説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】ゲート電極とチャネル層との間の障壁層に低抵抗領域を備えた構成において、ゲートリーク電流を防止することによりドレイン電流の最大値の向上を図ることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】化合物半導体で構成されたチャネル層14と、チャネル層14上に設けられた上部障壁層15とを備え、上部障壁層15における表面層には、不純物を含有することにより周囲よりも低抵抗に保たれた低抵抗領域15gが設けられている。また、この低抵抗領域15gを挟んだ位置において上部障壁層15に接続されたソース電極17sおよびドレイン電極17dを備えている。さらに、低抵抗領域15g上に設けられたゲート絶縁膜18と、このゲート絶縁膜18を介して低抵抗領域15g上に設けられたゲート電極19とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、特にはゲート電極とチャネル層との間の障壁層に低抵抗領域を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの移動体通信システムにおいては、携帯通信端末の小型化および低消費電力化が強く求められている。これらを実現するためには、例えばアンテナスイッチに関し、オン抵抗Ronの低減などが必要である。このようなアンテナスイッチ用として実用化されている半導体装置の一つに、接合型電界効果トランジスタ(JPHEMT;Junction Pseudo-morphic High Electron Mobility Transistor)がある。
【0003】
JPHEMTは、pn接合およびヘテロ接合を利用して電流変調を行う半導体装置である。このような半導体装置は、例えばInGaAsよりなるチャネル層と、チャネル層(InGaAs)よりもバンドギャップの広いAlGaAsよりなる障壁層(AlGaAs)とのヘテロ接合を備えている。障壁層(AlGaAs)内においてチャネル層と反対の表面層には不純物を含有する低抵抗領域が設けられ、この低抵抗領域にゲート電極が接続されている。また低抵抗領域およびゲート電極の両脇における障壁層には、ソース電極およびドレイン電極がオーミック接合されている。
【0004】
以上のような構成の半導体装置では、チャネル層における障壁層側の界面に、キャリアとなる電子が高濃度で閉じ込められた二次元電子ガス層が形成される。そしてゲート電圧により二次元電子ガス層の濃度を制御することにより、低抵抗領域下方のチャネル層部分を介してソース電極−ドレイン電極間に流れる電流が変調される(以上、例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−150264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した半導体装置においては、チャネル層の不純物濃度を低くすることにより、このチャネル層を介してソース電極−ドレイン電極間に流れるキャリア(電子)の移動度を高くすることができる。しかしながら、障壁層内に低抵抗領域を設けたことによってpn接合が形成されるため、ビルトイン電圧を上回る正電圧を印加するとpn接合間に順方向電流が流れ、チャネル層を介することなくゲート電極とソース電極/ドレイン電極と間に流れるゲートリーク電流が大きくなる。
【0007】
そこで本技術は、ゲート電極とチャネル層との間の障壁層に低抵抗領域を備えた構成において、ゲートリーク電流を防止することによりドレイン電流の最大値の向上を図ることが可能な半導体装置を提供することを目的とする。また本技術は、この半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本技術の半導体装置は、化合物半導体で構成されたチャネル層と、チャネル層上に設けられた障壁層とを備えている。障壁層は、チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されている。この障壁層における表面層には、不純物を含有することにより周囲よりも低抵抗に保たれた低抵抗領域が設けられている。また、この低抵抗領域を挟んだ位置において障壁層に接続されたソース電極およびドレイン電極を備えている。そして特に、低抵抗領域上には、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられている。
【0009】
このような構成の半導体装置は、チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成された障壁層を、当該チャネル層に対して接合させたことにより、チャネル層にはキャリアが高濃度で閉じ込められた二次元電子ガス層が形成される。そして、ゲート電極に印加するゲート電圧によって、ゲート電極下の低抵抗領域に対応するチャネル層部分におけるキャリア欠乏領域が拡大または縮小され、チャネル層を介してソース電極−ドレイン電極間に流れる電流が変調される。そして特に、低抵抗領域の上部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を設けた構成である。これにより、ゲート電極に、低抵抗領域とその周囲の領域に対する順方向電圧を印加した場合であっても、ゲート電極とソース電極/ドレイン電極との間にゲートリーク電流が流れることを防止できる。
【0010】
また本技術は、上述した構成の半導体装置の製造方法でもあり、次の手順を行う。まず、化合物半導体で構成されたチャネル層の上部に、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されると共に、表面層に不純物を含有する低抵抗領域を備えた障壁層を形成する。また、低抵抗領域を挟む前記障壁層上の各位置にソース電極およびドレイン電極を形成する。さらに、低抵抗領域の上部にゲート絶縁膜を形成し、その後ゲート絶縁膜を介して前記低抵抗領域の上部にゲート電極を形成する。
【0011】
このような製造方法により、上述した構成の半導体装置が得られる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した本技術によれば、ゲート電極とチャネル層との間に障壁層に低抵抗領域を備えた構成の半導体装置において、ゲートリーク電流を防止してドレイン電流の最大値の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の半導体装置のオフ動作時におけるエネルギーバンド構成図である。
【図3】第1実施形態の半導体装置のオン動作時におけるエネルギーバンド構成図である。
【図4】第1実施形態の半導体装置のオフ動作時におけるキャリア欠乏領域の形成を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の半導体装置の製造手順を示す断面工程図(その1)である。
【図6】第1実施形態の半導体装置の製造手順を示す断面工程図(その2)である。
【図7】第2実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図8】第2実施形態の半導体装置のオフ動作時におけるエネルギーバンド構成図である。
【図9】第3実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図10】第4実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図11】第5実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図12】第6実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図13】第7実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図14】第7実施形態の半導体装置の製造手順を示す断面工程図(その1)である。
【図15】第7実施形態の半導体装置の製造手順を示す断面工程図(その2)である。
【図16】第8実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図17】第9実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図18】第9実施形態の半導体装置の製造手順を示す断面工程図である。
【図19】第10実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図20】第10実施形態の半導体装置の製造手順を示す断面工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
1.第1実施形態(半導体装置の構成例および製造方法)
2.第2実施形態(障壁層を積層構成とした例)
3.第3実施形態(障壁層が高抵抗領域のみで構成された例)
4.第4実施形態(障壁層内のキャリア供給領域と低抵抗領域とを接合させた例)
5.第5実施形態(障壁層内のキャリア供給領域と低抵抗領域との間を低抵抗とした例)6.第6実施形態(障壁層とソース電極およびドレイン電極との間にキャップ層を設けた例)
7.第7実施形態(障壁層の全面をゲート絶縁膜で覆った例)
8.第8実施形態(低抵抗領域をゲート電極で覆った例)
9.第9実施形態(障壁層の上部に低抵抗領域を積層させた例)
10.第10実施形態(低抵抗領域とは逆導電型のソース領域およびドレイン領域を設けた例)
11.変形例
12.適用例(無線通信装置)
尚、各実施形態において共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
≪1.第1実施形態≫
本第1実施形態においては、各図に基づいて、本技術を適用した第1実施形態の半導体装置の構成、第1実施形態の半導体装置の動作
、第1実施形態の半導体装置の製造方法、および第1実施形態の半導体装置の作用効果の順に説明を行う。
【0016】
<第1実施形態の半導体装置の構成>
図1は、本技術を適用した第1実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下のこの図に基づいて第1実施形態の半導体装置の詳細な構成を説明する。
【0017】
図1に示す第1実施形態の半導体装置1-1は、ゲート電極とチャネル層との間に障壁層を備え、さらに障壁層内に逆導電型の低抵抗領域を設けた、いわゆるJPHEMTである。この半導体装置1-1は、化合物半導体からなる基板11上に、各化合物半導体材料からなるバッファ層12、下部障壁層13、チャネル層14、および上部障壁層15がこの順に積層されている。下部障壁層13内にはキャリア供給領域13aが設けられている。一方、上部障壁層15内にはキャリア供給領域15aと共に低抵抗領域15gが設けられている。
【0018】
以上のような化合物半導体材料からなる各層の積層体上には、絶縁膜16が設けられている。この絶縁膜16には、ソース開口16s/ドレイン開口16d、およびこれらの間のゲート開口16gが設けられている。またこのような絶縁膜16上には、ソース開口16sおよびドレイン開口16dを介して上部障壁層15に接続されたソース電極17s/ドレイン電極17dが設けられている。
【0019】
また特に本第1実施形態においては、ゲート開口16gの底部に露出している低抵抗領域15g上に、ゲート絶縁膜18を介してゲート電極19が設けられているところが特徴的である。
【0020】
以下、半導体装置1-1を構成する上記の各構成要素の詳細な構成を、基板11側から順次説明する。
【0021】
[基板11]
基板11は、半絶縁性の化合物半導体材料で構成されている。このような基板11は、例えばIII−V族化合物半導体材料で構成され、例えば半絶縁性の単結晶GaAs基板や、InP基板が用いられる。
【0022】
[バッファ層12]
バッファ層12は、例えば基板11上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層で構成され、基板11および下部障壁層13に対して、良好に格子整合する化合物半導体を用いて構成される。例えば、基板11が単結晶GaAs基板からなる場合、このようなバッファ層12の一例として、不純物を添加しないu−GaAs(u−は不純物を添加していないことを表す;以下同様)のエピタキシャル成長層が用いられる。
【0023】
[下部障壁層13]
下部障壁層13は、バッファ層12および上部のチャネル層14に対して良好に格子整合する化合物半導体を用いて構成されている。このような下部障壁層13の一例として、AlGaAs混晶のエピタキシャル成長層が用いられる。ここでは一例として、III族元素におけるアルミニウム(Al)の組成比が0.2である、Al0.2Ga0.8As混晶により下部障壁層13が構成されていることとする。
