説明

層の緩和

【課題】電子工学、光学、又は光電子工学に応用するための、弾性的に歪みのない結晶材料製層を形成する方法の提供。
【解決手段】張力下で(又は圧縮して)弾性的に歪みのある第1の結晶層1と、圧縮して(又は張力下で)弾性的に歪みのある第2の結晶層2とを備え、前記第2の層が前記第1の層に隣接している構造体30を用いて、それらの2つの層間での拡散ステップを備え、それにより2つの層のそれぞれの組成物間の差がほぼ同じになるまで次第に低減され、その後、それらの2つの層が、全体として均質な組成物を有する、結晶材料製のただ単一の最終層を形成する。それらの2つの層のそれぞれの組成物と、厚さと、歪みの程度とを最初に選択することにより、拡散後に、全体として弾性的な歪みを示さない最終層を構成する材料が得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子工学、光学、又は光電子工学に応用するための、歪みのない結晶材料製の層の形成に関し、より詳細には、本発明は、前記層を備えた構造体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、層の結晶構造が、引張力下で、又は圧縮して弾性的に歪みを生じ、その結果、その層の格子定数が、その構成材料の公称格子定数とは実質的に異なる場合、この層は「歪みのある(strained)」と呼ばれ、材料の公称格子定数とは、その材料がバルクの形で単結晶状態にあるときの、その材料の格子定数である。
【0003】
一方、層を構成する結晶材料の格子定数が、その材料の公称格子定数とほぼ同一である場合、この層は「完全に緩和されている(completely relaxed)」又は「歪みのない(unstrained)」と呼ばれる。
【0004】
従って、歪みのない層は、その層が熱応力等の外部応力にさらされたときにも、安定した結晶性構造体を有する。
【0005】
かかる歪みのない層は、バルク・ウェハ中に直接(directly)見つけることが可能である。しかし、バルク材料の製造は、シリコン、AsGa、ゲルマニウム、サファイヤ又はその他の少数の材料に限られる。
【0006】
他の種類の材料によって構成された歪みのない層を製造するには、同じウェハ内において、別の結晶材料によって構成されたバルク基板上にかかる層を形成し、基板とこの層との間にバッファ層を挿入することが知られている。
【0007】
かかる構成では、「バッファ層」は、形成される層の格子定数を、基板の格子定数と適応させる遷移層となることが理解される。従って、かかるバッファ層は、深さに伴って次第に変動する組成物を有することができ、その場合、バッファ層の構成要素におけるこの段階的な変動は、そのバッファ層の格子定数の、基板と、形成される層とのそれぞれの格子定数間での段階的な変動と直接関連する。
【0008】
挙げられる一例に、シリコンのバルク基板から、基板とSiGe層との間で次第に増大するゲルマニウム組成物を有するSiGeバッファ層を介して、SiGe層を形成する例がある。
【0009】
従って、「バッファ層」は、バルクの形では存在しない、又はほとんど存在しない材料によって構成された、歪みのない層を製造するために使用されることができる。
【0010】
更に、前記歪みのない層をセミコンダクタ・オン・インシュレータ構造体に組み込むことは有利となり得、その場合、セミコンダクタ・オン・インシュレータ構造体は、電気的に絶縁の層上に歪みのない層を備え、前記絶縁材料は、バルク基板(例えばガラス基板等)からなるか、又は、歪みのない層とその下にあるバルク基板との間に挿入される厚層(SiO又はSi製の層等)を構成する。かかるセミコンダクタ・オン・インシュレータ構造体は、バルク構造に比べられるとより優れた電気的及び/又は光学的特性を有し、それによって、歪みのない層に製造される構成部品の性能を向上させる。
【0011】
セミコンダクタ・オン・インシュレータ層は、一般に、ドナー・ウェハから受側ウェハ(receiver wafer)への層転写によって製造され、ドナー・ウェハは、バルク、又はバッファ層と歪みのないサブ・エピタキシャル層とを備えたウェハ等の複合体である場合が多い。
【0012】
前記層転写技術は、ドナー・ウェハが受側ウェハと接合されるウェハ接合ステップと、その後の、ドナー・ウェハの一部分をリフト・オフして、受側ウェハ上に前記転写された層だけを残すステップとを備える。
【0013】
ドナー・ウェハは、例えば、「研磨バック(polish−back)」及び/又は「エッチ・バック(etch−back)」として知られる技術を用いて、背面部分を(例えば、研磨、研削、化学機械的平坦化、化学的エッチング、選択的な化学的エッチング等により)化学機械的に攻撃(attack)することによって、或いは、切断されるべき区域(zone)における原子注入の後に、当業者には知られているSmart Cut(登録商標)と呼ばれる技術(例として、Jean−Pierre Colingeによる著作、題名「Silicon−on−Insulator Technology: Materials to VLSI、2nd Edition(シリコン・オン・インシュレータ技術:VLSI材料、第2版)」、Kluwer Academic Publishers、50〜51頁を参照されてもよい)を用いて、ドナー・ウェハを切断することによって、薄化(reduce)されることができる。
【0014】
エッチ・バック技術を使用して、バッファ層を備えた複合ドナー・ウェハから、歪みのないSiGe層を転写する技術が、国際特許出願公開WO01/99169号に記載されている。
【0015】
しかし、前記歪みのない層の転写技術は、冗長で(lengthy)、コストがかかり、且つ、転写後にはドナー・ウェハが無駄になる(loss)ことになる。
【0016】
