説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】 大幅なプロセスコスト増を伴うことなく、チャネルに歪を発生させることが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 (a)半導体基板の一部の表面上に、半導体膜と、該半導体膜よりも密度の高いブロック膜とがこの順番に積層されたゲートパターンを形成する。(b)ゲートパターンをマスクとして、半導体基板の表層部に、ソース及びドレイン用の不純物を注入する。(c)ゲートパターンをマスクとして、半導体基板内に、ソース及びドレイン用の不純物とは異なる歪形成用の不純物を注入する。(d)半導体基板を熱処理し、歪形成用の不純物が注入された領域を再結晶化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にチャネル領域に歪を発生させた半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速動作を可能とするトランジスタ、所謂ハイエンドトランジスタにおいて、デバイスのスケーリングとは別に、シリコンチャネルに歪を加えて性能を向上させる試みが行われている。シリコン(Si)に歪を加えると、Siのエネルギバンド端の構造が変化し、その結果キャリア移動度が向上する。nMOSトランジスタのチャネル方向に伸び歪を発生させると、電子の移動度が向上し、pMOSトランジスタのチャネル方向に縮み歪を発生させると、正孔の移動度が向上することが知られている。
【0003】
下記の非特許文献1に、Si基板上にSiGeをエピタキシャル成長させる方法(pMOSトランジスタに最適)や、歪が緩和したSiGe膜上にSiをエピタキシャル成長させる方法(nMOSトランジスタに最適)によってチャネルに二軸性歪を生じさせる技術が開示されている。非特許文献2に、pMOSトランジスタのソース及びドレイン領域にSiGeを埋め込んでチャネルに歪を発生させる技術が開示されている。非特許文献3に、nMOSトランジスタのソース及びドレイン領域にSiCを埋め込んでチャネルに歪を発生させる技術が開示されている。
【0004】
ソース及びドレインに、SiGeやSiCを埋め込む方法について、簡単に説明する。ゲート電極の側面上にサイドウォールスペーサを形成した後、基板表面を掘り込んで凹部を形成する。この凹部内に、SiGeやSiCを選択的にエピタキシャル成長させることにより、埋め込みが行われる。
【0005】
【非特許文献1】F. Schaffler, Semicond. Sci. & Technol. 12, pp.1515(1997)
【非特許文献2】T. Ghani et al. IEDM Tech. Dig. pp.978(2003)
【非特許文献3】K. W. Ang et al., IEDM Tech. Dig., pp.1069(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Si基板表面への凹部の形成、及び凹部内へのSiGeやSiCの選択的エピタキシャル成長は、プロセスコストを増大させる。特に、SiCの選択成長は、SiGeの選択成長に比べて困難であり、未だ実用化されていない。さらに、SiCには、NiSi等の金属シリサイド膜を、適当な温度で形成することが困難である。このため、良好なソース及びドレインコンタクトを得ることが困難である。
【0007】
本発明の目的は、大幅なプロセスコスト増を伴うことなく、チャネルに歪を発生させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、チャネルに歪を発生させ、かつ良好なソース及びドレインコンタクトを確保することが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この半導体装置の製造方法は、
(a)半導体基板の一部の表面上に、半導体膜と、該半導体膜よりも密度の高いブロック膜とがこの順番に積層されたゲートパターンを形成する工程と、
(b)前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板の表層部に、ソース及びドレイン用の不純物を注入する工程と、
(c)前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板内に、前記ソース及びドレイン用の不純物とは異なる歪形成用の不純物を注入する工程と、
(d)前記半導体基板を熱処理し、前記歪形成用の不純物が注入された領域を再結晶化させる工程と
を有する。
【0009】
この半導体装置は、
シリコンからなる表層部を有する半導体基板と、
前記半導体基板の表面の一部の領域上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板の表層部に形成されたn型のソース及びドレイン領域と、
前記ソース及びドレイン領域の表面に形成された金属シリサイド膜と、
前記金属シリサイド膜の下に配置されたSiCからなる領域と
を有し、
前記ゲート電極の下のチャネル領域に延び歪みが生じている。
【発明の効果】
【0010】
