説明

駆動源制御装置

【課題】次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを有効利用できるようにする駆動源制御装置を提供すること。
【解決手段】目標バッテリ残量に応じてハイブリッド車両の駆動源を制御する駆動源制御装置1は、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間における発電量を予測する発電量予測手段13と、発電量予測手段13による予測結果に基づいて現走行終了時の目標バッテリ残量を設定する目標バッテリ残量設定手段14とを備える。また、駆動源制御装置1は、現走行終了時のバッテリ残量を目標バッテリ残量に合わせるよう走行経路に応じて駆動源を割り当てながらハイブリッド車両の走行計画を生成する走行計画生成手段11を更に備え、走行計画生成手段11が生成した走行計画に沿ってハイブリッド車両の駆動源を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現走行終了時の目標バッテリ残量に応じてハイブリッド車両の駆動源を制御する駆動源制御装置に関し、特に、エンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを確実に充電できるようにする駆動源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの道路状況に応じて燃料消費量が最小となるようにエンジン及びモータの利用スケジュールを自動的に決定するハイブリッド車両の駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この駆動制御装置は、目的地までの経路上にある発進又は停止が予測される地点でその経路を複数の区間に区分し、目的地までの道路状況と各運転者の運転履歴とに基づいて区間毎に推奨車速を設定し、推奨車速とエンジンの燃料消費特性とに応じて目的地までの燃料消費量が最小となるようにエンジン及びモータの利用スケジュール(エンジン走行、モータ走行、エンジン・モータ併用走行の使い分けを意味する。)を決定する。
【0004】
これにより、この駆動制御装置は、減速又は停車の際に電気エネルギーを回収することによる燃費改善と加速の際に電気エネルギーを追加的に消費することによる燃費悪化とを考慮しながら、目的地までの道路状況と運転者の運転履歴とに応じたより厳密な燃料消費量を求めた上で、燃料消費量が最小となるエンジン及びモータの利用スケジュールを決定することができる。
【特許文献1】特開2000−333305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の駆動制御装置は、現在の走行(以下、「現走行」とする。)に関する目的地までの道路状況に基づいて推奨車速を設定しながらエンジン及びモータの利用スケジュールを決定するが、さらにその次の走行(現走行を終了させ、所定期間(例えば、1時間)以上駐車させた後の走行であり、以下、「次回走行」とする。)までは考慮していないため、次回走行開始時のバッテリ残量(例えば、満充電状態である。)によってはエンジン停止不可期間(諸事情によりエンジンを停止させることができない期間をいう。)において発電される電気エネルギーを十分充電することができず、その電気エネルギーを有効利用できない場合がある。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを有効利用できるようにする駆動源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る駆動源制御装置は、目標バッテリ残量に応じてハイブリッド車両の駆動源を制御する駆動源制御装置であって、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間における発電量を予測する発電量予測手段と、前記発電量予測手段による予測結果に基づいて現走行終了時の目標バッテリ残量を設定する目標バッテリ残量設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、駆動源制御装置は、現走行終了時のバッテリ残量が目標バッテリ残量となるよう駆動源を制御することで、次回走行開始時にバッテリが満充電又は満充電に近い状態となってしまい、その結果、エンジン停止不可期間において発電する電気エネルギーを捨てざるを得ない状況になってしまうのを防止するので、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを充電により確実に回収することができる。
