説明

ドライバ状態検出装置、車載警報装置、運転支援システム

【課題】ドライバの運転状態を総合的に検出することができるドライバ状態検出装置を提供する。
【解決手段】自車両の進行方向に先行車両が存在する場合、ドライバからみた先行車両の像の大きさの変化度合いを示すドライバ状態係数Kを算出し、このドライバ状態係数Kからドライバの運転状態を検出する。このドライバ状態係数Kは、自車両に先行車両の画像を撮影する撮像手段を備えておき、その撮像手段の撮影した先行車両の画像の面積の単位時間当たりの変化度合いから算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ状態検出装置、車載警報装置、運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの状態を検出する技術として、例えば、特許文献1に開示されているように、ドライバの生体反応(例えば、心拍、呼吸、皮膚電位等)からドライバの運転負荷を検出するものがある。また、特許文献2に開示されている技術では、ドライバの顔の向きから脇見状態を検出するとともに、ドライバの目の開閉状態から居眠り状態を検出する。この他、特許文献3に開示されている技術によれば、例えば、ドライバの目に映る車両前方の道路の車線幅の大きさ、曲率半径の変化の程度、先行車両・駐車車両・移動障害物の有無、先行車両に対する追突可能性の有無等からドライバの心理的負担や視覚的刺激となる心理的刺激の有無を判定し、この心理的刺激の有無によってドライバの覚醒度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−264687号公報
【特許文献2】特開2002−219968号公報
【特許文献3】特開平8−203000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転に適さないドライバの運転状態としては、上述した居眠り運転や脇見運転のほか、「ぼんやり、注意散漫」といった漫然運転等の運転状態も挙げられるが、上記の従来技術は、何れも、このような運転に適さないドライバの運転状態を総合して検出するものではない。
【0005】
また、運転中のドライバは、運行上必要な情報を主に視覚から取得し、この取得した情報に基づいて運行状況を認識し(認識過程)、この認識した運行状況に応じて、安全に運行すべき運転操作を判断し(判断過程)、その判断した運転操作を行う(行動過程)、という3つの過程を繰り返し行っており、何れか一つの過程でも適切に行われない場合に、安全な運行を継続して行うことができなくなる。
【0006】
従って、認識過程のみならず、判断過程や操作過程まで含めてドライバの運転状態を検出することで、ドライバの運転状態を総合的に判断できるようになるが、上記の従来技術は、何れも、認識過程が適切に行える状態であるかどうかを検出するものであるため、上記3つの過程まで含めてドライバの運転状態を検出することができない。また、ドライバの運転状態を総合的に判断し、その判断に基づく警報や運転支援を提供することができない。
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、ドライバの運転状態を総合的に検出することができるドライバ状態検出装置、車載警報装置、及び運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のドライバ状態検出装置は、自車両の進行方向に先行車両が存在する場合の自車両のドライバの運転状態を検出するドライバ状態検出装置であって、
自車両のドライバからみた先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になるドライバ状態係数を算出するドライバ状態係数算出手段と、
ドライバ状態係数算出手段の算出したドライバ状態係数に基づいて、ドライバの運転状態を検出するドライバ状態検出手段と、
自車両に搭載され、先行車両の画像を撮影する撮像手段を備え、
ドライバ状態係数算出手段は、撮像手段の撮影した先行車両の画像の面積の単位時間当たりの変化度合いから、ドライバ状態係数を算出することを特徴とする。
【0009】
例えば、自車両が先行車両に近づく場合、自車両のドライバは、先行車両の存在を認識することができれば、ドライバ固有のブレーキ開始タイミングでブレーキ操作を開始し、自車両を減速させながら先行車両に接近する。一方、自車両のドライバが居眠り運転、脇見運転、漫然運転等の運転状態である場合、先行車両の存在が認識することが困難であるため、ドライバ固有のブレーキ開始タイミングになったとしてもブレーキ操作を開始せず、自車両を減速させることなく、先行車両に接近する。
【0010】
ところで、自車両が先行車両に近づく場面において、自車両のドライバは、通常、先行車両への接近(先行車両との車間距離の変化)を先行車両の像の大きさ(面積)の変化から認識する。そして、自車両のドライバは、先行車両の存在を認識した場合、上述したように、自車両を減速させながら先行車両に接近するため、この接近中のドライバからみた先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合い(以下、ドライバ状態係数)は小さい値を示す。一方、自車両のドライバが先行車両の存在を認識することが困難な場合、上述したように、自車両を減速させることなく先行車両に接近するため、この接近中のドライバ状態係数は大きい値を示す。
【0011】
従って、ドライバ状態係数に基づいて、先行車両に対するドライバの運転状態を総合して検出することができる。また、自車両のドライバが先行車両の存在を認識することができた場合であっても、上述した判断過程や行動過程が適切に行われない場合、すなわち、ブレーキ開始タイミングの判断が不適切であったり、ブレーキ操作が不適切であったりした場合、その結果として、ドライバ状態係数が大きい値を示すこともある。よって、ドライバ状態係数に基づいて、認識過程のみならず、判断過程や操作過程まで含めたドライバの運転状態を総合的に検出することが可能となる。
【0012】
ドライバ状態係数Kは、単位時間当たりの先行車両の像の面積Sの変化度合いdS/dtを示すものであるため、カメラ等の撮像手段の撮影した先行車両の画像の単位時間当たりの大きさの変化度合いと等しい。従って、撮像手段の撮影した先行車両の画像の面積の単位時間当たりの変化度合いから、ドライバ状態係数Kを算出することができる。
【0013】
請求項2に記載の車載警報装置は、請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、ドライバ状態係数の絶対値の大きさに応じたドライバの運転状態を報知する運転状態報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
例えば、自車両が先行車両に追従して走行する場合、運転に適した状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができるため、その車間距離の維持された状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta1或いはSta2の範囲内で変化する。なお、図4に示すように、Sta1、Sta2におけるドライバの運転状態は、適切或いは普通の運転状態を示す。
【0015】
一方、運転に適さない状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができないため、その車間距離の維持されない状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta3以上の範囲で変化する。なお、図4に示すように、Sta3〜Sta5におけるドライバの運転状態は、不適切、非常に不適切、或いは完全に不適切な運転状態を示す。
【0016】
よって、図4の表に従って、ドライバ状態係数Kの絶対値の大きさに応じて、ドライバの運転状態(例えば、適切、普通、不適切、非常に不適切、完全に不適切の5段階)を報知することができる。
【0017】
請求項3に記載の車載警報装置は、請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、ドライバ状態係数の絶対値の大きさに基づいて、ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
図3及び図4に示したように、自車両が先行車両に追従して走行する場合、運転に適した状態のドライバのドライバ状態係数Kは、Sta1或いはSta2の範囲内で変化し、運転に適さない状態のドライバのドライバ状態係数Kは、Sta3以上の範囲で変化する。従って、ドライバ状態係数Kの絶対値の大きさに基づいて、ドライバに対して警報を発生することで、例えば、運転に適さないドライバに対して警報することができる。
【0019】
請求項4に記載の車載警報装置は、請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
ドライバ状態係数の値の大きさに基づいて、ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備え、
ドライバ状態係数は、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、ドライバ状態係数は正の値を示し、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
警報発生手段は、ドライバ状態係数が正の値を示す場合に警報を発生することを特徴とする。
【0020】
先行車両と自車両との相対速度Vrについて、先行車両と自車両とが近づく場合の相対速度Vrを負(-)の符号で示し、先行車両と自車両とが遠ざかる場合の相対速度Vrの符号を正(+)の符号で示すものとする。この場合、ドライバ状態係数K=(-2/D3)×Vrであるから、先行車両と自車両とが近づく場合、先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなり、そのときのドライバ状態係数Kは正の値を示す。一方、先行車両と自車両とが遠ざかる場合、先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなり、そのときのドライバ状態係数Kは負の値を示す。図3は、先行車両と自車両とが近づく場合、ドライバ状態係数Kが正(+)の値を示し、先行車両と自車両とが遠ざかる場合、ドライバ状態係数Kが負(-)の値を示す状況を示している。
【0021】
このように、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合、先行車両と自車両とが近づく状況が継続しているため、ドライバ状態係数Kが負の値を示す場合、すなわち、先行車両と自車両とが遠ざかる状況が継続している場合に比べて自車両の危険性は高い。従って、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合に、ドライバ状態係数の値の大きさに基づいてドライバに対して警報を発生することで、先行車両と自車両とが近づいている状況に限って警報を発生することができる。
【0022】
請求項5に記載の車載警報装置は、自車両に制動力を印加する制動力印加手段を備え、警報発生手段は、制動力印加手段により制動力を印加して自車両を減速することにより警報を発生することを特徴とする。これにより、自車両のドライバに対して体感的な警報(警報ブレーキ)を与えることができる。
【0023】
請求項6に記載の車載警報装置は、請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
ドライバ状態係数の値の大きさに基づいて、ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備え、
ドライバ状態係数は、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、ドライバ状態係数は正の値を示し、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
警報発生手段は、ドライバ状態係数が負の値を示す場合に警報を発生することを特徴とする。
【0024】
上述したように、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合、先行車両と自車両とが近づく状況が継続しているため、ドライバ状態係数Kが負の値を示す場合、すなわち、先行車両と自車両とが遠ざかる状況が継続している場合に比べて自車両の危険性は高い。しかしながら、先行車両と自車両とが遠ざかる状況がドライバの意図的な運転操作によるものでない場合、すなわち、自車両のドライバが運転に適さない運転状態に陥ったために、上記の状況となる場合も考えられる。従って、ドライバ状態係数が負の値を示す場合に警報を発生することで、先行車両と自車両とが遠ざかる状況において警報を発生することができる。
【0025】
請求項7に記載の車載警報装置は、自車両に駆動力を印加する駆動力印加手段を備え、警報発生手段は、駆動力印加手段により駆動力を印加して自車両を加速することにより警報を発生することを特徴とする。これにより、自車両のドライバに対して体感的な警報を与えることができる。
【0026】
請求項8に記載の車載警報装置は、自車両が先行車両に衝突するまでの余裕時間を示す衝突余裕時間を算出する衝突余裕時間算出手段を備え、警報発生手段は、衝突余裕時間に応じて警報を発生することを特徴とする。これにより、衝突余裕時間に基づく警報を発生することができる。
【0027】
請求項9に記載の車載警報装置は、自車両の車速に応じた先行車両と自車両との目標車間距離を算出する目標車間距離算出手段を備え、警報発生手段は、先行車両と自車両との車間距離が目標車間距離を下回った場合に警報を発生することを特徴とする。これにより、先行車両と自車両との車間距離に基づく警報を発生することができる。
【0028】
請求項10に記載の車載警報装置によれば、警報発生手段は、ドライバ状態係数の示す値と、ドライバ状態係数の閾値とを比較して警報を発生すべきか否かを判定する警報判定手段を備え、警報判定手段が警報を発生すべきと判定した場合に警報を発生することを特徴とする。これにより、ドライバ状態係数の閾値に基づいて、警報を発生すべきか否かを判定することができる。
【0029】
請求項11に記載の車載警報装置によれば、ドライバ状態係数の閾値を任意な値に変更する閾値変更手段を備えることを特徴とする。これにより、自車両のドライバは、警報の発生を判定するために用いるドライバ状態係数の閾値を所望の閾値に変更することができる。
【0030】
請求項12に記載の車載警報装置によれば、警報判定手段は、所定の周期で繰り返し判定するものであって、警報発生手段は、警報判定手段が警報を発生すべきと判定した回数が一定回数以上となった場合、及び、警報を発生すべきと判定した時間が一定時間以上継続した場合の少なくとも一方の場合に警報を発生することを特徴とする。これにより、警報発生のハンチング現象を抑制することができる。
【0031】
請求項13に記載の車載警報装置によれば、警報発生手段は、警報の発生を開始した後、警報判定手段が警報を発生すべきでない判定した時間が一定時間以上継続した場合に警報の発生を中止することを特徴とする。これにより、警報の発生を中止することができる。
【0032】
請求項14に記載の車載警報装置によれば、
先行車両と自車両との相対速度は、
先行車両と自車両とが近づくときに負の値を示し、
先行車両と自車両とが遠ざかるときに正の値を示すものであって、
警報発生手段は、先行車両と自車両との相対速度が負から正に変化した場合に警報の発生を中止することを特徴とする。
【0033】
上述したように、先行車両と自車両との相対速度Vrは、先行車両と自車両とが近づく場合に負(-)の符号で示され、先行車両と自車両とが遠ざかる場合に正(+)の符号で示される。そして、相対速度Vrが負から正に変化した場合、先行車両と自車両とが近づく状況から遠ざかる状況に変化したことになり、この状況の変化により自車両の危険性が低くなる。従って、自車両の危険性が低くなった場合に警報の発生を中止することができる。
【0034】
請求項15に記載の車載警報装置は、請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
自車両前方に存在する物体を検出する物体検出手段と、
物体検出手段が物体を検出した場合、当該物体が自車両前方の所定の警報対象範囲内に存在する場合にドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備え、
警報発生手段は、ドライバ状態係数の絶対値の大きさに応じて、警報対象範囲の広さを変更する警報対象範囲変更手段を備えることを特徴とする。
【0035】
例えば、覚醒度が高いドライバは、視界が広い状態であるため、自車両前方に存在する物体を幅広く認識することができる。これに対し、覚醒度が低いドライバは、視界が狭い状態であるため、視界の中心(中心視)から外れた周辺視に位置する物体を認識することが困難になる(或いは、出来なくなる)。そこで、例えば、図11に示すように、ドライバ状態係数Kの絶対値の大きさに応じて警報対象範囲の広さを変更し、この変更した警報対象範囲に物体が存在する場合に警報を発生させる。これにより、運転に適さない状態のドライバに対し、運転に適した状態であれば認識可能な物体の存在を警報することができる。
【0036】
請求項16に記載の車載警報装置によれば、警報対象範囲変更手段は、
自車両前方における左右方向の広さを変更するものであって、
ドライバ状態係数の絶対値が大きい程、広さが広くなるように変更し、
ドライバ状態係数の絶対値が小さい程、広さが狭くなるように変更することを特徴とする。
【0037】
これにより、例えば、覚醒度が低下して視界の狭くなった状態のドライバに対して、認識できない物体の存在を警報することができる。また、運転に適した状態のドライバに対して、認識可能な物体の存在を警報しないようにすることも可能となる。
【0038】
請求項17に記載の車載警報装置によれば、物体検出手段は、軽車両、歩行者、道路標識、及び信号機の少なくとも1つの物体を検出することを特徴とする。これにより、自車両の進路に進入する可能性のある軽車両や歩行者を検出したり、運行上遵守すべき道路標識や信号機を検出したりすることができる。
【0039】
請求項18に記載の運転支援システムは、請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、先行車両に自車両が追従して走行する際、ドライバ状態係数の値の大きさに基づいて、自車両を加速する加速制御、及び自車両を減速する減速制御の少なくとも一方の制御を実行する加減速制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0040】
自車両が先行車両に追従して走行する場合、上述したように、運転に適した状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができるため、その車間距離の維持された状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta1或いはSta2の範囲内で変化する。
【0041】
一方、運転に適さない状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができないため、その車間距離の維持されない状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta3以上の範囲で変化する。
【0042】
本発明は、運転に適さない状態に陥りつつあるドライバの運転操作を支援するため、ドライバ状態係数Kの値の大きさに基づいて自車両を加減速する。これにより、自車両が先行車両に追従して走行する場合の運転操作を支援することができる。
【0043】
請求項19に記載の運転支援システムによれば、ドライバ状態係数は、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、ドライバ状態係数は正の値を示し、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
加減速制御手段は、
ドライバ状態係数が正の値を示す場合に減速制御を実行し、
ドライバ状態係数が負の値を示す場合に加速制御を実行することを特徴とする。
【0044】
これにより、先行車両と自車両とが近づく場合に減速制御を実行するため、自車両が先行車両に近づくのを抑制することができる。一方、先行車両と自車両とが遠ざかる場合に加速制御が実行するため、自車両が先行車両から遠ざかるのを抑制することができる。
【0045】
請求項20に記載の運転支援システムによれば、加減速制御手段は、加速制御、又は減速制御の実行中に自車両のドライバによるアクセル操作、及びブレーキ操作の少なくとも一方の操作が介入する場合であっても、加速制御、又は減速制御を継続して実行することを特徴とする。
【0046】
これにより、自車両が先行車両に追従して走行する場合、基本的には自車両のドライバの運転操作によって自車両が運行され、ドライバが運転に適さない状態に陥りつつある場合に、ドライバの運転操作を支援することができる。
【0047】
請求項21に記載の運転支援システムによれば、加減速制御手段は、減速制御の実行中に自車両を加速するアクセル操作が行われた場合、このアクセル操作の開始から一定時間経過後に減速制御の実行を中止することを特徴とする。
【0048】
これにより、例えば、自車両が先行車両を追い越す場面において、スムーズに先行車両を追い越すためにドライバがアクセル操作を行って自車両を加速する場合に、減速制御を継続して実行しないようにすることができる。
【0049】
請求項22に記載の運転支援システムによれば、加減速制御手段は、減速制御として、主ブレーキによる減速制御、及びエンジンブレーキによる減速制御の少なくとも一方を実行するものであって、
減速制御の実行中に自車両を加速するアクセル操作が行われた場合、このアクセル操作の開始から一定時間経過後にエンジンブレーキによる減速制御のみ実行することを特徴とする。
【0050】
これにより、先行車両と自車両とが近づくにもかかわらずドライバが自車両を加速させるためのアクセル操作を行う場合に、主ブレーキによる減速制御を継続して実行しないようにすることができる。
【0051】
請求項23に記載の運転支援システムによれば、加減速制御手段における減速制御は、ドライバ状態係数に対して複数の異なる閾値を設定するとともに、この各閾値に対して自車両の発生すべき複数の異なる減速度を設定し、ドライバ状態係数の値に対応した減速度で自車両を減速させることを特徴とする。これにより、ドライバ状態係数Kの値に応じた減速度で自車両を減速させることができる。
【0052】
請求項24に記載の運転支援システムによれば、加減速制御手段は、閾値が大きいほど、自車両に発生すべき減速度を高く設定することを特徴とする。これにより、例えば、ドライバのブレーキ操作が行われずに先行車両と自車両とが近づく状況においては、ドライバ状態係数Kが次第に大きな値を示すようになるため、この閾値が大きいほど、自車両に発生すべき減速度を高く設定することで、自車両に発生する減速度を段階的に高くすることができる。
【0053】
請求項25に記載の運転支援システムによれば、自車両の走行車線に隣接する隣接車線の対向車両を検出する対向車両検出手段を備え、加減速制御手段は、対向車両検出手段が対向車両を検出した場合、自車両を加速する加速制御、及び自車両を減速する減速制御の実行を中止することを特徴とする。これにより、対向車両を先行車両と誤って検出したとしても、加速制御や減速制御を実行しないようにすることができる。
【0054】
請求項26に記載の運転支援システムによれば、加減速制御手段は、自車両のステアリングがドライバによって操作された場合、減速制御の実行を中止することを特徴とする。これにより、減速中にドライバがステアリングを操作することで、車両の挙動が不安定な状態となるのを防ぐことができる。
【0055】
請求項27に記載の運転支援システムは、自車両の車速を一定の車速に制御する車速制御手段を備えることを特徴とする。これにより、自車両が単独で走行する場合には、自車両の車速を一定の車速に保つように支援することができる。
【0056】
請求項28に記載の運転支援システムは、請求項2〜17の何れか1項に記載の車載警報装置を備えることを特徴とする。これにより、ドライバの運転を支援するとともに、ドライバ状態係数に基づく警報を発生することができる。
【0057】
請求項29に記載の運転支援システムは、
