説明

半導体チップ、及び半導体装置

【課題】半導体チップのサイズを拡大せずに、高機能化を実現可能な半導体チップを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体チップは、半導体基板5上に多層配線、及びシールリング1構造を備える半導体チップ101であって、シールリング1より内側に区画される内部領域2のみならず、内部領域2より外側に区画される額縁領域3に、チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子12が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ及び半導体装置に関する。より詳しくは、多層配線構造、及びシールリングを含む半導体チップ、及び当該半導体チップが搭載された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の代表として知られているマイクロプロセッサやメモリ等のLSI(大規模集積回路)は、集積度の向上につれて個々の素子の寸法が益々微細化されてきており、これに伴って各素子を構成する半導体領域の寸法も微細化されてきている。また、配線を半導体基板の平面方向に形成するだけでは高集積度に対応した高い配線密度が確保できないので、配線を半導体基板の厚さ方向に多層に亘って形成するようにした多層配線技術が採用されてきている。LSIにおいて典型的なマイクロプロセッサの例では、6〜9層にも及ぶ多層配線構造が実現されている。
【0003】
多層配線構造を採用しているLSIにおいては、配線の抵抗値が動作速度等の特性に大きな影響を与えるので、低い抵抗値の配線が望まれている。従来からLSIを含めた半導体装置の配線材料として、電気的特性、加工性等の点で優れているアルミニウム(Al)又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム系金属が一般に用いられている。しかしながら、このアルミニウム系金属は、エレクトロマイグレーション耐性、ストレスマイグレーション耐性等に弱いという欠点がある。このため、アルミニウム系金属に代ってこれよりも抵抗値が小さくて、エレクトロマイグレーション耐性、ストレスマイグレーション耐性等に優れている銅(Cu)又は銅を主成分とする銅系金属が用いられる傾向にある。
【0004】
ところで、銅系金属を用いて配線を形成する場合、銅系化合物は蒸気圧が低いので、アルミニウム系金属のようにドライエッチング技術を利用して所望の形状にパターニングすることは困難である。このため、銅系金属を用いて配線を形成する場合は、半導体基板上に形成した層間絶縁膜に予め配線溝を形成した上で、この配線溝を含む全面に銅系金属膜を形成する。そして、層間絶縁膜上の不要な銅系金属膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)法等により除去して、配線溝内のみに残した(埋設した)銅系金属膜を配線とするシングルダマシン(Single Damascene)配線技術が用いられている。また、多層配線における微細化配線に適した構造として、シングルダマシン配線技術を発展させたデュアルダマシン(Dual Damascene)配線技術が採用されている。
【0005】
多層配線構造を有する半導体装置においては、下配線層と上配線層との間に形成されている層間絶縁膜による配線間容量の増加や、微細化に伴って平面方向の配線間隔が狭くなったことによる配線間容量の増加等により、信号遅延が生じて高速動作に影響を受ける。従って、層間絶縁膜による容量の減少を図るべく、層間絶縁膜として低誘電率膜(いわゆるlow−k膜)が用いられる傾向にある。
【0006】
ところで、LSIの製造ではウエハ状態の半導体基板に必要な回路素子を集積した後、半導体基板をダイシングにより個々の半導体チップに分離する。この際、半導体チップのダイシング面である層間絶縁膜の側壁が露出されるので、ダイシング面から水分、湿気等(以下、水分等と称する)が浸入し、耐湿性が低下するという問題がある。特に、上述したような多層配線構造を採用しているLSIにおいては、層間絶縁膜の層数が多いため、その傾向が大きくなる。従って、リーク電流が増加したり、低誘電率膜の誘電率が増加したりする等の問題が発生する。
【0007】
ダイシング面からの水分等の浸入を防止して耐湿性の向上を図るために、半導体チップの回路形成部を取り囲むようにシールリングを設ける構造が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献2には、本番チップを取り囲むように第1ガードリング(シールリング)を設け、さらにその内側に第2ガードリング(シールリング)を設ける構造が開示されている。第1ガードリングと第2ガードリングを設けることにより、ガードリング近傍のコンタクトホールの変形を抑制して、品質の向上、信頼性の向上を図ることができる旨が記載されている。