【0009】
また、第二の発明は、第一の発明に係る駆動源制御装置であって、現走行終了時のバッテリ残量を前記目標バッテリ残量に合わせるようモータの駆動タイミングを制御することを特徴とする。
【0010】
これにより、駆動源制御装置は、モータ走行を積極的に利用しながら現走行終了時のバッテリ残量が目標バッテリ残量となるよう調整するので、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを充電により確実に回収することができる。
【0011】
また、第三の発明は、第一の発明に係る駆動源制御装置であって、現走行終了時のバッテリ残量を前記目標バッテリ残量に合わせるよう走行経路に応じて駆動源を割り当てながら前記ハイブリッド車両の走行計画を生成する走行計画生成手段を更に備え、前記走行計画生成手段が生成した走行計画に沿って前記ハイブリッド車両の駆動源を制御することを特徴とする。
【0012】
これにより、駆動源制御装置は、適時かつ効率的にモータ走行を行って現走行終了時のバッテリ残量が目標バッテリ残量となるよう調整するので、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを充電により確実に回収することができる。
【0013】
また、第四の発明は、第一乃至第三の発明に係る駆動源制御装置であって、前記発電量予測手段は、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間の継続時間を空調制御量に基づいて算出し、算出した継続時間に基づいてエンジン停止不可期間における発電量を予測することを特徴とする。
【0014】
これにより、空調制御量に応じた柔軟かつ正確な発電量の予測が可能となり、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを充電により確実に回収することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述の手段により、本発明は、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間において発電される電気エネルギーを有効利用できるようにする駆動源制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明に係る駆動源制御装置の構成例を示すブロック図であり、駆動源制御装置1は、現走行終了時の目標バッテリ残量に応じてハイブリッド車両の駆動源(例えば、モータ6及びエンジン7である。)を制御する装置であって、CAN(Controller Area Bus)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載LANを介して温度センサ2、測位装置3、記憶装置4、バッテリ5、モータ6及びエンジン7に接続される。
【0018】
また、駆動源制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、経路探索手段10、走行計画生成手段11、駆動源制御手段12、発電量予測手段13及び目標バッテリ残量設定手段14のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0019】
温度センサ2は、温度を測定するための装置であり、例えば、外気温センサ、エンジン温度センサ又はバッテリ温度センサ等であって、外気温、エンジン温度又はバッテリ温度等(以下、「各種温度」とする。)を継続的に測定して駆動源制御装置1に出力する。
【0020】
なお、駆動源制御装置1は、温度センサ2から取得した各種温度を周期的(例えば、5分間隔)に記憶装置4に記憶し、各種温度の推移に関する過去データ(例えば、ハイブリッド車両が駐車している間の各種温度の推移)に基づいて次回走行を開始させるとき(所定時間以上駐車させた後にエンジン7を始動させるとき)の各種温度が推定できるようにする。
【0021】
また、駆動源制御装置1は、車車間通信や路車間通信等の無線通信により取得した気象情報(降雨情報、降雪情報、予想気温等である。)を各種温度の推定に反映させるようにしてもよい。
【0022】
測位装置3は、車両の位置を測定するための装置であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号を受信し、受信した信号に基づいて車両位置を測定する。
【0023】