自車両のドライバからみた、当該自車両の進行方向に存在する先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になるドライバ状態係数を算出するドライバ状態係数算出手段と、
ドライバ状態係数算出手段の算出した現在のドライバ状態係数と、目標とすべき目標ドライバ状態係数とに基づいて、自車両と先行車両との目標相対加減速度を算出する目標相対加減速度算出手段と、
目標相対加減速度算出手段の算出した目標相対加減速度に基づいて、自車両を加速する加速制御、及び自車両を減速する減速制御の少なくとも一方の制御を実行する自車両加減速制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0058】
本発明は、図3に示したSta1或いはSta2の範囲内のドライバ状態係数(すなわち、運転に適した状態のドライバが先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行っている状況におけるドライバ状態係数)を目標とすべきドライバ状態係数(目標ドライバ状態係数)とし、この目標ドライバ状態係数と、現在のドライバ状態係数とに基づいて、自車両と先行車両との目標とすべき相対加減速度(目標相対加減速度)を算出し、この目標相対加減速度に基づいて自車両を加減速する。これにより、目標ドライバ状態係数と、現在のドライバ状態係数との関係に基づいて、自車両が先行車両に追従して走行する場合の運転操作を支援することができる。
【0059】
請求項30に記載の運転支援システムは、
先行車両と自車両との車間距離Dを検出する車間距離検出手段と、
先行車両と前記自車両との相対速度Vrを取得する相対速度取得手段と、を備え、
目標相対加減速度算出手段は、現在のドライバ状態係数を対数で示したK_p[dB]と目標ドライバ状態係数を対数で示したK_t[dB]とに基づいて決定されるドライバ状態変数をK_f[dB]とすると、次式により目標相対加減速度である(dVr/dt)_tを算出することを特徴とする。
【0060】
(数6)
(dVr/dt)_t=7.5×10{(K_f[dB]/10)-8}×D2×Vr
上記数式5を定数倍したものを対数(デシベル[dB])で示すと次式を得る。なお、次式中の|K|はドライバ状態係数の絶対値を示している。
【0061】
(数7)
K[dB]=10×log(|K|/0.00005)
ここで、上記数式5を定数倍したものと数式7から、相対速度Vrについて時間微分を施すことで、次式に示す相対加減速度(dVr/dt)が得られる。
【0062】
(数8)
(dVr/dt)=7.5×10{(K[dB]/10)-8}×D2×Vr
ここで、例えば、目標ドライバ状態係数K_t[dB]が30[dB]である場合、上記数式8のK[dB]としてこれを代入すると、相対減速度(dVr/dt)は、図14中の曲線で示される。本発明では、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が目標ドライバ状態係数K_t[dB]に近づくようにドライバ状態変数K_f[dB]を決定する。これにより、決定したドライバ状態変数K_f[dB]を上記数式6に代入することで、目標とすべき相対加減速度である目標相対加減速度(dVr/dt)_tを算出することができる。
【0063】
請求項31に記載の運転支援システムは、目標ドライバ状態係数K_t[dB]を任意な値に設定する目標ドライバ状態係数設定手段を備えることを特徴とする。これにより、ドライバ自身の好みに応じた値に設定することができる。
【0064】
請求項32に記載の運転支援システムによれば、相対速度Vrは、先行車両と自車両とが近づくときに負の値を示し、先行車両と自車両とが遠ざかるときに正の値を示すことを特徴とする。これにより、相対速度の符号から先行車両と自車両との関係を把握することができる。
【0065】
請求項33に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速度制御手段は、相対速度Vrが負の値を示すとき、当該相対速度Vrの絶対値が自車両の速度よりも大きい値を示す場合に、減速制御の実行を禁止することを特徴とする。
【0066】
すなわち、相対速度Vrが負の値を示し、その絶対値が自車両の速度よりも大きい値を示す場合、その相対速度Vrは、自車両と同じ進行方向の先行車両との相対速度ではなく、対向車両との相対速度であると考えられる。このような場合には、減速制御の実行を禁止することで誤った制御を実行しないようにすることができる。
【0067】
請求項34に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速度制御手段は、相対速度Vrが正の値を示すとき、当該相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合に加速制御の実行を停止することを特徴とする。
【0068】
このように、先行車両と自車両とが遠ざかる場合(相対速度Vrが正の値を示す場合)であっても、相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合には、ドライバが運転に適した状態で先行車両に追従するように運転操作を行っていると考えられる。従って、このような場合に加速制御の実行を停止することで、ドライバの運転操作に過度に介入しないようにすることができる。
【0069】
請求項35に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速度制御手段は、相対速度Vrが負の値を示すとき、当該相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合、ドライバが先行車両との接触を回避するため一定の値以上の加速操作をおこなった場合、及びドライバが先行車両との接触を回避するためのステアリング操作を開始した場合の何れか1つに該当する場合に、減速制御の実行を停止することを特徴とする。
【0070】
このように、先行車両と自車両とが近づく場合(相対速度Vrが負の値を示す場合)であっても、相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合には、ドライバが運転に適した状態で先行車両に追従するように運転操作を行っていると考えられる。従って、このような場合に減速制御の実行を停止することで、ドライバの運転操作に過度に介入しないようにすることができる。
【0071】
また、先行車両と自車両とが近づく場合(相対速度Vrが負の値を示す場合)であっても、ドライバが先行車両との接触を回避するための加速操作やステアリング操作を開始した場合、ドライバは、先行車両を追い越すための車線変更を開始したものと考えられる。従って、このような場合に減速制御の実行を停止することで、車線変更を妨げるような介入をしないようにすることができる。
【0072】
請求項36に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速度制御手段は、減速制御の実行を停止する際、当該減速制御が停止する旨、及びドライバによる減速操作の開始を促す旨の少なくとも一方を報知する手段を備えることを特徴とする。これにより、ドライバは、減速制御が停止することを把握したり、自ら減速操作を開始する必要があることを把握したりすることが可能となる。
【0073】
請求項37に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速制御手段は、減速制御の実行を停止した後に、ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行する場合、自車両のブレーキアクチュエータにブレーキ予圧を印加するブレーキ予圧印加制御を実行することを特徴とする。
【0074】
これにより、ドライバがアクセルペダルからブレーキペダルへ踏み替えるまでの間にブレーキ予圧を印加することが可能となるため、減速操作を開始するまでのタイムラグを排除することができる。
【0075】
請求項38に記載の運転支援システムによれば、
ドライバ状態係数は、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、ドライバ状態係数は正の値を示し、
先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
自車両の衝突時の被害を軽減する衝突被害軽減装置を備え、
自車両加減速制御手段は、減速制御の実行を停止した後に前記ドライバ状態係数が負の値を示すとき、ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行しない場合、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が所定値以上の正の値を示すときに、衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行することを特徴とする。
【0076】
上述したように、先行車両と自車両とが近づく場合(相対速度Vrが負の値を示す場合)に減速制御の実行を停止した後、ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行しない場合、先行車両と自車両とがさらに接近することになり、先行車両と自車両とが衝突する可能性が高くなる。
【0077】
このような場合、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が所定値以上の正の値を示すならば、双方の車両が急激に接近していると判断し、衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行する。これにより、先行車両と自車両とが衝突したときの被害を軽減することが可能となる。
【0078】
請求項39に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速制御手段は、衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行する際、ドライバに対し警報を発生する衝突警報手段を備えることを特徴とする。これにより、衝突被害軽減装置が作動する旨をドライバに知らせることができる。
【0079】
請求項40に記載の運転支援システムによれば、自車両加減速度制御手段は、自車両に発生すべき減速度、又は/及び加速度に制限を加えるものであって、ドライバによる運転操作に応じて異なる制限を加えることを特徴とする。これにより、ドライバの運転操作に応じて、自車両に発生すべき減速度や加速度に制限を加えることができる。
【0080】
請求項41に記載の運転支援システムによれば、
自車両加減速度制御手段は、相対速度Vrが負の値を示すときに、
ドライバが加速操作、若しくは現在の自車両の速度を保持するための定速操作を行っている場合、自車両に発生すべき減速度を減速制御において発生可能な最大減速度aよりも低い減速度に制限し、
ドライバが減速操作を実行している場合、自車両に発生すべき減速度をドライバの減速操作によって発生する自車両の減速度b、若しくは、ドライバのブレーキペダルを踏む力を補助するブレーキアシストシステムによって発生する減速度cよりも低い減速度に制限することを特徴とする。
【0081】
これにより、相対速度Vrが負の値を示すとき、ドライバの減速操作の有無によって自車両に発生すべき減速度に異なった制限を加えることができる。
【0082】
請求項42に記載の運転支援システムによれば、
自車両加減速度制御手段は、相対速度Vrが正の値を示すときに、
ドライバが加速操作、若しくは現在の自車両の速度を保持するための定速操作を行っている場合、自車両に発生すべき減速度を減速制御において発生可能な最大減速度aよりも低い減速度に制限するとともに、自車両に発生すべき加速度を加速制御において発生可能な最大加速度gよりも低い加速度に制限し、
ドライバが減速操作を実行している場合、自車両に発生すべき減速度をドライバの減速操作によって発生する自車両の減速度b、若しくは、ドライバのブレーキペダルを踏む力を補助するブレーキアシストシステムによって発生する減速度cよりも低い減速度に制限することを特徴とする。
【0083】
これにより、相対速度Vrが正の値を示すとき、ドライバの減速操作の有無によって自車両に発生すべき減速度に異なった制限を加えることができるとともに、自車両に発生すべき加速度にも制限を加えることができる。
【0084】
請求項43に記載の運転支援システムによれば、減速度cは、先行車両の減速度に応じて設定されることを特徴とする。これにより、先行車両の減速度の高低と合うように減速度cを設定することが可能となる。
【0085】
請求項44に記載の運転支援システムは、自車両の進行方向に存在する先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として、自車両のドライバからみた先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標KdBを算出する接近離間状態評価指標算出手段と、
先行車両と自車両との車間距離D、先行車両と自車両との相対速度Vr、及び接近離間状態評価指標KdBから、自車両と先行車両との目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出する目標相対減速度算出手段と、
相対減速度が目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように、自車両を減速する減速制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0086】
接近離間状態評価指標KdBは、請求項79に記載のように次式を計算することによって算出される。なお、接近離間状態評価指標KdBの符号(+、−)については、相対速度Vrが負の値(Vr<0、接近)の場合に正の値(KdB>0)となるように符号を割り当て、相対速度Vrが正の値(Vr>0、離間)の場合に負の値(KdB<0)となるように符号を割り当てることにする。また、数式中の||は絶対値を示す記号である。
【0087】
(数9)
KdB=10×log{|-2×Vr|/( D3×5×10-8)}
上記の数式は次式のように変形することができる。
【0088】
(数10)
10(|KdB|/10)=|-2×Vr|/( D3×5×10-8)
(数11)
|-Vr|=(D3×5×10-8/2)×10(|KdB|/10)=2.5×D3×10{(|KdB|/10)-8}
ここで、自車両と先行車両との目標相対減速度dVrdt_ssdcは、車間距離D、相対速度Vr、接近離間状態評価指標KdBから次式によって算出される。
【0089】
(数12)
目標相対減速度dVrdt_ssdc=(dVr/dD)×(dD/dt)=7.5×D2×10{(|KdB|/10)-8}×Vr
上記数式12に示す目標相対減速度dVrdt_ssdcは、現在の車間距離Dに留めるための相対減速度の目標値を表している。従って、この目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように自車両を減速する減速制御を実行することで、現在の接近離間状態評価指標KdBを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)することが可能となる。
【0090】
請求項45に記載のように、目標相対減速度算出手段は、目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して1以下の正の値を示す第1のゲインを乗じ、
制御手段は、第1のゲインを乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを用いて、減速制御を実行することが好ましい。
【0091】
第1のゲインgain1を乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcは次式で表される。
【0092】
(数13)
dVrdt_ssdc=gain1×7.5×D2×10{(|KdB|/10)-8}×Vr
上記数式13中の第1のゲインgain1の値を1とすることで、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を行えば現在の接近離間状態評価指標KdBを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)することができる。これに対し、第1のゲインgain1の値を1未満の正の値とすることで、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を行えば、現在の車間距離Dよりも短い車間距離にすることが可能となる。
【0093】
ここで、第1のゲインgain1の範囲について考えてみる。停止中の先行車両に速度Vs0(=Vr)で接近中の自車両が一定の減速度GGで減速を開始したとき、先行車両に接触する位置で自車両が停止するまでの走行距離DDは次式で表される。
【0094】
(数14)
DD=Vr2/2×GG
ここで、先行車両に接触する位置で自車両が停止するときの減速度GGと、現在の接近離間状態評価指標KdBを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)するための目標相対減速度dVrdt_ssdc(第1のゲインgain1=1)との比を求める。
【0095】
(数15)
GG/dVrdt_ssdc=(Vr2/2×DD)/(gain1×7.5×D2×10{(|KdB|/10)-8}×Vr)=Vr/(15×D3×10{(|KdB|/10)-8})
上記数式15中の相対速度Vrに上記数式11を代入すると次式を得る。
【0096】
(数16)
GG/dVrdt_ssdc=(2.5×D3×10{(|KdB|/10)-8})/(15×D3×10{(|KdB|/10)-8})=2.5/15≒0.167
よって、第1のゲインgain1を0.167とすることで、先行車両に接触する位置で相対速度Vr=0となる目標相対減速度dVrdt_ssdcとすることができ、その目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を行えば車間距離D=0を維持することが可能となる。以上から、第1のゲインgain1は、0.167から1.000までの範囲となる。
【0097】
請求項46に記載の運転支援システムによれば、車間距離Dが自車両の速度に応じた値を示す安全車間距離D_safetyよりも大きな値であるかどうかを判定する安全車間距離判定手段と、
安全車間距離判定手段の判定結果に応じて、第1のゲインの値を変更する第1のゲイン変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0098】
例えば、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも長い場合には、安全な車間距離が確保されているため、第1のゲインgain1を0.167に変更する。一方、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも短い場合には、安全な車間距離が確保されていないため、第1のゲインgain1を0.167から1.000のまでの間の任意の値に変更する。これにより、安全車間距離判定手段の判定結果に応じて、目標相対減速度dVrdt_ssdcを変更することができる。
【0099】
なお、走行路面の状態によって安全な車間距離は異なる。従って、路面状態によって安全車間距離D_safetyを補正するようにしてもよい。例えば、予め設定された車頭時間(車頭時間とは、先行車両と自車両との現在の接近状態が継続した場合に何秒後に先行車両に接触するかを示すもの。)に自車両の速度Vs0を乗じてものを安全車間距離D_safetyと定義する場合には、路面状態によって車頭時間を補正することで、安全車間距離D_safetyを補正するとよい。
【0100】
請求項47に記載の運転支援システムのように、目標相対減速度算出手段は、先行車両と自車両との目標相対速度Vr_daを加味して目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出することが好ましい。目標相対速度Vr_daを加味した目標相対減速度dVrdt_ssdc(第1のゲインgain1=1.000の場合)の算出式は、以下のように表される。
【0101】
(数17)
dVrdt_ssdc=7.5×D2×10{(|KdB|/10)-8}×(Vr-Vr_da)
ここで、目標相対速度Vr_da=0とした場合、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、上述したように、現在の車間距離Dを維持することができる。
【0102】
これに対し、目標相対速度Vr_daが負(Vr_da<0)の場合、目標相対減速度dVrdt_ssdcは目標相対速度Vr_da=0とした場合に比べて小さな値となるから、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから目標相対速度Vr_daとなるまで減速することができる。
【0103】
一方、目標相対速度Vr_daが正(>0)の場合、目標相対減速度dVrdt_ssdcは目標相対速度Vr_da=0とした場合に比べて大きな値となるから、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから離間状態の目標相対速度Vr_daとなるまで減速することができる。
【0104】
請求項48に記載のように、目標相対減速度算出手段は、目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して、先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第2のゲインを乗じ、
制御手段は、第2のゲインを乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを用いて、減速制御を実行することが好ましい。
【0105】
先行車両が急ブレーキをする場合、先行車両が高い速度であるほど自車両の危険性が高まるため、自車両のドライバは、先行車両の速度が高いほど高い減速度を自車両に発生させる傾向にある。そこで、次式に示すように、第1のゲインとともに第2のゲインgain2を乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出する。
【0106】
(数18)
dVrdt_ssdc=gain2×{gain1×7.5×D2×10{(|KdB|/10)-8}×(Vr-Vr_da)}
上記数式18において、例えば、先行車両の速度Vb=50[km/h]未満でgain2=0.5とし、先行車両の速度Vb=50[km/h]以上でgain2=1.0とすることで、ドライバ自身の減速操作によって発生する減速度に目標相対減速度dVrdt_ssdcを合わせることが可能となる。
【0107】
請求項49に記載の運転支援システムは、自車両の常用減速度、車間距離D、及び相対速度Vrから減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する減速目標算出手段と、
接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する減速目標判定手段と、を備え、
制御手段は、減速目標判定手段によって接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定された場合に、減速制御の実行を開始することを特徴とする。
【0108】
ドライバの減速操作によって発生する自車両の常用減速度をndとすると、減速目標KdB_ssdcは、上記数式13から次式を得る。
【0109】
(数19)
nd=gain1×7.5×D2×10{(|KdB_ssdc|/10)-8}×Vr
上記数式を変形すると次式を得る。
【0110】
(数20)
10{(|KdB_ssdc|/10)-8}=nd/gain1×7.5×D2×Vr
上記数式を対数で示すと次式を得る。
【0111】
(数21)
|KdB_ssdc|={log(|nd/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
このように、ドライバの減速操作によって発生する常用減速度ndから減速目標KdB_ssdcを算出し、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る場合に減速制御の実行を開始することで、その実行開始タイミングをドライバが常用減速度ndを発生させるときの減速操作のタイミングに合わせることができる。なお、上記数式21における第1のgain1については、0.167から1.000の範囲内で変更するようにしてもよい。
