膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器
【課題】 分断されたパターン形成領域にキャップ層を有した膜パターンを形成する際に、その形成工程を簡略化することにより、膜パターンの生産性を向上した、膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】 基板P上に、第1のパターン形成領域52,53と、交差部56で分断される第2のパターン形成領域55とを備えるパターン形成領域を区画するバンク51を形成する。そして、第1のパターン形成領域52,53に第1の膜パターンを、第2のパターン形成領域に第2の膜パターンを形成した後、基板の全面に撥液処理を施す。その後、第2の膜パターンの各所定の位置の撥液性を選択的に保持させたまま、基板上の撥液性を低下させる。第1の膜パターン、及び第2の膜パターン上にキャップ層を積層し、第2の膜パターンの各所定の位置における撥液性を除去し、各所定の位置間に導電膜により接続する。
【解決手段】 基板P上に、第1のパターン形成領域52,53と、交差部56で分断される第2のパターン形成領域55とを備えるパターン形成領域を区画するバンク51を形成する。そして、第1のパターン形成領域52,53に第1の膜パターンを、第2のパターン形成領域に第2の膜パターンを形成した後、基板の全面に撥液処理を施す。その後、第2の膜パターンの各所定の位置の撥液性を選択的に保持させたまま、基板上の撥液性を低下させる。第1の膜パターン、及び第2の膜パターン上にキャップ層を積層し、第2の膜パターンの各所定の位置における撥液性を除去し、各所定の位置間に導電膜により接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
導体からなる薄膜(膜パターン)が配置された回路配線と、回路配線を覆う絶縁膜などの薄膜と、半導体からなる薄膜とが基板上に積層されてなる半導体装置が、従来より知られている。このような半導体装置における薄膜の効率的な形成方法として、薄膜材料などを分散質として含む機能液の液滴を液滴吐出ヘッドから吐出し、着弾した機能液を乾燥させて分散媒を除去し、薄膜を形成する、液滴吐出法(インクジェット法)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
液滴吐出法で膜パターンを形成する際には、パターン形成領域を区画するバンクを形成し、このバンクにより区画され凹部状のパターン形成領域に向けて機能液を吐出する。そして、前記パターン形成領域に吐出された機能液を乾燥させることにより、膜パターンを形成する。
【0004】
近年、上記の液滴吐出法を用いることで、アクティブマトリクス基板が備える複数の薄膜トランジスタに導通するソース配線(膜パターン)、及びゲート配線(膜パターン)が形成されている。
アクティブマトリクス基板は、基板上に前記各薄膜トランジスタに導通するソース配線とゲート配線とが、互いが格子状に配置され、通常ソース配線とゲート配線とが層間絶縁膜等を介して異なる面上に形成された構造になっている。
そして、前記ソース配線、及びゲート配線は、金属材料から形成されていることから、金属イオンが拡散することで、電流のリークが発生しトランジスタが良好に動作しなくなってしまうおそれがある。そこで、前記ソース配線、及びゲート配線を構成する金属材料に対し導電性の低いNi等から構成されるキャップ層を各配線上に積層することで、上述した金属イオンの拡散を防止した技術もある。
一方、層間絶縁膜を介して積層構造によって形成されるゲート配線、及びソース配線を有するアクティブマトリクス基板に対し、ゲート配線、及びソース配線を同一面上に同じ製造工程によって形成することにより、配線の形成工程の簡略化を図ったアクティブマトリクス基板も考えられる。このアクティブマトリクス基板は、ゲート配線とソース配線とが交差する交差部において、例えばソース配線がゲート配線により分断された状態に形成されている。また、前記アクティブマトリクス基板には、分断されたソース配線間を接続するための導電部(導電膜)が形成されている。
さらに、上述した金属イオンの拡散を防止するキャップ層を備え、かつ分断されたソース配線(膜パターン)構造を有したアクティブマトリクス基板が考えられる。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バンクに区画された配線形成領域(パターン形成領域)に形成されている、ゲート配線、及びこのゲート配線により分断されたソース配線上に、液滴吐出法を用いてキャップ層を配置すると、キャップ層となる材料が前記配線形成領域を濡れ拡がることで、キャップ層がゲート配線、及びソース配線上の全面を覆った状態となってしまう。ここで、上述したように、キャップ層の導電性は、ゲート配線、及びソース配線を構成する金属材料と比べて低くなっている。よって、分断されたソース配線間を良好に導通させるために、このソース配線を覆い導電性を低下させるキャップ層を除去し、露出させたソース配線に直接導電部を形成することで、分断されたソース配線間を接続する必要がある。
しかし、このように分断されたソース配線間を接続する導電部を形成する際に、上述したようにキャップ層を除去する工程が必要になると、ソース配線の形成工程の簡略化が難しくなり、生産性の向上を妨げる一因となってしまう。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、分断されたパターン形成領域にキャップ層を有した膜パターンを形成する際に、その形成工程を簡略化することにより、膜パターンの生産性を向上した、膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の膜パターンの形成方法は、基板上に設けられた、バンクにより区画されたパターン形成領域に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法において、前記基板上に、第1のパターン形成領域と、該第1のパターン形成領域に交差し、該交差部において分断された第2のパターン形成領域とを備えるパターン形成領域を区画するバンクを形成する工程と、前記第1のパターン形成領域に機能液を配置することで第1の膜パターンとし、前記第2のパターン形成領域に機能液を配置することで第2の膜パターンとする工程と、前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に撥液処理を施す工程と、その後、分断した状態に形成された前記第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置の撥液性を選択的に保持させたまま、前記基板上の撥液性を低下させる工程と、撥液性を低下させた後、前記第1の膜パターン、及び前記第2の膜パターン上にキャップ層を積層する工程と、前記キャップ層を積層した後、分断した状態に形成された第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置における撥液性を除去する工程と、前記各所定の位置間に導電膜を形成し、分断した状態に形成された第2の膜パターンを電気的に接続させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の膜パターンの形成方法は、分断された状態に形成されている第2の膜パターンを接続するための導電膜を形成するそれぞれの位置を所定の位置とした場合、第2の膜パターンのそれぞれ所定の位置に撥液性が選択的に残された状態となっている。よって、第1の膜パターン、及び第2の膜パターン上にキャップ層を積層した際に、撥液性が選択的に残された第2の膜パターンの所定の位置にはキャップ層が積層されなくなる。このように、前記所定の位置にはキャップ層が積層されていないので、分断されている第2の膜パターン間を接続する導電膜を形成する場合に、導電膜を形成する膜パターンを覆っているキャップ層を除去する工程を行わずに、第2の膜パターン間を前記導電膜により導通させることができる。
このように、キャップ層に覆われた構造を有し、分断された膜パターン間を接続する際に、本発明を採用することで、導電膜を形成する所定の位置におけるキャップ層を除去する工程を無くすことにより、膜パターンを形成する工程の簡略化を図ることができ、膜パターンの生産性が向上する。
【0009】
また、前記膜パターンの形成方法は、前記バンク上面における低下された撥液性は、少なくともバンク上に配置されたキャップ層となる機能液を弾く程度の強さとなっていることが好ましい。
このようにすれば、例えばパターン形成領域にキャップ層を配置する際、バンク上に残された撥液性によって、キャップ層となる機能液がバンク上に乗った場合にも、前記パターン形成領域内に確実に落とし込むことができる。
【0010】
また、前記膜パターンの形成方法は、前記バンクの形成材料は、固形分としてポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサンのいずれかを主成分とする無機質の材料からなることが好ましい。
このようにすれば、バンクの形成材料が、固形分としてポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサン液のいずれかを主成分としているので、有機材料からなるバンクに比べて耐熱性が高くなり、特に該バンク間に配置された機能液を焼成して膜パターンとする場合に好適となる。
【0011】
また、前記膜パターンの形成方法は、前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に自己組織化膜を形成することにより撥液処理を行うことが好ましい。
基板上を撥液化する処理として、プラズマ処理を行った場合、下地となる第1の膜パターン、及び第2の膜パターンにプラズマによるダメージを与えてしまう。そこで、例えばフルオロアルキルシランを基板の全面に吸着させることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与されるようになる。このように、自己組織化膜を形成することにより撥液処理を行っているので、第1の膜パターン、及び第2の膜パターンに与えるダメージを軽減できる。
【0012】
本発明のアクティブマトリクス基板は、前記膜パターンの形成方法によって形成される、第1の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するゲート配線とし、第2の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するソース配線として備えたことを特徴とする。
本発明のアクティブマトリクス基板によれば、ソース配線を基板上に分断した状態に形成することで、ゲート配線とソース配線とを基板の同一面上に形成した構造を取ることができる。このとき、上述したように、薄膜トランジスタに導通する、分断された配線間を導電膜によって接続されたソース配線を形成する工程を簡略化できるので、アクティブマトリクス基板自体の生産性を向上させることができる。
【0013】
本発明の電気光学装置は、前記アクティブマトリクス基板を備えることを特徴とする。
本発明の電気光学装置によれば、生産性の高いアクティブマトリクス基板を備えたことで、電気光学装置自体の生産性も向上し、コストの低減を図ることができる。
【0014】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
本発明の電子機器によれば、上述したように生産性が高く、コストの低減が図られた電気光学装置を備えているので、これを備えた電子機器自体も生産性が高く、低コストなものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器について図面を参照して説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0016】
図1は、本発明の膜パターンの形成方法によって形成されたゲート配線(第1の膜パターン)40、ソース配線(第2の膜パターン)42、及び容量線(第1の膜パターン)46を備えるアクティブマトリクス基板20の一部を拡大した概略構成を示す平面図である。
このアクティブマトリックス基板20は、基板P上に格子状に配線された複数のゲート配線40とソース配線42とを備えている。そして、前記ゲート配線40と略平行するようにして容量線46が基板P上に形成されている。なお、ゲート配線40、ソース配線42、及び容量線46は、アクティブマトリクス基板20の同一面上に形成されたものとなっている。
【0017】
本実施形態におけるアクティブマトリクス基板20においては、ソース配線42が、ゲート配線40、及び容量線46によって分断された状態に形成されている。そして、ゲート配線40、及び容量線46により分断されたソース配線42のそれぞれ端部には導電層49が設けられていて、これにより連続的に形成されたソース配線42として機能させるようにしている。この導電層49は、後述するように絶縁層を介してゲート配線40上に形成されていることで、ソース配線42とゲート配線40、及び容量線46との間で絶縁性を保持した状態となっている。
また、後述する製造工程により、前記ゲート配線40、前記ソース配線42、及び前記容量線46上をそれぞれ覆うようにして金属保護層(キャップ層)が形成されているが、図1中においては、その図示を省略することとする。
【0018】
また、前記ゲート配線40には、ゲート電極41が接続され、このゲート電極41上には絶縁層(図示せず)を介してTFT30が形成されている。一方、ソース配線42には、ソース電極43が接続され、ソース電極43の一端は、TFT30に接続している。
そして、ゲート配線40とソース配線42に囲まれた領域には、画素電極45が配置され、ドレイン電極44を介してTFT30に接続している。
【0019】
次に、本発明の膜パターンの形成方法を用いて、アクティブマトリクス基板20上に形成されるTFT30に導通するゲート配線40、及びソース配線42を形成する実施形態について説明する。
ところで、本実施形態では、前記ゲート配線40、ソース配線42、及び容量線46を構成する配線パターン用インク(機能液)と、これら配線上に形成する金属保護層を構成する金属保護層形成材料(機能液)とを配置する方法として、液滴吐出法(インクジェット法)を用いている。このように、液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行ないやすいという利点がある。
【0020】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0021】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0022】
本実施形態では、このような液滴吐出をなす装置として、ピエゾ素子(圧電素子)を用いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
図2は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸305と、制御装置CONTと、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。
