説明

画像認識カメラのキャリブレーション方法、部品接合方法および部品接合装置

【課題】簡単な構成で、画像認識カメラのキャリブレーションを精度良く行うことができる。
【解決手段】基準マークMa,Maを形成した透光性の校正用マスク31を用い、所定の位置に移動した画像認識カメラ6により、保持ヘッド2に保持され上昇待機位置S2に移動した校正用マスク31の基準マークMa,Maを、一方の鏡筒21,22を介して位置認識すると共に、保持ヘッド2に保持され接合位置S1に移動した校正用マスク31の基準マークMa,Maを、他方の鏡筒21,22を介して位置認識するマーク認識工程と、マーク認識工程において位置認識した2つの認識結果に基づいて、校正データを取得する校正データ取得工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合に先立ち、上昇待機位置にある接合部品とセットされた被接合部品との間に臨んで、接合部品と被接合部品とを同一光軸上で位置認識する表裏2眼の鏡筒を有する画像認識カメラのキャリブレーション方法、部品接合方法および部品接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表裏2視野の画像認識カメラ(上方に臨むチップ用カメラと下方に臨む基板用カメラとを一体化したもの)のキャリブレーション方法を実施する部品接合装置(チップボンディング装置)として、ボンディングツール(保持ヘッド)と隣接してZ軸テーブル(昇降機構)に搭載されたマーク用テーブル(校正用マスク)を用いたものが知られている(特許文献1参照)。このキャリブレーション方法は、Z軸テーブルにより上昇した上昇待機位置(上昇位置)におけるマーク用テーブルのキャリブレーション用基準マーク(基準マーク)を、チップ用カメラで下方から画像認識し、その後、Z軸テーブルにより降下した接合位置(降下位置)におけるキャリブレーション用基準マークを、基板用カメラで上方から画像認識し、これらの認識結果に基づいてキャリブレーションを行うものである。
【特許文献1】特開平9−8104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなチップボンディング装置では、マーク用テーブルを上下方向で所定の位置に位置調整するための昇降装置が必要となり、また、Z軸テーブルのブラケットに、昇降装置を支持する領域を、セットされた回路基板(被接合部品)の直上から外して設ける必要がある。そのため、チップボンディング装置(部品接合装置)が大型で且つ構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、簡単な構成で、画像認識カメラのキャリブレーションを精度良く行うことができる画像認識カメラのキャリブレーション方法、部品接合方法および部品接合装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像認識カメラのキャリブレーション方法は、保持ヘッドに保持した接合部品を、保持ヘッドを介して上昇待機位置と接合位置との間で昇降させる昇降機構により、ワークテーブルにセットした被接合部品に対し、接合部品を重ね合せて接合する部品接合装置に設けられ、接合に先立ち、上昇待機位置にある接合部品とセットされた被接合部品との間に臨んで、接合部品と被接合部品とを同一光軸上で位置認識する表裏2眼の鏡筒を有する画像認識カメラのキャリブレーション方法であって、基準マークを形成した透光性の校正用マスクを用い、所定の位置に移動した画像認識カメラにより、保持ヘッドに保持され上昇待機位置に移動した校正用マスクの基準マークを、一方の鏡筒を介して位置認識すると共に、保持ヘッドに保持され接合位置に移動した校正用マスクの基準マークを、他方の鏡筒を介して位置認識するマーク認識工程と、マーク認識工程において位置認識した2つの認識結果に基づいて、校正データを取得する校正データ取得工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、基準マークを形成した透光性の校正用マスクを保持ヘッドにて保持し、基準マークを上昇待機位置と接合位置とで画像認識して校正データを取得する(キャリブレーション)ことにより、画像認識カメラ自身の認識ずれに加え、上昇待機位置と接合位置とでの認識ずれ(昇降機構における移動軸の傾きによる認識ずれおよび画像認識カメラの光軸の傾きによる認識ずれ)をキャリブレーションすることができる。そのため、画像認識カメラのキャリブレーションを精度良く行うことができる。また、校正用マスクを保持ヘッドにより保持させるだけで、特段の機構(例えば、上記の昇降装置)を必要とせず、キャリブレーションを簡単な構成で行うことができる。