【0112】
請求項50に記載のように、減速目標算出手段は、減速目標KdB_ssdcに対して先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第3のゲインを乗じることで、最終的な減速目標KdB_ssdcを算出することが好ましい。
【0113】
上述したように、先行車両が急ブレーキをする場合、先行車両が高い速度であるほど自車両の危険性が高まる。このように危険性が高い場合、自車両のドライバは、先行車両の速度が高いほどブレーキ操作を早めに行う傾向にある。そこで、このようなドライバの傾向を反映させるため、次式に示すように、1以下の正の値を示す第3のゲインgain3を乗じた減速目標KdB_ssdcを算出する。
【0114】
(数22)
|KdB_ssdc|=gain3×{log(|nd/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
この第3のゲインgain3を乗じることで、減速目標KdB_ssdcの示す値は小さくなるから、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcに到達するのが早まることになる。従って、例えば、先行車両の速度Vb=0[km/h]でgain3=1.00とし、先行車両の速度Vbが高くなるほどgain3の値を小さな値とする(例えば、先行車両の速度Vb=100[km/h]であるときにgain3=0.95)とし、この第3のゲインgain3を乗じて最終的な減速目標KdB_ssdcを算出する。これにより、減速制御の実行タイミングを早めることができ、ドライバの傾向を反映させることが可能となる。
【0115】
請求項51に記載の運転支援システムによれば、減速目標算出手段は、減速目標KdB_ssdcに基づいて、減速制御の終了タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_hysを算出し、減速目標判定手段は、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_hysを下回る値であるかどうかを判定し、
制御手段は、減速制御の実行中に、減速目標判定手段によって接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_hysを下回る値であると判定された場合に、減速制御の実行を終了することを特徴とする。
【0116】
例えば、減速目標KdB_ssdcに対し-3[dB]から-6[dB]程度下回る値を示す減速目標KdB_ssdc_hysを算出し、減速制御の実行中に、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_hysを下回った場合に減速制御の実行を終了させる。これにより、減速制御のハンチングを抑えることができる。
【0117】
請求項52に記載の運転支援システムによれば、減速目標算出手段は、エンジンブレーキ相当の減速度を示すエンジンブレーキ常用減速度、及びエンジンブレーキ常用減速度よりも大きな減速度であって、ブレーキアクチュエータによって発生する主ブレーキ相当の減速度を示す主ブレーキ常用減速度から、エンジンブレーキによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_engineと、ブレーキアクチュエータによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_brakeとを算出し、
減速目標判定手段は、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る値であるかどうかを判定し、
制御手段は、減速目標判定手段によって接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回る値であると判定された場合に、減速制御の実行を開始することを特徴とする。
【0118】
これにより、例えば、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_engineを上回る場合に減速制御の実行を開始することで、その実行開始タイミングをエンジンブレーキ常用減速度nd_engineを発生させるときの減速操作のタイミングに合わせることができる。また、例えば、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る場合に減速制御の実行を開始することで、その実行開始タイミングを主ブレーキ常用減速度nd_brakeを発生させるときの減速操作のタイミングに合わせることができる。
【0119】
請求項53に記載の運転支援システムによれば、車間距離D及び相対速度Vrから算出される現在の車頭時間TTCが予め設定された車頭時間TTC_onを下回る値であるかどうかを判定する車頭時間判定手段を備え、
制御手段は、減速目標判定手段によって接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定され、かつ、車頭時間判定手段によって現在の車頭時間TTCが予め設定された車頭時間TTC_onを下回る値であると判定された場合に、減速制御の実行を開始することを特徴とする。
【0120】
例えば、車間距離Dが50m程度以下の場合には、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回ったタイミングで減速制御の実行を開始することで、ドライバ自身がブレーキ操作を行うときのタイミングに合わせることができる。しかしながら、車間距離Dが50m程度以上の場合、自車両のドライバは、車間距離Dが50m程度以下の場合に比べて先行車両の面積変化に対する認識度が低下する。そのため、先行車両の面積変化の度合いと対応関係にある接近離間状態評価指標KdBのみに基づいて減速制御の実行を開始すると、ドライバは、ドライバ自身がブレーキ操作を行うときのタイミングよりも早く減速し始めたように感じる。
【0121】
そこで、上述したように、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定され、かつ、現在の車頭時間TTCが予め設定された車頭時間TTC_onを下回る値であると判定された場合に、減速制御の実行を開始する。これにより、減速制御の実行の開始タイミングをドライバ自身がブレーキ操作を行うときのタイミングと合わせることができる。
【0122】
請求項54に記載の運転支援システムは、自車両の進行方向に存在する先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標を表し、自車両のドライバからみた先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標であって、自車両が加速する場合の目標とすべき加速時接近離間状態評価指標KdB_aaを設定する加速時接近離間状態評価指標設定手段と、
先行車両と自車両との車間距離D、先行車両と自車両との相対速度Vr、及び加速時接近離間状態評価指標KdB_aaから、自車両と先行車両との目標相対加速度dVrdt_aaを算出する目標相対加速度算出手段と、
相対加速度が目標相対加速度dVrdt_aaとなるように、自車両を加速する加速制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0123】
上記数式12中の接近離間状態評価指標KdBに替えて加速時接近離間状態評価指標KdB_aaを設定することで、目標相対加速度dVrdt_aaを次式により算出することができる。
【0124】
(数23)
dVrdt_aa=7.5×D2×10{(|KdB_aa|/10)-8}×Vr
この目標相対加速度dVrdt_aaは、現在の車間距離Dに留める(先行車両との車間距離Dを維持する)ための相対加速度の目標値を表しているから、この目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように加速制御を実行すれば、先行車両に追従して走行することが可能となる。
【0125】
請求項55に記載のように、目標相対加速度算出手段は、先行車両と自車両との目標相対速度Vr_aaを加味して目標相対加速度dVrdt_aaを算出するとよい。目標相対速度Vr_aaを加味した目標相対加速度dVrdt_aaの算出式は、以下のように表される。
【0126】
(数24)
dVrdt_aa=7.5×D2×10{(|KdB_aa|/10)-8}×(Vr-Vr_aa)
ここで、目標相対速度Vr_aa=0とした場合、その時の目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を実行することで、現在の車間距離Dを維持しつつ先行車両に追従して走行することが可能となる。
【0127】
これに対し、目標相対速度Vr_aaが負(Vr_aa<0)の場合、目標相対加速度dVrdt_aaは目標相対速度Vr_aa=0とした場合に比べて大きな値となるから、その時の目標相対減速度dVrdt_aaとなるように加速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから接近状態の目標相対速度Vr_aaとなるまで加速することができる。
【0128】
一方、目標相対速度Vr_aaが正(Vr_aa>0)の場合、目標相対加速度dVrdt_aaは目標相対速度Vr_aa=0とした場合に比べて小さな値となるから、その時の目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから目標相対速度Vr_aaとなるまで加速することができる。
【0129】
請求項56に記載の運転支援システムによれば、目標相対加速度算出手段は、目標相対加速度dVrdt_aaに対して1以下の正の値を示す第4のゲインを乗じ、
制御手段は、第4のゲインを乗じた目標相対加速度dVrdt_aaを用いて、加速制御を実行することを特徴とする。
【0130】
第4のゲインgain4を乗じた目標相対加速度dVrdt_aaは次式で表される。
【0131】
(数25)
dVrdt_aa=gain4×{7.5×D2×10{(|KdB_aa|/10)-8}×(Vr-Vr_aa)}
上記数式25中の第4のゲインgain4の値を1とすることで、その時の目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を行えば現在の車間距離Dを維持しつつ先行車両に追従して走行することが可能となる。これに対し、第4のゲインgain4の値を1未満の正の値とすることで目標相対加速度dVrdt_aaは小さな値を示すことから、この目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を行えば、車間距離を大きくしながら自車両を加速することができる。
【0132】
請求項57に記載のように、車間距離Dが自車両の速度に応じた値を示す安全車間距離D_safetyよりも小さな値であるかどうかを判定する安全車間距離判定手段を備えることが好ましい。これにより、安全車間距離Dが確保されているかどうか把握できるようになる。
【0133】
請求項58に記載のように、安全車間距離判定手段によって車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であると判定された場合、第4のゲインの値を1に変更する第4のゲイン変更手段を備えることが好ましい。これにより、車間距離Dが現在の車間距離Dよりも短くならないようにすることができる。
【0134】
請求項59に記載のように、制御手段は、安全車間距離判定手段によって車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であると判定された場合、加速制御の実行を禁止することが好ましい。これにより、自車両が加速して先行車両により接近しないようにすることができる。なお、目標相対加速度dVrdt_aaをゼロ(dVrdt_aa=0)とした場合にも、自車両を加速させないことができる。
【0135】
請求項60に記載のように、安全車間距離判定手段によって車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であると判定された場合、自車両を加速させるための運転操作の介入を禁止するオーバーライド禁止手段を備えることが好ましい。これにより、車間距離が十分に確保されていない場合に、ドライバの運転操作によって自車両が加速し先行車両により接近しないようにすることができる。
【0136】
請求項61に記載の運転支援システムは、先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標を表す接近離間状態評価指標KdBを算出する接近離間状態評価指標算出手段と、自車両の常用減速度、車間距離D、及び相対速度Vrから減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する減速目標算出手段と、
接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する減速目標判定手段と、を備え、
制御手段は、減速目標判定手段によって接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを下回る値であると判定された場合に、加速制御の実行を開始することを特徴とする。
【0137】
これにより、減速制御を実行する必要のないタイミングで自車両を加速する加速制御を実行することができる。
【0138】
請求項62に記載の運転支援システムは、自車両の進行方向に存在する先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として、自車両のドライバからみた先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標KdBを算出する接近離間状態評価指標算出手段と、
自車両の常用減速度、車間距離D、及び相対速度Vrから減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する減速目標算出手段と、
接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する減速目標判定手段と、
減速目標判定手段によって接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定された場合に自車両を減速する減速制御の実行を開始し、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを下回る値であると判定された場合に自車両を加速する加速制御の実行を開始する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0139】
このように、例えば、ドライバの減速操作によって発生する常用減速度から減速目標KdB_ssdcを算出し、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを上回る場合に減速制御の実行を開始することで、その実行開始タイミングをドライバが常用減速度を発生させるときの減速操作のタイミングに合わせることができる。また、接近離間状態評価指標KdBが減速目標KdB_ssdcを下回る場合に加速制御の実行を開始することで、減速制御を実行する必要のないタイミングで自車両を加速させることができる。
【0140】
請求項63〜請求項78に記載の運転支援システムの作用効果は、請求項47〜請求項64に記載の運転支援システムの作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0141】
請求項79に記載のように、接近離間状態評価指標算出手段は、車間距離をDとし、相対速度をVrとすると、次式により接近離間状態評価指標KdBを算出する。
【0142】
(数26)KdB=10×log{|-2×Vr|/( D3×5×10-8)}
上述した先行車両の面積変化の度合いを示すドライバ状態係数Kは、先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として用いることができる。従って、ドライバ状態係数Kを表す数式5を定数倍したものを対数(デシベル[dB])で示し、さらに定数倍すると上記数式26が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0143】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、本発明のドライバ状態検出装置、及び車載警報装置を運転支援システムに適用した場合について説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】第1の実施形態に係わる、運転支援システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】自車両のドライバからみた先行車両の像の面積Sの変化度合いdS/dtを示すドライバ状態係数Kを説明するための図である。
【図3】ドライバ状態係数Kの符号を説明するための図である。
【図4】ドライバ状態係数Kとドライバの運転状態との対応を示す図である。
【図5】SDC_ECU100のドライバ状態係数K演算部110、SDC制御部160、TTC制御部170、CC制御部180、目標制動力算出部190a、及び目標駆動力算出部190bの各機能を示した制御モデルの図である。
【図6】先行車両と自車両とが近づく場合における、ドライバ状態係数K、車間距離D、自車両の車速Vs0、先行車両の車速Vb、SDC制御部160による減速制御、及びドライバの運転操作のタイムチャートを示す。
【図7】(a)は、アクセル操作の開始から一定時間(t1)経過後に減速制御の実行を中止する場合を説明するための図であり、(b)は、アクセル操作の開始から一定時間(t1)経過後に、エンジンブレーキによる減速制御のみ実行する場合を説明するための図である。
【図8】(a)は、ドライバのブレーキ操作が行われずに先行車両と自車両とが近づく状況において、自車両に発生する減速度が段階的に高くなる場合を示した図であり、(b)は、一定時間(t2)経過した後、自車両に発生する減速度を段階的に高くすることなく、その減速度を継続して発生するようにした場合を示した図である。
【図9】警報発生フラグのOn条件とOff条件を示す図である。
【図10】第1の実施形態に係わる、運転支援システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係わる、ドライバ状態係数Kの絶対値の大きさに応じて警報対象範囲の広さを変更した場合のイメージを示した図である。
【図12】第3の実施形態に係わる、運転支援システムの全体構成を示すブロック図である。
【図13】SSDC_ECU100aのドライバ状態係数K[dB]演算部110a、SSDC制御部160aの各機能を示した制御モデルの図である。
【図14】現在のドライバ状態係数K_p[dB]と目標ドライバ状態係数K_t[dB]とから決定されるドライバ状態変数K_f[dB]を説明するための図である。
【図15】(a)、(b)は、SSDC制御における開始/終了条件を示す図である。
【図16】(a)、(b)は、CC制御における開始/終了条件を示す図である。
【図17】(a)、(b)は、目標加減速度(dVs0/dt)_tに加えられる制限を説明するための図である。
【図18】第3の実施形態に係わる、運転支援システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図19】第4の実施形態に係わる、運転支援システムの全体構成を示すブロック図である。
【図20】SSDC_ECU100bの機能ブロック図である。
【図21】安全車間距離D_safetyの一例を示す図である。
【図22】現在の接近車間状態評価係数KdB_p、減速目標KdB_ssdc_engine、減速目標KdB_ssdc_brake、減速目標KdB_ssdc_engine_hys、及び減速目標KdB_ssdc_brake_hysを示す図である。
【図23】第3のゲインgain3の一例を示す図である。
【図24】車頭時間TTCに基づいて減速制御の実行を開始するかどうかの判断を説明するための図である。
【図25】第2のゲインgain2の一例を示す図である。
【図26】第4の実施形態に係わる、運転支援システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図27】(a)は、ケースNo.1〜3の数値シミュレーションにおける設定条件を示す図であり、(b)は、ケースNo.4〜6の数値シミュレーションにおける設定条件を示す図である。
【図28】ケースNo.1における数値シミュレーション結果を示す図である。
【図29】ケースNo.2における数値シミュレーション結果を示す図である。
【図30】ケースNo.3における数値シミュレーション結果を示す図である。
【図31】ケースNo.4における数値シミュレーション結果を示す図である。
【図32】ケースNo.5における数値シミュレーション結果を示す図である。
【図33】ケースNo.6における数値シミュレーション結果を示す図である。
【0145】
(第1の実施形態)
図1に、本実施形態の運転支援システムの全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システムは、VSC_ECU10、舵角センサ20、Gセンサ30、ヨーレートセンサ40、ENG_ECU50、警報装置60、レーザレーダ70、操作SW80、及びSDC_ECU100によって構成される。
【0146】
VSC_ECU10は、自車両に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車両の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU10は、車内LANから目標制動力の情報を受信し、この目標制動力が発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU10は、自車両の車速Vs0、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ20は、自車両のステアリングの操舵角の情報を検出するセンサであり、検出した操舵角の情報を車内LANに送信する。
【0147】
Gセンサ30は、自車両の前後方向に発生する加速度(前後加速度)を検出する加速度センサであり、検出した前後加速度の情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ40は、自車両の鉛直方向まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。
【0148】
ECG_ECU50は、車内LANから目標駆動力の情報を受信し、目標駆動力を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。警報装置60は、モニタやスピーカ等で構成され、車内LANから警報指令の情報を受信して、この受信した警報指令に基づく警報を発生する。
【0149】
レーザレーダ70は、レーザ光を自車両前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、自車両前方に存在する先行車両との車間距離D、相対速度Vr、自車両の左右方向の中心軸と先行車両の左右方向の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、SDC_ECU100へ出力する。なお、本実施形態においては、相対速度Vrの符号として、先行車両と自車両とが近づく場合を負(-)、先行車両と自車両とが遠ざかる場合を正(+)と定義する。
【0150】
従って、例えば、図2に示すように、先行車両の車速Vbよりも自車両の車速Vs0が高い場合、先行車両と自車両とが近づくため、相対速度Vrの符号は負(-)で示され、一方、先行車両の車速Vbよりも自車両の車速Vs0が低い場合、先行車両と自車両とが遠ざかるため、相対速度Vrの符号は正(+)で示される。
【0151】
操作SW80は、ドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報はSDC_ECU100へ出力される。SDC_ECU100は、ドライバ状態係数演算部110、TTC警報判定部120、K警報判定部130、D警報判定部140、総合警報判定部150、SDC制御部160、TTC制御部170、CC制御部180、目標制動力算出部190a、目標駆動力算出部190bの各機能で構成される。
