を含むことができる。
【0038】
また、反応器10にも、酸化剤又はオキシダントの供給源70を備え得る。オキシダント供給源70は、あらゆる数々の公知のオキシダント、特に、O、NO、HO、NO、HCOOH、HClO等の揮発性オキシダントを含み得る。
【0039】
望ましくは、反応器10は、ドーパント供給源(例えば、図に示されるホスフィン76、アルシン78及びジボラン80供給源)、ならびに反応器の壁及び他の内部構成部品をクリーニングするためのエッチャント(例えば、励起種発生器60を通して提供されるHCl供給源82又はNF/Cl(記載していない))等の他の供給源ガスをも含む。下記に議論されるように、ポリシランを用いて最初のシリコン層が堆積された後のシリコン層の堆積のため、シランの供給源86も同様に提供され得る。
【0040】
各ガス供給源は、ガスパネルにて調整されたマスフローコントローラ(“MFCs”)と同様に、安全及び制御バルブ(attendant safety and control valves)を有するガスラインを介して、インレット54(図1)に接続され得る。プロセスガスは、中央コントローラー中にプログラムされ、インジェクターを通してプロセスチャンバー12に分布された方向に従って、インレット54(図1)に通じる。プロセスチャンバー12を通った後、未反応プロセスガス及び気体の反応副生成物は、大気中に排気する前に、環境的に危険な蒸気を濃縮するために、スクラバー88に排気される。
【0041】
上述の通り、従来のガス供給源に加え、好ましい反応器10は、反応チャンバー12から離れて又はその上流に位置される、励起種供給源60を含む。図に示される供給源60は、ガスが反応物質供給源63由来の反応前駆物質(reactant precursors)を取り込む(include)、アプリケーター中に流入するガスにマイクロ波エネルギーを結合する(couple)。プラズマはアプリケーター内で発火し、励起種は、チャンバー12へと運ばれる。好ましくは、供給源60によって生じた励起種の過剰に反応性のイオン種は、実質的に、チャンバー12に入る前に、再結合する。一方、Nラジカルは、チャンバー12に入るように生存することが可能であり、適当なように反応する。
【0042】
加えて、プラズマを、反応チャンバーにおいて、in situで発生させることができる。しかしながら、そのようなin situプラズマは、一部の堆積層に損傷、均一性及び粗度の問題の原因となる可能性がある。その結果、プラズマが使用されるところでは、一般的に、遠く離れて発生されたプラズマが好ましい。
【0043】
トリシラン
マイクロ電子デバイスの製造は、シリコン含有化合物膜を堆積するために、CVDプロセスにおいてシラン(SiH)を長く使用してきた。それにもかかわらず、以下に議論されるように、多数の欠点を有することが見出された。
【0044】
製造の文脈において、十分に制御されかつ再現可能な堆積プロセスは、デバイス収率および生産速度を最大化するために高度に所望されることが理解される。さらに、一般的に、堆積膜は、厚みおよび元素組成の両方においてできるだけ均一であることが望ましい。しかし、シランを使用する既存のプロセスは、シランの制限に起因して、種々の程度に非均一である膜を製造する傾向がある。
【0045】
劇的な温度バリエーションは、加熱および温度制御システムにおける制限に起因して、CVDによって基板表面に堆積される膜の非均一性において重要な役割を果たす。基板の表面温度は、得られた膜の堆積速度および組成に影響することが見出された。従って、基板の表面全体にわたる温度バリエーションは、堆積速度におけるバリエーションを引き起こし、これは、次いで、堆積した膜における厚みのバリエーションを引き起こし得る。
【0046】
これらの温度バリエーションは、いくつかの因子に起因し得る。例えば、温度は、堆積が進行するにつれて変化し得る。なぜなら、温度制御は、しばしば、基板の暴露された表面に依存するからである。また、単一のウェハ、水平ガスフローリアクター中のSiCコーティング黒鉛成分(例えば、予め加熱したリングおよびサセプタ(susceptor))の温度バリエーションは、温度および膜の非均一性に貢献し得る。さらに、他のプロセスパラメーターの不完全な制御(ガスフロー速度および全圧を含む)はまた、膜の物理的特性における非均一性に貢献すると考えられる。
【0047】
これらのプロセスにおけるバリエーションは変化し得るので、基板上の位置の関数として、任意の特定の瞬間に堆積速度が変化し、基板の表面全体にわたって堆積する膜における厚みのバリエーションを得る。同様に、時間において任意の特定の瞬間に堆積する膜の組成は、多成分膜についての基板の表面全体にわたって場所毎に変化する。理論に制限されることなく、このようなバリエーションは、多成分膜の元素成分の各々を導入するために使用される前駆体間に存在する解離吸収活性化エネルギー(dissociative absorption activation energy)における差異の直接的な結果であり得る。すなわち、化合物を形成する際に使用される異なる前駆体は、異なる速度で堆積し得、そして、温度バリエーションに対して異なる感受性を有する堆積速度を有し得る。結果として、以下に議論される平均化(averaging−out)/調整(tuning)アプローチは、組成の非均一性の問題を必ずしも解決しない。
【0048】
厚みおよび組成の非均一性に関する問題は、いくつかの実用的な問題を引き起こし得る。製造プロセスの間のシリコン含有化合物膜の厚みおよび/または組成における有意なバリエーションは、影響されるデバイスが要求される仕様または基準を満たさない場合、製造収率の低下を導き得る。また、特定のデバイス内の膜全体にわたるバリエーションは、デバイス性能および/または信頼性を減少させ得る。多数の場合において、これらの問題は悪化する。なぜなら、製造は、直径が200ミリメートル(mm)であるウェハ上に同時に何千または何百万ものデバイスを製造するプロセスの間に、シリコン含有化合物膜を堆積することを包含するからである。工業は、現在300mmウェハに変化し、そして将来より大きいウェハでさえ使用し得る。
【0049】
厚みの非均一性を和らげる1つの技術は、反応条件が実験的に調整された後、比較的厚い膜を堆積することである。このアプローチは、厚みの非均一性が、任意の特定の層の堆積時間にわたり平均化する傾向があるという事実による。加熱ランプの温度および配置、ガスフロー速度、ガス圧、ガス組成等のような変化し得るリアクタープロセス変数は、ウェハ支持体を回転させて、特に、単一のウェハシステム中において、全体の膜の厚みを平均化するために調整され得る。
【0050】
調整は、各々、異なる予め選択されたセットの堆積条件下で、大多数の膜を堆積することを含む。次いで、各膜内の厚みのバリエーションは、測定され、そして厚みのバリエーションを減少または除去する条件を同定するために結果を分析する。所望でないことには、この反復プロセスを実施するために必要な時間および試験ウェハに起因して、多大な費用がかかる。
【0051】
さらに、調整は、堆積プロセス中で基板全体にわたり均一な温度を生成することを必ずしも必要としない。むしろ、調整プロセスの結果は、特定の反応温度「設定ポイント」(すなわち、反応チャンバー装置が設定される基板温度)についての温度バリエーションによって生成される厚みのバリエーションを時間平均化(time−average)することである。しかし、特定の設定ポイントにおいて、基板の表面全体にわたる温度は、依然として変動し得る。
【0052】
次いで、これは、組成のバリエーションの問題を提起する。なぜなら、組成の均一性は3次元で所望される(膜表面全体と膜の厚みの両方)。例えば、多数の膜は、ドーパントを含み、そしてこれらのドーパントのレベルは、膜の電子特性に影響する。非均一な温度は、膜へのドーパントまたは他の反応物の非均一な導入を生じ得る。
【0053】
堆積の非均一性の問題は、非常に薄いシリコン含有化合物膜を堆積する際に、特に激しい。薄膜を製造するための能力は、回路の寸法が減縮し、得られたデバイスがよりコンパクトになるので、より重要となっている。しかし、上に記載される平均化/調整アプローチは、ますます不適切となっている。なぜなら、薄膜についての堆積プロセスが、一般的に、厚い膜についてよりも短く、膜の厚みを平均化する時間がより少ないからである。さらに、高度にコンパクトなデバイスは、組成の非均一性(平均化/リアクター調整によって適切に取り組まれていない問題)により感受性である。
