説明

内燃機関の始動制御装置

【課題】 内燃機関の始動制御をより適切に行う技術を提供する。
【解決手段】 内燃機関の排気によって駆動されるタービンを有する過給機と、過給機内に設けられタービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構と、タービンよりも排気下流側の排気通路に配置された排気浄化触媒と、を備えた内燃機関の始動制御装置において、冷間始動時に、可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め排気を内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御(S103、S104)と、可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして排気を排気浄化触媒へ送り出す制御(S105、S106)とを、選択して行うノズル制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過給機のタービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構を備えた内燃機関の始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機のタービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構をノズル通路断面が小さくなるようにして、排気流量が少なくなる低機関回転速度域で過給圧を高めたり、可変ノズル機構をノズル通路断面が大きくなるようにして、排気流量が多くなる高機関回転速度域で過給圧を高めたりする技術が知られている。
【0003】
そして、この可変ノズル機構を利用し、冷間始動時の設定期間の間、可変ノズル機構をノズル通路断面が小さくなるようにして、内燃機関の気筒内を暖める技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−227395号公報
【特許文献2】特開2003−269202号公報
【特許文献3】特開2001−107738号公報
【特許文献4】特許3473522号公報
【特許文献5】特開2002−47943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記内燃機関の気筒内を暖める技術では、冷間始動時における排気浄化触媒を暖めることについては考慮されていなかった。このため、排気浄化触媒を暖めることも考慮して内燃機関全体の暖機をより促進することが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、内燃機関の始動制御をより適切に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては以下の構成を採用する。すなわち、
内燃機関の排気によって駆動されるタービンを有する過給機と、
前記過給機内に設けられ前記タービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構と、
前記タービンよりも排気下流側の排気通路に配置された排気浄化触媒と、
を備えた内燃機関の始動制御装置において、
冷間始動時に、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御と、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御とを、選択して行うノズル制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の始動制御装置である。
【0007】
本発明では、冷間始動時に前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御を行い、前記内燃機関の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって前記内燃機関の気筒内を迅速に暖めると共に、燃焼ガスを再度燃焼して暖めることで排気を高温にする。また、冷間始動時に前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御を行い、排気浄化触媒へ到達する燃焼ガスを増加させ、前記排気浄化触媒へ到達する燃焼ガスの熱によって前記排気浄化触媒を迅速に暖める。そして、これらの
制御を選択して行う。
【0008】
つまり、前記可変ノズル機構に対しては、ノズル通路断面積が小さくなるようにすることとノズル通路断面積が大きくなるようにすることとは背反するものであるが、両制御を冷間始動時に選択して行うことで、内燃機関の気筒内を暖めることと排気浄化触媒を暖めることとの両方が行え、内燃機関全体の暖機を促進し、内燃機関の始動制御をより適切に行うことができる。
【0009】
なお、先行して可変ノズル機構に対してノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御を行い、内燃機関の気筒内を最大限暖める。そして、次に可変ノズル機構に対してノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを排気浄化触媒へ送り出す制御を行い、排気浄化触媒を暖める。このように吸排気の流れに沿って内燃機関全体を上流側から暖めていくことも考えられる。しかし、ノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを排気浄化触媒へ送り出す制御で排気浄化触媒を暖めることにおいては、時間経過に伴って触媒床温の温度上昇が緩やかになっていく。よって、排気浄化触媒を目標温度まで温度上昇させるのに時間がかかってしまう。このため、吸排気の流れに沿って内燃機関全体を上流側から暖めていくものでは、迅速な内燃機関全体の暖機はできない。