【0152】
SDC_ECU100は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。このSDC_ECU100は、自車両が先行車両に追従して走行する場合、基本的には、自車両のドライバの運転操作によって自車両を運行させ、ドライバが運転に適さない状態に陥りつつある場合に、自車両が先行車両と安全な車間距離を維持して走行するように、ドライバの運転操作を支援するための制御(安全車間距離維持制御、Safety Distance Control、SDC)を実行する。
【0153】
ドライバ状態係数演算部110は、自車両の進行方向に先行車両が存在する場合に、自車両のドライバからみた先行車両の像の大きさの変化度合いであるドライバ状態係数Kを演算する。ここで、ドライバ状態係数Kからドライバの運転状態が検出可能である点について説明する。
【0154】
例えば、自車両が先行車両に近づく場合、自車両のドライバは、先行車両の存在を認識することができれば、ドライバ固有のブレーキ開始タイミングでブレーキ操作を開始し、自車両を減速させながら先行車両に接近する。一方、自車両のドライバが居眠り運転、脇見運転、漫然運転等の運転状態である場合、先行車両の存在が認識することが困難であるため、ドライバ固有のブレーキ開始タイミングになったとしてもブレーキ操作を開始せず、自車両を減速させることなく、先行車両に接近する。
【0155】
ところで、自車両が先行車両に近づく場面において、自車両のドライバは、通常、先行車両への接近(先行車両との車間距離の変化)を先行車両の像の大きさ(面積)の変化から認識する。そして、自車両のドライバは、先行車両の存在を認識した場合、上述したように、自車両を減速させながら先行車両に接近するため、この接近中のドライバからみた先行車両の像の大きさの変化度合いであるドライバ状態係数Kは小さい値を示す。一方、自車両のドライバが先行車両の存在を認識することが困難な場合、上述したように、自車両を減速させることなく先行車両に接近するため、この接近中のドライバ状態係数Kは大きい値を示す。よって、ドライバ状態係数Kから先行車両に対するドライバの運転状態を検出することができる。
【0156】
また、ドライバが先行車両の存在を認識した場合であっても、上述した判断過程や行動過程が適切に行われない場合、すなわち、ブレーキ開始タイミングの判断が不適切であったり、ブレーキ操作が不適切であったりした場合、その結果として、ドライバ状態係数Kが大きい値を示すこともある。よって、ドライバ状態係数Kに基づいて、認識過程のみならず、判断過程や操作過程まで含めたドライバの運転状態を総合的に検出することが可能となる。
【0157】
このドライバ状態係数演算部110は、レーザレーダ70から出力された車間距離の情報に基づいて、ドライバ状態係数Kを演算する。すなわち、車間距離をDとし、車間距離の単位時間当たり変化をdD/dtとすると、次式によりドライバ状態係数であるKを算出する。
【0158】
(数27)
K=(-2/ D3)×(dD/dt)
ここで、上記数式によって、ドライバ状態係数Kが算出できる点について説明する。図2に示すように、先行車両の実際の高さをH0、幅をW0、面積をS0 (=W0×H0)とし、自車両のドライバの目(網膜上)に映る先行車両の像の高さをH、幅をW、面積をS(=W×H)とし、さらに、ドライバの目(水晶体)から先行車両までの距離をD(便宜上、先行車両と自車両との車間距離D0と等しいとする)、ドライバの目の焦点距離をfとした場合、先行車両の像の面積Sは、次式で示される。
【0159】
(数28)
S=W×H= W0×H0×(f/D)2
ここで、単位時間当たりの先行車両の像の面積Sの変化度合いdS/dtは、次式で示される。なお、次式中の記号「∝」は比例関係にあることを示している。
【0160】
(数29)
dS/dt=d(W×H)/dt∝d(f/D)2/dt∝d(1/ D2)/dt
上記数式を距離Dで偏微分すると、次式を得る。
【0161】
(数30)
dS/dt∝d(1/ D2)/dt=(-2/ D3)×(dD/dt)
従って、先行車両と自車両との車間距離Dと、車間距離の単位時間当たりの変化dD/dtとから、先行車両の像の面積Sの変化度合いdS/dtを示すドライバ状態係数Kを算出することができる。
【0162】
なお、車間距離Dの単位時間当たりの変化dD/dtは、先行車両と自車両との相対速度Vrと等しい。従って、レーザレーダ70から出力される車間距離Dと相対速度Vrとから、次式によりドライバ状態係数Kを算出するようにしてもよい。
【0163】
(数31)
K=(-2/ D3)×Vr
また、ドライバ状態係数Kは、単位時間当たりの先行車両の像の面積Sの変化度合いdS/dtを示すものであるため、カメラ等の撮像手段の撮影した先行車両の画像の単位時間当たりの大きさの変化度合いと等しい。従って、カメラ等の撮像手段を備えて、その撮影した先行車両の画像の大きさの単位時間当たりの変化度合いから、ドライバ状態係数Kを算出するようにしてもよい。
【0164】
また、警報装置60から、ドライバに対して、ドライバ状態係数演算部110の演算したドライバ状態係数の絶対値の大きさに応じたドライバの運転状態を報知するようにしてもよい。
【0165】
例えば、自車両が先行車両に追従して走行する場合、運転に適した状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができるため、その車間距離の維持された状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta1或いはSta2の範囲内で変化する。なお、図4に示すように、Sta1、Sta2におけるドライバの運転状態は、適切或いは普通の運転状態を示す。
【0166】
一方、運転に適さない状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができないため、その車間距離の維持されない状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta3以上の範囲で変化する。なお、図4に示すように、Sta3〜Sta5におけるドライバの運転状態は、不適切、非常に不適切、或いは完全に不適切な運転状態を示す。
【0167】
よって、図4の表に従って、ドライバ状態係数Kの絶対値の大きさに応じて、ドライバの運転状態(例えば、適切、普通、不適切、非常に不適切、完全に不適切の5段階)を報知することができる。
【0168】
TTC警報判定部120は、自車両の車速Vs0、及び車間距離Dとから自車両が先行車両に衝突するまでの余裕時間を示す衝突余裕時間(Time To Collision、TTC=D/Vs0)を算出し、この衝突余裕時間TTCが所定時間TTCTHを下回る(TTC<TTCTH)場合に、総合警報判定部150に対して、警報を発生する指令を出力する。これにより、衝突余裕時間に基づく警報の発生が可能となる。
【0169】
D警報判定部140は、ドライバが操作SW80を操作したときの車間距離に基づいて、自車両の車速Vs0に応じた先行車両と自車両との目標車間距離を算出し、車間距離Dが目標車間距離を下回った場合に、総合警報判定部150に対して、警報を発生する指令を出力する。これにより、先行車両と自車両との車間距離に基づく警報の発生が可能となる。
【0170】
K警報判定部130は、ドライバ状態係数Kの(絶対値の)大きさに基づいて、自車両のドライバに対して警報を発生すべきか否かを判定する。図3及び図4に示したように、自車両が先行車両に追従して走行する場合、運転に適した状態のドライバのドライバ状態係数Kは、Sta1或いはSta2の範囲内で変化し、運転に適さない状態のドライバのドライバ状態係数Kは、Sta3以上の範囲で変化する。従って、ドライバ状態係数Kの(絶対値の)大きさに基づいて、ドライバに対して警報を発生することで、例えば、運転に適さないドライバに対して警報することができる。
【0171】
K警報判定部130では、具体的には、ドライバ状態係数Kの示す値と、ドライバ状態係数の閾値とを比較して警報を発生すべきか否かを判定し、この判定の結果、警報を発生すべきと判定した場合に警報を発生する指令を出力する。これにより、ドライバ状態係数Kの閾値に基づいて、警報を発生すべきか否かを判定することができる。
【0172】
なお、K警報判定部130では、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合に警報を発生するようにしてもよい。すなわち、相対速度Vrの符号として、先行車両と自車両とが近づく場合を負(-)、先行車両と自車両とが遠ざかる場合を正(+)と定義したが、この場合、ドライバ状態係数K=(-2/ D3)×Vrであるから、先行車両と自車両とが近づく場合、先行車両の像の大きさが大きくなる変化を示し、そのときのドライバ状態係数Kは正の値を示す。一方、先行車両と自車両とが遠ざかる場合、先行車両の像の大きさが小さくなる変化を示し、そのときのドライバ状態係数Kは負の値を示す。図3は、先行車両と自車両とが近づく場合、ドライバ状態係数Kは正の値を示し、先行車両と自車両とが遠ざかる場合、ドライバ状態係数Kは負の値を示す状況を示している。
【0173】
このように、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合、先行車両と自車両とが近づく状況が継続しているため、ドライバ状態係数Kが負の値を示す場合、すなわち、先行車両と自車両とが遠ざかる状況が継続している場合に比べて自車両の危険性は高い。従って、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合に、ドライバ状態係数の値の大きさに基づいてドライバに対して警報を発生することで、先行車両と自車両とが近づいている状況に限って警報を発生することができる。
【0174】
また、K警報判定部130におけるドライバ状態係数の閾値は、任意な値に変更可能であることが望ましい。これにより、自車両のドライバは、警報の発生を判定するためのドライバ状態の閾値を所望の閾値に変更することができる。
【0175】
K警報判定部130では、警報を発生すべきか否かの判定を所定の周期で繰り返し行う。そして、図9に示すように、警報を発生すべきと判定した回数が一定回数以上となった場合、又は、警報を発生すべきと判定した時間が一定時間以上継続した場合に警報を発生すべきと最終的に判定する。これにより、警報発生のハンチング現象を抑制することができる。
【0176】
また、図9に示すように、K警報判定部130では、警報を発生すべきと判定して警報の発生を開始した後、警報を発生すべきでない判定した時間が一定時間(tE)以上継続した場合に、警報の発生の中止を最終的に判定する。これにより、警報の発生を中止することができる。なお、警報の発生の中止は、相対速度Vrが負から正に変化した場合に警報の発生の中止を最終的に判定するようにしてもよい。
【0177】
上述したように、先行車両と自車両との相対速度Vrは、先行車両と自車両とが近づく場合に負(-)の符号で示され、先行車両と自車両とが遠ざかる場合に正(+)の符号で示される。そして、相対速度Vrが負から正に変化した場合、先行車両と自車両とが近づく状況から遠ざかる状況に変化したことになり、この状況の変化により自車両の危険性が低くなる。従って、自車両の危険性が低くなった場合に、警報の発生の中止を最終的に判定することができる。
【0178】
総合警報判定部150は、TTC警報判定部120、K警報判定部130、D警報判定部140の各判定結果に基づいて、警報装置60から発生すべき警報の種類、内容等を判定し、警報指令を車内LANに送信する。なお、総合警報判定部150は、K警報判定部130の判定結果が警報を発生すべきとする場合、自車両のドライバに対して体感的な警報(警報ブレーキ)を与えるようにしてもよい。例えば、VSC_ECU10に警報ブレーキに対応する目標制動力を送信し、VSC_ECU10において、自車両に目標制動力が印加されるようにブレーキアクチュエータを制御する。これにより、自車両のドライバに対して体感的な警報(警報ブレーキ)を与えることができる。
【0179】
SDC制御部160は、自車両が先行車両に追従して走行する際、ドライバ状態係数Kの値の大きさに基づいて、自車両を加速する加速制御、及び自車両を減速する減速制御を実行する。すなわち、自車両が先行車両に追従して走行する場合、上述したように、運転に適した状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができるため、その車間距離の維持された状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta1或いはSta2の範囲内で変化する。
【0180】
一方、運転に適さない状態のドライバは、先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行うことができないため、その車間距離の維持されない状況におけるドライバ状態係数Kは、図3に示すように、Sta3以上の範囲で変化する。
【0181】
本運転支援システムは、運転に適さない状態に陥りつつあるドライバの運転操作を支援することを目的に、ドライバ状態係数Kの値の大きさに基づいて自車両を加減速する。これにより、自車両が先行車両に追従して走行する場合の運転操作を支援することができる。
【0182】
SDC制御部160では、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合に減速制御を実行し、ドライバ状態係数Kが負の値を示す場合に加速制御を実行する。これにより、先行車両と自車両とが近づく場合に減速制御を実行するため、自車両が先行車両に近づくのを抑制することができる。一方、先行車両と自車両とが遠ざかる場合に加速制御が実行するため、自車両が先行車両から遠ざかるのを抑制することができる。
【0183】
図6に、先行車両と自車両とが近づく場合における、ドライバ状態係数K、車間距離D、自車両の車速Vs0、先行車両の車速Vb、SDC制御部160による減速制御、及びドライバの運転操作のタイムチャートを示す。同図に示すように、SDC制御部160では、ドライバ状態係数Kに対して、エンジンブレーキ閾値(Keb)、ブレーキ閾値(Kmb)、警報ブレーキ閾値(Kwb)を設定するとともに、この閾値が大きいほど、自車両に発生すべき減速度を高く設定する。
【0184】
図8(a)は、ドライバのブレーキ操作が行われずに先行車両と自車両とが近づく状況において、自車両に発生する減速度を示している。このように、ドライバのブレーキ操作が行われずに先行車両と自車両とが近づく状況においては、ドライバ状態係数Kが次第に大きな値を示すようになるため、上記閾値が大きいほど、自車両に発生すべき減速度を高く設定することで、自車両に発生する減速度を段階的に高くすることができる。これにより、減速制御において、ドライバ状態係数Kの値に対応した減速度で自車両を減速させることができる。なお、同図(a)に示すように、一定時間(t2、t3)経過後に自車両に発生する減速度を段階的に高くするようにしてもよい。
【0185】
また、ドライバ状態係数Kがある閾値に到達し、その閾値に対応して設定された減速度で減速している間にドライバによるブレーキ操作が介入した場合には、図8(b)に示すように、一定時間(t2)経過した後であっても、自車両に発生する減速度を段階的に高くすることなく、その減速度を継続して発生するようにしてもよい。
【0186】
なお、SDC制御部160では、加速制御や減速制御の実行中に自車両のドライバによるアクセル操作やブレーキ操作が介入する場合であっても、加速制御や減速制御を継続して実行する。これにより、自車両が先行車両に追従して走行する場合、基本的には自車両のドライバの運転操作によって自車両が運行され、ドライバが運転に適さない状態に陥りつつある場合に、ドライバの運転操作を支援することができる。
【0187】
具体的には、図7(a)に示すように、減速制御の実行中に自車両を加速するアクセル操作が行われた場合、このアクセル操作の開始から一定時間(t1)経過後に減速制御の実行を中止する。これにより、例えば、自車両が先行車両を追い越す場面において、スムーズに先行車両を追い越すためにドライバがアクセル操作を行って自車両を加速する場合に、減速制御を継続して実行しないようにすることができる。
【0188】
また、減速制御として、主ブレーキ(ブレーキアクチュエータの制御)による減速制御、及びエンジンブレーキによる減速制御の少なくとも一方の制御を実行する場合には、図7(b)に示すように、減速制御の実行中に自車両を加速するアクセル操作が行われた場合、このアクセル操作の開始から一定時間(t1)経過後に、エンジンブレーキによる減速制御のみ実行するようにしてもよい。これにより、先行車両と自車両とが近づくにもかかわらずドライバが自車両を加速させるためのアクセル操作を行う場合に、主ブレーキによる減速制御を継続して実行しないようにすることができる。
【0189】
TTC制御部170は、自車両が先行車両に衝突するまでの余裕時間を示す衝突余裕時間TTCが所定時間TTCTHを下回る(TTC<TTCTH)場合に、自車両を減速する制御を実行する。これにより、衝突余裕時間TTCに基づいて自車両を減速することができる。
【0190】
CC制御部180は、自車両の進行方向に先行車両が存在しない場合(先行車両との車間距離がレーザレーダ70の検出可能な車間距離を超える場合)に、自車両の車速を一定の車速に制御する。これにより、自車両が単独で走行する場合には、自車両の車速を一定の車速に保つように支援することができる。
【0191】
目標制動力算出部190a、及び目標駆動力算出部190bは、SDC制御部160における自車両に発生すべき加減速SDC(α)、TTC制御部170における自車両に発生すべき減速度TTC(α)、CC制御部180における自車両に発生すべき加減速度CC(α)を踏まえて、自車両に発生すべき目標制動力又は目標駆動力を算出し、車内LANへ送信する。
【0192】
図5は、SDC_ECU100のドライバ状態係数演算部110、SDC制御部160、TTC制御部170、CC制御部180、目標制動力算出部190a、及び目標駆動力算出部190bの各機能を制御モデルで示したものである。同図に示すように、SDC制御部160、TTC制御部170、CC制御部180の各制御部における加減速SDC(α)、TTC(α)、CC(α)は、車両運動モデルに入力され、自車両に発生すべき目標制動力又は目標駆動力が算出される。そして、この目標制動力又は目標駆動力を車両運動モデルに入力することで、自車両の挙動を示す加減速度(α)が出力される。
【0193】
次に、本運転支援システムの動作について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、同図に示すステップ(以下、Sと記す)10では、車間距離D、自車両の車速Vs0、相対速度Vr等の車両状態量を検出する。S20では、ドライバ状態係数K、及び衝突余裕時間TTCを算出する。S30では、SDC(α)、TTC(α)、CC(α)を算出する。
【0194】
S40では、S30において算出したSDC(α)、TTC(α)、CC(α)を踏まえて、自車両に発生すべき目標制動力又は目標駆動力を算出する。S50では、この算出した目標制動力又は目標駆動力を車内LANに出力する。S60では、TTC警報判定部120、K警報判定部130、D警報判定部140の各判定結果に基づいて、警報装置60から発生すべき警報の種類、内容等を判定する。S70では、S60によって、警報を発生すべきと判定したか否かを判定する。ここで、肯定判定される場合には、S80において警報指令を車内LANに出力し、否定判定される場合には、S10へ処理を移行し、上述した処理を繰り返し行う。
【0195】
このように、本実施形態の運転支援システムは、自車両の進行方向に先行車両が存在する場合、ドライバからみた先行車両の像の大きさの変化度合いを示すドライバ状態係数Kを算出し、このドライバ状態係数Kからドライバの運転状態を検出する。そして、ドライバ状態係数Kの示す値の大きさに応じて、ドライバに対して警報を発生したり、ドライバの運転操作を支援したりする。
【0196】
(変形例1)
本実施形態のSDC_ECU100におけるK警報判定部130では、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合に警報を発生するようにしてもよいと説明しているが、さらに、ドライバ状態係数Kが負の値を示す場合にも警報を発生するようにしてもよい。
【0197】
上述したように、ドライバ状態係数Kが正の値を示す場合、先行車両と自車両とが近づく状況が継続しているため、ドライバ状態係数Kが負の値を示す場合、すなわち、先行車両と自車両とが遠ざかる状況が継続している場合に比べて自車両の危険性は高い。しかしながら、先行車両と自車両とが遠ざかる状況がドライバの意図的な運転操作によるものでない場合、すなわち、自車両のドライバが運転に適さない運転状態に陥ったために、上記の状況となる場合も考えられる。従って、ドライバ状態係数が負の値を示す場合に警報を発生することで、先行車両と自車両とが遠ざかる状況において警報を発生することができる。
【0198】
なお、ドライバ状態係数が負の値を示す場合の警報としては、自車両に駆動力を印加して自車両を加速することにより警報を発生するようにしてもよい。これにより、自車両のドライバに対して体感的な警報を与えることができる。
【0199】
(変形例2)
本実施形態のSDC_ECU100におけるSDC制御部160は、先行車両の存在に注目して加速制御や減速制御を実行するものであるが、自車両の走行車線に隣接する隣接車線に対向車両が存在する場合には、加速制御、及び減速制御の実行を中止するようにしてもよい。これにより、例えば、レーザレーダ70が対向車両を先行車両と誤って検出したとしても、加速制御や減速制御を実行しないようにすることができる。
【0200】
(変形例3)
本実施形態のSDC_ECU100におけるSDC制御部160は、加速制御や減速制御の実行中に自車両のドライバによるアクセル操作やブレーキ操作が介入する場合であっても、加速制御や減速制御を継続して実行するものであるが、自車両のステアリングがドライバによって操作された場合には、減速制御の実行を中止するようにしてもよい。これにより、減速中にドライバがステアリングを操作することで、車両の挙動が不安定な状態となるのを防ぐことができる。
【0201】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。第1の実施形態の運転支援システムは、ドライバ状態係数Kの示す値の大きさに応じて、ドライバに対して警報を発生するものである。
【0202】
これに対し、本実施形態の運転支援システムは、自車両前方の存在する物体を検出し、この検出した物体が自車両の所定の警報対象範囲内に存在する場合にドライバに対して警報を発生するものであり、ドライバ状態係数Kの示す絶対値の大きさに応じて、警報対象範囲の広さを変更する。
【0203】
例えば、覚醒度が高い(運転に適した状態の)ドライバは、視界が広い状態であるため、自車両前方に存在する物体を幅広く認識することができる。これに対し、覚醒度が低い(運転に適さない状態の)ドライバは、視界が狭い状態であるため、視界の中心(中心視)から外れた周辺視に位置する物体を認識することができなくなる。そこで、例えば、図11に示すように、ドライバ状態係数Kの絶対値の大きさに応じて警報対象範囲の広さを変更し、この変更した警報対象範囲に物体が存在する場合に警報を発生させる。これにより、運転に適さない状態のドライバに対し、運転に適した状態であれば認識可能な物体の存在を警報することができる。
【0204】
この警報対象範囲の広さの変更は、ドライバ状態係数Kの絶対値が大きい程、自車両前方における左右方向の広さが広くなるように変更し、ドライバ状態係数Kの絶対値が小さい程、自車両前方における左右方向の広さが狭くなるように変更するとよい。これにより、例えば、覚醒度が低下して視界の狭くなった状態のドライバに対して、ドライバの認識できない物体の存在を警報することができる。また、運転に適した状態のドライバに対して、認識可能な物体の存在を警報しないようにすることも可能となる。
【0205】
なお、自車両前方の存在する物体を検出する手段としては、例えば、カメラ等の撮像手段を採用すればよい。そして、この撮像手段の撮影した自車両前方の画像に所定の画像処理を施し、テンプレートマッチング等の手法を用いて軽車両、歩行者、道路標識、及び信号機の少なくとも1つの物体を検出するとよい。これにより、自車両の進路に進入する可能性のある軽車両や歩行者を検出したり、運行上遵守すべき道路標識や信号機を検出したりすることができる。
【0206】
(第3の実施形態)
