説明

物体、特に薄いディスクを洗浄する装置及び方法

本発明は、薄いウェハ(6)を洗浄する装置で、ウェハ(6)が各々の一辺で担持装置(2)に固定されており、2つの隣接する基板間に空隙(7)が形成されている。本装置は、流体を各空隙(7)内に注入するシャワー装置(15)と、流体を満たすことができ且つ担持装置(2)を収容できる寸法を有する槽(14)とから実質上構成される。本発明によれば、任意選択的に、シャワー装置(15)が移動不能な担持装置(2)に対して移動可能であるか、あるいは担持装置(2)が移動不能なシャワー装置(15)に対して移動可能であるか、あるいは担持装置(2)とシャワー装置(15)が相対的に移動可能である。本発明による方法は、好ましい洗浄処理において、担持装置(2)を槽内で移動しながらまず温流体でシャワー洗浄を行った後、冷流体で超音波洗浄を行い、さらに温流体でシャワー洗浄を再度行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、例えば半導体ウェハ、ガラス基板、フォトマスク、コンパクトディスク、あるいはその他の類似物など、薄いディスクを洗浄する装置及び方法に関する。特に本発明は、ブロックから作製された後の半導体ウェハを前洗浄する装置及び方法に関する。
定 義
【0002】
本発明において、「薄いディスク」という用語は、80から300mm の間の範囲、例えば150から170mm などの、非常に薄い厚さを有する物体を指すと理解されねばならない。ディスクの形状は任意で、例えばそれぞれほぼ円形(半導体ウェハ)、ほぼ矩形あるいは正方形(ソーラ(太陽光発電)ウェハ)とすることができ、そのコーナ部は任意選択的に角付け、丸み付け、または面取り可能である。それらの物体は厚さが薄いため、非常に脆い。本発明は、かかる物体の前洗浄に関する。
【0003】
以下においては、本発明による装置及び方法を、角付けソーラウェハ(簡単に「ウェア」と称する)を参照して例示的に説明する。
【0004】
但し、本発明は単にウェハの前洗浄に限定されない。本発明はむしろ、相互に所定の距離を隔てて担持(キャリヤ)装置内に順次保持された薄いディスクの洗浄を全般的に包含する。
【背景技術】
【0005】
ウェハを作製するためには、通常矩形のシリコンブロックの形状で存在し、基板ブロックまたはインゴットと呼ばれる始発物資を、担持装置上に配置する必要がある。担持装置は一般に金属製キャリヤからなり、このキャリヤ上に担持材としてのガラス板が装着されている。処理を施すべき基板ブロックが、ガラス板上に接着される。あるいは、担持装置を構成するのに、他の物質を用いることもできる。
【0006】
複数のウェハを作製するためには、単結晶または多結晶シリコンからなる基板ブロックをプレート状に全面切断し、それぞれの切断がガラス板内まで至るようにする必要がある。上記のように作製されるウェハは、例えば通常の環状鋸や線鋸(ワイヤソー)を用いて行われる切断後も、接着剤による接合のため、1つの長辺(縁)、つまり担持装置に対面する1辺、がガラス板に接着したままである。基板ブロックが個々のウェハに完全に分離され、個々のウェハ間にギャップ状の空隙が生じると、元の基板ブロックは櫛のようなファン状物体の状態になる。
【0007】
高精度ワイヤソーを使って湿式の機械的な切断(ソーイング)処理を行うには、実質上次の2つの物質が必要である;第1に、必要な硬度の磨耗特性を有するシリコンカーバイドまたは同等に作用する粒子、第2に、キャリヤ(搬送材)及び冷却材としてのグリコールまたはオイル。より正確に言えば、シリコンを切断するのはワイヤでなく、例えばポリエチレングリコールなどのグリコールもしくはいわゆる「スラリー」中のオイルと混合されたシリコンカーバイド粒子が実際の切断作業を行う。
【0008】
切断処理中、ワイヤは、任意選択としてその他の化学的添加剤をさらに含んでもよい上記の媒体で洗われる。ワイヤの移動により、粒子が研磨作用、つまり侵食作用を果たす。一例として、160mmのワイヤによる1回の切断で、ほぼ210mmのシリコンが研削される。この切断屑は引き目幅損(カーフロス)とも呼ばれ、これはもっと細いワイヤ、例えば直径約80mmのワイヤを使うことで減少可能である。切断処理中、含まれている各種反応物による多くの化学反応が、ウェハ表面も含めて発生する。切断後には、スラリー、反応性生物、及びスラリー成分とシリコンに基づく凝塊が各ウェハ間に存在し、それらが有する粘稠性のため、ウェハ表面に接着することが多い。
