説明

内燃機関用制御装置

【課題】 アイドルストップ機能を有する車両に搭載された各種アクチュエータ等の位置情報の学習、異常検出や初期化の頻度を増すこと。
【解決手段】 内燃機関1がアイドル時に自動停止中となると、電動モータ4によってスロットルバルブ5が全閉位置に駆動され、このときのスロットルバルブ5の位置情報がスロットル開度センサ22のスロットル開度TAとして検出される。このスロットル開度TAに基づくスロットルバルブ5の全閉位置と目標スロットル開度の全閉位置に対応する指令値とに偏差があるとその分だけズレているとして、全閉位置に対応する出力値が学習される。このため、内燃機関1がアイドル時の自動停止後に自動始動された際、スロットルバルブ5の開度位置に対応するスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAのズレが解消され、学習の頻度が増すことで制御性の良い、かつ信頼性の高いシステムを構築することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関をアイドル時に自動停止させ、こののち自動始動させるアイドルストップ機能を有する内燃機関用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関用制御装置に関連する先行技術文献としては、特開平1−129133号公報にて開示されたものが知られている。このものでは、内燃機関用制御装置への電源供給の断続をするEGiリレーの異常(故障)時に、ソフト的にバックアップデータの内容を自己診断することによりその異常を検出する技術が示されている。
【特許文献1】特開平1−129133号公報(第1頁〜第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述のものでは、EGiリレーの正常時には、イグニッションスイッチ(IGNスイッチ)オフとなるとEGiリレーオフの準備を行い、所定時間後にバックアップRAMにデータAを書込み、他の処理を行なった後にEGiリレーオフ信号を駆動回路に出力し、内燃機関用制御装置の電源を切断する。一方、EGiリレーの異常時には、イグニッションスイッチオフに連動して内燃機関用制御装置の電源が切断されてしまうためバックアップRAMにデータAが書込めないこととなる。そこで、イグニッションスイッチオンの始動時におけるバックアップRAMのデータ内容によってEGiリレーの異常を検出するものである。このため、車両の走行途中でイグニッションスイッチオンの状態にあっては、EGiリレー等を含む車両に搭載された各種アクチュエータ等に異常が生じても検出することができないという不具合があった。
【0004】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、アイドルストップ機能を有する車両に搭載されている各種アクチュエータ等の異常検出、また、位置情報の学習や初期化を車両の走行途中にも実行可能とすることで、その頻度が増すことによる信頼性の向上、更には、リレー回路等の構成の簡素化が図られることでコストダウン可能な内燃機関用制御装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の内燃機関用制御装置によれば、自動始動停止制御手段による車両に搭載された内燃機関のアイドル時の自動停止中に、駆動手段により車両に搭載されたアクチュエータが予め設定された所定位置に駆動され、そのときの位置情報が車両に搭載されたスイッチを含むセンサ類にて検出され、その出力値が学習手段により学習される。つまり、アクチュエータの位置情報に対応するスイッチを含むセンサ類からの出力値が本来の位置情報に対応する出力値からズレているときには、所定位置に対応する出力値が更新され学習される。このため、内燃機関がアイドル時の自動停止後に自動始動された際、アクチュエータの位置情報に対応するスイッチを含むセンサ類からの出力値のズレが解消されていることとなり制御性の良いシステムが構築される。
【0006】
請求項2の内燃機関用制御装置における学習手段では、内燃機関がアイドル時の自動停止中で、電子スロットルシステムにおけるアクチュエータが駆動されたときのスロットル開度センサからの出力値により、スロットルバルブの全閉位置が的確に学習される。
【0007】
請求項3の内燃機関用制御装置によれば、自動始動停止制御手段による車両に搭載された内燃機関のアイドル時の自動停止中に、駆動手段により車両に搭載されたアクチュエータが予め設定された所定位置に駆動され、そのときの位置情報が車両に搭載されたスイッチを含むセンサ類にて検出され、その出力値に基づきアクチュエータの異常が検出される。つまり、アクチュエータの位置情報に対応するスイッチを含むセンサ類からの出力値が本来の位置情報に対応する出力値からズレているときには、アクチュエータの異常であると分かる。このように、内燃機関がアイドル時の自動停止中にアクチュエータの異常が検出されることで、信頼性の高いシステムが構築される。
