ハイブリッド車両の制御装置
【課題】高EGR率による燃費向上とドライバビリティとを好適に両立することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両に搭載されるエンジンには、排気ガスの一部を還流弁を介して再度前記内燃機関の吸気管に還流させるためのEGR装置および吸気管を流通する空気量を変化させるスロットルバルブが設けられる。ハイブリッド車両の制御装置は、運転者による減速要求が検出された場合には、還流弁をを全閉とするとともに、空気量が予め設定された減少速度で減少するようにスロットルバルブを閉弁制御する。さらに、制御装置は、スロットルバルブの閉弁制御の実行中において、エンジンから発生するパワーを、モータジェネレータの回生制動パワーに変換する。これによって、スロットルバルブの閉弁制御を適用しない場合と同程度の減速感を確保する。
【解決手段】ハイブリッド車両に搭載されるエンジンには、排気ガスの一部を還流弁を介して再度前記内燃機関の吸気管に還流させるためのEGR装置および吸気管を流通する空気量を変化させるスロットルバルブが設けられる。ハイブリッド車両の制御装置は、運転者による減速要求が検出された場合には、還流弁をを全閉とするとともに、空気量が予め設定された減少速度で減少するようにスロットルバルブを閉弁制御する。さらに、制御装置は、スロットルバルブの閉弁制御の実行中において、エンジンから発生するパワーを、モータジェネレータの回生制動パワーに変換する。これによって、スロットルバルブの閉弁制御を適用しない場合と同程度の減速感を確保する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、内燃機関と電動機とを動力源として備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を考慮して、内燃機関(エンジン)と電動機(モータ)とを効率的に組合わせて走行するハイブリッド車両が実用化されている。このようなハイブリッド車両に搭載されるエンジンとして、たとえば特開2008−151064号公報には、排気通路内の排気ガスの一部を再度吸気通路へ還流させる排気ガス還流装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)を設けたものが開示されている。
【0003】
このEGR装置は、エンジンから排出される排気ガスの一部を吸気系へ再循環させ、新しい混合気と混ぜて燃焼温度を下げることにより、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制したり、ポンピングロスを抑制して燃費向上を図るものである。
【特許文献1】特開2008−151064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなEGR装置が設けられたエンジンにおいては、さらなる燃費向上の観点から、吸気系へ還流させる排気ガス(EGRガス)を増量する、すなわち、気筒内に導入される吸入空気量に対するEGRガス量の割合であるEGR率を高めることが検討されている。EGR率を高めることによって、燃料および酸素の密度が低い状態で理論空燃比での燃焼が可能となるとともに、燃焼熱が混合気中の排気によって吸収されるため、排気ガス温度の調整のための燃料噴射量の増量を抑えることができるためである。
【0005】
その一方で、高EGR率の実現には、EGR装置において、三元触媒コンバータを通過した後の排気ガスをEGRバルブまで導入するためのEGRパイプの大口径化やEGRバルブの大型化などが必要となる。このようなEGRパイプの大口径化やEGRバルブの大型化は、EGRバルブの開度制御における制御応答性を低下させるという問題がある。
【0006】
具体的には、運転者による減速要求に応答してエンジンの停止制御を行なう際には、EGRバルブの制御応答性の低下に起因して、EGRバルブに対して閉弁信号を出力しても、実際にEGRバルブが全閉となるまでには所定の応答期間を要することから、該応答期間において、吸気管内にはEGRガスが導入され続けることとなる。また、スロットルバルブの閉弁制御によって吸入空気量が減少するとともに、吸気管負圧が上昇することによって、EGRガスの還流量が増大する。さらに、該応答期間において吸気管内に還流されたEGRガスは、新気によって燃焼室内へ排出されることなく、吸気管内に残留してしまう。
【0007】
そして、EGRガスの残留量が増大すると、実質的に可燃空気量が減少するため、可燃混合比を外れることによって、燃焼室内の混合気が着火されない現象、いわゆる失火が発生する可能性がある。失火が発生すると、機関回転速度が低下するためにドライバビリティの悪化を招くこととなる。また、未燃焼混合気が排気通路に排出されることによる排気浄化触媒への悪影響が問題となる。
【0008】
それゆえ、この発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高EGR率による燃費向上とドライバビリティとを好適に両立することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従えば、内燃機関および電動発電機を動力源として駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の制御装置であって、ハイブリッド車両は、内燃機関からの動力を受けて発電可能な第1の電動発電機と、内燃機関からの動力を第1の電動発電機および駆動軸に機械的に分配するように構成された動力分割機構と、駆動軸に回転軸が連結される第2の電動発電機と、第1および第2の電動発電機と電力を授受可能な蓄電装置とを含む。内燃機関には、排気ガスの一部を還流弁を介して再度内燃機関の吸気管に還流させるための排気ガス還流装置および吸気管を流通する空気量を変化させるスロットルバルブが設けられる。制御装置は、排気還流量が制御目標値となるように還流弁を開弁制御する一方で、運転者による減速要求が検出された場合には、還流弁を全閉とする還流ガス制御手段と、運転者による減速要求が検出された場合には、空気量が予め設定された減少速度で減少するようにスロットルバルブを閉弁制御するスロットル制御手段と、スロットルバルブの閉弁制御の実行中において、内燃機関の発生する動力を第1および第2の電動発電機の少なくとも一方が吸収するように、第1および第2の電動発電機の回生制動力を制御する制動制御手段とを備える。
【0010】
好ましくは、スロットル制御手段は、排気ガス還流装置による排気還流量が相対的に多いときには、減少速度を相対的に低い値に設定する。
【0011】
好ましくは、スロットル制御手段は、内燃機関の回転数が相対的に高いときには、減少速度を相対的に高い値に設定する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置の充電状態値を推定する状態推定手段と、蓄電装置の温度を検出する温度検出手段と、推定された充電状態値および検出された温度に基づいて、蓄電装置を充電可能な電力の上限としての入力制限を設定する入力制限設定手段とをさらに備える。還流ガス制御手段は、設定された入力制限が相対的に大きいときには、吸気管に還流可能な排気ガスの最大許容量としての最大許容還流量を、相対的に高い値に設定する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置の充電状態値が予め定められた制御中心値を中心とする所定の範囲内に維持されるように第1の電動発電機による蓄電装置に対する充電を制御する充電制御手段をさらに備える。充電制御手段は、還流弁の開弁制御の実行中においては、制御中心値を、還流弁の開弁制御の実行禁止中における制御中心値よりも低い値に設定する。
【0014】
好ましくは、車両は、第1の電動発電機による蓄電部に対する充電が制限される第1のモード、および蓄電装置の充電状態値が所定の範囲内に維持されるように第1の電動発電機による蓄電部に対する充電を制御する第2のモードのいずれかの走行モードを選択して走行可能である。制御装置は、車両の走行状態に基づいて走行モードの切替えを行なう走行制御手段をさらに備える。走行制御手段は、還流弁の開弁制御の実行中においては、第1のモードで走行する範囲が拡大するように走行モードの切替えしきい値を変化させる。
【0015】
好ましくは、還流ガス制御手段は、還流弁の開弁制御の実行中において、推定された充電状態値が所定の閾値を超えた場合には、還流弁を全閉とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、高EGR率による燃費向上とドライバビリティとを好適に両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態による制御装置が搭載される車両の一例として示されるハイブリッド車両の構成を説明するブロック図である。なお、本発明は図1に示すハイブリッド車両に限定されない。
【0019】
ハイブリッド車両は、動力源としての、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、単にエンジンという)120と、モータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータ140Aとジェネレータ140B(あるいはモータジェネレータ140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータ140Aがジェネレータとして機能したり、ジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。
【0020】
ハイブリッド車両には、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とジェネレータ140Bとの2経路に分配する動力分割機構(たとえば、遊星歯車機構)260と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータ140Aおよびジェネレータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220とインバータ240との間で電圧変換を行なう昇圧コンバータ242と、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECU(Electronic Control Unit)という)1020と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU1000と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU1020、インバータ240等を制御するMG_ECU1010と、バッテリECU1020、エンジンECU1000およびMG_ECU1010等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU1030等を含む。
【0021】
なお、図1に示すこの発明の実施の形態おいて、バッテリECU1020、エンジンECU1000、MG_ECU1010およびHV_ECU1030は、本願発明の「制御装置」に相当する。図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU1010とHV_ECU1030とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0022】
動力分割機構260は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Bとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Bの回転数を制御することにより、動力分割機構260は無段変速機としても機能する。エンジン120の回転力はプラネタリーキャリア(C)に入力され、それがサンギヤ(S)によってモータジェネレータ140Bに、リングギヤ(R)によってモータおよび出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギーをモータジェネレータ140Bで電気エネルギーに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
【0023】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構260によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Aがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Bによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動量を増加する制御を行なう。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0024】
次に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU1000によって制御されるエンジン120について説明する。図2は、エンジンECU1000によって制御されるエンジンシステムの概略構成図である。
【0025】
図2を参照して、このエンジンシステムにおいては、エアクリーナ200を介した空気が、エンジン120の燃焼室に導入される。その際、吸入空気量がエアフローメータ202により検知されて、エンジンECU1000に吸入空気量を表わす信号が入力される。また、スロットルバルブ300の開度により、吸入空気量が変化する。このスロットルバルブ300の開度は、エンジンECU1000からの信号に基づいて作動したスロットルモータ304により変化される。スロットルバルブ300の開度は、スロットルポジションセンサ302により検知されて、エンジンECU1000にスロットルバルブ300の開度を表わす信号が入力される。
