説明

半導体基板及び半導体装置並びにそれらの製造方法

【課題】多孔質層或いは多孔質領域上に良質の半導体層を形成することを目的とする。
【解決手段】半導体基板の製造方法は、第1材料で構成される基板11上に、基板11の格子定数と異なる格子定数を有する第2材料からなる層を含む第1半導体層12を形成する工程と、少なくも第1半導体層11の表面を多孔質化して多孔質層12”を形成する工程と、多孔質層12”上に第1材料で構成される第2半導体層14を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層を有する半導体基板及び半導体装置並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶基板の上に該基板と異なる材料をエピタキシャル成長させる技術は、ヘテロエピタキシャル技術として知られている。一般に、基板とその上に成長させるべき膜との結晶構造が似ていて格子定数が近ければ、基板へのヘテロエピタキシャル成長は二次元的に成長する。しかし、格子定数の違いが大きければ大きいほど、ヘテロエピタキシャル成長初期から三次元的なアイランドが形成され成長していくモードを取る。
【0003】
このようなエピタキシャル成長膜の形態変化を支配するのは、系のエネルギー安定性である。σs,σi,σfをそれぞれ基板表面、基板・成長層界面、成長層のエネルギー(歪みエネルギー+表面エネルギー+内部エネルギー)とすると、σs>σi+σfであれば、基板を露出するよりも吸着物質で基板を覆った方が安定であることを意味し、二次元層成長となる。
【0004】
一方、σs<σi+σfであれば、基板を露出させ三次元成長する方が安定となり、成長初期から三次元的なアイランドが現れる。三次元層成長モードでは、エピタキシャル成長が進むとともに三次元アイランドも次第に大きくなり、やがてアイランド同士が融合し、転位をアイランド内部とヘテロ界面近傍に発生させる。したがって、欠陥のない結晶を成長するためには、一般に三次元アイランドを作らないことが重要となる。
【0005】
特許文献1には、シリコン基板にシリコン層をエピタキシャル成長させ、そのシリコン層を陽極化成することによって多孔質層を形成し、その多孔質層の上に半導体薄膜を形成した後に、その半導体薄膜を基板から分離する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−195562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上に該基板と異なる格子定数を有する半導体層を形成した場合、その半導体層の膜厚が欠陥を生じさせる臨界膜厚よりも薄い場合には、その半導体層の格子定数が基板の格子定数に従うことによってその半導体層に歪みが生じうるが、欠陥は発生しない。しかし、成長させる半導体層の膜厚が臨界膜厚を超えると欠陥が発生する。
【0007】
例えば、歪みシリコン基板の製造においては、表面のシリコン層に歪みを与えるための歪み誘起層(例えば、SiGe層)としての半導体層を低欠陥でシリコン基板上に形成する技術が重要である。シリコン基板上に歪み誘起層を形成する途中で多孔質層を形成し、その上に更に歪み誘起層を形成すると、その多孔質層が欠陥伝播ブロック層として機能し、基板側に生じ得る欠陥が表面側に伝播することが阻止され得る。
【0008】
しかしながら、欠陥伝播ブロック層上に歪み誘起層を再成長させて歪み誘起層の厚みを増そうとすると、基板の格子定数とその再成長させる歪み誘起層の格子定数との違いによって、欠陥ブロック層の上面付近に三次元アイランドが発生し、これによって形成される欠陥が歪み誘起層内に伝播しうる。
【0009】
本発明は、上記のような課題の認識を基礎としてなされたものであり、例えば、多孔質層或いは多孔質領域上に良質の半導体層を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面に係る半導体基板の製造方法は、第1材料で構成される基板上に、前記基板の格子定数と異なる格子定数を有する第2材料からなる層を含む第1半導体層を形成する工程と、少なくも前記第1半導体層の表面を多孔質化して多孔質層を形成する工程と、前記多孔質層上に前記第1材料で構成される第2半導体層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、前記前記第2材料からなる層は、前記基板の格子定数と前記第2材料の格子定数との違いによる欠陥が発生する膜厚よりも薄いことが好ましい。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、前記製造方法は、前記第2半導体層上に前記基板の格子定数と異なる格子定数を有する第3半導体層を形成する工程を更に含みうる。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、前記製造方法は、前記第3半導体層上に前記第3半導体層の格子定数と異なる格子定数を有する第4半導体層を形成する工程を更に含みうる。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、前記第3半導体層は、例えば化合物半導体層である。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、例えば、前記第3半導体層が化合物半導体層であり、前記第4半導体層がシリコン層である。
