説明

内燃機関の自動停止始動制御装置およびその制御方法並びに自動車

【課題】アイドリングストップを行うエンジンにおいて簡易かつ迅速に再始動させることのできる自動停止始動制御装置を提供する。
【解決手段】停止条件が成立した時にエンジン2の運転を自動停止し、自動停止されたエンジン2の運転を所定の始動条件が成立した時に自動始動させる制御装置は、停止条件判定手段と始動条件判定手段を構成する車両用電子制御ユニット15と、エンジン2のクランク軸4を駆動可能なモータジェネレータ12と、クランク軸4の回転角度を検出して燃料噴射時期にある気筒を判定する手段38を備え、停止条件が成立した時にクランク軸4をモータジェネレータ12で回転駆動させるとともにエンジン2への燃料噴射および点火を停止し、その後、始動条件が成立した時に燃料噴射時期にある気筒の吸気ポートへ燃料噴射弁26から燃料を噴射させ点火プラグ52で点火して自動始動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の自動停止始動制御装置およびその制御方法並びに自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関の停止始動制御装置としては、所定のエンジン停止条件が成立するとエンジンを自動停止し、所定のエンジン始動条件が成立するとエンジンを自動的に再始動する所謂アイドリングストップを行なうものが 提案されている。
この装置では、エンジン停止時に圧縮行程で停止すると予測される気筒に対して予め燃料噴射を行っておき、エンジン始動時にモータジェネレータによるクランキングに加えて、その気筒に対して点火を行うことにより、エンジンの早期始動を行うものとしている。
【特許文献1】特開2004−263569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、こうした装置では、エンジン停止時に各気筒がどの行程で停止するかをエンジン停止制御の実行中に予測するとともに、その気筒について圧縮行程の前行程である吸気行程で燃料噴射を行わなければならないから、エンジン停止時の制御が煩雑なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置は、簡易な処理により内燃機関をより迅速に再始動させることを目的の1つとし、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置は、所定の停止条件が成立したときには内燃機関における燃料噴射および点火を停止して該内燃機関の運転を自動停止し、該自動停止された前記内燃機関の運転を所定の始動条件が成立したときに該内燃機関における燃料噴射および点火を再開して該内燃機関の運転を自動始動する内燃機関の自動停止始動制御装置であって、
前記所定の停止条件が成立したか否かを判定する停止条件判定手段と、
前記内燃機関の運転が自動停止中に前記所定の始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段と、
前記内燃機関のクランク軸を回転駆動可能な回転駆動手段と、
前記クランク軸の回転に基づき燃料噴射時期にある気筒を判定する気筒判定手段と、
燃料噴射時期にあると判定された前記気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を行って前記内燃機関を運転制御する運転制御手段と、
前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときには、前記クランク軸を回転駆動するよう前記回転駆動手段を駆動制御するとともに各気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を停止するよう前記運転制御手段を制御し、前記始動条件判定手段により前記所定の始動条件が成立したと判定したときには、燃料噴射時期にあると判定された前記気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を開始するよう前記運転制御手段を制御する制御手段と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
この本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置では、停止条件判定手段により所定の停止条件が成立したと判定されたときには、クランク軸を回転駆動するよう回転駆動手段を駆動制御するとともに各気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を停止するよう運転制御手段を制御し、内燃機関の運転が自動停止中に始動条件判定手段により所定の始動条件が成立したと判定したときには、気筒判定手段により燃料噴射時期にあると判定された気筒の吸気ポートへの燃料噴射と点火とを開始するよう運転制御手段を制御する。
このように、内燃機関の運転が自動停止中もクランク軸を回転して、常に燃料噴射時期にある気筒を把握できるから、内燃機関の再始動を迅速なものとすることができる。しかも、始動時の燃料噴射制御および点火制御は、内燃機関の運転中における通常の燃料噴射制御および点火制御と同じで良いため制御が煩雑なものとなることもない。
【0006】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記回転駆動手段は、前記内燃機関のスタータモータであるものとすることもできる。
こうすれば、スタータモータとは別に回転駆動手段を設ける必要がない。
【0007】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記回転駆動手段は、前記クランク軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリに蓄える機能と前記バッテリの電気エネルギーを前記クランク軸の回転エネルギーに変換する機能を備えたモータジェネレータであるものとすることもできる。
こうすれば、例えば制動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリに蓄えておき、内燃機関の運転が自動停止中にその電気エネルギーを利用して内燃機関のクランク軸を回転駆動することができる。
【0008】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、少なくとも前記内燃機関の運転が自動停止中に前記クランク軸の回転フリクションを低減可能なフリクション低減手段を備えるものとすることもできる。
こうすれば、内燃機関の自動停止中における回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【0009】
