ラムダ変化を用いるディーゼルパティキュレートフィルタの再生
本発明は、ラムダ変化を使用して、ディーゼルエンジンの排ガス浄化システムのディーゼルパティキュレートフィルタを再生する方法を提供する。適時再生に際して、相応のディーゼルエンジンの運転点についての空燃比を調節して、実質的に最高の排ガス温度を達成する。この目的のために、空燃比(ラムダ値)を、大部分の負荷範囲にわたって、好ましくは最小かつ実質的に一定に保ち、そして再生段階に際して、エンジンを全負荷で運転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生条件を支援する又はもたらすエンジンモディフィケーションの使用、及び特にラムダ変化を用いる、好ましくは触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関する。
【0002】
今日の世界の内燃機関は、2種のエンジン型、すなわちガソリンエンジンとディーゼルエンジンとが優位を占めている。この2種の燃焼概念の進行中の開発は、人々と環境を保護する法的規制が次第に強化されている排出の低減に集中している。
【0003】
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンの燃焼に対して、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物の排出を低く生成するが、ディーゼルエンジンではパティキュレートの排出が顕著に増加することもまた一般的である。パティキュレート排出の発生、防止及び廃棄を制御できるように、これらの排出を試験することは特に重要である。慣用のディーゼルエンジンにおけるパティキュレートの発生及び防止について影響を与えるのは依然として極めて困難であり、従って主要な焦点は廃棄に向けられる。この傾向は、該当する法律によって強く支持され、かつ要求されている。
【0004】
ディーゼルエンジンの排ガスからのパティキュレートのほとんどを捕集する1つの方法は、いわゆるディーゼルパティキュレートフィルタを使用することである。このフィルタは排ガス管路内に配置され、排ガス中に含まれるパティキュレートに対して最大の濾過率を実現する。
【0005】
しかしながら、この極めて有効かつ効率的な濾過工程は、以下の問題をもたらす。すなわち、このフィルタがパティキュレートマターによって次第に負荷を受けることである。結果として、排ガスがフィルタを流通するのが困難になり、そしてフィルタの上流で圧力増加が発生し、このことはエンジンの排気仕事が増加するに等しいものとみなすことができる。この排気仕事の増加は、出力損失及びエンジンの燃料消費の増加においてそれぞれ反映される。フィルタの上流で圧力が不必要に高く増加するのを防ぐために、フィルタをときおり焼却し、解放させなければならない。このことは、種々の再生手段及び戦略によって、それぞれ実施される。
【0006】
セラミックモノリス型セルフィルタとしても引き合いに出されるハニカムフィルタの構造が、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPF)技術を決定づけることが強く予想される。DPFは、開口と封口とが交互になされたチャネルを有するフィルタである。この構成の結果として、排ガスは多孔質のチャネル壁を流通せざるをえず、その壁上にはパティキュレートマターが堆積することがある。従って、かかるフィルタは、いわゆるウォールフローフィルタとも称される。
【0007】
このハニカムフィルタの他に、例えば巻付型構成を有することができるフィルタも存在する。かかるフィルタ内では、排ガスは直接的な障害物に接触することなく導通する。その構成は触媒と同様である、すなわちいかなる封口チャネルをも有さない。しかしながら、99%より高い濾過作用を実現できるハニカムフィルタに対して、そのパティキュレートマターに対する濾過効率は、許容され得ない低い範囲である。
【0008】
更に、焼結金属フィルタ、巻付型ファイバフィルタ、メリヤスファイバフィルタ、網状ファイバフィルタ及び濾紙並びに不織フィルタが存在する。全てのパラメータ、例えば製造費及び工業原価、物理的特性、濾過作用、耐久性等を考慮すると、ハニカムフィルタは他のいかなるフィルタ開発品よりも有利である。
【0009】
DPF(いかなる付加的なモディフィケーションを有さない)の再生は、純粋な酸素の再生(煤の酸化)とみなすことができる化学反応である。それは360℃付近の温度で開始するが、550℃を超えたときに限り、実用的観点から見て興味深い反応及び酸化速度が実現される。このことは、その温度でのみ十分に速い再生速度を得ることができることを意味し、その速度はDPFを車両内で使用するにあたり経済的に受容され得る解決法をなす。
【0010】
ディーゼルパティキュレートフィルタを利用する以下の再生戦略:
− 付加的な支持材を有するディーゼルパティキュレートフィルタ、
− CRTシステム
− 触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタ、
− 電気的支援型ディーゼルパティキュレートフィルタ、
− バーナシステムを有するディーゼルパティキュレートフィルタ、及び
− 圧縮空気がパージされるディーゼルパティキュレートフィルタが公知である。
【0011】
触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタにおいては、例えばフィルタ表面に金属が導入されている。この金属は、煤の着火温度を400℃未満に低くする触媒として機能する。種々の貴金属を使用すれば、この着火温度を更に350℃未満の範囲にまで下げることも可能である。更に、酸化触媒をDPFの上流に備えて、排ガス中に含まれるNOを酸化してNO2を得てよく、その際、残留酸素を使用し、こうして再生を支援する。排ガス温度が点火温度を超える時間が十分に長ければ、触媒コートされたDPFは十分にしっかり再生されうる。
【0012】
触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタをエンジンテストベンチ上で使用する一連の集中的な試験においては、実際の自動車の運転モードのシミュレーションを行うために動的試験サイクルが開発されている。この試験中のエンジン回転数及び負荷のスペクトルは、標準化排ガス試験に基づくものである。この試験サイクルは、市街地運転及び郊外運転の両方を含む。生ずるエンジン回転数及び負荷スペクトルは、市街地運転時のエンジンのパーセント利用率が極めて低い点で異なる(図1参照)。これに対して、郊外運転時のエンジン負荷は比較的高い。このエンジンのパーセント利用率に直接関係するのは、その排ガス温度である。従って、排ガス中の高い温度は郊外運転時に高い利用率で実現される一方で、比較的低い温度は市街地運転時に実現される(図2参照)。