【0016】
本発明の好適な実施形態によれば、例えば、前記基板がシリコン基板であり、前記第1半導体層がシリコン及びゲルマニウムを含む層、ガリウム及び砒素を含む層、ガリウム及び燐を含む層、並びに、ガリウム及び窒素を含む層からなるグループから選択されるいずれかの層である。
【0017】
本発明の第2の側面に係る半導体装置の製造方法は、上記の製造方法によって製造される半導体基板、例えばその第4半導体層にトランジスタを形成する工程を含む。
【0018】
本発明の第3の側面に係る半導体基板は、第1材料で構成された基板と、前記基板上に配置され、前記基板の格子定数と異なる格子定数を有する第2材料からなる層を含んで構成され少なくとも表面に多孔質化された多孔質領域を有する第1半導体層と、前記多孔質領域上に配置され、前記第1材料で構成された第2半導体層とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の側面に係る半導体装置は、上記の半導体基板と、前記半導体基板、例えばその第4半導体層に形成されたトランジスタとを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、多孔質層或いは多孔質領域上に良質の半導体層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0022】
本発明の好適な実施形態に係る半導体基板の製造方法では、シリコン(Si)等の第1材料で構成される基板上に、該基板の格子定数と異なる格子定数を有するシリコンゲルマニウム(SiGe)等の第2材料からなる層を含む第1半導体層を形成する。第2材料からなる層は、ヘテロエピタキシャル成長法によって形成され得る。ここで、第2材料からなる層は、基板の格子定数と該第1半導体層の格子定数との違いによる欠陥が発生する膜厚(臨界膜厚)よりも薄く形成されることが好ましい。
【0023】
次いで、陽極化成法によって少なくとも第1半導体層の表面を多孔質化して多孔質層を形成し、その後、多孔質層上に第1材料で第2半導体層を形成する。これによって、多孔質層の孔が封止される。
【0024】
次いで、第2半導体層上に、基板の格子定数と異なる格子定数を有するシリコンゲルマニウム(SiGe)等で第3半導体層を形成する。第3半導体層は、をヘテロエピタキシャル成長法によって形成され得る。第2半導体層を基板と同じ第1材料で形成することにより、基板と第2半導体層との間の格子不整合が抑制され、第2半導体層を多孔質層上に二次元的に成長させることができる。また、多孔質層は、欠陥伝播ブロック層として機能し、第2半導体層上に低欠陥で十分に厚い(完全緩和相当の厚さ。例えば2μm。)第3半導体層を形成することができる。
【0025】
次いで、第3半導体層上に、該第3半導体層の格子定数と異なる格子定数を有するシリコン層等の第4半導体層を形成する。第4半導体層には、格子定数の違いによって第3半導体層によって歪みが誘起され、歪み半導体層として利用され得る。
【0026】
基板がシリコン基板である場合、第1半導体層は、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含む層、ガリウム(Ga)及び砒素(As)を含む層、ガリウム(Ga)及び燐(P)を含む層、並びに、ガリウム(Ga)及び窒素(N)を含む層からなるグループから選択されるいずれかの層であることが好ましい。
【0027】
[第1実施形態]
図1〜図3を参照しながら本発明の第1実施形態に係る半導体基板の製造方法を説明する。
【0028】
まず、図1に示す工程では、第1材料としてのシリコン(Si)からなる基板11上に、第2材料としてのシリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)からなる第1半導体層としてのSiGe層12(SiGe:例えばGe=30%)をランプ加熱によるCVD法によってヘテロエピタキシャル成長させる。このヘテロエピタキシャル成長工程は、例えば、キャリアガスとしてH、第1原料ガスとして100%SiH、第2原料ガスとして10%GeHを使用してなされ得る。
【0029】
キャリアガスとしてのHの流量は、好ましくは20〜40リットル/分であり、典型的には22リットル/分である。第1原料ガスとしての100%SiHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には50sccmである。第2原料ガスとしての10%GeHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には90sccmである。
【0030】
また、このヘテロエピタキシャル成長工程において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には550℃であり、成長速度は、好ましくは10〜40nm/分であり、典型的には25nm/分である。
【0031】
また、ヘテロエピタキシャル成長工程おいて、不純物、例えばボロンをドーピングすることが好ましい。ボロンドーピングは、例えば、0.1%B/Hをチャンバに供給することによってなされうる。0.1%B/Hの流量は、好ましくは10〜100sccmであり、典型的には30sccmである。ボロン等の不純物がSiGe層12にドーピングされることによって、SiGe層12の導電率が高められる。SiGe層12の導電率の増加は、続く陽極化成におけるSiGe層12の多孔質化を容易にする。
