説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】酸素濃度を低減した処理液で基板を処理できる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置1は、基板Wを保持するスピンチャック3と、スピンチャック3に保持された基板Wに対向する基板対向面34を有し、基板対向面34の周囲からスピンチャック3に向かって突出した周壁部32が形成された遮断板6と、スピンチャック3に保持された基板Wに処理液を供給する第1上側処理液供給管35とを備えている。第1上側処理液供給管35には、第2上側処理液供給管38を介して第1配管内調合ユニット51から薬液が供給される。この薬液は、薬液原液と、不活性ガス溶存水生成ユニット50によって純水中の酸素が脱気され、当該純水中に不活性ガスが添加されて生成された不活性ガス溶存水とが第1混合部59内で混合されることにより調合されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路素子の高集積化および高速度化は、市場の要求である。この要求に応えるために、従来から用いられてきたアルミニウム配線に代えて、より低抵抗の銅配線が用いられるようになってきた。銅配線を、低誘電率絶縁膜(いわゆるLow−k膜。比誘電率が酸化シリコンよりも小さな材料からなる絶縁膜をいう。)と組み合わせて多層配線を形成すれば、極めて高速で動作する集積回路素子を実現できる。
【0003】
異なる層の銅配線間の接続は、層間絶縁膜に形成されたヴィアに埋め込まれた銅プラグによって達成される。微細な配線パターンを形成するためには、高いアスペクト比のヴィアが要求されるから、ヴィアの形成には、反応性イオンエッチングに代表されるドライエッチング法が適用される。
しかし、ドライエッチング法では、処理対象の膜だけでなくレジストも腐食されていき、その一部は、変質してポリマー(レジスト残渣)として、基板表面に残留する。配線パターンが微細であるがゆえに、次工程までに、このポリマーを基板上から確実に除去しておかなければならない。
【0004】
ポリマー除去処理を行うことができる基板処理装置は、処理対象の基板を保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックにより回転される基板の上面にポリマー除去液などの処理液を供給するノズルとを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−158482号公報
【特許文献2】特開2004−22572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記のような構成では、ポリマー除去液が空気に触れ、このポリマー除去液中に酸素が溶け込むという問題がある。酸素濃度の高いポリマー除去液が基板に供給されると、ポリマー除去液中の溶存酸素により基板上の金属膜(銅膜など)が酸化され、金属酸化物を生じる場合がある。しかし、この金属酸化物はポリマー除去液によってエッチングされるので、基板上の配線膜等の金属膜の膜減りが生じ、この基板から作成されるデバイスの特性を劣化させるおそれがある。
【0006】
この課題は、金属酸化物に対するエッチング作用を有する薬液を用いて基板を処理する基板処理装置(ウェットエッチング処理装置)にも共通する課題である。また、金属酸化物に限らず、一般に、酸化物に対するエッチング作用を有する薬液を用いて基板を処理する場合に、同様の問題に直面する。
そこで、この発明の目的は、酸素濃度を低減した処理液で基板を処理できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持機構(3)と、前記基板保持機構に保持された基板に対向する基板対向面(34)を有し、この基板対向面の周囲から前記基板保持機構に向かって突出した周壁部(32,132,232,332)が形成された遮断部材(6)と、前記基板保持機構に保持された基板に処理液を供給する処理液ノズル(35)と、純水中の酸素を脱気し、当該純水中に不活性ガスを添加して不活性ガス溶存水を生成する不活性ガス溶存水生成ユニット(50)と、薬液原液と前記不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水とを配管(59)内で混合して前記処理液としての薬液を調合する配管内調合ユニット(51)と、前記配管内調合ユニットから前記処理液ノズルへと処理液を導く処理液供給路(38)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、基板保持手段に保持された基板に処理液ノズルから処理液を供給することにより、当該基板を処理することができる。処理液ノズルに供給される処理液は、処理液供給路によって配管内調合ユニットから導かれたものである。また、配管内調合ユニットは、薬液原液と、不活性ガス溶存水生成ユニットによって純水中の酸素が脱気され、当該純水中に不活性ガスが添加されて生成された不活性ガス溶存水とを配管内で混合して処理液としての薬液を調合することができる。さらに、配管内において薬液原液と不活性ガス溶存水とが混合されるので、配管内調合ユニットによって調合された薬液は、空気に触れて酸素濃度が上昇することが抑制または防止されている。さらにまた、調合された薬液に含まれる不活性ガス溶存水には不活性ガスが添加されているので、当該薬液中の酸素濃度の上昇が抑制または防止されている。したがって、酸素濃度が低減された薬液を配管内調合ユニットから処理液ノズルに供給し、この酸素濃度が低減された薬液を処理液ノズルから吐出させることができる。
【0009】
また、この発明によれば、基板対向面および周壁部を有する遮断部材により、基板表面の雰囲気をその外部の雰囲気から遮断することができる。これにより、基板表面の雰囲気の酸素濃度の上昇を抑制または防止することができる。したがって、処理液ノズルから吐出された処理液が、基板に達するまでや基板上で空気に触れて、その酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。そのため、酸素濃度が低減された状態を維持しつつ、処理液ノズルからの薬液を基板に供給することができる。これにより、基板上において、薬液中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。その結果、基板に供給される薬液が酸化物に対するエッチング作用を有するものであったとしても、基板上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
【0010】
「薬液原液」とは、不活性ガス溶存水との混合前の薬液を意味する。薬液原液の例としては、フッ酸(HF)、塩酸(HCL)、フッ酸とIPA(イソプロピルアルコール)の混合液、フッ化アンモニウム(NH4F)を例示できる。フッ酸を用いる場合には、フッ酸原液と不活性ガス溶存水とを所定の割合で混合(調合)することによって、希フッ酸(DHF)が生成される。
【0011】
前記基板は、表面にポリマー残渣(ドライエッチングやアッシング後の残渣)が付着したものであってもよい。この場合に、前記薬液は、前記ポリマー残渣を除去するためのポリマー除去液であることが好ましい。希フッ酸は、ポリマー除去液の一例である。
ポリマー除去液としては、有機アルカリ液を含む液体、有機酸を含む液体、無機酸を含む液体、フッ化アンモン系物質を含む液体のうちの少なくともいずれか1つが使用できる。そのうち、有機アルカリ液を含む液体としては、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヒドロキシルアミン、コリンのうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。また、有機酸を含む液体としては、クエン酸、蓚酸、イミノジ酸、および琥珀酸のうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。また、無機酸を含む液体としては、フッ酸および燐酸のうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。その他、ポリマー除去液としては、1−メチル−2ピロリドン、テトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシド、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、2−(2アミノエトキシ)エタノール、カテコール、N−メチルピロリドン、アロマティックジオール、パークレン(テトラクロロエチレン)、フェノールを含む液体などのうちの少なくともいずれか1つを含む液体があり、より具体的には、1−メチル−2ピロリドンとテトラヒドロチオフェン1.1−ジオキシドとイソプロパノールアミンとの混合液、ジメチルスルホキシドとモノエタノールアミンとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとヒドロキシアミンとカテコールとの混合液、2−(2アミノエトキシ)エタノールとN−メチルピロリドンとの混合液、モノエタノールアミンと水とアロマティックジオールとの混合液、パークレン(テトラクロロエチレン)とフェノールとの混合液などのうちの少なくともいずれか1つが挙げられる。その他、トリエタノールアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのアミン類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのうちの少なくともいずれか1つを含む液体が挙げられる。
【0012】
ポリマー除去液の他にも、High-k Metal 材料の選択エッチング液などの他の薬液を用いる基板処理に対しても、この発明を適用できる。
また、前記基板は、表面に金属パターンが露出したものであってもよい。金属パターンは、金属配線であってもよい。金属パターンは、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜の一例としては、銅膜の表面に拡散防止のためのバリアメタル膜を形成した積層膜を挙げることができる。
【0013】
また、前記不活性ガスの典型例は、窒素ガスであるが、その他にも、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを用いることもできる。
また、前記処理液ノズルは、前記基板対向面から前記基板保持機構に保持された基板に臨む(対向する)吐出口(37)を有するものであってもよい。
また、前記基板処理装置は、前記遮断部材と前記基板保持機構に保持された基板との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段(36,39,40,41)をさらに含むことが好ましい。この不活性ガス供給手段は、前記遮断部材の基板対向面から前記基板保持機構に保持された基板に臨む不活性ガス吐出口(40)を有するものであることが好ましい。
【0014】
また、前記基板保持機構は、基板を保持して回転させる基板保持回転機構(3)であってもよい。この場合に、前記基板保持回転機構による基板の回転軸線(L1)と共通の軸線まわりに前記遮断部材を回転させる遮断部材回転機構(43)がさらに備えられていることが好ましい。
請求項2記載の発明は、前記不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水を前記薬液と混合することなく、そのまま処理液として基板に供給する不活性ガス溶存水供給手段(62,86)をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置である。
【0015】
この発明によれば、基板保持手段に保持された基板に不活性ガス溶存水を供給して、不活性ガス溶存水によって基板を洗い流すことができる。したがって、たとえば薬液が基板に付着している場合に、当該基板を洗い流して薬液を除去することができる。
また、前述のように、基板表面の雰囲気は、酸素濃度の上昇が抑制または防止されている。さらに、不活性ガス溶存水は酸素が脱気されたものである。したがって、基板に対して酸素濃度が低減された不活性ガス溶存水を供給することができる。これにより、基板W上において、不活性ガス溶存水中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。したがって、たとえば、酸化物に対するエッチング作用を有する薬液が基板に供給された後に、不活性ガス溶存水を基板に供給する場合であったとしても、基板W上に残留している薬液により酸化物がエッチングされることを抑制または防止することができる。これにより、基板W上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
【0016】
前記不活性ガス溶存水供給手段は、たとえば、前記配管内調合ユニットへの薬液原液の供給/停止を切り換える薬液バルブ(62)と、この薬液バルブを開閉制御するバルブ制御手段(86)とを含むものであってもよい。この場合、バルブ制御手段によって薬液バルブを閉じることによって、配管内調合ユニットに供給された不活性ガス溶存水は、薬液原液と混合されることなく、そのまま処理液供給路から処理液ノズルへと供給され、この処理液ノズルから基板へと供給される。
【0017】
むろん、前記不活性ガス溶存水供給手段は、前記処理液ノズルとは別系統の供給路を介して前記基板保持機構に保持された基板に不活性ガス溶存水を供給するものであってもよい。
請求項3記載の発明は、前記遮断部材の周壁部は、前記基板の周端面全周を取り囲むことができるように形成されている、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0018】
この発明によれば、遮断部材の周壁部が筒状(円形基板の場合には、たとえば円筒状)に形成されており、この筒状の周壁部によって、基板の周端面全周を取り囲むことができる。したがって、基板表面の雰囲気をその周囲の雰囲気から確実に遮断することができ、基板表面の雰囲気をその外部の雰囲気から一層確実に遮断することができる。
たとえば、前記基板対向面は前記基板保持機構に保持された基板の主面に平行な平面に形成されていてもよい。また、前記周壁部は、基板の周端面に対向する内壁面(49,149,249)を有し、この内壁面が、基板主面の法線(L2)に平行な面であってもよいし、基板主面の法線に対して傾斜した面(好ましくは、基板の外方に向かうに従って基板保持機構に接近するように傾斜した面)であってもよいし、先端縁に向かうに従って基板主面の法線に対する傾斜角が漸次的に変化する面(基板主面の法線を含む平面でとった断面が曲線となるような面)であってもよい。
【0019】
請求項4記載の発明は、前記基板保持機構は、前記遮断部材の基板対向面に対向する表面(8a)を有する保持ベース(8)を備えており、前記基板処理装置は、前記遮断部材を前記保持ベースに対して、所定の処理位置と退避位置との間で、接近/離反させる遮断部材移動機構(42)をさらに含み、前記処理位置は、前記遮断部材の周壁部の先端縁が前記基板保持機構に保持された基板よりも前記保持ベースの近くに位置するように定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0020】
より具体的には、前記遮断部材移動機構を制御する制御手段(86)が備えられており、この制御手段の制御によって、遮断部材が保持ベースに対して接近/離反させられるようになっていてもよい。また、前記処理位置は、前記遮断部材の周壁部の先端縁と保持ベースの表面との間に予め定められた大きさの間隔(G1)が形成されるように設定されていることが好ましい。この間隔は、基板対向面と基板との間隔と同等、または基板対向面と基板との間隔よりも小さいことが好ましい。
【0021】
この発明によれば、遮断部材移動機構によって遮断部材を保持ベースに接近させることができるので、基板保持手段に保持された基板に対して遮断部材の基板対向面を接近させることができる。これにより、基板と基板対向面との間隔を小さくして、基板表面の雰囲気をその外部の雰囲気から一層確実に遮断することができる。また、前記処理位置では、周壁部の先端縁が基板保持機構に保持された基板よりも保持ベースに近づくので、基板保持機構に基板が保持された状態で、遮断部材を前記処理位置に位置させることにより、周壁部を基板の周囲に位置させることができる。これにより、基板表面の雰囲気をその周囲の雰囲気から確実に遮断することができる。さらに、前記処理位置が、前記遮断部材の周壁部の先端縁と保持ベースの表面との間に予め定められた大きさの間隔が形成されるように設定されている場合には、基板と基板対向面との間の雰囲気を、周壁部の先端縁と保持ベースの表面との間から排気することができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、薬液原液を貯留する薬液タンク(71)と、前記薬液タンク内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段(77,78)と、前記薬液タンクから前記配管内調合ユニットに薬液原液を導く薬液供給路(55,56)とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、不活性ガス供給手段によって薬液タンク内に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク内に不活性ガスを充填することができる。これにより、薬液タンクに貯留された薬液原液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。したがって、酸素濃度が上昇した薬液原液が、薬液供給路を介して薬液タンクから配管内調合ユニットに供給されることを抑制または防止することができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、薬液原液中の酸素を脱気する脱気ユニット(74)をさらに含み、この脱気ユニットによって脱気された薬液原液が前記配管内調合ユニットに供給されるようになっている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、薬液原液中の酸素が脱気ユニットによって脱気された薬液原液が配管内調合ユニットに供給されるので、配管内調合ユニットによって調合される薬液中の酸素濃度を低減することができる。したがって、配管内調合ユニットから処理液ノズルに対して酸素濃度が低減された薬液を処理液として供給し、この酸素濃度が低減された薬液を基板に供給することができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、前記処理液供給路は、処理液が流通する内配管(80)と、この処理液配管を取り囲む外配管(81)とを含み、前記内配管と外配管との間に不活性ガスを充填する不活性ガス充填手段(82,83)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、不活性ガス充填手段によって、内配管と外配管との間に不活性ガスを充填することにより、内配管を不活性ガスによって包囲することができる。したがって、内配管がたとえば酸素透過性の材料で形成されている場合であっても、内配管を介して内配管の内部に進入する酸素の量を低減することができる。これにより、内配管内を流通する処理液に酸素が溶け込んで、当該処理液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。