国際公開WO02/27783号は、歪みのないSiGe層を転写するためのSmart Cut(登録商標)技術を記載している。この技術は、ドナー・ウェハのリフト・オフされた部分が、再利用可能なように回収(recover)されることを可能としている。
【0017】
しかし、前記層転写は、その層の厚さに完全な均質性を保証することができず、短い範囲での均質性を増大させるための追加の研磨ステップが実施されなければならない。しかし、前記研磨は、長い範囲での均質性(すなわち、ウェハの中心と縁部との間で測定される均質性)を低減させてしまう。
【0018】
国際公開WO02/15244号及びWO04/06327号は、バッファ層と歪みのないSiGe層との間に歪みのあるSi層を含んだドナー・ウェハから、歪みのないSiGe層を転写する方法を記載している。この方法は、歪みのないSiGe層と、歪みのあるSi層とを受側ウェハ上に転写し、次いで、歪みのないSiGe層ではなく、歪みのあるSiを選択的に除去することにある。この方法は、Smart Cut(登録商標)技術を用いて、短い、及び長い範囲において均質性を有する、SiGe製の歪みのない最終層を製造し、最後に研磨を実施する必要はない。
【0019】
しかし、歪みのあるSi層を転写する間、熱処理が施され、この熱処理が、ゲルマニウムの、歪みのあるSi層中への拡散をもたらし得、従って、最後の化学的エッチングに必要となる、歪みのあるSiと歪みのないSiGeとの選択性を低減させることになる。歪みのあるSi層が薄い場合、この選択性の損失によって、歪みのないSiGe層までもが攻撃され得ることになり、従って、このSiGe層の質、及びその層の短い範囲での厚さの均質性が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の主な目的は、優れた厚さの均質性を有する、完全に緩和された層を形成する方法を提案することによって、これらの欠点を全て克服することである。
【0021】
本発明の他の目的は、歪みのない結晶材料製の層を有し、且つ、優れた厚さの均質性を有する、セミコンダクタ・オン・インシュレータ層を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、電子工学、光学又は光電子工学に応用するための、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法を提案することによって、これらの目的を達成するものであり、この方法は、引張力下で(又は圧縮して)弾性的に歪みのある第1の結晶層と、圧縮して(又は引張力下で)弾性的に歪みのある第2の結晶層とを備え、第2の層が第1の層に隣接している構造体から実施されることと、それらの2つの層間での拡散ステップを備え、それにより2つの層のそれぞれの組成物間の差が同一となるまで次第に低減し、その後、それらの2つの層が、全体として(in aggregate)均質な組成物を有する、結晶材料製のただ単一の最終層を形成することと、2つの層それぞれの組成物と、厚さと、歪みの度合いとが最初に選択され、それにより、拡散後に、次いで最終層を構成する材料が、もはや全体として弾性的な歪みを示さないこととを特徴とする。
【0023】
歪みのない層を形成するこの方法の、その他の特徴は、以下の通りである。
・第1及び第2の歪みのある層の格子定数は、最終層を構成する材料の公称格子定数にそれぞれ等しい。
・第2の層は、第1の層上にエピタキシャル成長された層である。
・第1及び第2の層は、それらのそれぞれの組成物中に、少なくとも1つの要素を共通して有する。
・第1の層はSi1−xGeから形成され、第2の層はSi1−yGeから形成され、且つ、最終層はSi1−zGeから形成され、とは、0(含まれる)から1(含まれる)の範囲にそれぞれあり、とは実質的に異なり、且つ、
z=(xth+yth)/(th+th)であり、式中、
thは第1の層の厚さであり、
thは第2の層の厚さであり、
第1及び第2の歪みのある層のそれぞれの格子定数は、Si1−zGeの公称格子定数にそれぞれ等しい。
・前記構造体は、2つの結晶層の下に配置された非晶質材料製の層を更に備える。
・非晶質材料製の層は、電気的に絶縁である。
・非晶質材料製の層は、以下の材料、すなわちSiO、Si、Siの少なくとも1つを備える。
・拡散は、熱処理によって実施される。
【0024】
第2の態様では、本発明は、電子工学、光学、又は光電子工学に応用するための、弾性的に歪みのない結晶層を備えた構造体を製造する方法を提供し、以下のステップ、すなわち、
・引張力下で(又は圧縮して)弾性的に歪みのある第1の結晶層上に、第2の結晶層を結晶成長させ、従って、この第2の層は、第1の層によって、圧縮して(又は引張力下で)弾性的に歪みを生じ、且つ、第2の層の厚さは、基準厚さ程度のものとなるように選択され、この基準厚さは、第2の層を構成する要素のアセンブリと、第1の層を構成する要素のアセンブリとの厚さに対応し、これらの層は、一体に組み合わされた後は、全体として歪みのない均質な層を形成することができるステップと、
・それらの2つの層間で要素を拡散させ、それにより2つの層それぞれの組成物間の差が同一となるまで次第に低減され、その後それらの2つの層が、全体として均質で、弾性的に歪みのない組成物を有する結晶材料製のただ単一の最終層を形成し、それによって前記構造体の少なくとも一部分を製造するステップとを備えることを特徴とする。
【0025】
歪みのない層を備えた構造体を製造するこの方法の他の特徴は、以下の通りである。
・第1の層の格子定数は、最終層を構成する材料の公称格子定数にほぼ等しくなるように選択される。
・結晶成長はまた、第2の層の厚さが、その厚さを超えると弾性的な歪みが実質的に緩和することになる臨界厚さ未満、又はそれに等しくなるように実施される。