【0013】
実際の運転モードのシミュレーションをエンジンテストベンチ上で行う理由は、DPFの圧力損失挙動が、その後期の車両での利用について見込まれることがあるからである。
【0014】
エンジンの排ガス温度は、そのパーセント負荷率に直接関係する(図1及び図2参照)。前記のとおり、このことは市街地運転時の極めて低い温度及び郊外運転時の極めて高い温度を導く。図3は、市街地運転時の温度曲線を示す。この曲線は、排ガス管路内の任意の位置でプロットされていてよく、従って排ガス管路内の温度スペクトルとみなされる。図4は、同様の状況を郊外運転時について示す。
【0015】
郊外運転については、試験系の間には種々のエンジン回転数レベルが使用される。従って、種々の温度特性が得られる。結果として、実用的に受容され得る再生が生ずる温度レベルを様々なフィルタについて規定できる。
【0016】
この動的試験サイクルの結果からの主な結論は、2つの部分に分けることができる。記載すべき一つの結論は、郊外運転時の温度スペクトルがフィルタ再生を引き起こすのに十分でありうることである。これは、時間に関しては受容されうる範囲内で実現される。第2の結論は、市街地運転が、その低い温度のスペクトルのために実用的に使用可能な再生条件を生じさせないことである。
【0017】
これらの結論は、図5及び図6から解釈することができる。これらの図は、前記の圧力損失を示す。持続的な市街地運転時には、この圧力損失は、試験の持続時間に伴って、フィルタ負荷の増加によって増加する(図5)。
【0018】
郊外運転時の再生条件は、短時間の後でのみ圧力損失を低下させることを十分に可能にして生じさせることができる。例として、図6は両方の運転モデルの組合せを含む動的試験を示す。市街地運転と比べて極めて短い郊外運転の間には、急激な圧力損失の低下が生じ、こうして試験の持続時間全体にわたって圧力損失の降下を実現できる。
【0019】
以上のことをまとめると、十分なフィルタ再生は郊外運転時には実現できるが、市街地運転時には実現できない。
【0020】
全ての車両への適用にとって興味深いディーゼルパティキュレートフィルタ技術のために、再生容量は、相応の車両のあらゆる運転モードに提供されなければならない。例えば、バス、ゴミ収集車又はタクシーについての運転モードのシミュレーションを行うことができる市街地試験サイクルの開発及び適用によって、任意の更なるモディフィケーションを有しなければ、この「条件」を満たすことができないことが既に示されている。
【0021】
従って本発明の課題は、車両の負荷プロファイル(運転モード)に関わらず任意の時点でフィルタ再生を可能にする方法を提供することである。本類型の再生は、適時再生(regeneration on demand)と称される。
【0022】
前記課題は、請求項に記載の特徴部によって解決される。
【0023】
慣用のディーゼルエンジンにおいては、質的制御された燃焼が行われる。このことは、供給される空気と燃料との混合物の質が制御されることを意味する。この原理は、燃料流量をエンジンの運転点に応じて制御することによって実施される(負荷/トルクの増加は、この燃料流量を上昇させることによって実現される)。空気供給は、常に影響を与えなることはない。このことは、無次元量ラムダ:
【0024】
【数1】
を使用して表現できる種々の空燃比をもたらす。
【0025】
慣用のディーゼルエンジンにおいては、エンジン回転数が固定されていれば空気流量は一定である。従って、ラムダは燃料流量によってのみ影響を受けることがある。ディーゼルエンジンの燃焼は過剰の空気によって運転される、すなわち、燃焼に必要な空気よりも多量の空気が存在している。従って、ラムダは1未満には降下しない。更に、ディーゼルエンジンの燃焼のラムダ値が1未満に降下すれば、その燃焼は機能限界及び失火限界にそれぞれ達する。ディーゼルエンジンの特性マップを見ると、最小のラムダ値は全負荷時に見出される。それというのも、この場合に燃料流量が最大であるからである。
【0026】
供給空気の過給システムを備えたディーゼルエンジンにおいては、空気流量は一定のエンジン回転数で変化する。多量の空気がエンジンに供給され、その際、負荷/トルクが増加する。これは過給と称される。しかしながら、過給に加えて、多量の燃料も供給でき、こうしてラムダも過給ディーゼルエンジンの特性マップ上で変化する。
【0027】
従って、ディーゼルエンジンのラムダ値は、常に全負荷時で最小になる。従って、最小の空気/燃料比は、その範囲内に存在する。このことは、最高の排ガス温度をもたらす。燃焼に対する空気のパーセント寄与率は、そこで最大となる。この寄与率/利用率が低下し、その際、ラムダ値が増加し、こうして排ガス温度は再び降下する。このラムダ値と排ガス温度との関係を、特性マップ上に示す(図7及び図8)。
【0028】
本発明は、以下の必要なディーゼルパティキュレートフィルタの再生についての基本的思想と、十分な再生条件が全負荷時にのみ存在するという既存の問題に基づいている。
【0029】
適時再生に際して、ディーゼルエンジンは質的制御されたエンジンとして運転されるのではなく、ガソリンエンジン原理と同様の量的制御されたエンジンとして運転される。エンジンの出力要求は、燃料の添加だけでなく、燃焼混合物の流量の制御によって満たされる。無過給ディーゼルエンジンにおいては、このことは、供給/吸入空気のためのスロットルバルブを使用して行わなければならない。空燃比は、ガソリンエンジンと同様に、一定にかつ低く維持される。エンジンが部分負荷で作動しているときには、スロットルバルブが空気流量を制限する。従って、燃料流量による質的制御が行われるのではなく、混合物の量的制御が行われる。結果として、エンジンを所望のラムダ(又はラムダ値)で運転できる。エンジンの運転点について種々のスロットル状態を使用すれば、種々の混合物状態に調節できる。このことは、ラムダ変化と称することができる。
【0030】
過給ディーゼルエンジンは、前記のスロットルバルブに加えて、給気圧を変化させるシステムを必要とする。給気圧に影響を与えると、空気流量は直接変化する。相応のエンジンの運転点では、この給気圧は所望のラムダ値に必要な空気流量がエンジンに供給されるように調節される。このスロットルバルブと給気圧を変化させるシステムとの組合せは、一定のラムダ値、又は所望のラムダ値が特性マップ全体の中で相応のエンジンの運転点について使用されることを可能にする、全体的な過給ディーゼルエンジンのための解決法をなす。また、両方の機能を一緒に満たす設計、例えばエンジンへの空気通路を閉鎖又は制限する過給機の下流でのバルブ規制と同時に、環境への通路の開放を利用してもよい。この思想又は機能的な原理は、他のシステムを使用して実施してもよい。例えば、空気流量全体について過給機の上流でスロットルを絞り、こうして過給機に入る空気流によって、得られる給気圧を変化させてもよい。