ブロック膜を配置したことにより、ゲートパターン内の半導体膜に歪形成用の不純物が過剰に注入されることが防止される。歪形成用の不純物が注入された領域を再結晶化することにより、ゲート直下のチャネル領域に歪を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1A〜図1Hを参照して、第1の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0012】
シリコンからなる半導体基板10の表層部に、シャロートレンチアイソレーション(STI)法により素子分離絶縁膜11を形成する。素子分離絶縁膜11により画定された活性領域13の表層部にp型不純物を注入することにより、p型ウェル12を形成する。
【0013】
半導体基板10の表面を熱酸化及び窒化することにより、窒素を含んだ酸化シリコンからなるゲート絶縁膜15を形成する。ゲート絶縁膜15の典型的な厚さは、1〜2nmである。ゲート絶縁膜15の形成、及び窒素の導入は、MOSトランジスタへの要求性能及び信頼性等の観点から決定される。ゲート絶縁膜15に、酸化シリコンや窒化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率絶縁材料を用いてもよい。また、ゲート絶縁膜15を、これらの絶縁材料からなる積層膜としてもよい。
【0014】
ゲート絶縁膜15及び素子分離絶縁膜11の上に、多結晶シリコンからなる厚さ数十nmのゲート用シリコン膜16aを、化学気相成長(CVD)等により堆積させる。なお、ゲート用シリコン膜16aを、アモルファスシリコンで形成してもよい。
【0015】
ゲート用ポリシリコン膜16aの上に、窒化シリコンからなるバリア膜17aをCVD等により堆積させる。バリア膜17aの厚さは、例えば5nmである。バリア膜17aの上に、タングステン(W)からなるブロック膜18aを、例えばスパッタリングにより堆積させる。バリア膜17aは、ゲート用ポリシリコン膜16a中のSiと、ブロック膜18a中のWとの反応を抑制する。さらに、バリア膜17aは、後の工程でブロック膜18aを除去するときのエッチングストッパとしての役割も持っている。
【0016】
ブロック膜18a、バリア膜17a、及びゲート用ポリシリコン膜16aを、ゲート電極の形状にパターニングする。
【0017】
図1Bに示すように、シリコンゲート電極16、バリア膜17、及びブロック膜18を含むゲートパターン19が形成される。なお、ゲート絶縁膜15までエッチングして半導体基板10の表面を露出させてもよい。
【0018】
ゲートパターン19をマスクとして、その両側の半導体基板10の表層部に、ソース及びドレインのエクステンション部20を形成するためのn型不純物、例えばPまたはAsの注入を行う。
【0019】
図1Cに示すように、ゲートパターン19の側面上に、例えば酸化シリコンからなる第1のスペーサ21を形成する。第1のスペーサ21の厚さは、例えば5nmである。ゲートパターン19及び第1のスペーサ21をマスクとして、その両側の半導体基板10の表層部に、ソース及びドレインの深い領域を形成するためのn型不純物の注入を行う。活性化アニールを行うことにより、エクステンション部を有するソース領域22S及びドレイン領域22Dが形成される。
【0020】
図1Dに示すように、第1のスペーサ21の側面上に、酸化シリコンからなる第2のスペーサ25を形成する。第1のスペーサ21と第2のスペーサ25との合計の膜厚は、例えば20〜40nmである。
【0021】
ゲートパターン19、第1のスペーサ21、及び第2のスペーサ25をマスクとして、半導体基板10内に、クラスタカーボンを注入する。クラスタカーボンとして、例えばC、C1414、C1610等を用いることができる。クラスタカーボンとしてCを用いる場合、加速エネルギは5〜70keV(C単体を注入する場合の1〜10keVに相当)、ドーズ量は1×1014〜2×1015cm−2(C単体を注入する場合の7×1014〜7×1015cm−2に相当)とする。なお、典型的には、加速エネルギを35keV、ドーズ量を5×1014cm−2とする。この条件で注入を行ったときの注入深さRpは約20nm、標準偏差ΔRpは約20nmになる。ピーク濃度は約1×1021cm−3になる。
【0022】
クラスタカーボンが注入された領域は、アモルファス化される。注入後にアニールを行うことにより、アモルファス化された領域を再結晶化させる。これによりSiCからなる歪発生領域27が形成される。カーボンのピーク濃度が1×1021cm−3の場合、ピーク濃度に相当する領域において、SiCのカーボンは20原子%程度になる。
【0023】
歪発生領域27の形成には、固相成長による再結晶化を利用してもよいし、高温で短時間のアニールによる再結晶化を利用してもよい。固相成長による再結晶化を行う場合には、例えば約500℃で6時間程度のアニールを行う。高温短時間のアニールを行う場合には、アニール温度を約1050℃とし、アニール時間を約10秒とする。高温短時間のアニールは、ソース及びドレイン形成のために注入した不純物の活性化アニールを兼ねることができる。
【0024】
固相成長を利用した低温プロセスでは、イオン注入に起因する転位等の欠陥がクラスタ化したエンドオブレンジ欠陥が残留する場合がある。エンドオブレンジ欠陥に起因するリーク電流等を抑制することが要請される場合には、高温短時間のアニールを採用することが好ましい。
