説明

動力出力装置およびその制御方法

【課題】 エンジンとモータを備えた動力出力装置においてエネルギの再循環が生じないようにエンジンの運転ポイントを高回転数・低トルクの側に変更することによりエンジンの効率が低下する場合であっても、装置全体の効率の低下を防止する。
【解決手段】 エンジン150のクランクシャフト156にプラネタリギヤによる動力分配機構を設け、モータMG1とMG2を設けた動力出力装置110において、エネルギの再循環が生じないようエンジン150の運転ポイントを高回転数・低トルクの側に変更した際、スロットルバルブ開度TAを絞らないように制御することで、エンジン150のポンピングロスの増加を抑制し、装置全体の効率の低下を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として、燃料の燃焼により動力を取り出す原動機と電気エネルギを利用して動力を入出力する電動機とを備え、該原動機および該電動機と駆動軸との間で動力を分配あるいは合成する動力出力装置およびその制御方法に関し、詳しくは、駆動軸に動力を出力する動力出力装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力源を二つ持ち両者を利用する動力出力装置を搭載した車両は、ハイブリッド車両と呼ばれる。こうしたハイブリッド車両の構成は、種々考えられるが、原動機、例えばガソリンエンジンの動力(回転数×出力トルク)をそのまま駆動軸に出力するのではなく、エンジンから駆動軸までの経路に動力の調整を行なう手段を設け、動力の大きさ自体は変更せず、出力トルクを増減するトルクコンバータの機能を持たせた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、この例では動力の分配・合成に、プラネタリギアを用いており、いわゆる機械分配タイプの構成を採用しているが、相対的に回転可能な二つのロータを備えた対ロータモータを用い、ロータ間の滑り回転を利用してエネルギをやりとりするタイプ(いわゆる電気分配タイプ)の構成を採用することも可能である。
【0003】
かかる動力出力装置では、任意の運転ポイントで運転されている原動機から出力される動力はプラネタリギヤにより発電機に伝達される動力と駆動軸に伝達される動力とに分配される。原動機から出力された動力を回転数を低減しつつトルクアップして駆動軸に出力する場合には、発電機に伝達された動力を電力として回生し、この電力を用いて駆動軸に結合された電動機を駆動して駆動軸にトルクを付加する。逆に、原動機から出力される動力をトルクを低減しつつ回転数を増して駆動軸に出力する、いわゆるオーバードライブモードの場合には、電動機に伝達された動力を電力として回生し、この電力を用いて発電機を電動機として駆動する。電動機が駆動軸に結合していることを考えると、オーバードライブモードにおいては、電動機で回生された電力が発電機に供給されるものの、該発電機を駆動して得られる動力の一部はプラネタリギヤを介して駆動軸に出力される際に、再び電動機により電力として回生されることになり、エネルギの一部が電動機,発電機,プラネタリギヤ,電動機の順に循環する循環路を形成してしまう。こうしたエネルギの循環は、循環するエネルギの量が大きくなると、それに伴って原動機からプラネタリギヤを介して直接駆動軸に出力される損失の小さなエネルギが小さくなるから、装置全体のエネルギ効率を低下させる。
【0004】
そこで、エネルギの循環が生じないように、原動機である内燃機関の運転ポイントを変更し、装置全体としての効率を高く保とうとする構成を出願人は既に提案している(特許文献2参照)。この場合、例えばオーバードライブ状態となることを避けるために、エンジンの回転数を高めており、エンジンから出力される動力自体は大きく変更しないことから、その分、出力トルクを低減する制御を行なっている。具体的には、エンジンのスロットルバルブを絞って、エンジンの出力トルクを低減し、他方、電動機の回転数を高めているのである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−294205号公報
【特許文献2】特開平10−326115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハイブリッド車両に用いられるこうした動力出力装置は、内燃機関などの原動機を、限られた回転数領域、限られた出力トルク領域で運転することができるため、その効率はきわめて高い。ところが、装置全体としてのエネルギ効率を追求したところ、更なる改善の余地が存在することが見いだされた。すなわち、エネルギの循環が生じるのを避けようとして、エンジンの運転ポイント(回転数×出力トルク)を変更する際、スロットルバルブを閉じて、エンジンの出力トルクを低減すると、スロットルバルブが閉じたことにより、エンジンのポンピングロスが増加し、装置全体として見たときの効率が必ずしも最善にならない場合が見いだされたのである。
【0007】
本発明は、こうした課題を解決し、原動機から駆動軸にエネルギが出力される過程においてエネルギの循環路が形成されないように制御する場合の装置全体のエネルギ効率の低下を防止することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の動力出力装置およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。即ち、本発明の動力出力装置は、
動力源として、燃料の燃焼により動力を取り出す原動機と電気エネルギを利用して動力を入出力する電動機とを備え、該原動機および該電動機と駆動軸との間で動力を分配あるいは合成する動力出力装置であって、
前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、
前記原動機および電動機の運転状態に基づく総合的な効率の観点から、前記原動機を運転する回転数および出力トルクからなる目標運転ポイントを設定する運転ポイント設定手段と、
前記原動機のポンピングロスの増大を抑制しつつ該原動機の運転ポイントを変更する原動機運転ポイント変更機構と、
該原動機運転ポイント変更機構を駆動して、前記原動機の運転ポイントを前記目標運転ポイントに制御する原動機制御手段と、
前記運転ポイントが変更された後の前記原動機の運転状態に基づいて、前記駆動軸に目標動力が出力されるよう、前記電動機および前記動力調整手段を制御する電動機制御手段と
を備えることを要旨としている。
【0009】
ここでいう「動力」は、軸に作用するトルクとその軸の回転数との積の形態で表わされ、単位時間当たりに出力されるエネルギの大きさをいう。これに対し、「動力状態」とは、ある動力を与えるトルクおよび回転数の組み合わせによって定まる運転状態をいうものと定義する。従って、ある「動力」を与える「動力状態」は、トルクおよび回転数の組み合わせにより無数に存在することになる。こうした「動力」および「動力状態」の意味は、後述する本発明の動力出力装置の制御方法においても同様である。なお、動力出力装置は、各瞬間ごとにおけるエネルギのやりとり、言い換えれば単位時間当たりのエネルギ収支を基準として制御されるため、以下、「エネルギ」という用語は単位時間当たりのエネルギ、即ち「動力」と同義の用語として用いる。同様に、単位時間当たりの電気エネルギを意味する「電力」と「電気エネルギ」も同義の用語として用いる。
【0010】
また、本発明の動力出力装置に対応した動力出力方法の発明は、
動力源として、燃料の燃焼により動力を取り出す原動機と、電気エネルギを利用して動力を入出力する電動機と、動力が出力される駆動軸との間で、動力を分配あるいは合成することで、最終的に動力を前記駆動軸に出力する動力出力方法であって、
前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合された動力調整手段を用いて、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整し、
前記原動機および電動機の運転状態に基づく総合的な効率の観点から、前記原動機を運転する回転数および出力トルクからなる目標運転ポイントを設定し、
前記原動機のポンピングロスの増大を抑制しつつ該原動機の運転ポイントを変更する原動機運転ポイント変更機構を駆動して、前記原動機の運転ポイントを前記目標運転ポイントに制御し、
前記運転ポイントが変更された後の前記原動機の運転状態に基づいて、前記駆動軸に目標動力が出力されるよう、前記電動機および前記動力調整手段を制御すること
を要旨としている。
【0011】
かかる動力出力装置および動力出力方法によれば、原動機および電動機の運転状態に基づく総合的な効率の観点から、原動機を運転する回転数および出力トルクからなる目標運転ポイントを設定しておき、原動機のポンピングロスの増大を抑制しつつ該原動機の運転ポイントを変更する原動機運転ポイント変更機構を駆動して、原動機の運転ポイントを目標運転ポイントに制御する。その上で、運転ポイントが変更された後の原動機の運転状態に基づいて、駆動軸に目標動力が出力されるよう、電動機および動力調整手段を制御する。従って、原動機および電動機の総合的な効率の観点から設定された目標運転ポイントに向けて、ポンピングロスの増大を抑制しつつ、運転状態は変更されることになり、装置全体の運転効率は高く維持される。
【0012】
ここで、電動機を、駆動軸との間で動力のやり取りを行なう位置に設けておき、総合的な効率の観点として、原動機から駆動軸に到る動力の経路において、エネルギの循環が生じる状態を生じさせないように、目標運転ポイントの設定を行なうものとすることができる。こうすれば、エネルギの循環による効率の低下を生じることがない。
【0013】
原動機のポンピングロスの増大を抑制しつつ該原動機の運転ポイントを変更する原動機運転ポイント変更機構としては、種々の構成を考えることができる。例えば、原動機における排気循環量を可変するEGR装置を考えることができる。この場合、目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクを設定したとき、EGR装置を駆動して、原動機への排気循環量を増大するものとすればよい。こうすれば、ポンピングロスを増加することなく原動機の出力トルクを低下することができ、動力出力装置の総合的な効率の低下を抑制することができる。
【0014】
また、原動機運転ポイント変更機構として、原動機に設けられた吸気弁および/または排気弁の当該原動機の出力トルクに影響を与える特性を可変する吸排気弁特性可変装置を用いる場合には、目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクを設定したとき、この吸排気弁特性可変装置を駆動して、原動機への吸気弁および/または排気弁の特性を、低出力トルク側に変更すれば良い。この場合も、ポンピングロスを増加することなく原動機の出力トルクを低下することができ、動力出力装置の総合的な効率の低下を抑制することができる。
【0015】
ここで、排気弁の特性としては、吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開弁および閉弁の少なくとも一方について、開閉弁タイミングおよびリフト量の少なくとも一方を想定することができる。これらの特性を変更することにより、原動機の運転ポイントを変更することができるからである。
【0016】
また、原動機運転ポイント変更機構として、原動機における空気と燃料の混合の比率である空燃比を可変する空燃比可変装置を採用することも可能である。この場合には、目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクが設定されたとき、空燃比可変装置を駆動して、原動機の空燃比をリーン側に制御すればよい。この場合も、ポンピングロスを増加することなく原動機の出力トルクを低下することができ、動力出力装置の総合的な効率の低下を抑制することができる。
【0017】
更に、原動機運転ポイント変更機構としては、原動機における過給量を可変する過給量可変装置を採用することも可能である。この場合には、目標運転ポイントとして、従前の過給量を減らす側に制御すればよい。この場合も、ポンピングロスを増加することなく原動機の出力トルクを低下することができ、動力出力装置の総合的な効率の低下を抑制することができる。
【0018】
上記動力出力装置および動力出力方法において、原動機の出力トルクの変動量を検出するものとし、検出された出力トルクの変動量が所定以上とならないように、原動機運転ポイント変更機構の制御量を制限し、制御量の制限により生じた出力トルクの目標運転ポイントからのズレを補償するものとしても良い。こうすれば、原動機の出力トルクの変動を抑制することができる。
【0019】
このとき、出力トルクの補償は、原動機の吸気通路の開口面積を調整するスロットルバルブの開度を調整することにより行なうことができる。もとより、他の制御、例えば点火時期制御や空燃比制御により実現しても差し支えない。
【0020】
