説明

キャップ層および埋込みゲートを有する窒化物ベースのトランジスタを作製する方法

【課題】埋込み部を形成する際のエッチングにより埋込みゲートが損傷をきたし、ゲート領域劣化が生じ得る。
【解決手段】ショットキーコンタクトなどのゲートコンタクトを形成する前にゲート埋込み部のアニーリングを行うことにより、ゲートリークが低減され、かつ/またはトランジスタなどの半導体デバイス内に高品質のゲートコンタクトを提供することができる。アニーリング中に封入層を使用することで、トランジスタのゲート埋込み部内の半導体への損傷がさらに低減される。アニーリングを、例えばデバイスのオーミックコンタクトのアニーリングによって提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、より詳細には、窒化物ベースの活性層を組み込んだトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)およびヒ化ガリウム(GaAs)などの材料は、より低電力で(Siの場合)より低周波の用途の半導体デバイスにおいて広く応用されている。しかし、よく知られたこれらの半導体材料は、バンドギャップが比較的小さく(例えば、室温でSiの場合1.12eV、またGaAsの場合1.42eV)、かつ/または絶縁破壊電圧が比較的小さいため、より高電力および/または高周波の用途には十分適さない場合がある。
【0003】
SiおよびGaAsによってもたらされる問題点に鑑み、高電力、高温および/または高周波の用途およびデバイスに関心が集められ、その関心がさらに炭化ケイ素(αSiCの場合室温で2.996eV)やIII族窒化物(例えば、GaNの場合室温で3.36eV)など広バンドギャップの半導体材料に向けられている。こうした材料は、一般にヒ化ガリウムおよびシリコンに比べ、電界絶縁破壊力が大きく、電子飽和速度が速い。
【0004】
高電力および/または高周波用途の場合、特に関心が持たれるデバイスは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)であるが、これはある場合において変調ドープ電界効果トランジスタ(MODFET)としても知られている。こうしたデバイスは、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する2つの半導体材料のヘテロ接合部に2次元電子ガス(2DEG)が形成され、そこではバンドギャップが小さい方の材料の電子親和力が大きいため、様々な状況下で動作上の利点を提供することができる。2DEGは、非ドープ(「偶発ドープ」)かつバンドギャップが小さい方の材料内の蓄積層であり、例えば1013キャリア/cmを超える非常に高いシート電子濃度を含むことができる。さらに、バンドギャップが広い方の半導体内から生じる電子は、2DEGへ移動し、イオン化不純物散乱が低減されるため、高電子移動度を可能にする。
【0005】
この高キャリア濃度および高キャリア移動度の組合せによって、HEMTに非常に大きなトランスコンダクタンス(transconductance)を付与することができ、高周波用途の金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)を超える強力な性能的利点を提供することができる。
窒化ガリウム/窒化アルミニウムガリウム(GaN/AlGaN)材料系において作製された高電子移動度トランジスタは、先に述べたように絶縁破壊電界が高いこと、そのバンドギャップが広いこと、伝導帯のずれが大きいこと、および/または飽和電子のドリフト速度が速いことなどの材料特性が組み合わさるため、大量のRF電力を発生する能力を有する。2DEG内の電子の大部分は、AlGaN内での分極によって生じる。GaN/AlGaN系におけるHEMTは、既に実用化されている。特許文献1および2は、AlGaN/GaNのHEMT構造および製造方法を記載している。特許文献3(Sheppardらに付与され、同一出願人に譲渡)は、半絶縁炭化ケイ素の基板と、基板上の窒化アルミニウムのバッファ層と、バッファ層上の絶縁窒化ガリウム層と、窒化ガリウム層上の窒化アルミニウムガリウムのバリア層と、窒化アルミニウムガリウムの活性構造上の保護層とを有するHEMTデバイスを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,192,987号明細書
【特許文献2】米国特許第5,296,395号明細書
【特許文献3】米国特許第6,316,793号明細書
【特許文献4】米国特許出願第10/758,871号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0066908A1号明細書
【特許文献6】米国特許仮出願第60/290,195号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0167023A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願第10/617,843号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0020092号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0102482A1号明細書
【特許文献11】米国特許仮出願第60/337,687号明細書
【特許文献12】米国特許出願第Re.34,861号明細書
【特許文献13】米国特許第4,946,547号明細書
【特許文献14】米国特許第5,200,022号明細書
【特許文献15】米国特許第6,218,680号明細書
【特許文献16】米国特許第5,210,051号明細書
【特許文献17】米国特許第5,393,993号明細書
【特許文献18】米国特許第5,523,589号明細書
【特許文献19】米国特許第5,592,501号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shen et al., "High-Power Polarization-Engineered GaN/AlGaN/GaN HEMTs Without Surface Passivation," IEEE Electron Device Letters, Vol. 25, No. 1, pp. 7-9, January 2004
【非特許文献2】Yu et al., "Schottky barrier engineering in III-V nitrides via the piezoelectric effect," Applied Physics Letters, Vol. 73, No. 13, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
窒化物ベースのトランジスタを作製する際の一段階として、埋込み部内でのゲートコンタクト形成がある。大電流能力および低分散を達成する上で、トランジスタのキャップ構造は厚いことが好ましいであろう。しかし、高周波性能と同時に高絶縁破壊電圧、低RF分散および/または高トランスコンダクタンスを達成するには、ゲート埋込み部がキャップ層を貫通することが好ましい。一方、埋込みゲート構造を形成するために使用されるエッチングプロセスは、電子が生じる下位のバリア層を損傷する場合がある。2004年1月16日出願、「NITRIDE-BASED TRANSISTORS WITH A CAP LAYER AND A LOW-DAMAGE RECESS AND METHODS OF FABRICATION THEREOF」という名称の特許文献4は、SiNの保護部を貫通する低損傷埋込み部を提供するためのデバイスおよび技術を記載している。
