説明

半導体装置の製造方法

【課題】信頼性が損なわれるのを防止しつつ、電気的特性の良好な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板10上に、化学気相堆積法により、シリコンと酸素と炭素とを含む絶縁膜42を形成する工程と、絶縁膜を形成する工程の後、350℃以下の温度で加熱しながら絶縁膜に対して紫外線キュアを行う工程と、紫外線キュアを行う工程の後、絶縁膜に対してヘリウムプラズマ処理を行う工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体装置の信号の周波数はますます高くなっており、これに伴い、層間絶縁膜の材料として低誘電率(low−k)材料を用いることが重要となってきている。
【0003】
低誘電率の絶縁膜としては、例えばSiOC膜が用いられる。SiOC膜の膜中には多数の空隙が形成されており、これにより、比較的低い比誘電率が実現される。
【0004】
SiOC膜は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により形成される。
【0005】
SiOC膜をCVD法により成膜しただけでは、十分な強度のSiOC膜が得られず、また、十分に低い比誘電率も得られない。このため、強度を向上するとともに、比誘電率を低減するためのUVキュア(紫外線硬化)が、SiOCの層間絶縁膜に対して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−175085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単にUVキュアを行った場合には、層間絶縁膜の膜ストレスが著しく大きくなってしまい、膜の剥がれ等が生じやすくなり、必ずしも十分に信頼性の高い半導体装置が得られない。
【0008】
本発明の目的は、信頼性が損なわれるのを防止しつつ、電気的特性の良好な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一観点によれば、半導体基板上に、化学気相堆積法により、シリコンと酸素と炭素とを含む絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を形成する工程の後、350℃以下の温度で加熱しながら前記絶縁膜に対して紫外線キュアを行う工程と、前記紫外線キュアを行う工程の後、前記絶縁膜に対してヘリウムプラズマ処理を行う工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の半導体装置の製造方法によれば、350℃以下の温度で加熱しながら絶縁膜に対して紫外線キュアを行い、更に、ヘリウムプラズマ処理を行うため、膜ストレスが大きくなるのを防止しつつ、絶縁膜を硬化することができるとともに、絶縁膜の比誘電率を十分に低減することができる。従って、信頼性が損なわれるのを防止しつつ、電気的特性の良好な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図2】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図3】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図4】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図5】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その5)である。
【図6】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その6)である。
【図7】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その7)である。
【図8】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その8)である。
【図9】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その9)である。
【図10】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その10)である。
【図11】一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その11)である。
【図12】400℃の基板温度でUVキュアを行った場合における比誘電率、ヤング率及び膜ストレスを示すグラフである。
【図13】比誘電率、ヤング率及び膜ストレスの比較結果を示すグラフである。
【図14】UVキュアの際の基板温度と、比誘電率、ヤング率及び膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例えば、400℃で加熱しながらSiOCの層間絶縁膜に対してUVキュアを行えば、層間絶縁膜の強度を十分に高くすることができるとともに、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減することが可能である。即ち、400℃でUVキュアを行えば、層間絶縁膜中において結合が十分に強化され、十分な強度の層間絶縁膜が得られる。また、400℃でUVキュアを行えば、シラノール基(Si−OH)等の不要な物質が層間絶縁膜中から層間絶縁膜の外部に放出され、十分に比誘電率の低い層間絶縁膜が得られる。
【0013】
しかしながら、400℃で加熱しながらUVキュアを行った場合には、層間絶縁膜の膜ストレスが極めて大きくなってしまう。400℃で層間絶縁膜中の結合が強化された後に層間絶縁膜が冷却されることとなるため、層間絶縁膜と他の構成要素との間の熱膨張率の相違によって、このような大きい膜ストレスが生じるものと考えられる。
【0014】
UVキュアの際の加熱温度を低くすれば、それに応じて層間絶縁膜の膜ストレスは低くなるが、UVキュアの際の加熱温度を低くすると、シラノール基等の不要な物質が層間絶縁膜中から除去されにくくなり、比誘電率を十分に低減し得なくなる。