ステージ307は、この液滴吐出装置IJにより配線パターン用インク(機能液)が配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。なお、この基板Pは、アクティブマトリクス基板20を構成するためのものである。
【0023】
液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、ステージ307に支持されている基板Pに対して、前記の導電性微粒子を含む配線パターン用インクが吐出されるようになっている。
【0024】
X軸方向駆動軸304には、X軸方向駆動モータ302が接続されている。このX軸方向駆動モータ302は、ステッピングモータ等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸304を回転させる。X軸方向駆動軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0025】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ302に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ303にステージ307のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。クリーニング機構308には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸305に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ315は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ315の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0026】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ307とを相対的に走査しつつ、基板Pに対して、液滴吐出ヘッド301の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0027】
ところで、本実施形態に用いる配線パターン用インク(機能液)は、導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。このような導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、パラジウム、タングステン及びニッケルのうちの少なくとも一種を含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これら導電性微粒子については、分散性を向上するため、表面に有機物などをコーティングして用いることもできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0028】
分散媒としては、前記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0029】
前記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、前記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。前記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0030】
前記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0031】
図3は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図3において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室312には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系323を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子322は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室312が変形し、吐出ノズル325から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0032】
以下に、上述した液滴吐出装置IJを用いることで配線パターン用インク、及び金属保護層形成材料を配置して、金属保護層によって覆われたゲート配線40とソース配線42とに導通するTFT30を含んだアクティブマトリクス基板20の製造方法について説明する。
図4、図5は、ソース配線、ゲート配線の形成工程を説明する図である。なお、図4(b),図5(b)は、それぞれ図4(a),図5(a)におけるA−A’線に沿う断面図である。
【0033】
まず、機能液を吐出するための領域を区画するバンクを形成するに際し、基板P上に、絶縁性の材料からなるバンク51が形成される。このバンク51は、後述する配線パターン用インクを基板Pの所定位置に配置するためのものである。
ここで、前記基板Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板等の各種材料を適宜採用できる。また、これら各種の素材基板の表面に、半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものを用いることもできる。
図4(a)に示すように、洗浄した基板Pの上面に、ゲート配線形成領域(第1のパターン形成領域)52と、ソース配線形成領域(第2のパターン形成領域)55と、容量線形成領域(第1のパターン形成領域)53と、前記ゲート配線形成領域52に接続して形成されるゲート電極形成領域54と、前記ソース配線形成領域55とを含んだパターン形成領域を区画するバンク51をフォトリソグラフィ法に基づいて形成する。
【0034】
具体的には、図4(a)に示すように、ソース配線形成領域55はX方向に延びるようにして形成され、ゲート配線形成領域52はY方向に延びるようにして形成されていて、これらは略直交するように形成されている。また、容量線用形成領域53は、前記ゲート配線形成領域52に略平行するように設けられていて、X方向に延びるように形成されている。そして、前記ソース配線形成領域55と前記ゲート配線形成領域52、及び前記容量船形成領域52との各交差部56において、前記ソース配線形成領域55は複数に分断された状態になっている。
【0035】
前記バンク51の形成方法としては、リソグラフィ法や印刷法等、任意の方法を用いることができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板P上にバンクの形成材料からなる層を形成した後、エッチングやアッシング等によりパターニングすることにより、所定のパターン形状のバンクが得られる。なお、基板Pとは別の物体上でバンクを形成し、それを基板P上に配置してもよい。
【0036】
前記バンク51を構成するバンク形成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が用いられる。また、耐熱性等を考慮して、無機質の材料を含むものとすることもできる。無機質のバンク材料としては、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、無機質のバンク材料として、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、などを用いてもよい。ポリシラザンと、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかを含む感光性ポリシラザン組成物のように感光性を有する材料とした場合には、レジストマスクが不要になるため、好適である。本実施形態のバンク51を構成する材料としては、ポリシラザンを主成分とする無機質の材料を用いた。これにより、形成されるバンク51がポリシラザンを主成分とする無機質のものとなるので、有機材料からなる有機質のバンクに比べて耐熱性が高く、しかもバンクと基板との間の熱膨張率の差を小さくしている。よって、吐出された機能液を乾燥する際の熱によってバンク51が劣化することを抑制し、良好な膜パターンを形成できるようになっている。
【0037】
なお、バンク51には、前記の各配線形成領域52,53,54,55内に配線パターン用インクを良好に配置させるために、その上面に撥液処理を施してもよい。このような撥液処理としては、例えばCF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す。なお、CF4プラズマ処理等に代えて、バンク51の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。これにより、バンク上面への配線パターン用インクの付着が防止され、各配線形成領域52,53,54,55に配線パターン用インクを良好に落とし込むことにより、所望の形状の膜パターンを正確に形成することができるようになる。
【0038】
次いで、上述した液滴吐出装置IJによって、導電性微粒子を含む配線用インクを上述したパターン形成領域57(各配線形成領域52,53,54,55)に吐出・配置して、基板P上にゲート配線40やソース配線42等からなる格子状の膜パターンとしての配線を形成する。
本実施形態では、配線パターン用インクとして、上述した導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液や有機銀化合物や酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散媒)に分散した溶液からなるものを用いた。導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、錫、鉛等の金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
なお、本実施形態では、ゲート配線40、ソース配線42、及びゲート電極41等の各配線を1層の膜パターンから形成しているが、例えば2層以上の異なる材料を積層することで高機能な特性を付加した配線パターンを形成するようにしてもよい。
【0039】
このようにしてバンク51により区画されたパターン形成領域57に配線パターン用インクを吐出した後、吐出した配線用インク中の分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて中間乾燥処理を行う。中間乾燥処理は、例えば基板P自体を加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では、100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0040】
なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できるゲート配線40、ソース配線42、及びゲート電極41の厚さが必要な膜厚に達していない場合、前記インクを配置する工程と中間乾燥工程とを繰り返し行うことによって、インクの液滴が積層され、十分な膜厚を有したゲート配線40、ソース配線42、及びゲート電極41ソース電極17及びドレイン電極14を形成することができる。
【0041】
上述した中間乾燥処理を行うことで、図5(a),(b)に示すように、各配線形成領域52,54,55には、それぞれ対応するゲート配線40,ゲート電極41,ソース配線42が形成される。
【0042】
(撥液処理工程)
前記ゲート配線40、ゲート電極41、ソース配線42の各上面を覆う金属保護層(キャップ層)を形成するに際して、図5(c)に示すように、前記ゲート配線40、ゲート電極41、ソース配線42、及び容量線46のそれぞれの上面と、バンク51の上面とを含んだ基板Pの全面に対して撥液処理を施す。
【0043】
上記撥液処理の方法としては、自己組織化膜を基板P表面に形成する方法や、CF4(4フッ化メタン)をガスとして用いたプラズマ処理により基板Pの表面を直接撥液化する方法がある。プラズマ処理は、常圧又は真空中で基板Pに対してプラズマ照射を行っている。そして、プラズマ処理に用いるガス種は、配線パターンを形成すべき基板Pの表面材質等を考慮して種々選択できる。CF4ガス以外の処理ガスとしては、例えばパーフルオロヘキサン、パーフルオロデカン等を例示できる。ところで、基板Pの撥液処理を行うに際し、プラズマ処理を用いた場合、パターン形成領域57内に形成された、ゲート配線40、及びソース配線42等にプラズマによるダメージを与えるおそれがある。
そこで、本実施形態においては、基板Pの全面に対する撥液処理として、自己組織化膜を形成する方法を採用している。
【0044】
自己組織化膜を形成する方法では、まず、基板Pの表面に有機分子膜(図示せず)を形成する。この有機分子膜は、基板P表面と結合可能な官能基と、親液基ないし撥液基といった表面改質機能を有する官能基とが炭素鎖で接続された有機分子からなるもので、かかる有機分子を基板P表面に均一に吸着させることで形成することができる。
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性を付与することができる。
【0045】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、FASを用いることにより基板Pの全面に図6(a)中、2点鎖線で示される密着性の高い撥液膜Fが形成される。
【0046】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板P(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板Pと結合する。一方、Rは表面に(CF2)等のフルオロ基を有するため、基板Pの下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0047】
自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板Pとを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板P上に形成される。または、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板P上に形成できる。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板Pを浸積し、洗浄、乾燥することで基板P上に自己組織化膜が形成される。自己組織化膜を形成する前に、基板Pの表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりすることで基板P表面に前処理を施すことが望ましい。
【0048】
ここで、図6(a),(b)は、図4(a)におけるA−A´線矢視における側断面図を示しており、図6(c)は、図4(a)に対応する基板Pにおける平面図を示している。