【0025】
SiCの格子定数は、Si単結晶の格子定数よりも小さいため、Si単結晶領域からエピタキシャル成長したSiCからなる歪発生領域27には、伸び歪が発生する。これにより、ゲート電極16直下のチャネル領域に、面内方向の伸び歪が発生する。
【0026】
図1Eに示すように、基板全面に窒化シリコンからなる保護膜30をCVDにより堆積させる。ブロック膜18が露出するまで、保護膜30に化学機械研磨(CMP)を施す。このCMP工程において、Wからなるブロック膜18がストッパとして働く。ブロック膜18を露出させた後、アンモニア過水やアルカリ溶液を用いて、ブロック膜18を除去する。
【0027】
図1Fに示すように、窒化シリコンからなるバリア膜17が露出する。その後、リン酸を用いて、窒化シリコンからなるバリア膜17及び保護膜30を除去する。
【0028】
図1Gに示すように、ソース領域22S、ドレイン領域22D、及びゲート電極16の上面が露出する。図1Hに示すように、自己整合シリサイド(サリサイド)プロセスにより、ソース領域22S、ドレイン領域22D、及びゲート電極16の表面に、それぞれ金属シリサイド膜32S、32D、及び32Gを形成する。金属シリサイド膜32S、32D、及び32Gには、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド等が用いられる。
【0029】
チャネル領域に、面内方向の伸び歪が発生しているため、nMOSトランジスタのキャリア移動度を高めることができる。歪発生領域27は、ゲート電極16の上に形成されたブロック膜18等をマスクとして、自己整合的に注入される。また、歪発生領域27を形成するための凹部の形成やCVDによるSiCの選択的エピタキシャル成長を行う必要がない。このため、製造コストの低減を図ることができる。
【0030】
ブロック膜18は、図1Dに示したクラスタカーボンの注入時に、クラスタカーボンの透過を阻止する。これにより、ゲート電極16にカーボンが過剰に注入されることを防止することができる。クラスタカーボン透過を阻止するために、ブロック膜18の材料として、ゲート電極16よりも密度(単位体積あたりの質量)の高いものを用いることが好ましい。特に、質量数の大きな金属を用いることが好ましい。好適に使用できる金属として、上記第1の実施例で用いたWの他に、Ta、Mo等が挙げられる。また、これらの金属の酸化物、窒化物、または炭化物を用いてもよい。
【0031】
ブロック膜18の厚さの好適値は、クラスタカーボン注入時の加速エネルギによって決定される。一般的には、ゲート電極16への過剰なカーボンの注入を防止するために、ブロック膜18を30nm以上とすることが好ましい。また、ブロック膜18を厚くしすぎると、除去工程が困難になる。このため、100nm以下の厚さとすることが好ましい。
【0032】
チャネル領域に十分な歪を発生させるために、歪発生領域27の炭素濃度を1原子%以上とすることが好ましい。
【0033】
炭素濃度が高くなると、金属シリサイド膜を形成することが困難になる。図1Hに示した金属シリサイド膜32S、32D,及び32Gを再現性よく形成するために、半導体基板10の表面における炭素濃度を1×1020cm−3以下にすることが好ましい。
【0034】
第1の実施例では、nMOSトランジスタを作製したが、pMOSトランジスタを作製する場合には、歪発生領域27に縮み歪を発生させればよい。例えば、歪発生領域27にSiGeを用いることが可能である。
【0035】
歪発生領域27を形成するために注入する不純物として、MOSトランジスタの動作に大きな影響を及ぼさないものを選択することが好ましい。例えば、半導体基板10に導電性を付与しない不純物を用いることが好ましい。このような不純物として、C、Ge等のIV族元素が挙げられる。
【0036】
1枚の基板上に、nMOSトランジスタとpMOSトランジスタとの両方を形成することも可能である。この場合、nMOSトランジスタのみを第1の実施例による方法で形成し、pMOSトランジスタの形成には、ソース及びドレイン領域への凹部の形成とSiGeの選択成長を用いた従来の方法を採用してもよい。
【0037】
次に、図2A〜図2Cを参照して、第2の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0038】
図2Aに示した構造は、第1の実施例による製造方法の途中段階である図1Gに示した構造と同一である。ここまでの工程は、第1の実施例による製造方法の工程と同一である。
【0039】
図2Bに示すように、ソース領域22S及びドレイン領域22Dの上に、シリコンを選択成長させることにより、エレベーテッドソース領域40S及びエレベーテッドドレイン領域40Dを形成する。このとき、ゲート電極16の上にもシリコンが堆積し、ゲート上部シリコン膜40Gが形成される。
【0040】
図2Cに示すように、エレベーテッドソース領域40S、エレベーテッドドレイン領域40D、及びゲート上部シリコン膜40Gの表面に、それぞれ金属シリサイド膜43S、43D、及び43Gを形成する。
【0041】
