説明

基板処理方法およびそれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板のリンス処理時に、希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも一種を含む酸化膜の膜減りを抑制する。
【解決手段】半導体基板(W)上には、希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも一種を含む酸化膜が形成されている。半導体基板(W)に対するリンス処理において、アルカリ性薬液または有機溶剤からなるリンス液が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対してリンス液を供給するリンス工程を含む基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。また、この発明は、基板処理方法を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(FET)のゲート絶縁膜には、従来から酸化シリコンが用いられてきた。素子の微細化および高集積化のためには、ゲート絶縁膜の膜厚を薄くして、充分なオン電流を確保する必要がある。しかし、酸化シリコンからなるゲート絶縁膜の薄型化はもはや限界であり、たとえば、設計ルールが32nmの技術世代のデバイスには、酸化シリコンゲート絶縁膜を適用することはできない。数原子層分の膜厚の酸化シリコンゲート膜を用いると、量子トンネル効果によるリーク電流が増えてしまうからである。
【0003】
そこで、酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率材料、いわゆるHigh-k材料を用いたゲート構造の導入が検討されている。High-k材料をゲート絶縁膜に適用することによって、その膜厚を厚くしてリーク電流を減少させるとともに、薄い酸化シリコンゲート絶縁膜を用いた場合と同様に大量の電流を流すことができる。
具体的なゲート構造は、たとえば、シリコン基板表面に形成された界面酸化膜と、この界面酸化膜上に形成されたHigh-kゲート絶縁膜と、このHigh-kゲート絶縁膜上に形成されたゲートメタル(導体膜)とを含む。界面酸化膜は、二酸化シリコンからなる。この界面酸化膜は、High-kゲート絶縁膜を使用した場合に生じる移動度μの低下を抑制し、さらに、ハフニウム含有材料からなるHigh-kゲート絶縁膜の成膜性を高める。High-k材料としては、ハフニウム系の材料が有力視されている。また、ゲートメタルには、窒化チタンやタンタル系の材料が選択される場合が多い。これらのゲートメタル材料は、仕事関数が中間的な値であるため、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造を形成する場合に有力な材料である。NチャンネルMOSFETおよびPチャンネルMOSFETのゲートメタルに対して共通に適用できるからである。ゲートメタル材料を共通化しておくことにより、NチャンネルおよびPチャンネルのMOSFETのゲート構造を共通のドライエッチング工程で同時に形成できる。
【0004】
ゲート絶縁膜は、膜厚の大きなホストHigh-k膜と、膜厚の小さなキャップ層(High-kキャップ)との積層膜で構成される場合がある。ホストHigh-k膜は、たとえばハフニウム系の材料で形成される。キャップ層は、ホストHigh-k膜に接するように形成され、たとえば、ランタン酸化物、マグネシウム酸化物、アルミニウム酸化物等の金属酸化膜からなる。
ソースおよびドレイン領域を形成するための活性化アニール工程において、キャップ層内の金属分子がホストHigh-k膜に拡散する。これにより、閾値電圧をシフトさせることができ、所望の閾値電圧を得ることができる。たとえば、NチャンネルMOSFETを形成する場合には、N型ポリシリコンに近似した仕事関数を有する材料でキャップ層が形成される。同様に、PチャンネルMOSFETを形成するときには、P型ポリシリコンに近似した仕事関数を有する材料でキャップ層が形成される。これにより、MOSFETの閾値電圧を低くすることができる。
【0005】
CMOS構造を形成する場合には、したがって、NチャンネルMOSFET側にはN型ポリシリコンに近い仕事関数を有する材料のキャップ層を形成し、PチャンネルMOSFET側にはP型ポリシリコンに近い仕事関数を有する材料のキャップ層を形成すればよい。これにより、共通の材料でゲートメタルを形成しながら、PチャンネルおよびNチャンネルMOSFETのそれぞれの閾値電圧を低くできる。
【0006】
具体的には、NチャンネルMOSFETに適用されるキャップ層(以下、「N側キャップ層」という。)には、仕事関数の低いランタン酸化物やマグネシウム酸化物を用いることができる。また、PチャンネルMOSFETに適用されるキャップ層(以下、「P側キャップ層」という。)には、仕事関数の高いアルミニウム酸化物を適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−273799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
大量の電流を流すためには、ゲート絶縁膜の電気的膜厚(EOT:等価酸化膜厚)をできるだけ薄くする必要があるので、キャップ層の膜厚は、数原子層分(10Å前後)とされる。そのため、キャップ層の膜厚制御および均一性に対する要求は厳しい。また、キャップ層の酸化や荒れといった表面層の変質は、ただちに閾値電圧の変動および電気的膜厚の増加につながるから、トランジスタ特性に無視できない影響を及ぼす。
【0009】
N側キャップ層とP側キャップ層とに異なる金属酸化膜が用いられる場合、それらの材料膜のパターニングは不可欠である。具体的には、N側キャップ層を形成し、その後、そのN側キャップ層をNチャンネルMOSFETが形成される領域(以下「NMOS領域」という。)に選択的に残す必要がある。同様に、P側キャップ層を形成し、その後、そのP側キャップ層をPチャンネルMOSFETが形成される領域(以下「PMOS領域」という。)に選択的に残す必要がある。
【0010】
キャップ層のパターニングは、ドライプロセスまたはウェットプロセスで行うことができる。ドライプロセスは、キャップ層上へのハードマスク成膜、ハードマスク上へのフォトレジストマスク形成、ハードマスクの選択エッチング、フォトレジストマスクの剥離、キャップ層の選択ドライエッチング、およびハードマスクの剥離を含む。これに対して、ウェットプロセスは、キャップ層上へのフォトレジストマスク形成、キャップ層の選択ウェットエッチング、およびフォトレジストマスクの剥離を含む。
【0011】
キャップ層を形成するための各工程では、基板表面の洗浄が行われる。洗浄には薬液および純水(脱イオン水:DIW(deionized water))が用いられる場合、および純水のみが用いられる場合がある。いずれの場合も、純水を用いたリンス工程が含まれる。したがって、ドライプロセスにおいては、キャップ層の形成後、キャップ層の選択ドライエッチング後、およびハードマスクの剥離後において、キャップ層は純水に接する。ウェットプロセスにおいては、キャップ層の形成後、フォトレジストマスクの形成後、キャップ層の選択ウェットエッチング後、およびフォトレジスト膜の剥離後において、キャップ層は純水に接する。
【0012】
ところが、本願の発明者による研究の結果、キャップ層は、純水に接することで、材料の一部が失われ、膜厚が減少することが分かった。この傾向は、とくに、N側キャップ層において、より顕著に現れた。
実験結果の一例を、図8に示す。この実験では、N側キャップ層の一例であるランタン酸化物(La)膜を表面に形成した半導体基板に対して、純水リンス処理を行った。横軸は純水リンス処理時間(DIW rinse time)であり、縦軸は、ランタン酸化物膜のエッチング量(LaO etch amount)を示す。純水リンス処理では、半導体基板をスピンチャックに水平保持して回転させながら、半導体基板の中心に純水を供給した。図8から、純水リンス処理時間の経過に伴って、ランタン酸化物膜の膜厚が減少していくことが分かる。
【0013】
前述のとおり、キャップ層は、極めて薄いため、その膜厚精度、およびその基板面内における均一性に対する要求は厳格である。より具体的には、キャップ層の膜厚が10Å程度である場合、良好なデバイス特性を実現するためには、膜減り(film loss)の許容範囲は、たとえば1Å以下と考えられる。しかし、図8に示すとおり、純水リンス処理による膜減りは、処理開始後わずか7秒後には1Åに達している。1分間の純水リンスを行うとすれば、膜厚10Åのランタン酸化膜は、その膜厚の40%以上が失われることになる。したがって、純水リンス処理時に生じる膜減りの問題は、High-kゲート絶縁膜を用いた実用的なデバイスを作製するためには、克服しておくべき課題である。
【0014】
現在までのところ、純水リンス処理によるキャップ層の膜減りについての報告例はない。さらに、一般化すれば、希土類酸化膜またはアルカリ土類酸化膜が露出している状態の半導体基板に対して純水リンス処理を行う場合の膜減りについての報告例はない。したがって、前記の課題は、本願発明者によって始めて見いだされた課題であり、むろん、未解決の課題である。