【0010】
これに対し、本発明では、排気浄化触媒を暖めるための、可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを排気浄化触媒へ送り出す制御を、排気浄化触媒を完全に暖めるまで連続させない。そして、内燃機関の気筒内を暖めるための、可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の間に分散して行う。したがって、排気浄化触媒を暖める際の触媒床温の温度上昇が著しい領域を何度も繰り返し用いることで、排気浄化触媒を目標温度まで迅速に温度上昇させることができ、内燃機関の気筒内を迅速に暖めることと相俟って、迅速に内燃機関全体の暖機ができる。
【0011】
前記ノズル制御手段は、温度、運転状態若しくは機関負荷状態に応じて、各制御を選択して行うことがよい。
【0012】
これによると、内燃機関の気筒内を暖めることと排気浄化触媒を暖めることとの両方が、温度、運転状態若しくは機関負荷状態に応じて、バランスよく最適に行うことができる。
【0013】
前記ノズル制御手段は、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御を、冷間始動直後に行うことがよい。
【0014】
これによると、冷間始動直後に内燃機関の気筒内を迅速に暖めることができると共に、排気浄化触媒へ送り出す燃焼ガスも迅速に暖め、排気を高温にすることができ、後行する排気浄化触媒を暖める際には気筒内で暖められて高温となった燃焼ガスによって排気浄化触媒を迅速に暖めることができる。
【0015】
前記ノズル制御手段は、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御を、前記排気浄化触媒を暖める間に行うことがよい。
【0016】
これによると、排気の抵抗を減少させて前記排気浄化触媒へ送り出す燃焼ガスを増加させ、前記排気浄化触媒へ到達する燃焼ガスの熱によって前記排気浄化触媒を迅速に暖める
ことができる。
【0017】
前記ノズル制御手段は、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御と、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御とを、交互に切り替えて行うことがよい。
【0018】
これによると、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御によって燃焼ガスを高温にしており、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御よって内燃機関から排出される燃焼ガスを増加させており、これらが交互に行われることで、内燃機関から排出される燃焼ガスを高温に維持したまま燃焼ガスを増加させることができ、前記排気浄化触媒へ到達する燃焼ガスの熱によって前記排気浄化触媒を迅速に暖めることができる。
【0019】
吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを変更する可変バルブタイミング機構と、
前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の際にバルブオーバーラップ量を増加させ又は排気弁の閉時期を早め、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御の際にバルブオーバーラップ量を減少させ又は掃気効率が向上するタイミングとさせるバルブタイミング制御手段と、
を備えることがよい。
【0020】
これによると、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の際にバルブオーバーラップ量を増加させ又は排気弁の閉時期を早め、前記内燃機関の気筒内に存在させる燃焼ガスを多量にする。このため、前記内燃機関の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって前記内燃機関の気筒内を迅速に暖めることができる。また、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを排気浄化触媒へ送り出す制御の際にバルブオーバーラップ量を減少させ又は掃気効率が向上するタイミングとさせ、前記排気浄化触媒へ送り出す燃焼ガスの減少を少量にする。このため、前記排気浄化触媒へ到達する燃焼ガスの熱によって前記排気浄化触媒を迅速に暖めることができる。
【0021】
内燃機関の排気通路から吸気通路へ燃焼ガスを還流させるEGR通路と、
前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を調節するEGR弁と、