【0031】
給気圧の変化及び/又はスロットリングを使用して空気流量に影響を与えることも、「可変のエンジン(variable engine)」をもたらす。可変性は、その出力容量に関する。影響を受けないエンジンは、全負荷時で最小のラムダ値でその最高温度に達する。適時再生については、そのラムダ値は負荷範囲全体に対する目標値をなす。目標のラムダが部分負荷で実施されるように、給気圧を変化(最小化)させる。同時に、これは慣用のエンジンの全負荷である。それというのも、このとき減らされた空気流の供給及びこのように最小限に運転される目標のラムダ値では、それより大きい負荷を生じさせることはできないからである。エンジンは、適時再生を伴って運転される間、常にその目下の全負荷に近い負荷で運転される。このことは、最高の排ガス温度を必然的にもたらす。それというのも、公知のように、ラムダが最小であれば、最小の過剰空気が存在し、そして供給された空気流が燃焼に最大限に加わるからである(燃焼室内での空気のパーセント利用率が最大)。
【0032】
以下、本発明を付属の図面を参照して詳細に説明する:
図1は、市街地運転時のパーセント分布を示し;
図2は、郊外運転時のパーセント分布を示し;
図3は、市街地運転時の温度曲線を示し;
図4は、郊外運転時の温度曲線を示し;
図5は、持続的な市街地運転時の圧力損失を示し;
図6は、組合せ運転時の圧力損失を示し;
図7は、過給ディーゼルエンジンのラムダ特性マップを示し;
図8は、過給ディーゼルエンジンの排ガス温度特性マップを示し;
図9は、一定のエンジン回転数でのラムダ変化の範囲を示し;
図10は、通常運転及びラムダ変化の間の排ガス温度を示し;かつ
図11は、理想及び実際の適時再生についての一定のエンジン回転数での負荷に対する吸気管圧力及びラムダ値をそれぞれ示す。
【0033】
図9は、一定のエンジン回転数での排ガス温度とラムダ値とエンジン負荷との関係のグラフィック表示である。通常のエンジン運転では、低いラムダ値での全負荷から高いラムダ値での低い部分負荷への移動が示される。排ガス温度はかなり低下している。適時再生に際して、運転は一定の低いラムダ値で行われる。排ガス温度はわずかに下がるにすぎず、その際、負荷/トルクは減少する。このことは、ラムダが一定に保たれているにもかかわらず、燃料流量の低下によって導入されるエネルギーが低くなることによるものである。これら2本の曲線の間の領域(区域全体)は、2種の運転モード間の(一定のエンジン回転数での)変化を示す。
【0034】
適時再生を使用することによって、操縦者が影響を受けてはならない。このことは、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行う全ての戦略に当てはまる一般的な条件である。このことは、出力損失が生じうる時間が存在しないことを意味する。操縦者が最大トルクを要求したときに、次いで最大空気流量が供給されなければならない。そのとき、自然吸気エンジンにおいてはスロットリングが実行されていてはならず、そして過給エンジンにおいては最大給気圧が利用可能でなければならない。操縦者によって負荷が減らされたとき、給気圧の変化及びスロットリングがそれぞれ実行される。再生運転については、操縦者に相応の信号によって運転席で知らせてよい。
【0035】
同様の条件は、テストベンチについて適用される。負荷要求が変化しても通常運転からの偏差は動的試験走行については測定されるはずはない。テストベンチは、車両と比べると、ラムダ変化をテストベンチ用ソフトウエアを介して適用することを可能にする。車両内では、相応のアクチュエータがエンジンエレクトロニクスによって操縦者の要求に従って運転されなければならない。操縦者の要求は、慣用のエンジン回転数での加速装置の位置から得られた情報に相当する。
【0036】
図10は、試験されたラムダ変化の温度曲線と通常運転の温度曲線とを比較している。前記に示された市街地運転のシミュレーションを行う動的試験を、両方の走行において実施した。表示されたこの曲線は、エンジン回転数曲線とトルク曲線とが一致するのと同様の特性を示す。温度レベルの明確な差異は明らかである。ラムダ変化の場合の曲線は、相応の運転点についての最高の温度を示す。それというのも、任意の運転点で最小のラムダ値を使用するからである。
【0037】
理想の適時再生を、特性マップ全体の一定のラムダ値、例えばλ=約1.8の値;例えば、可能であれば、通常運転の特性マップ全体からの最小のラムダ値(図7参照)で運転する。この値を、理想ラムダ値と称する。理想ラムダ値での運転からの第一の限界/偏差は、図7から明らかである。高いエンジン回転数範囲において、この理想ラムダ値を使用するならば、空気流量は減らされるべきである。しかしながら、このことはエンジンの出力容量を減らし、それは許容され得ないものである。従って、あらゆるエンジン回転数は、その独自の最小のラムダ値、すなわち全負荷曲線上でのラムダ値を有する。
【0038】
この理想ラムダ値からの第二の偏差は、低い部分負荷がゼロ負荷まで下がるとき(アイドリングの際も)に生ずる。これらの特性マップ範囲内では、スロットルを絞ってエンジンを運転する。生じた吸気圧力/負圧は、任意に低くすることができない。仮にそれを更に低くして理想ラムダ値の運転を継続すると、次いで最後の圧縮圧力が非常に小さくなる。この結果、燃焼室内での自己着火の不良に至る。燃焼はもはや行われず、かつエンジンは最終的に運転を停止する(スロットルダウン/ストール)。
【0039】
従って、エンジンの失火限界を規定する最小吸気管圧力が存在する。この圧力は、利用されるエンジンの圧縮比に依存するので、本明細書中には示さない。この最小吸気管圧力には、低い部分負荷範囲内で到達する。一般的に、これは、約4バール〜約5バールの範囲内の場合である。負荷が更にゼロ負荷まで低下すると、必然的にラムダ値の増大、すなわち、理想の適時再生の理想ラムダ値からの偏差をもたらす。この状況は、過給ディーゼルエンジンの実施例を示す図11に示される。この図では、ラムダは理想ラムダ値である約1.8から、ゼロ負荷時には少なくとも約5.5まで増大する。
【0040】
