説明

半導体装置

【課題】動作特性の劣化を抑えつつ、それぞれ適切な閾値電圧を設定された、メタルゲート電極を用いたn型およびp型のMISFETを混載する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板上に第1のゲート絶縁膜を介して形成された、第1の金属層および前記第1の金属層上の第1の導電層を含む第1のゲート電極を含むn型トランジスタと、半導体基板上に第2のゲート絶縁膜を介して形成された、前記第1の金属層よりも厚さが厚く、前記第1の金属層と構成元素の同一な材料からなる第2の金属層、および前記第2の金属層上の第2の導電層を含む第2のゲート電極を含むp型トランジスタと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化への要求に応ずるため、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の微細化が進展しており、それに伴うゲート絶縁膜の薄膜化への要求が著しい。しかし、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴い、多結晶シリコンゲート電極の空乏化という問題が発生するため、この問題を回避するために、メタルゲート電極を用いる技術が用いられている。
【0003】
n型MISFETとp型MISFETが混載された半導体装置においては、それぞれが適切な閾値電圧を有することが求められるが、メタルゲート電極を用いる場合、多結晶シリコンゲート電極を用いる場合と異なり、ゲート電極に不純物を導入してその仕事関数を調整する方法を用いることはできない。
【0004】
メタルゲート電極を用いたMISFETの閾値電圧を調整する方法として、ゲート絶縁膜にLa等の不純物を注入する技術が知られているが、不純物の注入により電荷移動度が低下するという問題が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
一方、応力を内包するようにメタルゲート電極を形成することにより、MISFETのチャネル領域に歪みを発生させて電荷移動度を変調させる技術が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
また、同一の材料からメタルゲート電極を形成する場合であっても、成膜方法を変えることにより、内包する応力の方向を調節する技術が知られている(例えば、非特許文献3参照)。この非特許文献3に記載の技術によれば、メタルゲート電極をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することにより伸張応力を内包させ、PVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて形成することにより圧縮応力を内包させることができる。
【非特許文献1】P. D. Kirsch et al., IEDM, 2006, p.629.
【非特許文献2】F. Andrieu et al., IEDM Tech. Dig., 2006, p.641
【非特許文献3】Takeo Matsuki et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 46, No. 5B, 2007, p.3181.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、動作特性の劣化を抑えつつ、それぞれ適切な閾値電圧を設定された、メタルゲート電極を用いたn型およびp型のMISFETを混載する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、半導体基板上に第1のゲート絶縁膜を介して形成された、第1の金属層および前記第1の金属層上の第1の導電層を含む第1のゲート電極、前記半導体基板中の前記第1のゲート絶縁膜下に形成された第1のチャネル領域、前記半導体基板中の前記第1のチャネル領域の両側に形成された第1のソース・ドレイン領域、を含むn型トランジスタと、半導体基板上に第2のゲート絶縁膜を介して形成された、前記第1の金属層よりも厚さが厚く、前記第1の金属層と構成元素の同一な材料からなる第2の金属層、および前記第2の金属層上の第2の導電層を含む第2のゲート電極、前記半導体基板中の前記第2のゲート絶縁膜下に形成された第2のチャネル領域、前記半導体基板中の前記第2のチャネル領域の両側に形成された第2のソース・ドレイン領域、を含むp型トランジスタと、を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動作特性の劣化を抑えつつ、それぞれ適切な閾値電圧を設定された、メタルゲート電極を用いたn型およびp型のMISFETを混載する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置1の断面図である。半導体装置1は、半導体基板2上に素子分離領域3により電気的に分離されたn型MISFET10およびp型MISFET20を有する。
【0011】
半導体基板2は、Si結晶等のSi系結晶からなる。
【0012】
素子分離領域3は、例えば、SiO等の絶縁材料からなり、STI(Shallow Trench Isolation)構造を有する。
【0013】
n型MISFET10は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁16と、半導体基板2中のゲート絶縁膜11下に形成されたチャネル領域15と、半導体基板2内のチャネル領域15の両側に形成されたソース・ドレイン領域14と、を有する。なお、図示しないが、半導体基板2中のn型MISFET10下の領域に、p型のウェルが形成されていてもよい。
【0014】
p型MISFET20は、半導体基板2上にゲート絶縁膜21を介して形成されたゲート電極22と、ゲート電極22の側面に形成されたオフセットスペーサ23と、オフセットスペーサ23の側面に形成されたゲート側壁26と、半導体基板2中のゲート絶縁膜21下に形成されたチャネル領域25と、半導体基板2内のチャネル領域25の両側に形成されたソース・ドレイン領域24と、を有する。なお、図示しないが、半導体基板2中のp型MISFET20下の領域に、n型のウェルが形成されていてもよい。
