説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体装置の製造において、細線化したゲート電極上のシリサイドにおける凝集の防止および当該シリサイドの薄膜化を両立する。
【解決手段】NMOSトランジスタのゲート電極12並びにソース・ドレイン領域15の上部、およびPMOSトランジスタのゲート電極22並びにソース・ドレイン領域25には、それぞれNiシリサイド膜12s,15s,22s,25sが自己整合的に形成されている。Niシリサイド膜12s,15s,22s,25sは、NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2である。但しそれらはPt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満の固溶量で含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特に、シリサイドの形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に形成されたポリシリコンのゲート電極と、当該基板上部に形成されたソース・ドレイン領域とを備えるトランジスタは広く知られている。またそのトランジスタのゲート電極およびソース・ドレイン領域の低抵抗化を図るために、それらの上部に金属シリサイド(以下、単に「シリサイド」と称す)を形成することが一般的に行われている。その形成手法としては、特定の部分に自己整合的にシリサイドを形成する、いわゆる「サリサイド(SALICIDE:Self ALIgned siliCIDE)技術」が知られている。
【0003】
サリサイド技術を用いてゲート電極およびソース・ドレイン領域にシリサイドを形成する場合、まずゲート電極上面およびソース・ドレイン領域上面が露出したトランジスタの上に所定の金属膜を形成する。そして熱処理を行うことで、金属膜とそれに接したシリコンの部分すなわちゲート電極およびソース・ドレイン領域とを反応させ、その後に余剰な未反応の金属膜を取り除く。その結果、ゲート電極上部およびソース・ドレイン領域上部のそれぞれにシリサイドが自己整合的に形成される。
【0004】
サリサイド技術は、シリサイドの形成の際にマスクによる位置合わせが不要なため、構造が微細化した半導体デバイスに対しても容易に対応することができる。しかしトランジスタのゲート電極の細線化が進むと、シリサイドの形成の際に別の問題が生じる。即ち、ゲート電極が細線化されるとその上部に形成されるシリサイドに凝集が生じ、それに起因する断線の問題が生じる。そのためデバイスの微細化の進行と共に、シリサイド形成のための金属材料としては、凝集がより生じにくいものが選択されるようになった。具体的には、Ti,Co,Niという順に金属材料のトレンドが推移しており、近年ではNiを用いることによって、ゲート電極上のシリサイドの凝集の問題は解決されつつある。
【0005】
一方、シリサイドはスパイク状に成長し易い傾向があり、ソース・ドレイン領域においてはシリサイドとシリコンとの界面は平坦ではなかった。特にソース・ドレイン領域の形成深さ(pn接合面の深さ)が浅い場合には、そのスパイク状のシリサイドが、ソース・ドレイン領域とウェル領域(トランジスタのボディ)との間の接合リーク電流を増加させる要因となる。ゲート電極の細線化が進んでゲート長が短くなると、ソース・ドレイン領域をより浅く形成する必要が生じるため、近年では、接合リーク電流を抑制するためにNiシリサイドを薄膜化するプロセスの検討も行われている。
【0006】
またサリサイド技術では、上記のようにゲート電極上部のシリサイドとソース・ドレイン領域上部のシリサイドとが同じ工程で形成されるため、ソース・ドレイン領域のシリサイドを薄膜化しようとすると、当然ゲート電極のシリサイドも薄膜化されることとなる。凝集はシリサイドが薄いほど生じやすいため、シリサイドの薄膜化が成されると上記の断線の問題が再燃する。
【0007】
つまり、細線化したゲート電極のシリサイドの凝集を防ぐことと、シリサイドの薄膜化を図ることとは、二律背反の関係と言える。従って、細線化したゲート電極の抵抗値に落ち零れを生じさせないことと、浅いソース・ドレイン領域における接合リーク電流を増加させないことを両立させることは困難となってきた。
【0008】
そしてこれらの問題を解決するための研究も進められており、例えば、下記の特許文献1では、Erが添加されたNi合金膜を用いて、ゲート電極およびソース・ドレイン領域にNiシリサイドを形成する手法が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−067225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1の手法を用いることにより、細線化したゲート電極上部のシリサイドでの凝集を抑制しつつ、シリサイドを従来よりも薄膜化することができる。しかし、この手法においても、ゲート電極のNiシリサイドの凝集の防止とソース・ドレイン領域のシリサイドの薄膜化との両立には限界があり、今後予想されるゲート電極の更なる細線化並びにソース・ドレイン領域の更なる浅接合化に対応することが可能な、新たなシリサイド形成技術が望まれている。