測位装置3による測定は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよいが、好ましくは精度の高い相対測位が用いられる。この際、車両位置は、舵角センサ、車速センサ、ジャイロセンサ等の各種センサの出力や、ビーコン受信機又はFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてもよい。
【0024】
記憶装置4は、駆動源制御装置1が各種演算を実行する上で必要とする情報を記憶するための装置であり、例えば、ハードディスク又はDVD(Digital Versatile Disk)等の記憶媒体であって、目的地までの経路を探索するために利用する地図情報データベース、又は、各種温度の過去の推移を記憶する温度情報データベース等を格納する。
【0025】
また、記憶装置4は、出発予定時刻、目的地、経由地、到着予定時刻等を含む現走行の走行スケジュール情報を記憶しておいてもよく、過去に使用した走行スケジュール情報を記憶しておいてもよい。
【0026】
バッテリ5は、ハイブリッド車両が利用する電気エネルギーを蓄えるための装置であり、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池であって、ハイブリッド車両を駆動するモータ6やエアコン用のコンプレッサを駆動するモータ等に対して電気エネルギーを供給したり、エンジン7の回転力や回生ブレーキによりモータ6が発生させた電気エネルギーを充電したりする。また、バッテリ5は、高速充電や大容量放電が可能な電気二重層キャパシタであってもよい。
【0027】
なお、駆動源制御装置1は、バッテリ5から各種情報を取得し、例えば、バッテリ5がリチウムイオン電池やニッケル水素電池の場合にはバッテリ5の出力電圧の変化やバッテリ5の出力電流の変化に基づいてバッテリ5の現在のバッテリ残量を算出し、バッテリ5が電気二重層キャパシタの場合にはバッテリ5の静電容量の変化に基づいてバッテリ5の現在のバッテリ残量を算出する。
【0028】
これにより、駆動源制御装置1は、バッテリ5の現在のバッテリ残量を監視しながら、モータ走行等の電力消費によりバッテリ残量を所定のレベルに近づけたり、或いは、バッテリ残量を所定のレベルで維持させるようにしたりすることができる。
【0029】
モータ6及びエンジン7は、それぞれ、ハイブリッド車両を駆動するための駆動源であり、例えば、駆動源制御装置1が出力する制御信号に基づいて駆動を開始したり、駆動を停止したりする。なお、エンジン7は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、CNG(Compressed Natural Gas)エンジン等、何れの燃料を用いたエンジンであってもよい。
【0030】
次に、駆動源制御装置1が有する各種手段について説明する。
【0031】
経路探索手段10は、測位装置3が測定した車両位置(緯度、経度、高度)と操作者が入力する目的地の位置情報(緯度、経度、高度)と記憶装置4に記憶された地図情報データベースとに基づいて、所定位置(例えば、車両の現在位置である。)から目的地に至るまでの最適経路を導き出すための手段であり、例えば、最短経路探索アルゴリズムとしてダイクストラ法を用い最短経路を探索する。
【0032】
なお、経路探索手段10は、最短経路の他、最も早く目的地に到着できる最速経路や高速道路を利用しない経路等を探索してもよい。
【0033】
走行計画生成手段11は、走行計画を生成するための手段であり、例えば、エネルギー消費(電力消費及び燃料消費を含む。)を最小にするために、エンジン回転数に応じた発電効率(燃料消費量に対する発電量の割合をいい、所定のエンジン回転数においてピークを示す。)、エンジン回転数に応じた燃費、又は、経路探索手段10が探索した経路に含まれる各道路の法定速度等に基づいて、エネルギー消費計画(例えば、エンジン走行、モータ走行、エンジン・モータ併用走行の切り替えタイミング等がある。)、推奨走行速度、走行パターン(加速区間、減速区間若しくは定速区間等がある。)等で構成される走行計画を生成する。
【0034】
これにより、駆動源制御装置1は、走行計画生成手段11が生成した走行計画に基づいてアクセル開度、ブレーキ制動力、シフト位置等を自動制御し推奨走行速度を実現させるようにしてもよく、推奨走行速度や減速区間開始地点等を液晶ディスプレイに表示させたり、車載スピーカから音声出力させたりしてハイブリッド車両の運転を支援するようにしてもよい。
【0035】
駆動源制御手段12は、駆動源を制御するための手段であり、例えば、走行計画生成手段11が生成したエネルギー消費計画に基づいてモータ6及びエンジン7に制御信号を送信し、エンジン走行、モータ走行、又は、エンジン・モータ併用走行を切り替えるようにする。
【0036】