【0007】
本発明の部品接合方法は、上記の画像認識カメラのキャリブレーション方法と、校正データ取得工程の後、保持ヘッドに保持された校正用マスクに代えて接合部品を保持させると共に、ワークテーブルに被接合部品をセットする部品セット工程と、保持ヘッドに保持され上昇待機位置にある接合部品と、ワークテーブルにセットされた被接合部品と、の間に臨ませた画像認識カメラにより、接合部品の接合位置決め基準および被接合部品の被接合位置決め基準を位置認識する基準認識工程と、位置認識工程による認識結果に基づいて、接合位置決め基準と被接合位置決め基準との位置ずれデータを取得し、位置ずれデータに校正データを加味して位置ずれ量を算出するずれ量算出工程と、算出した位置ずれ量に基づいて、接合部品と被接合部品との相互の位置補正を行う位置補正工程と、位置補正工程の後、接合部品を被接合部品に対し重ね合せて接合する接合工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、キャリブレーションを精度良く行うことができるキャリブレーション方法を用いることで、接合処理を精度良く行うことができる。
【0009】
この場合、上昇待機位置および接合位置において、保持ヘッドに保持された校正用マスクの基準マークは、保持ヘッドに保持された接合部品の接合位置決め基準と同一高さに位置していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、上昇待機位置および接合位置において、基準マークと接合位置決め基準とを同一条件にすることができ、キャリブレーションを更に精度良く行うことができる。
【0011】
本発明の部品接合装置は、上記の部品接合方法を実施する部品接合装置であって、接合部品を保持する保持ヘッドと、保持ヘッドを介して、接合部品を上昇待機位置と接合位置との間で昇降させると共に接合部品を被接合部品に接合する昇降機構と、被接合部品がセットされるワークテーブルと、上昇待機位置にある接合部品とセットされた被接合部品との間に臨んで、接合部品と被接合部品とを同一光軸上で位置認識する表裏2眼の鏡筒を有する画像認識カメラと、画像認識カメラを水平方向に移動させる水平移動機構と、水平面内において、接合部品に対し被接合部品を相対的に移動させて、位置補正を行う補正手段と、昇降機構、水平移動機構、画像認識カメラおよび補正手段を制御すると共に、各工程を実施する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、キャリブレーションを精度良く行うことができ、接合処理を精度良く行うことができる部品接合装置を提供することができる。
【0013】
この場合、保持ヘッドには、ヒータおよび紫外線ランプのいずれかが組み込まれており、制御手段は、接合部品を被接合部品に重ね合せた状態で、ヒータおよび紫外線ランプのいずれかを駆動し、接合部品を被接合部品に接合することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、保持ヘッドのヒータおよび紫外線ランプを駆動することで、接合部品と被接合部品との接合にかかる、熱圧着もしくは紫外線圧着を容易に行うことができる。
【0015】
この場合、補正手段は、被接合部品を、X軸方向に移動させるX軸テーブル、Y軸方向に移動させるY軸テーブルおよびθ方向にθテーブルから成り、ワークテーブルは、θテーブルに搭載されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、位置補正を精度良く行うことができると共に、補正手段を簡単な構成にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の画像認識カメラのキャリブレーション方法を適用した部品接合装置について説明する。この部品接合装置は、小型の液晶パネルに、異方性導電フィルム(AFC)を介してフレキシブル基板(FPC)を熱圧着により接合するものである。具体的には、液晶パネルおよびAFC付のフレキシブル基板をプリアライメントされた状態で給材し、装置上で両者をアライメントした後、液晶パネルの端子部に、フレキシブル基板のAFC付の端子部を重ねて熱圧着するものである。なお、説明を容易にするため以降の説明では、接合部品であるフレキシブル基板を接合ワーク、被接合部品である液晶パネルを被接合ワークと表示し、いずれも板状の部材として図示するものとする。