前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の際に前記EGR弁の開度を大きくさせて前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を増加させ、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御の際に前記EGR弁の開度を小さくさせて前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を減少させるEGR弁制御手段と、
を備えることがよい。
【0022】
これによると、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の際に前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を増加させ、前記内燃機関の気筒内に存在させる燃焼ガスを多量にする。このため、前記内燃機関の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって前記内燃機関の気筒内を迅速に暖めることができる。また、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを排気浄化触媒へ送り出す制御の際に前記EGR通路を流れる燃焼
ガス流量を減少させ、前記排気浄化触媒へ送り出す燃焼ガスの減少を少量にする。このため、前記排気浄化触媒へ到達する燃焼ガスの熱によって前記排気浄化触媒を迅速に暖めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、内燃機関の始動制御をより適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係る始動制御装置を適用する内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。
【0026】
図1に示す内燃機関1は、直列4気筒の水冷式の4サイクル・ディーゼル機関である。
【0027】
内燃機関1の各気筒における吸気弁や排気弁は、バルブ駆動機構2によって開閉駆動される。バルブ駆動機構2は、吸気弁あるいは排気弁の開閉タイミングや、バルブリフト量(開弁量)を可変制御することができる。
【0028】
バルブ駆動機構2としては、様々な作動原理を利用した機構を採用し得る。例えば、クランクシャフトの回転に連動するカム機構であって、複数形状のカムを選択的に用いて吸気弁あるいは排気弁を駆動することのできる機構や、クランクシャフトの回転に連動するカムと、カムの動作を修正するメカニズムとを併せて活用しバルブ駆動する機構等を例示することができる。また、吸気弁あるいは排気弁に対し、その往復動作の方向に沿って電磁力を付与することのできる機構を採用することもできる。このような機構を採用した場合、吸気弁あるいは排気弁の動作をクランクシャフトの回転に連動させる必要がなくなるため、その動作範囲や動作速度の制御ついて、自由度を高めることができる。
【0029】
一方、内燃機関1には、吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3の途中には、ターボチャージャ(過給機)5のコンプレッサ5aが設置されている。一方、排気通路4の途中には、ターボチャージャ5のタービン5bが設置されている。タービン5bは、排気通路4を流れる排気によって駆動され、コンプレッサ5aは、駆動されたタービン5bと共に回転して吸気通路3を流れる吸気を過給する。
【0030】
ターボチャージャ5は、タービン5bを収容するタービン室にタービン5bの全周を囲むように複数の可変ノズル6が設けられ、これらの可変ノズル6をそれぞれ回動させることで、可変ノズル6間に形成されるノズル通路断面積を変化させている。可変ノズル6を回動することによって、ノズル通路断面積を小さくすると、排気流量の少ない内燃機関1の低機関回転速度域での過給圧を高めることができる。一方、可変ノズル6を回動することによって、ノズル通路断面積を大きくすると、排気流量の多い内燃機関1の高機関回転速度域での過給圧を高めることができる。このようにノズル通路断面積を変化させる可変ノズル6及びこれを駆動するアクチュエータが可変ノズル機構を構成している。
【0031】
また、内燃機関1はEGR装置7を備えている。該EGR装置7は、排気通路4と吸気通路3とを連通するEGR通路8と、該EGR通路8に設けられ該EGR通路8を流通するEGRガス(燃焼ガス)の量を調整するEGR弁9と、を含んで構成されている。EGR装置7は、EGR弁9の開度を大きくすることで、EGR通路8を介して排気通路4における排気(燃焼ガス)の一部を吸気通路3に導入する。
【0032】
また、排気通路4におけるタービン5bより下流の部位には、内燃機関1の気筒から排出される排気を浄化するための排気浄化触媒10が配置されている。なお、排気浄化触媒10は、吸蔵還元型のNOx触媒が内燃機関1から排出される煤等のPMを捕集するフィルタに担持されたものである。
【0033】
以上の構成の内燃機関1には、内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)11が併設されている。このECU11は、CPU、RO
M、RAM、バックアップRAMなどからなる制御コンピュータである。
【0034】
ECU11には、水温センサなどが電気的に接続されている。そして、これらの出力信号がECU11に入力される。
【0035】
また、ECU11には、バルブ駆動機構2、可変ノズル6、EGR弁9、内燃機関1の燃料噴射弁、排気通路4に燃料を添加する還元剤添加弁などが電気的に接続されている。そして、ECU11によってこれらが制御される。