【0025】
前記内配管および外配管は、たとえば、フッ素樹脂(より具体的にはPFA(perfluoro−alkylvinyl−ether−tetrafluoro−ethlene−copolymer)製の管で構成されていてもよい。
請求項8記載の発明は、前記配管内調合ユニットを制御する制御手段(86)をさらに含み、この制御手段は、前記不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水を薬液原液と混合することなく前記処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する不活性ガス溶存水供給工程を実行し、その後に、前記配管内調合ユニットによって薬液原液と不活性ガス溶存水とを配管内で混合して薬液を調合し、この薬液を処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する薬液供給工程を実行するものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0026】
この発明によれば、不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水が、配管内調合ユニットおよび処理液供給路を介して処理液ノズルに供給され、その後、配管内調合ユニットで調合された薬液が、処理液供給路を介して処理液ノズルに供給される。したがって、たとえば処理液供給路に処理液が残留していた場合に、この残留処理液を不活性ガス溶存水によって除去した後、配管内調合ユニットで調合された薬液を処理液供給路を介して処理液ノズルに供給することができる。これにより、処理液供給路に残留している処理液中の酸素濃度が上昇している場合であっても、このような処理液とともに薬液が基板に供給されることを抑制または防止することができる。よって、基板上において、薬液中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。
【0027】
請求項9記載の発明は、前記制御手段は、前記不活性ガス溶存水供給工程を、前記処理液ノズルから吐出される処理液中の酸素濃度が20ppb以下となるまで継続する、請求項8記載の基板処理装置である。
この発明によれば、前記不活性ガス溶存水供給工程の後に行われる前記薬液供給工程において、基板の酸化反応を確実に抑制または防止できる低い酸素濃度の薬液(酸素濃度が20ppb以下の薬液)を処理液ノズルに供給することができる。したがって、このような低酸素濃度の薬液を基板に供給することにより、基板の酸化反応の発生を確実に抑制または防止することができる。
【0028】
請求項10記載の発明は、前記遮断部材と前記基板保持機構に保持された基板との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段(36,39,40,41)をさらに含み、前記制御手段は、さらに、前記不活性ガス供給手段を制御することによって、前記薬液供給工程に先立って、基板の表面付近の雰囲気を不活性ガスで置換する雰囲気置換工程を実行するものである、請求項8または9記載の基板処理装置である。
【0029】
この発明によれば、前記薬液供給工程に先立って、遮断部材と前記基板保持機構に保持された基板との間の空間に不活性ガスが供給され、基板の表面付近の雰囲気が不活性ガスで置換される。したがって、処理液ノズルから吐出された薬液が、基板に達するまでや基板上で空気に触れて、当該薬液中の酸素濃度が上昇することを一層確実に抑制または防止することができる。これにより、酸素濃度が低減された状態を維持しつつ、処理液ノズルからの薬液を基板に供給することができる。したがって、基板上において、薬液中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。
【0030】
請求項11記載の発明は、処理液ノズルから基板へと処理液を供給して当該基板を処理する基板処理方法であって、純水中の酸素を脱気し、当該純水中に不活性ガスを添加して不活性ガス溶存水を生成する不活性ガス溶存水生成工程と、薬液原液と前記不活性ガス溶存水とを配管内で混合して薬液を調合し、この薬液を処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する薬液供給工程(S14、S24、S34)と、前記薬液供給工程に先立って行われ、基板の表面付近の雰囲気を不活性ガスで置換する雰囲気置換工程(S11、S21、S31)と、前記薬液液供給工程に先立って(より好ましくは、雰囲気置換工程の開始後に)行われ、前記不活性ガス溶存水生成工程によって生成された不活性ガス溶存水を薬液原液と混合することなく前記処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する不活性ガス溶存水供給工程(S13、S23、S33)とを含む、基板処理方法である。
【0031】
この発明によれば、不活性ガス溶存水生成工程において、純水中の酸素が脱気され、当該純水中に不活性ガスが添加されて不活性ガス溶存水が生成される。そして、この不活性ガス溶存水が、薬液供給工程において、配管内で薬液原液と混合され、処理液としての薬液が調合される。さらに、調合された薬液が処理液供給路を介して処理液ノズルに供給される。これにより、処理液としての薬液を基板に供給して、当該基板を処理することができる。
【0032】
また、この発明によれば、薬液供給工程に先立って、雰囲気置換工程および不活性ガス溶存水供給工程が行われる。すなわち、薬液供給工程に先立って、基板の表面付近の雰囲気が不活性ガスで置換される。さらに、前記不活性ガス溶存水生成工程によって生成された不活性ガス溶存水が、薬液原液と混合されることなく前記処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給され、前記処理液供給路内および前記処理液ノズル内がこの不活性ガス溶存水によって洗い流される。したがって、薬液供給工程において処理液ノズルから吐出された薬液が、基板に達するまでや基板上で空気に触れて、その酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。さらに、前記処理液供給路内および前記処理液ノズル内に酸素濃度が上昇した処理液が残留していたとしても、このような処理液とともに薬液が基板に供給されることを抑制または防止することができる。これにより、酸素濃度が低減された薬液で基板を処理することができる。したがって、基板上において、薬液中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。その結果、基板に供給される薬液が酸化物に対するエッチング作用を有するものであったとしても、基板上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
【0033】
さらに、前記薬液供給工程において、薬液原液と不活性ガス溶存水とが配管内で混合されるので、調合された薬液は、空気に触れて酸素濃度が上昇することが抑制または防止されている。さらにまた、調合された薬液に含まれる不活性ガス溶存水には不活性ガスが添加されているので、当該薬液中の酸素濃度の上昇が抑制または防止されている。これにより、酸素濃度が一層低減された薬液を処理液供給路を介して処理液ノズルへと供給することができる。
【0034】
前記雰囲気置換工程は、遮断部材の基板対向面を基板の表面に対向させた状態で、前記遮断部材と基板との間の空間に不活性ガスを供給する工程(S11、S21、S31)を含むことが好ましい。
より具体的には、請求項12記載の発明のように、前記雰囲気置換工程は、遮断部材の基板対向面を基板の表面に対向させるとともに、前記基板対向面の周囲から突出した周壁部によって基板の周囲を包囲した状態で、前記遮断部材と基板との間の空間に不活性ガスを供給する工程(S11、S21、S31)を含むことが好ましい。
【0035】
遮断部材の基板対向面を基板の表面に対向させることにより、基板表面の雰囲気をその外部の雰囲気から遮断することができる。また、遮断部材の基板対向面を基板の表面に対向させ、さらに、前記基板対向面の周囲から突出した周壁部によって基板の周囲を包囲することにより、基板表面の雰囲気をその外部の雰囲気から一層確実に遮断することができる。したがって、遮断部材の基板対向面を基板の表面に対向させることにより、基板表面の雰囲気の酸素濃度の上昇を抑制または防止することができる。さらに、遮断部材と基板との間の空間に不活性ガスを供給することにより、基板表面の雰囲気を不活性ガス雰囲気にすることができる。したがって、処理液ノズルから吐出された薬液が、基板に達するまでや基板上で空気に触れて、当該薬液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。これにより、酸素濃度が低減された状態を維持しつつ、処理液ノズルからの薬液を基板に供給することができる。その結果、基板上において、薬液中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。
【0036】
前記遮断部材は、請求項12記載の発明のように、周壁部を有するものであってもよいし、周壁部を有さないものであってもよい。
請求項13記載の発明は、前記雰囲気置換工程は、前記遮断部材の基板対向面に対向する表面を有する保持ベースによって基板を保持する工程と、前記遮断部材の周壁部の先端縁を前記基板よりも前記保持ベースの表面に近づけた状態とする工程とを含む、請求項12記載の基板処理方法である。
【0037】
この発明によれば、遮断部材の周壁部の先端縁を基板よりも保持ベースの表面に近づけることにより、周壁部によって基板の周囲を確実に包囲することができる。これにより、基板表面の雰囲気をその周囲の雰囲気から確実に遮断することができ、基板表面の雰囲気をその外部の雰囲気から一層確実に遮断することができる。
請求項14記載の発明は、前記不活性ガス溶存水供給工程は、前記処理液ノズルから吐出される処理液中の酸素濃度が20ppb以下となるまで継続され、その後に前記薬液供給工程が実行される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
【0038】
この発明によれば、前記不活性ガス溶存水供給工程の後に行われる前記薬液供給工程において、基板の酸化反応を確実に抑制または防止できる低い酸素濃度の薬液(酸素濃度が20ppb以下の薬液)を処理液ノズルに供給することができる。したがって、このような低酸素濃度の薬液を基板に供給することにより、基板の酸化反応の発生を確実に抑制または防止することができる。
【0039】
請求項15記載の発明は、前記薬液供給工程の後に、前記不活性ガス溶存水生成工程によって生成された不活性ガス溶存水を基板に供給し、当該基板の表面の薬液をリンスするリンス工程(S15、S25、S35)をさらに含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、前記薬液供給工程の後に、前記不活性ガス溶存水生成工程によって生成された不活性ガス溶存水が基板に供給されるので、基板に付着している薬液を当該基板から除去することができる。また、酸素が脱気された不活性ガス溶存水が基板に供給されるので、基板の酸化反応を抑制または防止することができる。これにより、基板W上に残留している薬液により基板上の酸化物がエッチングされることを抑制または防止することができる。したがって、基板W上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
【0040】
請求項16記載の発明は、薬液原液を貯留する薬液タンク内に不活性ガスを供給する工程をさらに含み、前記薬液供給工程では、前記薬液タンクから汲み出した薬液原液を用いて薬液が調合される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、薬液タンク内に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク内に不活性ガスを充填することができる。これにより、薬液タンクに貯留された薬液原液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。したがって、前記薬液供給工程において、酸素濃度が上昇した薬液原液が汲み出され、この薬液原液を用いて薬液が調合されることを抑制または防止することができる。
【0041】
請求項17記載の発明は、前記薬液原液を脱気する工程をさらに含み、前記薬液供給工程では、前記脱気された薬液原液を用いて薬液が調合される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、酸素が脱気された薬液原液を用いて薬液が調合されるので、当該薬液中の酸素濃度を一層低減することができる。これにより、酸素濃度が一層低減された薬液を基板に供給することができる。
【0042】
請求項18記載の発明は、前記処理液供給路は、処理液が流通する内配管と、この処理液配管を取り囲む外配管とを有しており、前記内配管と外配管との間に不活性ガスを充填する不活性ガス充填工程をさらに含む、請求項11〜17のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、内配管と外配管との間に不活性ガスが充填され、内配管が不活性ガスによって包囲される。したがって、内配管がたとえば酸素透過性の材料で形成されている場合であっても、内配管を介して内配管の内部に進入する酸素の量を低減することができる。これにより、内配管内を流通する処理液に酸素が溶け込んで、当該処理液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。
【0043】
請求項19記載の発明は、前記基板は、表面にポリマー残渣が付着したものであり、前記薬液は、前記ポリマー残渣を除去するためのポリマー除去液である、請求項11〜18のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、酸素濃度が低減されたポリマー除去液を基板に供給して、基板の酸化反応を抑制または防止しつつ、当該基板の表面からポリマー残渣を除去することができる。
【0044】
請求項20記載の発明は、前記基板は、表面に金属パターンが露出したものである、請求項11〜19のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、酸素濃度が低減された処理液を基板表面に供給できるので、基板表面の金属パターンの酸化反応を抑制または防止しつつ当該基板表面を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解図である。
基板処理装置1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板Wは、この実施形態では、半導体ウエハのような円形基板である。基板処理装置1は、基板Wを処理するための処理モジュールM1を有している。処理モジュールM1は、隔壁で区画された処理室2内に、1枚の基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持機構、基板保持回転機構)と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に処理液の液滴を供給するための二流体ノズル4と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための処理液ノズル5と、スピンチャック3の上方に配置された遮断板6(遮断部材)とを備えている。
【0046】
スピンチャック3は、鉛直な方向に延びる回転軸7と、回転軸7の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース8(保持ベース)と、このスピンベース8上に配置された複数個の挟持部材9と、回転軸7に結合されたチャック回転駆動機構10とを備えている。スピンベース8は、たとえば、基板Wよりも直径が大きな円盤状の部材である。スピンベース8の上面8a(保持ベースの表面)は、基板Wよりも直径が大きな円形の平面にされている。
【0047】
