基準発振器の周波数安定化
従来技術の不利な点を取り除き、特性(1)高い長期安定性、(2)低位相雑音、(3)高耐熱性、(4)その基準発振器の周波数についての正確な値、を改善したMEMS基準発振器を提供することが、本発明の目的である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準発振器の周波数を安定化させるための方法に関するものである。特に、本発明は、MEMS(微小電子機械システム)基準発振器の周波数を安定化させるための方法に関するものである。本発明はまた、基準発振器、特に、MEMS基準発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基準発振器は、数え切れないほどの用途において、正確かつ安定した周波数基準として使用されている。それらは、正確な周波数基準を獲得するため、及び/又は正確な時間基準を獲得するために、使用される。例えば、無線周波リンクを使って通信する、さもなければ正確に定められた周波数を使用する装置において、このような基準発振器が必要とされる。基準発振器はまた、正確なクロック、及びタイミング回路においても必要とされる。
【0003】
基準発振器についての重大な要件は、(1)高い長期安定性(低ドリフト/エージング)、(2)低位相雑音、(3)例えば、低熱係数のような高耐熱性、(4)その基準発振器の周波数についての正確な値、である。殆どの大容量の応用例では、以下の特徴もまた重要である:(5)小さいサイズ、(6)低消費電力、(7)共振器、発振器電子装置と、デバイスパッケージとの間の高い集積レベル、及び(8)低コスト。
【0004】
高品質基準発振器では、共振器には、水晶が典型的には使用される。これらの水晶の不利な点は、それらの大きいサイズ、及び電子装置とのモノリシック集積に対する不適合性である。
【0005】
最新の微細機械加工は、共振周波数が数kHzからGHzレンジの範囲である小型機械共振器(微小電子機械システム=MEMS)を製造することを可能にする。シリコンの表面、又はバルク微細機械加工に基づく、そのような微小共振器の例は、H.J.De Los Santos著「無線通信のためのRF MEMS回路設計」,Artech House,Boston/London,2002で示されている。微小共振器の利点は、小さいサイズ、低消費電力、及び共振器、発振器電子装置と、デバイスパッケージとの間の集積レベルの増大の可能性、を含む。モノリシック集積、及びシステムオンチップ手法の両方とも、基準発振器の集積レベルを増大させるための実行可能な解決策である。微細機械加工共振器、及び集積回路のモノリシック集積はまた、より複雑な微小電子機械回路を容易にするであろう。
【0006】
しかしながら、MEMSベース基準発振器を実現することに関する、いくつかの厄介な問題が存在する。(i)特に、そのデバイスから良い位相雑音性能が得られるとき、基準品質の長期安定性は、微小サイズの共振器を使って実現するには困難である。(ii)微小共振器の共振周波数に対する熱係数は、典型的には[−10, −40]ppm/Kの範囲であり、従って、典型的な基準発振器の用途には、はるかに大きすぎるものである。(温度依存補償に対する提案された解決策は、例えばMacDonald他著,米国特許第5,640,133号参照のバイアス電圧を調整すること、例えばNguyen及びHsu著,米国特許出願第20030051550号参照の容量結合ギャップの幅を調整すること、又は例えばHsu及びNguyen著,米国特許出願第20020069701号参照の機械応力を利用すること、を含む。)(iii)微小サイズ共振器における小さい寸法は、製造誤差に対するかなりの要求を作り出して、正確な共振器周波数を獲得する。要するに、全ての所望の特性(1)−(4)を同時に持つMEMS基準発振器を示すことは、困難であることがわかった。
【0007】
(本発明の要約)
それゆえ、従来技術の不利な点を取り除き、改善された特性(1)−(4)を持つMEMS基準発振器を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
高集積、低位相雑音の基準発振器の製造に適応できる手法を使って、MEMS部品に基づく発振器の周波数を安定化させるための方法を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0009】
本発明は、2又はそれ以上のMEMS部品からの所望の特性の選択的な組み合わせにより、従来技術の不利な点に対する解決策を提供する。
【0010】
MEMS発振器の各部品は、典型的には互いに異なる特性のセットにより、特徴付けられる。コンバイナ等が、部品における特性の選択的な組み合わせにより、所望の出力を合成する。これを遂行するために、コンバイナは、例えば、発振器の信号の処理、2つの発振器のフィードバック調整、及び発振器の測定温度のような更なる入力の利用、というような幾つかの手法を使用することができる。
【0011】
本発明の特有な特徴を、同封の特許請求の範囲で詳細に示す。
【0012】
微細機械加工及びICプロセスは、並行して、かつそれらの動作の組み合わせで、本質的に、幾つかの部品の製造への拡張性があるので、2又はそれ以上のMEMS部品の使用は、技術的に実行可能であり、合理的な解決策である。
【0013】
以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明より、添付図面と組合せて解釈されて、本発明の前述の、及び更なる目的、特徴、及び利点が、よりはっきりと理解されるであろう。
【0014】
(発明の詳細な説明)
例として発振器の組み合わせを使って、図1に本発明を概略的に示す(ここでは、発振器は、汎用周波数選択微細機械加工部品を意味する)。各微細機械加工発振器i(i=1,2,…n−1,n)は、典型的には互いに異なる特性iのセット(i=1,2,...n−1,n)により特徴付けられる。コンバイナ COMBINER10は、n個の部品の特性iの選択的な組み合わせにより、所望の出力 OUTPUT10を合成する。これを遂行するために、以下に、方法1及び2で説明する幾つかの手法を、コンバイナは使用することができる。
【0015】
方法1
図2に示した方法1では、微細機械加工共振器に基づく可変発振器 TUNOSC20が、低位相雑音の出力信号を作り出す。発振器の周波数を監視し、周波数を所望の基準値に調整する周波数計 FREQMETER20により、発振器における長期安定性が提供される。周波数計もまた、以下で詳細に説明するように、微細機械加工部品に基づくものである。可変発振器は、それ自身において長期安定性を提供する必要がないので、それは、(i)温度、及び製造誤差補償のための十分な可変性、及び(ii)良い短期安定性(位相雑音)、をより容易に可能にする設計を利用することができる。一方、周波数計は、可変性、又は良い位相雑音を提供する必要がないので、高い長期安定性のみを意図した設計を使用することができる。
【0016】