また、フリクション低減手段を備える本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記フリクション低減手段は、少なくとも一部がピストン摺動面に開口するとともに前記各気筒同士を前記クランク軸の軸方向に連通する連通孔を有する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、ピストン下降時にクランク室内の圧力が増大することによるポンピングロスの増大を防止することができるから、回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【0010】
また、フリクション低減手段を備える本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記フリクション低減手段は、前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときには、前記内燃機関の吸気バルブの開位置および/または前記内燃機関の排気バルブの開位置を進角させる進角処理および/または前記吸気バルブの閉位置および/または前記排気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理を実行する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、吸気行程や圧縮行程,膨張行程,排気行程においてシリンダボア内の空気を逃がすことができるから、クランク軸の回転に伴うピストンの上昇や下降時における燃焼室内の圧力を低減できる。この結果、内燃機関の運転の自動停止中におけるクランク軸の回転フリクションを低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【0011】
また、フリクション低減手段が進角処理や遅角処理を実行する手段である本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記クランク軸の回転に伴って回転する第1の回転体と、該第1の回転体の回転力を前記吸気バルブを開閉する吸気カム軸に伝達する第2の回転体と、前記第1の回転体の回転力を前記排気バルブを開閉する排気カム軸に伝達する第3の回転体と、前記第1の回転体と前記第2の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な吸気バルブタイミング可変手段および/または前記第1の回転体と前記第3の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記排気バルブの開閉タイミングを変更可能な排気バルブタイミング可変手段と、を備え、前記フリクション低減手段は、前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときに前記吸気バルブタイミング可変手段によって前記吸気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理および/または前記排気バルブタイミング可変手段によって前記排気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理を実行する遅角処理実行手段を有する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、吸気行程から圧縮行程に切り替わっても吸気バルブを開状態としたり、排気行程から吸気行程に切り替わっても排気バルブを開状態とするから、圧縮行程や吸気行程でシリンダボア内の空気を逃がして圧縮行程や吸気行程における燃焼室内の圧力を低減できる。この結果、内燃機関の運転の自動停止中におけるクランク軸の回転フリクションを低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【0012】
また、上記態様の遅角処理を実行する手段を備える本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記遅角処理実行手段は、前記内燃機関の運転中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの閉位置よりも前記内燃機関の運転の自動停止中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの閉位置の方がより遅角側となるよう遅角処理を実行する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、圧縮行程や吸気行程における燃焼室内の圧力をより低減できる。この結果、内燃機関の自動停止中に おけるクランク軸の回転フリクションをより低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率をより向上することができる。
【0013】
また、フリクション低減手段が進角処理や遅角処理を実行する手段である本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記クランク軸の回転に伴って回転する第1の回転体と、該第1の回転体の回転力を前記吸気バルブを開閉する吸気カム軸に伝達する第2の回転体と、前記第1の回転体の回転力を前記排気バルブを開閉する排気カム軸に伝達する第3の回転体と、前記第1の回転体と前記第2の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な吸気バルブタイミング可変手段および/または前記第1の回転体と前記第3の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記排気バルブの開閉タイミングを変更可能な排気バルブタイミング可変手段と、を備え、前記フリクション低減手段は、前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときに前記吸気バルブタイミング可変手段によって前記吸気バルブの開位置を進角させる進角処理および/または前記排気バルブタイミング可変手段によって前記排気バルブの開位置を進角させる進角処理を実行する進角処理実行手段を有する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、排気行程から吸気行程に切り替わる前に吸気バルブを開状態としたり、膨張行程から排気行程に切り替わる前に排気バルブを開状態とするから、排気行程や膨張行程でシリンダボア内の空気を逃がして排気行程や膨張行程における燃焼室内の圧力を低減できる。この結果、内燃機関の運転の自動停止中におけるクランク軸の回転フリクションを低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【0014】
また、上記態様の進角処理を実行する手段を備える本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記進角処理実行手段は、前記内燃機関の運転中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの開位置よりも前記内燃機関の運転の自動停止中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの開位置の方がより進角側となるよう進角処理を実行する手段であるものとすることもできる。