【0009】
エッチングされたGaNおよびAlGaN表面での高リーク率を和らげる他の試みとして、ショットキー金属を堆積させた後、高温アニーリングが使用されている。このような試みでは、400〜600℃のアニーリング温度が利用されている。ショットキー後に高温アニーリングを行うことは、高リーク率のショットキー/AlGaNコンタクトを中程度リークのショットキー/AlGaNコンタクトに改善するように思われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のいくつかの実施形態は、チャネル層を形成する段階と、チャネル層上にバリア層を形成する段階と、バリア層上にキャップ層を形成する段階と、バリア層に延びるキャップ層内にゲート埋込み部を形成する段階とを含む、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を作製する方法を提供する。バリア層と、チャネル層と、ゲート埋込み部を有するキャップ層とがアニーリングされ、次いでアニーリングされたゲート埋込み部内にゲートコンタクトが形成される。ゲートコンタクトはショットキーコンタクトでよい。
【0011】
本発明のさらなる諸実施形態では、バリア層と、チャネル層と、ゲート埋込み部を有するキャップ層とをアニーリングする段階が、バリア層と、チャネル層と、ゲート埋込み部を有するキャップ層とを、少なくとも約700℃の温度でアニーリングする段階を含む。アニーリングに先行して、キャップ層上およびゲート埋込み部内に封入層を形成することができる。アニーリングに続いて、封入層を除去することができ、ショットキーゲートコンタクトの形成に先行して封入層を除去することができる。封入層は、AlNを含むことができる。
【0012】
本発明のさらなる諸実施形態では、こうした方法が、ゲート埋込み部両側のキャップ層内にオーミックコンタクト埋込み部を形成する段階と、オーミックコンタクト埋込み部内にオーミックコンタクト材料パターンを形成する段階とをさらに含む。いくつかの実施形態では、バリア層と、チャネル層と、ゲート埋込み部を有するキャップ層とをアニーリングする段階が、バリア層と、チャネル層と、オーミックコンタクト材料パターンと、ゲート埋込み部を有するキャップ層とをアニーリングする段階を含む。さらに、オーミックコンタクト材料パターンの形成に続き、またアニーリングに先行して、キャップ層上、オーミックコンタクト材料パターン上、およびゲート埋込み部内に封入層を形成することができる。アニーリングに続き、またゲートコンタクトの形成に先行して、封入層を除去することができる。封入層はAlNを含むことができる。
【0013】
本発明のさらなる諸実施形態では、ゲート埋込み部を形成する段階が、ゲート埋込み部に対応する開口を有するようにキャップ層上のマスク層をパターニングする段階と、ゲート埋込み部を提供するためにエッチングマスクとして、パターニングされたマスク層を使用してキャップ層をエッチングする段階とを含む。アニーリングに先行して、パターニングされたマスク層およびゲート埋込み部上に封入層を形成することができる。封入層は、AlNを含むことができる。アニーリングに続いて、ゲート埋込み部内に残る封入層の一部を提供するために、自己整合型リフトオフ技術を利用してマスク層および封入層を除去することができる。ゲート埋込み部内の封入層の一部は、ゲートコンタクトの形成前に除去することができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、キャップ層上およびゲート埋込み部内に絶縁層が形成される。ゲート埋込み部内の絶縁層上にゲートコンタクトを形成することができる。ゲートコンタクトは、キャップ層上の絶縁層上に延びていてもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、キャップ層を形成する段階が、バリア層上にGaN層を形成する段階を含む。例えば、GaN層は、非ドープのGaN層、GaNに傾斜したAlGaN層、GaNに傾斜したAlGaN層、およびドープされたGaN層、ならびに/あるいはドープされたGaN層でよい。キャップ層を形成する段階は、バリア層上にGaN層を形成する段階とGaN層上にSiN層を形成する段階とを含むこともできる。さらに、ゲート埋込み部を形成する段階は、キャップ層を貫通して延びバリア層を貫通せずその内部に延びるゲート埋込み部を形成する段階を含むことができる。本発明の特定のいくつかの実施形態では、キャップ層はGaNベースの半導体材料を含む。
【0016】
本発明のさらなる諸実施形態では、高電子移動度トランジスタを作製するいくつかの方法は、基板上にGaNベースの半導体材料からなる第1の層を形成する段階と、第1の層上にAlGaNベースの半導体材料からなる第2の層を形成する段階であって、第2の層が、第1の層と第2の層との界面付近において2次元電子ガスを誘発するように構成される段階と、GaNベースの半導体材料からなる第2の層上にGaNベースの半導体材料からなる第3の層を形成する段階とを含む。これらの方法は、第2の層に延びる第3の層内にゲート埋込み部を形成する段階と、第1の層と第2の層とゲート埋込み部を有する第3の層とをアニーリングする段階と、次いでアニーリングされたゲート埋込み部内にゲートコンタクトを形成する段階とを含む。ゲートコンタクトは、ショットキーゲートコンタクトでよい。
【0017】
本発明のさらなる諸実施形態では、アニーリングに先行して、GaNベースの半導体材料からなる第3の層上およびゲート埋込み部内に封入層が形成される。アニーリングに続いて、封入層を除去することができる。ゲートコンタクトを形成する段階に先行して、封入層を除去することができる。
【0018】
本発明のさらなる諸実施形態では、これらの方法は、ゲート埋込み部両側のGaNベースの半導体材料からなる第3の層内に、オーミックコンタクト埋込み部を形成する段階と、オーミックコンタクト埋込み部内にオーミックコンタクト材料パターンを形成する段階とをさらに含む。このような場合、第1の層と、第2の層と、ゲート埋込み部を有する第3の層とをアニーリングする段階は、第1の層と、第2の層と、オーミックコンタクト材料パターンと、ゲート埋込み部を有する第3の層とをアニーリングする段階を含む。
【0019】
本発明のさらなる諸実施形態では、ゲート埋込み部を形成する段階は、ゲート埋込み部に対応する開口を有するようにGaNベースの半導体材料からなる第3の層上にマスク層をパターニングする段階と、ゲート埋込み部を提供するために、パターニングされたマスク層をエッチングマスクとして使用して、GaNベースの半導体材料からなる第3の層をエッチングする段階とを含む。このような場合、アニーリングに先行して、パターニングされたマスク層およびゲート埋込み部上に封入層を形成し、アニーリングに続いて、ゲート埋込み部内に残る封入層の一部を提供するように、自己整合型リフトオフ技術を利用してマスク層および封入層を除去する。封入層は、AlN、SiOおよび酸窒化物、ONO構造ならびに/あるいはSiNを含むことができる。