【0026】
燃料は、フューエルタンク400に貯蔵され、フューエルポンプ402により高圧フューエルポンプ800を介して高圧フューエルインジェクタ804から燃焼室に噴射される。インテークマニホールドから導入された空気と、フューエルタンク400から高圧フューエルインジェクタ804を介して燃焼室に噴射された燃料との混合気が、エンジンECU1000から制御信号が入力されるイグナイタ一体式イグニッションコイル808を用いて着火されて燃焼する。なお、図2のように、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタを設ける構成以外に、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタを設ける構成、あるいは、筒内噴射用インジェクタおよび吸気通路噴射用インジェクタの双方を設ける構成としてもよい。
【0027】
混合気が燃焼した後の排気ガスは、イグゾーストマニホールドを通り、三元触媒コンバータ900および三元触媒コンバータ902を通って、大気に排出される。
【0028】
このエンジンシステムは、図2に示すように、三元触媒コンバータ900の下流側からEGRパイプ500を通ってEGRバルブ502によりその流量が制御されるEGR装置を有する。このEGR装置は、排気ガス再循環装置とも呼ばれ、エンジン120から排出される排気ガスの一部を吸気系へ再循環させ、新しい混合気と混ぜて燃焼温度を下げることにより、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制したり、ポンピングロスを抑制して燃費向上を図るものである。
【0029】
図3に、図2のEGR装置の部分を拡大した図を示す。
図3に示すように、EGRガスは、三元触媒コンバータ900を通過した後の排気ガスがEGRパイプ500を通ってEGRバルブ502まで導入される。EGRバルブ502は、エンジンECU1000によりデューティ制御が実行されている。エンジンECU1000は、エンジン回転数、アクセルポジションセンサ102(図2)からの信号などの各種の信号に基づいて、EGRバルブ502の開度を制御する。
【0030】
なお、図示は省略するが、EGRバルブ502は、エンジンECU1000からの制御信号により動作するステッピングモータと、該ステッピングモータによりリニアにバルブ開度が制御されるポペットバルブと、リターンスプリングとを含む。また、燃焼室に還流されるEGRガスは高温のため、EGRバルブ502の性能や耐久性に悪影響を及ぼすため、エンジンの冷却水により冷却するための冷却水通路が設けられている。
【0031】
HV_ECU1030には、エンジンECU1000を経由して、エンジン回転数センサ(図示せず)にて検知されたエンジン回転数を表わす信号、および、アクセルポジションセンサ102からの信号が入力される。また、HV_ECU1030には、車輪速センサ(図示せず)にて検知された車速を表わす信号が入力される。HV_ECU1030は、これらの信号に基づいて、エンジンECU1000にエンジン制御信号(例えば、スロットル開度信号)を出力する。
【0032】
エンジンECU1000は、エンジン制御信号や他の制御信号に基づいて、エンジン120に電子スロットル制御信号を出力する。また、エンジンECU1000は、後述する方法によって、エンジン120の運転状態に基づいてEGRバルブ502の開度を調整するための制御信号を生成し、その生成した制御信号をステッピングモータへ出力する。
【0033】
なお、本実施の形態では、EGR装置におけるEGRバルブ502は、ステッピングモータによりポペットバルブが駆動されるものと説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、ステッピングモータのような電気式アクチュエータではなく、ソレノイドバルブとダイヤフラムを有する空気アクチュエータとにより構成される空気制御式のEGRバルブであってもよい。
【0034】
再び図2を参照して、このエンジンシステムには、このようなEGR装置の他に、以下に示すシステムが導入されている。
【0035】
このエンジンシステムには、燃料噴射制御システムが導入され、エアフローメータ202およびバキュームセンサ306によって吸入空気量を検出し、燃料噴射量が制御される。エンジンECU1000は、各センサからの信号により、最適な燃焼状態となるように、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じた燃料噴射量および燃料噴射時期の制御を行なう。
【0036】
また、このエンジンシステムにおいては、エンジン回転数と吸入空気量(バキュームセンサ306およびエアフローメータ202により検出)により燃料噴射量が決定される。また、始動後の空燃比は、酸素センサ710,712からの信号によりフィードバック制御される。すなわち、燃料噴射制御は、エンジン120の状態に応じて演算した基本噴射時間に、各センサの信号に補正を加え、燃料噴射時期制御および噴射量制御が実行される。
【0037】
また、このエンジンシステムには、点火時期制御システムが導入されている。エンジンECU1000は、各センサからの信号により最適な点火時期を算出し、イグナイタ一体式イグニッションコイル808に点火信号を出力する。点火時期は、初期セット点火時期または基本進角度および補正進角度により決定される。
【0038】
エンジン120の点火時期の算出は、エンジン回転数信号、カムポジションセンサからの信号、吸気流量の信号、スロットルバルブ開度信号、エンジン冷却水用信号などに基づいて、エンジンECU1000が運転状態に応じて算出して、イグナイタ一体式イグニッションコイル808へ点火信号を出力する。すなわち、点火時期制御は、エンジン120の状態に応じて演算した基本点火時期に、各センサの信号による補正を加え、適正な点火時期を算出する。
【0039】
また、このエンジンシステムには、スロットル制御システムが導入されている。このスロットル制御システムは、エンジン120の状態に応じて演算したスロットルバルブ300の開度に、各センサの信号による補正を加えて、適正な開度になるように制御される。すなわち、エンジン120の燃焼状態に応じた適切なスロットルバルブ300の開度になるように、エンジンECU1000がスロットルバルブ300の開度をスロットルモータ304を用いて制御する。
【0040】
(ハイブリッド車両の制御構造)
以下に、図4を参照して、本実施の形態に従うハイブリッド車両における回生制動動作を実現するための制御構造について説明する。
【0041】
図4は、運転者による減速要求が発生した場合におけるエンジン120およびモータジェネレータ140の運転状態の時間的変化の一例を示す図である。
【0042】
図4を参照して、まず時刻t1において運転者による減速要求が検出されたものとする。この減速要求は、たとえば運転者によりアクセルペダル100(図2)が踏み戻されたことに応じて発生するものである。なお、減速要求には、アクセルペダル100の踏込量の他にも、ブレーキペダル(図示せず)の踏込量が含まれる。
【0043】
本実施の形態において、減速要求は、アクセルポジションセンサ102(図2)からの信号に基づいて、HV_ECU1030およびエンジンECU1000により検出される。なお、図4では、時刻t2において、アクセルペダル100が完全に踏み戻されてアクセル開度が0%となっている。
【0044】
そして、時刻t1において減速要求が検出されると、エンジンECU1000は、EGRバルブ502(図3)に対して制御信号(閉弁信号)を出力することにより、EGR装置の作動を停止(EGRオフ)させる。これにより、EGRバルブ502の開度が全閉となるため、吸気管内へのEGRガスの導入が遮断される。
【0045】
さらに、エンジンECU1000は、時刻t1以降において、スロットルバルブ300の開度を全閉とするための閉弁制御を実行する。
【0046】
ここで、このスロットルバルブ300の閉弁制御において、図中の一点鎖線で示すように、アクセル開度の減少速度に追従するようにスロットルバルブ300の閉弁速度を制御する場合を想定する。この場合、エアクリーナ200を介して吸気管内に導入される新しい空気(新気)は、スロットルバルブ300の閉弁速度に応じた減少速度で減少することとなる。その結果、時刻t1以降においては、吸入空気量が制限されることから、吸気管内に含まれるEGRガスは、新気によって燃焼室内へ排出されることなく、吸気管内に残留することとなる。特に、時刻t0から時刻t1までのEGR装置の作動中において、大量のEGRガスを吸気系に還流させた場合、すなわち、気筒内への吸入空気量に対するEGRガス量の割合であるEGR率を高めた場合には、以下に述べるように、吸気管内のEGRガスの残留量が増大する可能性が高くなる。
【0047】
詳細には、高EGR率は、NOxの低減および燃費向上の点で有効であり、EGRパイプ500(図3)の大口径化およびEGRバルブ502(図3)の大型化などによって実現されるものである。
【0048】
その一方で、EGRパイプ500の大口径化およびEGRバルブ502の大型化を行なうことによって、EGRバルブ502の開度制御における制御応答性が低下するという不具合が生じてしまう。
【0049】
したがって、運転者からの減速要求が検出されたときに、上述したように、エンジンECU1000がEGRバルブ502に対して閉弁信号を出力しても、実際にEGRバルブ502が全閉となるまでには所定の応答時間を要することとなり、該応答時間において、吸気管内にはEGRガスが導入され続けることとなる。そのため、スロットルバルブ300の閉弁制御によって吸入空気量が減少し、かつ吸気管負圧が上昇すると、EGRガスの還流量が増大する。さらに、該応答期間において吸気管内に還流されたEGRガスは、導入された新気によって燃焼室内へ排出されることなく、吸気管内に残留してしまう。
【0050】
なお、このEGRガスの残留量は、経年劣化等によりEGRバルブ502に異物が噛み込む異常が生じた場合には、EGRバルブ502の開度制御における精度が低下するため、さらに増大する可能性がある。
【0051】
そして、EGRガスの残留量が増大すると、実質的に可燃空気量が減少するため、可燃混合比を外れることによって、燃焼室内の混合気が着火されない現象、いわゆる失火が発生する可能性がある。失火が発生すると、機関回転速度が低下するためにドライバビリティの悪化を招くこととなる。また、未燃焼混合気が排気通路に排出されることによる排気浄化触媒への悪影響が問題となる。
【0052】
さらには、エンジン120の始動(再始動)時には、燃焼室内での燃焼が緩慢となるため、燃焼が不安定となり、始動性が低下する、または排気エミッションが増加するといった問題が発生する。
【0053】
そこで、これらの不具合を解消するため、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置は、運転者による減速要求が検出されたときには、EGR率およびエンジン回転数に応じて予め設定された閉弁速度に従って、スロットルバルブ300の閉弁制御を行なう構成とする。
【0054】
具体的には、上記の構成において、スロットルバルブ300の閉弁速度は、EGR率およびエンジン回転数に応じて設定される。図5は、EGR率およびエンジン回転数とスロットルバルブ300の閉弁速度との関係を説明するための図である。
【0055】
図5を参照して、スロットルバルブ300の閉弁速度は、EGR率が高くなるに従って、高くなるように設定される。これは、EGR率が高くなるほどEGRガスの残留量が多くなるため、吸気管内からEGRガスを除去するためにはより多量の新気を吸気管内に導入する必要があることによる。
【0056】
また、スロットルバルブ300の閉弁速度は、エンジン回転数が高くなるに従って、高くなるように設定される。これは、エンジン回転数が高くなるほど吸気管内への新気の導入が活発に行なわれるため、より短期間でスロットルバルブ300を閉弁することによっても吸気管内からEGRガスを除去できることによる。
【0057】
本実施の形態では、図5に示すEGR率およびエンジン回転数とスロットルバルブ300の閉弁速度との関係が実験などによって予め定められた上で閉弁速度設定用マップとしてエンジンECU1000内部のROM(Read Only Memory)に記憶されており、スロットルバルブ300の閉弁速度としては、運転者からの減速要求を検出した時点におけるEGR率およびエンジン回転数に対応したものが当該マップから導出される。
【0058】
なお、閉弁速度設定用マップは、EGR率およびエンジン回転数のみをパラメータとするものに限られず、EGRガスの残留量を推定した結果に応じて閉弁速度を適切に設定可能とするものであれば、どのようなものであってもよい。
【0059】
以上に述べたように、EGR率およびエンジン回転数に応じてスロットルバルブ300の閉弁速度を可変に設定することにより、EGR率が高い場合には、図4に実線で示されるように、アクセル開度の減少速度を下回る閉弁速度でスロットルバルブ300が閉じられる。そのため、EGRバルブ502が全閉となった後には吸気管内には新気のみが導入されるため、この新気によってEGRガスが吸気管から燃焼室内に排出される。その結果、燃焼が安定となり、ドライバビリティおよび排気浄化触媒への影響を改善することができる。また、エンジン120の始動性の低下を防止することができる。
【0060】