図12に、本実施形態の運転支援システムの全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システムは、VSC_ECU10、舵角センサ20、Gセンサ30、ヨーレートセンサ40、ENG_ECU50、警報装置60、レーザレーダ70、操作SW80a、及びSSDC_ECU100aによって構成される。このうち、SSDC_ECU100aを除く他の構成は、第1の実施形態において説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0207】
SSDC_ECU100aは、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。このSSDC_ECU100aは、図3に示したSta1或いはSta2の範囲内のドライバ状態係数(すなわち、運転に適した状態のドライバが先行車両と自車両との車間距離を一定の距離に保つように運転操作を行っている状況におけるドライバ状態係数)を目標とすべきドライバ状態係数(目標ドライバ状態係数)とし、この目標ドライバ状態係数と、現在のドライバ状態係数とに基づいて、自車両と先行車両との目標とすべき相対加減速度(目標相対加減速度)を算出し、この目標相対加減速度に基づいて自車両を加減速するための制御を行う。
【0208】
本実施形態の運転支援システムは、目標相対加減速度に基づいて自車両を加減速させることで、先行車両と自車両との車間距離や自車両の速度を制御する安全速度車間距離制御(Safety Speed & Distance Control、以下SSDC制御と呼ぶ)を実行する。
【0209】
このSSDC制御は、従来の定速走行制御(CC制御)の機能を含んでおり、相対速度Vrが正の値を示す場合(先行車両と自車両とが遠ざかる場合)にこのCC制御を実行する。また、自車両の相対速度Vrが負の値を示す場合(先行車両と自車両とが近づく場合)には、SSDC制御は、自車両の速度を減速する減速制御を実行する。
【0210】
ドライバ状態係数K[dB]演算部110aは、レーザレーダ70から出力された車間距離の情報に基づいて、ドライバ状態係数Kを演算する。すなわち、車間距離をDとし、車間距離の単位時間当たり変化をdD/dtとすると、次式によりドライバ状態係数Kを算出する。
【0211】
(数32)
K=(-2/ D3)×(dD/dt)
なお、車間距離Dの単位時間当たりの変化dD/dtは、先行車両と自車両との相対速度Vrと等しい。従って、レーザレーダ70から出力される車間距離Dと相対速度Vrとから、次式によりドライバ状態係数Kを算出するようにしてもよい。
【0212】
(数33)
K=(-2/ D3)×Vr
また、ドライバ状態係数Kは、単位時間当たりの先行車両の像の面積Sの変化度合いdS/dtを示すものでもあるため、カメラ等の撮像手段の撮影した先行車両の画像の単位時間当たりの大きさの変化度合いと等しい。従って、カメラ等の撮像手段を備えて、その撮影した先行車両の画像の大きさの単位時間当たりの変化度合いから、ドライバ状態係数Kを算出するようにしてもよい。
【0213】
また、ドライバ状態係数K[dB]演算部110aは、ドライバ状態係数Kを定数倍し、それを対数(デシベル[dB])で示した次式の算出結果をSSDC制御部160aへ出力する。なお、次式中の|K|はドライバ状態係数Kの絶対値を示している。
【0214】
(数34)
K[dB]=10×log(|K|/0.00005)
SSDC制御部160aは、自車両が先行車両に追従して走行する際、目標ドライバ状態係数K_t[dB]と、ドライバ状態係数K[dB]演算部110aから出力される現在のドライバ状態係数K_p[dB]とに基づいて、次式で示される目標相対加減速度(dVr/dt)_tを算出し、この目標相対加減速度(dVr/dt)_tに基づいて自車両を加減速する。
【0215】
(数35)
(dVr/dt)_t=7.5×10{(K_f[dB]/10)-8}×D2×Vr
この目標相対加減速度(dVr/dt)_tは、次のように算出される。すなわち、上記数式33を定数倍したものと数式34とから、相対速度Vrについて時間微分を施すと、次式に示す相対加減速度(dVr/dt)を得る。
【0216】
(数36)
(dVr/dt)=7.5×10{(K[dB]/10)-8}×D2×Vr
ここで、例えば、目標ドライバ状態係数K_t[dB]を30[dB](運転に適した状態のドライバ状態係数)とした場合、上記数式36のK[dB]としてこれを代入すると、相対減速度(dVr/dt)は図14中の曲線で示される。本実施形態では、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が目標ドライバ状態係数K_t[dB]に近づくようにドライバ状態変数K_f[dB]を決定し、この決定したドライバ状態変数K_f[dB]を上記数式17に代入することで、目標相対加減速度(dVr/dt)_tを算出する。
【0217】
なお、図14に示すように、ドライバ状態変数K_f[dB]は、現在のドライバ状態係数K_p[dB]と目標ドライバ状態係数K_t[dB]との偏差に、現在のドライバ状態係数K_p[dB]を加算することで決定される。なお、図14では、一例として比例項を偏差としたが微分項あるいは積分項あるいはこれらの組み合わせで算出される値を偏差としてもよい。図13にドライバ状態係数K[dB]演算部110aとSSDC制御部160aの各機能に対応する制御モデルを示す。同図に示すように、現在のドライバ状態係数K_p[dB]を算出し、現在のドライバ状態係数K_p[dB]と目標ドライバ状態係数K_t[dB]との偏差をとり、その偏差に現在のドライバ状態係数K_p[dB]を加えたドライバ状態変数K_f[dB]から、目標加減速度(dVr/dt)_tを算出する。
【0218】
SSDC制御部160aは、SSDC制御を実行するにあたり、図15及び図16に示す制御開始/終了条件を満たすかどうか判定し、その判定結果に応じてSSDC制御を開始/終了する。図15は、相対速度Vrが負の値を示す場合(先行車両と自車両とが近づくとき)の制御開始/終了条件を示しており、図16は、相対速度Vrが正の値を示す場合(先行車両と自車両とが遠ざかるとき)の制御開始/終了条件を示している。
【0219】
図15(a)に示すように、相対速度Vrが負の値(Vr<0)を示す場合には、当該相対速度Vrの値が所定値(例えば、-10[km/h])よりも小さな値を示し、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が目標ドライバ状態係数K_t[dB]よりも大きな値を示し、さらに、自車両の速度Vs0が所定速度(例えば、10[km/h])を超える速度である場合にSSDC制御を開始する。
【0220】
また、図15(b)に示すように、相対速度Vrが負の値(Vr<0)を示す場合には、当該相対速度Vrの値が所定値(例えば、-5[km/h])よりも大きな値を示す場合(言い換えれば、相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合)、若しくは、自車両の速度Vs0が所定速度(例えば、5[km/h])に満たない低速度である場合にSSDC制御を終了する。
【0221】
このように、先行車両と自車両とが近づく場合(相対速度Vrが負の値を示す場合)であっても、相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合には、ドライバが運転に適した状態で先行車両に追従するように運転操作を行っていると考えられる。従って、このような場合にSSDC制御における減速制御の実行を終了(停止)することで、ドライバの運転操作に過度に介入しないようにすることができる。
【0222】
なお、図15(b)に図示していないが、ドライバが先行車両との接触を回避するため一定の値以上の加速操作をおこなった場合、及びドライバが先行車両との接触を回避するためのステアリング操作を開始した場合にもSSDC制御における減速制御の実行を終了(停止)するようにしてもよい。
【0223】
つまり、先行車両と自車両とが近づく場合(相対速度Vrが負の値を示す場合)であっても、ドライバが先行車両との接触を回避するための加速操作やステアリング操作を開始した場合、ドライバは、先行車両を追い越すための車線変更を開始したものと考えられる。従って、このような場合にSSDC制御における減速制御の実行を停止することで、車線変更を妨げるような介入をしないようにすることができる。
【0224】
図15(b)に示したSSDC制御終了条件に該当し、SSDC制御を終了(停止)する場合には、SSDC制御における減速制御が終了(停止)する旨やドライバによる減速操作の開始を促す旨を報知するように、総合警報判定部150へ指示するとよい。これにより、警報装置60から、減速制御が終了(停止)する旨やドライバによる減速操作の開始を促す旨が報知されるようになるため、ドライバは、SSDC制御における減速制御が終了(停止)することを把握したり、自ら減速操作を開始する必要があることを把握したりすることが可能となる。
【0225】
また、SSDC制御を終了(停止)した後に、ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行する場合、自車両のブレーキアクチュエータにブレーキ予圧を印加するブレーキ予圧印加制御を実行するようにしてもよい。これにより、ドライバがアクセルペダルからブレーキペダルへ踏み替えるまでの間にブレーキ予圧を印加することが可能となるため、減速操作を開始するまでのタイムラグを排除することができる。
【0226】
一方、SSDC制御を終了(停止)した後に、前記ドライバ状態係数が負の値を示すとき、ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行しない場合、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が所定値以上の正の値を示すときには、図示しない衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行するようにしてもよい。
【0227】
上述したように、先行車両と自車両とが近づく場合(相対速度Vrが負の値を示す場合)にSSDC制御における減速制御の実行を終了(停止)した後、ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行しない場合、先行車両と自車両とがさらに接近することになり、先行車両と自車両とが衝突する可能性が高くなる。
【0228】
このような場合、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が所定値以上の正の値を示すならば、双方の車両が急激に接近していると判断し、衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行する。これにより、先行車両と自車両とが衝突したときの被害を軽減することが可能となる。なお、衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行する際には、ドライバに対し警報を発生し、衝突被害軽減装置が作動する旨をドライバに知らせることが望ましい。
【0229】
図16(a)に示すように、相対速度Vrが正の値(Vr>0)を示す場合には、操作SW80の設定速度SWがON状態にあり、当該相対速度Vrの値が所定値(例えば、10[km/h])よりも大きな値を示し、現在のドライバ状態係数K_p[dB]が目標ドライバ状態係数K_t[dB]よりも大きな値を示し、さらに、自車両の速度Vs0が所定速度(例えば、40[km/h])を超える速度である場合にCC制御を開始する。
【0230】
また、図16(b)に示すように、相対速度Vrが正の値(Vr>0)を示す場合には、当該相対速度Vrの値が所定値(例えば、5[km/h])よりも小さな値を示す場合(言い換えれば、相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合)、若しくは、自車両の速度Vs0が所定速度(例えば、35[km/h])に満たない速度である場合にCC制御を終了する。
【0231】
このように、先行車両と自車両とが遠ざかる場合(相対速度Vrが正の値を示す場合)であっても、相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合には、ドライバが運転に適した状態で先行車両に追従するように運転操作を行っていると考えられる。従って、このような場合にCC制御の実行を停止することで、ドライバの運転操作に過度に介入しないようにすることができる。
【0232】
また、図15及び図16に図示していないが、相対速度Vrの絶対値が自車両の速度Vs0よりも大きい値を示す場合、その相対速度Vrは、自車両と同じ進行方向の先行車両との相対速度ではなく、対向車両との相対速度であると考えられる。従って、このような場合には、SSDC制御やCC制御の実行を禁止することで、誤った制御を実行しないようにすることができる。
【0233】
SSDC制御部160aは、図12及び図13に示すように、目標相対加減速度(dVr/dt)_tと先行車両の加減速度(dVb/dt)とから、自車両の目標加減速度(dVs0/dt)_tを算出し、この目標加減速度(dVs0/dt)_tから自車両に発生すべき目標制動力又は目標駆動力を算出し、車内LANへ送信する。
【0234】
なお、図13に示すように、目標加減速度(dVs0/dt)_tには、ドライバによる減速操作の有無(すなわち、ブレーキペダル操作の有無)に応じた制限が加えられる。図17(a)は、相対速度Vrが負の値を示す場合に加える制限を示している。同図(a)に示すように、ドライバがブレーキペダル操作を行っていない(STP→OFF)、すなわち、ドライバが加速操作、若しくは現在の自車両の速度を保持するための定速操作を行っている場合には、目標加減速度(dVs0/dt)_tをSSDC制御の減速制御において発生可能な最大減速度a(例えば、a=-3[m/s2])よりも低い減速度に制限する。
【0235】
一方、ドライバがブレーキペダル操作を行っている(STP→ON)場合には、目標加減速度(dVs0/dt)_tをドライバの減速操作によって発生する自車両の減速度b、若しくは、ドライバのブレーキペダルを踏む力を補助するブレーキアシストシステム(BA)によって発生する減速度c(例えば、c=-8[m/s2])よりも低い減速度に制限する。これにより、相対速度Vrが負の値を示すとき、ドライバの減速操作の有無によって目標加減速度(dVs0/dt)_tに異なった制限を加えることができる。
【0236】
また、図17(b)は、相対速度Vrが正の値を示す場合に加える制限を示している。同図(b)に示すように、ドライバがブレーキペダル操作を行っていない(STP→OFF)、すなわち、ドライバが加速操作、若しくは現在の自車両の速度を保持するための定速操作を行っている場合には、目標加減速度(dVs0/dt)_tをCC制御の減速制御において発生可能な最大減速度a(例えば、a=-3[m/s2])よりも低い減速度に制限するとともに、目標加減速度(dVs0/dt)_tをCC制御の加速制御において発生可能な最大加速度g(例えば、g=+2[m/s2])よりも低い加速度に制限する。
【0237】
一方、ドライバがブレーキペダル操作を行っている(STP→ON)場合には、目標加減速度(dVs0/dt)_tをドライバの減速操作によって発生する自車両の減速度b、若しくは、ドライバのブレーキペダルを踏む力を補助するブレーキアシストシステムによって発生する減速度cよりも低い減速度に制限する。
【0238】
これにより、相対速度Vrが正の値を示すとき、ドライバの減速操作の有無によって目標減速度(dVs0/dt)_tに異なった制限を加えることができるとともに、目標加速度(dVs0/dt)_tにも制限を加えることができる。なお、減速度cは、先行車両の減速度(dVb/dt)の高低と合うように、先行車両の減速度(dVb/dt)に応じて設定することが好ましい。
【0239】
次に、本運転支援システムの動作について、図18に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、同図に示すS110では、車間距離D、自車両の車速Vs0、相対速度Vr等の車両状態量を検出する。S120では、目標ドライバ状態係数K_t[dB]を取得する。S130では、現在のドライバ状態係数K_p[dB]を算出する。S140では、目標ドライバ状態係数K_t[dB]と現在のドライバ状態係数K_p[dB]の偏差Eを算出する。
【0240】
S150では、目標相対加減速度(dVr/dt)_tを算出し、S160では、自車両の目標加減速度(dVs0/dt)_tを算出する。S170では、ドライバのブレーキペダル操作に応じた制限を目標加減速度(dVs0/dt)_tに加える。S180では、SSDC制御又はCC制御の開始条件を満たすか否かを判定する。ここで、肯定判定される場合にはS190へ処理を進め、否定判定される場合にはS200へ処理を移行する。
【0241】
S190では、SSDC制御又はCC制御を開始/継続し、S110へ処理を移行して、上述した処理を繰り返し行う。S200では、SSDC制御又はCC制御の終了条件を満たすか否かを判定する。ここで、肯定判定される場合にはS210に処理を進め、否定判定される場合にはS110へ処理を移行し、上述した処理を繰り返し行う。S210では、SSDC制御又はCC制御が実行中であれば、制御の実行を終了させた後、S110へ処理を移行し、上述した処理を繰り返し行う。
【0242】
このように、本実施形態の運転支援システムは、目標ドライバ状態係数と、現在のドライバ状態係数とに基づいて、自車両と先行車両との目標相対加減速度を算出し、この目標相対加減速度に基づいて自車両を加減速するSSDC制御を実行する。これにより、目標ドライバ状態係数と、現在のドライバ状態係数との関係に基づいて、自車両が先行車両に追従して走行する場合の運転操作を支援することができる。
【0243】
(変形例4)
本実施形態において、目標ドライバ状態係数K_t[dB]は、例えば、操作SW80を用いて任意な値に設定できるようにしてもよい。これにより、ドライバ自身の好みに応じた目標ドライバ状態係数K_t[dB]の値に設定することができる。
【0244】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。図19に、本実施形態の運転支援システムの全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システムは、VSC_ECU10、舵角センサ20、Gセンサ30、ヨーレートセンサ40、ENG_ECU50、レーザレーダ70、操作SW80a、及びSSDC_ECU100bによって構成される。このうち、SSDC_ECU100bを除く他の構成は、第3の実施形態において説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0245】
SSDC_ECU100bは、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。接近離間状態評価指標KdB演算部110bは、レーザレーダ70から出力される車間距離をDとし、相対速度をVrとすると、次式により接近離間状態評価指標KdBを算出する。なお、次式中の|-2×Vr|は(-2×Vr)の絶対値を示している。また、相対速度Vrは先行車両と自車両とが近づく場合を負(-)の符号で表し、先行車両と自車両とが遠ざかる場合を正(+)の符号で表す。
【0246】
(数37)KdB=10×log{|-2×Vr|/( D3×5×10-8)}
第1の実施形態において説明したように、自車両からみた先行車両の面積変化の度合いを示すドライバ状態係数Kは、先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として用いることができる。そのため、本実施形態では、ドライバ状態係数Kを表す数式5又は31を定数倍したものを対数(デシベル[dB])で示し、さらに定数倍した上記数式37から接近離間状態評価指標KdBを得る。
【0247】
接近離間状態評価指標KdB演算部110bは、算出した現在の接近離間状態評価指標KdB_pの符号について、相対速度Vrの符号が負(-)である(すなわち、先行車両と自車両とが近づく)場合に正(+)の符号を付与し、相対速度Vrの符号が正(+)である(すなわち、先行車両と自車両とが遠ざかる)場合に負(-)の符号を付与したうえで、SSDC制御部160bに出力する。
【0248】
SSDC制御部160bは、自車両の進行方向に先行車両(自車両と同じ進行方向の前方車両であって対向車両を除く)が存在する場合、自車両の常用減速度nd、車間距離D及び相対速度Vrから、自車両を減速する減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出し、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する。そして、接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdcを上回る値である場合には自車両を減速する減速制御の実行を開始する。一方、接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdcを下回る値である場合には自車両を加速する加速制御の実行を開始する。この自車両の加減速によって、車間距離Dや自車両の速度Vs0を制御する安全速度車間距離制御(Safety Speed & Distance Control、以下SSDC制御と呼ぶ)が実行される。
【0249】
次に、図20にSSDC_ECU100bの機能ブロックを示す。相対速度取得部301、及び車間距離情報取得部302は、レーザレーダ70からの相対速度Vr及び車間距離Dを取得する。接近離間状態評価指標算出部303は、上述したように、相対速度Vrと車間距離Dから現在の接近離間状態評価指標KdB_pを算出する。
【0250】
自車両速度取得部304は、自車両の速度Vs0を取得する。路面μ取得部305は、図示しない路面状態検出装置の検出した自車両の走行する路面状態から路面摩擦係数μを決定する。なお、例えば、乾燥、湿潤、積雪、凍結等の路面状態と路面摩擦係数μを予め対応させておき、乾燥、湿潤、積雪、凍結等をドライバに選択させ、その選択させた路面状態から路面摩擦係数μを決定するようにしてもよい。
【0251】
安全車間距離算出・判定部306は、図21に示すように、予め設定された車頭時間TTC_on(先行車両と自車両との現在の接近状態が継続した場合に何秒後に先行車両に接触するかを示すもの。)に自車両の速度Vs0を乗じた安全車間距離D_safetyを算出する。
【0252】
車頭時間TTC_onは、後述するように、減速制御の実行を開始するかどうかの判断にも用いられ、現在の車頭時間TTCが予め設定された車頭時間TTC_on以上の値を示す場合には、安全な車頭時間が確保されているものとして、減速制御は実行しないと判断する。
【0253】
安全車間距離算出・判定部306では、この予め設定された車頭時間TTC_onに自車両の速度Vs0を乗じて安全車間距離D_safetyを算出し、現在の車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であるかどうかを判定する。この判定結果から、安全車間距離Dが確保されているかどうかを把握する。
【0254】
なお、走行路面の状態によって安全な車間距離は異なる。従って、路面状態によって安全車間距離D_safetyを補正するようにしてもよい。例えば、路面摩擦係数μによって車頭時間TTC_onを補正することで安全車間距離D_safetyを補正するとよい。
【0255】
常用減速度記憶部307は、自車両の常用減速度ndを記憶するものであり、この常用減速度ndは、エンジンブレーキ相当の減速度を示すエンジンブレーキ常用減速度nd_engine、及びブレーキアクチュエータによって発生する主ブレーキ相当の減速度を示す主ブレーキ常用減速度nd_brakeの2つの減速度を示す。なお、主ブレーキ常用減速度nd_brakeは、エンジンブレーキ常用減速度nd_engineよりも大きな減速度を示す。
【0256】
減速目標算出・判定部308は、常用減速度nd、車間距離D、及び相対速度Vrから減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する。この減速目標KdB_ssdcは、数式40から算出される。すなわち、上記数式13から次式が得られる。なお、次式中の第1のゲインgain1については後述する。
【0257】
(数38)