【0015】
この発明は、このような未解決の課題に対する解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の基板処理方法は、希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも一種を含む酸化膜の少なくとも一部が露出した半導体基板を準備する工程と、前記半導体基板上の前記酸化膜に対して、アルカリ性薬液(pH7〜14)または有機溶剤からなるリンス液を供給するリンス工程とを含む。
本願発明者の研究によれば、アルカリ性薬液を用いてリンス工程を行うと、希土類酸化物またはアルカリ土類酸化物からなる膜の膜減りが、純水を用いたリンス工程に比較して著しく低減される。また、有機溶剤をリンス液として用いる場合にも、希土類酸化物またはアルカリ土類酸化物からなる膜の膜減りが、純水をリンス液として用いる場合に比較して著しく低減される。したがって、この発明の基板処理方法を半導体装置の製造に適用すれば、前述の課題を解決できる。
【0017】
前記希土類酸化物は、ランタン酸化物、ガドリニウム酸化物、スカンジウム酸化物、およびジスプロシウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。
前記アルカリ土類酸化物が、マグネシウム酸化物、バリウム酸化物、およびストロンチウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。
【0018】
前記アルカリ性薬液は、pHが7よりも大きい(より好ましくはpH10以上)アルカリ性水溶液であることが好ましい。pHが7よりも大きい(より好ましくはpH10以上)アルカリ性水溶液を用いることによって、より効果的に膜減りを低減できる。
前記アルカリ性薬液は、アンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、コリン水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、および水酸化カリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。
【0019】
前記有機溶剤は、水に溶けて中性またはアルカリ性を示す有機溶剤を含むものであってもよい。有機溶剤のなかには、水に溶けて酸性を示すものもある。しかし、本願発明者の研究によれば、水に溶けて中性またはアルカリ性を示す有機溶剤の方が、より膜減り量の低減に有利であると考えられる。このような有機溶剤としては、イソプロピルアルコール(IPA)、1−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−ピロパノール、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、およびメチルイソブチルケトン(MIBK)を例示できる。
【0020】
前記有機溶剤は、有機溶剤の含有率が略100%(99%以上、好ましくは100%)の高濃度有機溶剤であることが好ましい。さらに好ましくは、含水率が1%以下であることが好ましい。
前記有機溶剤は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、およびアミン類からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。アルコール類としては、イソプロピルアルコール(IPA)、1−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−ピロパノール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)を例示できる。また、エーテル類としては、ハイドロフルオロエーテル(HFE)を例示できる。ケトン類としては、メチルイソブチルケトン(MIBK)を例示できる。また、アミン類としては、N−メチルピロリドン(NMP)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を例示できる。
【0021】
さらに具体的には、前記有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)、1−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ピロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、N−メチルピロリドン(NMP)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。
【0022】
前記リンス工程の前後における前記酸化膜の膜厚減少は、1Å以下であることが好ましい。換言すれば、リンス工程の前後における膜厚減少が1Å以下となるように、リンス液の組成、濃度、および温度を選択し、リンス処理の時間を設定すればよい。リンス処理時間を1分以内(たとえば、30秒〜60秒)に設定するとすれば、リンス液による前記酸化膜のエッチングレートが1Å/分以下であればよい。膜厚減少が1Å以下であれば、前述のHigh-kキャップを形成する工程に適用でき、優れた電気特性のデバイスを形成できる。
【0023】
前記酸化膜は、酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜に接していてもよい。具体的には、前記高誘電率膜は前述のホストHigh-k膜として用いられるものであってもよい。そして、前記酸化膜は、前述のHigh-kキャップ膜として用いられるものであってもよい。
前記高誘電率膜は、ハフニウム含有材料、アルミナ(アルミニウム酸化物)、およびジルコニア(ジルコニウム酸化物)からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。これらは、ゲート絶縁膜を形成するHigh-k材料として適用可能である。
【0024】
この場合に、前記ハフニウム含有材料は、ハフニウム酸化物、ハフニウム珪化物、ハフニウム窒化物を含む群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。より具体的には、前記ハフニウム含有材料は、HfO、HfON、HfSi、HfSiO、HfSiON、およびHfTiOからなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。
【0025】
前記基板処理方法は、前記リンス工程の後に、前記半導体基板の表面の液を排除する乾燥工程をさらに含んでいてもよい。たとえば、リンス工程は、基板を回転させる工程と、回転状態の基板の表面にリンス液を供給する工程とを含んでいてもよい。乾燥工程は、たとえば、リンス液の供給を停止した後に、基板を回転させ、遠心力によって基板表面の液を排除する工程を含んでいてもよい。乾燥工程は、また、イソプロピルアルコールその他の揮発性溶剤を基板表面に供給する工程を含んでいてもよい。この場合に、乾燥工程は、揮発性溶剤を排除するために、基板表面に不活性ガス(たとえば窒素ガス)を供給する工程を含んでいてもよい。
【0026】
前記半導体基板を準備する工程は、前記酸化膜の表面に形成されたフォトレジスト層またはフォトレジスト残渣を除去液で除去することによって、前記酸化膜の少なくとも一部を露出させる除去工程を含んでいてもよい。たとえば、前記酸化膜をパターニングするために、パターン化されたフォトレジスト層が前記酸化膜上に形成されてもよい。このフォトレジスト層をマスクとして、前記酸化膜がパターニング(エッチング)される。このパターニングの後には、フォトレジスト膜を除去する除去工程が行われる。この除去工程の後に、前述のリンス工程が行われる。この場合、リンス工程は、除去工程において用いられた基板上の除去液をリンス液で置換する工程を含む。
【0027】
また、前記酸化膜その他基板上の薄膜または基板材料自身がドライエッチングによって加工される場合もある。この場合、フォトレジスト層のパターンが基板上に形成され、このフォトレジスト膜をマスクとして、ドライエッチングが行われる。また、基板に対してイオンを選択的に注入するためのマスクとしてフォトレジスト層が用いられる場合もある。これらの場合、注入イオンによって硬化されたフォトレジストが基板上に残渣として付着する。また、マスクとして使用した後のフォトレジスト膜に対してアッシング処理が施される場合もある。このアッシング後の基板表面には、フォトレジストの残渣が残される。これらの残渣が除去液によって除去される。そして、基板表面に残る除去液が、リンス工程において、リンス液に置換される。
【0028】
前記除去液と前記リンス液とは、同じ化学組成を有していてもよい。これにより、除去工程とリンス工程とを連続して行うことができる。換言すれば、一つの工程で、フォトレジスト層またはフォトレジスト残渣の除去と、リンス処理とを行うことができる。
