説明

アルミニウム炭化水素化合物を使用する金属炭化物膜の原子層堆積

金属炭化物膜を形成する方法が提供される。いくつかの実施形態では、基体は、遷移金属種およびアルミニウム炭化水素化合物(TMA、DMAH、またはTEAなど)の交互のパルスに曝露される。このアルミニウム炭化水素化合物は、アルミニウム濃度、抵抗率、接着および耐酸化性などのその金属炭化物膜の所望の特性を達成するように選択される。いくつかの実施形態では、この方法は、フラッシュメモリにおける制御ゲートの仕事関数を決定する金属炭化物層を形成するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国特許法第119条第(e)項に基づき、2008年4月16日出願の米国仮出願第61/045,554号への優先権を主張する。この仮出願の開示は参照により本願明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、蒸着プロセスに関し、より具体的には、蒸着プロセスによる金属炭化物膜の堆積に関する。
【背景技術】
【0003】
金属炭化物は、ゲート電極から拡散バリアまで、電子機器産業で広範な用途を見出した。例えば、炭化タンタル(TaC)は、n型金属酸化物半導体(NMOS)ゲート電極として使用することができる低抵抗率金属である。さらに、TaCは、金属配線と金属線との間の界面での貴金属原子の電気移動を阻止することに効果的であることが見出されている。
【0004】
遷移金属元素の炭化物は、一般には、周期律表の4、5、6、7、8、9、10、および11族にあるものである。遷移金属炭化物は、比較的不活性であり、非常に高い融点を有し、極めて硬く耐磨耗性があり、かつ高い熱伝導度および金属様の電気伝導度を有する。
【0005】
遷移金属炭化物は広範な範囲の組成を有することができる。秩序的および無秩序的な炭素欠損形態が存在し、そのうちでは炭化タングステン、WC、が例である。これらの形態で、炭素は、金属原子間の間隙のキャビティに存在する。
【0006】
金属炭化物膜は、化学的気相成長(CVD)、物理的気相成長(PVD)および原子層堆積(ALD)を含めた種々の方法により形成されてきた。
【0007】
基板が2種以上の供給源化学物質の気相パルスと逐次的かつ交互に接触する、金属炭化物膜を形成する「熱的」ALD法は、例えば特許文献1に記載されている。それに記載されている方法によれば、遷移金属源化学物質および炭素源ガスは、高温に維持される基体を含む反応空間の中へと交互にかつ逐次的にパルス供与される。パルス供与順序が、所望の厚みの金属炭化物(例えば、TaC)膜を形成するように繰り返される。ALDの自己制御的な性質に起因して、薄膜は1回の堆積サイクルあたり約1単層(ML)の割合で成長する。
【0008】
六フッ化タングステン、水素および炭素含有ガスから炭化タングステンを堆積させるCVD法は、例えば、特許文献2に記載されている。この炭素含有化合物は、最初に熱的に活性化される。ガス状供給源化学物質のすべては、同時に反応空間に導入され、基板上に不揮発性炭化タングステンの堆積をもたらす。WFとトリメチルアミンとHとのCVD反応は、700℃〜800℃でWC膜を、400℃〜600℃でβ−WC膜を生成することが開示されている(非特許文献1)。H流量は、炭化タングステン膜の堆積速度に影響を及ぼすことが見出された。この開示されたプロセスについての問題は、基板温度が、特に金属化段階で最新の半導体製造作の熱供給と比べてかなり高いことである。
【0009】
PVDプロセスは一般に、照準線に沿って堆積させる。PVDによって炭化タンタルを拡散バリア層用に堆積する1つの方法が、特許文献3に記載されている。炭化タンタル層は、タンタルまたは炭化タンタルをN/CH/Ar雰囲気下でスパッタリングすることによって形成された。しかしながら、照準線の堆積は、複雑な基板の輪郭は、陰の領域で薄膜被覆が不十分になるであろうということを意味する。さらに、照準線の堆積は、供給源から基板に直接到達する低揮発性の供給源物質はそれが出会う最初の固体表面に付着し、従って低共形性の被覆を生成する可能性があることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,482,262号明細書
【特許文献2】国際公開第00/47796号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,973,400号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nakajimaら、J.Electrochem.Soc. 1997年、第144巻、2096−2100頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様によれば、基体の上に金属炭化物膜を成長させるための方法が提供される。この方法は、一般に、反応空間中の基体を、金属供給源化学物質を含む第1の反応物質およびアルミニウム炭化水素化合物を含む第2の反応物質と接触させて、これによりその基体の上に金属炭化物膜を形成する工程を含む。この金属炭化物膜は、好ましくはアルミニウムを含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、反応空間中の基体の上に金属炭化物薄膜を形成するための原子層堆積(ALD)プロセスが提供される。この方法は、基体を第1の金属前駆体および第1のアルミニウム炭化水素化合物の気相パルスに交互にかつ逐次的に接触させて、約6〜約16%のアルミニウムを含む金属炭化物膜が形成されるようにする工程を含む。いくつかの実施形態では、このアルミニウム炭化水素化合物はトリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、および水素化ジメチルアルミニウム(DMAH)のうちの1以上を含む。
【0014】
本発明の別の態様では、アルミニウムを含む金属炭化物膜が、アルミニウム炭化水素化合物を使用して堆積される。アルミニウムの量は、適切なアルミニウム炭化水素化合物を第2の反応物質として選択することにより制御できる。温度、圧力、パルスおよびパージ長さならびにプラズマなどの他の反応条件も、所望のアルミニウム濃度を達成するように調整することができる。いくつかの実施形態では、そのアルミニウム濃度は約6%である。他の実施形態では、アルミニウム濃度は最高約16%である。しかしながら、より高い濃度が可能である。アルミニウムの量を制御することにより、低抵抗率、良好な接着、および耐酸化性を含めた望ましい特性をもつ膜を形成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、当該金属炭化物膜の抵抗率は、アルミニウム炭化水素反応物質、堆積温度および堆積圧力を含めた適切な堆積条件を選択することにより制御される。
【0016】
本発明の別の態様では、良好な接着特性をもつ金属炭化物を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、炭化タンタル膜がハロゲン化タンタル前駆体およびTEAを使用してALDによって堆積される。
【0017】
他の実施形態では、金属炭化物膜の耐酸化性は、その金属炭化物膜中のアルミニウムの量を制御することにより制御される。アルミニウムの量は、ALDプロセスにおいて浸炭剤として使用するためのアルミニウム炭化水素反応物質の選択、および他の反応条件を調整することにより、制御することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、所望のレベルの耐酸化性をもつ金属炭化物薄膜を形成する方法が提供される。この方法は、基体を金属前駆体およびアルミニウム炭化水素化合物の気相パルスに交互にかつ逐次的に接触させることにより、金属炭化物薄膜を堆積する工程であって、1以上の反応条件が、当該金属炭化物薄膜中のアルミニウムの所望の濃度を生成するように選択され、かつ当該金属炭化物中のアルミニウムの濃度は約1〜約30%である工程を含む。
【0019】
他の実施形態では、ゲート電極の仕事関数は、金属炭化物膜中のアルミニウムの量を制御することにより、決定される。このゲート電極は、例えば、フラッシュメモリ構造の中の制御ゲート(control gate)またはCMOSトランジスタの中のゲート電極であってもよい。ゲートスタックは第1のゲート電極層および第2のゲート電極層を含むことができる。この第1のゲート電極層は第1の金属炭化物ゲート電極材料を含み、第2のゲート電極層はポリシリコン、チタンまたは窒化タンタルまたはタングステンなどの第2のゲート電極材料を含む。好ましくはこの第1および第2のゲート電極材料は導電性である。好ましい実施形態では、第1のゲート電極材料は第2のゲート電極材料とは異なる。このゲート電極の仕事関数は、第1の金属炭化物ゲート電極材料によって決定されてもよい。
【0020】