その一方で、上述したスロットルバルブ300の閉弁制御を行なうことによって、エンジン120からは、運転者からの減速要求に反してトルクが発生する。この発生したエンジントルクTeは、図4に実線で示すように、スロットルバルブ300の閉弁速度に比例した速度で徐々に減少し、最終的に零となる。したがって、この余剰トルクに起因して、運転者には車両の予期しない移動感(空走感)を与えてしまい、減速感を悪化させることとなる。
【0061】
そこで、高EGR率による燃費向上と減速感とを好適に両立させるために、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置では、このエンジントルクTeの余剰分をモータジェネレータ140(図1)が吸収するように、モータジェネレータ140の回生制動トルクを制御する構成とする。
【0062】
具体的には、図4に示すように、減速時にエンジン120から発生するパワー(エンジントルク×エンジン回転数)を、モータジェネレータ140の回生制動パワーに変換する。これによって、図4から明らかなように、車両の減速度(車両の速度減少率、単に「車両減速とも記す)においては、本実施の形態に従うスロットルバルブ300の閉弁制御を適用しない場合(図中の一点鎖線に相当)と略一致した特性が得られている。すなわち、本実施の形態に従うスロットルバルブ300の閉弁制御を適用しない場合と同程度の減速感を確保することができる。
【0063】
図6は、本実施の形態に従うハイブリッド車両における共線図の一例を示す。図5を参照して、縦軸は各回転軸の回転数を示し、横軸は各ギヤのギヤ比を距離的な関係で示している。
【0064】
サンギヤ軸(図中のS)とリングギヤ軸(図中のR)とを両端にとり、位置Sと位置Rとの間を1:ρに内分する位置Cをキャリア軸とする。ρは、リングギヤの歯数に対するサンギヤの歯数の比である。なお、こうして定義された位置S,C,Rに、それぞれのギヤの回転軸の回転数をプロットすると、プラネタリギヤは、プロットされた3点が必ず一直線上に並ぶという性質を有している。
【0065】
ハイブリッド車両の減速時の運転状態が図5に示した共線図で表わされる場合には、上述したスロットルバルブ300の閉弁制御を行なうことによって、キャリア軸にはエンジントルクTeが発生する。そして、このエンジントルクTeを打ち消すように、モータジェネレータ140A,140Bの吸収トルクTm1,Tm2が設定される。設定された吸収トルクTm1,Tm2は、サンギヤ軸およびリングギヤ軸の各々に作用する制動トルクに加算される。その結果、エンジンパワーは、モータジェネレータ140A,140Bにおける回生制動パワーに変換され、回収された電力が走行用バッテリ220に蓄えられる。
【0066】
このように、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置によれば、車両減速時にエンジン120から発生するパワーを、他の動力源であるモータジェネレータ140が吸収することにより、高EGR率の実現に伴なって生じる減速感の悪化を回避することができる。その結果、燃費向上と減速感とを好適に両立させることができる。
【0067】
なお、上述の説明においては、モータジェネレータ140A,140Bの双方でエンジントルクTeを吸収する場合について例示したが、いずれか一方のモータジェネレータでエンジントルクTeを吸収することも可能である。
【0068】
以上の処理は、図7に示すような処理フローにまとめることができる。
図7は、本実施の形態に従うハイブリッド車両における回生制動動作の処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
図7を参照して、一連の制御が開始されると、HV_ECU1030およびエンジンECU1000(図1)は、アクセルポジションセンサ102からの信号に基づいて、運転者からの減速要求が検出されたか否かを判断する(ステップS01)。
【0070】
運転者からの減速要求が検出されない場合(ステップS01においてNOの場合)には、処理は最初に戻る。
【0071】
これに対して、減速要求が検出された場合(ステップS01においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を停止(オフ)させる(ステップS02)。
【0072】
さらに、エンジンECU1000は、スロットルバルブ300(図2)の閉弁制御を実行する。具体的には、エンジンECU1000は、図5に示す閉弁速度設定用マップを参照して、減速要求の検出時におけるEGR率およびエンジン回転数に対応する閉弁速度を導出する。そして、エンジンECU1000は、導出した閉弁速度に従ってスロットルバルブ300の開度が減少するようにスロットルバルブ300の閉弁制御を実行する(ステップS03)。
【0073】
この閉弁制御の実行中において、HV_ECU1030は、エアフローメータ202からの吸入空気量を表わす信号などに基づいて、エンジン120から発生するトルクTeを算出する(ステップS04)。さらに、HV_ECU1030は、この算出されたエンジントルクTeとエンジン回転数センサにて検知されたエンジン回転数とに基づいてエンジン120の出力パワーを算出すると、このエンジン120の出力パワーをモータジェネレータ140の回生制動パワーに変換するために必要とされる、モータジェネレータ140の吸収トルクTmを算出する(ステップS05)。
【0074】
そして、HV_ECU1030は、モータジェネレータ140の吸収トルクTmに基づいて、モータジェネレータ140の要求制動トルクを設定する(ステップS06)。設定された要求制動トルクは、トルク指令としてMG_ECU1010(図1)に与えられると、MG_ECU1010は、トルク指令に従って、モータジェネレータ140を制御する(ステップS07)。
【0075】
(走行用バッテリの充放電制御)
以上に述べたように、ハイブリッド車両の減速時においては、スロットルバルブ300の閉弁制御の実行中に発生したエンジンパワーは、モータジェネレータ140A,140Bにおける回生制動パワーに変換され、回収された電力が走行用バッテリ220に蓄えられる。
【0076】
したがって、EGR率が高いことに起因してスロットルバルブ300の閉弁速度を低下させたことに伴ない、閉弁制御の実行中に発生するエンジンパワーが増大した場合には、モータジェネレータ140での回生制動パワーも増大することから、走行用バッテリ220が過充電となる可能性がある。
【0077】
その一方で、走行用バッテリ220からの放電または走行用バッテリ220への充電は、充電状態値(SOC:State of Charge;以下、単に「SOC」とも称す)を考慮して行なわれている。SOCを適正な範囲に維持することで、走行用バッテリ220の過充電や過放電を回避するためである。
【0078】
具体的には、走行用バッテリ220の充放電制御は、走行用バッテリ220のSOCが予め設定された制御中心値を中心とする所定の範囲内に維持されるように、モータジェネレータ140Bによる発電動作を制御することによって行なわれる。なお、このモータジェネレータ140Bでの発電動作に応じて、エンジン120も作動を開始する。
【0079】
ここで、ハイブリッド車両の減速時において、モータジェネレータ140によって回生発電された電力を走行用バッテリ220に蓄えるためには、上述した回生制動動作の開始前に走行用バッテリ220を低充電状態にしておくことが望ましい。そこで、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置は、EGR装置の作動中、すなわち、EGRバルブの開度制御の実行中においては、走行用バッテリ220の充放電制御の指標となるSOCの制御中心値を、EGR装置の停止中、すなわち、EGRバルブの開度制御の実行禁止中におけるSOCの制御中心値よりも低い値に変更する構成とする。
【0080】
具体的には、図8を参照して、EGR装置の停止中(EGRオフ時)においては、SOCがS1を制御中心値とする所定の範囲内に維持されるように、走行用バッテリ220の充放電制御が行なわれる。これに対して、EGR装置の作動中(EGRオン時)においては、SOCがS1よりも小さいS2を制御中心値とする所定の範囲内に維持されるように、走行用バッテリ220の充放電制御を行なうものとする。
【0081】
これにより、EGR装置の作動中においては、EGR装置の停止中と比較して、走行用バッテリ220のSOCと満充電状態(図8中のMAXに相当)と差がより大きくなり、走行用バッテリ220が充電可能な電力が増加する。そのため、EGR装置の作動を停止させる場面において、スロットルバルブ300の閉弁制御の実行中にモータジェネレータ140で回生発電された電力を受けることにより走行用バッテリ220が過充電となるのを回避することができる。
【0082】
なお、図8で述べたような、走行用バッテリ220のSOCの制御中心値の変更は、たとえば、EGR装置の作動中とEGR装置の停止中とで、ハイブリッド車両の走行モードの切替しきい値を変化させることによって実現することができる。
【0083】
具体的には、ハイブリッド車両は、EV(Electric Vehicle)走行モードと、HV(Hybrid Vehicle)走行モードとを選択して走行可能に構成されている。EV走行モードでは、ハイブリッド車両は、モータジェネレータ140Aからの駆動力のみによって走行する。このEV走行モードでは、エンジン120の駆動力を受けたモータジェネレータ140Bでの発電動作は行なわれず、走行用バッテリ220に対する充電が制限される。
【0084】
これに対して、HV走行モードでは、ハイブリッド車両は、走行用バッテリ220のSOCが図8に示す所定の範囲内に維持されるように、モータジェネレータ140Bによる発電動作が制御される。このモータジェネレータ140Bでの発電動作に応じてエンジン120も作動を開始する。なお、エンジン120の作動によって生じる駆動力の一部は、車両の走行にも用いられる。
【0085】
本実施の形態では、この走行モードを切替えるための走行モード切替しきい値を、EGR装置の作動中においては、EV走行モードで走行する範囲が拡大するように変化させる構成とする。
【0086】
その一例として、EV走行モードでの走行中において、運転者から急加速などの駆動力要求が与えられた場合には、エンジン120を始動することにより、ハイブリッド車両はHV走行モードへ切替えられる。このとき、アクセルペダルの開度を示すアクセル開度に対して走行モード切替しきい値としての所定のしきい値が予め設定され、アクセル開度が該しきい値を超える場合には、EV走行モードからHV走行モードへの切替えが行なわれる。本実施の形態では、EGR装置の作動中において、この走行モードの切替えを示すアクセル開度のしきい値を、EGR装置の停止中におけるしきい値OP1よりも高い値OP2(>OP1)へと変化させる。これにより、EGR装置の作動中においては、EV走行モードで走行する範囲が拡大される。
【0087】
(EGR制御)
ハイブリッド車両の減速時における走行用バッテリ220における過充電は、上述した走行用バッテリ220の充放電制御に加えて、以下に述べるようなEGRバルブ502の開度制御(以下、EGR制御とも称する)を行なうことによって、より確実に回避することができる。
【0088】
図9は、EGR制御において許容されるEGR率の最大値である許容最大EGR率と走行用バッテリ220を充電可能な電力の上限としての入力制限Winとの関係を示す図である。
【0089】
本実施の形態において、エンジンECU1000(図1)は、エンジン120の運転状態に基づいて、許容最大EGR率を上限として、排気還流量の制御目標値に対応するEGR率の目標値(目標EGR率)を設定し、実際のEGR率が目標EGR率に一致するようにEGR制御を実行する。
【0090】
このEGR制御において、エンジンECU1000は、許容最大EGR率を、走行用バッテリ220の入力制限Winに応じて設定する。なお、走行用バッテリ220の入力制限Winは、温度センサ(図示せず)により検出された走行用バッテリ220の電池温度および走行用バッテリ220のSOCに基づいて設定されたものを、バッテリECU1020(図1)から通信により入力する構成とした。
【0091】
図9を参照して、許容最大EGR率は、走行用バッテリ220の入力制限Winが所定値よりも低い場合には、0%、すなわち、EGR装置を停止させるように設定される。これに対して、入力制限Winが所定値以上となる場合には、最大許容EGR率は、入力制限Winが大きくなるに従って、高い値となるように設定される。
【0092】
なお、図9に示す関係は、図5に示すEGR率とスロットルバルブ300の閉弁速度との関係に基づいて、EGR率とモータジェネレータ140における回生発電量との関係を算出することによって予め導出されたものである。図9に示す関係は、許容最大EGR率設定用マップとしてエンジンECU1000内部のROMに記憶されており、EGR装置の作動を許可するためのEGR許可条件が成立した時点における走行用バッテリ220の入力制限Winに対応したものが当該マップから導出される。
【0093】
これによれば、走行用バッテリ220の入力制限Winが相対的に小さい場合には、許容最大EGR率が相対的に低い値、もしくは0%(オフに相当)に設定される。そのため、スロットルバルブの閉弁制御の実行中にモータジェネレータ140が発電する電力は、走行用バッテリ220の入力制限Winを超えないように制限されることから、走行用バッテリ220が過充電となるのを回避することができる。
【0094】