前記除去液は有機溶剤のみで調製することもできるが、有機溶剤および添加剤を含むものであってもよい。この添加剤は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含むものであってもよい。このような添加剤は、たとえば、フォトレジスト下部の反射防止膜(BARC:Bottom Anti Reflective Coating。とくに湿式現像可能なもの)を除去する目的で除去液に添加される。水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を添加剤として添加する場合に、その濃度は0.025%以上とすることが好ましい。
【0029】
この発明の半導体装置の製造方法は、前述のような基板処理方法を用いて半導体装置を製造するための方法であって、前記半導体基板を準備する工程が、半導体基板の表面(界面層が形成された表面でもよい。)に希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも一種を含む酸化膜と、酸化シリコンよりも誘電率の高い材料からなる高誘電率膜とを積層した積層膜を形成する工程と、前記積層膜上に導電膜を形成する工程と、前記導電膜および前記積層膜をパターニングしてゲート構造を形成し、これにより、前記酸化膜の少なくとも一部を露出させるゲート形成工程とを含む。
【0030】
この方法により、積層膜をゲート絶縁膜としたゲート構造を形成できる。その際、リンス工程における酸化膜の膜減りを抑制できるので、優れた特性のデバイスを形成できる。
この発明の一実施形態では、前記積層膜を形成する工程が、前記酸化膜上の所定領域にフォトレジストマスクを形成し、前記フォトレジストマスクから露出した前記酸化膜をエッチング(たとえばウェットエッチング)する工程と、前記エッチング後に前記フォトレジストマスクを除去することによって、前記所定領域の前記酸化膜を露出させる工程とを含む。そして、前記リンス工程が、前記酸化膜の形成直後、前記フォトレジストマスクから露出した前記酸化膜をエッチングした直後、前記フォトレジストマスクの除去直後、および前記ゲート形成工程の直後のうちの少なくとも一つにおいて実行される。
【0031】
この方法により、いわゆるウェットプロセスでゲート構造を形成できる。そして、リンス工程における酸化膜の膜減りを抑制できるので、優れた特性のデバイスを形成できる。酸化膜の形成直後とは、酸化膜を形成した後、フォトレジストマスクを形成する前を意味する。フォトレジストマスクから露出した酸化膜をエッチングした直後とは、当該エッチングの後、フォトレジストマスクを除去する前を意味する。フォトレジストマスクの除去直後とは、フォトレジストマスクの除去の後、ゲート形成工程の前を意味する。前記ゲート形成工程の直後とは、ゲート形成工程の後、基板上に薄膜の形成、基板へのイオン注入その他の処理が行われる前を意味する。一般に、「直後」とは、当該工程の後、次の工程の前を意味する。
【0032】
また、この発明の一つの実施形態においては、前記積層膜を形成する工程が、第1酸化膜としての前記酸化膜上の第1領域に第1フォトレジストマスクを形成し、前記第1フォトレジストマスクから露出した前記第1酸化膜をエッチングする第1エッチング工程と、前記第1エッチング工程後に前記第1フォトレジストマスクを除去することによって、前記第1領域の前記第1酸化膜を露出させる工程と、前記第1酸化膜とは異なる材料からなる第2酸化膜を前記半導体基板上に形成する工程と、前記第2の酸化膜上の前記第1領域とは異なる第2領域に第2フォトレジストマスクを形成し、前記第2フォトレジストマスクから露出した前記第2酸化膜をエッチングする第2エッチング工程と、前記第2エッチング工程後に前記第2フォトレジストマスクを除去することによって、前記第2領域の前記第2酸化膜を露出させる工程とを含む。また、前記ゲート形成工程が、前記第1領域内および前記第2領域内にそれぞれ位置する少なくとも一対のゲート構造を形成する工程である。そして、前記リンス工程が、前記第1酸化膜の形成直後、前記第1フォトレジストマスクから露出した前記第1酸化膜をエッチングした直後、前記第1フォトレジストマスクの除去直後、前記第2酸化膜の形成直後、前記第2フォトレジストマスクから露出した前記第2酸化膜をエッチングした直後、前記第2フォトレジストマスクの除去直後、および前記ゲート形成工程の直後のうちの少なくとも一つにおいて実行される。
【0033】
前記第1酸化膜および前記第2酸化膜は、異なる仕事関数を有する金属酸化物からなっていてもよい。
この方法により、たとえば、第1および第2領域に異なる特性の電界効果型トランジスタ(MOSFET)を形成できる。より具体的には、CMOS構造を形成することができる。この場合に、第1および第2領域のMOSFETのゲートメタル材料を共通化することができ、第1および第2酸化膜の働きによって、ゲート絶縁膜全体の仕事関数を調整することができる。これにより、簡単なプロセスでCMOS構造のように、異なる仕事関数の素子を形成できる。この場合に、リンス工程における酸化膜の膜減りを抑制できることから、その素子の電気特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る基板処理方法を説明するための図である。
【図2】この発明の第2の実施形態に係る基板処理方法を説明するための図である。
【図3】ランタン酸化膜についてエッチングレートのpH依存性を調べた結果を示す図である。
【図4】ランタン酸化膜の膜減りとリンス液の一例としてのアンモニア水の濃度との関係を示す図である。
【図5】ランタン酸化膜およびマグネシウム酸化膜の膜減りとリンス液の一例としての有機溶剤の濃度との関係を示す図である。
【図6】種々の有機溶剤をリンス液として用いた場合についてランタン酸化膜およびマグネシウム酸化膜の膜減りを調べた結果を示す図である。
【図7A】この発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図解的な断面図である。
【図7B】図7Aの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7C】図7Bの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7D】図7Cの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7E】図7Dの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7F】図7Eの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7G】図7Fの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7H】図7Gの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7I】図7Hの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7J】図7Iの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7K】図7Jの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7L】図7Kの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7M】図7Lの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7N】図7Mの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7O】図7Nの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7P】図7Oの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7Q】図7Pの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8】純水リンスによる膜減りを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理方法を説明するための図である。この基板処理方法は、たとえば、半導体基板を1枚ずつ処理する枚葉型基板処理装置によって実行される。基板処理装置は、スピンチャック1と、処理液ノズル2とを備えている。スピンチャック1は、1枚の半導体基板Wを水平姿勢で保持し、その中心を通る鉛直軸線まわりに回転させる。処理液ノズル2は、スピンチャック1に保持された半導体基板Wの表面に処理液を供給する。より具体的には、処理液ノズル2は、薬液またはリンス液を基板Wの表面に向けて吐出する。
【0036】
基板Wは、希土類酸化物またはアルカリ土類酸化物からなる酸化膜が形成された状態の半導体基板である。希土類酸化物の一例は、ランタン酸化物(La)であるが、ほかにも、ガドリニウム酸化物(Gd)、スカンジウム酸化物(Sc)、およびジスプロシウム酸化物(Dy)も希土類酸化物として用いられ得る。また、これらの希土類酸化物のうちの2種以上の組み合わせを含む酸化膜が基板Wの表面に形成されていてもよい。アルカリ土類酸化物としては、マグネシウム酸化物(Mg)、バリウム酸化物(Ba)、およびストロンチウム酸化物(Sr)を例示できる。また、これらのアルカリ土類酸化物のうちの2種類以上の組み合わせを含む酸化膜が基板Wの表面に形成されていてもよい。さらに、希土類酸化物の一種以上およびアルカリ土類酸化物の一種以上の組み合わせを含む酸化膜が基板Wの表面に形成されていてもよい。基板W上の異なる位置に異なる組成の酸化膜が形成されていてもよい。