・更に、結晶成長ステップの前に、第1の層が、受側基板と接合され、従って、最終的に形成される前記構造体は、前記最終層と、更には前記受側基板とを備える。
・接合は、接合されるべき面の一方及び/又は他方の上に形成された接合層によって実施される。
・接合層は、以下の2つの材料、すなわちSiO、Siの少なくとも1つを備える。
・接合は分子的に行われ(molecular)、次いで適当な熱処理によって強化される。
・第1の層は、接合時にウェハ内に備えられ、この方法は、接合と結晶成長との両ステップの間に、ウェハの、第1の層を含まない部分をリフト・オフすることを更に備える。
・ウェハの、第1の層を含まない部分は、以下の技術、すなわち研削、化学機械的平坦化(CMP)、選択的CMP、化学的エッチング、選択的な化学的エッチングの少なくとも1つを用いてリフト・オフされる。
・この方法は、接合の前に、ウェハ中に原子種を注入して、その中に第1の層の厚さにほぼ等しい深さで弱化域を形成し、且つ、この弱化域を、弱化接合部を破断させることが可能な応力にさらし、それによって前記第1の層をウェハの残りの部分から切り離すことによってウェハ部分がリフト・オフされることを更に備える。
・更に、ウェハの一部分のリフト・オフと、結晶成長との間に、第2の層の結晶成長のために第1の層の表面を整える(prepare)ための、第1の層の表面の仕上げ加工(finishing)ステップが実施される。
・第1の層はSi1−xGeから形成され、第2の層はSi1−yGeから形成され、且つ、最終層はSi1−zGeから形成され、とは、0(含まれる)から1(含まれる)の範囲にそれぞれあり、とは実質的に異なり、且つ、
z=(xth+yth)/(th+th)であり、式中、
thは第1の層の厚さであり、
thは第2の層の厚さであり、
第1の歪みのある層の格子定数は、Si1−zGeの公称格子定数にほぼ等しい。
・第1の層は、歪みのあるSiから形成され、且つ、歪みシリコン・オン・インシュレータ基板(sSOI)に備えられる。
【0026】
その他の特性、目的、及び利点が、以下の図によって示される、本発明の以下の非限定的な説明において説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の方法は、弾性的に歪みのある2つの結晶層間での拡散ステップを備え、それにより弾性的に歪みのない均質な組成物を有する単一の最終結晶層を形成する。
【0028】
図1Aでは、前記歪みのない層は、引張力1(図では、引張力が外向き矢印によって概略的に示されている)下で弾性的に歪みのある第1の結晶層と、圧縮2(図では、圧縮が内向き矢印によって概略的に示されている)の状態で弾性的に歪みのある第2の結晶層とを備え、第2の層2が第1の層1に隣接している構造体30から形成される。
【0029】
本発明の代替構成では、上記とは反対に、第1の層1が圧縮し、且つ、第2の層2が引張力下にあってもよく、次いで実施される拡散ステップはどんな形にも改変する必要はない。
【0030】
構造体30は、2つの層1と2とのみによって形成されることも、又は、2つの層1と2との一方及び/又は他方の側に支持部(補強材又は成長基板等)を備えることもできる。
【0031】
第1の構成では、層2は、層1上にエピタキシャル成長された層の特徴を有し、その場合、この層1が成長基板となる。或いは、層1が、層2上にエピタキシャル成長された層の特徴を有することもでき、その場合は、前記第2の層が成長基板として働く。
【0032】
エピタキシャル層の結晶成長は、既知の、LPD、CVD、及びMBE(それぞれ、低パワー堆積(low power deposition)、化学気相成長、及び分子線エピタキシである)技術を用いて得られたものでよい。
【0033】
所望の弾性的な歪みを確保しながら、エピタキシャル成長層に塑性型欠陥が発生するのを回避するには、エピタキシャル成長層の厚さを、2つの層1と2とを構成するそれぞれの材料の公称格子定数の差に応じて基本的に決定される臨界厚さ未満とすることが望ましい。この臨界厚さは、従来の知識及び刊行物から決定されることができる。一例として、Friedrich Schafflerによる文献「High Mobility Si and Ge Structures(高移動度Si及びGe構造体)」(「Semiconductor Science Technology」12(1997年)1515〜1549)を参照して、Si1−xGe層1と、Si1−yGe層2(とは異なる)との臨界厚さを決定することができる。
【0034】
第2の構成では、層1と2とは、既知の接合技術を用いて一体に接合されている(更なる詳細については、例えば、Q.−Y.Tong及びU.Goseleによる「Semiconductor Wafer Bonding Science and Technology(半導体ウェハ接合の科学及び技術)」、Wiley Interscience publication、Johnson Wiley & Sons、Incを参照されたい)。従って、例えば、親水性表面同士、又は親水性とされた表面同士の分子結合が選択されてもよく、又は、接合されるべき2つの表面の一方及び/又は他方のプラズマ処理後に接合させ、その後、従来のアニール又はRTA処理(高速熱アニール)が行われてもよい。
【0035】
2つの層1と2とが互いに接合されている場合、本発明に従って次に実施される、2つの層1と2との間での拡散を妨げる恐れのない接合技術を選択することが重要である。特に、接合されるべき表面を、既知の対応で効果的に平滑化し、且つ清浄化するように整え、従って、それらの表面が、拡散を乱し得るどんな汚染物質又は分離粒子も有しないように注意が払われる。接合されるべき表面を清浄化するように適応された化学的処理、例えば、弱い化学的エッチング、RCA処理、オゾン浴、水洗等が実施されてもよい。また、研磨、アブレージョン(abrasion)、CMP(化学機械的平坦化)、又は原子種衝撃等の、機械的若しくは化学機械的処理が実施されてもよい。更に、接合は(例えばSiO若しくはSi型の)接合層なしに、又は、2つの層1と2との間での拡散を実質的に阻止若しくは遅らせることができないほど薄い接合層を用いて実施されることになるであろう。