さらに、本実施の形態においては、エンジンECU1000は、バッテリECU1020から入力される走行用バッテリ220のSOCが所定の閾値以上となる場合には、EGR装置を強制的に停止させる。なお、所定の閾値は、走行バッテリ220が過充電となるのを回避するために許容されるSOCの上限値(たとえば満充電状態)に設定される。
【0095】
これによれば、例えば、降坂路が連続することによって、モータジェネレータ140が回生発電した電力により走行用バッテリ220が満充電状態となっている場合には、EGR制御の実行が禁止されることになる。したがって、上述したスロットルバルブ300の閉弁制御の実行が不要となることから、走行用バッテリ220が過充電となるのを回避することができる。
【0096】
なお、EGR装置を強制的に停止させることは、燃費の面において不利となることが懸念されるが、上述した走行用バッテリ220の充放電制御によって、高充電状態に起因してEV走行モードでの走行が拡大されるため、燃費への影響を抑えることができる。
【0097】
以上の処理は、図10および図11に示すような処理フローにまとめることができる。
図10は、本実施の形態に従うエンジンECU1000で実行されるEGR制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図10を参照して、一連の制御が開始されると、エンジンECU1000は、バッテリECU1020から走行用バッテリ220のSOCを取得する(ステップS11)。そして、エンジンECU1000は、走行用バッテリ220のSOCが所定のしきい値を下回っているか否かを判断する(ステップS12)。なお、本実施の形態では、一例として、所定の閾値は、走行用バッテリ220の満充電状態(図8のMAXに相当)に設定されている。
【0099】
走行用バッテリ220のSOCが所定の閾値MAX以上となる場合(ステップS12においてNOの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置を停止状態(オフ)とする(ステップS18)。
【0100】
これに対して、走行用バッテリ220のSOCが所定の閾値MAXを下回っている場合(ステップS12においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を許可する(ステップS13)。そして、エンジンECU1000は、図9に示す許容最大EGR率設定用マップを参照することにより、バッテリECU1020から入力される走行用バッテリ220の入力制限Winに基づいて、許容最大EGR率を算出する(ステップS14)。
【0101】
次に、エンジンECU1000は、各センサによって検知されるスロットル開度、吸入空気量、エンジン回転数および冷却水温等の各データに基づいて、エンジン120の運転状態がEGR装置を作動させるための所定の条件(EGR実行条件)を満たしているか否かを判断する(ステップS15)。
【0102】
エンジン120の運転状態がEGR実行条件を満たしていない場合(ステップS15においてNOの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置を停止状態とする(ステップS18)。
【0103】
これに対して、エンジン120の運転状態がEGR実行条件を満たしている場合(ステップS15においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、エンジン120の運転状態に基づいて、ステップS14で算出した許容最大EGR率を上限として、目標EGR率を算出する(ステップS16)。そして、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を開始して、実際のEGR率が目標EGR率と一致するようにEGRバルブの開度制御を実行する(ステップS17)。
【0104】
図11は、本実施の形態に従うHV_ECU1030およびエンジンECU1000で実行される走行用バッテリ220の充放電制御およびスロットルバルブの閉弁制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0105】
図11を参照して、一連の制御が開始されると、HV_ECU1030は、EGR装置が作動中であるか否かを判断する(ステップS21)。なお、ステップS21の判断は、例えば、HV_ECU1030が、EGR装置の作動/停止を指示するEGR作動判定フラグをエンジンECU1000から取得することによって行なわれる。
【0106】
EGR装置が停止中である場合(ステップS21においてNOの場合)には、HV_ECU1030は、処理をステップS24へ進める。
【0107】
これに対して、EGR装置が作動中である場合(ステップS21においてYESの場合)には、HV_ECU1030は、走行用バッテリ220のSOCの制御中心値を、EGR装置の停止中におけるSOCの制御中心値S1よりも低い値S2(<S1)に変更する(ステップS22)。
【0108】
さらに、HV_ECU1030は、ハイブリッド車両の走行モード切替しきい値を、EGR装置の停止中における走行モード切替しきい値と比較して、EV走行モードで走行する範囲が拡大するように変化させる(ステップS23)。一例として、HV_ECU1030は、走行モードの切替えを示すアクセル開度のしきい値を、EGR装置の停止中におけるしきい値OP1よりも高い値OP2(>OP1)へと変化させる。
【0109】
次に、エンジンECU1000は、図5に示す閉弁速度設定用マップを参照して、EGR率およびエンジン回転数に対応するスロットルバルブ300の閉弁速度を算出する(ステップS24)。そして、エンジンECU1000は、アクセルポジションセンサ102からの信号に基づいて、運転者からの減速要求が検出されたか否かを判断する(ステップS25)。運転者からの減速要求が検出されない場合(ステップS25においてNOの場合)には、処理はステップS24に戻される。
【0110】
これに対して、減速要求が検出された場合(ステップS25においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を停止させる(ステップS26)。
【0111】
さらに、エンジンECU1000は、スロットルバルブ300の閉弁制御を実行する。具体的には、エンジンECU1000は、減速要求の検出時におけるEGR率およびエンジン回転数に対応する閉弁速度に従ってスロットルバルブ300の開度が減少するようにスロットルバルブ300の閉弁制御を実行する(ステップS27)。
【0112】
なお、上記の実施の形態と本願発明との対応関係については、エンジン120が「内燃機関」に相当し、モータジェネレータ140が「第1および第2の電動発電機」に相当し、EGR装置が「排気ガス還流装置」に相当する。また、エンジンECU1000が「還流ガス制御手段」および「スロットル制御手段」を実現し、HV_ECU1030が「制動制御手段」を実現する。これらの手段を構成する各機能ブロックは、いずれも本願発明の「制御装置」に相当するCPU(Central Processing Unit)が記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明したが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記録媒体に記録されて車両に搭載される。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
この発明は、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】この発明の実施の形態による内燃機関の制御装置が搭載されるハイブリッド車両の構成を説明するブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECUによって制御されるエンジンシステムの概略構成図である。
【図3】図2のEGR装置の部分を拡大した図である。
【図4】運転者による減速要求が発生した場合におけるエンジンおよびモータジェネレータの運転状態の時間的変化の一例を示す図である。
【図5】EGR率およびエンジン回転数とスロットルバルブの閉弁速度との関係を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態に従うハイブリッド車両における共線図の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態に従うハイブリッド車両における回生制動動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態に従う走行用バッテリの充放電制御を説明するための図である。
【図9】許容最大EGR率と走行用バッテリの入力制限との関係を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態に従うエンジンECUで実行されるEGR制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態に従うHV_ECUおよびエンジンECU実行される走行用バッテリの充放電制御およびスロットルバルブの閉弁制御の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0116】
100 アクセルペダル、102 アクセルポジションセンサ、120 エンジン、140A,140B モータジェネレータ、160 駆動輪、180 減速機、200 エアクリーナ、202 エアフローメータ、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 昇圧コンバータ、260 動力分割機構、300 スロットルバルブ、302 スロットルポジションセンサ、304 スロットルモータ、306 バキュームセンサ、400 フューエルタンク、402 フューエルポンプ、500 EGRパイプ、502 EGRバルブ、710,712 酸素センサ、800 高圧フューエルポンプ、804 高圧フューエルインジェクタ、808 イグナイタ一体式イグニッションコイル、900,902 三元触媒コンバータ、1000 エンジンECU、1010 MG_ECU、1020 バッテリECU、1030 HV_ECU。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、内燃機関と電動機とを動力源として備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を考慮して、内燃機関(エンジン)と電動機(モータ)とを効率的に組合わせて走行するハイブリッド車両が実用化されている。このようなハイブリッド車両に搭載されるエンジンとして、たとえば特開2008−151064号公報には、排気通路内の排気ガスの一部を再度吸気通路へ還流させる排気ガス還流装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)を設けたものが開示されている。
【0003】
このEGR装置は、エンジンから排出される排気ガスの一部を吸気系へ再循環させ、新しい混合気と混ぜて燃焼温度を下げることにより、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制したり、ポンピングロスを抑制して燃費向上を図るものである。
【特許文献1】特開2008−151064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなEGR装置が設けられたエンジンにおいては、さらなる燃費向上の観点から、吸気系へ還流させる排気ガス(EGRガス)を増量する、すなわち、気筒内に導入される吸入空気量に対するEGRガス量の割合であるEGR率を高めることが検討されている。EGR率を高めることによって、燃料および酸素の密度が低い状態で理論空燃比での燃焼が可能となるとともに、燃焼熱が混合気中の排気によって吸収されるため、排気ガス温度の調整のための燃料噴射量の増量を抑えることができるためである。
【0005】
その一方で、高EGR率の実現には、EGR装置において、三元触媒コンバータを通過した後の排気ガスをEGRバルブまで導入するためのEGRパイプの大口径化やEGRバルブの大型化などが必要となる。このようなEGRパイプの大口径化やEGRバルブの大型化は、EGRバルブの開度制御における制御応答性を低下させるという問題がある。
【0006】
具体的には、運転者による減速要求に応答してエンジンの停止制御を行なう際には、EGRバルブの制御応答性の低下に起因して、EGRバルブに対して閉弁信号を出力しても、実際にEGRバルブが全閉となるまでには所定の応答期間を要することから、該応答期間において、吸気管内にはEGRガスが導入され続けることとなる。また、スロットルバルブの閉弁制御によって吸入空気量が減少するとともに、吸気管負圧が上昇することによって、EGRガスの還流量が増大する。さらに、該応答期間において吸気管内に還流されたEGRガスは、新気によって燃焼室内へ排出されることなく、吸気管内に残留してしまう。
【0007】
そして、EGRガスの残留量が増大すると、実質的に可燃空気量が減少するため、可燃混合比を外れることによって、燃焼室内の混合気が着火されない現象、いわゆる失火が発生する可能性がある。失火が発生すると、機関回転速度が低下するためにドライバビリティの悪化を招くこととなる。また、未燃焼混合気が排気通路に排出されることによる排気浄化触媒への悪影響が問題となる。
【0008】