複数個の挟持部材9は、スピンベース8の上面8a周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。複数個の挟持部材9は、互いに協働して1枚の基板Wを水平な姿勢で挟持(保持)することができる。複数個の挟持部材9によって基板Wが保持された状態で、チャック回転駆動機構10の駆動力が回転軸7に入力されることにより、保持された基板Wがその中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに回転される。
【0048】
また、回転軸7は中空軸とされている。回転軸7の内部には、第1下側処理液供給管11が非接触状態で挿通されている。第1下側処理液供給管11の上端には、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル12が設けられている。下面ノズル12は、その吐出口12aが複数個の挟持部材9により保持された基板Wの下面中央部に近接するように配置されている。
【0049】
また、第1下側処理液供給管11には、第2下側処理液供給管13が接続されている。第1下側処理液供給管11には、第2下側処理液供給管13を介して処理液としての薬液およびリンス液が選択的に供給される。これにより、第1下側処理液供給管11から下面ノズル12に処理液を供給して、下面ノズル12の吐出口12aから基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出させることができる。
【0050】
また、回転軸7と第1下側処理液供給管11との間には、第1下側処理液供給管11を取り囲む下側ガス供給路14が形成されている。下側ガス供給路14の上端は、スピンベース8の上面8aと同じ高さに位置する環状の下側ガス吐出口15となっている。下側ガス供給路14には、下側ガス供給管16が接続されている。下側ガス供給路14には、下側ガス供給管16を介して図示しないガス供給源からの不活性ガス(たとえば、窒素ガス)が供給される。下側ガス供給路14に供給された不活性ガスは、下側ガス吐出口15から上方に向けて吐出される。下側ガス供給管16には、下面ノズル12への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるための下側ガスバルブ17が介装されている。
【0051】
二流体ノズル4は、たとえば、ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を生成する外部混合型のものである。二流体ノズル4は、処理液の液滴をスピンチャック3に保持された基板Wの上面に衝突させて、基板Wの上面から異物を剥離させることができる。二流体ノズル4は、水平に延びるノズルアーム19の先端部に取り付けられている。二流体ノズル4は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック3よりも上側に配置されている。
【0052】
二流体ノズル4には、処理液供給管20および気体供給管21が接続されている。二流体ノズル4には、処理液供給管20および気体供給管21を介してそれぞれ処理液(たとえば炭酸水)および気体(たとえば窒素ガス)が供給される。二流体ノズル4は、供給された処理液および気体を混合させて処理液の液滴を生成することができる。処理液供給管20には、二流体ノズル4への処理液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ22が介装されている。また、気体供給管21には、二流体ノズル4への気体の供給および供給停止を切り換えるための気体バルブ23が介装されている。
【0053】
また、ノズルアーム19には、鉛直方向に沿って延びる支持軸24が結合されている。支持軸24は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸24には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構25が結合されている。ノズル揺動駆動機構25の駆動力が支持軸24に入力されることにより、二流体ノズル4およびノズルアーム19が、支持軸24の中心軸線まわりに一体的に水平移動させられる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に二流体ノズル4を配置したり、スピンチャック3の上方から二流体ノズル4を退避させたりすることができる。また、スピンチャック3によって基板Wを回転させた状態で、二流体ノズル4からの処理液の液滴を基板Wの上面に供給しつつ、当該二流体ノズル4を所定の角度範囲で揺動させることにより、基板Wの上面における液滴の衝突位置(供給位置)を移動させることができる。
【0054】
具体的には、基板Wの上面における液滴の衝突位置が、たとえば、当該上面内において、円弧状の軌跡を描きつつ回転中心と周縁部との間を移動したり、回転中心を通る円弧状の軌跡を描きつつ周縁部から周縁部に移動したりするように、二流体ノズル4を水平移動させることができる。これにより、基板Wの上面を処理液の液滴によってスキャンして、当該上面全域に処理液の液滴を直接衝突させることができる。
【0055】
処理液ノズル5は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルである。処理液ノズル5は、水平に延びるノズルアーム26の先端部に取り付けられている。処理液ノズル5は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック3よりも上側に配置されている。
処理液ノズル5には、2つの処理液供給管27a,27bが接続されている。処理液ノズル5には、処理液供給管27aを介して図示しない処理液供給源からの処理液(たとえば炭酸水)が供給される。また、処理液ノズル5には、処理液供給管27bを介して図示しない処理液供給源からの処理液(たとえば純水(脱イオン水))が供給される。処理液供給管27aには、処理液ノズル5への処理液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ28aが介装されている。また、処理液供給管27bには、処理液ノズル5への処理液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ28bが介装されている。
【0056】
また、ノズルアーム26には、鉛直方向に沿って延びる支持軸29が結合されている。支持軸29は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸29には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構30が結合されている。ノズル揺動駆動機構30の駆動力が支持軸29に入力されることにより、処理液ノズル5およびノズルアーム26が、支持軸29の中心軸線まわりに一体的に水平移動させられる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に処理液ノズル5を配置したり、スピンチャック3の上方から処理液ノズル5を退避させたりすることができる。また、スピンチャック3によって基板Wを回転させた状態で、当該基板Wの上面に向けて処理液ノズル5から処理液を吐出させつつ、当該処理液ノズル5を所定の角度範囲で揺動させることにより、基板Wの上面における処理液の着液位置を移動させることができる。これにより、基板Wの上面を処理液によってスキャンして、当該上面の全域に処理液を着液させることができる。
【0057】
遮断板6は、厚みがほぼ一定の円板状の部材である。遮断板6の直径は、基板Wより大きくされている。遮断板6は、スピンチャック3の回転軸7と共通の軸線上に配置された支軸31の下端に連結されている。遮断板6は、その中心軸線が回転軸7と共通の軸線上に位置するように、スピンチャック3の上方で水平に配置されている。
遮断板6の外周部は、全周にわたって下方に折り曲げられている。遮断板6の外周部は、筒状の周壁部32を形成している。遮断板6において周壁部32の内側の部分が、円形をなす平板部33を形成している。平板部33の下面は、平面に形成されており、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に平行となっている。この平板部33の下面が、スピンチャック3に保持された基板Wに対向する基板対向面34となっている。基板対向面34は、スピンチャック3に保持された基板Wに対向するとともに、スピンベース8の上面8aに対向している。周壁部32は、基板対向面34の周囲からスピンチャック3に向かって突出している。
【0058】
また、遮断板6の中央部には、当該遮断板6を鉛直方向に貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔の下端は、遮断板6の下面中央部に位置する開口となっている。支軸31は中空軸であり、その内部空間は貫通孔に連通されている。支軸31には、第1上側処理液供給管35(処理液ノズル)が非接触状態で挿通されている。第1上側処理液供給管35の下端は貫通孔内に達している。
【0059】
第1上側処理液供給管35の周囲には、不活性ガスが流通する筒状のガス流通路36が形成されている。また、第1上側処理液供給管35の下端には、処理液を吐出する上側処理液吐出口37(吐出口)が形成されている。上側処理液吐出口37は、基板対向面34からスピンチャック3に保持された基板Wに臨んでいる。
第1上側処理液供給管35には、第2上側処理液供給管38(処理液供給路)が接続されている。第1上側処理液供給管35には、第2上側処理液供給管38を介して処理液としての薬液およびリンス液が選択的に供給される。これにより、第1上側処理液供給管35の下端に形成された上側処理液吐出口37から、スピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に向けて処理液を吐出させることができる。
【0060】
また、支軸31の上端部には、上側ガス供給管39が接続されている。ガス流通路36には、不活性ガスの一例である窒素ガスが上側ガス供給管39から供給される。ガス流通路36に供給された不活性ガスは、ガス流通路36を下方に向かって流れ、遮断板6の内周面(貫通孔を区画する面)と第1上側処理液供給管35の下端部の外周面との間から下方に向けて吐出される。遮断板6の内周面と第1上側処理液供給管35の下端部の外周面との間が、基板対向面34からスピンチャック3に保持された基板Wに臨む上側ガス吐出口40(不活性ガス吐出口)となっている。上側ガス吐出口40から不活性ガスを吐出させることにより、遮断板6とスピンチャック3に保持された基板Wとの間の空間に不活性ガスを供給することができる。上側ガス供給管39には、ガス流通路36への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるための上側ガスバルブ41と、ガス流通路36への不活性ガスの供給流量を調整するガス流量調整バルブ18とが介装されている。
【0061】
また、支軸31には、遮断板昇降駆動機構42(遮断部材移動機構)および遮断板回転駆動機構43(遮断部材回転機構)が結合されている。遮断板昇降駆動機構42の駆動力を支軸31に入力することにより、支軸31および遮断板6を、基板対向面34がスピンベース8の上面8aに接近した処理位置と、スピンベース8の上面8aから大きく離反した退避位置との間で一体的に昇降させることができる。図1では、遮断板6が処理位置に位置する状態を二点鎖線で示しており、遮断板6が退避位置に位置する状態を実線で示している。また、遮断板回転駆動機構43の駆動力を支軸31に入力することにより、支軸31および遮断板6を、基板Wと共通の軸線(回転軸線L1)まわりに一体的に回転させることができる。これにより、たとえば、スピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)支軸31および遮断板6を回転させることができる。
【0062】
また、処理モジュールM1には、遮断板6を洗浄するための洗浄ノズル44が設けられている。洗浄ノズル44は、たとえば、連続流の状態で洗浄液を吐出するストレートノズルである。洗浄ノズル44は、水平に延びるノズルアーム45の先端部に取り付けられている。洗浄ノズル44は、その吐出口が斜め上方に向けられた状態で、スピンチャック3よりも上側に配置されている。洗浄ノズル44は、遮断板6の退避位置よりも下側に位置している。
【0063】
洗浄ノズル44には、洗浄液供給管46が接続されている。洗浄ノズル44には、洗浄液供給管46を介して図示しない洗浄液供給源からの洗浄液(たとえば、純水)が供給される。洗浄液供給管46には、洗浄ノズル44への洗浄液の供給および供給停止を切り換えるための洗浄液バルブ47が介装されている。
また、ノズルアーム45には、ノズル移動機構48が結合されている。ノズル移動機構48は、洗浄ノズル44およびノズルアーム45を一体的に水平移動させることができる。ノズル移動機構48によって洗浄ノズル44およびノズルアーム45を一体的に水平移動させることにより、洗浄ノズル44をスピンチャック3の上方に配置したり、スピンチャック3の上方から退避させたりすることができる。したがって、遮断板6を退避位置に位置させた状態で、洗浄ノズル44をスピンチャック3の上方に移動させることにより、遮断板6の下方に洗浄ノズル44を移動させることができる。
【0064】
遮断板6の下方に洗浄ノズル44を位置させた状態で、洗浄ノズル44から洗浄液を吐出させることにより、遮断板6を洗浄することができる。具体的には、遮断板6の下方に洗浄ノズル44を位置させた状態で、遮断板回転駆動機構43によって遮断板6を回転させ、さらに、洗浄ノズル44から洗浄液を吐出させつつ、洗浄ノズル44を水平移動させることにより、遮断板6に対する洗浄液の着液位置を移動させて、基板対向面34や周壁部32の内壁面49の全域に洗浄液を供給することができる。これにより、基板対向面34や内壁面49の全域を洗浄液することができる。したがって、基板対向面34や内壁面49に付着しているパーティクルなどの異物が、スピンチャック3に保持された基板Wに移って、当該基板Wが汚染されることを抑制または防止することができる。
【0065】
図2は、スピンチャック3および遮断板6ならびにこれらに関連する構成の図解的な側面図である。この図2では、遮断板6が処理位置に位置する状態を示している。
前述のように、遮断板6は、円形をなす平板部33と筒状の周壁部32とを有している。平板部33は、直径がスピンチャック3に保持される基板Wよりも大きくされている。したがって、基板対向面34の直径は、スピンチャック3に保持される基板Wよりも大きくなっている。遮断板6は、基板対向面34により、スピンチャック3に保持された基板Wの上面全域を覆うことができる。また、円板状のスピンベース8の上面側端部が面取りされているが、面取りはされていなくともよい。
【0066】
また、周壁部32は、平板部33の外周縁から下方に向かって延びている。周壁部32の上端部(平板部33との連結部)は、湾曲状に形成されている。周壁部32は、下方に向かって広がるように傾斜している。周壁部32は、下方にいくほど直径が大きくなる円錐台状の内壁面49を有している。内壁面49は、基板W上面の法線L2に対して傾斜した面である。
【0067】
内壁面49は、基板Wの外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かうに従ってスピンベース8に接近している。また、内壁面49の上端付近は、先端縁(図2においては、下端縁)に向かうに従って基板W上面の法線L2に対する傾斜角が漸次的に変化する面(法線L2を含む平面でとった断面が曲線となるような面)になっている。内壁面49の直径は、その上端から下端にわたる全ての箇所において基板Wの直径よりも大きくされている。したがって、遮断板6は、内壁面49により、基板Wの周端面全周を取り囲むことができる。
【0068】
図2に示すように、スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板6を処理位置に位置させると、当該基板Wの上面に基板対向面34が接近し、当該基板Wの上面全域が基板対向面34によって覆われる。また、周壁部32の先端縁が、基板Wよりもスピンベース8に近づき、当該基板Wの周端面全周が内壁面49によって取り囲まれる。さらに、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間に、基板対向面34と基板Wの上面との間隔よりも小さい隙間(間隔)が形成される。したがって、スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板6を処理位置に位置させると、基板Wの上方には、水平方向に広がるほぼ密閉された狭空間が形成される。
【0069】
この実施形態では、処理位置が、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に基板対向面34が接近するとともに、周壁部32の先端縁が当該基板Wよりもスピンベース8の近くに位置し、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間に、基板対向面34と基板Wの上面との間隔よりも小さい間隔が形成されるように定められている。
遮断板6が処理位置に位置する状態での、基板W、スピンベース8、および遮断板6の位置関係を具体的な数値により示すと、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間の鉛直方向への間隔G1は、たとえば、4mm以下に設定されている。また、スピンチャック3に基板Wを保持させたときの、基板Wの上面とスピンベース8の上面8aとの鉛直方向への間隔G2は、たとえば10mmに設定されている。したがって、スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板6を処理位置に位置させると、周壁部32の先端縁が基板Wの上面よりも6mm以上下方に位置する。これにより、基板Wの周端面全周が内壁面49によって取り囲まれる。基板Wの上面と基板対向面34との鉛直方向への間隔G3は、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間の鉛直方向への間隔が4mmのときに、たとえば8.5mmになるように設定されている。