こうすれば、排気行程や膨張行程における燃焼室内の圧力をより低減できる。この結果、内燃機関の自動停止中に おけるクランク軸の回転フリクションをより低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率をより向上することができる。
【0015】
また、フリクション低減手段を備える本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置において、前記フリクション低減手段は、少なくとも前記気筒が圧縮行程となるときに前記吸気弁および前記排気弁の少なくとも一方を強制的に開状態とするデコンプ装置を有するものとすることもできる。
こうすれば、圧縮行程におけるシリンダボア内の空気を逃がして圧縮行程における燃焼室内の圧力を低減できる。 この結果、内燃機関の自動停止中におけるクランク軸の回転フリクションを低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【0016】
また、本発明の自動車は、駆動軸に出力される動力により走行可能な自動車であって、 上記何れかの態様の内燃機関の自動停止始動制御装置を備える内燃機関と、該内燃機関の前記クランク軸側に接続された入力軸と前記駆動軸に接続された出力軸とを有し、前記入力軸に入力される前記クランク軸からの動力を変速して前記出力軸側に伝達可能な変速機と、を搭載したことを要旨とする。
上述の何れかの態様の本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置を備える内燃機関を搭載するから、本発明の内燃機関の自動停止始動制御装置が奏する効果、例えば、簡易な処理により内燃機関をより迅速に再始動することができる効果や内燃機関の自動停止中における回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【0017】
また、本発明の自動車において、前記変速機は、前記クランク軸の回転に伴い圧送される作動流体の圧力を利用して、前記入力軸に入力される前記クランク軸からの動力を変速して前記出力軸側に伝達するものとすることもできる。
この場合、内燃機関の自動停止中もクランク軸の回転に伴い作動流体を圧送することができるから、内燃機関の自動停止中に作動させる電動ポンプ等が必要なく、部品点数の削減および制御の簡易化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動制御方法は、所定の停止条件が成立したときには内燃機関における燃料噴射および点火を停止して該内燃機関の運転を自動停止し、該自動停止された前記内燃機関の運転を所定の始動条件が成立したときに該内燃機関における燃料噴射および点火を再開して該内燃機関の運転を自動始動する内燃機関の自動停止始動制御方法であって、
(a)前記所定の停止条件が成立したと判定されたときには、前記クランク軸を回転駆動するよう駆動制御するとともに各気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を停止するよう前記内燃機関を運転制御し、
(b)前記内燃機関の運転を自動停止中に前記所定の始動条件が成立したと判定したときには、前記クランク軸の回転に基づき燃料噴射時期にあると判定された気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を開始するよう前記内燃機関を運転制御することを要旨とする。
【0019】
この本発明の内燃機関の自動停止始動制御方法では、所定の停止条件が成立したと判定されたときにはクランク軸を回転駆動するよう駆動制御するとともに各気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を停止するよう内燃機関を運転制御し、内燃機関の運転が自動停止中に所定の始動条件が成立したと判定したときには燃料噴射時期にあると判定された気筒の吸気ポートへの燃料噴射と点火とを開始するよう内燃機関を運転制御する。
このように、内燃機関の運転が自動停止中もクランク軸を回転して、常に燃料噴射時期にある気筒を把握できるから、内燃機関の再始動を迅速なものとすることができる。しかも、始動時の燃料噴射制御および点火制御は、内燃機関の運転中における通常の燃料噴射制御および点火制御と同じで良いため制御が煩雑なものとなることもない。
【0020】
また、本発明の内燃機関の自動停止始動制御方法において、前記ステップ(a)は、前記回転駆動手段を駆動制御する際に、前記内燃機関の吸気バルブの開位置および/または前記内燃機関の排気バルブの開位置を進角させる進角処理および/または前記吸気バルブの閉位置および/または前記排気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理を実行するステップであるものとすることもできる。
こうすれば、吸気行程や圧縮行程,膨張行程,排気行程においてシリンダボア内の空気を逃がすことができるから、クランク軸の回転に伴うピストンの上昇や下降時における燃焼室内の圧力を低減できる。この結果、内燃機関の運転の自動停止中におけるクランク軸の回転フリクションを低減でき、回転駆動手段のエネルギー効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、自動車の構成の概略図である。
実施例の自動車1は、ガソリンにより駆動するエンジン2と、エンジン2をコントロールするエンジン用電子制御ユニット(以下エンジンECUという。)3と、エンジン2の出力軸に接続されたトルクコンバータ5と、トルクコンバータ5の出力側に接続されエンジン2からの動力を無段階に変速してディファレンシャルギヤ8を介して車輪10の駆動軸9に出力する無段変速機(CVT)7と、この無段変速機(CVT)7の変速を制御するCVT用電子制御ユニット(CVTECUという。)11と、エンジン2のクランク軸4と動力のやり取りを行うモータジェネレータ12と、このモータジェネレータ12と電力のやり取りを行うバッテリ13と、エンジン2の始動や停止,モータジェネレータ12の駆動などを制御する車両用電子制御ユニット15とを備える。
自動車1は、この他に、エンジン2を構成する各部位の潤滑に用いられたり後述する可変バルブタイミング機構(VTC)を駆動するための油圧を発生したりするオイルを循環させるオイルポンプ6や無段変速機(CVT)7の入力軸7aに接続されてエンジン2からの動力を用いて無段変速機(CVT)7を駆動するためのライン油圧を発生させる機械式オイルポンプ80を備える。
【0022】