それゆえ、この発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高EGR率による燃費向上とドライバビリティとを好適に両立することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従えば、内燃機関および電動発電機を動力源として駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の制御装置であって、ハイブリッド車両は、内燃機関からの動力を受けて発電可能な第1の電動発電機と、内燃機関からの動力を第1の電動発電機および駆動軸に機械的に分配するように構成された動力分割機構と、駆動軸に回転軸が連結される第2の電動発電機と、第1および第2の電動発電機と電力を授受可能な蓄電装置とを含む。内燃機関には、排気ガスの一部を還流弁を介して再度内燃機関の吸気管に還流させるための排気ガス還流装置および吸気管を流通する空気量を変化させるスロットルバルブが設けられる。制御装置は、排気還流量が制御目標値となるように還流弁を開弁制御する一方で、運転者による減速要求が検出された場合には、還流弁を全閉とする還流ガス制御手段と、運転者による減速要求が検出された場合には、空気量が予め設定された減少速度で減少するようにスロットルバルブを閉弁制御するスロットル制御手段と、スロットルバルブの閉弁制御の実行中において、内燃機関の発生する動力を第1および第2の電動発電機の少なくとも一方が吸収するように、第1および第2の電動発電機の回生制動力を制御する制動制御手段とを備える。
【0010】
好ましくは、スロットル制御手段は、排気ガス還流装置による排気還流量が相対的に多いときには、減少速度を相対的に低い値に設定する。
【0011】
好ましくは、スロットル制御手段は、内燃機関の回転数が相対的に高いときには、減少速度を相対的に高い値に設定する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置の充電状態値を推定する状態推定手段と、蓄電装置の温度を検出する温度検出手段と、推定された充電状態値および検出された温度に基づいて、蓄電装置を充電可能な電力の上限としての入力制限を設定する入力制限設定手段とをさらに備える。還流ガス制御手段は、設定された入力制限が相対的に大きいときには、吸気管に還流可能な排気ガスの最大許容量としての最大許容還流量を、相対的に高い値に設定する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置の充電状態値が予め定められた制御中心値を中心とする所定の範囲内に維持されるように第1の電動発電機による蓄電装置に対する充電を制御する充電制御手段をさらに備える。充電制御手段は、還流弁の開弁制御の実行中においては、制御中心値を、還流弁の開弁制御の実行禁止中における制御中心値よりも低い値に設定する。
【0014】
好ましくは、車両は、第1の電動発電機による蓄電部に対する充電が制限される第1のモード、および蓄電装置の充電状態値が所定の範囲内に維持されるように第1の電動発電機による蓄電部に対する充電を制御する第2のモードのいずれかの走行モードを選択して走行可能である。制御装置は、車両の走行状態に基づいて走行モードの切替えを行なう走行制御手段をさらに備える。走行制御手段は、還流弁の開弁制御の実行中においては、第1のモードで走行する範囲が拡大するように走行モードの切替えしきい値を変化させる。
【0015】
好ましくは、還流ガス制御手段は、還流弁の開弁制御の実行中において、推定された充電状態値が所定の閾値を超えた場合には、還流弁を全閉とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、高EGR率による燃費向上とドライバビリティとを好適に両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態による制御装置が搭載される車両の一例として示されるハイブリッド車両の構成を説明するブロック図である。なお、本発明は図1に示すハイブリッド車両に限定されない。
【0019】
ハイブリッド車両は、動力源としての、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、単にエンジンという)120と、モータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータ140Aとジェネレータ140B(あるいはモータジェネレータ140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータ140Aがジェネレータとして機能したり、ジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。
【0020】
ハイブリッド車両には、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とジェネレータ140Bとの2経路に分配する動力分割機構(たとえば、遊星歯車機構)260と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータ140Aおよびジェネレータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220とインバータ240との間で電圧変換を行なう昇圧コンバータ242と、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECU(Electronic Control Unit)という)1020と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU1000と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU1020、インバータ240等を制御するMG_ECU1010と、バッテリECU1020、エンジンECU1000およびMG_ECU1010等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU1030等を含む。
【0021】
なお、図1に示すこの発明の実施の形態おいて、バッテリECU1020、エンジンECU1000、MG_ECU1010およびHV_ECU1030は、本願発明の「制御装置」に相当する。図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU1010とHV_ECU1030とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0022】
動力分割機構260は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Bとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Bの回転数を制御することにより、動力分割機構260は無段変速機としても機能する。エンジン120の回転力はプラネタリーキャリア(C)に入力され、それがサンギヤ(S)によってモータジェネレータ140Bに、リングギヤ(R)によってモータおよび出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギーをモータジェネレータ140Bで電気エネルギーに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
【0023】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構260によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Aがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Bによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動量を増加する制御を行なう。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0024】
次に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU1000によって制御されるエンジン120について説明する。図2は、エンジンECU1000によって制御されるエンジンシステムの概略構成図である。
【0025】
図2を参照して、このエンジンシステムにおいては、エアクリーナ200を介した空気が、エンジン120の燃焼室に導入される。その際、吸入空気量がエアフローメータ202により検知されて、エンジンECU1000に吸入空気量を表わす信号が入力される。また、スロットルバルブ300の開度により、吸入空気量が変化する。このスロットルバルブ300の開度は、エンジンECU1000からの信号に基づいて作動したスロットルモータ304により変化される。スロットルバルブ300の開度は、スロットルポジションセンサ302により検知されて、エンジンECU1000にスロットルバルブ300の開度を表わす信号が入力される。
【0026】
燃料は、フューエルタンク400に貯蔵され、フューエルポンプ402により高圧フューエルポンプ800を介して高圧フューエルインジェクタ804から燃焼室に噴射される。インテークマニホールドから導入された空気と、フューエルタンク400から高圧フューエルインジェクタ804を介して燃焼室に噴射された燃料との混合気が、エンジンECU1000から制御信号が入力されるイグナイタ一体式イグニッションコイル808を用いて着火されて燃焼する。なお、図2のように、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタを設ける構成以外に、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタを設ける構成、あるいは、筒内噴射用インジェクタおよび吸気通路噴射用インジェクタの双方を設ける構成としてもよい。
【0027】
混合気が燃焼した後の排気ガスは、イグゾーストマニホールドを通り、三元触媒コンバータ900および三元触媒コンバータ902を通って、大気に排出される。
【0028】
このエンジンシステムは、図2に示すように、三元触媒コンバータ900の下流側からEGRパイプ500を通ってEGRバルブ502によりその流量が制御されるEGR装置を有する。このEGR装置は、排気ガス再循環装置とも呼ばれ、エンジン120から排出される排気ガスの一部を吸気系へ再循環させ、新しい混合気と混ぜて燃焼温度を下げることにより、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制したり、ポンピングロスを抑制して燃費向上を図るものである。
【0029】
図3に、図2のEGR装置の部分を拡大した図を示す。
図3に示すように、EGRガスは、三元触媒コンバータ900を通過した後の排気ガスがEGRパイプ500を通ってEGRバルブ502まで導入される。EGRバルブ502は、エンジンECU1000によりデューティ制御が実行されている。エンジンECU1000は、エンジン回転数、アクセルポジションセンサ102(図2)からの信号などの各種の信号に基づいて、EGRバルブ502の開度を制御する。
【0030】
なお、図示は省略するが、EGRバルブ502は、エンジンECU1000からの制御信号により動作するステッピングモータと、該ステッピングモータによりリニアにバルブ開度が制御されるポペットバルブと、リターンスプリングとを含む。また、燃焼室に還流されるEGRガスは高温のため、EGRバルブ502の性能や耐久性に悪影響を及ぼすため、エンジンの冷却水により冷却するための冷却水通路が設けられている。
【0031】
HV_ECU1030には、エンジンECU1000を経由して、エンジン回転数センサ(図示せず)にて検知されたエンジン回転数を表わす信号、および、アクセルポジションセンサ102からの信号が入力される。また、HV_ECU1030には、車輪速センサ(図示せず)にて検知された車速を表わす信号が入力される。HV_ECU1030は、これらの信号に基づいて、エンジンECU1000にエンジン制御信号(例えば、スロットル開度信号)を出力する。
【0032】
エンジンECU1000は、エンジン制御信号や他の制御信号に基づいて、エンジン120に電子スロットル制御信号を出力する。また、エンジンECU1000は、後述する方法によって、エンジン120の運転状態に基づいてEGRバルブ502の開度を調整するための制御信号を生成し、その生成した制御信号をステッピングモータへ出力する。
【0033】
なお、本実施の形態では、EGR装置におけるEGRバルブ502は、ステッピングモータによりポペットバルブが駆動されるものと説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、ステッピングモータのような電気式アクチュエータではなく、ソレノイドバルブとダイヤフラムを有する空気アクチュエータとにより構成される空気制御式のEGRバルブであってもよい。
【0034】
再び図2を参照して、このエンジンシステムには、このようなEGR装置の他に、以下に示すシステムが導入されている。
【0035】
このエンジンシステムには、燃料噴射制御システムが導入され、エアフローメータ202およびバキュームセンサ306によって吸入空気量を検出し、燃料噴射量が制御される。エンジンECU1000は、各センサからの信号により、最適な燃焼状態となるように、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じた燃料噴射量および燃料噴射時期の制御を行なう。
【0036】