【0018】
ここで、部品接合装置を説明する前に、接合ワークA、被接合ワークBについて、簡単に説明する。図2に示すように、接合ワークAの下面には、相互に離間して一対の接合位置決め基準Aa,Aaがマーキングされている(同図(a)参照)。被接合ワークBの上面には、一対の接合位置決め基準Aa,Aaに対応する一対の被接合位置決め基準Ba,Baがマーキングされている(同図(d)参照)。これら位置決め基準Aa,Baを画像認識し、位置決め基準Aa,Baを重ね合わせるように接合することにより、接合ワークAおよび被接合ワークBの接合処理が行われる。
【0019】
図1に示すように、部品接合装置1は、接合ワークAを吸着保持する保持ヘッド2と、保持ヘッド2を昇降させる昇降機構3と、被接合ワークBがセットされるワークテーブル4と、ワークテーブル4が搭載されたXYθテーブル(補正手段)5と、側方から装置の軸線上(保持ヘッド2および昇降機構3と同軸線上)に臨み、上下2視野で離間状態の接合ワークAおよび被接合ワークBを撮像する一対の画像認識カメラ6(同図では一方のみ図示)と、一対の画像認識カメラ6を軸線上に進退自在に臨ませる進退動機構(水平移動機構)7と、これら構成装置を統括制御する制御装置(制御手段)8と、を備えている。
【0020】
保持ヘッド2はいわゆる吸着ヘッドであり、図示では省略したが、ヒータおよびばねを内蔵している。保持ヘッド2は、吸着した接合ワークAを被接合ワークBに熱圧着するが、ばねにより圧着力が維持され、ヒータにより熱接合が行われる。昇降機構3は、保持ヘッド2を支持し、保持ヘッド2介して接合ワークAを接合位置S1と上昇待機位置S2との間で昇降させる。接合位置S1に移動した接合ワークAは、被接合ワークBに押圧された状態で熱圧着される。また、詳細は後述するが接合ワークAが上昇待機位置S2に移動した状態で、画像認識カメラ6が軸線上に側方から臨むようになっている。なお、紫外線圧着を行う場合には、ヒータに代えて紫外線ランプを内蔵する。このような保持ヘッド2を有することにより、接合ワークAと被接合ワークBとの接合にかかる、熱圧着もしくは紫外線圧着を容易に行うことができる。
【0021】
XYθテーブル5は、ワークテーブル4を搭載すると共に、ワークテーブル4にセットした被接合ワークBを水平面内において微小角度回転させるθテーブル11と、θテーブル11を支持すると共に、ワークテーブル4およびθテーブル11を介して、被接合ワークBを水平面内のY軸方向に移動させるY軸テーブル12と、Y軸テーブル12を支持すると共に、ワークテーブル4、θテーブル11およびY軸テーブル12を介して、被接合ワークBを水平面内のX軸方向に移動させるX軸テーブル13と、を備えている。すなわち、θテーブル11、Y軸テーブル12およびX軸テーブル13により、被接合ワークBの水平面内のXYθ方向における位置調整(アライメント)を行うことができる。このようなXYθテーブル5を用いることにより、位置補正を精度良く行うことができると共に、補正手段を簡単な構成にすることができる。
【0022】
各画像認識カメラ6は、いわゆる上下2視野カメラであり、離間状態の接合ワークAと被接合ワークBの間に臨み、接合ワークAの下面を画像認識すると共に、被接合ワークBの上面を画像認識するものである。図3に示すように、各画像認識カメラ6は、表裏面に位置する(表裏2眼の)上鏡筒(鏡筒)21および下鏡筒(鏡筒)22と、一対の鏡筒21,22に対応した一対のCCDカメラ23,23と、一対の鏡筒21,22から入射した入射光を一対のCCDカメラ23,23にそれぞれ導く一対の光学系24,24と、を備えている。一方のCCDカメラ23は、一方の光学系24および上鏡筒21を介して、接合ワークAの下面(の1つの接合位置決め基準Aa)を画像認識し、他方のCCDカメラ23は、他方の光学系24および下鏡筒22を介して、被接合ワークBの上面(の1つの被接合位置決め基準Ba)を画像認識する。一方の画像認識カメラ6により、対応する一方の各位置決め基準Aa,Baを画像認識し、他方の画像認識カメラ6により、対応する他方の各位置決め基準Aa,Baを画像認識する。
【0023】
