説明

エンジンの過給装置

【課題】広い運転領域で、排気性能を向上すること。
【解決手段】排気ガスの一部を排気通路15から吸気通路13に還流するEGR通路70を設ける。EGR通路70からのEGRを過給可能な経路に電動過給機30を設ける。EGR通路70には、当該EGR通路の流量を変更するEGR弁71を設ける。EGR弁71および電動過給機30を運転状態に応じて制御する制御手段100を設ける。制御手段100は、所定の減速条件が成立した場合にEGR弁71を開くとともに、電動過給機30を作動させる。燃料カット後に新気が排出されることによる温度低下をEGRによって抑制することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの過給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジントルクの増大を図る手段として、排気ガスのエネルギーを利用して吸気を過給する排気ターボ過給機は周知であるが、この排気ターボ過給機はエンジン回転数の影響を大きく受け、エンジンの低速域で過給圧が不足するという欠点がある。これに対し、電気的に駆動される電動過給機は、エンジンの低速域で高い過給圧を発生させることができる。
【0003】
他方、自動車の排気ガス対策の一つとして、窒素酸化物(NOx)を低減するためにEGR(EGR)が有効として採用される場合も多い。
【0004】
このような電動過給機を備え、且つEGRを利用したエンジンとして、例えば特許文献1には、排気ガスの一部を吸気通路に還流するEGR通路を設け、このEGR通路からのEGRを過給できる位置に電動過給機を設けた構成が知られている。
【特許文献1】特開平10−103165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンの排気性能が低下する運転領域として、特許文献1では、出力向上が求められる運転領域で電動過給機を作動させていた。
【0006】
しかしながら、エンジンの排気ガスに含まれる有害成分は、エンジンの減速時においても増加することが本件発明者の鋭意研究の結果、明らかになってきた。
【0007】
すなわち、エンジンが減速(ガソリンエンジンであれば、例えばスロットル全閉状態でブレーキが踏み込まれている状態)すると、燃料カットが実行される結果、新気が触媒に導入されて触媒の温度が低下し、触媒の浄化性能が低減するという現象があり、その後の加速時に排気性能がさらに低下することが判明してきた。
【0008】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、広い運転領域で、排気性能を向上することのできるエンジンの過給装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、排気ガス浄化装置を有し、且つ減速運転時に燃料カットが実行されるエンジンにおいて、排気ガスの一部を排気通路から吸気通路に還流するEGR通路と、前記EGR通路からのEGRを過給可能な経路に設けられた電動過給機と、前記EGR通路に設けられ、当該EGR通路の流量を変更するEGR弁と、前記EGR弁および前記電動過給機を運転状態に応じて制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、所定の減速条件が成立した場合に前記EGR弁を開くとともに、前記電動過給機を作動させるものであることを特徴とするエンジンの過給装置である。この態様では、減速時にEGRが電動過給機に過給された状態で吸気通路に導入されるので、燃料カット後も、電動過給機の作動によって、エンジンを通り抜けた空気を取り込んで吸気側に戻すリサーキュレーション量を増大させることによって排気ガス浄化装置の温度低下を抑制することが可能となる。また、減速時のオルタネータの発電電力に基づいて電動過給機を作動することができるので、バッテリによる電動過給機を作動するための消費電力を節約できる。
【0010】
好ましい態様において、排気ガスによってタービンが駆動される排気ターボ過給機と、この排気ターボ過給機による過給圧を検出する過給圧検出手段とをさらに備え、前記制御手段は、減速時に前記過給圧検出手段が検出した過給圧が、前記電動過給機により得られる過給圧よりも高い場合には、前記EGR通路を閉じ、前記電動過給機による過給を禁止するものである。この態様では、排気ターボ過給機による過給圧によって、減速時に新気がEGR通路に吹き抜けるのを抑制することができる。
【0011】
好ましい態様において、前記EGR通路は、前記排気通路中のタービン下流側からEGRを吸気通路に還流するように形成されている。この態様では、排気ターボ過給機を設けた場合に、タービンを駆動し終わった排気ガスが吸気通路に還流されるので、減速後の過給応答性の低下を抑制することができる。従って、頻繁に減速/加速が繰り返されるような運転状況であっても、ターボラグが生じにくくなるという利点がある。