また、このエンジンシステムにおいては、エンジン回転数と吸入空気量(バキュームセンサ306およびエアフローメータ202により検出)により燃料噴射量が決定される。また、始動後の空燃比は、酸素センサ710,712からの信号によりフィードバック制御される。すなわち、燃料噴射制御は、エンジン120の状態に応じて演算した基本噴射時間に、各センサの信号に補正を加え、燃料噴射時期制御および噴射量制御が実行される。
【0037】
また、このエンジンシステムには、点火時期制御システムが導入されている。エンジンECU1000は、各センサからの信号により最適な点火時期を算出し、イグナイタ一体式イグニッションコイル808に点火信号を出力する。点火時期は、初期セット点火時期または基本進角度および補正進角度により決定される。
【0038】
エンジン120の点火時期の算出は、エンジン回転数信号、カムポジションセンサからの信号、吸気流量の信号、スロットルバルブ開度信号、エンジン冷却水用信号などに基づいて、エンジンECU1000が運転状態に応じて算出して、イグナイタ一体式イグニッションコイル808へ点火信号を出力する。すなわち、点火時期制御は、エンジン120の状態に応じて演算した基本点火時期に、各センサの信号による補正を加え、適正な点火時期を算出する。
【0039】
また、このエンジンシステムには、スロットル制御システムが導入されている。このスロットル制御システムは、エンジン120の状態に応じて演算したスロットルバルブ300の開度に、各センサの信号による補正を加えて、適正な開度になるように制御される。すなわち、エンジン120の燃焼状態に応じた適切なスロットルバルブ300の開度になるように、エンジンECU1000がスロットルバルブ300の開度をスロットルモータ304を用いて制御する。
【0040】
(ハイブリッド車両の制御構造)
以下に、図4を参照して、本実施の形態に従うハイブリッド車両における回生制動動作を実現するための制御構造について説明する。
【0041】
図4は、運転者による減速要求が発生した場合におけるエンジン120およびモータジェネレータ140の運転状態の時間的変化の一例を示す図である。
【0042】
図4を参照して、まず時刻t1において運転者による減速要求が検出されたものとする。この減速要求は、たとえば運転者によりアクセルペダル100(図2)が踏み戻されたことに応じて発生するものである。なお、減速要求には、アクセルペダル100の踏込量の他にも、ブレーキペダル(図示せず)の踏込量が含まれる。
【0043】
本実施の形態において、減速要求は、アクセルポジションセンサ102(図2)からの信号に基づいて、HV_ECU1030およびエンジンECU1000により検出される。なお、図4では、時刻t2において、アクセルペダル100が完全に踏み戻されてアクセル開度が0%となっている。
【0044】
そして、時刻t1において減速要求が検出されると、エンジンECU1000は、EGRバルブ502(図3)に対して制御信号(閉弁信号)を出力することにより、EGR装置の作動を停止(EGRオフ)させる。これにより、EGRバルブ502の開度が全閉となるため、吸気管内へのEGRガスの導入が遮断される。
【0045】
さらに、エンジンECU1000は、時刻t1以降において、スロットルバルブ300の開度を全閉とするための閉弁制御を実行する。
【0046】
ここで、このスロットルバルブ300の閉弁制御において、図中の一点鎖線で示すように、アクセル開度の減少速度に追従するようにスロットルバルブ300の閉弁速度を制御する場合を想定する。この場合、エアクリーナ200を介して吸気管内に導入される新しい空気(新気)は、スロットルバルブ300の閉弁速度に応じた減少速度で減少することとなる。その結果、時刻t1以降においては、吸入空気量が制限されることから、吸気管内に含まれるEGRガスは、新気によって燃焼室内へ排出されることなく、吸気管内に残留することとなる。特に、時刻t0から時刻t1までのEGR装置の作動中において、大量のEGRガスを吸気系に還流させた場合、すなわち、気筒内への吸入空気量に対するEGRガス量の割合であるEGR率を高めた場合には、以下に述べるように、吸気管内のEGRガスの残留量が増大する可能性が高くなる。
【0047】
詳細には、高EGR率は、NOxの低減および燃費向上の点で有効であり、EGRパイプ500(図3)の大口径化およびEGRバルブ502(図3)の大型化などによって実現されるものである。
【0048】
その一方で、EGRパイプ500の大口径化およびEGRバルブ502の大型化を行なうことによって、EGRバルブ502の開度制御における制御応答性が低下するという不具合が生じてしまう。
【0049】
したがって、運転者からの減速要求が検出されたときに、上述したように、エンジンECU1000がEGRバルブ502に対して閉弁信号を出力しても、実際にEGRバルブ502が全閉となるまでには所定の応答時間を要することとなり、該応答時間において、吸気管内にはEGRガスが導入され続けることとなる。そのため、スロットルバルブ300の閉弁制御によって吸入空気量が減少し、かつ吸気管負圧が上昇すると、EGRガスの還流量が増大する。さらに、該応答期間において吸気管内に還流されたEGRガスは、導入された新気によって燃焼室内へ排出されることなく、吸気管内に残留してしまう。
【0050】
なお、このEGRガスの残留量は、経年劣化等によりEGRバルブ502に異物が噛み込む異常が生じた場合には、EGRバルブ502の開度制御における精度が低下するため、さらに増大する可能性がある。
【0051】
そして、EGRガスの残留量が増大すると、実質的に可燃空気量が減少するため、可燃混合比を外れることによって、燃焼室内の混合気が着火されない現象、いわゆる失火が発生する可能性がある。失火が発生すると、機関回転速度が低下するためにドライバビリティの悪化を招くこととなる。また、未燃焼混合気が排気通路に排出されることによる排気浄化触媒への悪影響が問題となる。
【0052】
さらには、エンジン120の始動(再始動)時には、燃焼室内での燃焼が緩慢となるため、燃焼が不安定となり、始動性が低下する、または排気エミッションが増加するといった問題が発生する。
【0053】
そこで、これらの不具合を解消するため、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置は、運転者による減速要求が検出されたときには、EGR率およびエンジン回転数に応じて予め設定された閉弁速度に従って、スロットルバルブ300の閉弁制御を行なう構成とする。
【0054】
具体的には、上記の構成において、スロットルバルブ300の閉弁速度は、EGR率およびエンジン回転数に応じて設定される。図5は、EGR率およびエンジン回転数とスロットルバルブ300の閉弁速度との関係を説明するための図である。
【0055】
図5を参照して、スロットルバルブ300の閉弁速度は、EGR率が高くなるに従って、高くなるように設定される。これは、EGR率が高くなるほどEGRガスの残留量が多くなるため、吸気管内からEGRガスを除去するためにはより多量の新気を吸気管内に導入する必要があることによる。
【0056】
また、スロットルバルブ300の閉弁速度は、エンジン回転数が高くなるに従って、高くなるように設定される。これは、エンジン回転数が高くなるほど吸気管内への新気の導入が活発に行なわれるため、より短期間でスロットルバルブ300を閉弁することによっても吸気管内からEGRガスを除去できることによる。
【0057】
本実施の形態では、図5に示すEGR率およびエンジン回転数とスロットルバルブ300の閉弁速度との関係が実験などによって予め定められた上で閉弁速度設定用マップとしてエンジンECU1000内部のROM(Read Only Memory)に記憶されており、スロットルバルブ300の閉弁速度としては、運転者からの減速要求を検出した時点におけるEGR率およびエンジン回転数に対応したものが当該マップから導出される。
【0058】
なお、閉弁速度設定用マップは、EGR率およびエンジン回転数のみをパラメータとするものに限られず、EGRガスの残留量を推定した結果に応じて閉弁速度を適切に設定可能とするものであれば、どのようなものであってもよい。
【0059】
以上に述べたように、EGR率およびエンジン回転数に応じてスロットルバルブ300の閉弁速度を可変に設定することにより、EGR率が高い場合には、図4に実線で示されるように、アクセル開度の減少速度を下回る閉弁速度でスロットルバルブ300が閉じられる。そのため、EGRバルブ502が全閉となった後には吸気管内には新気のみが導入されるため、この新気によってEGRガスが吸気管から燃焼室内に排出される。その結果、燃焼が安定となり、ドライバビリティおよび排気浄化触媒への影響を改善することができる。また、エンジン120の始動性の低下を防止することができる。
【0060】
その一方で、上述したスロットルバルブ300の閉弁制御を行なうことによって、エンジン120からは、運転者からの減速要求に反してトルクが発生する。この発生したエンジントルクTeは、図4に実線で示すように、スロットルバルブ300の閉弁速度に比例した速度で徐々に減少し、最終的に零となる。したがって、この余剰トルクに起因して、運転者には車両の予期しない移動感(空走感)を与えてしまい、減速感を悪化させることとなる。
【0061】
そこで、高EGR率による燃費向上と減速感とを好適に両立させるために、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置では、このエンジントルクTeの余剰分をモータジェネレータ140(図1)が吸収するように、モータジェネレータ140の回生制動トルクを制御する構成とする。
【0062】
具体的には、図4に示すように、減速時にエンジン120から発生するパワー(エンジントルク×エンジン回転数)を、モータジェネレータ140の回生制動パワーに変換する。これによって、図4から明らかなように、車両の減速度(車両の速度減少率、単に「車両減速とも記す)においては、本実施の形態に従うスロットルバルブ300の閉弁制御を適用しない場合(図中の一点鎖線に相当)と略一致した特性が得られている。すなわち、本実施の形態に従うスロットルバルブ300の閉弁制御を適用しない場合と同程度の減速感を確保することができる。
【0063】
図6は、本実施の形態に従うハイブリッド車両における共線図の一例を示す。図5を参照して、縦軸は各回転軸の回転数を示し、横軸は各ギヤのギヤ比を距離的な関係で示している。
【0064】
サンギヤ軸(図中のS)とリングギヤ軸(図中のR)とを両端にとり、位置Sと位置Rとの間を1:ρに内分する位置Cをキャリア軸とする。ρは、リングギヤの歯数に対するサンギヤの歯数の比である。なお、こうして定義された位置S,C,Rに、それぞれのギヤの回転軸の回転数をプロットすると、プラネタリギヤは、プロットされた3点が必ず一直線上に並ぶという性質を有している。
【0065】
ハイブリッド車両の減速時の運転状態が図5に示した共線図で表わされる場合には、上述したスロットルバルブ300の閉弁制御を行なうことによって、キャリア軸にはエンジントルクTeが発生する。そして、このエンジントルクTeを打ち消すように、モータジェネレータ140A,140Bの吸収トルクTm1,Tm2が設定される。設定された吸収トルクTm1,Tm2は、サンギヤ軸およびリングギヤ軸の各々に作用する制動トルクに加算される。その結果、エンジンパワーは、モータジェネレータ140A,140Bにおける回生制動パワーに変換され、回収された電力が走行用バッテリ220に蓄えられる。
【0066】
このように、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置によれば、車両減速時にエンジン120から発生するパワーを、他の動力源であるモータジェネレータ140が吸収することにより、高EGR率の実現に伴なって生じる減速感の悪化を回避することができる。その結果、燃費向上と減速感とを好適に両立させることができる。
【0067】
なお、上述の説明においては、モータジェネレータ140A,140Bの双方でエンジントルクTeを吸収する場合について例示したが、いずれか一方のモータジェネレータでエンジントルクTeを吸収することも可能である。
【0068】
以上の処理は、図7に示すような処理フローにまとめることができる。
図7は、本実施の形態に従うハイブリッド車両における回生制動動作の処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
図7を参照して、一連の制御が開始されると、HV_ECU1030およびエンジンECU1000(図1)は、アクセルポジションセンサ102からの信号に基づいて、運転者からの減速要求が検出されたか否かを判断する(ステップS01)。
【0070】
運転者からの減速要求が検出されない場合(ステップS01においてNOの場合)には、処理は最初に戻る。
【0071】
これに対して、減速要求が検出された場合(ステップS01においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を停止(オフ)させる(ステップS02)。
【0072】
さらに、エンジンECU1000は、スロットルバルブ300(図2)の閉弁制御を実行する。具体的には、エンジンECU1000は、図5に示す閉弁速度設定用マップを参照して、減速要求の検出時におけるEGR率およびエンジン回転数に対応する閉弁速度を導出する。そして、エンジンECU1000は、導出した閉弁速度に従ってスロットルバルブ300の開度が減少するようにスロットルバルブ300の閉弁制御を実行する(ステップS03)。
【0073】