なお、本実施形態においては、制御装置8による画像認識を容易にするために、一対の鏡筒21,22に対し一対のCCDカメラ23,23により撮像を行うような構成となっているが、一対の鏡筒21,22に対し、1つのCCDカメラ23で撮像を行うようにしても良い。
【0024】
図1に示すように、進退動機構7は、一対の画像認識カメラ6を、上記した軸線上となる位置決め基準認識位置T1と、退避位置T2との間でX軸方向に水平移動自在に構成されている。昇降機構3により、接合ワークAを上昇位置に上昇された状態で、進退動機構7により、画像認識カメラ6を、位置決め基準認識位置T1に移動させ、接合ワークAおよび被接合ワークBの位置決め基準Aa,Baが撮像される。なお、詳細は後述するが、位置決め基準認識位置T1および退避位置T2の間には、キャリブレーションを行う際に校正用マスク31の基準マークMa,Maを撮像する基準マーク認識位置T3が設定されている。
【0025】
制御装置8は、特に図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等により主要部が構成され、画像認識カメラ6の他、保持ヘッド2、昇降機構3、θテーブル11、Y軸テーブル12、X軸テーブル13および進退動機構7の駆動を制御する。また、アライメントに際し、一対の画像認識カメラ6(の一対のCCDカメラ23,23)による認識結果から、接合ワークAと被接合ワークBとの相互の位置ずれ量を算出すると共に、キャリブレーションに際し、各画像認識カメラ6(の一対のCCDカメラ23,23)による認識結果から、各画像認識カメラ6の認識ずれ量(校正データ)を算出する。
【0026】
次に、校正用マスク31を用いたキャリブレーション方法について説明する。図2(a)に示すように、校正用マスク31は、石英ガラス等で構成された透明(透光性を有する)な板状に形成されている。校正用マスク31は、キャリブレーションに際し、接合ワークAに代わり保持ヘッド2に保持されるものであり、保持ヘッド2の保持位置から、画像認識カメラ6の進退方向(同図上下方向)に延在して形成されている。校正用マスク31の下面には、一対の画像認識カメラ6の位置決め基準認識位置T1と退避位置T2との間に位置する基準マーク認識位置T3に臨んで、一対の基準マークMa,Maが配置されている。一対の基準マークMa,Maは、接合ワークAの一対の接合位置決め基準Aa,Aaに対応して配置されており、保持ヘッド2に保持された校正用マスク31の一対の基準マークMa,Maは、保持ヘッド2に保持された接合ワークAの接合位置決め基準Aa,Aaと同一の高さに位置している。なお、基準マーク認識位置T3は、昇降機構3により校正用マスク31が上昇待機位置S2に位置し、一対の画像認識カメラ6が基準マーク認識位置T3に位置している状態で、画像認識カメラ6が昇降機構3に干渉することがない位置であり、且つ位置決め基準認識位置T1にできるだけ近い位置に設定するものとする。
【0027】
本キャリブレーション方法は、上記したように、接合ワークAに代わり校正用マスク31が保持ヘッド2に保持されている状態(すなわち、接合ワークAがセットされていない状態)にて行う。加えて、被接合ワークBがセットされておらず、保持ヘッド2を介して校正用マスク31が上昇待機位置S2に位置している(図4(a))。
【0028】
まず、進退動機構7により、一対の画像認識カメラ6を基準マーク認識位置T3に移動し、上昇待機位置S2に位置する校正用マスク31の一対の基準マークMa,Maに臨ませる(図4(b))。その後、一対の画像認識カメラ6の各上鏡筒21により、下方から一対の基準マークMa,Maをそれぞれ撮像する。これにより、上昇待機位置S2における一対の基準マークMa,Maの位置が画像認識(位置認識)される。
【0029】
次に、進退動機構7により、一対の画像認識カメラ6を一旦退避位置T2に移動した後、昇降機構3により、保持ヘッド2を介して校正用マスク31を接合位置S1に移動させる(図4(c))。校正用マスク31を移動させたら、再度、一対の画像認識カメラ6を基準マーク認識位置T3に移動し、接合位置S1に位置する校正用マスク31の一対の基準マークMa,Maに臨ませる(図4(d))。その後、今度は、一対の画像認識カメラ6の各下鏡筒22により、上方から一対の基準マークMa,Maをそれぞれ撮像する。これにより、接合位置S1における一対の基準マークMa,Maの位置が画像認識(位置認識)される。
【0030】