【0070】
スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板6を処理位置に位置させ、さらに、基板対向面34の中央部に位置する上側ガス吐出口40から不活性ガスを吐出させると、上側ガス吐出口40から吐出された不活性ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に存在する空気は、不活性ガスによって外方に押し出され、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間に形成された隙間から排出される。これにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の雰囲気を不活性ガスで置換することができる。
【0071】
また、周壁部32の内壁面49が基板W上面の法線L2に対して傾斜した面にされているので、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を排出させるときに、当該空気を内壁面49により下方に導いて円滑に移動させることができる。これにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に空気を滞留させることなく、基板Wの上面と基板対向面34との間の雰囲気を円滑に不活性ガス雰囲気に置換することができる。
【0072】
さらに、スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板6を処理位置に位置させると、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を周壁部32によって取り囲むことができるので、当該空間の外周部にその周囲の空気が進入することを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後に、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に空気が進入して、当該空間の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。
【0073】
図3は、処理モジュールM1に対して処理液を供給するための構成の模式図である。
基板処理装置1は、純水中の酸素を脱気し、当該純水中に不活性ガスを添加して不活性ガス溶存水を生成する不活性ガス溶存水生成ユニット50と、処理モジュールM1に対して処理液を供給するための処理液供給モジュールM2とをさらに備えている。
不活性ガス溶存水生成ユニット50は、図示しない純水供給源から供給された純水から不活性ガス溶存水を生成することができる。不活性ガス溶存水生成ユニット50によって生成された不活性ガス溶存水は、処理液供給モジュールM2に供給される。不活性ガス溶存水生成ユニット50は、たとえば、気体透過性および液体不透過性を有する中空糸分離膜を介して、純水からの酸素の脱気および純水への不活性ガスの添加を行うものである。不活性ガス溶存水生成ユニット50の具体的な構成は、たとえば特許文献2に示されている。
【0074】
不活性ガス溶存水生成ユニット50は、供給された純水中の酸素濃度が、たとえば20ppb以下になるまで酸素を脱気する。また、不活性ガス溶存水生成ユニット50は、純度の高い窒素ガス(窒素ガスの濃度が、たとえば99.999%〜99.999999999%のもの)を純水中に添加して、窒素濃度が、たとえば7ppm〜24ppmの不活性ガス溶存水を生成する。不活性ガス溶存水中の窒素濃度をこの範囲内の値にすることにより、不活性ガス溶存水中の酸素濃度が時間の経過とともに上昇することを抑制または防止することができる。
【0075】
処理液供給モジュールM2は、二流体ノズル4や処理液ノズル5等の処理液を吐出するための構成に処理液を供給することができる。この図3では、第1上側処理液供給管35および第1下側処理液供給管11に処理液を供給するための構成のみを図示している。処理液供給モジュールM2は、薬液原液と不活性ガス溶存水とを混合して処理液としての薬液を調合する2つの配管内調合ユニット(第1配管内調合ユニット51および第2配管内調合ユニット52)と、第1および第2配管内調合ユニット51,52に薬液原液を供給する薬液供給ユニット53とを備えている。
【0076】
「薬液原液」とは、不活性ガス溶存水との混合前の薬液を意味する。薬液原液の例としては、フッ酸(HF)、塩酸(HCL)、フッ酸とIPA(イソプロピルアルコール)の混合液、フッ化アンモニウム(NH4F)を例示できる。薬液原液としてフッ酸を用いた場合には、第1および第2配管内調合ユニット51,52において、フッ酸と不活性ガス溶存水とが所定の割合で混合(調合)され、希フッ酸(DHF)が生成される。
【0077】
第1配管内調合ユニット51は、第1供給配管54を介して不活性ガス溶存水生成ユニット50に接続されている。第1配管内調合ユニット51には、第1供給配管54を介して不活性ガス溶存水生成ユニット50から不活性ガス溶存水が供給される。また、第1配管内調合ユニット51は、薬液供給配管55に分岐接続された第1分岐配管56を介して薬液供給ユニット53に接続されている。第1配管内調合ユニット51には、薬液供給配管55および第1分岐配管56を介して薬液供給ユニット53から薬液原液が供給される。この実施形態では、薬液供給配管55および第1分岐配管56により薬液供給路が構成されている。第1配管内調合ユニット51は、薬液供給ユニット53から供給された薬液原液と、不活性ガス溶存水生成ユニット50から供給された不活性ガス溶存水とを混合して処理液としての薬液を調合することができる。
【0078】
また、第2配管内調合ユニット52は、第2供給配管57を介して不活性ガス溶存水生成ユニット50に接続されている。第2配管内調合ユニット52には、第2供給配管57を介して不活性ガス溶存水生成ユニット50から不活性ガス溶存水が供給される。また、第2配管内調合ユニット52は、薬液供給配管55に分岐接続された第2分岐配管58を介して薬液供給ユニット53に接続されている。第2配管内調合ユニット52には、薬液供給配管55および第2分岐配管58を介して薬液供給ユニット53から薬液原液が供給される。第2配管内調合ユニット52は、薬液供給ユニット53から供給された薬液原液と、不活性ガス溶存水生成ユニット50から供給された不活性ガス溶存水とを混合して処理液としての薬液を調合することができる。
【0079】
第1配管内調合ユニット51は、第2上側処理液供給管38に接続されており、この第2上側処理液供給管38を介して第1上側処理液供給管35に処理液としての薬液を供給することができる。また、第1配管内調合ユニット51は、不活性ガス溶存水生成ユニット50から供給された不活性ガス溶存水に薬液原液を混合させることなく、当該不活性ガス溶存水をリンス液としてそのまま第1上側処理液供給管35に供給することができる。これにより、第1上側処理液供給管35に薬液およびリンス液を選択的に供給することができる。
【0080】
第2配管内調合ユニット52は、第2下側処理液供給管13に接続されており、この第2下側処理液供給管13を介して第1下側処理液供給管11に処理液としての薬液を供給することができる。また、第2配管内調合ユニット52は、不活性ガス溶存水生成ユニット50から供給された不活性ガス溶存水に薬液原液を混合させることなく、当該不活性ガス溶存水をリンス液としてそのまま第2下側処理液供給管13に供給することができる。これにより、第1下側処理液供給管11に薬液およびリンス液を選択的に供給することができる。
【0081】
第1配管内調合ユニット51は、薬液原液と不活性ガス溶存水とをその内部で混合することができる配管としての第1混合部59(マニホールド)と、第1供給配管54に介装された第1バルブ60および第1流量調整バルブ61と、第1分岐配管56に介装された第1薬液バルブ62(薬液バルブ)および第1薬液流量調整バルブ63とを備えている。第1供給配管54および第1分岐配管56は、それぞれ第1混合部59に接続されている。
【0082】
第1バルブ60を開くことにより、第1流量調整バルブ61で調整された所定流量の不活性ガス溶存水を第1混合部59に供給することができ、第1薬液バルブ62を開くことにより、第1薬液流量調整バルブ63で調整された所定流量の薬液原液を第1混合部59に供給することができる。第1バルブ60を開いた状態で、第1薬液バルブ62を開くことにより、第1混合部59内を流通している不活性ガス溶存水に薬液原液を注入(インジェクション)して、薬液原液と不活性ガス溶存水とを混合させることができる。したがって、第1混合部59に対する薬液原液の供給量と不活性ガス溶存水の供給量とを調整することにより、所定の割合に調合された薬液を生成することができる。また、第1薬液バルブ62を開かずに、第1バルブ60のみを開くことにより、第1混合部59に対して不活性ガス溶存水のみを供給することができる。これにより、不活性ガス溶存水に薬液原液を混合させることなく、当該不活性ガス溶存水をリンス液としてそのまま第1上側処理液供給管35に供給することができる。
【0083】
一方、第2配管内調合ユニット52は、薬液原液と不活性ガス溶存水とをその内部で混合することができる第2混合部64(マニホールド)と、第2供給配管57に介装された第2バルブ65および第2流量調整バルブ66と、第2分岐配管58に介装された第2薬液バルブ67および第2薬液流量調整バルブ68とを備えている。第2供給配管57および第2分岐配管58は、それぞれ第2混合部64に接続されている。第2配管内調合ユニット52のこれらの構成については、第1配管内調合ユニット51と同様であるので、その説明を省略する。以下では、第1配管内調合ユニット51と異なる点について説明する。
【0084】
第2混合部64には、排液バルブ69が介装された排液配管70が接続されている。排液バルブ69を開くことにより、第2混合部64から処理液を排液させることができる。第2混合部64から処理液を排液させることにより、下面ノズル12内に残留している処理液を第1下側処理液供給管11側に移動させて、下面ノズル12から処理液を排液させることができる。これにより、下面ノズル12から処理液を除去することができる。
【0085】
薬液供給ユニット53は、薬液原液を貯留する薬液タンク71と、薬液タンク71から第1および第2配管内調合ユニット51,52に薬液原液を導く薬液供給配管55とを備えている。薬液タンク71は、密閉容器からなるものであり、薬液タンク71の内部空間は、その外部空間から遮断されている。薬液供給配管55の一端は、薬液タンク71に接続されている。薬液供給配管55には、薬液タンク71側から順にポンプ72、フィルタ73、および脱気ユニット74が介装されている。脱気ユニット74は、不活性ガス溶存水生成ユニット50と同様の構成のものであり、不活性ガスの添加を行わないようになっている。
【0086】
また、薬液タンク71には、薬液供給管75が接続されている。薬液タンク71には、薬液供給管75を介して図示しない薬液原液供給源からの薬液原液が供給される。薬液供給管75には、薬液タンク71への薬液原液の供給および供給停止を切り換えるための薬液バルブ76が介装されている。薬液タンク71には、たとえば、薬液タンク71内の液量が所定量以下になった場合に未使用の薬液原液が供給されるようになっている。これにより、薬液タンク71に未使用の薬液原液を補充することができる。
【0087】
また、薬液タンク71には、不活性ガス供給管77が接続されている。薬液タンク71には、不活性ガス供給管77を介して図示しない不活性ガス供給源からの不活性ガスが供給される。不活性ガス供給管77には、薬液タンク71への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるための不活性ガスバルブ78が介装されている。薬液タンク71には、たとえば常時、不活性ガスが供給されるようになっている。この実施形態では、不活性ガス供給管77および不活性ガスバルブ78により不活性ガス供給手段が構成されている。
【0088】
薬液タンク71に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク71内から空気を追い出すことができる。したがって、薬液タンク71内の空気に含まれる酸素が、薬液タンク71内に貯留された薬液原液に溶け込んで、当該薬液原液中の溶存酸素量が増加することを抑制または防止することができる。また、不活性ガスによって薬液タンク71内を加圧することにより、薬液タンク71内に貯留された薬液原液を薬液供給配管55に圧送することができる。
【0089】
薬液タンク71内の薬液原液は、不活性ガスによる圧力やポンプ72による吸引力により薬液タンク71から汲み出される。そして、汲み出された薬液原液は、ポンプ72により昇圧され、フィルタ73を通過して異物が除去される。さらに、フィルタ73を通過した薬液原液は、脱気ユニット74によって脱気され、溶存酸素量が低減される。その後、溶存酸素量が低減された薬液原液は、第1および第2分岐配管56,58に送り込まれる。これにより、第1および第2配管内調合ユニット51,52に薬液原液を供給する供給することができる。
【0090】
図4は、基板処理装置1に備えられた配管79の図解図である。
第2上側処理液供給管38などの処理液を流通させるための全ての配管は、図4に示す構造にされている。以下では、第2上側処理液供給管38などの処理液を流通させるための全ての配管を総称して「配管79」という。
配管79は、2重構造にされており、処理液が流通する内配管80と、この内配管80を取り囲む外配管81とを有している。内配管80は、外配管81の内部において、内配管80と外配管81との間に介在する支持部材(図示せず)によって支持されている。内配管80は、外配管81に対して非接触状態で支持されている。内配管80と外配管81との間には筒状の空間が形成されている。内配管80および外配管81は、たとえば、フッ素樹脂(より具体的には、耐薬液性および耐熱性に優れたPFA(perfluoro−alkylvinyl−ether−tetrafluoro−ethlene−copolymer)製である。PFAは、酸素を透過させることができる。
【0091】
また、外配管81には、不活性ガスバルブ82が介装された不活性ガス供給管83と、排気バルブ84が介装された排気配管85とが接続されている。不活性ガスバルブ82を開くことにより、不活性ガス供給管83を介して図示しない不活性ガス供給源(たとえば、窒素ガス)からの不活性ガスを外配管81の内部に供給することができる。これにより、内配管80と外配管81との間に不活性ガスを充填することができる。この実施形態では、不活性ガスバルブ82および不活性ガス供給管83により不活性ガス充填手段が構成されている。また、排気バルブ84を開くことにより、内配管80と外配管81との間から気体を排気させることができる。
【0092】
排気バルブ84を開いた状態で、不活性ガスバルブ82を開くことにより、内配管80と外配管81との間から空気を追い出して、この間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換することができる。これにより、内配管80を不活性ガスにより包囲することができる。そして、内配管80と外配管81との間の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後、不活性ガスバルブ82および排気バルブ84を閉じることにより、内配管80が不活性ガスによって包囲された状態を維持することができる。
【0093】
内配管80を不活性ガスにより包囲することにより、内配管80を介して内配管80の内部に進入する酸素の量を低減することができる。これにより、内配管80内を流通する処理液に酸素が溶け込んで、当該処理液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。
図5は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0094】
この基板処理装置1は、制御部86(バルブ制御手段、制御手段)を備えている。制御部86は、チャック回転駆動機構10、ノズル揺動駆動機構25,30、遮断板昇降駆動機構42、ノズル移動機構48、遮断板回転駆動機構43などの動作を制御する。また、基板処理装置1に備えられたバルブの開閉、および流量調整バルブの開度の調整は、制御部86によって制御される。
【0095】
図6は、基板処理装置1によって処理される基板Wの表面状態の一例を説明するための断面図である。
以下に説明するように、この基板処理装置1によって処理される基板Wは、たとえば、表面にポリマー残渣(ドライエッチングやアッシング後の残渣)が付着しており、金属パターンが露出したものである。金属パターンは、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜の一例としては、銅膜の表面に拡散防止のためのバリアメタル膜を形成した積層膜を挙げることができる。
【0096】
図6に示すように、基板Wの表面上には、層間絶縁膜87が形成されている。層間絶縁膜87には、下配線溝88がその上面から掘り下げて形成されている。下配線溝88には、銅配線89が埋設されている。層間絶縁膜87上には、エッチストッパ膜90を介して、被加工膜の一例としての低誘電率絶縁膜91が積層されている。低誘電率絶縁膜91には、上配線溝92がその上面から掘り下げて形成されている。さらに、低誘電率絶縁膜91には、上配線溝92の底面から銅配線89の表面に達するヴィアホール93が形成されている。上配線溝92およびヴィアホール93には、銅が一括して埋め込まれる。