【0024】
このような下部障壁層13は、キャリアを供給する不純物を含むキャリア供給領域13aを有している。ここでは、キャリアとして電子が用いられることとし、電子を供給する不純物としてn型不純物を含むn型のキャリア供給領域13aが、下部障壁層13の膜厚方向の中間部分に配置されている。Al0.2Ga0.8As混晶により構成された下部障壁層13におけるn型不純物としては、シリコン(Si)が用いられる。
【0025】
また、下部障壁層13におけるキャリア供給領域13a以外の膜厚部分は、不純物が添加されていないか、低濃度のn型不純物またはp型不純物を含有する高抵抗領域13b,13b’として形成されていて良い。これらの高抵抗領域13b,13b’は、不純物濃度が1×1017個/cm以下、比抵抗が1×10-2Ωcm以上であることが好ましい。
【0026】
以上のような下部障壁層13の具体的な構成の一例は、次のようである。バッファ層12側に膜厚200nm程度で不純物を含有しない高抵抗領域13bが設けられている。この上部に、膜厚4nm程度でシリコン(Si)を1.6×1012個/cm程度含有するキャリア供給領域13aが積層されている。さらにこの上部に膜厚2nm程度で不純物を含有しない高抵抗領域13b’が積層されている。
【0027】
尚、下部障壁層13は、高抵抗領域13b,13b’を含まず、全領域がキャリア供給領域13aとして構成されていても良い。
【0028】
[チャネル層14]
チャネル層14は、ソース電極17sとドレイン電極17dとの間の電流通路であって、下部障壁層13のキャリア供給領域13a、および後述する上部障壁層15のキャリア供給領域15aから供給されたキャリアが蓄積される層である。このようなチャネル層14は、下部障壁層13に対してヘテロ接合する化合物半導体で構成され、下部障壁層13に対して良好に格子整合している。またチャネル層14は、下部障壁層13とのヘテロ接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、下部障壁層13の界面領域を構成する化合物半導体材料におけるキャリア走行側のエネルギー帯よりも、チャネル層内真性フェルミ準位に近い化合物半導体を用いて構成されていることとする。このため、下部障壁層13は、チャネル層14との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層14よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されていることになる。
【0029】
以上を言い換えれば、チャネル層14は、下部障壁層13とのヘテロ接合部における多数キャリア走行側のエネルギー帯が、下部障壁層13の界面領域を構成する化合物半導体材料における多数キャリア走行側のエネルギー帯よりも、少数キャリア走行側のエネルギー帯に近い化合物半導体を用いて構成されていることとする。尚、図2に示すように、チャネル層内真性フェルミ準位Ef14は、チャネル層14のコンダクションバンドの最低エネルギー(以下、コンダクションバンドエネルギーEcと記す)と、バレンスバンドの最高エネルギー(以下、バレンスバンドエネルギーEvと記す)との中間に位置している。
【0030】
ここで、キャリアが電子である場合、キャリア走行側のエネルギー帯はコンダクションバンド(伝導帯)である。このため、チャネル層14は、下部障壁層13との接合部において、下部障壁層13を構成する化合物半導体材料よりも、少なくともコンダクションバンドエネルギーEcが低いIII−V族化合物半導体材料を用いて構成される。このようなチャネル層14は、下部障壁層13との接合部において、下部障壁層13に対してコンダクションバンドエネルギーEcの差が大きいほど良い。
【0031】
一方、キャリアが正孔である場合、キャリア走行側のエネルギー帯はバレンスバンド(価電子帯)である。このため、チャネル層14は、下部障壁層13との接合部において、下部障壁層13を構成する化合物半導体材料よりも、少なくともバレンスバンドエネルギーEvが高い化合物半導体材料を用いて構成される。このようなチャネル層14は、下部障壁層13との接合部における下部障壁層13との間のバレンスバンドエネルギーEvの差が大きいほど良い。尚、以下においてはキャリアが電子である場合を例示して説明を行うが、キャリアが正孔である場合は不純物およびエネルギーバンドの説明は逆導電型にすれば良い。
【0032】
以上のようなチャネル層14は、例えば下部障壁層13がAl0.2Ga0.8As混晶により構成されている場合、InGaAs混晶により構成される。この場合、インジウム(In)の組成比を高くするほどInGaAs混晶におけるバンドギャップを狭くでき、AlGaAs混晶からなる下部障壁層13とのコンダクションバンドエネルギーEcの差を大きくできる。このため、チャネル層14を構成するInGaAs混晶は、III族元素におけるインジウム(In)の組成比を0.1以上として良い。
【0033】
以上のようなチャネル層14の一例として、III族元素におけるインジウム(In)の組成比が0.2であるIn0.2Ga0.8As混晶により構成される。これによりチャネル層14は、下部障壁層13に対する格子整合性を確保しつつ十分なコンダクションバンドエネルギーEcの差が得られたものとなる。
【0034】
またこのようなチャネル層14は、不純物を添加しないu−InGaAs混晶層であって良い。これにより、チャネル層14におけるキャリアの不純物散乱が抑えられ、高移動度でのキャリア移動が実現される。
【0035】
尚、チャネル層14は、15nm以下の膜厚で形成されたエピタキシャル成長層であって良く、これによって結晶性が確保されキャリアの走行性に優れた層とすることができる。
【0036】
[上部障壁層15]
上部障壁層15は、チャネル層14に対して良好に格子整合している。この上部障壁層15は、チャネル層14との接合部において、チャネル層14を構成する化合物半導体材料よりも、キャリア走行側のエネルギー帯がチャネル層内真性フェルミ準位Ef14から遠い化合物半導体を用いて構成されている。つまり上部障壁層15は、チャネル層14との接合部において、チャネル層14を構成する化合物半導体材料よりも、多数キャリア走行側のエネルギー帯が、チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体を用いて構成されていることとする。キャリアが電子である場合、上部障壁層15は、チャネル層14を構成する化合物半導体材料よりも、コンダクションバンドエネルギーEcが高いIII−V族化合物半導体材料を用いて構成される。このような上部障壁層15は、チャネル層14との接合部におけるチャネル層14との間のコンダクションバンドエネルギーEcの差が大きいほど良い。
【0037】
以上のような上部障壁層15は、チャネル層14がInGaAs混晶により構成されていれば、例えばInGaAs混晶よりもバンドギャップが広いAlGaAs混晶により構成される。この場合、アルミニウム(Al)の組成比を低く保つことで、いわゆるソース抵抗が増大することを防止でき、また次に説明する低抵抗領域15gを拡散によって形成する場合の拡散速度を抑えて制御性を確保できる。このため、上部障壁層15を構成するAlGaAs混晶は、III族元素におけるアルミニウム(Al)の組成比を0.25以下として良い。
【0038】
以上のような上部障壁層15の一例として、III族元素におけるアルミニウム(Al)の組成比が0.2であるAl0.2Ga0.8As混晶により構成されている。これにより、チャネル層14との格子整合も確保される。尚、このような上部障壁層15は、下部障壁層13と同一組成である必要はなく、それぞれに適した組成のAlGaAs混晶によって構成されれば良い。例えば上部障壁層15は、拡散による低抵抗領域15gを形成する必要がない下部障壁層13と比較して、上部障壁層15におけるアルミニウム(Al)の組成比が低めに設定されていて良い。
【0039】
このような上部障壁層15は、キャリアを供給する不純物を含むキャリア供給領域15aを有している。ここでは、電子を供給するn型不純物としてシリコン(Si)を含むn型のキャリア供給領域15aが、上部障壁層15の膜厚方向の中間部分に膜厚4nm程度で配置されている。
【0040】
また、上部障壁層15におけるキャリア供給領域15a以外の膜厚部分は、不純物が添加されていないか、低濃度の不純物を含有する高抵抗領域15b,15b’として形成されていて良い。これらの高抵抗領域15b,15b’が不純物を含有する場合、チャネル層14側の高抵抗領域15bは、n型不純物またはp型不純物を含有する。これに対して、チャネル層14と反対側、すなわち上部障壁層15の表面側を構成する高抵抗領域15b’は、n型不純物を含有するまたこれらの高抵抗領域15b,15b’は、不純物濃度が1×1017個/cm以下、比抵抗が1×10-2Ωcm以上であることが好ましい。
【0041】
以上のような上部障壁層15の具体的な構成の一例は、次のようである。チャネル層14側に、膜厚2nm程度で不純物を含有しない高抵抗領域15bが設けられている。この上部に、膜厚4nm程度でシリコン(Si)を1.6×1012個/cm程度含有するキャリア供給領域15aが積層されている。さらにこの上部に膜厚30nm程度で不純物を含有しない高抵抗領域15b’が積層されている。
【0042】
尚、チャネル層14がInGaAs混晶で構成されている場合、上部障壁層15はAlGaAs混晶に限定されず、III−V族化合物半導体であるIn(AlGa)AsP混晶で構成されて構成されていても良い。これにより、InGaAs混晶で構成されたチャネル層14におけるInの組成比を大きくでき、チャネル層14においてのキャリアの移動度を高めることができる
【0043】
また、上部障壁層15は、下部障壁層13とは異なり、全領域がキャリア供給領域として構成されることはない。
【0044】
[低抵抗領域15g]
低抵抗領域15gは、上部障壁層15内であって、チャネル層14とは反対側の表面層において、上部障壁層15のキャリア供給領域15aよりも表面側の浅い位置で、キャリア供給領域15aに対して間隔を有して設けられている。この低抵抗領域15gは、チャネル層14を走行するキャリアとは逆導電型の不純物を含有し、周囲よりも低抵抗に保たれている。したがって、キャリアが電子の場合、低抵抗領域15gにはp型不純物が拡散されていることとなる。
【0045】
このような低抵抗領域15gの厚さとp型不純物濃度の値は、これを囲む高抵抗領域15b’の厚さとn型不純物濃度の値と共に、半導体装置1-1が次のような状態となるように設定されている。すなわちこれらの値は、ゲート電極19に負の電圧を印加した場合にチャネル層14内の電子が枯渇し、一方ゲート電極19に正の電圧を印加した場合には低抵抗領域15gが空乏化するように、先の厚さと濃度が設定されている。
【0046】
ここでゲート電極19に負の電圧を印加した場合のチャネル層14内の電子の枯渇は、低抵抗領域15gと上部障壁層15の高抵抗領域15b’との間のpn接合の空乏層による。一方、ゲート電極19に正の電圧を印加した場合の低抵抗領域15gの空乏化は、p型の低抵抗領域15gとゲート絶縁膜18とゲート電極19とによるMIS構造によって発生する空乏層による。そしてp型の低抵抗領域15gが空乏化することにより、低抵抗領域15gと高抵抗領域15b’との間の空乏層が消滅し、チャネル層14内の電子の枯渇が解消され、チャネル層14内に電子が蓄積される。
【0047】
このような低抵抗領域15gには、一例として、1×1018個/cm以上のp型不純物が含有されていて良く、一例として1×1019個/cm程度である。尚、Al0.2Ga0.8As混晶やIn(AlGa)AsP混晶により構成された上部障壁層15におけるp型不純物としては、亜鉛(Zn)が用いられる。
【0048】
[絶縁膜16]
絶縁膜16は、上部障壁層15の全面を覆う状態で設けられている。この絶縁膜16は、上部障壁層15を構成する化合物半導体に対して絶縁性を有し、かつ、イオンなどの不純物より下地(ここでは上部障壁層15)の表面を保護する機能を持つ材料が用いられ、例えば厚さが200nmの窒化シリコン(Si)により構成されている。
【0049】
このような絶縁膜16には、上部障壁層15に設けた低抵抗領域15gを挟む位置で、低抵抗領域15gに重ならない位置に、上部障壁層15の高抵抗領域15b’に達するソース開口16s/ドレイン開口16dが設けられている。また、ソース開口16sとドレイン開口16dとの間には、低抵抗領域15gを露出する形状のゲート開口16gが設けられている。ゲート開口16gは、ここでは一例として底部に低抵抗領域15gのみを露出させた開口幅であることとする。
【0050】
以上のソース開口16s、ドレイン開口16d、およびゲート開口16gは、それぞれが独立した開口部分として、絶縁膜16に設けられている。