長期安定性を提供する部品の動作は、安定した電気的、又は電気機械的特性に基づくものである。実現形態A(図3)では、安定周波数基準は、バルク音響モード発振器に基づくものである。この場合、周波数計の動作は、バルク音響波発振器によって作り出された周波数を可変発振器 TUNOSC30の出力周波数と比較することに基づいている。実現形態B(図4)では、固定位置における、微細機械加工音波導波管内の伝播バルク音響波の位相差を測定することにより、安定周波数基準が得られる。実現形態C(図5)では、周波数計は、Wien発振器トポロジを作成するために使用される安定コンデンサCA、CB、及び安定微細機械加工薄膜抵抗器RA、RBに基づくものである。Wien発振器回路の一部分である、コンデンサ‐抵抗器ネットワークはまた、コンデンサ、及び抵抗器が、その平衡が入力周波数の周波数に依存するブリッジ回路を形成する周波数計として、使用することもできる。
【0017】
可変発振器の良い位相雑音要求は、幾つかの微細機械加工共振器の型を使って実現することができ、特に、長期安定性要求の緩和は、バルク音響波共振器に加えて、曲げモード共振器の使用を可能にする。単一の共振器を使って、温度補償のための十分な可変性の範囲を獲得することが難しくなった場合、わずかに異なる共振周波数を有して、図6に示すように可変性の範囲を減らす共振器に基づく、2又はそれ以上の発振器のバンクを利用することができる。
【0018】
図2は、可変発振器 TUNOSC20、及びフィードバック接続を使うことにより発振器の周波数を(長期間)安定化させる周波数計 FREQMETER20から成る基準発振器のブロック図である。
【0019】
周波数計の3つの実現形態を説明する:
【0020】
実現形態A(図3)では、バルク音響モードで動作する、微細機械加工シリコン共振器に基づく発振器(「BAWOSC30」で示される)によって、(長期)高安定性の周波数計が作られる。
【0021】
例えば、次に低域通過フィルタ(LPF30)、及び周波数カウンタ COUNTER30が続くミクサを使って、可変発振器 TUNOSC30の周波数をBAWOSCの周波数と比較し、その検出された周波数差を処理して(「LOGIC30」)、可変発振器 TUNOSC30を正しい周波数に調整するための同調電圧を作り出す。BAWOSC30の周波数は温度の関数であるので、計算される周波数差は、一定のままではなく、温度に依存する、ということに注意することが重要である。しかしながら、BAWOSC周波数は、正確に知られた、温度の安定関数であるので、温度を測定する(「T‐MEAS30」)ことにより、それを周波数基準として使用することができる。次に、同調電圧を作り出す回路において、温度誘導基準オフセットを考慮に入れる。
【0022】
実現形態B(図4)では、周波数計は、微細機械加工音響遅延線 DELAYLINE40内で伝播する音響信号の位相の測定に基づいている。測定される発振器信号を使用して、音響遅延線の一方の端において、音波を生成する。遅延線の端における指数ホーン状の電極が、線の音響インピーダンスを下げる。線のもう一方の端は、反射が全くない(定常波が全くない)ように、整合消散型負荷において音響信号を終端させるように設計された。単方向音響信号の位相を、図4のA及びBで示される、遅延線に沿った2点において、調べる。CA及びCBで示される2つの微細機械加工DCバイアス電極を使って、遅延線表面の動きを測定することにより、線内を伝播する音響信号が検出される。例えば、LAB=c/(4f0)となるように、点AとBの間の遅延線の長さ(LAB)を調整することは都合が良く、ここで、cは微細機械加工シリコン遅延線内の音の速度、及びf0は基準発振器の周波数の公称値である。そのとき、点AとBとの間の音信号の位相差は90度である。そのとき、遅延線内を伝わる音による、電極CA、及びCB全体にわたって流れる動電流は、90度の位相差を持ち、位相検出器として使用されるミクサのゼロのDC出力電圧という結果になる(2f0成分は、モジュール「INT40」で除去されると仮定され、このモジュール「INT40」はまた、信号を平均化して、必要な場合には、信号対雑音比を高めるために使用することもできる)。Δf0からの如何なるずれΔfも、ミクサ出力の非ゼロのDC電圧内に直接伝播し、次に、そのミクサ出力は、測定され、周波数計情報として働く。
【0023】
実現形態Aは定常波動作に基づいているが、その一方で、実現形態Bは、伝播バルク波に基づいているということに注意することが、重要である。定常波動作の利点は、インピーダンスレベルを下げ、消費電力を低減するために、共振を利用することができる能力である。一方、伝播波構造は、終点効果(例えば、定常波動作における音響長を変化させる汚染)に、より影響されにくい。
【0024】
実現形態C(図5)では、周波数計は、安定コンデンサ、及び安定抵抗器のインピーダンスの感位相測定を実施するACブリッジに基づいている。ブリッジは、その出力電圧がその公称値からの周波数オフセットに比例するように、設計される。単純な計算が、ブリッジの動作を説明する。2つのコンデンサは両方の値がCA=CB=Cであり、両方の抵抗器は値がRA=RB=Rである、と仮定する。ブリッジが平衡であるときの角周波数は、
2nf0CR=1 (1)
により特定される。
【0025】
測定される周波数はf=f0+Δfであり、Δf/f0は小さい。
VA−VB=−jVin−(Δf/f0)Vin (2)
であることを示すことは簡単である。ここで、(Δf/f0)2の次数、又はそれより高い次数の項は無視され、Vinは入力信号であり、jは虚数単位を表す。Vinと同じ位相である電圧差VA−VBの成分を測定することにより、入力周波数のf0からのずれを特定することができる。
【0026】
バルク音響波共振器における共振周波数の長期安定性は、基本的には、寸法(音響長L)を特定する特性周波数は、微小機械共振器としては大きい規模であり、典型的には、13MHzにおいて、1/4波長が数百マイクロメートルに対応する、という事実からもたらされる。比較すると、典型的なビーム型曲げモード共振器では、厚さにより、或いは同じ周波数において、典型的には数マイクロメートル(2桁未満)であるビームの幅により、基本共振周波数が特定される。BAW共振器の寸法を特定する大きい周波数はまた、製造誤差による周波数オフセットを減らすのにも有益である。
【0027】
周波数同調回路についてのもう1つの重要な用途は、製造の間に生じる、部品のパラメータの変動の補償である。デバイスごとの変動は、特に、共振周波数の絶対値と関係がある。個々の基準発振器の較正データは、発振器回路の一部分であるメモリ回路に格納することができ、これらのデータを使用して、出力周波数を所望の値に正確にセットすることができる。
【0028】
図3‐5のTUNABLE OSCは、微細機械加工共振器に基づく、数個の異なる実現形態を持つことができる。可能な共振器形状は、曲げモード共振器[例えば、片持ち梁、ブリッジ、及びいわゆる両頭音さ(DETF)]、ならびに、バルク音響モード共振器を含む。共振器、及び導出される発振器の両方とも、最近の文献において、徹底的に論じられた。TUNABLE OSCの用途における曲げモード共振器の利点は、良い短期安定性(すなわち、低位相雑音)、及び幾つかの場合では、BAW構造より良い可変性を含む。
【0029】
