説明

不揮発性半導体記憶装置およびその制御方法

【課題】高速で高信頼動作できるようにした不揮発性半導体記憶装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】不揮発性半導体記憶装置は、第1のメモリセル、および、前記第1のメモリセルに対し第1方向に隣接して配置された第2のメモリセルを備えたセル群と、書込回路とを備え、第1および第2のメモリセルの一方をデータ記憶保持に、他方を一方の閾値調整に用い、書込回路が、セル群の前記第1のメモリセルにデータを書込むときには、セル群の第2のメモリセルに電圧を印加し、セル群の第1のメモリセルの閾値電圧を所望の第1閾値電圧より高く調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気的に書換可能なメモリセルを備えた不揮発性半導体記憶装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリ装置などの不揮発性半導体記憶装置は、例えばデジタルカメラ、移動体端末、携帯オーディオ機器、或いは、ハードディスクに代わる大容量データ記憶媒体(SSD)として用いたパーソナルコンピュータ携帯機器などの用途で広く採用されている。
例えばフラッシュメモリ装置を構成するメモリセルは、フローティングゲート電極(FG)およびコントロールゲート電極(CG)を積層したフローティングゲート型の積層ゲート電極構造を採用したものが知られている。
近年、半導体素子の微細化、高集積化の進展に伴い、例えば通常のリソグラフィ技術の限界を超える設計ルールにて形成されるようになってきており、隣接するメモリセルにデータを書き込むことによって起こる閾値の変化近接効果(所謂近接効果)が大きいことが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123256号公報
【特許文献2】特開2005−243709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリセルは、その構成要素中の不純物導入揺らぎによる閾値電圧のばらつき、寸法または形状のバラつき、プログラムノイズなどに起因して、書込閾値電圧分布の拡大化により動作速度/動作の信頼性への影響が大きくなる。
【0005】
そこで、高速で高信頼動作できるようにした不揮発性半導体記憶装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、第1のメモリセル、および、前記第1のメモリセルに対し第1方向に隣接して配置された第2のメモリセルを備えたセル群を備えている。また、書込回路を備え、第1および第2のメモリセルの一方をデータ記憶保持に、他方を一方の閾値調整に用いている。書込回路が、前記セル群の前記第1のメモリセルにデータを書込むときには、セル群の第2のメモリセルに電圧を印加し、セル群の前記第1のメモリセルの閾値電圧を所望の第1閾値電圧より高く調整することを特徴とする。
【0007】
また、実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の制御方法は、第1のメモリセル、および、前記第1のメモリセルに対し第1方向に隣接して配置された第2のメモリセルを備えたセル群とを備えた不揮発性半導体装置についての制御方法を対象としている。
この場合、セル群の第1のメモリセルにデータを書込むときには、セル群の第1のメモリセルに第1の電圧を印加し、セル群の前記第2のメモリセルに第2の電圧を印加し、セル群の第1のメモリセルの閾値電圧が所望の閾値電圧より高いかどうかを判断し、判断の結果、所望の閾値電圧より高くない場合には、所望の閾値電圧になるまで徐々に第2の電圧を高くしながらセル群の第2のメモリセルに第2の電圧を繰り返し印加することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態について電気的構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態についてメモリセルアレイの一部の回路構成図
【図3】第1実施形態についてメモリセルアレイの一部を模式的に示す平面図
【図4】第1実施形態についてNANDセルユニットを列方向に沿って模式的に示す縦断面構造図
【図5】第1実施形態について行方向に沿って模式的に示す縦断面構造図
【図6】第1実施形態について閾値電圧分布を示す説明図
【図7】第1実施形態について消去処理を示すフローチャート
【図8】第1実施形態について示す消去状態における閾値電圧分布図
【図9】第1実施形態について書込処理を示すフローチャート
【図10】第1実施形態についてセルの粗書込状態を示す閾値電圧分布図
【図11】第1実施形態について示すステップアップ書込処理の説明図
【図12】第1実施形態について示す各ノード間容量の説明図
【図13】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その1)
【図14】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その2)
【図15】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その3)
【図16】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その4)
【図17】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その5)
【図18】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その6)
【図19】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その7)
【図20】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その8)
【図21】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その9)
【図22】第1実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その10)
【図23】第2実施形態について示す図3相当図
【図24】第3実施形態について示す図3相当図
【図25】第3実施形態について示す図5相当図
【図26】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その11)
【図27】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その12)
【図28】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その13)
【図29】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その14)
【図30】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その15)
【図31】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その16)
【図32】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その17)
【図33】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その18)
【図34】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その19)
【図35】第3実施形態について示す一製造段階の製造工程の説明図(その20)
【図36】第4実施形態について示す図3相当図
【図37】第4実施形態について示す閾値電圧分布の遷移図
【図38】変形例について示す図5相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
NAND型のフラッシュメモリ装置に適用した第1実施形態について図1ないし図22を参照しながら説明する。尚、以下に参照する図面内の記載において、同一または類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。また、説明の都合上、実施形態の説明における上下左右や高低、溝の深浅などの方向は、後述する半導体基板の裏面側を基準とした相対的な位置関係である。