その後、制御装置8は、各画像認識カメラ6によって撮像された各2の画像認識結果に基づいて、各画像認識カメラ6の校正データを取得する。例えば、上昇待機位置S2における基準マークMaの位置が(X,Y)=(1,1)であり、接合位置S1における基準マークMaの位置が(X,Y)=(1,−1)である場合、位置ずれ量は、(X,Y)=(1−1,1−(−1))=(0,2)となり、この位置ずれ量が校正データとなる。
【0031】
このようなキャリブレーション方法を用いることにより、画像認識カメラ6自身の認識ずれに加え、上昇待機位置S2と接合位置S1とでの認識ずれ(昇降機構3における移動軸の傾きによる認識ずれおよび画像認識カメラ6の光軸の傾きによる認識ずれ)をキャリブレーションすることができる。そのため、画像認識カメラ6のキャリブレーションを精度良く行うことができる。また、校正用マスク31を保持ヘッド2により保持させるだけで、特段の機構を必要とせず、キャリブレーションを簡単な構成で行うことができる。
【0032】
次に、図5を参照して、一対の画像認識カメラ6のキャリブレーション後の、接合ワークAと被接合ワークBとのアライメント動作および接合動作について説明する。なお、保持ヘッド2が上昇待機位置S2に位置している状態にて行われる。
【0033】
まず、校正用マスク31に代えて、接合ワークAを保持ヘッド2に保持させると共に、被接合ワークBをワークテーブル4にセットする(図5(a))。
【0034】
次に、進退動機構7により、一対の画像認識カメラ6を位置決め基準認識位置T1に移動し、一対の画像認識カメラ6を、接合ワークAの一対の接合位置決め基準Aa, Aaおよび被接合ワークBの一対の被接合位置決め基準Ba,Baに臨ませる(図5(b))。その後、一対の画像認識カメラ6の各上鏡筒21により、一対の接合位置決め基準Aa,Aaをそれぞれ撮像すると共に、一対の画像認識カメラ6の各下鏡筒22により、一対の被接合位置決め基準Ba,Baをそれぞれ撮像する。これにより、一対の接合位置決め基準Aa,Aaの位置と、一対の被接合位置決め基準Ba,Baの位置が画像認識される。
【0035】
その後、制御装置8は、一対の接合位置決め基準Aa,Aaの画像認識結果および一対の被接合位置決め基準Ba,Baの画像認識結果に基づいて、位置ずれデータを取得し、当該位置ずれデータに校正データを加味して位置ずれ量を算出する。例えば、接合位置決め基準Aaの位置が(X,Y)=(2,1)である場合、上記の校正データ(X,Y)=(0,−2)を加味し、(X,Y)=(2−0,1−2)=(2,−1)を接合位置決め基準Aaの位置とする(以下、これを校正接合位置決め基準と表記する)。これを両接合位置決め基準Aa,Aaに対して行った後、一対の校正接合位置決め基準と、一対の被接合位置決め基準Ba,Baとの位置ずれ量を算出する。
【0036】
すなわち、一対の校正接合位置決め基準の線分と、一対の被接合位置決め基準Ba,Baの線分との角度ずれ(Δθ)を算出し、一対の校正接合位置決め基準の中点と、一対の被接合位置決め基準Ba,Baの中点とのXY方向の位置ずれ(ΔX,ΔY)を算出する。この校正接合位置決め基準と被接合位置決め基準Ba,Baとの位置ずれ量(ΔX,ΔY, Δθ)が、そのまま、被接合ワークBの接合ワークAに対する位置ずれ量となる。
【0037】
次に、進退動機構7により一対の画像認識カメラ6を退避位置T2に退避させた後(図5(c))、算出した被接合ワークBの接合ワークAに対する位置ずれ量に基づいて、XYθテーブル5により、ワークテーブル4上の被接合ワークBを位置補正(アライメント)する。位置補正が終了したら、昇降機構3により、保持ヘッド2を介して接合ワークAを降下させ、被接合ワークBに接合ワークAを重ね合せて押圧接触させて、また、内蔵するヒータにより熱圧着する(図5(d))。これにより、接合ワークAが被接合ワークBに接合される。
【0038】
このように、一対の画像認識カメラ6のキャリブレーションを精度良く行うことができるキャリブレーション方法を用いて接合処理を行うことにより、接合処理を精度良く行うことができる。なお、上記の一対の画像認識カメラ6のキャリブレーションは、接合処理の都度行ってもよいし、一定数に一回、周期的に行うようにしてよい。また、同様に上記のアライメントも接合処理の都度行ってもよいし、一定数に一回、行うようにしてよい。
【0039】