金属炭化物層を含むフラッシュメモリを形成するための方法も提供される。好ましい実施形態では、誘電性層(トンネル酸化物)は基体の上に堆積され、フローティングゲートはこの誘電性層の上に直接堆積される。このフローティングゲートは、例えば、ポリシリコンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、例えばTaNOSフラッシュ構造については、電荷トラップ層がフローティングゲートの代わりに使用される。この電荷トラップ層は窒化ケイ素であってもよい。バリア酸化物(AlOなど)がフローティングゲートまたは電荷トラップ層の上に堆積され、制御ゲートがこのバリア酸化物の上に形成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、基体の上にフラッシュメモリを形成するための方法は、この基体の上に誘電性層を形成する工程と、この誘電性層の直接上におよびこれに接して電荷トラップ層を形成する工程と、この電荷トラップ層の直接上におよびこれに接してバリア酸化物を形成する工程と、このバリア酸化物の上に金属炭化物制御ゲートを形成する工程と、これらの誘電性層、電荷トラップ層、バリア酸化物および制御ゲートをエッチングしてフラッシュ構造を形成する工程と、SiOを堆積することによりこのフラッシュ構造を不動態化する工程と、を含み、この金属炭化物制御ゲートはアルミニウムを含み、SiOの堆積の間、この金属炭化物中のアルミニウムは酸素と反応して上記制御ゲートを自己不動態化する(self−passivate)方法である。
【0022】
当該制御ゲートを形成する工程は、好ましくは、1以上のアルミニウム炭化水素化合物を使用してALDにより金属炭化物ゲート電極層を堆積し、当該金属炭化物層は制御ゲートの仕事関数を制御するようにする工程を含む。この金属炭化物層は、好ましくは約1〜1000Å、より好ましくは約1〜500Å、さらにより好ましくは約25〜200Åの厚さまで堆積される。温度、圧力および反応物質の選択を含めた堆積条件は、当該金属炭化物層中で所望量のアルミニウムを達成し、従って所望の仕事関数および他の特徴を生成するように調整される。例えば、アルミニウム含有量は、当該膜が良好な耐酸化性を有しかつ後のパターニングおよび/または堆積工程の間に自己不動態化できるような含有量であることが好ましい。
【0023】
ポリシリコン、金属または金属窒化物層、例えば窒化チタンまたはタングステン層などのさらなる導電性物質の層が第1のゲート電極層の上に堆積されてもよい。次いでこの構造はパターン形成され、エッチングされて、例えば酸化ケイ素で不動態化される。上記パッシベーションプロセスの間、上記金属炭化物層のエッジは露出され、その金属炭化物中のアルミニウムは酸素と反応して残りの金属膜を自己不動態化する。
【0024】
これらの実施形態のすべては、本願明細書中に開示される本発明の範囲内であることが意図されている。本発明のこれらおよび他の実施形態は、添付の図を参照する好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかとなろう。本発明は、開示されるいずれかの特定の好ましい実施形態に限定されるわけではない。
【0025】
本発明は、好ましい実施形態の詳細な説明から、および添付の図面からよりよく理解されるであろう。これらの図面は、本発明を例証することが意図されているが、本発明を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】いくつかの実施形態に係るALD型プロセスにおけるパルス供与順序のブロック図である。
【図2】いくつかの実施形態に従って形成されるフラッシュメモリ構造の概略図である。
【図3】CMOSトランジスタの中のゲート電極スタックの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
金属炭化物膜、例えば、炭化タンタル(TaC)膜は、フラッシュメモリ構造用の制御電極などの種々の構造を形成するために使用することができる。このような用途では、この膜が下に存在する材料に対する良好な接着ならびに低抵抗率および良好な耐酸化性をも有することが望ましい。
【0028】
望ましい特性をもつ金属炭化物膜は、基体の上に金属膜を浸炭するためにアルミニウム炭化水素化合物を用いることにより、形成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、金属炭化物膜はALD型プロセスにおいて、基体を金属化合物および炭素含有化合物の交互かつ逐次的なパルスに接触させることにより基体の上に形成される。この場合、この炭素含有化合物はアルミニウム炭化水素化合物である。
【0029】
本願明細書に記載される方法および組成物を使用して、制御されたアルミニウム含有量を有する金属炭化物膜を基体の上に形成することができる。反応空間中の基体は気相金属供給源化学物質(または金属化合物)およびアルミニウム炭化水素化合物と接触される。この膜は、好ましくは良好な接着、低抵抗率および良好な耐酸化性を有する。アルミニウム含有量、接着、抵抗率および/または耐酸化性を含めた当該金属炭化物膜の特徴は、適切なアルミニウム炭化水素反応物質を選択することにより制御することができる。反応温度、圧力、パルスおよびパージ時間、パルス供与順序(pulsing sequence)および堆積後のアニーリングなどの反応条件も、所望の特性をもつ膜を達成するように調整することができる。いくつかの実施形態では、この所望の膜特徴は、プラズマ支援(plasma enhanced)ALDプロセスを使用することにより達成されうる。
【0030】
適切なアルミニウム炭化水素化合物および適切な反応条件を選択することにより、特定の状況にとって有利である特性をもつ金属炭化物膜を形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、低抵抗率を有する膜は、TMA、TEAまたはDMAHをアルミニウム炭化水素化合物として使用して形成される。良好な接着を有する膜は、いくつかの実施形態ではTEAおよび金属ハロゲン化物反応物質(TaClなど)を使用して得ることができる。耐酸化性の膜は、いくつかの実施形態では、反応物質、および金属炭化物膜の中の所望のレベルのアルミニウムを与える条件を選択することにより形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、約1〜30%、より好ましくは約6〜16%のアルミニウム濃度をもつ膜も、所望のレベルの耐酸化性を得るために、堆積される。
【0031】
主にフラッシュメモリの用途に関連して本願明細書に記載されるが、当業者が認識するとおり、当該金属炭化物膜および堆積プロセスは、様々なものに関連して使用することができる。例えば、形成される金属炭化物膜は、集積回路(IC)の構成要素(例えば、デュアルダマシン構造において配線(line)の一部を形成する導電性の拡散バリアなど)、CMOSトランジスタの中の金属ゲート電極((アルミニウム濃度に応じて)NMOSまたはPMOSゲート電極など)、または反射防止コーティングであってもよい。他の実施形態では、この金属炭化物膜は、機械的磨耗から保護するための基体の上の硬い皮膜の一部を形成してもよいし、または腐食保護層の構成要素として使用されてもよい。さらなる他の実施形態では、この金属炭化物膜は、例えば、化学反応触媒の一部として、またはエッチング停止バリアとして使用することができる。
【0032】
(定義)
本開示に関しては、「ALDプロセス」または「ALD型プロセス」は一般に、自己飽和的な化学反応を使用して基体の上に単層(分子層)ずつ膜を生成するためのプロセスを指す。ALDの一般原理は、例えば、T.Suntolaにより例えばthe Handbook of Crystal Growth 3,Thin Films and Epitaxy,Part B:Growth Mechanisms and Dynamics, 第14章,Atomic Layer Epitaxy,601−663頁,Elsevier Science B.V. 1994年に、ならびに米国特許第4,058,430号および同第5,711,811号(これらの開示は、参照により本願明細書に援用したものとする)に開示されている。ALDプロセスでは、ガス状反応物質、すなわち、前駆体または供給源物質は、交互にかつ逐次的に反応空間の中へと伝えられ、そこでそれらは基体と接触して表面反応をもたらす。反応条件は、一般に最高約1単層(すなわち原子層または分子層)のみの物質が各パルス供与サイクルの間に一度に堆積されるように、選択される。前駆体間の気相反応および副生成物の任意の所望されない反応は阻止される。なぜなら、前駆体パルスが互いに分離され、かつこの反応チャンバーが不活性ガス(例えば窒素、アルゴンまたは水素)でパージされかつ/または、例えば、前駆体パルス間でポンプ排気システムを使用して排出され、過剰のガス状の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物をそのチャンバーから除去するからである。従って、時間に対するこの反応物質の反応空間の中での濃度プロファイルは重なり合わない。しかしながら、当業者は、反応物質パルスの分離にもかかわらず複数の単層が1以上のALDサイクルにおいて堆積されてもよいということは認識するであろう。
【0033】