【0032】
続いて、図2に示す工程では、SiGe層12の少なくとも表面を陽極化成により多孔質化して多孔質層12”を形成する。陽極化成は、典型的には、白金電極対を有する化成槽にフッ化水素(HF)を含む溶液を入れ、該電極対間に基板13を配置し、該電極対間に電流を流すことによりなされ得る。この陽極化成は、例えば、化成液として、42.5%のHFと9.2%のIPAと水との混合液を使用し、電流密度=1mA/cm、処理時間=30秒でなされうる。
【0033】
この陽極化成によって、約30nmの多孔質層12”が形成される。ここで、多孔質層の形成においては、SiGe12の表面側の一部のみを多孔質化してもよいし、SiGe12の全体を多孔質化してもよいし、基板11まで多孔質化してもよい。
【0034】
続いて、図3に示す工程では、多孔質層12”上に複数の半導体層を形成する。まず、多孔質層12”上に、第2半導体層として、基板11と同一材料からなるシリコン層14をエピタキシャル成長させる。このシリコン層14によって、多孔質層12”の孔が封止される。したがって、シリコン層14は、孔封止層として機能する。シリコン層(孔封止層)14は、例えば、原料ガスとして100%SiHを使用してなされうる。ここで、SiHの流量は、好ましくは100〜700sccmであり、典型的には500sccmである。また、シリコン層14の形成において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には620℃であり、成長速度は、好ましくは10〜40nm/分であり、典型的には15nm/分である。
【0035】
歪みシリコン基板を製造する場合には、シリコン層14の上に、第3半導体層として、厚いSiGe層15(例えば、Ge=20%、2μm)をヘテロエピタキシャル成長させる。このヘテロエピタキシャル成長工程は、例えば、キャリアガスとしてH、第1原料ガスとして100%SiH、第2原料ガスとして10%GeHを使用してなされ得る。
【0036】
キャリアガスとしてのHの流量は、好ましくは20〜40リットル/分であり、典型的には22リットル/分である。第1原料ガスとしての100%SiHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には50sccmである。第2原料ガスとしての10%GeHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には55sccmである。
【0037】
また、このヘテロエピタキシャル成長工程において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には620℃であり、成長速度は、好ましくは20〜100nm/分であり、典型的には50nm/分である。
【0038】
続いて、SiGe層15の上に、第4半導体層としてのシリコン層16をエピタキシャル成長させることによって、歪みシリコン基板が得られる。シリコン層16とSiGe層15とは格子定数が異なり、これによってシリコン層16に歪みが発生する。シリコン層16の成長条件は、孔封止層としてのシリコン層14の成長条件と同一にすることができる。
【0039】
[第2実施形態]
図4〜図9を参照しながら本発明の第2実施形態に係る半導体基板の製造方法を説明する。
【0040】
まず、図4に示す工程では、第1材料としてのシリコン(Si)からなる基板21上に、SiGe層22及びSi層23を含んで構成される第1半導体層を形成する。まず、シリコン基板21上に、第2材料としてのシリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)からなるSiGe層22(SiGe:例えばGe=30%)をランプ加熱によるCVD法によりヘテロエピタキシャル成長させる。この条件は、好ましくは次の通りである。このヘテロエピタキシャル成長工程は、例えば、キャリアガスとしてH、第1原料ガスとして100%SiH、第2原料ガスとして10%GeHを使用してなされ得る。
【0041】
キャリアガスとしてのHの流量は、好ましくは20〜40リットル/分であり、典型的には22リットル/分である。第1原料ガスとしての100%SiHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には50sccmである。第2原料ガスとしての10%GeHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には90sccmである。
【0042】
また、このヘテロエピタキシャル成長工程において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には550℃であり、成長速度は、好ましくは10〜40nm/分であり、典型的には25nm/分である。
【0043】
また、ヘテロエピタキシャル成長工程おいて、不純物、例えばボロンをドーピングすることが好ましい。ボロンドーピングは、例えば、0.1%B/Hをチャンバに供給することによってなされうる。0.1%B/Hの流量は、好ましくは10〜100sccmであり、典型的には30sccmである。ボロン等の不純物がSiGe層22にドーピングされることによって、SiGe層22の導電率が高められる。SiGe層22の導電率の増加は、続く陽極化成におけるSiGe層22の多孔質化を容易にする。