以上のような構成によれば、基準マークMaを形成した透光性の校正用マスク31を保持ヘッド2にて保持し、基準マークMaを上昇待機位置S2と接合位置S1とで画像認識して校正データを取得する(キャリブレーション)ことにより、画像認識カメラ6自身の認識ずれに加え、上昇待機位置S2と接合位置S1とでの認識ずれ(昇降機構3における移動軸の傾きによる認識ずれおよび画像認識カメラ6の光軸の傾きによる認識ずれ)をキャリブレーションすることができる。そのため、画像認識カメラ6のキャリブレーションを精度良く行うことができる。また、校正用マスク31を保持ヘッド2により保持させるだけで、特段の機構(例えば、上記の支持部材)を必要とせず、キャリブレーションを簡単な構成で行うことができる。
【0040】
なお、本実施形態では、フレキシブル基板と液晶パネルとの位置決めを例に説明したが、本願発明は、ICチップと回路基板との位置決め(マウント)、インクジェットヘッドとキャリッジとの位置決め等に、適用できることはいうまでもない。したがって、熱圧着に限らず、紫外線硬化接着剤を用いた紫外線接合やはんだ接合等にも適用可能である。
【0041】
また、本実施形態では、校正用マスク31として、接合ワークAと同一の厚さを有する板状のものを使用したが、上昇待機位置S2および接合位置S1において、保持ヘッド2の保持された校正用マスク31の(一対の)基準マークMa,Maが、保持ヘッド2の保持された接合ワークAの(一対の)接合位置決め基準Aa,Aaと、同一の高さに位置するのであれば、これに限るものではない。例えば、上方から下面の基準マークMa,Maを位置認識する際の、校正用マスク31による屈折の影響を抑えるため、校正用マスク31を、基準マークMa,Maが配置される薄型のマスクステージ41と、マスクステージ41を支持すると共に保持ヘッド2に支持される支柱42とで、構成してもよい(図6(a)参照)。また、校正用マスク31を、貼り合わせたガラス板43,43で構成し、その中間部に基準マークMa,Maを設けたものでも良い(図6(b)参照)。
【0042】
さらに言えば、当該基準マークMa,Maが当該位置決め基準Aa,Aaと同一の高さに位置するものに限る必要はないが(例えば、実施形態における校正用マスク31において、上面に基準マークMa,Maを配置したもの)、これらを同一の高さに位置することにより、上昇待機位置S2および接合位置S1において、基準マークMa,Maと接合位置決め基準Aa,Aaとを同一条件にすることができ、キャリブレーションを更に精度良く行うことができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、被接合ワークB側を移動させて、接合に係る位置補正を行ったが、接合ワークA側を移動させるものであっても良いし、被接合ワークB側および接合ワークA側を共に移動させるものであっても良い(例えば、接合ワークA側がθ方向補正を行い、被接合ワークB側がXY方向補正を行う構成)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態に係る部品接合装置の全体模式図である。
【図2】接合ワークの裏面図(a)、被接合ワーク(b)の平面図および校正用マスクの裏面図(c)である。
【図3】画像認識カメラを模式的に示した斜視図である。
【図4】部品接合装置におけるキャリブレーション動作を示す説明図である。
【図5】部品接合装置におけるアライメント動作および接合動作を示す説明図である。
【図6】校正用マスクの変形例を模式的に示した側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1:部品接合装置、 2:保持ヘッド、 3:昇降機構、 4:ワークテーブル、 5:XYθテーブル、 6:画像認識カメラ、 7:進退動機構、 8:制御装置、 11:θテーブル、 12:Y軸テーブル、 13:X軸テーブル、 21:上鏡筒、 22:下鏡筒、 31:校正用マスク、 A:接合ワーク、 Aa:接合位置決め基準、 B:被接合ワーク、 Ba:被接合位置決め基準、 Ma:基準マーク、 S1:接合位置、 S2:上昇待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持ヘッドに保持した接合部品を、前記保持ヘッドを介して上昇待機位置と接合位置との間で昇降させる昇降機構により、ワークテーブルにセットした被接合部品に対し、前記接合部品を重ね合せて接合する部品接合装置に設けられ、