本発明のいくつかの実施形態では、ゲート埋込み部内に残る封入層の一部は、ゲートコンタクト形成前に除去される。さらに、絶縁層を、GaNベースの材料からなる第3の層上および埋込み部内に形成することができ、ゲートコンタクトを埋込み部内の絶縁層上に形成することができる。ゲートコンタクトは、GaNベースの材料からなる第3の層上の絶縁層上にも形成することができる。
本図面および本明細書では、本発明の典型的な諸実施形態を開示してきた。特定の用語を使用してきたが、こうした用語は単に包括的かつ説明的意味で使用しているのであって、限定のためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図1B】本発明の実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図1C】本発明の実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図1D】本発明の実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図1E】本発明の実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図1F】本発明の実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図2A】本発明のさらなる実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図2B】本発明のさらなる実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【図3】本発明のさらなる実施形態によるトランジスタ作製を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の諸実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより完全に説明する。ただし、本発明を、本明細書に示す諸実施形態に限定するものとして理解すべきではない。むしろ、この開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲が十分に伝わるように、これらの実施形態を提示する。分かりやすくするために、図面では各層の厚さおよび各領域を誇張してある。全体を通して、同様の番号は同様の要素を意味する。本明細書で使用するように、「および/または」という用語は、リストに記載された関連する事項のうち1つまたは複数のありとあらゆる組合せを含む。
【0022】
本明細書で使用する専門用語は、単に特定の諸実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。本明細書で使用するように、単数形を示す「1つの」および特定の単数形を示す「その」は、文脈がはっきりとそうでないことを示さない限り複数形も含むものとする。さらに当然のことながら、「含む」および/または「含んでいる」という用語が本明細書で使用される場合、述べられたいくつかの特徴、整数、段階、動作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、段階、動作、要素、構成要素および/またはこれらの群の存在あるいはこれらの追加を除外するものではない。
【0023】
当然のことながら、層、領域または基板などの要素を、別の要素の「上に」存在する、または別の要素の「上に」延びているものとして述べる場合、その要素は、他の要素の上に直に存在し得るし、他の要素の上に直接延び得るし、介在する要素も存在し得る。これに対し、1つの要素を、別の要素の「上に直接」存在する、または「上に直接」延びるとものとして述べる場合、介在する要素は存在しない。当然のことながら、1つの要素を、別の要素に「接続される」または「結合される」ものとして述べる場合、その要素は他の要素に直接接続または結合され得るし、介在する要素もあり得る。これに対し、1つの要素を、別の要素に「直接接続される」または「直接結合される」ものとして述べる場合、介在する要素は存在しない。明細書全体を通して同様の番号は同様の要素を意味する。
【0024】
当然のことながら、本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層および/または区画を説明するために「第1の」や「第2の」などの用語を使用することがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または区画は、こうした用語によって限定されるべきものではない。こうした用語は単に、1つの要素、構成要素、領域、層または区画を、別の領域、層または区画から区別するために使用する。したがって、以下に論ずる第1の要素、構成要素、領域、層または区画を、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層または区画と呼ぶことができる。
【0025】
さらに、本明細書では、各図に示す1つの要素と別の要素との関係を説明するために「下の」または「下部」ならびに「上の」または「上部」などの相対語を使用する場合がある。当然のことながら、相対語は、各図に表すデバイスの向きに加え、そのデバイスの別の様々な向きも包含するものとする。例えば、各図内のデバイスの上下を逆にした場合、他の要素の「下」側にあると説明している要素はその時他の要素の「上」側にくる。したがって、例示的用語である「下の」は、図の特定の向きに応じて「下の」向きおよび「上の」向きのどちらをも包含する。同様に、図のうちの1つに示すデバイスの上下を逆にした場合、他の要素の「下に」または「下方に」と説明している要素は、その時他の要素の「上に」くる。したがって、例示的用語である「下に」または「下方に」は、「上に」向く、または「下に」向く、のどちらをも包含する。
【0026】
本発明の理想的実施形態の概略断面図を参照して、本発明の実施形態を説明する。その上で、例えば製造技術および/または交差によって、図示する形状とは異なることが考えられる。したがって、本発明の諸実施形態は、本図面に示す各領域の特定形状に限定するものと解釈すべきではなく、例えば製造過程で生じる形状のずれも含むものとする。例えば、方形として示すエッチング領域は通常、先細りの形体、丸みのある形体または湾曲した形体を有する。したがって、図に示す各領域は性質上概略的なものであり、その形状はデバイスの領域の正確な形状を示すものではないし、本発明の範囲を限定するものでもない。
【0027】
定義されない限り、本明細書で使用する用語はすべて(技術的および科学的用語も含めて)この発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに当然のことながら、一般に使用される様々な辞書で定義される用語などの用語は、関連技術に即して、その意味に一貫した意味もつものとして解釈されるべきであり、本明細書ではっきりと定義しない限り、理想的または過度に形式的なものとして解釈されるものではない。
【0028】
