説明

半導体装置およびキャパシタの製造方法、成膜装置

【課題】MOSトランジスタあるいはMIMキャパシタにおいて、導体膜からなる電極に、多量の重水素をドープすることにより、絶縁膜との界面の欠陥を終端し特性劣化を抑制する。
【解決手段】電子ビームEBによりシリコンソース13を加熱し、重水素ガス雰囲気中11Cにシリコン原子を放出することにより、シリコン膜を基板W上に堆積する。このシリコン膜はCVD法による堆積よりも高濃度に重水素ドープされ、ダングリングボンドなどの欠陥が重水素で終端されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に半導体装置の製造に係り、特に重水素を含む半導体装置の製造方法、および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にMOSトランジスタでは、ゲート絶縁膜とポリシリコンゲート電極との間の界面に水素原子が導入されており、ポリシリコンゲート電極とゲート絶縁膜との間に存在するダングリングボンドなどの欠陥を終端している。このような終端水素は一般に、半導体装置の製造が終了した後で、水素雰囲気中において熱処理を行うことにより導入される(水素シンタプロセス)。
【非特許文献1】Kim, H., et al., Appl. Phys. Lett. vol. 74, No. 2, February, 1, 1999, pp.709-710.
【非特許文献2】Mitani Y., et al., Jpn. J. Appl. Phys. vol. 39, (2000) pp.L564-L566, Part 2, No.6B, 15 June 2000.
【非特許文献3】Mitani Y., et al., Jpn. J. Appl. Phys. vol. 42, (2003) pp.5426-5429, Part 1, No.9A, September 2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、通常の半導体装置の製造プロセスで、原子あるいは分子の形で使われる「水素」は、主として質量数が1の「軽水素」(「プロチウム」とも呼ばれる)より構成され、少量の重水素および三重水素を含んではいるが、非常に軽いため、水素終端されたダングリングボンド(Si−H結合)は、MOSトランジスタの動作中にチャネル領域に印加される電界などの電気的ストレスにより容易に切断され、その結果、ダングリングボンドへの電荷のトラップ、およびこれに伴う閾値特性の変動やリーク電流の増大などの、好ましくない問題が生起する。また同様な問題は、MIM構造を有するキャパシタなど、金属/絶縁物界面を有する他の素子においても発生する。
【0004】
従来、このようなゲート電極と絶縁膜との界面に導入される水素として質量数が2の重水素D(ジュウテリウムとも呼ばれる)を使うことにより、例えばMOSトランジスタの電気特性の劣化を抑制できることが報告されている。非特許文献1〜3を参照。重水素は、自然界に存在する「水素」、すなわち上記軽水素、重水素および三重水素の全体のうち、150ppmの割合を占めており、従って、半導体装置の製造にあたっては、半導体/絶縁膜界面あるいは金属/絶縁膜界面に導入される「水素」のうち、重水素の割合を高めるのが、動作特性の安定した半導体装置を得るのに有望であると考えられる。
【0005】
一方、上記従来の技術では、ポリシリコンゲート電極の形成時に、CVD原料としてSiD2Cl2などの重水素化合物を使ったり、あるいは絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する際に、例えば重水素/酸素混合雰囲気中において酸化処理を行ったり、D2O中において酸化処理を行ったりすることで、Dをシリコン/絶縁膜界面に高濃度で導入することを試みている。
【0006】
しかし、これらの方法では重水素Dは、ポリシリコン膜あるいは絶縁膜を形成する際の未反応生成物として残留する程度であり、反応温度と生成物、この場合はポリシリコン膜、で決まる化学平衡から考えれば原理的に高濃度で導入することはできない。
【0007】
図1は、厚さが約1μmの熱酸化膜を形成されたシリコン基板上に、SiH2Cl2を原料としたCVD法により、ポリシリコン膜を約1.4μmの膜厚で形成した場合の、膜中における水素原子の分布をSIMS(secondary ion mass spectroscopy)により求めた結果を示す。ただし図1の試料では、前記ポリシリコン膜の表面にCoSi層が約0.25μmの膜厚で形成されている。
【0008】
図1を参照するに、ポリシリコン膜と熱酸化膜との界面近傍における水素原子濃度は、ほぼ検出限界の1×10-19cm-3程度であるが、これはポリシリコン膜中における水素原子濃度n(n=H/(Si+H);H:膜中の重水素原子数;Si:膜中のSi原子数)に換算すると、0.1%にも満たない。そこで、同様な手法によりポリシリコンゲート電極中に重水素を導入しても、MOSトランジスタの電気特性に影響を与えられるような濃度を達成するのは非常に困難であると考えられる。