【0051】
[ソース電極17s/ドレイン電極17d]
ソース電極17sおよびドレイン電極17dは、低抵抗領域15gを挟む位置において、それぞれがソース開口16sおよびドレイン開口16dを介して上部障壁層15にオーミック接合されている。このようなソース電極17sおよびドレイン電極17dは、上部障壁層15側から順に、金−ゲルマニウム(AuGe)、ニッケル(Ni)、および金(Au)を順次積層して合金化したものにより構成されている。ソース電極17sおよびドレイン電極17dの各膜厚は、例えばそれぞれ1000nmである。
【0052】
[ゲート絶縁膜18]
ゲート絶縁膜18は、絶縁膜16に形成されたゲート開口16gの底部に設けられ、ゲート開口16gを完全に塞ぐ状態で設けられていて良く、端縁が絶縁膜16上に積層されている。このようなゲート絶縁膜18は、酸化物または窒化物を用いて構成され、例えば厚さが10nmの酸化アルミニウム(Al)により構成されている。
【0053】
[ゲート電極19]
ゲート電極19は、ゲート絶縁膜18を介して低抵抗領域15gの上部に設けられている。ここでは、ゲート電極19は、ゲート開口16gを埋め込む状態で設けられ、ゲート開口16gの底部における全域において低抵抗領域15g上に設けられていることとする。このようなゲート電極19は、基板11側からチタン(Ti)、白金(Pt)、および金(Au)を順次積層した構成となっている。
【0054】
[バンド構造]
図2は、上記構成の半導体装置1-1のゲート電極19下方におけるエネルギーバンド構成図であり、ゲート電圧Vg=0V程度を印加したオフ動作時のものである。尚、このエネルギーバンド構成図は、下部障壁層13および上部障壁層15をAl0.2-Ga0.8As混晶によりそれぞれ構成し、チャネル層14をIn0.2Ga0.8As混晶により構成した場合について表している。
【0055】
図2に示すように、先の図1を用いて説明した構成の半導体装置1-1は、バンドギャップの狭いチャネル層14を、これよりもバンドギャップの広い下部障壁層13と上部障壁層15とで挟んだ構成である。このため、チャネル層14は、下部障壁層13および上部障壁層15のキャリア供給領域13a,15aからキャリアが供給された場合に、このキャリアが蓄積される二次電子ガス層となる。
【0056】
また、チャネル層14と上部障壁層15とのヘテロ接合部において、キャリア走行側となるコンダクションバンドの不連続量ΔEcが十分に大きい(ここでは0.31eV)。さらに、上部障壁層15におけるコンダクションバンドエネルギーEcの極小点と、チャネル層14内におけるコンダクションバンドエネルギーEcとの差も十分に大きく(ここでは0.20eV以上)なるように構成されている。このため、上部障壁層15内に分布する電子数はチャネル層14内に分布する電子数に比べて無視できる程度に少なくなっている。
【0057】
<第1実施形態の半導体装置の動作>
次に、図1を用いて説明した上記構成の半導体装置1-1の動作を、先の図2と共に、図3のエネルギーバンド構成図、および図4の半導体装置1-1の断面図を用いて説明する。尚、図3はゲート電圧Vg=3V程度を印加したオン動作時のものであって、図2と同様に下部障壁層13および上部障壁層15をAl0.2-Ga0.8As混晶によりそれぞれ構成し、チャネル層14をIn0.2Ga0.8As混晶により構成した場合について表している。
【0058】
先ず、図1および図2を参照し、半導体装置1-1におけるゲート電極19に、ゲート電圧Vg=0V程度を印加した状態では、ゲート絶縁膜18下のp型の低抵抗領域15g内のバレンスバンドエネルギーEvは一定であり、フェルミレベルEfとほぼ一致している。尚、ゲート電圧Vgを負バイアスとした場合、p型の低抵抗領域15gの表面で正孔の蓄積が起こるため、表面付近のコンダクションバンドエネルギーEc、およびバレンスバンドエネルギーEvが低くなるものの、チャネル層14付近のバンド形状は図2と同様である。
【0059】
またこの状態においては、図4に示すように、半導体装置1-1における低抵抗領域15gの直下に位置するチャネル層14内の領域に、電子が空乏化したキャリア欠乏領域Aが形成され、チャネル層14は高抵抗になる。これにより、ソース電極17s−ドレイン電極17d間には、チャネル層14を介してドレイン電流Idが流れることはなく、オフ状態となる。
【0060】
一方、図1および図3を参照し、半導体装置1-1におけるゲート電極19に、ゲート電圧Vg=3.0V程度の正のゲート電圧Vgを印加した状態では、ゲート絶縁膜18を介してp型の低抵抗領域15gのコンダクションバンドエネルギーEcが下がる。これにより、低抵抗領域15g内の正孔が空乏化する。すると図4において示したチャネル層14内におけるキャリア欠乏領域Aは消失し、チャネル層14内における電子数が増大し、チャネル層14を介してソース電極17s−ドレイン電極17d間にドレイン電流Idが流れる。このドレイン電流Idは、ゲート電圧Vgによって変調される。
【0061】
<第1実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、上述した構成の半導体装置1-1の製造方法の一例を、図5および図6の断面工程図に基づいて説明する。
【0062】
[図5A]
先ず図5Aに示すように、例えばGaAsよりなる基板11上に、例えば不純物を添加しないu−GaAs層をエピタキシャル成長させてバッファ層12を形成する。その後、バッファ層12上に、例えばAlGaAs(Al0.2Ga0.8As混晶)層をエピタキシャル成長させて下部障壁層13を形成する。この際、例えば不純物を添加しないu−AlGaAs層からなる高抵抗領域13b、シリコン(Si)を添加したn型AlGaAs層からなるキャリア供給領域13a、および不純物を添加しないu−AlGaAs層からなる高抵抗領域13b’を順次エピタキシャル成長させる。これにより、膜厚方向の中央にn型のキャリア供給領域13aを備えた下部障壁層13を得る。
【0063】
次に、下部障壁層13上に、例えば不純物を添加しないu−InGaAs層をエピタキシャル成長させてチャネル層14を形成する。このチャネル層14は、下部障壁層13とのヘテロ接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、下部障壁層13を構成する化合物半導体材料におけるキャリア走行側のエネルギー帯よりも、チャネル層内真性フェルミ準位に近い化合物半導体を用いて形成される。
【0064】
その後、チャネル層14上に、例えばAlGaAs(Al0.2Ga0.8As混晶)層をエピタキシャル成長させて上部障壁層15を形成する。この際、例えば不純物を添加しないu−AlGaAs層からなる高抵抗領域15b、シリコン(Si)を添加したn型のAlGaAs層からなるキャリア供給領域15a、不純物を添加しないu−AlGaAs層からなる高抵抗領域15b’を順次エピタキシャル成長させる。これにより、膜厚方向の中央にn型のキャリア供給領域15aを備えた上部障壁層15を得る。またこのような上部障壁層15は、チャネル層14との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、チャネル層14よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体を用いて形成される。
【0065】
以上の後には、ここでの図示を省略した素子分離の形成を行う。この場合、例えばボロンのイオン注入によって高抵抗化された非活性領域を形成し、これを素子分離とする。
【0066】
[図5B]
次いで図5Bに示すように、上部障壁層15上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition )法により、窒化シリコン(Si)よりなる絶縁膜16を成膜する。その後、絶縁膜16をパターンエッチングすることにより、上部障壁層15の表面を露出するゲート開口16gを絶縁膜16に形成する。この状態で、ゲート開口16gの底部に露出する上部障壁層15の表面層からのp型不純物の導入により、上部障壁層15内に低抵抗領域15gを形成する。ここでは、キャリア供給領域15aに達することのない位置、すなわち高抵抗領域15b’内の表面層のみに、p型不純物である亜鉛(Zn)を拡散させて低抵抗領域15gを形成する。亜鉛(Zn)の拡散は、例えば600℃程度の温度での亜鉛化合物気体を用いた気相拡散によって行う。これにより、ゲート開口16gの底部にセルフアラインで低抵抗領域15gを形成する。
【0067】
[図6A]
次に図6Aに示すように、低抵抗領域15gおよびゲート開口16gの内壁を覆う状態で、絶縁膜16上にゲート絶縁膜18を成膜する。ここでは例えば原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition:ALD)法により、膜厚10nm程度の酸化アルミニウム(Al)よりなるゲート絶縁膜18を高精度に成膜する。
【0068】
その後、ゲート開口16gを埋め込む形状のゲート電極19を、ゲート絶縁膜18を介して低抵抗領域15g上に形成する。この際、ゲート絶縁膜18上に、チタン(Ti)、白金(Pt)、および金(Au)を順次マスク蒸着してゲート電極19をパターン形成する。
【0069】
[図6B]
次に図6Bに示すように、ゲート絶縁膜18および絶縁膜16をパターンエッチングすることにより、低抵抗領域15gを挟む位置において上部障壁層15の高抵抗領域15b’を露出させたソース開口16sおよびドレイン開口16dを形成する。
【0070】
[図1]
その後は図1に示したように、ソース開口16sおよびドレイン開口16dを介して上部障壁層15の高抵抗領域15b’にオーミック接合されたソース電極17sおよびドレイン電極17dを形成する。この際、金−ゲルマニウム(AuGe)、ニッケル(Ni)、および金(Au)を順次蒸着してパターンニングし、さらに例えば400℃程度の加熱処理により金系合金形成をしてソース電極17s/ドレイン電極17dを形成し、半導体装置1-1を完成させる。
【0071】
以上の説明した製造方法により、第1実施形態の半導体装置1-1を形成することができる。この方法によれば、絶縁膜16に形成したゲート開口16gからのp型不純物の拡散によって低抵抗領域15gを形成した後、ゲート開口16gを埋め込む状態でゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を形成する。このため、低抵抗領域15g上には、ゲート絶縁膜18を介してセルフアラインでゲート電極19が形成される。したがって、第1実施形態の半導体装置1-1を容易に得ることが可能である。
【0072】
尚、ゲート開口16g、低抵抗領域15g、ゲート絶縁膜18、およびゲート電極19の形成は、ドレイン開口16d/ソース開口16sおよびソース電極17s/ドレイン電極17dの形成の後に行っても良い。この場合であっても、低抵抗領域15gに対して、ゲート絶縁膜18を介してセルフアラインでゲート電極19が形成されるため、第1実施形態の半導体装置1-1を容易に得ることが可能である。
【0073】
<第1実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した半導体装置1-1は、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の高抵抗領域15b’中にp型の低抵抗領域15gを設けた構成において、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けている。このため、ゲート電極19に対して、順方向電圧(ここでは正電圧)を印加した場合であっても、ゲート電極19とソース電極17s/ドレイン電極17dとの間にゲートリーク電流が流れることが防止される。これにより、ゲート絶縁膜18を設けていない従来構成の半導体装置(JPHEMT)と比較して、ゲート電極19に対してより高い正のゲート電圧Vgを印加することが可能になる。この結果、チャネル層14のオン抵抗Ronをより低く引き下げることができ、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ることができる。またこれにより、素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0074】
またこの半導体装置1-1は、下部障壁層13内にn型のキャリア供給領域13aを設け、上部障壁層15内にn型のキャリア供給領域15aを設けた構成である。このため、これらにキャリア供給領域13a,15aからチャネル層14に電子が供給されることによって、チャネル層14内のシートキャリア密度が高くなり、チャネル抵抗を小さくすることができる。これによっても、オン抵抗Ronの低下と、これによる最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ることが可能である。