目標運転ポイントに向けて原動機の運転ポイントを制御している間に、駆動軸に要求される動力の目標値が変更される場合がある。こうした場合には、原動機が目標運転ポイントに至るまで、原動機の運転状態を連続的に制御することも好適である。目標運転ポイントが大きく変化した場合でも、運転状態を直ちに最適化するのではなく、連続的に徐々に変更後の目標運転ポイントに向けて制御するので、原動機の出力が不連続に変動することがなく、原動機に振動などを生じることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
(1)第1実施例の構成:吸気弁の開閉タイミング可変機構を用いた構成:
[1]ハードウェア構成:
[2]動力分配の仕組み:
[3]エネルギ循環の発生について:
[4]トルク制御:
[5]バルブタイミングなどのエンジン制御:
[6]変形例:
(2)第2実施例:EGR装置を用いた構成:
[1]基本構成:
[2]変形例1:
[3]変形例2:
[4]変形例3:
(3)第3実施例:
[1]排気再循環量による運転ポイントの補正:
[2]変形例:
(4)第4実施例:
[1]基本構成:
[2]過給器の制御:
(5)その他の変形例:
【0022】
図1は本発明の一実施例としての動力出力装置110の概略構成を示す構成図、図2は実施例の動力出力装置110の部分拡大図、図3は実施例の動力出力装置110を組み込んだ車両の概略構成を示す構成図である。説明の都合上、まず図3を用いて、車両全体の構成から説明する。
【0023】
(1)第1実施例構成:吸気弁の開閉タイミング可変機構を用いた構成:
[1]ハードウェア構成:
図3に示すように、この車両は、ガソリンを燃料として動力を出力するエンジン150を備える。このエンジン150は、吸気系からスロットルバルブ166を介して吸入した空気と燃料噴射弁151から噴射されたガソリンとの混合気を吸気弁152を介して燃焼室154に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストン155の運動をクランクシャフト156の回転運動に変換する。ここで、スロットルバルブ166はアクチュエータ168により開閉駆動される。点火プラグ162は、イグナイタ158からディストリビュータ160を介して導かれた高電圧によって電気火花を形成し、混合気はその電気火花によって点火されて爆発燃焼する。
【0024】
このエンジン150は、吸気弁152の開閉タイミングBTおよび吸気弁152のリフト量LTを変更する開閉特性変更機構153を備える。この開閉特性変更機構153は、吸気弁152を開閉駆動する図示しない吸気カムシャフトのクランク角に対する位相を進角または遅角することにより吸気弁152の開閉タイミングBTを調整する。また、クランクシャフトから吸気カムシャフトまでの間に設けられた図示しない偏心カム機構を利用して、吸気弁152のリフト量LTも可変することができる。なお、吸気弁152の開閉タイミングBT、即ち吸気カムシャフトの位相の進角および遅角と、吸気弁152のリフト量LT、即ち偏心カム機構の位相とは、吸気カムシャフトおよび偏心カム機構のポジションを検出するカムポジションセンサ173により検出された信号に基づいて、後述する電子制御ユニット170によるフィードバック制御によって制御される。
【0025】
このエンジン150の運転は、電子制御ユニット(以下、エンジンECUと呼ぶ)170により制御されている。エンジンECU170には、エンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。例えば、スロットルバルブ166の開度(ポジション)TVPを検出するスロットルバルブポジションセンサ167、エンジン150の負荷を検出する吸気管負圧センサ172、吸気カムシャフトのポジションを検出するカムシャフトポジションセンサ173、エンジン150の水温を検出する水温センサ174、ディストリビュータ160に設けられクランクシャフト156の回転数と回転角度を検出する回転数センサ176及び回転角度センサ178などである。なお、エンジンECU170には、この他、例えばイグニッションキーの状態STを検出するスタータスイッチ179なども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略した。
【0026】
エンジン150のクランクシャフト156は、後述するプラネタリギヤ120やモータMG1,モータMG2に結合されており、更に駆動軸112を回転軸とする動力伝達ギヤ111を介してディファレンシャルギヤ114に結合されている。したがって、動力出力装置110から出力された動力は、最終的に左右の駆動輪116,118に伝達される。モータMG1およびモータMG2は、制御装置180に電気的に接続されており、この制御装置180によって制御される。制御装置180の構成は後で詳述するが、内部には制御CPUが備えられており、シフトレバー182に設けられたシフトポジションセンサ184やアクセルペダル164に設けられたアクセルペダルポジションセンサ164a,ブレーキペダル165に設けられたブレーキペダルポジションセンサ165aなども接続されている。また、制御装置180は、上述したエンジンECU170と通信により、種々の情報をやり取りしている。これらの情報のやり取りを含む制御については、後述する。
【0027】
図1に示すように、実施例の動力出力装置110は、大きくは、エンジン150、エンジン150のクランクシャフト156にプラネタリキャリア124が機械的に結合されたプラネタリギヤ120、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたモータMG1、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたモータMG2およびモータMG1,MG2を駆動制御する制御装置180から構成されている。
【0028】
プラネタリギヤ120およびモータMG1,MG2の構成について、図2により説明する。プラネタリギヤ120は、クランクシャフト156に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸125に結合されたサンギヤ121と、クランクシャフト156と同軸のリングギヤ軸126に結合されたリングギヤ122と、サンギヤ121とリングギヤ122との間に配置されサンギヤ121の外周を自転しながら公転する複数のプラネタリピニオンギヤ123と、クランクシャフト156の端部に結合され各プラネタリピニオンギヤ123の回転軸を軸支するプラネタリキャリア124とから構成されている。このプラネタリギヤ120では、サンギヤ121,リングギヤ122およびプラネタリキャリア124にそれぞれ結合されたサンギヤ軸125,リングギヤ軸126およびクランクシャフト156の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸のうちいずれか2軸へ入出力される動力が決定されると、残余の1軸に入出力される動力は決定された2軸へ入出力される動力に基づいて定まる。なお、このプラネタリギヤ120の3軸への動力の入出力についての詳細は後述する。
【0029】
リングギヤ122には、動力の取り出し用の動力取出ギヤ128が結合されている。この動力取出ギヤ128は、チェーンベルト129により動力伝達ギヤ111に接続されており、動力取出ギヤ128と動力伝達ギヤ111との間で動力の伝達がなされる。
【0030】
モータMG1は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石135を有するロータ132と、回転磁界を形成する三相コイル134が巻回されたステータ133とを備える。ロータ132は、プラネタリギヤ120のサンギヤ121に結合されたサンギヤ軸125に結合されている。ステータ133は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG1は、永久磁石135による磁界と三相コイル134によって形成される磁界との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作し、永久磁石135による磁界とロータ132の回転との相互作用により三相コイル134の両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。なお、サンギヤ軸125には、その回転角度θsを検出するレゾルバ139が設けられている。
【0031】
モータMG2も、モータMG1と同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石145を有するロータ142と、回転磁界を形成する三相コイル144が巻回されたステータ143とを備える。ロータ142は、プラネタリギヤ120のリングギヤ122に結合されたリングギヤ軸126に結合されており、ステータ143はケース119に固定されている。モータMG2のステータ143も無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されている。このモータMG2もモータMG1と同様に、電動機あるいは発電機として動作する。なお、リングギヤ軸126には、その回転角度θrを検出するレゾルバ149が設けられている。
【0032】
次に、モータMG1,MG2を駆動制御する制御装置180について説明する。図1に示すように、制御装置180は、モータMG1を駆動する第1の駆動回路191、モータMG2を駆動する第2の駆動回路192、両駆動回路191,192を制御する制御CPU190、二次電池であるバッテリ194から構成されている。制御CPU190は、1チップマイクロプロセッサであり、内部に、ワーク用のRAM190a、処理プログラムを記憶したROM190b、入出力ポート(図示せず)およびエンジンECU170と通信を行なうシリアル通信ポート(図示せず)を備える。この制御CPU190には、レゾルバ139からのサンギヤ軸125の回転角度θs、レゾルバ149からのリングギヤ軸126の回転角度θr、アクセルペダルポジションセンサ164aからのアクセルペダルポジション(アクセルペダルの踏込量)AP、ブレーキペダルポジションセンサ165aからのブレーキペダルポジション(ブレーキペダルの踏込量)BP、シフトポジションセンサ184からのシフトポジションSP、第1の駆動回路191に設けられた2つの電流検出器195,196からの電流値Iu1,Iv2、第2の駆動回路192に設けられた2つの電流検出器197,198からの電流値Iu2,Iv2、バッテリ194の残容量を検出する残容量検出器199からの残容量BRMなどが、入力ポートを介して入力されている。なお、残容量検出器199は、バッテリ194の電解液の比重またはバッテリ194の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するものや、バッテリの端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。
【0033】
また、制御CPU190からは、第1の駆動回路191に設けられたスイッチング素子である6個のトランジスタTr1ないしTr6を駆動する制御信号SW1と、第2の駆動回路192に設けられたスイッチング素子としての6個のトランジスタTr11ないしTr16を駆動する制御信号SW2とが出力されている。第1の駆動回路191内の6個のトランジスタTr1ないしTr6は、トランジスタインバータを構成しており、それぞれ、一対の電源ラインL1,L2に対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置され、その接続点に、モータMG1の三相コイル(UVW)34の各々が接続されている。電源ラインL1,L2は、バッテリ194のプラス側とマイナス側に、それぞれ接続されているから、制御CPU190により対をなすトランジスタTr1ないしTr6のオン時間の割合を制御信号SW1により順次制御し、三相コイル134の各コイルに流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイル134により、回転磁界が形成される。
【0034】
他方、第2の駆動回路192の6個のトランジスタTr11ないしTr16も、トランジスタインバータを構成しており、それぞれ、第1の駆動回路191と同様に配置されていて、対をなすトランジスタの接続点は、モータMG2の三相コイル144の各々に接続されている。したがって、制御CPU190により対をなすトランジスタTr11ないしTr16のオン時間を制御信号SW2により順次制御し、各コイル144に流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイル144により、回転磁界が形成される。
【0035】
以上構成を説明した実施例の動力出力装置110の動作について説明する。実施例の動力出力装置110の動作原理、特にトルク変換の原理は以下の通りである。エンジン150を回転数Ne,トルクTeの運転ポイントP1で運転し、このエンジン150から出力されるエネルギPeと同一のエネルギであるが異なる回転数Nr,トルクTrの運転ポイントP2でリングギヤ軸126を運転する場合、すなわち、エンジン150から出力される動力をトルク変換してリングギヤ軸126に作用させる場合について考える。この時のエンジン150とリングギヤ軸126の回転数およびトルクの関係を図4に示す。