【特許文献1】特開2004−297022号公報
【特許文献2】特開2002−134506号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近時においては、半導体チップの高機能化が益々求められている。半導体チップのサイズを大きくすることにより高機能化を実現することは可能であるが、半導体チップの小型化への要望は極めて高い。このため、半導体チップのサイズを拡大せずに、高機能化を実現する技術が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体チップは、半導体基板上に多層配線、及びシールリング構造を備える半導体チップであって、前記シールリングより内側に区画される内部領域のみならず、前記内部領域より外側に区画される額縁領域に、チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子が配設されているものである。
【0010】
本発明に係る半導体チップによれば、内部領域のみならず、内部領域より外側に区画される額縁領域にもチップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子を配設しているので、半導体チップのサイズを拡大させずに、高機能化を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体チップのサイズを拡大せずに、高機能化を実現可能な半導体チップを提供することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0013】
[実施形態1]
図1(a)は、本実施形態1に係る半導体ウエハ100の一部を示す上面図であり、図1(b)は、半導体ウエハ100をダイシングカットすることにより取り出した半導体チップ101の上面図である。半導体ウエハ100には、図1(a)に示すように、スクライブ線領域4が升目状に形成されている。半導体チップ101は、半導体ウエハ100のスクライブ線4aに沿ってダイシングカットすることにより取り出される。
【0014】
本実施形態1に係る半導体チップ101は、図1(b)に示すように、シールリング1が外周部に枠体状に設けられている。本明細書においては、シールリング1の内側を内部領域2とし、内部領域2より外側に区画される領域を額縁領域3と称する。額縁領域3は、シールリング1及びスクライブ線領域4が形成されている領域である。シールリング1は、通常、前記スクライブ線領域4と間隙を隔てた内側に形成される。すなわち、スクライブ線領域4とシールリング1の間に略同一幅の間隙が形成されている。シールリング1は、半導体ウエハをダイシングカットする際に半導体チップ内部への水分等の侵入を防止する役割を担うと同時に、ダイシングに起因した層間絶縁膜のクラックの進行を防ぐ役割も担っている。
【0015】
図2に、図1(b)のII−II切断部断面図、すなわち、内部領域2の切断部断面図を示す。本実施形態1に係る半導体チップ101は、図2に示すように、半導体基板5、ゲート部8、サイドウオール9、素子保護膜10、コンタクト11、NチャネルMOS(Metal Oxide Silicon)型トランジスタ(以下、「MOSトランジスタ」と略記する)13、9層の層間絶縁膜(第1の層間絶縁膜15、第2の層間絶縁膜25、第3の層間絶縁膜35、第4の層間絶縁膜45、第5の層間絶縁膜55、第6の層間絶縁膜65、第7の層間絶縁膜75、第8の層間絶縁膜85、第9の層間絶縁膜95)、9層のエッチングストッパー(第1エッチングストッパー膜16、第2エッチングストッパー膜26、第3エッチングストッパー膜36、第4エッチングストッパー膜46、第5エッチングストッパー膜56、第6エッチングストッパー膜66、第7エッチングストッパー膜76、第8エッチングストッパー膜86)、パッシベーション保護膜20等を備える。
【0016】
半導体基板5は、例えば、P型シリコンからなる。半導体基板5には、STI(Shallow Trench Isolation)等からなる素子分離領域6と、この素子分離領域6に囲まれた活性領域7がある。活性領域7には、ソース領域あるいはドレイン領域となる一対のN型拡散領域7a、及びゲート部8の少なくとも一部と対向配置される反転層形成領域7bが形成されている。
【0017】
