説明

基板洗浄装置

【課題】基板洗浄工程中に電析の発生を防止しつつ基板の状態を観察することが可能な基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発電層が形成された基板12を洗浄する洗浄部と、それらの上流側に設けられて、基板12を基板搬入口から洗浄部に搬入する搬入部と、洗浄された基板12の発電層を乾燥させる乾燥部と、乾燥部の下流側に設けられて乾燥した基板12を基板搬出口へ搬出する搬出部と、基板搬入口を除く搬入部、洗浄部、乾燥部、基板搬出口を除く搬出部内に入射する光を遮断する光遮断手段9と、それに設けられる観察窓10と、観察窓10から入射する光のうち発電層の発電に寄与する波長の少なくとも一部を遮断し、発電層の発電電圧を波長の少なくとも一部を遮光しない場合の発電電圧の1/10以下にする光透過手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電層を形成した基板の洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池等の光電変換装置として、シリコン系薄膜光電変換装置が知られている。この光電変換装置は、一般に、透光性基板上に、透明電極、シリコン系半導体層(光電変換層)および裏面電極を順次積層したものである。半導体層は、p型、i型及びn型の半導体材料によって形成されるpin接合を有している。光電変換装置が太陽電池とされた場合では、このpin接合がエネルギー変換部となって、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0003】
この光電変換装置の光電変換層が形成された後の基板洗浄工程、特にシリコン系薄膜光電変換装置として太陽電池モジュールが形成されて、透明電極と裏面電極との間で光起電力を発生可能な状態となった後の基板洗浄工程においては、光から完全に遮蔽された基板洗浄装置内で基板の洗浄が行なわれることにより、基板洗浄工程中に太陽電池が光起電力を生じないようにしてイオンマイグレーションによる短絡を防止することが提案されている。
【0004】
特許文献1には、電気的に直列接続された複数の光電変換セルのうち正極と負極のセルまたはそれらに近いセルと周縁領域との間を周縁分離溝によって完全に分離せずに電気的にショートさせ、基板洗浄工程を完了した後に完全な周縁分離溝を形成することによって電気的ショートを除去し、イオンマイグレーションによる周縁分離溝中での光電変換セル集積領域と周縁領域との短絡を防止することが開示されている。
【0005】
また、正極および負極のセルと周縁分離溝によって完全に正極および負極のセルから分離した周縁領域との間をリード線といった導電体を用いて電気的にショートさせ、基板洗浄工程を完了した後に導電体を取り除くことによって電気的ショートを除去し、イオンマイグレーションによる光電変換セル集積領域と周縁領域との短絡を防止するようになっている。
【0006】
特許文献2には、基板洗浄装置内に赤色照明を設置して、光電変換層が主として発電する波長の光を除外することにより、イオンマイグレーションによる短絡を防止することが開示さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−209477号公報
【特許文献2】国際公開第2009/022414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の発明では、基板洗浄工程を完了した後に完全な周縁分離溝を形成したり、導電体を基板洗浄工程後に完全に切り離したり除去する工程を追加する必要があり、量産工程には煩雑さが増加して適していないという欠点がある。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の発明では、太陽電池の基板洗浄工程を光遮蔽ガードで包囲された基板洗浄装置内で光起電力が生じないようにして行っているため、基板洗浄装置内を観察することができず連続的な工程処理において基板の破損や基板洗浄装置の不具合の発見が遅れてしまい稼働率の低下の要因になる恐れがある。また、完全な光遮蔽ガードで基板洗浄装置を包囲することは、装置のコストアップをまねき、好ましくない。
【0010】
また、特許文献2に記載の発明では、屋内照明や屋外光が入射する窓部や隙間に赤色フィルタを設けることについて開示されているが、具体的な赤色フィルタの設置場所などについては開示されておらず、効果的なイオンマイグレーションの防止には十分ではない。
【0011】
本発明は、基板洗浄工程中に電析の発生を防止しつつ基板の状態を観察することが可能な基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の基板洗浄装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る基板洗浄装置によれば、発電層が形成された基板を洗浄する洗浄部と、該洗浄部の上流側に設けられて、前記基板を基板搬入口から前記洗浄部に搬入する搬入部と、前記洗浄部の下流側に設けられて、該洗浄部によって洗浄された前記基板の前記発電層を乾燥させる乾燥部と、該乾燥部の下流側に設けられて乾燥した前記基板を基板搬出口へ搬出する搬出部と、前記基板搬入口を除く前記搬入部、前記洗浄部、前記乾燥部、前記基板搬出口を除く前記搬出部内に入射する光を遮断する光遮断手段と、該光遮断手段に設けられる観察窓と、該観察窓に設けられて、該観察窓から入射する光のうち、前記発電層の発電に寄与する波長の少なくとも一部を遮断し、前記発電層の発電電圧を、前記波長の少なくとも一部を遮光しない場合の前記発電電圧の1/10以下にする光透過手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
イオンマイグレーション(電析)による太陽電池の一部のセルでの短絡は、発電層に接続する各電極に電位差があり、発電層が水洗された際の水の存在により主として裏面電極層の金属が分離溝部分に電析することで発生し、太陽電池の性能が低下する。そのため、イオンマイグレーションを抑制するために、基板洗浄装置の搬入部から搬出部に至るまでの光の入射を完全に遮断する光遮断手段を設けることによって、基板に形成された発電層が発電することを抑制する場合がある。しかし、搬入部から搬出部に至るまでに光遮断手段を設けているため、基板洗浄装置内の基板の流動状態や基板洗浄装置の内部の様子を把握することが困難となる。さらに、連続して基板が搬送される基板の搬入・搬出部分においては、光遮断手段は大掛かりなものとなり、洗浄装置のコストアップが危惧される。
【0014】
そこで、基板洗浄装置の内部を観察することが可能な観察窓を光遮断手段に設けることとした。さらに、観察窓には、観察窓から基板洗浄装置内に入射される光のうち発電層の発電に主に寄与する波長領域を遮断し、それ以外の波長を透過する光透過手段を設けることとした。これらにより、基板に形成された発電層が発電するのに適した波長の光が観察窓から基板洗浄装置内に入射することを抑制することができる。したがって、発電層の発電を抑制してイオンマイグレーションの発生を防止しつつ、発電層の発電に寄与が少ない波長領域光により、基板洗浄装置内の基板の流動状態や基板洗浄装置の内部の様子を把握することが可能となる。