【0008】
請求項4の内燃機関用制御装置における異常検出手段では、内燃機関がアイドル時の自動停止中で、電子スロットルシステムにおけるアクチュエータが停止状態であるときに、スロットルバルブの開度位置に対応するスロットル開度センサからの出力値が所定開度位置でなく、その開度位置よりも閉側にあるときには、スロットルバルブを所定開度位置に設定するためのオープナスプリングの異常であると検出される。
【0009】
請求項5の内燃機関用制御装置における異常検出手段では、内燃機関がアイドル時の自動停止中で、電子スロットルシステムにおけるアクチュエータが停止状態であるときに、スロットルバルブの開度位置に対応するスロットル開度センサからの出力値が所定開度位置でなく、その開度位置よりも開側にあるときには、スロットルバルブを所定開度位置に戻すためのリターンスプリングの異常であると検出される。
【0010】
請求項6の内燃機関用制御装置における異常検出手段では、内燃機関がアイドル時の自動停止中で、スワールコントロールバルブまたはタンブルバルブをアクチュエータにより駆動するときの異常がスイッチを含むセンサ類からの出力値に基づき検出される。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関がアイドル時に自動停止されたときに、アクチュエータを含むスワールコントロールバルブまたはタンブルバルブの正常/異常が的確に検出される。
【0011】
請求項7の内燃機関用制御装置における異常検出手段では、内燃機関がアイドル時の自動停止中で、吸気系特性切換バルブをアクチュエータにより駆動するときの異常がスイッチを含むセンサ類からの出力値に基づき検出される。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関がアイドル時に自動停止されたときに、アクチュエータを含む吸気系特性切換バルブの正常/異常が的確に検出される。
【0012】
請求項8の内燃機関用制御装置によれば、自動始動停止制御手段による車両に搭載された内燃機関のアイドル時の自動停止中に、初期化実行手段により車両に搭載されたアクチュエータが予め設定された初期位置に駆動され、アクチュエータの初期化が実行される。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関がアイドル時に自動停止されたときに、他への影響を及ぼすことなく、アクチュエータに対する適切な初期化が行なわれる。
【0013】
請求項9の内燃機関用制御装置における初期化実行手段では、アクチュエータがステップモータ式アクチュエータとされる。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関がアイドル時に自動停止されたときに、他への影響を及ぼすことなく、ステップモータ式アクチュエータが初期位置に駆動されることで初期化が行なわれ初期位置が適正化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施例にかかる内燃機関用制御装置が適用された内燃機関及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【0016】
図1において、内燃機関1は例えば、4サイクル4気筒の火花点火式として構成され、その吸入空気は最上流部に配設されたエアクリーナ2にて浄化されたのち吸気通路3内に導入される。吸気通路3途中には、アクセル操作等に応じて電動モータ4が駆動されスロットルバルブ5の開度が制御される周知の電子スロットルシステムが搭載されている。このスロットルバルブ5にて調整された吸入空気はサージタンク6及びインテークマニホルド7を通過し、インテークマニホルド7内でインジェクタ(燃料噴射弁)8から噴射供給される燃料と混合され、所定空燃比の混合気として各気筒内に供給される。
【0017】
また、サージタンク6の下流側の吸気通路3途中の側壁には、経路長変更配管9が接続されている。この経路長変更配管9の一端には、アクチュエータとしての電動モータ10にて駆動され、吸気通路3のみの場合と吸気通路3に経路長変更配管9が考慮された場合との2経路のうち何れか一方となるよう吸気系の経路長を切換変更する吸気系特性切換バルブ11が配設されている。この吸気系特性切換バルブ11により内燃機関1の運転状態に応じて吸気系の経路長が切換変更されることにより、内燃機関1の吸気脈動が抑制され各気筒の充填効率が向上される。
【0018】
そして、インジェクタ8の上流側のインテークマニホルド7内には、内燃機関1の気筒内のスワール流を制御するため、アクチュエータとしての電動モータ12にて開閉駆動されるSCV(Swirl Control Valve:スワールコントロールバルブ)13が配設されている。このSCV13により内燃機関1の運転状態に応じて吸気流速が上昇され、気筒内の混合気の攪拌効率が向上される。
【0019】