発電量予測手段13は、ハイブリッド車両の走行を開始させたときのエンジン停止不可期間における発電量を予測するための手段であり、例えば、空調制御量に基づいてエンジン停止不可期間における発電量を予測する。
【0037】
「エンジン停止不可期間」とは、諸事情によりエンジン7の駆動を停止させることができない期間であり、例えば、暖機運転期間、又は、所定のエンジン温度が車室内の暖房(エンジン7の表面で熱せられた空気を車室内に導入することで車室温を制御する暖房方法である。)のために必要とされる場合にエンジン温度をその所定のエンジン温度(以下、「最低エンジン温度」とする。)に上昇させるまでエンジン7を駆動させておく期間(以下、「暖房準備期間」とする。)がある。なお、暖房準備期間は、エンジン7を始動させた時のエンジン温度、暖房設定温度、エンジン回転数等に応じて変化する。
【0038】
また、エンジン停止不可期間は、車室温が冷房設定温度となるまでエアコン用のコンプレッサを駆動するためにエンジン7を駆動させておく期間(以下、「冷房準備期間」とする。)、又は、バッテリ温度が所定温度範囲(バッテリ5の充放電に適した温度範囲を意味する。)外となっている場合にバッテリ温度を所定温度範囲内に調整するまでエンジン7を駆動させておく期間(以下、「バッテリ温度調整期間」とする。)を含むものとする。この場合、バッテリ温度は、車室温と同様、車室内の冷暖房に用いる空調装置によって調整されるものとする。
【0039】
「空調制御量」とは、車室温を設定温度にするために要する空調の仕事量であり、例えば、次回走行の出発予定時刻に対応する推定エンジン温度と最低エンジン温度との間の差で表される。
【0040】
この場合、発電量予測手段13は、温度センサ2が測定し記憶装置4に記憶された過去の温度情報に基づいて、次回走行の出発予定時刻における各種温度を推定するようにしてもよく(例えば、季節的な温度変化に基づいて各種温度を推定したり、過去数日間の同じ時間帯の平均温度に基づいて各種温度を推定したりする。)、さらに、推定した各種温度を駐車位置に応じて調整するようにしてもよい(例えば、駐車位置の高度(標高)の違いによって各種温度が影響を受けるからである。)。
【0041】
また、発電量予測手段13は、空調制御量に基づいてエンジン停止不可期間の継続時間を算出し、算出した継続時間に基づいてエンジン停止不可期間における発電量を予測するようにしてもよい。空調制御量が大きい(推定エンジン温度と最低エンジン温度との間の温度差が大きい)とエンジン停止不可期間の継続時間が延び、エンジン停止不可期間の継続時間が延びると発電量も増大するからである。
【0042】
さらに、発電量予測手段13は、空調制御量に加え、次回走行に関する走行スケジュール情報に含まれる目的地に基づいて探索された走行経路及びその走行経路に応じて生成された走行計画に基づいてエンジン停止不可期間の継続時間を算出し、算出した継続時間に基づいてエンジン停止不可期間における発電量を予測するようにしてもよい。
【0043】
走行計画に応じてエンジン停止不可期間におけるエンジン回転数が変化し、エンジン回転数の変化に応じて発電量も変化するためである。
【0044】
目標バッテリ残量設定手段14は、現走行終了時の目標バッテリ残量を設定するための手段であり、例えば、バッテリ容量(満充電時のバッテリ残量である。)から発電量予測手段13が予測したエンジン停止不可期間における発電量を差し引いた値を目標バッテリ残量として算出し設定する。
【0045】
次回走行時のエンジン停止不可期間に発電される電気エネルギーをバッテリ5に充電している途中でバッテリ5が満充電状態となり、次回走行時のエンジン停止不可期間に発電される電気エネルギーの一部が充電できなくなってしまうのを防止するためである。
【0046】
また、目標バッテリ残量設定手段14は、次回走行に関する走行スケジュール情報の変更等に応じて発電量予測手段13がエンジン停止不可期間における発電量の予測を変更する度に目標バッテリ残量を再設定し、走行計画生成手段11により走行計画を随時調整させるようにする。目標バッテリ残量の変更、又は、走行計画の変更を早期に駆動源の切り替えに反映できるようにするためである。
【0047】
次に、図2を参照しながら、駆動源制御装置1が走行計画を生成する処理(以下、「走行計画生成処理」とする。)について説明する。なお、図2は、走行計画生成処理の流れを示すフローチャートであり、駆動源制御装置1は、現走行を開始させる前に走行計画生成処理を実行するようにしてもよく、次回走行に関する走行スケジュール情報の変更等に応じて現走行途中に走行計画生成処理を実行するようにしてもよい。
【0048】