例えば、微小機械共振器の静電同調(バイアス電圧を調整する)により、或いは可変リアクタンスを作り出す部品(例えば、バラクタ)を使うことにより、周波数同調を遂行することができる。共振周波数が3〜45MHzの範囲である、曲げモードシリコン共振器がある。適当なバイアス電圧を加えることにより、共振周波数を1%ずらすことができるであろう。この同調範囲は、25℃から85℃までの温度変化時の共振周波数の0.15%の変化よりも、著しく大きい。十分大きい可変性の範囲を獲得することが、問題を引き起こす場合には、機械共振周波数がわずかに異なる、2又はそれ以上の共振器 TUNABLE OSC1…TUNABLE OSCnのバンクを使用して、単一の共振器に必要な可変性の範囲を狭めることができる(図6)。
【0030】
方法2
図7に示した方法2では、発振器の出力周波数は、2つの発振器 HFOSC70及びTUNLFOSC70の周波数から合成され、その両方とも、微細機械加工共振器に基づいている。出力信号の特性は、主に、長期安定性、及び低位相雑音を提供する高周波発振器から引き出される。方法1と同様に、2又はそれ以上の微細機械加工部品を使って、高周波発振器の特性を実現することができる。方法1との決定的な違いは、高周波発振器の出力周波数を同調しないままで、及びFREQSUM70における周波数加算を使って、温度及び製造オフセットの補償を実施して:低周波可変発振器からの周波数を高周波発振器の出力と加算した、一定かつ正確な周波数の出力信号を獲得するということである。低周波発振器の動作周波数は、高周波発振器に必要な補償に必要な同調範囲を可能にするように選択される。例えば、13MHz発振器において3000ppmの周波数オフセットを補償するためには、最低でも、39kHzの低周波発振器を必要とする。方法2の重大な利点は、(i)高周波発振器は同調されないままであるので、これは、更なる設計の自由度を与えて、必要な長期安定性、及び低位相雑音を獲得する、(ii)信号のほんのわずかな部分として、長期、及び短期安定性が低周波発振器から引き出され、その長期安定性、及び低位相雑音の要件は、より要求の厳しいものではない、(iii)低周波数において、例えば、曲げモード共振器のような大きい同調範囲を可能にする設計を使用することが実行可能である、ということである。例えば、ミクサ、及び連続したフィルタリングを使って、2つの発振器の信号を乗算して、その2つの周波数の和又は差を選択することにより、周波数加算を実現する。典型的には、ミクサ出力における2つの周波数成分のうちの他方のフィルタリングが、その性能にとって重大である。2つの周波数のうちの一方を選択する際に、標準の影像阻止ミクサの手法を使用することができる。必要な場合には、図8に示すような微細機械加工共振器構造を使って、更なる狭帯域フィルタを作り出すことができる。
【0031】
方法2(図7)では、1又はそれ以上の微細機械加工共振器を使って、高周波発振器を実現することができる。この場合、可変性は必要ないので、単一バルク音響波共振器から、良好な長期安定性、及び低位相雑音を獲得することができるが、さらにより良い性能のために、図1のように、2又はそれ以上の部品から、長期安定性、及び低位相雑音を得ることができる。方法2(図7)における温度、及び製造公差の補償は、可変低周波発振器を使って実施され、その低周波発振器の出力は、高周波発振器と周波数加算される。必要な可同調性の範囲は、典型的には1%より少ないので(T−補償は、典型的には0.3%必要とする)、低周波発振器の共振周波数は、典型的には、高周波発振器より小さい、2桁とすることができる。例えば、fHIGH=13MHzの高周波発振器の場合、低周波発振器は、fLOW−数百kHzで動作し、曲げ型共振器を使って最も良く実現される。出力信号の長期、及び短期安定性は、主に、高周波発振器から生じ:低周波発振器は、係数fLOW/fHIGHでのみ、寄与する。それゆえ、曲げモード共振器の低下した長期安定性は、発振器の出力信号の必要な高い安定性を維持するのには十分である。
【0032】
図8は、方法2による周波数加算についての可能な実現形態を示している。基準発振器の出力周波数は、fOUT=fBAW−fFLEXである。ミクサ MIXER80は、影像周波数fBAW+fFLEXを阻止する影像阻止ミクサである。そのかわりに、fBAW−fFLEXを阻止するように、影像阻止ミクサを設計することもできる。それにより、基準発振器の出力周波数は、fOUT=fBAW+fFLEXである。
【0033】
基準発振器周波数frefに近い中心周波数を持つ共振器に基づくフィルタを使うことにより、基準発振器の出力信号をフィルタにかけることにより、影像周波数阻止の更なる改善を得ることができる。フィルタは、フィルタの設計寿命の間の可能なドリフトを含む、その中心周波数の変動Δf0がf0/Qより小さいように、その機械品質因子が適度でしかないように、設計される。そのフィルタは、幾つかの微小機械共振器を構成して、周波数選択性をさらに改善する高次フィルタとして実現することができる。例えば、絶縁体上シリコン(SOI)ウェーハの深反応イオンエッチング(DRIE)に基づくプロセスを使って、方法1及び2で必要な全ての微細機械加工部品を製造することができる。バルク音響モード共振器を製造するために用いられ得るもう1つの製造プロセスが、1994年9月27日に出願された、Shaw他著の「微細構造、及びそれらの製造のための単マスク単結晶プロセス」という名称の米国特許第5,719,073号(特許出願第08/312,797号)で説明されている。また、単結晶シリコンか、多結晶シリコンのいずれかを使用することに基づく幾つかの他のプロセスにより、機能的に同様な部品を製造することもできるであろう。
【0034】
本発明による基準発振器に好都合なMEMS部品を、図9に示す。図9は、角型プレート PLATE90、プレートの全ての側での容量結合のための電極 ELECTRODE1‐ELECTRODE4、電極に接続された電圧源Uin及びUbias、及び出力電圧Uoutを、備える微小機械13.1MHzバルク音響モード(BAW)シリコン共振器、を提示している。振動モードは、元の角型形状を保持する2−Dプレートの拡張と、特徴付けられる。絶縁体上シリコンウェーハの深反応イオンエッチングにより、部品を作ることができる。デバイス全体を1つのマスクで製造することができるように、共振器への電気接触が、コーナアンカリング(T型コーナアンカリング)により成される。図9は、振動モード、及び、バイアス及び駆動セットアップを示している。破線、及び点線は、形状の拡張、及び縮小を示している。
【0035】
本発明の様々な実施形態は、上記で説明した例に限定されず、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内で変更することができるということは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】2又はそれ以上の微細機械加工発振器、及びそれらの特性の選択的な組み合わせから成る、本発明の基準発振器の概略図である。
【図2】可変低位相雑音発振器、及びフィードバック接続を使用することにより、その発振器周波数を安定化させる周波数計、から成る基準発振器のブロック図である。