【0036】
ところで、内燃機関1が冷間始動する場合には、内燃機関を暖機する必要がある。そして、その暖機は早急に完了されることが好ましい。そこで、本実施例では、内燃機関1の気筒内を暖めること及び排気浄化触媒10を暖めることを含む内燃機関全体の暖機の短縮化を図っている。
【0037】
上記のような内燃機関全体の暖機の短縮化を目的として、本実施例では、冷間始動時に、可変ノズル6をノズル通路断面積が小さくなるようにしてタービン5bより上流の排気通路4における背圧を高め排気を内燃機関1の気筒内へ多量に存在させる制御と、可変ノズル6をノズル通路断面積が大きくなるようにしてタービン5bでの排気抵抗をできるだけ少なくし排気を排気浄化触媒10へ送り出す制御とを、選択して行う。このように選択して可変ノズル6の回動制御を行うECU11が本発明のノズル制御手段である。
【0038】
すなわち、冷間始動時に可変ノズル6をノズル通路断面積が小さくなるようにしてタービン5bより上流の排気通路4における背圧を高めることで、内燃機関1の気筒からの燃焼ガスを気筒へ戻したり、燃焼ガスを気筒から排出させずに滞留させたりして、燃焼ガスを内燃機関1の気筒内へ多量に存在させる。これにより、内燃機関1の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって内燃機関1の気筒内を迅速に暖めると共に、燃焼ガスを再度燃焼させて暖めることで燃焼ガスを高温にする。
【0039】
また、冷間始動時に可変ノズル6をノズル通路断面積が大きくなるようにしてタービン5bでの可変ノズル6による排気抵抗をできるだけ少なくし燃焼ガスを排気浄化触媒10へ送り出す。これにより、排気浄化触媒10へ流通する排気(燃焼ガス)を増加させ、排気浄化触媒10へ到達する排気(燃焼ガス)の熱によって排気浄化触媒10を迅速に暖める。
【0040】
そして、上記の冷間始動時に可変ノズル6をノズル通路断面積が小さくなるようにする制御とノズル通路断面積が大きくなるようにする制御とを選択して行う。つまり、可変ノズル6に対しては、ノズル通路断面積が小さくなるようにする制御とノズル通路断面積が大きくなるようにする制御とは背反するものであるが、両制御を冷間始動時に選択して行うことで、内燃機関1の気筒内を暖めることと排気浄化触媒10を暖めることとの両方を進行でき、内燃機関全体の暖機を促進し、内燃機関1の始動制御をより適切に行うことができる。
【0041】
なお、図2の破線Bに示すように、先行して可変ノズルに対してノズル通路断面積が小
さくなるようにする制御を行い、内燃機関の気筒内を完全に暖め、次にノズル通路断面積が大きくなるようにする制御を行い、排気浄化触媒を暖めるという、吸排気の流れに沿って上流側から内燃機関の暖機を行うことも考えられる。しかし、破線Bに示すように、ノズル通路断面積が大きくなるようにする制御で排気浄化触媒を暖める際には、時間経過に伴って触媒床温の温度上昇が緩やかになっていくため、排気浄化触媒を目標温度まで温度上昇させるのに時間がかかってしまう。このため、吸排気の流れに沿って上流側から内燃機関の暖機を行うものでは、排気浄化触媒を暖めることまで含む内燃機関全体の暖機は遅く、迅速な内燃機関全体の暖機はできない。
【0042】
これに対し、本実施例では、例えば一例である図2の実線Aに示すように、ノズル通路断面積が大きくなるようにする制御で排気浄化触媒10を暖めることを完了まで連続させない。そして、上記制御を、ノズル通路断面積が小さくなるようにする制御での内燃機関1の気筒内を暖めることの合間に分けて行う。したがって、ノズル通路断面積が大きくなるようにする制御で排気浄化触媒10を暖める際の触媒床温の温度上昇が著しい領域を何度も用いるので、排気浄化触媒10を目標温度まで迅速に温度上昇させることができ、内燃機関1の気筒内を迅速に暖めることと相俟って、迅速に内燃機関1全体の暖機ができる。
【0043】
なお、ノズル通路断面積が小さくなるようにする制御とノズル通路面積が大きくなるようにする制御とは、ECU11に入力される排気の温度に応じて、各制御を選択して行うこととしている。これにより、内燃機関1の気筒内を暖めることと排気浄化触媒10を暖めることとの両方が、排気の温度に応じて、バランスよく最適に行うことができるようにしている。
【0044】
なお、その他に、運転状態、機関負荷状態に応じて、各制御を選択して行うこととしてもよい。これによっても、内燃機関1の気筒内を暖めることと排気浄化触媒10を暖めることとの両方が、運転状態、機関負荷状態に応じて、バランスよく最適に行うことができる。
【0045】
また、ノズル通路断面積が小さくなるようにする制御を、冷間始動直後に行うこととしている。これにより、冷間始動直後に内燃機関1の気筒内を迅速に暖めることができると共に、排気浄化触媒10へ送り出す燃焼ガスも迅速に暖め、燃焼ガスを高温にすることができ、後行する排気浄化触媒10を暖める際には気筒内で暖められて高温となった燃焼ガスによって排気浄化触媒10を迅速に暖めることができる。
【0046】
さらに、ノズル通路断面積が大きくなるようにする制御を、排気浄化触媒10を暖める間に行う。これにより、排気の抵抗を減少させて排気浄化触媒10へ送り出す燃焼ガスを増加させ、排気浄化触媒10へ到達する燃焼ガスの熱によって排気浄化触媒10を迅速に暖めることができる。
【0047】