エンジン2は、ガソリンなどの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン2のクランク軸4には、スタータモータ14が取り付けられているとともにモータジェネレータ12がベルト16を介して取り付けられている。
また、エンジン2には、図2に示すように、インジェクタ(燃料噴射弁)26が吸気通路24aに設けられて、インジェクタ(燃料噴射弁)26から吸気弁25の手前の吸気ポート24にガソリンを噴射するように構成されている。
エンジン2内で、図示しないエアクリーナーおよびスロットルバルブを介して吸気通路24a内に吸入された空気は、吸気ポート24でインジェクタ26から噴射されたガソリンと混合して混合気となり、この混合気は吸気弁25が開くことにより燃焼室Sへ吸入され、点火プラグ52のスパークによって点火されて爆発燃焼し、その燃焼エネルギーによりピストン42が往復動してクランク軸4を回転運動させる。また、燃焼後の排気は、排気弁28が開くことにより燃焼室Sから排気通路27aを通り排出される。
【0023】
なお、図3は、エンジン2の正面図であり、図4は、エンジン2の側面縦断面拡大構成図である。
図4に示すように、エンジン2は本実施例では4気筒エンジンであり、エンジン2のシリンダブロック22内には、クランク軸4が回転可能に設けられ、このクランク軸4の軸線方向に図示左側から右側に向かって、一番気筒を構成する一番シリンダボア41a,二番気筒を構成する二番シリンダボア41b,三番気筒を構成する三番シリンダボア41c,四番気筒を構成する四番シリンダボア41dが並設されており、それぞれのシリンダボア41a,41b,41c,41d内には、クランク軸4に各コンロッド43a,43b,43c,43dを介して連繋された第1ピストン42a,第2ピストン42b,第3ピストン42c,第4ピストン42dがそれぞれ上下方向に摺動可能に設けられている。
【0024】
一番シリンダボア41aと二番シリンダボア41b間のボア壁44、二番シリンダボア41bと三番シリンダボア41c間のボア壁45、および、三番シリンダボア41cと四番シリンダボア41d間のボア壁46には、それぞれ肉厚の基部の上部にクランク軸4の軸線方向に貫通して一番シリンダボア41aから四番シリンダボア41dまでを連通する連通孔44a,45a,46aが貫通形成されている。この連通孔44a,45a,46aは、各ピストン42a,42b,42c,42dが下降する時にクランク室の圧力が増大するのを抑制するための通気孔として形成されている。
また、各ボア壁44,45,46の基部の下端側には軸受部が形成され、この軸受部にそれぞれ軸受部材47,47,47を介してクランク軸4のジャーナル部4a,4a,4aが回転可能に支承されている。なお、各軸受部材47の下端には、それぞれ下方からベアリングキャップが嵌め込まれている。
【0025】
エンジン2の各気筒41a,41b,41c,41dは吸気行程,圧縮行程,膨張行程,排気行程を1サイクルとして、このサイクルを順次繰り返すものであり、クランク軸4が半回転、つまり180度回転する毎に行程が切り替わり、クランク軸4が2回転する毎に1サイクル進む。また、4つの気筒の点火タイミングは、例えば一番気筒41a,二番気筒41b,四番気筒41d,三番気筒41cという順であり、従って、例えば一番気筒41aが膨張行程にある時、二番気筒41bは圧縮行程,三番気筒41cは排気行程,四番気筒41dは吸気行程となる。
【0026】
なお、図4では、一番気筒41aの第1ピストン42aが上昇して排気行程にあり、二番気筒41bのピストン42bは下降して吸気行程にあり、三番気筒41cのピストン42cは下降して膨張行程にあり、四番気筒41dのピストン42dは上昇して圧縮行程にある場合を例示している。
エンジン2は4サイクルエンジンであるため、原則的には吸気弁25は吸気行程での上死点で開き、下死点で閉じ、排気弁28は排気行程での下死点で開き、上死点で閉じるが、実際には弁動作に遅れが生じたり、吸気や排気が慣性の影響を受けたりするため、これより早めに開き、遅めに閉じるように設定されている。
【0027】
クランク軸4の一端には、図3に示すように、クランク軸スプロケット33とシグナルロータ37とが取り付けられており、クランク軸2とクランク軸スプロケット33およびシグナルロータ37とが一体になって回転するようになっている。このクランク軸スプロケット33はタイミングチェーン34を介して吸気カム軸29の一端に取り付けられたカムスプロケット及び排気カム軸31の一端に取り付けられたカムスプロケット32に巻回されている。したがって、クランク軸2の回転に伴いクランク軸スプロケット33が回転すると、その回転に伴って吸気カム軸29のカムスプロケット及び排気カム軸31のカムスプロケット32が回転し、これにより吸気カム軸29と排気カム軸31とにそれぞれ配列された図示しない吸気カムと排気カムとによって吸気バルブ25と排気バルブ28とがそれぞれ開閉する。
また、クランク軸2は、チェーン35を介してオイルポンプ6と連結している。このチェーン35についてもタイミングチェーン34と同様にクランク軸2に設けられた図示しないスプロケットとオイルポンプスプロケット6aとに掛け渡されている。従って、クランク軸2が回転すると、その回転に伴ってオイルポンプ6が駆動することにより、シリンダブロック22の底側に設けられたオイルパン36内のオイルをストレーナ6bを介して吸い上げ、油圧として可変バルブタイミング機構(VTC)30などに圧送する。
【0028】
なお、クランク軸4に設けられたシグナルロータ37には多数の歯が外周に形成されており、このシグナルロータ37の近傍にはクランク角センサ38が設けられている。このクランク角センサ38は、シグナルロータ37の外周の歯の歯数を検出しパルス信号としてエンジンECU3に出力しており、これによりクランク軸4の回転角度が検出され、エンジンECU3内ではクランク角センサ38からの信号によりエンジン2の何れの気筒41a,41b,41c,41dが吸気行程,圧縮行程,膨張行程,排気行程であるかを把握し、燃料噴射時期および点火時期にある気筒41a,41b,41c,41dに対するインジェクタ(燃料噴射弁)26の燃料噴射制御および点火プラグ52の点火制御が行われる。
【0029】
なお、吸気弁25および排気弁28には、それぞれバルブリフター25a,28aが連繋され、吸気カム軸29および排気カム軸31には複数の図示しないカムが設けられ、吸気カム軸29,排気カム軸31がそれぞれ回転することにより、カムを介してバルブリフター25a,28aがそれぞれ押圧されて、それぞれ吸気弁25,排気弁28が吸気ポート24,排気ポート27を開閉することができる。
なお、吸気カム軸29の端部には、可変バルブタイミング機構(VTC)30が取り付けられている。
【0030】
この可変バルブタイミング機構(VTC)30は、複数の図示しない羽根を有しており、各羽根の周りの部屋内に前述したオイルポンプ6からの油圧がオイルコントロールバルブ(OCV)40を介し供給されることで、吸気カム軸29を進角側あるいは遅角側の何れか側へ回動させることができる。即ち、この可変バルブタイミング機構(VTC)30によりクランク軸4と吸気カム軸29との相対的な回転位相を変更することで、吸気弁25の開閉タイミングを変更可能である。