【図3】その周波数計がバルク音響モードで動作する微細機械加工シリコン共振器を収容する発振器に基づいている、図1の方式による基準発振器のブロック図である。
【図4】その周波数計が微細機械加工音響遅延線に基づく、図1の方式による基準発振器のブロック図である。
【図5】その周波数計が非常に安定した抵抗器、及びコンデンサから形成される回路に基づく、図1の方式による基準発振器のブロック図である。
【図6】単一発振器を十分同調できない場合に、共振周波数がわずかに異なる共振器のセットを使って、図1の方式における温度補償をどのように実現することができるか、を示している。
【図7】2つの発振器から成る基準発振器のブロック図である。一方の発振器は、電気周波数調整能力Δfhighの小さい、或いは無い、高周波発振器fhighである。もう一方の発振器は、それよりかなり大きい電気周波数調整能力Δflow>>Δfhighを持つ、低周波発振器flowである。その2つの周波数fhigh及びflowを加算、或いは減算することにより、その基準発振器の出力周波数を合成する。
【図8】微小機械共振器に基づく安定発振器、低周波電圧制御発振器、影像阻止ミクサ、及び微小機械共振器に基づくフィルタ、から成る基準発振器のブロック図である。
【図9】振動モード、及び、バイアス及び駆動セットアップを示す、角型拡張MEMS共振器の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準発振器の周波数を安定化させるための方法に関するものである。特に、本発明は、MEMS(微小電子機械システム)基準発振器の周波数を安定化させるための方法に関するものである。本発明はまた、基準発振器、特に、MEMS基準発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基準発振器は、数え切れないほどの用途において、正確かつ安定した周波数基準として使用されている。それらは、正確な周波数基準を獲得するため、及び/又は正確な時間基準を獲得するために、使用される。例えば、無線周波リンクを使って通信する、さもなければ正確に定められた周波数を使用する装置において、このような基準発振器が必要とされる。基準発振器はまた、正確なクロック、及びタイミング回路においても必要とされる。
【0003】
基準発振器についての重大な要件は、(1)高い長期安定性(低ドリフト/エージング)、(2)低位相雑音、(3)例えば、低熱係数のような高耐熱性、(4)その基準発振器の周波数についての正確な値、である。殆どの大容量の応用例では、以下の特徴もまた重要である:(5)小さいサイズ、(6)低消費電力、(7)共振器、発振器電子装置と、デバイスパッケージとの間の高い集積レベル、及び(8)低コスト。
【0004】
高品質基準発振器では、共振器には、水晶が典型的には使用される。これらの水晶の不利な点は、それらの大きいサイズ、及び電子装置とのモノリシック集積に対する不適合性である。
【0005】
最新の微細機械加工は、共振周波数が数kHzからGHzレンジの範囲である小型機械共振器(微小電子機械システム=MEMS)を製造することを可能にする。シリコンの表面、又はバルク微細機械加工に基づく、そのような微小共振器の例は、H.J.De Los Santos著「無線通信のためのRF MEMS回路設計」,Artech House,Boston/London,2002で示されている。微小共振器の利点は、小さいサイズ、低消費電力、及び共振器、発振器電子装置と、デバイスパッケージとの間の集積レベルの増大の可能性、を含む。モノリシック集積、及びシステムオンチップ手法の両方とも、基準発振器の集積レベルを増大させるための実行可能な解決策である。微細機械加工共振器、及び集積回路のモノリシック集積はまた、より複雑な微小電子機械回路を容易にするであろう。
【0006】
しかしながら、MEMSベース基準発振器を実現することに関する、いくつかの厄介な問題が存在する。(i)特に、そのデバイスから良い位相雑音性能が得られるとき、基準品質の長期安定性は、微小サイズの共振器を使って実現するには困難である。(ii)微小共振器の共振周波数に対する熱係数は、典型的には[−10, −40]ppm/Kの範囲であり、従って、典型的な基準発振器の用途には、はるかに大きすぎるものである。(温度依存補償に対する提案された解決策は、例えばMacDonald他著,米国特許第5,640,133号参照のバイアス電圧を調整すること、例えばNguyen及びHsu著,米国特許出願第20030051550号参照の容量結合ギャップの幅を調整すること、又は例えばHsu及びNguyen著,米国特許出願第20020069701号参照の機械応力を利用すること、を含む。)(iii)微小サイズ共振器における小さい寸法は、製造誤差に対するかなりの要求を作り出して、正確な共振器周波数を獲得する。要するに、全ての所望の特性(1)−(4)を同時に持つMEMS基準発振器を示すことは、困難であることがわかった。
【0007】
(本発明の要約)
それゆえ、従来技術の不利な点を取り除き、改善された特性(1)−(4)を持つMEMS基準発振器を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
高集積、低位相雑音の基準発振器の製造に適応できる手法を使って、MEMS部品に基づく発振器の周波数を安定化させるための方法を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0009】
本発明は、2又はそれ以上のMEMS部品からの所望の特性の選択的な組み合わせにより、従来技術の不利な点に対する解決策を提供する。
【0010】
MEMS発振器の各部品は、典型的には互いに異なる特性のセットにより、特徴付けられる。コンバイナ等が、部品における特性の選択的な組み合わせにより、所望の出力を合成する。これを遂行するために、コンバイナは、例えば、発振器の信号の処理、2つの発振器のフィードバック調整、及び発振器の測定温度のような更なる入力の利用、というような幾つかの手法を使用することができる。
【0011】
本発明の特有な特徴を、同封の特許請求の範囲で詳細に示す。
【0012】
微細機械加工及びICプロセスは、並行して、かつそれらの動作の組み合わせで、本質的に、幾つかの部品の製造への拡張性があるので、2又はそれ以上のMEMS部品の使用は、技術的に実行可能であり、合理的な解決策である。
【0013】
以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明より、添付図面と組合せて解釈されて、本発明の前述の、及び更なる目的、特徴、及び利点が、よりはっきりと理解されるであろう。
【0014】
(発明の詳細な説明)
例として発振器の組み合わせを使って、図1に本発明を概略的に示す(ここでは、発振器は、汎用周波数選択微細機械加工部品を意味する)。各微細機械加工発振器i(i=1,2,…n−1,n)は、典型的には互いに異なる特性iのセット(i=1,2,...n−1,n)により特徴付けられる。コンバイナ COMBINER10は、n個の部品の特性iの選択的な組み合わせにより、所望の出力 OUTPUT10を合成する。これを遂行するために、以下に、方法1及び2で説明する幾つかの手法を、コンバイナは使用することができる。