【0012】
好ましい態様において、エンジン回転速度を検出する速度検出手段を設け、前記制御手段は、減速時のエンジン回転速度が高いほど、前記電動過給機の回転速度を抑制するものである。この態様では、減速時に高速でエンジンが回転している場合には、EGR通路から導入されるEGR量も充分に確保することができるので、電動過給機をエンジンの回転速度に応じて必要充分な回転速度で運転することにより、減速時のエンジンの空気吸い込み能力に応じて電動過給機を運転し、排気ガス浄化装置の冷却抑制と電動過給機の消費電力抑制とを両立することが可能となる。
【0013】
好ましい態様において、前記電動過給機に過給された空気を前記吸気通路に導く過給通路と、前記過給通路と前記EGR通路とを連通するEGR連通状態と、前記吸気通路に前記過給通路のみを連通させることにより前記過給通路と前記EGR通路との連通を遮断するEGR遮断状態との何れか一つの状態に択一的に流路を切り換える切換弁とを備え、前記制御手段は、所定の運転状態では、前記EGR遮断状態に流路を切り換えて前記電動過給機を作動させるとともに、前記減速条件が成立した場合に前記EGR連通状態に流路を切り換えるように前記切換弁を制御するものである。この態様では、電動過給機を所定の運転領域(主としてエンジンの低速運転領域)で電動過給機を作動させることにより、排気ターボ過給機のないエンジンや或いは排気ターボ過給機での過給圧が得られにくい運転領域においても過給圧を高め、燃費や排気性能の向上を図ることができるとともに、エンジンの減速時には、EGRを過給して送給することができるので、排気ガス浄化装置の浄化性能低減を可及的に抑制し、排気性能を維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明は、減速時にEGRが電動過給機に過給された状態で吸気通路に導入されるので、排気ガス浄化装置の浄化性能低減を可及的に抑制することができる結果、広い運転領域で、排気性能を向上することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の一形態による過給機付きエンジンの全体構成図である。
【0017】
図1を参照して、同図に示すエンジンはディーゼルエンジンであり、そのエンジン本体1には複数の気筒(図示の例では4気筒)1a〜1dが設けられている。各気筒1a〜1dには、燃焼室2が形成されている。各燃焼室2には、吸気ポート及び排気ポートが開口し、これらのポートに吸気弁3および排気弁4が設けられている。さらに各燃焼室2に対して燃料噴射弁6が装備されている。本実施形態において、各気筒1a〜1dを仮に1番気筒1a〜4番気筒1dと定義すると、その燃焼順序は、1番気筒1a、3番気筒1c、4番気筒1d、2番気筒1bの順となっている。
【0018】
上記エンジン本体1には、各気筒1a〜1dに新気を供給する吸気通路10と、各気筒1a〜1dからの排気ガスを導出する排気通路15とが接続されている。
【0019】
吸気通路10は、各気筒1a〜1dの吸気ポートに接続される気筒別の吸気通路11を有する吸気マニホールド12と、その上流の共通吸気通路13とを備えている。
【0020】
また、排気通路15は、各気筒1a〜1dの排気ポートに接続される気筒別の排気通路16a〜16dを有する排気マニホールド17と、その下流の共通排気管18と、共通排気管18の下流に接続されたディーゼルスモーク浄化装置28とを備えている。ディーゼルスモーク浄化装置28は、本実施形態において、排気ガス浄化装置の一例をなすものであり、触媒機能を有し、かつディーゼルスモークの排気微粒子を捕集するためのものであり、図では簡略化されているが、具体的には、酸化触媒とこの酸化触媒の下流側に配置されたパティキュレートフィルタユニットとによって構成されている。
【0021】
また、エンジンには、排気ターボ過給機20と、電動過給機30とが設けられている。
【0022】
排気ターボ過給機20は、排気ガスのエネルギーで駆動されて回転するタービン21と、このタービン21にシャフト22を介して連結されたコンプレッサ23とを備え、タービン21の回転に連動したコンプレッサ23の回転により吸気を過給するようになっている。上記タービン21は共通排気管18に介設されている。またコンプレッサ23は、共通吸気通路13に介設されている。共通吸気通路13におけるコンプレッサ23より下流には、過給された空気を冷却するためのインタークーラ26が設けられている。また、共通吸気通路13の上流側には、エアクリーナ27が設けられている。
【0023】