【0011】
またトランジスタ構造の微細化が進むと、ソース・ドレイン配線の寄生抵抗に占めるソース・ドレイン領域のシリコンとシリサイドとの間の界面抵抗の割合が大きくなり、この界面抵抗がトランジスタの駆動能力(電流を流す能力)を劣化させる原因となり得ることが、近年の研究により明らかになってきた。
【0012】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、半導体装置の製造において、細線化したゲート電極上のシリサイドにおける凝集の防止と当該シリサイドの薄膜化とを両立できるシリサイド形成技術を提案することを第1の目的とする。さらに当該技術において、ソース・ドレイン領域におけるシリサイドとシリコンと間の界面抵抗を低く抑えることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体装置は、ポリシリコンのゲート電極並びに半導体基板上部に形成されたソース・ドレイン領域を備える。ゲート電極およびソース・ドレイン領域の少なくとも片方の上部には、Niシリサイド膜が形成される。このNiシリサイド膜は、NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2である。但しそのNiシリサイド膜は、Pt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%(原子パーセント)未満の固溶量で含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るNiシリサイドは、その形成過程でスパイク状の局所的な成長が生じず、また凝集も起こり難い。よってソース・ドレイン領域とNiシリサイド膜との界面が平坦になり、ソース・ドレイン領域における接合リーク電流の増大が抑制される。またゲート電極上部のNiシリサイド膜での凝集が抑制されるため、ゲート電極の細線化およびNiシリサイド膜の薄膜化が成された場合でも、Niシリサイド膜における断線を抑制することができる。つまり、ソース・ドレイン領域の接合リーク電流の増大を抑制することと、ゲート電極上のNiシリサイド膜における凝集の発生を抑制することとを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、Niシリサイドの形成工程において、シリコン(Si)と反応させるNi膜にPt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を含ませることにより、形成されるNiシリサイドにおけるスパイク状の成長、並びに凝集の発生が抑制されることを見出した。また本発明者らは、特に形成されたNiシリサイドの化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2であり、且つ上記の元素を合計で10at%未満含む場合には、その電気的特性も良好であることを見出した。
【0016】
このNiシリサイドの形成手法を細線化されたトランジスタに適用することにより、細線化したゲート電極上部のシリサイドの凝集の防止、並びにソース・ドレイン領域における接合リーク電流の低減を両立させることが期待できる。以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0017】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す図である。当該半導体装置は、シリコンの半導体基板1に形成されたNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを備えている。NMOSトランジスタはPウェル10内に形成され、PMOSトランジスタはNウェル20内に形成され、各トランジスタの間は分離絶縁膜2により分離されている。本実施の形態は、サリサイド技術が適用可能な構造を有するトランジスタであれば適用可能である。図1においては典型的な構造のMOSトランジスタを代表的に示している。
【0018】
NMOSトランジスタは、半導体基板1上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12を備えている。ゲート電極12の側面には、シリコン酸化膜13aおよびシリコン窒化膜13bから成るサイドウォール13が形成されている。また当該NMOSトランジスタは、半導体基板1の上部におけるゲート電極12の両側に、SDE(Source-Drain Extension)領域16を含むN型のソース・ドレイン領域15を備えている。そして上記のゲート電極12およびソース・ドレイン領域15の上部には、それぞれNiシリサイド膜12s,15sが自己整合的に(サリサイド技術を用いて)形成されている。
【0019】