クラスタカーボンを注入して歪発生領域27を形成した後、熱プロセスによってCが基板表面に拡散して、表面の炭素濃度が高くなる場合がある。炭素濃度が高くなると、金属シリサイド膜の形成が困難になる。エレベーテッドソース及びドレイン構造を採用すると、金属シリサイド膜が形成されるシリコン領域、すなわちエレベーテッドソース領域40S及びエレベーテッドドレイン領域40Dの表面の炭素濃度が、クラスタカーボンの注入による影響を受けない。このため、金属シリサイド膜43S、43D、及び43Gの形成の困難さが高まることを回避することができる。
【0042】
次に、図3A及び図3Bを参照して、第3の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。第1の実施例による製造方法の図1Cに示したソース領域22S及びドレイン領域22Dを形成するまでの工程は、第3の実施例による製造方法と共通である。第3の実施例では、図1Dに示した第2のスペーサ25を形成しない。
【0043】
図3Aに示すように、ブロック膜18及び第1のスペーサ21をマスクとして、クラスタカーボンの注入を行う。その後、熱処理することにより、歪発生領域27が形成される。クラスタカーボンの注入条件は、第1の実施例の場合と同じである。
【0044】
図3Bに示すように、ソース領域22S、ドレイン領域22D、及びゲート電極16の表面に、それぞれ金属シリサイド膜32S、32D、及び32Gを形成する。金属シリサイド膜32S、32D、及び32Gの形成方法は、第1の実施例による製造方法の場合と同じである。
【0045】
第3の実施例では、第1の実施例で形成した第2のスペーサ25を形成しないため、歪発生領域27がゲート電極16直下のチャネル領域に近づく。このため、チャネル領域に、より大きな歪を発生させることができる。なお、第3の実施例において、第2の実施例のエレベーテッド構造を採用することも可能である。
【0046】
図4A及び図4Bを参照して、第4の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。以下、第1の実施例による製造方法との相違点に着目して説明する。
【0047】
図4Aに示すように、ゲート絶縁膜15を形成した後、ゲート絶縁膜15及び素子分離絶縁膜11の上に、厚さ約10nmのゲート用金属膜50aを堆積させる。さらにその上に、厚さ数十nmのゲート用シリコン膜16a、バリア膜17a、及びブロック膜18aを順番に堆積させる。ゲート用金属膜50aには、例えば、TiN、TaC、TaN、HfN等が用いられる。その後の工程は、第1の実施例の図1Bから図1Hまでの工程と同じである。
【0048】
図4Bに示すように、ゲート絶縁膜15の上に、金属ゲート電極50が配置されたMOSトランジスタが得られる。
【0049】
第4の実施例においても、ゲート電極16の上にブロック膜18が配置されるため、第1の実施例の場合と同様に、シリコンからなるゲート電極16へのカーボンの過剰な注入を防止することができる。このため、ゲート電極16の表面に容易に金属シリサイド膜32Gを形成することができる。
【0050】
また、第4の実施例では、金属ゲート電極50の上にシリコンゲート電極16を配置したが、金属ゲート電極50のみでゲート電極を構成してもよい。金属ゲート電極50にクラスタカーボンが注入されると、その仕事関数が変動することが懸念される。ブロック膜18でクラスタカーボンの注入を阻止することにより、金属ゲート電極50の仕事関数の変動を防止することができる。
【0051】
なお、第4の実施例においても、第2の実施例のようにエレベーテッド構造を採用してもよいし、第3の実施例のように第2のスペーサ25を省略してもよい。
【0052】
図5A〜図5Fを参照して、第5の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0053】
図5Aに示した製造途中段階の構造は、第1の実施例の図1Dに示した構造と基本的に同一である。ただし、第5の実施例では、第1の実施例の図1Dに示したゲート絶縁膜15及びゲート電極16に代えて、それぞれダミーゲート絶縁膜61及びダミーゲート電極62が形成されている。ダミーゲート絶縁膜61は酸化シリコンで形成され、ダミーゲート電極62はポリシリコンまたはアモルファスシリコンで形成されている。ダミーゲート絶縁膜61、ダミーゲート電極62、バリア膜17、及びブロック膜18により、ダミーゲート構造60が構成される。
【0054】
図5Bに示すように、ソース領域22S及びドレイン領域22Dの表面に、金属シリサイド膜32S及び32Dを形成する。ダミーゲート構造60の上面には、ブロック膜18が露出しているため、金属シリサイド膜が形成されない。
【0055】
図5Cに示すように、酸化シリコン等からなる層間絶縁膜65を堆積させた後、ブロック膜18が露出するまでCMPを行う。
【0056】
図5Dに示すように、ダミーゲート構造60を除去する。ダミーゲート構造60が形成されていた領域に凹部60Aが形成される。凹部60Aの底面には、半導体基板10が露出する。
【0057】
図5Eに示すように、凹部60Aの底面に露出している半導体基板10の表層部を熱酸化及び熱窒化することにより、窒素を含有する酸化シリコンからなるゲート絶縁膜67を形成する。
【0058】