【0015】
方法1
図2に示した方法1では、微細機械加工共振器に基づく可変発振器 TUNOSC20が、低位相雑音の出力信号を作り出す。発振器の周波数を監視し、周波数を所望の基準値に調整する周波数計 FREQMETER20により、発振器における長期安定性が提供される。周波数計もまた、以下で詳細に説明するように、微細機械加工部品に基づくものである。可変発振器は、それ自身において長期安定性を提供する必要がないので、それは、(i)温度、及び製造誤差補償のための十分な可変性、及び(ii)良い短期安定性(位相雑音)、をより容易に可能にする設計を利用することができる。一方、周波数計は、可変性、又は良い位相雑音を提供する必要がないので、高い長期安定性のみを意図した設計を使用することができる。
【0016】
長期安定性を提供する部品の動作は、安定した電気的、又は電気機械的特性に基づくものである。実現形態A(図3)では、安定周波数基準は、バルク音響モード発振器に基づくものである。この場合、周波数計の動作は、バルク音響波発振器によって作り出された周波数を可変発振器 TUNOSC30の出力周波数と比較することに基づいている。実現形態B(図4)では、固定位置における、微細機械加工音波導波管内の伝播バルク音響波の位相差を測定することにより、安定周波数基準が得られる。実現形態C(図5)では、周波数計は、Wien発振器トポロジを作成するために使用される安定コンデンサCA、CB、及び安定微細機械加工薄膜抵抗器RA、RBに基づくものである。Wien発振器回路の一部分である、コンデンサ‐抵抗器ネットワークはまた、コンデンサ、及び抵抗器が、その平衡が入力周波数の周波数に依存するブリッジ回路を形成する周波数計として、使用することもできる。
【0017】
可変発振器の良い位相雑音要求は、幾つかの微細機械加工共振器の型を使って実現することができ、特に、長期安定性要求の緩和は、バルク音響波共振器に加えて、曲げモード共振器の使用を可能にする。単一の共振器を使って、温度補償のための十分な可変性の範囲を獲得することが難しくなった場合、わずかに異なる共振周波数を有して、図6に示すように可変性の範囲を減らす共振器に基づく、2又はそれ以上の発振器のバンクを利用することができる。
【0018】
図2は、可変発振器 TUNOSC20、及びフィードバック接続を使うことにより発振器の周波数を(長期間)安定化させる周波数計 FREQMETER20から成る基準発振器のブロック図である。
【0019】
周波数計の3つの実現形態を説明する:
【0020】
実現形態A(図3)では、バルク音響モードで動作する、微細機械加工シリコン共振器に基づく発振器(「BAWOSC30」で示される)によって、(長期)高安定性の周波数計が作られる。
【0021】
例えば、次に低域通過フィルタ(LPF30)、及び周波数カウンタ COUNTER30が続くミクサを使って、可変発振器 TUNOSC30の周波数をBAWOSCの周波数と比較し、その検出された周波数差を処理して(「LOGIC30」)、可変発振器 TUNOSC30を正しい周波数に調整するための同調電圧を作り出す。BAWOSC30の周波数は温度の関数であるので、計算される周波数差は、一定のままではなく、温度に依存する、ということに注意することが重要である。しかしながら、BAWOSC周波数は、正確に知られた、温度の安定関数であるので、温度を測定する(「T‐MEAS30」)ことにより、それを周波数基準として使用することができる。次に、同調電圧を作り出す回路において、温度誘導基準オフセットを考慮に入れる。
【0022】
実現形態B(図4)では、周波数計は、微細機械加工音響遅延線 DELAYLINE40内で伝播する音響信号の位相の測定に基づいている。測定される発振器信号を使用して、音響遅延線の一方の端において、音波を生成する。遅延線の端における指数ホーン状の電極が、線の音響インピーダンスを下げる。線のもう一方の端は、反射が全くない(定常波が全くない)ように、整合消散型負荷において音響信号を終端させるように設計された。単方向音響信号の位相を、図4のA及びBで示される、遅延線に沿った2点において、調べる。CA及びCBで示される2つの微細機械加工DCバイアス電極を使って、遅延線表面の動きを測定することにより、線内を伝播する音響信号が検出される。例えば、LAB=c/(4f0)となるように、点AとBの間の遅延線の長さ(LAB)を調整することは都合が良く、ここで、cは微細機械加工シリコン遅延線内の音の速度、及びf0は基準発振器の周波数の公称値である。そのとき、点AとBとの間の音信号の位相差は90度である。そのとき、遅延線内を伝わる音による、電極CA、及びCB全体にわたって流れる動電流は、90度の位相差を持ち、位相検出器として使用されるミクサのゼロのDC出力電圧という結果になる(2f0成分は、モジュール「INT40」で除去されると仮定され、このモジュール「INT40」はまた、信号を平均化して、必要な場合には、信号対雑音比を高めるために使用することもできる)。Δf0からの如何なるずれΔfも、ミクサ出力の非ゼロのDC電圧内に直接伝播し、次に、そのミクサ出力は、測定され、周波数計情報として働く。
【0023】
実現形態Aは定常波動作に基づいているが、その一方で、実現形態Bは、伝播バルク波に基づいているということに注意することが、重要である。定常波動作の利点は、インピーダンスレベルを下げ、消費電力を低減するために、共振を利用することができる能力である。一方、伝播波構造は、終点効果(例えば、定常波動作における音響長を変化させる汚染)に、より影響されにくい。
【0024】
実現形態C(図5)では、周波数計は、安定コンデンサ、及び安定抵抗器のインピーダンスの感位相測定を実施するACブリッジに基づいている。ブリッジは、その出力電圧がその公称値からの周波数オフセットに比例するように、設計される。単純な計算が、ブリッジの動作を説明する。2つのコンデンサは両方の値がCA=CB=Cであり、両方の抵抗器は値がRA=RB=Rである、と仮定する。ブリッジが平衡であるときの角周波数は、
2nf0CR=1 (1)
により特定される。
【0025】
測定される周波数はf=f0+Δfであり、Δf/f0は小さい。
VA−VB=−jVin−(Δf/f0)Vin (2)
であることを示すことは簡単である。ここで、(Δf/f0)2の次数、又はそれより高い次数の項は無視され、Vinは入力信号であり、jは虚数単位を表す。Vinと同じ位相である電圧差VA−VBの成分を測定することにより、入力周波数のf0からのずれを特定することができる。
【0026】
バルク音響波共振器における共振周波数の長期安定性は、基本的には、寸法(音響長L)を特定する特性周波数は、微小機械共振器としては大きい規模であり、典型的には、13MHzにおいて、1/4波長が数百マイクロメートルに対応する、という事実からもたらされる。比較すると、典型的なビーム型曲げモード共振器では、厚さにより、或いは同じ周波数において、典型的には数マイクロメートル(2桁未満)であるビームの幅により、基本共振周波数が特定される。BAW共振器の寸法を特定する大きい周波数はまた、製造誤差による周波数オフセットを減らすのにも有益である。
【0027】