【0015】
ゲート絶縁膜11、21は、例えば、SiO、SiN、SiON等の絶縁材料や、Hf系化合物(HfSiON、HfSiO、HfO等)、Zr系化合物(ZrSiON、ZrSiO、ZrO等)、Y系化合物(Y等)等のHigh−k材料からなる。また、n型MISFET10、p型MISFET20の閾値電圧を調整するために、上記の材料にLa、Mg、Al、Ge等の不純物を含めてもよい。この場合、ゲート絶縁膜11とゲート絶縁膜21には、異なる不純物が含まれていてもよく、また、どちらか一方にのみ不純物が含まれていてもよい。
【0016】
ゲート電極12は、ゲート絶縁膜11上に形成された金属層12aと、金属層12a上に形成された半導体層12bを含む。また、ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21上に形成された金属層22aと、金属層22a上に形成された半導体層22bを含む。
【0017】
金属層12a、22aは、ゲート電極12、22の空乏化を防ぐメタルゲートとしての機能を有する。金属層12a、22aは、例えば、Ti、Ta、W、Mo、Ruや、それらの窒化物、炭化物、さらにSiとの化合物(TiN、TaSiN、TaC等)からなる。金属層22aの厚さは、金属層12aの厚さよりも厚い。
【0018】
図2は、金属層の膜厚と仕事関数の関係を示すグラフである。図2中の異なる膜厚を有する金属層の各成膜条件は、成膜時間のみが異なり、その他の条件は同一である。図2に示されるように、金属層の膜厚が増加するのに伴い、その仕事関数が増加する。この理由として、例えば、金属層の成膜工程の初期と後期で金属の組成や配向性が異なるため、厚さの異なる金属層間で組成や配向性に差異が生じることが考えられる。
【0019】
なお、図2は、一例としてスパッタ法により形成したTiNからなる金属層の厚さと仕事関数の関係を示しているが、この関係を満たす金属層の材料および成膜方法はこれに限られない。また、TiN、TaSiN、TaC等の化合物からなる金属層を形成する場合、成膜工程の初期と後期で膜の組成比が変わる場合がある。このため、厚さの異なる金属層間では材料の組成比が異なる場合があるが、材料の構成元素は同一である。
【0020】
半導体基板2の材料であるSiの伝導帯の下端の仕事関数が約4.1eV、価電子帯の上端の仕事関数が約5.1eVであるため、金属層の仕事関数が小さい(4.1eVに近い)ほどn型MISFETに適しており、また、金属層の仕事関数が大きい(5.1eVに近い)ほどp型MISFETに適しているといえる。
【0021】
上記の理由により、厚さの薄い金属層22aは、n型MISFETに適した小さい仕事関数を有し、厚さの厚い金属層12aは、p型MISFETに適した大きい仕事関数を有する。
【0022】
また、金属層12a、22aは、同一の材料(単体または組成比の等しい化合物から構成される場合)または構成元素の同一な材料(組成比の異なる化合物から構成される場合)から形成される。このため、膜厚と仕事関数の関係が金属層12aと金属層22aの間でほぼ等しく、双方の仕事関数の調整が容易になる。
【0023】
金属層12aの厚さは、メタルゲートとしての機能を十分に確保するために、2nm以上であることが好ましい。また、金属層12aと金属層22aのそれぞれがn型MISFET10とp型MISFET20に適した仕事関数を有するために、金属層22aの厚さが金属層12aの厚さよりも5nm以上厚いことが好ましい。
【0024】
また、金属層12a、22aの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合は、ゲート絶縁膜11、21にLa、Mg、Al、Ge等の不純物を注入する等の他の方法により、閾値電圧を補助的に調整してもよい。この場合においても、膜厚制御により閾値電圧を所望の値に近づけることができるため、他の方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化(例えば、ゲート絶縁膜11、21への不純物の注入に起因する電荷移動度の低下)を低減することができる。
【0025】
半導体層12b、22bは、導電型不純物を含む多結晶Si、多結晶SiGe等のSi系多結晶からなる。半導体層12bには、As、P等のn型不純物が含まれ、半導体層22bには、B、BF等のp型不純物が含まれる。また、半導体層12b、22bの上部または全体にシリサイド層が形成されてもよい。
【0026】
ゲート電極12、22の上部に半導体層12a、22aを形成することにより、従来の多結晶Siゲート電極プロセスとの整合性を向上させることができる。また、金属層12aと金属層22aが異なる厚さを有するため、半導体層12bと半導体層22bの厚さを調整することにより、ゲート電極12とゲート電極22の高さを揃えることができる。
【0027】
オフセットスペーサ13、23は、例えば、SiO、SiN等の絶縁材料からなる。オフセットスペーサ13、23の厚さは、ソース・ドレイン領域14、24のチャネル領域15、25の端部の位置を決定する要素となる。
【0028】
ゲート側壁16、26は、例えばSiNからなる単層構造や、例えばSiNとSiOからなる2層構造を有し、更には3層以上の構造を有してもよい。
【0029】
ソース・ドレイン領域14は、As、P等のn型不純物を半導体基板2のn型トランジスタ10の領域に注入することにより形成される。また、ソース・ドレイン領域24は、B、BF等のp型不純物を半導体基板2のp型トランジスタ20の領域に注入することにより形成される。また、ソース・ドレイン領域14、24の上部にシリサイド層が形成されてもよい。
【0030】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置1の製造方法の一例を示す。
【0031】
(半導体装置の製造)
図3A(a)〜(d)、図3B(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置1の製造工程を示す断面図である。
【0032】