PMOSトランジスタも、上記NMOSトランジスタと同様の構成を有している。即ち、当該PMOSトランジスタは、半導体基板1上にゲート絶縁膜21を介して形成されたゲート電極22を備えている。ゲート電極22の側面には、シリコン酸化膜23aおよびシリコン窒化膜23bから成るサイドウォール23が形成されている。また当該PMOSトランジスタは、半導体基板1の上部におけるゲート電極22の両側に、SDE領域26を含むソース・ドレイン領域25を備えている。そして上記のゲート電極22およびソース・ドレイン領域25の上部には、それぞれNiシリサイド膜22s,25sが自己整合的に形成されている。
【0020】
上記のNiシリサイド膜12s,15s,22s,25sは、NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2である。但し、それらNiシリサイド膜12s,15s,22s,25sは、Pt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満の固溶量で含んでいる。そのようなNiシリサイドは、その形成過程でスパイク状の局所的な成長が生じず、また凝集も起こり難い。
【0021】
よってソース・ドレイン領域15とNiシリサイド膜15sとの界面、並びにソース・ドレイン領域25とNiシリサイド膜25sとの界面にはスパイク状の成長がなく、当該界面は平坦になる。従って、ソース・ドレイン領域15,25が浅く形成された場合でも、ソース・ドレイン領域15とPウェル10との間、並びにソース・ドレイン領域25とNウェル20との間の接合リーク電流の増大は抑制される。
【0022】
またゲート電極12,22上部のNiシリサイド膜12s,22sにおいて凝集が生じにくいため、ゲート電極12,22の細線化およびNiシリサイド膜12s,22sの薄膜化が成された場合でも、Niシリサイド膜12s,22sにおける断線は生じない。
【0023】
このように本実施の形態では、Niシリサイド膜15s,25sに起因するソース・ドレイン領域15,25の接合リーク電流の増大を抑制する効果と、ゲート電極12,22上のNiシリサイド膜12s,22sにおける凝集の発生を抑制する効果の両方を得ることができる。
【0024】
このことはトランジスタ構造の微細化を進める上で非常に重要な効果である。先に述べたように、ゲート電極12,22を細線化するとソース・ドレイン領域15,25を浅くする必要が生じ、従来はそれに伴う接合リーク電流の増大が懸念されていたが、本実施の形態に係る半導体装置においては、Niシリサイド膜15s,25sとソース・ドレイン領域15,25との界面は平坦であるため接合リーク電流の増大は抑制される。
【0025】
しかしゲート電極12,22の細線化がさらに進み、ソース・ドレイン領域15,25をより浅くした場合には、本実施の形態においてもNiシリサイド膜15s,25sを薄くする必要が生じる。特にサリサイド技術では、Niシリサイド膜15s,25sを薄くすると、それと同じ工程で形成されるNiシリサイド膜12s,22sも薄くなる。そのため細線化されたゲート電極12,22上で、Niシリサイド膜12s,22sの凝集が生じることが懸念されるが、本実施の形態のNiシリサイド膜12s,22sは凝集が生じにくい特徴を有しておりその問題は伴わない。
【0026】
つまり本実施の形態によれば、Niシリサイド膜12s,22sの凝集が発生し難く、ゲート電極12,22のさらなる細線化を図ることができ、なお且つ、それによってソース・ドレイン領域15,25を浅く形成する必要が生じても、Niシリサイド膜15s,25sに起因する接合リーク電流の増大を抑制することができる。従って、トランジスタ構造の微細化に大きく貢献できる。
【0027】
Niシリサイド膜12s,15s,22s,25sの膜厚をある程度大きく確保できる場合には、Niシリサイド膜12s,22sの凝集の問題、およびNiシリサイド膜15s,25sのスパイク状の成長による接合リーク電流の問題は、従来の手法でも顕著ではないであろう。しかし、トランジスタ構造の微細化が進み、Niシリサイド膜12s,15s,22s,25sの膜厚を薄くした場合、特にその膜厚が20nm以下になったときに、本発明の効果が充分に発揮される。
【0028】
本実施の形態の半導体装置が備えるNiシリサイド膜の断面のTEM(Transmission Electron Microscope)観察写真を図16に示す。同図の上段に示すように、Pt,V,Pd,Zr,Hf,Nb等の元素添加しないNi(pure−Ni)を用いて形成したNiシリサイド膜においては、Niスパッタ膜厚が10nm(Niシリサイド膜厚:20nm相当)では凝集あるいはスパイク状成長が確認されないものの、それが5nm(Niシリサイド膜厚:10nm相当)になると凝集部分が確認され、また2nm(Niスパッタ膜厚:4nm)ではスパイク状成長が確認される。これに対し、Vを5at%添加したNiを用いた場合は、いずれのNiスパッタ膜厚に対してもシリサイド膜とSi基板との界面は平坦であり、凝集あるいはスパイク状成長した部分は観察されない。
【0029】