【0036】
2つの層1と2とのそれぞれの組成物と、厚さと、歪みの度合いとは、拡散実施後に次いで形成されるべき歪みのない最終層を構成する材料が、全体として、もはや弾性的に歪みがなくなるように選択される。
【0037】
特に、歪みのある層1と2との格子定数は、有利には、形成されるべき最終層を構成する材料の公称格子定数にそれぞれ等しい。
【0038】
特に、歪みのある層1と2とのそれぞれの組成物と厚さとは、有利には、2つの層1と2との拡散による、最終層への均質化が実現された後に、この最終層が所望の組成物を有するように選択される。
【0039】
図1Bを参照すると、この方法は、2つの層1と2との間での拡散ステップを備え、それにより、それらの層のそれぞれの組成物間の差は次第に低減される。
【0040】
従って、この現象は、層1と2との間での、それらの材料の構成要素間の置換(displacement)を伴い、それにより、それらの層の組成物における差が次第に低減することになる(層1と2との間のこの置換が、図の矢印によって示されている)。
【0041】
拡散は、有利には、所望の結果、すなわち弾性的に歪みのない最終層を得るために、1つ(又は複数)の期間の間で、所定の1つ(又は複数)の温度にそれぞれ適応された熱処理によって実施される。一例として、熱処理は、900℃から1200℃の範囲の温度で、30分(min)から数時間(h)の間実施されてもよい。
【0042】
図1Cは、拡散を実施した後に得られた結果を示し、2つの層1と2とのそれぞれの組成物は、互いにほぼ同一となっており、ここでは、2つの層1と2とは、均質で弾性的に歪みのない組成物を有する結晶材料から形成された、ただ単一の最終層3を形成している。
【0043】
本発明の特定の構成では、層1と2とを構成する材料は、それらのそれぞれの組成物の少なくとも1つの要素を、最初から共通して有し得る。従って、2つの層1又は2の一方の組成物が、この要素を他方の層よりも多く備えるような場合、その要素は、その第1の層から他方の層へとより多く拡散することになり、その結果このアセンブリの組成物は均質となる。
【0044】
一例として、第1の層1はSi1−xGeから形成され、第2の層はSi1−yGeから形成されると考える。本発明によれば、それらの層の厚さと、歪みの度合い(すなわち、それらの組成物に依存するそれらのそれぞれの格子定数)とは、歪みのないSi1−zGe最終層3を得るように選択され(とはそれぞれ、0(含まれる)から1(含まれる)の範囲にそれぞれあり、とは実質的に異なる)、その場合、、th及びthは、
z=(xth+yth)/(th+th) (1)
となるように選択され、式中、
・thは第1の層1の厚さであり、
・thは第2の層2の厚さである。
【0045】
従って、第1及び第2の歪みのある層1と2とのそれぞれの格子定数は、Si1−zGeの公称格子定数にそれぞれ等しい。
【0046】
thとthとは、それぞれ、層1と2との臨界厚さ未満となるように注意が払われるであろうことは明らかである。
【0047】
図2Aは、構造体30が最初はsSOI(歪みシリコン・オン・インシュレータ)構造体であり、従って、歪みのあるSi製の第1の層1と、第1の構成にあるバルク絶縁基板(図示されず)とを備えている、又は、歪みのあるSi製の第1の層1と、バルク基板20と、第2の構成にある挿入された絶縁層4(図示されず)とを備えている場合の、本発明の特定の実装形態を示す。
【0048】
この種のsSOI基板30は、市販されている。
【0049】
この例では、Si製の第1の層1の歪みの度合いは、所定の歪み度を有するsSOI基板30を選択することによって固定される。形成されるべき最終層3の格子定数は、それによって選択される。
【0050】
第2のステップにおいて、エピタキシャルされるべき第2の層2の組成物と、第1の層1と第2の層2とのそれぞれの厚さ(この場合、第1の層1の厚さはオプションで変更され得る)とは、拡散による2つの層1〜2の均質化後に、第1の層1の公称格子定数に等しい公称格子定数を有する最終層3を形成するように選択される。
【0051】
一例として、第2の層2の組成物がSi1−yGeとなるように選択される場合、本発明によれば、第1の層1の厚さを基準として(上記の関係(1)参照)その第2の層の厚さを選択することにより、Si1−yGe製の第2の層をsSOI基板30上へ単にエピタキシャル成長させ、その後、本発明による熱処理による簡単な拡散ステップが行われると、Si1−zGe製の歪みのない最終層3が得られることになる。
【0052】
また、Si1−yGe組成物の最初の選択は、臨界厚さに関する制限によって誘導され得る。実際に、Geの濃度が所定の限界濃度よりも高く選択される場合、歪みのないSi1−zGe層3を最終的に形成するように選択されるべき厚さthは、臨界厚さよりも大きくなってしまう。それにより得られる第2の層2は、塑性歪みが緩和している(転位、積層欠陥及び/又は他の塑性欠陥を有する)ことになり、従って、最終層3は、結晶性の質が低いものとなる。
【0053】