【0075】
さらにゲート電極19に負電圧を印加するオフ動作においては、印加した負電圧により発生する電界はすべてゲート絶縁膜18に掛かる。このため、低抵抗領域15gを含む上部障壁層15以下の化合物半導体で構成された層内の空乏層の変化がない。すなわち、オフ時の容量のゲートバイアス依存がほとんどなく、高調波歪特性の向上が図られる。
【0076】
尚、以上の第1実施形態は、半導体装置1-1をデプレッション型とした場合を説明したが、エンハンスメント型とした場合であっても同様に考えることができ、上述した説明はよりよく当てはまる。
【0077】
≪2.第2実施形態≫
(障壁層を積層構成とした例)
図7は第2実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図であり、図8は第2実施形態の半導体装置の動作を説明するエネルギーバンド図である。以下、これらの各図に基づいて、本技術を適用した第2実施形態の半導体装置の構成、第2実施形態の半導体装置の動作、第2実施形態の半導体装置の作用効果の順に説明を行う。
【0078】
<第2実施形態の半導体装置の構成>
図7に示すように、本第2実施形態の半導体装置1-2が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層が第1上部障壁層15-1と第2上部障壁層15-2との積層構造となっているところにあり、他の構成は同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。以下、第1上部障壁層15-1と第2上部障壁層15-2の構成を説明する。
【0079】
[第1上部障壁層15-1]
第1上部障壁層15-1は、チャネル層14に接して設けられる層であり、第1実施形態の上部障壁層(15)と同様に構成されていて良い。すなわち第1上部障壁層15-1は、チャネル層14に対して良好に格子整合する化合物半導体を用いて構成されている。またこの第1上部障壁層15-1は、チャネル層14との接合部において、チャネル層14を構成する化合物半導体材料よりも、キャリア走行側のエネルギー帯がチャネル層内真性フェルミ準位Ef14から遠い化合物半導体を用いて構成されている。以上は第1実施形態の上部障壁層と同様であり、チャネル層14がInGaAs混晶により構成されていれば、一例としてAl0.2Ga0.8As混晶により構成されている。
【0080】
またこの第1上部障壁層15-1には、第1実施形態の上部障壁層と同様に、キャリア供給領域15aが設けられている。このようなキャリア供給領域15aは、一例として膜厚4nm程度であり、チャネル層14から2nm程度で表面から2nm程度の膜厚部分に、n型不純物としてシリコン(Si)を1.6×1012個/cm程度含有する状態で配置されている。
【0081】
尚、第1上部障壁層15-1は、全領域がキャリア供給領域15aとして構成されていても良く、さらに低抵抗領域15gが設けられていない点においてのみ、第1実施形態における上部障壁層とは異なる。
【0082】
[第2上部障壁層15-2]
第2上部障壁層15-2は、第1上部障壁層15-1を介してチャネル層14の上部に配置される層であって、第1上部障壁層15-1と共に上部障壁層を構成しており、この第2上部障壁層15-2の表面層に低抵抗領域15gが設けられている。また第2上部障壁層15-2は、第1上部障壁層15-1に対して格子整合し、かつ低抵抗領域15gに含まれる不純物の拡散速度が低い化合物半導体材料を用いて構成されているところが特徴的である。尚、第2上部障壁層15-2のバンドギャップは、第1上部障壁層15-1のバンドギャップと一致している必要はなく、半導体装置1-2の特性に影響のない範囲であれば特に制限はない。
【0083】
以上のような第2上部障壁層15-2は、第1上部障壁層15-1がAlGaAs混晶からなる場合、例えばGaAsにより構成される。これにより、低抵抗領域15gを構成するp型不純物としての亜鉛(Zn)の第2上部障壁層15-2への拡散速度が抑えられ、第1上部障壁層15-1を構成するAlGaAs混晶の中に亜鉛(Zn)を拡散させる場合よりも高精度に低抵抗領域15gを形成される。
【0084】
尚、第2上部障壁層15-2は、不純物が添加されていないか、低濃度のn型不純物を含有していても良い。
【0085】
[低抵抗領域15g]
低抵抗領域15gは、第1実施形態と同様の構成であるが、本第2実施形態においては先に述べたように第2上部障壁層15-2の表面層に設けられているところが特徴的である。
【0086】
[バンド構造]
図8は、上記構成の半導体装置1-2のエネルギーバンド構成図であり、ゲート電圧Vg=0V程度を印加したオフ動作時のものである。尚、このエネルギーバンド構成図は、下部障壁層13および第1上部障壁層15-1をAl0.2-Ga0.8As混晶によりそれぞれ構成し、第2上部障壁層をGaAs混晶によって構成し、チャネル層14をIn0.2Ga0.8As混晶により構成した場合について表している。
【0087】
図8に示すように、上記構成の半導体装置1-2も、第1実施形態の半導体装置と同様にバンドギャップの狭いチャネル層14を、これよりもバンドギャップの広い下部障壁層13と第1上部障壁層15-1とで挟んだ構成である。このため、チャネル層14は、下部障壁層13および第1上部障壁層15-1のキャリア供給領域13a,15aからキャリアが供給された場合に、このキャリアが蓄積される二次電子ガス層となる。
【0088】
また、チャネル層14と第1上部障壁層15-1とのヘテロ接合部において、キャリア走行側となるコンダクションバンドの不連続量ΔEcが十分に大きい(ここでは0.31eV)。さらに、第1上部障壁層15-1におけるコンダクションバンドエネルギーEcの極小点とチャネル層14内におけるコンダクションバンドエネルギーEcとの差も十分に大きく(ここでは0.20eV以上)なるように構成されている。このため、第1上部障壁層15-1内に分布する電子数はチャネル層14内に分布する電子数に比べて無視できる程度に少なくなっている。
【0089】
<第2実施形態の半導体装置の動作>
このような構成を有する半導体装置1-2は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。
【0090】
<第2実施形態の半導体装置の製造方法>
このような構成を有する半導体装置1-2の製造は、第1実施形態の半導体装置の製造手順においてチャネル層14上に、第1上部障壁層15-1と第2上部障壁層15-2とをこの順にエピタキシャル成長させる工程のみ異なる。ただし低抵抗領域15gの形成は、例えばGaAs混晶からなる第2上部障壁層15-2に対して、p型不純物である亜鉛(Zn)を拡散させることによって行われる。
【0091】
<第2実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した半導体装置1-2は、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の第2上部障壁層15-2中にp型の低抵抗領域15gを設けた構成において、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けている。このため第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲート電極19に順方向電圧を印加した場合のゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズの縮小およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0092】
以上に加えて特に本第2実施形態の半導体装置1-2は、p型不純物を含む低抵抗領域15gが形成される上部障壁層を、第1上部障壁層15-1と第2上部障壁層15-2との積層構造としている。これにより、第1上部障壁層15-1としてチャネル層14とのバンドギャップ差が大きい材料を選択する一方、第2上部障壁層15-2としてバンドギャップを考慮せずにp型不純物の拡散速度が遅い材料を選択することができる。これにより、第2上部障壁層15-2に対してのp型不純物の拡散制御性が向上し、p型不純物濃度の深さプロファイルおよびp型不純物の横方向への拡散が高精度に制御された低抵抗領域15gを得ることが可能になる。この結果、ゲート電極19からチャネル層14までの間隔を高精度に縮小することができ、ゲート電圧によるオン抵抗Ronの低減効果を向上させることが可能である。これによっても、最大ドレイン電流Idmaxの向上、素子サイズ縮小、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図る効果を期待できる。さらに、低抵抗領域15gの深さが高精度で制御されることから、低抵抗領域15gからチャネル層14までの間隔を高精度に設定する事ができ、閾値電圧、オン抵抗Ron、最大ドレイン電流Idmaxの安定化を図ることが可能である。
【0093】
≪3.第3実施形態≫
(障壁層が高抵抗領域のみで構成された例)
図9は第3実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第3実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0094】
<第3実施形態の半導体装置の構成>
図9に示す本第3実施形態の半導体装置1-3が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、下部障壁層13-3および上部障壁層15-3がキャリア供給領域を有しておらず、チャネル層14’にn型不純物が含有されているところにある。他の構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0095】
[下部障壁層13-3,上部障壁層15-3]
すなわち下部障壁層13-3および上部障壁層15-3は、それぞれが接する層に対して良好に格子整合する各化合物半導体材料を用いて構成される。これらの各化合物半導体材料は、チャネル層14との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、チャネル層14よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されたものである。以上は、他の実施形態と同様である。
【0096】
一方、これらの下部障壁層13-3および上部障壁層15-3は、n型不純物を含有するキャリア供給領域を備えず、膜厚方向の全領域が高抵抗領域からなる単層構造として構成されているところが特徴的である。ここで下部障壁層13-3は、n型またはp型の高抵抗領域として構成される。一方、上部障壁層15-3は、n型の高抵抗領域として構成されている。このような下部障壁層13−3および上部障壁層15−3は、不純物濃度が1×1017個/cm以下、比抵抗が1×10-2Ωcm以上であることが好ましい。
【0097】
このような構成において、p型の低抵抗領域15gは、n型の高抵抗領域として構成された上部障壁層15-3の表面層に設けられている。
【0098】
[チャネル層14’]
チャネル層14’は、下部障壁層13-3および上部障壁層15-3に対して良好に格子整合する化合物半導体材料を用いて構成される。この各化合物半導体材料は、下部障壁層13-3および上部障壁層15-3との各ヘテロ接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、下部障壁層13-3および上部障壁層15-3を構成する各化合物半導体材料におけるキャリア走行側のエネルギー帯よりも、チャネル層内真性フェルミ準位に近い化合物半導体を用いて構成されていることとする。以上は他の実施形態と同様である。
【0099】
一方、このチャネル層14’は、キャリア(例えばここでは電子)を供給する不純物として、n型不純物を含有しているところが特徴的である。チャネル層14’に含有されるn型不純物の濃度は、この半導体装置1-3においての最大ドレイン電流Idmaxに応じて適宜決定される。ここでは、例えば2.0×1018個/cm程度のn型不純物がチャネル層14’に添加されていることとする。
【0100】
<第3実施形態の半導体装置の動作および製造方法>
以上のような構成を有する半導体装置1-3は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。またこの半導体装置1-3は、第1実施形態の半導体装置の製造手順においてキャリア供給領域を形成する工程を省くことによって製造される。
【0101】