図5Fに示すように、凹部60A内に、金属ゲート電極68を充填する。金属ゲート電極68は、基板全面に金属膜を堆積させた後、CMPを行うことによって形成される。金属ゲート電極68には、例えばTiN、TaC、TaN、HfN等が用いられる。
【0059】
第5の実施例においても、第1の実施例の場合と同様に、チャネル領域に歪を発生させることができる。ダミーゲート電極62にクラスタカーボンが注入されると、図5Dに示した工程において、ダミーゲート電極62の除去が困難になる。第5の実施例では、ブロック膜18により、ダミーゲート電極62へのクラスタカーボンの注入が抑制されるため、ダミーゲート電極62を容易に除去することができる。
【0060】
図6A〜図6Iを参照して、第6の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0061】
半導体からなる支持基板71の上に、酸化シリコンからなる絶縁膜72が配置され、その上にシリコンからなる半導体層(素子形成層)73が配置されている。この3層により、SOI基板70構成される。
【0062】
素子形成層73の上に、ゲート絶縁膜15、ゲート用シリコン膜16a、バリア膜17a、及びブロック膜18aを順番に形成する。これらの膜の形成方法は、第1の実施例の場合と同じである。
【0063】
図6Bに示すように、ゲート用シリコン膜16a、バリア膜17a、及びブロック膜18aをパターニングすることにより、ゲートパターン19を形成する。ゲートパターン19をマスクとして、素子形成層73に、ソース及びドレインのエクステンション部20を形成するためのn型不純物の注入を行う。
【0064】
図6Cに示すように、ゲートパターン19の側面上に、例えば酸化シリコンからなる第1のスペーサ21を形成する。
【0065】
図6Dに示すように、第1のスペーサ21よりも外側の素子形成層73の上に、シリコンを選択的にエピタキシャル成長させる。ゲートパターンの一方の側にソース用のエレベーテッド膜75Sが形成され、他方の側に、ドレイン用のエレベーテッド膜75Dが形成される。エレベーテッド膜75S、75D、及びその下の素子形成層73にn型不純物を注入することにより、ソース及びドレインの深い領域を形成する。
【0066】
図6Eに示すように、ブロック膜18及び第1のスペーサ21をマスクとして、エレベーテッド膜75S、75D、及び素子形成層73にクラスタカーボンを注入する。このとき、クラスタカーボンが素子形成層73と絶縁膜72との界面まで到達しない条件で注入を行う。
【0067】
クラスタカーボンが注入された領域を再結晶化するためのアニールを行う。これにより、SiCからなる歪発生領域27が形成される。クラスタカーボンが素子形成層73の底面まで到達していないため、素子形成層73の下方の一部に、Siの単結晶領域が残っている。この単結晶領域からエピタキシャル成長することにより、再結晶化が行われる。
【0068】
図6Fに示すように、窒化シリコンからなる保護膜80を堆積させた後、ブロック膜18が露出するまでCMPを行う。その後、露出したブロック膜18を除去する。
【0069】
図6Gに示すように、ブロック膜18の下に配置されていたバリア膜17が露出する。露出したバリア膜17及び保護膜80を除去する。
【0070】
図6Hに示すように、シリコンゲート電極16及びエレベーテッド膜75S、75Dが露出する。
【0071】
図6Iに示すように、露出したエレベーテッド膜75S、75D、及びゲート電極16の表面に、それぞれ金属シリサイド膜78S、78D及び78Gを形成する。
【0072】
第6の実施例においても、歪発生領域27を形成することにより、ゲート電極16直下のチャネル領域に歪を発生させることができる。図6Eに示した工程において、ブロック膜18が、シリコンゲート電極16へのカーボンの注入を阻止する。このため、シリコンゲート電極16の上面に容易に金属シリサイド膜78Gを形成することができる。
【0073】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0074】
以上の第1〜第6の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0075】
(付記1)
(a)半導体基板の一部の表面上に、半導体膜と、該半導体膜よりも密度の高いブロック膜とがこの順番に積層されたゲートパターンを形成する工程と、
(b)前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板の表層部に、ソース及びドレイン用の不純物を注入する工程と、
(c)前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板内に、前記ソース及びドレイン用の不純物とは異なる歪形成用の不純物を注入する工程と、
(d)前記半導体基板を熱処理し、前記歪形成用の不純物が注入された領域を再結晶化させる工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【0076】
(付記2)
前記ソース及びドレイン用の不純物がn型不純物であり、前記工程(d)で再結晶化することにより、前記ゲートパターンの下のチャネル領域に伸び歪みが生じる付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0077】