しかし、D.C.Houghtonによる「Strain Relaxation Kinetics in Si1−zGe/Si heterostructures(Si1−zGe/Siヘテロ構造における歪み緩和動力学)」(J.Appl.Phys.70(4)、1991年8月15日)に記載されているもののような、エピタキシャル成長のためのある条件によって、理論上の臨界厚さを超えた結晶成長層を製造することができ、これについては、臨界厚さを超えて現れる物理的な現象、及びかかる現象の出現に対する堆積技術の影響について記載している、J.W.Matthews等による「Defects in Epitaxial Multilayers(エピタキシャル多層における欠陥)」(Journal of Crystal Growth 27(1974年)118〜125)を参照されたい。
【0054】
次いで、このようにして形成された構造体30から、本発明による拡散が実施される。一例として、約1050℃の温度を約2時間選択することが可能である。
【0055】
図3A〜3Eにおいて、本発明者等は、本発明による、他の特定の方法におけるいくつかのステップを示し、この方法は、以下のステップ、すなわち、
(1)ドナー表面10上に、結晶材料製の、弾性的に歪みのある第1の薄層1をエピタキシャル成長させるステップと、
(2)歪みのある層1において、受側基板20をドナー基板10と接合するステップと、
(3)ドナー表面10をリフト・オフするステップと、
(4)弾性的に歪みのある第2の層2を結晶成長させるステップと、
(5)本発明による拡散ステップとを備える。
【0056】
図3Aは、ドナー基板10と、Si1−xGe製の第1の歪みのある層1(は1(含まれる)から0(含まれる)の範囲にある)とによって構成されたウェハを示す。
【0057】
ドナー基板10の一構成では、この基板は、支持基板(図3Aに図示されず)上に(上記で定義されたような)バッファ層を備えた擬似基板である。従って、SiGe製のバッファ層は、例えば、バルク単結晶Si製の支持基板からエピタキシによって形成されることができ、且つ、そのGe濃度が、そのバッファ層の厚さ全体にわたって増大しており、従って、支持基板のSiの公称格子定数と、SiGeの公称格子定数とを次第に改変することになる。このバッファ層は、Si1−wGe製の緩和上部層(とは異なる)を更に備えるように構成され、この上部層は、所定の格子定数を有し、且つ、その下にある、歪みのある第1の層1に、その上部層の格子定数を課す(impose)ことが可能なほど十分な厚さを有し、その層1は、この上部層の結晶構造に実質的に影響を及ぼすことがない。
【0058】
ドナー基板10に選択される構成に関わらず、前記基板10は、歪みのある層1に、弾性応力と、低密度の塑性欠陥とを誘起する結晶構造を有する。
【0059】
Geは、Siよりも4.2%より大きい格子定数を有するので、前記歪みのある層1を構成するように選択される材料は、従って、よりも小さい場合は引張力下で、また、よりも少ない場合は圧縮して歪みを生じる。
【0060】
第1の歪みのある層1は、有利には、LPD、CVD、及びMBEの既知の技術を用いたエピタキシ等の結晶成長によって、ドナー基板10上に形成される。
【0061】
層1がほぼ一定の厚さを有し、従って、層1がほぼ一定の固有特性を有し、且つ/又は後の受側基板20との接合(図3Bに示される)を容易にするように、層1を堆積させることが好ましい。
【0062】
歪みのある層1の緩和、又は内部の塑性型欠陥の出現を防止するには、この層1の厚さを、弾性的な歪みが得られる臨界厚さ未満に維持することが好ましい。
【0063】
Si1−xGe層に関する臨界厚さの値については、特に、Friedrich Schafflerによる文献、題名「High Mobility Si and Ge Structures(高移動度Si及びGe構造体)」(「Semiconductor Science Technology」12(1997年)1515〜1549)を参照されたい。
【0064】
その他の材料については、当業者には、ドナー基板10に形成される歪みのある層1に選択される材料に、弾性的な歪みが得られる臨界厚さについて従来技術を参照されたい。
【0065】
従って、緩和Si上にエピタキシャル成長されたSi1−xGeは0.10〜0.30の範囲内)層は、典型的には、約200Å(オングストローム)〜2000Åの範囲、好ましくは、特に成長パラメータを適応させることにより、200Å〜500Åの範囲の厚さを有する。
【0066】
従って、形成後には、歪みのある層1は、その成長基板10の格子定数にほぼ近い格子定数を有し、且つ、本発明に従って形成されるべき歪みのない層の格子定数にほぼ等しい格子定数を有する。
【0067】
図3Bは、ドナー基板10の、受側基板20との接合を示す。
【0068】
接合前に、接合されるべき2つの表面の少なくとも一方上に接合層を形成する、オプションのステップが実施されてもよく、前記接合層は、周囲温度又はそれよりも高い温度での結合特性を有する。
【0069】
従って、特に、接合されるべき他方の表面が、SiOから形成されているか、又はSiを含む場合には、例えば、SiO又はSi製の層を形成すると、接合の質を改善することができる。
【0070】
次いで、有利には、SiOの原子種を堆積させることによって、又は、接合されるべき表面がSiを含む場合には、その表面を熱酸化することによって、SiO接合層が製造される。
【0071】
有利には、接合前に、接合されるべき表面を整えるステップが、それらの表面をできるだけ平滑に、且つできるだけ清浄化するように実施される。
【0072】
接合作業自体は、接合されるべき表面同士を接触させることによって実施される。こうした接合は、好ましくは分子的な性質のものであり、接合されるべき表面の親水性を利用している。また、これらの接合表面はプラズマ処理されてもよい。
【0073】
接合されたアセンブリは、例えば、共有結合又は他の接合等の接合の性質を改変することによって、その接合を強化するようにアニールされてもよい。
【0074】
従って、特に、接合層が接合前に形成されていた場合、アニールによって接合を強めることができる。