内燃機関1の各気筒に設けられた点火プラグ14に直接、接続された点火コイル15には、後述のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)30からの点火信号が入力され、気筒内の混合気が点火プラグ14の火花点火によって所定タイミングにて燃焼される。この燃焼後の排気ガスはエキゾーストマニホルド16及び排気通路17を通過し、排気通路17に設けられ、白金やロジウム等の触媒成分とセリウムやランタン等の添加物を担持した三元触媒18にて有害成分であるCO,HC,NOx 等が浄化され大気中に排出される。
【0020】
更に、エキゾーストマニホルド16とインテークマニホルド7との間には、排気ガスの一部を吸気側に戻すためのEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)配管19が接続され、このEGR配管19途中には、EGR量を調整するEGRバルブ20が配設されている。このEGRバルブ20によりEGR配管19を通過するEGR量が調整されることで燃費が向上されると共に、排気ガス中のNOx が低減される。
【0021】
エアクリーナ2の下流側の吸気通路3にはエアフローメータ21が設けられ、このエアフローメータ21にてエアクリーナ2を通過する吸入空気量GA〔g/sec〕が検出される。また、スロットルバルブ5にはスロットル開度センサ22が設けられ、このスロットル開度センサ22にてスロットル開度TA〔°〕が検出される。そして、サージタンク6には吸気圧センサ23が設けられ、この吸気圧センサ23にて吸気圧PM〔kPa〕が検出される。更に、内燃機関1のシリンダブロックには水温センサ26が設けられ、この水温センサ26にて内燃機関1の冷却水温THW〔℃〕が検出される。
【0022】
また、内燃機関1のクランクシャフト(図示略)にはクランク角センサ27が設けられ、このクランク角センサ27からのクランク角〔°CA(Crank Angle)〕信号に基づき内燃機関1の機関回転速度NE〔rpm〕が検出される。そして、排気通路17に設けられた三元触媒18の上流側には空燃比(A/F)センサ28が設けられ、この空燃比センサ28にて内燃機関1から排出される排気ガスの空燃比λに応じたリニアな電圧VOX1が検出される。加えて、アクセル開度センサ29にて運転者のアクセルペダル踏込量に相当するアクセル開度Ap〔°〕が検出される。
【0023】
内燃機関1の運転状態を制御するECU30は、周知の各種演算処理を実行する中央処理装置としてのCPU31、制御プログラムや制御マップ等を格納したROM32、各種データ等を格納するRAM33、B/U(バックアップ)RAM34、入出力回路35及びそれらを接続するバスライン36等からなる論理演算回路として構成されている。
【0024】
ECU30には、入出力回路35を介してエアフローメータ21からの吸入空気量GA、スロットル開度センサ22からのスロットル開度TA、吸気圧センサ23からの吸気圧PM、水温センサ26からの冷却水温THW、クランク角センサ27からの機関回転速度NE、空燃比センサ28からの電圧VOX1、アクセル開度センサ29からのアクセル開度Ap等の各種センサ信号が入力される。
【0025】
ECU30では、これら各種センサ信号に基づいてスロットルバルブ5の電動モータ4に対する駆動信号DV、インジェクタ8に対する燃料噴射信号TAU、吸気系特性切換バルブ11の電動モータ10に対する切換駆動信号CV、SCV13の電動モータ12に対する駆動信号SV、点火プラグ14に接続された点火コイル15に対する点火信号Ig、EGRバルブ20に対する駆動信号Ie等が算出され、入出力回路35を介してスロットルバルブ5の電動モータ4、インジェクタ8、吸気系特性切換バルブ11の電動モータ10、SCV13の電動モータ12、点火コイル15、EGRバルブ20等に各制御信号が出力される。
【0026】
次に、本発明の一実施例にかかる内燃機関用制御装置で使用されているECU30内のCPU31による電子スロットルシステムにおけるスロットルバルブ5に対する全閉位置学習(以下、単に『電子スロットル全閉位置学習』と記す)の処理手順を示す図2のフローチャートに基づき、図3を参照して説明する。ここで、図3は図2の処理に対応する各種センサ信号や各種制御量等の遷移状態を示すタイムチャートである。なお、この電子スロットル全閉位置学習ルーチンは所定時間毎にCPU31にて繰返し実行される。
【0027】
図2において、まず、ステップS101で、アイドルストップ実行条件が成立するかが判定される。ここで、アイドルストップ実行条件としては、図示しないブレーキペダル踏込みによりブレーキスイッチが「ON(オン)」、かつ図示しない車速センサによる車速が「0(零)〔km/h〕」等である。ステップS101では、アイドルストップ実行条件の成立により、アイドルストップ実行フラグが「OFF(オフ)」から「ON」となるまで待ってステップS102に移行する(図3に示す時刻t1 )。
【0028】