<第3実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-3は、n型の高抵抗領域として構成された上部障壁層15-3の表面層に、p型の低抵抗領域15gが設けられ、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0102】
以上に加えて、特に本第3実施形態の半導体装置1-3は、チャネル層14’にn型不純物を含有させ、下部障壁層13-3および上部障壁層15-3からキャリア供給領域を省いて高抵抗領域の単層構造とした構成である。このため、より簡単な構成により、第1の実施の形態に係る半導体装置と同等の効果を得ることができる。
【0103】
また、最大ドレイン電流Idmaxを大きくするためにチャネル層14’のn型不純物濃度を大きくしても、下部障壁層13-3および上部障壁層15-3の不純物濃度は低いので、電子が下部障壁層13-3および上部障壁層15-3内に蓄積して走行することはない。したがって、これによる相互コンダクタンスGmの劣化を防止することができる。
【0104】
≪4.第4実施形態≫
(障壁層内のキャリア供給領域と低抵抗領域とを接合させた例)
図10は第4実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第4実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0105】
<第4実施形態の半導体装置の構成>
図10に示す本第4実施形態の半導体装置1-4が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層15-4の表面層に設けられたp型の低抵抗領域15gが、キャリア供給領域15aに接して配置されているところにある。他の構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0106】
すなわち、上部障壁層15-4において、その表面層に設けられたp型の低抵抗領域15gの深さは、上部障壁層15-4の最上層を構成する高抵抗領域15b’の膜厚と一致している。そしてp型の低抵抗領域15gは、n型不純物を含有するn型のキャリア供給領域15aに接合して設けられている。
【0107】
<第4実施形態の半導体装置の動作および製造方法>
以上のような構成を有する半導体装置1-4は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。またこの半導体装置1-4の製造は、第1実施形態の半導体装置の製造手順において上部障壁層15-4の最上層を構成する高抵抗領域15b’を、後に形成するp型の低抵抗領域15gの深さに合わせた膜厚で成膜すれば良い。
【0108】
<第4実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-4は、第1実施形態と同様に、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の高抵抗領域15b’中にp型の低抵抗領域15gを設け、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0109】
以上に加えて、特に本第4実施形態の半導体装置1-4は、p型の低抵抗領域15gをキャリア供給領域15aに接して設けた構成であるため、p型の低抵抗領域15gとチャネル層14との間の距離を短くすることができる。これにより、ゲート電圧によるチャネル層14内ポテンシャルの制御性を高めることが可能であり、これによっても最大ドレイン電流Idmaxの向上、素子サイズ縮小、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図る効果を期待できる。さらに低抵抗領域15gからチャネル層14までの間隔を狭くすることができるため、閾値電圧を比較的高い値に設定する事が可能となる。
【0110】
さらに、p型の低抵抗領域15gに対して、キャリア供給領域15aの不純物濃度が比較的高い条件においては、キャリア供給領域15a内へ拡散した亜鉛(p型不純物)はキャリア供給領域15a内の不純物により打ち消される。このため、亜鉛(Zn)のようなp型の不純物の拡散によって形成されるp型の低抵抗領域15gの深さと、最上層のn型の高抵抗領域15b’の膜厚とを等しくすることができる。これにより、p型の低抵抗領域15gの深さが、キャリア供給領域15a上の高抵抗領域15b’の膜厚によって高精度に制御され、薄い低抵抗領域15gを精度良く形成することが可能である。またこのことからも、p型の低抵抗領域15gとチャネル層14との間の距離を短くし、ゲート電圧によるチャネル層14内ポテンシャルの制御性を高めることが可能である。
【0111】
尚、本第4実施形態では、第1実施形態で図1を用いて説明した構成において、p型の低抵抗領域15gをキャリア供給領域15aに接して配置した構成を説明した。しかしながら、本第4実施形態は、第1実施形態への適用に限定されることはなく、第2実施形態と組み合わせることも可能である。この場合、図7を用いて説明した第2実施形態の構成において、第2上部障壁層15-2の表面層に設けられたp型の低抵抗領域15gを、第1上部障壁層15-1内のキャリア供給領域15aに接するように設ける。このような構成であっても、第2上部障壁層15-2内におけるp型の低抵抗領域15gの横方向の広がりを高精度に制御することが可能である。
【0112】
≪5.第5実施形態≫
(障壁層内のキャリア供給領域と低抵抗領域との間を低抵抗とした例)
図11は第5実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第5実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0113】
<第5実施形態の半導体装置の構成>
図11に示す本第5実施形態の半導体装置1-5が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層15-5の最上層を、高抵抗領域に換えて低抵抗領域15b”で構成したところにあり、他の構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0114】
すなわち、上部障壁層15-5において、その表面層に設けられた低抵抗領域15b”は、n型の不純物を含有して低抵抗に構成されており、この表面層にp型の低抵抗領域15gが設けられている。
【0115】
<第5実施形態の半導体装置の動作および製造方法>
以上のような構成を有する半導体装置1-5は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。またこの半導体装置1-5の製造は、第1実施形態の半導体装置の製造手順において上部障壁層15-5の最上層としてn型不純物を含有する低抵抗領域15b”をエピタキシャル成長させれば良い。
【0116】
<第5実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-5は、上部障壁層15-5の最上層を構成するn型の低抵抗領域15b”内にp型の低抵抗領域15gが設けられ、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0117】
以上に加えて、特に本第5実施形態の半導体装置1-5は、p型の低抵抗領域15gをn型の低抵抗領域15b”内に設けた構成としたことで、チャネル層14のシートキャリア密度を高くすることができ、チャネル抵抗およびアクセス抵抗を低くすることができる。この結果、オン抵抗Ronを小さくする事ができ、さらに最大ドレイン電流Idmaxを高くする効果を期待できる。
【0118】
尚、本第5実施形態では、第1実施形態で図1を用いて説明した構成において、p型の低抵抗領域15gを囲む高抵抗領域をn型の低抵抗領域15b”に変更した構成を説明した。しかしながら本第5実施形態は、第1実施形態への適用に限定されることはなく、第2〜第4実施形態と組み合わせることも可能である。この場合、第2〜第4実施形態において、p型の低抵抗領域15gを囲む領域を、これとは逆導電型(n型)の低抵抗領域とすれば良い。これにより、第2〜第4実施形態の効果と合わせて、さらに本第5実施形態と同様の効果を得ることが可能になる。
【0119】
≪6.第6実施形態≫
(障壁層とソース電極およびドレイン電極との間にキャップ層を設けた例)
図12は第6実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第6実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0120】
<第6実施形態の半導体装置の構成>
図12に示す本第6実施形態の半導体装置1-6が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層15とソース電極17s/ドレイン電極17d間に、キャップ層21を設けたところにある。キャップ層21は、低抵抗領域15gとは逆導電型の不純物を含有する層として設けられている。他の構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0121】
キャップ層21は、上部障壁層15とソース電極17s/ドレイン電極17dとの間に、低抵抗領域15gとは逆導電型の不純物(ここではn型の不純物)を含有する層として設けられている。このようなキャップ層21は、上部障壁層15に対して格子整合する化合物半導体材料を用いて構成されていれば良く、上部障壁層15のバンドギャップと一致している必要はない。ただし、極端にバンドギャップが異なると、接合部にポテンシャルの障壁ができるため、オーミック接合における抵抗が高くなるおそれがある。したがって、キャップ層21のバンドギャップは、下地となる上部障壁層15のバンドギャップに対して、半導体装置1-6の特性に影響のない程度の範囲で一致させることする。以上のようなキャップ層21は、上部障壁層15がAlGaAs混晶からなる場合、例えばn型の不純物を含有するGaAsにより構成されていることとする。
【0122】
<第6実施形態の半導体装置の動作および製造方法>
以上のような構成を有する半導体装置1-6は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。またこの半導体装置1-6の製造は、第1実施形態の半導体装置の製造手順において、上部障壁層15の成膜に続けてキャップ層21となるn型GaAs層をエピタキシャル成長させる工程を行う。次に、ボロンのイオン注入によって高抵抗化された非活性領域を素子分離として形成し、その後n型GaAs層をパターンエッチングしてキャップ層21を形成し、次に絶縁膜16の成膜と、これ以降の工程を行えば良い。
【0123】
<第6実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-6は、第1実施形態の半導体装置と同様に、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の高抵抗領域15b’中にp型の低抵抗領域15gを設け、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0124】
以上に加えて、特に本第6実施形態の半導体装置1-6は、上部障壁層15とソース電極17s/ドレイン電極17dとの間に、化合物半導体からなるキャップ層21を設けた構成である。このため、キャップ層21直下のチャネル層14のシートキャリア密度を高くすることができ、チャネル抵抗およびアクセス抵抗を低くすることができる。この結果、オン抵抗Ronを小さくする事ができ、さらに最大ドレイン電流Idmaxを高くする効果を期待できる。
【0125】
尚、本第6実施形態では、第1実施形態で図1を用いて説明した構成において、上部障壁層15とソース電極17s/ドレイン電極17d間に、低抵抗領域15gとは逆導電型の不純物を含有する層としてギャップ21を設けた構成を説明した。しかしながら本第6実施形態は、第1実施形態への適用に限定されることはなく、第2〜第5実施形態と組み合わせることも可能である。この場合、第2〜第5実施形態にける上部障壁層(または第2上部障壁層)とソース電極17s/ドレイン電極17d間に、p型の低抵抗領域15gとは逆導電型のn型不純物を含有する層とキャップ層21を設ければ良い。これにより、第2〜第5実施形態の効果と合わせて、さらに本第6実施形態と同様の効果を得ることが可能になる。
【0126】
≪7.第7実施形態≫
(障壁層の全面をゲート絶縁膜で覆った例)
図13は第7実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第7実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0127】
<第7実施形態の半導体装置の構成>