【0009】
本発明は、これら従来の技術の限界を突破し、半導体膜中により高濃度で重水素を導入できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一の側面によれば本発明は、基板上に半導体膜を堆積する工程を含む半導体装置の製造方法であって、前記半導体膜を堆積する工程は、重水素ガス雰囲気中において物理蒸着により実行されることを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0011】
他の側面によれば本発明は、下部電極と上部電極との間にキャパシタ絶縁膜を有するキャパシタの製造方法であって、前記下部電極を構成する第1の導体膜を堆積する工程と、前記第1の導体膜上に前記キャパシタ絶縁膜を構成する絶縁膜を堆積する工程と、前記絶縁膜上に前記上部電極を構成する第2の導体膜を堆積する工程と、を含み、前記第1の導体膜を堆積する工程と前記第2の導体膜を堆積する工程の各々は、重水素ガス雰囲気中において物理蒸着により実行されることを特徴とするキャパシタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜の堆積を重水素雰囲気中での物理蒸着により実行することで、膜中に含まれる重水素の割合を、CVD法や熱酸化法など、化学平衡の原理により膜中に重水素を導入する方法に比べて、格段に増大させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態で使われる物理蒸着装置10の構成を示す。
【0014】
図2を参照するに、前記物理蒸着装置10はアルバック社より市販のPVD装置を改造したもので、バルブ10Bを備えた排気ポート10Aより排気される処理容器11を備えており、前記処理容器11内のプロセス空間11Cには重水素ガス(D2)を保持した重水素ガス源となる容器11Aから重水素ガスD2が、バルブ11Bを介して供給される。
【0015】
前記プロセス空間11Cには、さらに被処理基板Wを保持する基板保持台12が設けられ、さらに前記基板保持台上の被処理基板Wに対向して、前記処理容器11の下部に、成膜材料源、例えばシリコンソース13が配置される。前記シリコンソースとしては、通常のシリコン基板、あるいはその断片を使うことができる。
【0016】
さらに前記シリコンソース13の近傍にはフィラメント14が配設され、前記フィラメント14から放出された熱電子が、マグネット15A,15Bにより絞られて電子ビームEBとなり、前記シリコンソース13に照射されるように構成されている。
【0017】
次に、本実施形態によるシリコン酸化膜上へのアモルファスシリコン膜の形成について説明する。
【0018】
本実施形態では最初に、前記バルブ11Bを閉鎖した状態で前記バルブ10Bを開き、前記処理容器11を、前記排気ポート10Aを介して排気し、前記処理容器11B内部のプロセス空間11Cの圧力を1.33×10-7Pa(1×10-9Torr)近傍まで低減した後、前記バルブ10Bを閉じる。
【0019】
この状態で次に前記バルブ11Bを開き、前記重水素ガス源11Aから重水素ガスD2を、前記処理容器11内のプロセス空間11Cに導入し、前記プロセス空間11Cの内圧が1.33×10-5Pa(1×10-7Torr)に達したところで、前記バルブ11Bを閉鎖する。これにより、前記処理容器11のプロセス空間11Cには、所定量の重水素ガスD2が封入される。
【0020】
次に前記フィラメント14を、例えば110mAの電流で駆動して熱電子よりなる電子ビームEBを発生させ、前記電子ビームEBを前記シリコンソース13に照射することにより、前記シリコンソース13を加熱する。
【0021】
その結果、前記シリコンソース13からはSi原子が放出され、ビームの形で前記被処理基板Wの表面に到達し、堆積してアモルファスシリコン膜を形成する。なお前記被処理基板Wはシリコン基板よりなり、表面に厚さが1nm程度のシリコン酸化膜が形成されている。前記基板保持台12が室温の場合、形成されるシリコン膜は、アモルファスシリコン膜となる。前記図2の構成において前記フィラメント14を前記110mAの電流で駆動した場合、前記アモルファスシリコン膜について、約1Å/秒の成長速度が得られた。
【0022】
この成膜工程において、前記シリコンソース13から放出されたSi原子、あるいはSi原子団は、前記プロセス空間11Cを飛行中に雰囲気中の重水素分子D2と衝突し、Si−Dボンドを形成した状態で被処理基板Wに到達し、重水素ドープされたシリコン膜の堆積を生じる。
【0023】
すなわち、図2の物理蒸着装置10では、重水素ドープシリコン膜は、物理蒸着の一種である電子ビーム蒸着により成膜される。
【0024】
図3は、このようにして得られた重水素ドープアモルファスシリコン膜について内部多重反射法により求めた赤外吸収スペクトルを示す。ただし図3中、縦軸は光吸収を任意単位で示し、横軸は波数を示す。
【0025】