なお、光透過手段によって遮断する波長は、発電に寄与する全ての波長域でなくても良く、例えば、主として発電に寄与する波長域のみを選択的に遮断し、発電に寄与する波長域のもとで発生する光電層の電圧に比べて、1/10以下に電圧が低下できれば良い。
また、光電変換層の電圧が上記1/10以上であっても、光電変換層の周囲に水分が無く乾燥していれば良い。
【0015】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記観察窓は、前記搬入部および前記搬出部に設けられることを特徴とする。
【0016】
基板濡領域である洗浄部や乾燥部を避けて搬入部と搬出部とに観察窓を設けることとした。そのため、乾燥した基板が通過する搬入部と搬出部とにおいて発電層が多少の発電を生じた場合であっても、水による導通の発生を防止することができる。したがって、イオンマイグレーションの発生を防止しつつ、基板の流動状態や基板洗浄装置の内部の様子を把握することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記基板に対して前記発電層を形成された製膜面側に設けることを特徴とする。
【0018】
発電層が形成された基板は、光を受光して、発電に寄与する面である受光面と、受光面と反対側の面であって、光を受光しても発電しない面である製膜面と、を有することとなる。
そこで、基板に設けられた発電層となる製膜面側に観察窓を設けることにした。すなわち、発電層には、受光面となる基板面側とは逆方向に観測窓が設けられる。これにより、発電層の受光面側へと入射する光量を低減し、発電層が発電することを抑制することができる。したがって、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0019】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記基板は、斜め鉛直方向に設けることを特徴とする。
【0020】
斜め鉛直方向になるように基板を基板洗浄装置内に設けることにした。そのため、設置床面積において基板洗浄装置のコンパクト化を図ることができる。したがって、基板洗浄装置の設置スペースを低減することができる。
【0021】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記基板は、水平方向に設けることを特徴とする。
【0022】
水平方向になるように基板を基板洗浄装置内に設けることにした。そのため、基板に反り等の変形がある場合であっても、全ての基板自重が基板支持部分に作用して、基板支持部分からの基板浮きが抑制される。また、基板の反りが大きい場合には、基板を鉛直方向に設けた場合に生じ易くなる基板搬送中の基板転倒を防止することができる。したがって、基板の破損を低減することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記基板洗浄装置内で水平方向になるように設けた前記基板は、前記発電層の製膜面側を鉛直上方に向かって設けることを特徴とする。
【0024】
基板洗浄装置内に基板を水平方向になるように設け、さらに発電層の製膜面側を鉛直方向上方に向かうように基板洗浄装置内に基板を設けるので、発電層の受光面となる基板面側は基板洗浄装置の下方向(床面側)に設けられる。そのため、基板洗浄装置の遮光が不十分な箇所からの室内照明などが発電層の受光面側へと入射する光量を低減し、発電層が発電することを抑制することができる。したがって、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0025】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記基板洗浄装置内で水平方向になるように設けた前記基板は、前記発電層の製膜面側を鉛直下方に向かって設け、該発電層の下方には、前記観測窓と前記基板との間に、鏡を設けることを特徴とする。
【0026】
基板洗浄装置内に基板を水平方向になるように設け、さらに発電層の製膜面側を鉛直方向下方に向かうように基板洗浄装置内に基板を設け、観測窓と基板との間の空間にて基板の下方には鏡を設けることにした。そのため、発電層の製膜面側の状況を鏡を介して観察窓から確認することができる。
【0027】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記観察窓には、その鉛直上方に外部に突出する遮蔽板を設けることを特徴とする。
【0028】
観察窓の鉛直上方には、外部に突出する遮蔽板を設けることとした。そのため、基板洗浄装置が設けられる室内の天井照明灯から基板洗浄装置内への入射光を減光することができる。したがって、発電層が発電することをより抑制することができる。
【0029】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記観察窓および前記光透過手段は、略同径かつ同心円状に設けられており、該光透過手段は、透過する光量を調整する光量調整手段を有し、該光量調整手段は、前記光透過手段と略同径かつ同心円状の光量調整手段用遮蔽板と、該光量調整手段用遮蔽板に設けられる複数の開口と、前記光量調整手段用遮蔽板を円周方向に回動する回動手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
観察窓には、観察窓と略同径かつ同心円状の光透過手段を備え、光透過手段には、光透過手段と略同径かつ同心円状であり複数の開口を有する光量調整手段用遮蔽板と光量調整手段用遮蔽板を回動させる回動手段とを備える光量調整手段を設けることとした。これにより、観察窓から基板洗浄装置内に入射する光量を減光することができる。また、回動手段によって光量調整手段用遮蔽板に設けられた開口を回動させることができるので、基板上に入射される光の位置を変えることができるので、実質の入射光量を減光することができる。したがって、基板の同じ位置に光が入射することを防止しつつ、発電層の発電を一層抑制することができる。
【0031】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記光透過手段は、前記光量調整手段に設けられる開口と略同形状であることを特徴とする。
【0032】
光量調整手段に設けられる開口と略同形状の光透過手段を用いることとした。これにより、光透過手段が光量調整手段の開口していない光量調整手段用遮蔽板によって遮蔽される時間が生じることとなる。そのため、基板の流動状態や基板洗浄装置の内部の様子を把握するための観察を行なえる時間は連続している必要がなく、断続的な観察を確保しながら、基板洗浄装置内に入射する光量を一層減光して、基板の同じ位置に光が入射することを防止することができる。したがって、発電層の発電をより一層抑制することができる。
【0033】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記光透過手段は、前記発電層の発電に寄与する波長域のすくなくとも一部の波長域を除いた波長の光を局所的に照射する局所照射手段を備えることを特徴とする。
【0034】