また本発明者は、本実施の形態のNiシリサイド膜の耐熱性を評価するために、Niシリサイド膜の形成後に追加アニールを行い、その温度に対するNiシリサイド膜のシート抵抗の変化を観察する実験を行った。その結果を図17に示す。Pt,V,Zr,Hf等の元素が添加されたNiを用いて形成したNiシリサイド膜では、無添加のNi(pure−Ni)を用いたものよりも、シート抵抗(Rs)が上昇する温度が100℃ほど高いことが分かる。シート抵抗の上昇は、主にシリサイド膜の凝集に起因したものであると考えられるので、本発明によって凝集が生じる温度が高温化し、耐熱性が向上したことが分かる。つまり本実施の形態におけるNiシリサイド膜には、凝集が生じにくいことが確認された。
【0030】
図2および図3は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。以下、これらの図を参照して、当該製造方法について説明する。
【0031】
まず、常法を用いて、半導体基板1にNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを形成する(図2)。この工程は、既知の技術を用いることが可能であるのでここでの詳細な説明は省略する。このとき図2の如く、ゲート電極12,22およびソース・ドレイン領域15,25の上面は露出している。
【0032】
次いで、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを覆うように、所定のNi膜30をPVD(Physical Vapor Deposition)法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。このNi膜30は、Niを主成分とし、Pt、V、Pd、Zr、Hf、Nbのいずれか一つ以上を含み、その添加量が合計で10at%未満のものである。
【0033】
さらに、Ni膜30の上に、高融点金属膜(例えばTiN等)による酸化防止膜31を、同じくPVD法あるいはCVD法により成膜する(図3)。Ni膜30の形成および酸化防止膜31の形成は、真空保持した同一の処理装置内で続けて行うとよい。
【0034】
その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)等の熱処理を施し、Ni膜30に接するシリコンの部分、すなわちゲート電極12,22並びにソース・ドレイン領域15,25をNi膜30と反応させる。その結果、それらの上部に自己整合的に、Niシリサイド膜12s,15s,22s,25sがそれぞれ形成される。
【0035】
上記のとおりNi膜30は、Niを主成分とし、Pt、V、Pd、Zr、Hf、Nbのいずれか一つ以上を含み、その添加量が合計で10at%未満のものである。従って、形成されたNiシリサイド膜12s,15s,22s,25sのそれぞれは、NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2であり、且つPt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満含むものとなる。
【0036】
そして酸化防止膜31および余剰な未反応のNi膜30を除去することで、図1に示した半導体装置構造が完成する。
【0037】
その後は常法により、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ上に層間絶縁膜を形成し、その内部にNiシリサイド膜12s,15s,22s,25s等に接続するコンタクトを形成する(不図示)。これ以降の工程は本発明のとの関連が薄いため、説明は省略する。
【0038】
なお本実施の形態では、サリサイド技術を用いて、MOSトランジスタが備えるゲート電極並びにソース・ドレイン領域の上部全てに自己整合的にNiシリサイド膜を形成する例を示したが、例えば、ソース・ドレイン領域の上部のみ、あるいはゲート電極上部のみにシリサイド膜を形成する場合にも適用可能である。
【0039】
<実施の形態2>
図3を用いて説明したように、実施の形態1では、NMOSトランジスタのソース・ドレイン領域15上部のNiシリサイド膜15sと、PMOSトランジスタのソース・ドレイン領域25上部のNiシリサイド膜25sとは、共通のNi膜30を用いて形成されていた。従って、実施の形態1のNiシリサイド膜15s,25sは、Pt、V、Pd、Zr、Hf、Nbのうち互いに同じものを含むこととなる。
【0040】
図4は、実施の形態2に係る半導体装置の構造を示す図である。当該半導体装置は、実施の形態1のもの(図1)とほぼ同様であるが、NMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sと、PMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sとは、Pt、V、Pd、Zr、Hf、Nbのうち互いに異なるものを含んでいる。具体的には、NMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sには、Zr、Hf、Nbのうちの1つ以上を、PMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sには、Pt、V、Pdのうちの1つ以上をそれぞれ含んでいる。