このようにして自己組織化膜形成法によって、図6(a)に示すように、基板Pの全面を撥液化した後、前記ゲート配線40、及び容量線46により分断された状態に形成されたソース配線42のそれぞれの上面の所定の位置に選択的に撥液性を保持したまま、前記基板P上の撥液性を低下させる。ここで、所定の位置とは、後述する工程により、分断されたソース配線42間を接続する導電層49が設けられる位置を意味している。以下、この所定の位置を導電層接続部37として説明する。上述したように基板Pの全面にはFASにより形成された撥液膜Fによって撥液性が付与された状態となっているので、前記導電層接続部37に撥液性を選択的に残すために、図6(b)に示すように、前記導電層接続部37に照射される紫外線を遮断する形状を有したマスクMを用いる。そして、例えば波長170〜400nmの紫外光を基板P上に照射している。
【0049】
すると、前記導電層接続部37以外の領域は、紫外線がマスクMによって遮られることが無く、基板P上に紫外線が直接照射される。すると、前記導電層接続部37以外の撥液性を低下させつつ、図6(c)に示すように、ソース配線42の導電層接続部37にのみに選択的に撥液性を残した状態とすることができる。なお、撥液性を低下させる程度としては、紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することもできる。
また、マスクMとして、例えばハーフトーンマスクを用いることで、バンク51上に照射される紫外線に対して、前記導電層接続部37以外のソース配線42部分、ゲート配線40、容量線46、及びドレイン電極41上に照射される紫外線量を増やし、撥液性の強さを所望の状態になるように調節できる。
【0050】
ここで、ゲート配線40、ソース配線42、及び容量線46の上面における濡れ性は、吐出される金属保護層形成材料が濡れ拡がる程度の撥液性を有していることが望ましい。また、バンク51上面における撥液性は、少なくとも、後述する金属保護層を液滴吐出法によって形成する際に、バンク51上に乗った金属保護層形成材料(機能液)を弾く程度の強さとなっていることが望ましい。
このようにすれば、ばパターン形成領域57に金属保護層を配置する際、バンク51上面に残された撥液性によって、金属保護層形成材料がバンク上に乗った場合でも、前記パターン形成領域57内に確実に落とし込むことができる。
【0051】
(金属保護層の形成工程)
図7は、前記ソース配線42、及び前記ゲート配線40に金属保護層層(キャップ層)42を積層する工程を説明する図である。なお、図7(a),(b)は、それぞれ図4(a)におけるA−A’線に沿う断面形状と同じ基板Pを示す図であり、図7(c)は、金属保護層42を形成後における基板Pの平面図である。
まず、図7(a)に示すように、前記液滴吐出装置IJを用いて、金属保護層形成材料47aを、各配線40,41,42,46上に配置する。ここでは、前記金属保護層形成材料47aとしては、導電性微粒子としてNi(ニッケル)を用い、溶媒(分散媒)として水、及びジエタノールアミンを用いたものを吐出配置する。なお、導電性微粒子としては、Ni以外のTiやW、Mn、あるいはこれらの金属を主成分とする合金を用いてもよい。
このとき、バンク51の上面には上述したように、少なくとも金属保護層形成材料47aを弾く程度の撥液性が付与されていることから、各配線40,41,42,46が形成されているパターン形成領域57内に良好に落とし込まれるようになる。
また、各配線40,41,42,46の表面上の撥液性は、金属保護層形成材料47aが濡れ拡がる程度となっているが、後述する工程で導電層が接続されるソース配線42の各導電層接続部37には、前述したように撥液膜Fが形成されているため、金属保護層形成材料47を弾き、この導電層接続部37上に金属保護層47が積層されることがない。
【0052】
金属保護層形成材料47aを吐出した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる加熱処理によって行うことができる。処理条件は、例えば加熱温度180℃、加熱時間60分間程度である。この加熱についても、窒素ガス雰囲気下など、必ずしも大気中で行う必要はない。
【0053】
また、この乾燥処理は、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、先の第1電極層形成工程後の中間乾燥工程で挙げたものを用いることができる。また加熱時の出力も同様に100W〜1000Wの範囲とすることができる。
【0054】
なお、吐出工程後の金属保護層47は、微粒子間の密着性を向上させるために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、液中での分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤が導電性微粒子の表面にコーティングされている場合には、このコーティング剤も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0055】
この熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
以上の工程により、吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の密着性が確保され、図7(b),(c)に示すように、撥液膜Fが形成されていない領域、すなわち、導電層接続部37以外のソース配線42、ゲート配線40、容量線46上に金属保護層47が形成される。
【0056】
このようにして、金属保護層47を形成した後、紫外光の照射、又は紫外線と熱処理(加熱)との組み合わせ等を用いることで、前記撥液膜Fを除去する。
このようにゲート配線40、ソース配線42、容量線46を金属保護層47で覆うことにより、金属イオンの拡散を防止することで、これら配線40,42,46に導通するTFTを良好に動作させることができるようになる。
【0057】
ところで、ソース配線42の導電性と金属保護層47の導電性とを比較すると、金属保護層47の方がその導電性が低くなっている。そのため、分断されたソース配線42の全面を金属保護層47が覆っている場合には、ソース配線42間を導通させる導電膜を形成する際にエッチングなどによって金属保護膜47の一部を除去して、ソース配線42を露出させる必要がある。
本発明における膜パターンの形成方法では、導電膜を形成するソース配線42の導電層接続部37に選択的に撥液性を残すことで、この部分に予め金属保護層47が形成されないようにしている。よって、後述する導電層を形成する際に、この導電層接続部37における金属保護層47を除去する工程を簡略化することができる。このように、分断された状態に形成されたソース配線42間を導電膜によって接続する際、導電層接続部37の金属保護層47を除去することなく、直接ソース配線42間を導電膜によって導通させることができる。
【0058】
(積層部形成工程)
続いて、図8に示すようにして、上記工程で形成されたゲート配線40、分断された状態のソース配線42等の膜パターン上に新たに配線層を形成する。ここで、バンク51の表面の親液性が十分でないと、バンク51の表面に直接ソース電極等を形成する場合、電極形成用の機能液がバンク51によってはじかれて、良好な膜パターンを形成することができない。そこで、ソース電極等を形成する前に予め下地となるバンク51の表面の撥液性を紫外線照射等により低下させて、十分な親液性が付与された状態にしておく。
【0059】
バンク51の表面を親液化した後、図8に示すように、プラズマCVD法により、基板P上の全面に対して、絶縁膜31、活性層32、コンタクト層33の連続成膜を行う。ここで、図8(a)は基板Pにおける平面図を示し、図8(b)は図8(a)におけるA−A´線矢視による断面図を示している。
このとき、金属保護層47が形成されていないソース配線42は、バンク51に対して凹部形状となっている。このとき、絶縁膜31は、前記凹部の内壁面に沿って形成されることで、その上面は厳密には平坦面とはならないが、本実施形態では、説明を簡略化するために、CVD法の条件を適宜調節することにより、この絶縁膜31が凹部形状を埋め込んだ状態に形成され、基板P上を平坦化するものとする。具体的には、図8に示すように、絶縁膜31として窒化シリコン膜を用い、この絶縁膜によって平坦化された面上に、活性層32としてのアモルファスシリコン膜、コンタクト層33としてのn+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることによりプラズマCVD法等によって連続して成膜する。
【0060】
次いで、図9に示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、図9(a)に示すように、ゲート配線40とソース配線42の交差部56上、ゲート電極41上、及び容量線46上に、レジスト58a,58b,58cを配置する。ここで、図9(b)〜図11(b)は、それぞれ図9(a)〜図11(a)におけるA−A’線に沿う断面図であり、図9(c)〜図11(c)は、それぞれ図9(a)〜図11(a)におけるB−B’線に沿う断面図である。なお、交差部56上に配置するレジスト58aと容量線46上に配置するレジスト58bとは、接触しないように形成される。また、ゲート電極41上に配置するレジスト58cには、ハーフ露光を行うことにより、図9(b)に示すように、溝59を形成しておく。また、図9(c)〜図11(c)においては、容量線46によって分断されたソース配線42の導電層接続部37を示しているが、ゲート線40によって分断されたソース配線42の導電層接続部37についても同一の構造を有しており、その図示を省略することとする。
【0061】
次いで、基板Pの全面に対してエッチング処理を施して、コンタクト層33及び活性層32を除去する。更に、エッチング処理を施して、絶縁膜31を除去する。
これにより、図10に示すように、レジスト58(58a,58b,58c)を配置した領域以外から、コンタクト層33、活性層32、絶縁膜31が取り除かれる。一方、レジスト58が配置された所定位置には、絶縁膜31と半導体膜(コンタクト層33,活性層32)からなる積層部35が形成される。このとき、図10に示すように、前述した金属保護層47が形成されていない導電層接続部37が露出した状態となる。
【0062】
なお、ゲート電極41上に形成される積層部35では、上述したようにレジスト58cにハーフ露光を行って溝59を形成しておいたので、エッチング前に再度現像することにより溝が貫通する。図10(b)示すように、溝59に対応するコンタクト層33が除去され、2つに分断された状態に形成される。これにより、ゲート電極41上に活性層32及びコンタクト層33からなるスイッチング素子としてTFT30が形成される。
そして、図11(a)〜(c)に示すように、コンタクト層33を保護する保護膜60として窒化シリコン膜を基板Pの全面に成膜する。
【0063】
(画素電極形成工程)
図12〜図15は、画素電極等の形成工程を説明する図である。なお、図12(b)〜図15(b)は、それぞれ図12(a)〜図15(a)におけるA−A’線に沿う断面図であり、図12(c)〜図15(c)は、それぞれ図12(a)〜図15(a)におけるB−B’線に沿う断面図である。なお、図12(c)〜図15(c)においては、容量線46によって分断されたソース配線42の導電層接続部37を示しているが、ゲート線40によって分断されたソース配線42の導電層接続部37についても同一の構造を有しており、その図示を省略することとする。
【0064】
本工程では、ソース電極43、ドレイン電極44、導電層49及び画素電極45を形成する。
ソース電極43、ドレイン電極44、及び導電層49は、ゲート配線40やソース配線42を形成したのと同じ材料によって形成することができる。画素電極45は、透明性が必要であることから、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成することが望ましい。これらの形成には、前記ゲート配線40、ソース配線42等を形成した工程と同様に、液滴吐出法が用いられる。
【0065】
まず、図12(a)に示すようにして、ゲート配線40、ソース配線42、容量線46等を覆うバンク61をフォトリソグラフィ法に基づいて形成する。すなわち、図12(a)〜(c)に示すように、略格子状のバンク61が形成する。なお、ソース配線42とゲート配線40、及びソース配線42と容量線46との交差部56には開口部62が形成され、TFT30のドレイン領域に対応する位置には開口部63が形成される。
【0066】
また、開口部62,63は、図12(b)に示すように、ゲート電極41上に形成した積層部35(TFT30)の一部が露出するように形成される。すなわち、バンク61が積層部35(TFT30)を図12(a)中X方向に2分割するように形成される。
このバンク61を構成する材料としては、例えば、前記バンク51と同様に、ポリシラザンを主成分とする無機質の材料を用いても良いし、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料等を用いてもよい。インクを良好に配置するために、バンク61の表面は撥液性を有していることが望ましい。そこで、バンク61としては、素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填した材料を用いるようにしてもよい。
【0067】
ここで、前記バンク61により形成された開口部62は、分断されたソース配線42を連結する導電層、又はソース電極の形成位置に対応している(図15参照)。また、バンク61に形成された開口部63は、ドレイン電極の形成位置に対応している(図15参照)。また、それ以外の部分でバンク61により取り囲まれた領域は、画素電極の形成位置に対応している(図15参照)。すなわち、バンク61の開口部62,63内及びバンク61により取り囲まれた領域に導電性材料を配置することにより、分断されたソース配線42を連結する導電層、ソース電極、ドレイン電極、画素電極が形成される。
【0068】
次いで、基板Pの全面に成膜した保護膜60をエッチング処理により除去する。これにより、図13(a)〜(c)に示すように、バンク61が配置されていない領域上に成膜した保護層60は、取り除かれる。
このとき、導電層接続部37には金属保護層47が形成されていないので、前記バンク61から露出した保護膜60をエッチングした後に、金属保護層47を除去するための別のエッチング工程を行うことなく、開口部62内にソース配線42を露出させることができる。よって、分断されたソース配線42間を導通させる工程を簡略化することができる。
【0069】
次いで、図14(a)〜(c)に示すように、前述した液滴吐出装置IJによって、ソース電極43やドレイン電極44等の電極材料を含む電極用インクをバンク61の開口部62,63内に吐出・配置する。電極用インクは、ゲート配線40等を形成するために用いた配線パターン用インクと同様のものを用いることができる。基板Pに電極用インクを吐出した後には、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理、焼成処理を行う。乾燥・焼成処理により、導電性微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