【0015】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、後述するように、UVキュアの後にHeプラズマ処理を行えば、UVキュアの際の加熱温度を比較的低く設定した場合であっても、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減し得ることに想到した。
【0016】
[一実施形態]
一実施形態による半導体装置の製造方法を図1乃至図14を用いて説明する。図1乃至図11は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0017】
まず、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法により、半導体基板10に素子分離領域12を形成する(図1(a)参照)。半導体基板10としては、例えばN型又はP型のシリコン基板を用いる。素子分離領域12の材料としては、例えばシリコン酸化膜が用いられる。なお、半導体基板10として、SOI(Semiconductor On Insulator)基板を用いてもよい。また、素子分離領域12をLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法により形成してもよい。こうして、素子分離領域12により素子領域14が確定される。
【0018】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0019】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、NMOSトランジスタ形成領域2を開口する開口部(図示せず)をフォトレジスト膜に形成する。
【0020】
次に、フォトレジスト膜をマスクとし、例えばイオン注入法により、半導体基板10内にP型のドーパント不純物を導入することにより、Pウェル16を形成する。P型のドーパント不純物としては、例えばB(ボロン)を用いる。
【0021】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜を除去する。
【0022】
なお、図示しないPMOSトランジスタ形成領域には、N型ウェル(図示せず)が形成され、N型ウェル上には、後工程においてPMOSトランジスタ(図示せず)が形成される。本実施形態では、主として、NMOSトランジスタ形成領域2について説明し、PMOSトランジスタ形成領域についての説明は省略する。
【0023】
次に、半導体基板10の表面に、例えばドライ熱酸化法により、例えば膜厚1.5nmのシリコン酸化膜のゲート絶縁膜18を形成する。
【0024】
次に、全面に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により、例えば膜厚100nmのポリシリコン膜を形成する。
【0025】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0026】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、NMOSトランジスタ形成領域2を開口する開口部(図示せず)をフォトレジスト膜に形成する。
【0027】
次に、フォトレジスト膜をマスクとし、例えばイオン注入法により、ポリシリコン膜にN型のドーパント不純物を導入する。N型のドーパント不純物としては、例えばリンを用いる。こうして、NMOSトランジスタ形成領域2内のポリシリコン膜がN型となる。
【0028】
この後、例えばアッシングによりフォトレジスト膜を除去する。
【0029】
次に、例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)法により、ドーパント不純物を活性化するための熱処理を行う。
【0030】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、ポリシリコン膜をパターニングすることにより、ポリシリコンのゲート電極20を形成する(図1(b)参照)。ゲート長は、例えば32nm程度とする。
【0031】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0032】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、NMOSトランジスタ形成領域2を開口する開口部(図示せず)をフォトレジスト膜に形成する。
【0033】
次に、フォトレジスト膜及びゲート電極20をマスクとし、例えばイオン注入法によりN型のドーパント不純物を導入することにより、ゲート電極20の両側の半導体基板10内にN型のエクステンション領域22を形成する(図1(c)参照)。N型のドーパント不純物としては、例えばリン又は砒素を用いる。加速エネルギーは、例えば7keV程度とする。ドーズ量は、例えば7.0×1014cm−2程度とする。
【0034】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜を除去する。
【0035】
次に、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚8nmのシリコン酸化膜を形成する。
【0036】
次に、シリコン酸化膜を異方性エッチングすることにより、ゲート電極20の側壁部分にシリコン酸化膜のサイドウォール絶縁膜24を形成する(図1(d)参照)。
【0037】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
【0038】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、NMOSトランジスタ形成領域2を開口する開口部(図示せず)をフォトレジスト膜に形成する。
【0039】