【0044】
続いて、SiGe層22上にSi層23をヘテロエピタキシャル成長させる。最表面にシリコン層23を形成すると、熱による構造変化を抑制することができ、より高温でのプロセスが可能となる。このヘテロエピタキシャル成長工程は、例えば、原料ガスとして100%SiHを使用してなされ得る。100%SiHの流量は、好ましくは100〜700sccmであり、典型的には500sccmである。また、このヘテロエピタキシャル成長工程において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には550℃であり、成長速度は、好ましくは1〜10nm/分であり、典型的には2nm/分である。
【0045】
続いて、図5に示す工程では、第1半導体層少なくとも表面側を陽極化成により多孔質化して多孔質層22”、23’を形成する。陽極化成は、典型的には、白金電極対を有する化成槽にフッ化水素(HF)を含む溶液を入れ、該電極対間に基板24を配置し、該電極対間に電流を流すことによりなされ得る。この陽極化成は、例えば、化成液として、42.5%のHFと9.2%のIPAと水との混合液を使用し、電流密度=1mA/cm、処理時間=30秒でなされうる。
【0046】
この陽極化成によって、約30nmの多孔質が形成される。ここで、多孔質層の形成においては、シリコン層23の表面側の一部のみを多孔質化してもよいし、シリコン層23の全体を多孔質化してもよいし、更に、SiGe層22の一部又は全体を多孔質化してもよいし、更に、基板21まで多孔質化してもよい。
【0047】
続いて、図6に示す工程では、多孔質層23’上に複数の半導体層を形成する。まず、多孔質層23’上に、第2半導体層として、基板21と同一材料からなるシリコン層24をエピタキシャル成長させる。このシリコン層24によって、多孔質層22”の孔が封止される。したがって、シリコン層24は、孔封止層として機能する。シリコン層(孔封止層)24は、例えば、原料ガスとして100%SiHを使用してなされうる。ここで、SiHの流量は、好ましくは100〜700sccmであり、典型的には500sccmである。また、シリコン層14の形成において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には620℃であり、成長速度は、好ましくは10〜40nm/分であり、典型的には15nm/分である。
【0048】
図7(a)は、多孔質層23’の孔をSiGeで封止した基板を斜め方向ら見たSEM像であり(比較例)、図7(b)は、この実施形態にしたがって多孔質層23’の孔をSi(Si層24)で封したした後の基板を斜め方向ら見たSEM像である。多孔質層23’を下地基板であるシリコン基板21と異なる材料であるSiGe封止層で封止した場合には、シリコン基板21とSiGe封止層との間の格子不整合によって、図7(a)に示すように、SiGe封止層が三次元的に成長する。一方、多孔質層23’をシリコン基板21と同一材料であるSi層24で封止した場合には、シリコン基板21とSi層24との間に格子不整合を生じないので、図7(b)に示すように、Si封止層24が2次元的に成長する。
【0049】
歪みシリコン基板を製造する場合には、シリコン層24の上に、第3半導体層として、厚いSiGe層25(例えば、Ge=20%、2μm)をヘテロエピタキシャル成長させる。このヘテロエピタキシャル成長工程は、例えば、キャリアガスとしてH、第1原料ガスとして100%SiH、第2原料ガスとして10%GeHを使用してなされ得る。
【0050】
キャリアガスとしてのHの流量は、好ましくは20〜40リットル/分であり、典型的には22リットル/分である。第1原料ガスとしての100%SiHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には50sccmである。第2原料ガスとしての10%GeHの流量は、好ましくは20〜100sccmであり、典型的には55sccmである。
【0051】
また、このヘテロエピタキシャル成長工程において、チャンバ圧力は、好ましくは10〜100Torrであり、典型的には30Torrであり、温度は、好ましくは500〜700℃であり、典型的には620℃であり、成長速度は、好ましくは20〜100nm/分であり、典型的には50nm/分である。
【0052】
続いて、SiGe層25の上に、第4半導体層としてのシリコン層26をエピタキシャル成長させることによって、歪みシリコン基板が得られる。シリコン層12とSiGe層25とは格子定数が異なり、これによってシリコン層26に歪みが発生する。シリコン層26の成長条件は、孔封止層としてのシリコン層24の成長条件と同一にすることができる。
【0053】
[応用例(半導体装置)]
以下、第1実施形態及び第2実施形態に代表される製造方法によって製造されうる半導体基板の応用例として、第1実施形態の製造方法によって製造されうる半導体基板を使用した半導体装置及びその製造方法を説明する。
【0054】
図8〜図11は、第1実施形態の製造方法によって製造されうる半導体基板を使用した半導体装置の製造方法を模式的に示す図である。まず、図8に示す工程では、半導体層16の非活性領域とすべき領域に素子分離領域54を形成し、半導体層16の活性領域とすべき領域にゲート絶縁膜56を形成する。