【0010】
図1は、NAND型のフラッシュメモリ装置の電気的構成を概略的なブロック図により示している。本実施の形態はMLC(Multi Level Cell)にも適用可能ではあるが、以下の実施形態では理解が容易なSLC(Single Level Cell)のNAND型フラッシュメモリに適用して説明する。
【0011】
図1に示すように、フラッシュメモリ装置1は、メモリセルMC(第1のメモリセル)およびダミーセルTC(第2のメモリセル)を含むセル群GMを多数マトリックス状に具備したメモリセルアレイArを具備している。メモリセルMCに記憶されたデータは消去/書込/読出可能に構成されている。ダミーセルTCは通常のメモリセルMCと同様の構造を備えるが、メモリセルMCの閾値調整に用いるセルでありデータは記憶に用いない。このメモリセルアレイAr内には、複数のビット線BL、複数のワード線WL、および、共通ソース線CSLが構成されている。
【0012】
メモリセルアレイArの周辺には、センスアンプ回路SAが構成されており、センスアンプ回路SAは、メモリセルアレイAr内のメモリセルMCに対する書込/読出時に用いられる。
【0013】
その他、フラッシュメモリ装置1内には、制御回路CC、ロウ駆動回路RD、カラム駆動回路CDが構成されている。ロウ駆動回路RDは、ロウデコーダを備え、メモリセルアレイArに設けられたワード線WL、選択ゲート線を選択するために設けられている。カラム駆動回路CDは、カラムデコーダを備え、メモリセルアレイArに設けられたビット線BLを選択するために設けられている。
【0014】
制御回路CCは、外部からの制御信号に応じてロウ駆動回路RD、カラム駆動回路CDに制御信号を送信し、メモリセルアレイArを構成する各セル群GMのメモリセルMCの書込/読出/消去を行う書込回路、読出回路、消去回路としての機能を備える。
【0015】
制御回路CCは、メモリセルMCとダミーセルTCの割当フラグ記憶領域をメモリセルアレイAr内に割当て、通常時にはメモリセルMCとダミーセルTCの割当を不揮発的に記憶保持させる。これにより、メモリセルアレイAr内のメモリセルMCおよびダミーセルTCの各分担が割当てられる。なお、メモリセルアレイArは書換回数カウンタを備える。この書換回数カウンタは、書込/消去の繰り返し回数を記憶保持するカウンタである。制御回路CCは、書込/消去の繰り返し回数をカウントし、書込回数カウンタを更新する。
【0016】
図2は、メモリセルアレイ内の一部の電気的構成を概略的に示している。
図2に示すように、メモリセル領域内のメモリセルアレイArは、複数のブロックBを備える。図2には、j番目のブロックBjと、(j+1)番目のブロックBj+1の一部を図示している。
【0017】
これらのブロックBjは列方向(Y方向)に併設されている。各ブロックBjは、複数のNANDセルユニットUCを行方向(X方向)に備える。1つのブロックBj内には、0〜nのNANDセルユニットUC(UC0〜UCn)を備える。
【0018】
NANDセルユニットUCは、ドレイン側の選択ゲートトランジスタSTDとソース側の選択ゲートトランジスタSTSとを備える。選択ゲートトランジスタSTDにはそのドレイン/ソースの一方にビット線BLが接続されており、その他方にダミーセルDMが直列接続されている。また、選択ゲートトランジスタSTSにはそのドレイン/ソースの一方にソース線CSLが接続されており、他方にダミーセルDMが直列接続されている。
【0019】
偶数番(0、2、4、…)目のNANDセルユニットUC0、UC2、UC4、…は、選択ゲートトランジスタSTD−STS間の2つのダミーセルDM−DM間において、ダミーセルTCおよびメモリセルMCの各ドレイン/ソース領域を共用して列方向に交互に直列接続した例えば1〜64の合計64個のセルを備える。
【0020】
奇数番(1、3、5、…)目のNANDセルユニットUC1、UC3、UC5、…は、選択ゲートトランジスタSTD−STS間の2つのダミーセルDM−DM間において、メモリセルMCおよびダミーセルTCの各ドレイン/ソース領域を共用して列方向に交互に直列接続した例えば1〜64の合計64個のセルを備える。
【0021】
ダミーセルDMは、書込/消去時などの処理時に選択ゲートトランジスタSTD、STS近傍でGIDLにより発生する電荷が書き込まれても良いようにダミーとして用いるセルである。このダミーセルDMはメモリセルMC、ダミーセルTCとほぼ同様の構造となっているが、このダミーセルDMの記憶データは無効なデータとなっている。
【0022】
複数のビット線BLはそれぞれ列方向(Y方向)に延伸しており、列方向に併設したNANDセルユニットUCに対応してビット線BLが1本構成されている。ソース線CSLは2つのブロックB間に位置して行方向に延伸しており、当該2つのブロックBが共用している。
【0023】
ワード線WL0は、行方向に併設された各セルユニットUCのドレイン側のダミーセルDMのコントロールゲート電極CG(図4参照)を共通接続してダミーワード線として機能し、ワード線WL65は、行方向に併設された各セルユニットUCのソース側のダミーセルDMのコントロールゲート電極CGを共通接続してダミーワード線として機能する。これらのワード線WL0、WL65は、書込時においてセルユニットUCの端部に発生する強電界による電界を緩和することで誤書込を防止する。
【0024】
ワード線WL1〜WL64は、それぞれ、行方向に併設された各セルユニットUCのメモリセルMCおよびダミーセルTCを交互に連結している。
すなわち、例えば、奇数番のワード線WL(1、3、5、…、63)は、偶数番のセルユニットUCのメモリセルMCのコントロールゲート電極CG(図4参照)を電気的に接続すると共に、奇数番のセルユニットUCのダミーセルTCのコントロールゲート電極CG(図4参照)を電気的に接続する。
【0025】
偶数番のワード線WL(2、4、…、64)は、奇数番のセルユニットUCのメモリセルMCのコントロールゲート電極CGを電気的に接続すると共に、偶数番のセルユニットUCのダミーセルTCのコントロールゲート電極CGを電気的に接続する。行方向に併設された複数のセルユニットUCのメモリセルMCおよびダミーセルTCが1ページを構成する。通常、1ページ分のセルMCおよびTCは、例えば1つのブロックB内に合計4224個構成され、このうち、メモリセルMCは2048個、ダミーセルTCが2048個、その他の128個のセルをリダンダンシ領域またはその他の領域として適用できる。
【0026】
前述したセル群GMは、メモリセルMCおよびダミーセルTCが隣接するセルユニットUCに渡って同一のワード線WLにより接続されるセル群であり、これらはワード線WL方向(X方向)に沿って一対構成される。
【0027】
選択ゲート線SGLDは、行方向に併設されたセルユニットUCの選択ゲートトランジスタSTDのゲート電極SGD(図4参照)を連結して共通接続している。また、選択ゲート線SGLSは、行方向に併設されたセルユニットUCの選択ゲートトランジスタSTSのゲート電極SGS(図4参照)を連結して共通接続している。
【0028】
図3は、メモリセルアレイの一部の平面図を模式的に示している。この図3に示すように、複数のアクティブエリアAAが半導体基板2(図4参照)の表層に位置してY方向に延伸して形成されている。これら複数のアクティブエリアAAの幅はそれぞれ同一の所定幅に形成されている。アクティブエリアAAは2本毎に第1幅W1だけ離間しており、2本(一対)のアクティブエリアAA間の間隔は第2幅W2(<W1)に形成されている。
【0029】
また、複数のワード線WLは、それぞれ、複数のアクティブエリアAAに交差するようにX方向に延伸して形成されている。また、ダミーワード線WL0、WL65、選択ゲート線SGLD、SGLSがX方向に延伸して形成される。なお、図3には図示していないが、アクティブエリアAAの上方(掲載面の垂直方向)に位置してビット線BLが形成される(図4参照)。
【0030】