次に、サイドウォール絶縁膜24が形成されたゲート電極20とフォトレジスト膜とをマスクとして、半導体基板10内にN型のドーパント不純物を導入する。N型のドーパント不純物としては、例えば砒素(As)を用いる。加速エネルギーは、例えば12keV程度とする。ドーズ量は、例えば2.0×1015cm−2程度とする。これにより、エクステンションソース/ドレイン構造の深い領域を形成するN型の不純物領域26が形成される。(図2(a)参照)。
【0040】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜を除去する。
【0041】
次に、例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)法により、ドーパント不純物を活性化するための熱処理を行う。こうして、エクステンション領域22と不純物領域26とによりエクステンションソース/ドレイン構造のソース/ドレイン拡散層28が形成される(図2(a)参照)。
【0042】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚20nmの高融点金属膜を形成する。高融点金属膜としては、例えばニッケル膜を用いる。
【0043】
次に、熱処理を行うことにより、半導体基板10表面のシリコンと高融点金属膜中のニッケルとを反応させるとともに、ゲート電極20表面のシリコンと高融点金属膜中のニッケルとを反応させる。
【0044】
次に、未反応の高融点金属膜をエッチング除去する。こうして、ソース/ドレイン拡散層28上及びゲート電極20上に、ニッケルシリサイドのシリサイド膜30がそれぞれ形成される(図2(b)参照)。ソース/ドレイン拡散層28上のシリサイド膜30は、ソース/ドレイン電極として機能する。
【0045】
こうして、ゲート電極20とソース/ドレイン拡散層28とを有するトランジスタ(NMOSトランジスタ)32が形成される。
【0046】
次に、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚600nmのPSG(Phospho Silicate Glass)膜の層間絶縁膜34を形成する(図2(c)参照)。
【0047】
次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)法により、層間絶縁膜34の表面を平坦化する。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、ソース/ドレイン電極30に達するコンタクトホール36を層間絶縁膜34に形成する。
【0049】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚7nmのTi膜と、膜厚2nmのTiN膜とを順次形成する。これにより、Ti膜とTiN膜とにより形成された下地金属膜(密着膜、バリアメタル膜)38が形成される。
【0050】
次に、全面に、例えばCVD法により、例えばタングステンの導電膜40を形成する。導電膜40の膜厚は、コンタクトホール36内が導電膜40により十分に充填される膜厚とする。
【0051】
次に、例えばCMP法により、層間絶縁膜34の表面が露出するまでタングステン膜40及び下地金属膜38を研磨する。こうして、コンタクトホール36内に、例えばタングステンの導体プラグ40が埋め込まれる(図2(c)参照)。
【0052】
次に、全面に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚50〜200nmの層間絶縁膜42を形成する(図3(a)参照)。層間絶縁膜42としては、低誘電率(low−k)材料の層間絶縁膜を形成する。具体的には、層間絶縁膜42として、例えば、シリコンと酸素と炭素とを含む膜を形成する。より具体的には、層間絶縁膜42として、SiOC膜を形成する。層間絶縁膜42は、例えば以下のようにして形成される。成膜室内に導入するガスとしては、例えば、TMSA(Trimethylsilylacetylene)ガス、Oガス及びCOガスを用いる。TMSAガスの流量は、例えば3sccm程度とする。Oガスの流量は、例えば200sccm程度とする。COガスの流量は、例えば5000sccm程度とする。成膜室内の圧力は、例えば10mTorr程度とする。基板温度は、例えば400℃程度とする。こうして、層間絶縁膜42が形成される。
【0053】
次に、層間絶縁膜42に対して、加熱しながらUV(紫外線)を照射することにより、UVキュア(紫外線硬化、紫外線処理)を行う(図3(b)参照)。UVキュアを行う際には、例えばUVアニール装置等を用いることができる。UVキュアは、例えばUVアニール装置の反応室(チャンバ)内に半導体基板10を導入し、半導体基板10を加熱しながら、UVランプ等により紫外線を照射することにより行うことができる。UVランプの主な波長領域は、例えば200〜500nm程度とする。UVランプの出力は、例えば1800W程度とする。反応室内の圧力は、例えば50Torr程度とする。反応室内に導入するガスは、例えばHeガスとする。Heガスの流量は、例えば7500sccm程度とする。紫外線を照射する際に加熱する温度、即ち、基板温度は、350℃以下とする。好ましくは、基板温度を230℃〜350℃の範囲内とする。ここでは、基板温度を例えば230℃とする。UV照射時間は、例えば5分程度とする。比較的低い温度でUVキュアを行うため、膜ストレスの著しい増加を招くことなく、層間絶縁膜42aのヤング率を向上させることができる。即ち、膜ストレスの著しい増加を招くことなく、層間絶縁膜42aを硬化させることができる。UVキュアを行う際の温度が比較的高いため、層間絶縁膜42aの比誘電率は、UVキュアによっては十分に低減し得ない。UVキュアが終了した段階では、層間絶縁膜42aの比誘電率は比較的高い状態となっている。
【0054】
350℃以下のUVキュアを終了した段階で層間絶縁膜42aの比誘電率が比較的高い状態となっているのは、以下のような理由によるものと考えられる。即ち、SiOCの層間絶縁膜42a中には、シラノール基等の不要な物質が含まれていると考えられる。シラノール基の層間絶縁膜42a中からの離脱温度は、約400℃以上と考えられる。このため、350℃以下でUVキュアを行った場合には、シラノール基等が層間絶縁膜42a中に残存してしまう。このため、350℃以下でのUVキュアを終了した段階では、層間絶縁膜42aの比誘電率は比較的高い状態になっていると考えられる。