局所的に発電層の発電に寄与する波長域の少なくとも一部を除いた波長の光を照射する局所照射手段を備える光透過手段を用いることとした。そのため、発電層の発電を抑制しながら、基板洗浄装置の内部観察が困難な箇所の視認性を向上させることができる。
【0035】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記局所照射手段は、光源と、該光源の照射位置を変えることが可能な保持手段と、を有することを特徴とする。
【0036】
光源と光源が照射する位置を変えることが可能な保持手段とを有する局所照射手段を用いることとした。そのため、任意の位置に更に局所的に限定して照射することができる。したがって、発電層の発電をより抑制しながら、基板洗浄装置の内部観察が困難な箇所をより限定して、視認性を向上させることができる。
【0037】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記光透過手段は、650nm以上の波長を透過するロングパスフィルタであることを特徴とする。
【0038】
650nm以上の波長を透過するロングパスフィルタの光透過手段を用いることとした。これにより、基板洗浄装置内を非晶質シリコンの発電量が少ない長波長の赤色光にすることができる。そのため、非晶質シリコンを含む発電層における発電を抑制することができる。したがって、イオンマグレーションの発生を防止することができる。
なお、650nm以上のロングパスフィルタとは、略650nm以上の波長を透過し、650nm以下の波長を70%以上反射や吸収して遮断する。ロングパスフィルタは、略700nm以上の波長を透過し、700nm以下の波長を70%以上反射や吸収して遮断するとさらに好ましい。
【0039】
さらに、本発明に係る基板洗浄装置によれば、前記光透過手段は、450nm以下の波長を透過するショートパスフィルタであることを特徴とする。
【0040】
青色フィルタの光透過手段を用いることとした。これにより、基板洗浄装置内を結晶質シリコンが発電しない短波長の青色光にすることができる。そのため、発電層における発電を抑制することができる。したがって、イオンマグレーションの発生を防止することができる。
なお、450nm以下のショートパスフィルタとは、略450nm以下の波長を透過し、450nm以上の波長を70%以上反射や吸収し遮断する。ショートパスフィルタは、略400nm以下の波長を透過し、400nm以上の波長を70%以上反射や吸収し遮断するとさらに好ましい。
【0041】
さらに、本発明に係る基板の洗浄方法によれば、前記基板の前記発電層を洗浄する洗浄部と、該洗浄部の上流側に設けられて、前記基板を基板搬入口から前記洗浄部に搬入する搬入部と、前記洗浄部の下流側に設けられて、該洗浄部によって洗浄された前記基板の前記発電層を乾燥させる乾燥部と、該乾燥部の下流側に設けられて乾燥した前記基板を基板搬出口へ搬出する搬出部と、前記基板搬入口を除く前記搬入部、前記洗浄部、前記乾燥部、前記基板搬出口を除く前記搬出部内に入射する光を遮断する光遮断手段と、該光遮断手段に設けられる観察窓と、該観察窓に設けられて、該観察窓から入射する光のうち、前記発電層の発電に寄与する波長の少なくとも一部を遮断し、前記発電層の発電電圧を、前記波長の少なくとも一部を遮光しない場合の前記発電電圧の1/10以下にする光透過手段と、を備える基板洗浄装置によって前記基板を洗浄することを特徴とする。
【0042】
基板に形成された発電層が発電するのに適した波長の光が観察窓から基板洗浄装置内に入射することが抑制可能な基板洗浄装置によって基板を洗浄することとして。したがって、発電層の発電に寄与が少ない波長領域光により、基板洗浄装置内の基板の流動状態や基板洗浄装置の内部の様子を把握しつつ基板を洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0043】
基板洗浄装置の内部を観察することが可能な観察窓を光遮断手段に設けることとした。さらに、観察窓には、観察窓から基板洗浄装置内に入射される光のうち特に発電層の発電に寄与する波長を遮断し、それ以外の波長を透過する光透過手段を設けることとした。これらにより、基板に形成された発電層が主として発電する波長の光が観察窓から基板洗浄装置内に入射することを抑制することができる。したがって、発電層の発電を抑制してイオンマイグレーションの発生を防止しつつ、基板洗浄装置内の基板の流動状態や基板洗浄装置の内部の様子を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る縦型の基板洗浄器の平面図である。
【図2】図1に示す縦型の基板洗浄器のA−A部における横断面図である。
【図3】図1に示した基板洗浄器内通過時における基板の電位発生状況の推移と、基板の濡れ状態とを示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る横型の基板洗浄器の側面図である。
【図5】図4に示す横型の基板洗浄器のB−B部における縦断面図である。
【図6】図4に示す横型の基板洗浄器のC−C部における横断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る横型の基板洗浄器の横断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る基板洗浄器に設けられる観察窓と赤色フィルタとを示す図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る基板洗浄器に設けられる観察窓と赤色フィルタとを示す図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る縦型の基板洗浄器の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図3を用いて説明する。
太陽電池に用いられる発電層が形成された基板12は、図1および図2に示すように、基板12に発電層が形成された後に、本実施形態に係る基板洗浄器(基板洗浄装置)1によって基板12の洗浄が行われる。
【0046】
基板洗浄器1は、基板洗浄器1の外周を覆っている本体カバー(光遮断手段)9の内部に、面積が1mを超える大型の基板12を搬送する搬送ローラ4を有している。基板洗浄器1は、その外周を本体カバー9によって覆われている。本体カバー9によって覆われている基板洗浄器1の内部には、基板搬送方向上流側から、上流側助走部(搬入部)31、粗洗浄部(洗浄部)32、ブラシ洗浄部(洗浄部)33、リンス洗浄部(洗浄部)34、乾燥部35、下流側助走部(搬出部)36が設けられている。上流側助走部31、粗洗浄部32、ブラシ洗浄部33、リンス洗浄部34、乾燥部35、下流側助走部36があり、これらは、洗浄器架台16(図2参照)の上部に設けられている。
【0047】
本体カバー9は、基板搬入口2を除く上流側助走部31、粗洗浄部32、ブラシ洗浄部33、リンス洗浄部34、乾燥部35、基板搬出口3を除く下流側助走部36内に入射する屋内照明(光)や屋外光(光)を遮断している。本体カバー9としては、例えば、非光透過板や暗幕などが用いられる。基板洗浄器1の外周を本体カバー9が覆っても良いが、基板洗浄器1の外周自体が本体カバーと一体化して、光を透過しない非光透過板で構成した構造となっていて光を遮断していても良い。