メモリセルMCは、複数のアクティブエリアAAと複数のワード線WLとの交差領域に位置しており、ダミーセルTCもまた、複数のアクティブエリアAAと複数のワード線WLとの交差領域に位置している。一本のアクティブエリアAAにはメモリセルMCおよびダミーセルTCがY方向に渡って交互に複数構成されている。見方を変えると、メモリセルMCは一対のアクティブエリアAAにジグザグ(千鳥状)に配設されており、ダミーセルTCはメモリセルMCの配設位置を補うように一対のアクティブエリアAAにジグザグに配設されている。
【0031】
図4は、NANDセルユニットのY方向に沿う断面構造を模式的に示している。なお、フラッシュメモリ装置1の表面および裏面など本実施形態の特徴に直接関わらない部分については図示を省略している。
【0032】
この図4に示すように、半導体基板(例えばシリコン基板)2の表層にはnウェル2aおよびpウェル2bが順に形成される。pウェル2b上には、ゲート絶縁膜3を介して選択ゲートトランジスタSTDの選択ゲート電極SGDが形成される。この選択ゲート電極SGDの形成領域から平面的に離間して、選択ゲートトランジスタSTSの選択ゲート電極SGSがpウェル領域2b上にゲート絶縁膜3を介して形成される。
【0033】
選択ゲート電極SGDの脇の半導体基板2b上にはゲート絶縁膜3を介してダミーセルDMのダミーゲート電極DGが形成される。選択ゲート電極SGSの脇の半導体基板2b上にはゲート絶縁膜3を介してダミーセルDMのダミーゲート電極DGが形成される。これらのダミーゲート電極DG−DG間には、メモリセルMCのゲート電極MG、および、ダミーセルTCのダミーゲート電極TGが交互に形成される。
【0034】
ゲート電極MGは、フローティングゲート電極FGとコントロールゲート電極CGとの間にゲート間絶縁膜4を挟んで積層されている。また、ダミーゲート電極DGはゲート電極MGと同様の構造をなしている。また、選択ゲート電極SGD、SGSは、ゲート電極MGの構造をベースとして当該ゲート電極MGを構成するゲート間絶縁膜4の中央に貫通孔を通じてゲート電極FGおよびCGが電気的に導通接続している。
【0035】
各ゲート電極SGD−DG間、DG−MG間、TG−MG間、TG−DG間、DG−SGS間の半導体基板2の表層には、ソース/ドレイン領域2cが形成される。このソース/ドレイン領域2cは一般的にイオン注入することで形成できるが、各メモリセルMCおよびダミーセルTCが直列接続されているときにはイオン注入を省略しても良い。
【0036】
選択ゲート電極SGSの片脇の半導体基板2の表層には、ソース線コンタクトCS用のソース線コンタクト領域2dが形成される。このソース線コンタクト領域2d上にはソース線コンタクトCSを介してソース線CSLが電気的に接続される。選択ゲート電極SGDの片脇の半導体基板2の表層にはビット線コンタクトCB用のビット線コンタクト領域2eが形成される。このビット線コンタクト領域2e上にはビット線コンタクトCBを介してビット線BLが構成されている。図4の断面においては、アクティブエリアAAはビット線コンタクト領域2eからソース線コンタクト領域2dにかけてpウェル2bの表層部分に渡って形成される。
【0037】
図5は、図3のX方向のV−V線に沿う断面構造を模式的に示している。なお、前述のビット線BLや、フラッシュメモリ装置1の表面および裏面など本実施形態の特徴に直接関わらない部分については図示を省略している。
【0038】
図5に示すように、半導体基板2の表層には、X方向に離間して複数の素子分離溝(トレンチ)5が形成される。これらの素子分離溝5は、その深さがX方向に半導体基板2の表面からの第1深さD1、第2深さD2(<D1)と交互に繰り返し形成される。また、第1深さD1の素子分離溝5の幅は、X方向に第1幅W1に形成される。第2深さD2の素子分離溝5の幅は、X方向に第2幅W2(<W1)に形成される。
【0039】
これらの複数の素子分離溝5内には素子分離絶縁膜6が形成され、当該素子分離絶縁膜6は、例えばシリコン酸化膜を用いてSTI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離領域として構成される。以下、第1深さD1の素子分離溝5に埋め込まれた素子分離絶縁膜6を素子分離絶縁膜6a、第2深さD2の素子分離溝5に埋め込まれた素子分離絶縁膜6を素子分離絶縁膜6bとして説明する。
【0040】
これらの素子分離絶縁膜6a、6bは、その上面が半導体基板2の上面から上方に突出形成される。素子分離絶縁膜6bの上面高さH2は、素子分離絶縁膜6aの上面高さH1よりも高く形成される。隣接する素子分離絶縁膜6aおよび6b間には、半導体基板2の表面にゲート絶縁膜3が形成され素子分離絶縁膜6aおよび6bの側面の一部に挟まれるように形成される。
【0041】
このゲート絶縁膜3の上面上にはフローティングゲート電極FGが形成される。このフローティングゲート電極FGには、例えば不純物ドープ多結晶シリコンを用い、その上面が隣接する素子分離絶縁膜6a、6bのそれぞれの上面高さH1、H2の何れの高さよりも高く形成される。なお、フローティングゲート電極FGの上面は素子分離絶縁膜6a、6bの上面に面一に形成されても良い。
【0042】
なお、図3に示すように、第2幅W2は、X方向に隣接した一および他のセル群GMのメモリセルMCおよびダミーセルTCのX方向間隔となる。
ゲート間絶縁膜4は、フローティングゲート電極FGおよび素子分離絶縁膜6a、6bの上面上に沿って形成される。このゲート間絶縁膜4には、例えばONO(Oxide-Nitride-Oxide)膜、NONON(Nitride-Oxide-Nitride-Oxide-Nitride)膜などを用いる。
【0043】
ゲート間絶縁膜4上にはワード線WLが形成される。このワード線WLには、例えば多結晶シリコンとその上部を金属でシリサイド化したシリサイド層を用い、複数のセルユニットUCのメモリセルMCおよびダミーセルTCのコントロールゲート電極CGを連結する。
【0044】
このように、メモリセルMCはそれぞれフローティングゲート電極FGを具備し、フローティングゲート電極FGの蓄積電荷と、対になるダミーセルTCの蓄積電荷により決まるメモリセルMCの閾値に応じた2値データを記憶する。データは、ページごとに順次書込/読出可能に構成されており、ブロックB毎に一括消去可能に構成されている。
【0045】
以下、本実施形態における2値記憶方式のNAND型フラッシュメモリ装置1の書込動作を主に説明する。2値NAND型フラッシュメモリ装置1は、1つのメモリセルMCの閾値電圧Vtが2通りの電圧分布の何れかの分布内に調整されることにより、1つのメモリセルMCが2値データ(”1”、”0”)を記憶する。メモリセルMCは、その閾値電圧Vtがフローティングゲート電極FGの蓄積電荷量と、隣接するダミーセルTCの蓄積電荷量に応じて設定される。
【0046】
図6は、メモリセルの閾値電圧分布を示している。この図6において、E分布、A分布は、それぞれ、2値データ(”1”、”0”)に対応した閾値電圧分布を示している。E分布は、ブロック一括消去後の比較的広い第1分布幅(上限電圧値Veh)の閾値電圧分布であり、メモリセルMCの閾値電圧VtがこのE分布内にあるときにはデータ(”1”)を示している。
【0047】
また、A分布は、メモリセルMCの書込処理後の比較的狭い第2分布幅(下限電圧値Val、上限電圧値Vah)の閾値電圧分布であり、メモリセルMCの閾値電圧VtがこのA分布内であるときにはデータ(”0”)を示している。
【0048】
これらのE分布の上限電圧値VehはA分布の下限電圧値Valよりも低く設定されており、これらの分布E、Aはこの順に高くなるように互いに異なる電圧分布に設定されている。ベリファイ電圧Vvfyが下限電圧値Valよりもわずかに低い電圧値に設定されている。このベリファイ電圧Vvfyは、データの書込を検証するために設けられる電圧である。
【0049】
消去処理、書込処理、読出処理時のセル印加電圧およびその動作について概略的に説明する。
<消去動作>
フラッシュメモリ装置1は、1つのブロックB毎に一括消去することができる。消去動作時には、制御回路CCはコントロールゲート電極CGに接地電位(0V)を印加すると共にPウェル2bに高電圧を印加する。すると、選択ブロックのフローティングゲート電極FGから半導体基板2のPウェル2bにトンネル電流が流れ、フローティングゲート電極FG中の電子が抜ける。この結果、消去選択ブロックBのメモリセルMC、ダミーセルTCの閾値電圧Vtは正から負にシフトするが、各メモリセルMC、ダミーセルTCの消去速度等の電気的諸特性がセル毎に異なるため閾値分布(E分布)は比較的広い第1分布幅に広がる。
【0050】