【0055】
なお、基板温度を350℃以下とするのは、以下のような理由によるものである。即ち、比較的高い温度でUVキュアを行った場合には、層間絶縁膜42に大きな膜ストレスが生じてしまう。大きな膜ストレスを生じさせることなく、層間絶縁膜42を硬化するためには、比較的低い温度でUVキュアを行うことが好ましい。350℃以下でUVキュアを行えば、大きな膜ストレスが生じるのを防止しつつ、層間絶縁膜42を硬化し得る。このため、本実施形態では、基板温度を350℃以下としている。
【0056】
一方、比較的低い温度でUVキュアを行った場合には、層間絶縁膜42を十分に硬化し得ない。このため、UVキュアを行う際の基板温度は、低すぎないことが好ましい。230℃以上でUVキュアを行えば、層間絶縁膜42を十分に硬化し得る。このため、UVキュアを行う際の基板温度は、230℃以上とすることが好ましい。
【0057】
なお、UVキュアを行う際の基板温度を230℃より低くした場合であっても、層間絶縁膜42をある程度硬化することは可能である。従って、UVキュアを行う際の基板温度は、必ずしも230℃以上でなくてもよい。ただし、十分な強度を得る観点からは、UVキュアを行う際の基板温度が過度に低すぎないことが好ましい。
【0058】
次に、層間絶縁膜42aに対して、加熱しながらヘリウム(He)プラズマを照射することにより、Heプラズマ処理(Heプラズマキュア)を行う(図4(a)参照)。Heプラズマ処理を行う際は、例えば、プラズマCVD装置等のプラズマ処理装置を用いることができる。Heプラズマ処理は、例えばプラズマ処理装置の反応室内に半導体基板10導入し、半導体基板10を加熱しながら、Heプラズマを照射することにより行うことができる。反応室内に導入するHeガスの流量は、例えば9000sccm程度とする。反応室内の圧力は、例えば8Torr程度とする。プラズマの出力は、例えば200W程度とする。Heプラズマを行う際に加熱する温度、即ち、基板温度は、100℃〜350℃の範囲内とする。ここでは、基板温度を、例えば350℃とする。Heプラズマの照射時間は、例えば15秒程度とする。
【0059】
小さい原子で且つ不活性なHeによるプラズマ処理は、シラノール基等を層間絶縁膜42a中から脱離させる効果を奏する。しかも、350℃程度の比較的低い温度であっても、Heプラズマ処理を行えば、シラノール基等を層間絶縁膜42aから十分に離脱させることが可能である。
【0060】
従って、Heプラズマ処理を行うことにより、層間絶縁膜42bの比誘電率を十分に低減することができる。比較的低い温度でHeプラズマ処理を行うため、層間絶縁膜42bの膜ストレスが著しく大きくなってしまうこともない。即ち、このようにしてHeプラズマ処理を行うことにより、膜ストレスの著しい上昇を招くことなく、層間絶縁膜42bの比誘電率を十分に低下させることができる。なお、層間絶縁膜42bのヤング率は、Heプラズマ処理を行うことによっては殆ど変化しない。
【0061】
なお、基板温度を100℃〜350℃の範囲内とするのは、以下のような理由によるものである。即ち、比較的高い温度でHeプラズマ処理を行った場合には、層間絶縁膜42aに大きな膜ストレスが生じてしまう。大きな膜ストレスを生じさせることなく、層間絶縁膜42aを硬化するためには、比較的低い温度でHeプラズマ処理を行うことが好ましい。350℃以下でHeプラズマ処理を行えば、層間絶縁膜に大きな膜ストレスが生じるのを防止しつつ、層間絶縁膜を硬化し得る。このため、本実施形態では、基板温度を350℃以下としている。一方、比較的低い温度でHeプラズマ処理を行った場合には、層間絶縁膜42aの比誘電率を十分に低減し得ない。このため、Heプラズマ処理を行う際の基板温度は、低すぎないことが好ましい。100℃以上でHeプラズマ処理を行えば、層間絶縁膜42aの比誘電率を十分に低減し得る。このため、本実施形態では、Heプラズマ処理の際の基板温度を100℃〜350℃の範囲内としている。
【0062】
なお、Heプラズマ処理を行う際の基板温度を100℃より低くした場合であっても、層間絶縁膜42の比誘電率をある程度低くすることは可能である。従って、Heプラズマ処理を行う際の基板温度は、必ずしも100℃以上でなくてもよい。ただし、十分に低い比誘電率を得る観点からは、Heプラズマ処理を行う際の基板温度が過度に低すぎないことが好ましい。
【0063】
このように、本実施形態では、比較的低い温度で層間絶縁膜42に対してUVキュアを行うことため、膜ストレスの著しい上昇を招くことなく、硬度の高い層間絶縁膜42aを得ることができる。UVキュアを行う際の温度が比較的低いため、UVキュアが終了した段階では、層間絶縁膜42aの比誘電率は十分に低くなっていない。このため、本実施形態では、Heプラズマ処理を行うことにより、層間絶縁膜42aの比誘電率を十分に低減する。UVキュアは、比較的低い温度であっても、層間絶縁膜の硬度を十分に高くすることが可能である。また、Heプラズマ処理は、比較的低い温度であっても、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減することが可能である。従って、本実施形態によれば、膜ストレスの著しく上昇を招くことなく、硬度が高く、比誘電率の十分に低い層間絶縁膜42bを得ることができる。
【0064】
このようにしてUVキュア及びHeプラズマ処理を行うことにより、膜ストレスが例えば55MPa以下、比誘電率が例えば2.7以下、ヤング率が例えば8GPa以上の層間絶縁膜42bが得られる。
【0065】
次に、全面に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚15〜60nmのキャップ膜44を形成する(図4(b)参照)。キャップ膜44としては、例えば炭化シリコン(SiC)膜、炭化窒化シリコン(SiCN)膜、BN膜等を用いることができる。
【0066】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜46を形成する。