【0041】
なお、Niシリサイド膜12s,15s,22s,25sのそれ以外の条件は、実施の形態1と同様である。つまり、Niシリサイド膜12s,15s,22s,25sは、NiおよびSiを主成分としており、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2であって、上記の各元素の含有量は合計で10at%未満である。
【0042】
つまり本実施の形態では、NMOSトランジスタのNiシリサイド膜15sおよびPMOSトランジスタのNiシリサイド膜25sに、それぞれソース・ドレイン領域15,25の極性に適した元素を固溶させている。それにより、NMOSトランジスタにおいてNiシリサイド膜15sとソース・ドレイン領域15との間の界面抵抗を小さく抑える効果と、PMOSトランジスタにおいてNiシリサイド膜25sとソース・ドレイン領域25との間の界面抵抗を小さく抑える効果の両方を得ることができる。その結果、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタの両方で、駆動能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0043】
図5〜図10は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。以下、これらの図を参照して、当該製造方法について説明する。
【0044】
まず常法によりNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを形成した後、それらの上にCVD法によりシリコン酸化膜を堆積する。そして当該シリコン酸化膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、PMOSトランジスタ上のシリコン酸化膜を除去する。その結果、NMOSトランジスタ上を覆い、PMOSトランジスタ上が開口されたシリコン酸化膜による第1のシリサイドブロック膜33aが形成される(図5)。
【0045】
次いで半導体基板1上の全面に、第1のNi膜30aをPVD法あるいはCVD法により形成する。この第1のNi膜30aは、Niを主成分とし、Pt、V、Pdのいずれか一つ以上を含み、その添加量が合計で10at%未満のものとする。
【0046】
さらに、第1のNi膜30aの上に、高融点金属膜(例えばTiN等)による第1の酸化防止膜31aを、同じくPVD法あるいはCVD法により成膜する(図6)。第1のNi膜30aの形成および第1の酸化防止膜31aの形成は、真空保持した同一の処理装置内で続けて行うとよい。
【0047】
その後、RTA等の熱処理を施し、第1のNi膜30aに接するシリコンの部分、すなわちPMOSトランジスタのゲート電極22並びにソース・ドレイン領域25を第1のNi膜30aと反応させる。その結果、それらの上部に自己整合的に、Pt、V、Pdのいずれか一つ以上を合計で10at%未満含むNiシリサイド膜22s,25sがそれぞれ形成される。そして第1の酸化防止膜31aおよび余剰な未反応の第1のNi膜30aを除去した後、RCA洗浄などにより第1のシリサイドブロック膜33aを除去する(図7)。
【0048】
続いて、再びNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ上にシリコン酸化膜を堆積し、今度はNMOSトランジスタ上のシリコン酸化膜を除去する。その結果、PMOSトランジスタ上を覆い、NMOSトランジスタ上が開口されたシリコン酸化膜による第2のシリサイドブロック膜33bが形成される(図8)。
【0049】
次いで半導体基板1上の全面に、第2のNi膜30bをPVD法あるいはCVD法により形成する。この第2のNi膜30bは、Niを主成分とし、Zr、Hf、Nbのいずれか一つ以上を含み、その添加量が合計で10at%未満のものとする。
【0050】
さらに、第2のNi膜30bの上に、高融点金属膜による第2の酸化防止膜31bを、同じくPVD法あるいはCVD法により成膜する(図9)。第2のNi膜30bの形成および第2の酸化防止膜31bの形成も、真空保持した同一の処理装置内で続けて行うとよい。
【0051】
その後、再びRTA等の熱処理を施し、第2のNi膜30bに接するシリコンの部分、すなわちNMOSトランジスタのゲート電極12並びにソース・ドレイン領域15を第2のNi膜30bと反応させる。その結果、それらの上部に自己整合的に、Zr、Hf、Nbのいずれか一つ以上を合計で10at%未満含むNiシリサイド膜12s,15sがそれぞれ形成される。そして第2の酸化防止膜31bおよび余剰な未反応の第2のNi膜30bを除去した後、RCA洗浄などにより第2のシリサイドブロック膜33bを除去する(図10)。
【0052】
以上により、PMOSトランジスタ側とNMOSトランジスタ側とで異なる元素を含むNiシリサイド膜12s,15s,22s,25sを備える、図4に示した半導体装置が形成される。