ゲート部8は、一対のN型拡散領域7aの対向領域である反転層形成領域7bの上層に形成されている。ゲート部8は、シリコン酸化膜等のゲート絶縁膜と、このゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とにより構成されている。ゲート電極は、例えば、多結晶Si(ポリシリコン)、ニッケルシリサイド(NiSi),白金シリサイド(PtSi)等のシリサイド層により構成される。上記のような構成により、チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子であるMOSトランジスタ13が構成されている。
【0018】
素子保護膜10は、ゲート部8を被覆するように形成されている。素子保護膜10の好適な例としては、酸化シリコン膜(SiO)、炭化シリコン膜(SiC),炭化窒化シリコン膜(SiCN),窒化酸化シリコン膜(SiON)、窒化シリコン膜(SiN)から選ばれる単一膜、又は積層膜を挙げることができる。特に好ましくは、酸化シリコン膜である。素子保護膜10には、その表面から一対のN型拡散領域7a、ゲート部8まで貫通するコンタクト11(11a〜11c)が形成されている。
【0019】
素子保護膜10に形成されたコンタクト11(11a〜11c)を形成するためのコンタクトホールは、周知のフォトリソグラフィー工程、エッチング工程等により形成する。形成されたコンタクトホールには、例えば、膜厚が5〜15nmのチタン膜(Ti)と、膜厚が10〜20nmのチタン窒化膜(TiN)との積層膜からなるバリアメタル(不図示)と、タングステン層とからなるコンタクト11(11a〜11c)を形成する。コンタクト11aにより、N型拡散領域7aと、素子保護膜10の上層に形成された第1の層間絶縁膜15に形成された第1配線層17aとが電気的に接続される。同様にして、コンタクト11bにより、ゲート部8と第1配線層17bが、コンタクト11cにより、N型拡散領域7aと第1配線層層17cが電気的に接続されている(図2参照)。
【0020】
素子保護膜10の上層には、9層のエッチングストッパー膜及び9層の層間絶縁膜が積層されている。具体的には、図2に示すように、素子保護膜10の上に、第1の層間絶縁膜15、第2の層間絶縁膜25、第3の層間絶縁膜35、第4の層間絶縁膜45、第5の層間絶縁膜55、第6の層間絶縁膜65、第7の層間絶縁膜75、第8の層間絶縁膜85、第9の層間絶縁膜95がこの順に積層されている。そして、各層間絶縁膜の下層にエッチングストッパー膜が形成されている。具体的には、第1の層間絶縁膜15の下層に第1エッチングストッパー膜16、第2の層間絶縁膜25の下層に第1エッチングストッパー膜26、第3の層間絶縁膜35の下層に第3エッチングストッパー膜36、第4の層間絶縁膜45の下層に第4エッチングストッパー膜46、第5の層間絶縁膜55の下層に第5エッチングストッパー膜56、第6の層間絶縁膜65の下層に第6エッチングストッパー膜66、第7の層間絶縁膜75の下層に第7エッチングストッパー膜76、第8の層間絶縁膜85の下層に第8エッチングストッパー膜86、第9の層間絶縁膜95の下層に第9エッチングストッパー膜96が形成されている。
【0021】
各エッチングストッパー膜は、例えば、膜厚が10〜50nmのSiCN、窒化シリコン膜(SiN)により構成され、各層間絶縁膜は、例えば、150〜300nmの低誘電率膜から構成される。第1の層間絶縁膜15及び第1のエッチングストッパー膜内には、配線を配設するためのトレンチ(配線溝)が形成される。トレンチ内には、例えば、膜厚が10〜30nmのタンタル膜(Ta)とタンタル窒化膜(TaN)との積層膜からなるバリアメタル(不図示)と、銅層(不図示)とからなる第1配線層17a,17b,17cが形成されている。第2の層間絶縁膜25には、ビアホール(ビア配線溝)が形成されている。このビアホール内には、例えば、膜厚が10〜30nmのタンタル膜とタンタル窒化膜との積層膜からなるバリアメタルと銅層とからなる第1のビア配線層28aが形成されている。第1ビア配線層28aが、3つの第1配線層のうちの1つである第1配線層17bと接続されるように形成されている。
【0022】
同様にして、奇数層の層間絶縁膜及びエッチングストッパー膜には、配線を配設するためのトレンチが形成され、トレンチ内に配線層を形成する。そして、偶数層の層間絶縁膜及びエッチングストッパー膜には、ビアを形成するためのビアホールが形成され、ビアホール内にビア配線層を形成する。図2においては、第2配線層37aが第1ビア配線層28aと接続されるように、第1ビア配線層28aに対して膜厚方向に重畳的に形成されている。また、第4の層間絶縁膜45に形成された第2ビア配線層48aが、第2配線層37aと接続されるように形成され、第5の層間絶縁膜55に形成された第3配線層57aが第2ビア48aと接続されるように膜厚方向に重畳的に形成されている。パッシベーション膜20は、第9の層間絶縁膜95の上層に形成されている。パッシベーション保護膜20としては、例えば、SiO、SiONを好適に適用することができる。
【0023】