まず、図3A(a)に示すように、半導体基板2上に素子分離領域3を形成してn型トランジスタ10を形成するn型MISFET領域100とp型トランジスタ20を形成するp型MISFET領域200を分離した後、n型MISFET領域100およびp型MISFET領域200上に絶縁膜30および第1の金属膜31を積層する。
【0033】
ここで、素子分離領域3は、例えば、次の様な工程により形成される。まず、フォトリソグラフィとRIE(Reactive Ion Etching)法により半導体基板2に溝を形成する。次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、その溝にSiO膜を堆積させた後、これをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化して、素子分離領域3に加工する。
【0034】
また、図示しないが、素子分離領域3を形成した後、イオン注入法により導電型不純物を半導体基板2内に注入し、n型MISFET領域100とp型トランジスタ20内のそれぞれにウェル(図示しない)を形成する。ここで、n型MISFET領域100にはB等のp型不純物が注入され、p型MISFET領域200にはP等のn型不純物が注入される。ウェル内の導電型不純物は、RTA(Rapid Thermal Annealing)法等の熱処理により活性化される。
【0035】
絶縁膜30は、CVD法、プラズマ窒化法等により形成される。また、第1の金属膜31は、PVD(Physical Vapor Deposition)法等により形成される。第1の金属膜31は、後の工程において金属層22aに加工される膜である。
【0036】
次に、図3A(b)に示すように、p型MISFET領域200の第1の金属膜31上に形成したマスク材32をマスクとして第1の金属膜31にエッチングを施し、n型MISFET領域100の第1の金属膜31を除去する。
【0037】
ここで、マスク材32は、フォトリソグラフィ法により形成される。また、n型MISFET領域100の第1の金属膜31は、マスク材32をマスクとして用いたウェットエッチング法等により除去される。
【0038】
次に、図3A(c)に示すように、n型MISFET領域100の絶縁膜30上、およびp型MISFET領域200のマスク材32上に第2の金属膜33を形成する。
【0039】
第2の金属膜33は、PVD法等により形成される。第2の金属膜33は、後の工程において金属層12aに加工される膜であるため、第1の金属膜31よりも薄く形成する。
【0040】
次に、図3A(d)に示すように、n型MISFET領域100の第2の金属膜33上に形成したマスク材34をマスクとして第2の金属膜33にエッチングを施し、p型MISFET領域200の第2の金属膜33を除去する。
【0041】
ここで、マスク材34は、フォトリソグラフィ法により形成される。また、p型MISFET領域200の第2の金属膜33は、マスク材34をマスクとして用いたウェットエッチング法等により除去される。
【0042】
次に、図3B(e)に示すように、マスク材32、34を除去した後、n型MISFET領域100の第2の金属膜33上、およびp型MISFET領域200の第1の金属膜31上に半導体膜35を形成する。
【0043】
ここで、マスク材32、34は、ウェットエッチング法等により除去される。また、半導体層35は、CVD法等により形成される。
【0044】
次に、図3B(f)に示すように、半導体膜35、第1の金属膜31、第2の金属膜33、および絶縁膜30をパターニングして、n型MISFET領域100に半導体層12b、金属層12a、およびゲート絶縁膜11を形成し、p型MISFET領域200に半導体層22b、金属層22a、およびゲート絶縁膜21を形成する。なお、ゲート電極12は金属層12aと半導体層12bにより構成され、ゲート電極22は金属層22aと半導体層22bにより構成される。
【0045】
ここで、半導体膜35、第1の金属膜31、第2の金属膜33、および絶縁膜30は、例えば、フォトリソグラフィ法とRIE法によりパターニングされる。パターニングにより、半導体膜35は半導体層12b、22bに加工され、第1の金属膜31は金属層22aに加工され、第2の金属膜33は金属層12aに加工され、絶縁膜30はゲート絶縁膜11、21に加工される。
【0046】
次に、図3B(g)に示すように、ゲート絶縁膜11とゲート電極12の側面、およびゲート絶縁膜21とゲート電極22の側面に、それぞれオフセットスペーサ13、23を形成した後、n型MISFET領域100およびp型MISFET領域200にそれぞれソース・ドレイン領域14、24のエクステンション領域を形成する。ソース・ドレイン領域14、24のエクステンション領域内の導電型不純物は、RTA法等の熱処理により活性化される。
【0047】
ここで、オフセットスペーサ13、23は、例えば、CVD法等により半導体基板2上の全面を覆うようにオフセットスペーサ13、23の材料膜を形成した後、RIE法等によりこの材料膜を加工することにより形成される。
【0048】
ソース・ドレイン領域14のエクステンション領域は、イオン注入法等により、ゲート電極12およびオフセットスペーサ13をマスクとして半導体基板2のn型MISFET領域100にn型不純物を注入することにより形成される。また、ソース・ドレイン領域24のエクステンション領域は、イオン注入法等により、ゲート電極22およびオフセットスペーサ23をマスクとして半導体基板2のp型MISFET領域200にp型不純物を注入することにより形成される。
【0049】
次に、図3B(h)に示すように、オフセットスペーサ13の側面およびオフセットスペーサ23の側面に、それぞれゲート側壁16、26を形成した後、n型MISFET領域100およびp型MISFET領域200にそれぞれソース・ドレイン領域12、24を形成する。ソース・ドレイン領域14、24内の導電型不純物は、RTA法等の熱処理により活性化される。
【0050】
ここで、ゲート側壁16、26は、例えば、CVD法等により半導体基板2上の全面を覆うようにゲート側壁16、26の材料膜を形成した後、RIE法等を用いてこの材料膜を加工することにより形成される。
【0051】