車両内でのディーゼルパティキュレートフィルタの使用は、近い将来において有効な排ガス後処理技術である。結果として、それは、ディーゼル排ガス中に含まれるパティキュレートをほとんど完全に濾過することが可能になる。しかしながら、パティキュレートマターの濾過は、以下の問題、すなわち、フィルタのパティキュレートフィルターによる連続的な目詰まりをもたらす。これを負荷の増加と称する。この負荷によって、背圧の増加を介して排ガス管路内でかなりの抵抗力が形成される。この背圧は、エンジンからの排ガスの排気を困難にして、最終的に操縦運転の燃料消費の増加に関与する。この増加を可能な限り小さく保つために、ディーゼルパティキュレートフィルタをときおり再生しなければならない。それを行うために、フィルタの負荷物を焼却する。この再生は、当該分野で公知の種々の戦略を使用して実現される。しかしながら、あらゆるユーザ、すなわちあらゆる運転モードについて再生を確保することが問題である。車両を不変的に低い部分負荷でのみ運転する場合、任意の付加的なモディフィケーションを有さなければ再生を実施することができない。それというのも、再生に対して重要な数量である排ガス温度は、不変的に非常に低いからである。従って、昇温作用をもたらす解決法が必要である。
【0041】
前記のラムダ変化を使用する再生の原理は、エンジンに作用するモディフィケーションである。ガソリンエンジンと同様に能動的に開始される再生段階に際して、通常運転時に質的制御の様式で運転するディーゼルエンジンを、量的制御されたエンジンとして運転する。このことは、とりわけ、エンジンを一定のラムダ値で運転できることを意味する。得られる利点は、部分負荷時の排ガス温度がかなり増加することである。それというのも、通常運転からの多量の過剰空気がもはや存在しないからである。
【0042】
このラムダ変化の実施及び使用によって、不変的に部分負荷で使用される車両がディーゼルパティキュレートフィルタについての再生段階を実施することも可能になる。このように、付加的な装置(例えばバーナシステム)に依存しない再生戦略を提供する。これは、他の製造費及び工業原価に関する利点を含めることができる。
【0043】
前記のラムダ変化の原理を使用することによって、ディーゼルパティキュレートフィルタについての再生条件を、エンジンが低い部分負荷でももたらすことができる。このエンジンモディフィケーションを、過給ディーゼルエンジンに提供する場合には、中間冷却器をバイパスさせることによって支援してもよい。この場合、エンジンに供給される空気流量は冷却されることなく、それに対応する高い温度でエンジンに入る。従って、排ガス温度はラムダ変化を単独で使用するのに比べて高くなる。更に、供給された空気流量を加熱してよい。その加熱によって、排ガス温度は更に増加する。エンジンの観点から見ると、燃料供給調節及び/又は再噴射を実施してもよい。最後に、排ガス循環を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】市街地運転時のパーセント分布を示す図である
【図2】郊外運転時のパーセント分布を示す図である
【図3】市街地運転時の温度曲線を示す図である
【図4】郊外運転時の温度曲線を示す図である
【図5】持続的な市街地運転時の圧力損失を示す図である
【図6】組合せ運転時の圧力損失を示す図である
【図7】過給ディーゼルエンジンの特性ラムダマップを示す図である
【図8】過給ディーゼルエンジンの特性排ガス温度マップを示す図である
【図9】一定のエンジン回転数でのラムダ変化の範囲を示す図である
【図10】通常運転及びラムダ変化の間の排ガス温度を示す図である
【図11】理想及び実際の適時再生についての一定のエンジン回転数での負荷に対する吸気管圧力及びラムダ値をそれぞれ示す図である
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生条件を支援する又はもたらすエンジンモディフィケーションの使用、及び特にラムダ変化を用いる、好ましくは触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関する。
【0002】
今日の世界の内燃機関は、2種のエンジン型、すなわちガソリンエンジンとディーゼルエンジンとが優位を占めている。この2種の燃焼概念の進行中の開発は、人々と環境を保護する法的規制が次第に強化されている排出の低減に集中している。
【0003】
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンの燃焼に対して、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物の排出を低く生成するが、ディーゼルエンジンではパティキュレートの排出が顕著に増加することもまた一般的である。パティキュレート排出の発生、防止及び廃棄を制御できるように、これらの排出を試験することは特に重要である。慣用のディーゼルエンジンにおけるパティキュレートの発生及び防止について影響を与えるのは依然として極めて困難であり、従って主要な焦点は廃棄に向けられる。この傾向は、該当する法律によって強く支持され、かつ要求されている。
【0004】
ディーゼルエンジンの排ガスからのパティキュレートのほとんどを捕集する1つの方法は、いわゆるディーゼルパティキュレートフィルタを使用することである。このフィルタは排ガス管路内に配置され、排ガス中に含まれるパティキュレートに対して最大の濾過率を実現する。
【0005】
しかしながら、この極めて有効かつ効率的な濾過工程は、以下の問題をもたらす。すなわち、このフィルタがパティキュレートマターによって次第に負荷を受けることである。結果として、排ガスがフィルタを流通するのが困難になり、そしてフィルタの上流で圧力増加が発生し、このことはエンジンの排気仕事が増加するに等しいものとみなすことができる。この排気仕事の増加は、出力損失及びエンジンの燃料消費の増加においてそれぞれ反映される。フィルタの上流で圧力が不必要に高く増加するのを防ぐために、フィルタをときおり焼却し、解放させなければならない。このことは、種々の再生手段及び戦略によって、それぞれ実施される。
【0006】
セラミックモノリス型セルフィルタとしても引き合いに出されるハニカムフィルタの構造が、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPF)技術を決定づけることが強く予想される。DPFは、開口と封口とが交互になされたチャネルを有するフィルタである。この構成の結果として、排ガスは多孔質のチャネル壁を流通せざるをえず、その壁上にはパティキュレートマターが堆積することがある。従って、かかるフィルタは、いわゆるウォールフローフィルタとも称される。
【0007】
このハニカムフィルタの他に、例えば巻付型構成を有することができるフィルタも存在する。かかるフィルタ内では、排ガスは直接的な障害物に接触することなく導通する。その構成は触媒と同様である、すなわちいかなる封口チャネルをも有さない。しかしながら、99%より高い濾過作用を実現できるハニカムフィルタに対して、そのパティキュレートマターに対する濾過効率は、許容され得ない低い範囲である。
【0008】
更に、焼結金属フィルタ、巻付型ファイバフィルタ、メリヤスファイバフィルタ、網状ファイバフィルタ及び濾紙並びに不織フィルタが存在する。全てのパラメータ、例えば製造費及び工業原価、物理的特性、濾過作用、耐久性等を考慮すると、ハニカムフィルタは他のいかなるフィルタ開発品よりも有利である。