【0054】
変化し得るプロセス条件によって導入される複雑性に加えて、薄膜における膜均一性はまた、核形成現象によって影響される。核形成は完全に理解されていないが、シランを用いるCVDによる堆積は、多数の別々のシリコンアイランドが基板の表面に最初に形成するプロセスによって生じることが観察されている。堆積が進行するにつれて、これらのアイランドは、お互いに接触するまで成長する傾向があり、最終的に、連続的なシリコン膜を形成する。この時点において、シリコン膜は、代表的に、最初の核形成部位に対応するピークおよび核形成部位間の領域に対応する谷を有する粗い表面を有する。堆積がさらに進み、膜が厚化するにつれて、厚みの均一性は、上に記載されるのと類似のプロセスを平均化することによって増加する。
【0055】
しかし、薄い連続的なシリコン含有化合物膜は、一般的に、既存のシラン堆積プロセスによって調製するのが非常に困難である。なぜなら、膜は、アイランドが成長して一緒になって連続膜を形成する前に、アイランドのピーク近くの領域で所望の厚みを達成し得るからである。これらの問題は、より薄い膜について、そしてアモルファス膜における原子の表面移動によって、悪化する。連続性の問題は、代表的に、約200Å以下の厚みを有する膜を堆積するためにシランを使用する場合に観察され、そして約100Å未満の厚みを有する膜について、より多く観察される。これらの問題はまた、膜の表面積が増加するにつれて悪化する。重大な困難性は、しばしば、約1平方ミクロン以上の表面積を有する非常に薄い膜について遭遇し、約5平方ミクロン以上の表面積を有する非常に薄い膜について、より多く遭遇する。基板の性質はまた、表面が核形成および成長に影響する程度にシラン堆積を複雑化し得る。従って、例えば、シランを使用する、パターン化された誘電性基板上での非常に薄い連続的なアモルファスシリコン含有化合物膜の堆積は、特にやりがいがある。
【0056】
前述を考慮して、米国出願番号10/074,564(2002年2月11日出願)および公開されたPCT出願WO02/064,853(2002年8月2日公開)(これらの開示は、本明細書中にその全体が参考として援用される)に開示されるように、トリシラン(HSiSiHSiHまたはSi)は、シリコン供給源として使用される場合に相当な利益を提供することが発見されている。トリシランを利用する膜堆積方法は、ここで、基板の表面全体にわたる温度バリエーションにあまり感受性でないことが発見された。さらに、トリシランを用いる堆積速度は、堆積チャンバーへのトリシランのフロー速度とともに実質的に連続的に増加し、そして基板物質および厚みに対して比較的非感受性である。また、トリシランは、極端に短い膜核形成時間を有し、これは、シリコンの局在化した結晶堆積のサイズを減少させる。結果として、堆積したシリコン膜は、より薄くされ得、依然として均一である。さらに、この膜は、局在化したシリコン堆積物の減少したサイズに起因して、減少した表面の粗さを示す。
【0057】
さらに、プロセス生産量(throughput)に関して、トリシランは、シランと比較してより高い堆積速度を示す。トリシランはまた、熱経費を減少させる。なぜなら、これは、シランよりも低いプロセス温度の使用を可能にするからである。
【0058】
従って、本明細書中に記載される堆積方法においてトリシランを使用することは、多数の利点を提供する。例えば、これらの堆積方法は、均一に薄くそして連続的であるシラン含有化合物膜の製造を可能にする。これらの利点は、次いで、デバイスがより高い収率で製造されることを可能にし、そしてより小さい回路の寸法および/またはより高い信頼性を有する新しいデバイスの生産を可能にする。これらおよび他の利点は、以下に議論される。
【0059】
プロセスフロー
以下により詳細に記載されるように、シリコン含有化合物層の形成において、薄いシリコン層は、望ましくは、シリコン前駆体、好ましくはトリシランに基板を最初に暴露することによって基板に堆積される。シリコン層は、別の前駆体と反応されてシリコン含有化合物層を形成し得る。好ましい実施形態において、他の前駆体は、窒素供給源である。窒素供給源は、シリコン層を窒化するために反応チャンバー中に導入され、シリコンナイトライドを形成する。窒化は、シリコン層中のシリコンが窒素供給源由来の窒素と反応する場合に生じて、シリコンナイトライドを生成する。窒化は、好ましくは、基板の表面のシリコン層に限定され、そして有利には、窒素供給源とのシリコン層の反応において実質的に完全な化学量論を生じる。このような完全な反応は、不純物があまり組み込まれないこと、より密度が高い膜、ならびに改善された厚み制御およびステップカバレッジを可能にする。さらに、以下に議論されるように、堆積された層は、絶縁特性を改善し、従来の絶縁薄膜よりもより厚くされ得、拡散バリアとしてこれらの堆積層の効果を増加する。
【0060】
他の実施形態において、シリコン層は、窒素以外の反応物と反応されて、他のシリコン含有化合物層を形成し得る。例えば、シリコン層は、酸化されて、シリコンオキサイド層を形成し得る。このような場合において、酸素供給源は、窒素供給源の代わりに使用され得る。酸素供給源としては、例えば、原子状酸素、水、オゾン、酸素、一酸化窒素、亜酸化窒素または当該分野で公知の他のオキシダントが挙げられ得る。同様に、当該分野で公知の他の前駆体が、シリコンゲルマニウム、シリコンカーバイド、金属ケイ化物を含むがこれらに限定されないシリコン含有化合物層を形成するために使用され得る。
【0061】
さらに、これらの堆積および反応の多数の連続サイクルは、シリコン含有化合物層を所望の厚みに構築するために実施され得る。有利には、本発明の方法によって形成される異なるシリコン含有化合物層は、他のものの上に(one over another)形成され得る。例えば、シリコンナイトライド膜は、シリコンオキサイド膜上に堆積され得る。さらに、シリコン含有化合物層は、ドープされてもよいし、そうでなければさらに反応されてもよい。例えば、シリコンナイトライド層は、シリコンオキシナイトライド層を形成するために酸化され得る。
【0062】
図3は、本発明の好ましい実施形態に従う一般的なプロセスシーケンスを示す。基板は、プロセスチャンバー中に提供され、全てのシーケンスステップは、好ましくは、そのプロセスチャンバー中でインサイチュで実施される。
【0063】
好ましくは、プロセスチャンバーは、Phoenix, ArizonaのASM America, Inc.より市販され、図1および2に関して上に記載される、EpsilonTMシリーズの単一ウェハリアクターのような、単一ウェハの、水平ガスフローリアクターであり、好ましくは、放射加熱される。結果として、図3に示されるプロセスがまた、シャワーヘッドの配置を有するもののような、代替的なリアクター中で使用され得るが、増加した均一性および堆積速度における利益は、回転基板を使用する、EpsilonTMチャンバーの、水平単一パス層ガスフロー配置において特に効果的であることが見出された。
【0064】
図3を参照すると、ステップ100において、シリコン層は、基板上に形成される。「基板」は、シリコン含有物質が本発明の好ましい実施形態に従って堆積されるかまたは適用される、任意の基礎をなす表面を含むように、その通常の意味で、本明細書中で使用される。好ましい基板は、金属、シリコン、ゲルマニウム、プラスチック、および/またはガラス、好ましくは、シリコン化合物(Si−O−C−H低誘電率の膜を含む)およびケイ素合金を含むがこれらに限定されない、実質上任意の物質からなり得る。基板はまた、トレンチまたはステップのような物理的構造上にそれらを有し得る。特に好ましい基板は、その上にインターフェーシャル・レイヤーを有するシリコン基板を含む。さらに、約480℃以上の加工温度で、水素で不動態化したSi<100>表面は、シリコン基板として有利に使用され得る。
【0065】
ポリシランは、好ましくは、シリコン層100を形成するためにシリコン供給源として使用される。本明細書中で使用される場合、「ポリシラン」は、化学式Si2n+2(ここで、n=2〜4)を有する。好ましくは、ポリシランは、ジシランまたはトリシランである。最も好ましくは、ポリシランはトリシランである。結果として、本発明は、トリシランと共にCVDサイクルを使用する特に好ましい実施形態の文脈において記載されるが、当業者は、本発明の開示を考慮して、記載されるプロセスの特定の利点が他の前駆体および/または他の堆積技術で得られ得ることを理解するであろう。