「プラズマで励起された種」は、ガスへエネルギーを加えることにより発生されるラジカル、イオンまたは他の励起された種を指す。プラズマで励起された種は、直接のプラズマ発生器(すなわち、「現場での(in situ)」もしくは「直接」プラズマ発生)および/または遠隔のプラズマ発生器(すなわち、「現場外での(ex situ)」もしくは「遠隔」プラズマ発生)を使用して発生されてもよい。エネルギーは、誘導結合、紫外線照射、マイクロ波、静電結合(capacitive coupling)、RF出力の付与などの様々な方法を介してガスに加えられ(または結合され)てもよい。結合エネルギーの不存在下で、プラズマ発生は停止される。プラズマで励起された種としては、水素ラジカルおよび窒素ラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
「プラズマパラメータ」は、1以上のプラズマ発生の変動要素(プラズマ発生器の出力、ガス圧力、ガス(または反応物質)流量、およびプラズマパルス継続時間が挙げられるが、これらに限定されない)を表すために使用される。例として、RF出力を使用するプラズマ発生については、プラズマパラメータとしては、高周波(RF)電源オン時間、RF出力の振幅、RF出力の周波数(デュアル周波数システムについては複数の周波数)、反応物質濃度、反応物質流量、反応空間圧力、全ガス流量、反応物質パルスの継続時間および間隔、およびRF電極の間隔が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「反応空間」は、膜成長をもたらすように条件を調整できる反応器もしくは反応チャンバー(「チャンバー」)、または任意に定められたそれらの中の容積を表すために使用される。この反応空間は、例えば、単ウェーハALD反応器、または複数の基体の上での堆積が同時に起こるバッチALD反応器の中にあってもよい。
【0036】
「吸着」は、表面上での原子または分子の化学的付着を表すために使用される。
【0037】
「基体」は、堆積が所望されるいずれかの表面であり、好ましい実施形態では、集積回路(IC)製造に適したいずれかのワークピースを含めてもよい。典型的な基体としては、シリコン、シリカ、コーティングされたシリコンおよび高k物質(金属酸化物など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「表面」は、反応空間と基体のフィーチャ(feature)との間の境界を表すために使用される。
【0039】
「膜」は、別々のイオン、原子または分子として供給源から基体へと輸送される元素または化合物から、その基体の上に成長した膜を意味する。この膜の厚さは、用途によって変わるであろうし、広い範囲で、好ましくは1原子層〜100ナノメートル(nm)以上で変わってもよい。当該膜がフラッシュメモリにおける仕事関数を定める働きをする実施形態などのいくつかの実施形態では、この厚さは約25Å〜200Åであってもよいが、いくつかの実施形態では厚さは500Åまたは1000Åでさえという高いものであってもよい。他の実施形態では、CMOSゲート用途についてはこの膜は、厚さが約200Å未満、さらにより好ましくは約100Å未満、最も好ましくは約50Å未満である。
【0040】
「金属炭化物膜」は少なくとも1つの金属および炭素を含む膜を表す。この金属は、単一の元素状金属または複数の金属(金属合金など)であってもよい。この金属炭化物膜は、化学量論的、例えば、TaCであってもよく、または非化学量論的、例えば、TaC(式中、「x」は、この膜が過剰の炭素を有する場合は1よりも大きく、またはこの膜が炭素不足であれば1未満である)であってもよい。好ましい実施形態では、本願明細書に記載される方法に従って堆積される金属炭化物膜は第1の金属、炭素、およびアルミニウムを含む。この第1の金属は、典型的には、アルミニウムではない。
【0041】
(ALD法)
ALDは、反応前駆体の逐次的かつ交互のパルスが使用されて、堆積パルスあたり約1原子(または分子)単層の物質が堆積される、自己制御的な(self−limiting)反応に基づく。この堆積条件および前駆体は自己飽和的な反応をもたらすように選択され、その結果、1つのパルスにおいて吸着された層が、同じパルスの気相反応物質と反応性ではない表面停止を残す。異なる反応物質のその後のパルスはそれまでの停止したものと反応として連続的な堆積を可能にする。従って、交互にされたパルスの各サイクルは、典型的にはわずかに約1単層の所望の物質を残す。しかしながら、上で触れたように、当業者は、例えばこれらの反応物質の別々の提供にもかかわらずいくつかの気相反応が起こる場合など、1以上のALDサイクルにおいて複数の単層の物質が堆積されてもよいということを認識するであろう。
【0042】
金属炭化物膜を堆積するための典型的なALD型プロセスでは、1つの堆積サイクルは、基体を第1の反応物質に曝露する工程と、いずれかの未反応の第1の反応物質および反応副生成物をこの反応空間から除去する工程と、この基体を第2の反応物質に曝露する工程と、続く第2の除去工程とを含む。この第1の反応物質は、好ましくは金属前駆体であり、第2の反応物質は、好ましくは浸炭(または炭素に寄与する)化合物である(しかし、いずれかの反応物質を用いてこのプロセスを始めることは可能である)。
【0043】
この金属化合物は、好ましくはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)からなる群から選択される1以上の金属を含む。
【0044】
典型的には、例えば、TaClおよびHfClなどのハロゲン化物反応物質が、ALD堆積における金属前駆体として使用される。なぜなら、これらの前駆体は安価でかつ比較的安定であるが、同時に様々な種類の表面基に対して反応性であるからである。
【0045】
炭素に寄与する化合物は、好ましくはアルミニウム炭化水素化合物である。このアルミニウム炭化水素化合物は、例えばアルカン、アルケンまたはアルキンであってもよい。いくつかの実施形態では、このアルミニウム炭化水素化合物は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)および水素化ジメチルアルミニウム(DMAH)からなる群から選択される。
【0046】
このアルミニウム炭化水素化合物は、好ましくは、当該金属炭化物膜において所望の特徴を達成するように選択される。これらとしては、接着、抵抗率、耐酸化性および仕事関数が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、適切なアルミニウム炭化水素化合物および適切な堆積条件を選択することにより、当該金属炭化物中のアルミニウム膜のレベルを制御することができる。例えば、特定の膜においてより高いアルミニウム濃度を達成するためには、TMAよりもTEAが選択されてもよい。いくつかの実施形態では、異なるアルミニウム炭化水素化合物が異なるALD堆積サイクルにおいて使用されて、当該金属炭化物膜中でのアルミニウムの組み込みが改変されてもよい。例えば、金属炭化物層を堆積するための堆積プロセスにおいて、第1のALDサイクルは第1のアルミニウム化合物を使用してもよく、かつ1以上のALDサイクルは異なるアルミニウム化合物を使用してもよい。
【0047】
Arなどの不活性ガスによる前駆体の分離によって反応物質間の気相反応が防止され、自己飽和的な表面反応が可能になる。反応は自己飽和するため、基体の厳密な温度制御およびこの前駆体の正確な投与量制御は必要とはされない。しかしながら、基体温度は、投入される(incident)ガス種が単分子層の中へと凝縮せず、表面を分解することもしない温度であることが好ましい。過剰の化学物質および(もしあるなら)反応副生成物は、次の反応性の化学物質のパルスがそのチャンバーの中に導入される前に、その反応空間から除去される。所望されないガス状分子は、不活性なパージ用ガスの助けを借りて、反応空間から効果的に排出することができる。このパージ用ガスはそれらの余分な分子をチャンバーから外へと導く。このパージ操作(purging)を支援するために、真空ポンプを使用してもよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ALD型プロセスは、集積回路ワークピースなどの基体の上に金属炭化物膜を形成するために使用される。好ましくは、各ALDサイクルは2つの別個の堆積工程または段階を含む。当該堆積サイクルの第1段階(「金属段階」)では、金属を含む第1の反応物質(すなわち、金属供給源物質または化学物質)は反応空間へとパルス供与され、基体表面の上へと化学吸着し、その基体の表面の上にわずかに約1単層を形成する。この段階の金属供給源物質は、好ましい条件下で、その表面に結合することができる金属供給源物質の量が、利用できる結合部位の数によって、および化学吸着される種(リガンドを含む)の物理的サイズによって決定されるように、選択される。金属供給源化学物質のパルスによって残された化学吸着された化学吸着された層は、そのパルスの残りの化学物質と非反応性の表面を有して自己停止する。この現象は、本願明細書において「自己飽和」と呼ばれる。当業者は、この段階の自己制御的性質によってALDサイクル全体が自己制御的になることを認識するであろう。
【0049】
この金属供給源物質は、好ましくは、堆積されつつある膜において所望される金属種を含む。いくつかの実施形態では、本願明細書において「金属化合物」とも呼ばれるこの金属供給源化学物質はハロゲン化物であり、吸着される単層はハロゲンリガンドを有して停止する。いくつかの実施形態では、この金属化合物は、金属臭化物、金属塩化物、および金属ヨウ化物からなる群から選択される。例として、タンタル含有金属炭化物膜は、TaBr、TaCl、およびTaI(式中、w、x、y、およびzは1〜5の数字である)からなる群から選択される金属化合物を使用して堆積することができる。炭化タンタル膜が所望されるいくつかの実施形態では、TaClがこの金属化合物として使用される。