ステップS102では、電子スロットル全閉位置学習実行条件が成立するかが判定される。ここで、電子スロットル全閉位置学習実行条件としては、アイドルストップ実行フラグが「ON」であり、図示しない車載バッテリのバッテリ電圧が所定値以上と安定していること等が挙げられる。ステップS102の判定条件が成立しないときには、何もすることなく本ルーチンを終了する。
【0029】
一方、ステップS102の判定条件が成立、即ち、電子スロットル全閉位置学習実行条件の成立により、電子スロットル全閉位置学習実行フラグが「ON」となるとステップS103に移行する(図3に示す時刻t2 )。ステップS103では、電子スロットル全閉位置学習処理として、現在の目標スロットル開度TTAが全閉位置に対応する指令値となるまで徐変される(図3に示す時刻t2 〜時刻t3 )。この目標スロットル開度TTAに従って電動モータ4が駆動され、スロットルバルブ5が現在の開度位置から全閉位置まで変化される。
【0030】
これに伴って、スロットルバルブ5の開度位置としてスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAが逐次読込まれる。そして、目標スロットル開度TTAの全閉位置に対応する指令値とスロットルバルブ5の全閉位置に対応するスロットル開度センサ22からの出力値としてのスロットル開度TAとの偏差が算出される(図3に示す時刻t3 〜時刻t4 )。この所要時間は、偏差が安定して算出されるよう予め設定されており、この偏差に基づき全閉位置学習値が更新される(図3に示す時刻t4 )。すると、電子スロットル全閉位置学習フラグが「ON」から「OFF」とされ、目標スロットル開度TTAがアイドルストップ以前の値に戻される。これにより、スロットルバルブ5のスロットル開度TAがアイドルストップ以前の値に戻され、本ルーチンを終了する。
【0031】
こののち、アイドルストップ実行条件が満足されなくなると、アイドルストップ実行フラグが「ON」から「OFF」とされることで、内燃機関1が自動始動され通常の運転状態に戻される(図3に示す時刻t5 )。これ以降においては、更新された全閉位置学習値がスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAに反映されることでスロットルバルブ5の開度位置が良好に制御される。なお、この全閉位置学習値のスロットル開度TAへの反映に際しては、周知の平均化(なまし)処理を実施することによってノイズ等の重畳の影響を抑制することができる。
【0032】
このように、本実施例の内燃機関用制御装置は、車両(図示略)に搭載された内燃機関1のアイドル時に、所定の自動停止条件を満足するときには、内燃機関1を自動停止させると共に、この自動停止後に所定の自動始動条件を満足するときには、内燃機関1を自動始動させるよう制御するECU30にて達成される自動始動停止制御手段と、前記自動始動停止制御手段による内燃機関1の自動停止中に、車両に搭載されたアクチュエータとしての電動モータ4によってスロットルバルブ5を予め設定された所定位置として全閉位置に駆動するECU30にて達成される駆動手段と、前記駆動手段によりアクチュエータを全閉位置に駆動したとき、スロットルバルブ5の位置情報を検出する車両に搭載されたスイッチを含むセンサ類としてスロットル開度センサ22からの出力値であるスロットル開度TAを学習するECU30にて達成される学習手段とを具備するものである。また、本実施例の内燃機関用制御装置のECU30にて達成される学習手段は、アクセル操作等に応じてアクチュエータとしての電動モータ4を駆動し、スロットルバルブ5の開度位置を制御する電子スロットルシステムにおいて、電動モータ4の駆動によるスロットルバルブ5に接続されたスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAにより、スロットルバルブ5の全閉位置を学習するものである。
【0033】
つまり、内燃機関1がアイドル時に自動停止中となると、電動モータ4によってスロットルバルブ5が全閉位置に駆動され、このときのスロットルバルブ5の位置情報がスロットル開度センサ22のスロットル開度TAとして検出される。このスロットルバルブ5の全閉位置に対応するスロットル開度センサ22からの出力値としてのスロットル開度TAと目標スロットル開度TTAの全閉位置に対応する指令値とに偏差があるとその分だけズレているとして、全閉位置に対応する出力値が更新され学習される。このため、内燃機関1がアイドル時の自動停止後に自動始動された際、スロットルバルブ5の開度位置に対応するスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAのズレが解消されていることとなり制御性の良いシステムを構築することができる。
【0034】
次に、上述の電子スロットルシステムの要部構成を示す図4の模式図を参照して説明する。
【0035】