図13に示す本第7実施形態の半導体装置1-7が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層15の表面全体をゲート絶縁膜18で覆い、下層の絶縁膜(16)を除去したところにあり、他の構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0128】
すなわち上部障壁層15の表面は、全面がゲート絶縁膜18で覆われている。このゲート絶縁膜18に対して、上部障壁層15に設けた低抵抗領域15gを挟む位置で、低抵抗領域15gに重ならない位置に、上部障壁層15の高抵抗領域15b’に達するソース開口18s/ドレイン開口18dが設けられている。上部障壁層15の上部には、このソース開口18s/ドレイン開口18dを介して高抵抗領域15b’に接続されたソース電極17sおよびドレイン電極17dが設けられている。
【0129】
<第7実施形態の半導体装置の動作>
このような構成を有する半導体装置1-7は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。
【0130】
<第7実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、上述した構成の半導体装置1-7の製造方法の一例を、図14および図15の断面工程図に基づいて説明する。
【0131】
[図14A]
先ず図14Aに示すように、第1実施形態において図5Aを用いて説明したと同様の手順で、基板11上に、バッファ層12、下部障壁層13、チャネル層14、および上部障壁層15をこの順にエピタキシャル成長させ、さらにここでの図示を省略した素子分離を行う。
【0132】
その後、上部障壁層15の最上層の高抵抗領域15b’上に、GaAsからなるキャップ層23をエピタキシャル成長させる。
【0133】
[図14B]
その後、図14Bに示すように、キャップ層23上に絶縁膜25を成膜し、この絶縁膜25をパターンエッチングすることにより、キャップ層23の表面を露出するゲート開口25gを絶縁膜25に形成する。
【0134】
[図15A]
次に図15Aに示すように、ゲート開口25gの底部に露出するキャップ層23の表面層からのp型不純物の導入により、キャップ層23から上部障壁層15の高抵抗領域15b’の表面層に低抵抗領域15gを形成する。ここでは、キャリア供給領域15aに達することのない位置、すなわち高抵抗領域15b’内の表面層のみに、p型不純物である亜鉛(Zn)を拡散させて低抵抗領域15gを形成する。亜鉛(Zn)の拡散は、例えば600℃程度の温度での亜鉛化合物気体を用いた気相拡散によって行う。
【0135】
[図15B]
その後、図15Bに示すように、絶縁膜25とキャップ層23とをエッチング除去し、上部障壁層15の最上層を構成する高抵抗領域15b’と、この表面層にp型不純物を導入した低抵抗領域15gとを残す。
【0136】
以上の後には、図13に示したように、低抵抗領域15gが形成された上部障壁層15の上部にゲート絶縁膜18を成膜する。次に、ゲート絶縁膜18において低抵抗領域15gを挟む位置に、ソース開口18sおよびドレイン開口18dを形成し、さらにソース開口18s/ドレイン開口18dを介して高抵抗領域15b’に接続されたソース電極17s/ドレイン電極17dを形成する。またゲート絶縁膜18上には、低抵抗領域15gの上方に重なる位置に、ゲート電極19を形成し、半導体装置1-7を完成させる。
【0137】
<第7実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-7は、第1実施形態の半導体装置と同様に、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の高抵抗領域15b’中にp型の低抵抗領域15gを設け、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0138】
また特に本第7実施形態の製造方法では、図15Aを用いて説明したように、上部障壁層15に低抵抗領域15gを形成する際、キャップ層23を介して上部障壁層15における高抵抗領域15b’にp型不純物である亜鉛(Zn)を拡散させている。このため、高抵抗領域15b’におけるp型不純物の拡散深さを小さくすることができ、このp型不純物を高抵抗領域15b’に拡散させてなる低抵抗領域15gを浅く形成することが容易になる。つまり、キャップ層23を介さずに高抵抗領域15bに対して直接的な拡散を行う低抵抗領域15gの形成手法では、50nm以下程度の不純物領域の形成は困難であったが、この手法を用いることで、極浅い低抵抗領域15gの形成が可能になる。
【0139】
尚、本第7実施形態では、第1実施形態で説明した構成において、下層の絶縁膜(16)を除去し、上部障壁層15の表面全体をゲート絶縁膜18で覆った構成を説明した。しかしながら、本第7実施形態は、第2〜第6実施形態で説明した構成において、下層の絶縁膜(16)を除去し、上部障壁層15の表面全体をゲート絶縁膜18で覆った構成とすることもできる。また本第7実施形態で説明した製造方法は、第1〜第5実施形態で説明したように、ゲート絶縁膜18とは別に絶縁膜16を設けた構成の半導体装置の製造にも同様に適用することが可能である。この場合、図15Aを用いて説明したように、低抵抗領域15gを形成してキャップ層23を除去した後に、図5Bを用いて説明したと同様に絶縁膜16を形成し、さらにゲート絶縁膜18を形成すれば良く、同様の効果を得ることが可能である。
【0140】
また、本第7実施形態で説明した方法においては、図15Bで説明したように低抵抗領域15gを形成した後に絶縁膜25およびキャップ層23を除去する手順とした。しかしながら、絶縁膜25およびキャップ層23をそのまま残し、この上部にゲート絶縁膜18を形成することにより、図12を用いて説明した第6実施形態の半導体装置1-6を得ることができ、同様の効果を得ることが可能である。
【0141】
≪8.第8実施形態≫
(低抵抗領域をゲート電極で覆った例)
図16は第8実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第8実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0142】
<第8実施形態の半導体装置の構成>
図16に示す本第8実施形態の半導体装置1-8が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層15の表面全体をゲート絶縁膜18で覆い、下層の絶縁膜(16)を除去したところ、およびゲート電極19’のゲート長Lgにある。他の構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0143】
すなわち上部障壁層15の表面は、全面がゲート絶縁膜18で覆われている。このゲート絶縁膜18に対して、上部障壁層15に設けた低抵抗領域15gを挟む位置で、低抵抗領域15gに重ならない位置に、上部障壁層15の高抵抗領域15b’に達するソース開口18s/ドレイン開口18dが設けられている。上部障壁層15の上部には、このソース開口18s/ドレイン開口18dを介して高抵抗領域15b’に接続されたソース電極17sおよびドレイン電極17dが設けられている。これは、図13を用いて説明した第7実施形態と同様である。
【0144】
またゲート電極19’は、低抵抗領域15gの上部を完全に覆う形状を有しているところが特徴的である。このゲート電極19’は、ソース電極17s−ドレイン電極17d間方向の長さ、すなわちゲート長Lgが、低抵抗領域15gの長さLよりも大きく設定されている。ここで、ゲート電極19’のゲート長Lgは、詳しくはゲート絶縁膜18のみを介して上部障壁層15上に配置されている部分の長さであって、実効的なゲート長さであることとする。
【0145】
<第8実施形態の半導体装置の動作>
このような構成を有する半導体装置1-8は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。
【0146】
<第8実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、上述した構成の半導体装置1-8の製造方法は、第7実施形態において図14および図15の断面工程図を用いて説明した手順と同様に行われ、ゲート電極19’の形状(ゲート長さLg)のみが異なる。
【0147】
<第8実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-8は、第1実施形態の半導体装置と同様に、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の高抵抗領域15b’中にp型の低抵抗領域15gを設け、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19’を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0148】
以上に加えて、特に本第8実施形態の半導体装置1-8は、ゲート電極19’が低抵抗領域15gの上部を完全に覆う形状を有している。このため、ゲート電極19’にゲート電圧(正電圧)を印加する際に、p型の低抵抗領域15gを完全に空乏化させることが容易となる。すなわちオン動作時にチャネル層14内ゲート端部におけるキャリア欠乏領域の発生を防ぐことができ、寄生抵抗の増加を抑えることができる。この結果、オン抵抗Ronを小さくする事ができ、さらに最大ドレイン電流Idmaxを高くする効果を期待できる。
【0149】
尚、本第8実施形態の半導体装置の構成は、第1〜第5実施形態で説明したように、ゲート絶縁膜18とは別に絶縁膜16を設けた構成の半導体装置と組み合わせることも可能である。この場合の製造方法は、低抵抗領域15gを形成してキャップ層23を除去した後に、図5Bを用いて説明したと同様に絶縁膜16を形成してこれにゲート開口16gを形成する際、低抵抗領域15gの長さLを超える開口長さのゲート開口16gを形成すれば良い。その後は、ゲート絶縁膜18を形成し、さらにソース電極17s/ドレイン電極17dおよびゲート電極19’を形成する。
【0150】
≪9.第9実施形態≫
(障壁層の上部に低抵抗領域を積層させた例)
図17は第9実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第9実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0151】
<第9実施形態の半導体装置の構成>
図17に示す本第9実施形態の半導体装置1-9が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層が第1上部障壁層15-1と第2上部障壁層15-2’との積層構造となっているところにある。また、積層構造の上部障壁層の表面全面をゲート絶縁膜18で覆い、下層の絶縁膜(16)を除去したところにあり、他の構成は同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0152】
第1上部障壁層15-1は、チャネル層14に接して設けられる層であり、第1実施形態の上部障壁層(15)と同様に構成されたものである。ただし、第1上部障壁層15-1は、全領域がキャリア供給領域15aとして構成されていても良く、さらに低抵抗領域が設けられていない点において、第1実施形態における上部障壁層とは異なる。
【0153】
また特に第2上部障壁層15-2'は、第1上部障壁層15-1を介してチャネル層14の上部にパターン形成された層であって、第1上部障壁層15-1と共に上部障壁層を構成している。この第2上部障壁層15-2’は、全ての領域が、p型不純物を含有する低抵抗領域15g’として構成されている。
【0154】
このような第2上部障壁層15-2’は、第1上部障壁層15-1に対して格子整合する化合物半導体材料を用いて構成されており、第1上部障壁層15-1のバンドギャップと一致している必要はない。
【0155】
以上のような第2上部障壁層15-2’は、例えば第1上部障壁層15-1と同様のAlGaAs混晶からなり、p型不純物としてベリリウム(Be),炭素(C),マグネシウム(Mg)、および亜鉛(Zn)からなるうちの少なくとも1種を含有している。
【0156】
またこのような第2上部障壁層15-2’および第1上部障壁層15-1上の全面は、ゲート絶縁膜18で覆われている。このゲート絶縁膜18に対して、低抵抗領域を構成する第2上部障壁層15-2’を挟む位置に、第1上部障壁層15-1に達するソース開口18s/ドレイン開口18dが設けられている。第1上部障壁層15-1の上部には、このソース開口18s/ドレイン開口18dを介して、第1上部障壁層15-1の高抵抗領域15b’に接続されたソース電極17sおよびドレイン電極17dが設けられている。