(付記3)
前記半導体基板の少なくとも表層部がシリコンで形成されており、前記歪形成用の不純物が炭素である付記2に記載の半導体装置の製造方法。
【0078】
(付記4)
前記工程(c)及び(d)において、前記半導体基板内に、炭素濃度が1原子%以上のSiCからなる歪発生領域が形成される条件で、前記歪形成用の不純物の注入、及び熱処理を行う付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0079】
(付記5)
前記工程(c)及び(d)において、前記ゲートパターンの両側のシリコンを含む半導体領域の表面における炭素原子濃度が1×1020cm−3以下になる条件で前記歪形成用の不純物の注入、及び熱処理を行う付記3または4に記載の半導体装置の製造方法。
【0080】
(付記6)
前記ソース及びドレイン用の不純物がp型不純物であり、前記工程(d)で再結晶化することにより、前記ゲートパターンの下のチャネル領域に伸び歪みが生じる付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0081】
(付記7)
前記工程(c)の後、前記半導体基板の上に、前記ゲートパターンを被覆するように保護膜を形成する工程と、
前記ゲートパターンの上の前記保護膜を除去し、前記ブロック膜を露出させる工程と、
露出した前記ブロック膜及び前記保護膜を除去する工程と、
前記保護膜を除去した後、前記半導体基板の露出している表面、及び前記ゲートパターン内の前記半導体膜の表面に、金属シリサイド膜を形成する工程と
を有する付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0082】
(付記8)
前記工程(b)が、
前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板の表層部に、ソース及びドレインのエクステンション部用の不純物の注入を行う工程と、
前記ゲートパターンの側面上に、第1のスペーサを形成する工程と、
前記ゲートパターン及び前記第1のスペーサをマスクとして、前記半導体基板の表層部に、ソース及びドレインの深い領域用の不純物の注入を行う工程と
を含み、
前記工程(c)において、前記ゲートパターン及び第1のスペーサをマスクとして、前記歪形成用の不純物を注入する付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0083】
(付記9)
前記工程(c)が、さらに、前記第1のスペーサの側面上に、第2のスペーサを形成する工程を含み、前記ゲートパターン、前記第1のスペーサ、及び前記第2のスペーサをマスクとして、前記歪形成用の不純物の注入を行う付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0084】
(付記10)
前記工程(d)の後、さらに、
前記半導体基板及び前記ゲートパターンの上に、層間絶縁膜を堆積させる工程と、
前記ゲートパターン上の前記層間絶縁膜を除去して該ゲートパターンの上面を露出させる工程と、
前記ゲートパターンを除去する工程と、
前記ゲートパターンが除去された領域の前記半導体基板の表面に、ゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲートパターンが除去されることによって形成された凹部内に、ゲート電極を充填する工程と
を有する付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0085】
(付記11)
前記半導体基板が、
絶縁膜上に、シリコンを含む半導体からなる素子形成層が形成されているSOI基板であり、
前記工程(b)の後、工程(c)の前に、さらに、
前記ゲートパターンの側面上に第1のスペーサを形成する工程と、
前記第1のスペーサよりも外側の前記素子形成層の上に、シリコンを含む半導体からなるエレベーテッド膜を選択的に成長させる工程と
を含み、
前記工程(c)において、前記ゲートパターン及び前記第1のスペーサをマスクとして、前記素子形成層及び前記エレベーテッド膜内に、前記歪形成用の不純物を注入する付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0086】
(付記12)
前記工程(c)において、前記歪形成用の不純物が前記素子形成層の底面まで到達しない条件で該歪形成用の不純物を注入する付記11に記載の半導体装置の製造方法。
【0087】
(付記13)
シリコンからなる表層部を有する半導体基板と、
前記半導体基板の表面の一部の領域上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板の表層部に形成されたn型のソース及びドレイン領域と、
前記ソース及びドレイン領域の表面に形成された金属シリサイド膜と、
前記金属シリサイド膜の下に配置されたSiCからなる領域と
を有し、
前記ゲート電極の下のチャネル領域に延び歪みが生じている半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1−1】第1の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その1)である。