最初に、駆動源制御装置1は、記憶装置4に記憶された過去の走行スケジュール情報(例えば、曜日毎の平均出発時刻である。)に基づいて次回走行時の出発予定時刻を推定したり、記憶装置4に記憶された次回走行に関する走行スケジュール情報を参照したりすることにより、次回走行時の出発予定時刻を取得する(ステップS1)。
【0049】
その後、駆動源制御装置1は、記憶装置4に記憶された過去の走行スケジュール情報(例えば、曜日毎の目的地である。)に基づいて次回走行時の目的地を推定したり、記憶装置4に記憶された次回走行に関する走行スケジュール情報を参照したりすることにより、次回走行時の目的地を取得し、経路探索手段10によりその目的地に至るまでの推奨経路を探索させる(ステップS2)。
【0050】
なお、駆動源制御装置1は、経路探索手段10により、出発予定時刻に対応する交通情報(VICS情報等に含まれる渋滞情報や交通規制情報等を含む。)を考慮しながらその目的地に至るまでの推奨経路を探索させるようにしてもよい。
【0051】
その後、駆動源制御装置1は、走行計画生成手段11により、推奨経路に基づいて次回走行に関する走行計画を生成し(ステップS3)、駆動源の切り替え地点、推奨走行速度、加速区間又は減速区間等を決定する。
【0052】
その後、駆動源制御装置1は、発電量予測手段13により、記憶装置4に記憶された温度情報データベースを参照し、各種温度の過去の推移から推定した次回走行開始時の各種温度と暖房設定温度とを考慮しながら、次回走行時における暖房準備期間の継続時間を算出し(ステップS4)、暖房準備期間の継続期間に基づいて暖房準備期間における発電量を算出する(ステップS5)。
【0053】
その後、駆動源制御装置1は、目標バッテリ残量設定手段14により、暖房準備期間における発電量と暖房準備期間における電力使用量とに基づいて現走行終了時(次回走行開始時)に維持すべき目標バッテリ残量を算出して設定する(ステップS6)。
【0054】
なお、駆動源制御装置1は、目標バッテリ残量設定手段14が算出した目標バッテリ残量と所定の下限バッテリ残量とを比較し、算出した目標バッテリ残量が下限バッテリ残量を下回る場合には、下限バッテリ残量を目標バッテリ残量として設定するようにする。
【0055】
目標バッテリ残量をあまりにも低く設定してしまうと次回走行に支障をきたしてしまう場合があるからであり、そのような不適切な目標バッテリ残量が設定されないようにするためである。
【0056】
その後、駆動源制御装置1は、経路探索手段10により現走行の目的地に至るまでの推奨経路を探索させた上で(ステップS7)、走行計画生成手段11により、目標バッテリ残量設定手段14が設定した目標バッテリ残量と経路探索手段10が探索した現走行に関する推奨経路とに基づいて現走行に関する走行計画を生成し(ステップS8)、現走行に関する駆動源の切り替え地点や現走行に関する推奨走行速度等を決定する。
【0057】
駆動源制御装置1は、駆動源制御手段12により、目標バッテリ残量を達成する上で現在のバッテリ残量のレベルが低い場合には、加速中や停車中においてもエンジン7をより高回転で駆動させて発電量を増やしバッテリ残量を増大させるようにしながら現走行終了時に目標バッテリ残量を実現できるようにする。
【0058】
また、駆動源制御装置1は、駆動源制御手段12により、目標バッテリ残量を達成する上で現在のバッテリ残量が適当なレベルにある場合には、加速中にモータ6を停止させエンジン7のみを駆動させ電力消費を抑えたり、停車中にエンジン7を停止させ発電量を抑えたりしてバッテリ残量をそのままの状態で維持するようにしながら、現走行終了時に目標バッテリ残量を実現できるようにする。
【0059】
或いは、駆動源制御装置1は、駆動源制御手段12により、目標バッテリ残量を達成する上で現在のバッテリ残量のレベルが高い場合には、加速中にモータ6を積極的に稼働させて電力消費を増大させバッテリ残量を低減させるようにしながら、現走行終了時に目標バッテリ残量を実現できるようにする。
【0060】
また、駆動源制御装置1は、例えば、目標バッテリ残量と現在のバッテリ残量とから余剰のバッテリ残量を使い切るために必要なモータ6による走行距離(以下、「バッテリ残量調整距離」とする。)、又は、余剰のバッテリ残量を使い切るために必要なモータ6の駆動時間(以下、「バッテリ残量調整時間」とする。)を導き出し、駆動源制御手段12により、現走行の目的地への到着予定時刻からバッテリ残量調整時間だけ前にモータ走行を開始させるようにし、或いは、現走行の目的地と現在位置との間の距離がバッテリ残量距離未満となった場合にモータ走行を開始させるようにしてもよい。
【0061】