なお、図中では、ソース電極43やドレイン電極44を単層膜としたが、これらの電極は複数の層からなる積層膜としてもよい。これらの層は、材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返すことにより、順次形成することができる。
このようにして、基板P上には、図14(a)〜(c)に示すように、分断されたソース配線42を連結する導電層49、ソース電極43、ドレイン電極44が形成される。
このように、本実施形態では、上述したように、上層側の配線層(ソース電極43,ドレイン電極44,画素電極45)を形成する前に下地となるバンク51の表面を親液化しているので、バンク51と配線となるインク(機能液)との濡れ性が向上し、均一な配線パターンを形成することができる。
なお、図示しないが、ゲート配線40によって分断されていたソース配線42についても、同様に導電層49によって導通された状態となっている。したがって、ソース配線42は、導電層49により、連続した膜パターンとして機能することとなる。
【0070】
次いで、バンク61において画素電極45とドレイン電極44との境界に位置する部分61aをレーザ等により除去し、画素電極45の電極材料を含む画素電極用インクをバンク61により取り囲まれた領域内に吐出・配置する。画素電極用インクは、ITO等の導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。基板Pに画素電極用インクを吐出した後には、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理、焼成処理を行う。乾燥・焼成処理により、導電性微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
このようにして、基板P上には、図15(a)〜(c)に示すように、ドレイン電極44と導通する画素電極45が形成される。
【0071】
なお、本工程では、ドレイン電極44と画素電極45を導通させるために、これらの境界部分のバンク61をレーザ等により除去したが、本工程はこれに限定されない。例えば、この境界部分のバンク61の厚みを予めハーフ露光等によって薄くしておけば、この部分のバンク61を除去しなくても、画素電極用インクをドレイン電極44に重なるように吐出・配置することができる。
以上の工程を経ることにより、アクティブマトリックス基板20が製造される。
【0072】
本実施形態によれば、分断された状態に形成されたソース配線42における導電層接続部37に対して、前記導電層接続部37上には、金属保護層47が積層されることが無い。このように、前記所定の位置にはキャップ層が積層されていないので、分断されている第2の膜パターン間を接続する導電膜を形成する場合に、従来のように導電膜を形成する膜パターンを覆っているキャップ層を除去する工程を行わずに、第2の膜パターン間を前記導電膜により導通させることができる。
このように、導電層接続部37には金属保護層47が積層されていないので、導電膜39によって分断されたソース配線42間を接続する際に、ソース配線42間を導通する際の金属保護層47のエッチングによる除去工程を無くすことにより、ソース配線42を形成する工程の簡略化を図ることができ、このソース配線42に導通するTFT30を有したアクティブマトリクス基板の生産性を向上できる。
【0073】
なお、本実施形態では、アクティブマトリクス基板の好適な一形態例について説明したが、その構成部材の形状や組み合わせは係る形態に限定されるものではない。例えば、ソース配線42をゲート配線40との交差部56において分割する構成について説明したが、ゲート配線40の他に、容量線を備えた構造にも適応可能である。このとき、ソース配線42は、ゲート配線42と容量線によって分断された状態となっているが、それぞれの交差部を導通させる導通部を本発明の膜パターンの形成方法を用いて形成することで、工程の簡略化を図るとともにその生産性を向上させるようにしてもよい。
【0074】
(電気光学装置)
次に、上述した製造工程により得られたアクティブマトリックス基板20を備えた電気光学装置の一例である液晶表示装置100について説明する。
図16は、液晶表示装置100を対向基板側から見た平面図であり、図17は、図16のH−H’線に沿う断面図である。
なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0075】
図16及び図17において、液晶表示装置(電気光学装置)100は、アクティブマトリックス基板20を含むTFTアレイ基板110と対向基板120とが光硬化性の封止材であるシール材152によって貼り合わされ、このシール材152によって区画された領域内に液晶150が封入、保持されている。シール材152は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0076】
シール材152の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り153が形成されている。シール材152の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板110の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板110の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板120のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板110と対向基板120との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板110の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板110の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。
なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶150の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板120において、TFTアレイ基板110の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0077】
このような構造を有するの画像表示領域においては、図18に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0078】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図10に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0079】
図18は、液晶表示装置100を構成する等価回路図を示すものである。
このように、前記アクティブマトリックス基板20を液晶表示装置100に用いた場合には、画像表示領域には複数の画素100aがマトリクス状に構成されている。これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するソース配線42がソース電極43を介してTFT30のソースに電気的に接続されている。ソース配線42に供給する画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のソース配線42同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
また、TFT30のゲートには、ゲート配線40がゲート電極41を介して電気的に接続されている。そして、所定のタイミングで、ゲート配線40にパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0080】
画素電極45は、TFT30のドレインにドレイン電極44を介して電気的に接続されている。そして、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、ソース配線42から供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極45を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図17に示した対向基板120の対向電極121との間で一定期間保持される。
なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、容量線46によって、画素電極45と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量48が付加されている。ここで、前記容量線46によってソース配線42が分断された構造を適応してもよい。例えば、画素電極45の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量48により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0081】
また、前記のアクティブマトリクス基板20は、液晶表示装置以外の他の電気光学装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置等にも応用が可能である。有機EL表示装置は、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明における電気光学装置の範囲には、このような有機ELデバイスも含まれるものとする。
更に、アクティブマトリックス基板20は、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
本発明の液晶表示装置100によれば、TFT30に導通する、分断された状態に形成されるソース配線42を形成する工程を簡略化できるので、アクティブマトリクス基板自体の生産性を向上させることができる。生産性の高いアクティブマトリクス基板20を備えたことで、液晶表示装置100自体の生産性も向上し、コストの低減を図ることができる。
【0082】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図19は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図19において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図19に示す携帯電話600は、上述したように生産性が高く、コストの低減が図られた電気光学装置を備えているので、これを備えた電子機器自体も生産性が高く、低コストなものとなる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0083】
なお、上述した電子機器以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用することが可能である。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明についての好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】アクティブマトリックス基板の一部拡大図である。
【図2】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図4】アクティブマトリックス基板を製造する手順を示す図である。
【図5】図4に続く手順を示す図である。
【図6】図5に続く手順を示す図である。
【図7】図6に続く手順を示す図である。
【図8】図7に続く手順を示す図である。
【図9】図8に続く手順を示す図である。
【図10】図9に続く手順を示す図である。
【図11】図10に続く手順を示す図である。
【図12】図11に続く手順を示す図である。
【図13】図12に続く手順を示す図である。
【図14】図13に続く手順を示す図である。
【図15】図14に続く手順を示す図である。
【図16】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図17】液晶表示装置の断面図である。
【図18】液晶表示装置における等価回路を示す図である。
【図19】電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
P…基板、F…撥液膜(自己組成化膜)、20…アクティブマトリクス基板、30…TFT(スイッチング素子)、37…導電層接続部(所定の位置)、39…導電膜、40…ゲート配線(第1の膜パターン)、42…ソース配線(第2の膜パターン)、47…金属保護層(キャップ層)、51…バンク、52…ゲート配線用形成領域(第1のパターン形成領域)、53…容量線形成領域(第1のパターン形成領域)、55…ソース配線用形成領域(第2のパターン形成領域)、100…液晶表示装置(電気光学装置)、600…携帯電話(電子機器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
導体からなる薄膜(膜パターン)が配置された回路配線と、回路配線を覆う絶縁膜などの薄膜と、半導体からなる薄膜とが基板上に積層されてなる半導体装置が、従来より知られている。このような半導体装置における薄膜の効率的な形成方法として、薄膜材料などを分散質として含む機能液の液滴を液滴吐出ヘッドから吐出し、着弾した機能液を乾燥させて分散媒を除去し、薄膜を形成する、液滴吐出法(インクジェット法)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
液滴吐出法で膜パターンを形成する際には、パターン形成領域を区画するバンクを形成し、このバンクにより区画され凹部状のパターン形成領域に向けて機能液を吐出する。そして、前記パターン形成領域に吐出された機能液を乾燥させることにより、膜パターンを形成する。
【0004】
近年、上記の液滴吐出法を用いることで、アクティブマトリクス基板が備える複数の薄膜トランジスタに導通するソース配線(膜パターン)、及びゲート配線(膜パターン)が形成されている。
アクティブマトリクス基板は、基板上に前記各薄膜トランジスタに導通するソース配線とゲート配線とが、互いが格子状に配置され、通常ソース配線とゲート配線とが層間絶縁膜等を介して異なる面上に形成された構造になっている。
そして、前記ソース配線、及びゲート配線は、金属材料から形成されていることから、金属イオンが拡散することで、電流のリークが発生しトランジスタが良好に動作しなくなってしまうおそれがある。そこで、前記ソース配線、及びゲート配線を構成する金属材料に対し導電性の低いNi等から構成されるキャップ層を各配線上に積層することで、上述した金属イオンの拡散を防止した技術もある。
一方、層間絶縁膜を介して積層構造によって形成されるゲート配線、及びソース配線を有するアクティブマトリクス基板に対し、ゲート配線、及びソース配線を同一面上に同じ製造工程によって形成することにより、配線の形成工程の簡略化を図ったアクティブマトリクス基板も考えられる。このアクティブマトリクス基板は、ゲート配線とソース配線とが交差する交差部において、例えばソース配線がゲート配線により分断された状態に形成されている。また、前記アクティブマトリクス基板には、分断されたソース配線間を接続するための導電部(導電膜)が形成されている。