周波数同調回路についてのもう1つの重要な用途は、製造の間に生じる、部品のパラメータの変動の補償である。デバイスごとの変動は、特に、共振周波数の絶対値と関係がある。個々の基準発振器の較正データは、発振器回路の一部分であるメモリ回路に格納することができ、これらのデータを使用して、出力周波数を所望の値に正確にセットすることができる。
【0028】
図3‐5のTUNABLE OSCは、微細機械加工共振器に基づく、数個の異なる実現形態を持つことができる。可能な共振器形状は、曲げモード共振器[例えば、片持ち梁、ブリッジ、及びいわゆる両頭音さ(DETF)]、ならびに、バルク音響モード共振器を含む。共振器、及び導出される発振器の両方とも、最近の文献において、徹底的に論じられた。TUNABLE OSCの用途における曲げモード共振器の利点は、良い短期安定性(すなわち、低位相雑音)、及び幾つかの場合では、BAW構造より良い可変性を含む。
【0029】
例えば、微小機械共振器の静電同調(バイアス電圧を調整する)により、或いは可変リアクタンスを作り出す部品(例えば、バラクタ)を使うことにより、周波数同調を遂行することができる。共振周波数が3〜45MHzの範囲である、曲げモードシリコン共振器がある。適当なバイアス電圧を加えることにより、共振周波数を1%ずらすことができるであろう。この同調範囲は、25℃から85℃までの温度変化時の共振周波数の0.15%の変化よりも、著しく大きい。十分大きい可変性の範囲を獲得することが、問題を引き起こす場合には、機械共振周波数がわずかに異なる、2又はそれ以上の共振器 TUNABLE OSC1…TUNABLE OSCnのバンクを使用して、単一の共振器に必要な可変性の範囲を狭めることができる(図6)。
【0030】
方法2
図7に示した方法2では、発振器の出力周波数は、2つの発振器 HFOSC70及びTUNLFOSC70の周波数から合成され、その両方とも、微細機械加工共振器に基づいている。出力信号の特性は、主に、長期安定性、及び低位相雑音を提供する高周波発振器から引き出される。方法1と同様に、2又はそれ以上の微細機械加工部品を使って、高周波発振器の特性を実現することができる。方法1との決定的な違いは、高周波発振器の出力周波数を同調しないままで、及びFREQSUM70における周波数加算を使って、温度及び製造オフセットの補償を実施して:低周波可変発振器からの周波数を高周波発振器の出力と加算した、一定かつ正確な周波数の出力信号を獲得するということである。低周波発振器の動作周波数は、高周波発振器に必要な補償に必要な同調範囲を可能にするように選択される。例えば、13MHz発振器において3000ppmの周波数オフセットを補償するためには、最低でも、39kHzの低周波発振器を必要とする。方法2の重大な利点は、(i)高周波発振器は同調されないままであるので、これは、更なる設計の自由度を与えて、必要な長期安定性、及び低位相雑音を獲得する、(ii)信号のほんのわずかな部分として、長期、及び短期安定性が低周波発振器から引き出され、その長期安定性、及び低位相雑音の要件は、より要求の厳しいものではない、(iii)低周波数において、例えば、曲げモード共振器のような大きい同調範囲を可能にする設計を使用することが実行可能である、ということである。例えば、ミクサ、及び連続したフィルタリングを使って、2つの発振器の信号を乗算して、その2つの周波数の和又は差を選択することにより、周波数加算を実現する。典型的には、ミクサ出力における2つの周波数成分のうちの他方のフィルタリングが、その性能にとって重大である。2つの周波数のうちの一方を選択する際に、標準の影像阻止ミクサの手法を使用することができる。必要な場合には、図8に示すような微細機械加工共振器構造を使って、更なる狭帯域フィルタを作り出すことができる。
【0031】
方法2(図7)では、1又はそれ以上の微細機械加工共振器を使って、高周波発振器を実現することができる。この場合、可変性は必要ないので、単一バルク音響波共振器から、良好な長期安定性、及び低位相雑音を獲得することができるが、さらにより良い性能のために、図1のように、2又はそれ以上の部品から、長期安定性、及び低位相雑音を得ることができる。方法2(図7)における温度、及び製造公差の補償は、可変低周波発振器を使って実施され、その低周波発振器の出力は、高周波発振器と周波数加算される。必要な可同調性の範囲は、典型的には1%より少ないので(T−補償は、典型的には0.3%必要とする)、低周波発振器の共振周波数は、典型的には、高周波発振器より小さい、2桁とすることができる。例えば、fHIGH=13MHzの高周波発振器の場合、低周波発振器は、fLOW−数百kHzで動作し、曲げ型共振器を使って最も良く実現される。出力信号の長期、及び短期安定性は、主に、高周波発振器から生じ:低周波発振器は、係数fLOW/fHIGHでのみ、寄与する。それゆえ、曲げモード共振器の低下した長期安定性は、発振器の出力信号の必要な高い安定性を維持するのには十分である。
【0032】
図8は、方法2による周波数加算についての可能な実現形態を示している。基準発振器の出力周波数は、fOUT=fBAW−fFLEXである。ミクサ MIXER80は、影像周波数fBAW+fFLEXを阻止する影像阻止ミクサである。そのかわりに、fBAW−fFLEXを阻止するように、影像阻止ミクサを設計することもできる。それにより、基準発振器の出力周波数は、fOUT=fBAW+fFLEXである。
【0033】
基準発振器周波数frefに近い中心周波数を持つ共振器に基づくフィルタを使うことにより、基準発振器の出力信号をフィルタにかけることにより、影像周波数阻止の更なる改善を得ることができる。フィルタは、フィルタの設計寿命の間の可能なドリフトを含む、その中心周波数の変動Δf0がf0/Qより小さいように、その機械品質因子が適度でしかないように、設計される。そのフィルタは、幾つかの微小機械共振器を構成して、周波数選択性をさらに改善する高次フィルタとして実現することができる。例えば、絶縁体上シリコン(SOI)ウェーハの深反応イオンエッチング(DRIE)に基づくプロセスを使って、方法1及び2で必要な全ての微細機械加工部品を製造することができる。バルク音響モード共振器を製造するために用いられ得るもう1つの製造プロセスが、1994年9月27日に出願された、Shaw他著の「微細構造、及びそれらの製造のための単マスク単結晶プロセス」という名称の米国特許第5,719,073号(特許出願第08/312,797号)で説明されている。また、単結晶シリコンか、多結晶シリコンのいずれかを使用することに基づく幾つかの他のプロセスにより、機能的に同様な部品を製造することもできるであろう。
【0034】
本発明による基準発振器に好都合なMEMS部品を、図9に示す。図9は、角型プレート PLATE90、プレートの全ての側での容量結合のための電極 ELECTRODE1‐ELECTRODE4、電極に接続された電圧源Uin及びUbias、及び出力電圧Uoutを、備える微小機械13.1MHzバルク音響モード(BAW)シリコン共振器、を提示している。振動モードは、元の角型形状を保持する2−Dプレートの拡張と、特徴付けられる。絶縁体上シリコンウェーハの深反応イオンエッチングにより、部品を作ることができる。デバイス全体を1つのマスクで製造することができるように、共振器への電気接触が、コーナアンカリング(T型コーナアンカリング)により成される。図9は、振動モード、及び、バイアス及び駆動セットアップを示している。破線、及び点線は、形状の拡張、及び縮小を示している。