ソース・ドレイン領域14は、イオン注入法等により、ゲート電極12、オフセットスペーサ13、およびゲート側壁16をマスクとして半導体基板2のn型MISFET領域100にn型不純物を注入することにより形成される。また、ソース・ドレイン領域24は、イオン注入法等により、ゲート電極22、オフセットスペーサ23、およびゲート側壁26をマスクとして半導体基板2のp型MISFET領域200にp型不純物を注入することにより形成される。
【0052】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、金属層12aと金属層22aの膜厚を異ならせることにより、それぞれの有する仕事関数を異ならせることができる。これにより、n型MISFET10およびp型MISFET20にそれぞれ適した閾値電圧を設定することができる。
【0053】
また、金属層12a、22aの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合であっても、他の閾値電圧の調整方法の適用量を減らすことができるため、他の閾値電圧の調整方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化を低減することができる。
【0054】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態は、n型MISFET10が積層された2つの金属層を有する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、その他の第1の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0055】
(半導体装置の構成)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置1の断面図である。
【0056】
ゲート電極12は、ゲート絶縁膜11上に形成された金属層12aと、金属層12a上に形成された金属層12cと、金属層12c上に形成された半導体層12bを含む。また、ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21上に形成された金属層22aと、金属層22a上に形成された半導体層22bを含む。
【0057】
金属層12a、22aは、ゲート電極12、22の空乏化を防ぐメタルゲートとしての機能を有する。金属層12a、12c、22aは、同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、例えば、Ti、Ta、W、Mo、Ruや、それらの窒化物、炭化物、さらにSiとの化合物(TiN、TaSiN、TaC等)からなる。
【0058】
金属層22aの厚さは、金属層12aの厚さよりも厚く、第1の実施の形態と同様の理由により、金属層22aの有する仕事関数は、金属層12aの有する仕事関数よりも大きい。また、金属層12aと金属層12cの厚さの合計が、金属層22aの厚さとほぼ等しい。
【0059】
金属層12aと金属層12cのうち、仕事関数がn型トランジスタ10の閾値電圧に大きく影響を与えるのは、下側にある金属層12aである。そのため、厚さの薄い金属層22aを含むゲート電極12は、n型MISFETに適した閾値電圧をn型MISFET10に与え、厚さの厚い金属層12aを含むゲート電極22は、p型MISFETに適した閾値電圧をp型MISFET20に与える。
【0060】
金属層12aの厚さは、メタルゲートとしての機能を十分に確保するために、2nm以上であることが好ましい。また、金属層12aと金属層22aのそれぞれがn型MISFET10とp型MISFET20に適した仕事関数を有するために、金属層22aの厚さが金属層12aの厚さよりも5nm以上厚いことが好ましい。
【0061】
また、金属層12a、12bの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合は、ゲート絶縁膜11、21にLa、Mg、Al、Ge等の不純物を注入する等の他の方法により、閾値電圧を補助的に調整してもよい。この場合においても、膜厚制御により閾値電圧を所望の値に近づけることができるため、他の方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化(例えば、ゲート絶縁膜11、21への不純物の注入に起因する電荷移動度の低下)を低減することができる。
【0062】
なお、金属層12cは、多層の金属膜から構成されていてもよい。
【0063】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置1の製造方法の一例を示す。
【0064】
(半導体装置の製造)
図5(a)〜(d)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置1の製造工程を示す断面図である。
【0065】
まず、図3A(c)に示した第2の金属膜33を形成する工程までの工程を第1の実施の形態と同様に行う。
【0066】
次に、図5(a)に示すように、第2の金属膜33上に第3の金属膜36を形成する。
【0067】
第3の金属膜36は、PVD法等により形成される。第3の金属膜36は、第2の金属膜33と第3の金属膜36の厚さの合計が第1の金属膜31の厚さと等しくなるような厚さに形成する。
【0068】
次に、図5(b)に示すように、n型MISFET領域100の第3の金属膜36上に形成したマスク材34をマスクとして第3の金属膜36および第2の金属膜33にエッチングを施し、p型MISFET領域200の第3の金属膜36および第2の金属膜33を除去する。
【0069】
ここで、p型MISFET領域200の第3の金属膜36および第2の金属膜33は、マスク材34をマスクとして用いたウェットエッチング法等により除去される。
【0070】
次に、図5(c)に示すように、マスク材32、34を除去した後、n型MISFET領域100の第3の金属膜36上、およびp型MISFET領域200の第1の金属膜31上に半導体膜35を形成する。
【0071】