【0036】
[2]動力分配の仕組み:
プラネタリギヤ120の3軸(サンギヤ軸125,リングギヤ軸126およびプラネタリキャリア124(クランクシャフト156))における回転数やトルクの関係は、機構学の教えるところによれば、図5および図6に例示する共線図と呼ばれる図として表わすことができ、幾何学的に解くことができる。なお、プラネタリギヤ120における3軸の回転数やトルクの関係は、上述の共線図を用いなくても各軸のエネルギを計算することなどにより数式的に解析することもできる。本実施例では説明の容易のため共線図を用いて説明する。
【0037】
図5における縦軸は3軸の回転数軸であり、横軸は3軸の座標軸の位置の比を表わす。すなわち、サンギヤ軸125とリングギヤ軸126の座標軸S,Rを両端にとったとき、プラネタリキャリア124の座標軸Cは、軸Sと軸Rを1:ρに内分する軸として定められる。ここで、ρは、リングギヤ122の歯数に対するサンギヤ121の歯数の比であり、次式(1)で表わされる。
【0038】
ρ=(サンギヤの歯数)/(リングギヤの歯数) …(1)
【0039】
いま、エンジン150が回転数Neで運転されており、リングギヤ軸126が回転数Nrで運転されている場合を考えているから、エンジン150のクランクシャフト156が結合されているプラネタリキャリア124の座標軸Cにエンジン150の回転数Neを、リングギヤ軸126の座標軸Rに回転数Nrをプロットすることができる。この両点を通る直線を描けば、この直線と座標軸Sとの交点で表わされる回転数としてサンギヤ軸125の回転数Nsを求めることができる。以下、この直線を動作共線と呼ぶ。なお、回転数Nsは、回転数Neと回転数Nrとを用いて比例計算式(次式(2))により求めることができる。このようにプラネタリギヤ120では、サンギヤ121,リングギヤ122およびプラネタリキャリア124のうちいずれか2つの回転を決定すると、残余の1つの回転は、決定した2つの回転に基づいて決定される。
【0040】
Ns=Nr−(Nr−Ne)×(1+ρ)/ρ …(2)
【0041】
次に、描かれた動作共線に、エンジン150のトルクTeをプラネタリキャリア124の座標軸Cを作用線として図中下から上に作用させる。このとき動作共線は、トルクに対してはベクトルとしての力を作用させたときの剛体として取り扱うことができるから、座標軸C上に作用させたトルクTeは、平行な2つの異なる作用線への力の分離の手法により、座標軸S上のトルクTesと座標軸R上のトルクTerとに分離することができる。このときトルクTesおよびTerの大きさは、次式(3)および式(4)によって表わされる。
【0042】
Tes=Te×ρ/(1+ρ) …(3)
Ter=Te×(1/(1+ρ)) …(4)
【0043】
動作共線がこの状態で安定であるためには、動作共線の力の釣り合いをとればよい。すなわち、座標軸S上には、トルクTesと大きさが同じで向きが反対のトルクTm1を作用させ、座標軸R上には、リングギヤ軸126に出力するトルクTrと同じ大きさで向きが反対のトルクとトルクTerとの合力に対し大きさが同じで向きが反対のトルクTm2を作用させるのである。このトルクTm1はモータMG1により、トルクTm2はモータMG2により作用させることができる。このとき、モータMG1では回転の方向と逆向きにトルクを作用させるから、モータMG1は発電機として動作することになり、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギPm1をサンギヤ軸125から回生する。モータMG2では、回転の方向とトルクの方向とが同じであるから、モータMG2は電動機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギPm2を動力としてリングギヤ軸126に出力する。
【0044】
ここで、電気エネルギPm1と電気エネルギPm2とを等しくすれば、モータMG2で消費する電力のすべてをモータMG1により回生して賄うことができる。このためには、入力されたエネルギのすべてを出力するものとすればよいから、エンジン150から出力されるエネルギPeとリングギヤ軸126に出力されるエネルギPrとを等しくすればよい。すなわち、トルクTeと回転数Neとの積で表わされるエネルギPeと、トルクTrと回転数Nrとの積で表わされるエネルギPrとを等しくするのである。図4に照らせば、運転ポイントP1で運転されているエンジン150から出力されるトルクTeと回転数Neとで表わされる動力状態を、トルク変換して、同一のエネルギでトルクTrと回転数Nrとで表わされる動力状態としてリングギヤ軸126に出力するのである。前述したように、リングギヤ軸126に出力された動力は、動力取出ギヤ128および動力伝達ギヤ111により駆動軸112に伝達され、ディファレンシャルギヤ114を介して駆動輪116,118に伝達される。したがって、リングギヤ軸126に出力される動力と駆動輪116,118に伝達される動力とにはリニアな関係が成立するから、駆動輪116,118に伝達される動力は、リングギヤ軸126に出力される動力を制御することにより制御することができる。
【0045】
図5の共線図の状態のときのエネルギの流れを図7に模式的に示す。図中の通路の太さは、エネルギの大きさを示す。図示するように、エンジン150は、燃料(実施例ではガソリン)が持つ化学エネルギをエンジン150の効率を乗じた機械エネルギ(回転動力)としてクランクシャフト156に出力する。プラネタリギヤ120は、エンジン150から出力された機械エネルギをプラネタリキャリア124から入力し、この機械エネルギを上述の動作共線の釣り合いの関係に基づいてサンギヤ軸125とリングギヤ軸126とに分配する。サンギヤ軸125に取り付けられたモータMG1は、発電機として機能して、プラネタリギヤ120によりサンギヤ軸125に分配された機械エネルギをモータMG1の効率を乗じた電気エネルギPm1として回生し、この電気エネルギPm1をバッテリ194やモータMG2に供給する。リングギヤ軸126に取り付けられたモータMG2は、プラネタリギヤ120により分配された機械エネルギを保有するリングギヤ軸126に、モータMG1から供給される電気エネルギPm1をモータMG1の効率を乗じた機械エネルギを出力する。したがって、バッテリ194の充放電は行なわれず、モータMG1により回生された電気エネルギPm1のすべてがモータMG2に供給されるものとすれば、エンジン150からクランクシャフト156に出力された機械エネルギは、プラネタリギヤ120を介してリングギヤ軸126に直接出力される経路と、モータMG1とモータMG2とにより電気エネルギを経由してリングギヤ軸126に出力される経路との2つの経路を通ってリングギヤ軸126に出力されることになる。実施例の動力出力装置110では、図5の共線図の状態においては、こうした2つの経路を通ることにより、エンジン150に出力された動力を所望の動力状態にトルク変換してリングギヤ軸126に出力することができるのである。なお、図7の模式図では、モータMG1により回生された電気エネルギPm1の一部を用いてバッテリ194を充電するものとしたが、逆に、バッテリ194から電気エネルギを取り出してモータMG1により回生される電気エネルギPm1と合わせてモータMG2に供給するものとしてもよい。
【0046】
図5に示す共線図ではサンギヤ軸125の回転数Nsは正であったが、エンジン150の回転数Neとリングギヤ軸126の回転数Nrとによっては、図6に示す共線図のように負となる場合もある。このときには、モータMG1では、回転の方向とトルクの作用する方向とが同じになるから、モータMG1は電動機として動作し、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギPm1を消費する。一方、モータMG2では、回転の方向とトルクの作用する方向とが逆になるから、モータMG2は発電機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギPm2をリングギヤ軸126から回生することになる。この場合、モータMG1で消費する電気エネルギPm1とモータMG2で回生する電気エネルギPm2とを等しくすれば、モータMG1で消費する電気エネルギPm1をモータMG2で丁度賄うことができる。
【0047】
[3]エネルギ循環の発生について:
図6の共線図の状態のときのエネルギの流れを図8に模式的に示す。図示するように、図8の模式図では、プラネタリギヤ120は、エンジン150から出力される機械エネルギをプラネタリキャリア124に入力すると共にモータMG1により出力される機械エネルギをサンギヤ軸125に入力し、これらの機械エネルギの和を動作共線の釣り合いの関係に基づいてリングギヤ軸126に出力する。リングギヤ軸126に取り付けられたモータMG2は、発電機として機能して、プラネタリギヤ120によりリングギヤ軸126に出力された機械エネルギの一部をモータMG2の効率を乗じた電気エネルギPm2として回生し、この電気エネルギPm2をバッテリ194やモータMG1に供給する。したがって、バッテリ194の充放電は行なわれず、モータMG2により回生された電気エネルギPm2のすべてがモータMG1に供給されるものとすれば、エンジン150からクランクシャフト156に出力された機械エネルギは、モータMG1,プラネタリギヤ120,モータMG2,モータMG1の順に形成される循環路を経由してリングギヤ軸126に出力されることになる。実施例の動力出力装置110では、図6の共線図の状態においては、こうしたエネルギの循環路を形成することにより、エンジン150に出力された動力を所望の動力状態にトルク変換してリングギヤ軸126に出力することができるのである。図6の共線図において、リングギヤ軸126の回転数Nrが大きくなったときやエンジン150のトルクTeを大きくしたときなどには、図9の模式図に示すように、上述の循環するエネルギが大きくなってモータMG1およびモータMG2による損失が大きくなり、エンジン150から出力される機械エネルギのうちプラネタリギヤ120を介して直接リングギヤ軸126に出力される損失の小さなエネルギが小さくなるから、動力出力装置110のエネルギ効率は低下する。こうした大きなエネルギの循環がエネルギ効率からみて好ましくないのは、上述の「発明が解決しようとする課題」の欄でも記載した。なお、図8や図9の模式図では、モータMG2により回生された電気エネルギPm2の一部を用いてバッテリ194を充電するものとしたが、逆に、バッテリ194から電気エネルギを取り出してモータMG2により回生される電気エネルギPm2と合わせてモータMG1に供給するものとしてもよい。
【0048】
[4]トルク制御:
次に、上述の大きなエネルギの循環を回避するトルク制御の実際について図10に例示するトルク制御ルーチンに基づき説明する。本ルーチンは、動力出力装置110が起動されたときから所定時間毎(例えば、48msec毎)に繰り返し実行されるものである。本ルーチンが実行されると、制御装置180の制御CPU190は、まず、リングギヤ軸126の回転数Nrを読み込む処理を実行する(ステップS100)。リングギヤ軸126の回転数Nrはレゾルバ149により検出される回転角度θrから求めることができる。
【0049】
続いて、アクセルペダルポジションセンサ164aによって検出されるアクセルペダルポジションAPを入力する処理を行なう(ステップS102)。アクセルペダル164は運転者が出力トルクが足りないと感じたときに踏み込まれるものであるから、アクセルペダルポジションAPは運転者の欲している出力トルク(すなわち、駆動輪116,118に出力すべきトルク)に対応するものとなる。アクセルペダルポジションAPを読み込むと、読み込んだアクセルペダルポジションAPとリングギヤ軸126の回転数Nrとに基づいてリングギヤ軸126に出力すべきトルクの目標値であるトルク指令値Tr*を導出する処理を行なう(ステップS104)。また、こうして導出されたトルク指令値Tr*とリングギヤ軸126の回転数Nrとの積からリングギヤ軸に出力すべきエネルギPrを算出する(ステップS106)。ここで、駆動輪116,118に出力すべきトルクを導出せずに、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを導出するのは、リングギヤ軸126は動力取出ギヤ128,動力伝達ギヤ111およびディファレンシャルギヤ114を介して駆動輪116,118に機械的に結合されているから、リングギヤ軸126に出力すべきトルクを導出すれば、駆動輪116,118に出力すべきトルクを導出する結果となるからである。なお、実施例では、リングギヤ軸126の回転数NrとアクセルペダルポジションAPとトルク指令値Tr*との関係を示すマップを予めROM190bに記憶しておき、アクセルペダルポジションAPが読み込まれると、読み込まれたアクセルペダルポジションAPとリングギヤ軸126の回転数NrとROM190bに記憶したマップとに基づいてトルク指令値Tr*の値を導出するものとした。このマップの一例を図11に示す。
【0050】