図4に示すように、スロットルバルブ5の回動軸5aにはバルブレバー41が連結され、このバルブレバー41がオープナスプリング(退避走行用スプリング)42によってスロットルバルブ5の開方向(図4の上方向)に付勢されている。このため、図4(b)に示すモータOFF(電動モータ4への電源OFF)時には、オープナスプリング42によってバルブレバー41が中間レバー43に当接され、スロットルバルブ5の開度位置が中間ストッパ位置に設定される。このとき、中間レバー43は、リターンスプリング44によってスロットルバルブ5の閉方向(図4の下方向)に付勢され、中間ストッパ45に当接されている。
【0036】
つまり、リターンスプリング44の引張力はオープナスプリング42の引張力よりも大きく設定されている。したがって、図4(b)に示すモータOFF時には、リターンスプリング44の引張力がオープナスプリング42の引張力に打勝って、中間レバー43が中間ストッパ45に当接され、スロットルバルブ5の開度位置が中間ストッパ45で規制される中間ストッパ位置に戻される。
【0037】
一方、図4(a)に示す通常制御時(モータON時)には、アクセル操作等に応じたアクセル開度センサ29からのアクセル開度Apに基づき電動モータ4が正転または逆転されスロットルバルブ5の開度位置が調整され、そのときのスロットルバルブ5の開度位置がスロットル開度センサ22によってスロットル開度TAとして検出される。この際、スロットル開度TAを大きくする場合には、電動モータ4に正側のモータ電流が供給され電動モータ4が正転されることで、図4(a)に示すように、バルブレバー41がリターンスプリング44の引張力に抗して中間レバー43が押上げられスロットルバルブ5が開方向に駆動される。これとは逆に、スロットル開度TAを小さくする場合には、電動モータ4に負側のモータ電流が供給され電動モータ4が逆転されることで、バルブレバー41が下降されスロットルバルブ5が閉方向に駆動される。
【0038】
そして、中間レバー43が中間ストッパ45に当接されたのちのスロットルバルブ5の閉方向の駆動では、バルブレバー41がオープナスプリング42の引張力に抗して下降されると、バルブレバー41がスロットル全閉ストッパ46に当接されることで、スロットルバルブ5の開度位置が全閉位置に規定され、これ以上の回動が阻止される。
【0039】
次に、上述の電子スロットル全閉位置学習ルーチンで、アイドルストップ実行フラグが「ON」である期間、即ち、内燃機関1がアイドル時の自動停止(アイドルストップ)中において、スロットルバルブ5を駆動する電動モータ4の異常を検出する場合について説明する。
【0040】
上述の電子スロットル全閉位置学習処理と同様に、電動モータ4の駆動によりスロットルバルブ5を現在の開度位置から全閉位置まで変化させる。このとき、スロットル開度センサ22からのスロットル開度TAが本来の全閉位置に対応する出力値から大きく逸脱していると、電子スロットルシステムにおける電動モータ4に何らかの異常が生じていると判定することができる。
【0041】
このような内燃機関用制御装置は、車両(図示略)に搭載された内燃機関1のアイドル時に、所定の自動停止条件を満足するときには、内燃機関1を自動停止させると共に、この自動停止後に所定の自動始動条件を満足するときには、内燃機関1を自動始動させるよう制御するECU30にて達成される自動始動停止制御手段と、前記自動始動停止制御手段による内燃機関1の自動停止中に、車両に搭載されたアクチュエータとしての電動モータ4によってスロットルバルブ5を予め設定された所定位置として全閉位置に駆動するECU30にて達成される駆動手段と、前記駆動手段により電動モータ4によってスロットルバルブ5を全閉位置に駆動したとき、スロットルバルブ5の位置情報を検出する車両に搭載されたスイッチを含むセンサ類としてスロットル開度センサ22からの出力値であるスロットル開度TAに基づき電動モータ4の異常を検出するECU30にて達成される異常検出手段とを具備するものである。
【0042】
つまり、内燃機関1のアイドル時の自動停止中に、電動モータ4によってスロットルバルブ5が全閉位置に駆動され、このときのスロットルバルブ5の位置情報がスロットル開度センサ22のスロットル開度TAとして検出される。このとき、スロットル開度TAに基づくスロットルバルブ5の全閉位置に対応するスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAが本来の全閉位置に対応する出力値から大きくズレているときには、スロットルバルブ5を全閉位置に駆動する電動モータ4に何らかの異常が発生していると判定される。これにより、内燃機関1がアイドル時の自動停止中に例えば、警告灯の点灯によって、運転者に異常の発生を知らせることができるため、信頼性の高いシステムを構築することができる。
【0043】
次に、図4を参照して、オープナスプリング(退避走行用スプリング)42またはリターンスプリング44に折損等の異常が生じた場合について説明する。
【0044】