一方、電動過給機30は、インタークーラ26より下流の共通吸気通路13に設けられている。この電動過給機30は、電気モータにより直接駆動されるインペラ等で構成されている。電動過給機30は、図略のオルタネータとバッテリの双方から給電可能に構成されている。
【0024】
この電動過給機30は、吸気マニホールド12と共通排気管18との間を連通するEGR通路70に配置されている。このEGR通路70には、EGR弁71が設けられ、このEGR弁71によって開弁量を調整できるようになっている。
【0025】
エンジンには、エンジン制御ユニット100が設けられている。エンジン制御ユニット100は、CPU101、メモリ102、インターフェース103並びにこれらのユニット101〜103を接続するバス104を有している。
【0026】
メモリ102には、エンジン全体を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。
【0027】
図2は、本実施形態に係るエンジン制御ユニットの制御マップM1を説明するためのエンジン回転速度と電動過給機30への目標供給電流との関係を示す図である。
【0028】
図2を参照して、本実施形態に係るエンジン制御ユニット100のメモリ102には、図示のグラフに基づき、減速時におけるエンジン回転速度と電動過給機30に供給される電流として目標とされる目標供給電流との関係が制御マップM1として記憶されている。エンジン回転速度が速くなるほど、排気ターボ過給機20による過給圧は高くなるので、本実施形態においては、実験値等に基づき、相対的に目標供給電流が下がるように設定されている。これにより本実施形態では、電動過給機30に対し、必要充分な電流を供給することが可能となるので、バッテリの消費電力を節約することが可能になる。
【0029】
図3は、本実施形態に係るエンジン制御ユニットの制御マップM2を説明するためのエンジンの運転領域と過給の状態との関係を示す図である。
【0030】
図3を参照して、本実施形態に係るエンジン制御ユニット100のメモリ102には、図示のグラフに基づき、吸気の過給領域とEGRを還流させるEGR還流領域Aとが記憶されている。EGR還流領域Aのうち、比較的高速側の高負荷側運転領域A1では、電動過給機30が作動する領域として設定されている。これらの値は、実験等で得られたデータに基づき、エンジン制御ユニット100の制御マップM2として記憶されている。この制御マップM2に基づき、エンジン制御ユニット100は、電動過給の要否やEGRの要否を判断できるようになっている。
【0031】
図1に戻って、インターフェース103には、入力要素として、スロットル開度センサ51、エンジン回転数を検出する回転速度センサ52、過給圧を検出する過給圧センサ53、アクセル開度センサ54を含む各種のセンサが接続されており、これらセンサ51〜54等からの検出信号を受け、これらの検出信号によって運転状態を判定できるようになっている。また、インターフェース103には、出力要素として、図略のコントローラや、ドライバと接続されており、これらのユニットを介して電動過給機30や、EGR弁71を駆動できるように構成されている。
【0032】
次に、エンジン制御ユニット100による本実施形態の制御例を説明する。
【0033】
図4は図1の実施形態に係る運転制御の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図4を参照して、エンジン制御ユニット100は、まず各種のデータを読み込み、運転状態を把握する(ステップS20)。次いで、エンジン制御ユニット100は、所定の減速条件が成立しているか否かを判定する(ステップS21)。ここで「減速条件」とは、エンジンが所定の速度(例えば、1500rpm)以上で走行している状態で、アクセルが踏み込まれた状態である。尤も、ガソリンエンジンの場合には、「減速条件」として、スロットル開度が全閉であることを要件の一つにしてもよい。
【0035】
減速条件が成立している場合、エンジン制御ユニット100は、燃料供給カットを実行する(ステップS22)。このため、それ以降は、各気筒での燃焼がなくなり、新気が排気通路15から共通排気管18を経てディーゼルスモーク浄化装置28を通過することになる。これによるディーゼルスモーク浄化装置28の温度低下を防止するため、エンジン制御ユニット100は、まず過給圧センサ53の検出値に基づいて、排気ターボ過給機20による過給圧が所定のしきい値Sp未満であるか否かを判定する(ステップS23)。ここで、しきい値Spは、電動過給機30による最大過給圧に基づいて決定される。EGR弁71を開くことによって高圧の新気がEGR通路70に吹き出してしまうため、過給圧がしきい値Sp未満である場合にのみ、EGR弁71を開くようにしているのである。
【0036】