【0037】
この実施形態に係る基板処理方法は、薬液工程、リンス工程、および乾燥工程を含む。薬液工程の後にリンス工程が実行され、リンス工程の後に乾燥工程が実行される。
薬液工程は、基板Wを薬液で処理する工程である。より具体的には、スピンチャック1によって基板Wが回転させられ、回転状態の基板Wの表面に向けて処理液ノズル2から薬液が吐出される。処理液ノズル2から吐出される薬液は、フォトレジストまたはフォトレジスト残渣を除去するための除去液であってもよい。また、前記薬液は、基板W上の膜(前記酸化膜その他基板W上の膜)をエッチングするためのエッチング液であってもよい。さらに、前記薬液は、基板W表面の異物(パーティクル等)を除去するための洗浄液であってもよい。
【0038】
フォトレジストを除去(剥離)するための除去液(レジスト剥離液)としては、有機溶剤を用いることができる。具体的には、有機溶剤として、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることができる。これらの有機溶剤は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
前記除去液は前述のような有機溶剤のみで調製することもできるが、有機溶剤に添加剤を添加して調製されてもよい。この添加剤としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を例示できる。水酸化テトラメチルアンモニウムは、たとえば除去液中の濃度が0.025%以上となるように添加することが好ましい。このような添加剤は、たとえば、フォトレジスト下部の反射防止膜(BARC:Bottom Anti Reflective Coating。とくに湿式現像可能なもの)を除去する目的で除去液に添加される。
【0040】
レジスト残渣は、ドライエッチングのマスクとしてフォトレジストを用いる場合に、そのドライエッチング後に基板W上に残留する。ドライエッチング法では、処理対象の膜だけでなくフォトレジストも腐食されていき、その一部は、変質してポリマー(レジスト残渣)として、基板表面に残留する。ドライエッチングは、基板W上の膜(前記酸化膜その他基板W上の膜)をパターニングする際に適用される場合がある。ポリマーを除去するためのポリマー除去液としては、有機アルカリ液を含む液体、有機酸を含む液体、無機酸を含む液体、フッ化アンモン系物質を含む液体のうちの少なくともいずれか1つが使用できる。そのうち、有機アルカリ液を含む液体としては、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヒドロキシルアミン、コリンのうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。また、有機酸を含む液体としては、クエン酸、蓚酸、イミノジ酸、および琥珀酸のうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。また、無機酸を含む液体としては、フッ酸および燐酸のうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。その他、ポリマー除去液としては、1−メチル−2ピロリドン、テトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシド、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、2−(2アミノエトキシ)エタノール、カテコール、N−メチルピロリドン、アロマティックジオール、パークレン(テトラクロロエチレン)、フェノールを含む液体などのうちの少なくともいずれか1つを含む液体があり、より具体的には、1−メチル−2ピロリドンとテトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシドとイソプロパノールアミンとの混合液、ジメチルスルホキシドとモノエタノールアミンとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとヒドロキシアミンとカテコールとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとN−メチルピロリドンとの混合液、モノエタノールアミンと水とアロマティックジオールとの混合液、パークレン(テトラクロロエチレン)とフェノールとの混合液などのうちの少なくともいずれか1つが挙げられる。その他、トリエタノールアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのアミン類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。
【0041】
エッチング液としては、塩酸、フッ酸、アンモニア水、および水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を例示できる。
洗浄液は、たとえば、基板W表面のパーティクルを除去するパーティクル除去液であってもよい。パーティクル除去液としては、アンモニア水−過酸化水素水(ammonia-hydrogen peroxide mixture)を例示できる。
【0042】
リンス工程は、薬液工程後に基板W表面に残る薬液をリンス液で置換する工程である。より具体的には、スピンチャック1によって基板Wが回転させられ、回転状態の基板Wの表面に向けて処理液ノズル2からリンス液が吐出される。処理液ノズル2から吐出されるリンス液は、アルカリ性薬液(pH7〜14)または有機溶剤である。
アルカリ性薬液は、pH10以上のアルカリ性水溶液が好ましい。より具体的には、前記アルカリ性薬液は、アンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、コリン水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、および水酸化カリウム水溶液のうちの1種以上を含む薬液であってもよい。
【0043】
リンス液として用いることができる有機溶剤としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、およびアミン類からなる群から選択される少なくとも一種を含むものを適用できる。より具体的には、前記有機溶剤として、イソプロピルアルコール(IPA)、1−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ピロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、N−メチルピロリドン(NMP)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの少なくとも一種を含むものを用いることができる。これらの有機溶剤は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
乾燥工程は、リンス工程の後に基板W表面に残る液を排除する工程である。より具体的には、スピンチャック1によって基板Wが高速回転(たとえば、2000rpm〜3000rpm)させられる(いわゆるスピンドライ)。これにより、基板W表面の液は、遠心力によって基板Wの外方へと排除される。こうして、基板Wが乾燥させられる。
乾燥工程は、スピンチャック1に保持された基板Wの表面に揮発性溶剤を供給する工程を含んでいてもよい。揮発性溶剤としては、IPA(イソプロピルアルコール)およびHFE(ハイドロフルオロエーテル)を例示することができる。揮発性溶剤とは、水よりも揮発性の高い溶剤をいう。揮発性溶剤を基板W表面に供給することによって、基板W表面の乾燥を促進することができる。揮発性溶剤の供給工程の途中から、または揮発性溶剤の供給停止後に、基板W表面に向けて不活性ガス(たとえば窒素ガス)を供給する不活性ガス供給工程を行ってもよい。これにより、基板W表面から揮発性溶剤をすみやかに排除することができるため、乾燥工程を一層すみやかに行うことができる。
【0045】
図2は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理方法を説明するための図である。この基板処理方法は、薬液工程を含まない点が、第1の実施形態の基板処理方法と異なる。すなわち、基板W表面にリンス液を供給するリンス工程が行われ、その後に、乾燥工程が行われる。リンス工程および乾燥工程の詳細は、第1の実施形態の場合と同様である。処理前の基板W表面に薬液が存在していない場合には、この実施形態のリンス工程における処理は、基板W上の薬液を置換する処理ではなく、基板W上の異物をリンス液によって洗い流す洗浄処理となる。
【0046】
図3は、希土類酸化物からなる酸化膜の一例であるランタン酸化膜について、エッチングレートのpH依存性を調べた結果を示す図である。より具体的には、表面にランタン酸化膜が形成されたシリコン基板を用意した。このシリコン基板をスピンチャックで保持して回転させ、種々のpH値の水溶液を基板に供給した。そして、ランタン酸化膜のエッチングレート(La etch rate)を測定した。測定点(measurement)は、シンボル「◆」で表されている。水溶液のpHは、塩酸(HCl)およびアンモニア水(NHOH)の添加によって調節した。