【0067】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜46に開口部48を形成する。開口部48は、配線54を埋め込むための溝50を、層間絶縁膜42及びキャップ膜44に形成するためのものである。
【0068】
次に、フォトレジスト膜46をマスクとして、例えばプラズマエッチング法により、キャップ膜44及び層間絶縁膜42を異方性エッチングする。エッチングガスとしては、例えばフッ素含有ガスを用いる。これにより、配線54を埋め込むための溝50が層間絶縁膜42及びキャップ膜44に形成される。溝50の底面には、導体プラグ40の上面が露出される。
【0069】
この後、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜46を除去する(図5(a)参照)。アッシングする際の反応ガスとしては、例えば酸素ガスが用いられる。
【0070】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚15nmのバリアメタル膜52を形成する。バリアメタル膜52としては、例えばタンタル膜を用いる。バリアメタル膜52は、配線54(図6(a)参照)中のCu(銅)が層間絶縁膜42中等へ拡散するのを防止するためのものである。
【0071】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚30nmのシード層(図示せず)を形成する。シード層の材料としては、例えばCuを用いる。
【0072】
次に、例えば電解めっき法により、Cu層54を形成する(図5(b)参照)。Cu層54の厚さは、溝50内がCu層54により十分に埋め込まれるような厚さとする。
【0073】
次に、例えばCMP法により、キャップ膜44の表面が露出するまで、Cu層54及びバリアメタル膜52を研磨する。これにより、溝50内に、Cuの配線54が埋め込まれる(図6(a)参照)。
【0074】
なお、ここでは、配線54の材料としてCuを用いる場合を例に説明したが、配線54の材料はCuに限定されるものではない。配線54の材料として、例えばCu合金等を用いてもよい。
【0075】
次に、全面に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚15〜60nmのエッチングストッパ膜56を形成する。エッチングストッパ膜56としては、例えばSiC膜、SiCN膜、BN膜等を用いることができる。
【0076】
次に、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚150〜250nmの層間絶縁膜58を形成する(図6(b)参照)。層間絶縁膜58としては、低誘電率材料の層間絶縁膜を形成する。具体的には、層間絶縁膜58として、例えば、シリコンと酸素と炭素とを含む膜を形成する。より具体的には、層間絶縁膜58として、SiOC膜を形成する。層間絶縁膜58は、図3(a)を用いて上述した層間絶縁膜42の形成方法と同様にして形成することができる。即ち、成膜室内に導入するガスとしては、例えばTMSAガス、Oガス及びCOガスを用いる。TMSAガスの流量は、例えば3sccm程度とする。Oガスの流量は、例えば200sccm程度とする。COガスの流量は、例えば5000sccm程度とする。成膜室内の圧力は、例えば10mTorr程度とする。基板温度は、例えば400℃程度とする。
【0077】
次に、層間絶縁膜58に対して、加熱しながら紫外線を照射することにより、UVキュアを行う(図7(a)参照)。層間絶縁膜58に対するUVキュアは、図3(b)を用いて上述した層間絶縁膜42に対するUVキュアと同様にして行うことができる。ただし、層間絶縁膜58は層間絶縁膜42より膜厚が厚いため、層間絶縁膜58に対して十分なUVキュアが為されるように、UVキュアの時間を長めに設定したり、UVランプのパワーを大きめに設定してもよい。層間絶縁膜58に対するUVキュアは、層間絶縁膜42に対するUVキュアと同様に、例えばUVアニール装置を用いて行うことができる。UVランプの主な波長領域は、例えば200〜500nm程度とする。UVランプの出力は、例えば1800W程度とする。反応室内の圧力は、例えば50Torr程度とする。反応室内に導入するガスは、例えばHeガスとする。Heガスの流量は、例えば7500sccm程度とする。紫外線を照射する際に加熱する温度、即ち、基板温度は、350℃以下とする。好ましくは、基板温度を、230℃〜350℃の範囲内とする。ここでは、基板温度を例えば230℃とする。UV照射時間は、例えば180秒程度とする。比較的低い温度でUVキュアを行うため、膜ストレスの著しい増加を招くことなく、層間絶縁膜58aのヤング率を向上させることができる。即ち、膜ストレスの著しい増加を招くことなく、層間絶縁膜58aを硬化させることができる。UVキュアが終了した段階では、層間絶縁膜58aの比誘電率は比較的高い状態となっている。
【0078】
次に、層間絶縁膜58aに対して、加熱しながらHeプラズマを照射することにより、Heプラズマ処理(Heプラズマキュア)を行う(図7(b)参照)。層間絶縁膜58aに対するHeプラズマ処理は、上述した層間絶縁膜42aに対するHeプラズマ処理と同様にして行うことができる。但し、層間絶縁膜58aは層間絶縁膜42aより膜厚が厚いため、層間絶縁膜58aに対して十分なHeプラズマ処理が為されるように、処理時間を長めに設定したり、プラズマの出力を大きめに設定してもよい。層間絶縁膜58aに対するHeプラズマ処理は、層間絶縁膜42aに対するHeプラズマ処理と同様に、例えばプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置を用いて行うことができる。反応室内に導入するHeガスの流量は、例えば9000sccm程度とする。反応室内の圧力は、例えば8Torr程度とする。プラズマの出力は、例えば200W程度とする。Heプラズマを行う際に加熱する温度、即ち、基板温度は、即ち、100℃〜350℃の範囲内とする。ここでは、基板温度を、例えば350℃とする。Heプラズマの照射時間は、例えば30秒程度とする。Heプラズマ処理を行うことにより、層間絶縁膜58bの比誘電率を十分に低くすることができる。比較的低い温度でHeプラズマ処理を行うため、層間絶縁膜58bの膜ストレスの著しい上昇を招くことはない。即ち、このようにしてHeプラズマ処理を行うことにより、膜ストレスの著しい上昇を招くことなく、層間絶縁膜58bの比誘電率を十分に低下させることができる。なお、層間絶縁膜58bのヤング率は、Heプラズマ処理を行うことによっては殆ど変化しない。