さらに、当業者には当然のことながら、別の形体に「隣接して」積層される構造または形体を述べる場合、その構造または形体は、隣接形体に重複する部分またはその下位に位置する部分を有し得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、ショットキーコンタクトの形成前に埋込み部のアニーリングを利用してゲートリークを低減し、かつ/またはトランジスタなどの半導体デバイス内に高品質のショットキーコンタクトを設ける。本発明のいくつかの実施形態では、埋込み部をアニーリングすることでも、エッチングされた領域下方の2DEGチャネルに導電性を保持することができる。アニーリングの間中、封入層を使用することにより、トランジスタのゲート埋込み部内の半導体へのさらなる損傷を防止することができる。アニーリングは、例えばデバイスのオーミックコンタクトをアニーリングすることによって行うことができる。したがって、高品質のゲートおよびオーミックコンタクトを設けることができ、埋込み部を形成する際にエッチングによる損傷をきたした埋込みゲート構造を設けた結果生じるゲート領域の劣化が低減される。
【0030】
本発明の諸実施形態は、III族窒化物ベースのデバイスなど、窒化物ベースのHEMT内での使用に特に適している。本明細書で使用するように、「III族窒化物」という用語は、窒素と、通例アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)および/またはインジウム(In)である、周期表のIII族内元素との間に形成される半導体性化合物を意味する。この用語は、AlGaNやAlInGaNなど、3元化合物や4元化合物も意味する。当業者にはよく知られているように、III族元素は窒素と結合して2元化合物(例えば、GaN)、3元化合物(例えば、AlGaN、AlInGaN)および4元化合物(例えば、AlInGaN)を形成する。これらの化合物はすべて、1モルの窒素と合計が1モルのIII族元素とが結合する実験式を有する。したがって、こうした化合物を表すのに、AlGa1−xN(0≦x≦1)などの式がよく使用される。
【0031】
本発明の実施形態を利用することのできるGaNベースの適切な構造は、特許文献3、および2001年7月12日出願、2002年6月6日公開、「ALUMINUM GALLIUM NITRIDE/GALLIUM NITRIDE HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTORS HAVING A GATE CONTACT ON A GALLIUM NITRIDE BASED CAP SEGMENT AND METHODS OF FABRICATING SAME」という名称の特許文献5、2001年5月11日出願、「GROUP III NITRIDE BASED HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTOR (HEMT) WITH BARRIER/SPACER LAYER」という名称の特許文献6、Smorchkovaらに付与、2002年11月14日公開、「GROUP III NITRIDE BASED HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTOR (HEMT) WITH BARRIER/SPACER LAYER」という名称の特許文献7、2003年7月11日出願、「NITRIDE-BASED TRANSISTORS AND METHODS OF FABRICATION THEREOF USING NON-ETCHED CONTACT RECESSES」という名称の特許文献8、2002年7月23日出願、2003年1月30日公開、「INSULATING GATE ALGAN/GAN HEMT」という名称の特許文献9に記載されている。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態による作製方法を図1A〜図1Fに概略的に示す。図1Aに見られるように、基板10を設け、その上に窒化物ベースのデバイスを形成することができる。本発明のいくつかの特定の実施形態では、基板10は、半絶縁性炭化ケイ素(SiC)の基板でよく、例えば4Hポリタイプの炭化ケイ素でよい。炭化ケイ素の他のポリタイプ候補として、3C、6Hおよび15Rポリタイプがある。「半絶縁性」という用語は、絶対的な意味ではなく説明的に使用する。本発明のいくつかの特定の実施形態では、炭化ケイ素のバルク結晶は、室温で約1×10Ω−cm以上の抵抗力を有する。
【0033】
基板10上に任選択でバッファ、核生成層および/または転位層(図示せず)を設けることができる。例えば、AlNバッファ層を設けて、炭化ケイ素基板とデバイスの残り部分との間に適切な結晶構造転位をもたらすことができる。加えて、2002年7月19日出願、2003年6月5日公開、「STRAIN BALANCED NITRIDE HETEROJUNCTION TRANSISTORS AND METHODS OF FABRICATING STRAIN BALANCED NITRIDE HETEROJUNCTION TRANSISTORS」という名称で同一出願人に譲渡された特許文献10、および2001年12月3日出願、「STRAIN BALANCED NITRIDE HETEROJUNCTION TRANSISTOR」という名称の特許文献11に記載されているように、歪みを均衡化する1つまたは複数の転位層を設けることができる。
【0034】
適切なSiC基板は、例えば本発明の譲受人である、ノースキャロライナ州ダーラムのクリー社(Cree,Inc.)によって製造されており、生成方法は、特許文献12、13、14および15に記載されている。同様に、III族窒化物のエピタキシャル成長の技術は、特許文献16、17、18および19に記載されている。
【0035】
基板材料として炭化ケイ素を使用することはできるが、本発明の諸実施形態では、サファイア、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化ガリウム、シリコン、GaAs、LGO、ZnO、LAOおよびInPなど、適切な材料なら何でも利用することができる。いくつかの実施形態では、適切なバッファ層も形成することができる。
【0036】
図1Aに戻り、基板10上にチャネル層20を設ける。先に述べたバッファ層、転位層、および/または核生成層を使用して、チャネル層20を基板10上に積層することができる。チャネル層20は、圧縮歪みの状態にあり得る。さらに、チャネル層ならびに/あるいはバッファ層、核生成層および/または転位層を、MOCVDあるいはMBEまたはHVPEなど当業者に知られた他の技術によって積層することができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、チャネル20はAlGa1−xN(0≦x<1)などのIII族窒化物である。ただし、チャネル層20の伝導帯域端エネルギーは、チャネル層とバリア層との間の界面のところのバリア層22の伝導帯域端エネルギーより小さい。本発明のあるいくつかの実施形態では、x=0なのでチャネル層20はGaNである。チャネル層20は、InGaNやAlInGaNなど他のIII族窒化物でもよい。チャネル20は、非ドープ(「偶発ドープ」)でよく、約20Åを超える厚さに成長させることができる。チャネル層20は、規則格子構造あるいはGaNやAlGaNなどを組み合わせた構造など、多層構造でもよい。
【0038】