以上の構成により、駆動源制御装置1は、次回走行時に暖房準備期間が設定される場合に現走行終了時のバッテリ残量のレベルを目標バッテリ残量のレベルまで予め低減させておき暖房準備期間において発電される電気エネルギーをバッテリ5に確実に充電できるようにすることで、暖房準備期間において発電される電気エネルギーを無駄に廃棄してしまうのを防止することができる。
【0062】
また、駆動源制御装置1は、次回走行時の暖房準備期間において発電される電気エネルギーを効率的に利用できるようにし、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0063】
また、駆動源制御装置1は、次回走行時の暖房準備期間において発電される電気エネルギーを考慮した走行計画を生成することで、エネルギー(電気及び燃料を含む。)のより効率的な利用を図り、ハイブリッド車両の燃費をさらに向上させることができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0065】
例えば、上述の実施例において、駆動源制御装置1は、次回走行時の走行計画を生成した上で、エンジン停止不可期間における発電量を予測し、その発電量に基づいて目標バッテリ残量を算出して設定するが、所定の目標バッテリ残量を複数用意しておき、日時に応じて一の目標バッテリ残量を選択して設定するようにしてもよい。
【0066】
例えば、駆動源制御装置1は、冬場や夏場であれば次回走行時の暖房準備期間や冷房準備期間が延び、暖房準備期間や冷房準備期間における発電量の増大が予測されることから比較的低い目標バッテリ残量を採用するようにし、冬場や夏場以外であれば次回走行時のエンジン停止不可期間が延びることもなく、エンジン停止不可期間における発電量の増大も予測されないことから比較的高い目標バッテリ残量を採用するようにしたりする。
【0067】
これにより、駆動源制御装置1は、走行計画を生成する処理を省略しながらも、適切な目標バッテリ残量を設定しながら、ハイブリッド車両の燃費をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る駆動源制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】走行計画生成処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 駆動源制御装置
2 温度センサ
3 測位装置
4 記憶装置
5 バッテリ
6 モータ
7 エンジン
10 経路探索手段
11 走行計画生成手段
12 駆動源制御手段
13 発電量予測手段
14 目標バッテリ残量設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標バッテリ残量に応じてハイブリッド車両の駆動源を制御する駆動源制御装置であって、
次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間における発電量を予測する発電量予測手段と、
前記発電量予測手段による予測結果に基づいて現走行終了時の目標バッテリ残量を設定する目標バッテリ残量設定手段と、
を備えることを特徴とする駆動源制御装置。
【請求項2】
現走行終了時のバッテリ残量を前記目標バッテリ残量に合わせるようモータの駆動タイミングを制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動源制御装置。
【請求項3】
現走行終了時のバッテリ残量を前記目標バッテリ残量に合わせるよう走行経路に応じて駆動源を割り当てながら前記ハイブリッド車両の走行計画を生成する走行計画生成手段を更に備え、
前記走行計画生成手段が生成した走行計画に沿って前記ハイブリッド車両の駆動源を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動源制御装置。
【請求項4】
前記発電量予測手段は、次回走行を開始させたときのエンジン停止不可期間の継続時間を空調制御量に基づいて算出し、算出した継続時間に基づいてエンジン停止不可期間における発電量を予測する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の駆動源制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−285125(P2008−285125A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134780(P2007−134780)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】