【0066】
シリコン層100を形成する際に、シリコン前駆体の堆積は、当業者に公知の種々の堆積方法に従って適切に行われ得るが、最も大きい利益は、堆積が本明細書中に教示されるCVD法に従って行われる場合に得られる。開示される方法は、プラズマ・エンハンスト化学気相成長法(PECVD)または熱CVD(気体のトリシランを利用して、CVDチャンバー内に含まれる基板上にシリコン含有化合物膜を堆積させる)を含む、CVDを使用することによって適切に実践され得る。熱CVDは、プロセスのシリコン堆積相について好ましい。
【0067】
ポリシランは、好ましくは、供給ガスの形態でまたは供給ガスの成分として、プロセスチャンバー12(図1)に導入される。供給ガスは、ポリシラン以外のガス(例えば、不活性キャリアガス)を含み得る。キャリアガスは、当該分野で公知のキャリアガス(例えば、窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、またはその種々の組み合わせ)を含み得る。好ましくは、窒素は、本明細書中に使用される方法についてキャリアガスとして使用される。
【0068】
ポリシランがトリシランである場合、トリシランは、好ましくは、トリシラン蒸気を同伴するキャリアガスと共に使用されるバブラー、より好ましくは温度制御バブラーによりチャンバーに導入される。好ましくは、バブラーからのトリシランフロー速度は、約1sccm〜1slmまで、より好ましくは、約50sccm〜500sccmまで変化する。好ましくは、キャリアガスは、約2slm〜20slmで変化するフロー速度を有する。
【0069】
反応チャンバー12(図1)における全圧は、好ましくは、約0.001Torr〜約780Torrの範囲、より好ましくは、約0.001Torr〜約100Torrの範囲、最も好ましくは、約0.001Torr〜約10Torrの範囲である。トリシランの分圧は、好ましくは、全圧の約0.0001%〜約100%の範囲、より好ましくは、全圧の約0.001%〜約50%の範囲である。供給ガスのポリシランおよび他の成分の相対的な分圧は、好ましくは、シリコン含有化合物膜を堆積する過程にわたり比較的一定に維持される。しかし、シリコン層形成100および他のステップは、必ずしも等圧的に行われる必要はない。例えば、ステップ100は、ステップ120よりも高い圧力で行われ得、逆も行われ得る。
【0070】
有利には、0.001Torr〜10Torrの範囲の圧力での堆積が、優れた均一性を生じることが見出されている。さらに、低分圧が、一般的に、プロセスの間により低い水素含量を維持するために所望である。しかし、より多くのケイ素原子数を有するシランにおける固有の低いH:Si比に起因して、例えばトリシランについての分圧は、より低次のシラン(例えば、ジシランおよびシラン)についてのそれよりも高くあり得る。
【0071】
好ましくは、シリコン層形成100およびサイクル140は、一般的に、等熱的に行われる。熱CVDについて、好ましい堆積温度は、約400℃〜約800℃、好ましくは、約450℃〜約750℃、より好ましくは、約450℃〜約650℃の範囲である。好ましくは、これらの温度は、基板についての温度設定に対応する。
【0072】
好ましくは、熱い基板表面でシリコン前駆体を熱分解または分解するのに十分なエネルギーを供給し、そして、基板表面に送達される速度によって主に制御される速度でシリコンを堆積するために、堆積条件は創られる。従って、トリシランのような前駆体について、堆積はまた、好ましくは、質量輸送制限レジーム(mass transport limited regime)中またはそれに近い化学気相成長堆積条件化で行われる。質量輸送制限レジームにおいて、堆積速度は、本質的に温度と無関係である。これは、基板の表面全体にわたる小さい温度バリエーションが堆積速度にほとんどまたは全く影響しないことを意味する。質量輸送制限レジームにおける堆積は、厚みおよび組成バリエーションを非常に最小化し、そして本明細書中に記載される好ましいシリコン含有化合物膜の製造を可能にすることが見出された。従って、有利には、このような条件は、最小の負荷効果またはパターン感受性を有する堆積を可能にする。
【0073】
好ましいシリコン含有化合物層の形成において、ステップ100で形成される膜の厚みは、当該分野で公知のように、所定の一連の堆積パラメーター(例えば、全圧および温度)について堆積時間および/またはガスフロー速度を変化させることによって、意図される適用に従って変化され得る。特定の一連の堆積条件について、シリコン層形成100のシリコン堆積の期間は、薄いシリコン層が形成されるように選択されるべきである。薄くかつ均一なシリコン層を形成することにより、層は容易に十分に反応され得、例えば、窒化または酸化され得、以下に記載される、薄くかつ均一なシリコン含有化合物層の形成を可能にする。結果として、約650℃未満で、シリコン層の厚みは、約3Åと25Åとの間であり、より好ましくは、約3Åと15Åとの間であり、最も好ましくは、約3Åと8Åとの間である。しかし、好ましい厚みの範囲は、温度のようなプロセス条件に依存して変化し得ることが理解される。より高い温度において、より厚いシリコン層が、依然として堆積され得るが、依然として、層が十分に反応されることを可能にする。例えば、約900℃以上の温度において、約20〜50Åのシリコン層が使用され得る。
【0074】
シリコン層形成100後、任意の過剰なシリコン供給源および副産物は、プロセスチャンバーから除去110され得る。シリコン供給源除去110は、以下を含む除去プロセスのいずれか1つまたは任意の組み合わせによって生じ得る:不活性ガスでのプロセスチャンバーのパージ、シリコン供給源の排気、または反応種を運ぶガスによるシリコン供給源ガスの置換。しかし、シリコン供給源ガス除去110が、反応種を運ぶガスとの供給源ガスの置換によって達成される場合、プロセスチャンバーは、好ましくは、上に記載され図1に示される、ASM EpsilonTMシリーズの単一ウェハリアクターのような、単一基板層流チャンバーである。さらに、シリコン供給源ガス除去110がパージによって行われる場合、プロセスチャンバー12は、好ましくは、数秒間パージされる。
【0075】
シリコン供給源ガス除去110は、好ましくは、チャンバー12(図1)中の特定の反応物の量がチャンバー12に入る次の反応物との所望でない副反応を最小化するために十分に低いレベルにあるように行われることが理解される。これは、次いで、形成されるシリコン含有化合物層中の不純物の所望でない混入を最小化する。このような低いレベルの反応物は、例えば、チャンバー12のパージまたは排気の期間を最適化することによって、達成され得る。このようなレベルにおいて、プロセスチャンバーは、特定の反応物が実質的にないと言われ得る。
【0076】
シリコン供給源ガス除去110後、シリコン層を、シリコン含有化合物層120の形成のために反応種と反応され得る。このような反応種は、例えば、シリコンナイトライド層を形成するための窒素供給源、またはシリコンオキサイド層を形成するための酸素供給源を含み得る。好ましくは、ステップ100で形成されるシリコン層は、化学量論的に完全に反応種と反応するのに十分な期間、流入する(inflowing)反応種に暴露される。より好ましくは、反応条件は、シリコンナイトライド層の形成に関して以下により詳細に議論されるように、形成されるシリコン層と完全に反応するように、そして基礎をなす構造への損傷を避けるように選択される。
【0077】
シリコン含有化合物層120の形成後、反応物除去130は、シリコン供給源除去110について上に記載される方法のいずれかを使用して、実施され得る。しかし、ステップ110および130は、正確に同じ方法によって起きる必要はない。例えば、1つのステップは、パージを包含し得るが、他のプロセスは、排気を含み得る。
【0078】
ステップ100、110、120および130の実施は、1つのサイクル140を含み、そして基板上に1つの層のシリコン含有化合物を堆積する。次いで、サイクル140は、シリコン含有化合物層が所望の厚さに構築されるまで、連続して繰り返され得る。