【0048】
上流側助走部31は、粗洗浄部32の上流側に設けられている。上流側助走部31は、基板搬入口2から搬入された基板12を粗洗浄部32へと搬送する。上流側助走部31には、基板搬入口2から漏れ入る屋内照明や屋外光が入射する。そのため、上流側助走部31は、基板搬入口2から粗洗浄部32に近づくにしたがって入射する光が遮断されるような長さを有している。
【0049】
粗洗浄部32は、上流側助走部31の下流側に設けられている。粗洗浄部32には、高圧の純水を噴射するための純水スプレーノズル6が設けられている。純水スプレーノズル6は、基板12に対して−X側および+X側の両側に設けられている。この純水スプレーノズル6から、高圧の純水(例えば、0.2MPa〜1.0MPa)が基板12に対して噴射される。このように、粗洗浄部32では、高圧で吹き付けられる純水によって基板12の洗浄が行われる。
純水は、洗浄能力から、比抵抗が10MΩ・cm以上であることが好ましい。
【0050】
ブラシ洗浄部33は、粗洗浄部32の下流側に設けられている。ブラシ洗浄部33には、純水スプレーノズル6とロールブラシ7とが設けられている。純水スプレーノズル6は、基板12に対して−X側および+X側の両側に設けられており、高圧の純水(例えば、0.2MPa〜1.0MPa)を基板12に対して噴射する。ロールブラシ7は、基板12に対して−X側および+X側の両側に設けられている。基板12に対してロールブラシ7が押し付けられ、基板12の表面を擦ることにより、基板12の表面が洗浄される。
【0051】
リンス洗浄部34は、粗洗浄部32の下流側に設けられている。リンス洗浄部34では、純水を噴射させるための純水スプレーノズル6が設けられている。純水スプレーノズル6は、基板12に対して−X側および+X側の両側に設けられている。この純水スプレーノズル6から、純水(比抵抗値10MΩ・cm以上)が基板12に対して噴射される。
【0052】
乾燥部35は、リンス洗浄部34の下流側に設けられている。リンス洗浄部34では、粗洗浄部32、ブラシ洗浄部33、リンス洗浄部34により洗浄された基板12を乾燥させる空気が水切りブロア8から吹き付けられる。水切りブロア8は、基板12に対して−X側および+X側の両側に設けられている。これにより、基板12上の水が除去されて乾燥される。
【0053】
下流側助走部36は、乾燥部35の下流側に設けられている。下流側助走部36は、乾燥部35から搬送された乾燥した基板12を基板搬出口3から基板洗浄器1外へ搬出する。下流側助走部36には、基板搬出口3から漏れ入る屋内照明や屋外光が入射する。そのため、下流側助走部36は、基板搬出口3から乾燥部35に近づくにしたがって入射する光が遮断されるような長さを有している。
【0054】
図2には、図1に示したA−A部における上流側助走部31の縦断面図が示されている。
なお、以下、上流側助走部31の本体カバー9に観察窓10を設けることについて説明するが、下流側助走部36の本体カバー9にも上流側助走部31と同様に観察窓10が設けられている。しかし、その構造は、上流側助走部31と同様のため、ここでは、説明を省略する。
観察窓10からは、上流側助走部31内部もしくは下流側助走部36内部の基板12の搬送状況を観察することが可能である。
【0055】
上流側助走部31(図1参照)は、洗浄器架台16の上部に設けられている。上流側助走部31は、基板12の上端および下端を基板12の両側から支持しているサイドローラ5によって、基板12を鉛直方向Zより例えば、θ=0〜15°より好ましくは9〜10°傾斜するように支持している。また、基板12の下端に設けられている搬送ローラ4は、傾斜している基板12を上流側助走部31から粗洗浄部32(図1参照)、ブラシ洗浄部33(図1参照)、リンス洗浄部34(図1参照)、乾燥部35(図1参照)、下流側助走部36(図1参照)のようにY方向(図1参照)に搬送して基板搬出口3(図1参照)から搬出する。
【0056】
傾斜するように支持されている基板12は、発電層を設けられない受光面側14が洗浄器フレーム15に平行に対向している。基板12の発電層を形成した製膜面側13は、上流側助走部31の本体カバー9に設けられている観察窓10に対向している。
【0057】
本体カバー9に設けられている観察窓10には、観察窓10から入射する屋内照明や屋外光のうち基板12に設けられている発電層の発電に寄与する波長を遮断し、それ以外の波長を透過する赤色の透過光とするロングパスフィルタ(光透過手段)が設けられている。
【0058】
観察窓10は、例えば、その巾方向(図1に示すY方向)の長さが例えば、1.4m×1.1m×板厚:3.0mmから4.5mmの基板12のY方向の長さの3分の1から2分の1であり、縦方向(図2に示すZ方向)の長さが少なくとも基板12のZ方向の長さと略同等、好ましくは、上流側助走部31のZ方向の長さと略同等の長方形状とされている。
【0059】
観察窓10が設けられている本体カバー9には、その鉛直上方に外部に突出している天井照明遮断板(遮蔽板)11が設けられている。天井照明遮断板11は、基板洗浄器1が設けられている屋内の天井に設けられている天井照明器具(図示せず)から入射される屋内照明を遮断するものである。天井照明遮断板11は、本体カバー9の外側であって観察窓10の上部に設けられており、本体カバー9の外側に延在している。
【0060】
ロングパスフィルタ(図示せず)は、略650nm以上の波長を透過し、波長650nm以下の短波長を約70%以上遮断(反射や吸収)するカットフィルタであり、これによって、基板洗浄器1内を非晶質シリコンの発電量が少ない長波長の赤色光にすることができる。ロングパスフィルタによって短波長が遮断された赤色光は、非晶質シリコンだけでなく、非晶質シリコンと結晶質シリコンをタンデム接合した太陽電池の場合であっても、非晶質シリコン部分の発電量が少ない波長であるため、イオンマイグレーションを引き起こすような電圧を抑制可能な状況にすることができる。
なお、ロングパスフィルタは、略700nm以上の波長を透過し、700nm以下の波長を遮断(反射や吸収)すると、非晶質シリコン部分の発電量がより少なくなり、さらに好ましい。
【0061】
このロングパスフィルタは、ロングパスフィルタを備えている観察窓10からの入射光によって、基板洗浄器1の内部を搬送される基板12の搬送状態を目視観察可能な光量となっている。
【0062】
ここで、基板洗浄器1内を基板12が通過する際の発生電位の推移と、基板12の濡れ状態との関係について、図3を用いて説明する。
図3において、左側の縦軸は、本実施形態によって洗浄された基板12を有する太陽電池モジュール全体の入射波長の一部を遮断していないときの開放電圧に対する基板洗浄器1内部での発生電圧の割合を示し、右側の縦軸は、基板12の濡れ割合を示し、横軸は、基板12が基板洗浄器1内を通過する経過時間の割合を示している。図3中の三角は、本実施形態の本体カバー9に赤色の透過光にするロングパスフィルタを有している観察窓10を設けた場合を示し、図3中の四角は、本体カバー9に観察窓10を設けなかった場合を示している。
【0063】