【0075】
接合技術に関する更なる詳細が、Q.Y.Tong、U.Gosele、Wileyによる文献、題名「Semiconductor Wafer Bonding(半導体ウェハの接合)」(Science and Technology、Interscience Technology)から得られる。
【0076】
図3Cを参照すると、アセンブリが接合された後に、ドナー基板10が除去されている。
【0077】
従って、第1の層1における歪みは、結合力のため基本的に保持されている(更なる詳細については、特に、参照により本明細書に組み込まれる国際公開WO04/006326号を参照されたい)。
【0078】
一実装形態では、材料は、ドナー基板10内に存在する弱化域において、エネルギーを供給することにより、ドナー基板10の少なくとも一部分を切り離すことによって除去される。
【0079】
この弱化域(図示されず)は、弱化接合部をその内部に有する、接合表面にほぼ平行な区域であり、前記弱化接合部は、熱的及び/又は機械的エネルギー等、適当な量のエネルギーが供給されると、破断されることが可能である。
【0080】
この弱化域は、ドナー基板10中に原子種を注入することによって形成されておくことができる。
【0081】
注入される原子種は、水素、ヘリウム、これら2種の混合物、又はその他の、好ましくは軽い原子種でよい。
【0082】
前記注入は、接合前の、歪みのある層1の形成前又は後に実施され得る。
【0083】
弱化域における接合は、主に、注入される原子種のドーズ量を選択することによって弱められる。水素注入の場合、ドーズ量は、一般に1016cm−2〜1017cm−2の範囲、より正確には、約2×1016cm−2〜約7×1016cm−2の範囲である。
【0084】
前記弱化域における分離は、次いで、通常は機械的及び/又は熱的エネルギーを供給することによって実施される。
【0085】
このSmart Cut(登録商標)法に関する更なる詳細については、J.−P.Collingeによる文献、題名「Silicon−on−Insulator Technology: Materials to VLSI、2nd Edition(シリコン・オン・インシュレータ技術:VLSI材料、第2版)」「Kluwer Academic Publishers」より発行、50及び51頁を参照されたい。
【0086】
弱化域における分離の後、ドナー基板10の、オプションで残った部分が除去され、従って、受側基板20上には歪みのある層1だけが残る。
【0087】
次いで、研磨、アブレージョン、CMP、RTA、犠牲酸化、化学的エッチング等の仕上げ技術が、単独で、又は組み合わせて使用されて実施されてもよい(接合界面の強化、粗さの解消、欠陥の修復、等)。
【0088】
有利には、仕上げの材料除去には、少なくとも端部において、選択的な化学的エッチングを、機械的手段と組み合わせて、又はその他の形で使用する。
【0089】
或いは、ドナー基板10をリフト・オフするステップでは、分離せずに、且つ、弱化域を用いずに材料を除去する他の技術が実施されてもよい。
【0090】
この技術は、化学的エッチング及び/又は化学機械的エッチングを実施することからなる。
【0091】
一例として、「エッチ・バック」型の方法を用いて、ドナー基板10のリフト・オフされるべき材料、又は複数の材料を選択的にエッチングすることが可能である。
【0092】
この技術は、ドナー基板10を「背面から(from the back)」、すなわち、ドナー基板10の自由面からエッチングすることからなる。
【0093】
除去されるべき材料に適応されたエッチング溶液を用いたウェット・エッチングが実施されてもよい。
【0094】
また、材料を除去するには、プラズマ・エッチング等のドライ・エッチングが使用されても、又はスパッタリングによっても可能である。
【0095】
こうしたエッチング又は複数のエッチングは、研削、研磨、機械的エッチング、又は原子種スパッタリング等の、ドナー基板10への機械的な攻撃の前又は後に可能である。
【0096】
こうしたエッチング又は複数のエッチングには、研磨等の機械的な攻撃が、オプションでCMP法における機械的研磨剤の作用と組み合わされて伴われてもよい。
【0097】
ドナー基板10から材料を除去するための前記技術は全て、本明細書では例によって提案されるものであるが、どんな形にも限定をなすものではなく、本発明は、本発明の方法に従ってドナー基板10を除去することができるあらゆるタイプの技術に及ぶものである。
【0098】
図3Dを参照すると、本発明による、Si1−yGe製の第2の歪みのある層2のエピタキシが、上述されたように実施されている。
【0099】
第1の層1が引張力下で歪みがある場合(すなわち、よりも小さい場合)、第2の層2は、圧縮する(すなわち、よりも大きくなる)ように選択される。
【0100】
従って、第1の層1が圧縮している場合(すなわち、よりも大きい場合)、第2の層2は、引張力下にある(すなわち、よりも小さくなる)ように選択される。
【0101】
組成物と、厚さと、格子定数との選択は、上記で説明された通りに決定される。
【0102】
或いは、接合の前に、第2の層2が第1の層1上にエピタキシャル成長され、次いで層2の表面において接合が実施されてもよい。この工程は、(図3Dとは異なり)受側基板20、層2、次いで層1を順次有する構造体30を製造する。
【0103】
図3Eを参照すると、本発明による拡散熱処理が実施されて、Si1−zGe製の最終層3を有する構造体30を形成している。前記構造体は、受側基板20が電気絶縁体である、又は十分に厚い接合層が、このSi1−zGe層3と受側基板20との間に設けられている場合、SiGeOI構造体となる。
【0104】