次に、残容量検出器199により検出されるバッテリ194の残容量BRMを読み込み(ステップS108)、読み込んだバッテリ194の残容量BRMに基づいてバッテリ194を充放電する電力(充放電エネルギPb)を設定する(ステップS110)。このように、バッテリ194の残容量BRMに基づいて充放電エネルギPbを設定するのは、バッテリ194の充電可能な電力や放電可能な電力は残容量BRMによって変化し、適正な充電電圧や放電電圧,充電電流や放電電流も残容量BRMによって変わるからである。図12にバッテリ194の残容量BRMと充電可能な電力との関係の一例を示す。図中、閾値BLと閾値BHは、実施例におけるバッテリ194の適正な領域を示すものである。実施例では、バッテリ194の残容量BRMが閾値BLを下回ったときに残容量BRMに基づいて求められる充電エネルギを充放電エネルギPbとして設定し、残容量BRMが閾値BHを上回ったときに残容量BRMに基づいて求められる放電エネルギを充放電エネルギPbとして設定する。なお、実施例では、充放電エネルギPbは、充電エネルギのときには正の値として、放電エネルギのときには負の値として設定するものとし、バッテリ194の各残容量BRMに対して実験等により最適な充放電エネルギPbを求め、それを予めROM190bにマップ(図示せず)として記憶しておき、バッテリ194の残容量BRMに対応する充放電エネルギPbをROM190bに記憶したマップから導出するものとした。
【0051】
充放電エネルギPbを導出すると、制御CPU190は、リングギヤ軸126に出力すべきエネルギとして算出したエネルギPrと導出した充放電エネルギPbとエンジン150から出力される動力により駆動する図示しない補機(例えば、エアコンのコンプレッサや冷却水のポンプなど)の駆動に必要な補機駆動エネルギPhとの和として必要エネルギPnを算出し(ステップS112)、この必要エネルギPnをプラネタリギヤ120やモータMG1,モータMG2などによるトルク変換の効率ηtで割ってエンジン150から出力すべきエネルギPeを算出する(ステップS114)。そして、求めたエネルギPeに基づいてエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定する処理を行なう(ステップS116)。ここで、エンジン150から出力するエネルギPeはそのトルクTeと回転数Neとの積に等しいから、エネルギPeと目標回転数Ne*と目標トルクTe*との関係はPe=Ne*×Te*となる。この関係を満足するエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合せは無数に存在する。そこで、実施例では、実験などにより各エネルギPeに対してエンジン150ができる限り効率の高い状態で運転され、かつエネルギPeの変化に対してエンジン150の運転状態が滑らかに変化する運転ポイントを目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合わせとして求め、これを予めROM190bにマップとして記憶しておき、エネルギPeに対応する目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合わせをこのマップから導出するものとした。このマップについて、更に説明する。
【0052】
図13は、エンジン150の運転ポイントとエンジン150の効率との関係を示すグラフである。図中曲線Bはエンジン150の運転可能な領域の境界を示す。エンジン150の運転可能な領域には、その特性に応じて効率が同一の運転ポイントを示す曲線α1ないしα6のような等効率線を描くことができる。また、エンジン150の運転可能な領域には、トルクTeと回転数Neとの積で表わされるエネルギが一定の曲線、例えば曲線C1−C1ないしC3−C3を描くことができる。こうして描いたエネルギ一定の曲線C1−C1ないしC3−C3に沿って各運転ポイントの効率をエンジン150の回転数Neを横軸として表わすと図14のグラフのようになる。
【0053】
図示するように、出力するエネルギPeが同じでも、どの運転ポイントで運転するかによってエンジン150の効率は大きく異なる。例えばエネルギ一定の曲線C1−C1上では、エンジン150を運転ポイントA1(トルクTe1,回転数Ne1)で運転することにより、その効率を最も高くすることができる。このような効率が最も高い運転ポイントは、出力エネルギ一定の曲線C2−C2およびC3−C3ではそれぞれ運転ポイントA2およびA3が相当するように、各エネルギ一定の曲線上に存在する。図13中の曲線(動作曲線)Aは、これらのことに基づき、スロットルバルブ166の前後で吸入空気に若干の圧力差が生じるようスロットルバルブ166の開度TVPを調節した状態で、かつ、各エネルギPeに対してエンジン150の効率ができる限り高くなる運転ポイントを連続する線で結んだものである。スロットルバルブ166の前後で吸入空気に若干の圧力差が生じるようスロットルバルブ166を調節する理由については後述する。実施例では、こうして得られる動作曲線A上の各運転ポイント(トルクTe,回転数Ne)とエネルギPeとの関係をマップとしたものを用いてエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定した。
【0054】
ここで、動作曲線Aを連続する曲線で結ぶのは、エネルギPeの変化に対して不連続な曲線によりエンジン150の運転ポイントを定めると、エネルギPeが不連続な運転ポイントを跨いで変化するときにエンジン150の運転状態が急変することになり、その変化の程度によっては、目標の運転状態にスムースに移行できずノッキングを生じたり停止してしまう場合があるからである。したがって、このように動作曲線Aを連続する曲線で結ぶと、動作曲線A上の各運転ポイントがエネルギ一定の曲線上で最も効率が高い運転ポイントとならない場合もある。なお、図13中、トルクTeminと回転数Neminとにより表わされる運転ポイントAminは、エンジン150から出力可能な最小エネルギの運転ポイントである。
【0055】
こうしてエンジン150の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると、設定した目標トルクTe*とトルク指令値Tr*とを用いて次式(5)によりモータMG2のトルク指令値Tm2*を計算する(ステップS118)。ここで、式(5)は、エンジン150が目標回転数Ne*と目標トルクTe*との運転ポイントで定常運転されトルク指令値Tr*のトルクがリングギヤ軸126に定常的に出力されるときにモータMG2に設定されるトルク指令値Tm2*を求める式であり、図5や図6の共線図における動作共線の釣り合いから求めることができる。
【0056】
Tm2* ←Tr* −Tc* ×(1/(1+ρ)) …(5)
【0057】
続いて、リングギヤ軸126の回転数Nrに基づいて閾値Trefを導出し(ステップS120)、算出したトルク指令値Tm2*と閾値Trefとを比較する(ステップS122)。閾値Trefは、図8や図9の模式図を用いて説明したエネルギの循環の許容範囲の最大値をモータMG2のトルクの最低値として表わすものであり、図5や図6の共線図と共に説明したように、リングギヤ軸126の回転数Nrに関連つけられて設定される。実施例では、例えば、図15に例示するリングギヤ軸126の回転数Nrと閾値Trefとの関係を示すマップを予めROM190bに記憶しておき、回転数Nrが与えられると、この回転数Nrに対応する閾値Trefを導出するものとした。なお、リングギヤ軸126の回転数Nrが小さいときには大きなエネルギによる循環が生じにくいため、実施例では、リングギヤ軸126の回転数Nrが閾値Nref未満のときには閾値TrefにモータMG2から出力可能な最小のトルクTminを設定するものとした。
【0058】
トルク指令値Tm2*が閾値Trefより小さいときには、許容範囲外の大きなエネルギによる循環が生じ、動力出力装置110のエネルギ効率の低下が顕著になると判断し、閾値TrefがモータMG2から出力されるトルクTm2とみなして次式(6)によりエンジン150の目標トルクTe*を計算して再設定し(ステップS124)、この再設定された目標トルクTe*でエネルギPeを除して目標回転数Ne*を再設定する(ステップS126)。
【0059】
Te*←(Tr*−Tref)×(1+ρ) …(6)
【0060】
図16に、再設定される前後の目標トルクTe*や目標回転数Ne*の関係を例示する。再設定される前の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とがトルクTe3と回転数Ne3とにより表わされる動作曲線A上の運転ポイントP3となるよう設定されているときを考えると、閾値Trefは式(5)で求められるトルク指令値Tm2*より大きいから、上式(6)により再設定される目標トルクTe*はトルクTe3より小さなトルクTe4として算出され、この再設定された目標トルクTe*でエネルギPeを除して得られる回転数Ne4を目標回転数Ne*に設定するから、エンジン150の目標とする運転ポイントは、運転ポイントP3からエネルギが同一の曲線上の運転ポイントP4に変更されることになる。なお、このようにエンジン150の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを閾値Trefを用いて再設定することにより、エンジン150が再設定された目標回転数Ne*と目標トルクTe*とで表わされる運転ポイントで定常運転されたときには、モータMG2からは閾値Trefのトルクが出力されることになり、許容範囲内の大きさのエネルギの循環にすることができる。かかる制御を行なうことによりエンジン150は、それまでより高回転数・低トルクで運転されることになる。こうしたエンジンの制御については、後でまとめて説明する。
【0061】
以上説明したエネルギの大規模な再循環が生じる運転状態であるか否かの判断(ステップS122)とエンジンの目標トルクTe*および目標回転数Ne*の再設定の処理(ステップS124,S126)を行なった後、エンジンの目標回転数Ne*を用いて上式(2)によりサンギヤ軸125の目標回転数Ns*を設定する(ステップS128)。そして、設定した各設定値を用いてモータMG1,モータMG2およびエンジン150の各制御を行なう(ステップS130ないしS134)。実施例では、図示の都合上、モータMG1,モータMG2およびエンジン150の各制御を別々のステップとして記載したが、実際には、これらの制御は同時に平行的にかつ総合的に行なわれる。例えば、制御CPU190が割り込み処理を利用して、モータMG1とモータMG2の制御を同時に平行して実行すると共に、通信により指示を受けたエンジンECU170によりエンジン150の制御も同時に行なわせるのである。
【0062】
[5]バルブタイミングなどのエンジン制御:
図10ステップS130およびS132として示したモータMG1およびモータMG2の制御は、設定した目標トルクTm1*、Tm2*が得られるように各モータに流れる電力を制御する周知のものなので、説明は省略し、エンジン150の制御、特にエンジン150の吸気弁152の開閉弁タイミングBTの制御について説明する。エンジン150は、その目標とする運転ポイントが目標トルクTe*と目標回転数Ne*とによって設定されると、設定された運転ポイントで定常運転状態となるようエンジン150のトルクTeと回転数Neとが制御される。具体的には、制御装置180の制御CPU190から通信によりエンジンECU170に指示を送信し、燃料噴射弁151からの燃料噴射量やスロットルバルブ166の開度TAを増減して、エンジン150の出力トルクが目標トルクTe*に、回転数が目標回転数Ne*になるように徐々に調整するのである。なお、エンジン150の回転数NeはモータMG1によるサンギヤ軸125の回転数Nsの制御によって行なわれるから、エンジン150の制御は、エンジン150から目標トルクTe*が出力されるように行なえば足りることになる。そこで、エンジンECU170は、図17に示したように、制御装置180の制御CPU190から、運転領域に関する種々の情報を受け取り(ステップS136)、次にこの情報に基づいて、エネルギ再循環が生じ得る運転領域になっているか否かの判断を行なう(ステップS137)。この判断は、図10におけるステップS122の判断と同じである。
【0063】
エネルギの再循環を避ける必要がない運転領域で運転されていると判断された場合には、スロットルバルブ166の開度TA、吸気弁152の開閉弁タイミングBTおよびリフト量LTは、それぞれ通常用の関数fTA1、fBT1、fLT1を用いて、エンジン150の目標トルクTe*および目標回転数Ne*から設定する処理を行なう(ステップS138)。この場合、エンジン150は、図13に示した最も効率の高い運転ポイントの線Aに沿って運転されることになる。なお、本実施例では、これらのスロットルバルブ開度TA、開閉タイミングBT、リフト量LTの設定は、関数を用いて行なったが、マップなどを参照して設定するものとしても良い。
【0064】