さらに、上述した金属イオンの拡散を防止するキャップ層を備え、かつ分断されたソース配線(膜パターン)構造を有したアクティブマトリクス基板が考えられる。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バンクに区画された配線形成領域(パターン形成領域)に形成されている、ゲート配線、及びこのゲート配線により分断されたソース配線上に、液滴吐出法を用いてキャップ層を配置すると、キャップ層となる材料が前記配線形成領域を濡れ拡がることで、キャップ層がゲート配線、及びソース配線上の全面を覆った状態となってしまう。ここで、上述したように、キャップ層の導電性は、ゲート配線、及びソース配線を構成する金属材料と比べて低くなっている。よって、分断されたソース配線間を良好に導通させるために、このソース配線を覆い導電性を低下させるキャップ層を除去し、露出させたソース配線に直接導電部を形成することで、分断されたソース配線間を接続する必要がある。
しかし、このように分断されたソース配線間を接続する導電部を形成する際に、上述したようにキャップ層を除去する工程が必要になると、ソース配線の形成工程の簡略化が難しくなり、生産性の向上を妨げる一因となってしまう。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、分断されたパターン形成領域にキャップ層を有した膜パターンを形成する際に、その形成工程を簡略化することにより、膜パターンの生産性を向上した、膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の膜パターンの形成方法は、基板上に設けられた、バンクにより区画されたパターン形成領域に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法において、前記基板上に、第1のパターン形成領域と、該第1のパターン形成領域に交差し、該交差部において分断された第2のパターン形成領域とを備えるパターン形成領域を区画するバンクを形成する工程と、前記第1のパターン形成領域に機能液を配置することで第1の膜パターンとし、前記第2のパターン形成領域に機能液を配置することで第2の膜パターンとする工程と、前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に撥液処理を施す工程と、その後、分断した状態に形成された前記第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置の撥液性を選択的に保持させたまま、前記基板上の撥液性を低下させる工程と、撥液性を低下させた後、前記第1の膜パターン、及び前記第2の膜パターン上にキャップ層を積層する工程と、前記キャップ層を積層した後、分断した状態に形成された第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置における撥液性を除去する工程と、前記各所定の位置間に導電膜を形成し、分断した状態に形成された第2の膜パターンを電気的に接続させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の膜パターンの形成方法は、分断された状態に形成されている第2の膜パターンを接続するための導電膜を形成するそれぞれの位置を所定の位置とした場合、第2の膜パターンのそれぞれ所定の位置に撥液性が選択的に残された状態となっている。よって、第1の膜パターン、及び第2の膜パターン上にキャップ層を積層した際に、撥液性が選択的に残された第2の膜パターンの所定の位置にはキャップ層が積層されなくなる。このように、前記所定の位置にはキャップ層が積層されていないので、分断されている第2の膜パターン間を接続する導電膜を形成する場合に、導電膜を形成する膜パターンを覆っているキャップ層を除去する工程を行わずに、第2の膜パターン間を前記導電膜により導通させることができる。
このように、キャップ層に覆われた構造を有し、分断された膜パターン間を接続する際に、本発明を採用することで、導電膜を形成する所定の位置におけるキャップ層を除去する工程を無くすことにより、膜パターンを形成する工程の簡略化を図ることができ、膜パターンの生産性が向上する。
【0009】
また、前記膜パターンの形成方法は、前記バンク上面における低下された撥液性は、少なくともバンク上に配置されたキャップ層となる機能液を弾く程度の強さとなっていることが好ましい。
このようにすれば、例えばパターン形成領域にキャップ層を配置する際、バンク上に残された撥液性によって、キャップ層となる機能液がバンク上に乗った場合にも、前記パターン形成領域内に確実に落とし込むことができる。
【0010】
また、前記膜パターンの形成方法は、前記バンクの形成材料は、固形分としてポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサンのいずれかを主成分とする無機質の材料からなることが好ましい。
このようにすれば、バンクの形成材料が、固形分としてポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサン液のいずれかを主成分としているので、有機材料からなるバンクに比べて耐熱性が高くなり、特に該バンク間に配置された機能液を焼成して膜パターンとする場合に好適となる。
【0011】
また、前記膜パターンの形成方法は、前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に自己組織化膜を形成することにより撥液処理を行うことが好ましい。
基板上を撥液化する処理として、プラズマ処理を行った場合、下地となる第1の膜パターン、及び第2の膜パターンにプラズマによるダメージを与えてしまう。そこで、例えばフルオロアルキルシランを基板の全面に吸着させることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与されるようになる。このように、自己組織化膜を形成することにより撥液処理を行っているので、第1の膜パターン、及び第2の膜パターンに与えるダメージを軽減できる。
【0012】
本発明のアクティブマトリクス基板は、前記膜パターンの形成方法によって形成される、第1の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するゲート配線とし、第2の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するソース配線として備えたことを特徴とする。
本発明のアクティブマトリクス基板によれば、ソース配線を基板上に分断した状態に形成することで、ゲート配線とソース配線とを基板の同一面上に形成した構造を取ることができる。このとき、上述したように、薄膜トランジスタに導通する、分断された配線間を導電膜によって接続されたソース配線を形成する工程を簡略化できるので、アクティブマトリクス基板自体の生産性を向上させることができる。
【0013】
本発明の電気光学装置は、前記アクティブマトリクス基板を備えることを特徴とする。
本発明の電気光学装置によれば、生産性の高いアクティブマトリクス基板を備えたことで、電気光学装置自体の生産性も向上し、コストの低減を図ることができる。
【0014】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
本発明の電子機器によれば、上述したように生産性が高く、コストの低減が図られた電気光学装置を備えているので、これを備えた電子機器自体も生産性が高く、低コストなものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の膜パターンの形成方法、アクティブマトリクス基板、電気光学装置、及び電子機器について図面を参照して説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0016】
図1は、本発明の膜パターンの形成方法によって形成されたゲート配線(第1の膜パターン)40、ソース配線(第2の膜パターン)42、及び容量線(第1の膜パターン)46を備えるアクティブマトリクス基板20の一部を拡大した概略構成を示す平面図である。
このアクティブマトリックス基板20は、基板P上に格子状に配線された複数のゲート配線40とソース配線42とを備えている。そして、前記ゲート配線40と略平行するようにして容量線46が基板P上に形成されている。なお、ゲート配線40、ソース配線42、及び容量線46は、アクティブマトリクス基板20の同一面上に形成されたものとなっている。
【0017】
本実施形態におけるアクティブマトリクス基板20においては、ソース配線42が、ゲート配線40、及び容量線46によって分断された状態に形成されている。そして、ゲート配線40、及び容量線46により分断されたソース配線42のそれぞれ端部には導電層49が設けられていて、これにより連続的に形成されたソース配線42として機能させるようにしている。この導電層49は、後述するように絶縁層を介してゲート配線40上に形成されていることで、ソース配線42とゲート配線40、及び容量線46との間で絶縁性を保持した状態となっている。
また、後述する製造工程により、前記ゲート配線40、前記ソース配線42、及び前記容量線46上をそれぞれ覆うようにして金属保護層(キャップ層)が形成されているが、図1中においては、その図示を省略することとする。
【0018】
また、前記ゲート配線40には、ゲート電極41が接続され、このゲート電極41上には絶縁層(図示せず)を介してTFT30が形成されている。一方、ソース配線42には、ソース電極43が接続され、ソース電極43の一端は、TFT30に接続している。
そして、ゲート配線40とソース配線42に囲まれた領域には、画素電極45が配置され、ドレイン電極44を介してTFT30に接続している。
【0019】
次に、本発明の膜パターンの形成方法を用いて、アクティブマトリクス基板20上に形成されるTFT30に導通するゲート配線40、及びソース配線42を形成する実施形態について説明する。
ところで、本実施形態では、前記ゲート配線40、ソース配線42、及び容量線46を構成する配線パターン用インク(機能液)と、これら配線上に形成する金属保護層を構成する金属保護層形成材料(機能液)とを配置する方法として、液滴吐出法(インクジェット法)を用いている。このように、液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行ないやすいという利点がある。
【0020】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0021】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0022】
本実施形態では、このような液滴吐出をなす装置として、ピエゾ素子(圧電素子)を用いた電気機械変換方式の、液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
図2は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸305と、制御装置CONTと、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。
ステージ307は、この液滴吐出装置IJにより配線パターン用インク(機能液)が配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。なお、この基板Pは、アクティブマトリクス基板20を構成するためのものである。
【0023】
液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、ステージ307に支持されている基板Pに対して、前記の導電性微粒子を含む配線パターン用インクが吐出されるようになっている。
【0024】
X軸方向駆動軸304には、X軸方向駆動モータ302が接続されている。このX軸方向駆動モータ302は、ステッピングモータ等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸304を回転させる。X軸方向駆動軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0025】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ302に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ303にステージ307のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。クリーニング機構308には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸305に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ315は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ315の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0026】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ307とを相対的に走査しつつ、基板Pに対して、液滴吐出ヘッド301の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0027】
ところで、本実施形態に用いる配線パターン用インク(機能液)は、導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。このような導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、パラジウム、タングステン及びニッケルのうちの少なくとも一種を含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これら導電性微粒子については、分散性を向上するため、表面に有機物などをコーティングして用いることもできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0028】
分散媒としては、前記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0029】
前記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、前記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。前記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0030】
前記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0031】