基板12上に電位差がある場合には、洗浄などによって基板12に水が付着して電位差部に通電が生じることによってイオンマイグレーションが発生する。図3の四角に示すように、本体カバー9に観察窓10を設けなかった場合には、上流側助走部31(図3中の左側の助走)および下流側助走部36(図3中の右側の助走)では、基板12に形成された発電層に発生する電圧が基板洗浄器1の中心部である粗洗浄部32、ブラシ洗浄部33、リンス洗浄部34、乾燥部35に比べて高くなっている。このことから、基板搬入口2または基板搬出口3から上流側助走部31または下流側助走部36に屋内照明や屋外光が漏れ入っており、それらの光が基板12に入射していることが分かる。
【0064】
一方、上流側助走部31または下流側助走部36の本体カバー9にロングパスフィルタを有する観察窓10を設けた場合(図中の三角)には、基板洗浄器1の上流側助走部31または下流側助走部36を除く位置においても、図3の四角で示す場合とほぼ同じ電圧発生状況となっている。
【0065】
また、図3の三角で示す電圧は、上流側助走部31においては、四角で示す電圧とほぼ同程度の電圧であり、下流側助走部36においては、四角で示す電圧より少し高い電圧となっているが、上流側助走部31または下流側助走部36では基板12に水が付着していないので、イオンマイグレーションは発生しない。
【0066】
さらに、基板12に水が付着している位置、すなわち上流側助走部31または下流側助走部36を除く位置では、太陽電池モジュール全体の入射波長の一部を遮断していないときの開放電圧に対する基板洗浄器1内部での発生電圧の割合が0.1以下を示し、粗洗浄部32、乾燥部35では、該割合が0.05以下を示し、ブラシ洗浄部33、リンス洗浄部34では0.01以下を示している。この結果、基板洗浄器1で洗浄処理した基板12の発電層および太陽電池モジュールに集積するための分離溝や絶縁分離溝には、イオンマイグレーションが発生していないことが確認できた。
【0067】
このため、基板12に水が付着している位置では、太陽電池モジュール全体の入射波長の一部を遮断していないときの開放電圧に対する基板洗浄器1内部での発生電圧の割合が0.1(1/10)以下であることが好ましく、該割合が0.05以下であることがより好ましいと判断できる。
このことから、上流側助走部31または下流側助走部36にロングパスフィルタを有する観察窓10を設けた場合であっても、基板12に形成された発電層に入射される発電に寄与する光を増加させることなく洗浄処理が可能であることが分かる。
【0068】
以上述べたように、本実施形態に係る基板洗浄器1によれば、以下の効果を奏する。
基板洗浄器(基板洗浄装置)1の内部を観察することが可能な観察窓10を本体カバー(光遮断手段)9に設けることとした。さらに、観察窓10には、観察窓10から基板洗浄器1内に入射される屋内照明(光)や屋外光(光)のうち基板12に形成された発電層の発電に寄与する主要な波長を遮断し、それ以外の波長を透過するロングパスフィルタ(光透過手段)を設けることとした。これらにより、基板12に形成された発電層が発電する波長の屋内照明や屋外光が観察窓10から基板洗浄器1内に入射することを抑制することができる。したがって、基板12に形成された発電層の発電を抑制してイオンマイグレーションの発生を防止しつつ、基板洗浄器1内の基板12の流動状態や基板洗浄器1の内部の様子を把握することが可能となる。
【0069】
基板12に水が付着している濡領域である粗洗浄部(洗浄部)32、ブラシ洗浄部(洗浄部)33、リンス洗浄部(洗浄部)34や乾燥部35を避けて、水が付着していない上流側助走部(搬入部)31および下流側助走部(搬出部)36を覆っている本体カバー9に観察窓10を設けることとした。そのため、基板12には水が付着していないので、洗浄工程における水により基板12の電位差部に導通が生じることを防止することができる。したがって、イオンマイグレーションの発生を防止しつつ、基板12の流動状態や基板洗浄器1の内部の様子の確認が可能となる。
【0070】
観察窓10を基板12に設けられた発電層の製膜面側13に対向している本体カバー9に設けることにした。そのため、発電層への入射光量を抑制して発電層が発電することを低減することができる。したがって、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0071】
斜め鉛直方向になるように基板12を基板洗浄器1内に設けることにした。そのため、基板洗浄器1の設置床面積のコンパクト化を図ることができる。したがって、基板洗浄器1の設置スペースを低減することができる。
【0072】
観察窓10の上方には、外部に突出している天井照明遮断板(遮蔽板)11を設けることとした。そのため、基板洗浄器1が設けられる室内の天井照明灯(屋内照明)の入射を減光することができる。したがって、基板12に設けられている発電層が発電することを抑制することができる。
【0073】
ロングパスフィルタの光透過手段(図示せず)を用いることとした。これにより、基板洗浄器1内を非晶質シリコンの発電量が少ない長波長の赤色光にすることができる。そのため、基板12に設けられた発電層における発電を抑制することができる。したがって、イオンマグレーションの発生を防止することができる。
【0074】
基板12に形成された発電層が発電するのに適した波長の光が観察窓10から基板洗浄器1内に入射することが抑制可能な基板洗浄器1によって基板を洗浄することとして。したがって、発電層の発電に寄与が少ない波長領域光により、基板洗浄器1内の基板12の流動状態や基板洗浄器1の内部の様子を把握しつつ基板12を洗浄を行うことができる。
【0075】
なお、本実施形態では、観察窓10に設けられている赤色透過光にするロングパスフィルタによって遮断される波長は、発電に寄与する波長域(波長650nm以下の短波長側域)のみを選択的に遮断できるものとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、発電に寄与する全ての波長域を遮断するものであっても良い。
【0076】
また、本実施形態では、光透過手段として赤色透過光にするロングパスフィルタを用いるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、青色透過光にするショートパスフィルタであっても良い。
この場合には、基板洗浄器1内を結晶質シリコンが発電しない短波長側の青色光にすることができる。そのため、基板12に設けられた発電層における発電を抑制することができる。したがって、イオンマグレーションの発生を防止することができる。
なお、青色透過光にする青色透過光にするショートパスフィルタは、450nm以下のショートパスフィルタであり、略450nm以下の波長を透過し、450nm以上の波長を70%以上反射や吸収し遮断する。ショートパスフィルタは、略400nm以下の波長を透過し、400nm以上の波長を70%以上反射や吸収し遮断するとさらに好ましい。
【0077】
さらに、上記実施の形態では太陽電池として、例えば、太陽電池として微結晶シリコンをはじめとする結晶質シリコン太陽電池や、シリコンゲルマニウム太陽電池、また、アモルファスシリコン太陽電池と結晶質シリコン太陽電池やシリコンゲルマニウム太陽電池とを各1〜複数層に積層させた多接合型(タンデム型)太陽電池や単層の太陽電池のような種類の薄膜太陽電池にも同様に適用可能である。