【0047】
図3に示すとおり、ランタン酸化膜のエッチングレートが、pHの増加とともに減少することがわかった。
図4は、ランタン酸化膜のエッチングレート(La etch rate)とリンス液の一例としてのアンモニア水(NHOH)の濃度との関係を示す図である。アンモニア濃度が高いほどエッチングレートが低くなっていることが分かる。多少の誤差はあるが、pH10以上の範囲では、1Å/分程度以下のエッチングレートが実現されている。したがって、1分程度のリンス工程を行っても、ランタン酸化膜へのダメージを充分に抑制できることが分かる。
【0048】
図5は、ランタン酸化膜およびマグネシウム酸化膜の膜減り(material loss)とリンス液の一例としての有機溶剤の濃度との関係を示す図である。表面にランタン酸化膜が形成されたシリコン基板を用意した。このシリコン基板をスピンチャックで保持して回転させ、種々の濃度の有機溶剤を基板に供給した。そして、ランタン酸化膜のエッチングレート(1分当たりの膜減り)を測定した。さらに、表面にマグネシウム酸化膜が形成されたシリコン基板を用意した。このシリコン基板をスピンチャックで保持して回転させ、種々の濃度の有機溶剤を基板に供給した。そして、マグネシウム酸化膜のエッチングレート(1分当たりの膜減り)を測定した。有機溶剤としては、IPA(イソプロピルアルコール)を用いた。これを純水によって種々の濃度に希釈してリンス液とし、これを基板表面に供給した。図5において、IPAの濃度は、水との混合比で表してある。ランタン酸化膜に関する測定点はシンボル「▲」で表されている。また、マグネシウム酸化膜に関する測定点はシンボル「□」で表されている。
【0049】
図5から理解されるとおり、有機溶剤の濃度が高いほどエッチングレート(膜減り)が減少している。有機溶剤濃度を略100%(99%以上、好ましくは100%)とすることにより、1分当たり1Å以下のエッチングレートとなる。とくに、100%の有機溶剤を用いることにより、ランタン酸化膜の膜減りは実質的に零となり、マグネシウム酸化膜のエッチングレートは0.7Å/分程度に抑制される。これにより、ランタン酸化膜またはマグネシウム酸化膜に対するダメージを充分に抑制できる。
【0050】
図6は、種々の有機溶剤をリンス液として用いた場合についてランタン酸化膜の膜減り(La2O3loss)およびマグネシウム酸化膜の膜減り(MgO2 loss)を調べた結果を示す図である。左側の目盛りはランタ酸化膜ンの1分間当たりの膜減り(エッチングレート)を表し、右側の目盛りはマグネシウム酸化膜の1分間当たりの膜減り(エッチングレート)を表す。比較のために、純水(DIW)についての測定結果も併せて示してある。測定に使用した有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、1−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、および1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ピロパノールである。いずれも、濃度が略100%(99%以上、好ましくは100%)のものを用いた。ハイドロフルオロエーテルとしては、スリーエム社が「NovecTM Engineered Fluid HFE-7500」として提供しているものを用いた。その化学式は、n−C37CF(OC25)CF(CF32である。
【0051】
これらの有機溶剤は、いずれも水に溶けて中性を示す有機溶剤である。図6の測定結果から、いずれの有機溶剤も、ランタン酸化膜およびマグネシウム酸化膜に対するエッチングレートが1Å/分以下となることが分かる。よって、これらの有機溶剤をリンス液として用いることにより、ランタン酸化膜およびマグネシウム酸化膜の膜減りの問題を克服できる。
【0052】
図7A〜7Qは、この発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す図解的な断面図である。図7A〜7Qには、CMOS構造を有する半導体装置の製造工程が示されている。
図7Aに示すように、半導体基板としてのシリコン基板11のデバイスの表層部の領域は、NチャンネルMOSFETを形成すべきNMOS領域21(第1領域)と、PチャンネルMOSFETを形成すべきPMOS領域22(第2領域)とに分離される。具体的には、NMOS領域21とPMOS領域22とを分離する素子分離構造23が形成される。図7Aの例では、STI(Shallow Trench Isolation)構造により素子分離構造23が形成されている。すなわち、素子分離構造23は、シリコン基板11上にエッチングによって形成された浅い溝内に酸化シリコンを埋め込んで形成されている。さらに、シリコン基板11の表面全域には、薄い界面層(Interfacial layer)12が形成される。界面層12は、この実施形態では、酸化シリコン(SiO)からなり、その膜厚は、およそ1nm(10Å)程度である。界面層12は、熱酸化膜によって形成されてもよい。
【0053】
次の工程を図7Bに示す。界面層12が形成されたシリコン基板11の表面(より正確には界面層12の表面)に、第1キャップ層13(第1酸化膜)が形成される。第1キャップ層13は、NチャンネルMOSFETの閾値電圧を低減させるためのN側キャップ層である。第1キャップ層13としては、ランタン酸化膜またはマグネシウム酸化膜を適用することができる。より一般的には、希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物の一種または2種以上の組み合わせを第1キャップ層13の材料とすることができる。希土類酸化物としては、ランタン酸化物、ガドリニウム酸化物、スカンジウム酸化膜、およびジスプロシウム酸化物を例示できる。また、アルカリ土類酸化物としては、マグネシウム酸化物、バリウム酸化膜、およびストロンチウム酸化物を例示できる。これらは、一種が単独で用いられてもよいし、2種以上の任意の組み合わせで用いられてもよい。図7Bには、第1キャップ層13をランタン酸化膜で形成した例を示す。第1キャップ層13の膜厚は、1nm(10Å)程度である。第1キャップ層13の形成には、PVD(Physical Vapor Deposition)法、なかでも、nmオーダーで膜厚を制御できるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法またはALD(Atomic Layer Deposition)法を適用することが好ましい。
【0054】
第1キャップ層13の成膜後に、シリコン基板11の表面(第1キャップ層13の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第1の実施形態(図1参照)において、アンモニア水−過酸化水素水(ammonia-hydrogen peroxide mixture)をパーティクル除去液として使用する。あるいは、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用される。
【0055】
次の工程を図7Cに示す。第1キャップ層13の上に、この第1キャップ層13をNMOS領域21において覆い、PMOS領域22において露出するパターンのフォトレジストマスク25が形成される。フォトレジストマスク25は、フォトリソグラフィによって形成される。
次の工程を図7Dに示す。フォトレジストマスク25をマスクとした選択エッチングにより、PMOS領域22における第1キャップ層13が選択的に除去される。これにより、NMOS領域21に第1キャップ層13が残される。選択エッチングは、たとえば、希釈した塩酸(HCl)を用いたウェットプロセスによって実行される。
【0056】
第1キャップ層13の選択エッチング後に、シリコン基板11の表面(第1キャップ層13の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用される。図7Dに示す工程を薬液工程と考えると、第1キャップ層13の選択エッチング工程、ならびにその後のリンス工程および乾燥工程は、第1の実施形態に係る基板処理方法に該当する。
【0057】
次の工程を図7Eに示す。フォトレジストマスク25が除去(剥離)される。この除去処理は、この実施形態では、除去液(レジスト剥離液)を用いたウェットプロセスによって実行される。フォトレジストを除去(剥離)する除去液(レジスト剥離液)としては、有機溶剤を用いることができる。具体的には、有機溶剤として、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることができる。これらは1種のみで用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。前記除去液は前述のような有機溶剤のみで調製することもできるが、有機溶剤に添加剤を添加して調製されてもよい。この添加剤としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を例示できる。水酸化テトラメチルアンモニウムは、たとえば除去液中の濃度が0.025%以上となるように添加することが好ましい。このような添加剤は、たとえば、フォトレジスト下部の反射防止膜(BARC。とくに湿式現像可能なもの)を除去する目的で除去液に添加される。