この閉弁制御の実行中において、HV_ECU1030は、エアフローメータ202からの吸入空気量を表わす信号などに基づいて、エンジン120から発生するトルクTeを算出する(ステップS04)。さらに、HV_ECU1030は、この算出されたエンジントルクTeとエンジン回転数センサにて検知されたエンジン回転数とに基づいてエンジン120の出力パワーを算出すると、このエンジン120の出力パワーをモータジェネレータ140の回生制動パワーに変換するために必要とされる、モータジェネレータ140の吸収トルクTmを算出する(ステップS05)。
【0074】
そして、HV_ECU1030は、モータジェネレータ140の吸収トルクTmに基づいて、モータジェネレータ140の要求制動トルクを設定する(ステップS06)。設定された要求制動トルクは、トルク指令としてMG_ECU1010(図1)に与えられると、MG_ECU1010は、トルク指令に従って、モータジェネレータ140を制御する(ステップS07)。
【0075】
(走行用バッテリの充放電制御)
以上に述べたように、ハイブリッド車両の減速時においては、スロットルバルブ300の閉弁制御の実行中に発生したエンジンパワーは、モータジェネレータ140A,140Bにおける回生制動パワーに変換され、回収された電力が走行用バッテリ220に蓄えられる。
【0076】
したがって、EGR率が高いことに起因してスロットルバルブ300の閉弁速度を低下させたことに伴ない、閉弁制御の実行中に発生するエンジンパワーが増大した場合には、モータジェネレータ140での回生制動パワーも増大することから、走行用バッテリ220が過充電となる可能性がある。
【0077】
その一方で、走行用バッテリ220からの放電または走行用バッテリ220への充電は、充電状態値(SOC:State of Charge;以下、単に「SOC」とも称す)を考慮して行なわれている。SOCを適正な範囲に維持することで、走行用バッテリ220の過充電や過放電を回避するためである。
【0078】
具体的には、走行用バッテリ220の充放電制御は、走行用バッテリ220のSOCが予め設定された制御中心値を中心とする所定の範囲内に維持されるように、モータジェネレータ140Bによる発電動作を制御することによって行なわれる。なお、このモータジェネレータ140Bでの発電動作に応じて、エンジン120も作動を開始する。
【0079】
ここで、ハイブリッド車両の減速時において、モータジェネレータ140によって回生発電された電力を走行用バッテリ220に蓄えるためには、上述した回生制動動作の開始前に走行用バッテリ220を低充電状態にしておくことが望ましい。そこで、本実施の形態に従うハイブリッド車両の制御装置は、EGR装置の作動中、すなわち、EGRバルブの開度制御の実行中においては、走行用バッテリ220の充放電制御の指標となるSOCの制御中心値を、EGR装置の停止中、すなわち、EGRバルブの開度制御の実行禁止中におけるSOCの制御中心値よりも低い値に変更する構成とする。
【0080】
具体的には、図8を参照して、EGR装置の停止中(EGRオフ時)においては、SOCがS1を制御中心値とする所定の範囲内に維持されるように、走行用バッテリ220の充放電制御が行なわれる。これに対して、EGR装置の作動中(EGRオン時)においては、SOCがS1よりも小さいS2を制御中心値とする所定の範囲内に維持されるように、走行用バッテリ220の充放電制御を行なうものとする。
【0081】
これにより、EGR装置の作動中においては、EGR装置の停止中と比較して、走行用バッテリ220のSOCと満充電状態(図8中のMAXに相当)と差がより大きくなり、走行用バッテリ220が充電可能な電力が増加する。そのため、EGR装置の作動を停止させる場面において、スロットルバルブ300の閉弁制御の実行中にモータジェネレータ140で回生発電された電力を受けることにより走行用バッテリ220が過充電となるのを回避することができる。
【0082】
なお、図8で述べたような、走行用バッテリ220のSOCの制御中心値の変更は、たとえば、EGR装置の作動中とEGR装置の停止中とで、ハイブリッド車両の走行モードの切替しきい値を変化させることによって実現することができる。
【0083】
具体的には、ハイブリッド車両は、EV(Electric Vehicle)走行モードと、HV(Hybrid Vehicle)走行モードとを選択して走行可能に構成されている。EV走行モードでは、ハイブリッド車両は、モータジェネレータ140Aからの駆動力のみによって走行する。このEV走行モードでは、エンジン120の駆動力を受けたモータジェネレータ140Bでの発電動作は行なわれず、走行用バッテリ220に対する充電が制限される。
【0084】
これに対して、HV走行モードでは、ハイブリッド車両は、走行用バッテリ220のSOCが図8に示す所定の範囲内に維持されるように、モータジェネレータ140Bによる発電動作が制御される。このモータジェネレータ140Bでの発電動作に応じてエンジン120も作動を開始する。なお、エンジン120の作動によって生じる駆動力の一部は、車両の走行にも用いられる。
【0085】
本実施の形態では、この走行モードを切替えるための走行モード切替しきい値を、EGR装置の作動中においては、EV走行モードで走行する範囲が拡大するように変化させる構成とする。
【0086】
その一例として、EV走行モードでの走行中において、運転者から急加速などの駆動力要求が与えられた場合には、エンジン120を始動することにより、ハイブリッド車両はHV走行モードへ切替えられる。このとき、アクセルペダルの開度を示すアクセル開度に対して走行モード切替しきい値としての所定のしきい値が予め設定され、アクセル開度が該しきい値を超える場合には、EV走行モードからHV走行モードへの切替えが行なわれる。本実施の形態では、EGR装置の作動中において、この走行モードの切替えを示すアクセル開度のしきい値を、EGR装置の停止中におけるしきい値OP1よりも高い値OP2(>OP1)へと変化させる。これにより、EGR装置の作動中においては、EV走行モードで走行する範囲が拡大される。
【0087】
(EGR制御)
ハイブリッド車両の減速時における走行用バッテリ220における過充電は、上述した走行用バッテリ220の充放電制御に加えて、以下に述べるようなEGRバルブ502の開度制御(以下、EGR制御とも称する)を行なうことによって、より確実に回避することができる。
【0088】
図9は、EGR制御において許容されるEGR率の最大値である許容最大EGR率と走行用バッテリ220を充電可能な電力の上限としての入力制限Winとの関係を示す図である。
【0089】
本実施の形態において、エンジンECU1000(図1)は、エンジン120の運転状態に基づいて、許容最大EGR率を上限として、排気還流量の制御目標値に対応するEGR率の目標値(目標EGR率)を設定し、実際のEGR率が目標EGR率に一致するようにEGR制御を実行する。
【0090】
このEGR制御において、エンジンECU1000は、許容最大EGR率を、走行用バッテリ220の入力制限Winに応じて設定する。なお、走行用バッテリ220の入力制限Winは、温度センサ(図示せず)により検出された走行用バッテリ220の電池温度および走行用バッテリ220のSOCに基づいて設定されたものを、バッテリECU1020(図1)から通信により入力する構成とした。
【0091】
図9を参照して、許容最大EGR率は、走行用バッテリ220の入力制限Winが所定値よりも低い場合には、0%、すなわち、EGR装置を停止させるように設定される。これに対して、入力制限Winが所定値以上となる場合には、最大許容EGR率は、入力制限Winが大きくなるに従って、高い値となるように設定される。
【0092】
なお、図9に示す関係は、図5に示すEGR率とスロットルバルブ300の閉弁速度との関係に基づいて、EGR率とモータジェネレータ140における回生発電量との関係を算出することによって予め導出されたものである。図9に示す関係は、許容最大EGR率設定用マップとしてエンジンECU1000内部のROMに記憶されており、EGR装置の作動を許可するためのEGR許可条件が成立した時点における走行用バッテリ220の入力制限Winに対応したものが当該マップから導出される。
【0093】
これによれば、走行用バッテリ220の入力制限Winが相対的に小さい場合には、許容最大EGR率が相対的に低い値、もしくは0%(オフに相当)に設定される。そのため、スロットルバルブの閉弁制御の実行中にモータジェネレータ140が発電する電力は、走行用バッテリ220の入力制限Winを超えないように制限されることから、走行用バッテリ220が過充電となるのを回避することができる。
【0094】
さらに、本実施の形態においては、エンジンECU1000は、バッテリECU1020から入力される走行用バッテリ220のSOCが所定の閾値以上となる場合には、EGR装置を強制的に停止させる。なお、所定の閾値は、走行バッテリ220が過充電となるのを回避するために許容されるSOCの上限値(たとえば満充電状態)に設定される。
【0095】
これによれば、例えば、降坂路が連続することによって、モータジェネレータ140が回生発電した電力により走行用バッテリ220が満充電状態となっている場合には、EGR制御の実行が禁止されることになる。したがって、上述したスロットルバルブ300の閉弁制御の実行が不要となることから、走行用バッテリ220が過充電となるのを回避することができる。
【0096】
なお、EGR装置を強制的に停止させることは、燃費の面において不利となることが懸念されるが、上述した走行用バッテリ220の充放電制御によって、高充電状態に起因してEV走行モードでの走行が拡大されるため、燃費への影響を抑えることができる。
【0097】
以上の処理は、図10および図11に示すような処理フローにまとめることができる。
図10は、本実施の形態に従うエンジンECU1000で実行されるEGR制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図10を参照して、一連の制御が開始されると、エンジンECU1000は、バッテリECU1020から走行用バッテリ220のSOCを取得する(ステップS11)。そして、エンジンECU1000は、走行用バッテリ220のSOCが所定のしきい値を下回っているか否かを判断する(ステップS12)。なお、本実施の形態では、一例として、所定の閾値は、走行用バッテリ220の満充電状態(図8のMAXに相当)に設定されている。
【0099】
走行用バッテリ220のSOCが所定の閾値MAX以上となる場合(ステップS12においてNOの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置を停止状態(オフ)とする(ステップS18)。
【0100】
これに対して、走行用バッテリ220のSOCが所定の閾値MAXを下回っている場合(ステップS12においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を許可する(ステップS13)。そして、エンジンECU1000は、図9に示す許容最大EGR率設定用マップを参照することにより、バッテリECU1020から入力される走行用バッテリ220の入力制限Winに基づいて、許容最大EGR率を算出する(ステップS14)。
【0101】
次に、エンジンECU1000は、各センサによって検知されるスロットル開度、吸入空気量、エンジン回転数および冷却水温等の各データに基づいて、エンジン120の運転状態がEGR装置を作動させるための所定の条件(EGR実行条件)を満たしているか否かを判断する(ステップS15)。
【0102】
エンジン120の運転状態がEGR実行条件を満たしていない場合(ステップS15においてNOの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置を停止状態とする(ステップS18)。
【0103】
これに対して、エンジン120の運転状態がEGR実行条件を満たしている場合(ステップS15においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、エンジン120の運転状態に基づいて、ステップS14で算出した許容最大EGR率を上限として、目標EGR率を算出する(ステップS16)。そして、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を開始して、実際のEGR率が目標EGR率と一致するようにEGRバルブの開度制御を実行する(ステップS17)。
【0104】
図11は、本実施の形態に従うHV_ECU1030およびエンジンECU1000で実行される走行用バッテリ220の充放電制御およびスロットルバルブの閉弁制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0105】
図11を参照して、一連の制御が開始されると、HV_ECU1030は、EGR装置が作動中であるか否かを判断する(ステップS21)。なお、ステップS21の判断は、例えば、HV_ECU1030が、EGR装置の作動/停止を指示するEGR作動判定フラグをエンジンECU1000から取得することによって行なわれる。
【0106】
EGR装置が停止中である場合(ステップS21においてNOの場合)には、HV_ECU1030は、処理をステップS24へ進める。
【0107】
これに対して、EGR装置が作動中である場合(ステップS21においてYESの場合)には、HV_ECU1030は、走行用バッテリ220のSOCの制御中心値を、EGR装置の停止中におけるSOCの制御中心値S1よりも低い値S2(<S1)に変更する(ステップS22)。
【0108】
さらに、HV_ECU1030は、ハイブリッド車両の走行モード切替しきい値を、EGR装置の停止中における走行モード切替しきい値と比較して、EV走行モードで走行する範囲が拡大するように変化させる(ステップS23)。一例として、HV_ECU1030は、走行モードの切替えを示すアクセル開度のしきい値を、EGR装置の停止中におけるしきい値OP1よりも高い値OP2(>OP1)へと変化させる。