更に本発明は、金属基板などのような非透光性基板上に製造された、基板12とは反対の側から光が入射するタイプの太陽電池に適用する場合は、光透過手段を設けた観察窓10を、受光面となる発電層の製膜面側13の反対側である非透光性基板に対向している本体カバー9に設ければ、同様に適用可能である。
【0078】
[第2実施形態]
本実施形態の基板洗浄器は、基板を横に搬送する横型の基板洗浄器である点で、第1実施形態と相違しその他は同様である。したがって、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
以下、本発明の第2実施形態について、図4から図6を用いて説明する。
図4には、本発明の第2実施形態に係る横型の基板洗浄器の側面図が示されており、図5には、図4のB−B部における縦断面図が示されており、図6には、図4のC−C部における横断面図が示されている。
【0080】
基板洗浄器(基板洗浄装置)1は、基板12を水平に支持して、上流側助走部(搬入部)31から粗洗浄部(洗浄部)32、ブラシ洗浄部(洗浄部)33、リンス洗浄部(洗浄部)34、乾燥部35、下流側助走部(搬出部)36のように図4のY方向へと基板12を搬送して基板搬出口3から基板洗浄器1の外へと搬出している。
【0081】
基板12は、図6に示すように、基板12のX方向の両端を支持している搬送ローラ4によって、基板洗浄器1内に水平に設けられている洗浄器フレーム15に平行になるように支持されている。搬送ローラ4によって水平に保持されている基板12は、その受光面側14が基板洗浄器1内の下方向(−Z方向)に向いており、製膜面側13が基板洗浄器1の天井方向(+Z方向)に向いていることとなる。
【0082】
本体カバー(光遮断手段)9に設けられている観察窓10は、基板12の製膜面側13であって、上流側助走部31(図4、図6参照)を覆っている本体カバー9のX方向の側壁に設けられている。本体カバー9の側壁に設けられている観察窓10は、縦方向(Z方向)の長さが基板12の製膜面側13から基板洗浄器1の天井までの長さと略同等であり、巾方向(図4に示すY方向)の長さが基板12のY方向の長さの3分の1から2分の1の長方形状とされている。
【0083】
以上述べたように、本実施形態に係る基板洗浄器1によれば、以下の効果を奏する。
水平方向になるように基板12を基板洗浄器(基板洗浄装置)1内に設けるため、発電層の受光面となる基板面側は基板洗浄器1の下方向(−Z方向:床面側)に設けられ、基板洗浄器1の遮光が不十分な箇所からの室内照明などが発電層の受光面側14へと入射する光量を低減することができる。
さらに、基板12に設けられた発電層の製膜面側13に観察窓10を設けることにした。これにより、基板12に形成された発電層の受光面側14へと導入する光量を低減することができる。そのため、基板12に形成された発電層が発電することを抑制することができる。したがって、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。
【0084】
水平方向になるように基板12を基板洗浄器1内に設けることにした。そのため、基板12に反り等の変形がある場合であっても、鉛直方向の基板自重がそのまま基板支持部分に作用して、基板支持部分からの基板浮きが抑制される。また、基板12の反りが大きい場合には、基板12を鉛直方向に設けた場合に生じ易くなる基板12の基板転倒を防止することができる。したがって、基板12の破損を低減することができる。
【0085】
[第3実施形態]
本実施形態は、第2実施形態と基本的に同様であるが、第2実施形態とは、基板の受光面側の向きと反射鏡とを設ける点で、相違しその他は同様である。したがって、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
以下、本発明の第3実施形態について、図7を用いて説明する。
図7には、本発明の第3実施形態に係る横型の基板洗浄器(基板洗浄装置)の上流側助走部(搬入部)における横断面図が示されている。
基板12は、基板12のX方向の両端を支持している搬送ローラ4によって、基板洗浄器内に水平に設けられている洗浄器フレーム15に平行になるように支持されている。搬送ローラ4によって水平に保持されている基板12は、その受光面側14が基板洗浄器内の天井方向(+Z方向)に向いており、製膜面側13が基板洗浄器内を鉛直方向下方向(−Z方向)に向いていることとなる。
このような、基板12の受光面側の向きは、基板12の受光面側14のみを集中して洗浄したい場合に、洗浄の容易さから有効な設置方向になる。
【0087】
本体カバー(光遮断手段)9に設けられている観察窓10は、基板12の製膜面側13であって、上流側助走部を覆っている本体カバー9の側壁に設けられている。本体カバー9の側壁に設けられている観察窓10は、縦方向(Z方向)の長さが基板12の製膜面側13から洗浄器架台16の上面までの長さと略同等であり、巾方向の長さが基板12の大きさの3分の1から2分の1の長方形状とされている。
【0088】
観測窓10と基板12との間の空間にて、基板12の製膜面側13の下方には、反射鏡(鏡)19が設けられている。反射鏡19は、X方向の一端が洗浄器フレーム15に接続されており、観察窓10近傍の他端が洗浄器架台16の上面に支持されて斜めに傾斜するように設けられている。すなわち、反射鏡19は、観察窓10に近づくにしたがって洗浄器架台16の上面に近づくように傾斜していることとなる。このように観察窓10の位置が基板12の製膜面側13鉛直方向下方向(−Z方向)に設けられるために、直接には基板12の搬送状況を確認しにくい位置関係となっても、反射鏡19を傾斜させることによって、基板12の製膜面側13の状態を反射鏡19に映し、観察窓10から観察することが可能となる。
【0089】
以上述べたように、本実施形態に係る基板洗浄器によれば、以下の効果を奏する。
基板12に設けられた発電層の製膜面側13を鉛直方向下方に向かうように基板12を基板洗浄器(基板洗浄装置)内に設け、基板12の製膜面側13の下方の観測窓10と基板12との間の空間には、反射鏡(鏡)19を設けることにした。そのため、反射鏡19を介して基板12に設けられた発電層の製膜面側13を確認することができる。
【0090】
[第4実施形態]
本実施形態の基板洗浄器は、赤色透過光にするロングパスフィルタを備えている観察窓の形状が異なり、観察窓には回転式遮蔽板が設けられる点で、第1実施形態と相違しその他は同様である。したがって、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
以下、本発明の第4実施形態について、図8を用いて説明する。
図8には、本発明の第4実施形態に係る基板洗浄器に設けられている観察窓40および観察窓40に設けられている回転式遮蔽板41が示されている。
【0092】
本体カバー(図示せず)に設けられている観察窓40は、その形状が円形状とされている。円形状の観察窓40には、観察窓40と略同径かつ同心円状にロングパスフィルタ(光透過手段)42が設けられている。ロングパスフィルタ42が設けられている観察窓40には、観察窓40およびロングパスフィルタ42と略同径かつ同心円状の回転式遮蔽板(光量調整手段)41が設けられている。