また、図2の実線Aに示すように、ノズル通路断面積が小さくなるようにする制御とノズル通路面積が大きくなるようにする制御とは、交互に切り替えて行われる。これにより、ノズル通路断面積が小さくなるようにする制御によって燃焼ガスを高温にしており、ノズル通路断面積が大きくなるようにする制御よって燃焼ガスを増加させており、これらが交互に行われることで、内燃機関1から排出される燃焼ガスを高温に維持したまま燃焼ガスを増加させることができ、排気浄化触媒10を迅速に暖めることができる。
【0048】
ここで、本実施例では、可変ノズル6によるノズル通路断面積の変更に伴い、バルブ駆動機構2により吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを変更し、内燃機関1の気筒内を暖めること及び排気浄化触媒10を暖めることを行うようにしている。このようなバルブ駆動
機構2を制御するECU11が本発明のバルブタイミング制御手段である。
【0049】
すなわち、可変ノズル6のノズル通路断面積が小さくなる際に、吸気弁及び排気弁が両方とも開状態となるバルブオーバーラップ量を増加させ又は排気弁の閉時期を早めている。これにより、タービン5bより上流の排気通路4における背圧が高まった状態では、バルブオーバーラップ量を増加させると、気筒内から燃焼ガスを吸気通路3へ送り出し吸気行程でその燃焼ガスを再度気筒内へ導入することになる。また、排気弁の閉時期を早めると、一部の燃焼ガスが排気通路4へ送り出されず気筒内に滞留することになる。したがって、内燃機関1の気筒内に存在させる燃焼ガスをより多量にすることができ、内燃機関1の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって内燃機関1の気筒内を迅速に暖めることができる。
【0050】
また、可変ノズル6のノズル通路断面積が大きくなる際に、吸気弁及び排気弁が両方とも開状態となるバルブオーバーラップ量を減少させ又は気筒内の排気を掃気効率が向上するタイミングとさせている。これにより、タービン5bでの可変ノズル6による排気抵抗をできるだけ少なくし、加えてバルブオーバーラップ量を減少させる。よって、燃焼ガスが排気通路4の下流へ送られることになる。また、気筒内の燃焼ガスを最も排出するタイミング、すなわち掃気効率が向上するタイミングとさせると、燃焼ガスが排気通路4の下流へ送られることになる。したがって、より多くの燃焼ガスを排気浄化触媒10へ送り出すことができ、送り出された燃焼ガスの熱によって排気浄化触媒10を迅速に暖めることができる。
【0051】
またここで、本実施例では、可変ノズル6によるノズル通路断面積の変更に伴い、EGR装置7のEGR弁9を通過する燃焼ガス量を調節し、内燃機関1の気筒内を暖めること及び排気浄化触媒10を暖めることを行うようにしている。このようなEGR装置7のEGR弁9を制御するECU11が本発明のEGR弁制御手段である。
【0052】
すなわち、可変ノズル6のノズル通路断面積が小さくなる際に、EGR弁9の開度を大きくさせてEGR通路8を流れる燃焼ガス流量を増加させている。これにより、タービン5bより上流の排気通路4における背圧が高まった状態では、EGR通路8を流れる燃焼ガス流量を増加させる。よって、気筒内から排気通路4に排出された多くの燃焼ガスを吸気通路3へ戻し吸気行程でその燃焼ガスを再度気筒内へ導入することになる。したがって、内燃機関1の気筒内に存在させる燃焼ガスをより多量にすることができ、内燃機関1の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって内燃機関1の気筒内を迅速に暖めることができる。
【0053】
また、可変ノズル6のノズル通路断面積が大きくなる際に、EGR弁9の開度を小さくさせてEGR通路8を流れる燃焼ガス流量を減少させている。これにより、タービン5bでの可変ノズル6による排気抵抗をできるだけ少なくし、加えてEGR通路8を流れる燃焼ガス流量を減少させる。よって、燃焼ガスがEGR通路8を介して吸気通路3へ戻され難くなり排気通路4の下流へ送られることになる。したがって、より多くの燃焼ガスを排気浄化触媒10へ送り出すことができ、送り出された燃焼ガスの熱によって排気浄化触媒10を迅速に暖めることができる。
【0054】
このように、本実施例においては、可変ノズル6のノズル通路断面積を変更することと、バルブ駆動機構2により吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを変更することと、EGR装置7のEGR弁9を通過する燃焼ガス量を調節することとが総じて、本発明の、冷間始動時に、燃焼ガスを内燃機関1の気筒内へ多量に存在させる制御と、燃焼ガスを排気浄化触媒10へ送り出す制御とになっている。
【0055】
具体的に、本実施例においては、ECU11が、図3のフローに従って、上記可変ノズル6、バルブ駆動機構2、EGR弁9の制御を実施する。なお、このフローは、一定時間毎、あるいはクランクポジションセンサからのパルス信号の入力などをトリガとした割り込み処理としてECU11が実行するルーチンである。以下、図3のフローチャートに沿って説明する。
【0056】
この制御ルーチンは、予めECU11のROMに記憶されているルーチンである。先ず、ステップ(以下、単に「S」という。)101においては、ECU11は、冷間始動時であるか否かを判別する。水温センサにより検出する水温が一定温度以下である場合や、ECU11で算出される推定の排気温度が一定温度以下である場合や、ECU11で算出される推定の排気浄化触媒10の温度が一定温度以下である場合などに冷間始動時であると判定する。本実施例においては、冷間始動時であると肯定判定されるとS102へ進み、冷間始動時ではなければ否定判定され本ルーチンの実行を終了する。