【0009】
ディスク状の形状となった個々のウェハを担持装置から取り出す前に、前洗浄が行われる。この前洗浄により、2つの各基板間に生じた空隙内で、各ウェハの表面上に存在するスラリーを洗い流さなければならない。かかる前洗浄が、本発明の主題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スラリーを除去するための上記前洗浄は、当該分野において周知である。前洗浄は通常手作業で行われ、流体の流れを放出するシャワーヘッドが、櫛状の物体上に手作業で案内される。その結果、基板ブロックの各ギャップ内に存在するスラリーが、少なくとも部分的に洗い流される。しかし、スラリーの大部分はギャップ状のウェハ間の空隙に残ったままである。
【0011】
また、担持装置に全面からシャワーをかけねばならず、しかもスラリーの洗い流しは連続的な回転によってわずか部分的にだけ可能であるため、上記の手作業による処理は困難である。さらに、担持装置の連続的な回転は特に、個々のウェハがガラス板から折れて破損するリスクを伴う。
【0012】
ウェハを含む担持装置がそれ以降の処理工程に引渡し可能になるまでの間に、ウェハの表面は通常既に乾いている。また、スラリーはその表面に付着したままのため、引き続く処理工程が多大な影響を受ける。
【0013】
こうした手作業による処理の一般的欠点は、表面の特性に関して一定の品質ひいては標準化された再現可能な結果が保証されないという点にある。
【0014】
従って本発明の目的は、隣接する薄いディスク間の空隙から自動的に、スラリーを少なくとも部分的に除去可能とする装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0015】
本発明の基本原理は、異なる処理工程に編成された洗浄処理を、自律的(自動的)な方法で実施可能とする装置及び方法を提供することにある。
【0016】
本発明による装置が請求の範囲第1項の主題である一方、本発明による方法は請求の範囲第11項に記載されている。好ましい実施形態が、従属する各請求の範囲の主題である。
【0017】
大部分のスラリーを空隙から除去可能とするため、担持装置、シャワー装置、及び槽から実質上構成される装置が提供される。
【0018】
基板ブロックがその上に置かれる担持材から少なくとも構成される担持装置は、基板ブロックの切断によって生成された薄いディスク(例えばウェハなど)を備える。これらのディスクは逐次的に、つまり連続的に並んで配置され、個々のウェハ間にそれぞれ空隙が形成される。シャワー装置は、主に空隙内へと向かい、好ましくはウェハの全長に沿った流体の流れを発生するように設計される。全体の洗浄処理は、流体で満たせる槽内で行われる。槽の寸法はほぼ、担持装置が槽内に完全に装着されるように決められている。
【0019】
シャワー処理時、槽は流体で満たされない。むしろシャワー処理は、ウェハを通って流れる流体を集めて排出する役割を果たす。好ましい実施形態によれば、基板ブロックの下方部(ウェハ面の10−50%、特に好ましくは約30%)が流体内に位置するように流体レベルを調整可能な槽内で、シャワー処理が行われる。
【0020】
洗浄処理の初期位置は、本発明による装置の「バスケット状」の補助装置に担持装置が引き渡されることで決まる。基本的に、流体が実質上隠されていないウェハ間の空隙に到達可能であり且つ基板ブロック及び取り外し可能なウェハが確実に保持されることが保証される限り、補助装置の設計は予め決められない。 好ましい実施形態によれば、本装置は長さ方向に相互に平行に延びた2つのロッド対からなる形状を有し、1対が支持体として機能し、別の1対がウェハを側方から裏当てする。補助装置が本装置内に装着されると、担持装置に固定された基板ブロックからなる櫛状の物体は、ウェハ間の空隙が槽の側壁及び底の方に向かって開放され、従ってそれらの方向から自由にアクセス可能となる向きとなる。この初期位置で、担持装置はそれによって担持されている基板の上方に位置する。以下で説明する本発明による洗浄処理の第1の工程以前に、処理すべき基板のグリコールによる前保管を行っておくのが有利である。
【0021】