nd=gain1×7.5×D2×10{(|KdB_ssdc|/10)-8}×Vr
上記数式を変形すると次式を得る。
【0258】
(数39)
10{(|KdB_ssdc|/10)-8}=nd/gain1×7.5×D2×Vr
上記数式を対数で示すと次式を得る。
【0259】
(数40)
KdB_ssdc={log(|nd/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
上記数式40から、エンジンブレーキによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_engineと、ブレーキアクチュエータによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_brakeが次式によって算出される。
【0260】
(数41)
KdB_ssdc_engine={log(|nd_engine/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
(数42)
KdB_ssdc_brake={log(|nd_brake/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
また、減速目標算出・判定部308は、減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeに基づいて、減速制御の終了タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_engine_hys、及び減速目標KdB_ssdc_brake_hysを算出する。例えば、減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeの各々に対して、例えば、-3[dB]から-6[dB]程度下回る値を減速目標KdB_ssdc_engine_hys、及び減速目標KdB_ssdc_brake_hysとする。
【0261】
そして、減速目標算出・判定部308は、図22に示すように、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine、又は減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る値であるかどうか判定する。この判定の結果、減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回る値であると判定された場合には、減速制御の実行を開始すると判断する。
【0262】
これにより、例えば、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engineを上回る場合に減速制御の実行を開始することで、その実行開始タイミングをエンジンブレーキ常用減速度nd_engineを発生させるときの減速操作のタイミングに合わせることができる。
【0263】
また、例えば、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る場合に減速制御の実行を開始することで、その実行開始タイミングを主ブレーキ常用減速度nd_brakeを発生させるときの減速操作のタイミングに合わせることができる。
【0264】
なお、本実施形態では、車頭時間TTC判定部309によって、減速制御の実行開始について車頭時間TTCに基づくガードをかけている。すなわち、例えば、車間距離Dが50m程度以下の場合には、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回ったタイミングで減速制御の実行を開始することで、ドライバ自身がブレーキ操作を行うときのタイミングに合わせることができる。
【0265】
しかしながら、車間距離Dが50m程度以上の場合、自車両のドライバは、車間距離Dが50m程度以下の場合に比べて先行車両の面積変化に対する認識度が低下する。そのため、先行車両の面積変化の度合いと対応関係にある現在の接近離間状態評価指標KdB_pのみに基づいて減速制御の実行を開始すると、ドライバは、ドライバ自身がブレーキ操作を行うときのタイミングよりも早く減速し始めたように感じる。
【0266】
本実施形態では、車頭時間TTC判定部309にて、車間距離D及び相対速度Vrから算出される現在の車頭時間TTCが図24に示す予め設定された車頭時間TTC_onを下回る値であるかどうかを判定する。そして、減速目標算出・判定部308によって、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回る値であると判定され、かつ、車頭時間TTC判定部309によって、現在の車頭時間TTCが予め設定された車頭時間TTC_onを下回る値である(すなわち、図24の斜線領域内である)と判定された場合に減速制御の実行を開始すると判断する。これにより、減速制御の実行の開始タイミングをドライバ自身がブレーキ操作を行うときのタイミングと合わせることができる。
【0267】
また、減速目標算出・判定部308では、減速制御の実行開始タイミングについて、ドライバの傾向を反映するようにしている。すなわち、例えば、先行車両が急ブレーキをする場合、先行車両が高い速度であるほど自車両の危険性が高まる。このように危険性が高い場合、自車両のドライバは、先行車両の速度が高いほどブレーキ操作を早めに行う傾向にある。
【0268】
そこで、減速目標算出・判定部308では、このようなドライバの傾向を反映させるため、次式に示すように、先行車両の速度Vbから決定される1以下の正の値を示す第3のゲインgain3を乗じた減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeを算出する。
【0269】
(数43)
KdB_ssdc_engine=gain3×{log(|nd_engine/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
(数44)
KdB_ssdc_brake=gain3×{log(|nd_brake/(gain1×7.5×D2×Vr)|)+8}×10
この第3のゲインgain3を乗じることで、減速目標KdB_ssdc_engine及び減速目標KdB_ssdc_brakeの示す値は小さくなるから、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine及び減速目標KdB_ssdc_brakeに到達するのが早まることになる。従って、例えば、図23に示すように、先行車両の速度Vb=0[km/h]でgain3=1.00とし、先行車両の速度Vbが高くなるほどgain3の値を小さな値とする(例えば、先行車両の速度Vb=100[km/h]であるときにgain3=0.95)とし、この第3のゲインgain3を乗じて最終的な減速目標KdB_ssdcを算出する。これにより、減速制御の実行タイミングを早めることができ、ドライバの傾向を反映させることが可能となる。
【0270】
また、減速目標算出・判定部308では、図22に示すように、減速制御の実行中に、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine_hysを下回る値であると判定された場合に減速制御の実行を終了させると判断する。これにより、減速制御のハンチングを抑えることができる。また、この減速制御の実行を終了させるのと同時に、自車両を加速する加速制御の実行を開始する。これにより、減速制御を実行する必要のないタイミングで自車両を加速する加速制御を実行することができる。
【0271】
減速度算出部310は、図22に示したように、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine、及び減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回る値であると判定された場合、減速度出力として、車間距離D、相対速度Vr、及び現在の接近離間状態評価指標KdB_pから、自車両と先行車両との目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出する。減速制御では、相対減速度が目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように制御する。この目標相対減速度dVrdt_ssdcは、次のように導かれる。先ず、上記数式37を次式のように変形する。
【0272】
(数45)
10(|KdB_p|/10)=|-2×Vr|/( D3×5×10-8)
(数46)
|-Vr|=(D3×5×10-8/2)×10(|KdB_p|/10)=2.5×D3×10{(|KdB_p|/10)-8}
次式に示すように、上記数式46を時間微分したものを目標相対減速度dVrdt_ssdcとする。
【0273】
(数47)
目標相対減速度dVrdt_ssdc=(dVr/dD)×(dD/dt)=7.5×D2×10{(|KdB_p|/10)-8}×Vr
ここで、数式47に示す目標相対減速度dVrdt_ssdcは、現在の車間距離Dに留めるための相対減速度の目標値を表している。従って、この目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、現在の接近離間状態評価指標KdB_pを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)することが可能となる。
【0274】
なお、減速度算出部310では、目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して1以下の正の値を示す第1のゲインを乗じる。第1のゲインgain1を乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcは次式で表される。
【0275】
(数48)
dVrdt_ssdc=gain1×7.5×D2×10{(|KdB_p|/10)-8}×Vr
上記数式48中の第1のゲインgain1の値を1とすることで、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を行えば現在の接近離間状態評価指標KdB_pを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)することができる。これに対し、第1のゲインgain1の値を1未満の正の値とすることで、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を行えば、現在の車間距離Dよりも短い車間距離にすることが可能となる。
【0276】
ここで、第1のゲインgain1の範囲について考えてみる。停止中の先行車両に速度Vs0(=Vr)で接近中の自車両が一定の減速度GGで減速を開始したとき、先行車両に接触する位置で自車両が停止するまでの走行距離DDは次式で表される。
【0277】
(数49)
DD=Vr2/2×GG
ここで、先行車両に接触する位置で自車両が停止するときの減速度GGと、現在の接近離間状態評価指標KdB_pを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)するための目標相対減速度dVrdt_ssdc(第1のゲインgain1=1)との比を求める。
【0278】
(数50)
GG/dVrdt_ssdc=(Vr2/2×DD)/(gain1×7.5×D2×10{(|KdB_p|/10)-8}×Vr)=Vr/(15×D3×10{(|KdB|/10)-8})
上記数式50中の相対速度Vrに上記数式46を代入すると次式を得る。
【0279】
(数51)
GG/dVrdt_ssdc=(2.5×D3×10{(|KdB_p|/10)-8})/(15×D3×10{(|KdB_p|/10)-8})=2.5/15≒0.167
よって、第1のゲインgain1を0.167とすることで、先行車両に接触する位置で相対速度Vr=0となる目標相対減速度dVrdt_ssdcとすることができ、その目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を行えば車間距離D=0を維持することが可能となる。以上から、第1のゲインgain1は、0.167から1.000までの範囲となる。
【0280】
なお、第1のゲインgain1については、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも大きな値であるかどうかの判定結果に応じて、第1のゲインの値を変更するとよい。例えば、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも長い場合には、安全な車間距離が確保されているため、第1のゲインgain1を0.167に変更する。一方、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも短い場合には、安全な車間距離が確保されていないため、第1のゲインgain1を0.167から1.000のまでの間の任意の値に変更する。これにより、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも大きな値であるかどうかに応じて、目標相対減速度dVrdt_ssdcを変更することができる。
【0281】
また、減速度算出部310では、目標相対減速度dVrdt_ssdcについて、減速時目標相対速度記憶部311の記憶する先行車両と自車両との目標相対速度Vr_daを加味して算出する。目標相対速度Vr_daを加味した目標相対減速度dVrdt_ssdc(第1のゲインgain1=1.000の場合)の算出式は、以下のように表される。
【0282】
(数52)
dVrdt_ssdc=7.5×D2×10{(|KdB_p|/10)-8}×(Vr-Vr_da)
ここで、目標相対速度Vr_da=0とした場合、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、上述したように、現在の接近離間状態評価指標KdB_pを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)することができる。
【0283】
これに対し、目標相対速度Vr_daが負(Vr_da<0)の場合、目標相対減速度dVrdt_ssdcは目標相対速度Vr_da=0とした場合に比べて小さな値となるから、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから目標相対速度Vr_daとなるまで減速することができる。
【0284】
一方、目標相対速度Vr_daが正(>0)の場合、目標相対減速度dVrdt_ssdcは目標相対速度Vr_da=0とした場合に比べて大きな値となるから、その時の目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように減速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから離間状態の目標相対速度Vr_daとなるまで減速することができる。
【0285】
さらに、減速度算出部310では、目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して、先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第2のゲインを乗じる。すなわち、先行車両が急ブレーキをする場合、先行車両が高い速度であるほど自車両の危険性が高まるため、自車両のドライバは、先行車両の速度が高いほど高い減速度を自車両に発生させる傾向にある。そこで、減速度算出部310では、次式に示すように、第1のゲインとともに第2のゲインgain2を乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出する。
【0286】
(数53)
dVrdt_ssdc=gain2×{gain1×7.5×D2×10{(|KdB_p|/10)-8}×(Vr-Vr_da)}
上記数式53において、例えば、図25に示すように、先行車両の速度Vb=50[km/h]未満でgain2=0.5とし、先行車両の速度Vb=50[km/h]以上でgain2=1.0とすることで、ドライバ自身の減速操作によって発生する減速度に目標相対減速度dVrdt_ssdcを合わせることが可能となる。
【0287】
最大加速度記憶部312は、加速制御において自車両に発生させる最大加速度C_maxを記憶する。加速時接近離間状態評価指標設定部313は、加速制御によって自車両が加速する場合の目標とすべき指標を示す加速時接近離間状態評価指標KdB_aa(例えば、-30、−35、−40[dB])を設定する。
【0288】
加速度算出部314は、図22に示したように、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine_hysを下回る値であると判定された場合、加速度出力として、車間距離D、相対速度Vr、及び加速時接近離間状態評価指標KdB_aaから、自車両と先行車両との目標相対加速度dVrdt_aaを算出する。加速制御では、相対加速度が目標相対加速度dVrdt_aaとなるように制御する。なお、目標相対加速度dVrdt_aaが最大加速度C_maxを上回る場合には、この最大加速度C_maxを目標相対加速度dVrdt_aaに置き換えることにする。これにより、加速制御によって過大な加速度を発生させないようにすることができる。
【0289】
加速度算出部314は、上記数式47中の現在の接近離間状態評価指標KdB_pに替えて加速時接近離間状態評価指標KdB_aa(例えば、-30、−35、−40[dB])を設定することで、目標相対加速度dVrdt_aaを次式により算出する。
【0290】
(数54)
dVrdt_aa=7.5×D2×10{(|KdB_aa|/10)-8}×Vr
この目標相対加速度dVrdt_aaは、現在の車間距離Dに留める(先行車両との車間距離Dを維持する)ための相対加速度の目標値を表しているから、この目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように加速制御を実行すれば、先行車両に追従して走行することが可能となる。
【0291】
なお、加速度算出部314は、次式に示すように、加速時目標相対速度記憶部315の記憶する先行車両と自車両との目標相対速度Vr_aa(例えば、-5/3.6[m/s])を加味して算出する。
【0292】
(数55)
dVrdt_aa=7.5×D2×10{(|KdB_aa|/10)-8}×(Vr-Vr_aa)
ここで、目標相対速度Vr_aa=0とした場合、その時の目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を実行することで、現在の車間距離Dを維持しつつ先行車両に追従して走行することが可能となる。
【0293】
これに対し、目標相対速度Vr_aaが負(Vr_aa<0)の場合、目標相対加速度dVrdt_aaは目標相対速度Vr_aa=0とした場合に比べて大きな値となるから、その時の目標相対減速度dVrdt_aaとなるように加速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから接近状態の目標相対速度Vr_aaとなるまで加速することができる。すなわち、例えば、目標相対速度Vr_aaを-5/3.6[m/s]とした場合には、5[km/h]で先行車両に近づくように加速することができる。
【0294】
一方、目標相対速度Vr_aaが正(Vr_aa>0)の場合、目標相対加速度dVrdt_aaは目標相対速度Vr_aa=0とした場合に比べて小さな値となるから、その時の目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を実行することで、現在の相対速度Vrから目標相対速度Vr_aaとなるまで加速することができる。
【0295】
また、加速度算出部314は、上記数式55に示す目標相対加速度dVrdt_aaに対して1以下の正の値を示す第4のゲインを乗じる。第4のゲインgain4を乗じた目標相対加速度dVrdt_aaは次式で表される。
【0296】
(数56)
dVrdt_aa=gain4×{7.5×D2×10{(|KdB_aa|/10)-8}×(Vr-Vr_aa)}
上記数式56中の第4のゲインgain4の値を1とすることで、その時の目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を行えば現在の車間距離Dを維持しつつ先行車両に追従して走行することが可能となる。これに対し、第4のゲインgain4の値を1未満の正の値とすることで目標相対加速度dVrdt_aaは小さな値を示すことから、この目標相対加速度dVrdt_aaとなるように加速制御を行えば、車間距離を大きくしながら自車両を加速することができる。
【0297】
また、第4のゲインgain4については、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であると判定された場合、第4のゲインの値を1に変更することが好ましい。これにより、車間距離Dが現在の車間距離Dよりも短くならないようにすることができるからである。
【0298】
なお、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であると判定された場合、加速度算出部314では、目標相対加速度dVrdt_aaをゼロ(dVrdt_aa=0)と算出して、加速制御の実行を禁止する。これにより、自車両が加速して先行車両により接近しないようにすることができる。
【0299】
ドライバ操作加減速度算出部316は、ドライバによるアクセルペダルやブレーキペダルの操作状態等に基づいて、ドライバの要求加減速度であるドライバ操作加減速度ADdrを算出する。調停加減速度決定部317は、目標相対減速度dVrdt_ssdc又は目標相対加速度dVrdt_aaとドライバ操作加減速度ADdrとから調停加減速度RequestGを決定する。ドライバ操作加減速度算出部316では、以下の条件に基づいて調停加減速度RequestGを決定する。
【0300】
条件1:ドライバのアクセルペダル操作によってスロットルバルブの開度要求が所定開度以上の場合には、ドライバ操作加減速度ADdrを調停加減速度RequestGとする。
【0301】
条件2:相対速度Vrの符号が負(-)の場合、すなわち、先行車両と自車両とが近づく場合に以下の条件式を満たす場合、先行車両は自車両に対向して走行する対向車両であるとしてドライバ操作加減速度ADdrを調停加減速度RequestGとする。なお、次式中のxは5[km/h]程度とする。
【0302】
(数57)
−Vr<-(Vs0+x)
条件3:ドライバによって所定角度又は所定角速度以上のステアリング操作が所定時間内に行われた場合には、ドライバ操作加減速度ADdrを調停加減速度RequestGとする。
【0303】
条件4:ドライバによるブレーキペダル操作が行われた場合には、ドライバ操作加減速度ADdrを調停加減速度RequestGとする。
【0304】
条件5:安全車間距離算出・判定部306によって、車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であると判定された場合、目標相対減速度dVrdt_ssdc又は目標相対加速度dVrdt_aaを調停加減速度RequestGとする。
【0305】
条件6:条件1から4の何れにも該当しない場合には、目標相対減速度dVrdt_ssdc又は目標相対加速度dVrdt_aaを調停加減速度RequestGとする。
【0306】
なお、上記条件5は、ドライバによる自車両を加速させるための運転操作の介入を禁止する(オーバーライドを禁止)するものである。これにより、車間距離が十分に確保されていない場合に、ドライバの運転操作によって自車両が加速し先行車両により接近しないようにすることができる。
【0307】
そして、調停加減速度決定部317は、最終的に決定された調停加減速度RequestGから自車両に発生すべき目標制動力又は目標駆動力を算出し、車内LANへ送信する。
【0308】
次に、本運転支援システムの動作について、図26に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、同図に示すステップS310では、車間距離D、自車両の車速Vs0、相対速度Vr等の車両状態量を取得する。S320では、現在の接近離間状態評価指標KdB_pを算出する。S330では、安全車間距離D_safetyを算出するとともに、現在の車間距離Dが安全車間距離D_safetyよりも小さな値であるかどうかを判定する。
【0309】