【0050】
過剰の金属供給源物質および(もしあるなら)反応副生成物は、例えば不活性ガスを用いてパージすることにより、反応空間から除去される。過剰の金属供給源物質およびいずれかの反応副生成物は、ポンピングシステムによって発生される真空の助けを借りて除去されてもよい。
【0051】
ワークピース表面上での最大工程被覆は、典型的には、当該金属供給源物質が各自己制御的パルスにおいてわずかに約1つの単層を形成する場合に得られる。化学吸着された種のサイズおよび反応性部位の数に起因して、いくらか単層未満が金属反応物質の各パルスにおいて堆積されてもよい。従って、金属供給源物質の最大被覆は単層未満である場合がある。プロセス条件によっては、いくつかの実施形態では、第1の反応の複数の単層が基体表面の上に見出されるということが起こる可能性がある。
【0052】
当該堆積サイクルの第2段階(「炭素に寄与する段階」)では、本願明細書において「第2の供給源化学物質」とも呼ばれる第2の反応物質がこの反応空間の中へとパルス供与され、先行するパルスによって基体表面の上に残された金属含有分子と反応するようにされる。この第2の供給源化学物質はアルミニウム炭化水素化合物である。好ましくは、この第2段階では、炭素は、この第2の供給源化学物質と、上記金属供給源物質によって残された単層との相互作用によって当該膜の中へと組み込まれる。好ましい実施形態では、第2の供給源化学物質と化学吸着された金属種との間の反応によって当該基体の上に金属炭化物膜が生成される。
【0053】
アルミニウムも、この第2段階でこの膜の中へと組み込まれてもよい。反応条件(反応物質の選択、温度、圧力ならびにパルス時間およびパージ時間が挙げられるが、これらに限定されない)は、この膜の中で所望のアルミニウム含有量を達成するように調整される。いくつかの実施形態では、アルミニウム含有量は約0%〜約30、より好ましくは約6〜約16%で変動してもよい。他の実施形態では、アルミニウム含有量はより高くてもよい。
【0054】
このアルミニウム炭化水素は、アルカン、アルケンおよびアルキンからなる群から選択されてもよい。例えば、この炭素含有化合物はTMA、DMAH、またはTEAであってもよい。いくつかの実施形態では、複数のアルミニウム炭化水素化合物が使用されてもよい。例えば、2以上のアルミニウム炭化水素化合物が同時に同じパルスにおいて与えられてもよい。他の実施形態では、2以上の異なるアルミニウム炭化水素化合物が、単一の堆積プロセスを用いる別個のALDサイクルで与えられてもよい。
【0055】
過剰の第2の供給源化学物質および(もしあるなら)反応副生成物は、パージ用ガスパルスおよび/またはポンピングシステムによって発生される真空によって反応空間から除去される。パージ用ガスは、好ましくはアルゴン(Ar)またはヘリウム(He)(これらに限定されない)などのいずれかの不活性ガスである。パージ(すなわち、パージ用ガスパルス)または他の反応物質除去工程が介在する場合は、1つの段階には、すぐに別の段階が続くと一般に考えられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、例えば堆積された膜を還元するため、または当該膜の中にさらなる種を組み込むために、付加的な反応物質が、利用されてもよい。いくつかの実施形態では、第3の反応物質は、例えば現場の(in situ)または遠隔のプラズマ発生器により発生される水素のプラズマで励起された種などの還元剤であってもよい。この還元剤は、堆積された膜を還元するために、上記金属段階および/または上記炭素に寄与する段階の後にこの反応空間へとパルス供与され(またはその反応空間の中で発生され)てもよい。この還元剤は、例えば、膜の中および/または基体の中のハロゲン原子または酸化性物質(例えば、酸素原子)などの不純物を除去するために使用してもよい。還元剤は、当該金属炭化物膜の中へのアルミニウムの組み込みを制御し、これによりこの膜の特性を制御するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、熱的ALDおよびプラズマALDサイクルは、堆積された膜の中のアルミニウム濃度を制御するために同じ堆積プロセスで使用される。プラズマALDサイクルに対する熱的ALDサイクルの比は、その薄膜の中の所望のアルミニウム濃度および/または濃度プロファイルを達成するように選択することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、プラズマパラメータは、当該金属炭化物膜の中へのアルミニウムの組み込みのレベルおよび/または炭素に対するタンタルの比を改変するように選択することができる。つまり、いくつかの実施形態では、膜組成は、プラズマパラメータの関数として制御することができる。組成に加えて、結晶性、結晶格子定数、抵抗率および結晶応力などの他の膜の特徴は、適切なプラズマパラメータを選択することにより調整することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、プラズマパラメータは、プラズマパラメータと膜組成および特徴との間にすでに確立された関係から選択される。「プラズマパラメータ」としては、例えば、RF出力およびRF周波数を挙げることができる。所望の膜特性を達成するために、1つのプラズマパラメータ(RF出力など)、または複数のプラズマパラメータ(すなわち、RF出力およびRF周波数などの、一組のプラズマパラメータ)が、1以上のALDサイクルにおいて調整されてもよい。プラズマパラメータは、好ましくは所望の組成を有する金属炭化物膜を与えるように選択される。ある場合には、プラズマパラメータは、所望のゲートスタック仕事関数を与えるための特定の組成を有するゲート電極を形成するように選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、金属炭化物膜用の堆積処方は、プラズマパラメータを選択することにより決定または設計される。例として、RF出力は、必要に応じて化学量論に影響を及ぼすように選択されてもよい。別の例として、特定のプラズマパルス継続時間またはRF電源オン時間を使用して所望の組成を得ることができる。さらに別の例として、所望の組成は、RF出力、反応物質パルス継続時間、および反応物質流量の組み合わせを選択することにより達成されうる。
【0060】
好ましくは、上記プラズマで励起された種は水素を含む。水素のプラズマで励起された種としては、水素ラジカル(H)および水素陽イオン(例えば、H、H)を挙げることができるが、これらに限定されない。水素のプラズマで励起された種は、例えば分子状水素(H)または水素含有化合物(例えば、シラン、ジボランなど)から現場で(in situ)または遠隔で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される反応物質のうちの1以上は、プラズマとして与えられてもよい。
【0061】
堆積パラメータ(プラズマ、反応物質など)と薄膜組成との間の関係は、パラメータ(1つまたは複数個)を選択して、所望の厚さの膜が形成されるまで、その選択されたパラメータ(1つまたは複数個)を使用して特定の原子層堆積プロセスによって金属炭化物膜を堆積することにより、確立することができる。次いで膜組成および特徴が決定され、異なるパラメータを使用して別の膜が堆積されてもよい。このプロセスは、パラメータと膜組成との間の関係を明らかにするために、異なるパラメータについて繰り返すことができる。
【0062】
適切な反応条件を選択することにより、所望の組成をもつ化合物膜を形成することができる。
【0063】
1つの実施形態では、ALD型プロセスによる金属炭化物膜の形成は、1以上の堆積サイクルを含み、その各々は、
【0064】
1. 金属化合物を反応空間に与える工程と、
【0065】
2. 過剰の金属化合物および反応副生成物をパージおよび/または排出する工程と、
【0066】
3. この反応空間にアルミニウム炭化水素化合物を与える工程と、
【0067】
4. 過剰のアルミニウム炭化水素化合物および反応副生成物を反応空間からパージおよび/または排出する工程とを含む。
【0068】
工程1〜4は熱的ALDサイクルと呼ぶことができる。工程1〜4は、所望の厚さおよび所望のアルミニウム濃度をもつ金属炭化物膜を生成するために、必要に応じて繰り返すことができる。例えば、1原子層または数原子層〜100ナノメートル(nm)以上の範囲の均一な厚さをもつ金属炭化物層を生成するために、工程1〜4は、最高10回、100回または1000回以上さえも繰り返してもよい。いくつかの実施形態では、工程1〜4は、金属炭化物膜が約1〜約1000Å、好ましくは約1000Å未満、より好ましくは約500Å未満の厚さをもって形成されるまで、繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、当該膜は約300Å未満の厚さを有し、他の実施形態では、約200Å未満の厚さを有する。1つの実施形態では、この厚さは好ましくは約100Å〜約200Åである。他の実施形態では、この厚さは好ましくは約20〜約200Åである。当業者なら、当該金属炭化物膜の厚さは特定の用途に応じて変わりうるということはわかるであろう。例として、NMOSゲート用途については、この厚さは典型的には約50Å〜約500Åである。別の例として、MIMコンデンサ用途(例えば、DRAM、eDRAMなど)についてはこの厚さ範囲は典型的には約50Å〜約200Åである。さらに、この金属炭化物薄膜がフラッシュメモリにおける仕事関数を定める用途については、この厚さは好ましくは約20Å〜約200Åである。