【0097】
上配線溝92およびヴィアホール93は、低誘電率絶縁膜91上にハードマスクが形成された後、ドライエッチング処理が行われ、低誘電率絶縁膜91におけるハードマスクから露出した部分が除去されることにより形成される。上配線溝92およびヴィアホール93の形成後、アッシング処理が行われ、低誘電率絶縁膜91上から不要となったハードマスクが除去される。ドライエッチング時およびアッシング時には、低誘電率絶縁膜91やハードマスクの成分を含む反応生成物が、ポリマー残渣となって、低誘電率絶縁膜91の表面(上配線溝92およびヴィアホール93の内面を含む。)などに付着する。そのため、アッシング後には、基板Wの表面にポリマー除去液を供給して、低誘電率絶縁膜91の表面からポリマー残渣を除去するための処理が行われる。
【0098】
以下では、このような基板Wの表面から基板処理装置1を用いてポリマー残渣を除去するための処理例について説明する。
図7は、基板処理装置1による基板Wの第1処理例を説明するための工程図である。
以下では、図1、図3および図5を参照して、基板処理装置1による基板Wの第1処理例について説明する。
【0099】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって処理室2に搬入され、デバイス形成面である表面を上に向けてスピンチャック3に渡される。そして、制御部86により遮断板昇降駆動機構42が制御されて、遮断板6が処理位置まで降下される(ステップS11)。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上面(表面)に基板対向面34が接近し、当該基板Wの上面全域が基板対向面34によって覆われる。また、周壁部32の先端縁が、基板Wよりもスピンベース8に近づき、当該基板Wの周端面全周が内壁面49によって取り囲まれる。したがって、基板Wの上方には、水平方向に広がるほぼ密閉された狭空間が形成される(図2参照)。
【0100】
次に、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を追い出して、当該空間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる(ステップS12)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により上側ガスバルブ41が開かれて、不活性ガスとしての窒素ガスが所定の吐出流量で上側ガス吐出口40からスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。また、制御部86により下側ガスバルブ17が開かれて、不活性ガスとしての窒素ガスが、所定の吐出流量(たとえば、10L/min〜50L/min)で下側ガス吐出口15から上方に向けて吐出される。このとき、スピンチャック3に保持された基板Wおよび遮断板6は、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて回転状態とされていてもよいし、回転されずに非回転状態とされていてもよい。基板Wを回転状態とする場合には、スピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)遮断板6を回転させてもよいし、基板Wのみを回転状態とし、遮断板6を非回転状態としてもよい。
【0101】
上側ガス吐出口40から吐出された窒素ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に存在する空気は、窒素ガスによって外方に押し出され、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間に形成された隙間から排出される。これにより、基板Wの表面付近の雰囲気が不活性ガスとしての窒素ガスで置換され、不活性ガスによって基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を追い出して、当該空間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる。
【0102】
一方、下側ガス吐出口15から吐出された窒素ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの下面とスピンベース8の上面8aとの間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの下面とスピンベース8の上面8aとの間の空間に存在する空気や窒素ガスは、後続の窒素ガスによって外方に押し出され、当該空間から排出される。
【0103】
不活性ガスパージ処理は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度が、たとえば100ppm以下になるまで継続される。具体的には、たとえば、図示しない酸素濃度センサを設けて基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度を検出したり、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量および吐出時間を制御したりすることにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度が100ppm以下になるまで不活性ガスパージ処理が継続される。
【0104】
上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量および吐出時間を制御する場合の具体的な数値を挙げると、上側ガス吐出口40から窒素ガスの吐出流量が、たとえば、50L/min〜300L/min、好ましくは、150L/minであり、吐出時間が、たとえば10sec〜60sec、好ましくは、30secである。このように上側ガス吐出口40からの吐出流量および吐出時間を制御することにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度を10ppmまで低下させることができる。
【0105】
不活性ガスパージ処理が所定時間にわたって行われた後は、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水を排液するプリディスペンス処理が行われる(ステップS13)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wおよび遮断板6が所定の回転速度(たとえば、10rpm〜500rpm、好ましくは、500rpm)で回転される。そして、制御部86によりガス流量調整バルブ18の開度が調整されて、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、不活性ガスパージ処理のときよりも減少される。具体的には、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、たとえば、10L/min〜50L/min、好ましくは、10L/min〜20L/minに変更される。このとき、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0106】
次に、第1配管内調合ユニット51の第1薬液バルブ62が閉じられた状態で、制御部86により第1バルブ60が開かれて、第1混合部59に不活性ガス溶存水が供給される。これにより、第1および第2上側処理液供給管35,38に不活性ガス溶存水が供給され、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水が上側処理液吐出口37から吐出される。このようにして、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している処理液を排液するプリディスペンス処理が行われる。
【0107】
プリディスペンス処理が行われる前において、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水には、たとえば上側処理液吐出口37から第1および第2上側処理液供給管35,38に進入した空気中の酸素が溶け込んでいる場合ある。したがって、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水は、不活性ガス溶存水生成ユニット50によって生成されたときよりも酸素濃度が上昇している場合がある。そのため、プリディスペンス処理を行わないと、酸素濃度の高い薬液または不活性ガス溶存水が基板Wに供給される場合がある。したがって、プリディスペンス処理を行うことで、酸素濃度の高い薬液または不活性ガス溶存水が基板Wに供給されることを抑制または防止することができる。
【0108】
プリディスペンス処理は、上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水中の酸素濃度が、たとえば不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成されたときの値、すなわち、この処理例では20ppb以下になるまで継続される。具体的には、たとえば、図示しない酸素濃度センサを設けて上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水の酸素濃度を検出したり、上側処理液吐出口37からの不活性ガス溶存水の吐出流量および吐出時間を制御したりすることにより、上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水の酸素濃度が20ppb以下になるまでプリディスペンス処理が継続される。
【0109】
上側処理液吐出口37からの不活性ガス溶存水の吐出流量および吐出時間を制御する場合の具体的な数値を挙げると、上側処理液吐出口37からの不活性ガス溶存水の吐出流量が、たとえば、0.5L/min〜3L/min、好ましくは、2L/minであり、吐出時間が、たとえば5sec〜300sec、好ましくは、10secである。
プリディスペンス処理が所定時間にわたって行われた後は、基板Wの表面からポリマー残渣を除去するための薬液処理が基板Wの上面に対して行われる(ステップS14)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により第1配管内調合ユニット51が制御されて、薬液としての希フッ酸が所定の吐出流量(0.5L/min〜3L/min、好ましくは、2L/min)で所定時間(たとえば5sec〜90sec好ましくは、10sec)にわたって上側処理液吐出口37から吐出される。すなわち、制御部86により第1薬液バルブ62および第1バルブ60の開閉が制御されて、第1薬液バルブ62および第1バルブ60が開いた状態が前記所定時間にわたって維持される。また、希フッ酸の吐出流量が前記所定の吐出流量となるように、第1流量調整バルブ61および第1薬液流量調整バルブ63の開度が制御部86により調整される。希フッ酸は、薬液の一例であるとともに、ポリマー除去液の一例である。希フッ酸は、たとえば、フッ酸と純水との比率が1:10〜1:1800、好ましくは、1:10〜1:800になるように調合される。
【0110】
第1薬液バルブ62および第1バルブ60が開かれることにより、第1混合部59には、薬液原液としてのフッ酸と不活性ガス溶存水とが供給される。これにより、第1混合部59内を流通している不活性ガス溶存水にフッ酸が注入され、前述の割合に調合された希フッ酸が生成される。そして、生成された希フッ酸は、第1および第2上側処理液供給管35,38に供給され、上側処理液吐出口37からスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。このとき、基板Wおよび遮断板6は前記所定の回転速度で回転されており、上側ガス吐出口40および下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0111】
上側処理液吐出口37から吐出された希フッ酸は、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。したがって、上側処理液吐出口37から吐出された希フッ酸は、基板Wの上面全域に供給される。また、基板Wの上面に希フッ酸が供給されるとき、上側処理液吐出口37からの希フッ酸の吐出流量は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間が液密にならないように設定されている。
【0112】
基板Wの上面全域に希フッ酸が供給されることにより、基板Wの上面全域からポリマー残渣が除去される。これにより、基板Wの表面からポリマー残渣を除去するための薬液処理が行われる。上側処理液吐出口37から基板Wの上面に供給された薬液としての希フッ酸は、脱気ユニット74を通過した薬液原液としてのフッ酸が、不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成された不活性ガス溶存水により希釈されたものである。言い換えると、上側処理液吐出口37から基板Wの上面に供給された希フッ酸は、脱気ユニット74により酸素が脱気されたフッ酸が、不活性ガス溶存水生成ユニット50により酸素が脱気された純水によって希釈されたものである。また、不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成された不活性ガス溶存水は、窒素ガスの添加により、時間の経過とともに酸素濃度が上昇することが抑制または防止されている。したがって、上側処理液吐出口37からは、酸素濃度が十分に低減された希フッ酸が吐出される。
【0113】
また、薬液処理が行われるとき、基板Wの上方には、遮断板6によりほぼ密閉された狭空間が形成されている。さらに、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間の雰囲気は、上側ガス吐出口40から吐出された窒素ガスによって、窒素ガス雰囲気に置換されている。さらにまた、基板Wの周端面全域が遮断板6の周壁部32により取り囲まれているので、基板Wの上面周縁部と基板対向面34の周縁部との間にその周囲の空気が巻き込まれ、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度の上昇が抑制または防止されている。そのため、上側処理液吐出口37から吐出された希フッ酸に雰囲気中の酸素が溶け込んで、希フッ酸中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。言い換えると、上側処理液吐出口37から吐出された希フッ酸の酸素濃度を、低減された状態に維持することができる。したがって、基板Wの上面に対して、酸素濃度が十分に低減された希フッ酸を供給することができる。これにより、基板W上において、希フッ酸中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。その結果、希フッ酸のように、基板Wに供給される薬液が酸化物に対するエッチング作用を有するものであったとしても、基板W上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
【0114】
薬液処理が所定時間にわたって行われた後は、基板Wの上面から薬液を洗い流すリンス処理が基板Wの上面に対して行われる(ステップS15)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により第1配管内調合ユニット51の第1薬液バルブ62が閉じられて、第1バルブ60が開いた状態にされる。このとき、基板Wおよび遮断板6は前記所定の回転速度で回転されている。また、上側ガス吐出口40および下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0115】
第1薬液バルブ62が閉じられて、第1バルブ60が開いた状態にされることにより、第1混合部59には不活性ガス溶存水のみが供給される。したがって、第1および第2上側処理液供給管35,38には不活性ガス溶存水が供給され、上側処理液吐出口37からは、リンス液としての不活性ガス溶存水が吐出される。吐出された不活性ガス溶存水は、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に不活性ガス溶存水が供給され、不活性ガス溶存水によって基板Wの上面から薬液が洗い流される。このようにして、基板Wの上面に対するリンス処理が行われる。
【0116】
上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水は、前述のように、不活性ガス溶存水生成ユニット50により酸素が脱気されており、溶存酸素量が十分に低減されている。さらに、不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成された不活性ガス溶存水は、窒素ガスの添加により、時間の経過とともに酸素濃度が上昇することが抑制または防止されている。さらにまた、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間の雰囲気中の酸素濃度は十分に低減されている。したがって、基板Wの上面に対して、酸素濃度が十分に低減された不活性ガス溶存水を供給することができ、基板W上において、不活性ガス溶存水中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。これにより、基板W上に残留している希フッ酸により酸化物がエッチングされ、基板W上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
【0117】