【0079】
結果として、当業者は、本発明が種々の厚みの層の形成を可能にし、厚みは、例えば、特定の適用の要求に基づいて選択されることを理解する。例えば、ゲート誘電体としての使用のために、十分なサイクルが、好ましくは、約3Åと20Åとの間の厚みのシリコンナイトライド層を成長するために行われる。別の実施例において、トランジスタ側壁スペーサーとしての使用のために、実施される多数のサイクルが、好ましくは、約150Åと400Åとの間の厚みのシリコンナイトライド層を形成するように選択され得る。しかし、より大きい厚みが可能である;例えば、5000Åまでの厚みが十分な数のサイクルを実施した後に形成され得ることが理解され得る。
【0080】
図4A〜4Eを参照すると、上記プロセスの結果が様式化した例示で示される。図4A〜4Cは、図3に示されるサイクル140の一回のラン後の、シリコン含有化合物層の形成を示す。図4Aは、シリコン供給源のチャンバー12への導入の前の基板200を示す。図4Bは、シリコン供給源の導入後に堆積されたシリコンの第1層202を示す。図4Cは、シリコン層202と反応種との反応後、シリコン層202から形成されるシリコン含有化合物層204を示す。
【0081】
1サイクルを完了した後、他のサイクルが行われ得る。図4Dは、以前に形成されたシリコン含有化合物層204上の、新しいサイクル140中に堆積した第2のシリコン層206を示す。好ましくは、以前のサイクル140で使用されるのと同じ反応種が再びチャンバー12に導入され、第2のシリコン層206と反応する。結果として、シリコン含有化合物層204と第2のシリコン層206の合わせた厚みを有する、より厚いシリコン含有化合物層208が形成される。この様式で、このようなサイクル140を繰り返した後、第1のシリコン含有化合物層204は、所望の厚さまで構築され得る。
【0082】
上に示されたように、本発明は、特にシリコンナイトライド層を形成するために利用され得る。図5は、このような層を形成するための1つの可能なプロセスシーケンスを示す。例示される実施形態において、シリコンナイトライドを含むゲート誘電層は、基板上の半導体構造上に形成される。
【0083】
ゲート誘電体の形成のための調製において、ウェハは、好ましくは、半導体構造上の混入物および天然に存在するかまたは自然酸化膜を除去するために、最初にクリーニング300される。従来は、ウェハクリーニングは、プロセスチャンバー12(図1)へのウェハのローディングの前に、エキソサイチュ(ex situ)で行われる。例えば、ウェハは、SC1/HF湿式エッチバス中でクリーニングされ得る。あるいは、統合されたHFおよび酢酸蒸気クリーニングは、クラスターツール内で近隣のモジュール中で行われ得、輸送時間および再混入または再酸化の機会を減少させる。別のアレンジメントにおいて、水素ベーキングステップは、自然酸化膜を昇華させるためにチャンバー12(図1)内で行われ得る。少量のHCl蒸気は、水素ベーキングの間に金属混入物などをクリーニングする際に補助するためにこのステップに添加され得る。なお別のアレンジメントにおいて、プラズマ生成物は、例えば、Hラジカルを水素ガスと置換することによって、インサイチュクリーニングを補助してもよいし、これを行うのに使用してもよい。当該分野で公知のウェハクリーニングの他の方法もまた適していることが理解される。
【0084】
エキソサイチュクリーニング後またはインサイチュクリーニングの前のいずれかに、ウェハをプロセスチャンバーにローディングする。自然酸化膜のクリーニングは、水素終結表面を残す傾向があり、これは、クリーンルームの環境または他のオキシダントの供給源への暴露の際の自発的な再酸化を有利に阻害する。このような水素終結化は、さらなるプロセスの前に脱着され得る。
【0085】
次いで、インターフェーシャル・レイヤー(例えば、シリコンオキサイド層)は、好ましくは、堆積された層の誘電性能を改善するために、基板上に形成される310。インターフェーシャル・レイヤーは、エキソサイチュまたはインサイチュで形成され得る。シリコンオキサイド層は、熱酸化または基板のオキシダントへの暴露を含む他の方法を含むが、これらに限定されない、当該分野で公知の方法に従って、形成され得る。例えば、結晶性シリコン基板表面(例えば、Si<100>)は、原子状酸素または他の公知の酸化化学物質(例えば、水、オゾン、酸素、一酸化窒素、亜酸化窒素等)に暴露され、シリコンオキサイドを形成し得る。さらに、シリコンオキサイド層はまた、例えば、シリコン層を堆積するためにトリシランを使用して、そして反応種としてオキシダントを使用して、図3のサイクルプロセスによって形成され得る。
【0086】
次いで、シリコンナイトライド層は、上に開示される方法に従って形成され得る。
【0087】
特に、シリコン層は、シリコンオキサイド層上に最初に形成される320。好ましくは、トリシランは、チャンバー12に流入され、トリシランの議論において上に議論される条件下および図3で、熱CVDによって基板上に堆積する。
【0088】
好ましい実施形態は、形成される種々の厚みのシリコン層を可能にし、好ましくは、シリコン層の厚みは、窒化条件に基づいて選択される。これは、シリコン層が窒化される場合、原子状窒素は、シリコン層を通って基礎をなすシリコン基板に拡散し得るからである。窒素拡散の深さは、当該分野で公知のように測定され得、そして窒化温度および窒化の期間を含む種々のプロセス条件に関連する。従って、所定のセットのプロセス条件について、原子状窒素は、シリコン層を通って、特定の深さ(窒化飽和深度(nitridation saturation depth)と呼ばれる)まで拡散し得る。窒化が約1分未満の間起こる場合、窒化飽和深度は、短期窒化飽和深度と呼ばれ得る。
【0089】
堆積されたシリコン含有化合物層の議論において以下に議論されるように、基板の窒化は、理論的に予想されるものよりも劣る誘電特性を有するシリコンナイトライド層を生じることが見出されている。従って、堆積されたシリコンナイトライド膜の誘電特性を改善するために、基礎をなす基板の窒化は、好ましくは、窒化飽和深度以上の厚みまで基板上に形成される第1のシリコン層を堆積することによって最小化される。引き続き堆積される層は、代表的に、第1のシリコン層上に堆積される結果として、窒化飽和深度よりも基板からさらに間隔が開いていることが理解される。結果として、第1の後に堆積されるシリコン層の厚みは、好ましくは、窒化飽和深度以下である。
【0090】
しかし、所定のセットの窒化条件について、第1のシリコン層の形成後、引き続くサイクルにおいて形成される引き続くシリコン層は、より薄くあり得る。なぜなら、シリコンナイトライド層の厚みは増加するが、窒化飽和深度は、比較的一定のままであるからである。例えば、好ましい実施形態において、第1のシリコン層は、例えば、約8〜20Åの窒化飽和深度まで堆積され得、そして引き続く層は、1サイクル当たり、例えば、約3Å〜10Åのより薄い厚みで堆積され得る。1つの好ましい実施形態において、第1のシリコン層は、約12Åの厚さまで堆積され、そして引き続く層は、1サイクル当たり約6Åのより薄い厚みまで堆積される。シリコン層の厚みを変化させることに加えて、他のプロセス条件(例えば、窒化温度および/または窒化の期間)が、窒化飽和深度がシリコン層の厚みよりも深くならないように、変更され得ることが理解される。
【0091】
次いで、ステップ320後、任意の過剰のトリシランを、好ましくは、窒素種を含む供給ガスをチャンバー12に流入させることによって、チャンバー12から除去する330。有利には、層流チャンバー12(図1)は、供給ガス中の窒素供給源中のフローを可能にし、供給ガスは、堆積されたシリコン層と反応させるため、そして反応チャンバー12から過剰なトリシランガスを強制的に除く(force)ための両方に使用される。しかし、上に議論されるように、トリシランはまた、チャンバー12をパージまたは排気することによって除去され得る。
【0092】
次いで、シリコンナイトライド層は、チャンバー12(図1)への窒素供給源の導入によって形成される340。好ましい窒素前駆体としては、(HSi)N(トリシリルアミン)、アンモニア、原子状窒素、ヒドラジン(H)、ヒドラゾ酸(HN)、NF、前述の混合物、および不活性ガス(例えば、H、N、Ar、He)と前述の希釈物のような化学前駆体を含む。最も好ましくは、原子状窒素が窒素前駆体である。