上記層間絶縁膜は、主たる層として低誘電率膜を用いることが好ましい。低誘電率膜を用いることにより、配線間容量の増加を抑制することができる。低誘電率膜の例としては、例えば、SiLK(登録商標(Dow Chemical社))を用いることができる。ここで、「層間絶縁膜の主たる層」とは、層間絶縁膜を複数の積層膜から構成した場合に、厚み方向の大半を占め、主要な役割を担う層を云うものとする。
【0024】
一方、素子保護膜10は、層間絶縁膜の主たる層とは異なる材料により構成する。耐湿性が高く、信頼性を確保できる膜から選定する。上述したように、SiO、SiC,SiCN,SiON、SiNから選ばれる単一膜、又は積層膜等を好適に用いることができる。
【0025】
本実施形態1に係る半導体チップ101は、上記のように、第1配線層17a、17b及び17c、第2配線層37a、第3配線層57a、第1ビア配線層28a、第2ビア配線層48a等からなる多層配線と、半導体素子であるMOSトランジスタ13とが電気的に接続されている。
【0026】
次に、本件発明の特徴部分について説明する。本実施形態1においては、チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子を配設する領域として、内部領域2のみならず、シールリング1を含む額縁領域3にも拡張している。以降の説明において、「チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子」を単に「半導体素子」とも称する。そして、内部回路として動作しない特性確認用のいわゆるテストのための半導体素子は、「テスト用半導体素子」として区別して記載する。なお、本発明においては、テスト用半導体素子を配設することを排除するものではなく、「チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子」と共に、額縁領域3若しくは内部領域2に動作確認用の半導体素子を配設してもよい。
【0027】
額縁領域3に設ける半導体素子は、信頼性を確保するために、半導体チップの側壁、すなわち、ダイシング面に露出しないように設ける必要がある。
【0028】
図3に、図1の点線A1で示す額縁領域3近傍の模式的部分拡大平面図を示す。図4は、図3のIV−IV切断部断面図であり、図5は、図3のV−V切断部断面図である。また、図6は、図3のVI−VI切断部断面図である。
【0029】
シールリング1を含む額縁領域3近傍においては、図3に示すように、N型拡散領域7a、ゲート部8、3つのコンタクト11d、11e、及び11f、MOS型キャパシタ(以降、「MOSキャパシタ」と云う)12等を備える。同図においては、説明の便宜上、半導体基板5、素子保護膜10、第1の層間絶縁膜15〜第9の層間絶縁膜95、パッシベーション保護膜20、配線層、エッチングストッパー層等の図示を省略している。また、シールリング1の形成位置を説明するために、図1と同様のテクスチャーにより図示した。
【0030】
本実施形態1においては、半導体素子であるMOSキャパシタ12が、額縁領域3のうちのシールリング1より外側に区画される領域に形成されている(図3及び図4参照)。MOSキャパシタ12は、アノード電極をゲート部8にあるゲート電極により、カソード電極をゲート電極下に位置するSi基板の反転層形成領域7bにより構成している。ゲート電極下の反転層形成領域7bは、ゲート電極に電圧を印加することにより反転層が形成されて低抵抗となるため、カソード電極として機能する。キャパシタ絶縁膜は、ゲート電極部8におけるゲート電極と半導体基板5の間に形成されている。ゲート部8のサイドには、サイドウオール9が形成されている。
【0031】
MOSキャパシタ12は、内部領域2と電気的に接続可能なように構成されている。具体的には、MOSキャパシタ12のアノード側においては、ゲート電極部8が内部領域2まで延設されている。そして、内部領域2に形成されたゲート電極部8に構成されたゲート電極は、素子保護膜10に形成されたコンタクト11dを介して第1配線層17dと電気的に接続され(図3及び図4参照)、さらにVDD端子に接続されている。また、MOSキャパシタ12のカソード側においては、半導体基板5上のN型拡散領域7aが、図3及び図5に示すように、内部領域2まで延設されている。そして、内部領域2に形成された半導体基板5上のN型拡散領域7aは、素子保護膜10に形成されたコンタクト11eを介して第1配線層17eと電気的に接続され、さらにGND端子に接続されている。
【0032】
MOSキャパシタ12は、前述のMOSトランジスタ13と同様に、半導体基板5の活性領域7及びこの半導体基板5の上層に形成された素子保護膜10により形成されている。
【0033】