リンス処理は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間におけるフッ素イオンの残留量が、たとえば0.15ng/cm2以下になるまで継続される。具体的には、たとえば、図示しないフッ素イオン検出センサを設けて、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間におけるフッ素イオンの残留量を検出したり、上側処理液吐出口37からの不活性ガス溶存水の吐出流量および吐出時間を制御したりすることにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間におけるフッ素イオンの残留量が0.15ng/cm2以下になるまでリンス処理が継続される。
【0118】
上側処理液吐出口37からの不活性ガス溶存水の吐出流量および吐出時間を制御する場合の具体的な数値を挙げると、上側処理液吐出口37からの不活性ガス溶存水の吐出流量が、たとえば、0.5L/min〜3L/min、好ましくは、2L/minであり、吐出時間が、たとえば5sec〜300sec、好ましくは、20secである。
基板Wの上面に対するリンス処理が行われた後は、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS16)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86によりチャック回転駆動機構10が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wが高回転速度(たとえば、2000rpm以上)で回転される。また、制御部86によりガス流量調整バルブ18の開度が調整されて、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、リンス処理のときよりも増加される。具体的には、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、たとえば、150L/min〜200L/minに変更される。このとき、遮断板6はスピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)回転されており、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0119】
基板Wが高回転速度で回転されることにより、基板Wに付着しているリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wからリンス液が排液され、基板Wが乾燥する。このようにして、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。
基板Wの高速回転が所定時間にわたって続けられた後は、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて、基板Wおよび遮断板6の回転が停止される。そして、制御部86により遮断板昇降駆動機構42が制御されて、遮断板6が退避位置まで上昇される。その後、処理済みの基板Wが、図示しない搬送ロボットによって受け取られ、当該基板Wが、処理室2から搬出される。
【0120】
図8は、基板処理装置1による基板Wの第2処理例を説明するための工程図である。
この第2処理例と前述の第1処理例との相違点は、基板Wの上面だけでなく基板Wの下面にも処理液による処理を行うことにある。より具体的には、この第2処理例では、基板Wの上面に対して薬液処理を行うときに、基板Wの下面に対してリンス処理を行い、基板Wの上面に対してリンス処理を行うときに、基板Wの下面に対してリンス処理を行う。以下では、図1、図3および図8を参照して、基板処理装置1による基板Wの第2処理例について説明する。
【0121】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって処理室2に搬入され、デバイス形成面である表面を上に向けてスピンチャック3に渡される。そして、制御部86により遮断板昇降駆動機構42が制御されて、遮断板6が処理位置まで降下される(ステップS21)。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上面(表面)に基板対向面34が接近し、当該基板Wの上面全域が基板対向面34によって覆われる。また、周壁部32の先端縁が、基板Wよりもスピンベース8に近づき、当該基板Wの周端面全周が内壁面49によって取り囲まれる。したがって、基板Wの上方には、水平方向に広がるほぼ密閉された狭空間が形成される(図2参照)。
【0122】
次に、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を追い出して、当該空間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる(ステップS22)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により上側ガスバルブ41が開かれて、不活性ガスとしての窒素ガスが所定の吐出流量で上側ガス吐出口40からスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。また、制御部86により下側ガスバルブ17が開かれて、不活性ガスとしての窒素ガスが、所定の吐出流量(たとえば、10L/min〜50L/min)で下側ガス吐出口15から上方に向けて吐出される。このとき、スピンチャック3に保持された基板Wおよび遮断板6は、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて回転状態とされていてもよいし、回転されずに非回転状態とされていてもよい。基板Wを回転状態とする場合には、スピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)遮断板6を回転させてもよいし、基板Wのみを回転状態とし、遮断板6を非回転状態としてもよい。
【0123】
上側ガス吐出口40から吐出された窒素ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に存在する空気は、窒素ガスによって外方に押し出され、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間に形成された隙間から排出される。これにより、基板Wの表面付近の雰囲気が不活性ガスとしての窒素ガスで置換され、不活性ガスによって基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を追い出して、当該空間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる。不活性ガスパージ処理は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度が、たとえば100ppm以下になるまで継続される。
【0124】
一方、下側ガス吐出口15から吐出された窒素ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの下面とスピンベース8の上面8aとの間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの下面とスピンベース8の上面8aとの間の空間に存在する空気や窒素ガスは、後続の窒素ガスによって外方に押し出され、当該空間から排出される。
【0125】
不活性ガスパージ処理が所定時間にわたって行われた後は、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水を排液するプリディスペンス処理が行われる(ステップS23)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wおよび遮断板6が所定の回転速度(たとえば、10rpm〜500rpm、好ましくは、500rpm)で回転される。そして、制御部86によりガス流量調整バルブ18の開度が調整されて、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、不活性ガスパージ処理のときよりも減少される。具体的には、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、たとえば、10L/min〜50L/min、好ましくは、10L/min〜20L/minに変更される。このとき、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0126】
次に、第1配管内調合ユニット51の第1薬液バルブ62が閉じられた状態で、制御部86により第1バルブ60が開かれて、第1混合部59に不活性ガス溶存水が供給される。これにより、第1および第2上側処理液供給管35,38に不活性ガス溶存水が供給され、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水が上側処理液吐出口37から吐出される。このようにして、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している処理液を排液するプリディスペンス処理が行われる。プリディスペンス処理は、上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水中の酸素濃度が、たとえば不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成されたときの値、すなわち、この処理例では20ppb以下になるまで継続される。
【0127】
プリディスペンス処理が所定時間にわたって行われた後は、基板Wの表面からポリマー残渣を除去するための薬液処理が基板Wの上面に対して行われ、それと同時に、基板Wの下面(裏面)をリンス液により洗い流すリンス処理が基板Wの下面に対して行われる(ステップS24)。
具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により第1配管内調合ユニット51が制御されて、薬液としての希フッ酸が所定の吐出流量(0.5L/min〜3L/min、好ましくは、2L/min)で所定時間(たとえば5sec〜90sec好ましくは、10sec)にわたって上側処理液吐出口37から吐出される。これにより、基板Wの上面全域に希フッ酸が供給され、ポリマー残渣を除去するための薬液処理が基板Wの上面に行われる。
【0128】
一方、基板Wの上面に対する薬液処理が行われている間、制御部86により第2配管内調合ユニット52が制御されて、リンス液としての不活性ガス溶存水が所定の吐出流量で所定時間にわたって下面ノズル12の吐出口12aから吐出される。具体的には、第2配管内調合ユニット52の第2薬液バルブ67が閉じられた状態で、制御部86により第2バルブ65が開かれて、第2混合部64に不活性ガス溶存水が供給される。これにより、第1および第2下側処理液供給管11,13を介して下面ノズル12に不活性ガス溶存水が供給され、下面ノズル12の吐出口12aから不活性ガス溶存水が吐出される。
【0129】
下面ノズル12の吐出口12aから吐出された不活性ガス溶存水は、基板Wの下面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面に沿って中心部から周縁部に向かって広がっていく。これにより、基板Wの下面全域に不活性ガス溶存水が供給され、基板Wの下面をリンス液により洗い流すリンス処理が基板Wの下面に対して行われる。基板Wの上面に対する薬液処理、および基板Wの下面に対するリンス処理が行われているとき、基板Wおよび遮断板6は前記所定の回転速度で回転されており、上側ガス吐出口40および下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0130】
なお、この第2処理例では、基板Wの上面に対して薬液処理が行われているときに、下面ノズル12から不活性ガス溶存水を吐出させて、基板Wの下面に対してリンス処理を行う場合について説明したが、不活性ガス溶存水に代えて希フッ酸を下面ノズル12から吐出させて、基板Wの上面に対する薬液処理と同時に、基板Wの下面に対して希フッ酸による薬液処理を行わせてもよい。
【0131】
基板Wの上面に対する薬液処理、および基板Wの下面に対するリンス処理が所定時間にわたって行われた後は、基板Wの上面から薬液を洗い流すリンス処理が基板Wの上面に対して行われ、それと同時に、基板Wの下面をリンス液により洗い流すリンス処理が基板Wの下面に対して行われる(ステップS25)。
具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により第1配管内調合ユニット51の第1薬液バルブ62が閉じられて、第1バルブ60が開いた状態にされる。このとき、基板Wおよび遮断板6は前記所定の回転速度で回転されている。また、上側ガス吐出口40および下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0132】
第1薬液バルブ62が閉じられて、第1バルブ60が開いた状態にされることにより、第1混合部59には不活性ガス溶存水のみが供給される。したがって、第1および第2上側処理液供給管35,38には不活性ガス溶存水が供給され、上側処理液吐出口37からは、リンス液としての不活性ガス溶存水が吐出される。吐出された不活性ガス溶存水は、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に不活性ガス溶存水が供給され、不活性ガス溶存水によって基板Wの上面から薬液が洗い流される。このようにして、基板Wの上面に対するリンス処理が行われる。
【0133】
一方、基板Wの上面に対するリンス処理が行われている間、制御部86により第2配管内調合ユニット52の第2薬液バルブ67が閉じられて、第2バルブ65が開いた状態にされる。これにより、不活性ガス溶存水のみが第2混合部64に供給され、第1および第2下側処理液供給管11,13を介して、第2混合部64から下面ノズル12に不活性ガス溶存水が供給される。したがって、下面ノズル12の吐出口12aからは不活性ガス溶存水が吐出され、吐出された不活性ガス溶存水は、基板Wの下面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの下面全域に不活性ガス溶存水が供給され、不活性ガス溶存水によって基板Wの下面が洗い流される。このようにして、基板Wの下面に対するリンス処理が行われる。基板Wの上面および下面に対するリンス処理は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間におけるフッ素イオンの残留量が、たとえば0.15ng/cm2以下になるまで継続される。
【0134】
基板Wの上面および下面に対するリンス処理が行われた後は、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS26)。具体的には、最初に、第2配管内調合ユニット52の排液バルブ69が制御部86により開かれて、第2混合部64から不活性ガス溶存水が排液される。これにより、下面ノズル12内に残留している不活性ガス溶存水が下面ノズル12から排液され、下面ノズル12内から不活性ガス溶存水が除去される。
【0135】
次に、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86によりチャック回転駆動機構10が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wが高回転速度(たとえば、2000rpm以上)で回転される。また、制御部86によりガス流量調整バルブ18の開度が調整されて、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、リンス処理のときよりも増加される。具体的には、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、たとえば、150L/min〜200L/minに変更される。このとき、遮断板6はスピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)回転されており、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0136】
基板Wが高回転速度で回転されることにより、基板Wに付着しているリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wからリンス液が排液され、基板Wが乾燥する。また、このとき下面ノズル12から不活性ガス溶存水が予め排液されているので、下面ノズル12内に残留している不活性ガス溶存水が飛び出して、基板Wの下面に付着することはない。これにより、下面ノズル12から飛び出した不活性ガス溶存水が基板Wの下面に付着して、当該基板Wの乾燥不良が生じることを抑制または防止することができる。
【0137】
基板Wの高速回転が所定時間にわたって続けられた後は、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて、基板Wおよび遮断板6の回転が停止される。そして、制御部86により遮断板昇降駆動機構42が制御されて、遮断板6が退避位置まで上昇される。その後、処理済みの基板Wが、図示しない搬送ロボットによって受け取られ、当該基板Wが、処理室2から搬出される。
【0138】
図9は、基板処理装置1による基板Wの第3処理例を説明するための工程図である。
この第3処理例と前述の第1処理例との主な相違点は、基板Wの上面に処理液の液滴を衝突させて、基板Wの上面を洗浄する物理洗浄を基板Wの上面に対して行うことにある。以下では、図1、図3および図9を参照して、基板処理装置1による基板Wの第3処理例について説明する。