【0069】
いくつかの実施形態では、工程1および2は、工程3および4の前に所定の回数繰り返される。例えば、工程1および2は、工程3および4の前に5回繰り返されてもよい。別の例として、工程1および2は、工程3および4の前に10回繰り返されてもよい。組成の均一性をもつ金属炭化物膜が所望される場合、工程1および2が繰り返される回数は、その金属膜の実質的な浸炭を防ぐと思われる回数を超えてはならない、ということを理解されたい。1つの実施形態では、金属化合物は低い分解温度を有し、工程1および2が繰り返される回数は1を超えない。
【0070】
本願明細書で論じられるように、炭化水素アルミニウム反応物質の選択は、接着、抵抗率、耐酸化性および/または仕事関数などの所望の特徴をもつ膜の堆積を達成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、複数のアルミニウム炭化水素化合物が使用される。加えて、種々の反応条件を、所望の膜の品質および組成を達成するように操作することができる。これらの反応条件としては、反応温度、供給源容器温度、圧力、流量、プラズマパラメータならびにパルス時間およびパージ時間が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
1つの実施形態では、ALD型プロセスによる金属炭化物膜の形成は2以上の堆積サイクルを含み、第1のサイクルは、
【0072】
1. 金属化合物を反応空間に与える工程と、
【0073】
2. 過剰の金属化合物および反応副生成物をパージおよび/または排出する工程と、
【0074】
3. 第1のアルミニウム炭化水素化合物を反応空間に与える工程と、
【0075】
4. 過剰のアルミニウム炭化水素化合物および反応副生成物を反応空間からパージおよび/または排出する工程とを含み、
【0076】
第2の堆積サイクルは、
【0077】
5. 金属化合物を反応空間に与える工程と、
【0078】
6. 過剰の金属化合物および反応副生成物をパージおよび/または排出する工程と、
【0079】
7. 第2のアルミニウム炭化水素化合物を反応空間に与える工程と、
【0080】
8. 過剰のアルミニウム炭化水素化合物および反応副生成物をその反応空間からパージおよび/または排出する工程とを含む。
【0081】
第1および第2のサイクルは連続的である必要はなく、第2のサイクルに対する第1のサイクルの比は、所望の組成を達成するように選択することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、この堆積サイクルは、上記反応物質のうちのいずれかを用いて始めることができる。好ましくは、第1および第2のアルミニウム炭化水素化合物は異なる化合物である。好ましくは、第1および第2のアルミニウム炭化水素化合物はTMA、TEA、またはDMAHを含む。いくつかの実施形態では、第1のアルミニウム炭化水素化合物はTEAを含み、第2の炭化水素化合物はTMAを含む。いくつかの実施形態では、TEAを使用する複数の堆積サイクルが実施され、次いでTMAを使用する複数の堆積サイクルが実施される。
【0083】
いくつかの実施形態では、第1のアルミニウム炭化水素パルスと第2の炭化水素パルスとの間の比は約1:100〜100:1である。好ましくは、第1および第2のアルミニウム炭化水素パルス間の比は約5:1〜約1:5である。いくつかの実施形態では、第1および第2のアルミニウム炭化水素パルス間の比は約1:1である。
【0084】
いくつかの実施形態では、プラズマは当該金属炭化物膜の堆積の間、使用することができる。1つの実施形態では、ALD型プロセスによる金属炭化物膜の形成は、1以上のプラズマALD堆積サイクルを含み、その各々は、
【0085】
1. 金属化合物を反応空間に与える工程と、
【0086】
2. 過剰の金属化合物および反応副生成物をパージおよび/または排出する工程と、
【0087】
3. 第1のアルミニウム炭化水素化合物を反応空間に与える工程と、
【0088】
4. 過剰のアルミニウム炭化水素化合物および反応副生成物をその反応空間からパージおよび/または排出する工程と、
【0089】
5. プラズマで励起された種を反応空間に与える工程と、
【0090】
6. 過剰のプラズマ供給源および反応副生成物をその反応空間からパージおよび/または排出する工程とを含む。
【0091】
工程1〜6は、プラズマ堆積サイクルと呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、このプラズマ供給源は金属化合物の後かつアルミニウム炭化水素化合物の前に与えることができる。いくつかの実施形態では、当該堆積サイクルは上記反応物質のうちのいずれを用いて開始することもできる。好ましくは、上記プラズマで励起された種は水素を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、プラズマALDサイクルおよび熱的ALDサイクルが同じ堆積プロセスにおいて使用される。熱的ALDサイクルとプラズマALDサイクルとの間の比は、典型的には約1:100〜100:1である。好ましくは、第1および第2のアルミニウム炭化水素パルス間の比は約5:1〜約1:5である。いくつかの実施形態では、熱的ALDサイクルとプラズマALDサイクルとの間の比は約1:1である。
【0093】
以下の一般的条件は、本願明細書に開示される堆積サイクルのいずれにも当てはまる。反応温度は、好ましくは約150〜約550℃、より好ましくは約300〜約400℃である。いくつかの実施形態では、反応温度は約350〜375℃である。
【0094】
反応圧力は約0.5〜約10torr(約67Pa〜約1330Pa)である。いくつかの実施形態では、圧力は約2〜約7torr(約267Pa〜933Pa)である。この圧力は、望ましい成長速度および許容できる均一性を達成するように調整されることが好ましい。
【0095】
いくつかの実施形態では、反応物質容器温度は、所望の特徴をもつ膜を与えるように選択することができる。いくつかの実施形態では、上記ハロゲン化物反応物質容器温度は約40℃〜約80℃である。例えば、TaClを金属前駆体として使用するタンタル含有膜の堆積については、この反応物質容器温度は約45℃〜約70℃、より好ましくは約65℃であってもよい。
【0096】
金属反応物質パルス時間は、好ましくは約0.1〜約20秒、より好ましくは約1〜約10秒である。
【0097】
アルミニウム炭化水素化合物パルス時間は、好ましくは約0.1〜約20秒、より好ましくは約0.5〜約2秒である。いくつかの実施形態では、TMAがアルミニウム炭化水素反応物質として使用され、約1秒よりも長い、より好ましくは約2秒よりも長いパルス時間が使用される。他の実施形態では、TEAがアルミニウム炭化水素反応物質として使用され、約1秒のパルス時間が用いられる。他の実施形態では、DMAHがアルミニウム炭化水素反応物質として使用され、約1秒のパルス時間が用いられる。他の実施形態では、2以上の異なるアルミニウム炭化水素反応物質を使用することができる。さらなる他の実施形態では、より長いパルス時間を使用してもよい。いくつかの実施形態では、基体上での上記化合物の飽和に影響を及ぼすために、より長いパルス時間を、当該アルミニウム炭化水素化合物に対して使用することができる。
【0098】
パージ時間は、一般的に約0.1〜約10秒、より好ましくは約2〜約8秒である。いくつかの実施形態では、約6秒のパージ時間が使用される。しかしながら、他の実施形態では、より長いパージ時間を使用してもよい。いくつかの実施形態では、当該金属反応物質および当該アルミニウム炭化水素反応物質をパージするためにはパージ時間は同じであるが、他方で、他の実施形態ではパージ時間は異なる反応物質について異なる。
【0099】
流量は、上記不活性なパージガス(Arなど)については一般に約100〜約400sccmである。金属前駆体およびアルミニウム炭化水素の両方についてのキャリアの流量は、好ましくは約100〜約400sccmである。このキャリアガスは、好ましくはArなどの不活性ガスであり、上記パージガスと同じであってもよいし、それとは異なっていてもよい。当該パージガスおよびキャリアガスの流量は、当業者なら分かるように、一部は特定の反応器に基づいて決定することができる。
【0100】