他方、エネルギの再循環を避けるべき運転領域で運転されていると判断された場合には、エンジン150の目標トルクTe*、目標回転数Ne*の再設定が行なわれたことになる。この場合、図13に示したエンジン150自体での最も運転効率の高い運転ポイントA1、A2・・・からはずれ、図16に示したように、エンジン150の目標トルクTe*が低く、目標回転数Ne*が高い運転ポイントに変更される。そこで、こうした運転ポイントでエンジン150を運転すべく、スロットルバルブ166の開度TA,吸気弁152のバルブタイミングBTおよびリフト量LTを、エンジン150の目標トルクおよび回転数の再設定が行なわれた場合専用の関数fTA2、fBT2、fLT2を用いて設定するのである(ステップS139)。その後、設定したスロットル開度TAなどを用いて、エンジン150を運転する(ステップS140)。
【0065】
ステップS139において設定されるスロットルバルブ166の開度TA,吸気弁152のバルブタイミングBTおよびリフト量LTについて説明する。本実施例では、スロットルバルブ開度TA、吸気弁152のバルブタイミングBT、吸気弁152のリフト量LTは、車両の総合的な効率を高くする観点から、動力の出力系において、図9に示した大きなエネルギの再循環が生じ得る条件下では、次のように設定される。
(A)吸気弁152のバルブタイミングBTおよびリフト量LT:吸気弁152のバルブタイミングBT遅角側に設定すると共に、吸気弁152のリフト量を小さく設定する。この結果、エンジン150がそれまでより高い目標回転数(例えば図16Ne4)で運転されても、出力エネルギは増加しないから、結果的に低トルクの運転ポイントで運転される。
(B)スロットルバルブ開度TA:通常運転時と同一かより開いた開度TAとして設定する。従来は、エンジン150を高回転数・低トルクの運転ポイントで運転するために、スロットルバルブ166の開度を絞っていたが、スロットルバルブ166を閉じれば、それだけポンピングロスが大きくなった。これに対して、本実施例では、スロットルバルブ開度TAは、通常運転時より開いた開度に設定している(あるいは少なくともスロットル開度を絞る制御を行なわない)ので、回転数が上昇しても、ポンピングロスの増大は抑制される。
【0066】
かかる制御を行なうことにより、特に吸気弁152の開閉弁タイミングBTを遅角側に制御しかつバルブリフト量LTを小さくすることにより、エンジン150の回転数Neを増加しつつ、出力するトルクTeを低下することができる。しかも、スロットルバルブ166の開度TAを絞ることをしていないので、スロットルバルブ166を閉じてエンジン150から出力トルクTeを低下する場合と比べて、ポンピングロスはほとんど増加しない。この結果、第1実施例では、エネルギの再循環が生じることを回避するために、エンジン150の運転ポイントを変更し、エンジン150自体の運転効率は、図13,図16に示したように、最適の運転ポイントからずれてはいるものの、ポンピングロスが増加が従来より抑制されることにより、動力出力装置全体の運転効率は、従来の制御と比べて高い状態に保たれることになる。
【0067】
[6]変形例:排気タイミング
次に第1実施例の変形例について説明する。変形例では、エンジントルクを低下するのに、排気量の制御、具体的には使用する気筒数の調整を行なう。この変形例では、エンジン150は、4気筒エンジンであり、気筒毎に独立して燃料噴射を行なっていることから、使用する気筒数を、4気筒、3気筒、2気筒、1気筒と変更することができる。制御装置180がエンジンECU170と共に行なうエンジン制御ルーチンを、図18に示した。この制御ルーチンを開始すると、まず、図9にしめしたようなエネルギの大きな再循環が生じる運転領域に入っているか否かの判断を行なう(ステップS237)。この判断は、上記実施例の図10におけるステップS122の判断と同じである。
【0068】
エネルギの再循環を避ける必要がない運転領域で運転されていると判断された場合には、スロットルバルブ166の開度TA、吸気弁152の開閉弁タイミングBTおよび排気量に相当する使用気筒数EVを、それぞれ通常用の関数fTA1、fBT1、fEV1を用いて、エンジン150の目標トルクTe*および目標回転数Ne*から設定する処理を行なう(ステップS238)。この場合、エンジン150は、図13に示した最も効率の高い運転ポイントの線Aに沿って運転されることになる。
【0069】
他方、エネルギの再循環を避けるべき運転領域で運転されていると判断された場合には、図16に示したように、エンジン150の運転ポイントは、エンジン150の目標トルクTe*が低く、目標回転数Ne*が高い運転ポイントに変更されているので、こうした運転ポイントでエンジン150を運転すべく、スロットルバルブ166の開度TA,吸気弁152のバルブタイミングBTおよび使用気筒数EVを、エンジン150の目標トルクおよび回転数の再設定が行なわれた場合専用の関数fTA2、fBT2、fEV2を用いて設定する(ステップS239)。その後、設定したスロットル開度TA、バルブタイミングBT、気筒数EVなどを用いて、エンジン150を運転する(ステップS240)。
【0070】
ステップS239において設定されるスロットルバルブ166の開度TA,吸気弁152のバルブタイミングBTおよび使用気筒数EVについて説明する。本実施例では、スロットルバルブ開度TA、吸気弁152のバルブタイミングBT、使用気筒数EVは、車両の総合的な効率を高くする観点から、動力の出力系において、図9に示した大きなエネルギの再循環が生じ得る条件下では、次のように設定される。
(A)吸気弁152のバルブタイミングBTおよび使用気筒数EV:吸気弁152のバルブタイミングBT遅角側に設定すると共に、気筒数EVを4気筒から2気筒に設定する。この結果、エンジン150がそれまでより高い目標回転数(例えば図16Ne4)で運転されても、出力エネルギは増加しないから、結果的に低トルクの運転ポイントで運転される。
(B)スロットルバルブ開度TA:通常運転時と同一か、より開いた開度TAとして設定する。
【0071】
図19は、運転される気筒数EVをパラメータとして示したエンジン150の運転特性を示すグラフである。図において、曲線WT4は、スロットルバルブ166を全開にした状態で、4気筒の全てで燃料噴射を行ない運転している場合のエンジン150のトルク−回転数の関係を示した特性線であり、WT2は、同じく2気筒を用いて運転している場合のトルク−回転数の関係を示す特性線である。この特性線WT2、WT4と、エンジン150の出力エネルギPe一定の特性線Peとが交わる点で、エンジン150は、運転されることになる。図示するように、同一のスロットル開度TAであれば、使用する気筒数、即ち排気量が小さい方が高回転数での運転領域で運転されることになり、ポンピングロスの増大は抑制されることが諒解される。
【0072】
かかる制御を行なうことにより、特に吸気弁152の開閉弁タイミングBTを遅角側に制御しかつ運転する気筒数EVを小さくすることにより、エンジン150の回転数Neを増加しつつ、出力するトルクTeを低下することができる。しかも、スロットルバルブ166の開度TAを絞ることをしていないので、スロットルバルブ166を閉じてエンジン150から出力トルクTeを低下する場合と比べて、ポンピングロスはほとんど増加しない。この結果、この変形例でも、動力出力装置全体の運転効率は、従来の制御と比べて高い状態に保たれることになる。なお、本実施例では、排気量の変更は、運転する気筒数を変更することにより実現したが、ピストンとクランクシャフトを連結するコンロッドが中折れしたタイプのコンロッドを用いてピストンのストローク量を可変することで排気量を調整する機構や、シリンダヘッドとシリンダブロックとを別体に設け両者の離間距離を可変とした排気量調整機構などを採用することも可能である。これらの機構は、圧縮比を可変する機構としても使用することができる。
【0073】
(2)第2実施例:EGR装置を用いた構成:
[1]基本構成:
次に、本発明の第2実施例について説明する。第2実施例の動力出力装置210の構成を図20に示した。図20では、クランクシャフト156から先の図示を省略したが、エンジン150にEGR装置200が設けられている点を除いて、ハードウェア構成は、第1実施例と同一である。EGR装置200は、図示するように、エンジン150の排気管22から吸気管24までの通路23を設け、この通路23を介して吸気管24に循環する排気の量を制御するEGR制御弁25を備える。EGR制御弁25は、エンジンECU170により制御される。
【0074】
第2実施例においても、基本的には、アクセルペダル164の踏込量や車速から、車両に対して要求されている動力を求め、エンジン150およびモータMG1,MG2により、要求された動力を出力すること、およびそのためにエンジン150の燃料噴射量やモータMG1,MG2の回転数やトルクを制御することなどは、第1実施例と同一である。第2実施例では、EGR装置200の存在を前提として、第1実施例同様ポンピングロスを抑制してエンジン150の運転ポイントを変更することにより、動力出力装置210全体として、高い運転効率を維持する点に特徴がある。
【0075】
具体的な制御について、図21により説明する。第2実施例の動力出力装置210は、図21に示すエンジン制御を実行する。このエンジン制御は、制御装置180がエンジンECU170と共に実行するものであり、まず第1実施例と同様(図17参照)、エンジン150の運転状態に関する情報を受け取り(ステップS256)、動力出力装置210が、エネルギの大きな再循環を生じる領域で運転されているか否かを判断する(ステップS257)。この判断は、第1実施例の図10におけるステップS122の判断と同じである。
【0076】
エネルギの再循環を避ける必要がない運転領域で運転されていると判断された場合には、スロットルバルブ166の開度TA、EGR装置200のEGR制御弁25の開度指令値θEGを、それぞれ通常用の関数fTA1、fEGR1を用いて、エンジン150の目標トルクTe*および目標回転数Ne*から設定する処理を行なう(ステップS258)。この場合、エンジン150は、図13に示した最も効率の高い運転ポイントの線Aに沿って運転されることになる。
【0077】
他方、エネルギの再循環を避けるべき運転領域で運転されていると判断された場合には、図16に示したように、エンジン150の運転ポイントは、エンジン150の目標トルクTe*が低く、目標回転数Ne*が高い運転ポイントに変更されているので、こうした運転ポイントでエンジン150を運転すべく、スロットルバルブ166の開度TA,EGR装置200のEGR制御弁25の開度指令値θEGを、エンジン150の目標トルクおよび回転数の再設定が行なわれた場合専用の関数fTA2、fEGR2を用いて設定する(ステップS259)。その後、設定したスロットル開度TA、EGR制御弁25の開度指令値θEGなどを用いて、エンジン150を運転する(ステップS260)。
【0078】
ステップS259において設定されるスロットルバルブ166の開度TA,EGR装置200のEGR制御弁25の開度指令値θEGについて説明する。本実施例では、スロットルバルブ開度TA、EGR制御弁25の開度指令値θEGは、車両の総合的な効率を高くする観点から、図9に示した大きなエネルギの再循環が生じ得る条件下では、動力の出力系において、次のように設定される。
【0079】
(A)EGR制御弁25の開度指令値θEG:ステップS259で説明したように、関数fEGR2により開度指令値θEGRは設定されるが、この関数fEGR2は、図22(A)に示すように、通常時に用いられる関数fEGR1より多量の排気再循環を行なうよう設定されている。通常時に用いられる関数fEGR1の一例を図22(B)に示した。図において、ハッチングを施した領域は、その内部で、指定した割合の排気再循環が行なわれることを示している。図22に示したように、エネルギの大きな再循環を避けるべき運転領域で車両が運転されていると判断された場合には、関数fEGR2を用いて、より多くの排気が吸気側に還流するように、EGR制御弁25の開度指令値θEGは設定される。なお、このとき、エンジン150を高回転数・低トルク側に制御するよう、他の制御量を制御してもよい。例えば、吸気弁152のバルブタイミングBTを遅角側に設定する制御を併せて行なうことも望ましい。あるいは、エンジン150の排気量を低減するといった制御を併せて行なってもよい。
【0080】
(B)スロットルバルブ開度TA:通常運転時と同一か、より開いた開度TAとして設定する。エンジン150が同一の動力出力しているという条件下では、EGR量が増大すると、各気筒に吸入される吸気における排気の割合が増加するので、スロットルバルブ166をほぼ全開にすることができる。従って、エネルギの大きな再循環が生じるような運転領域において、EGR量を増大する制御を行なう第2実施例では、スロットルバルブ開度TAを大きくするか、従来と比べてスロットルバルブ166を閉じる絞り量を抑制している。
【0081】