上述の電子スロットル全閉位置学習ルーチンで、アイドルストップ実行フラグが「ON」である期間、即ち、内燃機関1がアイドル時の自動停止(アイドルストップ)中において、図4(b)に示すように、電動モータ4が「OFF」であるときに、スロットルバルブ5を中間ストッパ位置に設定するためのオープナスプリング42に折損等の異常が生じていると、スロットルバルブ5の開度位置はリターンスプリング44にて規制される中間ストッパ位置から全閉位置までに対応する出力値がスロットル開度センサ22から出力される。つまり、スロットル開度センサ22からの出力値と中間ストッパ位置に対応する出力値との偏差が所定値より大きくなることで、オープナスプリング42に折損等の異常が生じていると判定することができる。
【0045】
このような内燃機関用制御装置のECU30にて達成される異常検出手段は、アクセル操作等に応じてアクチュエータとしての電動モータ4を駆動し、スロットルバルブ5の開度位置を制御する電子スロットルシステムにおいて、電動モータ4の停止状態におけるスロットルバルブ5に接続されたスロットル開度センサ22からの出力値により、スロットルバルブ5を所定開度位置としての中間ストッパ位置に設定するためのオープナスプリング42の折損等による異常を検出するものである。
【0046】
つまり、内燃機関1がアイドル時の自動停止中で電動モータ4が「OFF」であるときに、スロットルバルブ5の開度位置に対応するスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAが中間ストッパ位置でなく、その開度位置よりも閉側にあるときには、スロットルバルブ5の開度位置に関する異常の発生として、オープナスプリング42の折損等であると判断することができる。
【0047】
また、上述の電子スロットル全閉位置学習ルーチンで、アイドルストップ実行フラグが「ON」である期間、即ち、内燃機関1がアイドル時の自動停止(アイドルストップ)中において、図4(b)に示すように、電動モータ4が「OFF」であるときに、スロットルバルブ5を中間ストッパ位置に戻すためのリターンスプリング44に折損等の異常が生じていると、スロットルバルブ5はオープナスプリング42にて回動され、その開度位置として全開位置に対応する出力値がスロットル開度センサ22から出力される。つまり、スロットル開度センサ22から全開位置に対応する出力値が出力されることで、リターンスプリング44に折損等の異常が生じていると判定することができる。
【0048】
このような内燃機関用制御装置のECU30にて達成される異常検出手段は、アクセル操作等に応じてアクチュエータとしての電動モータ4を駆動し、スロットルバルブ5の開度位置を制御する電子スロットルシステムにおいて、電動モータ4の停止状態におけるスロットルバルブ5に接続されたスロットル開度センサ22からの出力値により、スロットルバルブ5を所定開度位置としての中間ストッパ位置に戻すためのリターンスプリング44の折損等による異常を検出するものである。
【0049】
つまり、内燃機関1がアイドル時の自動停止中で電動モータ4が「OFF」であるときに、スロットルバルブ5の開度位置に対応するスロットル開度センサ22からのスロットル開度TAが中間ストッパ位置でなく、その開度位置よりも開側にあるときには、スロットルバルブ5の開度位置に関する異常の発生として、リターンスプリング44の折損等であると判断することができる。
【0050】
更に、上述の電子スロットル全閉位置学習ルーチンにおいて、アイドルストップ実行フラグが「ON」である期間に、図1に示すSCV(スワールコントロールバルブ)13の開度位置の異常を検出することもできる。
【0051】
この場合には、アイドルストップ実行フラグが「ON」で、内燃機関1がアイドル時の自動停止中であり、吸気通路3及びインテークマニホルド7内に負圧の発生がない状態にある。そこで、SCV13が電動モータ12によって所定位置(例えば、全開位置)に駆動される。このSCV13の所定位置への駆動により、図示しないスイッチの状態が変更される。
【0052】
このような内燃機関用制御装置のECU30にて達成される異常検出手段は、電動モータ12によりSCV13を駆動するときの異常をスイッチ(図示略)の状態によって検出するものである。つまり、SCV13の電動モータ12による所定位置への駆動によりスイッチの状態が変更される。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関1がアイドル時に自動停止されたときに、電動モータ12を含むSCV13の正常/異常が的確に検出される。なお、この異常検出の手順は、SCV13に替えて図示しないタンブルバルブを用いた場合にも同様に適用され、同様の効果が期待できる。
【0053】
更にまた、上述の電子スロットル全閉位置学習ルーチンにおいて、アイドルストップ実行フラグが「ON」である期間に、図1に示す吸気系特性切換バルブ11の開度位置の異常を検出することもできる。