【0009】
DPF(いかなる付加的なモディフィケーションを有さない)の再生は、純粋な酸素の再生(煤の酸化)とみなすことができる化学反応である。それは360℃付近の温度で開始するが、550℃を超えたときに限り、実用的観点から見て興味深い反応及び酸化速度が実現される。このことは、その温度でのみ十分に速い再生速度を得ることができることを意味し、その速度はDPFを車両内で使用するにあたり経済的に受容され得る解決法をなす。
【0010】
ディーゼルパティキュレートフィルタを利用する以下の再生戦略:
− 付加的な支持材を有するディーゼルパティキュレートフィルタ、
− CRTシステム
− 触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタ、
− 電気的支援型ディーゼルパティキュレートフィルタ、
− バーナシステムを有するディーゼルパティキュレートフィルタ、及び
− 圧縮空気がパージされるディーゼルパティキュレートフィルタが公知である。
【0011】
触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタにおいては、例えばフィルタ表面に金属が導入されている。この金属は、煤の着火温度を400℃未満に低くする触媒として機能する。種々の貴金属を使用すれば、この着火温度を更に350℃未満の範囲にまで下げることも可能である。更に、酸化触媒をDPFの上流に備えて、排ガス中に含まれるNOを酸化してNO2を得てよく、その際、残留酸素を使用し、こうして再生を支援する。排ガス温度が点火温度を超える時間が十分に長ければ、触媒コートされたDPFは十分にしっかり再生されうる。
【0012】
触媒コートされたディーゼルパティキュレートフィルタをエンジンテストベンチ上で使用する一連の集中的な試験においては、実際の自動車の運転モードのシミュレーションを行うために動的試験サイクルが開発されている。この試験中のエンジン回転数及び負荷のスペクトルは、標準化排ガス試験に基づくものである。この試験サイクルは、市街地運転及び郊外運転の両方を含む。生ずるエンジン回転数及び負荷スペクトルは、市街地運転時のエンジンのパーセント利用率が極めて低い点で異なる(図1参照)。これに対して、郊外運転時のエンジン負荷は比較的高い。このエンジンのパーセント利用率に直接関係するのは、その排ガス温度である。従って、排ガス中の高い温度は郊外運転時に高い利用率で実現される一方で、比較的低い温度は市街地運転時に実現される(図2参照)。
【0013】
実際の運転モードのシミュレーションをエンジンテストベンチ上で行う理由は、DPFの圧力損失挙動が、その後期の車両での利用について見込まれることがあるからである。
【0014】
エンジンの排ガス温度は、そのパーセント負荷率に直接関係する(図1及び図2参照)。前記のとおり、このことは市街地運転時の極めて低い温度及び郊外運転時の極めて高い温度を導く。図3は、市街地運転時の温度曲線を示す。この曲線は、排ガス管路内の任意の位置でプロットされていてよく、従って排ガス管路内の温度スペクトルとみなされる。図4は、同様の状況を郊外運転時について示す。
【0015】
郊外運転については、試験系の間には種々のエンジン回転数レベルが使用される。従って、種々の温度特性が得られる。結果として、実用的に受容され得る再生が生ずる温度レベルを様々なフィルタについて規定できる。
【0016】
この動的試験サイクルの結果からの主な結論は、2つの部分に分けることができる。記載すべき一つの結論は、郊外運転時の温度スペクトルがフィルタ再生を引き起こすのに十分でありうることである。これは、時間に関しては受容されうる範囲内で実現される。第2の結論は、市街地運転が、その低い温度のスペクトルのために実用的に使用可能な再生条件を生じさせないことである。
【0017】
これらの結論は、図5及び図6から解釈することができる。これらの図は、前記の圧力損失を示す。持続的な市街地運転時には、この圧力損失は、試験の持続時間に伴って、フィルタ負荷の増加によって増加する(図5)。
【0018】
郊外運転時の再生条件は、短時間の後でのみ圧力損失を低下させることを十分に可能にして生じさせることができる。例として、図6は両方の運転モデルの組合せを含む動的試験を示す。市街地運転と比べて極めて短い郊外運転の間には、急激な圧力損失の低下が生じ、こうして試験の持続時間全体にわたって圧力損失の降下を実現できる。
【0019】
以上のことをまとめると、十分なフィルタ再生は郊外運転時には実現できるが、市街地運転時には実現できない。
【0020】
全ての車両への適用にとって興味深いディーゼルパティキュレートフィルタ技術のために、再生容量は、相応の車両のあらゆる運転モードに提供されなければならない。例えば、バス、ゴミ収集車又はタクシーについての運転モードのシミュレーションを行うことができる市街地試験サイクルの開発及び適用によって、任意の更なるモディフィケーションを有しなければ、この「条件」を満たすことができないことが既に示されている。
【0021】
従って本発明の課題は、車両の負荷プロファイル(運転モード)に関わらず任意の時点でフィルタ再生を可能にする方法を提供することである。本類型の再生は、適時再生(regeneration on demand)と称される。
【0022】
前記課題は、請求項に記載の特徴部によって解決される。
【0023】
慣用のディーゼルエンジンにおいては、質的制御された燃焼が行われる。このことは、供給される空気と燃料との混合物の質が制御されることを意味する。この原理は、燃料流量をエンジンの運転点に応じて制御することによって実施される(負荷/トルクの増加は、この燃料流量を上昇させることによって実現される)。空気供給は、常に影響を与えなることはない。このことは、無次元量ラムダ:
【0024】
【数1】
を使用して表現できる種々の空燃比をもたらす。
【0025】
慣用のディーゼルエンジンにおいては、エンジン回転数が固定されていれば空気流量は一定である。従って、ラムダは燃料流量によってのみ影響を受けることがある。ディーゼルエンジンの燃焼は過剰の空気によって運転される、すなわち、燃焼に必要な空気よりも多量の空気が存在している。従って、ラムダは1未満には降下しない。更に、ディーゼルエンジンの燃焼のラムダ値が1未満に降下すれば、その燃焼は機能限界及び失火限界にそれぞれ達する。ディーゼルエンジンの特性マップを見ると、最小のラムダ値は全負荷時に見出される。それというのも、この場合に燃料流量が最大であるからである。
【0026】