【0053】
その後は常法により、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ上に層間絶縁膜を形成し、その内部にNiシリサイド膜12s,15s,22s,25s等に接続するコンタクトを形成する(不図示)。これ以降の工程は本発明のとの関連が薄いため、説明は省略する。
【0054】
なお本実施の形態では、PMOSトランジスタ側のシリサイド化工程を、NMOSトランジスタ側のシリサイド化工程の先に行ったが、この順は逆であってもよい。
【0055】
またNMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sおよびPMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sにそれぞれ添加した元素の上記組み合わせは一具体例であり、それを逆にしてもよい。即ちNMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sに、Pt、V、Pdのうちの1つ以上を、PMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sには、Zr、Hf、Nbのうちの1つ以上をそれぞれ含ませるようにしてもよい。
【0056】
<実施の形態3>
実施の形態3では、図4に示した半導体装置、すなわちNMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sと、PMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sとが互いに異なる元素を含む半導体装置の他の製造手法を示す。
【0057】
図11〜図15は、実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。以下、これらの図を参照して、当該製造方法について説明する。
【0058】
まず常法によりNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを形成した後、それらの上にNi膜36をPVD法あるいはCVD法により形成する。Ni膜36は、Niを主成分とするものであればよく、この時点ではPt、V、Pd、Zr、Hf、Nbのいずれも含有する必要はない。本実施の形態では、Ni膜36はNiのみから成るものとする。
【0059】
そしてNi膜36の上に、高融点金属膜(例えばTiN等)による酸化防止膜37を、同じくPVD法あるいはCVD法により成膜する(図11)。Ni膜36の形成および酸化防止膜37の形成は、真空保持した同一の処理装置内で続けて行うとよい。
【0060】
次いで、NMOSトランジスタ上を覆いPMOSトランジスタ上が開口された第1のフォトレジスト38a形成し、それをマスクにするイオン注入によりPt、V、Pdのうち一つ以上をNi膜36に注入する(図12)。第1のフォトレジスト38aをマスクとして用いるため、当該イオン注入はPMOSトランジスタ上のNi膜36のみに施されることとなる。このとき、PMOSトランジスタ上のNi膜36に、Pt、V、Pdのうち一つ以上が、合計で10at%未満含まれるようにする。以下、この工程でイオン注入が施されたPMOSトランジスタ上のNi膜36の部分を「第1のNi膜部36a」と称する。
【0061】
そして第1のフォトレジスト38aを除去した後、今度はPMOSトランジスタ上を覆いNMOSトランジスタ上が開口された第2のフォトレジスト38b形成し、それをマスクにするイオン注入によりZr、Hf、Nbのうち一つ以上をNi膜36に注入する(図13)。第2のフォトレジスト38bをマスクとして用いるため、当該イオン注入はNMOSトランジスタ上のNi膜36のみに施されることとなる。このとき、NMOSトランジスタ上のNi膜36に、Zr、Hf、Nbのうち一つ以上が、合計で10at%未満含まれるようにする。以下、この工程でイオン注入が施されたNMOSトランジスタ上のNi膜36の部分を「第2のNi膜部36b」と称する。その後、第2のフォトレジスト38bを除去する(図14)。
【0062】
そしてRTA等の熱処理を施し、第1のNi膜部36aとPMOSトランジスタのゲート電極22並びにソース・ドレイン領域25とを反応させると共に、第2のNi膜部36bとNMOSトランジスタのゲート電極12並びにソース・ドレイン領域15とを反応させる。そして酸化防止膜37および余剰な未反応のNi膜36(第1および第2のNi膜部36a,36b)を除去する(図15)。
【0063】
その結果、PMOSトランジスタのゲート電極22並びにソース・ドレイン領域25それぞれの上部には、Pt、V、Pdのいずれか一つ以上を合計で10at%未満含むNiシリサイド膜22s,25sが形成される。またそれと同時に、NMOSトランジスタのゲート電極22並びにソース・ドレイン領域25それぞれの上部には、Zr、Hf、Nbのいずれか一つ以上を合計で10at%未満含むNiシリサイド膜12s,15sが形成される。
【0064】