S340では、減速目標KdB_ssdc_engine、減速目標KdB_ssdc_brake、減速目標KdB_ssdc_engine_hys、及び減速目標KdB_ssdc_brake_hysを算出するとともに、現在の接近離間状態評価指標KdB_pが減速目標KdB_ssdc_engine、又は減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る値であるかどうか、減速目標KdB_ssdc_engine_hys、及び減速目標KdB_ssdc_brake_hysを下回る値であるかどうか判定する。
【0310】
S350では、S340の判定結果に応じて、目標相対減速度dVrdt_ssdc又は目標相対加速度dVrdt_aaを算出する。S360では、ドライバ操作加減速度ADdrを算出する。S370では、目標相対減速度dVrdt_ssdc又は目標相対加速度dVrdt_aaとドライバ操作加減速度ADdrとから、調停加減速度RequestGを決定する。S380では、S370にて決定した調停加減速度RequestGから自車両に発生すべき目標制動力又は目標駆動力を算出し、出力する。
【0311】
図27(a)、(b)に、本運転支援システムの数値シミュレーションにおけるケース毎の設定条件を示し、各ケースの数値シミュレーション結果を図28〜図33に示す。図28は、自車両の速度Vs0が時速100km、先行車両の速度Vbが時速50km、車間距離Dの初期値が100m、第1のgain1を0.167、減速制御中の先行車両と自車両との目標相対速度Vr_daを時速0kmと条件を設定(ケース1)した場合の減速制御の数値シミュレーション結果を示すものである。
【0312】
図29は、ケース1の条件設定に対して第1のgain1を1.000に変更した場合(ケース2)の減速制御の数値シミュレーション結果を示すものである。また、図30は、ケース2の条件設定に対して第1のgain1を1.000に変更した場合(ケース3)の減速制御の数値シミュレーション結果を示すものである。
【0313】
図31は、自車両の速度Vs0が時速50km、先行車両の速度Vbが時速50km、車間距離Dの初期値が5m、第1のgain1を1.000、加速制御によって自車両が加速する場合の目標とすべき指標を示す加速時接近離間状態評価指標KdB_aaを20[dB]、加速制御中の先行車両と自車両との目標相対速度Vr_aaを時速0kmとし、先行車両が0.1G(約1[m/s2])の減速度で減速を開始したとする条件を設定(ケース4)した場合の加減速制御の数値シミュレーション結果を示すものである。
【0314】
図32は、ケース4の条件設定に対して加速時接近離間状態評価指標KdB_aaを80[dB]に変更した場合(ケース5)の加減速制御の数値シミュレーション結果を示すものである。また、図33は、ケース5の条件設定に対して目標相対速度Vr_aaを時速-10kmに変更した場合(ケース6)の加減速制御の数値シミュレーション結果を示すものである。
【0315】
まず、図28と図29の数値シミュレーション結果を比較すると、図28のケース1では、第1のgain1が0.167に設定されているため、車間距離D=0で相対速度Vr=0となっている。これに対し、図29のケース2では、第1のgain1が1.000に設定されているため、車間距離Dは約30mを維持するようになる。
【0316】
また、図29と図30の数値シミュレーション結果を比較すると、図29のケース2では、目標相対速度Vr_daが時速0kmに設定されているため、車間距離Dが約30mとなるときに相対速度Vr=0となる。これに対し、図30のケース3では、目標相対速度Vr_daが時速10kmに設定されているため、車間距離Dが約40mとなるときに相対速度Vr=0となり、その後、この相対速度Vrが時速10kmとなるまで車間距離Dが大きくなる。
【0317】
図31と図32の数値シミュレーション結果を比較すると、図31のケース4では、加速時接近離間状態評価指標KdB_aaが20[dB]に設定され、図32のケース5では、加速時接近離間状態評価指標KdB_aaが80[dB]に設定されているため、要求加速度の立ち上がり時間は同じであるものの、その立ち上がりの傾きはケース5が大きく、その結果、自車両の速度Vs0は、ケース4の場合よりもケース5の場合のほうが早くなっている。
【0318】
図32と図33の数値シミュレーション結果を比較すると、図32のケース5では、加速時の目標相対速度Vr_aaが時速0kmに設定されているため、約25秒後に相対速度Vr=0となる。これに対し、図33のケース6では、加速時の目標相対速度Vr_aaが時速-10kmに設定されているため、時間経過に伴って、自車両の速度が先行車両の速度を上回り、相対速度Vrが時速-10kmとなるまで制御が実行される。
【0319】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した第4の実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0320】
(変形例5)
上述したように、自車両のドライバからみた先行車両の面積変化の度合いを示すドライバ状態係数Kは、先行車両と自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として用いることができる。従って、例えば、接近離間状態評価指標KdBに基づいてドライバの運行管理を行うようにしてもよいし、接近離間状態評価指標KdBに基づいて安全運転教育を行うようにしてもよい。
【0321】
(変形例6)
例えば、先行車両が大型車両である場合、自車両のドライバからみた先行車両の面積変化の度合いの感じ方が異なることが考えられるため、先行車両の車種に応じて第3のゲインgain3の値を変更する(例えば、普通乗用車の場合にはgain3=1.0、大型車両の場合にはgain3=0.8等)ようにしてもよい。
【0322】
(変形例7)
本実施形態の運転支援システムは、加減速制御を実行するものであるが、加減速制御の実行タイミングで警報を発生させるようにしてもよい。
【0323】
(変形例8)
例えば、減速制御を実行する際、車間距離Dが10m以内の場合には、第1のゲインgain1を1.000に設定して大きな減速度を発生させることによって、先行車両への衝突による衝撃を緩和するようにしてもよい。
【0324】
(変形例9)
自車両の後方に後続車両が存在する場合、後続車両との車間距離と相対速度が取得可能であれば、先行車両を自車両とみなし、また、後続車両を自車両とみなして減速制御の実行タイミングを判定し、減速制御の実行タイミングで後続車両に対して追突の危険性を促すようにしてもよい。例えば、自車両のブレーキランプやハザードランプを点灯させることによって、追突の危険性を後続車両に知らせるようにするとよい。
【0325】
(変形例10)
本実施形態では、先行車両の像の大きさ(面積S)の変化度合い(dS/dt)を示すドライバ状態係数K(数式58)に基づいて接近離間状態評価指標KdB(数式59)を定義するとともに、この数式59を変形することで、目標相対加減速度の基本式(数式60)を定義した。
【0326】
(数58)
K=dS/dt∝d(1/ D2)/dt=(-2/ D3)×(dD/dt)=(-2/ D3)×Vr
(数59)
KdB=10×log{-|K|/(5×10-8)}
(数60)
dVr/dt=(dVr/dD)×(dD/dt)=7.5×10{(|KdB|/10)-8}×D2×Vr
これに対し、本変形例では、自車両のドライバが先行車両の面積の変化度合いに対する認識度が低下する50m程度以上の場合、先行車両の幅や高さ等の長さの変化度合いや先行車両の点としての変化度合いに基づき以下のように目標相対加減速度の基本式を定義して、加減速制御に利用するようにしてもよい。
【0327】
例えば、先行車両の幅や高さ等の長さの変化度合いKを次式のように定義する。
【0328】
(数61)
K=(-1/ D2)×Vr
すると、先行車両の幅や高さ等の長さの変化度合いに基づく目標相対加減速度の基本式は次式のように示される。
【0329】
(数62)
KdB=10×log{-|K|/(2.5×10-6)}
(数63)
dVr/dt=5×10{(|KdB|/10)-8}×D×Vr
また、例えば、先行車両の点としての変化度合いKを次式のように定義する。
【0330】
(数64)
K=(-1/D)×Vr
すると、先行車両の点としての変化度合いKに基づく目標相対加減速度の基本式は次式のように示される。
【0331】
(数65)
KdB=10×log{-|K|/(2.5×10-4)}
(数66)
dVr/dt=2.5×10{(|KdB|/10)-4}×Vr
また、先行車両に接触する位置で相対速度Vr=0となる目標相対減速度dVrdt_ssdcとすることができる第1のゲインgain1は、先行車両の面積の変化度合いの場合にgain1=0.167であったが、先行車両の幅や高さ等の長さの変化度合いの場合にはgain1=0.25、先行車両の点としての変化度合いの場合にはgain1=0.5となる。
【0332】
また、先行車両の面積の変化度合いの場合における、現在の接近離間状態評価指標KdB_pを維持(言い換えれば、略現在の車間距離Dを維持)するための第1のゲインgain1はgain1=1.000であったが、先行車両の幅や高さ等の長さの変化度合いの場合にはgain1=0.167×4=0.668、先行車両の点としての変化度合いの場合にはgain1=0.167×2=0.334となる。
【0333】
そして、この第1のゲインgain1を適切に変更することで、先行車両の幅や高さ等の長さの変化度合いや先行車両の点としての変化度合いに基づいて加減速制御を実行するとよい。
【符号の説明】
【0334】
10 VSC_ECU
20 舵角センサ
30 Gセンサ
40 ヨーレートセンサ
50 ENG_ECU
60 警報装置
70 レーザレーダ
80 操作SW
100 SDC_ECU
100a、b SSDC_ECU
110 ドライバ状態係数K演算部
110a ドライバ状態係数K[dB]演算部
110b 接近離間状態評価指標KdB演算部
120 TTC警報判定部
130 K警報判定部
140 D警報判定部
150 総合警報判定部
160 SDC制御部
160a、b SSDC制御部
170 TTC制御部
180 CC制御部
190a 目標制動力算出部
190b 目標駆動力算出部
301 相対速度取得部
302 車間距離情報取得部
303 接近離間状態評価指標算出部
304 自車両速度取得部
305 路面μ取得部
306 安全車間距離算出・判定部
307 常用減速度記憶部
308 減速目標算出・判定部
309 車頭時間TTC判定部
310 減速度算出部
311 減速時目標相対速度記憶部
312 最大加速度記憶部
313 加速時接近離間状態評価指標設定部
314 加速度算出部
315 加速時目標相対速度記憶部
316 ドライバ操作加減速度算出部
317 調停加減速度決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向に先行車両が存在する場合の前記自車両のドライバの運転状態を検出するドライバ状態検出装置であって、
前記自車両のドライバからみた前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、前記先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になるドライバ状態係数を算出するドライバ状態係数算出手段と、
前記ドライバ状態係数算出手段の算出したドライバ状態係数に基づいて、前記ドライバの運転状態を検出するドライバ状態検出手段と、
前記自車両に搭載され、前記先行車両の画像を撮影する撮像手段とを備え、
前記ドライバ状態係数算出手段は、前記撮像手段の撮影した先行車両の画像の面積の単位時間当たりの変化度合いから、前記ドライバ状態係数を算出することを特徴とするドライバ状態検出装置。
【請求項2】
請求項1の何れか1項に記載のドライバ状態検出装置と、
前記ドライバ状態係数の絶対値の大きさに応じた前記ドライバの運転状態を報知する運転状態報知手段と、を備えることを特徴とする車載警報装置。
【請求項3】
請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
前記ドライバ状態係数の絶対値の大きさに基づいて、前記ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備えることを特徴とする車載警報装置。
【請求項4】
請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
前記ドライバ状態係数の値の大きさに基づいて、前記ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備え、
前記ドライバ状態係数は、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、前記ドライバ状態係数は正の値を示し、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、前記ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
前記警報発生手段は、前記ドライバ状態係数が正の値を示す場合に警報を発生することを特徴とする車載警報装置。
【請求項5】
前記自車両に制動力を印加する制動力印加手段を備え、
前記警報発生手段は、前記制動力印加手段により制動力を印加して前記自車両を減速することにより警報を発生することを特徴とする請求項3又は4記載の車載警報装置。
【請求項6】
請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
前記ドライバ状態係数の値の大きさに基づいて、前記ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備え、
前記ドライバ状態係数は、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、前記ドライバ状態係数は正の値を示し、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、前記ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
前記警報発生手段は、前記ドライバ状態係数が負の値を示す場合に警報を発生することを特徴とする車載警報装置。
【請求項7】
前記自車両に駆動力を印加する駆動力印加手段を備え、
前記警報発生手段は、前記駆動力印加手段により駆動力を印加して前記自車両を加速することにより警報を発生することを特徴とする請求項6記載の車載警報装置。
【請求項8】
前記自車両が前記先行車両に衝突するまでの余裕時間を示す衝突余裕時間を算出する衝突余裕時間算出手段を備え、
前記警報発生手段は、前記衝突余裕時間に応じて警報を発生することを特徴とする請求項3〜7の何れか1項に記載の車載警報装置。
【請求項9】
前記自車両の車速に応じた前記先行車両と前記自車両との目標車間距離を算出する目標車間距離算出手段を備え、
前記警報発生手段は、前記先行車両と前記自車両との車間距離が前記目標車間距離を下回った場合に警報を発生することを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の車載警報装置。
【請求項10】
前記警報発生手段は、
前記ドライバ状態係数の示す値と、前記ドライバ状態係数の閾値とを比較して警報を発生すべきか否かを判定する警報判定手段を備え、
前記警報判定手段が警報を発生すべきと判定した場合に警報を発生することを特徴とする請求項3〜9の何れか1項に記載の車載警報装置。
【請求項11】
前記ドライバ状態係数の閾値を任意な値に変更する閾値変更手段を備えることを特徴とする請求項10記載の車載警報装置。
【請求項12】
前記警報判定手段は、所定の周期で繰り返し判定するものであって、
前記警報発生手段は、前記警報判定手段が警報を発生すべきと判定した回数が一定回数以上となった場合、及び、前記警報を発生すべきと判定した時間が一定時間以上継続した場合の少なくとも一方の場合に警報を発生することを特徴とする請求項10又は11記載の車載警報装置。
【請求項13】
前記警報発生手段は、警報の発生を開始した後、前記警報判定手段が警報を発生すべきでない判定した時間が一定時間以上継続した場合に警報の発生を中止することを特徴とする請求項12記載の車載警報装置。
【請求項14】
前記先行車両と前記自車両との相対速度は、
前記先行車両と前記自車両とが近づくときに負の値を示し、
前記先行車両と前記自車両とが遠ざかるときに正の値を示すものであって、
前記警報発生手段は、前記先行車両と前記自車両との相対速度が負から正に変化した場合に警報の発生を中止することを特徴とする請求項13記載の車載警報装置。
【請求項15】
請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
前記自車両前方に存在する物体を検出する物体検出手段と、
前記物体検出手段が物体を検出した場合、当該物体が前記自車両前方の所定の警報対象範囲内に存在する場合に前記ドライバに対して警報を発生する警報発生手段と、を備え、
前記警報発生手段は、前記ドライバ状態係数の絶対値の大きさに応じて、前記警報対象範囲の広さを変更する警報対象範囲変更手段を備えることを特徴とする車載警報装置。
【請求項16】
前記警報対象範囲変更手段は、
前記自車両前方における左右方向の広さを変更するものであって、
前記ドライバ状態係数の絶対値が大きい程、前記広さが広くなるように変更し、
前記ドライバ状態係数の絶対値が小さい程、前記広さが狭くなるように変更することを特徴とする請求項15記載の車載警報装置。
【請求項17】
前記物体検出手段は、軽車両、歩行者、道路標識、及び信号機の少なくとも1つの物体を検出することを特徴とする請求項15又は16記載の車載警報装置。
【請求項18】
請求項1に記載のドライバ状態検出装置と、
前記先行車両に前記自車両が追従して走行する際、前記ドライバ状態係数の値の大きさに基づいて、前記自車両を加速する加速制御、及び前記自車両を減速する減速制御の少なくとも一方の制御を実行する加減速制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項19】
前記ドライバ状態係数は、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、前記ドライバ状態係数は正の値を示し、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、前記ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
前記加減速制御手段は、
前記ドライバ状態係数が正の値を示す場合に前記減速制御を実行し、
前記ドライバ状態係数が負の値を示す場合に前記加速制御を実行することを特徴とする請求項18記載の運転支援システム。
【請求項20】
前記加減速制御手段は、前記加速制御、又は前記減速制御の実行中に前記自車両のドライバによるアクセル操作、及びブレーキ操作の少なくとも一方の操作が介入する場合であっても、前記加速制御、又は前記減速制御を継続して実行することを特徴とする請求項18又は19記載の運転支援システム。
【請求項21】
前記加減速制御手段は、前記減速制御の実行中に前記自車両を加速するアクセル操作が行われた場合、前記アクセル操作の開始から一定時間経過後に前記減速制御の実行を中止することを特徴とする請求項20記載の運転支援システム。
【請求項22】
前記加減速制御手段は、
前記減速制御として、主ブレーキによる減速制御、及びエンジンブレーキによる減速制御の少なくとも一方を実行するものであって、
前記減速制御の実行中に前記自車両を加速するアクセル操作が行われた場合、前記アクセル操作の開始から一定時間経過後に前記エンジンブレーキによる減速制御のみ実行することを特徴とする請求項20記載の運転支援システム。
【請求項23】
前記加減速制御手段における前記減速制御は、
前記ドライバ状態係数に対して複数の異なる閾値を設定するとともに、この各閾値に対して前記自車両の発生すべき複数の異なる減速度を設定し、
前記ドライバ状態係数の値に対応した減速度で前記自車両を減速させることを特徴とする請求項18〜22の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項24】
前記加減速制御手段は、前記閾値が大きいほど、前記自車両に発生すべき減速度を高く設定することを特徴とする請求項23記載の運転支援システム。
【請求項25】
前記自車両の走行車線に隣接する隣接車線の対向車両を検出する対向車両検出手段を備え、
前記加減速制御手段は、前記対向車両検出手段が対向車両を検出した場合、前記自車両を加速する加速制御、及び前記自車両を減速する減速制御の実行を中止することを特徴とする請求項18〜24の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項26】
前記加減速制御手段は、前記自車両のステアリングが前記ドライバによって操作された場合、前記減速制御の実行を中止することを特徴とする請求項18〜25の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項27】
前記自車両の車速を一定の車速に制御する車速制御手段を備えることを特徴とする請求項18〜26の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項28】
請求項2〜17の何れか1項に記載の車載警報装置を備えることを特徴とする請求項18〜27の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項29】
自車両のドライバからみた、当該自車両の進行方向に存在する先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、前記先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になるドライバ状態係数を算出するドライバ状態係数算出手段と、
前記ドライバ状態係数算出手段の算出した現在のドライバ状態係数と、目標とすべき目標ドライバ状態係数とに基づいて、前記自車両と前記先行車両との目標相対加減速度を算出する目標相対加減速度算出手段と、
前記目標相対加減速度算出手段の算出した目標相対加減速度に基づいて、前記自車両を加速する加速制御、及び前記自車両を減速する減速制御の少なくとも一方の制御を実行する自車両加減速制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項30】
前記先行車両と前記自車両との車間距離Dを検出する車間距離検出手段と、
前記先行車両と前記自車両との相対速度Vrを取得する相対速度取得手段と、を備え、
前記目標相対加減速度算出手段は、前記現在のドライバ状態係数を対数で示したK_p[dB]と前記目標ドライバ状態係数を対数で示したK_t[dB]とに基づいて決定されるドライバ状態変数をK_f[dB]とすると、次式により前記目標相対加減速度である(dVr/dt)_tを算出することを特徴とする請求項29記載の運転支援システム。
(dVr/dt)_t=7.5×10{(K_f[dB]/10)-8}×D2×Vr
【請求項31】
前記目標ドライバ状態係数K_t[dB]を任意な値に設定する目標ドライバ状態係数設定手段を備えることを特徴とする請求項30記載の運転支援システム。
【請求項32】
前記相対速度Vrは、
前記先行車両と前記自車両とが近づくときに負の値を示し、
前記先行車両と前記自車両とが遠ざかるときに正の値を示すことを特徴とする請求項30又は31記載の運転支援システム。
【請求項33】
前記自車両加減速度制御手段は、前記相対速度Vrが負の値を示すとき、当該相対速度Vrの絶対値が前記自車両の速度よりも大きい値を示す場合に、前記減速制御の実行を禁止することを特徴とする請求項32記載の運転支援システム。
【請求項34】
前記自車両加減速度制御手段は、前記相対速度Vrが正の値を示すとき、当該相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合に前記加速制御の実行を停止することを特徴とする請求項32記載の運転支援システム。
【請求項35】
前記自車両加減速度制御手段は、前記相対速度Vrが負の値を示すとき、当該相対速度Vrの絶対値が所定値よりも小さい場合、前記ドライバが前記先行車両との接触を回避するための一定の値以上の加速操作をおこなった場合、及び前記ドライバが前記先行車両との接触を回避するためのステアリング操作を開始した場合の何れか1つに該当する場合に、前記減速制御の実行を停止することを特徴とする請求項32記載の運転支援システム。