【図1−2】第1の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その2)である。
【図1−3】第1の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その3)である。
【図2】第2の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図である。
【図3】第3の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図である。
【図4】第4の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図である。
【図5−1】第5の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その1)である。
【図5−2】第5の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その2)である。
【図6−1】第6の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その1)である。
【図6−2】第6の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その2)である。
【図6−3】第6の実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置の断面図(その3)である。
【符号の説明】
【0089】
10 基板
11 素子分離絶縁膜
12 p型ウェル
15 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
17 バリア膜
18 ブロック膜
19 ゲートパターン
21 第1のスペーサ
22S ソース領域
22D ドレイン領域
25 第2のスペーサ
27 歪発生領域
30 保護膜
32S、32D、32G 金属シリサイド膜
40S エレベーテッドソース領域
40D エレベーテッドドレイン領域
40G ゲート上部シリコン膜
43S、43D、43G 金属シリサイド膜
50 金属ゲート電極
61 ダミーゲート絶縁膜
62 ダミーゲート電極
65 層間絶縁膜
67 ゲート絶縁膜
68 金属ゲート電極
70 SOI基板
71 支持基板
72 絶縁膜
73 素子形成層
75S、75D エレベーテッド膜
80 保護膜
78S、78D、78G 金属シリサイド膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体基板の一部の表面上に、半導体膜と、該半導体膜よりも密度の高いブロック膜とがこの順番に積層されたゲートパターンを形成する工程と、
(b)前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板の表層部に、ソース及びドレイン用の不純物を注入する工程と、
(c)前記ゲートパターンをマスクとして、前記半導体基板内に、前記ソース及びドレイン用の不純物とは異なる歪形成用の不純物を注入する工程と、
(d)前記半導体基板を熱処理し、前記歪形成用の不純物が注入された領域を再結晶化させる工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ソース及びドレイン用の不純物がn型不純物であり、前記工程(d)で再結晶化することにより、前記ゲートパターンの下のチャネル領域に伸び歪みが生じる請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板の少なくとも表層部がシリコンで形成されており、前記歪形成用の不純物が炭素である請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)及び(d)において、前記半導体基板内に、炭素濃度が1原子%以上のSiCからなる歪発生領域が形成される条件で、前記歪形成用の不純物の注入、及び熱処理を行う請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
シリコンからなる表層部を有する半導体基板と、
前記半導体基板の表面の一部の領域上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板の表層部に形成されたn型のソース及びドレイン領域と、
前記ソース及びドレイン領域の表面に形成された金属シリサイド膜と、
前記金属シリサイド膜の下に配置されたSiCからなる領域と
を有し、
前記ゲート電極の下のチャネル領域に延び歪みが生じている半導体装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【公開番号】特開2009−152391(P2009−152391A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328899(P2007−328899)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】