チャネル層20上にバリア層22を設ける。チャネル層20は、バリア層22のバンドギャップより小さいバンドギャップを有することができ、またチャネル層20は、バリア層22よりも大きい電子親和力を有することもできる。バリア層22を、チャネル層20上に積層させることができる。本発明のあるいくつかの実施形態では、バリア層22は、厚さが約0.1nmから約40nmのAlN、AlInN、AlGaNまたはAlInGaNである。本発明のあるいくつかの実施形態による様々な層の例は、Smorchkovaらに付与、2002年11月14日公開、「GROUP III NITRIDE BASED HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTOR (HEMT) WITH BARRIER/SPACER LAYER」という名称の特許文献7に記載されている。本発明のいくつかの特定の実施形態では、バリア層22は、十分に厚く十分に高いAl組成およびドーピングを有するので、分極効果によりチャネル層20とバリア層22との間の界面に相当なキャリア集中を起こさせる。また、バリア層22は、バリア層22とキャップ層24(図1B)との間の界面のところに堆積されるイオン化不純物または不完全部が原因で起こる、チャネル内電子の散乱を低減または最小限に抑えられるほど十分に厚くなければならない。
【0039】
バリア層22は、III族窒化物でよく、バンドギャップはチャネル層20より大きく、電子親和力はチャネル層20より小さい。したがって、本発明のあるいくつかの実施形態では、バリア層22は、AlGaN、AlInGaNおよび/またはAlNあるいはこれらの層の組合せである。バリア層22は、例えば厚さが約0.1nmから約40nmでよいが内部にひび割れまたは実質的な欠陥形成を起こすほど厚くはない。本発明のあるいくつかの実施形態では、バリア層22は非ドープ、またはn型ドーパントで約1019cm−3未満の濃度にドープされる。本発明のいくつかの実施形態では、バリア層22はAlGa1−xN(0<x<1)である。特定のいくつかの実施形態では、アルミニウム濃度は約25%である。ただし、本発明の他のいくつかの実施形態では、バリア層22は、アルミニウム濃度が約5%から約100%のAlGaNを含む。本発明の特定のいくつかの実施形態では、アルミニウム濃度は約10%を超える。
【0040】
図1Bは、バリア層22上での比較的厚いキャップ層24の構造を示す。キャップ層24は、III族窒化物でよく、いくつかの実施形態では、GaN、AlGANおよび/またはInGaNなど、GaNベースの半導体材料である。本発明の特定のいくつかの実施形態では、キャップ層はGaNである。さらに、キャップ層24は、組成および/または厚さが均一および/または不均一な単層または多層でよい。本発明のいくつかの実施形態では、非特許文献1に記載されているように、キャップ層24は、傾斜AlGaN層およびGaN層でよい。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、キャップ層24は、その上にSiN層を有するGaN層でよい。キャップ層24は、デバイスの上面をチャネルから物理的に離れて移動し、それにより表面効果を低減することができる。
【0041】
キャップ層24は、バリア層22上に一括形成することができ、堆積によってまたエピタキシャル成長および/または形成させることもできる。例えば、キャップ層を、GaNキャップ層上にSiNをインサンチュ(in−situ)に成長させることによって、またはGaNキャップ層の上部上にSiNまたはSiOをイクサイチュ(ex−situ)にPECVDすることによって形成することができる。一般に、キャップ層24の厚さは約2nmから約500nmでよい。例えば、SiNおよびGaNからなるキャップ層24は厚さが約300nmでよい。本発明のいくつかの実施形態によるキャップ層の例は、Smorchkovaらに付与され、2002年11月14日公開された、「GROUP III NITRIDE BASED HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTOR (HEMT) WITH BARRIER/SPACER LAYER」という名称の特許文献7に記載されている。
【0042】
図1Cに示すように、マスク層に窓をいくつか開けて第1のマスクパターン40を設け、オーミックコンタクト30を形成する。本発明のいくつかの実施形態では、第1のマスク層は従来のフォトリソグラフィのマスク材料でよい。本発明のいくつかの実施形態では、マスク材料はSiNやSiOなどでよい。パターニングされたマスクおよびエッチングプロセスを利用して窓を形成して、下位のバリア層22を露出させることができる。本発明のいくつかの実施形態では、エッチングは低損傷性エッチングでよい。本発明のいくつかの実施形態では、エッチングは、UV照射とともにKOHなどの強塩基により行うウェットエッチングである。他のいくつかの実施形態では、エッチングは、ドライエッチングである。III族窒化物の場合の低損傷性エッチング技術の例には、反応性イオンエッチング以外のエッチング技術があり、例えばプラズマに対し直流成分を持たない、Cl、BCl、CClおよび/または他の塩素化した種を使用した誘導結合プラズマによるエッチング、あるいは電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマによるエッチングおよび/またはダウンストリームプラズマによるエッチングがある。SiNの場合の低損傷エッチング技術の例には、反応性イオンエッチング以外のエッチング技術があり、例えばプラズマに対し直流成分を持たない、CF/O、NF/Oおよび/または他のフッ化した種を使用した誘導結合プラズマによるエッチング、あるいは電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマによるエッチングおよび/またはダウンストリームプラズマによるエッチングがある。
【0043】
図1Cにさらに示すように、例えば、後のフォトリソグラフィの段階および蒸着とともに、オーミック金属をパターニングし、それによりアニーリングした時にオーミックコンタクト30を提供するオーミックコンタクト材料パターンを設ける。キャップ層24内にSiNおよび/またはSiOを使用する本発明のいくつかの実施形態では、オーミックコンタクト30は、キャップ層24のSiNおよび/またはSiO部分から相隔たり、その距離は、オーミックコンタクト金属を形成およびパターニングする際に不整合許容度を得るに足るほど大きい。オーミックコンタクト金属が、キャップ層24のSiNおよび/またはSiO部分に接触した場合、その金属は、続く加熱の段階の間にキャップ層24内に拡散することがあり、それによりゲートコンタクトとオーミックコンタクト30との間に短絡を起こすことがある。
【0044】
図1Dは、ゲート埋込み部の形成を示す。図1Dに見られるように、オーミックコンタクトおよびキャップ層24上に第2のマスクパターン42を形成し、パターニングしてキャップ層24の一部を露出する窓を形成する。本発明のいくつかの実施形態では、第2のマスクパターン42は、従来のフォトリソグラフィのマスク材料でよい。本発明のいくつかの実施形態では、マスク材料は、窒化ケイ素や二酸化ケイ素などでよい。次いで、キャップ層24を貫通して埋込み部36を形成して、バリア層22の一部を露出させる。本発明のいくつかの実施形態では、埋込み部36を形成してバリア層22の内部まで延ばす。埋込み部36をバリア層22内まで延ばして、例えば閾電圧や周波数性のなど、デバイスの性能特性を調整することができる。マスク42および先に述べたエッチングプロセスを使用して埋込み部を形成することができる。オーミックコンタクト30がソースコンタクトおよびドレインコンタクトを提供する特定のいくつかの実施形態では、ソースコンタクトとドレインコンタクトとの間で埋込み部をずらし、それにより埋込み部、および後にゲートコンタクト32を、ドレインコンタクトに対してよりもソースコンタクトに対し接近させる。