【0139】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって処理室2に搬入され、デバイス形成面である表面を上に向けてスピンチャック3に渡される。そして、制御部86により遮断板昇降駆動機構42が制御されて、遮断板6が処理位置まで降下される(ステップS31)。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上面(表面)に基板対向面34が接近し、当該基板Wの上面全域が基板対向面34によって覆われる。また、周壁部32の先端縁が、基板Wよりもスピンベース8に近づき、当該基板Wの周端面全周が内壁面49によって取り囲まれる。したがって、基板Wの上方には、水平方向に広がるほぼ密閉された狭空間が形成される(図2参照)。
【0140】
次に、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を追い出して、当該空間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる(ステップS32)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により上側ガスバルブ41が開かれて、不活性ガスとしての窒素ガスが所定の吐出流量で上側ガス吐出口40からスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。また、制御部86により下側ガスバルブ17が開かれて、不活性ガスとしての窒素ガスが、所定の吐出流量(たとえば、10L/min〜50L/min)で下側ガス吐出口15から上方に向けて吐出される。このとき、スピンチャック3に保持された基板Wおよび遮断板6は、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて回転状態とされていてもよいし、回転されずに非回転状態とされていてもよい。基板Wを回転状態とする場合には、スピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)遮断板6を回転させてもよいし、基板Wのみを回転状態とし、遮断板6を非回転状態としてもよい。
【0141】
上側ガス吐出口40から吐出された窒素ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に存在する空気は、窒素ガスによって外方に押し出され、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面8aとの間に形成された隙間から排出される。これにより、基板Wの表面付近の雰囲気が不活性ガスとしての窒素ガスで置換され、不活性ガスによって基板Wの上面と基板対向面34との間の空間から空気を追い出して、当該空間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる。不活性ガスパージ処理は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間における酸素濃度が、たとえば100ppm以下になるまで継続される。
【0142】
一方、下側ガス吐出口15から吐出された窒素ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの下面とスピンベース8の上面8aとの間の空間を外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、基板Wの下面とスピンベース8の上面8aとの間の空間に存在する空気や窒素ガスは、後続の窒素ガスによって外方に押し出され、当該空間から排出される。
【0143】
不活性ガスパージ処理が所定時間にわたって行われた後は、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水を排液するプリディスペンス処理が行われる(ステップS33)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86によりチャック回転駆動機構10および遮断板回転駆動機構43が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wおよび遮断板6が所定の回転速度(たとえば、10rpm〜500rpm、好ましくは、500rpm)で回転される。そして、制御部86によりガス流量調整バルブ18の開度が調整されて、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、不活性ガスパージ処理のときよりも減少される。具体的には、上側ガス吐出口40からの窒素ガスの吐出流量が、たとえば、10L/min〜50L/min、好ましくは、10L/min〜20L/minに変更される。このとき、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0144】
次に、第1配管内調合ユニット51の第1薬液バルブ62が閉じられた状態で、制御部86により第1バルブ60が開かれて、第1混合部59に不活性ガス溶存水が供給される。これにより、第1および第2上側処理液供給管35,38に不活性ガス溶存水が供給され、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水が上側処理液吐出口37から吐出される。このようにして、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している処理液を排液するプリディスペンス処理が行われる。プリディスペンス処理は、上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水中の酸素濃度が、たとえば不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成されたときの値、すなわち、この処理例では20ppb以下になるまで継続される。
【0145】
プリディスペンス処理が所定時間にわたって行われた後は、基板Wの表面からポリマー残渣を除去するための薬液処理が基板Wの上面に対して行われる(ステップS34)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により第1配管内調合ユニット51が制御されて、薬液としての希フッ酸が所定の吐出流量(0.5L/min〜3L/min、好ましくは、2L/min)で所定時間(たとえば5sec〜90sec好ましくは、10sec)にわたって上側処理液吐出口37から吐出される。これにより、基板Wの上面全域に希フッ酸が供給され、基板Wの上面全域からポリマー残渣が除去される。このようにして、基板Wの表面からポリマー残渣を除去するための薬液処理が行われる。
【0146】
薬液処理が所定時間にわたって行われた後は、基板Wの上面から薬液を洗い流すリンス処理が基板Wの上面に対して行われる(ステップS35)。具体的には、遮断板6が処理位置に位置する状態で、制御部86により第1配管内調合ユニット51の第1薬液バルブ62が閉じられて、第1バルブ60が開いた状態にされる。このとき、基板Wおよび遮断板6は前記所定の回転速度で回転されている。また、上側ガス吐出口40および下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0147】
第1薬液バルブ62が閉じられて、第1バルブ60が開いた状態にされることにより、第1混合部59には不活性ガス溶存水のみが供給される。したがって、第1および第2上側処理液供給管35,38には不活性ガス溶存水が供給され、上側処理液吐出口37からは、リンス液としての不活性ガス溶存水が吐出される。吐出された不活性ガス溶存水は、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に不活性ガス溶存水が供給され、不活性ガス溶存水によって基板Wの上面から薬液が洗い流される。このようにして、基板Wの上面に対するリンス処理が行われる。リンス処理は、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間におけるフッ素イオンの残留量が、たとえば0.15ng/cm2以下になるまで継続される。
【0148】
基板Wの上面に対するリンス処理が行われた後は、基板Wの上面に処理液の液滴を衝突させて、基板Wの上面を洗浄する物理洗浄が基板Wの上面に対して行われる(ステップS36)。具体的には、制御部86により遮断板昇降駆動機構42が制御されて、遮断板6が退避位置まで上昇される。そして、制御部86によりノズル揺動駆動機構25,30が制御されて、二流体ノズル4および処理液ノズル5がスピンチャック3の上方に配置される。このとき、基板Wは前記所定の回転速度で回転されており、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0149】
次に、制御部86により処理液バルブ28aが開かれて、処理液ノズル5から基板Wの上面に向けてリンス液としての炭酸水が吐出される。吐出された炭酸水は、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に炭酸水が供給され、基板Wの上面全域が炭酸水によって覆われる。基板Wの上面に炭酸水を供給することにより、基板Wの帯電を抑制または防止することができる。これにより、基板Wに形成されたデバイスが損傷することを抑制または防止することができる。
【0150】
次に、処理液ノズル5から炭酸水が吐出された状態で、制御部86により処理液バルブ22および気体バルブ23が開かれて、二流体ノズル4内に炭酸水および窒素ガスが供給される。これにより、二流体ノズル4から炭酸水および窒素ガスが吐出される。吐出された炭酸水は、窒素ガスと混合されて炭酸水の液滴となり、基板Wの上面に衝突する。
基板Wの上面に付着しているパーティクルなどの異物は、液滴の運動エネルギーによって基板Wの上面から剥離される。そして、剥離された異物は、処理液ノズル5から供給される炭酸水によって洗い流されて、基板Wの上面から除去される。
【0151】
処理液ノズル5から吐出された炭酸水は、基板W上から異物を洗い流すとともに、基板Wの上面に衝突して跳ね返った炭酸水の液滴などが基板Wの上面に付着することを防止するカバーリンス液として機能する。
二流体ノズル4から炭酸水および窒素ガスが吐出されている間、二流体ノズル4は、制御部86によりノズル揺動駆動機構25が制御されて基板Wの上方で水平移動される。具体的には、基板Wの上面における炭酸水の液滴の衝突位置が、当該上面内において、回転中心を通る円弧状の軌跡を描きつつ周縁部から周縁部に複数回往復移動するように、二流体ノズル4が水平移動される。これにより、基板Wの上面が炭酸水の液滴によってスキャンされ、基板Wの上面全域に炭酸水の液滴が直接衝突する。その結果、基板Wの上面全域から異物が確実に除去される。
【0152】
基板Wの上面に対する物理処理が行われた後は、基板Wの上面をリンス液により洗い流すリンス処理が基板Wの上面に対して行われる(ステップS37)。具体的には、制御部86により処理液バルブ28bが開かれて、処理液ノズル5から基板Wの上面に向けてリンス液としての純水が吐出される。吐出された純水は、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、純水によって基板Wの上面が洗い流される。このようにして、基板Wの上面に対するリンス処理が行われる。
【0153】
基板Wの上面に対するリンス処理が行われた後は、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS38)。具体的には、制御部86によりチャック回転駆動機構10が制御されて、スピンチャック3に保持された基板Wが高回転速度(たとえば、2000rpm以上)で回転される。このとき、下側ガス吐出口15からは、前記所定の吐出流量で窒素ガスが吐出され続けている。
【0154】
基板Wが高回転速度で回転されることにより、基板Wに付着している炭酸水は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wから炭酸水が排液され、基板Wが乾燥する。このようにして、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。
基板Wの高速回転が所定時間にわたって続けられた後は、制御部86によりチャック回転駆動機構10が制御されて、基板Wの回転が停止される。その後、処理済みの基板Wが、図示しない搬送ロボットによって受け取られ、当該基板Wが、処理室2から搬出される。
【0155】
以上、この基板処理装置1による基板Wの3つの処理例について説明したが、この基板処理装置1による基板Wの処理は、前述の3つの処理例に限られない。たとえば、前述の第1〜第3処理例では、薬液処理が行われる前に、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水を排液するプリディスペンス処理が行われる場合について説明したが、プリディスペンス処理が行われずに不活性ガスパージ処理に引き続いて薬液処理が行われてもよい。
【0156】
すなわち、たとえば複数枚の基板Wを連続的に処理する場合などのように、長い間隔を空けずに(たとえば2分未満の間隔で)上側処理液吐出口37から処理液を吐出させる場合には、第1および第2上側処理液供給管35,38内に残留している不活性ガス溶存水の酸素濃度が殆ど上昇していないときがある。したがって、このような場合には、全ての基板Wの処理においてプリディスペンス処理を行うのではなく、たとえばロットの最初の基板Wなどのように、前の基板Wを処理してから一定時間以上経過した後に処理する基板Wの処理においてのみプリディスペンス処理を行ってもよい。
【0157】
また、前述の第1〜第3処理例では、スピンチャック3に保持された基板Wに対して処理液を連続的に供給して処理を進行させる連続吐出処理(薬液処理、リンス処理)が行われる場合について説明したが、これに限らず、基板Wの上面に処理液により液盛を行って、基板Wの上面で処理液の液膜を保持した状態で処理を進めるパドル処理(液盛り処理)を行ってもよい。たとえば、前述の第1および第2処理例において、リンス処理と乾燥処理(スピンドライ)との間(第2処理例においては、基板Wの上面および下面に対するリンス処理と乾燥処理との間)に、リンス液によるパドル処理を行ってもよい。
【0158】
具体的には、スピンチャック3に保持された基板Wを停止状態、または低速回転状態(たとえば10〜300rpm程度の回転速度で回転されている状態)とする一方で、基板Wの上面にリンス液を供給する。基板Wの上面に供給されるリンス液は、上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水であってもよいし、処理液ノズル5から吐出される純水であってもよい。
【0159】
基板Wの上面に供給されたリンス液は、基板Wが停止状態または低速回転状態とされているので、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの周囲に殆ど飛散するリンス液は殆どなく、基板W上に溜まっていく。これにより、基板Wの上面にリンス液による液盛りが行われ、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が形成される。
リンス液の液膜が形成された後は、基板Wの上面へのリンス液の供給を停止して、基板Wの上面でリンス液の液膜が保持された状態を所定時間にわたって維持させる。これにより、リンス液によるパドル処理(液盛り処理)が基板Wの上面に行われる。基板Wの上面に対してパドル処理を行うことにより、基板Wの上面が疎水性であったとしても、当該上面をリンス液によって確実に濡らすことができる。そして、スピンドライにより、基板Wの上面からリンス液を排液させることにより、リンス液とともに、基板Wの上面に付着している薬液や異物を基板Wの上面から除去することができる。
【0160】
前述のパドル処理の説明では、リンス液が、上側処理液吐出口37から吐出される不活性ガス溶存水、または処理液ノズル5から吐出される純水である場合について説明したが、リンス液として用いられる処理液はこれに限らない。たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)などの純水よりも表面張力が小さく、純水よりも揮発性が高い低表面張力有機溶剤をリンス液として用いてもよい。
【0161】
具体的には、IPAを供給するためのIPA供給機構を新たに設けて、このIPA供給機構から上側処理液吐出口37または処理液ノズル5にIPAを供給させてもよい。これにより、IPAによるパドル処理を基板Wの上面に対して行うことができる。また、IPAによるリンス処理を基板Wの上面に対して行うこともできる。
具体的な処理例としては、前述の第1および第2処理例において、リンス処理と乾燥処理との間に、不活性ガス溶存水または純水によるパドル処理を基板Wの上面に対して行わずに、IPAによるパドル処理を基板Wの上面に対して行ってもよいし、不活性ガス溶存水または純水によるパドル処理を基板Wの上面に対して行った後に、IPAによるリンス処理を基板Wの上面に行い、その後、IPAによるパドル処理を基板Wの上面に対して行ってもよい。
【0162】
IPAによるパドル処理を基板Wの上面に対して行うことにより、不活性ガス溶存水または純水によるパドル処理と同様に、基板Wの上面が疎水性であったとしても、当該上面を確実に濡らすことができる。また、IPAは、純水よりも揮発性の高い処理液であるので、IPAによる処理の直後に基板Wを乾燥させることにより、不活性ガス溶存水または純水による処理の直後に比べて、基板Wを速やかに乾燥させることができる。
【0163】
また、前述の第1〜第3処理例では、リンス処理および乾燥処理を行うときに(第3処理例においては、最初のリンス処理を行うときに)、遮断板6を処理位置に位置させる場合について説明したが、遮断板6を退避位置に位置させた状態で、リンス処理および乾燥処理を行わせてもよい。また、基板Wの上面に対して前述のパドル処理を行うときも、遮断板6は処理位置に配置されていてもよいし、退避位置に配置されていてもよい。