【0093】
観察窓40に設けられている回転式遮蔽板41は、基板洗浄器(基板洗浄装置)の外側から観察窓40を覆うように同心円状に設けられている。回転式遮断板41は、ロングパスフィルタ42と略同径かつ同心円状の光量調整手段用遮断板41aと、光量調整手段用遮蔽板41aに設けられている複数の開口部(開口)41bと、ロングパスフィルタ42上を光量調整手段用遮蔽板41aを円周方向に回動させる回動手段(図示せず)と、を備えている。
【0094】
光量調整手段用遮断板41aは、ロングパスフィルタ42と略同サイズの円形状とされている。円形状の光量調整手段用遮断板41aには、例えば、中心角が90°の扇形状を形成している開口部41bが二か所(複数)に設けられている。二か所の開口部41bは、互いに180°の位置になるように光量調整手段用遮蔽板41a上に設けられている。この扇形状の開口部41bを介してロングパスフィルタ42には、屋内照明(光)や屋外光(光)が入射する。また、光量調整手段用遮蔽板41aの開口していない部分によって、観察窓40から基板洗浄器内に入射する屋内照明や屋外光の光量を低減することができる。
【0095】
回動式遮蔽板41は、その中心が観察窓40の中心に固定されており、図示しない回動手段によって観察窓40の円周方向に所定の速度で回転している。これにより、回動式遮蔽板41に開口している開口部41bからロングパスフィルタ42および観察窓40を介して屋内照明や屋外光が基板洗浄器内に入射する位置を時間によって変化させることができるので、基板12の同じ位置に入射する光量を減光することができる。
すなわち、基板12の流動状態や基板洗浄器1の内部の様子を把握するための観察を行なえる時間は連続している必要がないことから、回動式遮蔽板41の開口部41b以外では、遮蔽される時間が生じることとなり、断続的な観察状況を確保しながら、基板洗浄器1内に入射する光量を一層減光して、基板12の同じ位置に光が入射することを防止することができるので、発電層の発電をより一層に抑制することができる。
【0096】
さらに、円形状の観察窓40と略同径かつ同心円状に設置されているロングパスフィルタ42は、開口部41b面積が小さく、基板洗浄器1に入射する光量が十分に少ない場合は、ロングパスフィルタ42を設置せずに、観察窓40に開口部41bと略同形状の開口を設けても良い。
ロングパスフィルタ42を省略することで、構造が簡易になりコストダウンすることができるので、好ましい。
【0097】
以上述べたように、本実施形態に係る基板洗浄器によれば、以下の効果を奏する。
観察窓40には、観察窓40と略同径かつ同心円状であり二か所(複数)の開口部(開口)41bを有している光量調整手段用遮蔽板41aと、光量調整手段用遮蔽板41aを回動させる回動手段(図示せず)と、を備えている回転式遮蔽板(光量調整手段)41を設けることとした。これにより、観察窓40から基板洗浄器(基板洗浄装置)内に入射する光量を減光することができる。また、回動手段によって光量調整手段用遮蔽板41aに設けられている開口部41bを回動させることができるので、基板12上に入射される屋内照明(光)や屋外光(光)の位置を変えることができる。したがって、基板12の同じ位置に屋内照明や屋外光が入射することを抑制しつつ、基板12に設けられた発電層が発電することを一層抑制することができる。また、観察窓40には、観察窓40と略同径かつ同心円状の赤色透過光にするロングパスフィルタ(光透過手段)42を備えると、より一層に屋内照明や屋外光が入射することを抑制しつつ、基板12に設けられた発電層が発電することをより一層抑制することができる。
【0098】
[第5実施形態]
本実施形態の基板洗浄器は、観察窓の開口形状、および赤色透過光にするロングパスフィルタの形状が異なっている点で第4実施形態と相違しその他は同様である。したがって、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
以下、本発明の第5実施形態について、図9を用いて説明する。
図9には、本発明の第5実施形態に係る基板洗浄器に設けられている観察窓40に設けられている赤色透過光にするロングパスフィルタ43と、回転式遮蔽板41とが示されている。
【0100】
観察窓40には、回転式遮蔽板(光量調整手段)41に設けられている二か所の開口部(開口)41bと略同形状であるロングパスフィルタ(光透過手段)43が二か所に設けられている。ロングパスフィルタ43は、例えば、中心角が90°の扇形状を形成している。ロングパスフィルタ43は、互いに180°の位置になるように、観察窓40上に二か所に設けられている。回動手段(図示せず)により所定の速度によって回転式遮蔽板41が回転して回転式遮蔽板41の開口部41bとロングパスフィルタ43とが重なることにより、屋内照明(光)や屋外光(光)が基板洗浄器(基板洗浄装置)内に入射する位置を時間によって変化させることができる。
なお、開口部41bが小さく、基板洗浄器1に入射する光量が十分に少ない場合は、ロングパスフィルタ43は設置せずに、観察窓40に開口部41bと略同形状の開口を設けても良い。ロングパスフィルタ43を省略することで、構造が簡易になりコストダウンすることができるので、好ましい
【0101】
以上述べたように、本実施形態に係る基板洗浄器によれば、以下の効果を奏する。
回転式遮蔽板(光量調整手段)41に設けられている開口部(開口)41bと略同形状の赤色フィルタ(光透過手段)43を用いることとした。これにより、回転式遮蔽板41の開口していない光量調整手段用遮蔽板41aによってロングパスフィルタ43に入射する光を遮蔽する時間を設けることができる。そのため、基板洗浄器(基板洗浄装置)内に入射する光量を一層減光して、基板12の同じ位置に屋内照明(光)や屋外光(光)が入射することを防止することができる。したがって、基板12に設けられた発電層が発電することをより一層抑制することができる。
【0102】
[第6実施形態]
本実施形態の基板洗浄器は、LEDライトを有する点で第1実施形態と相違しその他は同様である。したがって、同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0103】
以下、本発明の第6実施形態について、図10を用いて説明する。
図10には、本発明の第6実施形態に係る縦型の基板洗浄器の横断面図が示されている。
赤色透過光とするロングパスフィルタ(光透過手段)には、LEDライト(局所照射手段)45が観察窓10に基板洗浄器(基板洗浄装置)の外側から密着するように設けられている。LEDライト45は、例えば、2箇所に設けられており、本体カバー(光遮断手段)9の天井と側壁との交わる角部と、洗浄器架台16と本体カバー9の側壁との接合部とに設けられている。
【0104】
LEDライト45は、局所照射を発する光照射部(光源)45aと、光照射部45aの照射位置を変えることが可能な保持アーム(保持手段)45bと、を備えている。光照射部45aは、基板12に形成された発電層の発電に寄与する波長域のすくなくとも一部の波長域を除いた波長の光を局所的に照射するものであり、ここでは、赤色光とされている。光照射部45aは、ロングパスフィルタ(図示せず)に基板洗浄器の外側から密着するように設けられている。これによって、光照射部45aから照射される赤色光の反射光の発生を防止している。保持アーム45bは、上下左右方向に可変可能な蛇腹状となっている。これによって、光照射部45aから照射される赤色の照射光を任意の位置に照射することができる。