【0031】
エンジン2は、エンジンECU3により制御されている。
エンジンECU3は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、図示しない入出力ポート及び通信ポートとを備える。エンジンECU3には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサ、例えば、前述のクランク角センサ38からのクランク角信号の他、図示しないスロットルバルブの開度,水温センサなどからの信号が入力されており、また、エンジンECU3からは、インジェクタ26への駆動信号や、吸気弁25の開閉位置を変更可能な可変バルブタイミング機構(VTC)30への制御信号や、点火プラグ52に放電電圧を印加するイグニッションコイル51への制御信号などが出力される。
なお、エンジンECU3は、車両用電子制御ユニット15と通信しており、車両用電子制御ユニット15からの制御信号によりエンジン2を運転制御するとともに必要に応じてエンジン2の運転状態に関するデータを車両用電子制御ユニット15に出力する。
【0032】
無段変速機(CVT)7は、溝幅が変更可能で入力軸7aに接続された図示しないプライマリープーリーと、同じく溝幅が変更可能で出力軸7bに接続された図示しないセカンダリープーリーと、プライマリープーリーおよびセカンダリープーリーの溝に架けられた図示しないVベルトとを備え、プライマリープーリーおよびセカンダリープーリーの溝幅を変更することにより入力軸7aの動力を無段階に変速して出力軸7bに出力する。無段変速機(CVT)7の変速比の制御は、CVT用電子制御ユニット(以下、CVTECUという。)11により行なわれている。
このCVTECU11は、車両用電子制御ユニット15と通信しており、車両用電子制御ユニット15からの制御信号によって無段変速機(CVT)7の変速比を制御するとともに必要に応じて無段変速機(CVT)7の運転状態に関するデータを車両用電子制御ユニット15に出力する。
【0033】
モータジェネレータ12は、電動機として駆動するとともに発電機としても駆動する例えば同期電動発電機として構成されており、モータジェネレータ12の回転軸に取り付けられたプーリー12aと、エンジン2のクランク軸4に取り付けられたプーリー4pとがベルト16を介し接続されている。このため、モータジェネレータ12はエンジン2からクランク軸4に出力された動力を用いて発電してバッテリ13を充電したり、バッテリ13からの電力を用いて動力をクランク軸4に出力できる。
【0034】
車両用電子制御ユニット15は、CPUを中心とするマイクロプロセッサにより構成されており、処理プログラムを記憶するROMや、一時的にデータを記憶するRAMや、入出力ポート,通信ポートを備えている。
この車両用電子制御ユニット15には、モータジェネレータ12に取り付けられた図示しないセンサからの回転数や、バッテリ13に取り付けられた図示しない温度センサからのバッテリ温度,バッテリ13の電圧センサや電流センサからの端子間電圧や充放電電流が入力され、さらに、車両用電子制御ユニット15には、車速センサ18からの車速信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ19からのシフトポジション信号,アクセルペダルの踏み込み量に対応したアクセル開度を検出するアクセルペダルポジションセンサ20からのアクセル開度信号,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ21からのブレーキペダルポジション信号などが入力ポートを介して入力される。
【0035】
車両用電子制御ユニット15からは、エンジン2のクランク軸4をクランキングするスタータモータ14への駆動信号や、モータジェネレータ12を駆動制御するための制御信号が出力ポートを介して出力されている。
また、車両用電子制御ユニット15は、前述したように、通信ポートを介してエンジンECU3やCVTECU11と接続されており、必要に応じてエンジンECU3からエンジン2の状態に関するデータやCVTECU11から無段変速機(CVT)7,トルクコンバータ5の状態に関するデータなどを受信するとともに、エンジンECU3やCVTECU11に制御信号を送信する。
【0036】
こうして構成された実施例の自動車1では、基本的には、アクセルペダルが踏み込まれていないアクセルOFFであるとともに、ブレーキペダルが踏み込まれているブレーキONの状態で、車速がゼロであるなどの所定の停止条件が成立した時に、エンジン2を自動停止し、ブレーキがOFFされるとともにアクセルがONされるなどの所定の始動条件が成立した時に、モータジェネレータ12によりエンジン2が自動始動される、所謂アイドルストップ制御が行われる。
以下、こうしたアイドルストップ制御におけるエンジン2の自動停止の際の動作について説明する。
【0037】
図5は、車両用電子制御ユニット15により実行される自動停止制御の一例を示すフローチャートである。
この自動停止制御ルーチンは所定時間毎に繰り返し実行される。このルーチンが実行されると、先ずステップS1においてフラグf1がゼロであるか否かを調べる。フラグf1はエンジン2が自動停止されているか否かを判定するためのフラグであり、フラグf1の値がゼロではない時には、エンジン2の自動停止が実行されていると判断して、本ルーチンを終了する。
ステップS1においてフラグf1がゼロである時には、ステップS2で停止条件が成立しているか否かが判定され、停止条件が成立していると判断した場合には、ステップS3でフラグf1の値が1にセットされる。
【0038】
なお、ステップS2の停止条件が成立しているか否かは、シフトポジションセンサ19からのシフトポジション信号,アクセルペダルポジションセンサ20からのアクセル開度信号,ブレーキペダルポジションセンサ21からのブレーキペダルポジション信号,車速センサ18からの車速信号などで判定され、例えばアクセルOFFであるとともにブレーキONの状態で車速がゼロなどの条件により停止条件が成立する。
【0039】
ステップS2の停止条件が成立した状態では、ステップS4でエンジン2の各気筒41a,41b,41c,41dへのインジェクタ26からの燃料噴射および点火プラグ52への点火を停止させ、同時にステップS5でモータジェネレータ12をモータリング制御する。即ち、モータジェネレータ12を回転させてエンジン2のクランク軸4を回転する。ここで、クランク軸4の回転数は、少なくとも、オイルポンプ6を駆動して可変バルブタイミング機構(VTC)30を作動可能な油圧を供給できる程度の回転数、あるいは、機械式オイルポンプ80を駆動して無段変速機(CVT)7の変速比を維持可能なライン油圧を発生できる程度の回転数の何れか高い方の回転数で回転される。
【0040】