次に、図5(d)に示すように、半導体膜35、第1の金属膜31、第3の金属膜36、第2の金属膜33、および絶縁膜30をパターニングして、n型MISFET領域100に半導体層12b、金属層12c、金属層12a、およびゲート絶縁膜11を形成し、p型MISFET領域200に半導体層22b、金属層22a、およびゲート絶縁膜21を形成する。なお、ゲート電極12は金属層12a、金属層12c、および半導体層12bにより構成され、ゲート電極22は金属層22aと半導体層22bにより構成される。
【0072】
ここで、半導体膜35、第1の金属膜31、第3の金属膜36、第2の金属膜33、および絶縁膜30は、例えば、フォトリソグラフィ法とRIE法によりパターニングされる。パターニングにより、半導体膜35は半導体層12b、22bに加工され、第1の金属膜31は金属層22aに加工され、第3の金属膜36および第2の金属膜33は金属層12c、12aに加工され、絶縁膜30はゲート絶縁膜11、21に加工される。
【0073】
このとき、第1の金属膜31、第3の金属膜36、および第2の金属膜33が同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、かつ第2の金属膜33と第3の金属膜36の厚さの合計が第1の金属膜31の厚さとほぼ等しいため、第3の金属膜36と第2の金属膜33のエッチングに要する時間と、第1の金属膜31のエッチングに要する時間がほぼ等しくなる。このため、1枚のフォトマスクを用いてゲート電極12、22を同時にパターン形成することができる。
【0074】
その後、図3B(g)に示した、オフセットスペーサ13、23およびソース・ドレイン領域14、24のエクステンション領域を形成する工程以降の工程を第1の実施の形態と同様に行う。
【0075】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、金属層12aと金属層22aの膜厚を異ならせることにより、第1の実施の形態と同様に、n型MISFET10およびp型MISFET20にそれぞれ適した閾値電圧を設定することができる。
【0076】
また、金属層12a、22aの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合であっても、他の閾値電圧の調整方法の適用量を減らすことができるため、他の閾値電圧の調整方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化を低減することができる。
【0077】
また、金属層12a、12c、22aが同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、かつ金属層12aと金属層12cの厚さの合計が金属層22aの厚さとほぼ等しいため、1枚のフォトマスクを用いてゲート電極12、22を同時にパターン形成することができる。
【0078】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態は、ゲート電極12の半導体層と、ゲート電極22の半導体層が、圧縮応力を内包し、それぞれチャネル領域15、25に歪みを発生させる点において、第1の実施の形態と異なる。なお、その他の第1の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0079】
(半導体装置の構成)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置1の断面図である。
【0080】
ゲート電極12は、ゲート絶縁膜11上に形成された圧縮金属層12dと、圧縮金属層12d上に形成された半導体層12bを含む。また、ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21上に形成された伸張金属層22cと、金属層22a上に形成された半導体層22bを含む。
【0081】
圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cは、ゲート電極12、22の空乏化を防ぐメタルゲートとしての機能を有する。圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cは、例えば、Ti、Ta、W、Mo、Ruや、それらの窒化物、炭化物、さらにSiとの化合物(TiN、TaSiN、TaC等)からなる。
【0082】
伸張金属層22cの厚さは、圧縮金属層12dの厚さよりも厚く、第1の実施の形態と同様の理由により、伸張金属層22cの有する仕事関数は、圧縮金属層12dの有する仕事関数よりも大きい。そのため、圧縮金属層12dを含むゲート電極12は、n型MISFETに適した閾値電圧をn型MISFET10に与え、伸張金属層22cを含むゲート電極22は、p型MISFETに適した閾値電圧をp型MISFET20に与える。
【0083】
また、圧縮金属層12dと伸張金属層22cは、同一の材料または構成元素の同一な材料から形成される。このため、膜厚と仕事関数の関係が圧縮金属層12dと伸張金属層22cの間で等しく、双方の仕事関数の調整が容易になる。
【0084】
圧縮金属層12dの厚さは、メタルゲートとしての機能を十分に確保するために、2nm以上であることが好ましい。また、圧縮金属層12dと伸張金属層22cのそれぞれがn型MISFET10とp型MISFET20に適した仕事関数を有するために、伸張金属層22cの厚さが圧縮金属層12dの厚さよりも5nm以上厚いことが好ましい。
【0085】
また、圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合は、ゲート絶縁膜11、21にLa、Mg、Al、Ge等の不純物を注入する等の他の方法により、閾値電圧を補助的に調整してもよい。この場合においても、膜厚制御により閾値電圧を所望の値に近づけることができるため、他の方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化(例えば、ゲート絶縁膜11、21への不純物の注入に起因する電荷移動度の低下)を低減することができる。
【0086】
また、圧縮金属層12dは、圧縮応力を内包し、チャネル領域15にチャネル方向の伸張歪みを発生させる。圧縮金属層12dの材料膜は、圧縮応力を内包するように成膜される。材料膜をパターニングして圧縮金属層12dに加工した後も、圧縮応力は圧縮金属層12d内に残留する。