排気ターボ過給機20による過給圧がしきい値Sp以上である場合(ステップS23において、YES)、エンジン制御ユニット100は、ディーゼルスモーク浄化装置28の温度低下を抑制するために、EGR弁71を全開状態に制御する(ステップS24)。
【0037】
次いで、電動過給機30を図2で説明した制御マップM1の設定に基づいて作動し(ステップS25)、エンジン制御ユニット100は、ステップS20に復帰する。これにより、エンジンの回転速度に応じた適切な過給圧で電動過給機30を駆動することが可能になる。
【0038】
他方、ステップS23において、排気ターボ過給機20による過給圧がしきい値Sp以上である場合には、エンジン制御ユニット100は、EGR弁71を全閉し(ステップS26)、電動過給機30を停止して(ステップS27)、ステップS20に復帰する。
【0039】
さらに、ステップS21において、減速条件が成立していない場合、エンジン制御ユニット100は、運転状態に応じて燃料噴射を実行し(ステップS28)、図3で説明した制御マップM2に基づいて、EGR弁71を制御する(ステップS29)。さらにエンジン制御ユニット100は、電動過給運転領域であるか否かを判定する(ステップS30)。仮に運転状態が電動過給運転領域である場合(ステップS30において、YES)、エンジン制御ユニット100は、ステップS24に移行する。他方、電動過給運転領域でない場合(ステップS30において、NO)には、ステップS28に移行し、電動過給機30をOFFにしてステップS20に移行する。
【0040】
以上説明したように本実施形態では、減速時にEGRが電動過給機30に過給された状態で吸気通路10の吸気マニホールド12に導入されるので、燃料カット後も電動過給機20の作動によって、エンジン本体1を通り抜けた空気を取り込んで吸気側に戻すリサーキュレーション量を増大させることによってディーゼルスモーク浄化装置28の温度低下を抑制することが可能となる。また、減速時のオルタネータの発電電力に基づいて電動過給機30を作動することができるので、バッテリによる電動過給機30を作動するための消費電力を節約できる。
【0041】
また本実施形態では、排気ガスによってタービン21が駆動される排気ターボ過給機20と、この排気ターボ過給機20による過給圧を検出する過給圧検出手段としての過給圧センサ53とをさらに備え、減速時に過給圧センサ53が検出した過給圧が、電動過給機30により得られる過給圧(しきい値Sp)よりも高い場合には、EGR弁71によってEGR通路70を閉じ、電動過給機30による過給を禁止するように構成されている。このため本実施形態では、排気ターボ過給機20による過給圧によって、減速時に新気がEGR通路70に吹き抜けるのを抑制することができる。
【0042】
また本実施形態では、EGR通路70は、共通排気管18中のタービン21下流側からEGRを吸気通路10の吸気マニホールド12に還流するように形成されている。このため本実施形態では、排気ターボ過給機20を設けた場合に、タービン21を駆動し終わった排気ガスが吸気通路10の吸気マニホールド12に還流されるので、減速後の過給応答性の低下を抑制することができる。従って、頻繁に減速/加速が繰り返されるような運転状況であっても、ターボラグが生じにくくなるという利点がある。
【0043】
また本実施形態では、エンジン回転速度を検出する速度検出手段としての回転速度センサ52を設け、図2で説明した制御マップM1の設定に基づき、減速時のエンジン回転速度が高いほど、電動過給機30の回転速度を抑制するものである。減速時に高速でエンジンが回転している場合には、EGR通路70から導入されるEGR量も充分に確保することができるので、電動過給機30をエンジンの回転速度に応じて必要充分な回転速度で運転することにより、減速時のエンジンの空気吸い込み能力に応じて電動過給機30を運転し、ディーゼルスモーク浄化装置28の冷却抑制と電動過給機30の消費電力抑制とを両立することが可能となる。
【0044】
従って、本実施形態によれば、広い運転領域で、排気性能を向上することができるという顕著な効果を奏する。
【0045】
上述した実施形態は本発明の好ましい具体例に過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0046】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお以下の説明において、同等の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
図5は、本発明の別の実施形態に係るエンジンの全体構成図である。
【0048】