本発明による洗浄処理の第1の工程では、シャワー装置を作動する。本発明によれば、シャワー装置は2パーツ構成で設計された少なくとも1つのシャワー要素を備え、両パーツが槽の長軸と平行に延び且つそれぞれの流れ方向が反対方向となるように、それぞれの各パーツが前記槽の長辺に対し横向きに配置されている。従ってシャワー装置は、流体の流れが隣接するウェハ間の各空隙内へと向かい、不純物を洗い流すように設計されている。少なくとも1つのシャワー要素または2パーツ式シャワー要素のうち一方のパーツはそれぞれ複数のノズル(開口または穿孔)を備え、これらのノズルは少なくとも1つのノズルバーを介して相互に機能的に接続され、同量の流体が供給可能となっている。処理すべき基板ブロックの長さ及び用意された供給圧力に応じ、シャワー要素は両側においてそれぞれ幾つかの区分に分割でき、これらの区分の各々にそれぞれ1つのノズルバーが存在することを特徴とする。シャワー要素の両パーツの各位置は、(所望なら相互に別々に)調整可能である。シャワー要素の垂直方向の高さ、及びシャワー要素あるいはそのパーツまたは区分の1つから槽の側壁までの距離も可変である。さらに、シャワー要素あるいはそのパーツまたは区分の1つは、槽の側壁と平行に移動可能である。所望なら、槽の一側面に沿って配置された少なくとも1つのノズルバーを振動させることができ、この振動は任意選択的に上下方向、槽壁に対して接近及び離反する方向、及び/又は槽壁と平行に前後する方向に向けられる。この利点として、流れ特性に生じ得る非均質性を補償することができる。ノズルバーの軸と平行な振動による別の利点は、例えば個々のノズルの詰まりによって生じる可能性がある流れ特性の相違を防ぐ点にある。上記の各動きにより、相互に極めて付着し易い基板クラスターを振動させ、そのような基板クラスターの空隙の洗浄効果を高められる。本発明に基づき複数のシャワー要素が存在もしくは使用される場合、それらのシャワー要素は槽の深さに対して異なるレベルに配置される。
【0022】
好ましくは、ノズルバーは矩形状に設計される。この場合、槽の対向壁の方を向いたノズルバー側面の上方及び/又は下方領域を後方に面取りするのが特に好ましく、これらの面取り領域に配置されるノズルをわずかに上方または下方に向け、それらのノズルは中央領域に配置されたノズルと平行には流体を放出しないようにする。上記の面取り領域を設けることによって、2つの隣接する基板間に位置した汚点をより効率的に除去可能となる。また、各ノズルバーは少なくとも1つのフローブレーカー(flow breaker)を備えることにより、ノズルバー全体にわたって最大限均質の流れ特性が達成されるようにするのが好ましい。
【0023】
ノズル孔は円形でなく長円形の方が好ましく、最も好ましくは星形であり、また好ましくは0.1から0.5mmの断面積、最も好ましくは0.2mmの断面積を有する。さらにノズル孔は、出口の直径が入口の直径より約0.3mmだけ小さい円錐形状に設計されるのが好ましい。ノズル孔の幾何形状は、気体を流体の流れ中へと引き込み、それによって洗浄の結果に対し積極的な影響をもたらすようにするのが好ましい。各ノズルバーにおけるノズルは、複数の列と行のパターンで配置されるのが好ましい。この場合、複数の列は相互に4mmの間隔とするのが好ましく、複数の行は相互に3mmの間隔とするのが好ましい。ノズルの幾何形状は、最大遠(例えば400mm)に達する流体ジェットが好ましくは約1mmの直径を有し、且つ低い流れ速度が与えられる場合でも依然乱流となるようにするのが最も好ましい。このように、物体に対するジェット流の影響は「ソフト」である。
【0024】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのシャワー要素の両側に存在するノズルバーは、片側だけから流体が放出され、その間他側のノズルは流体を放出しないように制御可能である。その状態で短時間処理した後、流体が基板ブロックへそれぞれ左または右から交互に差し向けられるようにサイドチェンジが行われる。シャワー要素の1パーツ(片側)が各々ノズルバーを有する複数の区分からなる場合には、正面対向するノズルが同時に作動されないように保証することも好ましい。当業者にとって、かかる制御を異なる各種の方法で達成できることは明らかである。例えば、片側に存在する全てのノズルバーの全ノズルを作動する一方、他側に存在するノズルは全て作動しない。あるいは、隣接する区分のノズルまたはノズルバーを、直接隣接する区分は同時に作動しないように制御する場合には、ここでも両側を考慮して、正面対向するノズル、ノズルバーまたは区分を同時に作動しないことが保証されねばならない。