<書込動作>
書込動作時には、制御回路CCは、書込選択セルユニットUCのビット線BLとソース線CSLをそれぞれ所定の低電圧(例えばそれぞれ0V、1.5V)として書込選択ワード線WLに高電圧(例えば20V)を印加する。すると、書込対象メモリセルMCのアクティブエリアAAは低電圧となると共に書込選択ワード線WLは高電圧となるため、トンネル電流がゲート絶縁膜3を通じて流れ、当該書込対象メモリセルMCのフローティングゲート電極FGに電子が注入される。この結果、制御回路CCは、メモリセルMCの閾値電圧Vtを消去状態(E分布)の負状態から正へとシフトさせることで各メモリセルMCの閾値電圧Vtを所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整する。
【0051】
なお、非書込選択セルユニットUCでは、半導体基板2のPウェル2bのアクティブエリアAA(チャネル領域)は、制御回路CCがビット線BLの電圧Vdを正電源電圧Vddに設定することで、コントロールゲート電極CGとの容量カップリングにより所定の中間電圧(低電圧<中間電圧<正電圧)に昇圧される。したがって、書込選択ワード線WLに高電圧が印加されたとしても非選択セルユニットUCの非書込対象メモリセルMCのフローティングゲート電極FGへの電荷の注入は抑制されることになり書込禁止状態となる。
【0052】
<読出動作>
読出動作時には、制御回路CCは、選択セルユニットUCの読出選択ワード線WLには0Vを印加し、選択セルユニットUCの読出非選択ワード線WLには、設計上全セルの書込み時の閾値よりも高い電圧Vread(>0V)を印加する。すると、読出選択のメモリセルMC以外のセルは転送ゲートトランジスタとして動作し、制御回路CCは、例えば読出選択メモリセルMCのオンオフに対応したビット線BLの電圧降下状態を検出することで当該メモリセルMCの閾値電圧Vtに応じたデータを読出す。
【0053】
以下、本実施形態の特徴部分となる消去処理および書込処理の動作について説明する。
本実施形態ではダミーセルTCはメモリセルMCの閾値電圧Vtの調整用に用いる。このためメモリセルMCはデータの書込処理が行われることによってデータを記憶保持するものの、ダミーセルTCはデータを記憶保持しない。
【0054】
図7は、本実施形態において制御回路が主として行う消去処理をフローチャートによって概略的に示している。この図7に示すように、制御回路CCは消去選択ブロックBの消去処理を行う(S1)。この消去処理が行われると、消去選択ブロックBでは、メモリセルMCとダミーセルTCの閾値電圧Vtがほぼ同様の閾値電圧値となる。前述したように、1ブロックB毎に同一印加電圧条件化で消去処理が行われるため、消去処理後には、同一ブロックB内のダミーセルTCはメモリセルMCと同様の閾値電圧分布となる。
【0055】
制御回路CCは、書換回数カウンタをブロックBの消去毎に1加算し(S2)、このカウンタ値を内部に保持する。制御回路CCは、書換回数カウンタが所定回数を超えたか否かを判定し(S3)、所定回数以下であれば(S3:NO)消去処理を終了するが、所定回数を超えたことを条件としてメモリセルMCとダミーセルTCの割当を入れ替える(S4)。
【0056】
制御回路CCは、ステップS4において割当フラグ記憶領域のデータを書換えることで割当を入れ替える。すなわち、データ記憶保持用のメモリセルMCと閾値電圧調整用のダミーセルTCの割当を入れ替える。
【0057】
これは、書込/消去時において、セルMC、TCに高電圧が印加されると、各セルMC、TCのゲート絶縁膜3およびゲート間絶縁膜4のストレスが大きくなるが、セル間で割当が異なると、セルMCおよびTC間で書込処理(後述参照)時の電圧印加状態が異なり、書込/消去が繰り返されるとストレス度の違いが蓄積されることになるためである。そこで、電圧印加状態をメモリセルアレイAr内で均一に保つため割当を入れ替えると良い。すると、メモリセルアレイAr内のセル印加ストレスの均一化を図ることができ、結果的に書換可能回数を多くでき、フラッシュメモリ装置1の寿命を延ばすことができる。
【0058】
図8は、メモリセルMCおよびダミーセルTCの消去処理後の閾値電圧分布を示している。全てのメモリセルMCおよびダミーセルTCの閾値電圧Vtは、所定のE分布(電圧上限値Veh)内に設定される。
【0059】
図9は、本実施形態の選択セルユニットUCのメモリセルMCにデータ(”0”)を書込むときの書込処理をフローチャートにより示している。実際にはWL1からWL64まで順にページ書込処理が行われるが、図9に示すデータ書込処理は所定の1ページの書込処理時における制御回路CCの処理を示している。
【0060】
この図9に示すように、制御回路CCは、セルユニットUCに対し、外部入力されたデータに応じて対象となるメモリセルMCにデータ(”0”)を書込むか否かを判定し(T1)、データ(”0”)を書込むときには(T1:YES)、セルユニットUCの電圧条件を前記の書込選択セルユニットUCの条件とする(書込動作参照)。このとき、書込対象メモリセルMCに隣接する同一セル群GMのダミーセルTCに対しては、セルユニットUCの電圧条件を非選択セルユニットUCの条件とすることで書込禁止状態とする(書込動作参照)。なお、制御回路CCがデータ(”0”)を書き込まないときには(T1:NO)、セルユニットUCの電圧条件を前記の非書込選択セルユニットUCの条件とする(書込動作参照)ことでメモリセルMCを書込対象としない。
【0061】
そして、制御回路CCは、1ページ分のセルユニットUCの電圧条件を設定した後、書込選択セルユニットUC内の書込対象メモリセルMCの書込対象ワード線WLに高電圧(第1の電圧)を印加し、メモリセルMCの閾値電圧Vtを目標閾値電圧(ベリファイ電圧Vvfy,下限電圧値Val)よりも低い閾値電圧Vtとなる様に書込む(T2)。
【0062】
図10は、このときの閾値電圧分布を示している。この図10の上図に示すように、書込対象メモリセルMCの閾値電圧Vtを一旦ベリファイ電圧Vvfy未満のB分布内に書込む。このB分布は、その最大電圧がベリファイ電圧Vvfyよりもわずか(1V程度)に低い分布であり、例えば、E分布とB分布の電圧分布間隔よりもB分布とA分布の電圧分布間隔が狭く設定された分布である。
【0063】
予め書込対象メモリセルMCに粗書込処理してB分布内の閾値電圧Vtにする理由は、次のステップにてダミーセルTCに電圧を印加してフローティングゲート電極FGに電荷を注入するときに、出来る限り少ない電荷注入量で済むようにするためである。
【0064】
なお、この時点では、図10の下図の左側にダミーセルTCの閾値電圧分布を示すように、書込対象メモリセルMCに隣接した同一セル群GMのダミーセルTCは書込禁止状態とされているため、ダミーセルTCの閾値電圧VtはメモリセルMCの消去状態とほぼ同様の閾値電圧分布(E分布)内に設定される。
【0065】
次に、制御回路CCは、書込対象メモリセルMCの書込対象セルユニットUCのビット線BLの電圧Vdを正電源電圧Vddとすることで書込対象メモリセルMCを書込禁止状態とし、同一セル群GMに属する側の当該書込対象セルユニットUCに隣接した隣接セルユニットUCのビット線BLに低電圧(0V)を印加することで閾値電圧調整用のダミーセルTCを電圧印加対象のセルとする。この状態とした後、制御回路CCは、書込対象メモリセルMCに隣接した同一セル群GMのダミーセルTCに対しステップアップ書込方式による書込処理を行う。
【0066】
制御回路CCが、ステップアップ電圧を印加するときには、図9のステップT3に示すように、印加電圧Vpgm(第2の電圧)を初期印加電圧Vpgm#initに設定し(T3)、粗書込処理後の書込対象メモリセルMCに隣接した同一セル群GMのダミーセルTCに電圧Vpgmを印加して書込む(T4)。
【0067】
セル群GMは他のセル群GMとはX方向に距離W1だけ離間しており、同一セル群GMのメモリセルMCと閾値調整用のダミーセルTCとは距離W2(<W1)で隣接しているため、同一セル群GMの隣接するセルMC、TCのフローティングゲート電極FG間の容量値は大きくなる。したがって、閾値電圧VtがB分布内に上昇したメモリセルMCは、ダミーセルTCに書き込まれた蓄積電荷による近接効果の影響を受けやすくなり、さらに閾値電圧Vtが上昇する(図10の上図のB分布→A分布参照)。他方、異なるセル群GM間では、距離W1(>W2)だけ離間しているため実質的な影響は少ない。