【請求項36】
前記自車両加減速度制御手段は、前記減速制御の実行を停止する際、当該減速制御が停止する旨、及び前記ドライバによる減速操作の開始を促す旨の少なくとも一方を報知する手段を備えることを特徴とする請求項35記載の運転支援システム。
【請求項37】
前記自車両加減速制御手段は、前記減速制御の実行を停止した後に、前記ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行する場合、前記自車両のブレーキアクチュエータにブレーキ予圧を印加するブレーキ予圧印加制御を実行することを特徴とする請求項35又は36記載の運転支援システム。
【請求項38】
前記ドライバ状態係数は、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化がない場合の値を基準として正又は負の値で示され、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが大きくなる場合、前記ドライバ状態係数は正の値を示し、
前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いが小さくなる場合、前記ドライバ状態係数は負の値を示すものであって、
前記自車両の衝突時の被害を軽減する衝突被害軽減装置を備え、
前記自車両加減速制御手段は、前記減速制御の実行を停止した後に前記ドライバ状態係数が負の値を示すとき、前記ドライバの運転操作が減速操作を開始するための運転操作に移行しない場合、前記現在のドライバ状態係数K_p[dB]が所定値以上の正の値を示すときに、前記衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行することを特徴とする請求項35又は36記載の運転支援システム。
【請求項39】
前記自車両加減速制御手段は、前記衝突被害軽減装置を作動するための制御を実行する際、前記ドライバに対し警報を発生する衝突警報手段を備えることを特徴とする請求項38記載の運転支援システム。
【請求項40】
前記自車両加減速度制御手段は、前記自車両に発生すべき減速度、又は/及び加速度に制限を加えるものであって、前記ドライバによる運転操作に応じて異なる制限を加えることを特徴とする請求項32記載の運転支援システム。
【請求項41】
前記自車両加減速度制御手段は、前記相対速度Vrが負の値を示すときに、
前記ドライバが加速操作、若しくは現在の前記自車両の速度を保持するための定速操作を行っている場合、前記自車両に発生すべき減速度を前記減速制御において発生可能な最大減速度aよりも低い減速度に制限し、
前記ドライバが減速操作を実行している場合、前記自車両に発生すべき減速度を前記ドライバの減速操作によって発生する前記自車両の減速度b、若しくは、前記ドライバのブレーキペダルを踏む力を補助するブレーキアシストシステムによって発生する減速度cよりも低い減速度に制限することを特徴とする請求項40記載の運転支援システム。
【請求項42】
前記自車両加減速度制御手段は、前記相対速度Vrが正の値を示すときに、
前記ドライバが加速操作、若しくは現在の前記自車両の速度を保持するための定速操作を行っている場合、前記自車両に発生すべき減速度を前記減速制御において発生可能な最大減速度aよりも低い減速度に制限するとともに、前記自車両に発生すべき加速度を前記加速制御において発生可能な最大加速度gよりも低い加速度に制限し、
前記ドライバが減速操作を実行している場合、前記自車両に発生すべき減速度を前記ドライバの減速操作によって発生する前記自車両の減速度b、若しくは、前記ドライバのブレーキペダルを踏む力を補助するブレーキアシストシステムによって発生する減速度cよりも低い減速度に制限することを特徴とする請求項40記載の運転支援システム。
【請求項43】
前記減速度cは、前記先行車両の減速度に応じて設定されることを特徴とする請求項41又は42記載の運転支援システム。
【請求項44】
自車両の進行方向に存在する先行車両と前記自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として、前記自車両のドライバからみた前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、前記先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標KdBを算出する接近離間状態評価指標算出手段と、
前記先行車両と前記自車両との車間距離、前記先行車両と前記自車両との相対速度、及び前記接近離間状態評価指標KdBから、前記自車両と前記先行車両との目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出する目標相対減速度算出手段と、
前記相対減速度が前記目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように、前記自車両を減速する減速制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項45】
前記目標相対減速度算出手段は、前記目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して1以下の正の値を示す第1のゲインを乗じ、
前記制御手段は、前記第1のゲインを乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを用いて、前記減速制御を実行することを特徴とする請求項44記載の運転支援システム。
【請求項46】
前記車間距離が前記自車両の速度に応じた値を示す安全車間距離よりも大きな値であるかどうかを判定する安全車間距離判定手段と、
前記安全車間距離判定手段の判定結果に応じて、前記第1のゲインの値を変更する第1のゲイン変更手段と、を備えることを特徴とする請求項45記載の運転支援システム。
【請求項47】
前記目標相対減速度算出手段は、前記先行車両と前記自車両との目標相対速度Vr_daを加味して前記目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出することを特徴とする請求項44〜46の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項48】
前記目標相対減速度算出手段は、前記目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して、前記先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第2のゲインを乗じ、
前記制御手段は、前記第2のゲインを乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを用いて、前記減速制御を実行することを特徴とする請求項44〜47の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項49】
前記自車両の常用減速度、前記車間距離、及び前記相対速度から減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する減速目標算出手段と、
前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する減速目標判定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を開始することを特徴とする請求項44〜48の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項50】
前記減速目標算出手段は、前記減速目標KdB_ssdcに対して前記先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第3のゲインを乗じることで、最終的な減速目標KdB_ssdcを算出することを特徴とする請求項49記載の運転支援システム。
【請求項51】
前記減速目標算出手段は、前記減速目標KdB_ssdcに基づいて、前記減速制御の終了タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_hysを算出し、
前記減速目標判定手段は、前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_hysを下回る値であるかどうかを判定し、
前記制御手段は、前記減速制御の実行中に、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_hysを下回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を終了することを特徴とする請求項49又は50記載の運転支援システム。
【請求項52】
前記減速目標算出手段は、エンジンブレーキ相当の減速度を示すエンジンブレーキ常用減速度、及び前記エンジンブレーキ常用減速度よりも大きな減速度であって、ブレーキアクチュエータによって発生する主ブレーキ相当の減速度を示す主ブレーキ常用減速度から、エンジンブレーキによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_engineと、ブレーキアクチュエータによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_brakeとを算出し、
前記減速目標判定手段は、前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_engine、及び前記減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る値であるかどうかを判定し、
前記制御手段は、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_engine、及び前記減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を開始することを特徴とする請求項49〜51の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項53】
前記車間距離及び前記相対速度から算出される現在の車頭時間が予め設定された車頭時間を下回る値であるかどうかを判定する車頭時間判定手段を備え、
前記制御手段は、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定され、かつ、前記車頭時間判定手段によって前記現在の車頭時間が前記予め設定された車頭時間を下回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を開始することを特徴とする請求項49〜52の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項54】
自車両の進行方向に存在する先行車両と前記自車両との接近状態及び離間状態の評価指標を表し、前記自車両のドライバからみた前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、前記先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標であって、前記自車両が加速する場合の目標とすべき加速時接近離間状態評価指標KdB_aaを設定する加速時接近離間状態評価指標設定手段と、
前記先行車両と前記自車両との車間距離、前記先行車両と前記自車両との相対速度、及び前記加速時接近離間状態評価指標KdB_aaから、前記自車両と前記先行車両との目標相対加速度dVrdt_aaを算出する目標相対加速度算出手段と、
前記相対加速度が前記目標相対加速度dVrdt_aaとなるように、前記自車両を加速する加速制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項55】
前記目標相対加速度算出手段は、前記先行車両と前記自車両との目標相対速度Vr_aaを加味して前記目標相対加速度dVrdt_aaを算出することを特徴とする請求項54記載の運転支援システム。
【請求項56】
前記目標相対加速度算出手段は、前記目標相対加速度dVrdt_aaに対して1以下の正の値を示す第4のゲインを乗じ、
前記制御手段は、前記第4のゲインを乗じた目標相対加速度dVrdt_aaを用いて、前記加速制御を実行することを特徴とする請求項54又は55記載の運転支援システム。
【請求項57】
前記車間距離が前記自車両の速度に応じた値を示す安全車間距離よりも小さな値であるかどうかを判定する安全車間距離判定手段を備えることを特徴とする請求項54〜56の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項58】
前記安全車間距離判定手段によって前記車間距離が前記安全車間距離よりも小さな値であると判定された場合、前記第4のゲインの値を1に変更する第4のゲイン変更手段を備えることを特徴とする請求項57記載の運転支援システム。
【請求項59】
前記制御手段は、前記安全車間距離判定手段によって前記車間距離が前記安全車間距離よりも小さな値であると判定された場合、前記加速制御の実行を禁止することを特徴とする請求項57又は58記載の運転支援システム。
【請求項60】
前記安全車間距離判定手段によって前記車間距離が前記安全車間距離よりも小さな値であると判定された場合、前記自車両を加速させるための運転操作の介入を禁止するオーバーライド禁止手段を備えることを特徴とする請求項57〜59の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項61】
前記先行車両と前記自車両との接近状態及び離間状態の評価指標を表す接近離間状態評価指標KdBを算出する接近離間状態評価指標算出手段と、
前記自車両の常用減速度、前記車間距離、及び前記相対速度から減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する減速目標算出手段と、
前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する減速目標判定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを下回る値であると判定された場合に、前記加速制御の実行を開始することを特徴とする請求項54〜60の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項62】
自車両の進行方向に存在する先行車両と前記自車両との接近状態及び離間状態の評価指標として、前記自車両のドライバからみた前記先行車両の像の面積の単位時間当たりの変化度合いに基づいて求められ、前記先行車両との距離が短くなるほど増加勾配が急峻になる接近離間状態評価指標KdBを算出する接近離間状態評価指標算出手段と、
前記自車両の常用減速度、前記先行車両と前記自車両との車間距離、及び前記先行車両と前記自車両との相対速度から減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdcを算出する減速目標算出手段と、
前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であるかどうかを判定する減速目標判定手段と、
前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定された場合に前記自車両を減速する減速制御の実行を開始し、前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを下回る値であると判定された場合に前記自車両を加速する加速制御の実行を開始する制御手段と、を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項63】
前記車間距離が前記自車両の速度に応じた値を示す安全車間距離よりも小さな値であるかどうかを判定する安全車間距離判定手段を備えることを特徴とする請求項62記載の運転支援システム。
【請求項64】
前記車間距離、前記相対速度、及び前記接近離間状態評価指標KdBから、前記自車両と前記先行車両との目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出する目標相対減速度算出手段を備え、
前記制御手段は、前記相対減速度が前記目標相対減速度dVrdt_ssdcとなるように、前記減速制御を実行することを特徴とする請求項62又は63記載の運転支援システム。
【請求項65】
前記目標相対減速度算出手段は、前記目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して1以下の正の値を示す第1のゲインを乗じ、
前記制御手段は、前記第1のゲインを乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを用いて、前記減速制御を実行することを特徴とする請求項64記載の運転支援システム。
【請求項66】
前記車間距離が前記自車両の速度に応じた値を示す安全車間距離よりも大きな値であるかどうかを判定する安全車間距離判定手段と、
前記安全車間距離判定手段の判定結果に応じて、前記第1のゲインの値を変更する第1のゲイン変更手段と、を備えることを特徴とする請求項65記載の運転支援システム。
【請求項67】
前記目標相対減速度算出手段は、前記先行車両と前記自車両との目標相対速度Vr_daを加味して前記目標相対減速度dVrdt_ssdcを算出することを特徴とする請求項64〜66の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項68】
前記目標相対減速度算出手段は、前記目標相対減速度dVrdt_ssdcに対して、前記先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第2のゲインを乗じ、
前記制御手段は、前記第2のゲインを乗じた目標相対減速度dVrdt_ssdcを用いて、前記減速制御を実行することを特徴とする請求項64〜67の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項69】
前記減速目標算出手段は、前記減速目標KdB_ssdcに対して前記先行車両の速度から決定される1以下の正の値を示す第3のゲインを乗じることで、最終的な減速目標KdB_ssdcを算出することを特徴とする請求項62〜68の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項70】
前記減速目標算出手段は、前記減速目標KdB_ssdcに基づいて、前記減速制御の終了タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_hysを算出し、
前記減速目標判定手段は、前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_hysを下回る値であるかどうかを判定し、
前記制御手段は、前記減速制御の実行中に、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_hysを下回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を終了することを特徴とする請求項62〜69の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項71】
前記減速目標算出手段は、エンジンブレーキ相当の減速度を示すエンジンブレーキ常用減速度、及び前記エンジンブレーキ常用減速度よりも大きな減速度であって、ブレーキアクチュエータによって発生する主ブレーキ相当の減速度を示す主ブレーキ常用減速度から、エンジンブレーキによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_engineと、ブレーキアクチュエータによる減速制御の実行タイミングの指標を表す減速目標KdB_ssdc_brakeとを算出し、
前記減速目標判定手段は、前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_engine、及び前記減速目標KdB_ssdc_brakeを上回る値であるかどうかを判定し、
前記制御手段は、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdc_engine、及び前記減速目標KdB_ssdc_brakeの少なくとも一方を上回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を開始することを特徴とする請求項62〜70の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項72】
前記車間距離及び前記相対速度から算出される現在の車頭時間が予め設定された車頭時間を下回る値であるかどうかを判定する車頭時間判定手段を備え、
前記制御手段は、前記減速目標判定手段によって前記接近離間状態評価指標KdBが前記減速目標KdB_ssdcを上回る値であると判定され、かつ、前記車頭時間判定手段によって前記現在の車頭時間が前記予め設定された車頭時間を下回る値であると判定された場合に、前記減速制御の実行を開始することを特徴とする請求項62〜71の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項73】
前記自車両が加速する場合の目標とすべき加速時接近離間状態評価指標KdB_aaを設定する加速時接近離間状態評価指標設定手段と、
前記車間距離、前記相対速度、及び前記加速時接近離間状態評価指標KdB_aaから、前記自車両と前記先行車両との目標相対加速度dVrdt_aaを算出する目標相対加速度算出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記相対加速度が前記目標相対加速度dVrdt_aaとなるように、前記加速制御を実行することを特徴とする請求項62〜72の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項74】
前記目標相対加速度算出手段は、前記先行車両と前記自車両との目標相対速度Vr_aaを加味して前記目標相対加速度dVrdt_aaを算出することを特徴とする請求項73記載の運転支援システム。
【請求項75】
前記目標相対加速度算出手段は、前記目標相対加速度dVrdt_aaに対して1以下の正の値を示す第4のゲインを乗じ、
前記制御手段は、前記第4のゲインを乗じた目標相対加速度dVrdt_aaを用いて、前記加速制御を実行することを特徴とする請求項73又は74記載の運転支援システム。
【請求項76】
前記安全車間距離判定手段によって前記車間距離が前記安全車間距離よりも小さな値であると判定された場合、前記第4のゲインの値を1に変更する第4のゲイン変更手段を備えることを特徴とする請求項75記載の運転支援システム。
【請求項77】
前記制御手段は、前記安全車間距離判定手段によって前記車間距離が前記安全車間距離よりも小さな値であると判定された場合、前記加速制御の実行を禁止することを特徴とする請求項63〜76の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項78】
前記安全車間距離判定手段によって前記車間距離が前記安全車間距離よりも小さな値であると判定された場合、前記自車両を加速させるための運転操作の介入を禁止するオーバーライド禁止手段を備えることを特徴とする請求項63〜77の何れか1項に記載の運転支援システム。
【請求項79】
前記接近離間状態評価指標算出手段は、前記車間距離をDとし、前記相対速度をVrとすると、次式により接近離間状態評価指標KdBを算出することを特徴とする請求項47〜56及び61〜78の何れか1項に記載の運転支援システム。
KdB=10×log(|-2×Vr|/D3×5×10-8)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−143578(P2010−143578A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4153(P2010−4153)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2006−5330(P2006−5330)の分割
【原出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】