図3を参照するに、吸収ピークは波数が約1520cm-1の位置に生じているのがわかるが、この波数は、Si−D結合の波長に対応しており、前記ピークの面積から求めた、アモルファスシリコン膜中の重水素原子濃度m(m=D/(Si+D);D:膜中の重水素原子数;Si:膜中のSi原子数)は、約2.7%となる。この値は、先に説明したCVD法によりポリシリコン膜中に導入できる重水素原子の濃度よりも一桁以上多い。
【0026】
因みに、図3のスペクトルにおいて、通常のSi−H結合に対応する吸収ピークは、2100cm-1の波数において現れ、従って図示の範囲外となる。
【0027】
図4(A)は、前記図2の装置によりアモルファスシリコン膜が形成された被処理基板Wの構成を示す図、図4(B)は、前記被処理基板Wにおける重水素および水素の深さ分布プロファイルを示す図である。
【0028】
図4(A)を参照するに、前記被処理基板Wは、厚さが約1nmのシリコン酸化膜22を表面に形成されたシリコン基板21よりなり、前記シリコン基板21上には、先に図2で説明したプロセスにより、重水素原子を約2.7%の高濃度で含む、重水素ドープアモルファスシリコン膜23Aが、例えば100nmの膜厚で形成されている。
【0029】
さらに前記アモルファスシリコン膜23A上には、通常のSiH2Cl2を原料としたCVD法により、重水素をドープされていないアモルファスシリコン膜23Bが、例えば1μmの膜厚に形成されている。前記アモルファスシリコン膜23Bは、例えば620℃の基板温度において30Paの圧力下、SiH2Cl2ガスを例えば500sccmの流量で供給することにより、0.8nm/秒の成長速度で形成される。またSiH4を原料とした場合は、例えば590℃の基盤温度において30Paの圧力下、Heガスで希釈された20%SiH4ガスを例えば500sccmの流量で供給することにより、0.7nm/秒の成長速度で形成される。
【0030】
図4Bは、前記図4Aの構図について、深さX方向に沿って、SIMSにより求めた重水素Dと軽水素Hの濃度分布を示す。
【0031】
図4Bを参照するに、前記通常のCVD法により形成されたアモルファスシリコン膜23Bにおいては軽水素が、深さ方向に略一定の原子濃度分布で含まれおり、重水素は実質的に含まれていない(約150ppmの自然存在比では含まれている)のに対し、前記図2の装置において前記シリコン酸化膜22に接して形成されたアモルファスシリコン膜23Aにおいては、軽水素の原子濃度が減少するとともに、重水素の原子濃度が増大し、前記アモルファスシリコン膜23Bにおける水素原子濃度を上回る濃度に達しているのがわかる。この、アモルファスシリコン膜23Bにおける重水素の原子濃度は、重水素の自然存在比を大きく上回っている。
【0032】
なお、前記図4Aの構造において、膜23Aおよび膜23Bは、後で説明するようにイオン注入後の高温アニール(活性化アニール)を経て重水素ドープドポリシリコン膜に変化する。
【0033】
なお、後の実施形態で説明するが、図2の装置において、前記重水素雰囲気D2の代わりに重水素ラジカルD*を含む重水素ガス雰囲気を使った場合、アモルファスシリコン膜23Aの重水素ドーピングは、さらに効率的になされる。
【0034】
なお、図2の物理蒸着装置10において、前記アモルファスシリコン膜13の成膜は、前記処理容器11内の空間の圧力を、10-7〜10-4Paの範囲、特に1.33×10-5Pa(1×10-7Torr)の近傍で行うのが好ましい。
[第2の実施形態]
図5A〜図5Gは、本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す。
【0035】
図示の例はnチャネルMOSトランジスタの製造工程であり、図5Aを参照するに、シリコン基板41上には素子領域41Aが、素子分離領域41Iにより画成されており、図5Bの工程において、前記素子領域41Aにp型ウェル41Wが形成される。同時に、前記p型ウェル41Wの表面部分には、閾値制御のためのイオン注入が行われる。
【0036】
次に、図5Cの工程において、前記図5Bの構造上にシリコン酸化膜あるいはSiON膜42が、例えばプラズマCVD法などにより、約1nm程度の膜厚に形成され、更に図5Dの工程において前記図5Cの構造が、前記図2の物理蒸着装置10に被処理基板Wとして導入され、前記SiON膜42上に、重水素を例えば2.7%の原子濃度でドープされたアモルファスシリコン膜43Aが、前記図2で説明した工程を使って、例えば100nmの膜厚に形成される。図5Dの工程は、先に図2で説明したように、重水素分子D2の雰囲気中で行うことも可能であるが、後の実施形態で説明するように重水素ラジカルD*を含む重水素ガス雰囲気中で行うと、さらに効果的である。
【0037】
さらに図5Eの工程において、前記図5Dの構造上にポリシリコン膜43Bが、例えばSiH2Cl2ガスを原料としたCVD法により、約1μmの膜厚に形成される。図5Eの工程では、前記ポリシリコン膜43Bの成膜と同時に、前記重水素ドープアモルファスシリコン膜43Aが結晶化し、重水素ドープポリシリコン膜に変化する。
【0038】