【0105】
以上述べたように、本実施形態に係る基板洗浄器によれば、以下の効果を奏する。
局所的に基板12に設けられた発電層の発電に寄与する波長域のすくなくとも一部の波長域を除いた波長の光を照射するLEDライト(局所照射手段)45をロンングパスフィルタ(光透過手段)に設けることとした。そのため、基板洗浄器(基板洗浄装置)の内部観察が困難な箇所に限定して、基板12への入射光量を増加することなく、発電層の発電を抑制しながら、視認性を向上させることができる。
【0106】
光照射部(光源)45aと、光照射部45aが照射される照射位置を変えることが可能な保持アーム(保持手段)45bと、を有しているLEDライト45を用いることとした。そのため、LEDライト45によって、基板洗浄器内部の任意の位置に限定してより局所的に照射することができる。したがって、照射位置をより限定して、基板12への入射光量を増加することなく、発電層の発電を抑制しながら、基板洗浄器の内部の視認性を更に向上させることができる。
【0107】
なお、ここでは、光照射部45aから照射される光は、赤色光として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、光透過手段を青色透過光にするショートパスフィルタであっても良い。
【符号の説明】
【0108】
1 基板洗浄器(基板洗浄装置)
2 基板搬入口
3 基板搬出口
9 本体カバー(光遮断手段)
10 観察窓
12 基板
31 上流側助走部(搬入部)
32 粗洗浄部(洗浄部)
33 ブラシ洗浄部(洗浄部)
34 リンス洗浄部(洗浄部)
35 乾燥部
36 下流側助走部(搬出部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電層が形成された基板を洗浄する洗浄部と、
該洗浄部の上流側に設けられて、前記基板を基板搬入口から前記洗浄部に搬入する搬入部と、
前記洗浄部の下流側に設けられて、該洗浄部によって洗浄された前記基板の前記発電層を乾燥させる乾燥部と、
該乾燥部の下流側に設けられて乾燥した前記基板を基板搬出口へ搬出する搬出部と、
前記基板搬入口を除く前記搬入部、前記洗浄部、前記乾燥部、前記基板搬出口を除く前記搬出部内に入射する光を遮断する光遮断手段と、
該光遮断手段に設けられる観察窓と、
該観察窓に設けられて、該観察窓から入射する光のうち、前記発電層の発電に寄与する波長の少なくとも一部を遮断し、前記発電層の発電電圧を、前記波長の少なくとも一部を遮光しない場合の前記発電電圧の1/10以下にする光透過手段と、を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記観察窓は、前記搬入部および前記搬出部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記観察窓は、前記基板に対して前記発電層を形成された製膜面側に設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記基板は、斜め鉛直方向に設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記基板は、水平方向に設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記基板洗浄装置内で水平方向になるように設けた前記基板は、前記発電層の製膜面側を鉛直上方に向かって設けることを特徴とする請求項5に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記基板洗浄装置内で水平方向になるように設けた前記基板は、前記発電層の製膜面側を鉛直下方に向かって設け、
該発電層の下方には、前記観測窓と前記基板との間に、鏡を設けることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記観察窓には、その鉛直上方に外部に突出する遮蔽板を設けることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記観察窓および前記光透過手段は、略同径かつ同心円状に設けられており、
該光透過手段は、透過する光量を調整する光量調整手段を有し、
該光量調整手段は、前記光透過手段と略同径かつ同心円状の光量調整手段用遮蔽板と、該光量調整手段用遮蔽板に設けられる複数の開口と、前記光量調整手段用遮蔽板を円周方向に回動する回動手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記光透過手段は、前記光量調整手段に設けられる開口と略同形状であることを特徴とする請求項8に記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
前記光透過手段には、前記発電層の発電に寄与する波長域のすくなくとも一部の波長域を除いた波長の光を局所的に照射する局所照射手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項12】
前記局所照射手段は、光源と、該光源の照射位置を変えることが可能な保持手段と、を有することを特徴とする請求項11に記載の基板洗浄装置。
【請求項13】
前記光透過手段は、650nm以上の波長を透過するロングパスフィルタであることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項14】
前記光透過手段は、450nm以下の波長を透過するショートパスフィルタであることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項15】
前記基板の前記発電層を洗浄する洗浄部と、
該洗浄部の上流側に設けられて、前記基板を基板搬入口から前記洗浄部に搬入する搬入部と、
前記洗浄部の下流側に設けられて、該洗浄部によって洗浄された前記基板の前記発電層を乾燥させる乾燥部と、
該乾燥部の下流側に設けられて乾燥した前記基板を基板搬出口へ搬出する搬出部と、
前記基板搬入口を除く前記搬入部、前記洗浄部、前記乾燥部、前記基板搬出口を除く前記搬出部内に入射する光を遮断する光遮断手段と、
該光遮断手段に設けられる観察窓と、
該観察窓に設けられて、該観察窓から入射する光のうち、
前記発電層の発電に寄与する波長の少なくとも一部を遮断し、前記発電層の発電電圧を、前記波長の少なくとも一部を遮光しない場合の前記発電電圧の1/10以下にする光透過手段と、を備える基板洗浄装置によって前記基板を洗浄することを特徴とする基板の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−33820(P2012−33820A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173718(P2010−173718)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】