図5を参照して、同図に示すエンジンは、ガソリンエンジンであり、エンジン本体1には、気筒1a〜1d毎に点火プラグ5が設けられている。また、排気浄化装置としては、三元触媒を備えたガソリンエンジン用の触媒ユニット128が共通排気通路18の下流側に設けられている。
【0049】
図5の実施形態に係るエンジンには、電動過給機30に過給された空気を吸気通路10の吸気マニホールド12に導く過給通路131と、この過給通路131をバイパスするバイパス通路132とを有している。バイパス通路132には、その流量を調整するバイパス弁32が設けられ、アクチュエータ33でエンジン制御ユニット100により開閉制御される構成になっている。また、バイパス通路132には、インタークーラ26が配置され、このインタークーラ26の下流側には、スロットル弁14が配置されている。
【0050】
本実施形態に係るEGR通路70は、排気ターボ過給機20の上流側と過給通路131の間に接続される構成になっている。さらに、過給通路131には、切換弁133が配置されている。切換弁133は、当該過給通路131とEGR通路70とを連通するEGR過給状態と、吸気通路10の共通吸気通路13に過給通路131のみを連通させることにより、EGR通路70と過給通路131との連通を遮断するEGR遮断状態と、EGR通路70を遮断して共通吸気通路13をバイパス通路132に連通するEGRバイパス状態との何れか一つの状態に択一的に流路を切り換えるように構成されている。
【0051】
図6および図7は、図5の実施形態に係る運転制御の一例を示すフローチャートである。
【0052】
図6を参照して、図5の構成においては、エンジン制御ユニット100が各種データを読み込み(ステップS40)エンジンの運転状態を把握した後、減速条件が成立しているか否かを判定する(ステップS41)。減速条件が成立している場合、エンジン制御ユニット100は、燃料カットを実行する(ステップS42)。その後、エンジン制御ユニット100は、過給圧センサ53の検出値に基づいて、排気ターボ過給機20による過給圧が所定のしきい値Sp未満であるか否かを判定する(ステップS43)。
【0053】
過給圧がしきい値Sp未満である場合、エンジン制御ユニット100は、切換弁133をEGR過給状態に切り換え(ステップS44)、EGR弁71を全開にする(ステップS45)。そして、バイパス弁を閉じ(ステップS46)、電動過給機30を作動させる。これにより、燃料カット後の排気ガスは、一部がEGR通路70から過給通路131を経由し、過給された状態で吸気マニホールド12に還流する。エンジン制御ユニット100は、電動過給機30をエンジン回転速度に対応する過給圧となるように作動させた後、ステップS40に復帰する。他方、ステップS43において、過給圧がしきい値Spよりも高い場合には、切換弁133をEGR遮断状態に切り換え(ステップS48)、EGR弁71を全閉にし(ステップS49)、バイパス弁32を開き(ステップS50)、電動過給機30を停止する。
【0054】
次に、ステップS41において、減速条件が成立していなかった場合、図7に示すように、運転状態に応じて燃料噴射が実行される(ステップS52)。次いで、エンジン制御ユニット100は、運転状態に応じて、EGR弁71を制御する(ステップS53)。次いで、エンジン制御ユニット100は、運転領域が電動過給運転領域であるか否かを判定し(ステップS54)、電動過給運転領域である場合(ステップS54において、YES)には、切換弁133をEGR遮断状態に切り換え(ステップS55)、ステップS46に移行する。他方、電動過給運転領域でない場合(ステップS54において、NO)には、切換弁133をEGRバイパス状態に切り換え(ステップS56)、ステップS50に移行する。
【0055】
上述した図5の構成は、ガソリンエンジンに好適な実施形態であるが、同じガソリンエンジンに好適な例として、図8に示す構成を採用してもよい。
【0056】
図8は本発明のさらに別の実施形態に係るエンジンの全体構成図である。
【0057】
図8の例では、過給通路131とバイパス通路132をそれぞれ排気ターボ過給機20の上流側に配置し、EGR通路70を排気ターボ過給機20のタービン21の下流側に接続している。
【0058】
上述した図5から図8の実施形態においては、電動過給機30を所定の運転領域(主としてエンジンの低速運転領域)で電動過給機30を作動させることにより、排気ターボ過給機20のないエンジンや或いは排気ターボ過給機20での過給圧が得られにくい運転領域においても過給圧を高め、燃費や排気性能の向上を図ることができるとともに、エンジンの減速時には、EGRを過給して送給することができるので、エンジン本体1を通り抜けた空気を取り込んで吸気側に戻すリサーキュレーション量を増大させることによって触媒ユニット128の温度低下を抑制することが可能になる。