次に図5Fの工程において前記ポリシリコン膜43Aおよび43Bを、その下の絶縁膜42共々、パターニングし、所定のチャネル領域に対応して、前記ポリシリコン膜43Aと43Bの積層よりなる積層ゲート構造43Gを、ゲート絶縁膜42Gを介して形成する。
【0039】
さらに図5Fの工程では、前記積層ゲート構造43Gをマスクにn型不純物、例えばAsあるいはP、あるいはSbを前記素子領域41Aにイオン注入により導入し、前記素子領域41Aを構成するシリコン基板41中、前記積層ゲート構造43Gの第1および第2の側に、n型のソースおよびドレインエクステンション領域41a,41bを形成する。
【0040】
次に図5Gの工程において、前記積層ゲート構造43Gの第1および第2の側の側壁面に、第1および第2の側壁絶縁膜SW1,SW2をそれぞれ形成し、前記積層ゲート構造43Gおよび前記第1および第2の側壁絶縁膜SW1,SW2をマスクに、n型不純物、例えばAsあるいはP、あるいはSbをイオン注入により導入することにより、前記素子領域41Aを構成するシリコン基板41中、前記側壁絶縁膜SW1,SW2のそれぞれ外側の位置に、n型ソースおよびドレイン領域41c,41dが形成される。
【0041】
図5Gの半導体装置、すなわちnチャネルMOSトランジスタでは、前記ゲート絶縁膜42Gと重水素ドープポリシリコン膜43Aとの界面において、Si原子のダングリングボンドなどの欠陥が、高濃度でドープされた重水素により効果的に終端され、このため、半導体装置の動作時に、ゲート絶縁膜42Gに高電界が印加されても、重水素による欠陥の終端効果が消えることはなく、半導体装置は閾値特性など、安定した電気特性を示す。
【0042】
なお、図5A〜5Gの工程において、各半導体部分の導電型を反転させることで、本実施形態のnチャネルMOSトランジスタと同様に安定な電気特性を有するpチャネルMOSトランジスタを得ることもでききる。
[第3の実施形態]
図6A〜6Iは、本発明の第3の実施形態によるMIM素子の製造工程を示す。
図6Aを参照するに、例えば半導体装置の層間絶縁膜の一部を構成する絶縁膜61中には、配線パターン61A,61Bが、それぞれバリアメタル膜61a,61bを介して形成されており、図6Bの工程において、前記図6Aの構造上にSiC膜62Aおよびシリコン酸化膜62Bが、プラズマCVD法により、それぞれ70nmおよび100nmの膜厚に形成される。
【0043】
次に図6Cの工程において、前記図6Bの構造上に、スパッタにより、TiNよりなる下部電極63Aが、例えば100nmの膜厚に形成され、次いで図6Dの工程において前記図6Cの構造が、前記図2の物理蒸着装置10に被処理基板Wとして導入され、前記図2で説明した工程により、前記シリコン酸化膜62B上に重水素でドープされたTiN膜63Bが、例えば50nmの膜厚に形成される。図2の物理蒸着装置10を使って前記TiN膜63Bを形成する場合には、前記シリコンソース13の代わりにTiNソースを使えばよい。
【0044】
次に図6Eの工程において、前記図6Dの構造上にシリコン酸化膜64がキャパシタ絶縁膜として、TEOS原料を使ったプラズマCVD法により、例えば50nmの膜厚で形成され、図6Fの工程において前記図6Eの構造が、前記図2の物理蒸着装置10に被処理基板Wとして導入され、前記図6Dで説明したのと同様な工程により、前記シリコン酸化膜64上に重水素ドープされたTiN膜65よりなる上部電極膜が形成される。
【0045】
さらに図6Gの工程で、前記上部電極膜65、キャパシタ絶縁膜64,下部電極63A,63BがパターニングされてMIMキャパシタCが形成され、図6Hの工程において層間絶縁膜66が前記MIMキャパシタCを覆うように形成され、図6Iの工程において、前記層間絶縁膜66中にビアプラグ66A,66B,66Cが、それぞれ配線パターン61A,下部電極63A,63B、および上部電極66Cを、前記層間絶縁膜66上の配線パターン67A,67B,67Cに接続するように形成される。
【0046】
このようにして形成されたMIMキャパシタCでは、下部電極63Bとキャパシタ絶縁膜64の界面のダングリングボンドが重水素により終端され、また上部電極とキャパシタ絶縁膜64の界面のダングリングボンドが重水素による終端されるため、前記キャパシタ絶縁膜64に大きな電界が印加されてもリーク電流の発生が抑制され、安定な電気特性が得られる。
[第4の実施形態]
図7は、本発明の第4の実施形態による物理蒸着装置70の構成を示す。ただし図7中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0047】
図7を参照するに、物理蒸着装置70は前記第1の実施形態による物理蒸着装置10と類似した構成を有しているが、フィラメント14および熱電子ビームEBを形成するマグネット15A,15Bが撤去され、代わりに前記シリコンソース13を加熱する、Ptなどの高融点金属よりなるヒータ73Aを含むソース保持部73が設けられている。また図7の構成では、電源71AとインダクタンスLと放電部71Cとよりなるプラズマ発生装置71が設けられている。
【0048】