最終構造体30が得られた後に、仕上げ処理、例えばアニールが実施され得る。
【0105】
次いで、電子、光学、及び光電子構成部品が、最終層3中に製造され得る。
【0106】
また、最終構造体30上に、SiGe若しくはSiGeC製の層のエピタキシャル成長、又はSiC若しくはSi製の歪みのある層のエピタキシ等の、1つ又は複数のどんな種類のエピタキシャル成長ステップも実施されることができ(図1C、2B又は3E参照)、又はSiGe若しくはSiGeC層と、SiC若しくはSi製の歪みのある層とが交番する、連続したエピタキシによって多層化構造体を形成することもできる。
【0107】
また、本発明は、Si若しくはSiGe製の歪みのある層1と2とのみに限られるものではなく、1II−V若しくはII−VI型合金、又はその他の結晶材料等、その他の種類にまで及ぶ。
【0108】
本明細書で論じられた結晶層には、他の組成物、例えばドープ要素、又は炭素が、対象とする(under consideration)層中の炭素濃度が50%、若しくはそれよりも実質的に低く、若しくは、特に5%以下となるように加えられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図1B】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図1C】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図2A】本発明による拡散前及び後のセミコンダクタ・オン・インシュレータ構造体をそれぞれ表す。
【図2B】本発明による拡散前及び後のセミコンダクタ・オン・インシュレータ構造体をそれぞれ表す。
【図3A】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図3B】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図3C】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図3D】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【図3E】本発明による、歪みのない層を備えた構造体を製造する方法における、異なるステップを表す。
【符号の説明】
【0110】
1 第1の層
2 第2の層
3 最終層
4 絶縁層
10 ドナー基板
20 受側基板
30 構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子工学、光学、又は光電子工学に応用するための、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法であって、
引張力下で(又は圧縮して)弾性的に歪みのある第1の結晶層と、圧縮して(又は引張力下で)弾性的に歪みのある第2の結晶層とを備え、前記第2の層が前記第1の層に隣接している構造体から実施されることと、
前記2つの層間での拡散ステップを備え、それにより前記2つの層のそれぞれの組成物間の差がほぼ同じになるまで次第に低減し、その後、前記2つの層が、全体として均質な組成物を有する、結晶材料製のただ単一の最終層を形成することと、
前記2つの層の前記それぞれの組成物と、厚さと、歪みの度合いとが最初に選択され、それにより、拡散後に、次いで前記最終層を構成する前記材料が、もはや全体として弾性的な歪みを示さないこととを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の歪みのある層の格子定数が、前記最終層を構成する前記材料の公称格子定数にそれぞれ等しい、請求項1に記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項3】
前記第2の層が、前記第1の層上にエピタキシャル成長された層である、請求項1及び2のいずれかに記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の層が、それらのそれぞれの組成物中に、少なくとも1つの要素を共通して有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項5】
前記第1の層がSi1−xGeから形成され、前記第2の層がSi1−yGeから形成され、且つ、前記最終層がSi1−zGeから形成され、とは、0(含まれる)から1(含まれる)の範囲にそれぞれあり、とは実質的に異なり、且つ、
z=(xth+yth)/(th+th)であり、式中、
thは前記第1の層の前記厚さであり、
thは前記第2の層の前記厚さであり、
前記第1及び第2の歪みのある層のそれぞれの前記格子定数が、Si1−zGeの前記公称格子定数にそれぞれ等しい、請求項4に記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項6】
前記構造体が、前記2つの結晶層の下に配置された非晶質材料製の層を更に備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項7】
前記非晶質材料製の層が、電気的に絶縁である、請求項6に記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項8】
前記非晶質材料製の層が、以下の材料、すなわちSiO、Si、Siの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項9】
前記拡散が、熱処理によって実施される、請求項1乃至8のいずれかに記載の、弾性的に歪みのない結晶材料製の層を形成する方法。
【請求項10】
電子工学、光学、又は光電子工学に応用するための、弾性的に歪みのない結晶層を備えた構造体を製造する方法であって、