なお、この時、ステップS6で可変バルブタイミング機構(VTC)30を駆動して、吸気弁25の閉位置が通常のエンジン運転時の遅角側よりも更に遅角側の位置となるように遅角処理を実行する。即ち、吸気弁25を吸気ポート24に対して開けて、燃焼室Sの圧力を低減させる。これにより、圧縮行程や吸気行程にあるシリンダボア41a,41b,41c,41d内の空気を逃がして、燃焼室S内の圧力を低減し、エンジン2の自動停止中におけるクランク軸4の回転フリクションを低減させて、モータジェネレータ12によるクランク軸4の回転を軽やかに行わせ、モータジェネレータ12のエネルギー効率の向上を図る。
なお、エンジン2の自動停止後に、図6に示す所定の始動条件が成立してエンジン2が自動始動される時に、ステップS7でフラグf1の値がゼロにセットされる。
【0041】
次に、図6は、車両用電子制御ユニット15により実行される自動再始動制御の一例を示すフローチャートである。
この自動再始動制御では、ステップS11でフラグf2の値がゼロか否かを判断し、ゼロではなく値が1の時には、自動再始動制御が実行されていると判断して本ルーチンを終了する。
フラグf2の値がゼロである場合には、ステップS12で始動条件が成立しているか否かを判断する。例えばブレーキポジションセンサ21からのブレーキポジション信号がOFFとなり、アクセルペダルポジションセンサ20からのアクセル開度信号がONなどの始動条件が成立しているか否かが判定される。
【0042】
始動条件が成立した時には、ステップS13でフラグf2の値を1にし、ステップS14で、クランク角センサ38からの信号により吸気行程にある何れかの気筒41a,41b,4c,41dを認識し、ステップS15で、可変バルブタイミング機構(VTC)30を作動させて吸気行程にある気筒の吸気弁25の閉位置を通常の始動時位置となるように遅角処理を行う。即ち、前記ステップS6で遅角処理した吸気弁25の閉位置を通常の状態に戻す処理を行い、ステップS16で、吸気行程にある気筒に対しインジェクタ26から燃料を噴射するとともに、当該気筒が圧縮行程となった時に点火プラグ52よりスパークを発生させて爆発燃焼させる。
【0043】
ステップS17でエンジン2が再始動したか否かが判定され、エンジン2が再始動したことが確認された時には、ステップS18でフラグf2の値をゼロにセットし、モータジェネレータ12によるクランク軸4の回転駆動を停止させる。即ち、このステップS19の後は、モータジェネレータ12はエンジン2の回転により駆動されて発電する発電機として機能し、バッテリ13を良好に充電できるものである。
【0044】
このように本実施例の自動車1では、所定の停止条件が成立したと判定された時には、モータジェネレータ12によりクランク軸4を回転駆動するよう制御するとともに、各気筒41a,41b,41c,41dの吸気ポート24への燃料噴射および点火を停止するよう制御し、エンジン2の運転が自動停止中に所定の始動条件が成立したと判定した時には、燃料噴射時期にあると判定された気筒41a,41b,41c,41dの吸気ポート24への燃料噴射と点火とを開始するように制御する。
このように、エンジン2の運転が自動停止中もクランク軸4を回転させて、クランク角センサ38からの信号により常に燃料噴射時期および点火時期にある気筒41a,41b,41c,41dを把握できるから、エンジン2の再始動時の燃料噴射時期および点火時期にある気筒41a,41b,41c,41dに対する燃料噴射および点火が的確に行われて、エンジン2の再始動を迅速なものとすることができる。しかも、再始動時の燃料噴射制御および点火制御は、エンジン2の運転中における通常の燃料噴射制御および点火制御と同じで良いため制御が煩雑なものとなることもない。
また、エンジン2の運転が自動停止中も機械式オイルポンプ80を駆動できるから、エンジン2の運転が自動停止中もライン油圧を発生させることができる。この結果、エンジン2の運転が自動停止中にライン油圧を発生させるために電動オイルポンプ等を別途設ける必要がなく、部品点数の削減や制御の簡易化を図ることができる。
【0045】
また、本実施例の自動車1では、エンジン2の自動停止制御時に、可変バルブタイミング機構(VTC)30により吸気弁25の閉位置を遅角側の位置となるようにして、吸気行程から圧縮行程に切り替わっても吸気弁25を開状態にするから、圧縮行程でシリンダボア内の空気を逃がして圧縮行程における燃焼室S内の圧力を低減させることができて、エンジン2の自動停止中におけるクランク軸4の回転フリクションを低減させることができ、モータジェネレータ12のエネルギー効率を向上させることができる。
さらに、エンジン2には、各気筒41a,41b,41c,41d同士をクランク軸4の軸方向に連通する連通孔44a,45a,46aが設けられているため、ピストン42a,42b,42c,42d下降時にクランク室内の圧力が増大することによるポンピングロスの増大を防止でき、エンジン2の自動停止中におけるクランク軸4の回転フリクションを低減させることができ、モータジェネレータ12のエネルギー効率を向上させることができる。
【0046】
なお、本実施例の自動車1では、エンジン2の自動停止制御を行う際に、モータジェネレータ12でクランク軸4を回転駆動するものとしたが、モータジェネレータ12に代えて、スタータモータ14を用いて自動停止制御時にクランク軸4を回転させるように構成しても良い。
【0047】
また、本実施例の自動車1では、エンジン2の吸気カム軸29側に可変バルブタイミング機構(VTC)30を設けて、自動停止制御および自動再始動制御時に吸気弁25の閉位置を遅角側の位置となるように制御するものとしたが、可変バルブタイミング機構(VTC)30を排気カム軸31側に設けて、自動停止制御および自動再始動制御時に排気弁28の閉位置を遅角側の位置となるように制御しても良い。
【0048】
また、吸気カム軸29および排気カム軸31にそれぞれ可変バルブタイミング機構(VTC)30,30を設けて、吸気カム軸29側に設けた可変バルブタイミング機構(VTC)30と排気カム軸31側に設けた可変バルブタイミング機構(VTC)30を同時に遅角側へ作動させて、自動停止制御時の圧縮行程において吸気弁25を通常よりもより長く開くように制御するとともに、吸気行程において排気弁28を通常よりも長く開くように制御することもでき、また、吸気弁25あるいは排気弁28の何れか側のみを通常よりも長く開くように制御することもできる。
更には、可変バルブタイミング機構(VTC)30を進角側に作動させる進角処理により、吸気弁25あるいは排気弁28の開位置を通常よりも進角側の位置となるように制御して、エンジン2の自動停止時の排気行程において吸気弁25を通常よりも早く開くように制御するとともに、膨張行程において排気弁28を通常よりも早く開くように制御することもできる。
【0049】