動作時には、前記処理容器11内部のプロセス空間11Cが前記排気ポート10Aを介して、例えば1.33×10-7Pa(1×10-9Torr)以下の高真空状態に排気され、次いで前記バルブ73Bを開いて容器11A中の重水素ガスD2が、前記プロセス空間11Cに導入される。前記プロセス空間11Cの圧力が、例えば1.33×10-5Pa(1×10-7Torr)に到達したところで前記バルブ10Bおよび11Bが閉鎖される。
【0049】
次いで前記ヒータ73Aが駆動され、前記シリコンソース13を、Si原子の蒸発が効率的に生じる例えば1400℃以上の温度に加熱する。同時に、前記プラズマ発生装置71の電源71Aを駆動し、前記プラズマ発生部71Cにおいて放電を開始させる。
【0050】
これにより、前記容器11内に封入された重水素ガスD2は励起され、重水素ラジカルD*が処理容器11内において形成される。
【0051】
重水素ラジカルD*は非常に活性が高く、前記シリコンソース13から放出されて被処理基板Wへと処理容器11内を進行中のSi原子あるいはSi原子団に結合して、Si−Dボンドを形成する。このようなDと結合したSi原子が前記被処理基板W上に堆積することで、重水素濃度の高いシリコン膜が、前記基板W上に成長する。
[第5の実施形態]
図8は、本発明の第5の実施形態による物理蒸着装置80の構成を示す。ただし図8中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図8を参照するに、物理蒸着装置80は、基本的に前記図2の物理蒸着装置の構成を有しており、これに前記図7のプラズマ発生部71を組み合わせている。
【0053】
このため、電子ビーム加熱の結果前記シリコンソース13から放出されたSi原子あるいはSi原子団は、前記処理容器11中を飛行中に活性度の極めて高い重水素ラジカルD*に遭遇し、高い確率でSi−D結合が形成される。
【0054】
このため、図8の構成を使ってシリコン膜を堆積することにより、高濃度で重水素をドープされたシリコン膜を成膜することが可能となる。
【0055】
なお、図2,図7および図8の物理蒸着装置10,70あるいは80において、先にも説明したように、シリコンソース13の代わりに、TiNよりなるTiNソースを設けることにより、重水素ドープされたTiN膜を成膜することも可能である。またその際、前記TiNソースの代わりにTiソースを使い、処理容器11のプロセス空間11Cの雰囲気を窒素ガスと重水素ガスの混合雰囲気とすることにより、前記被処理基板W上にTiN膜を成膜することも可能である。
【0056】
さらに、以上の説明では、重水素ドープシリコン膜および重水素ドープTiN膜の成膜の例を説明したが、本発明は、他の材料、例えばNiSi,TaNなどの重水素ドープ膜を形成するのにも有用である。
【0057】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の課題を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による物理蒸着装置の構成を示す図である。
【図3】図2の物理蒸着装置で作製された重水素ドープシリコン膜の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図4A】図2の物理蒸着装置で作製された、シリコン/シリコン酸化膜界面を有するモデル構造を示す図である。
【図4B】図4Aのモデル構造における水素および重水素原子の深さ分布プロファイルを示す図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図5B】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図5C】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図5D】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図5E】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図5F】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図5G】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図6A】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図6B】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図6C】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図6D】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図6E】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図6F】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図6G】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図6H】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その8)である。