供給空気の過給システムを備えたディーゼルエンジンにおいては、空気流量は一定のエンジン回転数で変化する。多量の空気がエンジンに供給され、その際、負荷/トルクが増加する。これは過給と称される。しかしながら、過給に加えて、多量の燃料も供給でき、こうしてラムダも過給ディーゼルエンジンの特性マップ上で変化する。
【0027】
従って、ディーゼルエンジンのラムダ値は、常に全負荷時で最小になる。従って、最小の空気/燃料比は、その範囲内に存在する。このことは、最高の排ガス温度をもたらす。燃焼に対する空気のパーセント寄与率は、そこで最大となる。この寄与率/利用率が低下し、その際、ラムダ値が増加し、こうして排ガス温度は再び降下する。このラムダ値と排ガス温度との関係を、特性マップ上に示す(図7及び図8)。
【0028】
本発明は、以下の必要なディーゼルパティキュレートフィルタの再生についての基本的思想と、十分な再生条件が全負荷時にのみ存在するという既存の問題に基づいている。
【0029】
適時再生に際して、ディーゼルエンジンは質的制御されたエンジンとして運転されるのではなく、ガソリンエンジン原理と同様の量的制御されたエンジンとして運転される。エンジンの出力要求は、燃料の添加だけでなく、燃焼混合物の流量の制御によって満たされる。無過給ディーゼルエンジンにおいては、このことは、供給/吸入空気のためのスロットルバルブを使用して行わなければならない。空燃比は、ガソリンエンジンと同様に、一定にかつ低く維持される。エンジンが部分負荷で作動しているときには、スロットルバルブが空気流量を制限する。従って、燃料流量による質的制御が行われるのではなく、混合物の量的制御が行われる。結果として、エンジンを所望のラムダ(又はラムダ値)で運転できる。エンジンの運転点について種々のスロットル状態を使用すれば、種々の混合物状態に調節できる。このことは、ラムダ変化と称することができる。
【0030】
過給ディーゼルエンジンは、前記のスロットルバルブに加えて、給気圧を変化させるシステムを必要とする。給気圧に影響を与えると、空気流量は直接変化する。相応のエンジンの運転点では、この給気圧は所望のラムダ値に必要な空気流量がエンジンに供給されるように調節される。このスロットルバルブと給気圧を変化させるシステムとの組合せは、一定のラムダ値、又は所望のラムダ値が特性マップ全体の中で相応のエンジンの運転点について使用されることを可能にする、全体的な過給ディーゼルエンジンのための解決法をなす。また、両方の機能を一緒に満たす設計、例えばエンジンへの空気通路を閉鎖又は制限する過給機の下流でのバルブ規制と同時に、環境への通路の開放を利用してもよい。この思想又は機能的な原理は、他のシステムを使用して実施してもよい。例えば、空気流量全体について過給機の上流でスロットルを絞り、こうして過給機に入る空気流によって、得られる給気圧を変化させてもよい。
【0031】
給気圧の変化及び/又はスロットリングを使用して空気流量に影響を与えることも、「可変のエンジン(variable engine)」をもたらす。可変性は、その出力容量に関する。影響を受けないエンジンは、全負荷時で最小のラムダ値でその最高温度に達する。適時再生については、そのラムダ値は負荷範囲全体に対する目標値をなす。目標のラムダが部分負荷で実施されるように、給気圧を変化(最小化)させる。同時に、これは慣用のエンジンの全負荷である。それというのも、このとき減らされた空気流の供給及びこのように最小限に運転される目標のラムダ値では、それより大きい負荷を生じさせることはできないからである。エンジンは、適時再生を伴って運転される間、常にその目下の全負荷に近い負荷で運転される。このことは、最高の排ガス温度を必然的にもたらす。それというのも、公知のように、ラムダが最小であれば、最小の過剰空気が存在し、そして供給された空気流が燃焼に最大限に加わるからである(燃焼室内での空気のパーセント利用率が最大)。
【0032】
以下、本発明を付属の図面を参照して詳細に説明する:
図1は、市街地運転時のパーセント分布を示し;
図2は、郊外運転時のパーセント分布を示し;
図3は、市街地運転時の温度曲線を示し;
図4は、郊外運転時の温度曲線を示し;
図5は、持続的な市街地運転時の圧力損失を示し;
図6は、組合せ運転時の圧力損失を示し;
図7は、過給ディーゼルエンジンのラムダ特性マップを示し;
図8は、過給ディーゼルエンジンの排ガス温度特性マップを示し;
図9は、一定のエンジン回転数でのラムダ変化の範囲を示し;
図10は、通常運転及びラムダ変化の間の排ガス温度を示し;かつ
図11は、理想及び実際の適時再生についての一定のエンジン回転数での負荷に対する吸気管圧力及びラムダ値をそれぞれ示す。
【0033】
図9は、一定のエンジン回転数での排ガス温度とラムダ値とエンジン負荷との関係のグラフィック表示である。通常のエンジン運転では、低いラムダ値での全負荷から高いラムダ値での低い部分負荷への移動が示される。排ガス温度はかなり低下している。適時再生に際して、運転は一定の低いラムダ値で行われる。排ガス温度はわずかに下がるにすぎず、その際、負荷/トルクは減少する。このことは、ラムダが一定に保たれているにもかかわらず、燃料流量の低下によって導入されるエネルギーが低くなることによるものである。これら2本の曲線の間の領域(区域全体)は、2種の運転モード間の(一定のエンジン回転数での)変化を示す。
【0034】
適時再生を使用することによって、操縦者が影響を受けてはならない。このことは、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行う全ての戦略に当てはまる一般的な条件である。このことは、出力損失が生じうる時間が存在しないことを意味する。操縦者が最大トルクを要求したときに、次いで最大空気流量が供給されなければならない。そのとき、自然吸気エンジンにおいてはスロットリングが実行されていてはならず、そして過給エンジンにおいては最大給気圧が利用可能でなければならない。操縦者によって負荷が減らされたとき、給気圧の変化及びスロットリングがそれぞれ実行される。再生運転については、操縦者に相応の信号によって運転席で知らせてよい。
【0035】
同様の条件は、テストベンチについて適用される。負荷要求が変化しても通常運転からの偏差は動的試験走行については測定されるはずはない。テストベンチは、車両と比べると、ラムダ変化をテストベンチ用ソフトウエアを介して適用することを可能にする。車両内では、相応のアクチュエータがエンジンエレクトロニクスによって操縦者の要求に従って運転されなければならない。操縦者の要求は、慣用のエンジン回転数での加速装置の位置から得られた情報に相当する。
【0036】
図10は、試験されたラムダ変化の温度曲線と通常運転の温度曲線とを比較している。前記に示された市街地運転のシミュレーションを行う動的試験を、両方の走行において実施した。表示されたこの曲線は、エンジン回転数曲線とトルク曲線とが一致するのと同様の特性を示す。温度レベルの明確な差異は明らかである。ラムダ変化の場合の曲線は、相応の運転点についての最高の温度を示す。それというのも、任意の運転点で最小のラムダ値を使用するからである。