【0025】
さらに、流体を少なくとも1つのシャワー要素へ輸送する手段が設けられる。処理パラメータとして、その中でも特に流体(あるいは液体それぞれ)の量及び流速が洗浄処理のために決められる。両方のパラメータとも、当該分野で周知の適切な手段によって変更可能である。本発明によれば、1つのシャワー要素の各開口全体に対する流体の圧力を、0.1と1.0バーの間の値、好ましくは0.2と0.5バーの間の値に調整可能である。
【0026】
洗浄処理中にスラリーを空隙から除去するため、少なくとも1つのシャワー要素あるいはそのパーツまたは区分の1つの上記した動きに加え、任意選択的にシャワー装置が移動不能な担持装置に対して移動可能であるか、もしくは担持装置が移動不能なシャワー装置に対して移動可能であるのが好ましい。あるいは、担持装置とシャワー装置の両方を相対的に移動させることもできる。
【0027】
また流体の流れが空隙を通って流れるようにするため、担持装置は、開放側がそれぞれ槽の両側壁と槽の底の方向を向くように位置される。本発明に基づきシャワー装置の作動を交互に、つまり一方の側または他方の側の片側づつ行うことにより、スラリーを空隙内から、一方の側または他方の側から洗い流すことが達成される。
【0028】
流体の流量を増加させることによって、自由端で一体に付着しているウェハが相互に隔てて保持されるという更なる利点も得られる。
【0029】
流量を増加させることによる更に別の利点は、ウェハが少なくともわずかに振動する結果、ウェハの表面に付着しているスラリーがより容易に離れ易くなる点にある。
【0030】
洗浄処理を最適化するため、少なくとも1つの超音波装置が設けられ、超音波装置は槽内に、任意選択的に移動不能または移動可能のいずれかで配置される。また超音波源は、ウェハに対し傾斜してあるいは平行に配置または配向可能である。この超音波洗浄処理は、少なくとも1つのシャワー要素による洗浄処理のすぐ後に続けて行うのが有利である。超音波洗浄処理を実施するためには、担持装置が内部に配置される槽が流体で満たされている必要がある。好ましくは、超音波の最適な伝達を可能とするため、冷流体が用いられる。また、化学反応を回避すると共に、実質上機械的な処理を保証するために、温度は15と25°Cの間の値に調整されるのが好ましい。
【0031】
超音波による洗浄処理は、槽内に流体の流れを発生させる少なくとも1つの移動不能または移動可能な交差流(クロスフロー)装置によってサポートするのが好ましく、この場合には、少なくとも1つのシャワー要素を備えた上記のシャワー装置が交差流装置の機能を果たす。つまり交差流装置は、流体の流れが2つの隣接するウェハ間の各空隙内へ差し向けられることによって、超音波で緩んだ粒子を洗い流すように形成される。少なくとも1つの交差流装置または2パーツ式交差流装置のうち一方のパーツはそれぞれ複数のノズル(開口または穿孔)を備え、これらのノズルは少なくとも1つのノズルバーを介して相互に機能的に接続され、同量の流体が供給可能となっている。処理すべき基板ブロックの長さ及び用意された供給圧力に応じ、交差流装置は両側においてそれぞれ幾つかの区分に分割でき、これらの区分の各々にそれぞれ1つのノズルバーが存在することを特徴とする。交差流装置の両パーツの各位置は、(所望なら相互に別々に)調整可能である。交差流装置の垂直方向の高さ、及び交差流装置あるいはそのパーツまたは区分の1つから槽の側壁までの距離も可変である。さらに、交差流装置あるいはそのパーツまたは区分の1つは、槽の側壁と平行に移動可能である。交差流装置は、そのノズルが流体レベルより下方に位置しているときだけ作動されるのが好ましい。所望なら、槽の一側面に配置された少なくとも1つのノズルバーを振動させることができ、この振動は任意選択的に上下方向、槽壁に対して接近及び離反する方向、及び/又は槽壁と平行に前後する方向に向けられる。このようにして、位置に依存しない流体渦を有利に発生及び利用することができる。ノズルバーの軸と平行な振動による別の利点は、例えば個々のノズルの詰まりによって生じる可能性がある流れ特性の相違を防ぐ点にある。上記の各動きにより、相互に極めて付着し易い基板クラスターを振動させ、そのような基板クラスターの空隙の洗浄効果を高められる。本発明に基づき複数の交差流装置が存在もしくは使用される場合、それらの交差流装置は槽の深さに対して異なるレベルに配置される。