【0054】
この場合には、アイドルストップ実行フラグが「ON」で、内燃機関1がアイドル時の自動停止中であり、吸気通路3及びインテークマニホルド7内に負圧の発生がない状態にある。そこで、吸気系特性切換バルブ11が電動モータ10によって所定位置(例えば、吸気通路3側を閉じ、経路長変更配管9を利用する側への切換位置)に駆動される。この吸気系特性切換バルブ11の所定位置への駆動により、図示しないスイッチの状態が変更される。
【0055】
このような内燃機関用制御装置のECU30にて達成される異常検出手段は、電動モータ10により吸気系特性切換バルブ11を駆動するときの異常をスイッチ(図示略)の状態によって検出するものである。つまり、吸気系特性切換バルブ11の電動モータ10による所定位置への駆動によりスイッチの状態が変更される。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関1がアイドル時に自動停止されたときに、電動モータ10を含む吸気系特性切換バルブ11の正常/異常が的確に検出される。
【0056】
加えて、上述の電子スロットル全閉位置学習ルーチンにおいて、アイドルストップ実行フラグが「ON」である期間に、図1に示すEGRバルブ20を構成するステップモータ式アクチュエータ(図示略)の初期位置に対する初期化を実行することもできる。
【0057】
この場合には、アイドルストップ実行フラグが「ON」で、内燃機関1がアイドル時の自動停止中であり、吸気通路3及びインテークマニホルド7内に負圧やエキゾーストマニホルド16内に正圧の発生がない状態にある。そこで、EGRバルブ20の図示しないステップモータ式アクチュエータが初期位置(例えば、EGR配管19の閉塞位置)に駆動される。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関1がアイドル時に自動停止されたときにステップモータ式アクチュエータの初期位置に対する初期化が良好に行なわれる。
【0058】
このような内燃機関用制御装置は、車両(図示略)に搭載された内燃機関1のアイドル時に、所定の自動停止条件を満足するときには、内燃機関1を自動停止させると共に、この自動停止後に所定の自動始動条件を満足するときには、内燃機関1を自動始動させるよう制御するECU30にて達成される自動始動停止制御手段と、前記自動始動停止制御手段による内燃機関1の自動停止中に、車両に搭載されたEGRバルブ20のアクチュエータを予め設定された初期位置に駆動し、EGRバルブ20の初期化を実行するECU30にて達成される初期化実行手段とを具備するものである。また、このEGRバルブ20をステップモータ式アクチュエータ(図示略)とするものである。
【0059】
つまり、EGRバルブ20を構成するステップモータ式アクチュエータを初期位置に駆動することにより、ステップモータ式アクチュエータの初期化が行なわれる。これにより、車両の走行途中にあっても、内燃機関1がアイドル時に自動停止されたときに、他への影響を及ぼすことなく、EGRバルブ20のステップモータ式アクチュエータに対する適切な初期化が行なわれ、ステップモータ式アクチュエータの初期位置が適正化される。
【0060】
ところで、上記実施例では、イグニッションスイッチの「ON/OFF」に伴うリレー回路等による各種アクチュエータ等の異常を検出する自己診断機能については言及していないが、車両の走行途中でイグニッションスイッチが「ON」状態にあって、内燃機関1がアイドル時の自動停止中に、各種アクチュエータ等の異常検出、位置情報の学習や初期化がかなりの頻度にて実行されることとなるため、イグニッションスイッチの「ON/OFF」時における自己診断機能を省くこともでき、リレー回路等の構成を簡素化することも可能となり、相当なコストダウンが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は本発明の一実施例にかかる内燃機関用制御装置が適用された内燃機関及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【図2】図2は本発明の一実施例にかかる内燃機関用制御装置で使用されているECU内のCPUによる電子スロットル全閉位置学習の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は図2の処理に対応する各種センサ信号や各種制御量等の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図4】図4は本発明の一実施例にかかる内燃機関用制御装置が適用された電子スロットルシステムの要部構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 内燃機関
4 電動モータ
5 スロットルバルブ
10 電動モータ
11 吸気系特性切換バルブ
12 電動モータ
13 SCV(スワールコントロールバルブ)
20 EGRバルブ