図1を参照して、ALD型プロセスによって金属炭化物膜を形成するための例示的な実施形態が例証される。最初の表面停止の後、必要に応じて、第1の反応物質または供給源物質が基体またはワークピースへと供給され、またはパルス供与される(10)。好ましい実施形態によれば、この第1の反応物質パルスはキャリアガスの流れおよび金属前駆体、好ましくは注目するワークピース表面と反応性である揮発性ハロゲン化物化合物を含む。このハロゲン化物化合物は、当該金属炭化物膜の一部を形成することになる金属種を含む。従って、金属含有種はこのワークピース表面の上へと吸着する。この第1の反応物質パルスはこのワークピース表面を自己飽和し、そのためこの第1の反応物質パルスのいずれの過剰の構成成分もこのプロセスによって形成される単層とさらに反応しない。自己飽和はリガンド(この単層の末端にあり、この層をさらなる反応から保護するハロゲン化物の尾部など)に起因する。いくつかの実施形態では、第1の反応物質はTaClなどのハロゲン化タンタル化合物である。
【0101】
次いで過剰の第1の反応物質はこの反応空間から除去される(20)。好ましくは、工程104は、好ましくは反応チャンバーの約2倍体積よりも多いパージガス、より好ましくは約3チャンバー体積よりも多くを用いて過剰の反応物質および反応物質副生成物を反応空間から拡散させるまたはパージするのに十分な時間キャリアガス(例えば、ArまたはH)を流し続けながら、第1の反応物質または化学物質の流れを停止することだけを伴う。好ましくは、除去(20)は、第1の反応物質パルスの流れを停止した後、約0.1秒〜20秒間パージガスを流し続けることを含む。パルス間パージは、1999年9月8日出願の、発明の名称「IMPROVED APPARATUS AND METHOD FOR GROWTH OF A THIN FILM(薄膜を成長させる、改良された装置および方法)」の同時係属中の米国特許出願第09/392,371号に記載されており、この特許出願の開示は、参照により本願明細書に援用したものとする。他の配置では、このチャンバーは、交互の化学物質間にポンプ排出されてもよい。例えば、1996年6月6日公開の、発明の名称「METHOD AND APPARATUS FOR GROWING THIN FILMS(薄膜を成長させるための方法と装置)」の国際公開第96/17107号パンフレットを参照。この特許文献の開示は、参照により本願明細書に援用したものとする。一緒にすると、吸着(10)および反応物質除去(20)は当該堆積サイクルにおける第1段階50を表す。例証された堆積サイクルにおける第1段階50は、従って上記金属段階である。
【0102】
続けて図1を参照して、第2の反応物質または供給源化学物質はワークピースへとパルス供与される(30)。この第2の化学物質は、第1の反応物質によって残された単層と反応するかまたはその上に吸着する。いくつかの実施形態では、この第2の反応物質は工程10で堆積された金属含有種からリガンドを除去する。図示された実施形態では、第2の反応物質は、第1の反応物質によって堆積された層と反応して金属炭化物を形成するアルミニウム炭化水素化合物である。このアルミニウム炭化水素化合物は、上記金属段階で形成された金属層の中に炭素を堆積する。いくつかの実施形態では、このアルミニウム炭化水素化合物は、キャリアガス(例えば、H)、好ましくは不活性なキャリアガス(例えば、He、Ar)とともにパルス供与される。
【0103】
成長しつつある膜の中に炭素を堆積するために十分な時間の後、このアルミニウム炭化水素化合物の供与は停止され、(もしあるなら)反応副生成物(同様に揮発性であることが好ましい)が、好ましくはパージガスによって反応空間から除去される(40)。この除去は、工程20について記載されたとおりのものであってもよい。一緒にすると、工程30および40は、炭素に寄与する段階60と呼ぶこともできる、例証されたALDプロセスの第2段階を表す。
【0104】
工程10〜40は、所望の厚さの金属炭化物層を形成するために繰り返されてもよい(70)。繰り返し工程70は、約1単層以下の厚さをもつ金属炭化物膜が所望される場合は、排除されてもよい。
【0105】
本願明細書に記載されるALD型プロセスについては、基体は、好ましくは約150℃〜約550℃、より好ましくは約350℃〜約400℃の温度に維持される。チャンバーは、好ましくは約200mTorr〜約10Torr(約27Pa〜約1330Pa)、より好ましくは約1Torr〜約8Torr(約133Pa〜約1064Pa)の圧力に維持される。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1の反応物質はTaClなどのハロゲン化タンタルであり、第2の反応物質はTMA、DMAH、またはTEAなどのアルミニウム炭化水素化合物であり、形成される膜は炭化タンタルである。この炭化タンタル膜は、好ましくはアルミニウムを含む。いくつかの実施形態では、この炭化タンタル膜は約6〜約16%のアルミニウムを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、この膜は、堆積後にアニーリングすることができる。堆積後に当該膜をアニーリングすることで、当該薄膜の特性を改変することができる。例えば、アニーリングによって、膜の水素および塩素含有量を改変することができる。好ましくは、アニーリングの間、基体温度は約500℃〜約1200℃である。いくつかの実施形態では、このアニーリング工程の間の基体温度は約600℃〜約1000℃である。好ましくは、このアニーリング工程は不活性雰囲気の中で行われる。アニーリングのための好ましい不活性雰囲気は窒素、ヘリウム、およびアルゴンを含む。好ましくは、圧力は、アニーリング工程の間、ほぼ大気圧である。いくつかの実施形態では、圧力は大気圧より高くてもよいし、大気圧より低くてもよい。いくつかの実施形態では、アニーリング雰囲気は低酸素分圧を含む。
【0108】
(フラッシュメモリ)
いくつかの実施形態では、制御ゲートの少なくとも一部を形成するために金属炭化物膜が本願明細書に記載されるALDによって堆積されている、フラッシュメモリ構造が提供される。例示的なフラッシュメモリ構造の主要な要素が図2に図示されている。誘電性層(トンネル酸化物)110が基体100の上に堆積される。誘電性層110は典型的にはSiOであるが、いくつかの実施形態では、誘電性層110は高k物質であってもよい。「高k」物質は、一般に、約7を超えるk値を有する金属酸化物の形態であり、例としては酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化タンタル(Ta)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、ランタノイド酸化物、およびこれらの組合せ(HfSiOおよびHfZrOなど)などがある。典型的には酸化物であるが、誘電性層110は別の種類の物質であってもよい。
【0109】
フローティングゲート120がこの誘電性層の上に直接堆積される。フローティングゲート120は、例えばポリシリコンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、フローティングゲート120は電荷トラップ層で置き換えられる。いくつかの実施形態では、この電荷トラップ層は窒化ケイ素であるが、他の物質も可能である。
【0110】
バリア酸化物(またはブロッキング誘電体)130がフローティングゲートまたは電荷トラップ層120の上に形成される。いくつかの実施形態では、バリア酸化物130はAlを含むが、AlLaO、AlZrOおよびHfLaOなどの他の物質を使用することができる。バリア酸化物130は、例えば、フローティングゲートまたは電荷トラップ層120に接した底部誘電性物質、上に存在する制御ゲート140に接した上部誘電性物質と、この上部誘電性物質と底部誘電性物質との間に位置する、介在する窒化物層とを含む、ONO(酸化物窒化物酸化物)構造であってもよい。
【0111】
制御ゲート140はこのバリア酸化物の上に形成される。制御ゲート140を形成することは、好ましくは、1以上のアルミニウム炭化水素化合物を使用してALDによって金属炭化物ゲート電極層150を堆積し、当該金属炭化物層が制御ゲート140の仕事関数を制御するようにする工程を含む。好ましい実施形態では、この金属炭化物はTaCである。金属炭化物層150は好ましくは約100〜200Åの厚さまで堆積される。堆積条件、例えば温度、圧力、パルスおよびパージ時間、(使用する場合は)プラズマ条件および反応物質の選択は、金属炭化物層150中の所望量のアルミニウムを達成し、従って所望の仕事関数を生成するように調整される。加えて、アルミニウム含有量は、好ましくは、後のパターニングおよび/または堆積工程の間にその膜が自己不動態化することができるようなものである。
【0112】
いくつかの実施形態では、この金属炭化物層は全体の制御ゲートとしての役割を果たす。他の実施形態では、第2の上方ゲート電極層160は、第1の下方ゲート電極層150の上にかつそれに接して堆積される。第2のゲート電極層160は、ポリシリコン、窒化チタンなどの導電性物質および/またはタングステンなどの金属を含む。上方ゲート電極層160は、下方ゲート電極層150よりも厚くてもよい。いくつかの実施形態では、上方ゲート電極層160は約1000Åの厚さを有する。典型的に、上方ゲート電極層160は、制御ゲート140の仕事関数には寄与しない。しかしながら、いくつかの実施形態では、下方ゲート電極層150および上方ゲート電極層160の厚さは、所望の仕事関数が達成されるように各々が仕事関数に寄与するように、選択される。
【0113】