【0032】
好ましくは、ノズルバーは矩形状に設計される。この場合、槽の対向壁の方を向いたノズルバー側面の上方及び/又は下方領域を後方に面取りするのが特に好ましく、これらの面取り領域に配置されるノズルをわずかに上方または下方に向け、それらのノズルは中央領域に配置されたノズルと平行には流体を放出しないようにする。上記の面取り領域を設けることによって、2つの隣接する基板間に位置した汚点をより効率的に除去可能となる。また、ノズルバーはフローブレーカー(flow breaker)を有することにより、ノズルバー全体にわたって最大限均質の流れ特性が達成されるようにするのが好ましい。
【0033】
ノズル孔は円形でなく長円形の方が好ましく、最も好ましくは星形であり、また好ましくは0.1から0.5mmの断面積、最も好ましくは0.2mmの断面積を有する。さらにノズル孔は、出口の直径が入口の直径より約0.3mmだけ小さい円錐形状に設計されるのが好ましい。ノズル孔の幾何形状は、気体を流体の流れ中へと引き込み、それによって洗浄の結果に対し積極的な影響をもたらすようにするのが好ましい。各ノズルバーにおけるノズルは、複数の列と行のパターンで配置されるのが好ましい。この場合、複数の列は相互に4mmの間隔とするのが好ましく、複数の行は相互に3mmの間隔とするのが好ましい。ノズルの幾何形状は、最大遠(例えば400mm)に達する流体ジェットが好ましくは約1mmの直径を有し、且つ低い流れ速度が与えられる場合でも依然乱流となるようにするのが最も好ましい。このように、物体に対するジェット流の影響は「ソフト」である。
【0034】
好ましい実施形態によれば、交差流装置の両側に存在するノズルバーは、片側だけから流体が放出され、その間他側のノズルは流体を放出しないように制御可能である。その状態で短時間処理した後、流体が基板ブロックへそれぞれ左または右から交互に差し向けられるようにサイドチェンジが行われる。本発明による交差流装置の1パーツ(片側)が各々ノズルバーを有する複数の区分からなる場合には、正面対向するノズルが同時に作動されないように保証することも好ましい。この交互制御によって、最適の洗浄が達成される。基板ブロックを超音波処理した後、槽を空にし、少なくとも1つのシャワー要素による更なる洗浄処理を開始する。要求に応じ、「シャワー要素による洗浄処理」と「超音波による洗浄処理」を切り換えることによって、処理を繰り返し実施可能である。
【0035】
本発明の特定の実施形態によれば、基板ブロックがシャワー装置により、所望なら表面活性剤などの適切な化学添加物を含む温流体でまず洗浄され、この温流体の温度は35と40°Cの間であるのが好ましい。その後、冷流体内で超音波洗浄が行われる。必要なら、両方の処理が繰り返される。最後の処理として、冷流体を用いたシャワー装置による洗浄処理が行われる。この最後の処理は、冷流体を用いたシャワーによって、ウェハが乾燥しひいては残りのスラリーがウェハへ堅固に付着するのを防ぐという利点を有する。
【0036】
本発明によれば、シャワー流体は水性で、15と40°Cの間の温度に調整されるのが好ましく、この温度は30と40°Cの間であるのが特に好ましい。シャワー流体は適切な非発泡性、非イオン性の表面活性剤を0から1容量%の量で含むのが好ましく、この量は流体の全量に対して0.1から0.5容量%であるのが特に好ましい。単一または複数種類の表面活性剤は約13.0の(平均)pH-値を有するのが好ましく、シャワー流体のpH-値は12.0より低い好ましい値、特に好ましくは10.5と11.0の間の値に調整可能であるのが有利である。さらにシャワー流体は所望なら、塩基や酸、並びにそれ以外の化学物質を含むこともできる。
【0037】
所望なら、本発明による好ましい実施形態の方法は、接着剤を除去する追加の処理ステップを含むこともできる。この目的のため、担持装置と必要なら補助装置とが、使用した接着剤の組成に対して適切な液体を含む処理タンク内に移送される。例えば、酢酸を含む水性流体を使用するのが特に適切であることが実証されている。この場合、水性流体の温度とpH-値はそれぞれ約40°Cと3.0から4.0の間の値に調整されるのが特に好ましい。その後、ウェハを洗浄するが、この洗浄はウェハを補助装置と一緒に、水を満たした洗浄タンク内に移送して行うのが好ましい。