22 スロットル開度センサ
42 オープナスプリング(退避走行用スプリング)
44 リターンスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関のアイドル時に、所定の自動停止条件を満足するときには、前記内燃機関を自動停止させると共に、この自動停止後に所定の自動始動条件を満足するときには、前記内燃機関を自動始動させるよう制御する自動始動停止制御手段と、
前記自動始動停止制御手段による前記内燃機関の自動停止中に、前記車両に搭載されたアクチュエータを予め設定された所定位置に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段により前記アクチュエータを前記所定位置に駆動したとき、前記アクチュエータの位置情報を検出する前記車両に搭載されたスイッチを含むセンサ類からの出力値を学習する学習手段と
を具備することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項2】
前記学習手段は、アクセル操作等に応じて前記アクチュエータを駆動し、スロットルバルブの開度位置を制御する電子スロットルシステムにおいて、前記アクチュエータの駆動による前記スロットルバルブに接続されたスロットル開度センサからの出力値により、前記スロットルバルブの全閉位置を学習することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項3】
車両に搭載された内燃機関のアイドル時に、所定の自動停止条件を満足するときには、前記内燃機関を自動停止させると共に、この自動停止後に所定の自動始動条件を満足するときには、前記内燃機関を自動始動させるよう制御する自動始動停止制御手段と、
前記自動始動停止制御手段による前記内燃機関の自動停止中に、前記車両に搭載されたアクチュエータを予め設定された所定位置に駆動する駆動手段と、
前記駆動手段により前記アクチュエータを前記所定位置に駆動したとき、前記アクチュエータの位置情報を検出する前記車両に搭載されたスイッチを含むセンサ類からの出力値に基づき前記アクチュエータの異常を検出する異常検出手段と
を具備することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項4】
前記異常検出手段は、アクセル操作等に応じて前記アクチュエータを駆動し、スロットルバルブの開度位置を制御する電子スロットルシステムにおいて、前記アクチュエータの停止状態における前記スロットルバルブに接続されたスロットル開度センサからの出力値により、前記スロットルバルブを所定開度位置に設定するためのオープナスプリングの異常を検出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項5】
前記異常検出手段は、アクセル操作等に応じて前記アクチュエータを駆動し、スロットルバルブの開度位置を制御する電子スロットルシステムにおいて、前記アクチュエータの停止状態における前記スロットルバルブに接続されたスロットル開度センサからの出力値により、前記スロットルバルブを所定開度位置に戻すためのリターンスプリングの異常を検出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項6】
前記異常検出手段は、前記アクチュエータによりスワールコントロールバルブまたはタンブルバルブを駆動するときの異常を検出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項7】
前記異常検出手段は、前記アクチュエータにより吸気系特性切換バルブを駆動するときの異常を検出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項8】
車両に搭載された内燃機関のアイドル時に、所定の自動停止条件を満足するときには、前記内燃機関を自動停止させると共に、この自動停止後に所定の自動始動条件を満足するときには、前記内燃機関を自動始動させるよう制御する自動始動停止制御手段と、
前記自動始動停止制御手段による前記内燃機関の自動停止中に、前記車両に搭載されたアクチュエータを予め設定された初期位置に駆動し、前記アクチュエータの初期化を実行する初期化実行手段と
を具備することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項9】
前記初期化実行手段は、前記アクチュエータをステップモータ式アクチュエータとすることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−46103(P2006−46103A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225414(P2004−225414)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】