【0079】
このように、本実施形態では、比較的低い温度で層間絶縁膜58に対してUVキュアを行うことため、膜ストレスの著しい上昇を招くことなく、硬度の高い層間絶縁膜58aを得ることができる。UVキュアを行う際の温度が比較的低いため、UVキュアが終了した段階では、層間絶縁膜58aの比誘電率は十分に低くなっていない。次に、層間絶縁膜58aに対して、Heプラズマ処理を行うことにより、層間絶縁膜58bの比誘電率を十分に低減する。UVキュアとHeプラズマ処理のいずれも比較的低い温度で行うため、膜ストレスの著しく上昇を招くことなく、硬度が高く、比誘電率の十分に低い層間絶縁膜58bを得ることができる。
【0080】
このようにしてUVキュア及びHeプラズマ処理を行うことにより、膜ストレスが例えば55MPa以下、比誘電率が例えば2.7以下、ヤング率が例えば8GPa以上の層間絶縁膜58bが得られる。
【0081】
次に、全面に、例えばプラズマCVD法により、例えば膜厚15〜60nmのキャップ膜60を形成する(図8(a)参照)。キャップ膜60としては、例えばSiC膜、SiCN膜、BN膜等を用いることができる。
【0082】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜62を形成する。
【0083】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜62に開口部64を形成する。開口部64は、層間絶縁膜58等にコンタクトホール66(図8(b)参照)を形成するためのものである。
【0084】
次に、フォトレジスト膜62をマスクとし、例えばプラズマエッチング法により、キャップ膜60及び層間絶縁膜58をエッチングすることにより、コンタクトホール66を形成する。エッチングガスとしては、例えばCFを含むガスを用いる。
【0085】
この後、例えば酸素プラズマにより、フォトレジスト膜62を除去する。
【0086】
こうして、コンタクトホール66がキャップ膜60及び層間絶縁膜58に形成される(図8(b)参照)。
【0087】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、熱硬化性の樹脂(レジン)を塗布することにより、樹脂膜68を形成する(図9(a)参照)。これにより、コンタクトホール66内及びキャップ膜60上に樹脂膜68が形成される。
【0088】
次に、熱処理を行うことにより、樹脂膜68を硬化する。熱処理温度は、例えば250℃程度とする。熱処理時間は、例えば60秒程度とする。
【0089】
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜70を形成する。
【0090】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜70に開口部72を形成する。開口部72は、層間絶縁膜58等に溝74を形成するためのものである。
【0091】
次に、フォトレジスト膜70をマスクとし、例えばプラズマエッチング法により、キャップ膜60及び層間絶縁膜58をエッチングすることにより、層間絶縁膜58及びキャップ膜60に溝74を形成する。溝74の深さは、例えば100nm程度とする。エッチングガスとしては、例えばフッ素系ガスを用いる。なお、エッチングストッパ膜56は、樹脂膜68により保護されているため、この段階ではエッチングストッパ膜56はエッチングされない。
【0092】
次に、例えば酸素プラズマにより、フォトレジスト膜70及び樹脂膜68を除去する(図9(b)参照)。
【0093】
次に、プラズマエッチング法により、コンタクトホール66内に露出するフォトレジスト膜56をエッチングする(図10(a)参照)。エッチングガスとしては、例えばCHガスとOガスとを含む混合ガスを用いる。これにより、コンタクトホール66が配線54の上面に達する。また、このエッチングにより、キャップ膜60のうちの上部がエッチングされるとともに、溝74の深さが深くなる。
【0094】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚15nmのバリアメタル膜76を形成する(図10(b)参照)。バリアメタル膜76としては、例えばタンタル膜を用いる。バリアメタル膜76は、Cu層78中のCuが層間絶縁膜58等に拡散するのを防止するためのものである。
【0095】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚30nmのシード層(図示せず)を形成する。シード層の材料としては、例えばCuを用いる。
【0096】
次に、例えば電解めっき法により、Cu層78を形成する。Cu層78の厚さは、コンタクトホール66及び溝74内がCu層78により十分に埋め込まれるような厚さとする。
【0097】
次に、例えばCMP法により、キャップ膜60の表面が露出するまで、Cu層78、バリアメタル膜76を研磨する。これにより、溝74及びコンタクトホール66内に、Cu層78が埋め込まれる。こうして、Cu層78のうちのコンタクトホール66内に埋め込まれた部分は、導体プラグ78aとなる。Cu層78のうちの溝74内に埋め込まれた部分は、配線78bとなる。こうして、デュアルダマシン法により、導体プラグ78aと配線78bとが一体的に形成される(図11参照)。
【0098】
なお、ここでは、配線78a及び導体プラグ78bの材料としてCuを用いる場合を例に説明したが、配線78a及び導体プラグ78bの材料はCuに限定されるものではない。例えば配線78a及び導体プラグ78bの材料として、Cu合金等を用いてもよい。