【0087】
また、伸張金属層22cは、伸張応力を内包し、チャネル領域25にチャネル方向の圧縮歪みを発生させる。伸張金属層22cの材料膜は、伸張応力を内包するように成膜される。材料膜をパターニングして伸張金属層22cに加工した後も、伸張応力は伸張金属層22c内に残留する。
【0088】
また、圧縮金属層12dと伸張金属層22cを同一の材料から形成する場合であっても、例えば、圧縮金属層12dをPVD法により形成し、伸張金属層22cをCVD法により形成することにより、それぞれに適切な方向の応力を残留させることができる。
【0089】
なお、半導体装置1の製造工程は、金属層12a、22aの代わりに圧縮金属層12dと伸張金属層22cを形成する点以外は第1の実施の形態と同様である。
【0090】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、圧縮金属層12dと伸張金属層22cの膜厚を異ならせることにより、第1の実施の形態と同様に、n型MISFET10およびp型MISFET20にそれぞれ適した閾値電圧を設定することができる。
【0091】
また、圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cの膜厚の膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合であっても、他の閾値電圧の調整方法の適用量を減らすことができるため、他の閾値電圧の調整方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化を低減することができる。
【0092】
また、圧縮金属層12dがチャネル領域15にチャネル方向の伸張歪みを発生させるため、チャネル領域15における電子の移動度を向上させ、n型MISFET10の動作特性を向上させることができる。
【0093】
また、伸張金属層22cがチャネル領域25にチャネル方向の伸張歪みを発生させるため、チャネル領域25における正孔の移動度を向上させ、p型MISFET20の動作特性を向上させることができる。
【0094】
なお、圧縮金属層12dの代わりに、圧縮金属層12dと同一の厚さを有し、伸張金属層22cと同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、伸張応力を内包する金属膜を用いてもよい。この場合、チャネル領域15に伸張歪みを発生させてn型MISFET10の動作特性を向上させることはできないが、この金属膜が伸張金属層22cと同じ方法(例えば、CVD法)を用いて形成されるため、この金属膜と伸張金属層22cを同じチャンバー内で成膜することができる。また、この金属膜が伸張金属層22cと同一の材料または構成元素の同一な材料から同じ方法(例えば、CVD法)を用いて形成されるため、双方の仕事関数の制御を安定して行うことができる。
【0095】
〔第4の実施の形態〕
本発明の第4の実施の形態は、n型MISFET10が積層された2層の圧縮金属層を有する点において、第3の実施の形態と異なる。なお、その他の第3の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0096】
(半導体装置の構成)
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置1の断面図である。
【0097】
ゲート電極12は、ゲート絶縁膜11上に形成された圧縮金属層12dと、圧縮金属層12d上に形成された圧縮金属層12eと、圧縮金属層12e上に形成された半導体層12bを含む。また、ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21上に形成された伸張金属層22cと、金属層22a上に形成された半導体層22bを含む。
【0098】
圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cは、ゲート電極12、22の空乏化を防ぐメタルゲートとしての機能を有する。圧縮金属層12d、12eおよび伸張金属層22cは、同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、例えば、Ti、Ta、W、Mo、Ruや、それらの窒化物、炭化物、さらにSiとの化合物(TiN、TaSiN、TaC等)からなる。
【0099】
伸張金属層22cの厚さは、圧縮金属層12dの厚さよりも厚く、第1の実施の形態と同様の理由により、伸張金属層22cの有する仕事関数は、圧縮金属層12dの有する仕事関数よりも大きい。また、圧縮金属層12dと圧縮金属層12eの厚さの合計が、伸張金属層22aの厚さとほぼ等しい。
【0100】
圧縮金属層12dと圧縮金属層12eのうち、仕事関数がn型トランジスタ10の閾値電圧に大きく影響を与えるのは、下側にある圧縮金属層12dである。そのため、圧縮金属層12dを含むゲート電極12は、n型MISFETに適した閾値電圧をn型MISFET10に与え、伸張金属層22cを含むゲート電極22は、p型MISFETに適した閾値電圧をp型MISFET20に与える。
【0101】
圧縮金属層12dの厚さは、メタルゲートとしての機能を十分に確保するために、2nm以上であることが好ましい。また、圧縮金属層12dと伸張金属層22cのそれぞれがn型MISFET10とp型MISFET20に適した仕事関数を有するために、伸張金属層22cの厚さが圧縮金属層12dの厚さよりも5nm以上厚いことが好ましい。
【0102】
また、圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合は、ゲート絶縁膜11、21にLa、Mg、Al、Ge等の不純物を注入する等の他の方法により、閾値電圧を補助的に調整してもよい。この場合においても、膜厚制御により閾値電圧を所望の値に近づけることができるため、他の方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化(例えば、ゲート絶縁膜11、21への不純物の注入に起因する電荷移動度の低下)を低減することができる。
【0103】