【0038】
本方法の更なる実質的な利点は、その後に続くウェハの処理工程に容易に統合可能な点にある。本発明によれば、処理パラメータを正確且つ再現性可能に調整できるため、大量の処理も一定の品質レベルで可能になることが特に好ましく実証されている。
【0039】
更なる有利な実施形態は、以下の説明並びに各図面及び各請求の範囲中に示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1に、洗浄すべき基板ブロック1が示してある。基板ブロック1は担持装置2に装着され、担持装置2はガラス板3と装着要素4とからなる。本実施形態において、一辺5を有する基板ブロックが、ガラス板3に対し面接着されている。切断処理がすでに行われ、その切れ目がガラス板3内に到達している結果、ウェア6とも称する個々の基板が形成されている。個々のウェハ6の間にそれぞれ空隙7が生じており、この空隙7に、本発明に基づく洗浄処理によって除去すべきいわゆるスラリー(図示せず)が存在する。
【0041】
担持装置2と連結した基板ブロック1を、図4及び5に示した本発明による装置へ移送するため、担持装置2は図2及び3に示した補助装置8で移送される。補助装置8は、その両側部に配置され、図4及び5に示した装置と協働する手段9を備えるのが好ましい。異なるサイズの担持装置2の収容を可能とするため、フレキシブルに位置決めされて担持装置2を収容できる収容装置10が設けられる。さらに補助装置8は、図3に示すように、基板ブロック1が他の物体との望ましくない衝突から保護される位置に置かれるように設計されている。ここに示す例示の実施形態では、複数のロッド11が、基板ブロック1を間に閉じこむように配置された前記両側部の手段9間の連結要素として配置されている。
【0042】
洗浄処理を行うため、図5に示すように補助装置8が装置12に装着される。装置12自体はハウジング13を有し、ハウジング13は流体を満たせる槽14を備えている。槽14は、補助装置8全体を槽14内に入れられるように寸法が決められている。
【0043】
槽14は、前記の各手段9で補助装置8を受け取り可能なように設計されるのが好ましい。
【0044】
装置12はさらに、シャワー装置15を備えている。シャワー装置15は実質上シャワー要素16からなり、シャワー要素16は2パーツ態様で設計され、担持装置2の長手延長方向と平行に延びている。
【0045】
図5に示した例示の実施形態において、シャワー要素は超音波処理の際交差流装置17として用いられる。すなわち、同じく2パーツ設計である交差流装置17は、基板ブロック1の洗浄のため槽14内に交差流を発生させるノズル状の手段を有する。
【0046】
さらに、超音波源を備えた超音波装置18が、ハウジング13の底側に設けられている。この超音波装置18は必要に応じてオン/オフ切り換えされ、ウェハ間の空隙に存在するスラリーをさらに崩し除去する役割を果たす。
【0047】
図5に示した超音波装置18の代替例として、槽14内において任意の位置に移動できる可動の超音波装置を、移動不能な固定取り付け型の代わりに設けてもよい。
動作原理:
洗浄処理は、以下のように行われる:
【0048】
担持装置2を補助装置8と一緒に装置12内に導入した後(図5)、個々のウェハ6が底20の方を向くように、担持装置2の姿勢と位置を決める。これは、空隙7が各々、槽14の側方と底20に向かう方向に開放した状態にあることを意味する。
【0049】
洗浄処理は、シャワー装置15を作動することによって開始する。シャワー要素16を出た流体の流れ21はそれぞれの空隙7内に流入し、少なくとも部分的に空隙7を通過した後、槽14の底20に向かう方向に流出する。上述した本発明に基づく処理により、各空隙7からスラリーを除去可能である。汚染の度合いに応じ、洗浄処理は所望の回数繰り返し行うことができる。好ましくは、流体の流れ21自体を温度制御し、25°Cと40°Cの間の温度となるようにする。
【0050】
好ましい実施形態によれば、超音波装置18による超音波洗浄を引き続いて行う。このために、槽14を流体で満たし、超音波源からの音波を伝播可能にする必要がある。
【0051】