【0093】
原子状窒素は、好ましくは、励起種発生器60(図2)を使用して産生される。窒素ガスは、好ましくは、原子状窒素を産生するために、約1slm〜10slmで励起種発生器60を介して流される。より詳細には、窒素フローは、ヘリウムのキャリアガスと合わされ、キャリアガスは、好ましくは、約1sls〜10slmのフローを有する。従って、ASM EpsilonTMシリーズ単一ウェハリアクターと組み合わせて遠隔プラズマ発生器を使用して、励起した窒素種を、代替的にトリシランを用いて、好ましくは、チャンバー12(図1)にパルスする。
【0094】
代表的に、議論される条件下で、窒素供給源への暴露は、二分未満の間生じる。しかし、パルスの期間は、温度、窒化されるシリコン層の厚み、基礎をなす構造の感受性、および使用されるリアクターと共に変化し得ることが理解される。例えば、約2分未満のパルス期間は、ASM EpsilonTMシリーズの単一ウェハリアクターの特定の堆積特性に関連する;他のリアクターは、当該分野で公知のように、リアクターの特定の特性に依存して、3Å〜25Åシリコン層を窒化するために、より短いまたはより長い期間を必要とし得る。
【0095】
シリコンナイトライド層形成340後、窒素供給源除去350は、好ましくは、実質的に窒素供給源がないチャンバー12(図1)を作るために行われる。例えば、窒素供給源除去350は、窒素フローを停止する一方、トリシランを含む供給ガスでフローするか、または単純に不活性なNを流し続ける間に励起種発生器60の電源を切ることによって、チャンバー12をパージするかまたは排気することを包含し得る。
【0096】
ステップ350後、シリコン層形成320は、次いで、新しいサイクル360を始めるために新しいシリコン層を形成するように実施され得る。実施されるサイクル360の数は、カウントされ得、所望の厚みの層を堆積するように最適化され得る。結果として、複数のサイクル360が、所望の厚さが達成されるまで実施され、実施されるサイクル360の合計数はカウントされ、そして特定の膜の厚みと相関する。
【0097】
従って、ゲート誘電体層についてシリコンナイトライド層を形成するためのプロセスについての好ましい実施形態は、以下のステップを包含する:
・Siパルス
・Si除去
・窒化
・窒素供給源除去
サイクル360によるシリコンナイトライド層の形成後、ゲート電極は、当該分野で公知の方法によって形成され得る370。
【0098】
図6A〜6Eを参照すると、上記プロセスの結果を、様式化した例示によって示す。図6Aは、ウェハクリーニング後の基板400を示す。図6Bは、基板400上に堆積されたインターフェーシャル・レイヤー410を示す。図6Cは、インターフェーシャル・レイヤー410上に第1サイクル360(図5)を実施することによって形成されたシリコンナイトライド層420を示す。図6Dは、サイクル360(図5)の引き続く実施によってより厚くされたシリコンナイトライド層420を示す。図6Eは、引き続いて形成されたゲート電極430を示す。
【0099】
本発明は、シリコンナイトライド層を形成することを特に参照することによって示され、本発明の教示はまた、他のシリコン含有化合物層を形成するために適用され得ることが理解される。例えば、シリコンオキサイドはまた、基板表面上に直接形成され得る。この場合において、シリコン含有化合物層120(図3)の形成の間に窒素供給源を導入するのではなく、酸素供給源が導入され得る。酸素供給源としては、原子状酸素、水、オゾン、酸素、一酸化窒素、亜酸化窒素を含むがこれらに限定されない、当該分野で公知のオキシダントを含む。同様に、当該分野で公知の他の前駆体が、シリコンゲルマニウムおよびシリコンカーバイドを含むがこれらに限定されない、他のシリコン含有化合物層を形成するために使用され得る。
【0100】
他の好ましい実施形態において、シリコン含有化合物層は、各サイクルにおけるステップ130(図3)又は350(図5)の後、引き続き反応され得る。例えば、半導体としてはたらくシリコン含有化合物層(例えば、SiGe)は、引き続きドープされ得る。別の例では、シリコンオキシナイトライド(SiO)層は、シリコンナイトライド層から形成され得る。この実施形態では、シリコンナイトライド層を形成した後、酸素供給源が導入されてシリコンナイトライドが酸化され得、そしてシリコンオキシナイトライド層が形成される。このようなシリコンオキシナイトライド層は、図5を参照して前記で述べたシリコンオキサイド層に代えて、誘電層を形成するためのインターフェーシャル・レイヤーとして使用され得ることが理解されるであろう。シリコンカーバイドナイトライド(SiC)又はシリコンオキシカーバイド(SiO)は、同様に、続く窒化又は酸化プロセスによって形成され得る。
【0101】
また、異なるシリコン供給源が異なるサイクル140(図3)又は360(図5)において使用され得ることが理解されるであろう。1つの好ましい実施形態において、トリシランがあるサイクルのためのシリコン供給源として使用され得、そしてジシランが別のサイクルのために使用され得る。好ましくは、トリシランは、サイクル140(図3)又は360(図5)の最初の実施において、基板に堆積される第一のシリコン層を形成するために使用される。続くシリコン層は、ハロシラン(即ち、化学式R4−xSiH(ここで、R=Cl、Br又はI、及び、X=0〜3)を有するシリコン化合物)又は他のシラン(Si2n+2(ここで、n=1〜4、好ましくはn≧2))を用いて形成され得る。シリコン供給源の組み合わせが使用され得る(例えば、トリシラン及びジシランが、第一シリコン層が形成された後に同時に使用され得る)ことが理解されるであろう。さらに、「純粋な」トリシランを供給しようとしても、通常いくらかのジシランが存在することに留意されたい。
【0102】
好都合には、異なるサイクルにおいて異なるシリコン供給源を使用することに加えて、図3のCVD法とともに異なる堆積方法が使用され得る。図7に言及すると、1つの好ましい実施形態において、図3のCVD法が使用され、シリコン含有化合物層が所望の厚さより小さい厚さに堆積される440。例えば、図3に示される方法のたった1サイクルだけが行われる。引き続き、電気的性能、組成物の純度(compositional purity)、及び高い材料密度が主要な関心事とならないスペーサー層を有するような場合においてスループットを増大させるためには、シリコン含有化合物層の残りの所望の厚さの大部分は、非サイクル法(前駆体の同時導入を伴う従来のCVD450を含む)を用いるバルク堆積によって堆積され得る。トリシランに加えて、好ましいシリコン供給源としては、ハロシラン(即ち、化学式R4−xSiH(ここで、R=Cl、Br又はI、及び、X=0〜3)を有するシリコン化合物)又は他のシラン(例えば、Si2n+2(ここで、n=1〜4、好ましくはn≧2))が挙げられる。好ましくは、シリコン含有化合物層は、また、シリコン含有化合物層の合計厚さが所望の厚さとなるように、図3のサイクルプロセスに従って形成された460シリコン含有化合物層でシールされる。
【0103】
他の好ましい実施形態において、薄いシリコン含有化合物層(例えば、シリコンナイトライド)を堆積させた後440、基板を含むウェハがその反応チャンバーから第二反応チャンバーへ移され得る。第二反応チャンバー中では、より厚いPECVD又はファーネス(furnace)シリコン含有化合物層(例えば、シリコンナイトライド)が、その薄いシリコン含有化合物層上へ堆積され得る。続いて、このウェハは、好ましくは、より厚いシリコン含有化合物層上への別の薄いシリコン含有化合物層のサイクル堆積460のための別の反応チャンバーへ移される。好ましくは、サイクル堆積460のためのこの反応チャンバーは、サイクル堆積440が行われたのと同じ反応チャンバーである。
【0104】
1つの好ましい実施形態において、シリコンナイトライド層は、シリコン供給源としてトリシランを用いる図3の方法の1サイクルを行うことによって堆積される。次いで、より厚い従来のシリコンナイトライドは、シラン及び窒素供給源がともに導入されている同じ反応チャンバー中で従来のCVDによって形成される。好ましくは、次に、シリコンナイトライドシーリング層が、再びトリシランを用いて、図3の方法によって第二のシリコンナイトライド層上へ形成される。第三のシリコンナイトライド層が形成される場合、全ての3つのシリコンナイトライド層の厚さは、その3層の総厚が所望の合計厚さとなるように調整されることが理解されるであろう。