【0099】
こうして、本実施形態による半導体装置が製造される。
【0100】
(評価結果)
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法の評価結果を図12乃至図14を用いて説明する。
【0101】
図12は、比較例1の場合、即ち、400℃でSiOCの層間絶縁膜に対してUVキュアを行った場合における比誘電率、ヤング率及び膜ストレスを示すグラフである。図12(a)は、UV照射時間と層間絶縁膜の比誘電率との関係を示すグラフである。図12(b)は、UV照射時間と層間絶縁膜のヤング率との関係を示すグラフである。図12(c)は、UV照射時間と層間絶縁膜の膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【0102】
SiOCの層間絶縁膜を形成する際の成膜条件は、以下の通りとした。即ち、層間絶縁膜を形成するCVD装置としては、ノベラス社製のVECTORを用いた。基板としては、シリコン基板を用いた。反応室(チャンバ)内に導入するガスとしては、TMSAガス、Oガス及びCOガスを用いた。TMSAガスの流量は2sccmとし、Oガスの流量は300sccmとし、COガスの流量は4000sccmとした。反応室内の圧力は、5.5Torrとした。印加する高周波電力は、1900Wとした。印加する低周波電力は、300Wとした。
【0103】
SiOCの層間絶縁膜に対するUVキュアの条件は、以下の通りとした。即ち、UVキュアを行う際に用いる装置としては、ノベラス社製のSOLAを用いた。UVランプとしては、主な波長領域が200〜500nmであるUVランプを用いた。UVランプの出力は、1800Wとした。反応室内の圧力は、50Torrとした。反応室内に導入するガスとしては、Heガスを用いた。Heガスの流量は、7500sccmとした。基板温度は、上述したように400℃とした。
【0104】
図12(a)から分かるように、UVキュアの時間が長くなるに伴って、層間絶縁膜の比誘電率が上昇する。
【0105】
また、図12(b)から分かるように、UVキュアの時間が長くなるに伴って、層間絶縁膜のヤング率が上昇する。
【0106】
図12(a)及び図12(b)から分かるように、5分程度のUVキュアを行った場合には、比較的小さい比誘電率が得られるとともに、比較的高いヤング率が得られると考えられる。
【0107】
しかし、5分程度のUVキュアを行った場合には、図12(c)から分かるように、膜ストレスは比較的大きくなってしまう。
【0108】
このことから、比較例1の場合、即ち、400℃の基板温度でUVキュアを行った場合には、膜ストレスが比較的大きくなってしまうことが分かる。
【0109】
図13は、比誘電率、ヤング率及び膜ストレスの比較結果を示すグラフである。図13(a)は、層間絶縁膜の収縮率と比誘電率との関係を示すグラフである。図13(b)は、層間絶縁膜の収縮率とヤング率との関係を示すグラフである。図13(c)は、層間絶縁膜の収縮率と膜ストレスとの関係を示すグラフである。◆印のプロットは、比較例2の場合、即ち、400℃の基板温度でUVキュアを行った場合を示している。■印のプロットは、比較例3の場合、即ち、230℃の基板温度でUVキュアを行った場合を示している。△印のプロットは、実施例1の場合、即ち、230℃の基板温度でUVキュアを行った後、Heプラズマ処理を行った場合を示している。
【0110】
いずれの場合も、図12に示す比較例1の場合と同様にして、SiOCの層間絶縁膜を形成した。
【0111】
また、いずれの場合も、図12に示す比較例1の場合と同様にして、SiOCの層間絶縁膜に対してUVキュアを行った。但し、比較例2においては、UVキュアの際の基板温度を400℃とした。比較例3及び実施例1においては、UVキュアの際の基板温度を250℃とした。
【0112】
実施例1においては、以下のようにしてHeプラズマ処理を行った。即ち、Heガスの流量は、9000sccmとした。反応室内の圧力は、8Torrとした。プラズマの出力は、200Wとした。基板温度は、350℃とした。Heプラズマの照射時間は、15秒とした。
【0113】
UVキュアの際の基板温度を変化させると、層間絶縁膜において生ずる反応の速度が著しく変化するため、横軸をUV照射時間としたグラフでは、それぞれの基板温度での層間絶縁膜の物性を比較することは容易ではない。このため、図13においては、横軸を層間絶縁膜の収縮率としている。
【0114】
図13(b)から分かるように、実施例1では、比較例2と同様に、比較的高いヤング率が得られている。このことから、実施例1のようにUVキュア時の基板温度が230℃と比較的低い場合であっても、比較例2、即ち、UVキュア時の基板温度が400℃の場合とほぼ同様に、層間絶縁膜を十分に硬化し得ることが分かる。
【0115】
図13(c)から分かるように、実施例1では、比較例2と比較して、膜ストレスが十分に低くなっている。このことから、UVキュアの際の基板温度を比較的低く設定することにより、層間絶縁膜の膜ストレスを低減し得ることが分かる。
【0116】
図13(a)から分かるように、実施例1では、比較例3と比較して、比誘電率が十分に低くなっている。このことから、Heプラズマ処理を行うことにより、UVキュアの基板温度を比較的低く設定した場合であっても、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減し得ることが分かる。
【0117】
これらの結果から、比較的低い基板温度でUVキュアを行い、この後、Heプラズマ処理を行えば、膜ストレスが大きくなるのを防止しつつ、層間絶縁膜を硬化し得るとともに、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減し得ることが分かる。
【0118】
図14は、UVキュアの際の基板温度と比誘電率、ヤング率及び膜ストレスとの関係を示すグラフである。図14(a)は、UVキュアの際の基板温度と層間絶縁膜の比誘電率との関係を示すグラフである。図14(b)は、UVキュアの際の基板温度と層間絶縁膜のヤング率との関係を示すグラフである。図14(a)は、UVキュアの際の基板温度と層間絶縁膜の膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【0119】