また、圧縮金属層12d、12eは、圧縮応力を内包し、チャネル領域15にチャネル方向の伸張歪みを発生させる。圧縮金属層12d、12eは、例えば、PVD法により成膜される。
【0104】
なお、金属層12cは、多層の金属膜から構成されていてもよいが、薄い膜を重ねた層よりも、1枚の厚い膜からなる層の方がチャネル領域15に発生させる歪みが大きくなるため、単層であることが好ましい。
【0105】
また、伸張金属層22cは、伸張応力を内包し、チャネル領域25にチャネル方向の圧縮歪みを発生させる。伸張金属層22cは、例えば、CVD法により成膜される。
【0106】
なお、半導体装置1の製造工程については、金属層12a、12c、22aの代わりに圧縮金属層12d、12e、22cを形成する以外は第2の実施の形態と同様である。
【0107】
(第4の実施の形態の効果)
本発明の第4の実施の形態によれば、圧縮金属層12dと伸張金属層22cの膜厚を異ならせることにより、第3の実施の形態と同様に、n型MISFET10およびp型MISFET20にそれぞれ適した閾値電圧を設定することができる。
【0108】
また、圧縮金属層12dおよび伸張金属層22cの膜厚の膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合であっても、他の閾値電圧の調整方法の適用量を減らすことができるため、他の閾値電圧の調整方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化を低減することができる。
【0109】
また、圧縮金属層12d、12eがチャネル領域15にチャネル方向の伸張歪みを発生させるため、チャネル領域15における電子の移動度を向上させ、n型MISFET10の動作特性を向上させることができる。
【0110】
また、伸張金属層22cがチャネル領域25にチャネル方向の伸張歪みを発生させるため、チャネル領域25における正孔の移動度を向上させ、p型MISFET20の動作特性を向上させることができる。
【0111】
また、圧縮金属層12d、12eおよび伸張金属層22cが同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、かつ圧縮金属層12dと圧縮金属層12eの厚さの合計が伸張金属層22cの厚さとほぼ等しいため、1枚のフォトマスクを用いてゲート電極12、22を同時にパターン形成することができる。
【0112】
なお、圧縮金属層12dの代わりに、圧縮金属層12dと同一の厚さを有し、伸張応力を内包する金属膜を用いてもよい。この場合、圧縮金属層12dを用いる場合と比較して、チャネル領域15に発生する伸張歪みは弱まるが、この金属膜が伸張金属層22cと同じ方法(例えば、CVD法)を用いて形成されるため、双方の仕事関数の制御を安定して行うことができる。
【0113】
〔第5の実施の形態〕
本発明の第5の実施の形態は、n型MISFET10が積層された複数の伸張金属膜からなる伸張金属層を有する点において、第4の実施の形態と異なる。なお、その他の第4の実施の形態と同様の点については説明を省略または簡略化する。
【0114】
(半導体装置の構成)
図8は、本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置1の断面図である。
【0115】
ゲート電極12は、ゲート絶縁膜11上に形成された伸張金属層12fと、伸張金属層12f上に積層された複数の伸張金属膜120からなる伸張金属層12gと、伸張金属層12g上に形成された半導体層12bを含む。また、ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21上に形成された伸張金属層22cと、金属層22a上に形成された半導体層22bを含む。
【0116】
伸張金属層12fおよび伸張金属層22cは、ゲート電極12、22の空乏化を防ぐメタルゲートとしての機能を有する。伸張金属層12f、12gおよび伸張金属層22cは、同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、例えば、Ti、Ta、W、Mo、Ruや、それらの窒化物、炭化物、さらにSiとの化合物(TiN、TaSiN、TaC等)からなる。
【0117】
伸張金属層22cの厚さは、伸張金属層12fの厚さよりも厚く、第1の実施の形態と同様の理由により、伸張金属層22cの有する仕事関数は、伸張金属層12fの有する仕事関数よりも大きい。また、伸張金属層12fと伸張金属層12gの厚さの合計が、伸張金属層22aの厚さとほぼ等しい。
【0118】
伸張金属層12fと伸張金属層12gのうち、仕事関数がn型トランジスタ10の閾値電圧に大きく影響を与えるのは、下側にある伸張金属層12fである。そのため、伸張金属層12fを含むゲート電極12は、n型MISFETに適した閾値電圧をn型MISFET10に与え、伸張金属層22cを含むゲート電極22は、p型MISFETに適した閾値電圧をp型MISFET20に与える。
【0119】
伸張金属層12fの厚さは、メタルゲートとしての機能を十分に確保するために、2nm以上であることが好ましい。また、伸張金属層12fと伸張金属層22cのそれぞれがn型MISFET10とp型MISFET20に適した仕事関数を有するために、伸張金属層22cの厚さが伸張金属層12fの厚さよりも5nm以上厚いことが好ましい。
【0120】
また、伸張金属層12fおよび伸張金属層22cの膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合は、ゲート絶縁膜11、21にLa、Mg、Al、Ge等の不純物を注入する等の他の方法により、閾値電圧を補助的に調整してもよい。この場合においても、膜厚制御により閾値電圧を所望の値に近づけることができるため、他の方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化(例えば、ゲート絶縁膜11、21への不純物の注入に起因する電荷移動度の低下)を低減することができる。
【0121】
また、伸張金属層12f、および伸張金属層12g(伸張金属層12gを構成する各伸張金属膜120)は、伸張応力を内包し、チャネル領域15にチャネル方向の圧縮歪みを発生させる。伸張金属層12f、および各伸張金属膜120は、例えば、PVD法により成膜される。