【0068】
この後、制御回路CCは、メモリセルMCの閾値電圧Vtがベリファイ電圧Vvfyを超える電圧であるか否かを判定し(T5)ベリファイ電圧Vvfyを超えていなければ(T5:NG)、ダミーセルTCの印加電圧Vpgmをステップ電圧ΔVpgmだけステップアップしステップT4に戻って再書込処理する。そして、制御回路CCは、メモリセルMCの閾値電圧Vtがベリファイ電圧Vvfyを上回った(T5:OK)ことを条件として書込処理を終了する。
【0069】
なお、ベリファイ処理は、ダミーセルTCに行われるわけではなく、メモリセルMCに行われる。これは、メモリセルMCの閾値電圧Vtが構造ばらつきなどに応じて各々異なる場合もあるためである。そのため、実際にデータを記憶するメモリセルMCにベリファイ処理を行うと良い。
【0070】
図11は、ステップアップ電圧印加方式による印加電圧の時間変化を示している。このステップアップ電圧印加方式では、印加電圧Vpgmを1サイクル毎にステップ電圧ΔVpgm(例えば0.3V、0.5V、0.6V)ずつ上昇させて書込む。このステップ電圧印加方式を適用すると、ゲート絶縁膜3に加わる電界が一定となるように処理が行われるため、電圧印加時間に対する閾値電圧のシフト量を原則一定に保つことができる。また、このステップ電圧ΔVpgmを細かく設定することで閾値電圧の調整量を細かくできるため、最終的な所望の閾値電圧分布(A分布)を狭く調整することができる。
【0071】
このようにしてステップアップ電圧印加方式によりダミーセルTCに電圧を印加することで書込対象メモリセルMCの閾値電圧Vthを所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整する。この方式を適用すると、制御回路CCがダミーセルTCにステップ電圧ΔVpgmずつ上昇させた電圧を印加することでダミーセルTCの閾値電圧Vtを原理的にΔVpgmに近い電圧ずつ上昇させることになる。そのダミーセルTCと同一セル群GMのメモリセルMCは、ダミーセルTCの近接効果によってその閾値電圧Vtが調整されることになるため、前述のステップ電圧ΔVpgmよりも低いステップ電圧で閾値電圧Vtが上昇する(図10における各セルMC、TCの閾値電圧Vtの変化度の違い参照)。したがって、結果的に細かい閾値電圧調整が可能になる。逆に、ステップ電圧ΔVpgmを粗くしたとしても閾値電圧調整を容易にできる。
【0072】
なお、多数のメモリセルMCは書込速度などの諸特性がそれぞれ異なるため、複数のメモリセルMC間で同一の書込ステップ電圧印加回数とならない場合もあり、この場合、ベリファイ電圧Vvfyをやや上回る狭い分布内でメモリセルMCの閾値電圧Vtを調整できる。そして全ページ書き込みが終了するまでページ書込処理が繰り返される。
【0073】
図12は、X方向に沿って示す各フローティングゲート電極付近の各ノード間の容量を示している。図12中、TC(FG)はダミーセルTCのフローティングゲート電極FG、MC(FG)はメモリセルMCのフローティングゲート電極FG、Vcgはコントロールゲート電極CG(ワード線WL)に印加する電圧、TC(Vch)はダミーセルTCのチャネル電圧、MC(Vch)はメモリセルMCのチャネル電圧を示している。
【0074】
また、CIPDはゲート間絶縁膜4を挟んで対向するフローティングゲート電極FGおよびコントロールゲート電極CG間の容量値、Coxはゲート絶縁膜3を挟んで対向するフローティングゲート電極FGおよび半導体基板2のチャネル間の容量値を示している。また、Csp1は素子分離絶縁膜6aを挟んで隣接するフローティングゲート電極FG間の容量値、Csp2は素子分離絶縁膜6bを挟んで隣接するフローティングゲート電極FG間の容量値を示している。
【0075】
素子分離絶縁膜6bの第2幅W2は、素子分離絶縁膜6aの第1幅W1よりも狭いため、図12に示すように、容量Csp2は容量Csp1よりも大きくなる。したがって、同一セル群GMのメモリセルMCおよびダミーセルTC間の近接効果の影響はより大きくなるため、あるセル群GMのダミーセルTCに高電圧を印加すると、同一セル群GMのメモリセルMCの閾値電圧Vtは上昇する。
【0076】
このようにして、積極的に近接効果を利用してメモリセルMCの閾値電圧Vtを調整できる。ステップ電圧Vpgmは、書込対象メモリセルMCに印加されるわけではないため、メモリセルMCのゲート絶縁膜3およびゲート間絶縁膜4に与えられる書込ストレスは弱い。したがって、メモリセルMCの電圧印加ストレスに応じた劣化を抑制でき信頼性を向上できる。
【0077】
本実施形態では、制御回路CCは、書込対象メモリセルMCにX方向に隣接した閾値電圧調整用のダミーセルTCに電圧を印加することで近接効果の影響を積極的に利用し、隣接するメモリセルMCの閾値電圧Vtを所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整している。
【0078】
これにより、たとえメモリセルMCが、不純物導入揺らぎによる閾値電圧Vtのバラつき、寸法または形状のバラつき、または、プログラムノイズなどに起因して書込時における閾値電圧分布の拡大化が懸念されたとしても、ダミーセルTCに電圧を印加することでメモリセルMCの閾値電圧Vtを調整できるため、書込時の最終的な閾値電圧分布(A分布)の幅を縮小化できる。このため、ダミーセルTCを閾値調整用に設けることでデータの信頼性を向上できる。また、メモリセルMCの閾値電圧VtのA分布幅を狭くできるため、閾値マージンを広くすることができる。書込の高速化を図ることができる。
【0079】
制御回路CCは、消去状態(E分布内)の閾値電圧Vtとなっている書込対象メモリセルMCに粗書込処理しB分布内に調整した後、所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整している。すると、粗書込分布(B分布)から所望の閾値電圧分布(A分布)に閾値電圧Vtを調整するときの差分電圧を少なくすることができ、メモリセルMCの閾値電圧Vtを所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整するときに、極力狭い所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整しやすくなる。これにより、閾値電圧Vtを微調整できる。
【0080】
また、制御回路CCは、書込対象メモリセルMCに粗書込処理した後、ステップアップ電圧印加方式によりダミーセルTCにステップ的に徐々に上昇させた電圧を印加することで書込対象メモリセルMCの閾値電圧Vtを所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整しているため、閾値電圧Vthを微調整することができ閾値電圧Vtを極力狭い所望の閾値電圧分布(A分布)内に調整することができる。
【0081】
メモリセルアレイArはほぼ同一のセル構造を多数備えるが、これらのセルのうち、メモリセルMCの1個に対応してダミーセルTCを1個設けており、メモリセルアレイAr内ではメモリセルMCおよびダミーセルTCはそれぞれ半数構成されている。このため、特にダミーセルTCを閾値調整用に設けることでデータ書込信頼性を向上できる。
【0082】
また、同一セル群GMのメモリセルMCおよびダミーセルTC間の距離W2は、他のセル群GMまでの距離W1よりも短く構成されているため、隣接した他のセル群GMによる近接効果を実質的に無視することができる。また逆に、一のセル群GMのダミーセルTCに電圧を印加するときに、他のセル群GMに与える近接効果の影響を少なくすることができる。
【0083】
メモリセルMCが所定回数書込/消去処理されると、制御回路CCはメモリセルMCとダミーセルTCの割当を入れ替えているため、メモリセルアレイArの全セルのストレスの均一化を図ることができる。
【0084】
<製造方法>
以下、前述のセル群GMの製造方法について説明する。
図13ないし図22は、セル群GMの製造方法を示している。なお、これらの図13ないし図22では、例えばウェハ裏面などの構成の一部の図示を省略している。
【0085】
半導体基板2の表層部にウェル2a、2b(図4参照)を順に形成し、図13に示すように、半導体基板2上にゲート絶縁膜3、フローティングゲート電極FGの材料膜を順に形成する。半導体基板2には、シリコン等の半導体材料を用いた基板を用いる。