【0105】
かくして、このシリコンナイトライド層の頂部及び底部は、低い水素含有量を有する非常にコンフォーマル(conformal)及び均一(uniform)なシリコンナイトライド層からなる。好都合なことに、この低い水素含有量は、低いホウ素拡散率に対応する。望ましいことに、これらの優れた頂部及び底部シリコンナイトライド層は、それらが一部となっているより厚いシリコンナイトライド層の界面における拡散バリアとして機能し得る。
【0106】
更に、ステップ100(図3)又はステップ320(図5)のための温度が必ずしも等温である必要がないことが理解されるであろう。1つの好ましい実施形態において、シリコン層形成100(図3)又は320(図5)は、約525℃より低い、好ましくは約500℃より低い、最も好ましくは約475℃より低い第1温度で起こり得る。好ましくは、その層は次に、シリコン含有化合物層120(図3)又は340(図5)の形成の前に、堆積時の(as−deposited)シリコン層からの水素の完全な除去を可能にするため、数秒間放置される。好ましくは、層は、10秒より長い間放置される。シリコン含有化合物層120(図3)又は340(図5)の形成のために、温度は、次いで、第1温度より高い第2温度まで上昇される。好ましくは、続くサイクル140(図3)又は360(図5)がこの第2高温にて等温で行われ、所望の厚さのシリコン含有化合物層を堆積する。低温及び水素除去時間が、基板表面との界面で膜に低い水素含有量をもたらすので、このようなプロセスは、特に、非結晶性シリコン基板表面上のシリコンナイトライド膜堆積に有用である(例えば、ガラス材料、金属酸化物、金属シリケート及び金属上のSiO低誘電率スピン)。好都合なことに、続く堆積サイクルのための高温は、より迅速な堆積及び低水素界面の形成後の増大されたスループットを可能にする。
【0107】
堆積されたシリコン含有化合物層
望ましくは、好ましい実施形態に従う好ましいシリコン含有化合物膜は、膜の表面に渡って、非常に均一な厚さを有する。膜厚の均一性は、好ましくは、マルチポイント(multiple−point)厚さ測定を行うこと(例えば、偏光解析法又は断面法(cross−sectioning)、様々な厚さ測定値を平均することにより平均厚さを決定すること、及び、rms変動性(variability)を測定すること)によって決定される。所定の表面積での比較を可能にするために、結果は、rms厚さ変動性を平均厚さで割り、そしてその結果をパーセンテージとして表すために100をかけることによって計算された不均一性のパーセント(percent non−uniformity)として表現され得る。好ましくは、その厚さ不均一性は、約20%以下、より好ましくは約10%以下、更により好ましくは約5%以下、最も好ましくは約2%以下である。
【0108】
膜厚を測定するための適当な方法としては、マルチポイント偏光解析法(multiple−point ellipsometric)が挙げられる。膜厚を測定するための機器は、良く知られており、市販されている。好ましい機器としては、Nanometrics, Inc., Sunnyvale, Californiaからの機器であるNanoSpec(登録商標)シリーズが挙げられる。シリコン含有化合物膜の厚さは、また、基板を断面化し、適当な顕微鏡技術(最も好ましくは、電子顕微鏡)によってその厚さを測定することによって決定され得る。厚さが測定されるスパンは、膜の約10倍の厚さからシリコン含有化合物膜の全体のスパンまでの範囲におけるあらゆるスパンであり得る。もし膜厚がスパンに渡り変化するならば、その厚さは平均厚さ(即ち、所定のスパンに渡る膜の最も厚い及び最も薄い寸法の数値平均(numerical average))であると考えられる。
【0109】
本書で使用される場合、rms(より正確には、平均平方誤差の平方根)は、所定の集団のメンバーによって示される変動性の量を表現する方法である。例えば、yグラムの平均重量を有する対象のグループにおいて、グループの各メンバーがいくらかの量だけ平均値と異なる重量y’を有するとすると、(y’−y)として表される。rmsを計算するためには、これらの差を二乗し(それらが正の数であること確実にするため)、足し合わせ、そして平均して、平均平方誤差が得られる。平均平方誤差の平方根がrms変動性である。
【0110】
厚さの均一性に加え、好ましいシリコン含有化合物膜は、好ましくは、様々なトポグラフィー上にコンフォーマルコーティングを提供する。コンフォーマルコーティングは、それが重なる構造の湾曲(もし存在するならば)に従う層である。コンフォーマルシリコン含有化合物膜は、好ましくは、良好なステップカバレッジを示す。「ステップカバレッジ(step coverage)」は、階段状の表面に重なるコンフォーマル膜の厚さの均一性をいう。階段状の表面は、同じ水平面において配置されていない2又はそれ以上の平行なコンポーネントを有する表面である。ステップカバレッジは、好ましくは、段の底部における膜の平均厚さを測定し、それを段の頂部における平均厚さで割り、そして、その結果をパーセントの数字で表すために100をかけることによって、決定される。
【0111】
好ましいシリコン含有化合物膜は、比較的高いアスペクト比でも良好なステップカバレッジを有する。「アスペクト比」とは、構造の水平幅に対する段の垂直高さの比をいう。約4.5〜約6の範囲のアスペクト比において、好ましいシリコン含有化合物膜は、約70%以上、より好ましくは80%以上のステップカバレッジを有する。約1〜約4の範囲におけるアスペクト比では、好ましいシリコン含有化合物膜は、約80%以上の、より好ましくは90%以上のステップカバレッジを有する。ステップカバレッジは、好ましくは、上記のように計算されるが、側壁の厚さを考慮することによっても計算され得る。例えば、ステップカバレッジの代替的な定義としては、段の頂部及び/又は底部の平均厚さに対する側壁の厚さの比が挙げられる。しかしながら、他に言及しない限り、本書におけるステップカバレッジは、段の底部におけるシリコン含有化合物膜の水平部分の平均厚さを測定し、これを段の頂部における水平部分の平均厚さで割り、その結果をパーセンテージで表すために100をかけることによって、前述のように決定される。
【0112】
好都合には、好ましいシリコン含有化合物膜の表面の滑らかさ及び厚さは、約1平方ミクロン(μm)又はそれより大きい、より好ましくは約5μm又はそれより大きい、さらにより好ましくは約10μm又はそれより大きい表面積上で維持される。シリコン含有化合物膜は、大きい基板(例えば、ウェハ)の全て又は一部を被覆し得、それゆえ、約300cm又はそれより大きい、好ましくは700cm又はそれより大きい表面積を有し得る。
【0113】
良好なステップカバレッジが通常達成されるので、多くの場合、シリコン含有化合物膜の表面粗さは、実質的に、それが重なっている表面粗さと同じである。表面粗さは、好ましくは、該当する表面の1ミクロン×1ミクロン部分について原子間力顕微鏡(AFM)により測定されるようなrms表面粗さである。下に位置する基板表面の粗さは、約1Årms(原子的に平坦な表面)から約25Årms又はそれより更に大きい範囲であり得る。好ましくは、下に位置する基板表面は、10Årms又はそれより小さい、より好ましくは5Å又はそれより小さい粗さを有し、それゆえ、重なっているシリコン含有化合物膜は、それに匹敵する粗さを有する。所定の程度の粗さを有する下に位置する基板表面に対して、その上に堆積されるシリコン含有化合物膜は、好ましくは、約5Å又はそれより小さい、より好ましくは約3Å又はそれより小さい、更により好ましくは約2Å又はそれより小さい量だけ、基板表面粗さよりも大きい表面粗さを有する。例えば、もし基板表面粗さが約7Årmsである場合、その上に堆積されるシリコン含有化合物膜の測定される表面粗さは、好ましくは約12Årms(7Å+5Å)又はそれより小さい。好ましくは、下に位置する表面は、約2Årms又はそれより小さい粗さを有し、重なっているシリコン含有化合物膜は約5Årms又はそれより小さい、より好ましくは、約3Årms又はそれより小さい、最も好ましくは約2Årms又はそれより小さい測定された表面粗さを有する。
【0114】