【0122】
ここで、チャネル領域15に発生するチャネル方向の圧縮歪みは、チャネル領域15の電荷移動度を低下させるため、小さい方が好ましい。伸張金属層12gは、少数の厚い膜を重ねて形成するよりも、多数の薄い膜を重ねて形成する方が、チャネル領域15に発生させる歪みが小さくなるため、伸張金属層12gを構成する伸張金属膜120の数は多い方が好ましい。
【0123】
また、伸張金属層22cは、伸張応力を内包し、チャネル領域25にチャネル方向の圧縮歪みを発生させる。伸張金属層22cは、例えば、CVD法により成膜される。
【0124】
なお、半導体装置1の製造工程については、圧縮金属層12d、12eの代わりに伸張金属層12f、12gを形成する以外は第4の実施の形態と同様である。
【0125】
(第5の実施の形態の効果)
本発明の第5の実施の形態によれば、伸張金属層12fと伸張金属層22cの膜厚を異ならせることにより、第4の実施の形態と同様に、n型MISFET10およびp型MISFET20にそれぞれ適した閾値電圧を設定することができる。
【0126】
また、伸張金属層12fおよび伸張金属層22cの膜厚の膜厚制御による仕事関数の調整のみでは所望の閾値電圧が得られない場合であっても、他の閾値電圧の調整方法の適用量を減らすことができるため、他の閾値電圧の調整方法に起因するn型MISFET10およびp型MISFET20の動作特性の劣化を低減することができる。
【0127】
また、伸張金属層22cがチャネル領域25にチャネル方向の伸張歪みを発生させるため、チャネル領域25における正孔の移動度を向上させ、p型MISFET20の動作特性を向上させることができる。
【0128】
また、伸張金属層12fと伸張金属層22cが同一の材料または構成元素の同一な材料から同じ方法(例えば、CVD法)を用いて形成されるため、双方の仕事関数の制御を安定して行うことができる。
【0129】
また、伸張金属層12f、12gおよび伸張金属層22cが同一の材料または構成元素の同一な材料からなり、かつ伸張金属層12fと伸張金属層12gの厚さの合計が伸張金属層22cの厚さとほぼ等しいため、1枚のフォトマスクを用いてゲート電極12、22を同時にパターン形成することができる。
【0130】
また、伸張金属層12f、12gが伸張金属層22cと同じ方法(例えば、CVD法)を用いて形成されるため、伸張金属層12f、12gと伸張金属層22cを同じチャンバー内で成膜することができる。
【0131】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0132】
例えば、半導体層12b、22bの代わりに、金属等の他の導電性を有する材料からなる層を用いてもよい。
【0133】
また、上記各実施の形態においては、p型トランジスタ20の金属層22aまたは伸張金属層22cが単層であるとして説明したが、金属層22aまたは伸張金属層22cは多層の金属膜により構成されていてもよい。
【0134】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図2】金属層の膜厚と仕事関数の関係を示すグラフ。
【図3A】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3B】(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【符号の説明】
【0136】
1 半導体装置、 2 半導体基板、 10 n型トランジスタ、 20 p型トランジスタ、 11、21 ゲート絶縁膜、 12、22 ゲート電極、 12a、12c、22a 金属層、 12b、22b 半導体層、 12d、12e 圧縮金属層、 12f、12g、22c 伸張金属層、 120 伸張金属膜、 14、24 ソース・ドレイン領域、 15、25 チャネル領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に第1のゲート絶縁膜を介して形成された、第1の金属層および前記第1の金属層上の第1の導電層を含む第1のゲート電極、前記半導体基板中の前記第1のゲート絶縁膜下に形成された第1のチャネル領域、前記半導体基板中の前記第1のチャネル領域の両側に形成された第1のソース・ドレイン領域、を含むn型トランジスタと、
半導体基板上に第2のゲート絶縁膜を介して形成された、前記第1の金属層よりも厚さが厚く、前記第1の金属層と構成元素の同一な材料からなる第2の金属層、および前記第2の金属層上の第2の導電層を含む第2のゲート電極、前記半導体基板中の前記第2のゲート絶縁膜下に形成された第2のチャネル領域、前記半導体基板中の前記第2のチャネル領域の両側に形成された第2のソース・ドレイン領域、を含むp型トランジスタと、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1の金属層と前記第1の導電層との間に前記第1の金属層と構成元素の同一な材料からなる第3の金属層が形成され、
前記第1の金属層と前記第3の金属層の厚さの合計が、前記第2の金属層の厚さと略等しい、
請求項1に記載された半導体装置。
【請求項3】
前記第1の金属層は、圧縮応力または伸張応力を内包する金属膜からなり、
前記第2の金属層は、伸張応力を内包する金属膜からなる、
請求項1または2に記載された半導体装置。
【請求項4】
前記第1および第3の金属層は、圧縮応力を内包する金属膜からなり、
前記第2の金属層は、伸張応力を内包する金属膜からなる、
請求項2に記載された半導体装置。
【請求項5】
前記第1および第2の金属層は、伸張応力を内包する金属膜からなり、
前記第3の金属層は、圧縮応力を内包する金属膜、または伸張応力を内包する複数の膜を積層した金属積層膜からなる、
請求項2に記載された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−73985(P2010−73985A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241345(P2008−241345)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】