【0086】
また、ゲート絶縁膜3には、例えば熱酸化法、プラズマ酸化法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜したシリコン酸化膜を用いる。また、フローティングゲート電極FGは、例えばCVD法などにより成膜された不純物ドープ型の多結晶シリコン膜を用いる。
【0087】
次に、素子分離溝5を形成するためのマスク材を形成する。マスク材の形成処理には、例えば側壁転写技術を用いたダブルパターニングと称されるリソグラフィ限界幅以下の幅に形成する。例えば、図14に示すように、フローティングゲート電極FGの材料膜上にマスク材7および8を、CVDなどにより順に積層する。マスク材7は、例えば、シリコン窒化膜またはシリコン酸化膜を用いる。マスク材8はマスク材7とはエッチング選択性を有すると共に材質の異なる膜を用いるが、マスク材7がシリコン窒化膜の場合にはマスク材8はシリコン酸化膜またはアモルファスシリコン膜を用いる。またマスク材7がシリコン酸化膜の場合にはマスク材8はシリコン窒化膜またはアモルファスシリコン膜を用いる。
【0088】
次に、図15に示すように、マスク材8は、側壁転写技術の芯材として用いるものであり、このマスク材8をパターニングするためのレジストパターン9を形成する。レジストパターン9はフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。レジストパターン9のピッチはメモリセルMCの倍の幅で形成する。ここでこの幅は幅W1+W2である。
【0089】
次に、図16に示すように、レジストパターン9をマスクとしてマスク材8をパターニングし、レジストパターン9を剥離する。
次に、図17に示すように、マスク材8による芯材をスリミングする。スリミング後のマスク材8の幅は、素子分離溝5の幅に対応した幅であり、例えば、幅W2にエッチング変換差等のプロセス上の補正をした幅である。具体的には、例えばレジストパターン9の幅の25%以下とする。
【0090】
次に、図18に示すように、マスク材8の側面に沿って側壁材10を形成する。この側壁材10は、素子分離溝5を形成するときのマスクとして機能する。側壁材10は、マスク材8のスリミング後、フローティングゲート電極FGとマスク材8とを覆うように成膜し、この後、異方性エッチング処理を行うことでマスク材8の側面に沿って残留させることで形成できる。
【0091】
次に、図19に示すように、側壁材10を残留させてマスク材8を除去処理する。マスク材8の除去処理には例えばウェットエッチング処理を用いる。
なお、メモリセルアレイArを形成する領域以外の領域(周辺領域)、例えばロウデコーダRD、カラムデコーダCD、制御回路CCなどの形成する領域については、マスク材8を除去する必要がない場合がある。この場合、マスク材8の除去前に必要に応じて周辺領域にフォトレジストを用いてマスクを形成すると良い。
【0092】
次に、図20に示すように、側壁材10をマスクとして、マスク材7、フローティングゲート電極FGの材料膜、ゲート絶縁膜3、半導体基板2(pウェル2b)をエッチング処理することで素子分離溝5を形成する。このエッチング処理は、異方性エッチング、例えばRIE(Reactive Ion Etching)を用いる。
【0093】
このとき、素子分離溝5の深さは素子分離溝5の幅に依存し、側壁材10同士の間隔が狭い部分の素子分離溝5の深さは浅く、側壁材10同士の間隔が広い部分の素子分離溝5の深さは深い。これは、エッチング処理のマイクロローディング効果によるものである。
【0094】
次に、側壁材10、マスク材7を除去処理し、図21に示すように、素子分離溝5内に素子分離膜6a、6bを埋込む。これらの素子分離膜6a、6bの埋込には、例えばシリコン酸化膜などの絶縁膜についてCVD法などを用いて埋込んだり、SOG(Spin On Glass)法により塗布膜を塗布しその後シリコン酸化膜に転換する方法がある。絶縁膜の埋込後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により素子分離膜6a、6bの上面を平坦化処理することで図21の構造を得る。
【0095】
次に、図22に示すように、素子分離膜6a、6bの高さがフローティングゲート電極FGの高さよりも低くなるまで素子分離膜6a、6bをエッチング処理する。ここで、素子分離膜6a、6bのそれぞれの高さは、素子分離膜6a、6bのそれぞれの幅に依存し、幅の広い素子分離膜6aの上面高さは低くなり、幅の狭い素子分離膜6bの上面高さは高くなる。
【0096】
また、フローティングゲート電極FGが素子分離膜6a、6bの上面から上方に突出する部分についても、エッチング選択比を適切に選択することによりエッチング処理が進み、フローティングゲート電極FGの上角部が丸く形成されることになる。
【0097】
次に、図5に示すように、ゲート間絶縁膜4、ワード線WLを順に形成する。ゲート間絶縁膜4は、例えばCVD法により成膜したONO(Oxide-Nitride-Oxide)膜、NONON(Nitride-Oxide-Nitride-Oxide-Nitride)膜などのシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜の積層構造を用いる。また、例えば酸化アルミニウムなどより高誘電率の高誘電率絶縁膜をシリコン酸化膜間、または、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜間に挟んだ積層膜を用いても良い。ワード線WLには例えばCVD法により成膜した多結晶シリコン、および、当該多結晶シリコンの上に金属をシリサイド化したシリサイド層の積層構造を用いる。
【0098】
次に、図4に示すように、複数のゲート電極SGD、SGS、MG、TG、DGをY方向に分断する。このゲート電極の分断方法は異方性エッチング(例えばRIE法)により行うことができる。次に、図4には図示していないが、各ゲート電極SGD、SGS、MG、TG、DG間のそれぞれに層間絶縁膜(図示せず)を形成する。この層間絶縁膜は例えばCVD法によりシリコン酸化膜を形成することができる。
【0099】
次に、図4に示すように、層間絶縁膜にコンタクトホールを半導体基板2の上面に至るまで形成し、当該コンタクトホール内にビット線コンタクトCB、ソース線コンタクトCSを形成し、この上にビット線BLを形成する。ビット線コンタクトCB、ソース線コンタクトCSの構造は、例えば窒化チタニウム(TiN)のバリアメタル膜にタングステン(W)などの金属層を組み合わせた導電膜、さらに多結晶シリコンなどによるポリプラグなどを組み合わせて形成される。この後の工程は、本実施形態に特に関わりないため省略する。
【0100】
以上に示した製造方法を適用することで、通常のリソグラフィ技術の限界を超える設計ルールにおいても、本実施形態に係る構造を製造することができ、高速動作すると共に信頼性の高いフラッシュメモリ装置1を提供することができる。
【0101】
(第2実施形態)
図23は、第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、メモリセルMCが一の同一のアクティブエリアAAに渡って複数隣接して構成され、他の同一のアクティブエリアAAに渡ってダミーセルTCが複数隣接して構成されているところにある。制御回路CCは割当フラグ記憶領域にメモリセルMCとダミーセルTCの割当を変更して記憶させることでセルの機能を割当てる。
【0102】
このような実施形態においても、同一セル群GMのメモリセルMCはダミーセルTCと隣接して構成することができるため、前述実施形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
なお、書込処理時には、1番目のページ1(ワード線WL1)から順に書込処理が行われるため、k番目のワード線WLkによるページk(ワード線WLk)の書込処理時には、k−1番目のページ(k−1)の書込処理の前に書き込まれたメモリセルMCのフローティングゲート電極FGの電荷注入量に影響が及ぼされる。
【0103】
このため、当該メモリセルMCの閾値電圧Vtは、X方向に隣接するダミーセルTCから影響を受けると共に、Y方向に隣接するセルからも影響を受けることになり近接効果によって変動する。
【0104】