【0055】
ゲート絶縁膜56の材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、及びこれらの混合物ガラス等が好適である。ゲート絶縁膜56は、例えば、半導体層16の表面を酸化させたり、CVD法又はPVD法により半導体層16の表面に該当する物質を堆積させたりすることにより形成され得る。
【0056】
次いで、ゲート絶縁膜56上にゲート電極55を形成する。ゲート電極55は、例えば、P型又はN型不純物がドープされた多結晶シリコンや、タングステン、モリブデン、チタン、タンタル、アルミニウム、銅などの金属又はこれらの少なくとも1種を含む合金や、モリブデンシリサイド、タングステンシリサイド、コバルトシリサイドなどの金属珪化物や、チタンナイトライド、タングステンナイトライド、タンタルナイトライドなどの金属窒化物などで構成され得る。
【0057】
ゲート絶縁膜56は、例えばポリサイドゲートのように、互いに異なる材料からなる複数の層を積層して形成されてもよい。ゲート電極55は、例えば、サリサイド(セルフアラインシリサイド)と呼ばれる方法で形成されてもよいし、ダマシンゲートプロセスと呼ばれる方法で形成してもよいし、他の方法で形成してもよい。以上の工程により図8に示す構造体が得られる。
【0058】
次いで、図9に示す工程では、燐、砒素、アンチモンなどのN型不純物又はボロンなどのP型不純物を半導体層16に導入することにより、比較的低濃度のソース、ドレイン領域58を形成する。不純物は、例えば、イオン打ち込み及び熱処理などにより導入することができる。
【0059】
次いで、ゲート電極55を覆うようにして絶縁膜を形成した後に、これをエッチバックすることにより、ゲート電極59の側部にサイドウォール59を形成する。
【0060】
次いで、再び上記と同一の導電型の不純物を半導体層16に導入し、比較的高濃度のソース、ドレイン領域57を形成する。以上の工程により図9に示す構造体が得られる。
【0061】
次いで、図10に示す工程では、ゲート電極55の上面並びにソース及びドレイン領域57の上面に金属珪化層60を形成する。金属珪化層60の材料としては、例えば、ニッケルシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、モリブデンシリサイド、タングステンシリサイドなどが好適である。これらの珪化物は、ゲート電極55の上面並びにソース及びドレイン領域57の上面を覆うように金属を堆積させて、その後、熱処理を施すことによって、該金属とその下部のシリコンとを反応させた後に、該金属のうち未反応部分を硫酸などのエッチャントで除去することによって形成することができる。ここで、必要に応じて、珪化物層の表面を窒化させてもよい。以上の工程により図10に示す構造体が得られる。
【0062】
次いで、図11に示す工程では、シリサイド化したゲート電極の上面並びにソース及びドレイン領域の上面を覆うように絶縁膜61を形成する。絶縁膜61の材料としては、燐及び/又はボロンを含む酸化シリコンなどが好適である。
【0063】
次いで、必要に応じて、CMP(chemical mechanical polishing)法により表面を平坦化した後に、絶縁膜61にコンタクトホールを形成する。KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザ、電子ビーム、X線等を利用したフォトリソグラフィー技術を適用すると、一辺が0.25ミクロン未満の矩形のコンタクトホール、又は、直径が0.25ミクロン未満の円形のコンタクトホールを形成することができる。
【0064】
次いで、コンタクトホール内に導電体を充填する。導電体の充填方法としては、バリアメタル62となる高融点金属やその窒化物の膜をコンタクトホールの内壁に形成した後に、タングステン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの導電体63を、CVD法、PVD(physical vapor deposition)法、めっき法などを利用して堆積させる方法が好適である。ここで、絶縁膜61の上面よりも高く堆積した導電体をエッチバック法やCMP法により除去してもよい。また、導電体の充填に先立って、コンタクトホールの底部に露出したソース及びドレイン領域の珪化物層の表面を窒化させてもよい。以上の工程により基板にFET(field effect transistor)等のトランジスタ(ここでは絶縁ゲート型トランジスタ)を作り込むことができ、図11に示す構造のトランジスタを有する半導体装置が得られる。
【0065】
この実施形態によれば、歪みシリコン層16を利用することによって、半導体層のキャリア移動度を向上させることができるため、半導体層に形成されたトランジスタ等のデバイスを高速駆動させることができる。
【0066】
なお、第2実施形態の製造方法によって製造されうる半導体基板を使用する場合においても、上記と同様のプロセスによって半導体装置を製造することができる。
【0067】