【0157】
またゲート電極19’は、ゲート絶縁膜18を介して第2上部障壁層15-2'の上部および側面を覆う状態で、低抵抗領域(15g)としての第2上部障壁層15-2'の長さよりも大きく形成されている。尚、ゲート電極19’は、低抵抗領域15g’としての第2上部障壁層15-2'の上部のみに積層して設けても良い。
【0158】
<第9実施形態の半導体装置の動作>
このような構成を有する半導体装置1-9は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。
【0159】
<第9実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、上述した構成の半導体装置1-9の製造方法の一例を、図18の断面工程図に基づいて説明する。
【0160】
[図18A]
先ず図18Aに示すように、基板11上に、バッファ層12、下部障壁層13、チャネル層14、および第1上部障壁層15-1をこの順にエピタキシャル成長させる。ここまでの工程は、第1実施形態において図5Aを用いて説明したと同様の手順で行う。その後引き続き、第1上部障壁層15-1の上部に、例えばベリリウム,炭素,マグネシウムおよび亜鉛からなるうちの少なくとも1種をp型不純物として添加したAlGaAs(Al0.2Ga0.8As混晶)層をエピタキシャル成長させて第2上部障壁層15-2'を形成する。次いで、ボロンのイオン注入を行って高抵抗化された非活性領域を形成し、ここでの図示を省略した素子分離とする。
【0161】
[図18B]
次に図18Bに示すように、第2上部障壁層15-2'上においてp型の低抵抗領域となる予定領域上に、リソグラフィー法を適用してレジストパターン27を形成する。次いで、このレジストパターン27をマスクした異方性エッチングにより、第2上部障壁層15-2'をp型の低抵抗領域15g’としてパターニングする。パターニング終了後にはレジストパターン27を除去する。
【0162】
以上の後には、図17に示したように、低抵抗領域15g’となる第2上部障壁層15-2'を覆う状態で、第1上部障壁層15-1上に、酸化アルミニウムからなるゲート絶縁膜18を成膜する。次いで、ゲート絶縁膜18を介して第2上部障壁層15-2’上にゲート電極19’をパターン形成し、さらにゲート絶縁膜18にソース開口18s/ドレイン開口18dを形成した後、ソース電極17s/ドレイン電極17dを形成し、半導体装置1-9を完成させる。
【0163】
<第9実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-9は、不純物を含有しないかまたは低濃度のn型の高抵抗領域15b’の上部にp型の低抵抗領域15g’となる第2上部障壁層15-2’を設け、この上部にゲート絶縁膜18を介してゲート電極19’を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0164】
以上に加えて特に本第9実施形態の半導体装置1-9は、p型の低抵抗領域15g’として、エピタキシャル成長により形成した第2上部障壁層15-2'をパターニングしたものを用いた。これにより、低抵抗領域15g’は、厚さが高精度で制御されたものとなる。この結果、不純物の拡散によって形成された低抵抗領域を設けた構成と比較して、閾値電圧、オン抵抗Ron、最大ドレイン電流Idmaxの安定化を図ることが可能である。
【0165】
尚、本第9実施形態の半導体装置の構成は、第1〜第5実施形態で説明したように、ゲート絶縁膜18とは別に絶縁膜16を設けた構成の半導体装置と組み合わせることも可能である。この場合の製造方法は、図18Bに示したように第2上部障壁層15-2'からなる低抵抗領域15g’をパターン形成した後、図5Bを用いて説明したと同様に絶縁膜16を形成してこれにゲート開口16gする。その後、ゲート絶縁膜18を形成し、さらにソース電極17s/ドレイン電極17dおよびゲート電極19’を形成する。
【0166】
≪10.第10実施形態≫
(低抵抗領域とは逆導電型のソース領域およびドレイン領域を設けた例)
図19は第10実施形態の半導体装置の要部構成を示す断面図である。以下、この図に基づいて、本技術を適用した第10実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0167】
<第10実施形態の半導体装置の構成>
図19に示す本第10実施形態の半導体装置1-10が、図1を用いて説明した第1実施形態の半導体装置と異なるところは、上部障壁層が第1上部障壁層15-1と第2上部障壁層15-2”との積層構造となっているところにある。また、第1上部障壁層15-1および第2上部障壁層15-2”に、n型のソース領域15s/ドレイン領域15dが設けられ、積層構造の上部障壁層の表面全体をゲート絶縁膜18で覆い、下層の絶縁膜(16)を除去したところにあり、他の構成は同様である。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、本第実施形態での詳細な説明は省略する。
【0168】
第1上部障壁層15-1は、チャネル層14に接して設けられる層であり、第1実施形態の上部障壁層(15)と同様に構成されたものである。ただし、第1上部障壁層15-1は、全領域がキャリア供給領域15aとして構成されていても良く、さらに低抵抗領域が設けられていない点において、第1実施形態における上部障壁層とは異なる。
【0169】
また特に第2上部障壁層15-2”は、第1上部障壁層15-1を介してチャネル層14の上部に形成された層であって、第1上部障壁層15-1と共に上部障壁層を構成している。この第2上部障壁層15-2”は、ゲート電極19の下部が、p型不純物を含有する低抵抗領域15g”として構成されている。
【0170】
このような第2上部障壁層15-2”は、第1上部障壁層15-1に対して格子整合する化合物半導体材料を用いて構成されており、第1上部障壁層15-1のバンドギャップと一致している必要はない。
【0171】
以上のような第2上部障壁層15-2”は、例えば第1上部障壁層15-1と同様のAlGaAs混晶からなる。そして特に、低抵抗領域15g”を構成する部分は、p型不純物としてベリリウム(Be),炭素(C),マグネシウム(Mg)、および亜鉛(Zn)からなるうちの少なくとも1種を含有している。
【0172】
また第1上部障壁層15-1および第2上部障壁層15-2”には、ゲート電極19を挟む位置、すなわちp型の低抵抗領域15g”を挟む位置に、n型不純物を含有する低抵抗な領域としてソース領域15s/ドレイン領域15dが設けられている。これらのソース領域15s/ドレイン領域15dは、第1上部障壁層15-1内に設けたn型のキャリア供給領域15aに達している。
【0173】
またこのような第2上部障壁層15-2”上の全面は、ゲート絶縁膜18で覆われている。このゲート絶縁膜18に対して、低抵抗領域15g”を挟んで配置されたソース領域15s/ドレイン領域15dに達するソース開口18s/ドレイン開口18dが設けられている。第2上部障壁層15-2"の上部には、このソース開口18s/ドレイン開口18dを介して、ソース領域15s/ドレイン領域15dに接続されたソース電極17sおよびドレイン電極17dが設けられている。
【0174】
またゲート電極19は、ゲート絶縁膜18を介して第2上部障壁層15-2”における低抵抗領域15g”の上部に設けられている。
【0175】
<第10実施形態の半導体装置の動作>
このような構成を有する半導体装置1-10は、第1実施形態の半導体装置と同様に動作する。
【0176】
<第10実施形態の半導体装置の製造方法>
次に、上述した構成の半導体装置1-10の製造方法の一例を、図20の断面工程図に基づいて説明する。
【0177】
[図20A]
先ず図20Aに示すように、基板11上に、バッファ層12、下部障壁層13、チャネル層14、および第1上部障壁層15-1をこの順にエピタキシャル成長させる。ここまでの工程は、第1実施形態において図5Aを用いて説明したと同様の手順で行う。その後引き続き、第1上部障壁層15-1の上部に、例えばベリリウム,炭素,マグネシウムおよび亜鉛からなるうちの少なくとも1種をp型不純物として添加したAlGaAs(Al0.2Ga0.8As混晶)層をエピタキシャル成長させて第2上部障壁層15-2”を形成する。次いで、ボロンのイオン注入を行って高抵抗化された非活性領域を形成し、ここでの図示を省略した素子分離とする。
【0178】
[図20B]
次に図20Bに示すように、第2上部障壁層15-2”上においてp型の低抵抗領域15g”となる予定領域上に、リソグラフィー法を適用してレジストパターン29を形成する。次いで、このレジストパターン29をマスクした不純物拡散により、p型の第2上部障壁層15-2”およびこの下部の第1上部障壁層15-1の高抵抗領域15b’に、n型の不純物を導入する。これにより、p型の低抵抗領域15g”の両脇に、n型のキャリア供給領域15aに達する、n型のソース領域15s/ドレイン領域15dを形成する。この不純物拡散は例えばイオン注入によって行う。不純物拡散後には、レジストパターン29を除去する。
【0179】
以上の後には、図19に示したように、p型の低抵抗領域15g”およびn型のソース領域15s/ドレイン領域15dが形成された第2上部障壁層15-2”上に、酸化アルミニウムからなるゲート絶縁膜18を成膜する。次いで、ゲート絶縁膜18を介してp型の低抵抗領域15g”上にゲート電極19をパターン形成する。また、ゲート絶縁膜18に、n型のソース領域15s/ドレイン領域15dに達するソース開口18s/ドレイン開口18dを形成する。その後、これらを介してソース領域15s/ドレイン領域15dに接続されたソース電極17s/ドレイン電極17dを形成し、半導体装置1-10を完成させる。
【0180】
<第10実施形態の半導体装置の効果>
以上説明した構成の半導体装置1-10は、n型のソース領域15sとドレイン領域15dとに挟まれたp型の低抵抗領域15g”上に、ゲート絶縁膜18を介してゲート電極19を設けた構成である。このため、第1実施形態の半導体装置と同様に、ゲートリーク電流を防止して、最大ドレイン電流Idmaxの向上を図ること、さらには素子サイズを縮小すること、およびこの素子に対する寄生容量の低減を図ることが可能になる。
【0181】
以上に加えて特に本第10実施形態の半導体装置1-10は、p型の低抵抗領域15g”を挟む状態でn型のソース領域15s/ドレイン領域15dを設けたことにより、n型のソース領域15s/ドレイン領域15d直下のチャネル層14内シートキャリア密度を高くすることができ、チャネル抵抗およびアクセス抵抗を低くすることができる。すなわち、オン抵抗Ronを小さくする事ができ、加えて最大ドレイン電流Idmaxを高くすることが可能である。
【0182】
さらにp型の低抵抗領域15g”として、エピタキシャル成長により形成した第2上部障壁層15-2”を用いた。これにより、低抵抗領域15g”は、その厚さが高い精度で制御されたものとなる。この結果、不純物の拡散によって形成された低抵抗領域を設けた構成と比較して、閾値電圧、オン抵抗Ron、最大ドレイン電流Idmaxの安定化を図ることが可能である。
【0183】
尚、本第10実施形態の半導体装置の構成は、第1〜第5実施形態で説明したように、ゲート絶縁膜18とは別に絶縁膜16を設けた構成の半導体装置と組み合わせることも可能である。この場合の製造方法は、図20Bに示したようにソース領域15sおよびドレイン領域15dを形成してレジストパターン29を除去した後、図5Bを用いて説明したと同様に絶縁膜16を形成してこれにゲート開口16gする。その後、ゲート絶縁膜18を形成し、さらにソース電極17s/ドレイン電極17dおよびゲート電極19を形成する。
【0184】
≪11.変形例≫
以上説明した第1実施形態〜第10実施形態においては、基板11の上部に形成される化合物半導体を用いた各層は、各層間において格子整合しているとした。しかしながら、本技術は、このような構成に限定されることはなく、基板11の上部に形成される化合物半導体を用いた各層は、シュードモルフィック技術により成長させた化合物半導体層や、メタモルフィック技術により成長させた格子定数の異なる化合物半導体層を用いても良い。
【0185】
例えばメタモルフィック技術を適用した構成の一例としては、次のようである。
基板11およびバッファ層12…GaAs
下部障壁層…InAlAs(In0.52Al0.48As)
チャネル層…InGaAs(In0.53Ga0.47As)
上部障壁層(または第1上部障壁層)…InAlAs(In0.52Al0.48As)
【0186】
≪12.適用例≫
(無線通信装置)
以上のような各実施形態で説明した半導体装置は、例えば、移動体通信システムなどにおける無線通信装置に用いられ、特にそのアンテナスイッチとして用いられる。このような無線通信装置としては、通信周波数がUHF(ultra high frequency)帯以上のもので効果が特に発揮される。