その後、槽14を空にし、上述したシャワー処理を再び開始する。
【0052】
以上のような方法で、個々の工程を所望の回数繰り返すことができる。
【0053】
前洗浄した基板ブロック1を取り出す前に、シャワー処理を再度行うのが好ましい。但し、この場合は低温の流体による。これにより、残留スラリーが少なくとも直ちにウェハ上で乾燥するのを防止できる。
【0054】
本発明による装置12を用い、本発明による方法を実施することにより、薄くて脆いディスクを自動的に前洗浄可能になる。特に、半導体及びソーラ産業におけるウェハの作製では、いわゆるスラリーを切断処理直後に取り除く必要がある。このスラリーは各ウェハの表面に極めて堅固に付着しているため、これまで手作業で処理を行わねばならなかった。しかし本発明による方法によれば、ウェハ6の高品質で自動的な前処理が可能となる。
【0055】
以上本発明を、シリコンウェハの処理を参照して開示した。もちろん、プラスチックなど、上記以外の材料からなるディスク状の基板も本発明に従って処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、洗浄すべき基板ブロック1から実質上なる担持装置2の概略図;
【図2】図2は、図1に示した担持装置を収容する補助装置8の斜視図;
【図3】図3は、図2と対照的に、担持装置2がすでに装着されている状態にある補助装置8の斜視図;
【図4】図4は、2パーツ式シャワー要素16の態様のシャワー装置を備えた本発明による装置の好ましい実施形態の概略図;
【図5A】図5Aは、シャワー要素16または交差流装置17を備えた本発明による装置の好ましい実施形態の概略図であるが、図4と対照的に、担持装置がすでに初期位置に挿入された状態を示す;
【図5B】図5Bは、別の好ましい実施形態の概略図で、それぞれ両側に配置された超音波装置18及びシャワー要素16または交差流装置17をより詳細に示す。
【符号の説明】
【0057】
1 基板ブロック
2 担持装置
3 ガラス板
4 装着要素
5 一辺
6 ウェハ
7 空隙
8 補助装置
9 手段
10 収容装置
11 ロッド
12 装置
13 ハウジング
14 槽
15 シャワー装置
16 シャワー要素
17 交差流装置
18 超音波装置
19 超音波源
20 底
21 流体の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄いウェハ(6)を洗浄する装置で、ウェハ(6)が各々の一辺で担持装置(2)に固定されており、2つの隣接するウェハ(6)間に空隙(7)が形成されており、
− 流体を各空隙(7)内に注入するシャワー装置(15)、及び
− 流体を満たすことができ且つ担持装置(2)を収容できる寸法を有する槽(14)から実質上構成された装置において、
前記シャワー装置(15)は2パーツ設計で複数のノズルを有する少なくとも1つのシャワー要素(16)を備え、両パーツが前記槽(14)の長軸と平行に延び且つそれぞれの流れ方向が反対方向となるように、それぞれの各パーツが前記槽の長辺に対し横向きに配置されており、前記少なくとも1つのシャワー要素(16)の両パーツは、正面対向するノズルが同時に作動されないように制御可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ノズルは少なくとも1つのノズルを介して相互に機能的に接続され、同じ流体量が供給可能であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシャワー要素(16)は両側において幾つかの区分に分割されており、複数区分の各々が1つのノズルバーを有することを特徴とする請求の範囲第1または2項に記載の装置。
【請求項4】
前記シャワー要素(16)の両パーツの位置は(必要なら相互に別々に)調整可能であることを特徴とする請求の範囲第1から3項のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記シャワー装置(15)が移動不能な担持装置(2)に対して移動可能であるか、あるいは前記担持装置(2)が移動不能なシャワー装置(15)に対して移動可能であるか、あるいは前記担持装置(2)と前記シャワー装置(15)が相対的に移動可能であることを特徴とする前記請求の範囲のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの超音波装置(18)が設けられ、前記槽(14)内に任意選択的に移動不能あるいは移動可能に配置されていることを特徴とする前記請求の範囲のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