以上のように、第1及び第2実施形態に代表される製造方法によって製造されうる半導体基板は、歪み半導体層に絶縁ゲート型トランジスタ等の回路素子を形成するための基板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態の半導体基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図2】第1実施形態の半導体基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図3】第1実施形態の半導体基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図4】第2実施形態の半導体基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図5】第2実施形態の半導体基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図6】第2実施形態の半導体基板の製造方法を模式的に示す図である。
【図7】多孔質層の孔の封止後の基板のSEM像である。
【図8】半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【図9】半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【図10】半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【図11】半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0069】
11 シリコン基板
12 第1半導体層(ヘテロエピタキシャル成長層)
12’ 第1半導体層(ヘテロエピタキシャル成長層)
12” 多孔質層
14 第2半導体層(シリコン層)
15 第3半導体層(ヘテロエピタキシャル成長層)
16 第4半導体層(歪みシリコン層)
21 シリコン基板
22 第1半導体層(ヘテロエピタキシャル成長層)
22’ 第1半導体層の第1層(ヘテロエピタキシャル成長層)
22” 第1半導体層の第2層(シリコン層)
23’ 多孔質シリコン層
24 第2半導体層(シリコン層)
25 第3半導体層(ヘテロエピタキシャル成長層)
26 第4半導体層(歪みシリコン層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の製造方法であって、
第1材料で構成される基板上に、前記基板の格子定数と異なる格子定数を有する第2材料からなる層を含む第1半導体層を形成する工程と、
少なくも前記第1半導体層の表面を多孔質化して多孔質層を形成する工程と、
前記多孔質層上に前記第1材料で構成される第2半導体層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2材料からなる層が、前記基板の格子定数と前記第2材料の格子定数との違いによる欠陥が発生する膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2半導体層上に前記基板の格子定数と異なる格子定数を有する第3半導体層を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記第3半導体層上に前記第3半導体層の格子定数と異なる格子定数を有する第4半導体層を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記第3半導体層が化合物半導体層であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記第3半導体層が化合物半導体層であり、
前記第4半導体層がシリコン層である、
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記基板がシリコン基板であり、
前記第1半導体層がシリコン及びゲルマニウムを含む層、ガリウム及び砒素を含む層、ガリウム及び燐を含む層、並びに、ガリウム及び窒素を含む層からなるグループから選択されるいずれかの層であり、
前記第2半導体層がシリコン層である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
半導体装置の製造方法であって、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される半導体基板にトランジスタを形成する工程を含む、
ことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項9】
半導体基板であって、
第1材料で構成された基板と、
前記基板上に配置され、前記基板の格子定数と異なる格子定数を有する第2材料からなる層を含で構成され少なくとも表面に多孔質化された多孔質領域を有する第1半導体層と、
前記多孔質領域上に配置され、前記第1材料で構成された第2半導体層と、
を含むことを特徴とする半導体基板。
【請求項10】
半導体装置であって、
請求項9に記載された半導体基板と、
前記半導体基板に形成されたトランジスタと、
を含むことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−253605(P2006−253605A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71739(P2005−71739)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】