額縁領域3に形成されたMOSキャパシタ12は、上記構成により、内部領域2に形成された半導体素子等と電気的に接続される。内部領域2と額縁領域3とを直接的に接続する配線は、素子保護膜10、若しくは、半導体基板5に形成された導電層を用いる。配線の好ましい例としては、上記のようにゲート電極、半導体基板5に形成された拡散層の他、NiSi,PtSi等のシリサイド配線、Al系配線、Cu系配線等を好適に用いることができる。額縁領域3から、素子保護膜10、若しくは、半導体基板5に形成された導電層により内部領域2まで電気的に接続した後、内部領域2に形成された半導体素子と、これらの導電層を介して直接接続してもよい。若しくは、上述したように、内部領域2に形成された第1の層間絶縁膜15等の層間絶縁膜に形成された配線層、ビア配線層等を経由して、内部領域2に形成された半導体素子と接続させる構造としてもよい。内部領域2においては、コンタクトを介して、より電気抵抗が低いCu配線に接続する構成とすることが好ましい。
【0034】
額縁領域3に配設する半導体素子としては、特に限定されないが、MOSキャパシタの他、例えば、拡散層抵抗、ゲート電極抵抗(ポリ抵抗)、シリサイド抵抗、ダイオード、又はMOSトランジスタを挙げることができる。前述したように、「内部回路として動作可能な信頼性の確保された半導体素子」の他、テスト用半導体素子を並設することも可能である。額縁領域3に形成する半導体素子は、矩形状に形成された半導体チップの一部の辺のみに形成してもよいし、矩形状の半導体チップのすべての辺に配置してもよい。
【0035】
次に、シールリング1の構造について説明する。本実施形態1に係るシールリング1は、図1に示すように、内部領域2を囲むように半導体チップ101の外周に沿って、枠体状に設けられている。半導体基板5上に形成されたシールリング1は、本実施形態1においては、ゲート電極部8、素子保護膜10、この素子保護膜10に設けられたコンタクト、配線層、ビア配線層、及びパッシベーション保護膜20等により構成されている。
【0036】
シールリング1は、導電層が内部領域2を囲むように枠体状に、かつ膜厚方向に重畳的に形成された枠体エリアと、導電層が間欠的に形成された間引きエリアを備える。本実施形態1においては、第1の層間絶縁膜15〜第9の層間絶縁膜95までの領域が枠体エリア31に相当し、素子保護膜10が間引きエリア30に相当する(図4〜6参照)。換言すると、本実施形態1に係る半導体チップ101は、半導体基板5の上層に、間引きエリア30が形成され、さらにその上層に枠体エリア31が形成され、枠体エリア31がパッシベーション保護膜20により被覆された構造となっている。なお、間引きエリア30は、1層に限定されるものではなく、複数層備えていてもよい。また、枠体エリア31の層間絶縁膜の層数は、特に限定されない。また、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記の層以外のレイヤが含まれていてもよい。
【0037】
図6は、シールリング1の切断部断面図である。枠体エリア31におけるシールリング1は、前述したように半導体チップ101の外周に沿って、枠体状に、かつ膜厚方向に重畳的に導電層が形成されている。具体的には、図6に示すように、配線層とビア配線層が交互に積層されている。具体的には、第1配線層17、第1ビア配線層28、第2配線層37、第2ビア配線層48、第3配線層57、第3ビア配線層68、第4配線層77、第4ビア配線層86、第5配線層97がこの順に積層されている。第5配線層97の上層には、パッシベーション保護膜20が配設されている。
【0038】
枠体エリア31のシールリング1を上述のように構成することにより、層間絶縁膜の主要部を構成している低誘電率膜内にダイシング時に水分が侵入した場合であっても、シールリング1の存在により、内部方向に水分が侵入するのを阻止することができる。また、本実施形態1においては、シールリング1に上述したようにバリアメタルを用いることにより、より効果的に内部方向に水分が侵入するのを阻止することができる。すなわち、バリアメタルは、一般に、層間絶縁膜に埋め込まれた銅配線から銅が周囲に拡散するのを防止するバリアとして作用させるために用いられているが、これに限らずバリアメタルは上述のように周囲から侵入してきた水分等に対してもバリアとして作用させることができる。
【0039】
一方、間引きエリア30のシールリング1には、図6に示すように、素子保護膜10を貫通する導電層が間欠的に設けられている。具体的には、図6の例においては、素子保護膜10の表面から半導体基板5まで貫通するコンタクト11fが形成されている。また、間引きエリア30には、ゲート電極部8が設けられている(図4〜図6参照)。
【0040】