なお、このように実施例の自動車1では、エンジン2の自動停止制御時に可変バルブタイミング機構(VTC)30により吸気弁25や排気弁28の開位置や閉位置を通常よりも進角側や遅角側となる処理をして、エンジン2の自動停止中におけるクランク軸4の回転フリクションを低減させ、モータジェネレータ12のエネルギー効率の向上を図っているが、図7に示すように、デコンプ装置50をエンジン2に備えることにより、自動停止制御時のエンジン2の自動停止中におけるクランク軸4の回転フリクションを低減させることができる。
【0050】
即ち、図7では、排気カム軸31の下方の、排気弁28のバルブリフター28aの上端側にデコンプ装置50が設けられており、このデコンプ装置50は、軸50aに半円形の半円カム50bが設けられたものであり、このデコンプ装置50の軸50aを回転させて、半円カム50bでバルブリフター28aを下方側へ押圧して強制的に排気弁28を押し下げ、排気弁28を開けることができる。
このデコンプ装置50により排気弁28が強制的に開けられている状態では、エンジン2の自動停止中における燃焼室Sの圧力が低減されて、クランク軸4をモータジェネレータ12で軽く回転させることができ、モータジェネレータ12のエネルギー効率が向上するものとなる。また、エンジン2を再始動させる際にも、始動時に負荷がかからず、エンジン2の始動が容易なものとなる。
その他の構成は、図2のものと同一であり、同一部材については同一符号を付してその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】自動車の構成の概略図である。
【図2】エンジンの概略構成図である。
【図3】エンジンの正面側の構成図である。
【図4】エンジンの側面側から視た縦断面拡大構成図である。
【図5】車両用電子制御ユニットにより実行される自動停止制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】車両用電子制御ユニットにより実行される自動再始動制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】エンジンにデコンプ装置を設けた場合の図2に対応したエンジンの概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 自動車
2 エンジン
3 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)
4 クランク軸
4a ジャーナル部
4p プーリー
5 トルクコンバータ
6 オイルポンプ
6b ストレーナ
7 無段変速機(CVT)
9 駆動軸
10 車輪
11 CVT用電子制御ユニット(CVTECU)
12 モータジェネレータ
12a プーリー
13 バッテリ
14 スタータモータ
15 車両用電子制御ユニット
16 ベルト
18 車速センサ
19 シフトポジションセンサ
20 アクセルペダルポジションセンサ
21 ブレーキペダルポジションセンサ
24 吸気ポート
24a 吸気通路
25 吸気弁
25a,28a バルブリフター
26 インジェクタ(燃料噴射弁)
27 排気ポート
27a 排気通路
28 排気弁
29 吸気カム軸
30 可変バルブタイミング機構(VTC)
31 排気カム軸
32 スプロケット
33 クランク軸スプロケット
34 タイミングチェーン
35 チェーン
36 オイルパン
37 シグナルロータ
38 クランク角センサ
39 油路
40 オイルコントロールバルブ(OCV)
41a 一番シリンダボア(一番気筒)
41b 二番シリンダボア(二番気筒)
41c 三番シリンダボア(三番気筒)
41d 四番シリンダボア(四番気筒)
42a,42b,42c,42d ピストン
43a,43b,43c,43d コンロッド
44a,45a,46a 連通孔
47 軸受部材
50 デコンプ装置
50a 軸
50b 半円カム
51 イグニッションコイル
52 点火プラグ
S 燃焼室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の停止条件が成立したときには内燃機関における燃料噴射および点火を停止して該内燃機関の運転を自動停止し、該自動停止された前記内燃機関の運転を所定の始動条件が成立したときに該内燃機関における燃料噴射および点火を再開して該内燃機関の運転を自動始動する内燃機関の自動停止始動制御装置であって、
前記所定の停止条件が成立したか否かを判定する停止条件判定手段と、
前記内燃機関の運転が自動停止中に前記所定の始動条件が成立したか否かを判定する始動条件判定手段と、
前記内燃機関のクランク軸を回転駆動可能な回転駆動手段と、
前記クランク軸の回転に基づき燃料噴射時期にある気筒を判定する気筒判定手段と、
燃料噴射時期にあると判定された前記気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を行って前記内燃機関を運転制御する運転制御手段と、
前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときには、前記クランク軸を回転駆動するよう前記回転駆動手段を駆動制御するとともに各気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を停止するよう前記運転制御手段を制御し、前記始動条件判定手段により前記所定の始動条件が成立したと判定したときには、燃料噴射時期にあると判定された前記気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を開始するよう前記運転制御手段を制御する制御手段と、
を備える内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項2】
前記回転駆動手段は、前記内燃機関のスタータモータである請求項1記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項3】
前記回転駆動手段は、前記クランク軸の回転エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリに蓄える機能と前記バッテリの電気エネルギーを前記クランク軸の回転エネルギーに変換する機能を備えたモータジェネレータである請求項1または2記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項4】
少なくとも前記内燃機関の運転が自動停止中に前記クランク軸の回転フリクションを低減可能なフリクション低減手段を備える請求項1乃至3何れか記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項5】
前記フリクション低減手段は、少なくとも一部がピストン摺動面に開口するとともに前記各気筒同士を前記クランク軸の軸方向に連通する連通孔を有する手段である請求項4記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項6】