特に、前述実施形態と本実施形態では、メモリセルMCとダミーセルTCの割当が異なるため、メモリセルMCが隣接セルから受ける影響は2つの実施形態の配置で互いに異なることになる。前述実施形態と本実施形態の何れの配置態様が望ましいかは、セル構造や閾値電圧Vtの設計値などによって変化するため、用途、設計値などに応じて配置態様を変更すると良い。
【0105】
(第3実施形態)
図24ないし図35は、第3実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、1つのセル群GMが1つのメモリセルMCと当該メモリセルMCの両脇に位置して2つのダミーセルTCを備えた構成に適用したところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0106】
図24は、図3に代わる平面図を示しており、図25は、図5に代わる縦断面構造(図24のXXV−XXV線に沿う縦断面構造)を示している。前述実施形態の図5では、2本のアクティブエリアAAがX方向に間隔W2で隣接していたが、本実施形態では、図24に示すように、3本のアクティブエリアAAがX方向に間隔W2で互いに隣接してY方向に沿っている。図25に示す断面では、これらの3本のアクティブエリアAA上にゲート絶縁膜3を介してフローティングゲート電極FGがそれぞれ形成され、当該フローティングゲート電極FG上にゲート間絶縁膜4を介してワード線WLが形成される。
【0107】
セル群GMは、中央に位置するメモリセルMCと当該メモリセルMCの両側に位置するダミーセルTCを備える。メモリセルMCのフローティングゲート電極FGの高さはダミーセルTCのフローティングゲート電極FGの高さよりも高く形成される。このセル群GMは、隣接した他のセル群GMとの間隔が間隔W1に形成されている。
制御回路CCが中央のメモリセルMCに粗書込処理した後、その両脇に位置する閾値調整用のダミーセルTCに電圧を印加することでメモリセルMCの閾値電圧Vtを調整する。すると、書込対象メモリセルMCの両脇から電圧を印加することができ、前述実施形態に比較して閾値調整用のダミーセルTCの閾値電圧を前述実施形態よりも上昇させる必要がなくなり、ダミーセルTCの印加ストレス軽減を図ることができる。
【0108】
<製造方法について>
以下、本実施形態に係る製造方法について説明する。この製造方法の説明では、前述実施形態で説明した製造方法と異なる部分について説明する。マスク材の形成処理には側壁転写技術を適用したトリプルパターニングとなるリソグラフィ限界幅以下の幅に形成している。
【0109】
図26に示すように、通常のリソグラフィ技術を用いてレジストパターン(図示せず)を形成し、当該レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理してマスク材8を形成する工程までは、前述の第1実施形態の製造方法と同様である。
【0110】
この後、図27に示すように、マスク材8についてスリミング技術を用いてスリミングする。スリミング後のマスク材8の幅は、メモリセルMCのゲート電極MGの幅に対応した幅であり、ゲート電極MGの幅にエッチング変換差等のプロセス上の補正をした幅である。
【0111】
次に、図28に示すように、マスク材8の側面に沿って側壁材10を形成する。この方法は前述実施形態の側壁材10の製造方法とほぼ同様である。
次に、図29に示すように、側壁材10を残留させてマスク材8を除去処理する。この方法も前述実施形態のマスク材の除去方法とほぼ同様である。
【0112】
次に、図30に示すように、側壁材10をマスクとして、マスク材7をエッチング処理する。このエッチング処理は、異方性エッチング、例えばRIE法を用いる。このとき残留したマスク材7は芯材として形成されるが、このマスク材7は、同一セル群GMのメモリセルMCおよびダミーセルTC間の素子分離膜6bに対応して構成されるものであり、このマスク材7の幅は幅W2に対応した幅となっている。
【0113】
次に、図31に示すように、隣り合う一対のマスク材7の間、一対のマスク材7の側面に沿ってマスク材11を形成する。このマスク材11は、その材料がフローティングゲート電極FGの材質膜、マスク材7の材料とは異なり、互いにエッチング選択性を有する材料膜で形成される。このマスク材11は一対のマスク材7を覆うように形成された後、異方性エッチング処理により一対のマスク材7の側壁に沿って残留することで形成される。なお、この工程後には、一対のマスク材7の間にはマスク材11は残留したままとなる。
【0114】
次に、図32に示すように、残留したマスク材11の間のマスク材7を除去処理する。このマスク材7の除去処理には例えばウェットエッチング処理を用いる。
次に、図33に示すように、マスク材11をマスクとして、フローティングゲート電極FGの材料膜、ゲート絶縁膜3、半導体基板2(pウェル2b)をエッチング処理することで素子分離溝5を形成する。このエッチング処理は、異方性エッチング、例えばRIE法を用いる。
【0115】
このとき、前述実施形態と同様に、素子分離溝5の深さは素子分離溝5の幅に依存するため、マスク材11同士の間隔が狭い部分の素子分離溝5の深さは浅く、マスク材11同士の間隔が広い部分の素子分離溝5の深さは深い。
【0116】
次に、マスク材11を除去処理し、図34に示すように、素子分離溝5内に素子分離膜6a、6bを埋込む。この製造方法は前述実施形態とほぼ同様である。
次に、図35に示すように、素子分離膜6a、6bの高さがフローティングゲート電極FGの高さよりも低くなるまでエッチング処理する。ここで、前述実施形態と同一の理由により、素子分離膜6bはその幅が狭いため高くなり、素子分離膜6aはその幅が広いため上面高さが低くなる。
【0117】
また、フローティングゲート電極FGが素子分離膜6a、6bの上面から上方に突出する部分についてもエッチング処理が進み、フローティングゲート電極FGの上角部が丸く形成される。その後、ゲート間絶縁膜4、ワード線WLを順に積層し、層間絶縁膜、コンタクトプラグCB、CS、ビット線BL、ソース線CSLなどを形成するが、これらの製造方法、材質などは、前述実施形態と同様であるため説明を省略する。この後の工程は、本実施形態に特に関わりないため説明を省略する。
【0118】
以上のような製造方法を適用することで、通常のリソグラフィ技術の限界を超える設計ルールにおいても、本実施形態に係る構造を製造することができ、高速動作すると共に信頼性の高いフラッシュメモリ装置1を提供することができる。
【0119】
(第4実施形態)
図36および図37は、第4実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、閾値調整用のダミーセルTCをメモリセルMCの両脇に構成したときに、別々に閾値調整用のセルとして用いるところにある。前述実施形態と同一または類似の部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0120】
図36は、メモリセルMC、ダミーセルTCの割当を示している。この図36には、メモリセルMCの一方の脇に位置するダミーセルTCをダミーセルTC1、メモリセルMCの他方の脇に位置するダミーセルTCをダミーセルTC2として示しており、本実施形態では、これらのダミーセルTC1、TC2は順に閾値調整用の電圧印加対象セルとして動作する。ダミーセルTC1は、メモリセルMCの形成アクティブエリアAAの一方の脇に位置する同一のアクティブエリアAAに位置して複数併設されている。ダミーセルTC2は、メモリセルMCのアクティブエリアAAの他方の脇に位置する同一のアクティブエリアAAに位置して複数併設されている。
【0121】
図37は、この場合のメモリセルMC、ダミーセルTCの閾値電圧分布を示している。この図37に示すように、制御回路CCは、メモリセルMCの閾値電圧Vtを消去電圧分布(E分布)内から粗書込電圧分布(B分布)まで一旦書込み(図37(a)参照)、ダミーセルTC1に電圧を印加することで、メモリセルMCの閾値電圧Vtをベリファイ電圧Vvfy1以上の電圧分布(B2分布)内に調整する(図37(b)参照)。この調整処理は、前述実施形態に示したステップアップ電圧印加方式により行われる。
【0122】