図3は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図3において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室312には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系323を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子322は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室312が変形し、吐出ノズル325から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0032】
以下に、上述した液滴吐出装置IJを用いることで配線パターン用インク、及び金属保護層形成材料を配置して、金属保護層によって覆われたゲート配線40とソース配線42とに導通するTFT30を含んだアクティブマトリクス基板20の製造方法について説明する。
図4、図5は、ソース配線、ゲート配線の形成工程を説明する図である。なお、図4(b),図5(b)は、それぞれ図4(a),図5(a)におけるA−A’線に沿う断面図である。
【0033】
まず、機能液を吐出するための領域を区画するバンクを形成するに際し、基板P上に、絶縁性の材料からなるバンク51が形成される。このバンク51は、後述する配線パターン用インクを基板Pの所定位置に配置するためのものである。
ここで、前記基板Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板等の各種材料を適宜採用できる。また、これら各種の素材基板の表面に、半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものを用いることもできる。
図4(a)に示すように、洗浄した基板Pの上面に、ゲート配線形成領域(第1のパターン形成領域)52と、ソース配線形成領域(第2のパターン形成領域)55と、容量線形成領域(第1のパターン形成領域)53と、前記ゲート配線形成領域52に接続して形成されるゲート電極形成領域54と、前記ソース配線形成領域55とを含んだパターン形成領域を区画するバンク51をフォトリソグラフィ法に基づいて形成する。
【0034】
具体的には、図4(a)に示すように、ソース配線形成領域55はX方向に延びるようにして形成され、ゲート配線形成領域52はY方向に延びるようにして形成されていて、これらは略直交するように形成されている。また、容量線用形成領域53は、前記ゲート配線形成領域52に略平行するように設けられていて、X方向に延びるように形成されている。そして、前記ソース配線形成領域55と前記ゲート配線形成領域52、及び前記容量船形成領域52との各交差部56において、前記ソース配線形成領域55は複数に分断された状態になっている。
【0035】
前記バンク51の形成方法としては、リソグラフィ法や印刷法等、任意の方法を用いることができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板P上にバンクの形成材料からなる層を形成した後、エッチングやアッシング等によりパターニングすることにより、所定のパターン形状のバンクが得られる。なお、基板Pとは別の物体上でバンクを形成し、それを基板P上に配置してもよい。
【0036】
前記バンク51を構成するバンク形成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が用いられる。また、耐熱性等を考慮して、無機質の材料を含むものとすることもできる。無機質のバンク材料としては、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、無機質のバンク材料として、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、などを用いてもよい。ポリシラザンと、光酸発生剤または光塩基発生剤のいずれかを含む感光性ポリシラザン組成物のように感光性を有する材料とした場合には、レジストマスクが不要になるため、好適である。本実施形態のバンク51を構成する材料としては、ポリシラザンを主成分とする無機質の材料を用いた。これにより、形成されるバンク51がポリシラザンを主成分とする無機質のものとなるので、有機材料からなる有機質のバンクに比べて耐熱性が高く、しかもバンクと基板との間の熱膨張率の差を小さくしている。よって、吐出された機能液を乾燥する際の熱によってバンク51が劣化することを抑制し、良好な膜パターンを形成できるようになっている。
【0037】
なお、バンク51には、前記の各配線形成領域52,53,54,55内に配線パターン用インクを良好に配置させるために、その上面に撥液処理を施してもよい。このような撥液処理としては、例えばCF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す。なお、CF4プラズマ処理等に代えて、バンク51の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。これにより、バンク上面への配線パターン用インクの付着が防止され、各配線形成領域52,53,54,55に配線パターン用インクを良好に落とし込むことにより、所望の形状の膜パターンを正確に形成することができるようになる。
【0038】
次いで、上述した液滴吐出装置IJによって、導電性微粒子を含む配線用インクを上述したパターン形成領域57(各配線形成領域52,53,54,55)に吐出・配置して、基板P上にゲート配線40やソース配線42等からなる格子状の膜パターンとしての配線を形成する。
本実施形態では、配線パターン用インクとして、上述した導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液や有機銀化合物や酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散媒)に分散した溶液からなるものを用いた。導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、錫、鉛等の金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
なお、本実施形態では、ゲート配線40、ソース配線42、及びゲート電極41等の各配線を1層の膜パターンから形成しているが、例えば2層以上の異なる材料を積層することで高機能な特性を付加した配線パターンを形成するようにしてもよい。
【0039】
このようにしてバンク51により区画されたパターン形成領域57に配線パターン用インクを吐出した後、吐出した配線用インク中の分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて中間乾燥処理を行う。中間乾燥処理は、例えば基板P自体を加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では、100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0040】
なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できるゲート配線40、ソース配線42、及びゲート電極41の厚さが必要な膜厚に達していない場合、前記インクを配置する工程と中間乾燥工程とを繰り返し行うことによって、インクの液滴が積層され、十分な膜厚を有したゲート配線40、ソース配線42、及びゲート電極41ソース電極17及びドレイン電極14を形成することができる。
【0041】
上述した中間乾燥処理を行うことで、図5(a),(b)に示すように、各配線形成領域52,54,55には、それぞれ対応するゲート配線40,ゲート電極41,ソース配線42が形成される。
【0042】
(撥液処理工程)
前記ゲート配線40、ゲート電極41、ソース配線42の各上面を覆う金属保護層(キャップ層)を形成するに際して、図5(c)に示すように、前記ゲート配線40、ゲート電極41、ソース配線42、及び容量線46のそれぞれの上面と、バンク51の上面とを含んだ基板Pの全面に対して撥液処理を施す。
【0043】
上記撥液処理の方法としては、自己組織化膜を基板P表面に形成する方法や、CF4(4フッ化メタン)をガスとして用いたプラズマ処理により基板Pの表面を直接撥液化する方法がある。プラズマ処理は、常圧又は真空中で基板Pに対してプラズマ照射を行っている。そして、プラズマ処理に用いるガス種は、配線パターンを形成すべき基板Pの表面材質等を考慮して種々選択できる。CF4ガス以外の処理ガスとしては、例えばパーフルオロヘキサン、パーフルオロデカン等を例示できる。ところで、基板Pの撥液処理を行うに際し、プラズマ処理を用いた場合、パターン形成領域57内に形成された、ゲート配線40、及びソース配線42等にプラズマによるダメージを与えるおそれがある。
そこで、本実施形態においては、基板Pの全面に対する撥液処理として、自己組織化膜を形成する方法を採用している。
【0044】
自己組織化膜を形成する方法では、まず、基板Pの表面に有機分子膜(図示せず)を形成する。この有機分子膜は、基板P表面と結合可能な官能基と、親液基ないし撥液基といった表面改質機能を有する官能基とが炭素鎖で接続された有機分子からなるもので、かかる有機分子を基板P表面に均一に吸着させることで形成することができる。
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性を付与することができる。
【0045】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、FASを用いることにより基板Pの全面に図6(a)中、2点鎖線で示される密着性の高い撥液膜Fが形成される。
【0046】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板P(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板Pと結合する。一方、Rは表面に(CF2)等のフルオロ基を有するため、基板Pの下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0047】
自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板Pとを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板P上に形成される。または、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板P上に形成できる。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板Pを浸積し、洗浄、乾燥することで基板P上に自己組織化膜が形成される。自己組織化膜を形成する前に、基板Pの表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりすることで基板P表面に前処理を施すことが望ましい。
【0048】
ここで、図6(a),(b)は、図4(a)におけるA−A´線矢視における側断面図を示しており、図6(c)は、図4(a)に対応する基板Pにおける平面図を示している。
このようにして自己組織化膜形成法によって、図6(a)に示すように、基板Pの全面を撥液化した後、前記ゲート配線40、及び容量線46により分断された状態に形成されたソース配線42のそれぞれの上面の所定の位置に選択的に撥液性を保持したまま、前記基板P上の撥液性を低下させる。ここで、所定の位置とは、後述する工程により、分断されたソース配線42間を接続する導電層49が設けられる位置を意味している。以下、この所定の位置を導電層接続部37として説明する。上述したように基板Pの全面にはFASにより形成された撥液膜Fによって撥液性が付与された状態となっているので、前記導電層接続部37に撥液性を選択的に残すために、図6(b)に示すように、前記導電層接続部37に照射される紫外線を遮断する形状を有したマスクMを用いる。そして、例えば波長170〜400nmの紫外光を基板P上に照射している。
【0049】
すると、前記導電層接続部37以外の領域は、紫外線がマスクMによって遮られることが無く、基板P上に紫外線が直接照射される。すると、前記導電層接続部37以外の撥液性を低下させつつ、図6(c)に示すように、ソース配線42の導電層接続部37にのみに選択的に撥液性を残した状態とすることができる。なお、撥液性を低下させる程度としては、紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することもできる。
また、マスクMとして、例えばハーフトーンマスクを用いることで、バンク51上に照射される紫外線に対して、前記導電層接続部37以外のソース配線42部分、ゲート配線40、容量線46、及びドレイン電極41上に照射される紫外線量を増やし、撥液性の強さを所望の状態になるように調節できる。
【0050】
ここで、ゲート配線40、ソース配線42、及び容量線46の上面における濡れ性は、吐出される金属保護層形成材料が濡れ拡がる程度の撥液性を有していることが望ましい。また、バンク51上面における撥液性は、少なくとも、後述する金属保護層を液滴吐出法によって形成する際に、バンク51上に乗った金属保護層形成材料(機能液)を弾く程度の強さとなっていることが望ましい。
このようにすれば、ばパターン形成領域57に金属保護層を配置する際、バンク51上面に残された撥液性によって、金属保護層形成材料がバンク上に乗った場合でも、前記パターン形成領域57内に確実に落とし込むことができる。
【0051】
(金属保護層の形成工程)
図7は、前記ソース配線42、及び前記ゲート配線40に金属保護層層(キャップ層)42を積層する工程を説明する図である。なお、図7(a),(b)は、それぞれ図4(a)におけるA−A’線に沿う断面形状と同じ基板Pを示す図であり、図7(c)は、金属保護層42を形成後における基板Pの平面図である。
まず、図7(a)に示すように、前記液滴吐出装置IJを用いて、金属保護層形成材料47aを、各配線40,41,42,46上に配置する。ここでは、前記金属保護層形成材料47aとしては、導電性微粒子としてNi(ニッケル)を用い、溶媒(分散媒)として水、及びジエタノールアミンを用いたものを吐出配置する。なお、導電性微粒子としては、Ni以外のTiやW、Mn、あるいはこれらの金属を主成分とする合金を用いてもよい。
このとき、バンク51の上面には上述したように、少なくとも金属保護層形成材料47aを弾く程度の撥液性が付与されていることから、各配線40,41,42,46が形成されているパターン形成領域57内に良好に落とし込まれるようになる。
また、各配線40,41,42,46の表面上の撥液性は、金属保護層形成材料47aが濡れ拡がる程度となっているが、後述する工程で導電層が接続されるソース配線42の各導電層接続部37には、前述したように撥液膜Fが形成されているため、金属保護層形成材料47を弾き、この導電層接続部37上に金属保護層47が積層されることがない。
【0052】
金属保護層形成材料47aを吐出した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる加熱処理によって行うことができる。処理条件は、例えば加熱温度180℃、加熱時間60分間程度である。この加熱についても、窒素ガス雰囲気下など、必ずしも大気中で行う必要はない。