【0045】
図1Eは、第2のマスク42を除去後の、任選択による封入層44の形成を示す。封入層44を、キャップ層24上および埋込み部36内に形成することができる。封入層44は、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ONO構造、ならびに/あるいは二酸化ケイ素(SiO)および/または酸窒化物など他の適切な保護材料でよい。下位のバリア層22をひどく損傷させずに材料を除去することができる限り、他の材料も封入層44に利用することができる。例えば、封入層44は、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、酸化アルミニウムおよび/または酸窒化アルミニウムも含むことができる。さらに、封入層44は、均一および/または不均一組成の単層または多層でよい。
【0046】
本発明の特定のいくつかの実施形態では、封入層44はSiN,AlN,ONO構造および/またはSiOでよい。SiN、AlNおよび/またはSiOは、PVDおよび/またはCVDで形成することができ、非化学量論的組成でよい。適切な封入材料について、2004年1月16日出願、「NITRIDE-BASED TRANSISTORS WITH A CAP LAYER AND A LOW-DAMAGE RECESS AND METHODS OF FABRICATION THEREOF」という名称の特許文献4を参照して、さらに詳細に述べる。
【0047】
封入層44は、埋込み部36においてバリア層22上に配置されるように、キャップ層24上および埋込み部36内に一括形成することができ、堆積により形成することができる。例えば、高品質のスパッタリングおよび/またはPECVDにより窒化ケイ素層を形成することができる。一般に、封入層44は、約30nmの厚さを有することができるが、他の厚さの層も利用することがきる。例えば、封入層は、後にオーミックコンタクトをアニーリングする間、下位の各層を保護するに足るほど厚くなければならない。このためには、単一層を2枚または3枚重ねたくらいの薄さの層で十分であろう。ただし、一般に、封入層44は約10nmから約500nmの厚さを有することができる。また、III族窒化物層をMOCVD成長させることにより、高品質のSiN保護層をインサイチュで成長させることができる。
【0048】
ゲート埋込み部36、および封入層44があればそれも形成した後、ゲートコンタクトの形成前に、オーミックコンタクト材料をアニーリングしてオーミックコンタクト30を設ける。アニーリングは高温アニーリングでよい。例えば、アニーリングは、約700℃から約900℃の温度でよく、いくつかの実施形態では、約900℃超でよい。例えば、ウェハを保持するサセプタ内に埋め込まれた熱伝対を使用して、かつ/または高温測定法により光学的にといった、急速熱アニーリング法における従来の測定技術を使用して測定される、約700℃から約900℃の環境温度においてアニーリングを約30秒から約5分行うことができる。オーミックコンタクトのアニーリングを行うことによって、オーミックコンタクトの抵抗を高抵抗値から約1Ω−mm未満に低減することができる。したがって、本明細書で使用するように、「オーミックコンタクト」という用語は、コンタクト抵抗が約1Ω−mm未満の非整流性コンタクトを意味する。エッチングされたゲート埋込み部36をアニーリングすることによって、ゲート埋込み部36の作製過程によって生じ得るバリア層22への損傷を取り去ることができる。したがって、例えば、オーミックコンタクトを高温アニーリングした後のゲート埋込み部36近辺におけるバリア層22領域のシート抵抗を、残りのエッチングされていないバリア層を反応炉内で成長させた場合の領域のシート抵抗とほぼ同様とすることができる。
【0049】
図1Fに見られるように、封入層44があればそれを除去し、ゲートコンタクト32を埋込み部内に形成し、バリア層22の露出部に接触させる。ゲートコンタクトは、図1Fに示すように「T」字状のゲートでよく、従来の作製技術を使用して作製することができる。適切なゲート材料はバリア層の組成に応じて決まるが、あるいくつかの実施形態では、Ni、Pt、NiSi、Cu、Pd、Cr、Wおよび/またはWSiNなど、窒化物ベースの半導体材料に対してショットキーコンタクトを作ることの可能な従来の材料を使用することができる。例えば、ゲート埋込み部のエッチング異方性によって、キャップ層24とゲートコンタクト32との間に小さなギャップが生じる可能性があり、その結果、保護層24とゲートコンタクト32との間のバリア層22の表面が露出されることがある。このギャップは、意図的に形成することができる。
【0050】
図1Fの構造上に保護層も設けることができる。保護層を図1Fの構造上に一括堆積させることができる。特定のいくつかの実施形態では、キャップ層24と各オーミックコンタクト30との間のギャップがあればそのギャップ、およびキャップ層24とゲートコンタクト32との間にギャップが存在すればそれもほぼ充填されるように保護層を堆積させることができる。本発明のあるいくつかの実施形態では、保護層は窒化ケイ素、窒化アルミニウム、二酸化ケイ素、ONO構図および/または酸窒化物でよい。さらに、保護層は、均一および/または不均一組成の単層または多層でよい。
【0051】
図2Aおよび図2Bは、本発明のさらなるいくつかの実施形態によるトランジスタの作製を示す。図2Aおよび図2Bのトランジスタの作製は、図1A〜図1Dを参照して先に説明したのと同じ方法で提供することができる。ただし、図2Aに見られるように、第2のマスクパターン42を除去するのではなく、マスク42上および埋込み部36内に封入層46を設ける。封入層46は、例えば封入層44に関して先に説明したのと同じ材料で形成することができる。本発明の特定のいくつかの実施形態では、封入層46はAlNである。本発明のさらなるいくつかの実施形態では、封入層46はいかなる不活性セラミック材料でもよい。さらに、第2のマスク42はSiNでよい。
【0052】
第2のマスク42が、後のアニーリングによって実質的に損傷を受け得るフォトレジストまたは他の材料である、本発明のいくつかの実施形態では、第2のマスク42と封入層46の一部とを、例えば自己整合型リフトオフ技術を使用して除去して、ゲート埋込み部内の封入層46の一部26を提供する。次いで、図2Aの構造を先に述べたようにアニーリングする。本発明のいくつかの実施形態では、封入層46の厚さは約1nmから約500nmでよい。
【0053】
図2Bに見られるように、例えば自己整合型リフトオフ技術を使用して、第2のマスク42と封入層46の一部とを除去して、ゲート埋込み部内に封入層46の一部26を提供する。次いで、ゲート埋込み部内に残っているこの封入層46の一部26上にゲートコンタクト32を形成する。いくつかの実施形態では、ゲートコンタクト32の形成前に封入層46の一部26を除去する。図2Bに示す実施形態では、上述の材料でゲートコンタクトを形成することができる。
【0054】