【図6I】本発明の第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す図(その9)である。
【図7】本発明の第3の実施形態による物理蒸着装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施形態による物理蒸着装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10、70,80 物理蒸着装置
10A 排気ポート
10B バルブ
11 処理容器
11A 重水素ガス源
11B バルブ
11C プロセス空間
12 基板保持台
13 シリコンソース
14 フィラメント
15A,15B マグネット
21 基板
22 絶縁膜
23A 重水素ドープアモルファスシリコン膜
23B 重水素非ドープアモルファスシリコン膜
41 シリコン基板
41A 素子領域
41I 素子分離領域
41W n型ウェル
41a,41b ソース/ドレインエクステンション領域
41c,41d ソース/ドレイン領域
42 絶縁膜
43A 重水素ドープアモルファス/ポリシリコン膜
43B 重水素非ドープポリシリコン膜
43G 積層ゲート構造
SW1,SW2 側壁絶縁膜
61 層間絶縁膜
61A,61B 配線パターン
62a,62b バリアメタル膜
62A SiC膜
62B シリコン酸化膜
63A 重水素非ドープTiN下部電極膜
63B 重水素ドープTiN下部電極膜
64 キャパシタ絶縁膜
65 重水素ドープTiN上部電極膜
66 層間絶縁膜
66A〜66C ビアプラグ
67A〜67C 配線パターン
71 プラズマ発生部
71A 電源
71C 放電部
71L コイル
C MIMキャパシタ
EB 熱電子ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体膜を堆積する工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記半導体膜を堆積する工程は、重水素ガス雰囲気中において物理蒸着により実行されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体膜はシリコン膜であり、前記物理蒸着は、前記重水素ガス雰囲気中においてシリコン源に電子線を当てる電子ビーム蒸着により実行されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体膜はシリコン膜であり、前記物理蒸着は、前記重水素雰ガス囲気中においてシリコン源をヒータにより加熱する蒸着法より実行されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記重水素のガス雰囲気は、重水素のラジカルを含むことを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
下部電極と上部電極との間にキャパシタ絶縁膜を有するキャパシタの製造方法であって、
前記下部電極を構成する第1の導体膜を堆積する工程と、
前記第1の導体膜上に前記キャパシタ絶縁膜を構成する絶縁膜を堆積する工程と、
前記絶縁膜上に前記上部電極を構成する第2の導体膜を堆積する工程と、
を含み、
前記第1の導体膜を堆積する工程と前記第2の導体膜を堆積する工程の各々は、重水素ガス雰囲気中において物理蒸着により実行されることを特徴とするキャパシタの製造方法。
【請求項6】
処理容器と、
前記処理容器に接続され、前記処理容器内の空間に重水素ガスを供給する重水素ガス源と、
前記処理容器内の空間に配設され、被処理基板を保持する基板保持台と、
前記処理容器内の空間に、前記被処理基板に対向して配設された、成膜材料源と、
前記成膜材料源より、成膜材料を放出させる加熱部と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
前記加熱部は、前記成膜材料源を電子ビームで加熱することを特徴とする請求項6記載の成膜装置。
【請求項8】
基板上ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、重水素ガス雰囲気中において物理蒸着により第1のゲート電極を形成する工程と、
前記第1のゲート電極上に、第2のゲート電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−94348(P2009−94348A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264504(P2007−264504)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】