【0035】
本発明の様々な実施形態は、上記で説明した例に限定されず、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内で変更することができるということは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】2又はそれ以上の微細機械加工発振器、及びそれらの特性の選択的な組み合わせから成る、本発明の基準発振器の概略図である。
【図2】可変低位相雑音発振器、及びフィードバック接続を使用することにより、その発振器周波数を安定化させる周波数計、から成る基準発振器のブロック図である。
【図3】その周波数計がバルク音響モードで動作する微細機械加工シリコン共振器を収容する発振器に基づいている、図1の方式による基準発振器のブロック図である。
【図4】その周波数計が微細機械加工音響遅延線に基づく、図1の方式による基準発振器のブロック図である。
【図5】その周波数計が非常に安定した抵抗器、及びコンデンサから形成される回路に基づく、図1の方式による基準発振器のブロック図である。
【図6】単一発振器を十分同調できない場合に、共振周波数がわずかに異なる共振器のセットを使って、図1の方式における温度補償をどのように実現することができるか、を示している。
【図7】2つの発振器から成る基準発振器のブロック図である。一方の発振器は、電気周波数調整能力Δfhighの小さい、或いは無い、高周波発振器fhighである。もう一方の発振器は、それよりかなり大きい電気周波数調整能力Δflow>>Δfhighを持つ、低周波発振器flowである。その2つの周波数fhigh及びflowを加算、或いは減算することにより、その基準発振器の出力周波数を合成する。
【図8】微小機械共振器に基づく安定発振器、低周波電圧制御発振器、影像阻止ミクサ、及び微小機械共振器に基づくフィルタ、から成る基準発振器のブロック図である。
【図9】振動モード、及び、バイアス及び駆動セットアップを示す、角型拡張MEMS共振器の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が特性のセット(特性1‐特性n)で特徴付けられる、2又はそれ以上のMEMS部品(発振器1‐発振器n)を使用するステップと、
前記MEMS部品からの所望の前記特性を選択的に組合せるステップと
を含むことを特徴とする、MEMS(微小電子機械システム)基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項2】
コンバイナ等が、前記部品における前記特性の選択的な組合せにより、所望の出力を合成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項3】
前記コンバイナ等が、前記発振器の信号を処理する
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項4】
前記コンバイナ等が、前記発振器のフィードバック調整を使用する
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項5】
前記コンバイナ等が、前記発振器の測定温度のような更なる入力を利用する
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項6】
微細機械加工共振器に基づく可変発振器が、低位相雑音の出力信号を作り出し、かつ、前記発振器における長期安定性が、該発振器の周波数を監視して、周波数を所望の基準値に調整する周波数計によって提供される
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項7】
前記発振器の出力周波数は、両方とも微細機械加工共振器に基づく2つの発振器の周波数から合成され、かつ前記出力信号の特性は、主に、前記長期安定性、及び前記低位相雑音を提供する高周波の方の前記発振器から得られる
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項8】
前記高周波発振器の前記出力周波数が同調されないままであり、かつ周波数加算を使って、温度、及び製造オフセットの補償を実施する
ことを特徴とする、請求項7に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項9】
一定、かつ正確な周波数出力信号を獲得するために、低周波可変発振器からの周波数は、前記高周波発振器の出力と加算される
ことを特徴とする、請求項8に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項10】
各々が特性のセット(特性1‐特性n)で特徴付けられる、2又はそれ以上のMEMS部品(発振器1‐発振器n)と、
前記MEMS部品からの所望の前記特性の選択的な組合せのためのコンバイナ等と
を備えることを特徴とする、安定化周波数を持つMEMS(微小電子機械システム)基準発振器。
【請求項11】
前記部品の少なくとも1つが、プレートの全ての側に配置される容量結合のための前記角型プレート、及び電極を持つ微小機械バルク音響モード(BAW)シリコン共振器であり、
振動モードは、元の角型形状を維持する2−Dプレート拡張と特徴付けられる
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項12】
少なくとも1つのMEMS部品の型が、他のMEMS部品の型とは異なる
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項13】
前記部品は同一であるが、バイアス電圧のような、それらの制御パラメータは異なる
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項14】
前記発振器は、バルク音響モード発振器に基づく安定周波数基準、及び該バルク音響波発振器によって作り出された周波数を可変発振器の出力周波数と比較することに基づく周波数計の動作、を利用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項15】
前記発振器は、固定位置において、微細機械加工音波導波管内の伝播バルク音響波の位相差を測定すること(遅延線手法)により得られる安定周波数基準を利用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項16】
前記発振器は、ウィーン発振器トポロジを作り出すために使用される安定コンデンサ、及び安定微細機械加工薄膜抵抗器、に基づく周波数計を利用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項17】