【0109】
次に、エンジンECU1000は、図5に示す閉弁速度設定用マップを参照して、EGR率およびエンジン回転数に対応するスロットルバルブ300の閉弁速度を算出する(ステップS24)。そして、エンジンECU1000は、アクセルポジションセンサ102からの信号に基づいて、運転者からの減速要求が検出されたか否かを判断する(ステップS25)。運転者からの減速要求が検出されない場合(ステップS25においてNOの場合)には、処理はステップS24に戻される。
【0110】
これに対して、減速要求が検出された場合(ステップS25においてYESの場合)には、エンジンECU1000は、EGR装置の作動を停止させる(ステップS26)。
【0111】
さらに、エンジンECU1000は、スロットルバルブ300の閉弁制御を実行する。具体的には、エンジンECU1000は、減速要求の検出時におけるEGR率およびエンジン回転数に対応する閉弁速度に従ってスロットルバルブ300の開度が減少するようにスロットルバルブ300の閉弁制御を実行する(ステップS27)。
【0112】
なお、上記の実施の形態と本願発明との対応関係については、エンジン120が「内燃機関」に相当し、モータジェネレータ140が「第1および第2の電動発電機」に相当し、EGR装置が「排気ガス還流装置」に相当する。また、エンジンECU1000が「還流ガス制御手段」および「スロットル制御手段」を実現し、HV_ECU1030が「制動制御手段」を実現する。これらの手段を構成する各機能ブロックは、いずれも本願発明の「制御装置」に相当するCPU(Central Processing Unit)が記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明したが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記録媒体に記録されて車両に搭載される。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
この発明は、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】この発明の実施の形態による内燃機関の制御装置が搭載されるハイブリッド車両の構成を説明するブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECUによって制御されるエンジンシステムの概略構成図である。
【図3】図2のEGR装置の部分を拡大した図である。
【図4】運転者による減速要求が発生した場合におけるエンジンおよびモータジェネレータの運転状態の時間的変化の一例を示す図である。
【図5】EGR率およびエンジン回転数とスロットルバルブの閉弁速度との関係を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態に従うハイブリッド車両における共線図の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態に従うハイブリッド車両における回生制動動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態に従う走行用バッテリの充放電制御を説明するための図である。
【図9】許容最大EGR率と走行用バッテリの入力制限との関係を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態に従うエンジンECUで実行されるEGR制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態に従うHV_ECUおよびエンジンECU実行される走行用バッテリの充放電制御およびスロットルバルブの閉弁制御の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0116】
100 アクセルペダル、102 アクセルポジションセンサ、120 エンジン、140A,140B モータジェネレータ、160 駆動輪、180 減速機、200 エアクリーナ、202 エアフローメータ、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 昇圧コンバータ、260 動力分割機構、300 スロットルバルブ、302 スロットルポジションセンサ、304 スロットルモータ、306 バキュームセンサ、400 フューエルタンク、402 フューエルポンプ、500 EGRパイプ、502 EGRバルブ、710,712 酸素センサ、800 高圧フューエルポンプ、804 高圧フューエルインジェクタ、808 イグナイタ一体式イグニッションコイル、900,902 三元触媒コンバータ、1000 エンジンECU、1010 MG_ECU、1020 バッテリECU、1030 HV_ECU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関および電動発電機を動力源として駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、
前記内燃機関からの動力を受けて発電可能な第1の電動発電機と、
前記内燃機関からの動力を第1の電動発電機および前記駆動軸に機械的に分配するように構成された動力分割機構と、
前記駆動軸に回転軸が連結される第2の電動発電機と、
前記第1および第2の電動発電機と電力を授受可能な蓄電装置とを含み、
前記内燃機関には、排気ガスの一部を還流弁を介して再度前記内燃機関の吸気管に還流させるための排気ガス還流装置および前記吸気管を流通する空気量を変化させるスロットルバルブが設けられ、
前記制御装置は、
排気還流量が制御目標値となるように前記還流弁を開弁制御する一方で、運転者による減速要求が検出された場合には、前記還流弁を全閉とする還流ガス制御手段と、
前記運転者による減速要求が検出された場合には、前記空気量が予め設定された減少速度で減少するように前記スロットルバルブを閉弁制御するスロットル制御手段と、
前記スロットルバルブの閉弁制御の実行中において、前記内燃機関の発生する動力を前記第1および第2の電動発電機の少なくとも一方が吸収するように、前記第1および第2の電動発電機の回生制動力を制御する制動制御手段とを備える、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記スロットル制御手段は、前記排気ガス還流装置による排気還流量が相対的に多いときには、前記減少速度を相対的に低い値に設定する、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記スロットル制御手段は、前記内燃機関の回転数が相対的に高いときには、前記減少速度を相対的に高い値に設定する、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記蓄電装置の充電状態値を推定する状態推定手段と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出手段と、
前記推定された充電状態値および前記検出された温度に基づいて、前記蓄電装置を充電可能な電力の上限としての入力制限を設定する入力制限設定手段とをさらに備え、
前記還流ガス制御手段は、前記設定された入力制限が相対的に大きいときには、前記吸気管に還流可能な排気ガスの最大許容量としての最大許容還流量を、相対的に高い値に設定する、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の充電状態値が予め定められた制御中心値を中心とする所定の範囲内に維持されるように前記第1の電動発電機による前記蓄電装置に対する充電を制御する充電制御手段をさらに備え、
前記充電制御手段は、前記還流弁の開弁制御の実行中においては、前記制御中心値を、前記還流弁の開弁制御の実行禁止中における前記制御中心値よりも低い値に設定する、請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記第1の電動発電機による前記蓄電部に対する充電が制限される第1のモード、および前記蓄電装置の充電状態値が前記所定の範囲内に維持されるように前記第1の電動発電機による前記蓄電部に対する充電を制御する第2のモードのいずれかの走行モードを選択して走行可能であり、
前記車両の走行状態に基づいて前記走行モードの切替えを行なう走行制御手段をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記還流弁の開弁制御の実行中においては、前記第1のモードで走行する範囲が拡大するように前記走行モードの切替えしきい値を変化させる、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記還流ガス制御手段は、前記還流弁の開弁制御の実行中において、前記推定された充電状態値が所定の閾値を超えた場合には、前記還流弁を全閉とする、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
内燃機関および電動発電機を動力源として駆動軸に動力を出力するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、
前記内燃機関からの動力を受けて発電可能な第1の電動発電機と、
前記内燃機関からの動力を第1の電動発電機および前記駆動軸に機械的に分配するように構成された動力分割機構と、
前記駆動軸に回転軸が連結される第2の電動発電機と、
前記第1および第2の電動発電機と電力を授受可能な蓄電装置とを含み、
前記内燃機関には、排気ガスの一部を還流弁を介して再度前記内燃機関の吸気管に還流させるための排気ガス還流装置および前記吸気管を流通する空気量を変化させるスロットルバルブが設けられ、
前記制御装置は、
排気還流量が制御目標値となるように前記還流弁を開弁制御する一方で、運転者による減速要求が検出された場合には、前記還流弁を全閉とする還流ガス制御手段と、
前記運転者による減速要求が検出された場合には、前記空気量が予め設定された減少速度で減少するように前記スロットルバルブを閉弁制御するスロットル制御手段と、
前記スロットルバルブの閉弁制御の実行中において、前記内燃機関の発生する動力を前記第1および第2の電動発電機の少なくとも一方が吸収するように、前記第1および第2の電動発電機の回生制動力を制御する制動制御手段とを備える、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記スロットル制御手段は、前記排気ガス還流装置による排気還流量が相対的に多いときには、前記減少速度を相対的に低い値に設定する、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記スロットル制御手段は、前記内燃機関の回転数が相対的に高いときには、前記減少速度を相対的に高い値に設定する、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記蓄電装置の充電状態値を推定する状態推定手段と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出手段と、
前記推定された充電状態値および前記検出された温度に基づいて、前記蓄電装置を充電可能な電力の上限としての入力制限を設定する入力制限設定手段とをさらに備え、
前記還流ガス制御手段は、前記設定された入力制限が相対的に大きいときには、前記吸気管に還流可能な排気ガスの最大許容量としての最大許容還流量を、相対的に高い値に設定する、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の充電状態値が予め定められた制御中心値を中心とする所定の範囲内に維持されるように前記第1の電動発電機による前記蓄電装置に対する充電を制御する充電制御手段をさらに備え、
前記充電制御手段は、前記還流弁の開弁制御の実行中においては、前記制御中心値を、前記還流弁の開弁制御の実行禁止中における前記制御中心値よりも低い値に設定する、請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記第1の電動発電機による前記蓄電部に対する充電が制限される第1のモード、および前記蓄電装置の充電状態値が前記所定の範囲内に維持されるように前記第1の電動発電機による前記蓄電部に対する充電を制御する第2のモードのいずれかの走行モードを選択して走行可能であり、
前記車両の走行状態に基づいて前記走行モードの切替えを行なう走行制御手段をさらに備え、
前記走行制御手段は、前記還流弁の開弁制御の実行中においては、前記第1のモードで走行する範囲が拡大するように前記走行モードの切替えしきい値を変化させる、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記還流ガス制御手段は、前記還流弁の開弁制御の実行中において、前記推定された充電状態値が所定の閾値を超えた場合には、前記還流弁を全閉とする、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−70031(P2010−70031A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239178(P2008−239178)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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