以上説明した第2実施例によれば、エネルギの再循環が生じた場合には、エンジン150の運転ポイントを高回転数・低トルクの側に制御すると共に、排気再循環量(EGR量)を増加し、更にスロットルバルブ168を絞らない制御を実施する。図23は、エンジン150が同一の動力出力しているという条件下でのEGR量とスロットルバルブ166の開度TAおよびポンピングロスとの関係を例示するグラフである。図示するように、EGR量が増大すると、各気筒に吸入される吸気における排気の割合が増加するので、スロットルバルブ166をほぼ全開にすることができる。従って、ポンピングロスの増加が抑制され、動力出力装置210全体の効率が運転ポイントの変更により低下するのを改善することができる。また、上記のように排気再循環を行なうことにより、シリンダ内の燃焼温度は低下する。このため、エンジン150の冷却損失が低減できるばかりか、エンジン150を高負荷領域で運転する際のノッキングが生じにくくなり、点火時期制御を十分に進角させることができるので、このノッキング改善によっても、エンジンの効率を向上することができる、という付随的効果を得ることもできる。
【0082】
[2]変形例1:
次に、第2実施例の変形例について説明する。変形例では、図24に示すように、エネルギの再循環が生じる領域であると判断(ステップS257)された場合、スロットル開度TAやEGR制御弁25の開度指令値θEGなどを求めた後(ステップS259)、更に車速(車速に相当するリングギヤの回転角度θrの変化量)とアクセルペダル164の踏込量APなどに基づいて、車両が高車速・定常走行時で運転されているか否かの判断を行なう(ステップS262)。車両が高車速・定常走行時であると判断された場合は、EGR制御弁25の開度指令値θEGを増量補正する処理を行なう(ステップS264)。この結果、車両が高車速・定常走行している場合には、第2実施例よりも大量のEGRが実施されることになる。この結果、第2実施例と比べて、更にポンピングロスを低減し、動力出力装置210全体の効率を改善することができる。
【0083】
通常、EGR量を増加し過ぎると、エンジン150のトルク変動などは増加する。図25は、EGR量と燃費率pおよびトルク変動率γとの関係を例示するグラフである。図示するように、燃費率p、即ち車両としての効率が最大となるEGR量E1でエンジン150を運転すると、エンジン150のトルク変動率γは大きくなり、逆にトルク変動率の小さな領域でエンジン150を運転すると、燃費率の最適な運転ポイントからはずれることになる。上記の変形例では、排気再循環量を、EGR量E1まで増加するので、燃費率pはもっとも高くなる。この状態では、通常トルク変動が大きくなり、車両のドライバビリティなどを低下させることがあり得るが、上記変形例では、高車速・定常走行時、即ちエンジンに対する要求パワーの変化が起きにくく、エンジンが安定した状態で運転される条件に限ってEGR量を増加補正している(ステップS264)ので、エンジン150のトルク変動などが生じにくく、かつ仮に生じたとしても動力出力装置210全体に影響を与えることがない。なお、EGR量を燃費率最大の点まで増加していると、エンジン150が出力できる動力はかなり小さくなっており、急な加速要求が生じた場合には、エンジン150の動力によっては対応することは困難だが、本実施例および変形例では、駆動軸112に直結されたリングギヤ122にモータMG2が結合されているので、このモータMG2をバッテリ194の電力により力行して、走行パワーをアシストしてやればよい。
【0084】
[3]変形例2:
上記実施例では、モータMG1は、エンジン150のトルクTeに比例するトルクTes=Te×ρ/(1+ρ)と釣り合ったトルクで運転される(図5参照)。従って、モータMG1に流れる電流Iから、エンジン150の定常トルクおよびトルク変動を検出することができる。そこで、この変形例では、図26に示すように、車両が大きなエネルギ再循環を生じる運転領域で運転されているとき(ステップS257)、スロットル開度TAやEGR制御弁25の開度指令値θEGを求めた後(ステップS259)、エンジン150のトルク変動γを検出し(ステップS272)、予め設定した下限の閾値γLおよび上限の閾値γHに対するトルク変動γの関係について判断する処理を行なう(ステップS274)。エンジン150のトルク変動γが上限の閾値γHより大きければ、EGR量の学習値GβをΔβだけ減少する処理を行ない(ステップS276)、エンジン150のトルク変動γが加減の閾値γL以下であれば(ステップS274)、EGR量の学習値GβをΔβだけ増加する処理を行ない(ステップS278)、トルク変動γが加減の閾値γLから上限の閾値γHまでの間に入っていれば、何も行なわない。その上で、EGR制御弁25の開度指令値θEGを学習値Gβだけ補正する処理を行なう(ステップS280)。この結果、EGR装置200を用いた排気再循環量(EGR量)は、トルク変動γが下限の閾値γLから上限の閾値γHの間収まるように制御されることになる。
【0085】
かかる制御を行なえば、エンジン150のトルク変動を所定範囲に収めつつ、車両の燃費率を最大とするEGR量を実現することができる。EGR量をトルク変動から許容される最大減まで確保しているので、スロットルバルブ166の開度TAを更に全開側に制御することができる。このため、ポンピングロスは一層低減でき、車両全体の効率は更に改善される。
【0086】
[4]変形例3:
次に、上述した第2実施例およびその変形例1ないし3において、動力出力装置210における大きなエネルギの再循環(図9参照)が生じるのを回避するために、エンジン150を最高効率の特性線Aから高回転数・低トルク側にずらした運転ポイントで運転する場合のエンジン150の出力エネルギPeの設定について説明する。この運転ポイントでエンジン150を運転する際には、動力出力装置210は、全体の効率を改善するために、大量の排気再循環を実施している。この変形例4では、図10のステップS114とステップS116との間に、図27に示したように、出力エネルギPeをなます処理()ステップS115)を実施している。
【0087】
エンジン150の目標エネルギPe*は、走行中の車両が必要とするエネルギPnと効率ηtとからステップS114において演算しているので、急加速や急減速の要求によってリングギヤ軸出力エネルギPr(ステップS106)が急変すれば、エンジン150の出力エネルギPeも急変する。そこで、この変形例4では、ステップS114においてエンジン150の出力エネルギPeを求めた後、これを前回求めたエンジン150の出力エネルギの前回値Pepreを用いてなます処理を行なう(ステップS115)。なます処理とは、この変形例では、今回求めた出力エネルギPeと前回値Pepreとを1対15の重み付け平均を取る演算、
Pe←(Pe+15・Pepre)/16 …(7)
を行なうことを意味している。もとより、なまし処理は、エンジンの出力トルクPeの急変を回避し得るものであればよく、例えばいわゆる積分処理として実現しても良いし、前回値からの変化量にリミットを掛けるような処理によっても実現することができる。上記式の重み付けの係数など、なましの程度は、動力出力装置210の特性などから適宜定めればよい。
【0088】
かかる変形例4では、エンジン150の出力エネルギPeを求める際、必要エネルギPnが急変しても出力エネルギPeをなます処理を行なっているので、エンジン150の出力エネルギPeが急変することがない。エンジン150の運転状態がいわゆる過渡状態となることがなく、不安定な運転状態の出現が抑制されるのである。このため、エンジンストールが生じやすい大量の排気再循環の実施時であっても、エンジン150の出力エネルギPeの急変によりエンジン150が失火するということがない。
【0089】
なお、本実施例では、エンジン150の出力トルクPeを求める際には、常になまし処理(ステップS115)を行なっているが、エンジン150の出力エネルギPeが前回値Pepreと比べて所定値以上変化した場合にのみなまし処理を行なうものとしても良い。
【0090】
(3)第3実施例:
[1]排気再循環量による運転ポイントの補正:
次に本発明の第3実施例について説明する。第3実施例は、第2実施例と同一のハードウェア構成(図20)を備え、以下に示すエンジン制御のみが異なっている。第2実施例では、第1実施例との共通のフローチャートである図10に示したように、大量のエネルギ再循環が生じる運転領域(図9参照)であると判断した場合(ステップS122)には、図16に示したように、エンジン150の運転ポイントを高回転数・低トルク側に変更している。第3実施例では、この処理に加えて、図28に示すように、エネルギの大きな再循環が生じていると判断され、エンジン150の目標トルクTe*の設定を行なった後、まず実際に行なわれている排気再循環の再循環量QEGRを検出する処理を行なう(ステップS301)。実際の排気再循環量は、現在のEGR制御弁25の開度指令値θEGを読み込むことで代用しても良いし、排気再循環用の通路23にセンサなどを設けて、実際の排気再循環量を測定してもよい。
【0091】
次に、この排気再循環量QEGRに応じて、補正係数ε1を求める処理を行なう(ステップS302)。補正係数ε1は、図29に示すように、実際の排気再循環量QEGRが所定値以上であれば、排気再循環量QEGRに応じて減少するような関数f4(QEGR)として設定することができる。次に、この補正係数ε1を用いて、既に設定したエンジン150の目標トルクTe*を補正する処理を行なう(ステップS303)。その後、エンジン150の、目標回転数Ne*を求める処理を行なう(ステップS126)。エンジン150は、図16に示したように、等エネルギ線上で制御されているから、目標トルクTe*を補正係数ε1だけ低減する補正を行なえば(ステップS303)、目標回転数Ne*は、補正係数ε1だけ増加されることになる。その後の制御は、第2実施例と同一である。
【0092】
上述した第3実施例によれば、車両の走行状態が、図9に示したエネルギの大きな再循環を生じる状態となったときには、まずエンジン150の運転ポイントを最も効率が高い運転ポイントから高回転数・低トルクの運転ポイントに変更すると共に、この変更をエンジン150における排気再循環量の増加により行なうことで、いわゆるポンピングロスを低減することにより、車両全体のエネルギを効率の低下を抑制し、動力出力装置としての効率を改善する。加えて、この第3実施例では、排ガス再循環を行なう場合には、排ガス再循環量QEGRが所定値以上の場合には、更にエンジン150の運転ポイントを高回転数・低トルクの運転ポイントに変更している。この結果、全体の効率は更に改善される。
【0093】
これは、図30に示したように、排気再循環を行なっている場合と、行なっていない場合では、エンジン150の効率が異なり、排気再循環を行なっている場合には、エンジン150の回転数を高くしても、効率の低下は僅かなものに抑制されるからである。従って、排気再循環量が大きい場合には、補正係数εを用いて、エンジン150の運転ポイントを更に高回転数・低トルク側に変更することで、動力出力装置210としての効率の低下は却って改善されることになる。この様子を示したのが、図31である。図31は、排気再循環量に応じてエンジンの運転ポイントを更に高回転数側に変更した場合の動力出力装置210の伝達効率を測定したグラフである。図示するように、排気再循環を伴いながら、エンジン150の回転数を設定する場合、エンジン150の回転数が高くなれば、動力出力装置210の伝達効率は却って改善されている。この点を更に、車両全体の効率として示したのが図32である。車両全体の効率は、エンジン150単体の効率と動力出力装置210の伝達効率の積として捉えることができる。図示するように、排気再循環を行なっていない場合(破線Noe)と所定以上の排気再循環量での排気再循環を行なっている場合(実線Moe)とでは、車両全体の効率が最も高くなる点が、エンジン回転数の高い側に移動することが理解される。従って、排気再循環を行なっている場合には、エンジン150の運転ポイントを更に高回転・低トルク側に変更する第3実施例の動力出力装置210は、車両全体としての効率を高くすることができる。
【0094】
上述した本実施例では、排気再循環量QEGRによりエンジン150の目標トルクTe*の補正係数ε1を求めたが、図10ステップS120で求める閾値Trefを修正する係数を、排気再循環量QEGRにより求め、ステップS124の計算を通して、エンジン150の運転ポイントをより高回転・低トルク側に設定して、車両全体の効率を高めるものとしても良い。
【0095】
[2]変形例:
次に、第3実施例の変形例について説明する。第3実施例の変形例では、第3実施例と同様に、排気再循環量QEGRが大きいほどエンジン150を高回転数・低トルク側の運転ポイントで運転するよう制御しているが、変形例では、排気再循環量に応じて回転数の補正量ΔNを修正して、同様の制御を実現している。この制御の一例を図33に示した。図33に示した処理は、図10におけるステップS116ないしS128を変更したものであり、トルク制御の他の処理は、第1実施例として説明した処理と同一である。なお、エネルギの再循環が生じていると判断されれば、排気再循環量(EGR制御弁25の開度θEGR)を大きくする処理が行なわれことは、第2実施例(図21)と同一である。
【0096】