以上により、PMOSトランジスタ側とNMOSトランジスタ側とで異なる元素を含むNiシリサイド膜12s,15s,22s,25sを備える、図4に示した半導体装置が形成される。
【0065】
その後は常法により、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ上に層間絶縁膜を形成し、その内部にNiシリサイド膜12s,15s,22s,25s等に接続するコンタクトを形成する(不図示)。これ以降の工程は本発明のとの関連が薄いため、説明は省略する。
【0066】
なお、本実施の形態の手法で形成した半導体装置においても、上記の実施の形態2と同様の効果が得られることは明らかである。
【0067】
またNMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sおよびPMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sにそれぞれ添加した元素の上記組み合わせは一具体例であり、それを逆にしてもよい。即ちNMOSトランジスタのNiシリサイド膜12s,15sに、Pt、V、Pdのうちの1つ以上を、PMOSトランジスタのNiシリサイド膜22s,25sには、Zr、Hf、Nbのうちの1つ以上をそれぞれ含ませるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図4】実施の形態2に係る半導体装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図6】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図7】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図8】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図9】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図10】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図11】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図12】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図13】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図14】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図15】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【図16】本発明の効果を説明するための図である。
【図17】本発明の効果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
1 半導体基板、2 分離絶縁膜、11,21 ゲート絶縁膜、12,22 ゲート電極、13,23 サイドウォール、15,25 ソース・ドレイン領域、12s,15s,22s,25s Niシリサイド膜、30,30a,30b Ni膜、31,31a,31b,37 酸化防止膜、33a,33b シリサイドブロック膜、36,36a,36b Ni膜、38a,38b フォトレジスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたポリシリコンのゲート電極と、
前記半導体基板の上部に形成されたソース・ドレイン領域と、
前記ゲート電極および前記ソース・ドレイン領域の少なくとも片方の上部に形成されたNiシリサイド膜とを備え、
前記Niシリサイド膜は、
最大膜厚が20nm以下であり、且つ、当該Niシリサイド膜に局所的なスパイク状の成長が無い
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記Niシリサイド膜は、
NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2であり、且つPt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記ゲート電極および前記ソース・ドレイン領域をそれぞれ備えるNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを備え、
前記PMOSトランジスタの前記Niシリサイド膜は、
NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2であり、且つPt,V,Pdのうち1以上の元素を合計で10at%未満含み、
前記NMOSトランジスタの前記Niシリサイド膜は、
NiおよびSiを主成分とし、化学量論組成がNiSiあるいはNiSi2であり、且つZr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