【0058】
フォトレジストマスク25の剥離後に、シリコン基板11の表面(第1キャップ層13の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用される。図7Eに示す工程を薬液工程と考えると、フォトレジストマスク25の剥離工程、ならびにその後のリンス工程および乾燥工程は、第1の実施形態に係る基板処理方法に該当する。
【0059】
次の工程を図7Fに示す。シリコン基板11の表面にホストHigh-k膜15が形成される。このホストHigh-k膜15は、NMOS領域21において第1キャップ層13に接し、PMOS領域22において界面層12に接する。ホストHigh-k膜15は、酸化シリコンよりも誘電率の高いHigh-k材料(高誘電率材料)で形成された高誘電率膜である。ホストHigh-k膜15は、たとえば、ハフニウム含有材料、アルミナ、およびジルコニアのうち少なくとも一種を含むものとすることができる。ハフニウム含有材料としては、HfO、HfON、HfSi、HfSiO、HfSiON、およびHfTiOのうちの1種または2種以上の組み合わせを選択することができる。図7Fには、ホストHigh-k膜15をHfO、HfSiOまたはHfSiONで形成する例を示す。ホストHigh-k膜15は、ゲート絶縁膜の本体部分を形成する。ホストHigh-k膜15の膜厚は、第1キャップ層13の膜厚よりも大きく、たとえば2nm(20Å)程度とされる。ホストHigh-k膜15の形成には、MOCVD、ALD法その他のPVD法を適用することができる。
【0060】
次の工程を図7Gに示す。ホストHigh-k膜15の上に、このホストHigh-k膜15に接する第2キャップ層14(第2酸化膜)が形成される。第2キャップ層14は、PチャンネルMOSFETの閾値電圧を低減させるためのP側High-kキャップ層である。第2キャップ層14としては、アルミニウム酸化物(アルミナ:Al)を適用できる。他にも、アルミニウム窒化物(AlN)を第2キャップ層14として適用することができる。第2キャップ層14の膜厚は、ホストHigh-k膜15の膜厚よりも小さく、1nm(10Å)程度である。第2キャップ層14の形成は、PVD法、なかでも、nmオーダーで膜厚を制御できるMOCVD法またはALD法を適用することが好ましい。
【0061】
第2キャップ層14の成膜後に、シリコン基板11の表面(第2キャップ層14の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用されてもよい。ただし、第1キャップ層13がシリコン基板11のいずれの領域においても露出していなければ、純水(DIW:脱イオン水)その他のリンス液を用いてシリコン基板11のリンスを行ってもよい。
【0062】
次の工程を図7Hに示す。第2キャップ層14の上に、この第2キャップ層14をPMOS領域22において覆い、NMOS領域21において露出するパターンのフォトレジストマスク26が形成される。フォトレジストマスク26は、フォトリソグラフィによって形成される。
フォトレジストマスク26の形成後に、シリコン基板11の表面(第2キャップ層14の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用されてもよい。ただし、第1キャップ層13がシリコン基板11のいずれの領域においても露出していなければ、純水(DIW:脱イオン水)その他のリンス液を用いてシリコン基板11のリンスを行ってもよい。
【0063】
次の工程を図7Iに示す。フォトレジストマスク26をマスクとした選択エッチングにより、NMOS領域21における第2キャップ層14が選択的に除去される。これにより、PMOS領域22に第2キャップ層14が残される。選択エッチングは、たとえば、希釈したアンモニア水または水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を用いたウェットプロセスによって実行される。
【0064】
第2キャップ層14の選択エッチング後に、シリコン基板11の表面(ホストHigh-k膜15および第2キャップ層14の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用されてもよい。図7Iに示す工程を薬液工程と考えると、第2キャップ層14の選択エッチング工程、ならびにその後のリンス工程および乾燥工程は、第1の実施形態に係る基板処理方法に該当する。ただし、第1キャップ層13がシリコン基板11のいずれの領域においても露出していなければ、純水(DIW:脱イオン水)その他のリンス液を用いてシリコン基板11のリンスを行ってもよい。
【0065】
次の工程を図7Jに示す。フォトレジストマスク26が除去(剥離)される。この除去処理は、この実施形態では、除去液(レジスト剥離液)を用いたウェットプロセスによって実行される。フォトレジストを除去(剥離)する除去液(レジスト剥離液)としては、有機溶剤を用いることができる。具体的には、有機溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることができる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。前記除去液は前述のような有機溶剤のみで調製することもできるが、有機溶剤に添加剤を添加して調製されてもよい。この添加剤としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を例示できる。水酸化テトラメチルアンモニウムは、たとえば除去液中の濃度が0.025%以上となるように添加することが好ましい。このような添加剤は、たとえば、フォトレジスト下部の反射防止膜(BARC。とくに湿式現像可能なもの)を除去する目的で除去液に添加される。
【0066】
フォトレジストマスク26の剥離後に、シリコン基板11の表面(ホストHigh-k膜15および第2キャップ層14の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用されてもよい。図7Jに示す工程を薬液工程と考えると、フォトレジストマスク26の剥離工程、ならびにその後のリンス工程および乾燥工程は、第1の実施形態に係る基板処理方法に該当する。ただし、第1キャップ層13がシリコン基板11のいずれの領域においても露出していなければ、純水(DIW:脱イオン水)その他のリンス液を用いてシリコン基板11のリンスを行ってもよい。
【0067】
次の工程を図7Kに示す。シリコン基板11上に、導体膜16が形成される。導体膜16は、この実施形態では、金属膜16Aと、ポリシリコン(アモルファスシリコン)膜16Bとを積層して形成されている。金属膜16Aは、NMOS領域21においてホストHigh-k膜15に接し、PMOS領域22において第2キャップ層14に接している。ポリシリコン膜16Bは金属膜16Aに接している。金属膜16Aは、いわゆるゲートメタルである。金属膜16Aは、たとえば、窒化チタン(TiN)やタンタル系導電材料で形成できる。タンタル系導電材料としては、窒化タンタル(TiN)および炭化タンタル(TiC)を例示できる。これらのゲートメタル材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。金属膜16Aの形成には、スパッタ法その他のPVD法を適用することができる。ポリシリコン膜16Bの形成は、たとえば、蒸着法による。
【0068】
金属膜16Aの形成後、およびポリシリコン膜16Bの形成後には、それぞれ、シリコン基板11の洗浄が行われる。この基板洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用されてもよい。ただし、第1キャップ層13がシリコン基板11のいずれの領域においても露出していなければ、純水(DIW:脱イオン水)その他のリンス液を用いてシリコン基板11のリンスを行ってもよい。
【0069】
次の工程を図7Lに示す。シリコン基板11上に、ゲート構造のパターニングのためのハードマスク27が形成される。ハードマスク27は、NMOS領域21において導体膜16の上面に接する第1マスク部分271と、PMOS領域22において導体膜16の上面に接する第2マスク部分272とを有している。ハードマスク27は、ドライエッチングに対する耐久性を有する材料で形成されている。より具体的には、たとえば、酸化シリコンによってハードマスク27を形成できる。
【0070】
ハードマスク27の形成工程は、たとえば、導体膜16上への酸化シリコン膜の形成、およびその酸化シリコン膜のパターニング(選択エッチング)を含む。酸化シリコン膜の形成は、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で行うことができる。酸化シリコン膜のパターニングは、たとえば、フォトリソグラフィによって行える。フォトリソグラフィは、フォトレジスト膜の成膜、およびそのフォトレジスト膜の成膜のパターニングを含む。フォトレジストマスクを用いた酸化シリコン膜の選択エッチングの後には、フォトレジストマスクが除去(剥離)される。