誘電性層110、フローティングゲートまたは電荷トラップ層120、バリア酸化物130および上方ゲート電極層160(存在する場合)に適した物質は、当該技術分野で公知であり、特定の状況に応じて当業者によって選択されてもよい。誘電性層110は、ALDまたはPEALDなどの当該技術分野で公知のいずれかの堆積方法によって堆積されてよい。上方ゲート電極層160は、好ましくは化学気相成長(CVD)型または物理気相成長(PVD)型プロセスによって堆積される。いくつかの実施形態では、バリア酸化物130および制御ゲート150は、気中遮断(air break)は全くなく同じプラットフォームの上に堆積される。
【0114】
次いでこの構造体はパターン形成され、エッチングされ、例えば酸化ケイ素を用いて不動態化される。この不動態化プロセスの間、当該金属炭化物層のエッジは露出されて、その金属炭化物中のアルミニウムは酸素と反応し、残りの金属膜を自己不動態化する。
【0115】
(ゲート電極)
いくつかの実施形態では、金属炭化物膜が本願明細書に記載されるALDによって堆積されてゲート電極の少なくとも一部を形成するトランジスタ構造が提供される。CMOSトランジスタ中のゲートスタックの概略図が図3に与えられる。特に、半導体基板200は、トランジスタゲートスタック210がその上に形成されて示されている。図示された実施形態では、基板200は単結晶シリコンウェーハの上方部分を含むが、当業者なら、この基板は他の半導体物質をも含んでもよいということはわかるであろう。ゲートスタック210は、金属炭化物を含むゲート電極層220を具える。側壁スペーサ230および絶縁層240は、電極220を従来の様式で保護および隔離する。より高度に導電性のストラッピング層250(典型的には金属を含む)も、ケイ素含有ゲート電極層220の上に図示されている。ストラップ250は、このウェーハにわたるトランジスタゲートの間の迅速な信号伝搬を容易にし、このゲートを論理回路に接続する。集積回路トランジスタは、図3の形態とはまったく似ていない様々な形態を有することができるということに留意されたい。しかしながら、好ましい実施形態のゲート電極層220は、様々なトランジスタ型(例えば、ヘテロ接合BiCMOSトランジスタ)におけるゲート電極へ応用されるであろう。
【0116】
ゲート電極220の少なくとも一部分は、1以上のアルミニウム炭化水素化合物を使用してALDによって金属炭化物層を堆積することにより形成される。いくつかの実施形態では、この金属炭化物層がゲート電極220の仕事関数を制御する。好ましい実施形態では、この金属炭化物はTaCを含む。この金属炭化物層は、好ましくは約20〜200Åの厚さまで堆積される。堆積条件、例えば温度、圧力、パルス時間およびパージ時間、(使用する場合は)プラズマ条件ならびに反応物質の選択は、当該金属炭化物層中の所望量のアルミニウムを達成し、従って所望の仕事関数を生成するように調整される。加えて、アルミニウム含有量は、好ましくは、その膜が、後のパターニングおよび/または堆積工程の間に自己不動態化することができるようなものである。
【0117】
いくつかの実施形態では、この金属炭化物層は、全体のゲート電極220としての役割を果たす。他の実施形態では、第2の上方ゲート電極層は、この金属炭化物層の上にかつそれに接して堆積される。この第2の上方ゲート電極層は、ポリシリコン、窒化チタンなどの導電性物質および/またはタングステンなどの金属を含む。この上方ゲート電極層は、この金属炭化物ゲート電極層よりも厚くてもよい。いくつかの実施形態では、上方ゲート電極層は約1000Åの厚さを有する。典型的には、上方ゲート電極層はゲート電極の仕事関数には寄与しない。しかしながら、いくつかの実施形態では、当該下方ゲート電極層および上方ゲート電極層の厚さは、所望の仕事関数が達成されるように各々が仕事関数に寄与するように、選択される。この上方ゲート電極層は、好ましくは化学気相成長(CVD)型または物理気相成長(PVD)型プロセスによって堆積される。
【実施例】
【0118】
炭化タンタル膜を、EmerALDおよびPulsar反応器の両方の中で、ALD型プロセスによって二酸化ケイ素(SiO)、Al、SiN、HfOおよびTa基体の上に堆積した。このプロセスにおける工程の順序は、金属化合物(TaCl)、アルミニウム炭化水素(TMAまたはTEA)およびパージガス(Ar)をこの基体を収容する反応空間の中へと交互にかつ逐次的にパルスとして加えることを含んでいた。堆積を様々な反応条件下で行った。
【0119】
ガスパルスの順序は以下のとおりであった。
【0120】
(1)TaClパルス;
【0121】
(2)Arパージ;
【0122】
(3)TMAまたはTEAパルス;および
【0123】
(4)Arパージ。
【0124】
工程(1)〜(4)を繰り返して、炭化タンタル膜を形成した。
【0125】
(TMAを使用する炭化タンタル堆積)
1つの実験では、TMAおよびTaClから約375℃の反応温度で炭化タンタル膜を二酸化ケイ素(SiO)の上に堆積した。ガスパルスおよびパージ(ミリ秒、「ms」)の順序は以下のとおりであった。
【0126】
(1)TaClパルス(1000ms);
【0127】
(2)Arパージ(3000ms);
【0128】
(3)TMAパルス(1000ms);および
【0129】
(4)Arパージ(3000ms)。
【0130】
工程(1)〜(4)を繰り返して、およそ3.5Å/サイクルの堆積速度で均一な炭化タンタル膜を形成した。
【0131】
(TEAを使用する炭化タンタル堆積)
別の実験では、TEAおよびTaClから約375℃の反応温度で炭化タンタル膜を二酸化ケイ素(SiO)の上に堆積した。ガスパルスおよびパージ(ミリ秒、「ms」)の順序は以下のとおりであった。
【0132】
(1)TaClパルス(1000ms);
【0133】
(2)Arパージ(3000ms);
【0134】
(3)TEAパルス(2000ms);および
【0135】
(4)Arパージ(4000ms)。
【0136】
工程(1)〜(4)を繰り返して、およそ4Å/サイクルの堆積速度で均一な炭化タンタル膜を形成した。
【0137】
(TaC膜特性)
上記の実施例に概略を示した手順に従って形成した200Åの炭化タンタル膜の抵抗率は、TMAをアルミニウム炭化水素として使用した場合は約1200μohm*cmでり、TEAをアルミニウム炭化水素反応物質として使用した場合は約700μohm*cmであった。
【0138】
Al基体の上に堆積した場合は、TMAをアルミニウム炭化水素化合物として使用して堆積したTaC膜は、引っかき試験およびテープ試験においてその基体から層間剥離した。しかしながら、他は同一の条件下でTEAを使用して堆積したTaC膜は、同じ測定を使用しても良好な接着を示した。
【0139】
上述の実施形態のうちの少なくともいくつかにおいて、実施形態で使用されたいずれかの要素は、置き換えは実現可能ではない場合を除いて、別の実施形態において交換可能に使用することができる。
【0140】
本発明の範囲から逸脱せずに種々の他の省略、付加および改変を、上に記載された方法および構造に対してなしてもよいということは、当業者なら分かるであろう。すべてのこのような改変および変更は、添付の特許請求の範囲によって定められるところの本発明の範囲内に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応空間中の基体の上に金属炭化物薄膜を形成するための原子層堆積方法であって、
前記基体を第1の金属前駆体および第1のアルミニウム炭化水素化合物の気相パルスに交互にかつ逐次的に接触させて、約6〜約16%のアルミニウムを含む金属炭化物膜が形成されるようにする工程
を含む方法。
【請求項2】
前記基体を金属前駆体およびアルミニウム炭化水素化合物の気相パルスに交互にかつ逐次的に接触させる工程は、
前記第1の金属前駆体を前記反応空間に与える工程と、
過剰の金属化合物および反応副生成物を除去する工程と、
前記第1のアルミニウム炭化水素化合物を前記反応空間に与える工程と、
過剰のアルミニウム炭化水素化合物および反応副生成物を前記反応空間から除去する工程と、