間引きエリア30のシールリング1を、上述のような構成とすることにより、額縁領域3に形成したMOSキャパシタ12のゲート電極を、内部領域2まで電気的に接続させることができる。すなわち、導電層を枠体エリア31のように枠体状に設けるのではなく、間欠的に設けることにより、間引きエリア30において額縁領域3と内部領域2とを電気的に接続する配線を縦断させることが可能となる。
【0041】
間引きエリア30を構成する素子保護膜10は、低誘電率膜に比して堅く、信頼性が確保できる膜により構成する。例えば、SiO、SiC,SiCN,SiON、SiNから選ばれる単一膜、又は積層膜から構成される膜を用いる。素子保護膜10を、このような膜により構成することにより、ダイシング時の水分の侵入による配線の信頼性低下を招かない。そして、上記間引き構造を採用することにより、半導体素子形成領域を、内部領域2のみならず額縁領域3にまで拡張させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態1においては、シールリング1の間引きエリア30に導電層を配置する構成とすることにより、半導体基板5の破壊を防止することができる。すなわち、エッチング工程やCVD工程等の半導体装置の製造工程において、プラズマに晒された場合、プラス電荷をもったイオンが半導体基板5に衝突するため、シールリング1中の電子がイオンに奪われて、配線層がプラスに帯電する現象が生ずる。この場合、シールリング1が電気的に浮いているときはその電荷がたまり続け、場合によっては放電が発生して基板5が破壊され得る。本実施形態1によれば、枠体エリア31の導電層が、コンタクト11fを介して半導体基板5上に形成されたN型拡散領域7aに接続されているので、半導体基板5を通じて電荷を逃すことができる。その結果、半導体基板5の破壊を防止することができる。
【0043】
また、内部領域2と額縁領域3を電気的に接続するための配線を、導電層が間引かれた領域に配設している。すなわち、内部領域2と額縁領域3の半導体素子との接続に枠体エリア31に形成された層間絶縁膜中のCu配線を用いず、水分の侵入による配線の信頼性低下を招かない間引きエリア30に形成された素子保護膜10、及び半導体基板5に構成されるゲート電極や拡散層を使用している。このため、信頼性が問題とならない。さらに、額縁領域3に形成された半導体素子であるMOSキャパシタは、Si基板の反転層形成領域、ゲート絶縁膜、ゲート電極から構成され、低誘電率膜を含まない層により構成されているので、半導体素子自体もダイシング時の水分の侵入による信頼性低下が生じない。
【0044】
以上のように、本実施形態1によれば、額縁領域3にチップ内部回路として動作可能な半導体素子を、信頼性を確保した上で設置することができる。すなわち、本発明によれば、額縁領域3を、内部回路として動作する半導体素子設置領域として活用することが可能となる。これにより、半導体装置のサイズを拡大せずしてLSIの高機能化、特性向上を図ることができる。若しくは、同一の機能を備えながら、半導体装置の小型化を図ることができる。また、チップサイズ縮小によるコスト削減等の効果が期待できる。
【0045】
本件発明を例えば65nmプロセスの6mm×8mmの製品に適用した場合、半導体素子を配置可能な領域として、額縁領域3を利用する場合、0.64mm程度の面積を新たに確保することができる。また、額縁領域3に、デカップリングキャパシタ(MOSキャパシタ)を配置した場合、搭載量を19%程度増やす事ができる。デカップリングキャパシタ搭載量の増加により、電源ノイズが抑制され、信号の伝播遅延を改善する事が可能となる。その結果、高スピード(クロック)で動作するLSIを製造する事ができる。
【0046】
[実施形態2]
次に、上記実施形態1とは異なる半導体チップの一例について説明する。なお、以降の説明において、上記実施形態1と同一の要素部材は同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0047】
本実施形態2に係る半導体チップは、下記の点を除いて上記実施形態1と基本的な構造が同一である。すなわち、上記実施形態1においては、半導体チップ101の外周を取り囲むシールリング1を一重に設けていたのに対し、本実施形態2においては、シールリング1aを三重に設けている点において相違する。また、上記実施形態1においては、MOSキャパシタ12を額縁領域3のうちのシールリング1よりも外側の領域に配設していたのに対し、本実施形態2においては、MOSキャパシタ12aを、シールリング直下を含む額縁領域3から内部領域2に亘って配設している点において相違する。
【0048】
図7に、本実施形態2に係る半導体チップ102の額縁領域3近傍の模式的部分拡大平面図を示す。図8は、図7のVIII−VIII切断部断面図であり、図9は、図7のIX−IX切断部断面図である。また、図10は、図7のX−X切断部断面図である。
【0049】