(a)半導体基板に、ポリシリコンのゲート電極およびソース・ドレイン領域を有するトランジスタを形成する工程と、
(b)前記トランジスタ上にNi膜を形成する工程と、
(c)熱処理により前記Ni膜と前記ゲート電極および前記ソース・ドレイン領域とを反応させて、前記ゲート電極および前記ソース・ドレイン領域の上部のそれぞれにNiシリサイド膜を形成する工程と、
(d)前記工程(c)の後に行われ、余剰な未反応の前記Ni膜を除去する工程とを備え、
前記工程(b)で形成される前記Ni膜は、Niを主成分とし、Pt,V,Pd,Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法であって、
前記工程(a)では、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを含む複数の前記トランジスタが形成され、
前記工程(b)は、
(b−1)前記PMOSトランジスタ上に選択的に、Niを主成分とし、Pt,V,Pdのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む第1のNi膜を形成する工程と、
(b−2)前記NMOSトランジスタ上に選択的に、Niを主成分とし、Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む第2のNi膜を形成する工程とを含み、
前記工程(c),(d)は、
前記工程(b−1)の後および前記工程(b−2)の後のそれぞれに行われる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置の製造方法であって、
前記工程(a)では、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを含む複数の前記トランジスタが形成され、
前記工程(b)は、
(b−1)前記PMOSトランジスタ上に選択的に、Niを主成分とし、Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む第1のNi膜を形成する工程と、
(b−2)前記NMOSトランジスタ上に選択的に、Niを主成分とし、Pt,V,Pdのうち1以上の元素を合計で10at%未満含む第2のNi膜を形成する工程とを含み、
前記工程(c),(d)は、
前記工程(b−1)の後および前記工程(b−2)の後のそれぞれに行われる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4記載の半導体装置の製造方法であって、
前記工程(a)では、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを含む複数の前記トランジスタが形成され、
前記工程(b)は、
(b−1)前記NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ上に、Niを主成分とするNi膜を形成する工程と、
(b−2)前記PMOSトランジスタ上の前記Ni膜に、Pt,V,Pdのうち1以上の元素をイオン注入することで、当該元素を合計で10at%未満含ませる工程と、
(b−3)前記PMOSトランジスタ上の前記Ni膜に、Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素をイオン注入することで、当該元素を合計で10at%未満含ませる工程とを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項4記載の半導体装置の製造方法であって、
前記工程(a)では、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを含む複数の前記トランジスタが形成され、
前記工程(b)は、
(b−1)前記NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ上に、Niを主成分とするNi膜を形成する工程と、
(b−2)前記PMOSトランジスタ上の前記Ni膜に、Zr,Hf,Nbのうち1以上の元素をイオン注入することで、当該元素を合計で10at%未満含ませる工程と、
(b−3)前記PMOSトランジスタ上の前記Ni膜に、Pt,V,Pdのうち1以上の元素をイオン注入することで、当該元素を合計で10at%未満含ませる工程とを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項4から請求項7のいずれか記載の半導体装置の製造方法であって、
前記工程(c)の前記熱処理は、250℃以上700℃以下の温度で行われる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−94395(P2009−94395A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265466(P2007−265466)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】