引張力下で(又は圧縮して)弾性的に歪みのある第1の結晶層上に、第2の結晶層を結晶成長させ、従って、前記第2の層が、前記第1の層によって、圧縮して(又は引張力下で)弾性的に歪みを生じ、且つ、前記第2の層の厚さが、基準厚さ程度のものとなるように選択され、前記基準厚さが、前記第2の層を構成する要素のアセンブリと、前記第1の層を構成する要素のアセンブリとの厚さに対応し、一体に組み合わされた後は、全体として歪みのない均質な層を形成することができるステップと、
前記2つの層間で要素を拡散させ、それにより前記2つの層のそれぞれの組成物間の差がほぼ同じになるまで次第に低減され、その後前記2つの層が、全体として均質で、弾性的に歪みのない組成物を有する結晶材料製のただ単一の最終層を形成し、それによって前記構造体の少なくとも一部分を製造するステップとを備えることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記第1の層の格子定数が、前記最終層を構成する前記材料の公称格子定数にほぼ等しくなるように選択される、請求項10に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項12】
結晶成長がまた、前記第2の層の前記厚さが、その厚さを超えると弾性的な歪みが実質的に緩和することになる臨界厚さ未満、又はそれに等しくなるように実施される、請求項10及び11のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項13】
前記結晶成長ステップの前に、前記第1の層を、受側基板と接合させることを更に備え、従って、最終的に形成される前記構造体が、前記最終層と、更には前記受側基板とを備える、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項14】
接合が、接合されるべき面の一方及び/又は他方の上に形成された接合層によって実施される、請求項15に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項15】
前記接合層が、以下の2つの材料、すなわちSiO、Siの少なくとも1つを備える、請求項14に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項16】
接合が分子的に行われ、次いで適当な熱処理によって強化される、請求項14及び15のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項17】
前記第1の層が、接合時にウェハ内に備えられ、前記方法が、前記接合と結晶成長との両ステップの間に、前記ウェハの、前記第1の層を含まない部分をリフト・オフすることを更に備える、請求項14乃至16のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項18】
前記ウェハの、前記第1の層を含まない前記部分が、以下の技術、すなわち研削、CMP、選択的CMP、化学的エッチング、選択的な化学的エッチングの少なくとも1つを用いてリフト・オフされる、請求項17に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項19】
接合の前に、前記ウェハ中に原子種を注入して、その中に前記第1の層の厚さにほぼ等しい深さで弱化域を形成し、且つ、前記弱化域を、弱化接合部を破断させることが可能な応力にさらし、それによって前記第1の層を前記ウェハの残りの部分から切り離すことによって、一部分がリフト・オフされることを更に備える、請求項17に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項20】
前記ウェハの一部分のリフト・オフと、結晶成長との間に、前記第2の層の結晶成長のために前記第1の層の表面を整えるための、その表面の仕上げ加工ステップを更に備える、請求項17乃至19のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項21】
前記第1の層がSi1−xGeから形成され、前記第2の層がSi1−yGeから形成され、且つ、前記最終層がSi1−zGeから形成され、とは、0(含まれる)から1(含まれる)の範囲にそれぞれあり、とは実質的に異なり、且つ、
z=(xth+yth)/(th+th)であり、式中、
thは前記第1の層の前記厚さであり、
thは前記第2の層の前記厚さであり、
前記第1の歪みのある層の前記格子定数が、Si1−zGeの前記公称格子定数にほぼ等しい、請求項10乃至20のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。
【請求項22】
前記第1の層が、歪みのあるSiから形成され、且つ、歪みシリコン・オン・インシュレータ基板(sSOI)に備えられる、請求項10乃至21のいずれか一項に記載の、構造体を製造する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【公開番号】特開2007−197818(P2007−197818A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−294710(P2006−294710)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(503368410)エス.オー.アイ.テック、シリコン、オン、インシュレター、テクノロジーズ (49)
【氏名又は名称原語表記】S.O.I.TEC SILICON ON INSULATOR TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】