前記フリクション低減手段は、前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときには、前記内燃機関の吸気バルブの開位置および/または前記内燃機関の排気バルブの開位置を進角させる進角処理および/または前記吸気バルブの閉位置および/または前記排気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理を実行する手段である請求項4または5記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項7】
前記クランク軸の回転に伴って回転する第1の回転体と、該第1の回転体の回転力を前記吸気バルブを開閉する吸気カム軸に伝達する第2の回転体と、前記第1の回転体の回転力を前記排気バルブを開閉する排気カム軸に伝達する第3の回転体と、前記第1の回転体と前記第2の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な吸気バルブタイミング可変手段および/または前記第1の回転体と前記第3の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記排気バルブの開閉タイミングを変更可能な排気バルブタイミング可変手段と、を備える請求項6記載の内燃機関の自動停止始動制御装置であって、
前記フリクション低減手段は、前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されさたときに 前記吸気バルブタイミング可変手段によって前記吸気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理および/または前記排気バルブタイミング可変手段によって前記排気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理を実行する遅角処理実行手段を有する手段である
内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項8】
前記遅角処理実行手段は、前記内燃機関の運転中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの閉位置よりも前記内燃機関の運転の自動停止中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの閉位置の方がより遅角側となるよう遅角処理を実行する手段である請求項7記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項9】
前記クランク軸の回転に伴って回転する第1の回転体と、該第1の回転体の回転力を前記吸気バルブを開閉する吸気カム軸に伝達する第2の回転体と、前記第1の回転体の回転力を前記排気バルブを開閉する排気カム軸に伝達する第3の回転体と、前記第1の回転体と前記第2の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な吸気バルブタイミング可変手段および/または前記第1の回転体と前記第3の回転体との相対的な回転位相を変更することにより前記排気バルブの開閉タイミングを変更可能な排気バルブタイミング可変手段と、を備える請求項6乃至8何れか記載の内燃機関の自動停止始動制御装置であって、
前記フリクション低減手段は、前記停止条件判定手段により前記所定の停止条件が成立したと判定されたときに前記吸気バルブタイミング可変手段によって前記吸気バルブの開位置を進角させる進角処理および/または前記排気バルブタイミング可変手段によって前記排気バルブの開位置を進角させる進角処理を実行する進角処理実行手段を有する手段である
内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項10】
前記進角処理実行手段は、前記内燃機関の運転中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの開位置よりも前記内燃機関の運転の自動停止中における前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブの開位置の方がより進角側となるよう進角処理を実行する手段である請求項9記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項11】
前記フリクション低減手段は、少なくとも前記気筒が圧縮行程となるときに前記吸気弁および前記排気弁の少なくとも一方を強制的に開状態とするデコンプ装置を有する請求項4または5記載の内燃機関の自動停止始動制御装置。
【請求項12】
駆動軸に出力される動力により走行可能な自動車であって、
請求項1乃至11何れか記載の内燃機関の自動停止始動制御装置を備える内燃機関と、
該内燃機関の前記クランク軸側に接続された入力軸と前記駆動軸に接続された出力軸とを有し、前記入力軸に入力される前記クランク軸からの動力を変速して前記出力軸側に伝達可能な変速機と、
を搭載した自動車。
【請求項13】
前記変速機は、前記クランク軸の回転に伴い圧送される作動流体の圧力を利用して、前記入力軸に入力される前記 クランク軸からの動力を変速して前記出力軸側に伝達する
請求項12記載の自動車。
【請求項14】
所定の停止条件が成立したときには内燃機関における燃料噴射および点火を停止して該内燃機関の運転を自動停止し、該自動停止された前記内燃機関の運転を所定の始動条件が成立したときに該内燃機関における燃料噴射 および点火を再開して該内燃機関の運転を自動始動する内燃機関の自動停止始動制御方法であって、
(a)前記所定の停止条件が成立したと判定されたときには、前記クランク軸を回転駆動するよう駆動制御するとともに各気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を停止するよう前記内燃機関を運転制御し、
(b)前記内燃機関の運転を自動停止中に前記所定の始動条件が成立したと判定したときには、前記クランク軸の 回転に基づき燃料噴射時期にあると判定された気筒の吸気ポートへの燃料噴射および点火を開始するよう前記内燃機関を運転制御する
内燃機関の自動停止始動制御方法。
【請求項15】
前記ステップ(a)は、前記回転駆動手段を駆動制御する際に、前記内燃機関の吸気バルブの開位置および/または前記内燃機関の排気バルブの開位置を進角させる進角処理および/または前記吸気バルブの閉位置および/または前記排気バルブの閉位置を遅角させる遅角処理を実行するステップである
請求項14記載の内燃機関の自動停止始動制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−133336(P2010−133336A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310287(P2008−310287)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390009896)愛知機械工業株式会社 (190)
【Fターム(参考)】