【0071】
この場合に、酸化シリコン膜の形成後、フォトレジスト膜のパターニング後、酸化シリコン膜の選択エッチング後、およびフォトレジストマスクの剥離後には、それぞれ、次の工程に移る前に、シリコン基板11の洗浄が行われる。この基板洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用されてもよい。ただし、第1キャップ層13がシリコン基板11のいずれの領域においても露出していなければ、純水(DIW:脱イオン水)その他のリンス液を用いてシリコン基板11のリンスを行ってもよい。
【0072】
次の工程を図7Mに示す。ハードマスク27をマスクとしたドライエッチングによって、界面層12、第1キャップ層13、第2キャップ層14、ホストHigh-k膜15、および導体膜16が、選択的にエッチングされる。これにより、NMOS領域21に第1ゲート構造31が形成され、PMOS領域22に第2ゲート構造32が形成される。ゲートメタル(金属膜16A)がNMOS領域21およびPMOS領域22の両方に共通であるため、1回のドライエッチングで第1および第2ゲート構造31,32を形成できる。
【0073】
ドライエッチングによる第1および第2ゲート構造31,32の形成後には、シリコン基板11の表面(第1キャップ層13の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用される。
次の工程を図7Nに示す。第1および第2ゲート構造31,32上のハードマスク27が除去される。ハードマスク27の除去は、たとえば、ウェットエッチングによって行われる。使用されるエッチング液は、たとえば、フッ酸である。
【0074】
ハードマスク27の除去後には、シリコン基板11の表面(第1キャップ層13の露出表面を含む。)の異物を除去するための洗浄処理が行われる。この洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用される。図7Nに示す工程を薬液工程と考えると、ハードマスク27の除去工程、ならびにその後のリンス工程および乾燥工程は、第1の実施形態に係る基板処理方法に該当する。
【0075】
次の工程を図7Oに示す。PMOS領域22を覆い、NMOS領域21を露出させるパターンのフォトレジストマスク28が形成される。その後に、N型不純物イオンがシリコン基板11に注入される。これにより、NMOS領域21において、第1ゲート構造31によって分離された一対の領域(ソースおよびドレイン領域)にN型不純物が導入される。
【0076】
次の工程を図7Pに示す。フォトレジストマスク28が剥離され、別のフォトレジストマスク29が形成される。フォトレジストマスク29は、NMOS領域21を覆い、PMOS領域22を露出させるパターンに形成される。その後に、P型不純物イオンがシリコン基板11に注入される。これにより、PMOS領域22において、第2ゲート構造32によって分離された一対の領域(ソースおよびドレイン領域)にP型不純物が導入される。
【0077】
この後は、図7Qに示すように、フォトレジストマスク28が剥離され、さらに、ソースおよびドレイン領域に導入されたN型不純物およびP型不純物を活性化させるためのアニールが行われる。こうして、NMOS領域21にNチャンネルMOSFET41が形成され、PMOS領域22にPチャンネルMOSFET42が形成される。したがって、CMOS構造が得られる。
【0078】
フォトレジストマスク28の剥離後、フォトレジストマスク29の剥離後には、それぞれ、次の工程に移る前に、基板洗浄処理が行われる。この基板洗浄処理には、前記第2の実施形態(図2参照)の基板処理方法が適用される。
フォトレジストマスク28,29は、シリコン基板11に向けて到来するイオンによって腐食され、その一部は、変質してポリマー(レジスト残渣)として、基板11の表面に残留する。したがって、フォトレジストマスク28,29の剥離処理は、フォトレジストおよびその残渣をシリコン基板11の表面から除去する処理である。この剥離処理は、前述の除去液を用いて行うことができる。
【0079】
前述の活性化アニールの際に、第1および第2キャップ層13,14内の金属分子がホストHigh-k膜15に拡散する。これにより、NチャンネルMOSFET41およびPチャンネルMOSFET42は、いずれも低い閾値電圧を有することができる。すなわち、ホストHigh-k膜15および第1キャップ層13の積層膜からなる第1ゲート絶縁膜17は、NチャンネルMOSFET41に適した仕事関数を有する。また、ホストHigh-k膜15および第2キャップ層14の積層膜からなる第2ゲート絶縁膜18は、PチャンネルMOSFET42に適した仕事関数を有する。こうして、1種類のゲートメタル材料を用いながら、NチャンネルMOSFET41およびPチャンネルMOSFET42は、いずれも低い閾値電圧を有することができる。
【0080】
この実施形態においては、第1キャップ層13が露出している状態でのリンス工程には、アルカリ性薬液または有機溶剤がリンス液として用いられる。そのため、第1キャップ層13の膜減りを抑制できるから、NチャンネルMOSFET41は安定した低閾値電圧を有する。これにより、優れた特性のCMOSデバイスを作製できる。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0081】
たとえば、前述の第3の実施形態では、N側キャップ層13、ホストHigh-k膜15およびP側キャップ層14の順に形成されているが、これらの形成順序を変更してもよい。たとえば、P側キャップ層14、ホストHigh-k膜15およびN側キャップ層13の順に形成してもよい。また、キャップ層13,14の両方をホストHigh-k膜15よりも前(すなわち、ホストHigh-k膜15の下)に形成してもよい。また、キャップ層13,14の両方をホストHigh-k膜15よりも後(すなわち、ホストHigh-k膜15の上)に形成してもよい。これらの場合に、キャップ層13,14はいずれを先に形成してもよい。
【0082】
また、第3の実施形態では、ソースおよびドレイン層の形成前にゲート構造を形成するゲート・ファースト・プロセスを例示したが、ソースおよびドレイン層の形成後にゲート構造を形成するゲート・ラスト・プロセスが採用されてもよい。
また、第3の実施形態では、キャップ層13,14のパターニングをウェットプロセスで行う例について説明したが、それらをドライプロセスで行うこともできる。このドライプロセスは、ハードマスク材料膜(たとえば酸化シリコンまたはポリシリコン)の形成、ハードマスク材料膜上へのフォトレジストマスクの形成、ハードマスク材料膜の選択ドライエッチング、フォトレジストマスクの剥離、キャップ層13,14の選択エッチング、およびハードマスクの剥離を含む。これらの各工程の直後において、次の工程に移る前に、前述の第2の実施形態に係る基板処理方法による洗浄処理を行うことが好ましい。とくに、とくにN側キャップ層13のパターニングにおいては、アルカリ性薬液または有機溶剤をリンス液として用いることによって、キャップ層13の膜減りを抑制できる。ドライプロセスは、工程数が多く、かつ、キャップ層13,14に対するダメージも懸念される。また、ハードマスクの剥離のために用いられる薬液はフッ酸が一般的であるが、フッ酸は、ハフニウム系のホストHigh-k膜に対するエッチング選択性が必ずしも十分ではない。したがって、ウェットプロセスの方が有利であると言える。なお、ドライエッチング後のフォトレジスト膜の剥離工程においては、フォトレジストだけでなく、ドライエッチングの際に生じるレジスト残渣も併せて除去されることになる。
【0083】
さらに、前述の第3の実施形態では、CMOS構造を有する半導体装置の製造方法を示したが、この発明は、たとえば、NチャンネルMOSFETだけを半導体基板上に有する半導体装置の製造にも適用できる。むろん、不揮発性メモリその他のメモリ素子の製造にこの発明が適用されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 スピンチャック
2 処理液ノズル
11 シリコン基板
12 界面層
13 第1キャップ層
14 第2キャップ層
15 ホストHigh-k膜
16 導体膜
16A 金属膜
16B ポリシリコン膜
17 第1ゲート絶縁膜
18 第2ゲート絶縁膜
21 NMOS領域(第1領域)
22 PMOS領域(第2領域)
23 素子分離構造
25 フォトレジストマスク
26 フォトレジストマスク
27 ハードマスク
271 第1マスク部分
272 第2マスク部分
28 フォトレジストマスク
29 フォトレジストマスク
31 第1ゲート構造
32 第2ゲート構造
41 NチャンネルMOSFET
42 PチャンネルMOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも一種を含む酸化膜の少なくとも一部が露出した半導体基板を準備する工程と、