図7に示すように、本実施形態2に係る半導体チップ102は、3つのシールリング1a、ゲート部8a、9つのコンタクト11(11g、11h、11i、11j、11k、11m、11n、11p、11q)、及びMOSキャパシタ12a等を備える。同図においては、説明の便宜上、半導体基板5、素子保護膜10、第1の層間絶縁膜15〜第9の層間絶縁膜95、パッシベーション保護膜20、配線層、エッチングストッパー層等の図示を省略している。また、シールリング1の形成位置を説明するために、図3と同様のテクスチャーにより図示した。
【0050】
本実施形態2においては、半導体素子であるMOSキャパシタ12aが、額縁領域3から内部領域2に亘って配設されている(図7及び図9参照)。具体的には、MOSキャパシタ12aのアノード側においては、ゲート電極部8aが額縁領域3から内部領域2に亘って形成されている。そして、内部領域2に形成されたゲート電極部8に構成されたゲート電極は、素子保護膜10に形成されたコンタクト11hを介して第1配線層17fと電気的に接続されている(図9参照)。また、MOSキャパシタ12aのカソード側においては、半導体基板5の反転層形成領域7bが、図9に示すように、額縁領域3から内部領域2に亘って形成されている。また、図7及び図8に示すように、N型拡散領域7aが内部領域2から額縁領域3を縦断するように形成されている。そして、内部領域2に形成された半導体基板5に形成されたN型拡散領域7aは、素子保護膜10に形成されたコンタクト11kを介して第1配線層17gと電気的に接続され、さらにGND端子に接続されている。
【0051】
本実施形態2によれば、シールリング1aを3重に配設しているので、ダイシング時のチッピング等に起因する半導体チップ内部への水分等の侵入をより効果的に抑制することができる。その結果、より高品質な信頼性の高い半導体チップ、及びこの半導体チップが搭載された半導体装置を提供することができる。しかも、シールリング1aを3重に設けた場合であっても、シールリング1aの直下の領域、及びシールリング1aよりも外側に区画される領域にもチップ内部回路として動作可能な信頼性の確保された半導体素子を配設することが可能であるので、半導体チップのサイズを拡大することなく、上記効果が得られる。
【0052】
なお、上記実施形態1及び2においては、間引きエリア30として、素子保護膜10からなる層、枠体エリア31として、第1の層間絶縁膜15から第9層間絶縁膜95までの層により構成する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、半導体素子が形成されている素子保護膜10と第1の層間絶縁膜15を間引きエリア30とし、第2の層間絶縁膜25〜第9の層間絶縁膜95までの領域を枠体エリア31としてもよい。この場合、第1の層間絶縁膜15は、低誘電率膜ではなく、水分等によるダメージを受けない信頼性の確保された膜とする必要がある。また、層間絶縁膜は、全て同じ構成とする必要はなく、適宜変更することができる。
【0053】
また、半導体基板5上に形成される半導体素子を形成する層として、上記実施形態においては素子保護膜10一層により構成された例について説明したが、これに限定されず、半導体基板5上に形成される複数層に半導体素子を形成してもよい。その場合、これらの層を間引きエリア30としてもよいし、1層のみを間引きエリア30とし、当該層により額縁領域3に形成された半導体素子と内部領域2との電気的接続部を設けてもよい。
【0054】
また、上記実施形態1においては、シールリングが1重に形成された例、上記実施形態2についてはシールリングが3重に形成された例について説明したが、これに限定されるものではなく、層間絶縁膜として用いる材料の特性、求められる耐湿性等に応じて適宜選定することができる。また、本実施形態においては、エッチングストッパー膜を配設した例を説明したが、適宜省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態1に係る半導体装置の模式的平面図。
【図2】図1のII−II切断部断面図。
【図3】実施形態1に係る半導体チップの外周部の部分拡大平面図。
【図4】図3のIV−IV切断部断面図。
【図5】図3のV−V切断部断面図。
【図6】図3のVI−VI切断部断面図。
【図7】実施形態2に係る半導体チップの外周部の部分拡大平面図。
【図8】図7のVIII−VIII切断部断面図。
【図9】図7のIX−IX切断部断面図。
【図10】図7のX−X切断部断面図。
【符号の説明】
【0056】
1 シールリング
2 内部領域
3 額縁領域
4 スクライブ線領域
4a スクライブ線
5 半導体基板
6 素子分離領域
7 活性領域
7a N型拡散領域
7b 反転層形成領域
8 ゲート部
9 サイドウオール
10 素子保護膜
11 コンタクト
12 MOSキャパシタ
13 MOSトランジスタ