ウィーン発振器回路の一部分であるコンデンサ‐抵抗器ネットワークを、該コンデンサ、及び抵抗器が、その平衡が入力周波数の周波数に依存するブリッジ回路を形成する周波数計として使用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項18】
前記発振器の出力周波数は、2つのMEMS発振器の周波数から合成され、
出力信号の特性は、主に、長期安定性、及び低位相雑音を提供する高周波発振器から得られ、
前記高周波発振器の出力周波数は同調されないままであり、周波数加算を使って、温度、及び製造オフセットの補償を実施する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項19】
低周波可変発振器からの周波数が、前記高周波発振器の出力と加算される
ことを特徴とする、請求項18に記載のMEMS基準発振器。
【請求項1】
各々が特性のセット(特性1‐特性n)で特徴付けられる、2又はそれ以上のMEMS部品(発振器1‐発振器n)を使用するステップと、
前記MEMS部品からの所望の前記特性を選択的に組合せるステップと
を含むことを特徴とする、MEMS(微小電子機械システム)基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項2】
コンバイナ等が、前記部品における前記特性の選択的な組合せにより、所望の出力を合成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項3】
前記コンバイナ等が、前記発振器の信号を処理する
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項4】
前記コンバイナ等が、前記発振器のフィードバック調整を使用する
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項5】
前記コンバイナ等が、前記発振器の測定温度のような更なる入力を利用する
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項6】
微細機械加工共振器に基づく可変発振器が、低位相雑音の出力信号を作り出し、かつ、前記発振器における長期安定性が、該発振器の周波数を監視して、周波数を所望の基準値に調整する周波数計によって提供される
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項7】
前記発振器の出力周波数は、両方とも微細機械加工共振器に基づく2つの発振器の周波数から合成され、かつ前記出力信号の特性は、主に、前記長期安定性、及び前記低位相雑音を提供する高周波の方の前記発振器から得られる
ことを特徴とする、請求項2に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項8】
前記高周波発振器の前記出力周波数が同調されないままであり、かつ周波数加算を使って、温度、及び製造オフセットの補償を実施する
ことを特徴とする、請求項7に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項9】
一定、かつ正確な周波数出力信号を獲得するために、低周波可変発振器からの周波数は、前記高周波発振器の出力と加算される
ことを特徴とする、請求項8に記載の、MEMS基準発振器の周波数を安定化させるための方法。
【請求項10】
各々が特性のセット(特性1‐特性n)で特徴付けられる、2又はそれ以上のMEMS部品(発振器1‐発振器n)と、
前記MEMS部品からの所望の前記特性の選択的な組合せのためのコンバイナ等と
を備えることを特徴とする、安定化周波数を持つMEMS(微小電子機械システム)基準発振器。
【請求項11】
前記部品の少なくとも1つが、プレートの全ての側に配置される容量結合のための前記角型プレート、及び電極を持つ微小機械バルク音響モード(BAW)シリコン共振器であり、
振動モードは、元の角型形状を維持する2−Dプレート拡張と特徴付けられる
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項12】
少なくとも1つのMEMS部品の型が、他のMEMS部品の型とは異なる
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項13】
前記部品は同一であるが、バイアス電圧のような、それらの制御パラメータは異なる
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項14】
前記発振器は、バルク音響モード発振器に基づく安定周波数基準、及び該バルク音響波発振器によって作り出された周波数を可変発振器の出力周波数と比較することに基づく周波数計の動作、を利用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項15】
前記発振器は、固定位置において、微細機械加工音波導波管内の伝播バルク音響波の位相差を測定すること(遅延線手法)により得られる安定周波数基準を利用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項16】
前記発振器は、ウィーン発振器トポロジを作り出すために使用される安定コンデンサ、及び安定微細機械加工薄膜抵抗器、に基づく周波数計を利用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項17】
ウィーン発振器回路の一部分であるコンデンサ‐抵抗器ネットワークを、該コンデンサ、及び抵抗器が、その平衡が入力周波数の周波数に依存するブリッジ回路を形成する周波数計として使用する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項18】
前記発振器の出力周波数は、2つのMEMS発振器の周波数から合成され、
出力信号の特性は、主に、長期安定性、及び低位相雑音を提供する高周波発振器から得られ、
前記高周波発振器の出力周波数は同調されないままであり、周波数加算を使って、温度、及び製造オフセットの補償を実施する
ことを特徴とする、請求項10に記載のMEMS基準発振器。
【請求項19】
低周波可変発振器からの周波数が、前記高周波発振器の出力と加算される
ことを特徴とする、請求項18に記載のMEMS基準発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−524303(P2007−524303A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551866(P2006−551866)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000068
【国際公開番号】WO2005/076480
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000068
【国際公開番号】WO2005/076480
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】
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