この変形例では、図10に示したトルク制御ルーチンにおいて、エンジン150の目標回転数Ne*、目標トルクTe*を、等エネルギ線(Pe=Ne*×Te*)上で設定(ステップS116)すると、次に図33に示したように、現在の動力出力の状態が、図9に示した大きなエネルギの再循環が生じる状態か否かの判断を行なう(ステップS312)。エネルギの大きな再循環か乗じていると判断された場合には、第2実施例で現在の車速Vとエンジン150が出力するエネルギPeとから、エンジン150の回転数の調整分ΔNを求める処理を行なう(ステップS315)。このエンジン150の回転数の調整分ΔNは、エネルギの再循環の発生による効率の低下を防止するために、エンジン150の運転ポイントをより高回転側に修正するための調整分であり、予めマップの形で記憶している。既に説明したように、車両が高速走行をしているほど、またエンジン150の出力するエネルギPeが大きいほど、運転ポイントを高回転側に調整する調整分ΔNは大きく設定することができる。
【0097】
こうして調整分ΔNを演算する一方で、図21に示したエンジン制御処理も実施されているから、エンジン150における排気再循環量は増加される。そこで、次に、実際の排気再循環量QEGRを検出する処理を行ない(ステップS321)、検出した排気再循環量QEGRに基づいて、マップを参照し、補正係数ε2を求める処理を行なう(ステップS323)。補正係数ε2を求める関数f5(QEGR)の一例を、図34に示した。図示するように、補正係数ε2は、排気再循環量QEGRが所定値以上になると、値1以上に増加するよう設定されている。
【0098】
次に、求めた補正係数ε2を用いて、回転数の調整分ΔNを補正する処理を行なう(ステップS325)。この結果、排気再循環量QEGRが所定値以上の場合には、回転数の調整分ΔNは大きく補正されることになる。こうして補正係数ε2により補正された後の調整分ΔNを加えて、エンジン150の目標回転数Ne*を修正し(Ne*←Ne*+ΔN)、エンジン150の目標回転数Ne*も再度演算(Te*←Pe/Ne*)する処理を行なう(ステップS326)。
【0099】
以上説明した処理により、エンジン150の運転ポイントは、実施例の動力出力装置210において大きなエネルギの再循環(図9参照)が生じている場合には、高回転数・低トルクの側に修正され、しかも同時に排気再循環量を増加する処理を行なって、ポンピングロスの増加を抑制した状態でエンジン150を運転し、動力出力装置210全体としての効率を高く維持している。更に、この変形例では、排気再循環量QEGRが所定値以上であれば、運転ポイントを更に高回転数側に調整している。このため、動力出力装置210全体の効率は、一層高い状態に維持されることになる。
【0100】
なお、上述した実施例および変形例において、排気再循環量QEGRに代えて、シリンダに吸入される吸気全体に占める排気再循環量の割合を示すEGR率を用い、EGR率が所定値以上の場合に、補正係数ε1を小さくするものとしても良い。
【0101】
(4)第4実施例:
[1]基本構成:
次に本発明の第4実施例について説明する。第4実施例の動力出力装置410は、図35に示すように、第1実施例の構成に加えて、過給器400が設けられている。この実施例では、過給器400は、吸気通路に設けられたコンプレッサ421、このコンプレッサ421を駆動するために排気通路に設けられたタービン422、タービン422が設けられた排気通路に併設されたバイパス423、バイパス423に設けられたウェイスティングゲートバルブ425、およびウェイスティングゲートバルブ425を駆動するアクチュエータ420から構成されている。アクチュエータ420はエンジンECU170により制御されており、アクチュエータ420によってウェイスティングゲートバルブ425が開くと、タービン422を流れる排気量は低減し、タービン422により駆動されるコンプレッサ421の回転数も低下するから、過給量も低減される。アクチュエータ420によりウェイスティングゲートバルブ425が閉じられると過給量は増加する。
【0102】
[2]過給器の制御:
かかる構成を有する動力出力装置410では、エンジンECU170が、アクセルペダルの164の踏込量や車速Vなどに応じて、アクチュエータ420を制御し、タービン422を排気により駆動して、コンプレッサ421を回転し、過給を行なっている。この状態で、制御装置180は、図36に示したように、車両の運転状態を示す情報を読み込み(ステップS441)、動力出力装置410が、図9に示した大きなエネルギの再循環が生じている状態にあるか否かの判断を行なう(ステップS443)。エネルギの再循環が生じているか否かは、図6を用いて説明したように、プラネタリギヤを用いて動力の分配を行なっている実施例の構成では、モータMG1の回転の方向をチェックすることにより容易に検出することができる。モータMG1がエンジン150のクランクシャフト156と同方向に回転している場合には、エネルギの再循環が生じていないことになる。
【0103】
エネルギの再循環か生じていない場合には、アクチュエータ420を駆動してウェイスティングゲートバルブ425を閉じ、あるいは閉じたままに維持する(ステップS445)。この結果、タービン422は排気により駆動されて、コンプレッサ421を回転し、過給が行なわれるから、エンジン150を希薄混合気で燃焼させるリーンバーン制御が行なわれ、あるいは継続される(ステップS447)。この状態を図37に動作線TLNとして示した。この動作線TLNは、エンジン150に対して過給が行なわれ、混合気はリーンとなっている過給リーンバーンの場合の望ましい動作線である。
【0104】
他方、エネルギの再循環が生じていると判断される場合が存在する。車速があがり、モータMG2の回転数が増加し、走行に必要なトルクが小さい高速定常走行時には、エネルギの再循環が生じる。この場合、モータMG1はエンジン150のクランクシャフト156とは逆方向に回転することになる(図8、図9参照)。過給が行なわれており、かつ混合気がストイキの状態でエネルギの再循環が生じた場合の動作線を、図37に動作線TSAとして示した。比較のために、過給が行なわれていないエンジンにおける動作線SB、LBとして図38に示した。過給が行なわれていないエンジンでは、混合気をストイキで燃焼させている状態(動作線SB)で、エネルギの再循環が生じると、混合気をリーンにする制御を行なうと(動作線LB)、エンジンを高回転数・低トルクで運転でき、エネルギの再循環を解消し、かつエンジンのポンピングロスを抑制して、動力出力装置410全体の効率を高く保持することができることが、図38から理解される。
【0105】
これに対して、図37に示したように、過給が行なわれており、混合気がストイキの状態でエネルギの再循環が生じると(動作線TSA)、過給が行なわれていない場合のエンジンの回転数より元々低い回転数でエンジンは駆動されているから、リーンバーンを行なってエンジンの回転数を増加しても、エネルギの再循環は解消されない。この場合の動作線を、図37に、動作線TLAとして示した。この動作線TLAは、エンジン150に対して過給が行なわれ、混合気はリーンとなっている過給リーンバーンの場合の動作線である。
【0106】
本実施例の動力出力装置410では、図36において、過給を行ないつつエンジン150を運転していて、大きなエネルギの再循環(図9)が生じると(ステップS443)、アクチュエータ420を駆動してウェイスティングゲートバルブ425を開く(ステップS455)。この結果、排気はバイパス通路を介して排出されるからタービン422は駆動されず、コンプレッサ421による過給も行なわれない。そこで、混合気をリーンにし、かつ過給が行なわれていない状態(非過給リーンバーン状態)でエンジン150を運転する(ステップS457)。この場合の動作線NLBは、図38に示した非過給のリーンバーン実施時の動作線LBと、実質的に同じものとなる。この結果、過給リーンバーンで運転されていたエンジン150は、エネルギの再循環が生じた場合には、非過給リーンバーンで運転されることになる。
【0107】
以上説明した第4実施例によれば、過給を行なうエンジン150を用いた動力出力装置410において、過給時にエネルギの大きな再循環が生じると、過給を停止し、エンジンの運転ポイントを高回転数・低トルクに変更し、かつエンジン150をリーンバーンで運転する。この結果、エネルギの再循環は解消し、かつエンジンはリーンバーンで運転されるので、ポンピングロスは抑制され、エンジン150がそれ自体最も高効率の運転ポイントからはずれて運転されても、動力出力装置410全体の効率は、十分に高く維持されることになる。
【0108】
第4実施例では、過給を排気ターボにより行なう構成としたが、スーパーチャージャでも、電動ターボあるいは電動コンプレッサの何れの構成でも、同様に適用することができる。スーパーチャージャであれば、エネルギの再循環が生じた場合には、駆動プーリーとロータとの間に設けられた電磁クラッチを、電動コンプレッサの場合には駆動用モータへの電力線を遮断するリレーを、それぞれ駆動して、過給を停止するものとすればよい。なお、モータMG2に減速機を備えた構成であっても同様に適用し得ることは勿論である。
【0109】
なお、上記の実施例では、過給を行ないつつリーンバーンで運転する制御を併せて行なっているが、エネルギの大きな再循環が生じるような場合に、過給を行なっていないエンジンに対して、空燃比をリーンにすることで、動力出力装置としての効率を低下させないという処理を行なうことも可能である。即ち、エンジン150をストイキの空燃比で運転している場合に、図9に示した大きくエネルギの再循環が生じたと判断すると、エンジン150の運転ポイントを高回転数・低トルクに制御すると共に、吸入空気量に対する燃料噴射量を減らして空燃比をリーンに制御する。この結果、同じエンジン出力に対して、その運転ポイントをより高回転数・低トルクの側に制御することができ、しかも吸入空気量を増加していることからポンピングロスの増加を抑制することができ、動力出力装置としての効率を改善することができる。また直噴タイプのエンジンに適用することも可能である。
【0110】
(5)その他の変形例:
以上本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々なる態様で実施することができる。例えば、上述した各実施例の動力出力装置では、リングギヤ軸126に出力された動力をリングギヤ122に結合された動力取出ギヤ128を介してモータMG1とモータMG2との間から取り出したが、動力の取り出し方は、これ以外の構成によっても良い。また、エンジン150側からプラネタリギヤ120,モータMG2,モータMG1の順になるよう配置してもよい。この場合、サンギヤ軸125Bは中空でなくてもよく、リングギヤ軸126Bは中空軸とすればよい。こうすれば、リングギヤ軸126Bに出力された動力をエンジン150とモータMG2との間から取り出すことができる。
【0111】
また、各実施例では、3軸式動力入出力手段としてプラネタリギヤ120を用いたが、一方はサンギヤと他方はリングギヤとギヤ結合すると共に互いにギヤ結合しサンギヤの外周を自転しながら公転する2つ1組の複数組みのプラネタリピニオンギヤを備えるダブルピニオンプラネタリギヤを用いるものとしてもよい。この他、3軸式動力入出力手段として3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力を決定すれば、この決定した動力に基づいて残余の1軸に入出力される動力を決定されるものであれば如何なる装置やギヤユニット等、例えば、ディファレンシャルギヤ等を用いることもできる。また、3軸式動力入出力手段と発電機とからなる動力調整手段に代えていわゆるクラッチモータを用いた、電気分配式の動力出力装置に適用するものとしてもよい。電気分配式の動力出力装置としては、例えば特開平9−47011に示す構成が挙げられる。
【0112】
また、上述した各実施例では、エンジン150としてガソリンエンジンを用いたが、その他に、ディーゼルエンジンや、タービンエンジンや、ジェットエンジンなど各種の内燃あるいは外燃機関を用いることもできる。
【0113】
さらに、各実施例では、モータMG1およびモータMG2にPM形(永久磁石形;Permanent Magnet type)同期電動機を用いたが、回生動作および力行動作の双方が可能なものであれば、その他にも、VR形(可変リラクタンス形;Variable Reluctance type)同期電動機や、バーニアモータや、直流電動機や、誘導電動機や、超電導モータや、ステップモータなどを用いることもできる。
【0114】
あるいは、各実施例では、第1および第2の駆動回路191,192としてトランジスタインバータを用いたが、その他に、IGBT(絶縁ゲートバイポーラモードトランジスタ;Insulated Gate Bipolar mode Transistor)インバータや、サイリスタインバータや、電圧PWM(パルス幅変調;Pulse Width Modulation)インバータや、方形波インバータ(電圧形インバータ,電流形インバータ)や、共振インバータなどを用いることもできる。
【0115】
また、バッテリ194としては、Pbバッテリ,NiMHバッテリ,Liバッテリなどを用いることができるが、バッテリ194に代えてキャパシタを用いることもできる。
【0116】
以上の実施例では、動力出力装置を車両に搭載する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、船舶,航空機などの交通手段や、その他各種産業機械などに搭載することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の一実施例としての動力出力装置110の概略構成を示す構成図である。