【0037】
理想の適時再生を、特性マップ全体の一定のラムダ値、例えばλ=約1.8の値;例えば、可能であれば、通常運転の特性マップ全体からの最小のラムダ値(図7参照)で運転する。この値を、理想ラムダ値と称する。理想ラムダ値での運転からの第一の限界/偏差は、図7から明らかである。高いエンジン回転数範囲において、この理想ラムダ値を使用するならば、空気流量は減らされるべきである。しかしながら、このことはエンジンの出力容量を減らし、それは許容され得ないものである。従って、あらゆるエンジン回転数は、その独自の最小のラムダ値、すなわち全負荷曲線上でのラムダ値を有する。
【0038】
この理想ラムダ値からの第二の偏差は、低い部分負荷がゼロ負荷まで下がるとき(アイドリングの際も)に生ずる。これらの特性マップ範囲内では、スロットルを絞ってエンジンを運転する。生じた吸気圧力/負圧は、任意に低くすることができない。仮にそれを更に低くして理想ラムダ値の運転を継続すると、次いで最後の圧縮圧力が非常に小さくなる。この結果、燃焼室内での自己着火の不良に至る。燃焼はもはや行われず、かつエンジンは最終的に運転を停止する(スロットルダウン/ストール)。
【0039】
従って、エンジンの失火限界を規定する最小吸気管圧力が存在する。この圧力は、利用されるエンジンの圧縮比に依存するので、本明細書中には示さない。この最小吸気管圧力には、低い部分負荷範囲内で到達する。一般的に、これは、約4バール〜約5バールの範囲内の場合である。負荷が更にゼロ負荷まで低下すると、必然的にラムダ値の増大、すなわち、理想の適時再生の理想ラムダ値からの偏差をもたらす。この状況は、過給ディーゼルエンジンの実施例を示す図11に示される。この図では、ラムダは理想ラムダ値である約1.8から、ゼロ負荷時には少なくとも約5.5まで増大する。
【0040】
車両内でのディーゼルパティキュレートフィルタの使用は、近い将来において有効な排ガス後処理技術である。結果として、それは、ディーゼル排ガス中に含まれるパティキュレートをほとんど完全に濾過することが可能になる。しかしながら、パティキュレートマターの濾過は、以下の問題、すなわち、フィルタのパティキュレートフィルターによる連続的な目詰まりをもたらす。これを負荷の増加と称する。この負荷によって、背圧の増加を介して排ガス管路内でかなりの抵抗力が形成される。この背圧は、エンジンからの排ガスの排気を困難にして、最終的に操縦運転の燃料消費の増加に関与する。この増加を可能な限り小さく保つために、ディーゼルパティキュレートフィルタをときおり再生しなければならない。それを行うために、フィルタの負荷物を焼却する。この再生は、当該分野で公知の種々の戦略を使用して実現される。しかしながら、あらゆるユーザ、すなわちあらゆる運転モードについて再生を確保することが問題である。車両を不変的に低い部分負荷でのみ運転する場合、任意の付加的なモディフィケーションを有さなければ再生を実施することができない。それというのも、再生に対して重要な数量である排ガス温度は、不変的に非常に低いからである。従って、昇温作用をもたらす解決法が必要である。
【0041】
前記のラムダ変化を使用する再生の原理は、エンジンに作用するモディフィケーションである。ガソリンエンジンと同様に能動的に開始される再生段階に際して、通常運転時に質的制御の様式で運転するディーゼルエンジンを、量的制御されたエンジンとして運転する。このことは、とりわけ、エンジンを一定のラムダ値で運転できることを意味する。得られる利点は、部分負荷時の排ガス温度がかなり増加することである。それというのも、通常運転からの多量の過剰空気がもはや存在しないからである。
【0042】
このラムダ変化の実施及び使用によって、不変的に部分負荷で使用される車両がディーゼルパティキュレートフィルタについての再生段階を実施することも可能になる。このように、付加的な装置(例えばバーナシステム)に依存しない再生戦略を提供する。これは、他の製造費及び工業原価に関する利点を含めることができる。
【0043】
前記のラムダ変化の原理を使用することによって、ディーゼルパティキュレートフィルタについての再生条件を、エンジンが低い部分負荷でももたらすことができる。このエンジンモディフィケーションを、過給ディーゼルエンジンに提供する場合には、中間冷却器をバイパスさせることによって支援してもよい。この場合、エンジンに供給される空気流量は冷却されることなく、それに対応する高い温度でエンジンに入る。従って、排ガス温度はラムダ変化を単独で使用するのに比べて高くなる。更に、供給された空気流量を加熱してよい。その加熱によって、排ガス温度は更に増加する。エンジンの観点から見ると、燃料供給調節及び/又は再噴射を実施してもよい。最後に、排ガス循環を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】市街地運転時のパーセント分布を示す図である
【図2】郊外運転時のパーセント分布を示す図である
【図3】市街地運転時の温度曲線を示す図である
【図4】郊外運転時の温度曲線を示す図である
【図5】持続的な市街地運転時の圧力損失を示す図である
【図6】組合せ運転時の圧力損失を示す図である
【図7】過給ディーゼルエンジンの特性ラムダマップを示す図である
【図8】過給ディーゼルエンジンの特性排ガス温度マップを示す図である
【図9】一定のエンジン回転数でのラムダ変化の範囲を示す図である
【図10】通常運転及びラムダ変化の間の排ガス温度を示す図である
【図11】理想及び実際の適時再生についての一定のエンジン回転数での負荷に対する吸気管圧力及びラムダ値をそれぞれ示す図である
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排ガス浄化システム内でディーゼルパティキュレートフィルタを再生する方法において、再生に際して、相応のディーゼルエンジンの運転点についての実質的に最高の排ガス温度を、空燃比を調節することによって達成させる方法。
【請求項2】
空燃比(ラムダ値)を最小化して最高の排ガス温度を実現させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再生に際して、空燃比を大部分の負荷範囲にわたって実質的に一定に維持させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
再生に際して、エンジンを全負荷で運転させる、請求項1から3までの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