15 第1の層間絶縁膜
16 第1のエッチングストッパー
17 第1配線層
20 パッシベーション保護膜
25 第2の層間絶縁膜
26 第2のエッチングストッパー
28 第2ビア配線層
30 間引きエリア
31 枠体エリア
35 第3の層間絶縁膜
36 第3のエッチングストッパー
37 第2配線層
45 第4の層間絶縁膜
46 第4のエッチングストッパー
48 第2ビア配線層
55 第5の層間絶縁膜
56 第5のエッチングストッパー
57 第3配線層
65 第6の層間絶縁膜
66 第6のエッチングストッパー
68 第3ビア配線層
75 第7の層間絶縁膜
76 第7のエッチングストッパー
77 第4配線層
85 第8の層間絶縁膜
86 第8のエッチングストッパー
88 第4ビア配線層
95 第9の層間絶縁膜
96 第9のエッチングストッパー
97 第5配線層
100 半導体ウエハ
101 半導体チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に多層配線、及びシールリング構造を備える半導体チップであって、
前記シールリングより内側に区画される内部領域のみならず、前記内部領域より外側に区画される額縁領域に、チップ内部回路として動作可能な信頼性が確保された半導体素子が配設されている半導体チップ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体チップにおいて、
前記額縁領域に配設される前記半導体素子は、MOS型トランジスタ、MOS型キャパシタ、拡散層抵抗、ゲート電極抵抗、シリサイド抵抗、又はダイオードであることを特徴とする半導体チップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体チップにおいて、
前記額縁領域に配設される前記半導体素子は、前記半導体基板、及び/又は前記半導体基板の上層の素子保護膜に形成され、
前記素子保護膜より上層に形成され、前記多層配線構造を構成する層間絶縁膜の主たる層と、前記素子保護膜とを異なる材料により構成し、
前記層間絶縁膜の主たる層は、低誘電率膜により構成することを特徴とする半導体チップ。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体チップにおいて、
前記素子保護膜が、SiO、SiC,SiCN,SiON、SiNから選ばれる単一膜、又は積層膜により構成されていることを特徴とする半導体チップ。
【請求項5】
請求項3、又は4に記載の半導体チップにおいて、
前記シールリングは、導電層が前記内部領域を囲むように枠体状に、かつ膜厚方向に重畳的に形成された枠体エリアと、導電層が間欠的に形成された間引きエリアとを備え、
前記低誘電率膜が形成された層間絶縁膜を枠体エリアとし、前記素子保護膜を前記間引きエリアとすることを特徴とする半導体チップ。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体チップにおいて、
前記枠体エリアの導電層と、前記半導体基板とが少なくとも一部の領域で電気的に接続されていることを特徴とする半導体チップ。
【請求項7】
請求項3,4、5又は6に記載の半導体チップにおいて、
前記額縁領域に形成された前記半導体素子と、前記内部領域とを接続するための配線は、前記低誘電率膜よりも下層に形成された配線を用いることを特徴とする半導体チップ。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体チップにおいて、
前記配線は、前記半導体基板の活性領域に形成された拡散層、多結晶半導体、Al系配線、Cu系配線、又は、シリサイド配線であることを特徴とする半導体チップ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体チップにおいて、
前記シールリングは、前記半導体基板の外周に沿って複数形成されていることを特徴とする半導体チップ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体チップにおいて、
前記半導体素子は、前記額縁領域を構成する各辺に配置されていることを特徴とする半導体チップ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体チップを搭載した半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−117710(P2009−117710A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291045(P2007−291045)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】