次に、制御回路CCは、ダミーセルTC2に電圧を印加することで、メモリセルMCの閾値電圧Vtをベリファイ電圧Vvfy2(>Vvfy1)以上の所望の閾値電圧分布(A分布)に調整する(図37(c)参照)。すると、ダミーセルTC1、TC2に順に電圧を印加することで、当該ダミーセルTC1およびTC2の間に位置するメモリセルMCの閾値電圧Vtを所望の閾値電圧分布(A分布)まで上昇させることができる。この場合、所望の閾値電圧分布(A分布)内の電圧付近までダミーセルTC1、TC2の印加電圧を上げる必要がなくなる。すなわち、ダミーセルTC1、TC2の印加電圧を前述実施形態に比較して低下させることができる。これにより、ダミーセルTC1、TC2双方のストレスを軽減できる。
【0123】
(他の実施形態)
前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形または拡張が可能である。
半導体基板2としてはSOIウェハを適用しても良い。図38は、SOI構造の半導体基板を用いた例を示している。図38に示すように、半導体基板2に代わる半導体基板12として、表面に半導体領域12aが形成されたSOI(Silicon On Insulator)ウェハを用いている。この半導体基板12には、当該半導体領域12aにそれぞれメモリセルMCおよびダミーセルTCの構造が形成される。SOI構造を構成する絶縁膜12bは、その上面高さが複数のアクティブエリアAAに渡ってほぼ同一高さであり、したがって、素子分離絶縁膜6a、6bの深さはほぼ同一深さとなっている。絶縁膜12bおよび素子分離絶縁膜6a、6bが、各メモリセルMCおよびダミーセルTCのアクティブエリアAAを分断している。このような形態においても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0124】
前述実施形態では、メモリセルMCの閾値電圧Vtを目標閾値電圧(ベリファイ電圧Vvfyまたは下限電圧値Val)よりも低い閾値電圧Vtに書込むときには、1回のみで粗書込処理するようにしているが、前述のステップアップ書込方式により複数回に分けて粗書込処理するようにしても良い。
【0125】
制御回路CCが、粗書込処理時に目標閾値電圧(ベリファイ電圧Vvfyまたは下限電圧値Val)よりも低い閾値電圧Vtに書込む実施形態を示したが、ベリファイ電圧Vvfyまたは下限電圧設定値Val以上の閾値電圧Vtに粗書込処理しても良い。
【0126】
セル群GM(セルMCおよびTC)のX方向断面構造は図5または図14に示した例に限られない。隣り合うセルMCおよびTC間の距離が互いに異なっており、図12に示す容量の関係に形成できれば良いためである。
【0127】
前述実施形態では2値の書込処理について特徴を示したが、3値または4値またはそれ以上の書込処理に適用しても良い。メモリセルアレイArの一部に2値、その他に多値のセルを備えた構成に適用しても良い。
【0128】
NAND型フラッシュメモリ装置1に適用したが、その他のEEPROM、例えばAND型等の不揮発性半導体記憶装置に適用できる。
前述実施形態では、メモリセルアレイArの全体がセル群GMにより構成されている実施形態を示したが、メモリセルアレイArの一部にセル群GMを具備した構成に適用しても良い。この場合も同様に、メモリセルアレイArの一部に2値、その他に多値のセルを備えた構成に適用しても良い。
【0129】
前述実施形態では、メモリセルアレイArは単一構成である実施形態を示したが、複数の領域(プレーン)に分割構成されていても良い。
各セルユニットUCのドレイン側の選択ゲートトランジスタSTD側、ソース側の選択ゲートトランジスタSTS側にそれぞれ1個のダミーセルDMを備えた実施形態を示したが、それぞれ複数(例えば2個や3個)のダミーセルDMを備えた形態に適用しても良いし設けなくても良い。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、各実施形態に示した構成、各種条件に限定されることはなく、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
図面中、1はフラッシュメモリ装置(不揮発性半導体記憶装置)、CCは制御回路(書込回路)、GMはセル群、MCはメモリセル、TCはダミーセル、FGはフローティングゲート電極、AAはアクティブエリア、WLはワード線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のメモリセル、および、前記第1のメモリセルに対し第1方向に隣接して配置された第2のメモリセルを備えたセル群と、
書込回路とを備え、
前記第1および第2のメモリセルの一方をデータ記憶保持に、他方を一方の閾値調整に用い、
前記書込回路が、前記セル群の前記第1のメモリセルにデータを書込むときには、
前記セル群の前記第2のメモリセルに電圧を印加し、前記セル群の前記第1のメモリセルの閾値電圧を所望の第1閾値電圧より高く調整することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
第1アクティブエリア上にゲート絶縁膜を介して第1フローティングゲート電極を備えた第1のメモリセル、および、ワード線に沿う第1方向に前記メモリセルと隣接した第2のメモリセルであって前記第1アクティブエリアから第1方向に素子分離領域を挟んで隣接した第2アクティブエリア上にゲート絶縁膜を介して第2フローティングゲート電極を備えた前記第2のメモリセルを備え、前記ワード線が前記第1および第2フローティングゲート電極上に沿ってゲート間絶縁膜を介して形成されたセル群であって、前記第1および第2のメモリセルの一方はデータ記憶保持用、前記第1および第2のメモリセルの他方は一方の閾値電圧調整用に形成されたセル群と、書込回路とを備え、
前記書込回路が前記セル群の前記第1メモリセルにデータを書込むときには、
前記セル群の前記第2のメモリセルの第2フローティングゲート電極を挟んだ前記ワード線および前記第2アクティブエリア間に電圧を印加し、当該第2のメモリセルに隣接した同一セル群の前記第1のメモリセルの閾値電圧を所望の第1閾値電圧より高く調整することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記書込回路が前記セル群の第2のメモリセルに電圧を印加するときには、印加電圧をステップ的に徐々に上昇させながら印加することを特徴とする請求項1または2記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記書込回路は、前記セル群の前記第1のメモリセルの閾値電圧を所望の第1閾値電圧分布未満の第2閾値電圧分布内に粗書込処理した後、前記セル群の前記第2のメモリセルに電圧を印加することにより前記第1のメモリセルの閾値電圧を第1閾値電圧より高く調整することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記書込回路は、前記第2閾値電圧分布内に粗書込処理するときには、印加電圧をステップ的に徐々に上昇させながら印加することを特徴とする請求項4記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記メモリセルが所定回数書込/消去処理が繰り替えされた時、前記第1および第2のメモリセルの他方をデータ記憶保持に、一方を他方の閾値調整に用いる制御回路を備えたことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
第1のメモリセル、および、前記第1のメモリセルに対し第1方向に隣接して配置された第2のメモリセルを備えたセル群とを備えた不揮発性半導体装置の制御方法であって、
前記セル群の前記第1のメモリセルにデータを書込むときには、
前記セル群の前記第1のメモリセルに第1の電圧を印加し、
前記セル群の前記第2のメモリセルに第2の電圧を印加し、
前記セル群の前記第1のメモリセルの閾値電圧が所望の閾値電圧より高いかどうかを判断し、
前記判断の結果、所望の閾値電圧より高くない場合には、所望の閾値電圧になるまで徐々に第2の電圧を高くしながら前記セル群の第2のメモリセルに第2の電圧を繰り返し印加することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−69193(P2012−69193A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212221(P2010−212221)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】