図3は、本発明のさらにいくつかの実施形態によるトランジスタの形成を示す。図3に見られるように、図2Bの構造から封入層46の一部26を除去し、その結果得られた埋込み部を含む構造上にゲート絶縁層130を形成することができる。次いで、絶縁層130上にゲートコンタクト32を形成することができる。絶縁層130は1つまたは複数の層でよく、例えばSiN、AlN、SiOおよび/またはONO構造を含むことができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、2002年7月23日出願、2003年1月30日公開、「INSULATING GATE ALGAN/GAN HEMT」)という名称の特許文献9に記載されているように、絶縁ゲートHEMTを設けることができる。
【0055】
本発明の諸実施形態を、特定の作業順序に関して説明してきたが、本発明の教示から利益を得る限りは、その順序に修正を加えてもよいし、他の作業を含めてもよい。例えば、オーミック金属を堆積させる前のキャップ層24の形成を省いて、オーミック金属をバリア層22上に堆積させパターニングして、バリア層22上にオーミックコンタクト材料領域30を設けてもよい。オーミックコンタクト材料を堆積しパターニングした後、次いでキャップ層を形成することができる。次いで、キャップ層をエッチングしてゲート埋込み部を設け、ゲートコンタクト形成前にオーミックコンタクトをアニーリングすることができる。
【0056】
単一段階において行うものとして先に説明した作業を、多段階で行うことができ、同様に、多段階として先に説明した作業を、単一段階に統合することができる。例えば、ゲート埋込み部のエッチングによる損傷を除去するためのアニーリングを、オーミックコンタクトのアニーリングによって行うと説明したが、アニーリングを別途行うこともできる。別途行うアニーリングとしてアニーリングを施す場合、そのアニーリングを例えば、約600℃から約900℃の温度で、約20分から約30秒の間行うことができる。加えて、オーミックコンタクト埋込み部およびゲート埋込み部のエッチングを、先に述べた2つの別々のマスクではなく単一のマスクを使用して行ってもよい。
【0057】
本明細書では、本発明の諸実施形態を特定のHEMT構造に関して説明してきたが、本発明をこのような構造に限定するものと解釈すべきではない。例えば、本発明の教示から利益を得る限りは、HEMTデバイス内に追加の層をいくつか含めてもよい。このような追加の層には、非特許文献2、および2001年7月12日出願、2002年6月6日公開、「ALUMINUM GALLIUM NITRIDE/GALLIUM NITRIDE HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTORS HAVING A GATE CONTACT ON A GALLIUM NITRIDE BASED CAP SEGMENT AND METHODS OF FABRICATING SAME」という名称の特許文献5に記載されているように、GaNキャップ層がある。いくつかの実施形態では、SiN、ONO構造または比較的高品質のAlNなどの絶縁層をいくつか堆積させて、MISHEMTを作ることができ、かつ/あるいは表面を不働態化することができる。こうした追加の層は、組成的に傾斜された1つまたは複数の転位層も含むことができる。
【0058】
さらに、Smorchkovaらに付与され、2002年11月14日公開された、「GROUP III NITRIDE BASED HIGH ELECTRON MOBILITY TRANSISTOR (HEMT) WITH BARRIER/SPACER LAYER」という名称の特許文献7に記載されているように、多層のバリア層22を設けてもよい。したがって、バリア層を単層に限定するものとして本発明の諸実施形態を解釈すべきではなく、こうした実施形態は例えば、GaN、AlGaNおよび/またはAlNの各層を組み合わせたバリア層を含むことができる。例えば、GaNおよびAlNの構造を利用して、合金の拡散を低減または防止することができる。したがって、本発明の諸実施形態は、窒化物ベースのバリア層を含むことができ、このような窒化物ベースのバリア層は、AlGaNベースのバリア層、AlNベースのバリア層、およびこれらの組合せを含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)を作製する方法であって、
チャネル層を形成する段階と、
前記チャネル層上にバリア層を形成する段階と、
前記バリア層上にキャップ層を形成する段階と、
前記バリア層に延びる前記キャップ層内にゲート埋込み部を形成する段階と、
前記バリア層と、前記チャネル層と、前記ゲート埋込み部を有する前記キャップ層とをアニーリングする段階と、
次いで、アニーリングされた前記ゲート埋込み部内にゲートコンタクトを形成する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バリア層と、前記チャネル層と、前記ゲート埋込み部を有する前記キャップ層とをアニーリングする段階が、少なくとも約700℃の温度で前記バリア層と、前記チャネル層と、前記ゲート埋込み部を有する前記キャップ層とをアニーリングする段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アニーリングする前記段階に先行して、前記キャップ層上および前記ゲート埋込み部内に封入層を形成する段階があり、アニーリングする前記段階に続いて、またゲートコンタクトを形成する前記段階に先行して、前記封入層を除去する段階があることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記封入層がAlNを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲート埋込み部の両側の前記キャップ層内にオーミックコンタクト埋込み部を形成する段階と、
前記オーミックコンタクト埋込み部内にオーミックコンタクト材料パターンを形成する段階とをさらに含み、
前記バリア層と、前記チャネル層と、前記ゲート埋込み部を有する前記キャップ層とをアニーリングする段階が、前記バリア層と、前記チャネル層と、前記オーミックコンタクト材料パターンと、前記ゲート埋込み部を有する前記キャップ層とをアニーリングする段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オーミックコンタクトを形成する前記段階に続いて、またアニーリングする前記段階に先行して、前記キャップ層上、前記オーミックコンタクト材料パターン上、および前記ゲート埋込み部内に封入層を形成する段階があり、アニーリングする前記段階に続いて、またゲートコンタクトを形成する前記段階に先行して、前記封入層を除去する段階があることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記封入層が、AlNを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ゲート埋込み部を形成する段階が、
前記ゲート埋込み部に対応する開口を有するように前記キャップ層上にマスク層をパターニングする段階と、