【0059】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の一形態による過給機付きエンジンの全体構成図である。
【図2】本実施形態に係るエンジン制御ユニットの制御マップを説明するためのエンジン回転速度と電動過給機への目標供給電流との関係を示す図である。
【図3】本実施形態に係るエンジン制御ユニットの制御マップを説明するためのエンジンの運転領域と過給の状態との関係を示す図である。
【図4】図1の実施形態に係る運転制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の別の実施形態に係るエンジンの全体構成図である。
【図6】図5の実施形態に係る運転制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】図5の実施形態に係る運転制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係るエンジンの全体構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン本体
10 吸気通路
15 排気通路
17 排気マニホールド
18 共通排気管
20 排気ターボ過給機
26 インタークーラ
28 ディーゼルスモーク浄化装置(排気ガス浄化装置の一例)
30 電動過給機
32 バイパス弁
33 アクチュエータ
51 スロットル開度センサ
52 回転速度センサ
53 過給圧センサ
54 アクセル開度センサ
70 EGR通路
71 EGR弁
100 エンジン制御ユニット(制御手段の一例)
128 触媒ユニット(排気ガス浄化装置の一例)
131 過給通路
132 バイパス通路
133 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス浄化装置を有し、且つ減速運転時に燃料カットが実行されるエンジンにおいて、
排気ガスの一部を排気通路から吸気通路に還流するEGR通路と、
前記EGR通路からのEGRを過給可能な経路に設けられた電動過給機と、
前記EGR通路に設けられ、当該EGR通路の流量を変更するEGR弁と、
前記EGR弁および前記電動過給機を運転状態に応じて制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、所定の減速条件が成立した場合に前記EGR弁を開くとともに、前記電動過給機を作動させるものである
ことを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの過給装置において、
排気ガスによってタービンが駆動される排気ターボ過給機と、
この排気ターボ過給機による過給圧を検出する過給圧検出手段と
をさらに備え、
前記制御手段は、減速時に前記過給圧検出手段が検出した過給圧が、前記電動過給機により得られる過給圧よりも高い場合には、前記EGR通路を閉じ、前記電動過給機による過給を禁止するものである
ことを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項3】
請求項2記載のエンジンの過給装置において、
前記EGR通路は、前記排気通路中のタービン下流側からEGRを吸気通路に還流するように形成されている
ことを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のエンジンの過給装置において、
エンジン回転速度を検出する速度検出手段を設け、
前記制御手段は、減速時のエンジン回転速度が高いほど、前記電動過給機の回転速度を抑制するものである
ことを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機に過給された空気を前記吸気通路に導く過給通路と、
前記過給通路と前記EGR通路とを連通するEGR連通状態と、前記吸気通路に前記過給通路のみを連通させることにより前記過給通路と前記EGR通路との連通を遮断するEGR遮断状態との何れか一つの状態に択一的に流路を切り換える切換弁と
を備え、
前記制御手段は、所定の運転状態では、前記EGR遮断状態に流路を切り換えて前記電動過給機を作動させるとともに、前記減速条件が成立した場合に前記EGR連通状態に流路を切り換えるように前記切換弁を制御するものである
ことを特徴とするエンジンの過給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−38767(P2008−38767A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214567(P2006−214567)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】