【0164】
遮断板6を退避位置に位置させた状態で、基板Wの上面に対してリンス処理および乾燥処理を行うときの具体例としては、たとえば、前述の第1処理例のリンス処理において、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間におけるフッ素イオンの残留量が0.012ng/cm2以下になった後、遮断板6を退避位置まで上昇させる。そして、処理液ノズル5をスピンチャック3に保持された基板Wの上方に配置させて、処理液ノズル5から基板Wの上面に向けて純水を吐出させて、純水によるリンス処理を基板Wの上面に対して行う。すなわち、不活性ガス溶存水によるリンス処理と、純水によるリンス処理とを連続して行う。その後、遮断板6を退避位置に位置させた状態で、スピンチャック3により基板Wを高速回転させて、基板Wを乾燥させる(スピンドライ)。遮断板6を退避位置に位置させた状態で、基板Wの上面に対してリンス処理および乾燥処理を行うことにより、たとえば、遮断板6に付着したフッ素イオンが、基板Wに転移することを抑制または防止することができる。
【0165】
以下では、基板処理装置1により基板Wを処理することにより得られた測定結果等について説明する。
図10は、不活性ガス溶存水中の酸素濃度と銅のエッチング量との関係を示す図である。
この図10は、基板Wの表面に対して希フッ酸による薬液処理(ポリマー除去処理)を行ったときの銅のエッチング量(膜減り)の測定結果である。希フッ酸は、フッ酸と純水との比率が1:100に調合されたものを用いた。また、希フッ酸に含まれるフッ酸は、酸素が脱気されていないものを用いた。この測定で用いられた希フッ酸は、純水の割合に対してフッ酸の割合が非常に小さいので、希フッ酸中の酸素濃度は、当該希フッ酸を調合するのに用いた不活性ガス溶存水中の酸素濃度とほぼ等しいとみなすことができる。薬液処理時間は、60secである。
【0166】
この図10において、一番左の測定値(一番左の●の値)は、酸素濃度が12ppbの不活性ガス溶存水によって希フッ酸を調合し、この希フッ酸を用いて薬液処理を行ったときの銅のエッチング量である。また、左から2番目の測定値(左から2番目の●の値)は、酸素濃度が20ppbの不活性ガス溶存水によって希フッ酸を調合し、この希フッ酸を用いて薬液処理を行ったときの銅のエッチング量である。図10に示す測定結果から、酸素濃度が20ppb以下の不活性ガス溶存水によって調合した希フッ酸を用いて薬液処理を行えば銅のエッチングを確実に抑制または防止できることが理解される。すなわち、酸素濃度が20ppb以下の不活性ガス溶存水によって調合した希フッ酸であれば銅酸化物の生成を確実に抑制または防止できることが理解される。
【0167】
図11は、基板Wの上方の酸素濃度と基板Wの上面に供給された純水中の酸素濃度との関係を示す図である。
この図11は、遮断板6を処理位置に位置させた状態で、上側処理液吐出口37からスピンチャック3に保持された基板Wの上面に向けて不活性ガス溶存水を吐出させ、基板Wの上面に供給された不活性ガス溶存水の酸素濃度を測定した結果である。上側処理液吐出口37からは、酸素濃度が10ppbに調整された不活性ガス溶存水を吐出させた。
【0168】
この図11において、一番左の測定値(一番左の■の値)は、基板Wの上方の酸素濃度が0.001%(10ppm)のときに基板Wの上面に供給された不活性ガス溶存水の酸素濃度の値であり、このときの不活性ガス溶存水中の酸素濃度は12ppbとなっていた。また、左から2番目の測定値(左から2番目の■の値)は、基板Wの上方の酸素濃度が0.01%(100ppm)のときに基板Wの上面に供給された不活性ガス溶存水の酸素濃度の値であり、このときの不活性ガス溶存水中の酸素濃度は20ppbとなっていた。
【0169】
図11に示す測定結果から、酸素濃度が10ppbに調整された純水を基板Wの上面に向けて吐出させたときに、基板Wの上方の酸素濃度が100ppm以下であれば、基板Wの上面に供給される純水の酸素濃度を20ppb以下に維持できることが分かる。したがって、図10に示す測定結果を考慮すると、基板Wの上方の酸素濃度を100ppm以下とし、酸素濃度が10ppb以下の希フッ酸を基板Wの上面に向けて吐出させれば、酸素濃度が20ppb以下の希フッ酸を基板Wの上面に供給して、希フッ酸中の溶存酸素により銅が酸化されることを確実に抑制または防止することができる。
【0170】
図12は、純水中の酸素濃度と純水中の窒素濃度との関係を示す図である。
この図12において、一点鎖線で示された値は、純水から酸素を脱気した直後の酸素濃度の測定値であり、実線で示された値は、一点鎖線で示された値まで酸素が脱気された純水を、10sec以上大気に開放した後の酸素濃度の測定値である。また、純水に対して窒素ガスを添加していないときの、純水中の窒素濃度は、3ppmであった。
【0171】
図12に示す測定結果から、純水中の窒素濃度が7ppm未満であると、純水中の酸素濃度が時間の経過とともに上昇してしまう。したがって、純水に窒素ガスを添加して、純水中の窒素濃度を7ppm以上にすることにより、純水中の酸素濃度が時間の経過とともに上昇することを抑制または防止することができる。これにより、酸素が脱気された純水中の酸素濃度を低い状態に維持することができる。
【0172】
この発明の実施形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、遮断板6の周壁部32が、下方に向かって広がるように傾斜している場合について説明したが、これに限らず、遮断板6の周壁部32は、たとえば、平板部33の外周縁から傾斜せずに真っ直ぐに延びている円筒状をなしていてもよい。この場合、周壁部32の内壁面49は、たとえば、図13に示す周壁部132の内壁面149のように、基板W上面の法線L2に平行な面であってもよいし、図14に示す周壁部232の内壁面249のように、基板W上面の法線L2に対して傾斜した面であってもよい。
【0173】
また、遮断板6の周壁部32は、たとえば、図15に示す周壁部332のように、下方に向かって広がるように傾斜していて、その先端縁に行くほど厚みが薄くなる筒状に形成されていてもよい。
さらに、前述の実施形態では、内壁面49の上端付近のみが、先端縁に向かうに従って基板W上面の法線L2に対する傾斜角が漸次的に変化する面になっている場合について説明したが、周壁部の内壁面全体が、先端縁に向かうに従って基板W上面の法線L2に対する傾斜角が漸次的に変化する面(法線L2を含む平面でとった断面が曲線となるような面)に形成されていてもよい。
【0174】
また、前述の実施形態では、薬液供給ユニット53から第1および第2配管内調合ユニット51,52に供給される薬液原液から酸素を脱気するための脱気ユニット74が設けられている場合について説明したが、たとえば薬液における薬液原液の割合が純水の割合に対して非常に小さい場合には、薬液原液から酸素を脱気しなくても薬液中の酸素濃度が殆ど上昇しないから、このような場合には、脱気ユニット74が設けられていなくてもよい。
【0175】
また、前述の実施形態では、処理対象となる基板Wとして半導体ウエハを取り上げたが、半導体ウエハに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図2】スピンチャックおよび遮断板ならびにこれらに関連する構成の図解的な側面図である。
【図3】処理モジュールに対して処理液を供給するための構成の模式図である。
【図4】基板処理装置に備えられた配管の図解図である。
【図5】基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図6】基板処理装置によって処理される基板の表面状態の一例を説明するための断面図である。
【図7】基板処理装置による基板の第1処理例を説明するための工程図である。
【図8】基板処理装置による基板の第2処理例を説明するための工程図である。
【図9】基板処理装置による基板の第3処理例を説明するための工程図である。
【図10】不活性ガス溶存水中の酸素濃度と銅のエッチング量との関係を示す図である。
【図11】基板の上方の酸素濃度と基板の上面に供給された純水中の酸素濃度との関係を示す図である。
【図12】純水中の酸素濃度と純水中の窒素濃度との関係を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る周壁部の形状を説明するための図解的な側面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係る周壁部の形状を説明するための図解的な側面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係る周壁部の形状を説明するための図解的な側面図である。
【符号の説明】
【0177】
1 基板処理装置
3 スピンチャック
6 遮断板
8a (スピンベースの)上面
8 スピンベース
32 周壁部
34 基板対向面
35 第1上側処理液供給管
36 ガス流通路
37 上側処理液吐出口
38 第2上側処理液供給管
39 上側ガス供給管
40 上側ガス吐出口
41 上側ガスバルブ
42 遮断板昇降駆動機構
43 遮断板回転駆動機構
49 内壁面
50 不活性ガス溶存水生成ユニット
51 第1配管内調合ユニット
55 薬液供給配管
56 第1分岐配管
59 第1混合部
62 第1薬液バルブ
71 薬液タンク
74 脱気ユニット
77 不活性ガス供給管
78 不活性ガスバルブ
80 内配管
81 外配管
82 不活性ガスバルブ
83 不活性ガス供給管
86 制御部
132 周壁部
149 内壁面
232 周壁部
249 内壁面
332 周壁部
G1 間隔
L1 回転軸線
L2 法線
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持機構と、
前記基板保持機構に保持された基板に対向する基板対向面を有し、この基板対向面の周囲から前記基板保持機構に向かって突出した周壁部が形成された遮断部材と、
前記基板保持機構に保持された基板に処理液を供給する処理液ノズルと、
純水中の酸素を脱気し、当該純水中に不活性ガスを添加して不活性ガス溶存水を生成する不活性ガス溶存水生成ユニットと、
薬液原液と前記不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水とを配管内で混合して前記処理液としての薬液を調合する配管内調合ユニットと、
前記配管内調合ユニットから前記処理液ノズルへと処理液を導く処理液供給路とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水を前記薬液と混合することなく、そのまま処理液として基板に供給する不活性ガス溶存水供給手段をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記遮断部材の周壁部は、前記基板の周端面全周を取り囲むことができるように形成されている、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持機構は、前記遮断部材の基板対向面に対向する表面を有する保持ベースを備えており、
前記基板処理装置は、前記遮断部材を前記保持ベースに対して、所定の処理位置と退避位置との間で、接近/離反させる遮断部材移動機構をさらに含み、
前記処理位置は、前記遮断部材の周壁部の先端縁が前記基板保持機構に保持された基板よりも前記保持ベースの近くに位置するように定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
薬液原液を貯留する薬液タンクと、
前記薬液タンク内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
前記薬液タンクから前記配管内調合ユニットに薬液原液を導く薬液供給路とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
薬液原液中の酸素を脱気する脱気ユニットをさらに含み、この脱気ユニットによって脱気された薬液原液が前記配管内調合ユニットに供給されるようになっている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理液供給路は、処理液が流通する内配管と、この処理液配管を取り囲む外配管とを含み、
前記内配管と外配管との間に不活性ガスを充填する不活性ガス充填手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記配管内調合ユニットを制御する制御手段をさらに含み、
この制御手段は、前記不活性ガス溶存水生成ユニットによって生成された不活性ガス溶存水を薬液原液と混合することなく前記処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する不活性ガス溶存水供給工程を実行し、その後に、前記配管内調合ユニットによって薬液原液と不活性ガス溶存水とを配管内で混合して薬液を調合し、この薬液を処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する薬液供給工程を実行するものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記不活性ガス溶存水供給工程を、前記処理液ノズルから吐出される処理液中の酸素濃度が20ppb以下となるまで継続する、請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記遮断部材と前記基板保持機構に保持された基板との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段をさらに含み、
前記制御手段は、さらに、前記不活性ガス供給手段を制御することによって、前記薬液供給工程に先立って、基板の表面付近の雰囲気を不活性ガスで置換する雰囲気置換工程を実行するものである、請求項8または9記載の基板処理装置。
【請求項11】
処理液ノズルから基板へと処理液を供給して当該基板を処理する基板処理方法であって、
純水中の酸素を脱気し、当該純水中に不活性ガスを添加して不活性ガス溶存水を生成する不活性ガス溶存水生成工程と、
薬液原液と前記不活性ガス溶存水とを配管内で混合して薬液を調合し、この薬液を処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する薬液供給工程と、
前記薬液供給工程に先立って行われ、基板の表面付近の雰囲気を不活性ガスで置換する雰囲気置換工程と、
前記薬液液供給工程に先立って行われ、前記不活性ガス溶存水生成工程によって生成された不活性ガス溶存水を薬液原液と混合することなく前記処理液供給路を介して前記処理液ノズルへと供給する不活性ガス溶存水供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項12】
前記雰囲気置換工程は、遮断部材の基板対向面を基板の表面に対向させるとともに、前記基板対向面の周囲から突出した周壁部によって基板の周囲を包囲した状態で、前記遮断部材と基板との間の空間に不活性ガスを供給する工程を含む、請求項11記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記雰囲気置換工程は、前記遮断部材の基板対向面に対向する表面を有する保持ベースによって基板を保持する工程と、前記遮断部材の周壁部の先端縁を前記基板よりも前記保持ベースの表面に近づけた状態とする工程とを含む、請求項12記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記不活性ガス溶存水供給工程は、前記処理液ノズルから吐出される処理液中の酸素濃度が20ppb以下となるまで継続され、その後に前記薬液供給工程が実行される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記薬液供給工程の後に、前記不活性ガス溶存水生成工程によって生成された不活性ガス溶存水を基板に供給し、当該基板の表面の薬液をリンスするリンス工程をさらに含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
薬液原液を貯留する薬液タンク内に不活性ガスを供給する工程をさらに含み、
前記薬液供給工程では、前記薬液タンクから汲み出した薬液原液を用いて薬液が調合される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記薬液原液を脱気する工程をさらに含み、
前記薬液供給工程では、前記脱気された薬液原液を用いて薬液が調合される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記処理液供給路は、処理液が流通する内配管と、この処理液配管を取り囲む外配管とを有しており、
前記内配管と外配管との間に不活性ガスを充填する不活性ガス充填工程をさらに含む、請求項11〜17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記基板は、表面にポリマー残渣が付着したものであり、
前記薬液は、前記ポリマー残渣を除去するためのポリマー除去液である、請求項11〜18のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記基板は、表面に金属パターンが露出したものである、請求項11〜19のいずれか一項に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−56218(P2010−56218A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218221(P2008−218221)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】