エンジンが、過給ディーゼルエンジン又は無過給ディーゼルエンジンである、請求項1から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
空燃比の調節を、供給空気及び吸入空気それぞれのためのスロットルバルブを用いて実施する、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
スロットルバルブが、エンジンの部分負荷時に空気流量を制限する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過給ディーゼルエンジン内での空燃比の調節を、給気圧を変化させるシステムによって更に実施する、請求項5から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
過給ディーゼルエンジン内での空燃比の調節を、過給機の下流でのバルブ規制、エンジンへの空気通路を閉鎖又は制限するバルブ規制及び環境への通路の自然開放によって実施する、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
過給ディーゼルエンジン内の空気流量全体を過給機の上流で制限し、こうして過給機に入る空気流を介して、得られる給気圧を変化させる、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
エンジンに供給された空気流を加熱する、請求項1から10までの何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
過給機の下流に中間冷却器を備えた過給ディーゼルエンジンにおいて、再生に際して、中間冷却器をバイパスさせる、請求項1から11までの何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
ディーゼルパティキュレートフィルタが触媒コートされている、請求項1から12までの何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
ディーゼルエンジンの排ガス浄化システム内でディーゼルパティキュレートフィルタを再生するための、特に請求項1から13までの何れか1項に記載の方法を実施するための装置であって、再生に際して、相応のディーゼルエンジンの運転点についての実質的に最高の排ガス温度を、空燃比を調節することによって実現させるように改変された装置。
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排ガス浄化システム内でディーゼルパティキュレートフィルタを再生する方法において、再生に際して、相応のディーゼルエンジンの運転点についての実質的に最高の排ガス温度を、空燃比を調節することによって達成させる方法。
【請求項2】
空燃比(ラムダ値)を最小化して最高の排ガス温度を実現させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再生に際して、空燃比を大部分の負荷範囲にわたって実質的に一定に維持させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
再生に際して、エンジンを全負荷で運転させる、請求項1から3までの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
エンジンが、過給ディーゼルエンジン又は無過給ディーゼルエンジンである、請求項1から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
空燃比の調節を、供給空気及び吸入空気それぞれのためのスロットルバルブを用いて実施する、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
スロットルバルブが、エンジンの部分負荷時に空気流量を制限する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過給ディーゼルエンジン内での空燃比の調節を、給気圧を変化させるシステムによって更に実施する、請求項5から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
過給ディーゼルエンジン内での空燃比の調節を、過給機の下流でのバルブ規制、エンジンへの空気通路を閉鎖又は制限するバルブ規制及び環境への通路の自然開放によって実施する、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
過給ディーゼルエンジン内の空気流量全体を過給機の上流で制限し、こうして過給機に入る空気流を介して、得られる給気圧を変化させる、請求項1から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
エンジンに供給された空気流を加熱する、請求項1から10までの何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
過給機の下流に中間冷却器を備えた過給ディーゼルエンジンにおいて、再生に際して、中間冷却器をバイパスさせる、請求項1から11までの何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
ディーゼルパティキュレートフィルタが触媒コートされている、請求項1から12までの何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
ディーゼルエンジンの排ガス浄化システム内でディーゼルパティキュレートフィルタを再生するための、特に請求項1から13までの何れか1項に記載の方法を実施するための装置であって、再生に際して、相応のディーゼルエンジンの運転点についての実質的に最高の排ガス温度を、空燃比を調節することによって実現させるように改変された装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−513278(P2007−513278A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529810(P2006−529810)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005152
【国際公開番号】WO2004/101961
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005152
【国際公開番号】WO2004/101961
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】
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