幾つかのシャワー要素(16)が前記槽(14)の深さに対して異なるレベルに配置されていることを特徴とする前記請求の範囲のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つのシャワー要素(16)が前記槽(14)内に垂直方向に調整可能であることを特徴とする前記請求の範囲のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記超音波装置(18)は、前記担持装置(2)の水平の向きに対して傾斜配置された複数の超音波源(19)を備えることを特徴とする請求の範囲第6から8項のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記超音波源(19)は回転式に配置されていることを特徴とする請求の範囲第6から9項のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
薄いウェハ(6)が各々の一辺で担持装置(2)に固定されており、2つの隣接するウェハ(6)間に空隙(7)が形成された装置を用いてウェハ(6)を洗浄する方法で、前記装置が流体を各空隙(7)内に注入するシャワー装置(15)と、流体を満たすことができ且つ担持装置(2)を収容できる寸法を有する槽(14)から実質上構成されているものにおいて、
a) 基板ブロック(1)を含む前記担持装置(2)を、空のあるいは部分的に満たされた前記槽(14)内に挿入する処理ステップ、
b) 前記シャワー装置(15)によって洗浄処理を実施する処理ステップ、及び
c) 流体の存在下で、超音波装置(18)によって洗浄処理を実施する処理ステップ、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記シャワー装置(15)は2パーツ設計で複数のノズルを有する少なくとも1つのシャワー要素(16)を備え、両パーツが前記槽(14)の長軸と平行に延び且つそれぞれの流れ方向が反対方向となるように、各パーツが前記槽の長辺に対し横向きに配置されており、前記少なくとも1つのシャワー要素(16)の両パーツは、正面対向するノズルが同時に作動されないように制御可能であることを特徴とする請求の範囲第11項に記載の方法。
【請求項13】
前記処理ステップb)は前記処理ステップc)の前後に行われることを特徴とする請求の範囲第11または12項に記載の方法。
【請求項14】
前記処理ステップb)及びc)は逐次数回行われることを特徴とする請求の範囲第11または12項に記載の方法。
【請求項15】
前記処理ステップb)は温流体を用いて行われることを特徴とする請求の範囲第11から14項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記処理ステップc)は冷流体を用いて行われることを特徴とする請求の範囲第11から15項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
最後の洗浄処理は、冷流体を用いたシャワー装置(15)によって洗浄処理を行うことを含むことを特徴とする請求の範囲第11から16項のいずれかに記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−529781(P2009−529781A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557693(P2008−557693)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010734
【国際公開番号】WO2008/071364
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504382349)レナ ゾンデルマシーネン ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】