を含む熱的ALDサイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プラズマで励起された種を前記反応空間に与える工程を含むプラズマALDサイクルをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマで励起された種は水素ラジカルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱的ALDサイクルおよびプラズマALDサイクルは約5:1〜約1:5の比で実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記金属前駆体は金属ハロゲン化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属ハロゲン化物はハロゲン化タンタルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属ハロゲン化物はTaClである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミニウム炭化水素化合物は、アルカン、アルケンおよびアルキンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウム炭化水素化合物は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、および水素化ジメチルアルミニウム(DMAH)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2のアルミニウム炭化水素化合物を前記反応空間に加える工程であって、前記第2のアルミニウム炭化水素化合物は前記第1のアルミニウム炭化水素とは異なる工程を含む第2の熱的ALDサイクルをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記熱的ALDサイクルおよび第2のALDサイクルは約5:1〜約1:5の比で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記金属炭化物は炭化タンタルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記金属炭化物は約1〜約1000Åの厚さまで堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記金属炭化物は約100〜約200Åの厚さまで堆積される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記原子層堆積方法は約150℃〜約550℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記原子層堆積方法は約350℃〜約400℃の温度で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記原子層堆積方法は約2〜5Torr(約267Pa〜約667Pa)の圧力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記金属炭化物薄膜はフラッシュメモリにおける制御ゲートとしての役割を果たす、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記制御ゲートの仕事関数は前記金属炭化物によって決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記金属炭化物薄膜はCMOSトランジスタの中のゲート電極用のゲート金属としての役割を果たす、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記金属炭化物薄膜は前記ゲート電極の仕事関数を定める、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
500℃よりも高い基体温度で前記薄膜をアニーリングする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
炭化タンタル層を含むフラッシュメモリ構造の中の制御ゲートであって、前記炭化タンタル層はアルミニウムを含み、前記制御ゲートの仕事関数は前記炭化タンタル層の仕事関数によって決定される、制御ゲート。
【請求項25】
前記炭化タンタル層は約6〜約16%のアルミニウムを含む、請求項24に記載のフラッシュメモリ構造。
【請求項26】
前記炭化タンタル層は約25〜約200Åの厚さである、請求項24に記載のフラッシュメモリ構造。
【請求項27】
基体の上にフラッシュメモリを形成するための方法であって、
前記基体の上に誘電性層を形成する工程と、
前記誘電性層の直接上にかつこれに接して電荷トラップ層を形成する工程と、
前記電荷トラップ層の直接上にかつこれに接してバリア酸化物を形成する工程と、
前記バリア酸化物の上に金属炭化物制御ゲートを形成する工程と、
前記誘電性層、電荷トラップ層、バリア酸化物および制御ゲートをエッチングしてフラッシュ構造を形成する工程と、
SiOを堆積することにより前記フラッシュ構造を不動態化する工程と
を含み、前記金属炭化物制御ゲートはアルミニウムを含み、SiOの堆積の間、前記金属炭化物中のアルミニウムは酸素と反応して前記制御ゲートを自己不動態化する方法。
【請求項28】
前記金属炭化物は約6〜約16%のアルミニウムを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記金属炭化物制御ゲートは約25〜約200Åの厚さである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記金属炭化物制御ゲートは、前記基体を金属ハロゲン化物およびアルミニウム炭化水素化合物の気相パルスに交互にかつ逐次的に接触させる工程を含む原子層堆積方法によって形成される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記アルミニウム炭化水素化合物は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、および水素化ジメチルアルミニウム(DMAH)からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記金属ハロゲン化物はハロゲン化タンタルである、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記ハロゲン化タンタルはTaClである、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
所望のレベルの耐酸化性をもつ金属炭化物薄膜を形成する方法であって、
基体を金属前駆体およびアルミニウム炭化水素化合物の気相パルスに交互にかつ逐次的に接触させることにより、金属炭化物薄膜を堆積する工程であって、1以上の反応条件は、前記金属炭化物薄膜中のアルミニウムの所望の濃度を生成するように選択され、かつ前記金属炭化物中のアルミニウムの前記濃度は約1〜約30%である工程
を含む方法。
【請求項35】
前記金属炭化物薄膜は約6〜約16%のアルミニウムを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記1以上の反応条件は、前記アルミニウム炭化水素化合物の性質、反応温度、反応圧力、前記金属前駆体のパルス時間、前記アルミニウム炭化水素化合物のパルス時間、プラズマを含む反応物質の使用、パルス供与順序および堆積後のアニーリングから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記金属前駆体は金属ハロゲン化物である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記アルミニウム炭化水素化合物は、アルカン、アルケンおよびアルキンからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記アルミニウム炭化水素化合物は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、および水素化ジメチルアルミニウム(DMAH)からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
複数のアルミニウム炭化水素化合物が使用される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記複数のアルミニウム炭化水素化合物間の比は、前記金属炭化物薄膜中のアルミニウムの所望の濃度を生成するように選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記金属炭化物は炭化タンタルである、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記金属炭化物は約1〜約1000Åの厚さまで堆積される、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記金属炭化物薄膜は、フラッシュメモリにおける制御ゲートとしての役割を果たす、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記制御ゲートの仕事関数は前記金属炭化物によって決定される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記原子層堆積方法は約0.5〜10Torr(約67Pa〜約1330Pa)の圧力で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記原子層堆積方法は約150℃〜約550℃の温度で実施される、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−520251(P2011−520251A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505180(P2011−505180)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040705
【国際公開番号】WO2009/129332
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】