前記接合に先立ち、前記上昇待機位置にある前記接合部品とセットされた前記被接合部品との間に臨んで、前記接合部品と前記被接合部品とを同一光軸上で位置認識する表裏2眼の鏡筒を有する画像認識カメラのキャリブレーション方法であって、
基準マークを形成した透光性の校正用マスクを用い、
所定の位置に移動した前記画像認識カメラにより、前記保持ヘッドに保持され前記上昇待機位置に移動した前記校正用マスクの前記基準マークを、一方の前記鏡筒を介して位置認識すると共に、前記保持ヘッドに保持され前記接合位置に移動した前記校正用マスクの前記基準マークを、他方の前記鏡筒を介して位置認識するマーク認識工程と、
前記マーク認識工程において位置認識した2つの認識結果に基づいて、校正データを取得する校正データ取得工程と、を備えたことを特徴とする画像認識カメラのキャリブレーション方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像認識カメラのキャリブレーション方法と、
前記校正データ取得工程の後、前記保持ヘッドに保持された前記校正用マスクに代えて前記接合部品を保持させると共に、前記ワークテーブルに前記被接合部品をセットする部品セット工程と、
前記保持ヘッドに保持され前記上昇待機位置にある前記接合部品と、前記ワークテーブルにセットされた前記被接合部品と、の間に臨ませた前記画像認識カメラにより、前記接合部品の接合位置決め基準および前記被接合部品の被接合位置決め基準を位置認識する基準認識工程と、
前記位置認識工程による認識結果に基づいて、前記接合位置決め基準と前記被接合位置決め基準との位置ずれデータを取得し、前記位置ずれデータに前記校正データを加味して位置ずれ量を算出するずれ量算出工程と、
算出した位置ずれ量に基づいて、前記接合部品と前記被接合部品との相互の位置補正を行う位置補正工程と、
前記位置補正工程の後、前記接合部品を前記被接合部品に対し重ね合せて接合する接合工程と、を備えたことを特徴とする部品接合方法。
【請求項3】
前記上昇待機位置および前記接合位置において、前記保持ヘッドに保持された前記校正用マスクの前記基準マークは、前記保持ヘッドに保持された前記接合部品の前記接合位置決め基準と同一高さに位置していることを特徴とする請求項2に記載の部品接合方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の部品接合方法を実施する部品接合装置であって、
前記接合部品を保持する前記保持ヘッドと、
前記保持ヘッドを介して、前記接合部品を前記上昇待機位置と前記接合位置との間で昇降させると共に前記接合部品を前記被接合部品に接合する前記昇降機構と、
前記被接合部品がセットされる前記ワークテーブルと、
前記上昇待機位置にある前記接合部品とセットされた前記被接合部品との間に臨んで、前記接合部品と前記被接合部品とを同一光軸上で位置認識する前記表裏2眼の鏡筒を有する前記画像認識カメラと、
前記画像認識カメラを水平方向に移動させる水平移動機構と、
水平面内において、前記接合部品に対し前記被接合部品を相対的に移動させて、位置補正を行う補正手段と、
前記昇降機構、前記水平移動機構、前記画像認識カメラおよび前記補正手段を制御すると共に、前記各工程を実施する制御手段と、を備えたことを特徴とする部品接合装置。
【請求項5】
前記保持ヘッドには、ヒータおよび紫外線ランプのいずれかが組み込まれており、
前記制御手段は、前記接合部品を前記被接合部品に重ね合せた状態で、ヒータおよび紫外線ランプのいずれかを駆動し、前記接合部品を前記被接合部品に接合することを特徴とする請求項4に記載の部品接合装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記被接合部品を、X軸方向に移動させるX軸テーブル、Y軸方向に移動させるY軸テーブルおよびθ方向に移動させるθテーブルから成り、
前記ワークテーブルは、前記θテーブルに搭載されていることを特徴とする請求項4または5に記載の部品接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−123834(P2009−123834A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294643(P2007−294643)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】