いずれの場合も、層間絶縁膜に対してUVキュアを行った後、Heプラズマ処理を行った。UVキュアの条件及びHeプラズマ処理の条件は、上記実施例1の場合と同様とした。但し、基板温度については、適宜設定した。
【0120】
図14(a)から分かるように、UVキュアの際の基板温度が230℃〜350℃の範囲内では、UVキュアの際の基板温度が400℃の場合と同様に、比較的低い比誘電率が得られている。
【0121】
図14(b)から分かるように、UVキュアの際の基板温度が230℃〜350℃の範囲内では、UVキュアの際の基板温度が400℃の場合と同様に、比較的高いヤング率が得られている。
【0122】
図14(c)から分かるように、UVキュアの際の基板温度が230℃〜350℃の範囲内では、UVキュアの際の基板温度が400℃の場合と比較して、膜ストレスが十分に小さく抑制されている。
【0123】
これらのことから、UVキュア時の基板温度を230℃〜350℃とすることにより、層間絶縁膜の膜ストレスが大きくなるのを確実に防止し得ることが分かる。
【0124】
このように、本実施形態では、350℃以下という比較的低い基板温度に設定した状態でSiOCの層間絶縁膜に対してUVキュアを行う。比較的低い基板温度に設定した状態でUVキュアを行うため、本実施形態によれば、層間絶縁膜の膜ストレスが大きくなってしまうのを防止しつつ、層間絶縁膜の硬度を高くすることができる。UVキュアの際の基板温度が比較的低いため、UVキュアが終了した段階では、層間絶縁膜の比誘電率は十分に低減されていない。このため、本実施形態では、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減すべく、層間絶縁膜に対してHeプラズマ処理を行う。本実施形態では、Heプラズマ処理を行うため、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減することができる。しかも、Heプラズマ処理は、比較的低い温度であっても、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減し得るため、Heプラズマ処理の際に膜ストレスが著しく大きくなってしまうこともない。従って、本実施形態によれば、層間絶縁膜の膜ストレスが著しく大きくなってしまうのを防止しつつ、層間絶縁膜を硬化し得るとともに、層間絶縁膜の比誘電率を十分に低減し得る。従って、本実施形態によれば、信頼性が高く、電気的特性の良好な半導体装置を提供することが可能となる。
【0125】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0126】
例えば、上記実施形態では、シリコンと炭素と酸素とを含む層間絶縁膜としてSiOC膜を形成する場合を例に説明したが、SiOC膜に限定されるものではない。シリコンと炭素と酸素とを含む層間絶縁膜に広く適用することが可能である。例えば、層間絶縁膜がSiOCH膜であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
2…NMOSトランジスタ形成領域
10…半導体基板
12…素子分離領域
14…素子領域
16…ウェル
18…ゲート絶縁膜
20…ゲート電極
22…エクステンション領域
24…サイドウォール絶縁膜
26…不純物領域
28…ソース/ドレイン拡散層
30…シリサイド膜
32…トランジスタ
34…層間絶縁膜
36…コンタクトホール
38…下地金属膜
40…導体プラグ
42…層間絶縁膜
42a…UVキュア後の層間絶縁膜
42b…Heプラズマ処理後の層間絶縁膜
44…キャップ膜
46…フォトレジスト膜
48…開口部
50…溝
52…バリアメタル膜
54…Cu層、配線
56…エッチングストッパ膜
58…層間絶縁膜
58a…UVキュア後の層間絶縁膜
58b…Heプラズマ処理後の層間絶縁膜
60…キャップ膜
62…フォトレジスト膜
64…開口部
66…コンタクトホール
68…樹脂層
70…フォトレジスト膜
72…開口部
74…溝
76…バリアメタル膜
78…Cu層
78a…導体プラグ
78b…配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、化学気相堆積法により、シリコンと酸素と炭素とを含む絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜を形成する工程の後、350℃以下の温度で加熱しながら前記絶縁膜に対して紫外線キュアを行う工程と、
前記紫外線キュアを行う工程の後、前記絶縁膜に対してヘリウムプラズマ処理を行う工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜は、SiOC膜である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法において、
前記紫外線キュアを行う工程では、230℃〜350℃の範囲内の温度で加熱しながら、前記絶縁膜に対して紫外線キュアを行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ヘリウムプラズマ処理を行う工程では、350℃以下の温度で加熱しながら、前記絶縁膜に対してヘリウムプラズマ処理を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記ヘリウムプラズマ処理を行う工程では、100℃〜350℃の範囲内の温度で加熱しながら、前記絶縁膜に対してヘリウムプラズマ処理を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−4401(P2012−4401A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139018(P2010−139018)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】