【0053】
また、この乾燥処理は、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、先の第1電極層形成工程後の中間乾燥工程で挙げたものを用いることができる。また加熱時の出力も同様に100W〜1000Wの範囲とすることができる。
【0054】
なお、吐出工程後の金属保護層47は、微粒子間の密着性を向上させるために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、液中での分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤が導電性微粒子の表面にコーティングされている場合には、このコーティング剤も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0055】
この熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
以上の工程により、吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の密着性が確保され、図7(b),(c)に示すように、撥液膜Fが形成されていない領域、すなわち、導電層接続部37以外のソース配線42、ゲート配線40、容量線46上に金属保護層47が形成される。
【0056】
このようにして、金属保護層47を形成した後、紫外光の照射、又は紫外線と熱処理(加熱)との組み合わせ等を用いることで、前記撥液膜Fを除去する。
このようにゲート配線40、ソース配線42、容量線46を金属保護層47で覆うことにより、金属イオンの拡散を防止することで、これら配線40,42,46に導通するTFTを良好に動作させることができるようになる。
【0057】
ところで、ソース配線42の導電性と金属保護層47の導電性とを比較すると、金属保護層47の方がその導電性が低くなっている。そのため、分断されたソース配線42の全面を金属保護層47が覆っている場合には、ソース配線42間を導通させる導電膜を形成する際にエッチングなどによって金属保護膜47の一部を除去して、ソース配線42を露出させる必要がある。
本発明における膜パターンの形成方法では、導電膜を形成するソース配線42の導電層接続部37に選択的に撥液性を残すことで、この部分に予め金属保護層47が形成されないようにしている。よって、後述する導電層を形成する際に、この導電層接続部37における金属保護層47を除去する工程を簡略化することができる。このように、分断された状態に形成されたソース配線42間を導電膜によって接続する際、導電層接続部37の金属保護層47を除去することなく、直接ソース配線42間を導電膜によって導通させることができる。
【0058】
(積層部形成工程)
続いて、図8に示すようにして、上記工程で形成されたゲート配線40、分断された状態のソース配線42等の膜パターン上に新たに配線層を形成する。ここで、バンク51の表面の親液性が十分でないと、バンク51の表面に直接ソース電極等を形成する場合、電極形成用の機能液がバンク51によってはじかれて、良好な膜パターンを形成することができない。そこで、ソース電極等を形成する前に予め下地となるバンク51の表面の撥液性を紫外線照射等により低下させて、十分な親液性が付与された状態にしておく。
【0059】
バンク51の表面を親液化した後、図8に示すように、プラズマCVD法により、基板P上の全面に対して、絶縁膜31、活性層32、コンタクト層33の連続成膜を行う。ここで、図8(a)は基板Pにおける平面図を示し、図8(b)は図8(a)におけるA−A´線矢視による断面図を示している。
このとき、金属保護層47が形成されていないソース配線42は、バンク51に対して凹部形状となっている。このとき、絶縁膜31は、前記凹部の内壁面に沿って形成されることで、その上面は厳密には平坦面とはならないが、本実施形態では、説明を簡略化するために、CVD法の条件を適宜調節することにより、この絶縁膜31が凹部形状を埋め込んだ状態に形成され、基板P上を平坦化するものとする。具体的には、図8に示すように、絶縁膜31として窒化シリコン膜を用い、この絶縁膜によって平坦化された面上に、活性層32としてのアモルファスシリコン膜、コンタクト層33としてのn+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることによりプラズマCVD法等によって連続して成膜する。
【0060】
次いで、図9に示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、図9(a)に示すように、ゲート配線40とソース配線42の交差部56上、ゲート電極41上、及び容量線46上に、レジスト58a,58b,58cを配置する。ここで、図9(b)〜図11(b)は、それぞれ図9(a)〜図11(a)におけるA−A’線に沿う断面図であり、図9(c)〜図11(c)は、それぞれ図9(a)〜図11(a)におけるB−B’線に沿う断面図である。なお、交差部56上に配置するレジスト58aと容量線46上に配置するレジスト58bとは、接触しないように形成される。また、ゲート電極41上に配置するレジスト58cには、ハーフ露光を行うことにより、図9(b)に示すように、溝59を形成しておく。また、図9(c)〜図11(c)においては、容量線46によって分断されたソース配線42の導電層接続部37を示しているが、ゲート線40によって分断されたソース配線42の導電層接続部37についても同一の構造を有しており、その図示を省略することとする。
【0061】
次いで、基板Pの全面に対してエッチング処理を施して、コンタクト層33及び活性層32を除去する。更に、エッチング処理を施して、絶縁膜31を除去する。
これにより、図10に示すように、レジスト58(58a,58b,58c)を配置した領域以外から、コンタクト層33、活性層32、絶縁膜31が取り除かれる。一方、レジスト58が配置された所定位置には、絶縁膜31と半導体膜(コンタクト層33,活性層32)からなる積層部35が形成される。このとき、図10に示すように、前述した金属保護層47が形成されていない導電層接続部37が露出した状態となる。
【0062】
なお、ゲート電極41上に形成される積層部35では、上述したようにレジスト58cにハーフ露光を行って溝59を形成しておいたので、エッチング前に再度現像することにより溝が貫通する。図10(b)示すように、溝59に対応するコンタクト層33が除去され、2つに分断された状態に形成される。これにより、ゲート電極41上に活性層32及びコンタクト層33からなるスイッチング素子としてTFT30が形成される。
そして、図11(a)〜(c)に示すように、コンタクト層33を保護する保護膜60として窒化シリコン膜を基板Pの全面に成膜する。
【0063】
(画素電極形成工程)
図12〜図15は、画素電極等の形成工程を説明する図である。なお、図12(b)〜図15(b)は、それぞれ図12(a)〜図15(a)におけるA−A’線に沿う断面図であり、図12(c)〜図15(c)は、それぞれ図12(a)〜図15(a)におけるB−B’線に沿う断面図である。なお、図12(c)〜図15(c)においては、容量線46によって分断されたソース配線42の導電層接続部37を示しているが、ゲート線40によって分断されたソース配線42の導電層接続部37についても同一の構造を有しており、その図示を省略することとする。
【0064】
本工程では、ソース電極43、ドレイン電極44、導電層49及び画素電極45を形成する。
ソース電極43、ドレイン電極44、及び導電層49は、ゲート配線40やソース配線42を形成したのと同じ材料によって形成することができる。画素電極45は、透明性が必要であることから、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成することが望ましい。これらの形成には、前記ゲート配線40、ソース配線42等を形成した工程と同様に、液滴吐出法が用いられる。
【0065】
まず、図12(a)に示すようにして、ゲート配線40、ソース配線42、容量線46等を覆うバンク61をフォトリソグラフィ法に基づいて形成する。すなわち、図12(a)〜(c)に示すように、略格子状のバンク61が形成する。なお、ソース配線42とゲート配線40、及びソース配線42と容量線46との交差部56には開口部62が形成され、TFT30のドレイン領域に対応する位置には開口部63が形成される。
【0066】
また、開口部62,63は、図12(b)に示すように、ゲート電極41上に形成した積層部35(TFT30)の一部が露出するように形成される。すなわち、バンク61が積層部35(TFT30)を図12(a)中X方向に2分割するように形成される。
このバンク61を構成する材料としては、例えば、前記バンク51と同様に、ポリシラザンを主成分とする無機質の材料を用いても良いし、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料等を用いてもよい。インクを良好に配置するために、バンク61の表面は撥液性を有していることが望ましい。そこで、バンク61としては、素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填した材料を用いるようにしてもよい。
【0067】
ここで、前記バンク61により形成された開口部62は、分断されたソース配線42を連結する導電層、又はソース電極の形成位置に対応している(図15参照)。また、バンク61に形成された開口部63は、ドレイン電極の形成位置に対応している(図15参照)。また、それ以外の部分でバンク61により取り囲まれた領域は、画素電極の形成位置に対応している(図15参照)。すなわち、バンク61の開口部62,63内及びバンク61により取り囲まれた領域に導電性材料を配置することにより、分断されたソース配線42を連結する導電層、ソース電極、ドレイン電極、画素電極が形成される。
【0068】
次いで、基板Pの全面に成膜した保護膜60をエッチング処理により除去する。これにより、図13(a)〜(c)に示すように、バンク61が配置されていない領域上に成膜した保護層60は、取り除かれる。
このとき、導電層接続部37には金属保護層47が形成されていないので、前記バンク61から露出した保護膜60をエッチングした後に、金属保護層47を除去するための別のエッチング工程を行うことなく、開口部62内にソース配線42を露出させることができる。よって、分断されたソース配線42間を導通させる工程を簡略化することができる。
【0069】
次いで、図14(a)〜(c)に示すように、前述した液滴吐出装置IJによって、ソース電極43やドレイン電極44等の電極材料を含む電極用インクをバンク61の開口部62,63内に吐出・配置する。電極用インクは、ゲート配線40等を形成するために用いた配線パターン用インクと同様のものを用いることができる。基板Pに電極用インクを吐出した後には、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理、焼成処理を行う。乾燥・焼成処理により、導電性微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
なお、図中では、ソース電極43やドレイン電極44を単層膜としたが、これらの電極は複数の層からなる積層膜としてもよい。これらの層は、材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返すことにより、順次形成することができる。
このようにして、基板P上には、図14(a)〜(c)に示すように、分断されたソース配線42を連結する導電層49、ソース電極43、ドレイン電極44が形成される。
このように、本実施形態では、上述したように、上層側の配線層(ソース電極43,ドレイン電極44,画素電極45)を形成する前に下地となるバンク51の表面を親液化しているので、バンク51と配線となるインク(機能液)との濡れ性が向上し、均一な配線パターンを形成することができる。
なお、図示しないが、ゲート配線40によって分断されていたソース配線42についても、同様に導電層49によって導通された状態となっている。したがって、ソース配線42は、導電層49により、連続した膜パターンとして機能することとなる。
【0070】
次いで、バンク61において画素電極45とドレイン電極44との境界に位置する部分61aをレーザ等により除去し、画素電極45の電極材料を含む画素電極用インクをバンク61により取り囲まれた領域内に吐出・配置する。画素電極用インクは、ITO等の導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。基板Pに画素電極用インクを吐出した後には、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理、焼成処理を行う。乾燥・焼成処理により、導電性微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
このようにして、基板P上には、図15(a)〜(c)に示すように、ドレイン電極44と導通する画素電極45が形成される。
【0071】
なお、本工程では、ドレイン電極44と画素電極45を導通させるために、これらの境界部分のバンク61をレーザ等により除去したが、本工程はこれに限定されない。例えば、この境界部分のバンク61の厚みを予めハーフ露光等によって薄くしておけば、この部分のバンク61を除去しなくても、画素電極用インクをドレイン電極44に重なるように吐出・配置することができる。
以上の工程を経ることにより、アクティブマトリックス基板20が製造される。
【0072】
本実施形態によれば、分断された状態に形成されたソース配線42における導電層接続部37に対して、前記導電層接続部37上には、金属保護層47が積層されることが無い。このように、前記所定の位置にはキャップ層が積層されていないので、分断されている第2の膜パターン間を接続する導電膜を形成する場合に、従来のように導電膜を形成する膜パターンを覆っているキャップ層を除去する工程を行わずに、第2の膜パターン間を前記導電膜により導通させることができる。
このように、導電層接続部37には金属保護層47が積層されていないので、導電膜39によって分断されたソース配線42間を接続する際に、ソース配線42間を導通する際の金属保護層47のエッチングによる除去工程を無くすことにより、ソース配線42を形成する工程の簡略化を図ることができ、このソース配線42に導通するTFT30を有したアクティブマトリクス基板の生産性を向上できる。
【0073】
なお、本実施形態では、アクティブマトリクス基板の好適な一形態例について説明したが、その構成部材の形状や組み合わせは係る形態に限定されるものではない。例えば、ソース配線42をゲート配線40との交差部56において分割する構成について説明したが、ゲート配線40の他に、容量線を備えた構造にも適応可能である。このとき、ソース配線42は、ゲート配線42と容量線によって分断された状態となっているが、それぞれの交差部を導通させる導通部を本発明の膜パターンの形成方法を用いて形成することで、工程の簡略化を図るとともにその生産性を向上させるようにしてもよい。
【0074】
(電気光学装置)