これらの利点は、トリシランがシリコン供給源として使用され且つ原子状窒素が窒素供給源として使用された以下の実施例の実施形態によって形成されたシリコンナイトライド層について得られたデータにおいて証明される。
【0115】
図8は、好ましい実施形態に従って形成されたシリコンナイトライド膜の断面図を示す実際の透過型電子顕微鏡写真の複写物である。顕微鏡写真のナノメートルスケールであっても、たった14Å厚さのシリコンナイトライド層が優れた均一性を示したことが証明される。
【0116】
シリコンナイトライド膜は、また、優れた化学量論及び純度を示した。特に、当該分野で知られているように、シリコンナイトライド膜中のシリコンとナイトライドの比についての値は、Rutherford Backscattering(RBS)によって決定され得る。図9は、本発明の好ましい実施形態に従って形成されたシリコンナイトライドサンプルの代表的なRBSスペクトル(2MeVHe++)である。RUMPモデリングプログラムに基づくシミュレーションを用いるRBSスペクトルデータの分析は、シリコン及び窒素濃度の定量化を可能にした。意味深いことに、このデータは、シリコンナイトライドが、シリコン原子当り約1.33窒素原子の比を有する完全に化学量論のシリコンナイトライド(Si)にほぼ等しい約Si4356の化学量論又はシリコン原子当り約1.30窒素原子の比を有することが見出されたように、実質的に化学量論のシリコンナイトライド膜を示す。
【0117】
さらに、また当業者に知られているように、水素含有量を分析するためにRBS Elastic Recoil Detection(ERD)スペクトルが使用され得る。このようなスペクトルが得られ、そして図10に示される。また、シリコンナイトライド膜は、膜内の水素濃度が技術の検出限界より低い(即ち、0.2原子パーセントより低い水素が組み込まれた)ことを示すRUMPを使用する定量的分析を用いて、優れた組成物純度を示した。それゆえ、シリコンナイトライド膜の分析は、その膜が優れた純度と化学量論を有することを示した。
【0118】
好都合なことに、好ましい実施形態に従って形成されたシリコン含有化合物層の高いコンフォーマリティー(conformality)並びに物理的及び化学的均一性は、従来法によって形成される類似の層に比べて、改善された物理的特性を有する。例えば、シリコン化合物(例えば、シリコンナイトライド及びシリコンオキサイド)の絶縁層は、シリコン化合物を形成するときの下に位置する基板の反応に一部起因し、そしてまた、組み込まれた不純物(組み込まれた水素のような)に起因し、理論的に予測されるより低い絶縁特性を有する。望ましくは、好ましい絶縁層は、低い組み込まれた水素及び下に存在する基板の最小化された反応を有し、結果的に改善された絶縁特性をもたらす。
【0119】
特に、本発明に従って形成されるシリコンナイトライド膜は、他の化合物(例えば、シリコンオキシナイトライド)が伝統的に好まれてきた適用において、使用され得る。望ましくは、シリコンオキシナイトライドとの比較におけるその異なる材料特性に起因して、このような適用におけるシリコンナイトライドの使用は、より高い誘電率及びより良いバリア特性を有する層をもたらす。
【0120】
さらに、シリコンナイトライド層を形成するとき、プロセス温度は、好ましくは、シランを利用する従来のCVD法と比べて低減される。そのようなものとして、シリコンチャネルへ向かう窒素拡散は、シリコン誘電界面における窒素の量が注意深く制御され且つ制限されなければならないゲート誘電適用において、低減され得る。
【0121】
さらに、その高い誘電率のため、シリコンナイトライド層は、幾つかの適用において(例えば、ゲート誘電体のために)優れたものであり得る。これは、デバイスの限界寸法が小さくなり続けるとき、シリコンオキサイドの基本的な材料特性から生じる限界に起因して、ゲート誘電体適用のための伝統的な材料(例えば、SiO)の有用性が低下するからである。これらの限界は、特に、量子力学的トンネリング(quantum mechanical tunneling)が誘電層を通る電流漏れのための主なメカニズムになる場合、約15Åより小さい物理的厚さに対して深刻(acute)である。さらに、超薄SiO層は、電気的に活性なドーパント原子の分散に対する低いバリアである。結果的に、SiOのものよりも大きな誘電率を有する絶縁薄膜材料は、リーク電流性能を改善するために及びドーパント原子の分散に対するより良いバリアとして働くために望ましいことが決定された。ゲート誘電適用に加え、シリコンナイトライド膜は、また、多くのトランジスタ適用におけるスペーサーとして使用され得る。これらの適用の全てについて、薄いシリコンナイトライド膜は、好ましくは、リーク電流の性能に関して優れた特性を有する。さらに、ゲート誘電適用について、薄いシリコンナイトライド膜は、好ましくは、キャリア移動度パースペクティブ(carrier mobility perspective)から優れた電気的性能を示し、これは、それらが低いインターフェーシャルトラップ密度(即ち、それらが堆積される結晶半導体表面との許容される界面)を有することを意味する。
【0122】
従来のシリコンナイトライド膜は、シリコンナイトライド自体の高誘電率のために、理論的にこの必要性に適しているようにみえるが、実際は、従来のCVD法によって形成されたシリコンナイトライド膜は、ゲート誘電適用に求められる物理的及び電気的特性を示していない。典型的に、これらの膜は、匹敵する物理的厚さにおいて、SiOのものよりも僅かだけ良いリーク電流を示した。これは、膜の化学組成(即ち、シリコンナイトライド層へ組み込まれた不純物の存在)に一部起因していると考えられる。水素、炭素及酸素のような元素は、膜特性が理論的な予測を満たさない原因となる主要な不純物であると考えられている。また、シリコンナイトライド層自体より「下(below)」において、結晶シリコン表面との界面における窒素の意図的でない存在は、予期されたよりも低い電気的性能に寄与する。下に位置するバルク半導体内の窒素は、シリコンナイトライド堆積プロセスの副産物として存在すると考えられている。
【0123】
従来のCVDにより形成されたシリコンナイトライド層が前述された領域において失望させてきた一方で、上記のように形成された好ましいシリコンナイトライド層は、優れたウェハ内(within−wafer)及びウェハ間(wafer−to−wafer)の厚さ、元素濃度の均一性及び低い汚染(contamination)元素濃度を有する。さらに、これらの好ましいシリコンナイトライド層は、従来法により形成されたシリコンナイトライド層よりも少ない不純物を有し、理論予測により一致する電気特性を示す。さらに、窒化飽和深度(nitridation saturation depth)と等しい又はそれ以上の厚さまで基板上へ第1シリコン層を堆積させることによって、シリコンナイトライド層より下の窒素の存在が最小化される。第一層がすでに窒化飽和深度より大きい又は等しい場合、続くシリコン層は、好都合には、窒化飽和深度と等しい厚さよりも小さい厚さまで堆積され得る。このように、従来のCVD法によって形成されたシリコン含有化合物層よりも均一及びコンフォーマルであることに加え、好ましい実施形態に従って形成されるシリコン含有化合物膜は、また、優れた誘電的又は電気的特性を示し得る。
【0124】
後述する実施例に従って形成されたシリコンナイトライド膜について、リーク電流データが得られた。図11に示すように、約14Åと同じくらい小さい物理的厚さを有する膜についてさえも、シリコンナイトライド膜は、非常に低いリーク電流を示した。
【0125】
さらに、シリコンナイトライド層がシリコンオキサイド又はシリコンオキシナイトライド層上へ形成され得、さらに一体化されたシリコンナイトライド膜の電気的特性が改善されることが理解されるであろう。シリコンオキサイド及びシリコンオキシナイトライド層は、それゆえ、インターフェイシャル・レイヤーとして使用され得る。これらの層は、前述したように、又は当業者に知られた方法により、形成され得る。
【0126】
さらに、本発明の方法に従って形成されたシリコンナイトライド層は、また、改善された酸化耐性を示す。この改善された酸化耐性は、膜を、クリーンルームの空気暴露に対して或いは続くプロセス(例えば、層形成後のアニーリング)の間の反応チャンバー中に存在する酸素又は湿気(例えば、漏れ又はガス純度の問題に起因する)に対して低感度にする。好都合なことに、このようなアニールは、酸化しながら又は不活性な周囲条件内で行われ得る。