前記半導体基板上の前記酸化膜に対して、アルカリ性薬液または有機溶剤からなるリンス液を供給するリンス工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記希土類酸化物が、ランタン酸化物、ガドリニウム酸化物、スカンジウム酸化物、およびジスプロシウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記アルカリ土類酸化物が、マグネシウム酸化物、バリウム酸化物、およびストロンチウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記アルカリ性薬液が、pHが7よりも大きいアルカリ性水溶液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記アルカリ性薬液が、アンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、コリン水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、および水酸化カリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記有機溶剤が、水に溶けて中性またはアルカリ性を示す有機溶剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記有機溶剤が、略100%以上の高濃度有機溶剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記有機溶剤が、アルコール類、エーテル類、ケトン類、およびアミン類からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記有機溶剤が、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ピロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ハイドロフルオロエーテル、メチルイソブチルケトン、N−メチルピロリドン、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記リンス工程の前後における前記酸化膜の膜厚減少が1Å以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記酸化膜が、酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜に接している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記高誘電率膜が、ハフニウム含有材料、アルミナ、およびジルコニアからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項11記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記ハフニウム含有材料が、ハフニウム酸化物、ハフニウム珪化物、ハフニウム窒化物を含む群から選択される少なくとも一種を含む、請求項12記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記ハフニウム含有材料が、HfO、HfON、HfSi、HfSiO、HfSiON、およびHfTiOからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項12記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記リンス工程の後に、前記半導体基板の表面の液を排除する乾燥工程をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記半導体基板を準備する工程が、前記酸化膜の表面に形成されたフォトレジスト層またはフォトレジスト残渣を除去液で除去することによって、前記酸化膜の少なくとも一部を露出させる除去工程を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記除去液と前記リンス液とが、同じ化学組成を有している、請求項16記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記除去液が添加剤を含む、請求項16記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記添加剤が、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む、請求項18記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記除去液中における水酸化テトラメチルアンモニウムの濃度が0.025%以上である、請求項19記載の基板処理方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の基板処理方法を用いて半導体装置を製造するための方法であって、
前記半導体基板を準備する工程が、
半導体基板の表面に希土類酸化物およびアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも一種を含む酸化膜と、酸化シリコンよりも誘電率の高い材料からなる高誘電率膜とを積層した積層膜を形成する工程と、
前記積層膜上に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜および前記積層膜をパターニングしてゲート構造を形成し、これにより、前記酸化膜の少なくとも一部を露出させるゲート形成工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記積層膜を形成する工程が、
前記酸化膜上の所定領域にフォトレジストマスクを形成し、前記フォトレジストマスクから露出した前記酸化膜をエッチングする工程と、
前記エッチング後に前記フォトレジストマスクを除去することによって、前記所定領域の前記酸化膜を露出させる工程とを含み、
前記リンス工程が、前記酸化膜の形成直後、前記フォトレジストマスクから露出した前記酸化膜のエッチング直後、前記フォトレジストマスクの除去直後、および前記ゲート形成工程の直後のうちの少なくとも一つにおいて実行される、請求項21記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記積層膜を形成する工程が、
第1酸化膜としての前記酸化膜上の第1領域に第1フォトレジストマスクを形成し、前記第1フォトレジストマスクから露出した前記第1酸化膜をエッチングする第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程後に前記第1フォトレジストマスクを除去することによって、前記第1領域の前記第1酸化膜を露出させる工程と、
前記第1酸化膜とは異なる材料からなる第2酸化膜を前記半導体基板上に形成する工程と、
前記第2の酸化膜上の前記第1領域とは異なる第2領域に第2フォトレジストマスクを形成し、前記第2フォトレジストマスクから露出した前記第2酸化膜をエッチングする第2エッチング工程と、
前記第2エッチング工程後に前記第2フォトレジストマスクを除去することによって、前記第2領域の前記第2酸化膜を露出させる工程とを含み、
前記ゲート形成工程が、前記第1領域内および前記第2領域内にそれぞれ位置する少なくとも一対のゲート構造を形成する工程であり、
前記リンス工程が、前記第1酸化膜の形成直後、前記第1フォトレジストマスクから露出した前記第1酸化膜のエッチング直後、前記第1フォトレジストマスクの除去直後、前記第2酸化膜の形成直後、前記第2フォトレジストマスクから露出した前記第2酸化膜のエッチング直後、前記第2フォトレジストマスクの除去直後、および前記ゲート形成工程の直後のうちの少なくとも一つにおいて実行される、請求項21記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記第1酸化膜および前記第2酸化膜が、異なる仕事関数を有する金属酸化物からなる、請求項23記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図7L】
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【図7M】
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【図7N】
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【図7O】
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【図7P】
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【図7Q】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−287752(P2010−287752A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140740(P2009−140740)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】