【図2】実施例の動力出力装置110の部分拡大図である。
【図3】実施例の動力出力装置110を組み込んだ車両の概略の構成を例示する構成図である。
【図4】実施例の動力出力装置110の動作原理を説明するためのグラフである。
【図5】実施例におけるプラネタリギヤ120に結合された3軸の回転数とトルクの関係を示す共線図である。
【図6】実施例におけるプラネタリギヤ120に結合された3軸の回転数とトルクの関係を示す共線図である。
【図7】実施例の動力出力装置110が図5の共線図の運転状態にあるときのエネルギの流れを模式的に例示する模式図である。
【図8】実施例の動力出力装置110が図6の共線図の運転状態にあるときのエネルギの流れを模式的に例示する模式図である。
【図9】大きなエネルギの循環が生じているときのエネルギの流れを模式的に例示する模式図である。
【図10】実施例の制御装置180により実行されるトルク制御ルーチンを例示するフローチャートである。
【図11】リングギヤ軸126の回転数NrとアクセルペダルポジションAPとトルク指令値Tr*との関係を例示する説明図である。
【図12】バッテリ194の残容量BRMと充電可能な電力との関係の一例を示すグラフである。
【図13】エンジン150の運転ポイントと効率の関係を例示するグラフである。
【図14】エネルギが一定の曲線に沿ったエンジン150の運転ポイントの効率とエンジン150の回転数Neとの関係を例示するグラフである。
【図15】閾値Trefとリングギヤ軸126の回転数Nrとの関係を例示するマップである。
【図16】再設定される前後の目標トルクTe*と目標回転数Ne*との関係を例示する説明図である。
【図17】エンジン制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図18】変形例としてのエンジン制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図19】気筒数が異なる場合のエンジン回転数とエンジントルクとの関係を例示するグラフである。
【図20】第2実施例の動力出力装置210の概略構成を示す構成図である。
【図21】第2実施例におけるエンジン制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図22】エンジンにおける排気再循環量の設定を示すグラフである。
【図23】EGR量とスロットル開度TAおよびポンピングロスPPLとの関係を例示するグラフである。
【図24】第2実施例の変形例におけるエンジン制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図25】EGR量と燃費率Pおよびトルク変動γとの関係を示すグラフである。
【図26】第2実施例の第2の変形例におけるエンジン制御処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図27】第2実施例の第3の変形例における処理の要部を示すフローチャートである。
【図28】第3実施例におけるエンジン制御の要部を示すフローチャートである。
【図29】排気再循環量QEGRに基づく補正係数ε1を求める関数f4(QEGR)を例示するグラフである。
【図30】第3実施例におけるエンジン回転数Neとエンジンの効率との関係を例示するグラフである。
【図31】エンジン回転数Neと動力出力装置の伝達効率との関係を例示するグラフである。
【図32】エンジンの回転数Neと車両全体の効率との関係を例示するグラフである。
【図33】第3実施例の変形例における処理の要部を示すフローチャートである。
【図34】排気再循環量QEGRに基づく補正係数ε2を求める関数f5(QEGR)を例示するグラフである。
【図35】第4実施例の動力出力装置の概略構成を示す構成図である。
【図36】第4実施例における過給制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図37】第4実施例における動作線を例示する説明図である。
【図38】非過給状態での動作線を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0118】
110…動力出力装置
111…動力伝達ギヤ
112…駆動軸
114…ディファレンシャルギヤ
116,118…駆動輪
117,119…駆動輪
119…ケース
120…プラネタリギヤ
121…サンギヤ
122…リングギヤ
123…プラネタリピニオンギヤ
124…プラネタリキャリア
125…サンギヤ軸
126…リングギヤ軸
128…動力取出ギヤ
129…チェーンベルト
132…ロータ
133…ステータ
134…三相コイル
135…永久磁石
139…レゾルバ
142…ロータ
143…ステータ
144…三相コイル
145…永久磁石
149…レゾルバ
150…エンジン
151…燃料噴射弁
152…吸気弁
153…開閉特性変更機構
154…燃焼室
155…ピストン
156…クランクシャフト
157…レゾルバ
158…イグナイタ
160…ディストリビュータ
162…点火プラグ
164…アクセルペダル
164a…アクセルペダルポジションセンサ
165…ブレーキペダル
165a…ブレーキペダルポジションセンサ
166…スロットルバルブ
167…スロットルバルブポジションセンサ
168…アクチュエータ
170…エンジンECU
172…吸気管負圧センサ
173…カムシャフトポジションセンサ
174…水温センサ
176…回転数センサ
178…回転角度センサ
179…スタータスイッチ
180…制御装置
182…シフトレバー
184…シフトポジションセンサ
190…制御CPU
190a…RAM
190b…ROM
191…第1の駆動回路
192…第2の駆動回路
194…バッテリ
195,196…電流検出器
197,198…電流検出器
199…残容量検出器
200…EGR装置
210、410…動力出力装置
400…過給器
L1,L2…電源ライン
MG1…モータ
MG2…モータ
Tr1〜Tr6…トランジスタ
Tr11〜Tr16…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として、燃料の燃焼により動力を取り出す原動機と電気エネルギを利用して動力を入出力する電動機とを備え、該原動機および該電動機と駆動軸との間で動力を分配あるいは合成する動力出力装置であって、
前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合され、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整する動力調整手段と、
前記原動機および電動機の運転状態に基づく総合的な効率の観点から、前記原動機を運転する回転数および出力トルクからなる目標運転ポイントを設定する運転ポイント設定手段と、
前記原動機のポンピングロスの増大を抑制しつつ該原動機の運転ポイントを変更する原動機運転ポイント変更機構と、
該原動機運転ポイント変更機構を駆動して、前記原動機の運転ポイントを前記目標運転ポイントに制御する原動機制御手段と、
前記運転ポイントが変更された後の前記原動機の運転状態に基づいて、前記駆動軸に目標動力が出力されるよう、前記電動機および前記動力調整手段を制御する電動機制御手段と
を備える動力出力装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力出力装置であって、
前記電動機は、前記駆動軸との間で動力のやり取りを行なう位置に設けられ、
前記運転ポイント設定手段は、前記総合的な効率の観点として、前記原動機から前記駆動軸に到る動力の経路において、エネルギの循環が生じる状態を生じさせないように、前記目標運転ポイントの設定を行なう手段である
動力出力装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力出力装置であって、
前記原動機運転ポイント変更機構は、前記原動機における排気循環量を可変するEGR装置であり、
前記原動機制御手段は、前記運転ポイント設定手段が、前記目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクを設定したとき、前記EGR装置を駆動して、前記原動機への排気循環量を増大する手段である
動力出力装置。
【請求項4】
請求項2記載の動力出力装置であって、
前記原動機運転ポイント変更機構は、前記原動機に設けられた吸気弁および/または排気弁の当該原動機の出力トルクに影響を与える特性を可変する吸排気弁特性可変装置であり、
前記原動機制御手段は、前記運転ポイント設定手段が、前記目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクを設定したとき、前記吸排気弁特性可変装置を駆動して、前記原動機への吸気弁および/または排気弁の特性を、低出力トルク側に変更する手段である
動力出力装置。
【請求項5】
請求項4記載の動力出力装置であって、
前記吸排気弁の特性は、吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開弁および閉弁の少なくとも一方について、開閉弁タイミングおよびリフト量の少なくとも一方である
動力出力装置。
【請求項6】
請求項2記載の動力出力装置であって、
前記原動機運転ポイント変更機構は、前記原動機における空気と燃料の混合の比率である空燃比を可変する空燃比可変装置であり、
前記原動機制御手段は、前記運転ポイント設定手段が、前記目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクを設定したとき、前記空燃比可変装置を駆動して、前記原動機の空燃比をリーン側に制御する手段である
動力出力装置。
【請求項7】
請求項2記載の動力出力装置であって、
前記原動機運転ポイント変更機構は、前記原動機における過給量を可変する過給量可変装置であり、
前記原動機制御手段は、前記運転ポイント設定手段が、前記目標運転ポイントとして、従前の出力トルクより低い出力トルクを設定したとき、前記過給量可変装置を駆動して、前記原動機の過給量を減らす側に制御する手段である
動力出力装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の動力出力装置であって、
前記原動機の出力トルクの変動量を検出するトルク変動検出手段と、
該検出された出力トルクの変動量が所定以上とならないように、前記原動機運転ポイント変更機構の制御量を制限する制御量制限手段と、
該制御量の制限により生じた前記出力トルクの目標運転ポイントからのズレを補償する出力トルク補償手段と
を備えた動力出力装置。
【請求項9】
前記出力トルク補償手段は、前記原動機の吸気通路の開口面積を調整するスロットルバルブである請求項8記載の動力出力装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか記載の動力出力装置であって、
前記原動機制御手段は、前記目標運転ポイントに向けて前記原動機の運転ポイントを制御している間に、前記駆動軸に要求される動力の目標値が変更された場合、前記原動機が目標運転ポイントに至るまで、前記原動機の運転状態を連続的に制御する手段である
動力出力装置。
【請求項11】
動力源として、燃料の燃焼により動力を取り出す原動機と、電気エネルギを利用して動力を入出力する電動機と、動力が出力される駆動軸との間で、動力を分配あるいは合成することで、最終的に動力を前記駆動軸に出力する動力出力方法であって、
前記原動機の出力軸および前記駆動軸に結合された動力調整手段を用いて、前記原動機から出力された動力を前記駆動軸に伝達すると共に、該伝達される動力の大きさを電力のやりとりにより調整し、
前記原動機および電動機の運転状態に基づく総合的な効率の観点から、前記原動機を運転する回転数および出力トルクからなる目標運転ポイントを設定し、
前記原動機のポンピングロスの増大を抑制しつつ該原動機の運転ポイントを変更する原動機運転ポイント変更機構を駆動して、前記原動機の運転ポイントを前記目標運転ポイントに制御し、
前記運転ポイントが変更された後の前記原動機の運転状態に基づいて、前記駆動軸に目標動力が出力されるよう、前記電動機および前記動力調整手段を制御する
動力出力方法。
【請求項12】
請求項11記載の動力出力方法であって、
前記電動機を、前記駆動軸との間で動力のやり取りを行なう位置に設けると共に、
前記目標運転ポイントの設定は、総合的な効率の観点から、前記原動機から前記駆動軸に到る動力の経路において、エネルギの循環が生じる状態を生じさせないように行なう
動力出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2006−9601(P2006−9601A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184388(P2004−184388)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】