【0057】
S102においては、ECU11は、ECU11で算出される推定の排気温度が判定値より高いか否か(排気温度>判定値)を判別する。ここでの判定値は、ECU11で算出される推定の排気浄化触媒の温度に応じて変更される値である。排気温度が判定値より高くない(排気温度>判定値を満たさない)と否定判定されるとS103へ進み、排気温度が判定値より高い(排気温度>判定値を満たす)と肯定判定されるとS105へ進む。
【0058】
S103においては、ECU11は、可変ノズル6をノズル通路断面積を小さくするべく閉側へ回動する。よって、冷間始動時に可変ノズル6をノズル通路断面積が小さくなるようにしてタービン5bより上流の排気通路4における背圧を高めることで、内燃機関1の気筒からの燃焼ガスを気筒へ戻したり、燃焼ガスを気筒から排出させずに滞留させたりして、燃焼ガスを内燃機関1の気筒内へ多量に存在させる。これにより、内燃機関1の気筒内に存在させた燃焼ガスの熱によって内燃機関1の気筒内を迅速に暖めると共に、燃焼ガスを再度燃焼させて暖めることで排気を高温にする。
【0059】
S103に引き続くS104においては、ECU11は、吸気弁及び排気弁が両方とも開状態となるバルブオーバーラップ量を増加させ又は排気弁の閉時期を早める。及び/又は、EGR弁9の開度を大きくさせてEGR通路8を流れる燃焼ガス流量を増加させる(バルブ駆動機構2、EGR弁9の可変ノズル閉側制御)。これにより、内燃機関1の気筒内を迅速に暖め、S101へ戻る。
【0060】
一方、S105においては、ECU11は、可変ノズル6をノズル通路面積を大きくするべく開側へ回動する。よって、冷間始動時に可変ノズル6をノズル通路断面積が大きくなるようにしてタービン5bでの可変ノズル6による排気抵抗をできるだけ少なくし燃焼ガスを排気浄化触媒10へ送り出す。これにより、排気浄化触媒10へ流通する排気(燃焼ガス)を増加させ、排気浄化触媒10へ到達する排気(燃焼ガス)の熱によって排気浄化触媒10を迅速に暖める。
【0061】
S105に引き続くS106においては、ECU11は、吸気弁及び排気弁が両方とも開状態となるバルブオーバーラップ量を減少させ又は気筒内の燃焼ガスを最も排出するタイミング、すなわち掃気効率が向上するタイミングとさせる。及び/又は、EGR弁9の開度を小さくさせてEGR通路8を流れる燃焼ガス流量を減少させる(バルブ駆動機構2、EGR弁9の可変ノズル開側制御)。これにより、排気浄化触媒10を迅速に暖め、S101へ戻る。
【0062】
以上のように、図3のフローでは、S103及びS104の制御による内燃機関1の気筒内を暖めることと、S105及びS106の制御による排気浄化触媒10を暖めること
と、を排気温度に応じて切り替えて行い、その後、冷間始動状態から脱すると、本ルーチンの実行を終了する。
【0063】
このように、S103及びS104の制御と、S105及びS106の制御と、の両制御を冷間始動時に選択して行うことで、内燃機関1の気筒内を暖めることと排気浄化触媒10を暖めることとの両方が進行でき、内燃機関全体の暖機を促進し、内燃機関1の始動制御をより適切に行うことができる。
【0064】
なお、上記実施例では、S103及びS104の制御と、S105及びS106の制御と、の両制御を排気温度に応じて切り替えることとしていた。しかし、本発明は、両制御の切り替えを冷間始動時の経過時間、運転状態、機関負荷状態などに応じて行うようにしてもよい。
【0065】
例えば、図4のフローに示すように、S103及びS104の制御と、S105及びS106の制御と、の両制御の切り替えを、S402において、第1指定時間と始動後経過時間と第2指定時間とを比較することで行ってもよい。S402では、第1指定時間と第2指定時間の間に始動後経過時間が挟まれる場合(第1指定時間<始動後経過時間<第2指定時間を満たす)にS105及びS106の制御に切り替え、残り(第1指定時間<始動後経過時間<第2指定時間を満たさない)はS103及びS104の制御を行うようにしている。なお、第1指定時間と第2指定時間は、フローの繰り返し回数によって変動(増加)するものである。
【0066】
また、図5のフローに示すように、S103及びS104の制御と、S105及びS106の制御と、の両制御の切り替えを、S502において、始動後経過時間と判定値を比較することで行ってもよい。S502では、判定値よりも始動後経過時間が大きい場合(始動後経過時間>判定値を満たす)にS105及びS106の制御に切り替え、判定値よりも始動後経過時間が小さい場合(始動後経過時間>判定値を満たさない)にはS103及びS104の制御を行うようにしている。
【0067】
また、図6のフローに示すように、S103及びS104の制御と、S105及びS106の制御と、の両制御の切り替えを、S602において、運転状態、機関負荷状態に応じて変動する排出ガス量と判定値を比較することで行ってもよい。S602では、判定値よりも排出ガス量が少ない場合(排出ガス量<判定値を満たす)にS105及びS106の制御に切り替え、判定値よりも排出ガス量が多い場合(排出ガス量<判定値を満たさない)にはS103及びS104の制御を行うようにしている。
【0068】