【0127】
本発明は、好ましい実施形態の詳細な説明及び添付の図面から、より良く理解され、これらは、本発明を説明することを意図するが、本発明を限定するものではなく、ここで、同じ数字は、同じ構造を示す。
【実施例】
【0128】
図示されるゲート構造を形成するための例示的な方法を次に詳細に記載する:
シリコンナイトライド層を、ASM America, Inc. of Phoenix, AZからの単一基板Epsilon(登録商標)リアクター中で形成した。ウェハを、反応チャンバー中へ装入し(loaded)、そして、トリシラン堆積のための準備を行った。トリシランを、6秒間、63sccmにて、反応チャンバー中へ流し込んだ。反応チャンバーを、10秒間、窒素ガスでパージした。原子状窒素を、窒素ガスを6slmにてマイクロ波ラジカルジェネレーター(MRG)へ流し込むことによって生成し、そして、145秒間、反応チャンバーへ流し込んだ。次いで、反応チャンバーを、10秒間、窒素ガスでパージした。約5Åのシリコンナイトライドをサイクルごとに堆積し、そして、8サイクルを実行して約40Åの厚さのシリコンナイトライド層を形成した。各サイクルの各ステップを、650℃にて等温で且つ3Torrにて等圧で行った。
【0129】
当業者によって、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の方法に種々の省略、追加及び改変が行われ得ること、そして、全てのこのような改変及び変更が、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内であると意図されることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有化合物層を有する集積回路の製造方法であって、該方法が、複数のサイクルを含み、各サイクルが、以下:
物質輸送による制限がなされた400℃以上の成膜条件で基板をトリシランに暴露することによって、基板とトリシランとを接触させて、トリシランを基板で、トリシランをプロセスチャンバー内に導入している間に熱分解させ、プロセスチャンバー内において基板にシリコン層を堆積すること;
その後、プロセスチャンバーからトリシランを除去すること;
シリコン層を反応種(reactive species)に暴露することによって、5%以下の厚さ不均一性と、80%以上のステップカバレッジと、を有するシリコン含有化合物層を形成すること;及び
その後、プロセスチャンバーから反応種を除去すること
を含む製造方法。
【請求項2】
シリコン含有化合物層の厚さ不均一性が2%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
シリコン含有化合物層が90%以上のステップカバレッジを有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
シリコン含有化合物層が、アスペクト比が1以上の構造を有する基板に堆積する、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
反応種が窒素種を含み、シリコン含有化合物層がシリコンナイトライドを含む、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
シリコンナイトライド層が、インターフェーシャル・レイヤー上に形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
インターフェーシャル・レイヤーが、以下:
基板をトリシランに暴露することによって基板上にシリコン層を堆積すること;及び
シリコン層を酸素種に暴露することによってインターフェーシャル・レイヤーを形成すること
を含むプロセスによって形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応チャンバーにおける複数の化学気相成長サイクルを行うことによる、集積回路用に所望の厚さを有する、絶縁シリコン化合物の層を有する集積回路の製造方法であって、各サイクルが以下:
第1に、物質輸送による制限がなされた400℃以上の成膜条件でシリコン供給源に基板を暴露することによって、基板とシリコン供給源とを接触させて、シリコン供給源を基板で、シリコン供給源をプロセスチャンバー内に導入している間に熱分解させ、基板上に3Å〜25Åの厚さのシリコン層を堆積させること;及び
第2に、絶縁シリコン化合物の層を部分的に形成するためにシリコン層を反応させることを含む、
ここで、複数のサイクルのうち、サイクルの第1の実行(performance)において、基板上に第1のシリコン層を堆積するために使用されるシリコン供給源がポリシランである、
5%以下の厚さ不均一性と、80%以上のステップカバレッジと、を有する層の形成方法。
【請求項9】
反応が、酸化を含み、絶縁シリコン化合物がシリコンオキサイドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
トリシランが、第1シリコン層を堆積するために使用されるシリコン供給源である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
第1シリコン層の堆積の後、後のシリコン層を堆積するためのシリコン供給源が、シラン化学式、Si2n+2(式中、n=1〜4)を有するシラン及びハロシラン化学式R4−XSiH(式中、R=Cl、Br又はI及びX=0〜3)を有するハロシランからなる群より選択されるシリコン化合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1シリコン層を反応させるための第2基板温度が、第1基板温度より高い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1シリコン層の反応後、後のシリコン層の堆積及び反応が等温的に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、第1シリコン層を反応させる前に、少なくとも10秒間、反応チャンバーを排気することを含む、請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
基板上の第1シリコン層の厚さが、窒化飽和深度よりも大きいか、又はほぼ等しい、請求項8から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
以下:
基板上のシリコン化合物の絶縁層、
(ここで、該層は、10パーセント以下の厚さ不均一性及び0.2原子パーセント未満の水素濃度を有する)
を含む、集積回路。
【請求項17】
絶縁層が、シリコンナイトライドを含む、請求項16に記載の集積回路。
【請求項18】
絶縁層中のシリコンと窒素の比が、実質的に化学量論的である(stoichiometric)、請求項17に記載の集積回路。
【請求項19】
さらに、絶縁層の下に結晶シリコン表面を含み、該シリコン表面が実質的に窒素を含まない、請求項16から18のいずれかに記載の集積回路。
【請求項20】
絶縁層がシリコンオキシナイトライドを含む、請求項16から19のいずれかに記載の集積回路。
【請求項21】
厚さ不均一性が2%以下である、請求項20に記載の集積回路。
【請求項22】
水素濃度が0.2原子パーセント未満である、請求項21に記載の集積回路。
【請求項23】
絶縁層の表面粗度が、基板表面粗度より5Å以下だけ大きい、請求項16から22のいずれかに記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−283357(P2010−283357A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143215(P2010−143215)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【分割の表示】特願2004−523521(P2004−523521)の分割
【原出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】