【0187】
つまり第1〜第10実施形態で説明した、最大ドレイン電流Idmaxが高く高調波歪特性に優れた半導体装置を無線通信装置のアンテナスイッチに用いることにより、無線通信装置の小型化および低消費電力化を図ることが可能になる。特に、携帯通信端末においては、装置の小型化および低消費電力化による使用時間の延長により、携帯性の向上を図ることが可能になる。
【0188】
尚、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0189】
(1)
化合物半導体で構成されたチャネル層と、
前記チャネル層上に設けられ、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成された障壁層と、
前記障壁層における表面層に設けられ、不純物を含有することにより周囲よりも低抵抗に保たれた低抵抗領域と、
前記低抵抗領域を挟んだ位置において前記障壁層に接続されたソース電極およびドレイン電極と、
前記低抵抗領域上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記低抵抗領域上に設けられたゲート電極とを備えた
半導体装置。
【0190】
(2)
前記障壁層は、前記チャネル層に接する第1障壁層と、前記低抵抗領域を構成する不純物の拡散速度が前記第1障壁層よりも遅い第2障壁層との積層構造を備え、
前記低抵抗領域は、前記第2障壁層に設けられている
(1)記載の半導体装置。
【0191】
(3)
前記障壁層との間に前記チャネル層を挟む位置に、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されたもう一つの障壁層が配置されている
(1)または(2)記載の半導体装置。
【0192】
(4)
前記障壁層とソース電極およびドレイン電極との間に、前記低抵抗領域とは逆導電型の不純物を含有する層が設けられている
(1)〜(3)の何れかに記載の半導体装置。
【0193】
(5)
前記障壁層は、前記チャネル層に接する第1障壁層と、当該第1障壁層上にパターン形成された第2障壁層との積層構造を備え、
前記第2障壁層を前記低抵抗領域として用いている
(1)〜(4)の何れかに記載の半導体装置。
【0194】
(6)
前記ゲート電極は、前記低抵抗領域の上部を完全に覆う形状を有する
(1)〜(5)の何れかに記載の半導体装置。
【0195】
(7)
前記ゲート電極に負の電圧を印加することにより、前記チャネル層内の電子が枯渇し、
前記ゲート電極に正の電圧を印加することにより、前記低抵抗領域が空乏化する
(1)〜(6)の何れかに記載の半導体装置。
【0196】
(8)
前記ゲート絶縁膜は、酸化物または窒化物を用いて構成されている
(1)〜(7)の何れかに記載の半導体装置。
【0197】
(9)
前記チャネル層は、III−V族化合物半導体であるInGaAs混晶で構成され、
前記障壁層は、III−V族化合物半導体であるAlGaAs混晶で構成された
(1)〜(8)の何れかに記載の半導体装置。
【0198】
(10)
前記低抵抗領域は、前記不純物としてベリリウム,炭素,マグネシウム、および亜鉛のうちの少なくとも1種を含む
(1)〜(9)の何れかに記載の半導体装置。
【0199】
(11)
前記チャネル層は、III−V族化合物半導体であるInGaAs混晶で構成され、
前記障壁層は、III−V族化合物半導体であるIn(AlGa)AsP混晶で構成された
(1)〜(8)の何れかに記載の半導体装置。
【0200】
(12)
前記チャネル層は、GaAsで構成された基板上に設けられた
(1)〜(11)の何れかに記載の半導体装置。
【0201】
(13)
前記チャネル層は、前記基板上にGaAsと格子定数の異なる化合物半導体をメタモルフィック成長させてなる
(12)記載の半導体装置。
【0202】
(14)
前記チャネル層は、InPで構成された基板上に設けられた
(1)〜(11)の何れかに記載の半導体装置。
【0203】
(15)
化合物半導体で構成されたチャネル層の上部に、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されると共に、表面層に不純物を含有する低抵抗領域を備えた障壁層を形成することと、
前記低抵抗領域を挟む前記障壁層上の各位置にソース電極およびドレイン電極を形成することと、
前記低抵抗領域の上部にゲート絶縁膜を形成することと、
前記ゲート絶縁膜を介して前記低抵抗領域の上部にゲート電極を形成することとを行う
半導体装置の製造方法。
【0204】
(16)
前記ゲート絶縁膜を形成する際には、原子層蒸着法によって当該ゲート絶縁膜を成膜する
(15)記載の半導体装置の製造方法。
【0205】
(17)
前記障壁層を形成する際には、化合物半導体で構成された前記障壁層を成膜した後、当該障壁層の表面層に不純物を拡散させることによって前記低抵抗領域を形成する
(15)または(16)記載の半導体装置の製造方法。
【0206】
(18)
前記不純物として亜鉛を拡散させる
(17)記載の半導体装置の製造方法。
【0207】
(19)
前記障壁層を形成する際には、前記当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成された第1障壁層を形成した後、前記不純物の拡散速度が前記第1障壁層よりも遅い化合物半導体で構成された第2障壁層を形成し、当該第2障壁層に対して前記不純物を拡散させて前記低抵抗領域を形成する
(15)または(16)記載の半導体装置の製造方法。
【0208】
(20)
前記障壁層を形成する際には、前記チャネル層上に第1障壁層を形成した後、当該第1障壁層上に不純物を添加したエピタキシャル成長によって第2障壁層を形成し、当該第2障壁層を前記低抵抗領域として用いる
(15)または(16)記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0209】
1-1,1-2,1-3,1-4,1-5,1-6,1-7,1-8,1-9,1-10…半導体装置、11…基板、13…下部障壁層、14…チャネル層、15…上部障壁層、15-4,15-5…上部障壁層、15-1…第1上部障壁層、15-2,15-2’,15-2”…第2上部障壁層、15a…キャリア供給領域、15g,15g’,15g”…低抵抗領域、17s…ソース電極、17d…ドレイン電極、18…ゲート絶縁膜、19,19’…ゲート電極、21…ギャップ層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体で構成されたチャネル層と、
前記チャネル層上に設けられ、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成された障壁層と、
前記障壁層における表面層に設けられ、不純物を含有することにより周囲よりも低抵抗に保たれた低抵抗領域と、
前記低抵抗領域を挟んだ位置において前記障壁層に接続されたソース電極およびドレイン電極と、
前記低抵抗領域上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記低抵抗領域上に設けられたゲート電極とを備えた
半導体装置。
【請求項2】
前記障壁層は、前記チャネル層に接する第1障壁層と、前記低抵抗領域を構成する不純物の拡散速度が前記第1障壁層よりも遅い第2障壁層との積層構造を備え、
前記低抵抗領域は、前記第2障壁層に設けられている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記障壁層との間に前記チャネル層を挟む位置に、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されたもう一つの障壁層が配置されている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記障壁層とソース電極およびドレイン電極との間に、前記低抵抗領域とは逆導電型の不純物を含有する層が設けられている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記障壁層は、前記チャネル層に接する第1障壁層と、当該第1障壁層上にパターン形成された第2障壁層との積層構造を備え、
前記第2障壁層を前記低抵抗領域として用いている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート電極は、前記低抵抗領域の上部を完全に覆う形状を有する
請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極に負の電圧を印加することにより、前記チャネル層内の電子が枯渇し、
前記ゲート電極に正の電圧を印加することにより、前記低抵抗領域が空乏化する
請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート絶縁膜は、酸化物または窒化物を用いて構成されている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記チャネル層は、III−V族化合物半導体であるInGaAs混晶で構成され、
前記障壁層は、III−V族化合物半導体であるAlGaAs混晶で構成された
請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記低抵抗領域は、前記不純物としてベリリウム,炭素,マグネシウム、および亜鉛のうちの少なくとも1種を含む
請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記チャネル層は、III−V族化合物半導体であるInGaAs混晶で構成され、
前記障壁層は、III−V族化合物半導体であるIn(AlGa)AsP混晶で構成された
請求項1記載の半導体装置。
【請求項12】
前記チャネル層は、GaAsで構成された基板上に設けられた
請求項1記載の半導体装置。
【請求項13】
前記チャネル層は、前記基板上にGaAsと格子定数の異なる化合物半導体をメタモルフィック成長させてなる
請求項12記載の半導体装置。
【請求項14】
前記チャネル層は、InPで構成された基板上に設けられた
請求項1記載の半導体装置。
【請求項15】
化合物半導体で構成されたチャネル層の上部に、当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成されると共に、表面層に不純物を含有する低抵抗領域を備えた障壁層を形成することと、
前記低抵抗領域を挟む前記障壁層上の各位置にソース電極およびドレイン電極を形成することと、
前記低抵抗領域の上部にゲート絶縁膜を形成することと、
前記ゲート絶縁膜を介して前記低抵抗領域の上部にゲート電極を形成することとを行う
半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ゲート絶縁膜を形成する際には、原子層蒸着法によって当該ゲート絶縁膜を成膜する
請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記障壁層を形成する際には、化合物半導体で構成された前記障壁層を成膜した後、当該障壁層の表面層に不純物を拡散させることによって前記低抵抗領域を形成する
請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記不純物として亜鉛を拡散させる
請求項17記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記障壁層を形成する際には、前記当該チャネル層との接合部におけるキャリア走行側のエネルギー帯が、当該チャネル層よりも当該チャネル層内真性フェルミ準位から遠い化合物半導体で構成された第1障壁層を形成した後、前記不純物の拡散速度が前記第1障壁層よりも遅い化合物半導体で構成された第2障壁層を形成し、当該第2障壁層に対して前記不純物を拡散させて前記低抵抗領域を形成する
請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記障壁層を形成する際には、前記チャネル層上に第1障壁層を形成した後、当該第1障壁層上に不純物を添加したエピタキシャル成長によって第2障壁層を形成し、当該第2障壁層を前記低抵抗領域として用いる
請求項15記載の半導体装置の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−48212(P2013−48212A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126040(P2012−126040)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】