次に、上述した製造工程により得られたアクティブマトリックス基板20を備えた電気光学装置の一例である液晶表示装置100について説明する。
図16は、液晶表示装置100を対向基板側から見た平面図であり、図17は、図16のH−H’線に沿う断面図である。
なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0075】
図16及び図17において、液晶表示装置(電気光学装置)100は、アクティブマトリックス基板20を含むTFTアレイ基板110と対向基板120とが光硬化性の封止材であるシール材152によって貼り合わされ、このシール材152によって区画された領域内に液晶150が封入、保持されている。シール材152は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0076】
シール材152の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り153が形成されている。シール材152の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板110の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板110の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板120のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板110と対向基板120との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板110の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板110の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。
なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶150の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板120において、TFTアレイ基板110の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0077】
このような構造を有するの画像表示領域においては、図18に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0078】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図10に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0079】
図18は、液晶表示装置100を構成する等価回路図を示すものである。
このように、前記アクティブマトリックス基板20を液晶表示装置100に用いた場合には、画像表示領域には複数の画素100aがマトリクス状に構成されている。これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するソース配線42がソース電極43を介してTFT30のソースに電気的に接続されている。ソース配線42に供給する画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のソース配線42同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
また、TFT30のゲートには、ゲート配線40がゲート電極41を介して電気的に接続されている。そして、所定のタイミングで、ゲート配線40にパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0080】
画素電極45は、TFT30のドレインにドレイン電極44を介して電気的に接続されている。そして、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、ソース配線42から供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極45を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図17に示した対向基板120の対向電極121との間で一定期間保持される。
なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、容量線46によって、画素電極45と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量48が付加されている。ここで、前記容量線46によってソース配線42が分断された構造を適応してもよい。例えば、画素電極45の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量48により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0081】
また、前記のアクティブマトリクス基板20は、液晶表示装置以外の他の電気光学装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置等にも応用が可能である。有機EL表示装置は、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明における電気光学装置の範囲には、このような有機ELデバイスも含まれるものとする。
更に、アクティブマトリックス基板20は、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
本発明の液晶表示装置100によれば、TFT30に導通する、分断された状態に形成されるソース配線42を形成する工程を簡略化できるので、アクティブマトリクス基板自体の生産性を向上させることができる。生産性の高いアクティブマトリクス基板20を備えたことで、液晶表示装置100自体の生産性も向上し、コストの低減を図ることができる。
【0082】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図19は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図19において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図19に示す携帯電話600は、上述したように生産性が高く、コストの低減が図られた電気光学装置を備えているので、これを備えた電子機器自体も生産性が高く、低コストなものとなる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0083】
なお、上述した電子機器以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用することが可能である。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明についての好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】アクティブマトリックス基板の一部拡大図である。
【図2】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図4】アクティブマトリックス基板を製造する手順を示す図である。
【図5】図4に続く手順を示す図である。
【図6】図5に続く手順を示す図である。
【図7】図6に続く手順を示す図である。
【図8】図7に続く手順を示す図である。
【図9】図8に続く手順を示す図である。
【図10】図9に続く手順を示す図である。
【図11】図10に続く手順を示す図である。
【図12】図11に続く手順を示す図である。
【図13】図12に続く手順を示す図である。
【図14】図13に続く手順を示す図である。
【図15】図14に続く手順を示す図である。
【図16】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図17】液晶表示装置の断面図である。
【図18】液晶表示装置における等価回路を示す図である。
【図19】電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
P…基板、F…撥液膜(自己組成化膜)、20…アクティブマトリクス基板、30…TFT(スイッチング素子)、37…導電層接続部(所定の位置)、39…導電膜、40…ゲート配線(第1の膜パターン)、42…ソース配線(第2の膜パターン)、47…金属保護層(キャップ層)、51…バンク、52…ゲート配線用形成領域(第1のパターン形成領域)、53…容量線形成領域(第1のパターン形成領域)、55…ソース配線用形成領域(第2のパターン形成領域)、100…液晶表示装置(電気光学装置)、600…携帯電話(電子機器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた、バンクにより区画されたパターン形成領域に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法において、
前記基板上に、第1のパターン形成領域と、該第1のパターン形成領域に交差し、該交差部において分断された第2のパターン形成領域とを備えるパターン形成領域を区画するバンクを形成する工程と、
前記第1のパターン形成領域に機能液を配置することで第1の膜パターンとし、前記第2のパターン形成領域に機能液を配置することで第2の膜パターンとする工程と、
前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に撥液処理を施す工程と、
その後、分断した状態に形成された前記第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置の撥液性を選択的に保持させたまま、前記基板上の撥液性を低下させる工程と、
撥液性を低下させた後、前記第1の膜パターン、及び前記第2の膜パターン上にキャップ層を積層する工程と、
前記キャップ層を積層した後、分断した状態に形成された第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置における撥液性を除去する工程と、
前記各所定の位置間に導電膜を形成し、分断した状態に形成された第2の膜パターンを電気的に接続させる工程と、
を備えたことを特徴とする膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記バンク上面における低下された撥液性は、少なくともバンク上に配置されたキャップ層となる機能液を弾く程度の強さとなっていることを特徴とする請求項1に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記バンクの形成材料は、固形分としてポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサンのいずれかを主成分とする無機質の材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に自己組織化膜を形成することにより撥液処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜パターンの形成方法によって形成される、第1の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するゲート配線とし、第2の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するソース配線として備えたことを特徴とするアクティブマトリクス基板。
【請求項6】
請求項5に記載のアクティブマトリクス基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板上に設けられた、バンクにより区画されたパターン形成領域に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法において、
前記基板上に、第1のパターン形成領域と、該第1のパターン形成領域に交差し、該交差部において分断された第2のパターン形成領域とを備えるパターン形成領域を区画するバンクを形成する工程と、
前記第1のパターン形成領域に機能液を配置することで第1の膜パターンとし、前記第2のパターン形成領域に機能液を配置することで第2の膜パターンとする工程と、
前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に撥液処理を施す工程と、
その後、分断した状態に形成された前記第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置の撥液性を選択的に保持させたまま、前記基板上の撥液性を低下させる工程と、
撥液性を低下させた後、前記第1の膜パターン、及び前記第2の膜パターン上にキャップ層を積層する工程と、
前記キャップ層を積層した後、分断した状態に形成された第2の膜パターンのそれぞれの所定の位置における撥液性を除去する工程と、
前記各所定の位置間に導電膜を形成し、分断した状態に形成された第2の膜パターンを電気的に接続させる工程と、
を備えたことを特徴とする膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記バンク上面における低下された撥液性は、少なくともバンク上に配置されたキャップ層となる機能液を弾く程度の強さとなっていることを特徴とする請求項1に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記バンクの形成材料は、固形分としてポリシラザン、ポリシランまたはポリシロキサンのいずれかを主成分とする無機質の材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記第1の膜パターン、前記第2の膜パターン、及び前記バンクを含む基板の全面に自己組織化膜を形成することにより撥液処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜パターンの形成方法によって形成される、第1の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するゲート配線とし、第2の膜パターンを薄膜トランジスタに導通するソース配線として備えたことを特徴とするアクティブマトリクス基板。
【請求項6】
請求項5に記載のアクティブマトリクス基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−332158(P2006−332158A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150586(P2005−150586)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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