前記ゲート埋込み部を設けるために、前記パターニングされたマスク層をエッチングマスクとして使用して前記キャップ層をエッチングする段階と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アニーリングする段階に先行して、前記パターニングされたマスク層および前記ゲート埋込み部上に封入層を形成する段階があり、アニーリングする段階に続いて、前記ゲート埋込み部内に残る前記封入層の一部を提供するように、自己整合型リフトオフ技術を利用して前記マスク層および前記封入層を除去する段階があることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記封入層が、AlN、SiN、SiO、酸窒化物および/またはONO構造を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲートコンタクトを形成する段階の前に、前記ゲート埋込み部内の前記封入層の一部を除去する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記キャップ層および前記ゲート埋込み部内に絶縁層を形成する段階をさらに含み、
前記ゲートコンタクトを形成する段階が、前記ゲート埋込み部内の前記絶縁層上に前記ゲートコンタクトを形成する段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲートコンタクトも前記キャップ層上の前記絶縁層上に延びることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲートコンタクトが、ショットキーコンタクトを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
キャップ層を形成する段階が、前記バリア層上にGaN層を形成する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
キャップ層を形成する段階が、前記バリア層上にGaN層を形成する段階と、前記GaN層上にSiN層を形成する段階とを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記SiN層が、インサイチュで形成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ゲート埋込み部を形成する段階が、前記キャップ層を貫通し前記バリア層内に延びるが前記バリア層を貫通しないゲート埋込み部を形成する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記キャップ層が、GaNベースの半導体材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
高電子移動度トランジスタを作製する方法であって、
基板上にGaNベースの半導体材料からなる第1の層を形成する段階と、
前記第1の層上にGaNベースの半導体材料からなる第2の層を形成する段階であって、前記第2の層は、前記第1の層と前記第2の層との間の界面付近の領域内で2次元電子ガスを誘発するように構成された段階と、
GaNベースの半導体材料からなる前記第2の層上にGaNベースの半導体材料からなる第3の層を形成する段階と、
前記第2の層に延びる前記第3の層内にゲート埋込み部を形成する段階と、
前記第1の層と、前記第2の層と、前記ゲート埋込み部を有する前記第3の層とをアニー
リングする段階と、
次いで、アニーリングされた前記ゲート埋込み部内にゲートコンタクトを形成する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
アニーリングする前記段階に先行して、GaNベースの半導体材料からなる前記第3の層上および前記ゲート埋込み部内に封入層を形成する段階があり、アニーリングする前記段階に続いて、またゲートコンタクトを形成する前記段階に先行して、前記封入層を除去する段階があることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲート埋込み部両側のGaNベースの半導体材料からなる前記第3の層内にオーミックコンタクト埋込み部を形成する段階と、
前記オーミックコンタクト埋込み部内にオーミックコンタクト材料パターンを形成する段階とを含み、
前記第1の層と、前記第2の層と、前記ゲート埋込み部を有する前記第3の層とをアニーリングする段階が、前記第1の層と、前記第2の層と、前記オーミックコンタクト材料パターンと、前記ゲート埋込み部を有する前記第3の層とをアニーリングする段階を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ゲート埋込み部を形成する段階が、
前記ゲート埋込み部に対応する開口を有するようにGaNベースの半導体材料からなる前記第3の層上にマスク層をパターニングする段階と、
前記ゲート埋込み部を設けるために、前記パターニングされたマスク層をエッチングマスクとして使用して、GaNベースの半導体材料からなる前記第3の層をエッチングする段階とを含み、
アニーリングする段階に先行して、前記パターニングされたマスク層および前記ゲート埋込み部上に封入層を形成する段階があり、
アニーリングする段階に続いて、前記ゲート埋込み部内に残る前記封入層の一部を提供するように、自己整合型リフトオフ技術を利用して前記マスク層および前記封入層を除去する段階があることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記封入層がAlNを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ゲートコンタクトを形成する段階の前に、前記ゲート埋込み部内に残る前記封入層の前記一部を除去する段階をさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
GaNベースの材料からなる前記第3の層上および前記埋込み部内に絶縁層を形成する段階をさらに含み、
前記ゲートコンタクトを形成する段階が、前記ゲート埋込み部内の前記絶縁層上に前記ゲートコンタクトを形成する段階を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲートコンタクトが、GaNベースの材料からなる前記第3の層上の前記絶縁層上にも形成されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ゲートコンタクトが、T字状ゲート構造を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項29】
ゲート埋込み部を形成する段階が、前記第3の層を貫通し前記第2の層内に延びるが前記第2の層を貫通しないゲート埋込み部を形成する段階を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記ゲートコンタクトが、ショットキーコンタクトであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項31】
オーミックコンタクト埋込み部を形成する段階に先行して、GaNベースの材料からなる前記第3の層上にインサイチュで保護層を形成する段階があることを特徴とする請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−142595(P2012−142595A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60349(P2012−60349)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2007−522484(P2007−522484)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】