なお、その他に、機関負荷状態に応じて変動する排気温度などと判定値を比較するものでもよい。また、図4〜図6のフローにおけるS101、S103〜S106は図3のフローと同一であるので説明を割愛した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例に係る始動制御装置を適用する内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】実施例に係る制御切り替えによって生じる排気浄化触媒の床温変化を示す図である。
【図3】実施例に係る制御切り替えを実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】実施例の他の例に係る制御切り替えを実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施例の他の例に係る制御切り替えを実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】実施例の他の例に係る制御切り替えを実行する制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 内燃機関
2 バルブ駆動機構
3 吸気通路
4 排気通路
5 ターボチャージャ(過給機)
5a コンプレッサ
5b タービン
6 可変ノズル
7 EGR装置
8 EGR通路
9 EGR弁
10 排気浄化触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気によって駆動されるタービンを有する過給機と、
前記過給機内に設けられ前記タービンへの排気流量を調節する可変ノズル機構と、
前記タービンよりも排気下流側の排気通路に配置された排気浄化触媒と、
を備えた内燃機関の始動制御装置において、
冷間始動時に、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御と、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御とを、選択して行うノズル制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の始動制御装置。
【請求項2】
前記ノズル制御手段は、温度、運転状態若しくは機関負荷状態に応じて、各制御を選択して行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項3】
前記ノズル制御手段は、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御を、冷間始動直後に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項4】
前記ノズル制御手段は、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御を、前記排気浄化触媒を暖める間に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項5】
前記ノズル制御手段は、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御と、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御とを、交互に切り替えて行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項6】
吸気弁及び排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを変更する可変バルブタイミング機構と、
前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の際にバルブオーバーラップ量を増加させ又は排気弁の閉時期を早め、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御の際にバルブオーバーラップ量を減少させ又は掃気効率が向上するタイミングとさせるバルブタイミング制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項7】
内燃機関の排気通路から吸気通路へ燃焼ガスを還流させるEGR通路と、
前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を調節するEGR弁と、
前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が小さくなるようにして背圧を高め燃焼ガスを前記内燃機関の気筒内へ多量に存在させる制御の際に前記EGR弁の開度を大きくさせて前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を増加させ、前記可変ノズル機構をノズル通路断面積が大きくなるようにして燃焼ガスを前記排気浄化触媒へ送り出す制御の際に前記EGR弁の開度を小さくさせて前記EGR通路を流れる燃焼ガス流量を減少させるEGR弁制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の内燃機関の始動制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−100607(P2007−100607A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292256(P2005−292256)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】